(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】車輪駆動用ユニット及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
B60B 35/14 20060101AFI20250115BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20250115BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B60B35/14 T
F16C19/18
F16C35/063
(21)【出願番号】P 2021049672
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩水
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005956(JP,A)
【文献】特開2010-158925(JP,A)
【文献】特開2011-201347(JP,A)
【文献】特開2008-157796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0069332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 35/00-37/12
F16C 19/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブユニット軸受と、等速ジョイントと、を備え、
前記ハブユニット軸受は、
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に複列の内輪軌道を有し、
前記等速ジョイントにより回転駆動されるハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ配置された転動体と、
前記ハブと前記等速ジョイントとの間で軸方向に挟持されるキャップと、を備え、
前記ハブは、ハブ輪と、前記ハブ輪に外嵌され、外周面に前記複列の内輪軌道のうちの軸方向内側列の内輪軌道を有する内輪と、を含んで構成され、
前記ハブ輪は、前記内輪の軸方向内側の端面を押さえ付けるかしめ部を有し、
前記キャップは、略J字形の断面形状を有し、全体として円環形状をなしており、前記かしめ部の軸方向内側に配置された円環平板状の基板部と、前記基板部の径方向外側の端部から軸方向外側に向けて伸長し、前記かしめ部を径方向外側から覆った覆い筒部と、前記覆い筒部の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて伸長した係止部と、前記キャップを貫通した水抜き孔と、を含んで構成され、
前記かしめ部と前記等速ジョイントとの間で前記基板部を挟持した状態で、前記係止部のうちで最も内径が小さい部分である最小径部は、前記かしめ部のうちで最も外径が大きい部分である最大径部よりも軸方向外側に配置され、かつ、前記最大径部の外径よりも大きな内径を有
しているとともに、前記キャップの中心軸は前記ハブの中心軸に対して偏心しており、前記係止部のうちの円周方向一部分のみが前記かしめ部に対して軸方向に重畳している、
車輪駆動用ユニット。
【請求項2】
前記キャップは、少なくとも前記係止部を含む部分が、円周方向に離隔して配置された複数の帯状片からなる櫛歯形状に構成されており、
前記水抜き孔は、円周方向に隣り合う前記帯状片同士の間部分に備えられている、
請求項1に記載した
車輪駆動用ユニット。
【請求項3】
前記係止部は、少なくとも前記最小径部を含む部分が弾性材製である、請求項1~2のうちのいずれか1項に記載した
車輪駆動用ユニット。
【請求項4】
前記水抜き孔は、前記キャップの径方向外側の端部に備えられている、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載した
車輪駆動用ユニット。
【請求項5】
前記水抜き孔は、前記基板部を軸方向に貫通している、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載した
車輪駆動用ユニット。
【請求項6】
請求項1に記載した車輪駆動用ユニットの組立方法であって、
前記ハブユニット軸受と前記等速ジョイントとを組み合わせる以前の状態で、前記キャップの内側に前記かしめ部を軸方向に挿入し、前記係止部全体を前記かしめ部の前記最大径部よりも軸方向外側に位置させた後、前記キャップの中心軸と前記ハブの中心軸とを偏心させて、前記係止部のうちの一部を、前記かしめ部に対して軸方向に重畳させる工程を備える、
車輪駆動用ユニットの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪駆動用ユニット及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪及び制動用回転体は、ハブユニット軸受により懸架装置に対して回転自在に支持される。
図7及び
図8は、特開2008-296841号公報(特許文献1)に記載された、従来構造の1例のハブユニット軸受100を示している。
【0003】
ハブユニット軸受100は、駆動輪を回転自在に支持する駆動輪用のハブユニット軸受であり、等速ジョイント(CVJ)101と組み合わせて使用される。
【0004】
ハブユニット軸受100は、使用状態で回転しない外輪102と、使用状態で回転するハブ103と、複数個の転動体104とを備える。
なお、ハブユニット軸受100及びその周辺部材に関して、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる
図7及び
図8の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる
図7及び
図8の右側である。
【0005】
外輪102は、内周面に複列の外輪軌道105a、105bを有する。外輪102は、外周面の軸方向中間部に、外輪102を図示しない懸架装置に対して支持固定するための静止フランジ106を有する。
【0006】
ハブ103は、外輪102の径方向内側に外輪102と同軸に配置されており、ハブ輪107と、内輪108とを組み合わせてなる。ハブ103は、外周面のうち、複列の外輪軌道105a、105bと対向する部分に、複列の内輪軌道109a、109bを有する。
【0007】
ハブ輪107は、内輪108を外嵌保持する軸部材であり、軸部110と、回転フランジ111とを有する。ハブユニット軸受100は駆動輪用であるため、ハブ輪107は、径方向中央部に、等速ジョイント101を構成するスプライン軸部117をスプライン係合させるためのスプライン孔112を有する。
【0008】
軸部110は、ハブ輪107の軸方向内側部から軸方向中間部にわたる範囲に備えられている。軸部110は、軸方向内側の端部に、内輪108の軸方向内側の端面を押さえ付けるためのかしめ部113を有しており、かしめ部113の軸方向外側に隣接する部分に、内輪108を外嵌するための小径部114を有している。軸部110は、小径部114の軸方向外側に隣接する部分に、軸方向内側を向いた段差面115を有しており、軸方向中間部の外周面に、軸方向外側列の内輪軌道109aを有している。
【0009】
回転フランジ111は、ハブ輪107のうち、外輪102の軸方向外側の端部よりも軸方向外側に位置する部分に備えられており、略円輪形状を有している。回転フランジ111には、複数のスタッド116を利用して、駆動輪及び制動用回転体が結合固定される。
【0010】
内輪108は、外周面に、軸方向内側列の内輪軌道109bを有する。内輪108は、ハブ輪107の小径部114に外嵌されており、段差面115とかしめ部113との間で軸方向に挟持されている。これにより、ハブ輪107に対する内輪108の分離防止が図られている。
【0011】
等速ジョイント101は、スプライン軸部117と、ジョイント用外輪118とを有する。
【0012】
スプライン軸部117は、ハブ103に備えられたスプライン孔112に軸方向内側から挿入され、スプライン孔112に対してトルク伝達可能にスプライン係合している。スプライン軸部117の先端部には、ナット119を螺合している。これにより、ハブユニット軸受100と等速ジョイント101とを結合している。
【0013】
ジョイント用外輪118は、軸方向内側が開口した有底円筒状に構成されており、スプライン軸部117の軸方向内側にスプライン軸部117と一体に備えられている。
【0014】
特開2008-296841号公報に記載された従来構造のハブユニット軸受100は、スプライン孔112の軸方向内側の端部からかしめ部113の軸方向内側の端面までの軸方向距離L(
図7参照)が比較的大きい。このため、等速ジョイント101に大きなトルクが入力された際に、スプライン軸部117に捩れを生じやすい。このため、かしめ部113の軸方向内側の端面とジョイント用外輪118の軸方向外側の端面とを直接接触させると、かしめ部113の軸方向内側の端面とジョイント用外輪118の軸方向外側の端面との間に、スティックスリップ現象(金属面同士の滑り)が発生し、スティックスリップ音と呼ばれる異音を発生させる可能性がある。
【0015】
そこで、特開2008-296841号公報に記載された従来構造のハブユニット軸受100においては、かしめ部113の軸方向内側の端面とジョイント用外輪118の軸方向外側の端面との間に、キャップ120を介在させている。
【0016】
キャップ120は、金属板製で、表面粗さが低く設定されている。このため、等速ジョイント101に大きなトルクが入力された場合に、かしめ部113とジョイント用外輪118との間に大きなエネルギが溜まる前に、かしめ部113とジョイント用外輪118とのうちのいずれか一方を、キャップ120に対して相対回転させることができる。したがって、かしめ部113とジョイント用外輪118との間で、異音が発生するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2008-296841号公報
【文献】特開2015-77616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特開2008-296841号公報に記載された従来構造のハブユニット軸受100においては、キャップ120がハブユニット軸受100から脱落するのを防止するために、キャップ120の形状及び寸法を、次のように規制している。
【0019】
すなわち、
図8に示すように、キャップ120の軸方向外側の端部に、径方向内側に向けて伸長した係止部121を設け、該係止部121を、かしめ部113のうちで最も外径が大きくなった最大径部Pよりも軸方向外側に配置している。かつ、係止部121の内径を、かしめ部113の最大径部Pの外径よりも小さくしている。このように、特開2008-296841号公報に記載された従来構造では、係止部121を、かしめ部113に対して締め代を持って係止するようにしている。
【0020】
ただし、かしめ部の形成作業は、たとえば特開2015-77616号公報(特許文献2)などに開示されているように、かしめ部の外周面を拘束せずに、かしめ部の軸方向内側の端面を金型により押圧することによって行われている。このため、かしめ部の形成作業により、加工上不可避な体積のばらつきが、かしめ部の外周面へと逃がされている。したがって、かしめ部の外径は、ばらつきが大きくなる。
【0021】
このため、特開2008-296841号公報に記載された従来構造のように、係止部121を、かしめ部113に対して締め代を持って係止する場合には、かしめ部の外径のばらつきを考慮して、係止部121の内径を十分に小さく設定する必要がある。この結果、キャップ120をかしめ部113に組み付ける際に、係止部121とかしめ部113との干渉が大きくなり、キャップ120の組み付け性が低くなる。
【0022】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、キャップの組み付け性の向上を図れる、車輪駆動用ユニット及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一態様にかかる車輪駆動用ユニットは、ハブユニット軸受と、等速ジョイントと、を備える。
前記ハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、キャップとを備える。
前記外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有する。
前記ハブは、外周面に複列の内輪軌道を有し、前記等速ジョイントにより回転駆動される。
前記転動体は、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ配置されている。
前記キャップは、前記ハブと前記等速ジョイントとの間で軸方向に挟持される。
前記ハブは、ハブ輪と、前記ハブ輪に外嵌され、外周面に前記複列の内輪軌道のうちの軸方向内側列の内輪軌道を有する内輪と、を含んで構成される。
前記ハブ輪は、前記内輪の軸方向内側の端面を押さえ付けるかしめ部を有する。
前記キャップは、略J字形の断面形状を有し、全体として円環形状をなしており、前記かしめ部の軸方向内側に配置された円環平板状の基板部と、前記基板部の径方向外側の端部から軸方向外側に向けて伸長し、前記かしめ部を径方向外側から覆った覆い筒部と、前記覆い筒部の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて伸長した係止部と、前記キャップを貫通した水抜き孔と、を含んで構成される。
前記かしめ部と前記等速ジョイントとの間で前記基板部を挟持した状態で、前記係止部のうちで最も内径が小さい部分である最小径部は、前記かしめ部のうちで最も外径が大きい部分である最大径部よりも軸方向外側に配置され、かつ、前記最大径部の外径よりも大きな内径を有しているとともに、前記キャップの中心軸は前記ハブの中心軸に対して偏心しており、前記係止部のうちの円周方向一部分のみが前記かしめ部に対して軸方向に重畳している。
【0024】
本発明の車輪駆動用ユニットの一態様では、前記キャップのうち、少なくとも前記係止部を含む部分を、円周方向に離隔して配置された複数の帯状片からなる櫛歯形状に構成することができ、前記水抜き孔を、円周方向に隣り合う前記帯状片同士の間部分に備えることができる。
【0025】
本発明の車輪駆動用ユニットの一態様では、前記係止部のうち、少なくとも前記最小径部を含む部分を、弾性材製とすることができる。
この場合には、前記係止部全体を、弾性材製とすることもできる。
【0026】
本発明の車輪駆動用ユニットの一態様では、前記水抜き孔を、前記キャップの径方向外側の端部に備えることができる。
本発明の車輪駆動用ユニットの一態様では、前記水抜き孔を、前記覆い筒部に備えることができる。あるいは、前記水抜き孔を、前記係止部に備えることもできるし、前記基板部に備えることもできる。
前記水抜き孔を前記基板部に備える場合には、前記水抜き孔を、前記基板部を軸方向に貫通するように形成することができる。
【0027】
本発明の一態様にかかる車輪駆動用ユニットの組立方法は、前記ハブユニット軸受と前記等速ジョイントとを組み合わせる以前の状態で、前記キャップの内側に前記かしめ部を軸方向に挿入し、前記係止部全体を前記かしめ部の前記最大径部よりも軸方向外側に位置させた後、前記キャップの中心軸と前記ハブの中心軸とを偏心させて、前記係止部のうちの一部を、前記かしめ部に対して軸方向に重畳させる工程を備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、キャップの組み付け性の向上を図れる、車輪駆動用ユニットの構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施の形態の第1例の
車輪駆動用ユニットを示す断面図である。
【
図3】
図3は、キャップをかしめ部に対して組み付ける作業を工程順に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態の第2例を示す、
図2に相当する図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の第2例にかかるキャップの一部を示す、斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の第3例を示す、
図2に相当する図である。
【
図7】
図7は、従来構造の
車輪駆動用ユニットの1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0031】
本例のハブユニット軸受1は、等速ジョイント(CVJ)2と組み合わされ、車輪駆動用ユニット3を構成する。車輪駆動用ユニット3は、独立懸架式のサスペンションに対して駆動輪を支持するとともに、該駆動輪を回転駆動する。駆動輪には、FF車の前輪、FR及びRR車の後輪、4WD車の各車輪が相当する。
【0032】
〈ハブユニット軸受〉
ハブユニット軸受1は、内輪回転型で、かつ、駆動輪用のいわゆる第3世代のハブユニット軸受であり、外輪4と、ハブ5と、複数個の転動体6と、キャップ7とを備える。
ハブユニット軸受1及びその周辺部材に関して、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる
図1~
図3の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる
図1~
図3の右側である。
【0033】
《外輪》
外輪4は、略円筒形状を有している。外輪4は、内周面に、複列の外輪軌道8a、8bを有しており、外周面の軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出した静止フランジ9を有している。静止フランジ9は、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する支持孔10を有する。外輪4は、支持孔10へ挿通したボルトにより、懸架装置に対して支持固定される。このため、外輪4は、車輪駆動用ユニット3の使用時にも回転しない。外輪4は、たとえばS53Cなどの中炭素鋼製であり、外輪軌道8a、8bを含む範囲に、高周波焼き入れなどの硬化処理が施されている。
【0034】
《ハブ》
ハブ5は、外輪4の径方向内側に外輪4と同軸に配置されており、ハブ輪11と、内輪12とを組み合わせてなる。ハブ5は、外周面のうち、複列の外輪軌道8a、8bと対向する部分に、複列の内輪軌道13a、13bを有している。
【0035】
ハブ輪11は、内輪12を外嵌保持する軸部材であり、軸部14と、回転フランジ15と、パイロット部16とを有している。本例のハブユニット軸受1は、駆動輪用であるため、ハブ輪11は、中空状に構成されており、中心部にスプライン孔17を有している。スプライン孔17は、ハブ輪11の中心部を軸方向に貫通している。ハブ輪11は、たとえばS53Cなどの中炭素鋼製であり、軸方向外側列の内輪軌道13aを含む軸部14の外周面に、高周波焼き入れなどの硬化処理が施されている。
【0036】
軸部14は、ハブ輪11の軸方向内側部から軸方向中間部にわたる範囲に備えられている。軸部14は、軸方向内側の端部に、内輪12の軸方向内側の端面を押さえ付けるためのかしめ部18を有しており、かしめ部18の軸方向外側に隣接する部分に、内輪12を外嵌するための小径部19を有している。軸部14は、小径部19の軸方向外側に隣接する部分に、軸方向内側を向いた段差面20を有しており、軸方向中間部の外周面に、軸方向外側列の内輪軌道13aを有している。
【0037】
かしめ部18は、たとえば特開2015-77616号公報に記載された方法と同様の、揺動かしめ加工により形成されている。すなわち、軸部14の軸方向内側の端部のうち、内輪12よりも軸方向内側に突出した、かしめ部形成部である円筒状部分を、金型を揺動させながら押圧する。そして、該円筒状部分の先部を径方向外側にかしめ広げる(塑性変形させる)ことで、かしめ部18を形成する。このため、本例の場合にも、かしめ部18は、外周面を拘束せずに形成されている。したがって、かしめ部18の外周面には、加工上不可避な体積のばらつきが逃がされている。また、かしめ部18の軸方向内側の端面は、ハブ5の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。
【0038】
回転フランジ15は、ハブ輪11のうち、外輪4の軸方向外側の端部よりも軸方向外側に位置する部分に備えられており、略円輪形状を有している。回転フランジ15は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔21を有する。取付孔21のそれぞれには、スタッド22が圧入されている。スタッド22の先端部には、図示しないナットが螺合される。これにより、車輪(駆動輪)を構成するホイール及び制動用回転体を、回転フランジ15の軸方向外側に固定する。このため、ハブ5は、車輪駆動用ユニット3の使用時に回転する。本発明を実施する場合には、回転フランジに雌ねじ孔を形成し、該雌ねじ孔にハブボルトを直接螺合することにより、ホイール及び制動用回転体を、回転フランジの軸方向外側に固定しても良い。
【0039】
パイロット部16は、ホイール及び制動用回転体をがたつきのない隙間嵌めで外嵌するためのもので、ハブ輪11の軸方向外側の端部に備えられており、略円筒形状を有している。
【0040】
内輪12は、円環形状を有しており、外周面の軸方向中間部に軸方向内側列の内輪軌道13bを有している。内輪12は、軸部14に備えられた小径部19に締り嵌めで外嵌されている。内輪12は、たとえばSUJ2などの高炭素クロム軸受鋼製であり、焼き入れ、焼き戻し処理などの熱処理が施されている。内輪12の軸方向内側の端面は、内輪12の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面であり、軸部14に備えられたかしめ部18により押さえ付けられている。これにより、内輪12は、段差面20とかしめ部18との間で軸方向に挟持されている。そして、ハブ輪11に対する内輪12の分離防止が図られている。
【0041】
《転動体》
転動体6は、高炭素クロム鋼又はセラミック製で、複列の外輪軌道8a、8bと複列の内輪軌道13a、13bとの間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、円周方向に等間隔に配置されるとともに、保持器23により転動自在に保持されている。これにより、ハブ5は、外輪4の径方向内側に回転自在に支持される。本例では、転動体6として玉を使用しているが、玉に代えて円すいころを使用することもできる。また、本例では、軸方向内側列の転動体6のピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体6のピッチ円直径とを互いに同じとしているが、本発明は、軸方向内側列の転動体のピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体のピッチ円直径とが互いに異なる異径PCD型のハブユニット軸受に適用することもできる。
【0042】
外輪4の内周面とハブ5の外周面との間に存在し、かつ、複数の転動体6が設置された環状の内部空間には、図示しないグリースを封入している。内部空間に封入したグリースが、外部空間に漏洩することを防止するとともに、泥水などの異物が外部空間から内部空間に侵入することを防止するために、内部空間の軸方向両側の開口部を、1対の密封装置24a、24bにより塞いでいる。
【0043】
《キャップ》
キャップ7は、ハブ5を構成する軸部14の軸方向内側の端部に備えられたかしめ部18と、等速ジョイント2を構成する後述のジョイント用外輪30との間で軸方向に挟持され、スティックスリップ音と呼ばれる異音の発生を防止する。キャップ7は、ハブユニット軸受1と等速ジョイント2とを結合する以前の状態で、ハブユニット軸受1のかしめ部18に対して係止可能な構造を有している。
【0044】
キャップ7は、たとえば防錆処理された冷間圧延鋼板、オーステナイト系ステンレス鋼板などの耐食性を有する金属板にプレス加工を施すことにより造られている。キャップ7は、略J字形の断面形状を有しており、全体として円環形状に構成されている。本例のキャップ7は、全体が金属製である。
【0045】
キャップ7は、
図2に示すように、基板部25と、覆い筒部26と、係止部27とを備える。
【0046】
キャップ7のうち、少なくとも基板部25を含む部分の表面粗さは、Ra0.7以下、好ましくは0.3以下に設定されている。キャップ7のうち、基板部25の表面を含む部分には、二硫化モリブデンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのコーティング層(低摩擦被膜)を形成することもできる。
【0047】
基板部25は、円環平板状に構成されており、かしめ部18の軸方向内側に配置されている。基板部25は、ハブユニット軸受1と等速ジョイント2とを結合した状態で、かしめ部18の軸方向内側の端面とジョイント用外輪30の軸方向外側の端面との間で軸方向に挟持されている。基板部25の内径は、後述のスプライン軸部29の外径よりも十分に大きい。基板部25の外径は、かしめ部18のうちで最も外径が大きくなった最大径部Pにおける外径D18よりも少しだけ大きい。
【0048】
覆い筒部26は、基板部25の径方向外側の端部から軸方向外側に向けて伸長しており、かしめ部18を径方向外側から覆っている。覆い筒部26は、円筒状に構成されている。覆い筒部26の軸方向寸法は、かしめ部18の軸方向内側の端面から最大径部Pまでの軸方向寸法よりも大きい。
【0049】
係止部27は、内向鍔状に構成され、覆い筒部26の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて伸長しており、基板部25と略平行に配置されている。係止部27は、軸方向視で円環形状を有しており、円筒面状の内周面(内周縁)を有している。このため、係止部27の内径は、軸方向にわたり一定である。したがって、係止部27の内周面のうちのいずれの軸方向位置も、係止部27のうちで最も内径が小さい最小径部Qに相当する。
【0050】
本例では、係止部27全体を、かしめ部18の最大径部Pよりも軸方向外側に配置することで、係止部27の最小径部Qを、かしめ部18の最大径部Pよりも軸方向外側に配置している。また、係止部27の最小径部Qの内径d
27を、かしめ部18の最大径部Pの外径D
18よりも少しだけ大きくしている(d
27>D
18)。より詳しくは、係止部27の最小径部Qの内径d
27を、かしめ部18の外径がばらついた場合にも、かしめ部18の最大径部Pにおける外径よりも大きくなるように設定している。このため、
図2に示すように、ハブユニット軸受1と等速ジョイント2とを組み合わせて、ハブ5の中心軸とキャップ7の中心軸とを互いに同軸に配置した状態では、係止部27の内周面(最小径部Q)は、かしめ部18の最大径部Pよりも径方向外側に位置している。
【0051】
キャップ7は、径方向外側の端部に、キャップ7を貫通した水抜き孔28を有する。本例では、水抜き孔28を、キャップ7の径方向外側の端部に位置する覆い筒部26に形成している。水抜き孔28は、覆い筒部26を径方向に貫通しており、覆い筒部26の内周面及び外周面のそれぞれに開口している。水抜き孔28は、覆い筒部26の円周方向の複数箇所に等間隔に設けられている。
【0052】
本例のキャップ7は、ハブユニット軸受1と等速ジョイント2とを組み合わせる以前の状態で、ハブユニット軸受1のかしめ部18に対して組み付けておく。すなわち、
図3(A)に示すように、キャップ7の中心軸O
7とハブ5の中心軸O
5とを、略同軸にかつ略水平に配置した状態で、キャップ7の内側にかしめ部18を軸方向に挿入し、係止部27全体を、かしめ部18の最大径部Pよりも軸方向外側に位置させる。その後、
図3(B)に示すように、キャップ7を支える力を弱める(最終的にゼロにする)ことで、キャップ7を重力により鉛直方向下方に移動させ、キャップ7の中心軸O
7を、ハブ5の中心軸O
5に対して鉛直方向下方に偏心させる。これにより、係止部27のうちで、鉛直方向に関して上側に位置する部分(略上側半部)を、かしめ部18に対して軸方向に重畳させて、かしめ部18に対して係止する。
【0053】
本例では以上のように、ハブユニット軸受1と等速ジョイント2とを組み合わせる以前の状態で、キャップ7を構成する係止部27の一部(略上側半部)を、ハブユニット軸受1のかしめ部18に対して係止しておく。これにより、キャップ7付きのハブユニット軸受1の輸送時や、ハブユニット軸受1の車体への組み込み作業時に、キャップ7が、かしめ部18から脱落するのを防止できる程度の係止力を確保している。
【0054】
なお、本発明を実施する場合には、キャップ7をかしめ部18に対して組み付ける際に、基板部25とかしめ部18との少なくとも一方にグリースを塗布しておくことで、基板部25とかしめ部18とをグリースにより貼付することもできる。このように、基板部25とかしめ部18とを貼付すれば、キャップ7の脱落をより有効に防止できる。
【0055】
〈等速ジョイント〉
等速ジョイント2は、
図1に示すように、スプライン軸部29と、ジョイント用外輪30と、ジョイント用内輪31と、複数個のボール32とを備えている。
【0056】
スプライン軸部29は、ハブ5に備えられたスプライン孔17に軸方向内側から挿入され、スプライン孔17に対してトルク伝達可能にスプライン係合している。スプライン軸部29は、先端部(軸方向外側の端部)の外周面に、雄ねじ部33を有している。
【0057】
ジョイント用外輪30は、調質処理の施された中炭素鋼製で、軸方向内側が開口した有底円筒状(カップ状)に構成されており、スプライン軸部29の軸方向内側にスプライン軸部29と一体に備えられている。ジョイント用外輪30の内周面の円周方向複数箇所には、外側係合溝34が備えられている。外側係合溝34は、ジョイント用外輪30の円周方向に対し直交する方向に伸長している。ジョイント用外輪30は、軸方向外側の端部に、底部35を有している。底部35の軸方向外側面の径方向中央部には、スプライン軸部29の軸方向内側の端部がつながっている。底部35の軸方向外側面の径方向外側部(ジョイント用外輪30の肩部)は、ジョイント用外輪30の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。
【0058】
ジョイント用内輪31は、円環状に構成されており、エンジンなどの駆動源により回転駆動される駆動軸36の軸方向外側の端部に相対回転不能に外嵌されている。ジョイント用内輪31の外周面の円周方向複数箇所には、内側係合溝37が備えられている。内側係合溝37は、ジョイント用内輪31の円周方向に対して直交する方向に伸長している。
【0059】
ボール32は、外側係合溝34と内側係合溝37との間に1つずつ、外側係合溝34及び内側係合溝37に沿って転動可能に配置されている。
【0060】
ハブユニット軸受1と等速ジョイント2とを結合するには、スプライン軸部29をスプライン孔17に対して軸方向内側から挿通し、スプライン軸部29の先端部に備えられた雄ねじ部33にナット38を螺合する。これにより、かしめ部18の軸方向内側の端面と、ジョイント用外輪30(底部35)の軸方向外側の端面との間で、キャップ7を構成する基板部25を軸方向両側から挟持する。また、内輪12を、ハブ輪11の段差面20とかしめ部18との間で軸方向両側から挟持することで、転動体6に予圧を付与する。
【0061】
以上のような本例のハブユニット軸受1の場合にも、かしめ部18の軸方向内側の端面とジョイント用外輪30の軸方向外側の端面との間に、表面粗さを低く設定したキャップ7を介在させている。このため、等速ジョイント2に大きなトルクが入力された場合に、かしめ部18とジョイント用外輪30との間に大きなエネルギが溜まる前に、かしめ部18とジョイント用外輪30とのうちのいずれか一方を、キャップ7に対して相対回転させることができる。したがって、かしめ部18とジョイント用外輪30との間で、スティックスリップ異音が発生するのを防止できる。
【0062】
さらに本例のハブユニット軸受1によれば、キャップ7の組み付け性の向上を図れる。
すなわち、本例では、キャップ7のうちで、かしめ部18の最大径部Pよりも軸方向外側に位置する係止部27の最小径部Qの内径d27を、かしめ部18の最大径部Pの外径D18よりも大きくしている(d27>D18)。このため、キャップ7をかしめ部18に対して組み付けるべく、キャップ7の内側にかしめ部18を挿入する際に、係止部27とかしめ部18とを干渉させずに済む。したがって、キャップ7の組み付け性の向上を図ることができる。
【0063】
また、係止部27の最小径部Qの内径d
27を、かしめ部18の最大径部Pの外径D
18よりも大きくした場合にも、
図3(B)に示したように、キャップ7の中心軸O
7をハブ5の中心軸O
5に対して鉛直方向下方に偏心させた状態で、係止部27のうちで鉛直方向に関して上側に位置する部分を、かしめ部18に対して、かしめ部18からの脱落を防止できる程度の係止力で係止することができる。このため、キャップ7の脱落の問題を生じることもない。
【0064】
また、キャップ7は、水抜き孔28を備えているため、キャップ7とかしめ部18との間の空間に泥水などの水分が侵入した場合にも、該水分を、遠心力や重力を利用して、水抜き孔28を通じて外部に排出することができる。したがって、かしめ部18及びキャップ7に錆が発生するのを抑制できる。
【0065】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0066】
本例は、キャップ7aの構造のみが、実施の形態の第1例の構造とは異なる。
【0067】
キャップ7aは、基板部25と、覆い筒部26aと、係止部27aとから構成されており、このうちの基板部25の構造は、実施の形態の第1例の構造と同じである。
【0068】
本例では、覆い筒部26a及び係止部27aを、全周にわたり、円周方向に離隔して配置された複数の帯状片39からなる櫛歯形状に構成している。帯状片39の円周方向幅は、帯状片39の全長にわたり一定である。帯状片39は、略L字形の断面形状を有しており、軸方向に伸長した軸方向帯状片39aと、軸方向帯状片39aの軸方向外側の端部から径方向内側に向けて伸長した径方向帯状片39bとからなる。覆い筒部26aは、複数の軸方向帯状片39aを含んで構成されており、係止部27aは、複数の径方向帯状片39bから構成されている。
【0069】
係止部27aを構成する径方向帯状片39bは、基板部25と略平行に配置されている。径方向帯状片39bのそれぞれの径方向内端面は、軸方向にわたり内径が一定である。このため、本例の場合にも、係止部27aの内周面(径方向帯状片39bの径方向内端面)のうちのいずれの軸方向位置も、係止部27aのうちで最も内径が小さい最小径部Qに相当する。したがって、係止部27a全体を、最大径部Pよりも軸方向外側に配置することで、係止部27aの最小径部Qを、かしめ部18の最大径部Pよりも軸方向外側に配置している。また、係止部27aの最小径部Qの内径d27を、かしめ部18の最大径部Pの外径D18よりも大きくしている(d27>D18)。
【0070】
円周方向に隣り合う帯状片39同士の間には、スリット状の水抜き孔28aが備えられている。つまり、水抜き孔28aは、円周方向に隣り合う軸方向帯状片39a同士の間部分、及び、円周方向に隣り合う径方向帯状片39b同士の間部分にそれぞれ備えられている。
【0071】
以上のような構成を有する本例では、覆い筒部26a及び係止部27aを構成する複数の帯状片39及び複数の水抜き孔28aを、金属板をブランキング加工する際に同時に形成することができる。このため、キャップ7aの加工効率の向上を図ることができる。また、水抜き孔28aを大きな金型を利用して加工できるため、パンチによる打ち抜き加工により水抜き孔を加工する場合に比べて、金型摩耗を抑制することができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0072】
本例の変形例の第1例として、キャップを構成する係止部のみを、櫛歯形状に構成することができる。また、変形例の第2例として、キャップを構成する係止部及び覆い筒部に加えて、基板部の径方向外側の端部までを、櫛歯形状に構成することができる。さらに、変形例の第3例として、キャップのうち少なくとも係止部を含む部分を、全周にわたり櫛歯形状とするのではなく、円周方向の一部又は複数箇所を櫛歯形状とすることもできる。
【0073】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、
図6を用いて説明する。
【0074】
本例は、キャップ7bの構造のみが、実施の形態の第1例及び第2例の構造とは異なる。
【0075】
キャップ7bは、金属板製の芯金40と、芯金40に固定されたゴムなどの弾性材製の弾性材41とからなる。
【0076】
芯金40は、耐食性を有する金属板にプレス加工を施すことにより造られている。芯金40は、略L字形の断面形状を有しており、全体として円環形状に構成されている。
【0077】
芯金40は、円環平板形状を有する基板部25と、基板部25の径方向外側の端部から軸方向外側に向けて伸長した、円筒形状を有する筒部本体42とを有している。
【0078】
弾性材41は、加硫成形型を用いて加硫成形されており、芯金40を構成する筒部本体42の外周面を覆った被覆部43と、筒部本体42の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて伸長した係止部27bとを有している。被覆部43と係止部27bとは、一体に設けられている。
【0079】
したがって、本例のキャップ7bは、基板部25を金属板製とし、かつ、係止部27b全体を弾性材製とし、かつ、覆い筒部26bを、金属板製の筒部本体42と弾性材製の被覆部43とから構成している。
【0080】
係止部27bの内周面は、円筒面状に構成されており、軸方向にわたり内径が一定である。このため、本例の場合にも、係止部27bの内周面のうちのいずれの軸方向位置も、係止部27bのうちで最も内径が小さい最小径部Qに相当する。したがって、係止部27b全体を、最大径部Pよりも軸方向外側に配置することで、係止部27bの最小径部Qを、かしめ部18の最大径部Pよりも軸方向外側に配置している。また、係止部27bの最小径部Qの内径d27を、かしめ部18の最大径部Pの外径D18よりも大きくしている(d27>D18)。本例では、係止部27bの最小径部Qの内径d27と、かしめ部18の最大径部Pの外径D18との差を、実施の形態の第1例及び第2例の場合よりも小さくしている。
【0081】
キャップ7bは、径方向外側部に、水抜き孔28bを有する。水抜き孔28bは、ハブ5の中心軸とキャップ7bの中心軸とを互いに同軸に配置した状態で、かしめ部18の軸方向内側の端面及びジョイント用外輪30の軸方向外側の端面よりも径方向外側に位置する、基板部25の径方向外側部に形成されている。水抜き孔28bは、基板部25の円周方向の複数箇所を軸方向に貫通しており、基板部25の軸方向内側面及び軸方向外側面のそれぞれに開口している。
【0082】
以上のような構成を有する本例では、金属板を、断面略J字形状ではなく、断面略L字形状にプレス加工すればよいため、プレス加工装置の小型化を図れるとともに、プレス加工により形成される基板部25及び筒部本体42の形状精度の安定化を図れる。また、係止部27bを、金属製ではなく弾性材製としているため、キャップ7bをかしめ部18に係止する作業を行う際に、係止部27bを弾性変形させることができる。したがって、係止部27bの内径(最小径部Qの内径)を、かしめ部18の最大径部Pの外径により近づけた場合にも、キャップ7bの組み付け性が低下することを防止できる。また、係止部27bの内径を小さくすることにより、キャップ7bの脱落防止をより有効に図れる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、実施の形態の各例の構造は、矛盾を生じない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。
【0084】
本発明を実施する場合に、水抜き孔に関して、数量、形状及び形成位置については、実施の形態の各例の構造に限定されず、適宜変更することができる。
【0085】
また、本発明を実施する場合に、キャップの形状についても、実施の形態の各例で示した形状に限定されず、適宜変更することができる。たとえば、覆い筒部は、円筒形状に限定されず、円すい筒状、屈曲筒形状など、その他の形状に変更することもできる。
【0086】
また、係止部の内周面は、円筒面に限らず、たとえばテーパ面や段付円筒面など、軸方向に関して内径が変化する形状とすることもできる。このような構成を採用した場合、係止部のうちで最も内径が小さい部分である最小径部を、かしめ部の最大径部よりも軸方向外側に配置すれば、係止部のうちで最小径部以外の部分は、かしめ部の最大径部よりも軸方向内側に配置されていても良い。
【0087】
実施の形態の各例では、軸方向外側列の内輪軌道をハブ輪の外周面に直接形成した構造を例に説明したが、本発明を実施する場合には、軸方向外側列の内輪軌道を外周面に備えた内輪を、ハブ輪に外嵌した構造を採用することもできる。すなわち、ハブを、ハブ輪と、それぞれの外周面に内輪軌道を有する1対の内輪とから構成することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ハブユニット軸受
2 等速ジョイント
3 車輪駆動用ユニット
4 外輪
5 ハブ
6 転動体
7、7a、7b キャップ
8a、8b 外輪軌道
9 静止フランジ
10 支持孔
11 ハブ輪
12 内輪
13a、13b 内輪軌道
14 軸部
15 回転フランジ
16 パイロット部
17 スプライン孔
18 かしめ部
19 小径部
20 段差面
21 取付孔
22 スタッド
23 保持器
24a、24b 密封装置
25 基板部
26、26a、26b 覆い筒部
27、27a 係止部
28、28a 水抜き孔
29 スプライン軸部
30 ジョイント用外輪
31 ジョイント用内輪
32 ボール
33 雄ねじ部
34 外側係合溝
35 底部
36 駆動軸
37 内側係合溝
38 ナット
39 帯状片
39a 軸方向帯状片
39b 径方向帯状片
40 芯金
41 弾性材
42 筒部本体
43 被覆部
100 ハブユニット軸受
101 等速ジョイント
102 外輪
103 ハブ
104 転動体
105a、105b 外輪軌道
106 静止フランジ
107 ハブ輪
108 内輪
109a、109b 内輪軌道
110 軸部
111 回転フランジ
112 スプライン孔
113 かしめ部
114 小径部
115 段差面
116 スタッド
117 スプライン軸部
118 ジョイント用外輪
119 ナット
120 キャップ
121 係止部