(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】肌評価装置、方法、プログラム、およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20250115BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/00 101A
A61B5/107 800
(21)【出願番号】P 2020209359
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 久美子
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189877(JP,A)
【文献】特開2020-073933(JP,A)
【文献】特開2015-065982(JP,A)
【文献】特開2018-073122(JP,A)
【文献】特開2015-223404(JP,A)
【文献】特表2005-534366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/01
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が照射された肌の形状情報および色情報を取得する取得部と、
前記形状情報および色情報を用いて、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の表面で拡散反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、を算出する算出部と
を備え
、
前記肌からの光の全体は、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の光量と、前記肌の表面で拡散反射された光の光量と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の光量と、の総和である、肌評価装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の光量と、前記肌の表面で拡散反射された光の光量と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の光量と、を算出する、請求項1に記載の肌評価装置。
【請求項3】
前記形状情報は、前記肌の3次元形状を示す、請求項1または2に記載の肌評価装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記肌の表面で反射された光と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光と、に分離し、
前記肌の表面で鏡面反射された光と、前記肌の表面で拡散反射された光と、に分離し、
前記肌の表面で反射された光は、前記肌の表面で鏡面反射された光と前記肌の表面で拡散反射された光とからなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の肌評価装置。
【請求項5】
前記算出された比率に基づいて、前記肌を評価する評価部、をさらに備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の肌評価装置。
【請求項6】
前記評価部は、前記算出された比率と所定の比率との差に基づいて、前記肌を評価する、請求項5に記載の肌評価装置。
【請求項7】
前記評価部は、前記比率と肌の状態との対応関係に基づいて、前記肌を評価する、請求項5に記載の肌評価装置。
【請求項8】
光が照射された肌の形状情報および色情報を取得するステップと、
前記形状情報および色情報を用いて、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の表面で拡散反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、を算出するステップと
を含
み、
前記肌からの光の全体は、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の光量と、前記肌の表面で拡散反射された光の光量と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の光量と、の総和である、方法。
【請求項9】
コンピュータを
光が照射された肌の形状情報および色情報を取得する取得部、
前記形状情報および色情報を用いて、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の表面で拡散反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、を算出する算出部
として機能させ
、
前記肌からの光の全体は、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の光量と、前記肌の表面で拡散反射された光の光量と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の光量と、の総和である、プログラム。
【請求項10】
肌評価装置と、撮像機器と、光源と、を含む肌評価システムであって、
前記肌評価装置は、
前記撮像機器が撮影した画像から、前記光源からの光が照射された肌の形状情報および色情報を取得する取得部と、
前記形状情報および色情報を用いて、前記光源からの照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記光源からの照射により前記肌の表面で拡散反射された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記光源からの照射により前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の
光量の前記肌からの光の全体に対する比率と、を算出する算出部と
を備え
、
前記肌からの光の全体は、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の光量と、前記肌の表面で拡散反射された光の光量と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の光量と、の総和である、肌評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌評価装置、方法、プログラム、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体が有する光学的な特性(以下、光学特性ともいう)が光沢感や透明感などの質感を生み出すことが知られている。肌についても、「ツヤのある肌である」、「マットな肌である」、「透明感がある」、「くすみがある」といった質感に、肌の光学特性が関与していることが知られている。
【0003】
「ツヤのある肌である」、「マットな肌である」、「透明感がある」、「くすみがある」といった質感は、肌の美しさの知覚を左右する重要な因子である。そのため、肌の光学特性に基づいた肌の評価が行われている(特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4133248号公報
【文献】特許第5340907号公報
【文献】特開2003-190120号公報
【文献】国際公開第2016/0158061号
【文献】特許第6029379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法では、肌で生じる全ての光を総合的に評価することができなかった。
【0006】
そこで、本発明では、肌の光学特性を総合的に評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態である肌評価装置は、光が照射された肌の形状情報および色情報を取得する取得部と、前記形状情報および色情報を用いて、前記照射により前記肌の表面で鏡面反射された光の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の表面で拡散反射された光の前記肌からの光の全体に対する比率と、前記肌の内部での散乱の後に前記肌の外部に放出された光の前記肌からの光の全体に対する比率と、を算出する算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、肌の光学特性を総合的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る全体の構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る肌評価装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る肌評価処理のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る光量比率算出処理のフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る表面反射・表面下散乱の分離と鏡面反射・拡散反射の分離について説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る表面反射・表面下散乱の分離の手法について説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る肌評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
<用語の説明>
・本明細書において、「鏡面反射」とは、肌の表面において発生する光の反射のうち、入射角と反射角が等しいものである。
・本明細書において、「拡散反射」とは、肌の表面において発生する光の反射のうち、鏡面反射を除いたものである。
・本明細書において、「表面下散乱」とは、光が肌の表面を透過し、肌の内部で散乱した後に、肌の表面から外部に出ることをいう。
【0012】
<全体の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る全体の構成図である。肌評価システム1は、肌評価装置10と、撮像機器20と、光源30と、を含む。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
肌評価装置10は、肌の光学特性を評価するためのコンピュータである。肌評価装置10は、撮像機器20が撮影した画像を用いて(具体的には、肌の形状情報および肌の色情報を用いて)、光源30からの照射により肌の表面で鏡面反射された光(以下、鏡面反射光ともいう)の光量と、光源30からの照射により肌の表面で拡散反射された光(以下、表面での拡散反射光ともいう)の光量と、光源30からの照射により肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(以下、表面下散乱光ともいう)の光量と、を算出する。また、肌評価装置10は、肌からの光の全体量(つまり、鏡面反射光の光量と、表面での拡散反射光の光量と、表面下散乱光の光量と、の総和)に対する各光量の比率を算出する。さらに、肌評価装置10は、各々の光量、および、肌からの光の全体量(つまり、各々の光量の総和)に対する各光量の比率の少なくとも一方に基づいて、肌を評価することができる。例えば、肌評価装置10は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等である。
【0014】
このように、本発明では、単一の撮像機器20および単一の光源30を用いて撮影された画像から、肌の物理特性(肌の形状)と肌の光学特性(肌で生じる全ての光)とを評価する。
【0015】
撮像機器20は、肌を撮影するための機器である。具体的には、撮像機器20は、光学特性を評価される肌を撮影する。
【0016】
なお、肌評価装置10は、撮像機器20が撮影した画像から、肌の3次元形状を示す形状情報および色情報(具体的には、各点のX座標・Y座標・Z座標の値、および、各点のRGBの各値)、あるいは、肌の2次元形状を示す形状情報および色情報(具体的には、各点のX座標・Y座標の値、および、各点のRGBの各値)を取得することができる。
【0017】
光源30は、自ら光を発する人工光源である。
【0018】
なお、
図1では、肌評価装置10と撮像機器20と光源30とを別々の機器として説明したが、肌評価装置10と撮像機器20と光源30とのうちの少なくとも2つを1つの機器で実装してもよい。
【0019】
<機能ブロック>
図2は、本発明の一実施形態に係る肌評価装置10の機能ブロック図である。
図2に示されるように、肌評価装置10は、画像取得部101と、算出部102と、評価部103と、を備えることができる。また、肌評価装置10は、プログラムを実行することで、画像取得部101、算出部102、評価部103として機能することができる。
【0020】
画像取得部101は、光源30からの光が照射された肌の画像を、撮像機器20から取得する。画像取得部101は、撮像機器20から取得した画像から、肌の3次元形状を示す形状情報および色情報(具体的には、各点のX座標・Y座標・Z座標の値、および、各点のRGBの各値)、あるいは、肌の2次元形状を示す形状情報および色情報(具体的には、各点のX座標・Y座標の値、および、各点のRGBの各値)を取得する。
【0021】
算出部102は、肌の形状情報および肌の色情報を用いて、光源30からの照射により肌の表面で鏡面反射された光(鏡面反射光)の光量と、光源30からの照射により肌の表面で拡散反射された光(表面での拡散反射光)の光量と、光源30からの照射により肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(表面下散乱光)の光量と、を算出する。また、算出部102は、肌からの光の全体量(つまり、鏡面反射光の光量と、表面での拡散反射光の光量と、表面下散乱光の光量と、の総和)に対する各光量の比率を算出する。以下、<<表面反射と表面下散乱の分離>>と<<鏡面反射と拡散反射の分離>>に分けて説明する。
【0022】
<<表面反射と表面下散乱の分離>>
算出部102は、肌の表面で反射された光(以下、表面反射光ともいう)の光量と、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(表面下散乱光)の光量と、を算出する。また、算出部102は、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面反射光の光量の比率、および、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面下散乱光の光量の比率を算出する。
【0023】
例えば、算出部102は、プロジェクタにより照射・非照射のパターン光を投影された肌が撮影された画像において、照射領域における光量と非照射領域における光量との差分を算出して、肌の表面で反射された光(表面反射光)の成分と、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(表面下散乱光)の成分と、に分離する。算出部102は、分離に基づいて、各々の光量(つまり、表面反射光の光量および表面下散乱光の光量)、および、肌からの光の全体量に対する各光量の比率(つまり、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面反射光の光量の比率、および、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面下散乱光の光量の比率)を算出する。
【0024】
<<鏡面反射と拡散反射の分離>>
算出部102は、肌の表面で鏡面反射された光(鏡面反射光)の光量と、肌の表面で拡散反射された光(表面での拡散反射光)の光量と、を算出する。また、算出部102は、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量との総和に対する鏡面反射光の光量の比率、および、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量との総和に対する表面での拡散反射光の光量の比率を算出する。
【0025】
例えば、算出部102は、偏光フィルタを用いて撮影された無偏光画像と偏光フィルタを用いずに撮影された偏光画像との差分を算出して、肌からの光の全体量から肌の表面で鏡面反射された光(鏡面反射光)の成分を分離する(なお、肌からの光の全体量=鏡面反射光+それ以外の光(表面での拡散反射光+表面下散乱光)であるので、分離された後の残りの光には、表面での拡散反射光と表面下散乱光が含まれる)。算出部102は、分離された後の残りの光から表面下散乱光を差し引くことによって、表面での拡散反射光の光量を算出することができる。
【0026】
算出部102は、分離に基づいて、各々の光量(つまり、鏡面反射光の光量および表面での拡散反射光の光量)、および、肌からの光の全体量に対する各光量の比率(つまり、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する鏡面反射光の光量の比率、および、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面での拡散反射光の光量の比率)を算出する。なお、本明細書では、偏光フィルタを用いる手法を説明したが、本発明では、二色性反射モデルによる分離の手法、形状情報を利用した鏡面反射の分離の手法を適用することもできる。
【0027】
なお、<<表面反射と表面下散乱の分離>>の肌の表面で反射された光は、<<鏡面反射と拡散反射の分離>>の肌の表面で鏡面反射された光との肌の表面で拡散反射された光とからなる。
【0028】
評価部103は、算出部102が算出した各々の光量(つまり、鏡面反射光の光量、表面での拡散反射光の光量、表面下散乱光の光量)、および、肌からの光の全体量(つまり、各々の光量の総和)に対する各光量の比率の少なくとも一方に基づいて、肌を評価する。例えば、評価部103は、算出部102が算出した比率と所定の比率(例えば、肌が最も美しく見える比率)との差に基づいて、肌を評価することができる。例えば、評価部103は、比率(照射により肌の表面で鏡面反射された光と、肌の表面で拡散反射された光と、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光と、の光量の比率)と肌の状態との対応関係に基づいて、肌を評価することができる。
【0029】
例えば、評価部103は、肌の表面で鏡面反射された光の光量が多いと、ツヤのある肌であると評価することができる。また、例えば、評価部103は、肌の表面で拡散反射された光の光量が多いと、マットな肌であると評価することができる。また、例えば、評価部103は、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光の光量が多いと、透明感がある肌であると評価することができる。
【0030】
<<肌の3次元形状に基づく光量の補正>>
本発明の一実施形態では、肌評価装置10は、肌の3次元形状を示す形状情報に基づいて、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量と表面下散乱光の光量とのうちの少なくとも1つの光量を補正する(つまり、増減させる)ことができる。肌の鏡面反射は、肌の表面の凹凸などの形状の影響を受ける。つまり、頬がふっくらした形状とそうではない形状といった形状の違いが、鏡面反射(つまり、肌のツヤ)の評価に影響を与えている。鏡面反射に限らず、肌の形状によって光の当たり方は異なる。そのため、本発明の一実施形態では、肌の3次元形状を活用して、各箇所(例えば、顔の頬等の各箇所)に当たる光の量を補正することにより、肌の光学特性の評価の精度を向上させることができる。
【0031】
<方法>
以下、
図3を参照しながら肌評価処理について説明し、
図4を参照しながら光量比率算出処理について説明する。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係る肌評価処理のフローチャートである。
【0033】
ステップ1(S1)において、画像取得部101は、光源30からの光が照射された肌の画像を、撮像機器20から取得する。次に、画像取得部101は、撮像機器20から取得した画像から、肌の3次元形状を示す形状情報および色情報(具体的には、各点のX座標・Y座標・Z座標の値、および、各点のRGBの各値)、あるいは、肌の2次元形状を示す形状情報および色情報(具体的には、各点のX座標・Y座標の値、および、各点のRGBの各値)を取得する。
【0034】
ステップ2(S2)において、算出部102は、S1で取得された肌の形状情報および肌の色情報を用いて、光源30からの照射により肌の表面で鏡面反射された光(鏡面反射光)の光量と、光源30からの照射により肌の表面で拡散反射された光(表面での拡散反射光)の光量と、光源30からの照射により肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(表面下散乱光)の光量と、を算出する。次に、算出部102は、肌からの光の全体量(つまり、鏡面反射光の光量と、表面での拡散反射光の光量と、表面下散乱光の光量と、の総和)に対する各光量の比率を算出する。
【0035】
ステップ3(S3)において、評価部103は、S2で算出された各々の光量(つまり、鏡面反射光の光量、表面での拡散反射光の光量、表面下散乱光の光量)、および、肌からの光の全体量(つまり、各々の光量の総和)に対する各光量の比率の少なくとも一方に基づいて、肌を評価する。例えば、評価部103は、S2で算出された比率と所定の比率との差に基づいて、肌を評価することができる。例えば、評価部103は、比率(照射により肌の表面で鏡面反射された光と、肌の表面で拡散反射された光と、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光と、の光量の比率)と肌の状態との対応関係に基づいて、肌を評価することができる。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係る光量比率算出処理(
図3のS2)のフローチャートである。
【0037】
ステップ11(S11)において、算出部102は、表面反射と表面下散乱を分離する。具体的には、算出部102は、肌の表面で反射された光(表面反射光)の光量と、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(表面下散乱光)の光量と、を算出する。次に、算出部102は、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面反射光の光量の比率、および、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面下散乱光の光量の比率を算出する。
【0038】
例えば、算出部102は、プロジェクタにより照射・非照射のパターン光を投影された肌が撮影された画像において、照射領域における光量と非照射領域における光量との差分を算出する。次に、算出部102は、該差分に基づいて、肌の表面で反射された光(表面反射光)の成分と、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(表面下散乱光)の成分と、に分離する。次に、算出部102は、該分離に基づいて、各々の光量(つまり、表面反射光の光量および表面下散乱光の光量)、および、肌からの光の全体量に対する各光量の比率(つまり、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面反射光の光量の比率、および、表面反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面下散乱光の光量の比率)を算出する。
【0039】
ステップ12(S12)において、算出部102は、鏡面反射と拡散反射を分離する。具体的には、算出部102は、肌の表面で鏡面反射された光(鏡面反射光)の光量と、肌の表面で拡散反射された光(表面での拡散反射光)の光量と、を算出する。次に、算出部102は、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量との総和に対する鏡面反射光の光量の比率、および、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量との総和に対する表面での拡散反射光の光量の比率を算出する。
【0040】
例えば、算出部102は、偏光フィルタを用いて撮影された無偏光画像と偏光フィルタを用いずに撮影された偏光画像との差分を算出する。次に、算出部102は、該差分に基づいて、肌の表面で鏡面反射された光(鏡面反射光)の成分と、肌の表面で拡散反射された光(表面での拡散反射光)の成分と、に分離する。次に、算出部102は、該分離に基づいて、各々の光量(つまり、鏡面反射光の光量および表面での拡散反射光の光量)、および、肌からの光の全体量に対する各光量の比率(つまり、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する鏡面反射光の光量の比率、および、鏡面反射光の光量と表面での拡散反射光の光量と表面下散乱光の光量との総和に対する表面での拡散反射光の光量の比率)を算出する。
【0041】
なお、S11の肌の表面で反射された光は、S12の肌の表面で鏡面反射された光とS12の肌の表面で拡散反射された光とからなる。
【0042】
図5は、本発明の一実施形態に係る表面反射・表面下散乱の分離と鏡面反射・拡散反射の分離について説明するための図である。
【0043】
撮像機器20は、光源30からの光が照射されたユーザの顔の肌を撮影する。具体的には、撮像機器20は、表面反射と表面下散乱を分離するための画像、および、鏡面反射と拡散反射を分離するための画像を撮影する。このように、本発明では、表面反射と表面下散乱を分離するための画像、および、鏡面反射と拡散反射を分離するための画像は、単一の撮像機器20および単一の光源30を用いて撮影される。肌評価装置10は、画像から肌の形状(3次元形状または2次元形状)および色を示す情報を取得し、光源30からの照射により肌の表面で鏡面反射された光(鏡面反射光)の光量と、光源30からの照射により肌の表面で拡散反射された光(表面での拡散反射光)の光量と、光源30からの照射により肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光(表面下散乱光)の光量と、を算出する。そして、肌評価装置10は、肌からの光の全体量(つまり、鏡面反射光の光量と、表面での拡散反射光の光量と、表面下散乱光の光量と、の総和)に対する各光量の比率を算出する。
【0044】
図6は、本発明の一実施形態に係る表面反射・表面下散乱の分離の手法について説明するための図である。
【0045】
ステップ101(S101)において、プロジェクタ(光源30)は、ユーザの顔に照射・非照射のパターン光を投影する。また、撮像機器20は、照射・非照射のパターン光が投影されているユーザの顔を撮影する。
図6では、黒い部分(つまり、投影されていない部分)が非照射領域であり、その他の部分(つまり、投影されている部分)が照射領域である。
【0046】
ステップ102(S102)において、プロジェクタ(光源30)からの光が、肌の表面で反射する、あるいは、肌の表面を透過して肌の内部で散乱した後に肌の表面から外部に出る。
図6の矢印1は、プロジェクタ(光源30)が照射する光を示す。
図6の矢印2は、照射領域において鏡面反射された光を示す。
図6の矢印3は、照射領域において拡散反射された光を示す。
図6の矢印4は、照射領域および非照射領域において、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光を示す。
図6の矢印5は、肌の内部において散乱している光を示す。
【0047】
ステップ103(S103)において、プロジェクタ(光源30)は、ユーザの顔に投影する照射・非照射のパターン光を移動させて、S101において照射領域であった領域を非照射領域(つまり、非照射領域であった領域を照射領域)にする。また、撮像機器20は、移動された照射・非照射のパターン光が投影されているユーザの顔を撮影する。
【0048】
S101およびS103により、顔全体の照射領域における光の成分および非照射領域における光の成分が得られる。肌評価装置10の算出部102は、S101およびS103の照射領域(つまり、肌の表面で反射された光と、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光と、の両方が存在する領域)における光の成分から、S101およびS103の非照射領域(つまり、肌の内部での散乱の後に肌の外部に放出された光のみが存在する領域)における光の成分を減算することによって、肌の表面で反射された光の成分を得ることができる。
【0049】
<効果>
このように、本発明では、肌の光学特性を総合的に評価することができる。具体的には、本発明では、単一の撮像機器20および単一の光源30を用いて撮影された画像から、肌の物理特性(肌の形状)と肌の光学特性(肌で生じる全ての光)とを評価する。そのため、各光(つまり、鏡面反射、拡散反射、表面下散乱)の光量の比率を算出することでき、光のバランスに基づいて、肌の質感を総合的かつ定量的に評価することができる。
【0050】
<ハードウェア構成>
図7は、本発明の一実施形態に係る肌評価装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0051】
肌評価装置10は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003を有する。CPU1001、ROM1002、RAM1003は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0052】
また、肌評価装置10は、補助記憶装置1004、表示装置1005、操作装置1006、I/F(Interface)装置1007、ドライブ装置1008を有することができる。なお、肌評価装置10の各ハードウェアは、バスBを介して相互に接続されている。
【0053】
CPU1001は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。
【0054】
ROM1002は、不揮発性メモリである。ROM1002は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムをCPU1001が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM1002はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0055】
RAM1003は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM1003は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムがCPU1001によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0056】
補助記憶装置1004は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0057】
表示装置1005は、肌評価装置10の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0058】
操作装置1006は、肌評価装置10の管理者が肌評価装置10に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0059】
I/F装置1007は、ネットワークに接続し、肌評価装置10と通信を行うための通信デバイスである。
【0060】
ドライブ装置1008は記憶媒体1009をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体1009には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体1009には、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0061】
なお、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体1009がドライブ装置1008にセットされ、該記憶媒体1009に記録された各種プログラムがドライブ装置1008により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、I/F装置1007を介して、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 肌評価システム
10 肌評価装置
20 撮像機器
30 光源
101 画像取得部
102 算出部
103 評価部
1001 CPU
1002 ROM
1003 RAM
1004 補助記憶装置
1005 表示装置
1006 操作装置
1007 I/F装置
1008 ドライブ装置
1009 記憶媒体