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特許7619109包装体用積層体、包装体、および、包装体用樹脂フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】包装体用積層体、包装体、および、包装体用樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20250115BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/40 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021044019
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143486
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隆司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕
(72)【発明者】
【氏名】山川 秀之
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100040(JP,A)
【文献】特開2020-029095(JP,A)
【文献】特開2019-123925(JP,A)
【文献】特開2002-161166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムと、
ガスバリア層と、を備える包装体用積層体であって、
前記樹脂フィルムは、
ポリエチレンテレフタレートを含み、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)を用いて分析したときに、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値が、0.1以上0.5以下の範囲内に含まれる
包装体用積層体。
【請求項2】
前記ガスバリア層が蒸着層を備え、前記蒸着層は無機酸化物膜または金属膜である
請求項1に記載の包装体用積層体。
【請求項3】
前記ガスバリア層は、塗膜を備え
請求項に記載の包装体用積層体。
【請求項4】
前記蒸着層と前記塗布膜とが接している
請求項に記載の包装体用積層体。
【請求項5】
前記塗布膜は、Si(OR、または、RSi(OR(ORおよびORは加水分解性基であり、Rは有機官能基である)で表されるケイ素化合物、または、ケイ素化合物の加水分解物を1種類以上と、水酸基を有する水溶性高分子と、を含む
請求項またはに記載の包装体用積層体。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルポリエチレンテレフタレートが、メカニカルリサイクルにより再生されたポリエチレンテレフタレート、および、ケミカルリサイクルにより再生されたポリエチレンテレフタレートの少なくとも一方である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の包装体用積層体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の包装体用積層体を備える
包装体。
【請求項8】
樹脂フィルムとガスバリア層とを備えた包装体用積層体が備える包装体用樹脂フィルムであって、
ポリエチレンテレフタレートを含み、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)を用いて分析したときに、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値が、0.1以上0.5以下の範囲内に含まれる
包装体用樹脂フィルム。
【請求項9】
前記ポリエチレンテレフタレートとしてリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、
前記リサイクルポリエチレンテレフタレートが、メカニカルリサイクルにより再生されたポリエチレンテレフタレート、および、ケミカルリサイクルにより再生されたポリエチレンテレフタレートの少なくとも一方である
請求項8に記載の包装体用樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体用積層体、包装体、および、包装体用樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂フィルムは、食品、医薬品、化粧品などの対象物を包装するための包装材に広く用いられている。包装材は、対象物の品質における低下を抑えるために、酸素および水蒸気などの気体を通しにくい性質であるガスバリア性を有していることが好ましい。そのため、透明フィルムと、金属膜または金属酸化膜などを含むバリア層との積層体が包装材として用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-81607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、内容物を樹脂フィルムとガスバリア層との積層体からなる包装体で包装した商品の流通過程では、摩擦、屈曲などの変形を生じさせる外力が商品に対して繰り返し加わる。このように外力が包装体に繰り返し加わると、ガスバリア層にクラックが形成され、包装体の気密性が失われてしまう。そのため、積層体には、ガスバリア性を高めるだけでなく、変形に対する耐性をも高めて、包装体の気密性を包括的に向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための包装体用積層体は、樹脂フィルムと、ガスバリア層とを備える。前記樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを含み、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)を用いて分析したときに、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値が、0.1以上0.5以下の範囲内に含まれる。
上記課題を解決するための包装体は、上記包装体用樹脂フィルムと、ガスバリア層とを備える。
上記課題を解決するための包装体用樹脂フィルムは、樹脂フィルムとガスバリア層とを備えた包装体用積層体が備える包装体用樹脂フィルムである。包装体用樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを含み、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)を用いて分析したときに、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値が、0.1以上0.5以下の範囲内に含まれる。
【0006】
本願発明者らは、包装体用樹脂フィルムを包装体用積層体に適用した場合に、外力が与えられた場合におけるガスバリア性の低下を抑えることが可能な包装体用樹脂フィルムについて鋭意研究した結果、以下を見出した。すなわち、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いた包装体用樹脂フィルムの分析において、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値が、0.1以上0.3以下の範囲内に含まれることによって、当該樹脂フィルムを備える包装体において、気密性が高められることを本願発明者らは見出した。
【0007】
この点で、上記包装体用樹脂フィルム、包装体用積層体、および、包装体によれば、規格値が0.1以上0.5以下の範囲内に含まれるから、包装体の気密性を高めることが可能である。
【0008】
上記包装体用積層体において、前記ガスバリア層は、蒸着層と塗布膜とを備え、前記蒸着層は、酸化アルミニウム、および、酸化ケイ素の少なくとも一方によって形成されてもよい。
【0009】
上記包装体用積層体において、前記蒸着層と前記塗布膜とが接していてもよい。
上記包装体用積層体において、前記塗布膜は、Si(OR、または、RSi(OR(ORおよびORは加水分解性基であり、Rは有機官能基である)で表されるケイ素化合物、または、ケイ素化合物の加水分解物を1種類以上と、水酸基を有する水溶性高分子と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、包装体の気密性を包括的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態における樹脂フィルムの構造を示す断面図。
図2】一実施形態における積層体の構造を示す断面図。
図3】一実施形態における包装体の構造を示す斜視図。
図4】実施例4の樹脂フィルムに対するTOF‐SIMSにより得られたスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図4を参照して、包装体用積層体、包装体、および、包装体用樹脂フィルムの一実施形態を説明する。以下では、包装体用樹脂フィルム、包装体用積層体、包装体、および、実施例を順に説明する。
【0013】
[包装体用樹脂フィルム]
図1を参照して、包装体用樹脂フィルム(以下、樹脂フィルム)を説明する。
図1が示す樹脂フィルム10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)を用いて樹脂フィルム10を分析したときに、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値が、0.1以上0.5以下の範囲に含まれる。
【0014】
は、以下の式(1)によって表される。
【0015】
【化1】
【0016】
は、樹脂フィルム10を形成するPETが含む繰り返し単位のうち、ジカルボン酸単位に由来する。Cは、樹脂フィルム10の表面に一次イオンであるイオンビームが照射されることによって、樹脂フィルム10の表面におけるジカルボン酸単位から生成された二次イオンである。ジカルボン酸単位は、以下の式(2)によって示されるテレフタル酸に由来する繰り返し単位(テレフタル酸単位)、および、以下の式(3)によって示されるイソフタル酸に由来する繰り返し単位(イソフタル酸単位)から構成される。
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
また、C のピークは、樹脂フィルム10の表面をTOF‐SIMSで分析した場合に適切な強度を有する。そのため、C のピークをCのピークの強度を評価する基準として用いている。
【0020】
樹脂フィルム10を形成するPETは、バージンPETおよびリサイクルPETの少なくとも一方を含む。バージンPETは、石油などの原料から新規に合成されたPETである。リサイクルPETは、再生されたPETである。リサイクルPETは、メカニカルリサイクルにより再生されたPET、および、ケミカルリサイクルにより再生されたPETの少なくとも一方であってよい。
【0021】
メカニカルリサイクルでは、PET製品を粉砕し、粉砕した破片を洗浄することによって表面の汚れや異物を取り除いた後、樹脂を高温下に曝して樹脂の内部に留まっている汚染物質を除去する。ケミカルリサイクルでは、PET製品を粉砕し、粉砕した破片を洗浄することによって表面の汚れや異物を取り除く。その後、解重合により樹脂を中間原料にまで戻し、当該中間原料を精製して再重合する。
【0022】
メカニカルリサイクルは、化学反応用の大掛かりな設備を要しないため、ケミカルリサイクルと比較してリサイクルPETの製造に要するコストおよび環境負荷などが低い。そのため、樹脂フィルム10の製造によるコストおよび環境負荷を低める観点では、樹脂フィルム10が含むリサイクルPETは、メカニカルリサイクルにより再生されたPETであることが好ましい。
【0023】
樹脂フィルム10がリサイクルPETとバージンPETとの両方を含む場合には、樹脂フィルム10の製造によるコストおよび環境負荷を低める観点では、リサイクルPETの割合は、60重量%以上100重量%以下の範囲内に含まれることが好ましい。また、リサイクルの対象であるPET製品は、例えば使用済みペットボトルであってよい。
【0024】
PETの繰り返し単位は、上述したジカルボン酸単位とジオール単位とを含む。バージンPETでは、ジオール単位の一例は、エチレングリコールに由来する繰り返し単位であり、ジカルボン酸単位の一例は、テレフタル酸に由来する繰り返し単位である。
【0025】
リサイクルPETでは、ジオール単位の一例は、エチレングリコールに由来する繰り返し単位であり、ジカルボン酸単位の一例は、テレフタル酸に由来する繰り返し単位とイソフタル酸に由来する繰り返し単位とを含む。上述したペットボトルを形成するPETでは、PETの結晶化を抑えて資材の加工性を向上させることを目的として、ジカルボン酸単位が、テレフタル酸に由来する繰り返し単位とイソフタル酸に由来する繰り返し単位とを含む。そのため、ペットボトルを原料とするリサイクルPETのジカルボン酸単位は、ペットボトルのジカルボン酸単位であるテレフタル酸とイソフタル酸とを含む。
【0026】
樹脂フィルム10がバージンPETとリサイクルPETとの両方を含む場合には、樹脂フィルム10において、全てのジカルボン酸単位に占めるイソフタル酸に由来する繰り返し単位の割合は、例えば、0.5モル%以上5モル%以下であってよい。
【0027】
なお、バージンPETは、第1樹脂と第2樹脂とをブレンドした樹脂であってもよい。この場合には、第1樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸、および、ナフタレンジカルボン酸を共重合させた樹脂、または、テレフタル酸およびイソフタル酸を共重合させた樹脂であってよい。第2樹脂は、ポリエチレンナフタレート樹脂であってよい。これにより、バージンPETは、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸に由来する繰り返し単位と、イソフタル酸に由来する繰り返し単位とを含むことが可能である。
【0028】
また、バージンPETは、エチレンテレフタレート単位を主体として、他のポリエステル単位を含む共重合ポリエステルであってもよい。このとき、共重合ポリエステルは、イソフタル酸、および、ナフタレンジカルボン酸を含んでよい。これにより、バージンPETは、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸に由来する繰り返し単位と、イソフタル酸に由来する繰り返し単位とを含むことが可能である。さらには、共重合ポリエステルにおいて、ジカルボン酸単位が、アジピン酸に由来する繰り返し単位であってもよい。また、ジオール単位が、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、および、ジエチレングリコールなどに由来する繰り返し単位であってもよい。
【0029】
上述したナフタレンジカルボン酸は、2,6‐ナフタレンジカルボン酸、2,7‐ナフタレンジカルボン酸、1,3‐ナフタレンジカルボン酸、1,4‐ナフタレンジカルボン酸、1,5‐ナフタレンジカルボン酸の少なくとも1つであってよい。ナフタレンジカルボン酸に由来する繰り返し単位が、ナフタレンジカルボン酸単位である。
【0030】
本開示の包装体用樹脂フィルムは、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値が、0.1以上0.5以下の範囲内に含まれることを特徴とする。TOF‐SIMSは、試料表面に一次イオンを照射し、表面から放出される二次イオンの質量を測定するものであり、試料表面極近傍から発生する二次イオンを測定することができるものであるが、TOF‐SIMSにおける二次イオン発生機構は極めて複雑である。本発明者らは、規格値を当該範囲とするための要因として以下の2つの要因の寄与が大きいものと推定する。
【0031】
(要因1)樹脂フィルムに含まれるイソフタル酸量
イソフタル酸単位を調整することにより、樹脂フィルムは、包装体に用いられるフィルムとして適した柔軟性を有する。包装体に、摩擦、突き刺し、屈曲、または、衝撃などの外力が加わっても、樹脂フィルムが外力に追従して変形することで荷重を吸収し、隣接するガスバリア層にピンホールや破れが形成されにくくすることができる。
【0032】
(要因2)樹脂フィルムに含まれるナフタレンジカルボン酸
ナフタレンジカルボン酸単位を調整することにより、樹脂フィルムの面配向係数を大きくすることができる。面配向係数は、二次イオン発生機構に寄与するものと考えられる。面配向係数を大きくすることにより、樹脂フィルム自体のガスバリア性が高められる。よって、ガスバリア層を積層した包装体の気密性を包括的に高めることができる。
【0033】
本開示の樹脂フィルムにあっては、ジカルボン酸単位およびジオール単位の合計量に対するイソフタル酸単位のモル比率が2×10-1mol%以上9×10-11.0mol%以下であり、ナフタレンジカルボン酸単位モル比率が1×10-2mol%以上6×10-2mol%以下であることにより、C(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度によって除算した規格値を、0.1以上0.5以下の範囲内とすることができる。
【0034】
PETの平均分子量は、例えば1000以上100万以下であることが好ましい。なお、樹脂フィルム10は、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば可塑剤であってよい。
【0035】
樹脂フィルム10は、単一の層、あるいは、複数の層から形成される。なお、樹脂フィルム10が複数の層から形成される場合、各層を形成する材料は、同一であってもよいし、互いに異なってもよい。各層を形成する材料が互いに異なる樹脂フィルム10の一例は、リサイクルPETから形成された層と、バージンPETから形成された層との積層体である。各層を構成する材料が互いに異なる樹脂フィルム10の他の例は、バージンPETに対して第1の割合でリサイクルPETを含む層と、バージンPETに対して第1の割合とは異なる第2の割合でリサイクルPETを含む層との積層体である。
【0036】
樹脂フィルム10の厚さは、包装体に求められる各種の特性に応じて選択される。包装体に求められる特性は、例えば、熱や水分などの各種の環境耐性、内容物の保存性、内容物の充填性、シール加工性、および、マーキングを含む印刷耐性などであってよい。樹脂フィルム10の加工性を高める観点では、例えば、樹脂フィルム10の厚さは、3μm以上100μm以下の範囲内に含まれることが好ましく、6μm以上50μm以下の範囲内に含まれることがより好ましい。
【0037】
樹脂フィルム10を形成する方法は、例えば、溶融押出成形法、または、溶融共押出成形法であってよい。樹脂フィルム10の冷却は、冷却ロール、空気、および、水などによって行われてよい。樹脂フィルム10における流れ方向は、樹脂フィルム10の製造時においてPETの成形が進む方向である。流れ方向は、MD(Machine Direction)方向、あるいは、縦方向とも称される。流れ方向と直交する方向は、TD(Transverse Direction)方向、あるいは、横方向とも称される。樹脂フィルム10が複数の層から構成される場合、各層の流れ方向は同一である。
【0038】
樹脂フィルム10は、無延伸フィルム、MD方向あるいはTD方向に所定倍率で延伸された一軸延伸フィルム、MD方向とTD方向とに逐次または同時に所定倍率で延伸される二軸延伸フィルムである。なお、樹脂フィルム10が複数の層から構成される場合、各層の延伸方向は同一である。
【0039】
[包装体用積層体]
図2を参照して、包装体用積層体(以下、積層体)を説明する。
図2が示すように、積層体20は、樹脂フィルム10と、ガスバリア層11とを備えている。ガスバリア層11は、積層体20におけるガスバリア性を高める機能を有する。
【0040】
ガスバリア層11は、例えば気相堆積膜を含む。気相堆積膜は、無機酸化物膜または金属膜である。無機酸化物が含む無機物は、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物であってよい。金属は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、スズ、ナトリウム、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム、金、クロムなどであってよい。
【0041】
気相堆積膜の形成方法は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、および、プラズマ気相成長法(CVD)などであってよい。積層体の生産性を高める観点では、気相堆積膜の形成方法は真空蒸着法であることが好ましい。真空蒸着法において蒸着材料を加熱する方式には、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、および、誘導加熱方式のいずれかを用いることが好ましい。蒸着材料の選択性における自由度を高める観点では、電子線加熱方式を用いることが好ましい。気相堆積膜と樹脂フィルム10との密着性を高める観点、および、気相堆積膜の緻密性を高める観点では、真空蒸着法において、プラズマアシスト法およびイオンビームアシスト法を用いることが可能である。蒸着層の透明性を高める観点では、反応性蒸着法を用いてガスバリア層11を形成してもよい。反応性蒸着法では、例えば酸素ガスなどの反応ガスを成膜空間に供給する。
【0042】
透明な包装体を形成するための積層体20は、無機酸化物から形成された気相堆積膜を備える。無機酸化物は、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素であることが好ましい。遮光性を有した包装袋を形成するための積層体20は、金属から形成された気相堆積膜を備える。金属は、アルミニウムであることが好ましい。
【0043】
なお、ガスバリア層11は、複数のバリア層から形成されてもよい。この場合には、各バリア層は同一の材料から形成されてもよいし、複数のバリア層は、第1の材料から形成されたバリア層と、第1の材料とは異なる第2材料から形成されたバリア層とを含んでいてもよい。
【0044】
ガスバリア層11の厚さは、例えば、5nm以上300nm以下の範囲内に含まれる。ガスバリア層11の厚さが5nm以上であることによって、ガスバリア層11の均一性を高めること、および、ガスバリア層11が十分な厚さを有することが可能である。そのため、ガスバリア層11は、ガスバリア機能を十分に発揮することができる。一方、ガスバリア層11の厚さが300nm以下であることによって、ガスバリア層11が可撓性を保持することができる。これにより、外的要因に起因したガスバリア層11の亀裂が抑えられる。外的要因は、例えば、ガスバリア層11を形成した後における積層体20の折り曲げおよび引っ張りなどである。なお、ガスバリア層11の厚さは、ガスバリア層11を形成する無機化合物の種類、および、積層体20が有する層構成に応じて適宜選択される。なお、ガスバリア層11の厚さにおける均一性を高める観点では、ガスバリア層11の厚さは10nm以上150nm以下の範囲内に含まれることがより好ましい。
【0045】
ガスバリア層11は、上述した気相堆積膜に加えて、あるいは、上述した気相堆積膜に代えて、ガスバリア性を有する塗布膜を含んでいてもよい。塗布膜は、樹脂を含む材料によって形成される。以下では、ガスバリア層11が、無機酸化物の気相堆積膜上に形成された塗布膜を備える場合の一例を説明する。塗布膜は、気相堆積膜を保護し、これによってガスバリア層のガスバリア性を高めることが可能である。
【0046】
塗布膜は、例えば、水溶性高分子と無機化合物とから形成される。水溶性高分子は、水酸基を含む。水溶性高分子は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどであってよい。ガスバリア層11のガスバリア性を高める観点では、水溶性高分子がポリビニルアルコール(PVA)であることが好ましい。
【0047】
塗布膜が含む無機化合物は、例えば、Si(ORまたは、RSi(ORによって表されるケイ素化合物、あるいは、当該ケイ素化合物の加水分解物であってよい。なお、ケイ素化合物を表す化学式において、ORおよびORは加水分解性基であり、Rは有機官能基である。無機化合物は、1種以上のケイ素化合物、または、当該ケイ素化合物の加水分解物を含んでよい。
【0048】
Si(ORは、例えばテトラエトキシシラン(Si(OC)(TEOS)であってよい。TEOSは、加水分解後において、水系の溶媒中にて比較的安定である点で好ましい。また、RSi(ORが含むRは、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、および、イソシアネート基から構成される群から選択されることが好ましい。
【0049】
塗布膜は、溶媒、水溶性高分子、および、ケイ素化合物またはケイ素化合物の加水分解物の混合溶液を蒸着層上に塗布した後に、加熱および乾燥を経ることによって形成される。溶媒は、水、または、水とアルコールとの混合溶媒であってよい。混合溶液を形成する際には、まず、水溶性高分子を溶媒に溶解させ、その後、ケイ素化合物またはケイ素化合物の加水分解物を混合する。なお、混合溶液は、混合溶液を用いて形成された塗布膜がガスバリア性を損なわない範囲において、添加剤を含んでよい。添加剤は、例えば、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、および、着色剤などであってよい。
【0050】
水溶性高分子がPVAである場合には、混合溶液の全固形分における質量に対するPVAの質量の比は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。PVAが20質量%以上含まれることによって、塗布膜の柔軟性が維持される。そのため、塗布膜の形成が容易である。また、PVAが50質量%以下含まれることによって、ガスバリア層11が十分なバリア性を有することが可能である。
【0051】
塗布膜の厚さは、例えば、0.05μm以上30μm以下の範囲から選択される。
ガスバリア層11が、気相堆積膜と塗布膜とを備える場合には、積層体20において、気相堆積膜が樹脂フィルム10上に位置し、塗布膜が気相堆積膜上に位置する。これにより、塗布膜が、気相堆積膜に接している。
【0052】
樹脂フィルム10とガスバリア層11との密着を強化する観点では、樹脂フィルム10の表面であって、ガスバリア層11が形成される面にプラズマ処理およびコロナ処理などの表面処理が行われてもよい。プラズマ処理は、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)処理、誘導性結合プラズマ(ICP)エッチング、ICP‐RIE処理、大気圧プラズマ処理、フレーム処理などであってよい。
【0053】
樹脂フィルム10の第1面に対してRIE処理が行われる場合には、樹脂フィルム10には、改質層が形成される。改質層は、RIE処理が行われる前の樹脂フィルム10における第1面を含む。改質層は、樹脂フィルム10のうちで、第1面に対するRIE処理によって改質された部分である。改質層は、第1面の全体を含む層状を有している。
【0054】
RIE処理によれば、例えば、プラズマに含まれるラジカルおよびイオンによって、樹脂フィルム10の第1面に官能基が付与される。また例えば、RIE処理によれば、第1面のエッチングによって、第1面に付着した不純物が除去され、かつ、第1面の表面粗さが大きくなる。すなわち、改質層は、樹脂フィルム10を形成するPETに対して官能基が付与された層であり、かつ、第1面が清浄化かつ粗面化された層である。そのため、改質層によれば、樹脂フィルム10とガスバリア層11との間の密着性が高まる。これにより、高温高湿な環境下においても、樹脂フィルム10とガスバリア層11との間での剥離が生じにくくなる。すなわち、積層体20の耐熱性が高められるから、積層体20に対して加熱処理が行われた場合に、樹脂フィルム10とガスバリア層11との間での剥離が生じたり、ガスバリア層11によるガスバリア性が劣化したりすることが抑えられる。加熱処理は、例えば、ボイル処理、レトルト処理、および、加熱調理などである。
【0055】
RIE処理においてプラズマを生成するためのガスは、例えば、アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス、および、水素ガスの少なくとも1つであってよい。
ガスバリア層11が無機酸化物から形成される場合には、樹脂フィルム10とガスバリア層11との間に、アンカーコート層が位置してもよい。表面処理およびアンカーコート層によれば、加熱殺菌後における樹脂フィルム10と蒸着層との間の密着性、および、積層体20のバリア性などが高められる。
【0056】
なお、ガスバリア層11は、上述した気相堆積膜および塗布膜に加えて、あるいは、上述した気相堆積膜および塗布膜の少なくとも一方に代えて、金属箔、および、金属窒化物から形成される層などを含んでいてもよい。ガスバリア層11が気相堆積膜および塗布膜以外の層を1層以上備える場合には、気相堆積膜と塗布膜との間に他の層が位置してもよい。あるいは、気相堆積膜と樹脂フィルムとの間に、塗布膜以外の他の層が位置してもよい。
【0057】
積層体20は、樹脂フィルム10およびガスバリア層11に加えて、シール層、接着層、加飾層、および、情報表示層などを備えてもよい。シール層は、熱可塑性樹脂を含んでいる。シール層は、積層体20を用いて包装体が形成される際に、ヒートシールにより融解される。これにより、2枚の積層体20において、一方の積層体20の端部が、他方の積層体20の端部に融着される。あるいは、1枚の積層体20において、当該積層体20の第1部分と第2部分とが融着される。接着層は、ガスバリア層11とガスバリア層11の上層との間の密着性、あるいは、ガスバリア層11とガスバリア層11の下層との間の密着性を高める。加飾層は、印刷により形成された装飾および情報などを表示する。
【0058】
積層体20の厚さは、積層体20を用いて形成される包装体に求められる各種の耐性、および、積層体20に求められる加工性に応じて選択されればよい。積層体20の厚さは、例えば、30μm以上300μm以下であってよい。
【0059】
積層体20の形成には、上述した成膜法、各種の塗布法、ドライラミネート法、および、押出ラミネート法などが用いられてよい。
【0060】
[包装体]
図3を参照して、包装体を説明する。
図3が示す包装体30は、積層体20から形成されている。包装体30は、当該包装体30の内部に包装対象を収容することが可能な空間を区画している。図3が示す例では、包装体30は袋状を有している。包装体30において、端部が全周にわたって接合されることによって、包装体30が密封されている。包装体30において、ガスバリア層11は、樹脂フィルム10に対して内側に位置する。包装体30の形状および大きさは、特に限定されない。包装体30の形状および大きさは、包装対象の形状および大きさに応じて設計されていればよい。包装対象は、例えば、食品、医薬品、化粧品などであってよい。
【0061】
積層体20の端部を接合する方法は、特に限定されない。例えば、積層体20の端部は、上述したようにヒートシールを用いて接合されてもよいし、その他の方法によって接合されてもよい。なお、図3が示す例では、包装体30が、2枚の積層体20である第1積層体と第2積層体とにおいて、第1積層体の端部と第2積層体の端部とが接合された封止部31を有している。
【0062】
なお、包装体30は図3が示す袋状に限らず、例えば、筒状、および、一方の筒端が封止される一方で、他方の筒端が開放された袋状を有してもよい。
【0063】
[実施例]
図4、表1、および、表2を参照して、実施例および比較例を説明する。
[実施例1]
共押出しにより三層の樹脂層を積層して、12μmの厚さを有した実施例1の樹脂フィルムを形成した。メカニカルリサイクルによって再生されたリサイクルPETとバージンPETとが混合されたPETによって各樹脂層を形成した。樹脂フィルム全体において、リサイクルPETの割合を樹脂フィルムの80重量%に設定し、バージンPETの割合を樹脂フィルムの20重量%に設定した。樹脂フィルムの一部を切断して、測定用サンプルを作製した。
【0064】
測定用サンプルの表面に対してTOF‐SIMSによる分析を行った。なお、分析には、飛行時間型二次イオン質量分析計(アルバック・ファイ(株)製、TRIFT‐V)を用い、分析条件を以下のように設定した。
【0065】
[分析条件]
・1次イオン種 Bi3++
・加速電圧 30kV
・電流 0.5μA
・測定時間 2分
・帯電中和 あり
・質量範囲 1.5-5000emu
・取得イオン 正イオン
【0066】
[エッチング条件]
・加速電圧 20kV 5nA
・スパッタ時間 20sec
【0067】
各樹脂フィルムに対するTOF‐SIMSによる分析により得られたC(m/z=104)のピーク強度をC (m/z=41)のピーク強度で除算した規格値は、0.3であった。
【0068】
また、この樹脂フィルムの一部を切断して切断片を形成し、溶媒であるフルオロ酢酸に切断片を溶解させて、NMR測定用のサンプルを作製した。
核磁気共鳴装置(ブルカージャパン社製、AVANCE NEO400)を用いて、H-NMRスペクトルを得た。測定に際して、積算回数を256scan、フリップ角を30°、取り込み時間を4.19sec、待ち時間を2.00secにそれぞれ設定した。得られたH-NMRスペクトルを用いて、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、ナフタレンジカルボン酸成分、エチレングリコール成分、ジエチレングリコール成分のシグナルの積分値の合計Ismを算出し、当該合計Ismを「100mol%」に設定した。また、7.11ppm~7.25ppmにおけるイソフタル酸単位のシグナルの積分値(I)と、8.34ppm~8.36ppmにおけるナフタレンジカルボン酸単位のシグナルの積分値Iとを算出した。そして、合計Ism、イソフタル酸単位のシグナルの積分値I、ナフタレンジカルボン酸単位のシグナルの積分値Iを用いて、イソフタル酸単位のモル比率[(I/Ism)×100%]と、ナフタレンジカルボン酸単位のモル比率[(I/Ism)×100%]とを算出した。
イソフタル酸単位のモル比率は9×10-1mol%であり、ナフタレンジカルボン酸単位のモル比率は4×10-2mol%であった。
【0069】
樹脂フィルム上に、気相堆積膜を形成した。気相堆積膜を形成する際には、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いた。真空蒸着装置が備える処槽内に酸素ガスを導入しながらアルミニウムを蒸発させ、これによって、15nmの厚さを有した酸化アルミニウム膜を形成した。
【0070】
酸化アルミニウム膜上に、塗布膜を形成した。塗布膜を形成する際には、第1液と第2液とを準備し、第1液と第2液との固形分重量比(重量%)を以下のように設定した。
(固形分重量比)第1液:第2液=70:30
【0071】
なお、17.9gのテトラエトキシシラン、および、10gのメタノール10gに、72.1gの0.1N塩酸を加えた後、30分間撹拌することによってテトラエトキシシランを加水分解して第1液を調整した。第1液の固形分は、SiO換算で5質量%であった。また、95質量部の水に対して5質量部のエタノールを混合した溶液に、5質量%となるようにポリビニルアルコールを溶解して第2液を調整した。第1液と第2液とを混合した溶液をグラビアコート法を用いて気相体積膜上に塗布し、溶液を乾燥させることによって塗布膜を形成した。これにより、実施例1の包装体用積層体を得た。
【0072】
[実施例2]
樹脂フィルムに含有されるイソフタル酸単位のモル比率が9×10-1mol%であり、ナフタレンジカルボン酸単位のモル比率が6×10-2mol%であり、規格値が0.2である以外は、実施例1と同様にして包装体用積層体を作製した。
【0073】
[実施例3]
樹脂フィルムに含有されるイソフタル酸単位のモル比率が7×10-1mol%であり、ナフタレンジカルボン酸単位のモル比率が6×10-2mol%であり、規格値が0.2である以外は、実施例1と同様にして包装体用積層体、および、包装体を得た。
【0074】
[実施例4]
樹脂フィルムに含有されるイソフタル酸のモル比率が5×10-1mol%であり、ナフタレン‐2,6‐ジカルボン酸のモル比率が4×10-2mol%であり、規格値が0.4である以外は、実施例1と同様にして包装体用積層体、および、包装体を得た。なお、実施例1の樹脂フィルムに対するTOF‐SIMSによって図4が示すスペクトルが得られた。
【0075】
[比較例1]
イソフタル酸に由来する繰り返し単位、および、ナフタレンジカルボン酸に由来する繰り返し単位を含まないPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーP60)であって、12μmの厚さを有したPETフィルムを樹脂フィルムとして準備した。樹脂フィルムにおいて、7.11ppm~7.25ppmにおけるシグナル、および、8.34~8.36ppmにおけるシグナルは検出されなかった。また、規格値は0.7であった。それ以外は、実施例1と同様にして包装体用積層体を作製した。
【0076】
[評価方法]
[面配向係数]
位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA‐WR)を用いた位相差測定法により、樹脂フィルムの面配向係数を測定した。樹脂フィルムのTD方向における中央行と、TD方向における端行とにおいて、一辺の長さが40mmである正方形状の測定領域を設定した。測定領域において、0°~50°(10°ピッチ)の入射角で位相差を測定した。
【0077】
[ゲルボフレックス試験]
フレキシリビリティ評価装置(テスター産業(株)製、ゲルボフレックステスター)を用いて各実施例および比較例の積層体から作成した試験片のゲルボフレックス試験を行った。この際に、フレキシリビリティ評価装置の固定ヘッドに対して、円筒状を呈するように各試験片を取り付けた。詳しくは、各試験片の両端を固定ヘッドによって保持して、初期把持間隔を175mmに設定した。そして、ストロークを87.5mmに設定し、ひねりを440°に設定して、各試験片をひねることとひねりを解除することとの往復運動を40回/分の速度で100回行った。
【0078】
[酸素透過度]
各試験片について、ゲルボフレックス試験の前後に、酸素透過度測定装置(Mocon社製、OX‐TRAN 2/20)を用いて酸素透過度を測定した。この際に、JIS K 7126‐2:2006、および、ASTM D3985‐81に準拠する方法を用いた。また、温度を30℃に設定し、相対湿度を70%に設定した。酸素透過度の測定値における単位を[cm(STP)/m・day・atm]に設定した。
【0079】
[水蒸気透過度]
各試験片について、ゲルボフレックス試験の前後に、水蒸気透過度測定装置(Mocon社製、PERMATRAN‐W 3/31)を用いて水蒸気透過度を測定した。この際に、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。測定方法には、JIS K 7129‐2:2019、および、ASTM F1249‐90に準拠する方法を用いた。水蒸気透過度の測定値における単位を[g(STP)/m・day]に設定した。
【0080】
[評価結果]
面配向係数、酸素透過度、および、水蒸気透過度の測定結果は、以下の表1に示す通りであった。
【0081】
【表1】
【0082】
表1が示すように、各実施例におけるゲルボフレックス試験後の酸素透過度は、比較例1におけるゲルボフレックス試験後の酸素透過度よりも小さいことが認められた。また、各実施例におけるゲルボフレックス試験後の水蒸気透過度は、比較例1におけるゲルボフレックス試験後の水蒸気透過度よりも小さいことが認められた。なお、ゲルボフレックス試験前において、各実施例および比較例の酸素透過度は、同等の値であることが認められている。また、ゲルボフレックス試験前において、各実施例および比較例の水蒸気透過度は、同等の値であることが認められている。
【0083】
[実施例5]
実施例1と同一の樹脂フィルムを準備し、樹脂フィルムの片面に、ホローアノード型プラズマ処理装置を用いてRIE処理を行った。RIE処理において、印加電力を120W、処理時間を0.1sec、処理ガスをアルゴン、処理ユニット圧力を2.0Paにそれぞれ設定した。また、13.56MHzの周波数を有した高周波電源を用いた。
【0084】
樹脂フィルムのうちRIE処理が施された面に、気相堆積膜を形成した。気相堆積膜を形成する際には、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いた。真空蒸着装置が備える処槽内に酸素ガスを導入しながらアルミニウムを蒸発させ、これによって、15nmの厚さを有した酸化アルミニウム膜を形成した。
【0085】
気相体積膜上に塗布膜を形成した。下記に示す第1液、第2液、および、第3液を混合した混合液を、グラビアコート法により気相堆積膜上に塗布し、乾燥させて塗布膜を得た。塗布膜の厚さは、0.3μmであった。
【0086】
第1液:17.9gのテトラエトキシシラン、10gのメタノール、および、72.1gの0.1N塩酸を混合して30分間攪拌し、テトラエトキシシランを加水分解した。これにより、固形分がSiO換算で5質量%である加水分解溶液を得た。
【0087】
第2液:95質量部の水に対して5質量部のエタノールを混合した溶液に、5質量%となるようにポリビニルアルコールを溶解した。
【0088】
第3液:シランカップリング剤である1,3,5‐トリス(3‐トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水とイソプロピルアルコールとを質量比で同量混合した混合液によって固形分が5質量%となるように希釈した。
【0089】
なお、第1液、第2液、および、第3液の固形分重量比(重量%)を以下のように設定し、かつ、第1液と第2液との配合比を以下のよう設定した。
(固形分重量比)第1液:第2液:第3液=70:20:10
(配合比)第1液:第2液=70:30
これにより、蒸着層および塗布膜から形成されたガスバリア層と、樹脂フィルムとを備える包装体用積層体を得た。
【0090】
さらに塗布膜上にポリウレタン系接着剤によって、3μmの厚さを有した接着層を形成した。次いで、接着層上に70μmの厚さを有した無延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、接着層によって包装体用積層体に無延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートした。当該積層体から、210mmの長さを有した短辺と、297mmの長さを有した長辺とを備える長方形状の積層体片を切り出した。長辺の中央において、ガスバリア層の一部と他の一部とが対向するように積層体片を二つ折りにした後、長辺をヒートシールすることによって開口を有する包装体を作製した。ヒートシールには、卓上・脱気シーラー(富士インパルス(株)製、V‐301)を用い、190℃、0.3MPa、2secの条件でヒートシールを行った。包装体内に、150mLの0.6質量%システイン水溶液を入れた後、包装体の開口をヒートシールした。これにより、密閉された包装体を得た。
【0091】
なお、実施例5では、樹脂フィルムの原反のTD方向における中央を含む中央行を用いた包装体と、TD方向における一方の端を含む端行を用いた包装体と作製した。また、上述したモル比率および規格値は、中央行での値である。
【0092】
[実施例6]
実施例2と同一の樹脂フィルムを準備した以外は、実施例5と同様にして包装体用積層体、および、包装体を作製した。
【0093】
[実施例7]
実施例3と同一の樹脂フィルムを準備した以外は、実施例5と同様にして包装体用積層体、および、包装体を得た。
【0094】
[実施例8]
実施例4と同一の樹脂フィルムを準備した以外は、実施例5と同様にして包装体用積層体、および、包装体を得た。
【0095】
[比較例2]
比較例1と同一の樹脂フィルムを準備した以外は、実施例5と同様にして包装体用積層体、および、包装体を作製した。
【0096】
[評価方法]
[面配向係数]
位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA‐WR)を用いた位相差測定法により、樹脂フィルムの面配向係数を測定した。樹脂フィルムのTD方向における中央行と、TD方向における端行とにおいて、一辺の長さが40mmである正方形状の測定領域を設定した。測定領域において、0°~50°(10°ピッチ)の入射角で位相差を測定した。
【0097】
[レトルト処理]
各実施例、および、比較例の包装体を2つずつ準備した。そして、貯湯式レトルト釜を用いて、一方の包装体を110℃で110分間(加熱条件1)加熱し、他方の包装体を、130℃で30分間(加熱条件2)加熱した。各包装体から作製した試験片について、以下に記載の条件によって、酸素透過度の測定、水蒸気透過度の測定、および、ラミネート強度の測定を行った。
【0098】
[酸素透過度]
各試験片について、酸素透過度測定装置(Mocon社製、OX‐TRAN 2/20)を用いて酸素透過度を測定した。この際に、JIS K 7126‐2:2006、および、ASTM D3985‐81に準拠する方法を用いた。また、温度を30℃に設定し、相対湿度を70%に設定した。酸素透過度の測定値における単位を[cm(STP)/m・day・atm]に設定した。
【0099】
[水蒸気透過度]
各試験片について、水蒸気透過度測定装置(Mocon社製、PERMATRAN‐W 3/31)を用いて水蒸気透過度を測定した。この際に、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。測定方法には、JIS K 7129‐2:2019、および、ASTM F1249‐90に準拠する方法を用いた。水蒸気透過度の測定値における単位を[g(STP)/m・day]に設定した。
【0100】
[ラミネート強度(乾燥条件)]
レトルト処理後の包装体から、短辺の長さが15mmであり、長辺の長さが200mmである長方形状を有した試験片を切り出した。テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン(株)製、テンシロンUMT‐II‐500型)を用いて、温度を23℃に設定し、相対湿度を65%に設定してラミネート強度(N/15mm)を測定した。引張速度を200mm/分に設定し、剥離角度を90°に設定したときのラミネート強度を測定した。
【0101】
[ラミネート強度(湿潤条件)]
レトルト処理後の包装体から、乾燥条件でのラミネート強度の測定と同様の試験片を切り出した。130℃の熱水中に試験片を30分保持する湿熱処理を試験片に施した。そして、未乾燥の試験片に対して、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン(株)製、テンシロンUMT‐II‐500型)を用いて、温度を23℃に設定し、相対湿度を65%に設定してラミネート強度(N/15mm)を測定した。引張速度を200mm/分に設定し、剥離角度を90°に設定し、ラミネート強度を測定した。
【0102】
[評価結果]
面配向係数、酸素透過度、水蒸気透過度、および、ラミネート強度の測定結果は、以下の表2に示す通りであった。
【0103】
【表2】
【0104】
表2が示すように、レトルト時の加熱条件、および、樹脂フィルムの原反における位置にかかわらず、各実施例の酸素透過度は、比較例2の酸素透過度よりも小さいことが認められた。また、レトルト時の加熱条件、および、樹脂フィルムの原反における位置にかかわらず、各実施例の水蒸気透過度も、水蒸気透過度よりも小さいことが認められた。
【0105】
このように、各実施例の包装体用積層体によれば、レトルト処理後における包装体用積層体の気密性が高められることが認められた。
表2が示すように、加熱条件1でレトルト処理した場合に、各実施例における乾燥条件でのラミネート強度が、比較例2における乾燥条件でのラミネート強度よりも高いことが認められた。また、加熱条件1でレトルト処理した場合に、各実施例における湿潤条件でのラミネート強度が、比較例2における湿潤条件でのラミネート強度と同等であることが認められた。
【0106】
加熱条件2でレトルト処理した場合に、各実施例における乾燥条件でのラミネート強度が、比較例2と同等であることが認められた。また、加熱条件2でレトルト処理した場合に、各実施例における湿潤条件でのラミネート強度が、比較例2と同等であることが認められた。
【0107】
このように、各実施例の包装体用積層体によれば、比較例の包装体用積層体に比べて、包装体の気密性が高められることが認められた。
以上説明したように、包装体用樹脂フィルム、包装体用積層体、および、包装体の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0108】
(1)樹脂フィルム10を備える包装体30において気密性を高めることが可能である。
(2)樹脂フィルム10とガスバリア層11とを備える積層体20によれば、積層体20のガスバリア性における低下が抑えられる。これにより、包装材としての利用に対する積層体20の適性が高められる。
【0109】
(3)積層体20から形成された包装体30によれば、商品の輸送時に包装体30に印加される振動などに起因した包装体30におけるガスバリア性の低下が抑えられる。これにより、包装体30によって包装された対象物の品質における低下が抑えられる。
【符号の説明】
【0110】
10…樹脂フィルム
11…ガスバリア層
20…積層体
30…包装体
図1
図2
図3
図4