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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】粘着組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20250115BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250115BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J7/38
C09J11/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020145400
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040611
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】霜村 友基
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206586(JP,A)
【文献】特開2015-105329(JP,A)
【文献】特開2012-072406(JP,A)
【文献】特開2000-313863(JP,A)
【文献】特開2000-063786(JP,A)
【文献】特開2003-081817(JP,A)
【文献】特開平03-292379(JP,A)
【文献】増補プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧,1992年06月10日,pp. 52-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体と、可塑剤と、硬化剤と、溶剤とを含有する粘着組成物であって、前記アクリル系共重合体が、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーを10質量%以上含み、
カルボキシル基を有するモノマーを1~20質量%含む共重合体であり、
前記可塑剤が、炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数12~18の不飽和脂肪酸、及び、炭素数12~18の不飽和脂肪酸のエポキシ化物より選択される1種以上に由来するエステル化合物を含む、粘着組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体が、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーを80質量%以上含む共重合体である、請求項1に記載の粘着組成物。
【請求項3】
前記可塑剤が、炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数12~18の不飽和脂肪酸、及び、炭素数12~18の不飽和脂肪酸のエポキシ化物より選択される1種以上と、炭素数20以下のアルコールとのエステル化合物を含む、請求項1又は2に記載の粘着組成物。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体が、更に水酸基を有するモノマーを含む共重合体である、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項5】
基材上に、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着組成物又はその硬化物を含む粘着層を備える、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着組成物および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤として各樹脂系のものがあり、中でもアクリル系が広く用いられている。アクリル系粘着剤は、粘着力やタックといった粘着基本性能の制御がモノマー組成や相溶する添加剤の調整により容易であるメリットがある。従来から油付着被着体に対して接着できる市場ニーズがあったが、近年ではより使い勝手に優れ、高機能化された性能が求められている。
特許文献1では、特定の(メタ)アクリル系共重合体と軟化点が115℃を超える粘着付与剤を含む、油分が付着した被着体表面用の粘着シートが開示されている。当該粘着シートは油付着面に対する接着力が良好であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-095021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着シートの用途として、一時的に貼付した後、再度剥離することが求められる場合がある。特許文献1の粘着シートは油付着面に対する接着力が良好であるが、経時で徐々に粘着力が上昇し、数週間後に剥がす際には糊残りしてしまう問題があった。
また、粘着シートに対する更なる要求として、一部に油が付着し、他の一部には油が付着していない被着面に対しても良好な粘着力を有する粘着シートが求められている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、再剥離用途に適した粘着力を有し、油非付着面と油付着面の粘着力差が小さく、高温・高湿下で長期にわたり保存しても良好な再剥離性を備え、加えて高温下での凝集力に優れる粘着組成物及び粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る粘着組成物は、アクリル系共重合体と、可塑剤とを含有する粘着組成物であって、前記アクリル系共重合体が、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーを10質量%以上含む共重合体である。
【0007】
上記粘着組成物の一実施態様は、前記可塑剤が、炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数12~18の不飽和脂肪酸、及び、炭素数12~18の不飽和脂肪酸のエポキシ化物より選択される1種以上に由来するエステル化合物を含む。
【0008】
上記粘着組成物の一実施態様は、前記アクリル系共重合体が、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーを80質量%以上含む共重合体である。
【0009】
上記粘着組成物の一実施態様は、前記アクリル系共重合体が、更にカルボキシル基を有するモノマーを含む共重合体である。
【0010】
本発明に係る粘着シートは、基材上に、前記粘着組成物又はその硬化物を含む粘着層を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、再剥離用途に適した粘着力を有し、油非付着面と油付着面の粘着力差が小さく、高温・高湿下で長期にわたり保存しても良好な再剥離性を備え、加えて高温下での凝集力に優れる粘着組成物及び粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る粘着組成物、及び粘着シートについて順に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの各々を表し、「(メタ)アクリル」等もこれに準ずる。
本発明において「モノマーを含む共重合体」とは、共重合体が当該モノマーを重合成分として含むことを意味し、当該共重合体は当該モノマー由来の構成単位を有する。共重合体中のモノマーの割合は、共重合体を構成するモノマー全量を基準(100質量%)とする。
本発明において「粘着組成物の硬化物」とは、粘着組成物中の成分の少なくとも一部が架橋反応したものであることを意味し、例えばゲル状のものも硬化物に含まれる。
本明細書において、炭素数nの直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを、Cnアルキル(メタ)アクリレートということがある。例えば、ドデシル(メタ)アクリレートは、C12アルキル(メタ)アクリレートということがある。なおnは1以上の整数である。
また、数値範囲を示す「~」は特に断りのない限りその下限値及び上限値を含むものとする。
【0013】
[粘着組成物]
本発明に係る粘着組成物(以下、本粘着組成物ともいう)は、アクリル系共重合体と、可塑剤とを含有する粘着組成物であって、前記アクリル系共重合体が、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーを10質量%以上含む共重合体である。
【0014】
本発明者は、油付着面(以下、油面ともいう)に対する粘着力と非油付着面(以下、非油面ともいう)に対する粘着力の差が小さくするために、アクリル系共重合体を構成するアルキル(メタ)アクリレートの検討を行った。その結果、C11以下アルキル(メタ)アクリレートを用いた場合、非油面への粘着力に対し、油面への粘着力が低くなる傾向がみられた。一方、C14以上アルキル(メタ)アクリレートを用いた場合には、非油面への粘着力が低下する傾向がみられた。このような知見から本発明者は、C12~C13アルキル(メタ)アクリレートを選択することで、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差が小さくなることを見出し、C12~13アルキル(メタ)アクリレートを10質量%以上としたアクリル系共重合体と、可塑剤とを組み合わせることで本発明を完成させた。
即ち、上記本粘着組成物は、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差が小さく、良好な再剥離性を有する。更にC12~C13アルキル(メタ)アクリレートはC14以上アルキル(メタ)アクリレートよりもアクリル系共重合体合成時の反応性に優れ生産性に優れるとともに、粘着組成物中及び粘着層中の未反応モノマーの残留が抑制され高品質の粘着層を得ることができる。
本粘着組成物は少なくとも、アクリル系共重合体と、可塑剤とを含有するものであり、必要に応じて、更に他の成分を含有してもよいものである。以下このような各成分について順に説明する。
【0015】
<アクリル系共重合体>
本粘着組成物においてアクリル系共重合体は、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーを10質量%以上含む共重合体を用いる。当該アクリル系共重合体を用いることで油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差が小さい粘着組成物が得られる。なお、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートにおけるドデシル基及びトリデシル基は、直鎖アルキル基である。アクリル系共重合体において、ドデシル(メタ)アクリレート及びトリデシル(メタ)アクリレートの合計の含有割合は、10質量%以上であればよく、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差を小さくする点から、30~99質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましく、70~99質量%がさらに好ましく90~99質量%が特に好ましい。
アクリル系共重合体は、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上を含むアクリル系(共)重合体であり、必要に応じて更にその他モノマーを含むアクリル系共重合体であってもよいものである。ドデシル(メタ)アクリレート及びトリデシル(メタ)アクリレートは構造が明確であるためここでの説明は省略し、以下、その他モノマーについて説明する。
【0016】
(その他モノマー)
その他モノマーは、アクリル系共重合体に種々の機能を付与し、また、物性を調整するために用いられる。その他モノマーは、1個以上の重合性基を有する化合物である。重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。モノマー1分子中の重合性基の数は、アクリル系共重合体の粘着性や製造容易性などの点から、1~2個が好ましく、1個がより好ましい。
その他モノマーは、当該重合性基を1個以上有する公知のモノマーの中から適宜選択することができる。その他モノマーとしては、炭素数11以下の直鎖又は分岐を有するアルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有するモノマー、水酸基を有するモノマーが好ましく、更にこれらに分類されないモノマーを含んでいてもよい。アクリル系共重合体に、硬化剤との架橋点を設ける点からは、カルボキシル基を有するモノマー及び水酸基を有するモノマーより選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0017】
炭素数11以下の直鎖又は分岐を有するアルキル(メタ)アクリレートは、本粘着組成物の高温下での粘着保持力を向上する。直鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、分岐を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
炭素数11以下の直鎖又は分岐を有するアルキル(メタ)アクリレートは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。高温下での保持力の点からは、炭素数11以下の直鎖又は分岐を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
炭素数11以下の直鎖又は分岐を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いる場合、アクリル系共重合体中のC11以下アルキル(メタ)アクリレートの割合は、高温下での凝集力を維持しながら油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差を小さくする点から、0.01~84質量%が好ましく、0.01~50質量%がより好ましく、0.01~20質量%がさらに好ましく、0.01~10質量%が特に好ましい。
【0018】
カルボキシル基を有するモノマーは、分子内に1個以上のカルボキシル基を有するモノマーである。カルボキシル基を有するモノマーは、非油面に対する高い粘着力および凝集力を付与し、硬化剤と組み合わせる場合には当該硬化剤との架橋点ともなる。
カルボキシル基を有するモノマー1分子中のカルボキシル基の数は、粘着層の粘着性などの点から、1~3個が好ましく、1~2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。
カルボキシル基を有するモノマーのとしては、例えば、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、ビニル安息香酸などが挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。カルボキシル基を有するモノマーは1種類を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
カルボキシル基を有するモノマーを用いる場合、アクリル系共重合体中のカルボキシル基を有するモノマーの割合は、非油面に対する高い粘着力および凝集力を付与しながら油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差を小さくする点から、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、2~7質量%がさらに好ましい。
【0019】
水酸基を有するモノマーは、分子内に1個以上の水酸基を有するモノマーである。水酸基を有するモノマーは、硬化剤と組み合わせる場合には当該硬化剤との架橋点ともなる。水酸基は、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基のいずれであってもよい。
水酸基を有するモノマー1分子中の水酸基の数は、粘着層の粘着性などの点から、1~3個が好ましく、1~2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。
水酸基を有するモノマーの具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。水酸基を有するモノマーは1種類を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水酸基を有するモノマーを用いる場合、アクリル系共重合体中の水酸基を有するモノマーの割合は、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差を小さくする点から、0.01~15質量%が好ましく、0.05~10質量%がより好ましく、0.1~5質量%がさらに好ましい。
【0020】
更にアクリル系共重合体は、上記モノマーに分類されないモノマーを含んでいてもよい。このようモノマーとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
アミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、4-アクリロイルモルフォリンなどのアミド基を有するモノマー;
酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、良好な再剥離性を得る点から、30万以上が好ましく、50万以上がより好ましい。また、アクリル系共重合体の重量平均分子量は、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差が小さい粘着組成物を得る点から、250万以下が好ましく、200万以下がより好ましく、150万以下がさらに好ましい。
なお、本発明において重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0022】
アクリル系共重合体が、2種類以上のモノマーを含むアクリル系共重合体の場合、その結合順序は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等いずれの形態であってもよい。製造の容易性などの点から、ランダム共重合体が好ましい。
【0023】
(アクリル系共重合体の製造方法)
アクリル系共重合体の製造方法は、モノマーの結合順序等を考慮して公知の重合法の中から適宜選択すればよい。例えばランダム共重合体の場合、ドデシル(メタ)アクリレート及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーと、必要に応じてその他モノマーとを混合し、更に開始剤を加えて、溶液重合、塊状重合、各種ラジカル重合など公知の重合法により重合することができる。中でも、共重合体の重量平均分子量の調整がしやすい点から、溶液重合が好ましい。
【0024】
具体的には、溶剤、モノマー、重合開始剤等を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で、反応温度50~90℃程度に加熱し、4~12時間で重合反応させるのが一般的である。
【0025】
重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を挙げられる。これらの重合開始剤は、原料モノマー100質量部に対して、通常は0.01~5質量部の範囲内の量で使用される。また、重合反応中に、連鎖移動剤、原料モノマー、溶媒を適宜添加してもよい。
【0026】
上記重合開始剤の内、アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0027】
また、上記重合開始剤の内、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0028】
上記のような条件において、得られる共重合体の重量平均分子量は、公知技術に従って、使用する溶媒の種類および量、重合開始剤の種類および量、反応時間、反応温度などの反応条件を調整することにより調節できる。
【0029】
<可塑剤>
本粘着組成物は可塑剤を含有する。可塑剤とは、樹脂等の材料に柔軟性を付与したり加工性を向上するために添加されるものである。本粘着組成物においては、可塑剤を用いることで、油付着面に対する接着力を維持しながら再剥離性を付与できる。
【0030】
当該可塑剤としては、例えば、炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数20以下のアルコールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;炭素数12~18の飽和脂肪酸または炭素数12~18の不飽和脂肪酸と4価以下のアルコールとのエステル;炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステル;ヒドロキシ酸と一塩基酸またはアルコールのジエステル、トリエステル、テトラエステル;不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステル;リン酸エステル等が挙げられる。
【0031】
炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数20以下のアルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、およびトリメリト酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0032】
炭素数12~18の飽和脂肪酸または炭素数12~18の不飽和脂肪酸と4価以下のアルコールとのエステルを構成する炭素数12~18の飽和脂肪酸または炭素数12~18の不飽和脂肪酸と4価以下のアルコールとしては、以下の通りである。炭素数12~18の飽和脂肪酸または炭素数12~18の不飽和脂肪酸は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。4価以下のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0033】
炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステルとしては、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ-2-エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシ酸と一塩基酸またはアルコールのエステルとしては乳酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、2-ヒドロキシミリスチン酸メチル、12-ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、リシノール酸エチル、o-アセチルリシノール酸メチル、o-アセチルリシノール酸ブチル、クエン酸トリエチル、o-アセチルクエン酸トリブチル、o-アセチルクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0035】
不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステルは、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油等のエポキシ化油脂や炭素数8~18の不飽和脂肪酸をエポキシ化した化合物と、炭素数1~6の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物等が挙げられる。
【0036】
リン酸エステルは、例えば、亜リン酸またはリン酸と炭素数2~18の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物が挙げられる。例えばトリブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、本粘着組成物における可塑剤は、炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数12~18の不飽和脂肪酸、及び炭素数12~18の不飽和脂肪酸のエポキシ化物より選択される1種以上に由来するエステル化合物を含むことが好ましく、中でも、炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数12~18の不飽和脂肪酸、及び炭素数12~18の不飽和脂肪酸をエポキシ化物より選択される1種以上と、炭素数20以下のアルコールとのエステル化合物がより好ましい。これらの可塑剤は、前述したドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートより選択される1種以上のモノマーを10質量%以上含むアクリル系共重合体との相溶性がより改善され、高温・高湿下での被着体の汚染を抑えることができる。
【0038】
炭素数12~18の飽和脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。炭素数12~18の不飽和脂肪酸としてはパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。また、炭素数12~18の不飽和脂肪酸のエポキシ化物は、不飽和脂肪酸の不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化したものである。なおエポキシ化物は、不飽和脂肪酸とアルコールとを脱水縮合した後にエポキシ化したものであってもよい。
上記飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及びエポキシ化物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上の組み合わせとしては、例えば、植物油などが挙げられ、大豆油、亜麻仁油などが挙げられる。
【0039】
炭素数12~18の飽和脂肪酸、炭素数12~18の不飽和脂肪酸、炭素数12~18の不飽和脂肪酸のエポキシ化物と、炭素数20以下のアルコールとのエステル化合物としてはラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチルドデシル、エポキシ化大豆脂肪酸ブチル、エポキシ化亜麻仁脂肪酸ブチル等が挙げられる。
【0040】
可塑剤は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上含むことが好ましく、1質量部以上含むことがより好ましく、3質量部以上含むことさらに好ましい。また30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。上記範囲内とすることで再剥離性が向上し、油付着面に対する接着力が維持される。
【0041】
<他の成分>
本粘着組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、硬化剤、溶剤、シランカップリング剤、熱または光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、保湿剤、ビタミン類、顔料、染料、香料、粘着付与樹脂などが挙げられる。これらは公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0042】
(硬化剤)
本粘着組成物は硬化剤を含有してもよい。本粘着組成物において硬化剤は主にアクリル系共重合体を架橋するために用いられる。硬化剤による架橋により、粘着組成物の耐熱性、化学的安定性や、粘着力を向上する。硬化剤としては、例えば、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、キレート系硬化剤、アジリジンなどが挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化剤は、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差が小さく良好な粘着力を有する組成物が得られ、耐熱性などにも優れる点から、エポキシ系硬化剤、又はイソシアネート系硬化剤が好ましい。
【0043】
エポキシ系硬化剤は、主にアクリル系共重合体が有するカルボキシル基と反応して、アクリル系共重合体同士を架橋する。エポキシ系硬化剤は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物の中から、粘着層に求められる物性等に応じて適宜選択すればよい。
エポキシ系硬化剤の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの鎖式多官能エポキシ化合物;
1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N-ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジンなどの環構造を有するエポキシ化合物などが挙げられ、耐熱性などの点から環構造を有するエポキシ化合物が好ましく、硬化速度の観点から分子内に窒素原子を含有する化合物が好ましい。なおエポキシ系硬化剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
イソシアネート系硬化剤は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのイソシアネートモノマーと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体;前記イソシアネートモノマーのビュレット体;前記イソシアネートモノマーのイソシアヌレート体;前記イソシアネートモノマーと、公知のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のイソシアネートモノマー;ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(コロネート2770:日本ポリウレタン工業社製)などの分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が、粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0045】
硬化剤を用いる場合、本粘着組成物中の硬化剤の含有割合は、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差が小さく良好な粘着力を有する組成物が得られる点から、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.005~15質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.02~5質量%がさらに好ましく、0.03~4質量%が特に好ましい。
【0046】
(溶剤)
本粘着組成物は硬化剤を含有してもよい。溶剤は、本粘着組成物を構成する各成分との反応性が低く、当該各成分を溶解乃至分散し得るものの中から、塗工性などを考慮して適宜選択することができる。
好適な溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等が挙げられる。溶剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
[粘着シート]
本発明に係る粘着シート(以下、本粘着シートともいう)は、基材上に前記本粘着組成物又はその硬化物を含む粘着層を備えるものである。粘着シートは、例えば、基材上に粘着剤を塗工、乾燥し、必要に応じて硬化することにより製造できる。粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていればよい。
【0048】
粘着組成物を塗工するに際し、前記溶剤を添加して、粘度を調整してもよく、粘着組成物を加熱して粘度を低下させてもよい。
【0049】
基材としては、例えば、セロハン、プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴム布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられ、板状であってもフィルム状であってもよい。さらに基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる積層体であってもよい。更に基材の表面を剥離処理したもの(以下、剥離シートと呼ぶ)を用いてもよい。
【0050】
プラスチックシート(プラスチックフィルムともいう)は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
【0051】
本発明において粘着組成物の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60~130℃程度の熱風加熱でよい。
【0052】
本発明の粘着シートは、(ア)剥離処理されたフィルムの剥離処理面に粘着組成物を塗工、乾燥し、基材を粘着層の表面に積層したり、(イ)基材に粘着組成物を直接塗工、乾燥し、粘着層の表面に剥離処理されたフィルムの剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0053】
粘着層の厚さは、0.1~300μmであることが好ましく、1~200μmであることがより好ましく、3~150μmであることが更に好ましい。
【実施例
【0054】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。配合比に関しては、溶剤以外は固形分換算での値を示す。また、「部」は「質量部」を表す。
【0055】
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」ともいう)に、ドデシルメタアクリレート96.5部、アクリル酸3部、ヒドロキシエチルアクリレート0.5部、酢酸エチル67部、過酸化ベンゾイル(BPO)0.04部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。次いで、窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した。更に、滴下漏斗に、上記反応容器に仕込んだものと同一の等量混合物を仕込み、滴下し、窒素雰囲気下にて還流温度で7時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分45%、粘度3000mPa・sの共重合体溶液を得た。また、得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)を下記の方法で測定したところ、重量平均分子量は72万であった。得られた共重合体を、共重合体(A-1)とする。
【0056】
(合成例2~17)
合成例1において、モノマーの種類と配合割合を、表1のように変更した以外は、合成例1と同様にしてアクリル系共重合体を合成した。得られた共重合体を順に共重合体(A-2)~(A-17)とする。
【0057】
(合成例18~20:比較合成例)
合成例1において、モノマーの種類と配合割合を、表1のように変更した以外は、合成例1と同様にしてアクリル系共重合体を合成した。得られた共重合体を順に共重合体(A-18X)~(A-20X)とする。
【0058】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
各共重合体のMwは、下記の条件により測定した。Mwの決定は、重量平均分子量が既知のポリスチレンを標準物質に用いた検量線法により決定した。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を直列に連結
移動相溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
【0059】
【表1】
【0060】
なお、表1中の略号は以下のとおりである。
DA :ドデシルアクリレート
DMA :ドデシルメタアクリレート
TDA :トリデシルアクリレート
TDMA:トリデシルメタアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
AA :アクリル酸
HEA :ヒドロキシエチルアクリレート
SA :ステアリルアクリレート
【0061】
(例1)
<粘着組成物の調製>
アクリル系共重合体(A-1)の100部、可塑剤IPPの3部、硬化剤TDI-TMPアダクト体2.5部、希釈溶剤として酢酸エチルを混合し、撹拌して例1の粘着組成物を得た。
【0062】
<粘着シートの作成>
厚さ38μmのポリエステル製セパレーター[商品名「スーパーステック」SP-PET38、リンテック社製、以下同じ]上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように例1の粘着組成物を塗工し、熱風オーブンにて100℃、2分間乾燥して粘着剤層を形成した。乾燥後、厚さ25μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(テオネックス、帝人社製)にラミネートし、さらに23℃50%RHで7日間養生し、例1の粘着シートを得た。
【0063】
(例2~33)
例1において、アクリル共重合体、可塑剤、硬化剤及び溶剤の種類と配合割合を表2のように変更した以外は、例1と同様にして粘着組成物及び粘着シートを得た。なお例1~例29が実施例であり、例30~例33が比較例である。
【0064】
[評価]
<粘着力評価>
各例の粘着シートを幅25mm、長さ100mmの大きさに切り出した。次いで23℃50%RHの環境下、粘着シートからセパレーターを剥がして露出した粘着剤層を、下記被着面1及び2にそれぞれ貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。
この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で剥離強度を求めた。
非油面については剥離強度で評価し、油面については非油面の剥離強度Bに対する、油面の剥離強度Aの比(A/B)により、下記の評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示す。
(被着面)
被着面1:油を塗布していないステンレス(SUS)板(非油面)
被着面2:キャノーラ油、日清オイリオ(食品油)を表面に4g/mで均一に塗布したSUS板
【0065】
(粘着力評価基準)
(1)油を塗布していないSUS板の評価
◎:剥離強度が4N/25mm以上、8N/25mm未満であった(非常に良好)。
〇:剥離強度が4N/25mm以上、8N/25mm未満の範囲を除き、3N/25mm以上、10N/25mm未満であった(良好)。
△:剥離強度が3N/25mm以上、10N/25mm未満の範囲を除き、1N/25mm以上、15N/25mm未満であった(使用可)。
×:剥離強度が1N/25mm以上、15N/25mm未満の範囲を除き、0N/25mm以上、20N/25mm未満であった(使用不可)。
(2)油を塗布したSUS板の評価
◎:剥離強度が非油面の80%以上、120%以下であった(非常に良好)。
〇:剥離強度が非油面の60%以上、80%未満であった(良好)。
△:剥離強度が非油面の40%以上、60%未満であった(使用可)。
×:剥離強度が非油面の40%未満であった(使用不可)。
【0066】
<再剥離性評価>
各例の粘着シートを幅25mm、長さ100mmの大きさに切り出した。次いで23℃50%RHの環境下、粘着シートからセパレーターを剥がして露出した粘着剤層を、下記被着面1~6にそれぞれ貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。
この測定試料を、60℃95%RHまたは80℃%の環境下で7日間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で剥離し、そのあとの被着体の様子を観察した。結果を表2に示す。
(再剥離性評価基準)
◎:被着体に汚染無し(非常に良好)。
〇:被着体に僅かなくもりがみられる(良好)。
△:被着体にくもりがみられる(使用可)。
×:被着体に粘着剤が付着している(使用不可)。
【0067】
<保持力評価>
各例の粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。粘着シートから剥離性シートを剥がして、研磨した幅30mm・縦150mmのステンレス板の下端部幅25mm・横25mmの部分に粘着剤層を貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、40℃または80℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にずれた長さを測定した。結果を表2に示す。
【0068】
(保持力評価基準)
◎:0mm/70000秒であった(非常に良好)。
〇:0mm超過3.0mm未満/70000秒であった(良好)。
△:3mm超過25.0mm未満/70000秒であった(使用可)。
×:落下した(25.0mm超過)(使用不可)。
【0069】
【表2】
【0070】
なお、表2中の略号は以下のとおりである。
TDI-TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
TDS :ステアリン酸イソトリデシル
IPP :パルミチン酸イソプロピル
IPM :ミリスチン酸イソプロピル
ML :ラウリン酸メチル
MOL :オレイン酸メチル
BES :エポキシ化大豆油脂肪酸ブチル
ATBC:アセチルクエン酸トリブチル
EHT :トリメリット酸2-エチルヘキシル
DOA :アジピン酸ジオクチル
DOP :フタル酸ジオクチル
【0071】
[結果のまとめ]
表2に示されるように、C12~13アルキル(メタ)アクリレートを10質量%以上含むアクリル系共重合体と、可塑剤とを含有する例1~例29の粘着組成物を用いて得られた粘着シートは、良好な粘着力を有し、油付着面に対する粘着力と非油付着面に対する粘着力の差が小さいことが明らかとなった。