(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-10
(45)【発行日】2025-01-21
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250114BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
(21)【出願番号】P 2024570449
(86)(22)【出願日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2023024865
【審査請求日】2024-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 有輝
(72)【発明者】
【氏名】新津 太一
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-46190(JP,A)
【文献】特開2000-63533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス相に分散相が分散されたフィルムであって、
ポリエチレンを含むマトリックス相と、ポリプロピレンを含む分散相と、を含み、
前記分散相は
、少なくともMD方向に配向する扁平相
と樹脂で構成され、アスペクト比が3以下の球状相と、を含み
、
前記扁平相の平均アスペクト比が15以上である
フィルム。
【請求項2】
マトリックス相に分散相が分散されたフィルムであって、
ポリエチレンを含むマトリックス相と、ポリプロピレンを含む分散相と、を含み、
前記分散相は少なくともMD方向に配向する扁平相を含み、前記扁平相の平均アスペクト比が15以上であ
り、
吸収性物品に由来する廃棄物を原料の一部とする
フィルム。
【請求項3】
前記球状相は、ポリエチレンテレフタラート、及びポリウレタンの少なくとも一方を含む
請求項
1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記分散相の合計断面積に対する前記扁平相の合計断面積の比率が60%以上である
請求項1
から3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記分散相は、無機材料相を更に含む
請求項1から
3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリエチレンの合計断面積の比率が50%以上99%以下である
請求項1から
3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリプロピレンの合計断面積の比率が1%以上50%以下である
請求項1から
3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】
マトリックス相に分散相が分散されたフィルムの製造方法であって、
ポリエチレンを含み、前記マトリックス相を構成する第1原料と、前記分散相を構成する成分としてポリプロピレンを含む第2原料と、を混錬した混練物をフィルム成形し、
前記フィルム成形の際の成形温度における前記第1原料の粘度ηAに対する前記成形温度における前記第2原料に含まれるポリプロピレンの粘度ηBの比率ηB/ηAが0.015以上1未満であ
り、
前記第2原料は、前記分散相を構成する成分として、前記第1原料よりも融点が100℃以上高い熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方を更に含む
フィルムの製造方法。
【請求項9】
マトリックス相に分散相が分散されたフィルムの製造方法であって、
ポリエチレンを含み、前記マトリックス相を構成する第1原料と、前記分散相を構成する成分としてポリプロピレンを含む第2原料と、を混錬した混練物をフィルム成形し、
前記フィルム成形の際の成形温度における前記第1原料の粘度ηAに対する前記成形温度における前記第2原料に含まれるポリプロピレンの粘度ηBの比率ηB/ηAが0.015以上1未満であ
り、
前記第2原料は、吸収性物品に由来する廃棄物を含む
フィルムの製造方法。
【請求項10】
単軸押出機を用いて前記第1原料と前記第2原料とを混練する
請求項
8又は
9に記載のフィルムの製造方法。
【請求項11】
インフレーション成形法によって前記混練物をフィルム成形する
請求項
8又は9に記載のフィルムの製造方法。
【請求項12】
フィルム成形後のフィルムの表面にコロナ処理を施す
請求項
8又は9に記載のフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記成形温度が200℃以上300℃以下である
請求項
8又は9に記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンを含むフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルムをリサイクルする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、畑などで使用された使用済みのポリエチレンフィルムに付着した泥などを充分に洗浄するための特殊な洗浄工程を設けることで、新たなポリエチレンフィルムとして再生することができる。
【0003】
また、ポリエチレン以外の樹脂を主成分とする樹脂フィルムの廃棄物をポリエチレンフィルムの一成分としてリサイクルする技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、ポリエチレンフィルムの製造において、樹脂フィルムの廃棄物を用いた分だけ、ポリエチレンのバージン材の使用量を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-052532号公報
【文献】特開2004-182957号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の一形態に係るフィルムでは、マトリックス相に分散相が分散されている。
上記フィルムは、ポリエチレンを含むマトリックス相と、ポリプロピレンを含む分散相と、を含む。
上記分散相は少なくともMD方向に配向する扁平相を含み、上記扁平相の平均アスペクト比が15以上である。
【0006】
本発明の一形態に係るマトリックス相に分散相が分散されたフィルムの製造方法では、ポリエチレンで構成され、上記マトリックス相を構成する第1原料と、上記分散相を構成する成分としてポリプロピレンを含む第2原料と、を混錬した混練物がフィルム成形される。
上記フィルム成形の際の成形温度における上記第1原料の粘度ηAに対する上記成形温度における上記第2原料に含まれるポリプロピレンの粘度ηBの比率ηB/ηAが0.015以上1未満である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルムの部分断面を模式的に示す図である。
【
図2】上記フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】混練工程で得られる混練物の断面を撮像したTEM画像である。
【
図4】フィルム成形工程で得られるフィルムのMD断面を撮像したTEM画像である。
【
図5】フィルム成形工程で得られるフィルムのTD断面を撮像したTEM画像である。
【
図6】比較例に係るフィルムのMD断面を撮像したTEM画像である。
【
図7】実施例4に係るフィルムのMD断面を撮像したTEM画像である。
【
図8】実施例24に係るフィルムのMD断面を撮像したTEM画像である。
【発明の詳細な説明】
【0008】
おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品には樹脂で構成された部位が多いため、吸収性物品の廃棄物をリサイクルする意義は大きい。しかしながら、吸収性物品に多く含まれるポリプロピレンは、ポリエチレンフィルムの一成分と利用すると、強度、伸度、手触りの滑らかさなどの点でポリエチレンフィルムの品質が損なわれやすくなる。
【0009】
本発明は、ポリエチレンにポリプロピレンが分散したフィルムにおいてポリプロピレンによる品質の低下を抑制することに関する。
【0010】
本発明の一実施形態に係るフィルム及びその製造方法について説明する。
【0011】
[フィルムの構成]
本実施形態に係るフィルムは、マトリックス相と、分散相と、を有し、マトリックス相に分散相が分散した構成を有する。マトリックス相は、ポリエチレンを含む。分散相は、ポリプロピレンを含む扁平相を有する。
【0012】
図1では、紙面左右方向がフィルムのMD方向(Machine Direction:樹脂成型の流れ方向)に対応し、紙面奥行方向がフィルムのTD方向(Transverse Direction:MDに直交する方向)に対応し、紙面上下方向がフィルムの厚み方向に対応する。本実施形態に係るフィルムの各扁平相は、アスペクト比が5以上の扁平な形状を有し、面内方向における少なくともMD方向に配向しており、TD方向にも配向していることが好ましい。また、本実施形態に係るフィルムの扁平相におけるアスペクト比の平均値として規定される扁平層の平均アスペクト比は、15以上であり、20以上であることが好ましい。更に、本実施形態に係るフィルムの扁平相の平均アスペクト比は、低温ヒートシール性を良好に維持する観点から、100以下であることが好ましく、50以下であることより好ましい。各扁平相は、面内方向の全方位に延びていることが好ましいが、MD方向のみに延びて帯状又は針状に形成されていてもよい。
【0013】
また、本実施形態に係るフィルムは、分散相として、樹脂で構成され、アスペクト比が3以下の球状相を含むことが好ましい。球状相は、フィルムの引裂強度の向上に寄与する。球状相としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、及びポリウレタンの少なくとも一方を含んでもよい。本実施形態に係るフィルムでは、球状相を構成する樹脂の含有量が0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、本実施形態に係るフィルムでは、球状相の平均粒径が1nm以上2μm以下であることが好ましい。
【0014】
各分散相のアスペクト比の測定には透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて撮像したTEM画像を用いる。観察対象のフィルムはウルトラミクロトームを用いて超薄切片に加工し、重金属(四酸化ルテニウム)で染色することでマトリックス相と分散相の存在状態観察が可能になる。フィルムのサンプルの観察面は、MD方向と平行方向に切断して形成されるMD断面とする。観察倍率は2500倍以上で、面内方向の寸法が14.3μm以上で、厚み方向の寸法が14.3μm以上の矩形の視野が得られるよう設定する。透過型電子顕微鏡にはHT7820(株式会社日立ハイテク製)を用い、加速電圧は100kVに設定する。また、本実施形態では、フィルムのサンプルのTEM画像を用いて、各分散相のアスペクト比のみならず、各分散相の断面積を測定することができる。これにより、フィルムにおける分散相の含有量や、分散相に占める扁平相及び球状相の比率を、断面積比によって評価することが可能となる。
【0015】
フィルムのサンプルのTEM画像において観察される各分散相のアスペクト比及び断面積の測定には画像解析ソフトImage-Pro10(Media Cybernetics社)を用いる。TEM画像を取り込んだものを「クイック空間構成機能」にてスケール構成を行い、「スマート(学習機能)」で分散相(対象物)とマトリックス相(背景)をランダムに10カ所囲んで学習させ、全ての分散相の抽出を行う。その後対象抽出オプションの「穴埋め」を選択した状態で「半径比」及び「断面積」について測定する。各分散相についてこの半径比を分散相のアスペクト比として取り扱う。本実施形態では、分散相のうち、アスペクト比が5以上のものを扁平相、アスペクト比が3以下のものを球状相とする。前記測定結果から半径比が5以上の分散相を抽出し、抽出した分散相の半径比の平均値を扁平相の平均アスペクト比とし、半径比が5以上の分散相の断面積の合計値を扁平相の合計断面積とする。また、前記測定結果から半径比が3以下の分散相を抽出し、抽出した分散相の半径比の平均値を球状相の平均アスペクト比とし、半径比が3以下の分散相の断面積の合計値を球状相の合計断面積とする。前記測定結果に含まれるすべての分散相の断面積の合計値を分散相の合計断面積とする。TEM画像の視野面積をフィルムの合計断面積とする。これらを用いることで、フィルムについての様々な断面積比を求めることができる。例えば、フィルムの合計断面積に対する分散相の合計断面積の比率や、分散相の合計断面積に対する扁平相の合計断面積の比率や、分散相の合計断面積に対する球状相の合計断面積の比率などを求めることができる。
【0016】
本実施形態に係るフィルムでは、いずれの扁平相も面内方向に途切れることでマトリックス相が厚み方向に連続している。つまり、本実施形態に係るフィルムにおけるマトリックス相に扁平相が分散した構成は、マトリックス相と扁平相とが面内方向に一連の層として厚み方向に交互に積層された積層構造とは異なる。
【0017】
本実施形態では、各MD断面においてフィルムの厚みに占める各扁平相の寸法が小さいため、各扁平相の物性による影響がフィルム全体としての物性に及びにくい。また、本実施形態に係るフィルムでは、薄い扁平相が面内方向に広く存在していることで、扁平相を構成するポリプロピレンが面内方向において広く分散しているため、ポリプロピレンによる影響が局所的に及ぶことなく、面内方向に沿って均一な物性が得られやすい。更に、本実施形態に係るフィルムでは、ポリプロピレンを扁平相として存在させることで、ポリプロピレンによる手触りへの影響が及びにくく、ポリエチレン本来の滑らかな手触りが得られやすい。
【0018】
このため、本実施形態に係るフィルムでは、扁平相を構成するポリプロピレンの物性に関わらずに、マトリックス相を構成するポリエチレンの物性が支配的となる。つまり、本実施形態に係るフィルムでは、ポリプロピレンの存在に関わらずに、ポリエチレンのみで構成されたフィルムに対して遜色のない高い強度、高い伸度、及び滑らかな手触りが得られやすい。本実施形態に係るフィルムでは、分散相全体に占める扁平相の割合が大きいことが好ましい。この観点から、本実施形態に係るフィルムでは、TEM画像における分散相の合計断面積に対する扁平相の合計断面積の比率が60%以上であることが好ましい。また、本実施形態に係るフィルムでは、TEM画像におけるフィルムの合計断面積に対する球状相の合計断面積の比率が0.05%以上20%以下であることが好ましい。
【0019】
したがって、本実施形態に係るフィルムでは、その一成分として様々な物品に由来するポリプロピレンを含む廃棄物をリサイクルすることができる。これにより、本実施形態に係るフィルムでは、ポリエチレンのバージン材の使用量を削減することができるため、製造に伴う環境負荷を低減することができる。
【0020】
ポリプロピレンを含む廃棄物としては、例えば、生理用ナプキン、ベビー用おむつ、大人用おむつなどといった吸収性物品に由来する廃棄物が挙げられる。吸収性物品に由来する廃棄物としては、例えば、使用済みの吸収性物品や、出荷前に不良品と判断された吸収性物品や、吸収性物品の製造過程で生じた端材などが挙げられる。
【0021】
吸収性物品から回収可能なポリプロピレンを含む廃棄物としては、例えば、樹脂繊維や樹脂フィルムなどが挙げられる。本実施形態に係る技術は、樹脂繊維や樹脂フィルムなどが混在した廃棄物でも、強度及び伸度が高く、手触りの滑らかな樹脂フィルムとして良好に再利用できる点で、リサイクルの可能性を広げるものである。また、吸収性物品に含まれる樹脂はポリエチレンと比較して高融点であることが多いため、吸収性物品に由来する廃棄物を配合することによって高い耐熱性が得られやすくなり、扁平相のアスペクト比を高めるほどその効果が期待できる。
【0022】
本実施形態に係るフィルムでは、ポリエチレンの含有量が少ないほど、またポリプロピレンの含有量が多いほど高い強度、高い伸度、及び滑らかな手触りが得られにくくなる。この観点から、本実施形態に係るフィルムでは、フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像したTEM画像におけるフィルムの合計断面積に対するポリエチレンの断面積の比率が50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、TEM画像におけるポリエチレンの断面積は、ポリエチレンの占める領域とマトリックス相の占める領域とが一致するものとみなして、フィルムの合計断面積から分散相の合計断面積を差し引いたマトリックス相の断面積として求めることができる。また、本実施形態に係るフィルムでは、フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像したTEM画像におけるフィルムの合計断面積に対するポリプロピレンの断面積の比率が50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。なお、TEM画像におけるポリプロピレンの断面積は、ポリプロピレンの占める領域と扁平相の占める領域とが一致するものとみなして、扁平相の断面積として求めることができる。更に、本実施形態に係るフィルムでは、ポリエチレンの含有量が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係るフィルムでは、ポリプロピレンの含有量が50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
また、本実施形態に係るフィルムでは、用途に応じて充分な品質が確保できる範囲内において、ポリエチレンのバージン材の使用量を削減することが好ましい。この観点から、本実施形態に係るフィルムでは、フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像したTEM画像におけるフィルムの合計断面積に対するポリエチレンの断面積の比率が99%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係るフィルムでは、フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像したTEM画像におけるフィルムの合計断面積に対するポリプロピレンの断面積の比率が1%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。更に、本実施形態に係るフィルムでは、ポリエチレンの含有量が99質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係るフィルムでは、ポリプロピレンの含有量が1質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態に係るフィルムは、分散相としてポリプロピレン以外を主成分とする扁平相を含んでいてもよい。更に、本実施形態に係るフィルムは、分散相として扁平相及び球状相以外の相を含んでいてもよい。これにより、本実施形態に係るフィルムでは、扁平相及び球状相以外の分散相による品質の向上を図ることができる。なお、本実施形態において「主成分」とは、含有量が50%以上の成分を指すものとする。
【0025】
例えば、本実施形態に係るフィルムは、スチレン系エラストマー、エチレン・α-オレフィン共重合体(エチレンがコモノマーとして存在しているものを含む)、極性基が導入されたオレフィン系樹脂、及び極性基が導入されたスチレン系樹脂の少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの成分は、分散の補助や樹脂の性能を高める効果を持つため、フィルムの引張伸度、引張強度、及び引裂強度の向上に寄与する。本実施形態に係るフィルムでは、この相を構成する樹脂の含有量が0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。なお、極性基の導入方法としては、電子線を用いてモノマーを接ぎ木状に結合させるグラフト重合や、ポリマー合成中に極性基を含むモノマーを用いることや、プラズマ処理やコロナ処理などが挙げられる。
【0026】
また、本実施形態に係るフィルムは、分散相として、無機材料で構成された無機材料相を含むことが好ましい。無機材料相を構成する無機材料としては、例えば、炭酸カルシウムや酸化チタンなどが挙げられ、炭酸カルシウムや酸化チタンは引裂強度の向上や紫外線の透過の抑制に寄与する。本実施形態に係るフィルムでは成形安定性の観点から、無機材料の含有量が0質量%以上60質量%以下であることが好ましい。なお、本実施形態に係るフィルムでは、無機材料相が含まれる構成においてマトリックス相及び分散相を構成する樹脂成分の含有量(質量百分率、TEM画像における断面積の比率)を求める場合には、無機材料相の存在(質量、TEM画像における断面積)を除外して計算するものとする。
【0027】
本実施形態に係るフィルムでは、製造コストの低減の観点から、分散相における扁平相以外の相を構成する材料をなるべく廃棄物にポリプロピレンとともに含まれる成分で賄うことが好ましい。しかしながら、本実施形態に係るフィルムでは、これらのいずれの材料もポリプロピレンとは別に添加してもよい。
【0028】
本実施形態に係るフィルムの用途は特に限定されない。一例として、本実施形態に係るフィルムは、各種製品のパッケージフィルムとして利用可能である。本実施形態に係るフィルムにおけるパッケージフィルムとしての利用に適する製品としては、例えば、生理用品、ベビー用おむつ、大人用おむつ、生活用品などが挙げられる。
【0029】
本実施形態に係るフィルムは、パッケージフィルムとして望ましい性能を有していることが好ましい。例えば、本実施形態に係るフィルムでは、パッケージフィルムとしての高い耐久性を得るために、引張伸度、引張強度、及び引裂強度が高いことが好ましい。具体的に、本実施形態に係るフィルムでは、引張伸度が700%以上であることが好ましく、900%以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係るフィルムでは、単位断面積あたりの引張強度が0.23N/(μm・cm)以上であることが好ましく、0.30N/(μm・cm)以上であることがより好ましい。更に、本実施形態に係るフィルムでは、単位厚みあたりの引裂強度が0.015N/μm以上であることが好ましく、0.045N/μm以上であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態では、フィルムの引張伸度及び引張強度を以下のように測定する。測定対象のフィルムを、引張試験の方向に合うように打ち抜いてダンベル状3号形のサンプルを作製する。サンプルのくびれ部の厚みをマイクロメータで測定した結果を厚みC(μm)とする。打ち抜いたサンプルを、チャック間距離を50mmにセットした引張試験機(商品名:AG-1S、島津製作所社製)に固定する。固定後、引張試験機が読み取る荷重をゼロとし、サンプルを変形速度300mm/分で破断するまで伸長させる。引張伸度及び引張強度は、得られたデータから伸長過程における伸長量A(mm)と荷重B(N)を読み取り、事前に測定した厚みC(μm)と併せて下記のように算出する。フィルムの引張伸度及び引張強度は、MD方向及びTD方向それぞれについて3つのサンプルの平均値として求める。
引張伸度(%)=100×A(mm)/20mm
引張強度(N/(μm・cm))=B(N)/0.5cm/C(μm)
【0031】
本実施形態では、フィルムの引裂強度を以下のように測定する。フィルムを、引裂試験の方向に合うように長さ63mm×幅76mmにカットしたサンプルをエルメンドルフ引裂試験機(アナログ型、東洋精機製作所社製)に固定する。その際、固定するフィルムの枚数は測定結果が測定レンジの20~80%に収まるよう適宜調整する。固定するフィルムの厚みは事前に一枚毎マイクロメータを用いて測定しておき、その平均値をE(μm)とする。振り子を持ち上げて止め,指針を開始位置に設定する。サンプルを注意深くつかみ具に取り付け、クランプをしっかりと締め付けた後に、付帯のナイフで20mm長さのスリットをいれる。引裂強度は、振り子を注意深く解放し,サンプルを引き裂くのに要した力の目盛Dを読み取った値を1枚当たりの引裂強度(N)に換算し、厚み計で測定した厚みE(μm)で割ることで厚み当たりの引裂強度(N/μm)を算出する。フィルムの引裂強度は、MD方向及びTD方向それぞれについて3つのサンプルの平均値として求める。
【0032】
また、本実施形態に係るフィルムは、パッケージフィルムとして良好な手触りを有することが好ましい。滑らかな手触りを得るためには、KES表面試験によるMMD(摩擦係数の変動)及びSMD(表面粗さ)が小さいことが好ましい。換言すると、KES表面試験によるMMD及びSMDが小さいフィルムほど手触りが滑らかになる。本実施形態に係るフィルムでは、扁平相の平均アスペクト比が高いほど、小さいMMD及びSMDが得られる傾向が見られる。具体的に、本実施形態に係るフィルムでは、KES表面試験によるMMDが0.05以下であることが好ましく、0.025以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係るフィルムでは、KES表面試験によるSMDが3.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態に係るKES表面試験の方法は以下のとおりである。測定対象のフィルムを200mm×200mmに切り抜いたサンプルを、自動化表面試験機(商品名:KES-FB4-A-SE、カトーテック社製)に測定面がインフレーション成形時のバルーンにおける外側、測定方向がMD方向になるようにセットし、バー錘(147.8g)を用いて、張力をかける。KES-FB SYSTEMデータ計測プログラム(KES-FB System Ver.8.03WJ/For WinXP,7)を用い、SENS STD、0.1cm/secのスピードで装置を稼働させて摩擦と粗さを測定し、MMD及びSMDの値を読み取る。フィルムのMMD及びSMDは、3つのサンプルの平均値として求める。摩擦の測定条件としては、静荷重を50gfとし、測定子を専用の10mm角ピアノワイヤセンサーとする。粗さの測定条件としては、静荷重を10gfとし、測定子を専用の0.5mm粗さセンサーとする。
【0034】
更に、本実施形態に係るフィルムでは、微細な凹凸が形成されるため、ポリエチレンのみで構成されたフィルムに比べてマット感のある独特な視覚的風合いが得られやすい。この点、本実施形態に係るフィルムでは、パッケージフィルムとしてこのような視覚的風合いをより有効に得るために、表面の光沢度が80以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。光沢度としては、測定対象のフィルムに、光沢度計(商品名:HP-300、タイムグループ社製)をセット、測定された値を使用する。ただし、測定された値が100以上の場合の光沢度は100とする。フィルムの光沢度は、5点について測定された値の平均値として求める。また、本実施形態に係るフィルムでは、微細な凹凸によって外光を散乱させることで紫外線の透過が抑制されるため、例えばパッケージフィルムとして用いる場合に、日光による紫外線によって内容物の劣化が生じにくく、内容物の高い保護性能が得られやすくなる。
【0035】
加えて、本実施形態に係るフィルムは、パッケージフィルムとして表面に商品名や商品情報などを表す文字や図柄等が印刷されていてもよい。この点、本実施形態に係るフィルムは、表面における高い印刷性を得るために、コロナ処理などの表面処理を施すことで、表面の濡れ性が40mN/m以上とすることが好ましい。濡れ性は、表面エネルギーとして評価する。具体的に、フィルムの濡れ性を評価するために、フィルムに40mN/mのダインペン・インクを数センチ塗布し、その状態を2~4秒保たれるかを観察する。具体的に、フィルムの濡れ性は、上記の観察を3回実施し、3回とも水滴にならずに塗布状態が保たれていた場合に、40mN/m以上であるものと判断する。
【0036】
[フィルムの製造方法]
以下、
図2に沿って、本実施形態に係るフィルムの製造方法の一例について説明するが、本実施形態に係るフィルムの製造方法は
図2に示す例に限定されない。
図2に示すフィルムの製造方法は、原料準備工程(ステップS01)、混練工程(ステップS02)、及びフィルム成形工程(ステップS03)を含む。
【0037】
(ステップS01:原料準備)
ステップS01では、本実施形態に係るフィルムの原料を準備する。具体的に、ステップS01では、第1原料及び第2原料を準備する。第1原料は、マトリックス相を構成するポリエチレンのバージン材である。第2原料は、分散相の扁平相を構成するポリプロピレンを含むリサイクル材である。
【0038】
第1原料は、例えば、市販品のポリエチレンのペレットとして準備することができる。第2原料は、例えば、ポリプロピレンを含む廃棄物をリペレタイズして得られたペレットとして準備することができる。第2原料のリペレタイズ条件は、廃棄物を構成する成分の物性などに応じて適宜決定可能である。
【0039】
第2原料には、例えば、球状相を構成する成分として、第1原料よりも融点が100℃以上高い熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。このような成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、及びポリウレタンの少なくとも一方が含まれていてもよい。
【0040】
また、第2原料には、スチレン系エラストマー、エチレン・α-オレフィン共重合体、極性基が導入されたオレフィン系樹脂、及び極性基が導入されたスチレン系樹脂の少なくとも1つが含まれていてもよい。更に、第2原料には、無機材料相を構成する無機材料が含まれていてもよい。
【0041】
ポリエチレンで構成される第1原料の粘度ηAは、第2原料に含まれるポリプロピレンの粘度ηBに応じて調整される。より詳細に、第1原料の粘度ηAは、ステップS03におけるフィルム成形の際の成形温度を基準とし、成形温度における粘度ηAに対する粘度ηBの比率ηB/ηAが0.015以上1未満となるように調整する。
【0042】
第1原料の粘度ηA、及び第2原料に含まれるポリプロピレンの粘度ηBは、以下のように測定する。予め測定温度まで昇温されたキャピログラフ(商品名:CAPIROGRAPH 1B、東洋精機製作所社製)のバレルに樹脂を充填し、プログラム「capirograph of windows(登録商標)」の「キャピラリーフローテスト」モードにてピストンにて10mm/minの速度で押し出した際の荷重から粘度値(Pa・s)を読み取る。ノズルとしてはφ1mm×長さ10mmのものを使用し、バレルとしては直径9.55mmのものを使用する。
【0043】
(ステップS02:混練)
ステップS02では、ステップS01で準備した第1原料及び第2原料を混練することで混練物を作製する。
図3は、ステップS02で得られる混練物の断面を透過型電子顕微鏡で撮像したTEM画像である。
図3に示す組織では、濃色のマトリックス相に淡色の分散相が分散している。
【0044】
マトリックス相は、ポリエチレンを主成分とし、第1原料を構成するポリエチレンの他、第2原料の一成分を構成するポリエチレンが含まれ得る。
図3に示す組織では、ポリプロピレンを主成分とする分散相が比較的大きい円形の領域として表れ、その他の分散相が微細なドット状の領域として表れている。
【0045】
ステップS02で得られる混練物の段階では、ポリプロピレンを主成分とする分散相が、平均アスペクト比が3以下の球状となっている。本実施形態では、ステップS03において混練物をフィルム成形する過程において、ポリプロピレンを主成分とする分散相を平均アスペクト比が5以上の扁平な形状にすることで扁平相とする。
【0046】
本実施形態に係るフィルムでは、上記のとおり、ポリプロピレンを主成分とする分散相を扁平相とすることで、ポリプロピレンが面内方向において広く分散する。したがって、本実施形態では、ステップS02に係る混練においてポリプロピレンを主成分とする分散相の分散性を高度に微細なレベルで高める必要性が低い。
【0047】
このため、ステップS02では、二軸押出機などを利用した高度な混練技術を用いずに単軸押出機を用いることが工程削減の観点から好ましい。これにより、本実施形態に係るフィルムでは、製造コストを低減することができる。しかしながら、必要に応じ、二軸押出機を用いてもよく、また単軸押出機と二軸押出機とを併用してもよい。
【0048】
また、ステップS02では、分散相を細かくするために、ポリエチレンとポリプロピレンとの粘度の比率が小さく、マトリックス相と分散相との間の界面張力が小さいことが有利である。この観点から、ステップS02における混練の温度は200℃以上300℃以下であることが好ましい。ステップS02では、押出機における混練物の生成過程のうち原料の供給口を除く原料が通過する全ての領域の温度が上記範囲内であることが好ましいが、一部の領域で温度が上記の範囲外となっていてもよい。
【0049】
(ステップS03:フィルム成形)
ステップS03では、ステップS02で作製した混練物を薄く延伸させることでフィルム状に成形する。第1原料の粘度ηAが、成形温度における粘度ηAに対する粘度ηBの比率ηB/ηAが0.015以上1未満となるように調整されていることで、混練物を延伸させる過程でポリプロピレンを主成分とする分散相が扁平相となる。
【0050】
つまり、本実施形態では成形温度における比率ηB/ηAを上記の範囲内とすることで、マトリックス相がポリプロピレンの影響を受けずに延伸し、これと同時にポリプロピレンを主成分とする分散相がマトリックス相の変形に追従して変形させられる。これにより、マトリックス相とともに薄く延伸させられたポリプロピレンを主成分とする分散相が扁平相となる。
【0051】
本実施形態に係るフィルムの製造方法では、ステップS03における混練物の成形温度を比較的高くすることで、成形温度における粘度ηAに対する粘度ηBの比率ηB/ηAが1未満に留まりやすくなることが見出された。また、変形した扁平相が界面張力によって球状に戻ろうとする力を抑えるためにも成形温度が高いことが有利である。しかしながら、成形温度を上昇させすぎると成形性の悪化や樹脂の劣化などの課題が発生してしまう。これらの観点から、ステップS03における混練物の成形温度は、200℃以上300℃以下であることが好ましく、215℃以上280℃以下であることがより好ましい。また、原料にポリエチレンテレフタラートが含まれる場合には、成形温度をポリエチレンテレフタラートの融点以上とし、ポリエチレンテレフタラートを一度溶融させることが好ましい。これにより、吸収性物品には繊維状のポリエチレンテレフタラートが含まれている場合が多いが、このように原料に球状でない形態で含まれるポリエチレンテレフタラートも球状相とすることができる。
【0052】
図4は、ステップS03で得られるフィルムのMD断面を透過型電子顕微鏡で撮像したTEM画像である。
図5は、ステップS03で得られるフィルムのTD断面を透過型電子顕微鏡で撮像したTEM画像である。マトリックス相は、
図3に示す混練物のマトリックス相と同様である。
図4,5では、紙面左右方向及び奥行方向がフィルムの面内方向に対応し、紙面上下方向がフィルムの厚み方向に対応する。
図4、5に示す組織では、
図3に示す円形のポリプロピレンを主成分とする分散相が薄く引き延ばされて扁平相となっていることがわかる。
【0053】
本実施形態に係る混練物のフィルム成形の手法としては、特定の手法に限定されないが、インフレーション成形法を用いることが好ましい。インフレーション成形法では、MD方向のみならずTD方向にも効率的に延伸させることができるため、MD方向のみならずTD方向においてもポリプロピレンの影響を抑制することができる。
【0054】
インフレーション成形法に用いるフィルム成形機は、例えば、混練に用いる押出機と一体に構成され、押出機から直接混練物の吐出を受けるように構成することができる。なお、インフレーション成形における成形温度とは、ダイスから混練物を吐出する時点における混練物の温度をいうものとする。また、インフレーション成形では、押出機から混練物の吐出を受ける時点から、その後の成形が完了するまでの全過程において混練物の温度が、200℃以上300℃以下であることが好ましく、215℃以上280℃以下であることがより好ましい。しかし、インフレーション成形では、押出機から混練物の吐出を受ける時点以外のいずれかの時点において混練物の温度が上記の範囲外となっていてもよい。
【0055】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0056】
例えば、本実施形態に係るフィルムの製造方法は、必要に応じて、上記の工程以外の工程を含んでいてもよい。例えば、フィルム成形工程の後に、フィルムの表面を改質するための表面処理を施してもよい。このような表面処理の一例としては、フィルムの表面の濡れ性を向上させるためのコロナ処理が挙げられる。また、フィルム成形工程の後に、スリットを形成したり、製袋加工を行ったりしてもよい。
【0057】
また、本実施形態に係るフィルムの製造方法では、第2原料として、リサイクル材に他の材料を加えて混練した混練物を用いてもよい。更に、本実施形態に係るフィルムの製造方法では、第2原料として、リサイクル材を用いなくてもよく、例えば、ポリプロピレンのバージン材や、これに他の材料を加えて混練した混練物を用いてもよい。加えて、本実施形態に係るフィルムの製造方法では、第1原料がバージン材ではなく、ポリエチレンを含む廃棄物のリサイクル材であってもよい。また更に、本実施形態に係るフィルムの製造方法では、混練工程において第1原料及び第2原料とは別に他の材料を加えて混練してもよい。
【0058】
更に、上述した実施形態に関し、本発明について更に以下の構成を開示する。
<1>
マトリックス相に分散相が分散されたフィルムであって、
ポリエチレンを含むマトリックス相と、ポリプロピレンを含む分散相と、を含み、
前記分散相は少なくともMD方向に配向する扁平相を含み、前記扁平相の平均アスペクト比が15以上である
フィルム。
<2>
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記分散相の合計断面積に対する前記扁平相の合計断面積の比率が60%以上である
<1>に記載のフィルム。
<3>
前記分散相は、樹脂で構成され、アスペクト比が3以下の球状相を更に含む
<1>又は<2>に記載のフィルム。
<4>
前記球状相は、ポリエチレンテレフタラート、及びポリウレタンの少なくとも一方を含む
<3>に記載のフィルム。
<5>
前記分散相は、無機材料相を更に含む
<1>から<4>のいずれか1つに記載のフィルム。
<6>
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリエチレンの合計断面積の比率が50%以上99%以下である
<1>から<5>のいずれか1つに記載のフィルム。
<7>
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリプロピレンの合計断面積の比率が1%以上50%以下である
<1>から<6>のいずれか1つに記載のフィルム。
<8>
引張伸度が700%以上である
<1>から<7>のいずれか1つに記載のフィルム。
<9>
引張強度が0.23N/(μm・cm)以上である
<1>から<8>のいずれか1つに記載のフィルム。
<10>
引裂強度が0.015N/μm以上である
<1>から<9>のいずれか1つに記載のフィルム。
<11>
KES表面試験によるMMDが0.05以下である
<1>から<10>のいずれか1つに記載のフィルム。
<12>
KES表面試験によるSMDが3.0以下である
<1>から<11>のいずれか1つに記載のフィルム。
<13>
表面の光沢度が80以下である
<1>から<12>のいずれか1つに記載のフィルム。
<14>
表面の濡れ性が40mN/m以上である
<1>から<13>のいずれか1つに記載のフィルム。
<15>
吸収性物品に由来する廃棄物を原料の一部とする
<1>から<14>のいずれか1つに記載のフィルム。
<16>
マトリックス相に分散相が分散されたフィルムの製造方法であって、
ポリエチレンを含み、前記マトリックス相を構成する第1原料と、前記分散相を構成する成分としてポリプロピレンを含む第2原料と、を混錬した混練物をフィルム成形し、
前記フィルム成形の際の成形温度における前記第1原料の粘度ηAに対する前記成形温度における前記第2原料に含まれるポリプロピレンの粘度ηBの比率ηB/ηAが0.015以上1未満である
フィルムの製造方法。
<17>
前記第2原料は、吸収性物品に由来する廃棄物を含む
<16>に記載のフィルムの製造方法。
<18>
単軸押出機を用いて前記第1原料と前記第2原料とを混練する
<16>又は<17>に記載のフィルムの製造方法。
<19>
インフレーション成形法によって前記混練物をフィルム成形する
<16>から<18>のいずれか1つに記載のフィルムの製造方法。
<20>
前記第2原料は、前記分散相を構成する成分として、前記第1原料よりも融点が100℃以上高い熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方を更に含む
<16>から<19>のいずれか1つに記載のフィルムの製造方法。
<21>
フィルム成形後のフィルムの表面にコロナ処理を施す
<16>から<20>のいずれか1つに記載のフィルムの製造方法。
<22>
前記成形温度が200℃以上300℃以下である
<16>から<21>のいずれか1つに記載のフィルムの製造方法。
<23>
前記扁平相は、MD方向及びTD方向に配向している
<1>から<15>のいずれか1つに記載のフィルム。
<24>
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリエチレンの合計断面積の比率が60%以上である
<1>から<15>、及び<23>のいずれか1つに記載のフィルム。
<25>
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリプロピレンの合計断面積の比率が40%以下である
<1>から<15>、<23>、及び<24>のいずれか1つに記載のフィルム。
<26>
ポリエチレンの含有量が50質量%以上である
<1>から<15>、及び<23>から<25>のいずれか1つに記載のフィルム。
<27>
ポリプロピレンの含有量が50質量%以下である
<1>から<15>、及び<23>から<26>のいずれか1つに記載のフィルム。
<28>
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリエチレンの合計断面積の比率が99%以下である
<1>から<15>、及び<23>から<27>のいずれか1つに記載のフィルム。
<29>
前記フィルムを透過型電子顕微鏡で撮像した画像における前記フィルムの合計断面積に対するポリプロピレンの合計断面積の比率が1%以上である
<1>から<15>、及び<23>から<27>のいずれか1つに記載のフィルム。
<30>
ポリエチレンの含有量が99質量%以下である
<1>から<15>、及び<23>から<29>のいずれか1つに記載のフィルム。
<31>
ポリプロピレンの含有量が1質量%以上である
<1>から<15>、及び<23>から<30>のいずれか1つに記載のフィルム。
<32>
球状相を構成する樹脂の含有量が0.05質量%以上20質量%以下である
<1>から<15>、及び<23>から<31>のいずれか1つに記載のフィルム。
<33>
球状相の平均粒径が1nm以上2μm以下である
<1>から<15>、及び<23>から<32>のいずれか1つに記載のフィルム。
<34>
分散相の球状相として、スチレン系エラストマー、エチレン・α-オレフィン共重合体(エチレンがコモノマーとして存在しているものを含む)、極性基が導入されたオレフィン系樹脂、及び極性基が導入されたスチレン系樹脂の少なくとも1つを含む相を含む
<1>から<15>、及び<23>から<33>のいずれか1つに記載のフィルム。
<35>
スチレン系エラストマー、エチレン・α-オレフィン共重合体(エチレンがコモノマーとして存在しているものを含む)、極性基が導入されたオレフィン系樹脂、及び極性基が導入されたスチレン系樹脂の少なくとも1つを含む前記相を構成する樹脂の含有量が0.5質量%以上15質量%以下である
<34>に記載のフィルム。
<36>
吸収性物品に由来する廃棄物を原料の一部とし、
吸収性物品に由来する廃棄物を、前記分散相における少なくとも前記扁平相の原料とする
<1>から<15>、及び<23>から<35>のいずれか1つに記載のフィルム。
<37>
前記フィルムは、パッケージフィルムとして利用される
<1>から<15>、及び<23>から<36>のいずれか1つに記載のフィルム。
<38>
前記フィルムの表面の光沢度が80以下である
<1>から<15>、及び<23>から<37>のいずれか1つに記載のフィルム。
【0059】
[実施例及び比較例]
以下、上記実施形態の実施例及び比較例について説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されない。
【0060】
(原料)
第1原料を構成するポリエチレン(PE)のバージン材としては、メルトフローレート(MFR)が相互に異なる以下の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製品を用いた。なお、下記の表1~5では、ポリエチレン(PE)の各製品を区別するために単位無しのMFRを示している。また、ポリエチレンのMFRとしては、各製品のメーカーカタログ値(190℃、荷重2.16kg)を示している。
・エボリューSP2510(プライムポリマー社製、MFR:1.5g/10min)
・エボリューSP2020(プライムポリマー社製、MFR:2.3g/10min)
・エボリューSP2540(プライムポリマー社製、MFR:3.8g/10min)
・UJ317(日本ポリエチレン社製、MFR:6.0g/10min)
・ウルトゼックス2520F(プライムポリマー社製、MFR:2.2g/10min)
【0061】
第2原料を構成するポリプロピレン(PP)を主成分とするリサイクル材としてリサイクル材1,2を用いた。
リサイクル材1は、花王株式会社製のベビー用おむつであるメリーズ(登録商標)パンツ さらさらエアスルーLサイズ(2022年製)の製造工程において股繰り部分をカットした際に発生する端材を単軸押出機にてペレット化したものである。リサイクル材1の平均組成としては、ポリプロピレン(PP)の含有量が84質量%であり、スチレン系エラストマーの含有量が4質量%であり、ポリウレタン(PU)の含有量が2質量%である。
リサイクル材2は、花王株式会社製の生理用ナプキンであるロリエ(登録商標)しあわせ素肌 特に多い昼用25cm 羽つき(2022年製)の製造工程においてラウンド部分をカットした際に発生する端材を単軸押出機にてペレット化したものである。リサイクル材2の平均組成としては、ポリエチレン(PE)の含有量が30質量%であり、ポリプロピレン(PP)の含有量が35質量%であり、ポリエチレンテレフタラート(PET)の含有量が2質量%であり、炭酸カルシウムの含有量が28質量%である。リサイクル材の原料構成は、発生元である製品構成によって変わりうるが、第1原料へのリサイクル材の配合率は、フィルム中のPPが20~50質量%、フィルム中のPETが0~5質量%、フィルム中のPUが0~5質量%、前記樹脂の合計が50質量%以下の範囲に管理することが、フィルムの品質、バージン材削減の観点から好ましい。
【0062】
第2原料を構成するポリプロピレン(PP)のバージン材としては、メルトフローレート(MFR)が相互に異なる以下の製品を用いた。なお、下記の表4,5では、ポリプロピレンの各製品を区別するために単位無しのMFRを示している。また、ポリプロピレンのMFRとしては、各製品のメーカーカタログ値(230℃、荷重2.16kg)を示している。
・F300SP(プライムポリマー社製、MFR:2g/10min)
・PM600A(サンアロマー社製、MFR:7.5g/10min)
・3155E3(エクソンモービル社製、MFR:36g/10min)
・PLB00A(サンアロマー社製、MFR:70g/10min)
・MF650Y(LyondellBasel社製、MFR:1800g/10min)
【0063】
ポリエチレンテレフタラート(PET)としては、TRN-RTJ(帝人社製)を用いた。
分散補助剤としては、分散補助剤1,2を用いた。分散補助剤1としては、エチレン―プロピレン共重合体であるVistamaxx Performance Polymer 7050BF(エクソンモービル社製)を用いた。分散補助剤2としては、無水マレイン酸変性水添スチレン系熱可塑性エラストマーであるタフテックM C5025(旭化成社製)を用いた。
無機材料相を構成する無機材料としては、炭酸カルシウム及び酸化チタンを用いた。具体的に、炭酸カルシウムとしては、花王株式会社製のベビー用おむつであるメリーズ用透湿フィルムの生産ロスの再ペレット品(ウルトゼックス2520F(プライムポリマー社製、MFR:2.2g/10min)と炭酸カルシウムの配合品)に含まれる炭酸カルシウムを用いた。酸化チタンとしては、酸化チタンマスターであるTET1TA538WHT-FD(トーヨーカラー社製)を用いた
なお、下記の表1~5では、各原料の含有量を質量比率で示している。
【0064】
(分析方法)
上記の原料で作製したフィルムのうちの一部について、分散相の分析のために、TEM画像を用いた評価を行った。具体的に、各フィルムについて、フィルム全体に占める分散相の合計断面積比(分散相/フィルム全体)を求めた。また、各フィルムについて、扁平相の平均アスペクト比、及び分散相全体に占める扁平相の合計断面積比(扁平相/分散相)を求めた。更に、各フィルムついて、分散相全体に占める球状相の合計断面積比(球状相/分散相)を求めた。
【0065】
(評価方法)
引張伸度及び引張強度の測定方法、引裂強度の測定方法、KES表面試験の方法、及び光沢度の測定方法は、上記実施形態で説明したとおりである。
【0066】
(参考例及び比較例)
参考例及び比較例として、表1に示す製造条件及び原料を用いてフィルムを作製した。参考例及び比較例ではいずれも、混練に単軸押出機を用い、成形にインフレーション成形法を用いた。
参考例に係るフィルムは、ポリエチレン(PE)のみで構成される点で上記実施形態の構成とは異なり、一般的なフィルムとして良好な品質が得られる構成を有する。つまり、比較例1に係るフィルムは、各実施例に係るフィルムを評価する上での良好な品質の基準となる。
比較例に係るフィルムは、ポリエチレン(PE)の粘度ηAに対するポリプロピレン(PP)の粘度ηBの比率ηB/ηAが1以上である点で上記実施形態の構成と異なる。
図6は、比較例に係るフィルムのMD断面を撮像したTEM画像を示している。比較例に係るフィルムでは、
図6に示すTEM画像から求めた扁平相の平均アスペクト比が12.3であり、上記実施形態よりも小さかった。
【0067】
表1に参考例及び比較例に係るフィルムの評価結果を示す。比較例に係るフィルムでは、参考例に係るフィルムよりも引張伸度、引張強度、及び引裂強度のいずれも低くなった。特に、比較例に係るフィルムは、引張伸度がかなり低いため、パッケージフィルムとして利用することは困難である。また、比較例に係るフィルムでは、参考例に係るフィルムよりもKES表面試験によるMMD及びSMDのいずれも高く、ざらざらとした手触りとなっていることがわかった。これに伴い、比較例に係るフィルムでは、参考例に係るフィルムよりも大幅に光沢度が低くなっていると考えられる。
【0068】
【0069】
(実施例1~7)
実施例1~7として、表2に示す製造条件及び原料を用いてフィルムを作製した。実施例1~7ではいずれも、混練に単軸押出機を用い、成形にインフレーション成形法を用いた。実施例1~7ではいずれも、第2原料としてリサイクル材1を用いた。実施例1~7に係るフィルムではいずれも、ポリエチレン(PE)の粘度ηAに対するポリプロピレン(PP)の粘度ηBの比率ηB/ηAが上記実施形態の範囲内となった。
【0070】
図7は、実施例4に係るフィルムのMD断面を撮像したTEM画像を示している。実施例4に係るフィルムでは、
図7に示すTEM画像から求めた扁平相の平均アスペクト比が29.5であり、ポリウレタン(PU)で形成された球状相の平均アスペクト比が1であった。また、実施例1に係るフィルムでは、同様にTEM画像から求めた扁平相の平均アスペクト比が66.5であり、ポリウレタン(PU)で形成された球状相の平均アスペクト比が1であった。また、実施例1,4に係るフィルムではいずれも、分散相全体に占める扁平相の合計断面積比が80%以上であった。
【0071】
表2に実施例1~7に係るフィルムの評価結果を示す。実施例1~7に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりも大幅に高い引張伸度が得られた。また、実施例1~7の評価結果から、ポリエチレン(PE)の粘度ηAに対するポリプロピレン(PP)の粘度ηBの比率ηB/ηAが小さいフィルムほど引張伸度が高くなる傾向が見られた。更に、実施例1~7に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりもKES表面試験によるMMD及びSMDのいずれも低く、良好な手触りが得られていることがわかった。加えて、実施例1~7に係るフィルムではいずれも、参考例に係るフィルムよりも光沢度が低く、マット感のある視覚的風合いが得られていることがわかった。
【0072】
【0073】
(実施例8~10)
実施例8~10として、表3に示す製造条件及び原料を用いてフィルムを作製した。実施例8~10ではいずれも、混練に単軸押出機を用い、成形にインフレーション成形法を用いた。実施例8~10ではいずれも、第2原料としてリサイクル材1を用いた。実施例8,9では更に、無機材料相を構成する無機材料として炭酸カルシウムを用いた。実施例10では更に、無機材料相を構成する無機材料として酸化チタンを用いた。実施例8~10に係るフィルムではいずれも、ポリエチレン(PE)の粘度ηAに対するポリプロピレン(PP)の粘度ηBの比率ηB/ηAが上記実施形態の範囲内となった。
【0074】
表3に実施例8~10に係るフィルムの評価結果を示す。実施例8~10に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりも大幅に高い引張伸度が得られた。また、実施例8~10に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりもKES表面試験によるMMD及びSMDのいずれも低く、良好な手触りが得られていることがわかった。更に、実施例8~10に係るフィルムではいずれも、参考例に係るフィルムよりも光沢度が低く、マット感のある視覚的風合いが得られていることがわかった。
【0075】
【0076】
(実施例11~24)
実施例11~24として、表4,5に示す製造条件及び原料を用いてフィルムを作製した。実施例11~24ではいずれも、混練に単軸押出機を用い、成形にインフレーション成形法を用いた。実施例11~24ではいずれも、第2原料としてポリプロピレン(PP)のバージン材を用いた。実施例11~16では、混練温度及び成形温度を230℃とした。実施例17~21では、混練温度及び成形温度を200℃とした。実施例22~24では更に、球状相を構成する樹脂としてポリエチレンテレフタラート(PET)を用い、混練温度及び成形温度を270℃とした。実施例11~24に係るフィルムではいずれも、ポリエチレン(PE)の粘度ηAに対するポリプロピレン(PP)の粘度ηBの比率ηB/ηAが上記実施形態の範囲内となった。なお、実施例22~24ではいずれも、成形温度におけるポリエチレン(PE)の粘度ηAに対するポリエチレンテレフタラート(PET)の粘度の比率が0.11であった。
【0077】
図8は、実施例24に係るフィルムのMD断面を撮像したTEM画像を示している。実施例24に係るフィルムでは、
図8に示すTEM画像から求めた扁平相の平均アスペクト比が24.5であり、ポリエチレンテレフタラート(PET)で形成された球状相の平均アスペクト比が2であった。また、実施例17に係るフィルムでは、同様にTEM画像から求めた扁平相の平均アスペクト比が16.5であった。また、実施例21に係るフィルムでは、同様にTEM画像から求めた扁平相の平均アスペクト比が52.7であった。また、実施例17,21,24に係るフィルムではいずれも、分散相全体に占める扁平相の合計断面積比が60%以上であった。
【0078】
表4,5に実施例11~24係るフィルムの評価結果を示す。実施例11~24に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりも大幅に高い引張伸度が得られた。また、実施例13,19と実施例22~24との評価結果を比較すると、ポリエチレンテレフタラート(PET)を用いることによって引裂強度が大幅に向上することがわかった。更に、実施例11~24に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりもKES表面試験によるMMD及びSMDのいずれも低く、良好な手触りが得られていることがわかった。加えて、実施例11~24に係るフィルムではいずれも、参考例に係るフィルムよりも光沢度が低く、マット感のある視覚的風合いが得られていることがわかった。
【0079】
【0080】
【0081】
(実施例25~27)
実施例25~27として、表6に示す製造条件及び原料を用いてフィルムを作製した。実施例25では、混練に単軸押出機を用い、成形にインフレーション成形法を用いた。また、実施例25では、第2原料としてリサイクル材2を用いた。実施例26では、混練に単軸押出機及び二軸押出機を併用し、成形にインフレーション成形法を用いた。より詳細に、実施例26では、単軸押出機による混練の前に二軸押出機による混練を行った。また、実施例26では、第2原料としてリサイクル材1を用い、無機材料相を構成する無機材料として酸化チタンを用いた。実施例27では、混練に単軸押出機を用い、成形にTダイ成形法を用いた。また、実施例27では、第2原料としてリサイクル材1を用いた。実施例25~27に係るフィルムではいずれも、ポリエチレン(PE)の粘度ηAに対するポリプロピレン(PP)の粘度ηBの比率ηB/ηAが上記実施形態の範囲内となった。
【0082】
実施例26に係るフィルムでは、上記と同様にTEM画像から求めた扁平相の平均アスペクト比が30.0であり、ポリウレタン(PU)で形成された球状相の平均アスペクト比が1であった。また、実施例26に係るフィルムでは、分散相全体に占める扁平相の合計断面積比が80%以上であった。
【0083】
表6に実施例25~27に係るフィルムの評価結果を示す。実施例25~27に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりも大幅に高い引張伸度が得られた。また、実施例25~27に係るフィルムではいずれも、比較例に係るフィルムよりもKES表面試験によるMMD及びSMDのいずれも低く、良好な手触りが得られていることがわかった。更に、実施例25~27に係るフィルムではいずれも、参考例に係るフィルムよりも光沢度が低く、マット感のある視覚的風合いが得られていることがわかった。
【0084】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、ポリエチレンにポリプロピレンが分散したフィルムにおいてポリプロピレンによる品質の低下を抑制することができる。
【要約】
本発明の一形態では、ポリエチレンにポリプロピレンが分散したフィルムにおいてポリプロピレンによる品質の低下を抑制することができる。本発明の一形態に係るフィルムでは、マトリックス相に分散相が分散されている。上記フィルムは、ポリエチレンを含むマトリックス相と、ポリプロピレンを含む分散相と、を含む。上記分散相は少なくともMD方向に配向する扁平相を含み、上記扁平相の平均アスペクト比が15以上である。