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特許7618996半導体検査装置および半導体ウエハの検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】半導体検査装置および半導体ウエハの検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250115BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/66 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020171240
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062986
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】野路 典昭
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-303878(JP,A)
【文献】特開2016-092025(JP,A)
【文献】特開2007-214336(JP,A)
【文献】特開2008-177303(JP,A)
【文献】特開2010-171117(JP,A)
【文献】特開2007-036101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを載置するステージと、
前記ステージの、前記半導体ウエハを載置する第1面から突出して設けられ、前記半導体ウエハの、前記ステージに対向する第1主面の一部に接触して、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハを保持する第1保持部と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が吸気手段に連結された、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する複数の吸気孔と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が給気手段に連結された、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する複数の給気孔と、
前記半導体ウエハの、前記ステージ側に対して反対側の第2主面を撮影する撮影手段と、
を備え、
前記ステージの第1主面の、前記半導体ウエハの反りの状態に基づいて予め取得された位置に前記吸気孔および前記給気孔が設けられており、
前記撮影手段で前記半導体ウエハを撮影する前に、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を前記吸気孔から吸引するとともに、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に前記給気孔から気体を供給して、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハの反りを矯正する制御がなされることを特徴とする半導体検査装置。
【請求項2】
前記第1保持部は、前記半導体ウエハの第1主面の外周部に接触して、前記半導体ウエハを保持することを特徴とする請求項1に記載の半導体検査装置。
【請求項3】
前記第1保持部は、前記ステージの第1面から離れる方向および前記ステージの第1面に近づく方向に前記半導体ウエハを移動させるよう可動可能な状態で前記ステージの第1面に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体検査装置。
【請求項4】
前記第1保持部に対向して設けられ、前記半導体ウエハの第2主面の一部に接触して、前記第1保持部との間で前記半導体ウエハを保持する第2保持部をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の半導体検査装置。
【請求項5】
前記吸気孔は、前記ステージの第1面の所定区分ごとにまとめてそれぞれ異なる前記吸気手段に連結されており、
前記所定区分ごとに異なる吸気量で、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する制御がなされることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の半導体検査装置。
【請求項6】
前記給気孔は、前記ステージの第1面の所定区分ごとにまとめてそれぞれ異なる前記給気手段に連結されており、
前記所定区分ごとに異なる給気量で、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する制御がなされることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の半導体検査装置。
【請求項7】
半導体ウエハを載置するステージと、
前記ステージの、前記半導体ウエハを載置する第1面から突出して設けられ、前記半導体ウエハの、前記ステージに対向する第1主面の一部に接触して、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハを保持する第1保持部と、
前記第1保持部に対向して設けられ、前記半導体ウエハの第2主面の一部に接触して、前記第1保持部との間で前記半導体ウエハを保持する第2保持部と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が吸気手段に連結された、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する複数の吸気孔と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が給気手段に連結された、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する複数の給気孔と、
前記半導体ウエハの、前記ステージ側に対して反対側の第2主面を撮影する撮影手段と、
を備え、
前記撮影手段で前記半導体ウエハを撮影する前に、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を前記吸気孔から吸引するとともに、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に前記給気孔から気体を供給して、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハの反りを矯正する制御がなされることを特徴とする半導体検査装置。
【請求項8】
ステージの、半導体ウエハを載置する第1面から突出して設けられた第1保持部に、反りが生じた状態の前記半導体ウエハの、前記ステージに対向する第1主面の一部を接触させて、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハを保持する保持工程と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が吸気手段に連結された複数の吸気孔から、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する吸気工程と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が給気手段に連結された複数の給気孔から、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する給気工程と、
前記半導体ウエハの、前記ステージ側に対して反対側の第2主面を撮影手段で撮影する撮影工程と、
を含み、
前記保持工程の前に、前記半導体ウエハの反りの状態に基づいて、前記ステージの第1主面の前記吸気孔および前記給気孔の位置を取得する取得工程をさらに含み、
前記保持工程では、第1主面に前記取得工程で取得した位置で前記吸気孔および前記給気孔が配置された前記ステージを用い、
前記撮影工程の前に、前記吸気工程と前記給気工程とを同時に行って、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハの反りを矯正することを特徴とする半導体ウエハの検査方法。
【請求項9】
ステージの、半導体ウエハを載置する第1面から突出して設けられた第1保持部に、反りが生じた状態の前記半導体ウエハの、前記ステージに対向する第1主面の一部を接触させて、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハを保持し、さらに、前記第1保持部に対向して設けられた第2保持部に、前記半導体ウエハの第2主面の一部を接触させて、前記第1保持部との間で前記半導体ウエハを保持する保持工程と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が吸気手段に連結された複数の吸気孔から、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する吸気工程と、
前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が給気手段に連結された複数の給気孔から、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する給気工程と、
前記半導体ウエハの、前記ステージ側に対して反対側の第2主面を撮影手段で撮影する撮影工程と、
を含み、
前記撮影工程の前に、前記吸気工程と前記給気工程とを同時に行って、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハの反りを矯正することを特徴とする半導体ウエハの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体検査装置および半導体ウエハの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップの深さ方向または厚さ方向(深さ方向に対して反対方向)に主電流が流れる縦型の素子構造を採用したIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)などのパワー半導体装置では、オン抵抗を低減させるために、半導体ウエハの厚さを薄くすること(薄化)が求められている。
【0003】
図8は、従来の半導体検査装置による半導体ウエハの検査時の状態を模式的に示す断面図である。半導体ウエハ113の薄化は、半導体ウエハ113をいずれかの主面113a,113b側から所定厚さの位置まで研磨する研磨工程を行うが、この研磨工程により半導体ウエハ113に反りが生じる。半導体ウエハ113の反りとは、半導体ウエハ113がステージ111に向かう方向に突出する凸(以下、下方に凸とする)状に湾曲した断面形状になっているか(図8)、またはステージ111から離れる方向に突出する凸(以下、上方に凸とする)状に湾曲した断面形状になっている(不図示)ことである。
【0004】
半導体ウエハ113に反りが生じていると、半導体検査装置110の検査ヘッド(撮影手段)112と半導体ウエハ113の主面(検査面)113bとの間の間隔h101が半導体ウエハ113の検査面113bの面内で一定にならない。このため、検査ヘッド112による一回の走査114(横向きの矢印)で半導体ウエハ113の検査面113bの全面にわたって、互いに隣り合うチップ領域(半導体チップとなる部分:不図示)の外観検査を連続して行う際に、焦点深度h102を一定に保つことができない。したがって、半導体ウエハ113の検査面113bの面内での外観検査の検査感度が安定しない。
【0005】
特に半導体ウエハ113の径(直径)が大きくなること(大口径化)に伴って半導体ウエハ113の反りも大きくなるため、半導体ウエハ113の外観検査に対する半導体ウエハ113の反りによる悪影響も益々大きくなっている。このように半導体ウエハ113の反りによって生じる問題を解決した従来技術として、半導体ウエハとステージとの間の空気を吸引すること、もしくは当該空気の吸引とともに、半導体ウエハとステージとの間に空気を供給することで、半導体ウエハの反りを矯正して平坦にする半導体検査装置が提案されている(例えば、下記特許文献1~4参照。)。
【0006】
下記特許文献1では、半導体ウエハを載置するステージは、半導体ウエハとステージとの間の大気(空気)を吸引して、半導体ウエハのステージに対向する主面(以下、対向面とする)との間に負圧を生じさせて部分的に吸着する複数の吸気孔を有する。これらステージの複数の吸気孔について、半導体ウエハの面内において、半導体ウエハの反り量が相対的に大きい部分に対応する吸気孔の吸着力を、半導体ウエハの反り量が相対的に小さい部分に対応する吸気孔の吸着力よりも大きくすることで、半導体ウエハの反りを矯正して平坦にするとともに、半導体ウエハとステージとの接触抵抗を小さくしている。
【0007】
下記特許文献2では、半導体ウエハを載置するステージは、半導体ウエハとステージとの間の大気を吸引して、半導体ウエハの対向面との間に負圧を生じさせて部分的に吸着する複数の吸気孔と、これら複数の吸気孔のすべてに連結された渦巻き状の平面形状の吸気通路と、を有する。吸気通路内の大気を吸引する真空ポンプによる吸引力を、最初に渦巻状の吸気通路の始端付近の直上で半導体ウエハの中心部に作用させ、吸気通路の外周に向かうほど吸気通路の各部の直上での半導体ウエハの各部に遅れて作用させることで、半導体ウエハの反りを矯正して平坦にしている。
【0008】
下記特許文献3では、半導体ウエハを載置するステージは、チャックステージ上に設けられ、チャックステージが作り出す負圧により、チャックステージに接する面に対して反対側の面上に半導体ウエハを吸着して固定する。また、当該ステージは、チャックステージに接する面に複数の溝を有し、半導体ウエハを載置する面から各溝の底面に貫通する複数の吸気孔を有する。同一の溝に2つ以上の吸気孔を貫通させて、半導体ウエハの中央部から端部に向かって吸気孔の分布密度を変化させ、半導体ウエハの面内での負圧を変化させることで、半導体ウエハの反りを矯正して平坦にしている。
【0009】
下記特許文献4では、半導体ウエハを載置するステージは、半導体ウエハとステージとの間の空気を吸気する吸気孔と、半導体ウエハとステージとの間に空気を供給する給気孔と、を有する。吸気孔および給気孔は、ステージの中心から放射状にそれぞれ複数個ずつ配置されている。給気孔から半導体ウエハとステージとの間に空気を供給するとともに、排気口から半導体ウエハとステージとの間の空気を吸引して、半導体ウエハとステージとの間に形成される空気層を略均一な状態(圧力分布が発生しない状態)にすることで、半導体ウエハの反りを矯正して平坦にしている。
【0010】
図9は、従来の半導体検査装置による半導体ウエハの検査時の別例の状態を模式的に示す断面図である。図9に示す従来の半導体検査装置120は、半導体ウエハ123を載置するステージ121と、半導体ウエハ123を撮影する検査ヘッド122と、を有する半導体ウエハ外観検査装置である。ステージ121は、多孔質セラミックを用いた一般的な平板状のポーラスチャックであり、半導体ウエハ123を載置する面(以下、載置面とする)121aの全面にわたって吸気孔となる複数の細孔(縦縞のハッチングで示す)を有する。吸気孔はステージ121を両面(平坦面)121a,121b間で貫通する。
【0011】
半導体ウエハ123とステージ121との間の空気が吸気孔から吸引125(下向きの矢印)されることで、半導体ウエハ123の、ステージ121に対向する主面(対向面)123aの全面がステージ121の載置面121aに押し付けられる。これによって、半導体ウエハ123は、反っていたとしても(図8の半導体ウエハ113を参照)、反りが矯正され平坦になる。このため、検査ヘッド122と半導体ウエハ123の検査面123bとの間の間隔h201が半導体ウエハ123の面内で一定になり、検査ヘッド122による一回の走査124(横向きの矢印)時に焦点深度h202が一定に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-195016号公報
【文献】特開2015-026765号公報
【文献】特開2017-027974号公報
【文献】特開2007-214336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来の半導体検査装置120(図9参照)では、半導体ウエハ123がステージ121に接触することに起因して、半導体ウエハ123に不良箇所が発生する虞がある。この問題は、特に、反りが生じている半導体ウエハ123で顕著にあらわれる。その理由は、半導体ウエハ123に反りが生じていると、半導体ウエハ123の、ステージ121から離れた部分をステージ121に接触させるために、半導体ウエハ123を反った状態のままステージ111に単に固定するためだけに吸着する場合と比べて大きい吸引力で半導体ウエハ123を吸引125する必要がある。
【0014】
半導体ウエハ123を吸引125する吸引力は、ステージ121(ポーラスチャック)の載置面121aの面内で略等しい。このため、半導体ウエハ123の対向面123aの、ステージ121から最も離れた部分をステージ121に接触させるための吸引力で半導体ウエハ123の対向面123aの全面が吸引125され、半導体ウエハ123の対向面123aの、ステージ121に相対的に近い部分がステージ121に強く押し付けられる。これによって、半導体ウエハ123の検査時に、半導体ウエハ123の対向面123a上の電極パターンの潰れや欠損、異物付着および傷等が生じてしまう。
【0015】
そして、パターン潰れや欠損による短絡や開放、異物による短絡やイオン注入の遮断、半導体ウエハ123の対向面123aが半導体チップの裏面にあたる場合には傷によるフィールドストップ(FS)層の分断等の不良が発生する虞がある。半導体ウエハ123の、ステージ121に相対的に近い部分とは、半導体ウエハ123に下方に凸状に湾曲する反りが生じている場合においては半導体ウエハ123の対向面123aの略中央の頂点部付近であり、半導体ウエハ123に上方に凸状に湾曲する反りが生じている場合においては半導体ウエハ123の対向面123aの端部付近である。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、半導体ウエハの検査時の不良発生を抑制するとともに、半導体ウエハの検査感度を安定させることができる半導体検査装置および半導体ウエハの検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体検査装置は、次の特徴を有する。ステージは、半導体ウエハを載置する。第1保持部は、前記ステージの、前記半導体ウエハを載置する第1面から突出して設けられ、前記半導体ウエハの、前記ステージに対向する第1主面の一部に接触して、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハを保持する。複数の吸気孔は、前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が吸気手段に連結された、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する。
【0018】
複数の給気孔は、前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が給気手段に連結された、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する。撮影手段は、前記半導体ウエハの、前記ステージ側に対して反対側の第2主面を撮影する。前記撮影手段で前記半導体ウエハを撮影する前に、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を前記吸気孔から吸引するとともに、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に前記給気孔から気体を供給して、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハの反りを矯正する制御がなされる。
【0019】
また、この発明にかかる半導体検査装置は、上述した発明において、前記第1保持部は、前記半導体ウエハの第1主面の外周部に接触して、前記半導体ウエハを保持することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体検査装置は、上述した発明において、前記第1保持部は、前記ステージの第1面から離れる方向および前記ステージの第1面に近づく方向に前記半導体ウエハを移動させるよう可動可能な状態で前記ステージの第1面に支持されていることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体検査装置は、上述した発明において、前記第1保持部に対向して設けられ、前記半導体ウエハの第2主面の一部に接触して、前記第1保持部との間で前記半導体ウエハを保持する第2保持部をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体検査装置は、上述した発明において、前記吸気孔は、前記ステージの第1面の所定区分ごとにまとめてそれぞれ異なる前記吸気手段に連結されている。前記所定区分ごとに異なる吸気量で、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する制御がなされることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体検査装置は、上述した発明において、前記給気孔は、前記ステージの第1面の所定区分ごとにまとめてそれぞれ異なる前記給気手段に連結されている。前記所定区分ごとに異なる給気量で、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する制御がなされることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体検査装置は、上述した発明において、前記ステージの第1主面の、前記半導体ウエハの反りの状態に基づいて予め取得された位置に前記吸気孔および前記給気孔が設けられていることを特徴とする。
【0025】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体ウエハの検査方法は、次の特徴を有する。ステージの、半導体ウエハを載置する第1面から突出して設けられた第1保持部に、反りが生じた状態の前記半導体ウエハの、前記ステージに対向する第1主面の一部を接触させて、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハを保持する保持工程を行う。前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が吸気手段に連結された複数の吸気孔から、前記半導体ウエハと前記ステージとの間の気体を吸引する吸気工程を行う。前記ステージの第1面の所定位置に一方の開口部が設けられ、他方の開口部が給気手段に連結された複数の給気孔から、前記半導体ウエハと前記ステージとの間に気体を供給する給気工程を行う。前記半導体ウエハの、前記ステージ側に対して反対側の第2主面を撮影手段で撮影する撮影工程を行う。前記撮影工程の前に、前記吸気工程と前記給気工程とを同時に行って、前記ステージの第1面から離れた位置で前記半導体ウエハの反りを矯正する。
【0026】
また、この発明にかかる半導体ウエハの検査方法は、上述した発明において、前記保持工程の前に、前記半導体ウエハの反りの状態に基づいて、前記ステージの第1主面の前記吸気孔および前記給気孔の位置を取得する取得工程をさらに含む。前記保持工程では、第1主面に前記取得工程で取得した位置で前記吸気孔および前記給気孔が配置された前記ステージを用いることを特徴とする。また、この発明にかかる半導体ウエハの検査方法は、上述した発明において、前記保持工程では、さらに、前記第1保持部に対向して設けられた第2保持部に、前記半導体ウエハの第2主面の一部を接触させて、前記第1保持部との間で前記半導体ウエハを保持することを特徴とする。
【0027】
上述した発明によれば、半導体ウエハが吸気孔に対向する部分でステージ側に引っ張られるとともに、給気孔に対向する部分でステージから離れる方向に押し上げられるため、半導体ウエハをステージに接触させずに、半導体ウエハの反りを矯正することができる。また、反りを矯正した略平坦な状態で半導体ウエハの外観検査を行うため、検査ヘッドと半導体ウエハの検査面との間の間隔が略一定になり、半導体ウエハの検査面の面内にわたって焦点深度を一定に保った状態で、半導体ウエハの外観検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる半導体検査装置および半導体ウエハの検査方法によれば、半導体ウエハの検査時の不良発生を抑制するとともに、半導体ウエハの検査感度を安定させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】半導体検査装置による半導体ウエハの検査時の状態の一例を模式的に示す断面図である。
図2】半導体検査装置による半導体ウエハの検査時の状態の一例を模式的に示す断面図である。
図3】実施の形態にかかる半導体検査装置の別例を模式的に示す斜視図である。
図4】実施の形態にかかる半導体検査装置の別例をステージの載置面側から見た状態を示す平面図である。
図5図4の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
図6図4の切断線B-B’における断面構造を示す断面図である。
図7】実施の形態にかかる半導体検査装置による別の半導体ウエハの検査時の状態の一例を模式的に示す断面図である。
図8】従来の半導体検査装置による半導体ウエハの検査時の状態を模式的に示す断面図である。
図9】従来の半導体検査装置による半導体ウエハの検査時の別例の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体検査装置および半導体ウエハの検査方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体検査装置の構造について説明する。図1,2は、実施の形態にかかる半導体検査装置による半導体ウエハの検査時の状態の一例を模式的に示す断面図である。図3は、実施の形態にかかる半導体検査装置の別例を模式的に示す斜視図である。図4は、実施の形態にかかる半導体検査装置の別例をステージの載置面側から見た状態を示す平面図である。図5,6は、それぞれ図4の切断線A-A’およびB-B’における断面構造を示す断面図である。図7は、実施の形態にかかる半導体検査装置による別の半導体ウエハの検査時の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【0032】
図1,2に示す実施の形態にかかる半導体検査装置10a,10bは、半導体ウエハ13(3)を載置するステージ11と、反りを矯正した状態の半導体ウエハ3の検査面3bを撮影する検査ヘッド(撮影手段)12と、検査ヘッド12を移送する移送手段(不図示)と、を有する半導体ウエハ外観検査装置である。実施の形態にかかる半導体検査装置10a,10bが一般的な半導体ウエハ外観検査装置と異なる点は、ステージ11が半導体ウエハ13の反りを矯正する機構を備える点である。図1,2には、反りを矯正する前(図1,2で反りの湾曲方向が異なる)の半導体ウエハ13を破線で示し、反りを矯正した状態の半導体ウエハ3を実線で示す。
【0033】
一般的な半導体ウエハ外観検査装置とは、例えば、図8に示す従来の半導体検査装置110であり、半導体ウエハ113を反った状態のまま単に固定するためだけに吸着する吸着手段を備えたステージ111を有し、ステージ111上の半導体ウエハ113の検査面113bの面内において所定の焦点深度h102を一定に保った検査ヘッド(撮影手段)112による一回の走査114で半導体ウエハ113の検査面113bの全面を撮影する。具体的には、一般的な半導体ウエハ外観検査装置とは、例えば、株式会社SCREENホールディングス(登録商標)のZI-2000(商標)等である。
【0034】
実施の形態の検査対象となる半導体ウエハ13には、半導体装置の製造工程において半導体ウエハ13をいずれかの主面(第1,2主面)13a,13b側から所定厚さの位置まで研磨(もしくは研削、またはその両方)して薄化する工程により、半導体ウエハ13の素子構造に応じた所定の反り量および所定の湾曲方向の反りが生じている。半導体ウエハ13の反りとは、半導体ウエハ13がステージ11に向かう方向(湾曲方向)に突出する凸(下方に凸)状に湾曲した断面形状になっているか(図1)、またはステージ11から離れる方向に突出する凸(上方に凸)状に湾曲した断面形状になっている(図2)ことである。
【0035】
半導体ウエハ13の中央部は、半導体ウエハ13のダイシング(切断)後に半導体チップとなる領域(以下、チップ領域とする:不図示)が配置されたチップ有効領域(不図示)である。チップ有効領域には、格子状に配置されたダイシングラインと、ダイシングラインに周囲を囲まれてマトリクス状に配置された略矩形状の平面形状の複数のチップ領域と、が設けられている。チップ有効領域と半導体ウエハ13の端部(側面)との間は、チップ領域が配置されていない無効領域13cである。半導体ウエハ13の無効領域13cは、半導体ウエハ13の外周に沿って設けられ、チップ有効領域の周囲を囲む。
【0036】
半導体ウエハ13には、各チップ領域にそれぞれ、深さ方向または厚さ方向(深さ方向に対して反対方向)に主電流が流れる縦型の素子構造を採用したIGBTやMOSFET、ダイオードなどの半導体装置が形成されている。半導体ウエハ13の両面にそれぞれ金属電極が形成されている。半導体ウエハ13のおもて面となる一方の主面(主面13a,13bのいずれか)の金属電極を除く部分は樹脂材料で形成された保護膜で覆われ、裏面となる他方の主面の全面が金属電極で覆われている。半導体ウエハ13の厚さは、パワー半導体装置のオン抵抗および耐圧に応じた厚さに薄化されている。
【0037】
ステージ11は、例えば、半導体ウエハ13の径(直径)以上の直径の略円形状の平面形状の平坦な両面(第1,2面)11a,11bを有する台座である。ステージ11は、半導体ウエハ13を載置する面(載置面)11aの外周に、半導体ウエハ13を保持する第1保持部11cを有する。第1保持部11cは、ステージ11の載置面11aから離れる方向に突出する突起部であり、半導体ウエハ13の、ステージ11に対向する主面(対向面:ここでは主面13aが対向する場合を例に説明)の無効領域13cに頂点部で接し、ステージ11の載置面11aに半導体ウエハ13が接しない高さ位置で半導体ウエハ13を保持する。
【0038】
第1保持部11cは、ステージ11の載置面11aからの自身の頂点部の上下方向(ステージ11の載置面11aから離れる方向に上げる、およびステージ11の載置面11aに近づく方向に下げる)の高さ位置が変更されるように可動可能な状態でステージ11に支持されているもよい。第1保持部11cが上下方向に可動することにより、ステージ11の載置面11aからの第1保持部11cの頂点部の高さ位置が変更されればよく、第1保持部11cの全体を上昇または下降させる構成であってもよいし、第1保持部11cの長さ(高さ)が上下方向に伸縮する構成であってもよい。
【0039】
第1保持部11cの可動により、ステージ11の載置面11aからの半導体ウエハ13の高さ位置を変えることができる。このため、例えば、半導体ウエハ13がステージ11の載置面11aに接しない位置まで第1保持部11cの頂点部の高さ位置を上げてから、半導体ウエハ13をステージ11の載置面11aに載置して第1保持部11cで保持する。その後、半導体ウエハ13の反りを矯正する前に、半導体ウエハ13がステージ11の載置面11aに接触しない程度に第1保持部11cの頂点部の高さ位置を下げることで、半導体ウエハ13とステージ11との間の間隔を狭くしてもよい。
【0040】
第1保持部11cの頂点部の高さ位置を上げてから、第1保持部11cに半導体ウエハ13の対向面13aを接触させることで、例えば、半導体ウエハ13に下方に凸状に湾曲した反りが生じている場合に、半導体ウエハ13の対向面13aの略中央の頂点部がステージ11の載置面11aに接触することを防止することができる。また、半導体ウエハ13とステージ11との間の間隔を狭くしてから、後述するように半導体ウエハ13の反りを矯正することで、半導体ウエハ13とステージ11との間の圧力(空気圧)の調整を短い時間で制御性よく行うことができる。
【0041】
第1保持部11cは、例えば、ステージ11の載置面11aの外周に沿って点在してもよいし(図3参照)、ステージ11の載置面11aの外周に沿って延在する円形状の平面形状を有していてもよい(不図示)。第1保持部11cよりもステージ11の載置面11aから離れた位置で、半導体ウエハ13の検査面(対向面13aに対して反対側の主面)13bの無効領域13cに接する第2保持部17aが設けられてもよい。第2保持部17aの断面形状および配置は、例えば、第1保持部11c上に載置される半導体ウエハ13を基準として第1保持部11cと面対称となっている(図3参照)。
【0042】
第2保持部17aは、例えば、ステージ11の載置面11aに対向して配置された略円形枠状の平面形状の固定治具17からステージ11側へ突出する突起部である。固定治具17は、例えば、ステージ11と略同じ外寸を有し、ステージ11の載置面11aから自身の高さ位置を上下方向19(縦方向の両矢印)に変更(ステージ11の載置面11aから離れる方向に上げる、およびステージ11の載置面11aに近づく方向に下げる)可能な状態で柱状の支持部18に支持されている。略同じ外寸とは、成形プロセスのばらつきによる許容誤差を含む範囲で略同じ外周を有することを意味する。
【0043】
例えば、支持部18の長さが上下方向19に伸縮することで、ステージ11の載置面11aから固定治具17の高さ位置が変更され、固定治具17に配置された第2保持部17aの、ステージ11の載置面11aからの高さ位置が決定される。第2保持部17aは、半導体ウエハ13の検査面13bの無効領域13cに頂点部で接し、ステージ11の載置面11aに半導体ウエハ13が接しない高さ位置で半導体ウエハ13を保持する。第1,2保持部11c,17aの頂点部間に半導体ウエハ13の無効領域13cが挟み込まれることで、ステージ11上に半導体ウエハ13が固定される。
【0044】
第2保持部17aを設けることで、第1保持部11cのみで半導体ウエハ13を保持する場合と比べて、半導体ウエハ13の位置ずれを抑制することができる。例えば、下方に凸状に湾曲した反りが生じている半導体ウエハ13を第1保持部11cの頂点部上に載置した後、当該半導体ウエハ13の無効領域13cを検査面13b側から第2保持部17aで下方の第1保持部11cに押し付ける。これによって、半導体ウエハ13の反りが若干矯正されて、半導体ウエハ13の対向面13aの略中央の頂点部がステージ11の載置面11aに接触することを防止することができる。
【0045】
第1,2保持部11c,17aは、半導体ウエハ13に付着しにくい樹脂材料で形成されている。第1,2保持部11c,17aがテフロン(登録商標)等の半導体ウエハ13に付着しやすい樹脂材料で形成されていると、第1,2保持部11c,17aの付着物による悪影響が半導体ウエハ13に及ぶからである。また、半導体ウエハ13との接触箇所で第1,2保持部11c,17aの一部が剥がれることで、半導体ウエハ13の位置ずれが生じるからである。具体的には、第1,2保持部11c,17aは、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂で形成されていることがよい。
【0046】
ステージ11の載置面11aには、吸気孔15および給気孔16がそれぞれ互いに離れて複数配置されている。吸気孔15および給気孔16は、ステージ11を両面(平坦面)11a,11b間で貫通するか、またはステージ11を載置面11aから側面へ貫通していてもよい。ステージ11に載置された半導体ウエハ13は、吸気孔15に対向する部分でステージ11側に引き寄せられ、給気孔16に対向する部分でステージ11から離れるように押される。このため、半導体ウエハ13の反りが矯正されるように、吸気孔15および給気孔16それぞれの配置、個数および径(直径)が設定される。
【0047】
吸気孔15および給気孔16それぞれの配置、個数および径は、半導体ウエハ13の径や厚さ、反り量(半導体ウエハ13の面内でのステージ11との間の間隔)、湾曲方向(凸状に湾曲する方向)等に基づいて予め取得する。上述したように半導体ウエハ13の反り量および湾曲方向はチップ領域に形成された素子構造に応じて決まる。このため、これらの条件は、例えば実験および実際の検査による経験則やシミュレーションにより取得すればよい。これらの予め取得した条件で作製したステージ11を用いることで、半導体ウエハ13の反りが矯正され、半導体ウエハ13を平坦に近づけることができる。
【0048】
例えば、下方に凸状に湾曲した反りが生じている半導体ウエハ13は、外周付近でステージ11から最も離れ、中央付近でステージ11に最も近づいた状態となる(図1参照)。このため、載置面11aの、半導体ウエハ13の外周に対向する位置に吸気孔15を配置し、半導体ウエハ13の中央付近に対向する位置に給気孔16(16a)を配置したステージ11を用意する。このステージ11によって、半導体ウエハ13の外周付近がステージ11側に引き寄せられ、かつ半導体ウエハ13の中央付近がステージ11から離れるように押されるため、半導体ウエハ13の反りが矯正される。
【0049】
一方、上方に凸状に湾曲した反りが生じている半導体ウエハ13は、外周付近でステージ11に最も近づき、中央付近でステージ11から最も離れた状態となる(図2参照)。このため、載置面11aの、半導体ウエハ13の中央付近に対向する位置に吸気孔15を配置し、半導体ウエハ13の外周に対向する位置に給気孔16(16b)を配置したステージ11を用意する。このステージ11によって、半導体ウエハ13の外周付近がステージ11から離れるように押され、かつ半導体ウエハ13の中央付近がステージ11側に引き寄せられるため、半導体ウエハ13の反りが矯正される。
【0050】
具体的には、吸気孔15は、多孔質セラミックの細孔のように、ステージ11の載置面11aの全面にわたって略均一に配置されることがよい。例えば、吸気孔15は、ステージ11の中心から放射状に所定間隔で点在して配置されてもよい(図4参照)。吸気孔15は、ステージ11の載置面11a側の開口部が半導体ウエハ13に対向し、他方の開口部がパイプ33を介して外部の吸引装置(例えば真空ポンプ:吸気手段)に連結される(図4~6参照)。吸気孔15は、ステージ11の載置面11aの所定区分31a~31cごとにまとめて、それぞれ異なるパイプ33を介して異なる吸引装置に連結されることがよい。
【0051】
これによって、所定区分31a~31cごとに吸気孔15をまとめて異なるパイプ33を介して異なる吸引装置に連結して、所定区分31a~31cごとに異なる吸気量で、半導体ウエハ13の対向面13aと吸気孔15との間の大気を吸引することができる。所定区分31a~31cごとに吸気孔15の配置、個数および径を変えてもよい。図5,6には、ステージ11(ハッチング部分)の載置面11aの所定区分31cの吸気孔15がパイプ33cを介して吸引装置に接続されている場合を示している。所定区分31a,31bの吸気孔15の吸引装置への連結も図5,6に示す所定区分31cの吸気孔15と同様にそれぞれ異なる吸引装置に連結すればよい。
【0052】
吸引装置を作動させることで、半導体ウエハ13とステージ11との間の大気(空気)がパイプ33を介して吸気孔15から吸引(図1,2の下向きの矢印)される。これによって、半導体ウエハ13の対向面13aと吸気孔15との間の圧力が減少して生じる負圧により、半導体ウエハ13が吸気孔15に対向する部分でステージ11側に引っ張られる。吸引装置には、一般的な圧力制御計(真空ポンプ)を用いることができる。具体的には、吸引装置は、例えば日本電産コパル電子株式会社(商標)の圧力スイッチPS6(商標)であってもよい。
【0053】
給気孔16は、半導体ウエハ13とステージ11との間の間隔が相対的に近くなる位置に配置されるか(図1,2参照)、またはステージ11の載置面11aに所定間隔で配置(例えばステージ11の中心から放射状に点在して配置)されてもよい(図4参照)。給気孔16は、ステージ11の載置面11a側の開口部が半導体ウエハ13に対向し、他方の開口部がパイプ32を介して外部の給気装置(例えば送気ポンプまたは圧縮ボンベ:給気手段)に連結される(図4,5参照)。給気孔16は、ステージ11の載置面11aの所定区分31a~31cごとにまとめて、それぞれ異なるパイプ32を介して異なる吸引装置に連結されることがよい。
【0054】
これによって、所定区分31a~31cごとに給気孔16をまとめて異なるパイプ32を介して異なる吸引装置に連結して、所定区分31a~31cごとに異なる供給量で、半導体ウエハ13の対向面13aと給気孔16との間に空気を供給することができる。所定区分31a~31cごとに給気孔16の配置、個数および径を変えてもよい。図5には、ステージ11(ハッチング部分)の載置面11aの所定区分31cの給気孔16がパイプ32cを介して給気装置に接続されている場合を示している。所定区分31a,31bの給気孔16の給気装置への連結も図5に示す所定区分31cの給気孔16と同様にそれぞれ異なる給気装置に連結すればよい。
【0055】
給気装置を作動させることで、半導体ウエハ13とステージ11との間にパイプ32を介して給気孔16から気体(空気)が供給(図1,2の上向きの矢印)される。これによって、半導体ウエハ13の対向面13aと給気孔16との間の圧力(空気圧)が増加し、半導体ウエハ13が給気孔16に対向する部分でステージ11から離れる方向に押し上げられる。給気装置には、一般的な圧力制御計(ポンプ)を用いることができる。具体的には、給気装置は、吸気孔15に連結される吸引装置と同様に、例えば日本電産コパル電子株式会社(商標)の圧力スイッチPS6(商標)であってもよい。
【0056】
図4には、給気孔16の個数が吸気孔15の個数よりも多く、給気孔16の径が吸気孔15の径よりも大きい場合を示すが、上述したように吸気孔15および給気孔16それぞれの配置、個数および径は半導体ウエハ13の状態(径や厚さ、反り量、湾曲方向)に基づいて予め設定される。また、吸気孔15での吸気量および給気孔16での給気量を調整することで、半導体ウエハ13のいずれの反りの状態(反り量および湾曲方向)にも同一のステージ11を用いることができる。吸気孔15での吸気量および給気孔16での給気量は、半導体ウエハ13の状態に基づいて予め取得すればよい。
【0057】
半導体ウエハ13の両主面13a,13bともに検査を行う場合、半導体ウエハ13は、一方の主面がステージ11に対向するときに下方に凸状に湾曲した状態となり、他方の主面がステージ11に対向するときに上方に凸状に湾曲した状態となる。この場合、半導体ウエハ13の両主面13a,13bそれぞれに対応したステージ11を用意してもよい。または、半導体ウエハ13のいずれの反りの状態にも適用可能なように吸気孔15および給気孔16それぞれの配置、個数および径が設定された1つのステージ11を用いて、吸気孔15での吸気量および給気孔16での給気量を調整してもよい。
【0058】
検査ヘッド12の構成は、一般的な半導体ウエハ外観検査装置(図9参照)の検査ヘッド122と同様である。検査ヘッド12は、対象物を所定の焦点深度(結像範囲)で結像させる光学系レンズと、当該対象物を撮影(もしくは観察)する撮影手段と、を有する。検査ヘッド12は、ステージ11の載置面11aに載置された半導体ウエハ3(対象物)に対向して配置される。検査ヘッド12は、移送手段(不図示)によってステージ11の載置面11aに平行に移送(走査)されながら、半導体ウエハ3の、検査ヘッド12に対向する主面(検査面)3bを撮影する。
【0059】
検査ヘッド12による撮影時、ステージ11上の半導体ウエハ3は、反りが矯正されて略平坦な状態となっている。半導体ウエハ3が略平坦な状態とは、半導体ウエハ3の検査面3bの面内で、検査ヘッド12と半導体ウエハ3の検査面3bとの間の間隔h1の変化量の絶対値が0mm以上0.1mm以下程度になっていることである。ステージ11上の半導体ウエハ3が略平坦な状態となっているため、半導体ウエハ3の検査面3bの面内において、検査ヘッド12の焦点深度h2が一定に保たれ、半導体ウエハ3の中央側および外周のいずれの個所においても焦点(ピント)があった状態で撮影することができる。
【0060】
実施の形態にかかる半導体検査装置10a,10b(図1~6参照)を用いた半導体ウエハ3の検査方法について説明する。半導体ウエハ13には、一般的な半導体装置の製造方法により所定の縦型の素子構造が形成される。この素子構造の形成時に半導体ウエハ13が薄化されることで、半導体ウエハ13に反りが生じる。そこで、実施の形態にかかる半導体検査装置10a,10bのステージ11の第1保持部11c上に半導体ウエハ13を載置した後、半導体ウエハ13の検査面13bを検査ヘッド12で撮影する前に、ステージ11上で半導体ウエハ13の反りを矯正する。
【0061】
半導体ウエハ13の反りを矯正するには、まず、上述したように半導体ウエハ13の状態(径や厚さ、反り量、湾曲方向)に基づいてステージ11の吸気孔15および給気孔16それぞれの配置、個数および径を取得する(取得工程)。半導体ウエハ13の状態と、吸気孔15および給気孔16の条件と、に基づいて吸気孔15での吸気量および給気孔16での給気量も取得してもよい。この場合、ステージ11の載置面11aの所定区分31a~31cごとに所定個数の吸気孔15をそれぞれ異なる吸引装置に連結し、所定個数の給気孔16をそれぞれ異なる給気装置に連結してもよい。
【0062】
次に、取得した吸気孔15および給気孔16の条件を満たすステージ11を用意して、実施の形態にかかる半導体検査装置10a,10bに取り付ける。次に、半導体ウエハ13を、検査面(図1,2では主面13b)に対して反対側の主面(対向面13a)をステージ11側にして、ステージ11の載置面11aに載置して第1保持部11cで保持する(保持工程)。このとき、固定治具17(図3参照)を備える場合、第1,2保持部11c,17a間に半導体ウエハ13を挟み込むように、さらに半導体ウエハ13の検査面13b側から第2保持部17aで半導体ウエハ13を保持してもよい。
【0063】
次に、吸引装置および給気装置を同時に作動させて、半導体ウエハ13とステージ11との間の大気を予め取得した吸気量で吸気孔15から吸引するとともに(吸気工程)、半導体ウエハ13とステージ11との間に予め取得した給気量で給気孔16から気体を供給する(給気工程)。これによって、半導体ウエハ13が吸気孔15に対向する部分でステージ11側に引っ張られるとともに、給気孔16に対向する部分でステージ11から離れる方向に押し上げられることで、半導体ウエハ3の対向面3aをステージ11に接触させずに、反りを矯正することができる。このため、半導体ウエハ3の新たな不良発生を抑制することができる。
【0064】
次に、検査ヘッド12による一回の走査14(横向きの矢印)で半導体ウエハ3の検査面3bの全面にわたって、半導体ウエハ3の検査面3bを撮影し(撮影工程)、記憶手段(不図示)への撮影画像の保存や、演算手段(不図示)により当該撮影画像および予め取得した情報に基づいて半導体ウエハ3の各チップ領域の良・不良の判別を行う。半導体ウエハ3は、反りを矯正した略平坦な状態であるため、検査面3bの面内にわたって検査ヘッド12との間隔h1が略一定となる。このため、焦点深度h2を一定に保った状態で、半導体ウエハ3の検査面3bの全面の外観検査を行うことができる。
【0065】
半導体ウエハ3の面内で半導体ウエハ13とステージ11との間での気体の流れのバランスをみて、吸気孔15および給気孔16の条件と、当該気体の吸気量および給気量と、を設定することがよい。なお、ステージ11、検査ヘッド12、移送手段、演算手段、吸引装置および給気装置等は半導体検査装置10a,10bの制御手段(不図示)によって制御される。また、本実施の形態にかかる半導体ウエハ13の検査方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータや、データベースサーバー、ウェブサーバーで実行することにより実現することができる。
【0066】
また、本実施の形態にかかる半導体ウエハ13の検査方法を実現するためのプログラムは、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)、ハードディスク、ブルーレイディスク(BD:Blu-ray(登録商標) Disc)、フレキシブルディスク、USBフラッシュメモリ、CD-ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータやサーバーによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【0067】
また、図7に示す中央部の厚さを薄くして外周部を所定幅で厚く残したリブ形状の半導体ウエハ43においても、厚さの薄い中央部に生じた反りを、上述したように通常の半導体ウエハ13と同様にステージ11に載置した状態で矯正することができる。リブ形状の半導体ウエハ43は、ほぼ均一な厚さの半導体ウエハの中央部を、一方の主面43a側から研磨(もしくは研削、またはその両方)して薄くし、無効領域43cとなる外周部を所定幅で外周に沿って中央部よりも厚く残すことで作製される。ほぼ均一な厚さとは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ厚さであることを意味する。
【0068】
リブ形状の半導体ウエハ43には、厚さを薄くした中央部に上方または下方に凸状に湾曲する反りが生じる。図7には、両主面43a,43bの中央部が中央部と外周部との厚さ差によって段差が生じている主面43a側に凸状に突出するように湾曲したリブ形状の半導体ウエハ43を示す。リブ形状の半導体ウエハ43は、例えば中央部と外周部との厚さ差によって段差が生じている主面(対向面)43aをステージ11側にして、ステージ11の載置面11aに載置され第1保持部11cで保持される。リブ形状の半導体ウエハ43の外周部の厚さを厚く残した部分(リブ)43dが第1保持部11cに接触する。
【0069】
以上、説明したように、実施の形態によれば、半導体検査装置のステージは、半導体ウエハを載置する載置面に、半導体ウエハを保持する保持部と、半導体ウエハとステージとの間の気体を吸引する吸気孔と、半導体ウエハとステージとの間に気体を供給する給気孔と、半導体ウエハの外見を検査する検査ヘッドと、を有する。ステージの載置面には、半導体ウエハの状態に基づいて予め取得され決定された配置、個数および径で吸気孔および給気孔がそれぞれ複数配置されている。このステージの載置面に接しないように、ステージの載置面上の保持部に半導体ウエハが保持される。
【0070】
この状態で、半導体ウエハとステージとの間の気体を吸気孔から吸引するとともに、半導体ウエハとステージとの間に給気孔から気体を供給する。これによって、半導体ウエハが吸気孔に対向する部分でステージ側に引っ張られるとともに、給気孔に対向する部分でステージから離れる方向に押し上げられるため、半導体ウエハをステージに接触させずに、半導体ウエハの反りを矯正することができる。したがって、半導体ウエハの検査時に半導体ウエハの不良発生を抑制することができ、半導体ウエハに素子構造の形成時に生じる不良(半導体ウエハの検査時以外で発生した不良)を確実に検出することができる。
【0071】
また、実施の形態によれば、反りを矯正した略平坦な状態で半導体ウエハの外観検査を行うため、検査ヘッドと半導体ウエハの検査面との間の間隔が略一定になり、半導体ウエハの検査面の面内にわたって焦点深度を一定に保った状態で、半導体ウエハの外観検査を行うことができる。このため、半導体ウエハの検査時の不良発生を抑制するとともに、半導体ウエハの互いに隣り合うチップ領域の外観検査を安定した検査感度で連続して行うことができる。また、ステージ上で半導体ウエハの反りを矯正することで、焦点深度が一定に保たれるため、半導体ウエハの外観検査を自動化することができる。
【0072】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施の形態では、半導体ウエハの外見検査を大気雰囲気で行う場合を例に説明しているが、これに限らず、大気以外の気体の雰囲気下で半導体ウエハの外見検査を行ってもよい。半導体ウエハを載置するステージの吸気孔および給気孔がそれぞれ外部の吸引装置および外部の給気装置に連結されている場合を例に説明しているが、これに限らず、半導体検査装置の構成部として吸引装置および給気装置が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかる半導体検査装置および半導体ウエハの検査方法は、縦型の素子構造が形成された半導体ウエハに有用であり、特に大口径の半導体ウエハに適している。
【符号の説明】
【0074】
3 反りを矯正した状態の半導体ウエハ
3a,3b 反りを矯正した状態の半導体ウエハの主面
10a,10b 半導体検査装置
11 ステージ
11a,11b ステージの面(平坦面)
11c ステージの保持部
12 検査ヘッド
13 反りを矯正する前の半導体ウエハ
13a,13b 反りを矯正する前の半導体ウエハの主面
13c 反りを矯正する前の半導体ウエハの無効領域
14 検査ヘッドの走査方向
15 ステージの吸気孔
16 ステージの給気孔
17 固定治具
17a 固定治具の保持部
18 固定治具の支持部
19 固定治具の移動方向(上下方向)
31a~31c ステージの載置面の区分
32,32c,33,33c パイプ
43 リブ形状の半導体ウエハ
43a,43b リブ形状の半導体ウエハの主面
43c リブ形状の半導体ウエハの無効領域
43d リブ形状の半導体ウエハのリブ
h1 検査ヘッドと半導体ウエハの検査面との間の間隔
h2 焦点深度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9