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特許7619120走行制御装置、走行制御方法、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】走行制御装置、走行制御方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20250115BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20250115BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20250115BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20250115BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W40/06
B60W40/10
G01C21/34
G08G1/00 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021052190
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149863
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祥太
(72)【発明者】
【氏名】北川 栄来
(72)【発明者】
【氏名】近藤 鈴華
(72)【発明者】
【氏名】吉野 聡一
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓央
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/123019(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0082724(US,A1)
【文献】国際公開第2018/142560(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/178260(WO,A1)
【文献】特開2019-209794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0367023(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G01C 21/26 ~ 21/36
G08G 1/00 ~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある前記車線区画線により区画された複数の車線のうち前記現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成する経路作成部と、
前記無車線区間における前記車両の現在位置の前記現在車線からの距離が距離閾値を超えた後に、前記複数の経路のうち、前記車両に搭載されたセンサの出力データを用いて算出される前記車両が前記無車線区間を走行している進路に対応する経路を走行中経路として特定する経路特定部と、
前記複数の車線のうち、前記走行中経路が向かう車線を維持するように前記車両の走行を制御する車線維持制御部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記現在車線から、前記複数の車線のうち前記現在車線以外のいずれかの目標車線に移動するよう前記車線の走行を制御する車線変更制御部をさらに備える、請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記経路特定部は、前記複数の経路のうち、向かう方向が前記無車線区間を走行する前記車両の進行方向に対応している経路を前記走行中経路として特定する、請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記経路特定部は、前記複数の経路のうち一の経路のみが、前記車両が前記無車線区間における現在位置から進行可能な経路である場合、当該一の経路を前記走行中経路として特定する、請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項5】
車両が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある前記車線区画線により区画された複数の車線のうち前記現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成し、
前記無車線区間における前記車両の現在位置の前記現在車線からの距離が距離閾値を超えた後に、前記複数の経路のうち、前記車両に搭載されたセンサの出力データを用いて算出される前記車両が前記無車線区間を走行している進路に一致する経路を走行中経路として特定し、
前記複数の車線のうち、前記走行中経路が向かう車線を維持するように前記車両の走行を制御する、
ことを含む走行制御方法。
【請求項6】
車両が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある前記車線区画線により区画された複数の車線のうち前記現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成することと、
前記無車線区間における前記車両の現在位置の前記現在車線からの距離が距離閾値を超えた後に、前記複数の経路のうち、前記車両に搭載されたセンサの出力データを用いて算出される前記車両が前記無車線区間を走行している進路に一致する経路を走行中経路として特定することと、
前記複数の車線のうち、前記走行中経路が向かう車線を維持するように前記車両の走行を制御すること、
をプロセッサに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を自動的に制御する走行制御装置、走行制御方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラにより生成された周辺画像に基づいて車両の走行を自動的に制御する走行制御装置は、周辺画像から車線区画線を検出し、車線区画線によって区画される車線を走行するように車両の走行を制御する(車線維持制御)。また、走行制御装置は、複数車線を有する道路において、車両が現在走行している車線から他の車線に移動するように車両の走行を制御する(車線変更制御)。
【0003】
特許文献1には、現在車線から複数車線を有する分岐車線へと自動で車線変更する車両制御システムが記載されている。現在車線から複数車線を有する分岐車線への車線変更では、分岐車線のうちいずれかの車線へと車線変更した後に、分岐車線のうち他の車線への車線変更が必要となる場合がある。特許文献1に記載の車両制御システムは、分岐車線に含まれる車線のうち現在車線から最も離れた車線へ車線変更する場合と分岐車線に含まれるその他の車線へ車線変更する場合とで走行経路の生成方法を異ならせることで、車線変更の回数を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-126024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車線増加地点のような車線区画線のない地点で、現在車線から増加した車線に車線変更を行う場合、走行制御装置は車線区画線に基づいて目的の車線への移動が完了したか否かを適切に判定することができない。そのため、走行制御装置は、目的の車線と異なる車線に対応する位置で車線変更制御から車線維持制御に移行し、異なる車線を走行する制御を行う場合がある。
【0006】
本発明は、車線区画線のない地点でも適切に走行する車線を変更するように車両の走行を制御することができる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる走行制御装置は、車両が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある車線区画線により区画された複数の車線のうち現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成する経路作成部と、複数の経路のうち、車両に搭載されたセンサの出力データを用いて算出される車両が無車線区間を走行している進路に一致する経路を走行中経路として特定する経路特定部と、複数の車線のうち、走行中経路が向かう車線を維持するように車両の走行を制御する車線維持制御部と、を備える。
【0008】
本発明にかかる走行制御装置は、現在車線から、複数の車線のうち現在車線以外のいずれかの目標車線に移動するよう車線の走行を制御する車線変更制御部をさらに備えることが好ましい。
【0009】
本発明にかかる走行制御装置において、経路特定部は、複数の経路のうち、向かう方向が無車線区間における車両の進行方向に対応している経路を走行中経路として特定することが好ましい。
【0010】
本発明にかかる走行制御装置において、経路特定部は、複数の経路のうち一の経路のみが、車両が無車線区間における現在位置から進行可能な経路である場合、当該一の経路を走行中経路として特定することが好ましい。
【0011】
本発明にかかる走行制御装置において、経路特定部は、無車線区間における車両の現在位置の現在車線からの距離が距離閾値を超えた後に、走行中経路を特定することが好ましい。
【0012】
本発明にかかる走行制御方法は、車両が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある車線区画線により区画された複数の車線のうち現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成し、複数の経路のうち、車両に搭載されたセンサの出力データを用いて算出される車両が無車線区間を走行している進路に一致する経路を走行中経路として特定し、複数の車線のうち、走行中経路が向かう車線を維持するように車両の走行を制御する、ことを含む。
【0013】
本発明にかかるコンピュータプログラムは、車両が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある車線区画線により区画された複数の車線のうち現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成することと、複数の経路のうち、車両に搭載されたセンサの出力データを用いて算出される車両が無車線区間を走行している進路に一致する経路を走行中経路として特定することと、複数の車線のうち、走行中経路が向かう車線を維持するように車両の走行を制御すること、をプロセッサに実行させる。
【0014】
本発明にかかる走行制御装置によれば、車線区画線のない地点でも適切に車両が走行する車線を変更するように、車両の走行を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
図2】走行制御装置のハードウェア模式図である。
図3】走行制御装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
図4】経路特定の第1の例を説明する図である。
図5】経路特定の第2の例を説明する図である。
図6】走行制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、車線区画線のない地点でも適切に車両が走行する車線を変更することができる走行制御装置について詳細に説明する。走行制御装置は、車両が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある車線区画線により区画された複数の車線のうち現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成する。さらに、走行制御装置は、複数の経路のうち、車両に搭載されたセンサの出力データを用いて算出される車両が無車線区間を走行している進路に一致する経路を走行中経路として特定する。そして、走行制御装置は、複数の車線のうち、走行中経路が向かう車線を維持するように車両の走行を制御する。
【0017】
図1は、走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
【0018】
車両1は、カメラ2と、GNSS受信機3と、ストレージ装置4と、走行制御装置5とを有する。カメラ2、GNSS受信機3およびストレージ装置4と、走行制御装置5とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0019】
カメラ2は、車両近傍の状況を検出するためのセンサの一例である。カメラ2は、CCDあるいはC-MOSなど、赤外光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上の撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。カメラ2は、例えば車室内の前方上部に、前方を向けて配置され、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにフロントガラスを介して車両1の周辺の状況を撮影し、周辺の状況に対応した画像を出力する。画像は、センサの出力データの一例である。
【0020】
GNSS受信機3は、所定の周期ごとにGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて車両1の自己位置を測位する。GNSS受信機3は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく車両1の自己位置の測位結果を表す測位信号を、車内ネットワークを介して走行制御装置5へ出力する。
【0021】
ストレージ装置4は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または不揮発性の半導体メモリを有する。ストレージ装置4は、高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての無車線区間および車線区画線を表す情報が含まれる。
【0022】
走行制御装置5は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを有するECU(Electronic Control Unit)である。走行制御装置5は、通信インタフェースを介してカメラ2から受信する画像に基づいて、車両1の前方の車線区画線および車線を検出し、所定の車線を走行するように車両1の走行を制御する。
【0023】
図2は、走行制御装置5のハードウェア模式図である。走行制御装置5は、通信インタフェース51と、メモリ52と、プロセッサ53とを備える。
【0024】
通信インタフェース51は、通信部の一例であり、走行制御装置5を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース51は、受信したデータをプロセッサ53に供給する。また、通信インタフェース51は、プロセッサ53から供給されたデータを外部に出力する。
【0025】
メモリ52は、記憶部の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ52は、プロセッサ53による処理に用いられる各種データ、例えば車線維持制御を開始可能な現在車線からの車両1の距離を定める距離閾値等を保存する。また、メモリ52は、各種アプリケーションプログラム、例えば走行制御処理を実行する走行制御プログラム等を保存する。
【0026】
プロセッサ53は、制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ53は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0027】
図3は、走行制御装置5が有するプロセッサ53の機能ブロック図である。
【0028】
走行制御装置5のプロセッサ53は、機能ブロックとして、車線変更制御部531と、経路作成部532と、経路特定部533と、車線維持制御部534とを有する。プロセッサ53が有するこれらの各部は、プロセッサ53上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ53が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして走行制御装置5に実装されてもよい。
【0029】
車線変更制御部531は、車両1が現在走行している現在車線から、車線区画線を有しない無車線区間を介して進行方向前方にある車線区画線により区画された複数の車線のうち現在車線以外の目標車線に移動するように、車両1の走行を制御する。
【0030】
車線変更制御部531は、通信インタフェースを介してカメラ2から受信する画像を、車線を区分するために道路上に表示される線である車線区画線を検出するように予め学習された識別器に入力することにより、車両1の前方の無車線区間および車線区画線を特定する。
【0031】
識別器は、例えば、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。予め車線区画線を含む画像を教師データとして用いてCNNに入力し、学習を行うことにより、CNNは画像から車線区画線を検出する識別器として動作する。
【0032】
車線変更制御部531は、ストレージ装置4から、高精度地図において、通信インタフェースを介してGNSS受信機3から受信する測位信号に表される車両1の現在位置の周辺に存在する無車線区間および車線区画線の情報を取得してもよい。
【0033】
また、車線変更制御部531は、ストレージ装置4から、高精度地図において、車輪速度センサ(不図示)およびジャイロセンサ(不図示)を用いた自車走行履歴により特定される車両1の現在位置の周辺に存在する無車線区間および車線区画線の情報を取得してもよい。
【0034】
車線変更制御部531は、現在車線から目標車線に移動するように、通信インタフェース51を介して車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。走行機構には、例えば車両1に動力を供給するエンジンまたはモータ、車両1の走行速度を減少させるブレーキ、および車両1を操舵するステアリング機構が含まれる。
【0035】
目標車線は、現在位置から目的地に至る走行計画に基づいて、複数の車線から選択される。例えば、現在位置の前方での分岐が計画されている場合、当該分岐が可能な車線が目標車線として選択される。
【0036】
経路作成部532は、現在車線から、無車線区間を介して進行方向前方にある目標車線を含む複数の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成する。経路作成部532は、現在車線において車線変更が開始される車線変更開始位置と、車線変更位置の前方において車線変更が終了される複数の車線のそれぞれの車線変更終了位置とを接続することにより、複数の経路を作成する。車線変更開始位置と車線変更終了位置との間には、無車線区間が含まれる。
【0037】
経路特定部533は、車両1に搭載されたカメラ2の出力データを用いて、複数の経路のうち、車両1が無車線区間を走行している進路に一致する進路を走行中経路として特定する。経路特定部533は、通信インタフェースを介してカメラ2から受信する画像を、車線を区分するために道路上に表示される線である車線区画線を検出するように予め学習された識別器に入力することにより、車両1の周囲の車線区画線を特定する。そして、経路特定部533は、特定された周囲の車線区画線の位置に基づいて、無車線区間において車両1が走行している方向を示す進路を検出する。
【0038】
図4は、経路特定の第1の例を説明する図である。
【0039】
車両1は、車線変更開始前に、車線区画線LL11、LL12により区画される現在車線L11を走行する。車線区画線LL13、LL14により区画される車線L12、および、車線区画線LL14、LL12により区画される車線L13は、車線区画線を有しない無車線区間NLZ1を介して進行方向前方にある。また、車両1の前方では、現在車線L11は車線区画線LL11、LL13により区画される。
【0040】
図4の例では、目標車線として車線L13が選択されている。車線変更制御部531は、現在車線L11から目標車線である車線L13に移動するよう、車線変更開始位置LCS1から車線変更終了位置LCE1に向かう車両1の走行を制御する。
【0041】
経路作成部532は、現在車線L11における車線変更開始位置LCS1と、現在車線L11以外の車線L12、L13における車線変更終了位置LCE1とを接続することにより、経路R12、R13を作成する。経路作成部532は、車線変更終了位置LCE1を、車線変更開始位置LCS1において存在しない車線区画線LL14の存在する位置に設定する。
【0042】
経路R12は、車線変更開始位置LCS1における車両1の進行方向D11から角度αをなす方向に向かう経路である。経路R13は、車線変更開始位置LCS1における車両1の進行方向D11から角度βをなす方向に向かう経路である。
【0043】
車両1は、車線変更開始位置LCS1を通過した後、車線変更制御部531による現在車線L11から車線L13に向かう走行制御に基づいて、現在車線L11から距離Iの位置を走行している。このときの車両1の進行方向はD12である。進行方向D12は、車線変更開始位置LCS1における車両1の進行方向D11から角度γをなす方向である。
【0044】
経路特定部533は、無車線区間NLZ1における車両1の現在位置の現在車線L11からの距離Iがメモリ52に記憶される距離閾値を超えた後に、経路R12、R13のうち、車両1の現在位置における進行方向D12に対応する経路を、走行中経路として特定する。
【0045】
経路特定部533は、経路R12、R13の向かう方向と、車両1の現在位置における進行方向D12とのなす角との差を求め、差が最も小さい経路R13を、走行中経路として特定する。また、経路特定部533は、差がメモリ52に予め記憶された角度差閾値よりも小さい経路のうち、差が最も小さい経路を、走行中経路として特定してもよい。また、経路特定部533は、経路R12、R13の向かう方向と、車両1の現在位置における進行方向D12とのなす角との差に代えて、経路R12、R13の向かう方向と、車両1の現在位置における進行方向D12とのなす角との比を用いて走行中経路を特定してもよい。
【0046】
図5は、経路特定の第2の例を説明する図である。
【0047】
車両1は、車線変更開始前に、車線区画線LL21、LL22により区画される現在車線L21を走行する。車線区画線LL23、LL24により区画される車線L22、および、車線区画線LL24、LL22により区画される車線L23は、車線区画線を有しない無車線区間NLZ2を配して進行方向前方にある。また、車両1の前方では、現在車線L21は車線区画線LL21、LL23により区画される。
【0048】
図5の例では、目標車線として車線L22が選択されている。車線変更制御部531は、現在車線L21から目標車線である車線L22に移動するよう、車線変更開始位置LCS2から車線変更終了位置LCE2に向かう車両1の走行を制御する。
【0049】
経路作成部532は、現在車線L21における車線変更開始位置LCS2と、車線L22、L23における車線変更終了位置LCE2とを接続することにより、経路R22、R23を作成する。経路作成部532は、車線変更終了位置LCE2を、車線変更開始位置LCS2において存在しない車線区画線LL24の存在する位置に設定する。
【0050】
車両1は、車線変更開始位置LCS2を通過した後、まず、車線変更制御部531による走行制御に基づいて、現在車線L21から車線L22に向けて走行する。図5の例では、車両1は、車線変更開始位置LCS2を通過した後の車両1の運転者による追加操舵により、進行方向D20に向けて走行している。
【0051】
経路特定部533は、経路R22、R23のそれぞれが、車両1の現在位置から進行可能な経路であるか否かを判定する。車両1の現在位置から経路R22、R23のそれぞれに進行するには、現在位置と経路R22、R23の終点とを結ぶ方向D22、D23に向けて走行することが必要となる。経路特定部533は、車両1の進行方向D20と、方向D22、D23のそれぞれとがなす角を求める。経路特定部533は、方向D22、D23のうち、進行方向D20となす角が車両1の現在車速に応じて定められる最大操舵角より小さい方向を、現在位置から進行可能な方向とし、当該方向に対応する経路を、現在位置から進行可能な経路として特定する。そして、経路特定部533は、複数の経路のうち一の経路のみが、現在位置から進行可能な経路である場合、当該経路を走行中経路として特定する。
【0052】
図5の例では、方向D22は現在位置から進行可能な方向ではなく、方向D23は現在位置から進行可能な方向である。したがって、経路特定部533は、方向D23に対応する経路R23を、走行中経路として特定する。
【0053】
車線維持制御部534は、車線区画線によって区画された複数の車線のうち、走行中経路が向かう車線を維持するように、車両1の走行を制御する。
【0054】
車線維持制御部534は、走行中経路が向かう車線を区画する車線区画線を特定し、当該車線区画線に区画される車線を維持するように、通信インタフェース51を介して車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。
【0055】
車線区画線の特定および走行機構への制御信号の出力は車線変更制御部531と同様であるので、詳細な記載を省略する。
【0056】
図6は、走行制御処理のフローチャートである。走行制御装置5は、車両1が車線変更制御を開始し、現在車線から車両1の現在位置までの距離がメモリ52に記憶される距離閾値を超えた後、図6に示す処理を実行する。
【0057】
まず、経路作成部532は、車線区画線によって区画された複数の車線のうち車両1が現在走行している現在車線から、複数の車線のうち現在車線以外の車線のそれぞれに向かう複数の経路を作成する(ステップS1)。
【0058】
次に、経路特定部533は、複数の経路のうち、車両1が走行している進路に一致する走行中経路を特定する(ステップS2)。
【0059】
そして、車線維持制御部534は、複数の車線のうち、走行中経路が向かう車線を維持するように車両1の走行を制御する(ステップS3)。
【0060】
このように走行制御処理を実行することにより、走行制御装置5は、車線区画線のない地点でも適切に走行する車線を変更するように、車両1の走行を制御することができる。
【0061】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
5 走行制御装置
531 車線変更制御部
532 経路作成部
533 経路特定部
534 車線維持制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6