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特許7619075抗菌・抗ウィルス性および防汚性を有するコーティング用組成物および塗工物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】抗菌・抗ウィルス性および防汚性を有するコーティング用組成物および塗工物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20250115BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20250115BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20250115BHJP
   A01N 59/06 20060101ALI20250115BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20250115BHJP
   A01N 65/44 20090101ALI20250115BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20250115BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20250115BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250115BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250115BHJP
   C09D 201/06 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C09D183/04
A01N25/10
A01N33/12 101
A01N59/06 Z
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
A01N65/44
A01P1/00
A01P3/00
B32B27/18 F
C09D7/61
C09D201/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021022743
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022093225
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2020205890
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島田 健志郎
(72)【発明者】
【氏名】江川 良
(72)【発明者】
【氏名】植木 克行
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181207(JP,A)
【文献】特表2008-533009(JP,A)
【文献】特開2004-026841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/04
A01N 25/10
A01N 33/12
A01N 59/06
A01N 59/16
A01N 65/44
A01P 1/00
A01P 3/00
B32B 27/18
C09D 7/61
C09D 201/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a)、ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)、前記水酸基と反応可能な官能基を有する硬化剤(c)、抗菌・抗ウィルス剤(d)および分散剤(e)を含み、
前記抗菌・抗ウィルス剤(d)が、粒子状であり、平均粒子径が、0.1μm~5.0μmであることを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項2】
抗菌・抗ウィルス剤(d)が、金、銀、銅、錫、亜鉛および白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含有する無機微粒子(d-1)、酸化カルシウム(d-2)、熊笹抽出成分(d-3)並びに分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
抗菌・抗ウィルス剤(d)の含有量が、ポリマー(a)、ポリマー(b)、および硬化剤(c)の固形分の合計100質量%に対して、0.15~15質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
分散剤(e)が、カルボキシル基および/またはアミノ基を有することを特徴とする、請求項1~いずれかに記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
プラスチックフィルムまたは紙基材上に、請求項1~いずれかに記載のコーティング用組成物により形成されたコーティング層を有する塗工物。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌・抗ウィルスおよび防汚性を有するコーティング用組成物、およびそれを用いたプラスチックフィルム、紙の塗工物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の衛生思想の高まりによって、食品や医薬品の工場、病院や養護施設等の建物、食品厨房器具、医療器具、医療機器等の装置において、又は一般家庭用品においてまでも、細菌、かび等の真菌の拡大・感染防止のため、抗菌剤、抗ウィルス、抗カビ剤、消毒剤等が使用されている。そのため、公共施設のみならず一般家庭においても、様々な部材に抗菌性や抗ウィルス性を付与することが望まれている。
【0003】
これらの問題を解決するものとして、有機系又は無機系抗菌剤が提案されている。
特に、無機系抗菌剤については、従来、銀イオン(Ag)、亜鉛イオン(Zn2+)、及び二価銅イオン(Cu2+)等の金属イオンが微生物の増殖を抑制し、又は微生物に対して殺菌的に作用することが知られている(例えば、特許文献1)。この知見に基づいて、これらの金属イオンをゼオライトやシリカゲル等の物質に担持させた抗微生物材料や、上記金属と光触媒作用を有する酸化チタンと組み合わせた抗微生物材料等も多数開発され、それらを用いた抗菌コートティング剤が開発されている。
しかしながら、それらのコーティングを施した塗工物において、くり返して表面をふき取った際、その効果の持続性が劣るケースがあり、また実際の印刷において、有効成分が沈降してしまうことで、コーティング用組成物表面における抗菌・抗ウィルス成分の存在割合が少なくなり、有効な抗菌・抗ウィルス性が得られないケースがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-221304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、印刷層の状態が良好であり、抗菌性および/または抗ウィルス性が良好であり、アルコール耐性が良好であり、更にふき取り後でも抗菌性および/または抗ウィルス性を維持できる、コーティング用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を達成すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、以下に記載のコーティング用組成物を用いることで本願課題を解決しうることを見出し、かかる知見に基づき、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち本発明は、ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a)、ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)、前記水酸基と反応可能な官能基を有する硬化剤(c)、抗菌・抗ウィルス剤(d)および分散剤(e)を含むことを特徴とするコーティング用組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、抗菌・抗ウィルス剤(d)が、金、銀、銅、錫、亜鉛および白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含有する無機微粒子(d-1)、酸化カルシウム(d-2)、熊笹抽出成分(d-3)並びに分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記コーティング用組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、抗菌・抗ウィルス剤(d)の含有量が、ポリマー(a)、ポリマー(b)、および硬化剤(c)の固形分の合計100質量%に対して、0.15~15質量%であることを特徴とする上記コーティング用組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、抗菌・抗ウィルス剤(d)が、粒子状であり、平均粒子径が、0.1μm~5.0μmであることを特徴する上記コーティング用組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、分散剤(e)が、カルボキシル基および/またはアミノ基を有することを特徴とする、上記コーティング用組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、プラスチックフィルムまたは紙基材上に、上記コーティング用組成物により形成されたコーティング層を有する塗工物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、印刷層の状態が良好であり、抗菌性および/または抗ウィルス性が良好であり、アルコール耐性が良好であり、更にふき取り後でも抗菌性および/または抗ウィルス性を維持できる、コーティング用組成物を提供することを可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその趣旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0015】
以下の説明において、抗菌・抗ウィルス剤(d)を含むコーティング用組成物を単に「組成物」と表現する場合があるが同義である。抗菌・抗ウィルス剤を含むコーティング用組成物から、印刷等により形成された層を「コート層」というが、同義である。なお、抗菌・抗ウィルス性とは、抗菌性および/または抗ウィルス性を有するという意味であり、抗菌性に加え、抗ウィルス性を有していることが好ましい。
【0016】
以下、抗菌・抗ウィルス剤を含むコーティング用組成物を構成する各成分について詳述する。なお、「ポリマー」および「樹脂」は同義として扱う。以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「メタクリル」と「アクリル」を併記していることを表す。(メタ)アクリレートについても同様である。
【0017】
(コーティング用組成物)
本発明のコーティング用組成物は、ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a)、ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)、前記水酸基と反応可能な官能基を有する硬化剤(c)、抗菌・抗ウィルス剤(d)および分散剤(e)を含む。コーティング用組成物総質量中にポリマー(a)およびポリマー(b)を20~80質量%含むことが好ましく、30~70質量%含むことがなお好ましい。また、コーティング用組成物の固形分としては、15~40質量%であることが好ましく、20~35質量%であることがなお好ましい。「固形分」とは不揮発性分の総質量%をいう。
また、ポリマー(a)とポリマー(b)は質量比率で1:99~99:1で含むことが好ましく、2:98~50:50で含むことがなお好ましい。
【0018】
(ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a))
本発明に用いられるポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a)は、防汚性を付与するほか、後述のポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)、抗菌・抗ウィルス剤(d)との併用による相乗効果で抗菌・抗ウィルス性を高める。ポリマー(a)は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(例えば、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂など)、エポキシ樹脂等のポリマーにおいて、その構造中にポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有すればよく、限定されないが、ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するアクリル樹脂であることが好ましい。ポリマー(a)は、ブロックポリマー、グラフトポリマーなどであることが好ましい。
【0019】
上記ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するアクリル樹脂は、例えば、一実施形態として、ポリオルガノシロキサン構造を有する(メタ)アクリルモノマーと他のモノマー((メタ)アクリルモノマーを含む)を重合開始剤を用いて共重合して得られたポリマー(a)であることが好ましい。「ポリオルガノシロキサン構造を有する(メタ)アクリルモノマー」としては、例えば、東芝シリコーン(株)製のTSL9705などの片末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサン化合物、JNC(株)製のサイラプレーンFM-0711、FM-0721、FM-0725などの片末端(メタ)アクリロキシ基含有ポリオルガノシロキサン化合物等が好適に挙げられる。
また、「他のモノマー」として、ポリオルガノシロキサン構造を有する(メタ)アクリルモノマーが水酸基を有しない場合は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを含むことが好適であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が好適に挙げられるが、これらに限定されない。「他のモノマー」は、水酸基を有しないモノマーを含んでいてもよい。
【0020】
水酸基を有しないモノマーとしては、(メタ)アクリルモノマー(脂肪族(メタ)アクリルモノマー、芳香族(メタ)アクリルモノマー)およびスチレン系モノマーなどを好適に用いることができる。(メタ)アクリルモノマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、更に水酸基以外であれば、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、N-アルコキシアルキル基、などを含んでいてもよい。
【0021】
これらを用いたポリマーの製造方法は、公知の方法、例えば、溶液重合等で得られる。用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶媒は2種以上の混合物でもよい。合成時の上記モノマーの仕込み濃度は、10~80重量%が好ましい。
【0022】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどが用いられ、重合温度は、50~140℃、好ましくは70~140℃である。
【0023】
(ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b))
ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)は、ポリマー(a)同様、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(例えば、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂など)、エポキシ樹脂等のポリマーを使用でき、ポリオルガノシロキサン構造を有さない。中でもアクリル樹脂であることが好ましい。その際、ポリオルガノシロキサン構造を有しない、(メタ)アクリルモノマー、スチレン系モノマーなどは上記ポリマー(a)と同様の材料、方法で重合できる。
【0024】
ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a)およびポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)の重量平均分子量は、好ましくは5000~50000であり、より好ましくは10000~40000であり、さらに好ましくは15000~35000である。なお、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による測定値をいう。
また、ポリマー(a)の水酸基価は、10~250mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは50~200mgKOH/gである。当該範囲であれば、コート層強度が向上し、フェルトペン拭き取り試験、アルコール拭き取り試験時のコート層耐性が良好であり、また、硬化剤を加えても、コート層のブロッキングを抑制できる。
【0025】
(抗菌・抗ウィルス剤(d))
抗菌・抗ウィルス剤(d)は、抗菌・抗ウィルス性を発現させるために用いる。抗菌・抗ウィルス性剤(d)としては、無機系、有機系である抗菌・抗ウィルス剤を挙げることができる。無機系としては、無機微粒子(d-1)、無機酸化物などが挙げられ、有機系としては、後述の化合物等が挙げられる。抗菌・抗ウィルス剤(d)は、ポリオルガノシロキサン構造を有するポリマー(a)、および、ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b)と併用することで相乗効果を示し、抗菌・抗ウィルス性、防汚性に効果を表す。
抗菌・抗ウィルス剤(d)は、金、銀、銅、錫、亜鉛および白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含有する無機微粒子(d-1)、酸化カルシウム(d-2)、熊笹抽出成分(d-3)並びに分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)のうち、少なくともいずれか一種を含むことが好ましい。
【0026】
(金、銀、銅、錫、亜鉛および白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含有する無機微粒子(d-1))
無機微粒子(d-1)としては、金、銀、銅、錫、亜鉛、白金などの少なくとも1種の金属イオンをゼオライト、ヒドロキシアパタイトや燐酸カルシウムに担持した無機微粒子(抗菌性固体粒子ともいう)や、上記金属イオンを中心金属とする金属錯体を保持したもの、無機酸化物が好適に挙げられる。当該抗菌性固体粒子とは、ゼオライト、ヒドロキシアパタイトや燐酸カルシウム中に抗菌性を有する金、銀、銅、亜鉛、白金などの金属イオンを取り込んだものである。ゼオライトとは、結晶アルミノケイ酸塩の一種でアルミニウム、ケイ素、アルカリ金属から構成されており、空孔を持った結晶構造を有している。
具体的な製品としては、ノバロン(東亞合成株式会社)、ゼオミック(株式会社シナネンゼオミック製)、アパゲンSP-200(株式会社ザンキ製)、アパゲンSP-1(株式会社ザンキ製)、アパサイダーAK(株式会社ザンキ製)、アパサイダーAW(株式会社ザンキ製)、アパサイダーZ(株式会社ザンキ製)、ビオサイド(タイショ―テクノス)、PBM-OJ(パシフィックビーム・モールド製)、PBM-OJプラス(パシフィックビーム・モールド製)、CS‐100(住友大阪セメント株式会社製)、「トリボライト(カナエ塗料株式会社製)、ラサップ(ラサ工業株式会社製)などが挙げられる。金属イオンは、特に人体への影響を考慮して、銀を含むことが好ましい。
【0027】
抗菌・抗ウィルス剤(d)として無機酸化物を含むことが好ましく、好ましくは、酸化カルシウム(d-2)、酸化亜鉛である。他に無機酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸ジルコニウム、ルチル型酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、フッ化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、酸化アンチモン、氷晶石、蛍石、燐灰石、方解石、石膏およびタルクなどが挙げられる。
【0028】
有機系抗菌・抗ウィルス剤としては、ハロゲン系、フェノール系、イミダゾール系、チアゾール系、グアニジン系、ピリジン系、有機砒素系、熊笹抽出成分(d-3)、分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)、アミド系、アミノ系金属界面活性剤などがあり、具体的には「微生物の滅菌・殺菌・防黴技術」(衛生技術会)、「防菌防黴ハンドブック」(日本防菌黴学会)、防菌防黴剤辞典」(日本防菌黴学会)などに記載されている。
これらの中でも熊笹抽出成分(d-3)、分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)を含むことがこのましい。
尚、分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)は、例えば、分子内に4級アンモニウム塩やスルホニウム塩などのカチオン性基を有するものであり、好ましくは4級アンモニウム塩を有するものである。分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。
分子内にカチオン性基を有する化合物(d-4)として好ましい態様を以下に示すとすれば、低分子化合物であるものは、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザトニウムなどが好適に挙げられる。高分子化合物であるものは、例えば、4級アンモニウム塩を含むアクリルモノマーを含むアクリル樹脂などが好適に挙げられる。高分子化合物は重合体であることが好ましい。
【0029】
抗菌・抗ウィルス剤(d)は、固体状の粒子、液状いずれも抗菌・抗ウィルス性の観点で制限はないが、固体状の粒子としてコート層中に存在する方がより好ましい。固体状で存在することで、コート層を擦った後などにコート層中から離脱することなく存在するため、抗菌・抗ウィルス性能がより持続しやすくなる。また、その平均粒子径は0.05~10μmが好ましく、0.05~7μmであることがなお好ましく、0.1~5μmであることが更に好ましい。コート層膜厚よりも平均粒子径を大きくすることで、より抗ウィルス機能を発現しやすいためである。また、抗菌・抗ウィルス剤の含有量は、コート層の皮膜強度と外観を良好とするため、抗菌・抗ウィルス剤を除く全ての固形分100質量%に対し、0.1~20質量%含まれることが好ましく、更に0.15~15質量%がより好ましく、0.3~12質量%が更に好ましい。
平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によるD50測定値をいい、例えば、マイクロトラック・ベル社製の粒子径分布測定装置などを用いることができ、マイクロトラックMT3000IIシリーズなどを用いて測定できる。
【0030】
(水酸基と反応可能な官能基を有する硬化剤(c))
水酸基と反応可能な官能基を有する硬化剤(c)は、水酸基と反応できる官能基を有していれば特段限定されない。硬化剤(c)はコート層の皮膜強度を高めるほか、抗菌・抗ウィルス性にも効果を期待できる。硬化剤(c)の実施形態としては、以下が好ましい。硬化剤(c)は、コーティング用組成物の固形分総質量中に、5~50質量%含むことが好ましく、10~35質量%含むことがなお好ましい。
【0031】
硬化剤(c)としては、イソシアネート系硬化剤であることが好ましい。当該イソシアネート系硬化剤としては、ジイソシアネート、ジイソシアネートアダクト系硬化剤およびイソシアヌレート系硬化剤などが好ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、o-トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートなどが挙げられ、また、
ジイソシアネートと多価アルコールまたはポリアミンとのアダクト体(ジイソシアネートアダクト系硬化剤)や、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、コロネートLなどの多価イソシアネートなどが好ましい。またジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート化合物およびその誘導体(イソシアヌレート系硬化剤)であっても好ましい。
【0032】
また、水酸基と反応可能な官能基を有する硬化剤(c)は、上記イソシアネート系硬化剤以外であっても下記のような硬化剤が好適に使用可能である。
【0033】
例えば、ヘキサメチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミンなどのアルキロール基またはアルコキシ基を有するメラミン系化合物、
シアヌール酸、アンメリド、メラミン、ベンゾグアナミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアミノピリジン、ベンゾグアナミン樹脂、メタノール変性メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂、
ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)などのヒドラジン系化合物、
エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの直鎖状ジアミン、
メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン、m-キシレンジアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン、ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、メチレンビス(フランメタンアミン)などの環状ジアミン、
1,6-ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン、
以上が好適に挙げられる。
【0034】
また、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサン二酸、クエン酸、マレイン酸、メチルナディク酸、ドデセニルコハク酸、セバシン酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などのジカルボン酸、及びこれらの酸無水物、
グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのジアルデヒド、グリシン、アラニンなどのアミノ酸および、そのラクタム、クエン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、6-ヒドロキシペンタン酸などのヒドロキシカルボン酸およびそのラクトン、
エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6ーヘキサンジオールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステルなどのビスエポキシ化合物、油化シェルエポキシ社製、商品名エピコート801、802,807,815,827,828,834,815X,815XA1、828EL,828XA、1001、1002、1003、1055、1004、1004AF、1007、1009、1010、1003F、1004F,1005F,1100L,834X90,1001B80,1001X70,1001X75,1001T75,5045B80,5046B80,5048B70,5049B70、5050T60、5050、5051、152、154、180S65,180H65,1031S,1032H60、604、157S70などのエポキシ樹脂、ピロりん酸、亜りん酸エチル、ビスフェノールA変性ポリりん酸、亜りん酸トリフェニルなどのりん化合物、りん酸ジクロリド化合物などが挙げられる。
【0035】
(分散剤(e))
分散剤(e)は、抗菌・抗ウィルス剤を安定に分散させ、コート層表面に均一に存在させるために用いられる。抗菌・抗ウィルス剤をコート層表面に均一に分散されればふき取り後でも抗菌・抗ウィルス性を維持させることが可能である。分散剤(e)としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性を有する界面活性剤、骨格中にカルボキシル基などのアニオン性基、アミノ基などのカチオン性基を有する樹脂型分散剤を好適に使用することができる。更に、カルボキシル基および/またはアミノ基を有する分散剤が好ましい。具体的には ANTI-TERRA-U(ビッグケミ―社製)、ディスパーBYK9076,9077,102,109(ビッグケミ―社製)等が挙げられる。その添加量は特に制限はないが保存安定性の観点から、抗菌・抗ウィルス剤の総質量に対して0.1~10質量%で含まれることが好ましく、更には0.1~6質量%あるいは0.1~3質量%で組成物中に含まれることが好ましい。
【0036】
(有機溶剤)
本発明のコーティング用組成物は印刷時の有機溶剤を含むことが好ましく、有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、また、これらの混合物が挙げられる。尚、イソシアネート系硬化剤を用いる場合は、アルコール系溶剤を使わないことが好ましい。
【0037】
(その他添加剤)
本発明の組成物には、必要に応じて、公知公用の紫外線吸収剤、光安定剤、防かび剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、充填剤、潜在性硬化剤、難燃剤、可塑剤等を配合することもできる。
【0038】
(プラスチックフィルムまたは紙)
本発明に用いるプラスチックフィルムまたは紙は印刷・塗工のための基材であり、公知公用のものが使用でき、特に制限はない。また抗菌・抗ウィルス剤を直接基材へ印刷せず、プラスチックフィルムまたは紙とコート層との間にプライマー層、アンカー層、印刷絵柄層を介しても構わない。
プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、アルミなど、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物をポリエチレンテレフタレート、ナイロンフィルムに蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていても良い。基材として用いる紙としては特に限定されず、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、コートボール紙、アート紙、ポリエチレンコート紙、マットコート紙等が挙げられ、浸み込みの難さからコートボール紙、アート紙、ポリエチレンコート紙などが好ましい。
【0039】
(コーティング方法)
本発明のコーティング用組成物を均一にコーティングし、外観の良好な塗工物を得るにはウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法としては、グラビアコート法やダイコート法等を用いることができる。グラビアコート法は、いわゆる印刷方式であってよく、表面に凸凹の彫刻加工が施されたグラビアロールを塗布液に浸し、グラビアロール表面の凸凹部に付着した塗布液をドクターブレードで掻き落とし凹部に液を貯めることで正確に計量し、基材に転移させる方式である。グラビアコート法により、低粘度の液を薄くコーティングすることができる。ダイコート法は、ダイと呼ばれる塗布用ヘッドから液を加圧して押出しながらコーティングする方式である。ダイコート法により、高精度なコーティングが可能となる。さらに、塗布時に液が外気にさらされないため、乾きによる塗布液の濃度変化などが起こりにくい。その他のウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などを挙げることができる。
これらの方法から必要とする膜厚に応じて適宜選択することができる。また生産性を考慮した場合、ウェットコーティング法を用いることにより、毎分数十メートルのライン速度(例えば約20m/分)で積層できるため、大量に製造でき、生産効率を上げることができる。
【0040】
コーティング用組成物の乾燥方法について説明する。熱エネルギーを用いて行う場合は、室温~約200℃の環境下で行うことができるが、プラスチックフィルムを用いる場合は、プラスチックの耐熱性を考慮し、50~120℃が好ましい。また、硬化剤(c)にイソシアネート系硬化剤をもしいる場合は、室温~40℃において1日から7日間静置(エージング)を行うことが好ましい。
【実施例
【0041】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0042】
(酸価、水酸基価)
JISK0070に記載された方法により測定した。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0043】
(重量平均分子量)
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(昭和電工社製「ShodexGPCSystem-21」)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。
以下に測定条件を示す。
カラム:下記の複数のカラムを直列に連結して使用。
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW2500、
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW3000、
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW4000、
東ソー株式会社製、TSKgel Guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)、
測定条件:カラム温度40℃、
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0044】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定測定)により求めた。なお、測定機は株式会社リガク製 DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度と終了温度との中点をガラス転移温度とした。
【0045】
(製造例1)ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a-1)の製造。
JNC(株)製サイラプレーンFM-0711(片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物)50部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート 36部、メチルメタクリレート 14部、メチルエチルケトン(MEK)200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4部を加えて2時間重合を行い、ポリオルガノシロキサン構造を有する重量平均分子量約19,000、水酸基価51(mgKOH/g)のポリマー(a-1)溶液を得た。
【0046】
(製造例2)ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a-2)の製造。
JNC(株)製サイラプレーンFM-0711(片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物)10部、4-ヒドロキシブチルメタクリレート 25部、メチルメタクリレート 40部、ブチルメタクリレート 14部、ブチルアクリレート 10部 アクリル酸 1部 メチルエチルケトン(MEK)200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4部を加えて2時間重合を行い、ポリオルガノシロキサン構造を有する重量平均分子量約19,500、酸価 2.6(mgKOH/g)、水酸基価32(mgKOH/g)のポリマー(a-2)溶液を得た。
【0047】
(製造例3)ポリオルガノシロキサン構造および水酸基を有するポリマー(a-3)の製造。
JNC(株)製サイラプレーンFM-0711(片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物)45部、4-ヒドロキシブチルメタクリレート 31部、ブチルメタクリレート 20.5部、ブチルアクリレート 1.0部 アクリル酸 2.5部 メチルエチルケトン(MEK)200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4部を加えて2時間重合を行い、ポリオルガノシロキサン構造を有する重量平均分子量約19,100、酸価 6.5(mgKOH/g)水酸基価 40(mgKOH/g)のポリマー(a-3)溶液を得た。
【0048】
(製造例4)ポリオルガノシロキサン構造を有し水酸基を有さないポリマー(aa)の製造。
JNC(株)製サイラプレーンFM-0711(片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物)50部、メチルメタクリレート 14部、ブチルメタクリレート 18部、ブチルアクリレート 18部 メチルエチルケトン(MEK)200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4部を加えて2時間重合を行い、ポリオルガノシロキサン構造を有する重量平均分子量約19,300のポリマー(aa)溶液を得た。
【0049】
(製造例5)ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b-1)の製造。
2-ヒドロキシエチルメタクリレート36部、メチルメタクリレート50部、ブチルメタクリレート14部、メチルエチルケトン(MEK)200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4部を加えて2時間重合を行い、ポリオルガノシロキサン構造を有しない重量平均分子量約17,000、水酸基価51(mgKOH/g)のポリマー(b-1)溶液を得た。
【0050】
(製造例6)ポリオルガノシロキサン構造を有さないポリマー(b-2)の製造。
2-ヒドロキシエチルメタクリレート25部、メチルメタクリレート40部、ブチルメタクリレート34部、アクリル酸1部、メチルエチルケトン(MEK)200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4部を加えて2時間重合を行い、ポリオルガノシロキサン構造を有しない重量平均分子量約17,300、水酸基価36(mgKOH/g)のポリマー(b-1)溶液を得た。
【0051】
(実施例1)
ポリマー(a-1)溶液を30部、ポリマー(b-1)溶液30部、分散剤(e-1)0.3部、抗菌剤(d-1)(銀を担持したジルコニウム粒子、平均粒子径2.1μm)0.3部を混合し、撹拌羽根つきディスパーで30分間撹拌して分散体を得た。更に印刷時において硬化剤(c-1)(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート 3官能 (NCO% 16%))12部を配合して本発明のコーティング用組成物J1を得た。
【0052】
上記コーティング用組成物J1をメチルエチルケトンで希釈し、粘度をザーンカップNo.3(離合社製)で18秒になるように調整し、グラビア印刷機用いて、厚さ25μmポリエチレンテレフタレートフィルムに印刷し、実施例1の塗工物を得た。塗工物はオーブンを用いて40℃-3日エージングを行った。
【0053】
(実施例2~17および比較例1~6)
表1に記載した物質および配合比率を使用した以外は、実施例1と同様の方法でコーティング用組成物J2~J18およびJJ1~JJ6を得た。また上記と同様にして塗工物をそれぞれ得た。なお、表中の略称は以下を表す。
c-2:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト(NCO% 13%)
d-1 :銀担持ジルコニウム無機抗菌剤(平均粒子径2.5μm)
d-1-2:銀-リン酸亜鉛カルシウム系無機抗菌剤(平均粒子径7.5μm)
d-2 :酸化カルシウム(ナチュラルジャパン社製 平均粒子径6μm)
d-3 :熊笹抽出エキス粉(東洋アドレ社製)
d-4 :塩化ベンザルコニウム/無機抗菌剤(平均粒子径8.5μm)
d-4-2:カチオンポリマー/無機物(平均粒子径 2.5μm)
d-5 :酸化亜鉛(堺化学社製 平均粒子径2.0μm)
e-1 :分散剤 酸価 44mgKOH/g アミン価 38mgKOH/g(BYK社製)
e-2 :分散剤 アミン価 140mgKOH/g(BYK社製)
e-3 :分散剤 酸価 101mgKOH/g(BYK社製)
【0054】
(特性評価)
上記実施例および比較例で得られたコーティング用組成物を用いて以下の特性評価を行った。
【0055】
<印刷層の表面状態評価>
塗工物の外観を目視で評価。
A:平滑で艶がある表面であるもの。
B:Aと比較して艶がやや下がるもの。
C:表面にざらつきがあるもの。
【0056】
<フェルトペン拭き取り試験>
防汚性の評価として、油性フェルトペンを用いて線引きし、乾いた布でふき取り工程を99回行い、100回目の拭き取り易さを評価した。
A:ふき取り試験後にフェルトペン痕が無しとなったもの。
B:ふき取り試験後でもうっすらとフェルトペン痕が残ったもの。
C:ふき取り試験後でも明確なフェルトペン痕が残るもの。
【0057】
<アルコール拭き取り試験>
各塗工物をエタノール78%水溶液を染み込ませた布を用いて、荷重500gで10往復擦り、終了時の面状態を目視評価およびそれを試験サンプルとして、抗菌、抗ウィルス試験を行った。
A:コート層表面に変化がなく、抗菌、抗ウィルス性は当該試験前と比較して20%未満低下。
B:コート層表面にやや変化があり、抗菌、抗ウィルス性は当該試験前と比較して20%以上80%未満低下。
C:コート層表面が劣化し、抗菌、抗ウィルス性は当該試験前と比較して80%以上低下。
【0058】
<抗菌性試験>
この試験サンプルについて、日本工業規格JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2プラスチック製品などの試験方法に準拠して、大腸菌または黄色ぶどう球菌に対する抗菌力試験を行った。
試験の結果を表2に示す。
【0059】
なお、表2に示す「抗菌活性値(R)」は、R=Log(B/A)-Log(C/A)=Log(B/C)で定義される数値である。
この式において、Aは無加工(抗菌OPニス剤などを塗布していない)試験サンプルにおける接種直後の生菌数の平均値、Bは無加工(抗菌剤を含むコーティング用組成物などを塗布していない)試験サンプルにおける24時間後の生菌数の平均値、Cは抗菌OPニス剤を塗布した試験サンプルにおける24時間後の生菌数の平均値を表す。
抗菌活性値(R)が2.0以上であれば、抗菌効果ありと判定する。
【0060】
<抗ウィルス性試験>
試験サンプルについて、JIS Z2801:2000「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」のフィルム密着法に準じ、菌液の代わりにインフルエンザウィルス液を用いた。試験体表面へのウィルス接種後の条件は25℃で24時間とし、対照区にはポリエチレンフィルムを用いた。ウィルスの感染価は、JIS L1922「繊維製品の抗ウィルス性試験方法」附属書Bに記載されるプラーク測定法によって求め、以下の計算式を用いて抗ウィルス活性値を算出した。抗ウィルス活性値が2以上であれば、抗ウィルス効果があると評価した。
M=Log(A/B)=Log(A)-Log(B)
M:抗ウィルス活性値
Log(A):対照区の24時間反応後の感染価の対数値
Log(B):試験体の24時間反応後の感染価の対数値
抗菌活性値(M)が2.0以上であれば、抗ウィルス効果ありと判定する。
【0061】
表2から明らかなように、実施例の塗工物は、比較例に示す塗工物と比較して、好適な抗菌・抗ウィルス性を有し、アルコールで拭き取った後も効果を持続することが確認できた。
【0062】
本発明に係る抗菌抗ウィルス用コーティング用組成物は分散安定性に優れ、抗菌・抗ウィルス性に優れており、更にアルコール拭き取り後にも効果を持続するため、この抗菌抗ウィルス用コーティング用組成物を印刷したシートは住宅建材、各種公共施設や不特定多数が訪れる施設の間仕切り板、カーテンなど、繰り返し清掃が行われる部材に好適に使用できる。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】