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特許7618968眼科用組成物、ならびに光安定化方法及び変色抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】眼科用組成物、ならびに光安定化方法及び変色抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20250115BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250115BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250115BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K31/355
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/46
A61P27/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020098183
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021187821
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椛嶋 恭平
(72)【発明者】
【氏名】田中 花奈
(72)【発明者】
【氏名】大石 真嘉
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭祐
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-312628(JP,A)
【文献】特開昭63-033327(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェニレフリン又はその塩:0.05~0.1w/v%
(B)ビタミンE:0.020w/v%以上、及び
(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸1水和物、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を含有し、
多価アルコールが、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールから選ばれる1種以上であり、
テルペノイドが、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロールから選ばれる1種以上であり、
抗ヒスタミン成分が、クロルフェニラミン及びその塩、ジフェンヒドラミン及びその塩から選ばれる1種以上であり、
ムコ多糖が、コンドロイチン硫酸エステル及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上であり、
(C)成分の配合量が
ホウ酸及びその塩の場合は、眼科用組成物中0.1~2w/v%
トロメタモールの場合は、眼科組成物中0.01~1w/v%、
エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物の場合は、眼科組成物中0.01~0.1w/v%、
リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムの場合は、眼科用組成物中0.2~0.5w/v%、
クエン酸ナトリウム、クエン酸1水和物の場合は、眼科用組成物中0.1~0.2w/v%、
ホウ砂の場合は、眼科用組成物中0.01~0.6w/v%、
塩化ナトリウム、塩化カリウムの場合は、眼科用組成物中0.01~0.5w/v%、
多価アルコールの場合は、眼科用組成物中0.1~2w/v%、
テルペノイドの場合は、眼科用組成物中0.001~0.03w/v%、
抗ヒスタミン成分の場合は、眼科用組成物中0.005~0.05w/v%、
ムコ多糖の場合は、眼科用組成物中0.03~0.8w/v%であり、
(B)/(A)で表される含有質量比が0.4~1である眼科用組成物。
【請求項2】
(A’)アシタザノラスト及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、
(B’)充血除去剤、及び
(C’)(c’-1)チオ硫酸塩、(c’-2)亜硫酸塩、(c’-3)エチレンジアミン四酢酸又はその塩、(c’-4)クエン酸又はその塩、(c’-5)ビタミンE、(c’-6)塩化ベンザルコニウム、(c’-7)ソルビン酸又はその塩、(c’-8)アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩、(c’-9)塩化ベンゼトニウム、(c’-10)アラントイン及び(c’-11)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする水性組成物を除く、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項3】
(A)フェニレフリン又はその塩:0.05~0.1w/v%、及び(B)ビタミンE:0.020w/v%以上を含有する眼科用組成物において、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸1水和物、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合し、
多価アルコールが、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールから選ばれる1種以上であり、
テルペノイドが、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロールから選ばれる1種以上であり、
抗ヒスタミン成分が、クロルフェニラミン及びその塩、ジフェンヒドラミン及びその塩から選ばれる1種以上であり、
ムコ多糖が、コンドロイチン硫酸エステル及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上であり、
(C)成分の配合量が
ホウ酸及びその塩の場合は、眼科用組成物中0.1~2w/v%
トロメタモールの場合は、眼科組成物中0.01~1w/v%、
エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物の場合は、眼科組成物中0.01~0.1w/v%、
リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムの場合は、眼科用組成物中0.2~0.5w/v%、
クエン酸ナトリウム、クエン酸1水和物の場合は、眼科用組成物中0.1~0.2w/v%、
ホウ砂の場合は、眼科用組成物中0.01~0.6w/v%、
塩化ナトリウム、塩化カリウムの場合は、眼科用組成物中0.01~0.5w/v%、
多価アルコールの場合は、眼科用組成物中0.1~2w/v%、
テルペノイドの場合は、眼科用組成物中0.001~0.03w/v%、
抗ヒスタミン成分の場合は、眼科用組成物中0.005~0.05w/v%、
ムコ多糖の場合は、眼科用組成物中0.03~0.8w/v%であり、
(B)/(A)で表される含有質量比が0.4~1である、上記眼科用組成物の変色抑制方法。
【請求項4】
前記眼科用組成物が、
(A’)アシタザノラスト及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、
(B’)充血除去剤、及び
(C’)(c’-1)チオ硫酸塩、(c’-2)亜硫酸塩、(c’-3)エチレンジアミン四酢酸又はその塩、(c’-4)クエン酸又はその塩、(c’-5)ビタミンE、(c’-6)塩化ベンザルコニウム、(c’-7)ソルビン酸又はその塩、(c’-8)アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩、(c’-9)塩化ベンゼトニウム、(c’-10)アラントイン及び(c’-11)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする水性組成物を除く眼科組成物である、請求項3記載の眼科用組成物の変色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニレフリン又はその塩を含有する眼科用組成物、ならびに変色抑制方法及び光安定化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェニレフリンは、アドレナリンα1受容体作動薬として知られる成分である。また、フェニレフリンは、涙液層安定化効果、マイバム分泌促進効果を有することが明らかにされ、ドライアイ治療薬として期待される。
【0003】
一方、フェニレフリンはその水溶液の褐色劣化することが知られており、この安定化方法としてはpHを1付近に保つ、酸素を遮断する、キレート試薬、抗酸化剤、ソルビン酸を添加する方法が提案されている(特許文献1:特開昭63-33327号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-33327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビタミンEは、抗酸化成分等として有用な成分である。しかしながら、(A)フェニレフリン又はその塩と(B)ビタミンEとを併用して組成物に配合すると、光暴露において、(A)成分が不安定になる、組成物の変色が促進されるという新たな課題が生じた。本発明は上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)フェニレフリン又はその塩と(B)ビタミンEとを含有する眼科用組成物に、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合することで、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記発明を提供する。
1.(A)フェニレフリン又はその塩、
(B)ビタミンE:0.020w/v%以上、及び
(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を含有する眼科用組成物。
2.(B)/(A)で表される含有質量比が、0.4以上である1記載の眼科用組成物。
3.(A)フェニレフリン又はその塩、及び(B)ビタミンE:0.020w/v%以上を含有する眼科用組成物において、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合する、上記眼科用組成物の光安定化方法。
4.(A)フェニレフリン又はその塩、及び(B)ビタミンE:0.020w/v%以上を含有する眼科用組成物において、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合する、上記(A)成分の光安定化方法。
5.(A)フェニレフリン又はその塩、及び(B)ビタミンE:0.020w/v%以上を含有する眼科用組成物において、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合する、上記眼科用組成物の変色抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、(A)フェニレフリン又はその塩と(B)ビタミンEとを併用して眼科用組成物に配合した場合の、光暴露における(A)成分の不安定化及び眼科用組成物の変色が抑制された眼科用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[(A)成分]
(A)成分は、フェニレフリン及びその塩から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、フェニレフリン塩としては、フェニレフリン塩酸塩、フェニレフリン酢酸塩等の医薬的に許容される塩が挙げられる。
【0010】
(A)成分の配合量は、眼科用組成物中0.01~5w/v%(質量/体積%、g/100mL、以下同様)が好ましく、0.02~1w/v%がより好ましく、0.05~0.2w/v%がさらに好ましく、0.05~0.1w/v%が特に好ましい。0.01w/v%以上とすることで、血管収縮効果、散瞳効果、マイバム分泌促進効果がより発揮されると共に、上記課題が生じやすくなり、より好ましい範囲とすることで、(A)フェニレフリン又はその塩と(B)ビタミンEとを併用して眼科用組成物に配合した場合の、光暴露における(A)成分の不安定化及び眼科用組成物の変色を、(C)成分が抑制する効果(以下、単に光安定化効果と記載する場合がある。)がより発揮される。
【0011】
[(B)成分]
(B)成分はビタミンEであり、例えば、トコフェロール、トコトリエノール、これらの塩、誘導体(エステル)を総称する意味で使用される。具体的には、例えば、d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール等があり、これらの誘導体としては、例えば、ビタミンE酢酸エステル(酢酸トコフェロール)、ビタミンEニコチン酸エステル、ビタミンEコハク酸エステル、ビタミンEリノレン酸エステル等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、酢酸トコフェロール(酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール等)が好ましい。
【0012】
(B)成分の配合量は、眼科用組成物中0.020w/v%以上であり、0.020~0.1w/v%が好ましく、0.025~0.1w/v%がより好ましく、0.03~0.05w/v%がさらに好ましい。0.020w/v%以上とすることで、(B)成分配合の効果が発揮されやすいと共に、上記課題が生じやすくなる。より好ましい範囲とすることで、(C)成分による光安定化効果がより発揮される。
【0013】
(B)/(A)で表される含有質量比は0.4以上が好ましく、0.4~1がより好ましい。この含有質量比が0.4以上だと、(A)成分(B)成分の効果が発揮されやすいと共に、上記課題が生じやすくなる。一方、1以下で(C)成分による光安定化効果がより発揮される。なお、比率はw/v%比であるが、質量比と同じ値となる。
【0014】
[(C)成分]
(C)成分は、ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(C)成分の配合により、光安定化効果を得ることができる。
【0015】
エデト酸及びその塩としては、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物等が挙げられる。
リン酸及びその塩としては、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。
クエン酸及びその塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸1水和物等が挙げられる。
【0016】
多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、プロピレングリコールが好ましい。
テルペノイドとしては、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられ、d体、l体又はdl体のいずれでもよく、l-メントールが好ましい。
抗ヒスタミン成分としては、クロルフェニラミン及びその塩、ジフェンヒドラミン及びその塩等が挙げられ、クロルフェニラミンマレイン酸塩が好ましい。
ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸エステル及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩等が挙げられ、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムが好ましい、
【0017】
(C)成分の配合量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%の範囲で適宜選定される。各成分の好適範囲は以下の通りである。
ホウ酸及びその塩の配合量は、眼科用組成物中0.1~5w/v%が好ましく、0.2~3w/v%がより好ましく、0.5~2w/v%がさらに好ましい。
トロメタモール及びその塩の配合量は、眼科用組成物中0.01~2w/v%が好ましく、0.03~1.5w/v%がより好ましく、0.05~1w/v%がさらに好ましい。
エデト酸及びその塩の配合量は、眼科用組成物中0.001~0.2w/v%が好ましく、0.005~0.15w/v%がより好ましく、0.01~0.1w/v%がさらに好ましい。
リン酸及びその塩の配合量は、眼科用組成物中0.05~2.0w/v%が好ましく、0.1~1.5w/v%がより好ましく、0.1~0.8w/v%がさらに好ましく、0.2~0.5w/v%が特に好ましい。
クエン酸及びその塩の配合量は、眼科用組成物中0.01~1w/v%が好ましく、0.05~0.5w/v%がより好ましく、0.1~0.2w/v%がさらに好ましい。
ホウ砂の配合量は、眼科用組成物中0.01~2w/v%が好ましく、0.02~1.0w/v%がより好ましく、0.05~0.6w/v%がさらに好ましい。
塩化ナトリウム、塩化カリウムの配合量は、眼科用組成物中0.01~2w/v%が好ましく、0.05~1.5w/v%がより好ましく、0.1~1w/v%がさらに好ましく、0.1~0.5w/v%が特に好ましい。
多価アルコールの配合量は、眼科用組成物中0.1~5w/v%が好ましく、0.2~3w/v%がより好ましく、0.5~2w/v%がさらに好ましい。
テルペノイドの配合量は、眼科用組成物中0.001~0.1w/v%が好ましく、0.002~0.05w/v%がより好ましく、0.003~0.03w/v%がさらに好ましい。
抗ヒスタミン成分の配合量は、眼科用組成物中0.001~0.1w/v%が好ましく、0.003~0.08w/v%がより好ましく、0.005~0.05w/v%がさらに好ましい。
ムコ多糖の配合量は、眼科用組成物中0.01~1w/v%が好ましく、0.02~0.9/v%がより好ましく、0.03~0.8w/v%がさらに好ましい。
【0018】
(C)/(A)で表される含有質量比は、光安定化効果の点から、0.01~50の範囲で適宜選定され、各成分の好適範囲は以下の通りである。
ホウ酸及びその塩の場合は、1~50が好ましく、2~30がより好ましく、5~20がさらに好ましい。
トロメタモールの場合は、0.1~30が好ましく、0.3~20がより好ましく、0.5~10がさらに好ましい。
エデト酸及びその塩の場合は、0.01~5が好ましく、0.05~1.5がより好ましく、0.1~1がさらに好ましい。
リン酸及びその塩の場合は、0.5~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8がさらに好ましく、2~5が特に好ましい。
クエン酸及びその塩の場合は、0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
ホウ砂の場合は、0.1~20が好ましく、0.2~10がより好ましく、0.5~6がさらに好ましい。
塩化ナトリウム、塩化カリウムの場合は、0.1~20が好ましく、0.5~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~5が特に好ましい。
多価アルコールの場合は、1~50が好ましく、2~30がより好ましく、5~20がさらに好ましい。
テルペノイドの場合は、0.01~1が好ましく、0.02~0.5がより好ましく、0.03~0.3がさらに好ましい。
抗ヒスタミン成分の場合は、0.01~1が好ましく、0.03~0.8がより好ましく、0.05~0.5がさらに好ましい。
ムコ多糖の場合は、0.1~10が好ましく、0.2~9がより好ましく、0.3~8がさらに好ましい。
【0019】
[その他の成分]
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、眼科用組成物に配合されるその他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、界面活性剤、防腐剤、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、粘稠剤、油性成分、抗ヒスタミン成分以外の薬物等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。下記に示す成分の配合量は、配合する場合の好ましい範囲であり、眼科用組成物中の量である。
【0020】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン界面活性剤としては特に限定されず、眼科用組成物に用いられる非イオン界面活性剤を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び上記以外の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0021】
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3~60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンヒマシ油は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。点眼時の刺激感を低減する観点から、ポリオキシエチレンヒマシ油35を用いることが好ましく、医薬品添加物規格2003の規格に適合するものが好ましい。
【0022】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5~100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。点眼時の刺激感を低減する観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を用いることが好ましい。医薬品添加物規格2003の規格に適合するものが好ましく、市販品としては、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油:HCO-60、日本サーファクタント工業社製が挙げられる。
【0023】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的にはモノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられる。これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)を用いることが好ましい。なお、市販品としては、例えば、ポリソルベート80(レオドールTW-O120V、花王社製)等が挙げられる。
【0024】
上記以外の非イオン界面活性剤としては、ポロクサマーに代表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40)に代表されるモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
非イオン界面活性剤を配合する場合、その配合量は、上記比率を満たしていれば特に限定されないが、眼科用組成物中0.0001~10w/v%が好ましく、0.0001~5w/v%がより好ましい。
ポリオキシエチレンヒマシ油を配合する場合、その配合量は眼科用組成物中0.003~10w/v%が好ましく、0.003~5w/v%がより好ましく、0.03~1w/v%がさらに好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合は、眼科用組成物中0.003~10w/v%が好ましく、0.003~5w/v%がより好ましく、0.03~1w/v%がさらに好ましい。
上記非イオン界面活性剤を配合する場合は、眼科用組成物中0.0003~1w/v%が好ましく、0.0003~0.5w/v%がより好ましく、0.003~0.2w/v%がさらに好ましい。
【0026】
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルジアミノエチルグリシン及び/又はその塩(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)、クロルヘキシジングルコン酸、パラオシキ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸エチルプロピル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ホウ酸、ホウ砂、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩、クロロブタノール、硫酸オキシキノリン、ベンジルアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩化ポリドロニウム等が挙げられる。防腐剤を配合する場合、その含有量は、組成物中0.0001~0.5w/v%とすることができるが、組成物中に0.1w/v%以下が好ましく、0.01w/v%以下がより好ましく、0.005w/v%以下がさらに好ましく、0.001w/v%以下が特に好ましく、0.0001w/v%以下が最も好ましい。なお、かわき目やドライアイ症状を有する場合、またその予防のためには、防腐剤を配合しないことが好ましい。
【0027】
糖類としては、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、D体、L体又はDL体のいずれでもよい。糖類を配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0028】
緩衝剤としては、例えば、氷酢酸、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤を配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~2w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0029】
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。眼科用組成物のpHは、3.5~13.0とすることもでき、涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から3.5~8.0が好ましく、5.5~7.5がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
【0030】
等張化剤としては、例えば、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。眼科用組成物の対生理食塩水浸透圧比は涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましく、0.83~1.20が最も好ましい。なお、浸透圧比は、第17改正日本薬局方に基づいた、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比である。浸透圧は第17改正日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従い測定する。本発明では、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスインスツルメンツ社)を用いて行う。
【0031】
安定化剤としては、例えば、シクロデキストリン、亜硫酸塩(水溶性抗酸化剤)、ジブチルヒドロキシトルエン(脂溶性抗酸化剤)等が挙げられる。安定化剤を配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0032】
粘稠剤としては、水溶性高分子化合物等が挙げられ、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0033】
油性成分としては、例えば、大豆油、オリーブ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、流動パラフィン、白色ワセリン、精製ラノリン、コレステロール等が挙げられる。その配合量は、眼科用組成物中0.001~1.0w/v%が好ましく、0.001~0.5w/v%がより好ましく、0.001~0.25w/v%がさらに好ましい。
【0034】
抗ヒスタミン成分以外の薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、脂溶性ビタミン類(ビタミンA)、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸等)、サルファ剤等が挙げられる。
【0035】
上記ビタミンAとしては、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100~180万国際単位/g(以下、I.U./gと略記する)のものが市販されており、具体的には、DSM社製レチノールパルミチン酸エステル[174万I.U./g)]、シグマアルドリッチ社製パルミチン酸レチノール等が挙げられる。
【0036】
抗ヒスタミン成分以外の薬物を配合する場合、薬物の配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0037】
[眼科用組成物]
本発明の眼科用組成物は、「水性眼科用組成物」であることが好ましい。本発明において、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。水の含有量は、眼科用組成物中90.0~99.5w/v%が好ましく、95.0~98.0w/v%がより好ましい。
【0038】
眼科用組成物の25℃における粘度は、1.1~50mPa・sが好ましく、40mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・s以下、15mPa・s以下、12mPa・s以下、10mPa・s以下、8mPa・s以下、5mPa・s以下、4mPa・s以下の順で好ましく、3mPa・s以下が特に好ましい。なお、本発明の眼科用組成物の粘度は、第17改正日本薬局方に記載の一般試験法「粘度測定法」の中の「第2法回転粘度計法」の「単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)」に記載の方法で、B型回転粘度計を用いて25℃で測定する。使用するローターや回転数などの条件は、その粘度範囲により選定する。なお、測定装置としては、コーンプレート型粘度計(例えば、DV2T(英弘精機社))が挙げられる。
【0039】
眼科用組成物の色度(b*)は、変色のなさの点から、0.7未満が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。
【0040】
本発明の眼科用組成物の剤型は特に限定されず、例えば、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等として好適に使用できる。特に点眼剤、コンタクトレンズ装着液として好適に使用でき、点眼剤が特に好ましい。中でも、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等のコンタクトレンズ使用者が使用するコンタクトレンズ用眼科用組成物として好適である。
【0041】
コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ(O2ハードコンタクトレンズを含む)、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を含む)、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズ等特に限定されない。防腐剤を配合しない場合には、特にソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用として好適である。
【0042】
[使用方法]
点眼剤(コンタクトレンズ用点眼剤も含む)である場合、1回につき5~100μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することが好ましく、1回につき10~50μLを1~3滴、1日につき1~6回がより好ましく、10~30μLを1~3滴1日につき1~6回がさらに好ましい。
洗眼剤である場合、1回につき1~20mL使用することが好ましく、1~10mLがさらに好ましく、3~6mLがより好ましい。1日につき1~6回洗眼することが好ましく、3~6回がより好ましい。
コンタクトレンズ装着液である場合、1回当たり1~3滴をコンタクトレンズに滴下して使用することが好ましく、1~2滴がより好ましい。
【0043】
[製造方法]
本発明の眼科用組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(B)成分等の油性成分を含む混合溶液を、(A)成分、(C)成分等の水性成分を含む水溶液と混合して乳化し、pH調整後、総体積を水により調整することにより得ることができる。各液体の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、油性成分と界面活性剤成分が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40~95℃の範囲から適宜選定される。
【0044】
[容器、包装]
得られた眼科用組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間に窒素等の不活性ガスを封入してもよく、組成物を樹脂製容器に充填後、脱酸素剤と共に包装体により密封してもよい。
【0045】
容器としては、プラスチック製容器が好ましく、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、塩化ビニル等の材質又はこれら材質の複合体からなるもの等を用いることができる。特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。製品中の眼科用組成物の量は、製品及びその使用方法に応じて適宜選択することができ、例えば点眼剤の場合、2~20mLが好ましく、5~20mLがより好ましい。眼科用組成物の容器は、特に限定されないがマルチドーズ型(マルチユニット型)容器でもよく、1回使い切りのユニットドーズ型容器でもよい。マルチドーズ型(マルチユニット型)容器が好ましい。
【0046】
得られた眼科用組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間の不活性ガスを封入してもよく、眼科用組成物を樹脂製容器に充填し、脱酸素剤と共に包装体により密封してもよい。
【0047】
中栓、キャップは、公知の眼科用製品の容器に使用される材質のキャップを使用することができる。中栓の材質としては、メルトフローレート2.0以下、好ましくは1.2~1.8のポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。キャップの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0048】
[光安定化方法]
本発明は下記光安定化方法を提供する。好適な成分、量は上記と同じである。
(A)フェニレフリン又はその塩、及び(B)ビタミンE:0.020w/v%以上を含有する眼科用組成物において、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合する、上記眼科用組成物の光安定化方法。
【0049】
なお、「光安定化」とは、光(光暴露)に対する安定化方法をいう。本発明においては、(A)フェニレフリン又はその塩と(B)ビタミンEとを併用して眼科用組成物に配合した場合において、(C)成分がその安定化の役割を果たすものである。光暴露量としては特に限定されないが、「新原薬及び新製剤光安定性試験ガイドラインについて」より、総照度として「120万Lux・hr」の光に曝されることが求められており、これに基づき、眼科用組成物の開封後の使用期限を考慮して適宜選択される。本発明においては実施例の方法を採用する。
【0050】
「光安定化」としては、上記(A)フェニレフリン又はその塩の安定化を含むものであり、本発明は下記安定化方法を提供する。好適な成分、量は上記と同じである。
(A)フェニレフリン又はその塩、及び(B)ビタミンE:0.020w/v%以上を含有する眼科用組成物において、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合する、上記(A)成分の光安定化方法。
【0051】
[変色抑制方法]
本発明は下記変色抑制方法を提供する。好適な成分、量は上記と同じである。
(A)フェニレフリン又はその塩、及び(B)ビタミンE:0.020w/v%以上を含有する眼科用組成物に、(C)ホウ酸、トロメタモール、エデト酸、リン酸、クエン酸、それらの塩、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、テルペノイド、抗ヒスタミン成分及びムコ多糖から選ばれる1種以上を配合する、上記眼科用組成物の変色抑制方法。
【0052】
上記変色抑制方法は、(A)フェニレフリン又はその塩と(B)ビタミンEとを併用して眼科用組成物に配合した場合の、光暴露においる眼科用組成物の変色を、(C)成分が抑制する方法である。なお、光暴露量としては上記と同じである。
【0053】
変色抑制効果は、後述する比較例4よりの光照射後のb*が抑制されていればよく、変色抑制率は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上、60%以上、70%以上がさらに好ましい。
【実施例
【0054】
以下、実施例、比較例及び処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではないなお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は「w/v%(g/100mL)」、比率はw/v%比(質量比)を示す。実施例6は参考例である。
【0055】
[実施例、比較例]
下記表に示す(A)成分、(C)成分等を含む各水性成分を1,000mLの水に溶解し、90℃、15分間加温混合して水性成分水溶液を得た。別途、(B)成分等を含む油性成分の混合溶液を90℃、15分間加熱した。次に、加熱した油性成分混合溶液を上記水性成分水溶液に所定量加え、さらに90℃、15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、1,000mLになるように水を加え、眼科用組成物を得た。得られた眼科用組成物について、下記光安定性試験を行った。結果を表中に示す。なお、表中は100mL中の量を示す。
【0056】
<変色抑制試験>
分光測色計(CM-700d、コニカミノルタジャパン製)を用いて、上記で得られた各眼科用組成物の色度(L*、a*、b*)を測定した。その後、PET(ポリエチレンテレフタレート)製の透明容器(容量10mL)に10mLずつ充填し、試験サンプルとした。
この試験サンプルに対して、蛍光灯を光源として室温下で15,000Luxの光を72時間連続照射し、試験サンプルに対して積算照射量1,080,000Lux・hrの光に暴露した。光照射後、(a)目視及び(b)各試験サンプルの色度(L*、a*、b*)を測定し、b*を変色(黄~褐変色)の指標とし、下記の式により変色抑制率を算出した。
(a)目視での試験後外観
〇:変色が認められない
×:変色が認められる
(b)変色抑制率
変色抑制率(%)=((コントロールのΔb*-試験サンプルのΔb*)/(コントロールのΔb*))×100
Δb*=光照射後のb*-光照射前のb*
コントロールのΔb*:比較例4のΔb*
【0057】
<フェニレフリン安定性試験>
上記の変色抑制試験の保存品でのフェニレフリン塩酸塩の含有量を、高速液体クロマトグラフィー法で測定した。
(残存率)
得られたフェニレフリン塩酸塩含量から下記式に基づき、フェニレフリン塩酸塩残存率(%)を算出した。
フェニレフリン塩酸塩残存率(%)=(変色抑制試験後のフェニレフリン塩酸塩含量/製造直後のフェニレフリン塩酸塩含量)×100
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
[処方例]
下記表に示す組成の眼科用組成物を上記実施例と同様の方法で調製した。得られた眼科用組成物は上記実施例と同様の変色抑制効果が得られた。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】
【0068】
【表10】
【0069】
【表11】
【0070】
【表12】
【0071】
【表13】
【0072】
実施例、比較例及び処方例を調製する際に用いた原料を以下に示す。表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0073】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
・フェニレフリン塩酸塩:フェニレフリン塩酸塩(結晶)、岩城製薬社製
・酢酸d-α-トコフェロール:理研Eアセテートα、理研ビタミン社製
・ホウ酸:ホウ酸、関東化学社製
・ホウ砂:ホウ砂(粉末)、小堺製薬社製
・トロメタモール:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、関東化学社製
・エデト酸ナトリウム水和物:クレワットN、ナガセケムテックス社製
・塩化ナトリウム:日本薬局方 塩化ナトリウム(注射用)、富田製薬社製
・l-メントール:l-メントール(薄荷脳)、鈴木薄荷社製
・プロピレングリコール:ADEKA社製
・クロルフェニラミンマレイン酸塩:マレイン酸クロルフェニラミン(クロルフェニラミンマレイン酸塩)、金剛化学社製
・コンドロイチン硫酸エステルナトリウム:局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム、マルハニチロ社製
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60:NIKKOL HCO-60(医療用)、日本サーファクタント工業社製
・ポリソルベート80:モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン:レオドール TW-O120V、花王社製