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特許7619007表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/233 20240101AFI20250115BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20250115BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20250115BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250115BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B60K35/233
G02B27/01
G09G5/00 550B
G09G5/00 550C
B60R11/02 C
B60R11/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020187825
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077138
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124461(JP,A)
【文献】特開2016-064760(JP,A)
【文献】国際公開第2011/036788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
G02B 27/01
G09G 5/00
G09G 5/36
B60R 11/02
B60R 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に平行に配置されたように表現したパースペクティブ画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記パースペクティブ画像の虚像を前景に重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置(30)であって、
1つ又は複数のプロセッサ(33)と、
メモリ(37)と、
前記メモリ(37)に格納され、前記1つ又は複数のプロセッサ(33)によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記観察者から見て前記前景の消失点(VP0)より下方に配置される第1消失点(VP1)を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、
前記観察者から見て前記第1消失点(VP1)より上方に配置される第2の消失点(VP2)を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行し、
前記プロセッサ(33)は、
前記パースペクティブ虚像が静止画であれば、前記第1の表示処理を実行し、
前記パースペクティブ虚像が動画であれば、前記第2の表示処理を実行する
表示制御装置(30)。
【請求項2】
路面に平行に配置されたように表現したパースペクティブ画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記パースペクティブ画像の虚像を前景に重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置(30)であって、
1つ又は複数のプロセッサ(33)と、
メモリ(37)と、
前記メモリ(37)に格納され、前記1つ又は複数のプロセッサ(33)によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記観察者から見て前記前景の消失点(VP0)より下方に配置される第1消失点(VP1)を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、
前記観察者から見て前記第1消失点(VP1)より上方に配置される第2の消失点(VP2)を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行し、
前記プロセッサ(33)は、
前記パースペクティブ虚像が、観察者から見て、遠近方向に伸縮しない動画、又は遠近方向に移動しない動画であれば、前記第1の表示処理を実行し、
前記パースペクティブ虚像が、観察者から見て、遠近方向に伸縮しているように知覚される動画、又は遠近方向に移動しているように知覚される動画であれば、前記第2の表示処理を実行する、
表示制御装置(30)。
【請求項3】
路面に平行に配置されたように表現したパースペクティブ画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記パースペクティブ画像の虚像を前景に重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置(30)であって、
1つ又は複数のプロセッサ(33)と、
メモリ(37)と、
前記メモリ(37)に格納され、前記1つ又は複数のプロセッサ(33)によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記観察者から見て前記前景の消失点(VP0)より下方に配置される第1消失点(VP1)を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、
前記観察者から見て前記第1消失点(VP1)より上方に配置される第2の消失点(VP2)を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行し、
前記プロセッサ(33)は、
周囲が暗い場合、前記第1の表示処理を実行し、
周囲が明るい場合、前記第2の表示処理を実行する、
表示制御装置(30)。
【請求項4】
路面に平行に配置されたように表現したパースペクティブ画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記パースペクティブ画像の虚像を前景に重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置(30)であって、
1つ又は複数のプロセッサ(33)と、
メモリ(37)と、
前記メモリ(37)に格納され、前記1つ又は複数のプロセッサ(33)によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記観察者から見て前記前景の消失点(VP0)より下方に配置される第1消失点(VP1)を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、
前記観察者から見て前記第1消失点(VP1)より上方に配置される第2の消失点(VP2)を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行し、
前記プロセッサ(33)は、
前記パースペクティブ虚像の移動速度又は変形速度が遅い場合、前記第1の表示処理を実行し、
前記パースペクティブ虚像の移動速度又は変形速度が速い場合、前記第2の表示処理を実行する、
表示制御装置(30)。
【請求項5】
路面に平行に配置されたように表現したパースペクティブ画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記パースペクティブ画像の虚像を前景に重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置(30)であって、
1つ又は複数のプロセッサ(33)と、
メモリ(37)と、
前記メモリ(37)に格納され、前記1つ又は複数のプロセッサ(33)によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記観察者から見て前記前景の消失点(VP0)より下方に配置される第1消失点(VP1)を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、
前記観察者から見て前記第1消失点(VP1)より上方に配置される第2の消失点(VP2)を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行し、
前記プロセッサ(33)は、
前記パースペクティブ虚像を表示し始めてから表示し終わるまでの期間が、所定の閾値より短い場合、前記第1の表示処理を実行し、
前記パースペクティブ虚像を表示し始めてから表示し終わるまでの期間が、前記所定の閾値より長い場合、前記第2の表示処理を実行する、
表示制御装置(30)。
【請求項6】
前記第2の表示処理において、
前記第2の消失点(VP2)は、前記前景の消失点(VP0)より下方に配置される、
請求項1乃至5のいずれかに記載の表示制御装置(30)。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の表示制御装置(30)と、
表示光を出射する光変調素子(50)と、
前記光変調素子(50)からの前記表示光を被投影部にむけるリレー光学系(80)と、を備える、ヘッドアップディスプレイ装置(20)。
【請求項8】
路面に平行に配置されたように表現したパースペクティブ画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記パースペクティブ画像の虚像を前景に重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御方法であって、
観察者から見て前景の消失点(VP0)より下方に配置される第1消失点(VP1)を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、
前記観察者から見て前記第1消失点(VP1)より上方に配置される第2の消失点(VP2)を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行し、
周囲が暗い場合、前記第1の表示処理を実行し、
周囲が明るい場合、前記第2の表示処理を実行する、
表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等の移動体で使用され、移動体の前景(車両の乗員から見た移動体の前進方向の実景)に画像を重畳して視認させる表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法等に関する。
【0002】
特許文献1には、車両のフロントウインドシールド等の被投影部に投射される表示光が、車両の内側にいる車両の乗員(観察者)に向けて反射されることで、観察者に、車両の前景と重なる虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置(虚像表示装置の一例)が記載されている。特に、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、前景の空間内の奥行きや上下左右方向の所定の位置(ここでは、前記位置をターゲット位置ということにする。)に仮想的に表示オブジェクト(虚像)を配置し、車両の姿勢の変化があった場合や観察者の目位置の変化があった場合であっても、あたかも前景のターゲット位置に表示オブジェクトが存在するかのように、ヘッドアップディスプレイ装置の内部で表示する画像を制御する。すなわち、このようなヘッドアップディスプレイ装置は、現実の風景(前景)に仮想オブジェクトを付加して表示する拡張現実を形成する。
【0003】
特許文献1の図4の例では、自車両が走行する路面から少し浮遊した位置(路面の上方向に離れた位置)に、前方を指示する矢印形状(換言すると、後方から前方に向かって延びる矢印形状)の仮想オブジェクトを表示している。このような場合、観察者は、特許文献1の図5の例のように、矢印の後端側の幅(典型的には、左右方向の幅)が、先端に向かうにつれて徐々に狭くなることで、遠近感が表現される。すなわち、矢印の後端が近傍で矢印の先端が遠方であるように知覚される。このような遠近感を生じさせる表現は、典型的には、線遠近法(透視図法)などの手法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-156608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなヘッドアップディスプレイ装置は、典型的には、虚像を表示可能な領域が平面又は局面の領域(ここでは、前記領域を虚像表示領域ということにする。)であり、前記虚像表示領域は、観察者の視線に対して正対するように配置される。すなわち、自車両の左右方向から見た場合、虚像が表示される虚像表示領域と、自車両が走行する路面との間の角度は、概ね90度に設定される(虚像表示領域が路面と概ね平行となるように配置されない)。
【0006】
図10は、自車両の走行中において、観察者が視認する、自車両のフロンウインドシールドWSを介して視認する前景及び、前記前景と重なる虚像表示領域1000に表示されるパースペクティブ画像1100の様子を示す図である。図10では、線遠近法を用いて路面に平行に配置されたように表現したパースペクティブ画像の態様を示しており、自車両の走行レーン1010の左側ラインを符号1011で示し、右側ラインを符号1012で示し、これら左側ライン1011の延長線と右側ライン1012の延長線との交点を消失点1020とする。図10のパースペクティブ画像1100は、台形であり、線遠近法(一点透視法)により、台形の左辺1101の延長線と右辺1102の延長線との交点が前記消失点1020と一致するように表現される。これにより、走行レーン1010の面に平行にパースペクティブ画像1100が配置されているように絵画的には表現される。
【0007】
しかしながら、上述したように、虚像表示領域が路面と概ね平行となるように配置されていない、すなわち、自車両が走行する路面に対して、概ね90度だけ観察者側に起き上がった虚像表示領域に、図10に示すようなパースペクティブ画像1100を表示しても、パースペクティブ画像1100の遠方端1110と走行レーン1010との間の距離が、近傍端1120と走行レーン1010との間の距離より長く、走行レーン1010の平行面に対して、パースペクティブ画像1100の遠方端1110が観察者側に起き上がったように知覚されてしまい、走行レーン1010の面に平行であるように感得することが困難となり、改善の余地があった。
【0008】
本明細書に開示される特定の実施形態の要約を以下に示す。これらの態様が、これらの特定の実施形態の概要を読者に提供するためだけに提示され、この開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本開示は、以下に記載されない種々の態様を包含し得る。
【0009】
本開示の概要は、走行レーンの面に平行であるように感得しやすい画像を表示する表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法等を提供することに関する。
【0010】
したがって、本明細書に記載される表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法等は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。本実施形態は、観察者から見て前景の消失点より下方に配置される第1消失点を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、観察者から見て第1消失点より上方に配置される第2の消失点を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行する、ことをその要旨とする。
【0011】
したがって、本明細書に記載される表示制御装置は、画像を被投影部材に投影することで、観察者に画像の虚像を前景に重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置であって、1つ又は複数のプロセッサと、メモリと、メモリに格納され、1つ又は複数のプロセッサによって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、プロセッサは、観察者から見て前景の消失点より下方に配置される第1消失点を有する第1の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第1の表示処理と、観察者から見て第1消失点より上方に配置される第2の消失点を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像として表示する第2の表示処理と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、車両用虚像表示システムの車両への適用例を示す図である。
図2図2は、ヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す図である。
図3図3は、実景のターゲット位置に配置される仮想オブジェクトと、仮想オブジェクトが実景のターゲット位置に視認されるように虚像表示領域に表示される画像と、を概念的に示した図である。
図4図4は、自車両の走行中において、観察者が視認する前景と、前景に重畳して表示される第1の表示態様の虚像の例を示す図である。
図5A図5Aは、パースペクティブ画像の変形例を示す図である。
図5B図5Bは、パースペクティブ画像の変形例を示す図である。
図5C図5Cは、パースペクティブ画像の変形例を示す図である。
図5D図5Dは、パースペクティブ画像の変形例を示す図である。
図6図6は、自車両の走行中において、観察者が視認する前景と、前景に重畳して表示される第2の表示態様の虚像の例を示す図である。
図7A図7Aは、第2消失点を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像Vを示す図である。
図7B図7Bは、第2消失点を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像Vを示す図である。
図8図8は、いくつかの実施形態の車両用虚像表示システムのブロック図である。
図9図9は、パースペクティブ虚像を第1の表示態様又は第2の表示態様で表示させる表示制御処理を実行する表示制御方法を示すフロー図である。
図10図10は、従来例に関する図であり、自車両の走行中において、観察者が視認する前景と、前景に重畳して表示される虚像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1ないし図8では、例示的な車両用虚像表示システムの構成、及び動作の説明を提供する。なお、本発明は以下の実施形態(図面の内容も含む)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0014】
図1を参照する。図1は、車両用虚像表示システムの車両への適用例を示す図である。なお、図1において、車両(移動体の一例。以下では、自車両とも呼ぶ。)1の左右方向(換言すると、車両1の幅方向)をX軸(X軸の正方向は、車両1の前方を向いた際の左方向。)とし、左右方向に直交すると共に、地面又は地面に相当する面(ここでは路面6)に直交する線分に沿う上下方向(換言すると、車両1の高さ方向)をY軸(Y軸の正方向は、上方向。)とし、左右方向及び上下方向の各々に直交する線分に沿う前後方向をZ軸(Z軸の正方向は、車両1の直進方向。)とする。この点は、他の図面においても同様である。
【0015】
車両用虚像表示システム10におけるヘッドアップディスプレイ装置(虚像表示装置の一例。)20は、車両(移動体の一例。)1のダッシュボード5内に設けられたヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置である。HUD装置20は、表示光Kをフロントウインドシールド2(被投影部の一例である)に向けて出射し、フロントウインドシールド2は、HUD装置20が表示する画像の表示光Kをアイボックス200へ反射する。HUD装置20は、車両1に関する情報(以下、車両情報と言う。)だけでなく、車両情報以外の情報も統合的に車両1の乗員(前記乗員は、典型的には、車両1の運転者である。)に報知する。なお、車両情報は、車両1自体の情報だけでなく、車両1の運行に関連した車両1の外部の情報も含む。
【0016】
図示するように、車両(自車両)1に備わる車両用虚像表示システム10は、観察者(典型的には車両1の運転席に着座する運転者)の左目700Lと右目700Rの位置や視線方向を検出する瞳(あるいは顔)検出用の目位置検出部(視線検出部)409、車両1の前方(広義には周囲)を撮像するカメラ(例えばステレオカメラ)などで構成される車外センサ411、ヘッドアップディスプレイ装置(以下では、HUD装置とも呼ぶ)20及び、HUD装置20を制御する表示制御装置30、を有する。
【0017】
また、本実施形態の説明で用いる「アイボックス」とは、(1)領域内では画像の虚像Vの全部が視認でき、領域外では画像の虚像Vの少なくとも一部分が視認されない領域、(2)領域内では画像の虚像Vの少なくとも一部が視認でき、領域外では画像の虚像Vの一部分も視認されない領域、(3)領域内では画像の虚像Vの少なくとも一部が所定の輝度以上で視認でき、領域外では画像の虚像Vの全体が前記所定の輝度未満である領域、又は(4)HUD装置20が立体視可能な虚像Vを表示可能である場合、虚像Vの少なくとも一部が立体視でき、領域外では虚像Vの一部分も立体視されない領域である。すなわち、観察者が目(両目)をアイボックス200外に配置すると、観察者は、画像の虚像Vの全体が視認できない、画像の虚像Vの全体の視認性が非常に低く知覚しづらい、又は画像の虚像Vが立体視できない。前記所定の輝度とは、例えば、アイボックスの中心で視認される画像の虚像の輝度に対して1/50程度である。「アイボックス」は、HUD装置20が搭載される車両で観察者の視点位置の配置が想定されるエリア(アイリプスとも呼ぶ。)と同じ、又は前記アイリプスの大部分(例えば、80%以上。)を含むように設定される。
【0018】
虚像表示領域VSは、HUD装置20の内部で生成された画像が、虚像Vとして結像する平面、曲面、又は一部曲面の領域であり、結像面とも呼ばれる。虚像表示領域VSは、HUD装置20の後述する表示器40の表示面(例えば、液晶光変調素子の出射面)51が虚像として結像される位置であり、すなわち、虚像表示領域VSは、HUD装置20の後述する表示面51に対応し(言い換えると、虚像表示領域VSは、後述する表示器40の表示面51と、共役関係となる。)、そして、虚像表示領域VSで視認される虚像は、HUD装置20の後述する表示面51に表示される画像に対応している、と言える。虚像表示領域VS自体は、実際に観察者の目に視認されない、又は視認されにくい程度に視認性が低いことが好ましい。
【0019】
虚像表示領域VSには、車両1の左右方向(X軸方向)を軸とした水平方向(XZ平面)とのなす角度(図1のチルト角θt)と、アイボックス200の中心205と虚像表示領域VSの上端VS1とを結ぶ線分と、アイボックス中心と虚像表示領域VSの下端VS2とを結ぶ線分とのなす角度を虚像表示領域VSの縦画角として、この縦画角の二等分線と水平方向(XZ平面)とのなす角度(図1の縦配置角θd)と、が設定される。縦配置角θdは、典型的には、水平方向(XZ平面)より下向きに設定され、例えば、+2[degree]である(ここでは、縦配置角θdの正方向は、前記縦画角の二等分線が、アイボックス200の中心205から下向きとなる俯角であり、縦配置角θdの負方向は、前記縦画角の二等分線が、アイボックス200の中心205から上向きとなる仰角であるとも言える。)。
【0020】
また、本実施形態の虚像表示領域VSは、前方(Z軸正方向)を向いた際に概ね正対するように、概ね90[degree]のチルト角θtを有する。但し、チルト角θtは、これに限定されるものではなく、-10≦θt<90[degree]の範囲で変更し得る。チルト角θtは、例えば、60[degree]に設定され、虚像表示領域VSは、観察者から見て上側の領域が下側の領域より遠方になるように配置されてもよい。但し、チルト角θtの範囲は、これに限定されない。
【0021】
図2は、ヘッドアップディスプレイ装置の構成の一態様を示す図である。HUD装置20は、例えばダッシュボード(図1の符号5)内に設置される。このHUD装置20は、表示器40、リレー光学系80及び、これら表示器40とリレー光学系80を収納し、表示器40からの表示光Kを内部から外部に向けて出射可能な光出射窓21を有する筐体22、を有する。
【0022】
図2の表示器40は、典型的には、液晶ディスプレイパネル(光変調素子)50と、光源ユニット60と、から主に構成される。表示面51は、液晶ディスプレイパネル50の視認側の表面であり、画像の表示光Kを出射する。表示面51の中心からリレー光学系80及び前記被投影部を介してアイボックス200(アイボックス200の中心205)へ向かう表示光Kの光軸Kpに対する、表示面51の角度の設定により、虚像表示領域VSの角度(チルト角θtを含む。)が設定され得る。
【0023】
液晶ディスプレイパネル(光変調素子)50は、光源ユニット60から光を入射し、2D画像に空間光変調した表示光Kをリレー光学系80(第2ミラー82)へ向けて出射する。液晶ディスプレイパネル50は、例えば、観察者から見た虚像Vの上下方向(Y軸方向)に対応する画素が配列される方向が短辺である矩形状である。観察者は、液晶ディスプレイパネル50の透過光を、虚像光学系90を介して視認する。虚像光学系90は、図2で示すリレー光学系80とフロントウインドシールド2とを合わせたものである。なお、光変調素子50(表示器40)は、自発光型ディスプレイであってもよく、又は、スクリーンに画像を投影するプロジェクション型ディスプレイ(例えば、LCoSやDMDを用いた反射型表示パネル)であってもよく、これらに限定されない。この場合、表示面51は、プロジェクション型ディスプレイのスクリーンである。
【0024】
光源ユニット60は、光源(不図示)と、照明光学系(不図示)と、によって構成される。
【0025】
光源(不図示)は、例えば、複数のチップ型のLEDであり、液晶ディスプレイパネル(光変調素子の一例)22へ照明光を出射する。光源ユニット60は、例えば、4つの光源で構成されており、液晶ディスプレイパネル50の長辺に沿って一列に配置される。光源ユニット60は、表示制御装置30からの制御のもと、照明光を液晶ディスプレイパネル50に向けて出射する。光源ユニット60の構成や光源の配置などはこれに限定されない。
【0026】
照明光学系(不図示)は、例えば、光源ユニット60の照明光の出射方向に配置された1つ又は複数のレンズ(不図示)と、1つ又は複数のレンズの出射方向に配置された拡散板(不図示)と、によって構成される。
【0027】
なお、光源ユニット60は、ローカルディミング可能に構成され、表示制御装置30からの制御のもと、表示面51のエリア毎の照明の度合いを変更してもよい。これにより、光源ユニット60は、表示面51に表示される画像の輝度をエリア毎に調整することができる。
【0028】
リレー光学系80は、表示器40から出射された表示光K(表示器40からアイボックス200へ向かう光。)の光路上に配置され、表示器40からの表示光KをHUD装置20の外側のフロントウインドシールド2に投影する1つ又はそれ以上の光学部材で構成される。図2のリレー光学系80は、1つの凹状の第1ミラー81と、1つの平面の第2ミラー82と、を含む。
【0029】
第1ミラー81は、例えば、正の光学的パワーを有する自由曲面形状である。換言すると、第1ミラー81は、領域毎に光学的パワーが異なる曲面形状であってもよく、すなわち、表示光Kが通る領域(光路)に応じて表示光Kに付加される光学的パワーが異なってもよい。具体的には、表示面51の各領域からアイボックス200へ向かう第1表示光K11、第2表示光K12、第3表示光K13(図2参照)とで、リレー光学系80によって付加される光学的パワーが異なってもよい。
【0030】
なお、第2ミラー82は、例えば、平面ミラーであるが、これに限定されるものではなく、光学的パワーを有する曲面であってもよい。すなわち、リレー光学系80は、複数のミラー(例えば、本実施形態の第1ミラー81、第2ミラー82。)を合成することで、表示光Kが通る領域(光路)に応じて付加される光学的パワーを異ならせてもよい。なお、第2ミラー82は、省略されてもよい。すなわち、表示器40から出射される表示光Kは、第1ミラー81により被投影部(フロントウインドシールド)2に反射されてもよい。
【0031】
また、リレー光学系80は、本実施形態では2つのミラー(反射光学系)を含んでいたが、これに限定されるものではない。リレー光学系80は、1つ又はそれ以上の、レンズなどの屈折光学部材、ホログラムなどの回折光学部材、上述のものとは異なる反射光学部材、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよく、これらは、上述の反射光学系に追加されてもよく、並びに上述の反射光学系の一部又は全部と代替されてもよい。
【0032】
また、リレー光学系80は、この曲面形状(光学的パワーの一例。)により、虚像表示領域VSまでの距離を設定する機能、及び表示面51に表示された画像を拡大した虚像を生成する機能、を有するが、これに加えて、フロントウインドシールド2の湾曲形状により生じ得る虚像の歪みを抑制する(補正する)機能、又はこれら以外の公知の光学的機能を有していてもよい。
【0033】
また、リレー光学系80は、表示制御装置30により制御される1つ又はそれ以上のアクチュエータ86、87が取り付けられ、回転可能であってもよい。例えば、アクチュエータ86は、第1ミラー81を、第1の回転軸AX1を中心に回転(及び/又は移動)させてもよい。アクチュエータ87は、第2ミラー82を、第1の回転軸AX1を中心に回転(及び/又は移動)させてもよい。
【0034】
ヘッドアップディスプレイ装置20は、後述する表示制御装置30の制御に基づいて、車両1のフロントウインドシールド2を介して視認される現実空間(実景)である前景に存在する、走行レーンの路面、分岐路、道路標識、障害物(歩行者、自転車、自動二輪車、他車両など)、及び地物(建物、橋など)などのオブジェクトの近傍、オブジェクトに重なる位置、又はオブジェクトを基準に設定された位置に画像を表示することで、視覚的な拡張現実(AR:Augmented Reality)を観察者(典型的には、車両1の運転席に着座する観察者)に知覚させることもできる。本実施形態の説明では、実景に存在する実オブジェクト又は表示制御装置30が定める実景における所定の空間内の奥行きや上下左右方向のターゲット位置に応じて、表示される位置を変化させ得る画像をAR画像と定義し、実オブジェクトの位置によらず、表示される位置が設定される画像を非AR画像と定義することとする。また、本実施形態の説明では、遠近感を生じさせる透視図法で表現される1つ又は複数からなる画像をパースペクティブ画像と定義し、透視図法で表現されない画像を非パースペクティブ画像と定義することとする。パースペクティブ画像は、典型的には、AR画像である。
【0035】
後述する表示制御装置30は、例えば、画像レンダリング処理(グラフィック処理)、表示器駆動処理などを実行することで、HUD装置20が表示する(観察者が知覚する)画像Vの態様を制御することができる。
【0036】
図3は、実景のターゲット位置に配置される仮想オブジェクトと、仮想オブジェクトが実景のターゲット位置に視認されるように虚像表示領域に表示される画像と、を概念的に示した図である。図3に表したように、観視者700から見て、奥行き方向をZ軸方向とし、左右方向(自車両1の幅方向)をX軸方向とし、上下方向(自車両1の上下方向)をY軸方向とする。なお、観視者から見て遠ざかる方向をZ軸の正の方向とし、観視者から見て左方向がX軸の正の方向とし、観視者から見て上方向をY軸の正の方向とする。
【0037】
観視者700は、被投影部2を介して虚像表示領域VSに形成された(結像された)虚像Vを視認することで、実景の所定のターゲット位置PTに、仮想オブジェクトFUを知覚する。観視者は、被投影部2で反射した表示光Kの映像の虚像Vを視認する。この時、虚像Vが、例えば進路を示す矢印である場合、自車両1の前景の所定のターゲット位置PTに仮想オブジェクトFUが配置されて視認されるように、虚像Vの矢印は虚像表示領域VSに表示される。
【0038】
(第1の表示態様のパースペクティブ虚像V10)
図4は、自車両1の走行中において、観察者が視認する前景と、前景に重畳して表示される第1の表示態様の虚像の例を示す図である。第1の表示態様の虚像V10(以下では、パースペクティブ虚像V10とも呼ぶ。)は、消失点VP1(第1消失点VP1)を有する。すなわち、パースペクティブ虚像V10の図形は、奥行きを知覚させる消失点VP1を有する形状を有しており、例えば「矢印」の幹の部分の左辺の延長線V1A及び右辺の延長線V1Bは、消失点VP1で交差する。
【0039】
図示するように、観視者から見てパースペクティブ虚像V10が下方(縦配置角θdが正の方向である位置)に配置される場合は、消失点VP1は、虚像V10の位置よりも上方に配置される。一方、観視者から見てパースペクティブ虚像V10が上方(縦配置角θdが負の方向である位置)に配置される場合は、消失点VP1は、虚像の位置よりも下方に配置される。
【0040】
観視者は、消失点VP1とパースペクティブ虚像V10との位置との関係に基づいて、観視者から見た時のパースペクティブ虚像V10の奥行き感を得る。このように、パースペクティブ虚像V10が消失点VP1を有することで、観視者におけるパースペクティブ虚像V10の奥行き位置の推定が容易になる。
【0041】
一方、図4に示したように、自車両1の走行レーン6は、消失点VP0(実景消失点VP0)を有する。本具体例では、観視者から見て、前方に直進する走行レーン6が存在し、その走行レーン6の両側の境界線7及び8の延長線が、消失点VP0で実質的に交差(点となる)する。このように、走行レーン(路面)6が消失点VP0を有することから、観視者は、実景(走行レーン6)において奥行き感を得る。
【0042】
そして、本実施形態に係る車両用虚像表示システム10においては、図4に示すように、パースペクティブ虚像V10の消失点VP1が、実景(走行レーン6)の消失点VP0よりも手前側(観察者から見ると下方)に配置される。
【0043】
一般に、線遠近法(透視図法)を用いて、絵画などを含めて画像を作成する場合、画像内の各種のオブジェクトをそれぞれの奥行き位置に配置する際に、消失点が用いられる。例えば、所定の消失点から直線が放射状に仮想的に描かれ、その直線に各オブジェクトの輪郭線などを沿わせることで、各オブジェクトは所定の奥行き位置に定着されて知覚される。なお、消失点は複数設けることができるが、ここでは、説明を簡単にするために、1つの画像内において消失点が1つ設けられる場合として説明する。
【0044】
一般の線遠近法(透視図法)を用いた場合、観察者に知覚させる仮想オブジェクトの輪郭を形成する各境界線の延長線が、前景(走行レーン6)の消失点VP0で交差するように、虚像が表示さされる、すなわち、虚像の消失点VP1の位置が、前景(走行レーン6)の消失点VP0の位置と一致するように、虚像が生成されるが、本実施形態においては、パースペクティブ虚像V10の消失点VP1の位置が、前景(走行レーン6)の消失点VP0の位置よりも手前側になるように、パースペクティブ虚像V10が生成される(第1の表示処理)。
【0045】
これにより、仮想オブジェクトFU10の知覚される配置角(図3のX2軸を回転軸とした路面に対する角度)が、走行レーン6と概ね平行であるように、観察者により感得されやすくすることができる。
【0046】
仮想オブジェクトFU10は「矢印」であり、通常は、仮想オブジェクトFU10が配置される(設定される)ターゲット位置PTは、前景(走行レーン6)の表面の高さに一致させる(すなわち、設定高さを0mに設定する)。但し、これは一例であり、限定されるものではない。他の例では、ターゲット位置PTは、前景(走行レーン6)の表面の高lさより高い位置に設定してもよい(すなわち、設定高さを0.5mや1mに設定してもよい)。また、他の例では、ターゲット位置PTは、前景(走行レーン6)の表面の高さより低い位置に設定してもよい(すなわち、設定高さを-1mや-2mに設定してもよい)。
【0047】
図5A図5B図5C及び、図5Dは、パースペクティブ画像の変形例を示す図である。上記実施形態のパースペクティブ虚像V10は、1つの直線の「矢印」から構成されていたが、これに限定されない。図5Aに示すパースペクティブ虚像V20は、画像(「矢印」)の途中から屈曲させたものであってもよい。この場合、左方パースペクティブ線V1Aは、パースペクティブ虚像V20が屈曲するまでの左辺の延長線と定義することができ、右方パースペクティブ線V1Bは、パースペクティブ虚像V20が屈曲するまでの右辺の延長線と定義することができる。
【0048】
また、図5Bに示すパースペクティブ虚像V30は、第1のパースペクティブ虚像V31と、第1のパースペクティブ虚像V31より上方に配置され、第1のパースペクティブ虚像V31よりサイズが小さく設定される第2のパースペクティブ虚像V32とで構成される。この場合、左方パースペクティブ線V1Aは、第1のパースペクティブV31の左端と第2のパースペクティブV32の左端とを結ぶ直線と定義することができ、右方パースペクティブ線V1Bは、第1のパースペクティブV31の右端と第2のパースペクティブV32の右端とを結ぶ直線と定義することができる。
【0049】
また、図5Cに示すパースペクティブ虚像V40は、左右で分割された複数のパースペクティブ虚像V41~V49で構成されてもよい。この場合、左方パースペクティブ線V1Aは、左方のパースペクティブV41~V44の左端を結ぶ直線(近似直線)と定義することができ、右方パースペクティブ線V1Bは、右方のパースペクティブV45~V48の右端を結ぶ直線(近似直線)と定義することができる。
【0050】
また、図5Dに示すパースペクティブ虚像V50の消失点VP1(第1消失点VP1)は、観察者から見て、走行レーン6の境界線7,8同士の交点である消失点VP0の左右方向にずれた消失点VP0‘に向けられた位置(図5Dに示す消失点VP0’は、消失点VP0の左方に配置される)に設定されてもよい。このような場合でも、パースペクティブ虚像V50の消失点VP1(第1消失点VP1)は、消失点VP0‘(実景消失点VP0)よりも手前側に配置させることができる。
【0051】
(第2の表示態様のパースペクティブ虚像V60)
図6は、自車両1の走行中において、観察者が視認する前景と、前景に重畳して表示される第2の表示態様の虚像の例を示す図である。第2の表示態様の虚像V60(以下では、パースペクティブ虚像V60とも呼ぶ。)は、第1の表示態様のパースペクティブ虚像V10の第1消失点VP1よりも遠方側に消失点VP2(第2消失点VP2)を有する。すなわち、パースペクティブ虚像V60の図形は、奥行きを知覚させる第2消失点VP2を有する形状を有しており、例えば「矢印」の幹の部分の左辺の延長線V1B及び右辺の延長線V2Bは、第2消失点VP2で交差する。
【0052】
図示するように、観視者から見て第2の表示態様のパースペクティブ虚像V60が下方(縦配置角θdが正の方向である位置)に配置される場合は、第2消失点VP2は、第1消失点VP1の位置よりも上方に配置される。一方、観視者から見て第2の表示態様のパースペクティブ虚像V60が上方(縦配置角θdが負の方向である位置)に配置される場合は、第2消失点VP2は、第1消失点VP1の位置よりも下方に配置される。
【0053】
いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vの表示態様を、パースペクティブ虚像Vの種類に応じて、第1消失点VP1を有する上記第1の表示態様、又は第1消失点VP1より遠方側に設定される第2消失点VP2を有する上記第2の表示態様、に変化させる。いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、(10)パースペクティブ虚像Vが遠近方向に移動する又は伸縮する動画であれば、第2消失点VP2を有する第2表示態様で表現(第2の表示処理の一例)し、(15)パースペクティブ虚像Vが静止画、あまり遠近方向に移動しない動画、又はあまり遠近方向に伸縮しない動画であれば、第1消失点VP1を有する第1表示態様で表現する。
【0054】
図7A図7Bは、第2消失点VP2を有する第2の表示態様のパースペクティブ虚像Vを示す図である。いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vが、(11)遠近方向に徐々に伸縮しているように知覚される動画(図7Aの例では、近傍側から遠方側の第2消失点VP2に向かって徐々に延びる透視図法で表現される動画)、又は(12)遠近方向に徐々に移動するように知覚される動画(図7Bの例では、近傍側から遠方側の第2消失点VP2に向かって徐々に移動する透視図法で表現される動画)である場合、第2消失点VP2を有する第2表示態様で表現する(第2の表示処理の一例)。一方、HUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vが、(16)静止画、(17)あまり遠近方向に伸縮して知覚されない動画、又は(18)あまり遠近方向に移動して知覚されない動画、などである場合、第1消失点VP1を有する第1表示態様で表現する(第1の表示処理の一例)。「(17)あまり遠近方向に伸縮しない動画、又は(18)あまり遠近方向に移動しない動画」は、具体的に例えば、左右方向(X軸方向)に動く動画、上下方向(Y軸方向)であり、ヒトの知覚では奥行き方向(Z軸方向)にも感得し得る方向に所定の閾値以下の微小な距離だけ動く動画(さらに具体的には、左右方向(X軸方向)に動く距離に対する上下方向(Y軸方向)に動く距離が1/10以下である動画)、などである。
【0055】
また、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vの表示態様を、パースペクティブ虚像Vの動画の移動速度(変形速度)に応じて、第1消失点VP1を有する上記第1の表示態様、又は第1消失点VP1より遠方側に設定される第2消失点VP2を有する上記第2の表示態様、に変化させる。例えば、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、(20)パースペクティブ虚像Vの動画の移動速度(変形速度)が速ければ、第2消失点VP2を有する第2表示態様で表現(第2の表示処理の一例)し、(25)パースペクティブ虚像Vの動画の移動速度が遅ければ、第1消失点VP1を有する第1表示態様で表現する(第1の表示処理の一例)。
【0056】
上記実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vが、(21)遠近方向に徐々に伸縮する、又は遠近方向に徐々に移動する画像の速度が、所定の画像速度閾値以上であり、速いと判定される場合、第2消失点VP2を有する第2表示態様で表現する(第2の表示処理の一例)。一方、HUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vが、(26)遠近方向に徐々に伸縮する、又は遠近方向に徐々に移動する画像の速度が、所定の画像速度閾値未満であり、遅いと判定される場合、第1消失点VP1を有する第1表示態様で表現する(第1の表示処理の一例)。
【0057】
また、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vの表示態様を、自車両1の前方(周囲)の明るさに応じて、第1消失点VP1を有する上記第1の表示態様、又は第1消失点VP1より遠方側に設定される第2消失点VP2を有する上記第2の表示態様、に変化させる(第2の表示処理の一例)。例えば、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、(30)自車両1の前方(周囲)が明るいと判定される場合、第2消失点VP2を有する第2表示態様で表現し、(35)自車両1の前方(周囲)が暗いと判定される場合、第1消失点VP1を有する第1表示態様で表現する(第1の表示処理の一例)。
【0058】
また、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vの表示態様を、パースペクティブ虚像Vの上下方向(Y軸方向)であり、ヒトの知覚では奥行き方向(Z軸方向)の長さに応じて、第1消失点VP1を有する上記第1の表示態様、又は第1消失点VP1より遠方側に設定される第2消失点VP2を有する上記第2の表示態様、に変化させる。例えば、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、(40)パースペクティブ虚像Vの上下方向(Y軸方向)の長さであり、ヒトの知覚では奥行き方向(Z軸方向)の距離が、所定の閾値と同じ又は長いである場合、第2消失点VP2を有する第2表示態様で表現(第2の表示処理の一例)し、(45)パースペクティブ虚像Vの上下方向(Y軸方向)の長さであり、ヒトの知覚では奥行き方向(Z軸方向)の距離が、所定の閾値より短い場合、第1消失点VP1を有する第1表示態様で表現する(第1の表示処理の一例)。
【0059】
また、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、パースペクティブ虚像Vの表示態様を、表示が継続される期間の長さに応じて、第1消失点VP1を有する上記第1の表示態様、又は第1消失点VP1より遠方側に設定される第2消失点VP2を有する上記第2の表示態様、に変化させる。例えば、いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、(50)動画又は静止画のパースペクティブ虚像Vを表示し始めてから表示し終わるまでの期間が所定の閾値と同じ又は長い場合、第2消失点VP2を有する第2表示態様で表現(第2の表示処理の一例)し、(55)動画又は静止画のパースペクティブ虚像Vを表示し始めてから表示し終わるまでの期間が所定の閾値より短い場合、第1消失点VP1を有する第1表示態様で表現する(第1の表示処理の一例)。
【0060】
図8は、いくつかの実施形態に係る、車両用虚像表示システムのブロック図である。表示制御装置30は、1つ又は複数のI/Oインタフェース31、1つ又は複数のプロセッサ33、1つ又は複数の画像処理回路35、及び1つ又は複数のメモリ37を備える。図8に記載される様々な機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれら両方の組み合わせで構成されてもよい。図8は、1つの実施形態に過ぎず、図示された構成要素は、より数の少ない構成要素に組み合わされてもよく、又は追加の構成要素があってもよい。例えば、画像処理回路35(例えば、グラフィック処理ユニット)が、1つ又は複数のプロセッサ33に含まれてもよい。
【0061】
図示するように、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37と動作可能に連結される。より具体的には、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37に記憶されているプログラムを実行することで、例えば画像データを生成、及び/又は送信するなど、車両用虚像表示システム10(表示器40)の制御を行うことができる。プロセッサ33及び/又は画像処理回路35は、少なくとも1つの汎用マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。メモリ37は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVRAMを含んでもよい。
【0062】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と動作可能に連結されている。I/Oインタフェース31は、例えば、車両に設けられた後述の車両ECU401及び/又は、他の電子機器(後述する符号403~419)と、CAN(Controller Area Network)の規格に応じて通信(CAN通信とも称する)を行う。なお、I/Oインタフェース31が採用する通信規格は、CANに限定されず、例えば、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport:MOSTは登録商標)、UART、もしくはUSBなどの有線通信インタフェース、又は、例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワークなどのパーソナルエリアネットワーク(PAN)、802.11x Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)等の数十メートル内の近距離無線通信インタフェースである車内通信(内部通信)インタフェースを含む。また、I/Oインタフェース31は、無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)などの車外通信(外部通信)インタフェースを含んでいてもよい。
【0063】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と相互動作可能に連結されることで、車両用虚像表示システム10(I/Oインタフェース31)に接続される種々の他の電子機器等と情報を授受可能となる。I/Oインタフェース31には、例えば、車両ECU401、道路情報データベース403、自車位置検出部405、操作検出部407、目位置検出部409、車外センサ411、明るさ検出部413、IMU415、携帯情報端末417、及び外部通信機器419などが動作可能に連結される。なお、I/Oインタフェース31は、車両用虚像表示システム10に接続される他の電子機器等から受信する情報を加工(変換、演算、解析)する機能を含んでいてもよい。
【0064】
表示器40は、プロセッサ33及び画像処理回路35に動作可能に連結される。したがって、光変調素子50によって表示される画像は、プロセッサ33及び/又は画像処理回路35から受信された画像データに基づいてもよい。プロセッサ33及び画像処理回路35は、I/Oインタフェース31から取得される情報に基づき、光変調素子50が表示する画像を制御する。
【0065】
車両ECU401は、車両1に設けられたセンサやスイッチから、車両1の状態(例えば、走行距離、車速、アクセルペダル開度、ブレーキペダル開度、エンジンスロットル開度、インジェクター燃料噴射量、エンジン回転数、モータ回転数、ステアリング操舵角、シフトポジション、ドライブモード、各種警告状態、姿勢(ロール角、及び/又はピッチング角を含む)、車両の振動(振動の大きさ、頻度、及び/又は周波数を含む))などを取得し、車両1の前記状態を収集、及び管理(制御も含んでもよい。)するものであり、機能の一部として、車両1の前記状態の数値(例えば、車両1の車速。)を示す信号を、表示制御装置30のプロセッサ33へ出力することができる。なお、車両ECU401は、単にセンサ等で検出した数値(例えば、ピッチング角が前傾方向に3[degree]。)をプロセッサ33へ送信することに加え、又はこれに代わり、センサで検出した数値を含む車両1の1つ又は複数の状態に基づく判定結果(例えば、車両1が予め定められた前傾状態の条件を満たしていること。)、若しくは/及び解析結果(例えば、ブレーキペダル開度の情報と組み合わせされて、ブレーキにより車両が前傾状態になったこと。)を、プロセッサ33へ送信してもよい。例えば、車両ECU401は、車両1が車両ECU401のメモリ(不図示)に予め記憶された所定の条件を満たすような判定結果を示す信号を表示制御装置30へ出力してもよい。なお、I/Oインタフェース31は、車両ECU401を介さずに、車両1に設けられた車両1に設けられたセンサやスイッチから、上述したような情報を取得してもよい。
【0066】
また、車両ECU401は、車両用虚像表示システム10が表示する画像を指示する指示信号を表示制御装置30へ出力してもよく、この際、画像の座標、サイズ、種類、表示態様、画像の報知必要度、及び/又は報知必要度を判定する元となる必要度関連情報を、前記指示信号に付加して送信してもよい。
【0067】
道路情報データベース403は、車両1に設けられた図示しないナビゲーション装置、又は車両1と車外通信インタフェース(I/Oインタフェース31)を介して接続される外部サーバー、に含まれ、後述する自車位置検出部405から取得される車両1の位置に基づき、車両1の周辺の情報(車両1の周辺の実オブジェクト関連情報)である車両1が走行する道路情報(車線,白線,停止線,横断歩道,道路の幅員,車線数,交差点,カーブ,分岐路,交通規制など)、地物情報(建物、橋、河川など)の、有無、位置(車両1までの距離を含む)、方向、形状、種類、詳細情報などを読み出し、プロセッサ33に送信してもよい。また、道路情報データベース403は、出発地から目的地までの適切な経路(ナビゲーション情報)を算出し、当該ナビゲーション情報を示す信号、又は経路を示す画像データをプロセッサ33へ出力してもよい。
【0068】
自車位置検出部405は、車両1に設けられたGNSS(全地球航法衛星システム)等であり、現在の車両1の位置、方位を検出し、検出結果を示す信号を、プロセッサ33を介して、又は直接、道路情報データベース403、後述する携帯情報端末417、及び/もしくは外部通信機器419へ出力する。道路情報データベース403、後述する携帯情報端末417、及び/又は外部通信機器419は、自車位置検出部405から車両1の位置情報を連続的、断続的、又は所定のイベント毎に取得することで、車両1の周辺の情報を選択・生成して、プロセッサ33へ出力してもよい。
【0069】
操作検出部407は、例えば、車両1のCID(Center Information Display)、インストルメントパネルなどに設けられたハードウェアスイッチ、又は画像とタッチセンサなどとを兼ね合わされたソフトウェアスイッチなどであり、車両1の乗員(運転席の着座するユーザ、及び/又は助手席に着座するユーザ)による操作に基づく操作情報を、プロセッサ33へ出力する。例えば、操作検出部407は、ユーザの操作により、虚像表示領域100を移動させる操作に基づく表示領域設定情報、アイボックス200を移動させる操作に基づくアイボックス設定情報、観察者の目位置700を設定する操作に基づく情報などを、プロセッサ33へ出力する。
【0070】
目位置検出部409は、車両1の運転席に着座する観察者の目位置700(図1参照。)を検出する赤外線カメラなどのカメラを含み、撮像した画像を、プロセッサ33に出力してもよい。プロセッサ33は、目位置検出部409から撮像画像(目位置700を推定可能な情報の一例。)を取得し、この撮像画像を、パターンマッチングなどの手法で解析することで、観察者の目位置700の座標を検出し、検出した目位置700の座標を示す信号を、プロセッサ33へ出力してもよい。
【0071】
また、目位置検出部409は、カメラの撮像画像を解析した解析結果(例えば、観察者の目位置700が、予め設定された複数の表示パラメータが対応する空間的な領域のどこに属しているかを示す信号。)を、プロセッサ33に出力してもよい。なお、車両1の観察者の目位置700、又は観察者の目位置700を推定可能な情報を取得する方法は、これらに限定されるものではなく、既知の目位置検出(推定)技術を用いて取得されてもよい。
【0072】
また、目位置検出部409は、観察者の目位置700の移動速度、及び/又は移動方向を検出し、観察者の目位置700の移動速度、及び/又は移動方向を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0073】
また、目位置検出部409は、(10)観察者の目位置700がアイボックス200外にあることを示す信号、(20)観察者の目位置700がアイボックス200外にあると推定される信号、又は(30)観察者の目位置700がアイボックス200外になると予測される信号、を検出した場合、所定の条件を満たしたと判定し、当該状態を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0074】
(20)観察者の目位置700がアイボックス200外にあると推定される信号は、(21)観察者の目位置700が検出できないことを示す信号、(22)観察者の目位置700の移動が検出された後、観察者の目位置700が検出できないことを示す信号、及び/又は(23)観察者の目位置700R、700Lのいずれかがアイボックス200の境界200Aの近傍(前記近傍は、例えば、境界200Aから所定の座標以内であることを含む。)にあることを示す信号、などを含む。
【0075】
(30)観察者の目位置700がアイボックス200外になると予測される信号は、(31)新たに検出した目位置700が、過去に検出した目位置700に対して、メモリ37に予め記憶された目位置移動距離閾値以上であること(所定の単位時間内における目位置の移動が規定範囲より大きいこと。)を示す信号、(32)目位置の移動速度が、メモリ37に予め記憶された目位置移動速度閾値以上であることを示す信号、などを含む。
【0076】
また、目位置検出部409は、視線方向検出部409としての機能を有していても良い。視線方向検出部409は、車両1の運転席に着座する観察者の顔を撮像する赤外線カメラ、又は可視光カメラを含み、撮像した画像を、プロセッサ33に出力してもよい。プロセッサ33は、視線方向検出部409から撮像画像(視線方向を推定可能な情報の一例。)を取得し、この撮像画像を解析することで観察者の視線方向(及び/又は前記注視位置)を特定することができる。なお、視線方向検出部409は、カメラからの撮像画像を解析し、解析結果である観察者の視線方向(及び/又は前記注視位置)を示す信号をプロセッサ33に出力してもよい。なお、車両1の観察者の視線方向を推定可能な情報を取得する方法は、これらに限定されるものではなく、EOG(Electro-oculogram)法、角膜反射法、強膜反射法、プルキンエ像検出法、サーチコイル法、赤外線眼底カメラ法などの他の既知の視線方向検出(推定)技術を用いて取得されてもよい。
【0077】
車外センサ411は、車両1の周辺(前方、側方、及び後方)に存在する実オブジェクトを検出する。車外センサ411が検知する実オブジェクトは、例えば、障害物(歩行者、自転車、自動二輪車、他車両など)、後述する走行レーンの路面、区画線、路側物、及び/又は地物(建物など)などを含んでいてもよい。車外センサとしては、例えば、ミリ波レーダ、超音波レーダ、レーザレーダ等のレーダセンサ、カメラ、又はこれらの組み合わせからなる検出ユニットと、当該1つ又は複数の検出ユニットからの検出データを処理する(データフュージョンする)処理装置と、から構成される。これらレーダセンサやカメラセンサによる物体検知については従来の周知の手法を適用する。これらのセンサによる物体検知によって、三次元空間内での実オブジェクトの有無、実オブジェクトが存在する場合には、その実オブジェクトの位置(車両1からの相対的な距離、車両1の進行方向を前後方向とした場合の左右方向の位置、上下方向の位置等)、大きさ(横方向(左右方向)、高さ方向(上下方向)等の大きさ)、移動方向(横方向(左右方向)、奥行き方向(前後方向))、移動速度(横方向(左右方向)、奥行き方向(前後方向))、及び/又は種類等を検出してもよい。1つ又は複数の車外センサ411は、各センサの検知周期毎に、車両1の前方の実オブジェクトを検知して、実オブジェクト情報の一例である実オブジェクト情報(実オブジェクトの有無、実オブジェクトが存在する場合には実オブジェクト毎の位置、大きさ、及び/又は種類等の情報)をプロセッサ33に出力することができる。なお、これら実オブジェクト情報は、他の機器(例えば、車両ECU401)を経由してプロセッサ33に送信されてもよい。また、夜間等の周辺が暗いときでも実オブジェクトが検知できるように、センサとしてカメラを利用する場合には赤外線カメラや近赤外線カメラが望ましい。また、センサとしてカメラを利用する場合、視差で距離等も取得できるステレオカメラが望ましい。
【0078】
明るさ検出部413は、車両1の車室の前方に存在する前景の所定範囲の照度又は輝度を外界明るさ(明るさ情報の一例)、又は車室内の照度又は輝度を車内明るさ(明るさ情報の一例)として検知する。明るさ検出部413は、例えばフォトトランジスタ若しくはフォトダイオード等であり、図1に示す車両1のインストルメントパネル、ルームミラー又はHUD装置20等に搭載される。
【0079】
IMU415は、慣性加速に基づいて、車両1の位置、向き、及びこれらの変化(変化速度、変化加速度)を検知するように構成された1つ又は複数のセンサ(例えば、加速度計及びジャイロスコープ)の組み合わせを含むことができる。IMU415は、検出した値(前記検出した値は、車両1の位置、向き、及びこれらの変化(変化速度、変化加速度)を示す信号などを含む。)、検出した値を解析した結果を、プロセッサ33に出力してもよい。前記解析した結果は、前記検出した値が、所定の条件を満たしたか否かの判定結果を示す信号などであり、例えば、車両1の位置又は向きの変化(変化速度、変化加速度)に関する値から、車両1の挙動(振動)が少ないことを示す信号であってもよい。
【0080】
携帯情報端末417は、スマートフォン、ノートパソコン、スマートウォッチ、又は観察者(又は車両1の他の乗員)が携帯可能なその他の情報機器である。I/Oインタフェース31は、携帯情報端末417とペアリングすることで、携帯情報端末417と通信を行うことが可能であり、携帯情報端末417(又は携帯情報端末を通じたサーバ)に記録されたデータを取得する。携帯情報端末417は、例えば、上述の道路情報データベース403及び自車位置検出部405と同様の機能を有し、前記道路情報(実オブジェクト関連情報の一例。)を取得し、プロセッサ33に送信してもよい。また、携帯情報端末417は、車両1の近傍の商業施設に関連するコマーシャル情報(実オブジェクト関連情報の一例。)を取得し、プロセッサ33に送信してもよい。なお、携帯情報端末417は、携帯情報端末417の所持者(例えば、観察者)のスケジュール情報、携帯情報端末417での着信情報、メールの受信情報などをプロセッサ33に送信し、プロセッサ33及び画像処理回路35は、これらに関する画像データを生成及び/又は送信してもよい。
【0081】
外部通信機器419は、車両1と情報のやりとりをする通信機器であり、例えば、車両1と車車間通信(V2V:Vehicle To Vehicle)により接続される他車両、歩車間通信(V2P:Vehicle To Pedestrian)により接続される歩行者(歩行者が携帯する携帯情報端末)、路車間通信(V2I:Vehicle To roadside Infrastructure)により接続されるネットワーク通信機器であり、広義には、車両1との通信(V2X:Vehicle To Everything)により接続される全てのものを含む。外部通信機器419は、例えば、歩行者、自転車、自動二輪車、他車両(先行車等)、路面、区画線、路側物、及び/又は地物(建物など)の位置を取得し、プロセッサ33へ出力してもよい。また、外部通信機器419は、上述の自車位置検出部405と同様の機能を有し、車両1の位置情報を取得し、プロセッサ33に送信してもよく、さらに上述の道路情報データベース403の機能も有し、前記道路情報(実オブジェクト関連情報の一例。)を取得し、プロセッサ33に送信してもよい。なお、外部通信機器419から取得される情報は、上述のものに限定されない。
【0082】
メモリ37に記憶されたソフトウェア構成要素は、表示パラメータ設定モジュール502、グラフィックモジュール504、光源駆動モジュール506、及びアクチュエータ駆動モジュール508、を含む。
【0083】
図9は、パースペクティブ虚像を第1の表示態様又は第2の表示態様で表示させる表示制御処理を実行する方法S100を示すフロー図である。方法S100は、ディスプレイを含むHUD装置20と、このHUD装置20を制御する表示制御装置30と、において実行される。方法S100内のいくつかの動作は任意選択的に組み合わされ、いくつかの動作の手順は任意選択的に変更され、いくつかの動作は任意選択的に省略される。
【0084】
表示制御装置30(後述するグラフィックモジュール504)は、例えば、道路情報データベース403から出発地から目的地までの適切な経路(ナビゲーション情報)、車外センサ411から実オブジェクト情報(実オブジェクトの有無、実オブジェクトが存在する場合には実オブジェクト毎の位置、大きさ、及び/又は種類等の情報)などを取得し、表示する仮想オブジェクトを選択する設定する(S110)。
【0085】
表示パラメータ設定モジュール502は、S131に示すように、I/Oインタフェース31から取得する1つ又は複数の情報に基づき、パースペクティブ虚像Vの表示態様を変化させる。表示パラメータ設定モジュール502は、I/Oインタフェース31から取得する1つ又は複数の情報に基づき、(10)パースペクティブ虚像Vを、遠近方向に移動する又は伸縮する動画に設定する場合、第2消失点VP2を有する第2表示態様に設定(第2の表示処理の一例)し、(15)パースペクティブ虚像Vを、静止画、あまり遠近方向に移動しない動画、又はあまり遠近方向に伸縮しない動画に設定する場合、第1消失点VP1を有する第1表示態様に設定する(第1の表示処理の一例)。
【0086】
また、表示パラメータ設定モジュール502は、S132に示すように、I/Oインタフェース31から取得する1つ又は複数の情報に基づき、(20)パースペクティブ虚像Vの動画の移動速度を所定の閾値より速く設定する場合、第2消失点VP2を有する第2表示態様に設定し(第2の表示処理の一例)、(25)パースペクティブ虚像Vの動画の移動速度を所定の閾値より速く設定する場合、第1消失点VP1を有する第1表示態様に設定する(第1の表示処理の一例)。
【0087】
また、表示パラメータ設定モジュール502は、S133に示すように、明るさ検出部413から取得する情報(但し、これに限定されない。)に基づき、(30)自車両1の前方(周囲)が明るいと判定される場合、パースペクティブ虚像Vを、第2消失点VP2を有する第2表示態様に設定し(第2の表示処理の一例)、(35)自車両1の前方(周囲)が暗いと判定される場合、パースペクティブ虚像Vを、第1消失点VP1を有する第1表示態様に設定する(第1の表示処理の一例)。
【0088】
また、表示パラメータ設定モジュール502は、S134に示すように、道路情報データベース403から取得される道路情報や車外センサ411から取得される前景に存在する実オブジェクトの位置情報(但し、これに限定されない。)に基づき、(40)案内経路や前景に存在する実オブジェクトを指示するパースペクティブ虚像Vの上下方向(Y軸方向)の長さであり、ヒトの知覚では奥行き方向(Z軸方向)の距離が、メモリ37に予め記憶される所定の閾値と同じ又は長いである場合、パースペクティブ虚像Vを、第2消失点VP2を有する第2表示態様に設定し(第2の表示処理の一例)、(45)パースペクティブ虚像Vの上下方向(Y軸方向)の長さであり、ヒトの知覚では奥行き方向(Z軸方向)の距離が、所定の閾値より短い場合、パースペクティブ虚像Vを、第1消失点VP1を有する第1表示態様に設定する(第1の表示処理の一例)。
【0089】
また、表示パラメータ設定モジュール502は、S135に示すように、I/Oインタフェース31から取得する1つ又は複数の情報に基づき、(50)動画又は静止画のパースペクティブ虚像Vを表示し始めてから表示し終わるまでの期間が、メモリ37に予め定められた所定の閾値と同じ又は長い場合、パースペクティブ虚像Vを、第2消失点VP2を有する第2表示態様に設定し(第2の表示処理の一例)、(55)動画又は静止画のパースペクティブ虚像Vを表示し始めてから表示し終わるまでの期間がメモリ37に予め記憶された所定の閾値より短い場合、パースペクティブ虚像Vを、第1消失点VP1を有する第1表示態様に設定する(第1の表示処理の一例)。
【0090】
グラフィックモジュール504は、レンダリングなどの画像処理をして画像データを生成し、表示器40を駆動するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含む。また、グラフィックモジュール504は、表示される画像の、種類(動画、静止画、形状)、配置(位置座標、角度)、サイズ、表示距離(3Dの場合。)、視覚的効果(例えば、輝度、透明度、彩度、コントラスト、又は他の視覚特性)、を変更するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含んでいてもよい。グラフィックモジュール504は、画像の種類(表示パラメータの例の1つ。)、画像の位置座標(表示パラメータの例の1つ。)、画像の角度(X方向を軸としたピッチング角、Y方向を軸としたヨーレート角、Z方向を軸としたローリング角などであり、表示パラメータの例の1つ。)、画像のサイズ(表示パラメータの例の1つ。)、画像の色(色相、彩度、明度などで設定される表示パラメータの例の1つ。)、画像の遠近表現の強度(消失点の位置などで設定される表示パラメータの1つ。)で観察者に視認されるように画像データを生成し、光変調素子50を駆動し得る。
【0091】
光源駆動モジュール506は、光源ユニット24を駆動することを実行するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含む。光源駆動モジュール506は、設定された表示パラメータに基づき、光源ユニット24を駆動し得る。
【0092】
アクチュエータ駆動モジュール508は、第1アクチュエータ28及び/又は第2アクチュエータ29を駆動することを実行するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含むアクチュエータ駆動モジュール508は、設定された表示パラメータに基づき、第1アクチュエータ28及び第2アクチュエータ29を駆動し得る。
【0093】
目位置検出モジュール510は、観察者の目位置700を検出する。目位置検出モジュール510は、観察者の目位置700を示す座標(X,Y軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)観察者の目の高さを示す座標(Y軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の高さ及び奥行方向の位置を示す座標(Y及びZ軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、及び/又は観察者の目位置700を示す座標(X,Y,Z軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、に関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。
【0094】
なお、第1消失点VP1、及び第2消失点VP2の位置は、目位置検出部409で検出される観察者の目位置700、又はIMU415で検出される自車両1の姿勢によって、調整されてもよい。例えば、表示制御装置30(表示パラメータ設定モジュール502)は、自車両1の姿勢(ピッチング角(X方向を軸とする角度))の変化に応じて、第1消失点VP1、及び第2消失点VP2の位置を調整し得る。表示制御装置30(表示パラメータ設定モジュール502)は、自車両1の前方が下がるようなピッチング角である場合、観察者から見て虚像表示領域VSに対する第1消失点VP1、及び第2消失点VP2の相対位置が上側となるように調整し、一方、自車両1の前方が上がるようなピッチング角である場合、観察者から見て虚像表示領域VSに対する第1消失点VP1、及び第2消失点VP2の相対位置が下側となるように調整し得る。
【0095】
上述の処理プロセスの動作は、汎用プロセッサ又は特定用途向けチップなどの情報処理装置の1つ以上の機能モジュールを実行させることにより実施することができる。これらのモジュール、これらのモジュールの組み合わせ、及び/又はそれらの機能を代替えし得る公知のハードウェアとの組み合わせは全て、本発明の保護の範囲内に含まれる。
【0096】
車両用虚像表示システム10の機能ブロックは、任意選択的に、説明される様々な実施形態の原理を実行するために、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実行される。図8で説明する機能ブロックが、説明される実施形態の原理を実施するために、任意選択的に、組み合わされ、又は1つの機能ブロックを2以上のサブブロックに分離されてもいいことは、当業者に理解されるだろう。したがって、本明細書における説明は、本明細書で説明されている機能ブロックのあらゆる可能な組み合わせ若しくは分割を、任意選択的に支持する。
【符号の説明】
【0097】
1 :自車両
2 :被投影部(フロントウインドシールド)
5 :ダッシュボード
6 :走行レーン(路面)
7 :境界線
8 :境界線
10 :車両用虚像表示システム
20 :HUD装置(ヘッドアップディスプレイ装置)
21 :光出射窓
22 :筐体
24 :光源ユニット
28 :第1アクチュエータ
29 :第2アクチュエータ
30 :表示制御装置
31 :I/Oインタフェース
33 :プロセッサ
35 :画像処理回路
37 :メモリ
40 :表示器
50 :光変調素子
51 :表示面
60 :光源ユニット
80 :リレー光学系
81 :第1ミラー
82 :第2ミラー
86 :アクチュエータ
87 :アクチュエータ
90 :虚像光学系
100 :虚像表示領域
200 :アイボックス
200A :境界
205 :中心
401 :車両ECU
403 :道路情報データベース
405 :自車位置検出部
407 :操作検出部
409 :目位置検出部(視線方向検出部)
411 :車外センサ
413 :明るさ検出部
417 :携帯情報端末
419 :外部通信機器
502 :表示パラメータ設定モジュール
504 :グラフィックモジュール
506 :光源駆動モジュール
508 :アクチュエータ駆動モジュール
510 :目位置検出モジュール
700 :目位置(観視者)
700L :左目(目位置)
700R :右目(目位置)
AX1 :第1の回転軸
FU :仮想オブジェクト
FU10 :仮想オブジェクト
K :表示光
Kp :光軸
PT :ターゲット位置
V :パースペクティブ虚像
V10 :パースペクティブ虚像
V1A :左方パースペクティブ線
V20 :パースペクティブ虚像
V1B :右方パースペクティブ線
V30 :パースペクティブ虚像
V31 :第1のパースペクティブ虚像
V32 :第2のパースペクティブ虚像
VP0 :実景消失点
VP0' :消失点
VP1 :第1消失点
VP2 :第2消失点
VS :虚像表示領域
VS1 :上端
VS2 :下端
θd :縦配置角
θt :チルト角

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10