(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】天板付き家具
(51)【国際特許分類】
A47B 85/04 20060101AFI20250115BHJP
A47B 83/02 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A47B85/04
A47B83/02
(21)【出願番号】P 2021016068
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】長町 圭祐
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-021041(JP,Y1)
【文献】実開昭61-174454(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 83/00-87/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、
前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、
段床の高さが相互に異なる複数のスライド構体をテレスコープ状に配してなり、前記展開モードにおいて、これらスライド構体の段床と前記天板とが所定の落差をもって階段状に展開されるように構成されている天板付き家具。
【請求項2】
天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、
前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、
前記スライド構体が、前記展開モードにおいて高低差を有する一対の段床を備えたものである天板付き家具。
【請求項3】
各スライド構体が、前記落差に対応する高低差を有する一対の段床をそれぞれ備えたものであり、隣接するスライド構体の段床間、及び最も高い段床と前記天板との間にも前記落差に対応する高低差が形成されている請求項1記載の天板付き家具。
【請求項4】
前記スライド構体の低い方の段床にソファーを配している請求項2又は3記載の天板付き家具。
【請求項5】
各段床が、通路領域と着座領域の少なくとも一方を備えたものであり、前記着座領域に
ソファーが配されている請求項1又は2記載の天板付き家具。
【請求項6】
前記展開モードが、一部の段床のみを外部に突出させる第1のモード態様と、全部の段床を外部に突出させる第2のモード態様とを含んでいる請求項1記載の天板付き家具。
【請求項7】
天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、
前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、
前記家具本体の天板が、前記スライド構体が出没する側に使用端を有する第1天板部と、反対側に使用端を有する第2天板部とを備えたものであり、前記第1天板部の位置を前記第2天板部に対して前記スライド構体の出没方向に変更できるように構成されている天板付き家具。
【請求項8】
少なくとも前記テーブルモードにおいて、前記天板の使用端部下方に下肢空間が形成されている請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の天板付き家具。
【請求項9】
前記天板が、床面から800mm~1050mmの高さに配されたものである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の天板付き家具。
【請求項10】
天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、
前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、
前記段床が、通路領域と着座領域とを備えたものであり、前記着座領域に
ソファーが配されている天板付き家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスやロビーの共有スペース等において好適に使用される天板付き家具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスやロビーの共有スペース等に配される天板付き家具として、複数人が同時に使用可能なカウンタータイプのテーブル等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、従来のものは、基本的に特定の専用家具、例えば、テーブルとしての用途に特化されており、他の目的で使用することは想定されていない。
【0004】
一方、共有スペースに配される家具として、種々の高さに着座することができる壇状のものも知られているが(例えば、非特許文献1参照)、この家具も基本的な形態を変更して用途を変えることができるようなものではない。すなわち、この種の家具は、その壇状形態を維持したままで、使い方を種々工夫することによって、オープンな議論の場を創出したり、講義やプレゼンテーションに適した空間を演出したりすることのできる優れた家具であるが、その壇状をなす基本形態を適宜変更しながら使用することは予定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】三井不動産株式会社、“JINSとKOKUYOの出会いから、オフィスの未来系が生まれました。|&Life-Biz”、[online]、平成28年、三井不動産株式会社、[令和3年1月25日検索]、インターネット<URL:https://www.and-life-biz.jp/column/jins-kokuyo.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基本形態を変えることによって、専用家具では応えられない用途変更に対応することができる天板付き家具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明に係る天板付き家具は、天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、段床の高さが相互に異なる複数のスライド構体をテレスコープ状に配してなり、前記展開モードにおいて、これらスライド構体の段床と前記天板とが所定の落差をもって階段状に展開されるように構成されているものである。
【0009】
請求項2記載の発明に係る天板付き家具は、天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、前記スライド構体が、前記展開モードにおいて高低差を有する一対の段床を備えたものである。
【0010】
請求項3記載の発明に係る天板付き家具は、請求項1記載のものであって、各スライド構体が、前記落差に対応する高低差を有する一対の段床をそれぞれ備えたものであり、隣接するスライド構体の段床間、及び最も高い段床と前記天板との間にも前記落差に対応する高低差が形成されているものである。
【0011】
請求項4記載の発明に係る天板付き家具は、請求項2又は3記載のものであって、前記スライド構体の低い方の段床にソファーを配しているものである。
【0012】
請求項5記載の発明に係る天板付き家具は、請求項1又は2記載のものであって、各段床が、通路領域と着座領域の少なくとも一方を備えたものであり、前記着座領域にソファーが配されているものである。
【0013】
請求項6記載の発明に係る天板付き家具は、請求項1記載のものであって、前記展開モードが、一部の段床のみを外部に突出させる第1のモード態様(例えば、ソファーモード)と、全部の段床を外部に突出させる第2のモード態様(例えば、スタジアムモード)とを含んでいるものである。
【0014】
請求項7記載の発明に係る天板付き家具は、天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、前記家具本体の天板が、前記スライド構体が出没する側に使用端を有する第1天板部と、反対側に使用端を有する第2天板部とを備えたものであり、前記第1天板部の位置を前記第2天板部に対して前記スライド構体の出没方向に変更できるように構成されているものである。
【0015】
請求項8記載の発明に係る天板付き家具は、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のものであって、少なくとも前記テーブルモードにおいて、前記天板の使用端部下方に下肢空間が形成されているものである。
【0016】
請求項9記載の発明に係る天板付き家具は、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のものであって、前記天板が、床面から800mm~1050mmの高さに配されたものである。並びに、請求項10記載の発明に係る天板付き家具は、天板を有する家具本体と、前記天板よりも低位置に段床を有し前記家具本体の天板下空間に対して出没可能に配されたスライド構体とを具備してなり、前記スライド構体が家具本体の天板下空間に没入したテーブルモードと、前記スライド構体の段床が天板下空間の外に突出した展開モードとをとり得るように構成され、前記段床が、通路領域と着座領域とを備えたものであり、前記着座領域にソファーが配されているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基本形態を変えることによって、専用家具では応えられない用途変更に対応することができる天板付き家具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天板付き家具のテーブルモードを示す全体斜視図。
【
図2】同実施形態に係る天板付き家具のテーブルモードを示す右側面図。
【
図3】同実施形態に係る天板付き家具のテーブルモードを示す底面図。
【
図4】同実施形態に係る天板付き家具のソファーモードを示す全体斜視図。
【
図5】同実施形態に係る天板付き家具のソファーモードを示す右側面図。
【
図6】同実施形態に係る天板付き家具のソファーモードを示す底面図。
【
図7】同実施形態に係る天板付き家具のスタジアムモードを示す全体斜視図。
【
図8】同実施形態に係る天板付き家具のスタジアムモードを示す右側面図。
【
図9】同実施形態に係る天板付き家具のスタジアムモードを示す底面図。
【
図10】同実施形態に係る天板付き家具を示す分解斜視図。
【
図11】同実施形態に係る天板付き家具を配したオフィスを示す平面図。
【
図12】同実施形態に係る天板付き家具を配したオフィスを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図12を参照して説明する。
【0020】
この実施形態の天板付き家具Tは、
図1~
図10に示すように、天板4を有する家具本体1と、天板4よりも低位置に段床25、26、35、36を有し家具本体1の天板下空間S1に対して出没可能に配されたスライド構体2、3とを具備してなり、スライド構体2、3が、家具本体1の天板下空間S1に没入したテーブルモード(P)と、スライド構体2、3の段床25、26、35、36が天板下空間S1の外に突出した展開モード(Q1)、(Q2)とをとり得るように構成されている。
【0021】
この天板付き家具Tは、
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、
図8及び
図10に示すように、段床25、26、35、36の高さが相互に異なる複数のスライド構体(上段のスライド構体2と下段のスライド構体3)をテレスコープ状に配してなり、展開モード(Q1)、(Q2)において、これらスライド構体2、3の段床25、26、35、36と前記天板4とが所定の落差gをもって階段状に展開されるように構成されている。また、この天板付き家具Tは、全体が移動可能である。
【0022】
すなわち、この天板付き家具Tは、
図1~
図3及び
図8の想像線に示すようなテーブルモード(P)と、
図4~
図6に示すようなソファーモード(Q1)(展開モードの第1モード態様)と、
図7~
図9に示すようなスタジアムモード(Q2)(展開モードの第2モード態様)とを選択的に採り得るように構成されている。なお、天板付き家具Tのテーブルモード(P)は、
図8の想像線でも示している。
【0023】
以下、具体的に説明するが、その説明においてはスライド構体2、3が突没する側を「正面」とし、スライド構体2、3が突出する動作を「前進」、没入する動作を「後退」と認識して記述を行う。この実施形態の場合、家具本体1の下に、上段のスライド構体2と下段のスライド構体3とがテレスコープ状に配されている。
【0024】
家具本体1は、
図2~
図10に示すように、平行に配された左右一対の脚ベース11と、これら脚ベース11の基端部(後端部)にそれぞれ立設された左右一対の支柱12と、これら支柱12の上端部から前方に向けて片持ち的に延設された天板支持フレーム13と、これら天板支持フレーム13上に配設された天板4とを具備してなる。脚ベース11は前後方向に転動する車輪等の転動体111を備えている。この家具本体1は、転動体111を利用して移動可能になっている。左右の支柱12は、それぞれ角柱パイプ状のもので、下横架材14と、上横架材15とによって相互に剛結されている。上横架材15は、前方に開放されたチャンネル状のもので、その両端は、天板4の側端付近に位置させてある。天板支持フレーム13は、支柱12から片持的に前方へ延出させたもので、前端に第1の支持脚131が設けてあるとともに、中間に第2の支持脚132が設けてある。これらの支持脚131、132は、いずれも各支天板支持フレーム13から垂下させたもので、下端に転動体133を有している。
【0025】
天板4は、
図1、
図2、
図4、
図5及び
図7~
図10に示すように、スライド構体2、3が出没する側(前面側)に使用端41aを有する第1天板部41と、反対側に使用端42aを有する第2天板部42とを備えたものであり、第1天板部41の位置を前記第2天板部42に対して前記スライド構体2、3の出没方向(前後方向)に変更できるように構成されている。すなわち、第2天板部42の使用端部42cはオーバーハングしており、その下に使用者Uが脚を侵入させることができる下肢空間S3が常時形成されている。一方、第1天板部41は、天板支持フレーム13に設定された
図1及び
図2に示すような前固定位置(F)と
図4、
図5及び
図7~
図10に示すような後固定位置(R)のいずれかに選択的に固定することができるようになっており、前述した展開モード(Q1)、(Q2)においては後固定位置(R)に固定され、テーブルモード(P)においては前固定位置(F)に固定される。前固定位置(F)に固定された第1天板部41の下には、第2天板部42の下に形成される下肢空間S3と同程度の下肢空間S2が形成されるようになっている。換言すれば、第1天板部41は、テーブルモード(P)において位置変更を行うことによってその使用端部41c下方に下肢空間S2が形成され得るように構成されたものであり、第2天板部42は、常時その使用端部42c下方に下肢空間S3が形成されるように構成されたものである。
【0026】
第1天板部41を前固定位置(F)に固定した状態では、
図1及び
図2に示すように、当該第1天板部41の反使用端41bと第2天板部42の反使用端42bとの間に配線挿通用の隙間S4が形成されるようになっており、その隙間S4の下には配線ダクト43が配されている。また、この隙間S4に沿った位置には、対面する使用者から発せられる飛沫の相互拡散を抑制するための透明アクリル板等の遮蔽板44が立設されている。この天板4は、床面Fから800mm~1050mmの高さに配されており、起立姿勢やハイタイプの椅子に着座した姿勢で使用するのに適している。なお、45は後の幕板、46は前の幕板である。
【0027】
上段のスライド構体2は、
図1、
図2、
図4、
図5及び
図7~
図10に示すように、前述した落差gに対応する高低差を有する一対の段床25、26を備えたものである。具体的には、このスライド構体2は、平行に配された左右一対の脚ベース21と、これら脚ベース21の基端部(後端部)にそれぞれ立設された左右一対の支柱22と、これら支柱22の上端位置から前方に向けて片持ち的に延設された後床板支持フレーム23と、これら支柱22の中間位置から前方に向けて片持ち的に延設された前床板支持フレーム24と、後床板支持フレーム23上に設けられた後の段床25と、前床板支持フレーム24の前半部上に設けられた前の段床26とを具備してなる。脚ベース21は前後方向に転動する車輪等の転動体211を備えている。左右の支柱22は、それぞれ角柱パイプ状のもので、下横架材27と、上横架材28とによって相互に剛結されている。上横架材28は、前方に開放されたチャンネル状のもので、その両端は、天板4の側端付近に位置させてある。
【0028】
前床板支持フレーム24は、
図2、
図5、
図8及び
図10に示すように、前半部が後床板支持フレーム23の前端23aよりも前方に延出する長尺なもので、前端に第1の支持脚241が設けてあるとともに、中間に第2の支持脚242が設けてある。各支持脚241、242は、前床板支持フレーム24から垂下させたもので、下端に転動体243を有している。なお、後床板支持フレーム23の前端23aは、縦フレーム231を介して前床板支持フレーム24の中間位置に剛結されている。29は前幕板、20は後幕板である。
【0029】
下段のスライド構体3は、
図1、
図2及び
図4~
図10に示すように、前述した落差gに対応する高低差を有する一対の段床35、36を備えたものである。具体的には、このスライド構体3は、平行に配された左右一対の脚ベース31と、これら脚ベース31の基端部(後端部)にそれぞれ立設された左右一対の支柱32と、これら支柱32の上端位置から前方に向けて片持ち的に延設された後床板支持フレーム33と、これら支柱32の中間位置から前方に向けて片持ち的に延設された前床板支持フレーム34と、後床板支持フレーム33上に設けられた後の段床35と、前床板支持フレーム34の前半部上に設けられた前の段床36とを具備してなる。脚ベース31は前後方向に転動する車輪等の転動体311を備えている。左右の支柱32は、それぞれ角柱パイプ状のもので、上横架材38によって相互に剛結されている。上横架材38は、前方に開放されたチャンネル状のもので、その両端は、天板4の側端付近に位置させてある。
【0030】
前床板支持フレーム34は、
図2、
図5、
図8及び
図10に示すように、前半部が後床板支持フレーム33の前端33aよりも前方に延出する長尺なものである。この前床板支持フレーム34の前端には縦フレーム341を垂下させて設けてあり、この縦フレーム341の下端が脚ベース31に剛結されている。なお、後床板支持フレーム33の前端33aは、縦フレーム331を介して前床板支持フレーム34の中間位置に剛結されている。39は前幕板、30は後幕板である。
【0031】
以上のようにしてなる上段のスライド構体2と、下段のスライド構体3とは、
図3、
図6及び
図9に示すように、テレスコープ状に組み合わされて家具本体1の天板下空間S1に突没可能に配されている。すなわち、下段のスライド構体3は、左右の脚ベース31を上段のスライド構体2の左右の脚ベース21の内側に位置させて前後方向にスライド移動し得るように組立てられる。なお、上段のスライド構体2の脚ベース21の前端部には、下段のスライド構体3の支柱32に当接して当該下段のスライド構体3のそれ以上の突出動作を係止するストッパ212が設けられている。しかして、このストッパ212は、上段のスライド構体2の下に下段のスライド構体3を組み込んだ後に装着されるものである。
【0032】
また、上段のスライド構体2は、
図3、
図6及び
図9に示すように、左右の脚ベース21を家具本体1の左右の脚ベース11の内側に位置させて前後方向にスライド移動し得るように組立てられる。なお、家具本体1の脚ベース11の前端部には、上段のスライド構体2の支柱22に当接して当該上段のスライド構体2のそれ以上の突出動作を係止するストッパ112が設けられている。しかして、このストッパ112も、家具本体1の下に上段のスライド構体2を組み込んだ後に装着されるものである。
【0033】
このようにして組み立てられた天板付き家具Tは、
図2、
図5及び
図8に示すように、隣接するスライド構体2、3の段床25、26、35、36間、及び最も高い段床25と前記天板4との間にも前述した落差gに対応する高低差が形成されている。すなわち、上段のスライド構体2の前後の段床25、26間、及び、下段のスライド構体3の前後の段床35、36間にはそれぞれ共通の落差gが設定されているが、さらに、下段のスライド構体3の後の段床35と、上段のスライド構体2の前の段床26との間、及び、上段のスライド構体2の後の段床25と家具本体1の天板4との間にも、前述した共通の落差gと同じ高低差が形成されるように寸法設定がなされている。そして、この天板付き家具Tは、
図1~
図3に示すようなテーブルモード(P)と、
図4~
図6に示すようなソファーモード(Q1)(展開モードの第1のモード態様)と、
図7~
図9に示すようなスタジアムモード(Q2)(展開モードの第2のモード態様)とをとり得るようになっている。
【0034】
各スライド構体2、3の低い方の段床すなわち上段のスライド構体2の前の段床26及び下段のスライド構体3の前の段床36には、
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、
図8及び
図10に示すように、前述した落差gに対応する厚みのソファー7が配されている。各段床26、36は、
図7に示すように、通路領域(A)と着座領域(C)の少なくとも一方を備えたものであり、その着座領域(C)にソファー7が配されている。詳述すれば、この実施形態においては、下段のスライド構体3の前の段床36は、中央部に設定した通路領域(A)の両側に着座領域(C)が形成されており、それら両着座領域(C)にソファー7が配されている。下段のスライド構体3の後の段床35は、その全域が通路領域(A)に指定されている。上段のスライド構体2の前の段床26の中央部には着座領域(C)が設定されているとともに、その両側に通路領域(A)が形成されており、その着座領域(C)にソファー7が載置されている。また、上段のスライド構体2の後の段床26は、その全域が通路領域(A)に指定されている。さらに、スタジアムモード(Q2)で使用する際には、この通路領域(A)の後方に位置する天板4の第1天板部41上にも、全域に亘ってソファー7が着脱可能に載置される。
【0035】
ここで、
図1はテーブルモード(P)をとる天板付き家具Tを示す全体斜視図であり、
図2は同右側面図であり、
図3は同底面図である。
図4はソファーモード(Q1)をとる天板付き家具Tを示す全体斜視図であり、
図5は同右側面図であり、
図6は同底面図である。
図7はスタジアムモード(Q2)をとる天板付き家具Tを示す全体斜視図であり、
図8の実線は同右側面図であり、
図9は同底面図である。
図8には、テーブルモード(P)をとる天板付き家具Tを想像線で示している。また、
図3、
図6及び
図9では、第2天板部42の使用端42aを右側として示している。
図10は、天板付き家具Tを示す分解斜視図である。
【0036】
この天板付き家具Tによれば、上段及び下段のスライド構体2、3を天板4の下に没入させたテーブルモード(P)をとらせた場合には、天板4の前後両側から複数人がカウンターテーブルを使用するような態様で適宜使用することができ、多目的に周囲の空間を活用できるフレキシブルワークエリアFAを構築することができる。
【0037】
また、この状態から下段のスライド構体3のみを前方に前進させて突出させてソファーモード(Q1)に形態を変化させると、その下段のスライド構体3がソファー7として使用することが可能となる。そのため、低集中ワークや、少人数でのコミュニケーションができるリフレッシュラウンジエリアRAを構築することができる。
図11は、オフィス空間OSの一角にソファーモード(Q1)に設定した天板付き家具Tを配置してリフレッシュラウンジエリアRAを構築した一例を示している。
【0038】
さらに、家具本体1に対して上段のスライド構体2と下段のスライド構体3を前方に目いっぱい突出させてスタジアムモード(Q2)に変化させると、家具本体1の天板4と各スライド構体2、3の段床25、26、35、36とが階段状に展開されることになる。そのため、参加人数を絞った形式でのオープンイノベーションセミナーなども開催できるコラボレーションエリアCAを構築することができる。
【0039】
図12は、オフィス空間OSの一角にテーブルモード(P)に設定した天板付き家具Tを配置してフレキシブルワークエリアFAを構築するとともに、その隣にスタジアムモード(Q2)に設定した天板付き家具Tを配置してセミナー等も開催できるコラボレーションエリアCAを構築した例を示している。
【0040】
このような構成の天板付き家具Tであれば、その基本形態を大きく変化させることができ、その変化によって、従来の専用家具では応えられない用途変更に対応することができることができる。そのため、複数種類の専用家具を用意して適宜取替使用するのと同等の使用感を一種類の天板付き家具Tにより確保することができる。しかも、このようなものであれば、スライド構体2、3を家具本体1に対してスライド移動させるだけで、その基本形態を変更することができるため、専用家具を取り替える場合のような手間や時間は要しない。
【0041】
また、この実施形態では、段床25、26、35、36の高さが相互に異なる複数のスライド構体2、3をテレスコープ状に配しているので、展開した状態では広大なひな壇状の形態を実現することができるにも拘わらず、これらのスライド構体2、3を家具本体1の天板4の下にコンパクトに収納することができ、基本形態のダイナミックな変更を実現することが可能となる。
【0042】
さらに、各スライド構体2、3が、前述した落差gに対応する高低差を有する一対の段床25、26、35、36をそれぞれ備えたものであるため、スライド構体2、3の台数を最小限に止めながら移動しやすい階段形態を実現することが可能となり、部品点数の増加や構造の複雑化を防止することができる。
【0043】
また、この場合、前述のように各スライド構体2、3の低い方の段床(前の段床26、36)に、階段の落差gに対応する厚みのソファー7を配しておけば、ソファー7を取り外すことなしにスライド構体2、3をテレスコープ動作させることができ、モード変更の手間を最小限に止めることができる。
【0044】
なお、本発明は、以上説明した実施形態のものに限定されないのは勿論であり、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0045】
例えば、前述した実施形態では、展開モードとして2種類のモード態様を備えている場合について説明したが、展開モードは、ソファーモード又はスタジアムモードのいずれか一方のみであってもよい。
【0046】
また、スライド構体の種類も2種類に限らず、1種類あるいは3種類以上のものであってもよい。スライド構体の種類を多くすれば、展開モードの形態もさらに増加させることも可能となる。
【0047】
図示例では、各スライド構体が高低差を有する一対の段床をそれぞれ備えたものであるが、各スライド構体が段床を1つのみ備える構成や、段床を3つ以上備える構成のものであってもよい。しかしながら、図示例のように各スライド構体が高低差を有する一対の段床をそれぞれ備えたものであれば、前述したように、スライド構体の台数を最小限に止めながら移動しやすい階段形態を実現することが可能となり、部品点数の増加や構造の複雑化を防止することができるという効果が得られる。
【0048】
さらに、図示例では、各段床を、通路領域と着座領域とを備え、着座領域にソファーを予め配するようにしているが、例えば、全ての段床を通路状にしておき、任意の箇所にソファーを置いて自由に着座できるようにしてもよい。しかしながら、図示例のように予め着座領域を決めておけば、通路の設計を最適化し易いという効果が得られる。
【0049】
また、家具本体の天板は、第1天板部と第2天板部とを備えたものに限られず、例えば、1枚物であってもよい。しかしながら、図示例のように第1天板部の固定位置を変更できるようにしておけば、テーブルモードでは、天板の前後両側にうまく下肢空間を形成することができ、展開モードでは第1天板部が邪魔にならないように退避させておくことができるというメリットが得られる。
【0050】
天板の高さも、床面から800mm~1050mmに限定されないが、この範囲に設定しておけば、使い勝手を犠牲にすることなく、複数のスライド構体を収納することができるという効果が得られる。すなわち、800mm未満に設定すると、スライド構体を2台以上収納するのが難しくなり、1050mmを上回ると起立姿勢でも高すぎて使い難くなる使用者が多くなる。
【0051】
加えて、天板や段床の下方の空間を側方の空間から隠蔽する側板を設けてもよく、また、天板や上段のスライド構体の段床に着座した利用者の転落を防止するための手摺等の手段を設けてもよい。側板や手摺は、モード変更後に取り付けるようにしたものでもよいが、家具本体の側面及び各スライド構体の側面にそれぞれ予め装着しておいたものでもよい。この場合には、側板や手摺がスライド構体のスライド動作時に相互に干渉しないように取り付けておく必要がある。
【0052】
そして、天板付き家具全体の幅寸法も図示例のようなものに限られないのはもちろんであり、種々変更が可能である。また、所定の幅寸法を有する本発明に係る複数台の天板付き家具を幅方向に連結して使用することを可能なものにしてもよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
T…天板付き家具
1…家具本体
2…(上段の)スライド構体
25…(後の)段床
26…(前の)段床
3…(下段の)スライド構体
35…(後の)段床
36…(前の)段床
4…天板
41…第1天板部
41a…(第1天板部の)使用端
42…第2天板部
42a…(第2天板部の)使用端
5…ソファー
S1…天板下空間
S2、S3…下肢空間
(P)…テーブルモード
(Q1)…展開モードの第1のモード態様(ソファーモード)
(Q2)…展開モードの第2のモード態様(スタジアムモード)
(A)…通路領域
(C)…着座領域
g…落差