(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/04 20060101AFI20250115BHJP
B60W 10/101 20120101ALI20250115BHJP
F16H 61/66 20060101ALI20250115BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20250115BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250115BHJP
B60W 10/107 20120101ALI20250115BHJP
B60W 30/20 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B60W10/00 114
F16H61/66
F16H63/50
B60W10/06
B60W10/107
B60W30/20
(21)【出願番号】P 2021111100
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 匡
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-99059(JP,A)
【文献】特開2007-145169(JP,A)
【文献】特開2019-142272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源と、前記駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路に配設された無段変速機と、を有する車両に関し、
前記駆動力源のトルクである駆動力源トルクを変化させる際に、前記無段変速機の変速比に応じて定まる前記動力伝達経路の共振周波数に基づいてトルク変化率を設定し、該トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させる駆動力源トルク変更制御部を有する車両の制御装置において、
前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させる過程で、前記無段変速機の変速比の変化に起因する共振周波数の変化に伴って前記動力伝達経路に生じると予測されるトルク変動の振幅を算出し、その算出したトルク振幅予測値が予め定められた再設定条件を超えて変化した場合には、前記トルク変化率を変更する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させるトルク変更制御開始後の経過時間tax と、前記トルク変更制御開始後の前記駆動力源トルクの変化量Tixと、前記無段変速機の変速比の変化に応じて変化する共振周波数frx とに基づいて、現時点で前記駆動力源トルクの変更を中止した場合にドライブシャフトに生じると予測されるトルク変動の振幅Atdsxを、前記トルク振幅予測値として次式(1) に従って逐次算出する
Atdsx=Tix×〔K1/(tax×frx)〕× sin(tax×frx) ・・・(1)
但し、K1は係数
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させるトルク変更制御の開始当初に、前記動力伝達経路の共振周波数の逆数の時間で、前記駆動力源トルクが目標駆動力源トルクまで変化させられるように、前記トルク変化率を設定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させるトルク変更制御の開始当初に、前記駆動力源トルクを目標駆動力源トルクまで増大させる際のトルク変更量Ti0と、制御開始時の前記動力伝達経路の共振周波数である当初共振周波数fr0 とに基づいて、前記駆動力源トルクを前記目標駆動力源トルクまで増大させる立ち上げ時間tsを変数として、ドライブシャフトに生じると予測されるトルク変動の振幅である当初トルク振幅予測値Atds0を次式(2) に従って算出し、その算出した当初トルク振幅予測値Atds0と前記立ち上げ時間tsとの関係から、該当初トルク振幅予測値Atds0が所定の狙い値になる当初立ち上げ時間ts0 を求め、該当初立ち上げ時間ts0 で前記駆動力源トルクを前記目標駆動力源トルクまで増大させるように前記トルク変化率を設定する
Atds0=Ti0×〔K2/ (ts×fr0)〕× sin (ts×fr0) ・・・(2)
但し、K2は係数
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に係り、特に、車両の共振が抑制されるように駆動力源トルクの変化を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 駆動力源と、前記駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路に配設された変速機と、を有する車両に関し、(b) 前記駆動力源のトルクである駆動力源トルクを変化させる際に、前記動力伝達経路の共振周波数に基づいてトルク変化率を設定し、そのトルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させる駆動力源トルク変更制御部を有する車両の制御装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、前記動力伝達経路の共振周波数の逆数の時間で前記駆動力源トルクを目標駆動力源トルクまで変化させるようになっており、駆動力源トルクの変化に起因して生じる共振が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、動力伝達経路に変速機が設けられている車両においては、その変速機の変速比の変化に伴って共振周波数が変化するため、駆動力源トルクを変化させる過程で変速機が変速されると、共振周波数が変化して共振抑制効果が適切に得られなくなる可能性がある。特に、変速比を連続的に変化させることができる無段変速機の場合、変速比の変化に伴って共振周波数が連続的に変化するため、どのように対策するかが問題となる。
【0005】
図15は、共振周波数の変化に起因して共振が発生し易くなる理由を説明する図である。
図15の実線は、アクセルOFFの状態からアクセルの踏込み操作に従って駆動力源トルクを立ち上げる加速時、所謂チップイン加速時、におけるDSトルク振幅(ドライブシャフトのトルクTdsの変動の最大振幅)ΔTdsと、駆動力源トルクの立ち上げ時間tsとの関係の一例を示した図で、立ち上げ時間tsが共振周波数fr0 の逆数(1/fr0 )の時間ts0 の時にDSトルク振幅ΔTdsは極小になる。したがって、その立ち上げ時間ts0 で駆動力源トルクを立ち上げれば共振を抑制できるが、その駆動力源トルクの立ち上げ過程で無段変速機がダウンシフトされ、共振周波数がfr0 からfr1 (<fr0 )に変化すると、DSトルク振幅ΔTdsの特性が破線で示すように変化する。このため、当初の立ち上げ時間ts0 で駆動力源トルクを立ち上げると、矢印Qで示すようにDSトルク振幅ΔTdsが大きくなる。なお、
図15の立ち上げ時間ts1 は、共振周波数fr1 の逆数(1/fr1 )の時間である。また、アクセルの戻し操作の際の駆動力源トルクの立ち下げ時に無段変速機がアップシフトされる場合にも、共振周波数の変化で動力伝達経路のトルク振幅が大きくなる可能性がある。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、駆動力源トルクを変化させる過程で変速機が変速された場合でも共振が抑制されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 駆動力源と、前記駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路に配設された無段変速機と、を有する車両に関し、(b) 前記駆動力源のトルクである駆動力源トルクを変化させる際に、前記無段変速機の変速比に応じて定まる前記動力伝達経路の共振周波数に基づいてトルク変化率を設定し、そのトルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させる駆動力源トルク変更制御部を有する車両の制御装置において、(c) 前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させる過程で、前記無段変速機の変速比の変化に起因する共振周波数の変化に伴って前記動力伝達経路に生じると予測されるトルク変動の振幅を算出し、その算出したトルク振幅予測値が予め定められた再設定条件を超えて変化した場合には、前記トルク変化率を変更することを特徴とする。
【0008】
第2発明は、第1発明の車両の制御装置において、前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させるトルク変更制御開始後の経過時間tax と、前記トルク変更制御開始後の前記駆動力源トルクの変化量Tixと、前記無段変速機の変速比の変化に応じて変化する共振周波数frx とに基づいて、現時点で前記駆動力源トルクの変更を中止した場合にドライブシャフトに生じると予測されるトルク変動の振幅Atdsxを、前記トルク振幅予測値として次式(1) に従って逐次算出することを特徴とする。
Atdsx=Tix×〔K1/(tax×frx)〕× sin(tax×frx) ・・・(1)
【0009】
但し、K1は係数である。また、駆動力源トルクの変化量Tixは、無段変速機に対する入力トルクの変化量や、共振発生部位であるドライブシャフトにおける入力トルクの変化量など、駆動力源トルクに対して一定の関係を有する部分のトルクの変化量に置き替えることができる。
【0010】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両の制御装置において、前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させるトルク変更制御の開始当初に、前記動力伝達経路の共振周波数の逆数の時間で、前記駆動力源トルクが目標駆動力源トルクまで変化させられるように、前記トルク変化率を設定することを特徴とする。
【0011】
第4発明は、第1発明または第2発明の車両の制御装置において、前記駆動力源トルク変更制御部は、前記トルク変化率で前記駆動力源トルクを変化させるトルク変更制御の開始当初に、前記駆動力源トルクを目標駆動力源トルクまで増大させる際のトルク変更量Ti0と、制御開始時の前記動力伝達経路の共振周波数である当初共振周波数fr0 とに基づいて、前記駆動力源トルクを前記目標駆動力源トルクまで増大させる立ち上げ時間tsを変数として、ドライブシャフトに生じると予測されるトルク変動の振幅である当初トルク振幅予測値Atds0を次式(2) に従って算出し、その算出した当初トルク振幅予測値Atds0と前記立ち上げ時間tsとの関係から、その当初トルク振幅予測値Atds0が所定の狙い値になる当初立ち上げ時間ts0 を求め、その当初立ち上げ時間ts0 で前記駆動力源トルクを前記目標駆動力源トルクまで増大させるように前記トルク変化率を設定することを特徴とする。
Atds0=Ti0×〔K2/ (ts×fr0)〕× sin (ts×fr0) ・・・(2)
【0012】
但し、K2は係数である。また、トルク変更量Ti0は、無段変速機に対する入力トルクの変更量や、共振発生部位であるドライブシャフトにおける入力トルクの変更量など、駆動力源トルクに対して一定の関係を有する部分のトルクの変更量に置き替えることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような車両の制御装置においては、設定したトルク変化率で駆動力源トルクを変化させる過程で、無段変速機の変速比の変化に起因する共振周波数の変化に伴って動力伝達経路に生じるトルク変動の振幅を予測計算し、そのトルク振幅予測値が再設定条件を超えて変化した場合には駆動力源のトルク変化率を変更するため、無段変速機の変速比の変化に起因する共振周波数の変化に拘らず、動力伝達経路のトルク振幅の増加を抑制することができる。
【0014】
第2発明では、トルク変更制御開始後の経過時間tax と、トルク変更制御開始後の駆動力源トルクの変化量Tixと、無段変速機の変速比の変化に応じて変化する共振周波数frx とに基づいて、現時点で駆動力源トルクの変更を中止した場合のトルク振幅予測値Atdsxを(1) 式に従って算出するため、共振周波数frの変化に起因するドライブシャフトのトルク振幅の増加を適切に予測して、そのトルク振幅の増加が抑制されるように駆動力源トルクを制御することができる。
【0015】
第3発明では、動力伝達経路の共振周波数の逆数の時間で駆動力源トルクが目標トルクまで変化させられるようにトルク変化率が設定されるため、動力伝達経路の共振を適切に抑制することができる。
【0016】
第4発明では、駆動力源トルクを目標駆動力源トルクまで増大させる立ち上げ時間tsを変数として当初トルク振幅予測値Atds0を(2) 式に従って算出し、その当初トルク振幅予測値Atds0と立ち上げ時間tsとの関係から当初トルク振幅予測値Atds0が所定の狙い値になる当初立ち上げ時間ts0 を求め、その当初立ち上げ時間ts0 で駆動力源トルクを目標駆動力源トルクまで増大させるようにトルク変化率が設定される。このため、駆動力源トルクの変化に起因するドライブシャフトの共振が過大になることを抑制しつつ、狙い値に相当する所定の振幅のトルク変動が発生させられるようになり、運転者のアクセル操作等による車両の駆動力増加を運転者が実感できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用された車両の駆動装置を説明する骨子図で、制御系統の要部を併せて示した図である。
【
図2】
図1の電子制御装置が機能的に備えているエンジントルク変更制御部の作動を具体的に説明するフローチャートである。
【
図3】
図2のステップS2で変速比γに応じて求められる共振周波数frを説明する図である。
【
図4】エンジントルクの変更時間tfとDSトルク振幅ΔTdsとの関係を説明する図である。
【
図5】
図2のステップS3でトルク振幅予測値Atdsxを算出する演算式で用いられる変数を説明する図である。
【
図6】チップイン加速時にエンジントルクを立ち上げる際に、
図2のフローチャートに従ってトルク変化率の変更制御が行なわれた場合の各部の作動状態の変化を説明するタイムチャートの一例である。
【
図7】1自由度のばね・マス系における入力トルク立ち上げ量Tis、伝達トルク振幅At 、立ち上げ時間ts、共振周波数の周期Tの関係を説明する図である。
【
図8】CVT搭載車両を多自由度のばね・マス系として取り扱う場合の理論式を説明する図である。
【
図9】多自由度のばね・マス系を一般化するため、入力トルク立ち上げ量Tisを立ち上げ時間tsでランプ入力で立ち上げる場合の入力トルクの変化を説明する図である。
【
図10】
図9の入力トルク変化を前提として、変速比γを0.1刻みで分けてモデルから導出した伝達トルク振幅At と立ち上げ時間tsの特性の一例である。
【
図11】
図10の特性を1自由度の理論式に基づいて導出し直した伝達トルク振幅At と立ち上げ時間tsの特性の一例である。
【
図13】
図1のエンジントルク変更制御部によって実行されるトルク変更制御の別の例を説明するフローチャートである。
【
図14】
図13のステップR2でトルク振幅の狙い値βに基づいて当初立ち上げ時間ts0 を求める手順を説明する図である。
【
図15】共振周波数の変化に伴ってDSトルク振幅ΔTdsが増大する理由を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、例えば駆動力源としてエンジン(内燃機関)を備えているエンジン駆動車両に適用されるが、駆動力源としてエンジンおよび電動モータを備えているハイブリッド式電動車両や、駆動力源として電動モータのみを備えている電気自動車などにも適用され得る。動力伝達経路には、少なくとも無段変速機が設けられ、例えばベルト式無段変速機と、前進用クラッチおよび後進用ブレーキを有する前後進切替装置とが、直列または並列に設けられる。無段変速機として、差動機構および差動制御用回転機を有する電気式やトロイダル式等の他の方式の無段変速機が用いられても良い。
【0019】
駆動力源トルク変更制御部は、例えばアクセルOFFの被駆動状態からアクセルONの加速要求に従って駆動力源トルクを急に増大させるチップイン加速に好適に適用されるが、アクセルペダルの増し踏みによる急加速時や、アクセルペダルの戻し操作による駆動力源トルクの急減時にも適用され得る。すなわち、駆動力源トルク変更制御部は、駆動力源トルクの急増(立ち上げ)または急減(立ち下げ)に起因する動力伝達経路の共振を抑制するためのもので、急増時および急減時の少なくとも一方で、共振周波数に基づいて設定されたトルク変化率で駆動力源トルクが制御されれば良い。また、トルク振幅予測値が再設定条件を超えて変化した場合にトルク変化率を変更すれば、駆動力源トルクが目標駆動力源トルクに達するまでの時間を変更することになる。
【0020】
駆動力源トルク変更制御部は、例えば無段変速機からドライブシャフトを介して駆動輪に駆動力が伝達される場合、前記(1) 式や(2) 式に示されるようにドライブシャフトに生じるトルク変動の振幅を予測して駆動力源トルクを制御するように構成されるが、無段変速機よりも駆動輪側に設けられたドライブシャフト以外の動力伝達部材のトルク変動の振幅に基づいて駆動力源トルクを制御しても良い。その場合も、前記係数K1、K2を変更するだけで、(1) 式、(2) 式をそのまま用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比や形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0022】
図1は、本発明が適用された車両8の駆動装置の概略構成を説明する骨子図で、互いに平行な複数の軸が一平面内に位置するように展開して示した図であり、車両用動力伝達装置10を備えている。車両用動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用される横置き型で、走行用駆動力源であるエンジン12の出力は、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から自動変速機16を介して差動歯車装置18に伝達され、左右の駆動輪20L、20Rへ分配される。エンジン12は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、および自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体(作動油)を介して動力伝達を行うとともに、ロックアップクラッチLUにより直結されるようになっている。ポンプ翼車14pには機械式のオイルポンプ74が設けられており、エンジン12により回転駆動されて油圧を出力することにより、破線で示す油圧制御回路70の油圧源として用いられる。オイルポンプ74の連結先すなわち配設位置は適宜変更できるし、電動式オイルポンプを採用することも可能である。
【0023】
油圧制御回路70は、バルブボデー等によって構成される油圧作動制御部72を備えており、トルクコンバータ14のロックアップクラッチLUの係合油圧であるロックアップ係合油圧PluはリニアソレノイドバルブSLUによって調圧制御され、このロックアップ係合油圧Pluに応じてロックアップクラッチLUが係合開放制御される。ロックアップ係合油圧Pluは、例えばロックアップ係合側油室とロックアップ開放側油室との差圧を制御するものである。リニアソレノイドバルブSLUは油圧制御用ソレノイドバルブで、電子制御装置80によって電気的に制御されることによりロックアップ係合油圧Pluを調圧する。
【0024】
自動変速機16は、トルクコンバータ14の出力回転部材であるタービン軸にに連結された入力軸22、入力軸22に連結されたベルト式無段変速機24(以下、単に無段変速機24と言う。)、同じく入力軸22に連結されて無段変速機24と並列に設けられた前後進切替装置26およびギヤ変速機構28、無段変速機24およびギヤ変速機構28の共通の出力回転部材である出力軸30、減速歯車装置32を備えており、その減速歯車装置32の小径ギヤ34が差動歯車装置18のリングギヤ36と噛み合わされている。このように構成された自動変速機16においては、エンジン12の出力が、トルクコンバータ14から無段変速機24を介して出力軸30へ伝達され、或いは無段変速機24を介することなく前後進切替装置26およびギヤ変速機構28を介して出力軸30へ伝達される。そして、その出力軸30から、更に減速歯車装置32および差動歯車装置18を経て左右のドライブシャフト38L、38Rへ分配され、駆動輪20L、20Rへ伝達される。
【0025】
このように、本実施例の自動変速機16は、エンジン12の出力を入力軸22から前後進切替装置26およびギヤ変速機構28を介して出力軸30へ伝達する第1動力伝達経路TP1と、エンジン12の出力を入力軸22から無段変速機24を介して出力軸30へ伝達する第2動力伝達経路TP2と、を備えているのであり、車両の走行状態に応じてそれ等の動力伝達経路TP1、TP2が切り替えられる。このため、自動変速機16は、上記第1動力伝達経路TP1における動力伝達を断接(接続・遮断)する前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、および第2動力伝達経路TP2における動力伝達を断接するベルト走行用クラッチC2を備えている。第1動力伝達経路TP1には更に、前後進切替装置26およびギヤ変速機構28に対して直列に、具体的にはそれ等よりも下流側に、同期噛合式クラッチCdが設けられている。
【0026】
前後進切替装置26は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、キャリア26cが入力軸22に一体的に連結され、サンギヤ26sが入力軸22に対して同軸に相対回転可能に配設された小径ギヤ42に連結されている一方、リングギヤ26rが後進用ブレーキB1を介して選択的に回転停止させられるとともに、キャリア26cおよびサンギヤ26sが前進用クラッチC1を介して選択的に連結されるようになっている。そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が開放されると、入力軸22が小径ギヤ42に直結されて前進用動力伝達状態になり、同期噛合式クラッチCdの係合により第1動力伝達経路TP1が成立させられると前進走行が可能となる。一方、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が開放されると、小径ギヤ42は入力軸22に対して逆方向へ回転させられるため、後進用動力伝達状態になり、同期噛合式クラッチCdの係合により第1動力伝達経路TP1が成立させられると後進走行が可能となる。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に開放されると、第1動力伝達経路TP1による動力伝達を遮断するニュートラル状態となる。
【0027】
上記前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、何れも複数の摩擦材が油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の油圧式摩擦係合装置であり、その油圧シリンダに供給されるC1係合油圧Pc1、B1係合油圧Pb1が、油圧作動制御部72に設けられたリニアソレノイドバルブSL1、SLUによってそれぞれ調圧制御されることにより、それ等の係合力すなわち伝達トルク容量が連続的に調整される。リニアソレノイドバルブSL1、SLUは油圧制御用ソレノイドバルブで、それぞれ電子制御装置80によって電気的に制御されることにより、C1係合油圧Pc1、B1係合油圧Pb1を調圧する。
【0028】
ギヤ変速機構28は、小径ギヤ42と、カウンタ軸44に相対回転不能に設けられて小径ギヤ42と噛み合わされた大径ギヤ46と、カウンタ軸44に対して同軸に相対回転可能に設けられた小径のアイドラギヤ48とを備えている。そして、カウンタ軸44とアイドラギヤ48との間に、同期噛合式クラッチCdが設けられており、それ等の間の動力伝達が断接される。同期噛合式クラッチCdは、シンクロナイザリング等のシンクロメッシュ機構(同期機構)を備えており、クラッチハブスリーブ50が、図示しない油圧シリンダにより
図1の左方向である接続方向へ移動させられると、シンクロナイザリングを介してアイドラギヤ48がカウンタ軸44と同期回転させられるようになり、クラッチハブスリーブ50が更に移動させられると、そのクラッチハブスリーブ50の内周面に設けられたスプライン歯を介してアイドラギヤ48がカウンタ軸44に相対回転不能に連結される。同期噛合式クラッチCdの油圧シリンダには、油圧作動制御部72に設けられたリニアソレノイドバルブSL1によって調圧制御されたCd係合油圧Pcdが供給されるようになっており、同期噛合式クラッチCdはそのCd係合油圧Pcdに基づいて同期噛合係合させられる。同期噛合式クラッチCdの油圧シリンダにはまた、ライン油圧PLがそのままCd係合油圧Pcdとして供給されるようになっており、同期噛合式クラッチCdが噛合状態に維持される。ライン油圧PLは、例えば出力要求量であるアクセル開度Accやエンジントルクに対応するスロットル弁開度θth等に応じて調圧される。リニアソレノイドバルブSL1は油圧制御用ソレノイドバルブで、電子制御装置80によって電気的に制御されることによりCd係合油圧Pcdを調圧する。
【0029】
前記アイドラギヤ48は、出力軸30に設けられた大径ギヤ58と噛み合わされており、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の何れか一方が係合させられ且つ同期噛合式クラッチCdが接続されることにより、エンジン12の出力が入力軸22から前後進切替装置26、ギヤ変速機構28、アイドラギヤ48、および大径ギヤ58を順次経由して出力軸30に伝達されるようになり、第1動力伝達経路TP1が成立させられる。なお、小径のアイドラギヤ48と大径ギヤ58との間でも変速(減速)が行なわれ、それ等を含めてギヤ変速機構28が構成されていると見做すこともできる。
【0030】
無段変速機24は、入力軸22に設けられた有効径が可変のプライマリプーリ60と、出力軸30と同軸のプーリ回転軸62に設けられた有効径が可変のセカンダリプーリ64と、それ等の一対の可変プーリ60、64の間に巻き掛けられた伝動ベルト66とを備えており、一対の可変プーリ60、64と伝動ベルト66との間の摩擦を介して動力伝達が行われる。一対の可変プーリ60、64は、それぞれV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとして油圧シリンダ60c、64cを備えており、例えば油圧シリンダ60cへ供給されるプライマリ油圧Ppri が油圧作動制御部72に設けられたリニアソレノイドバルブSLPによって制御されることにより、両可変プーリ60、64のV溝幅が変化して伝動ベルト66の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γが連続的に変化させられる。例えば、プライマリプーリ60の回転速度である入力軸22の回転速度(入力回転速度)Ninが、変速比γに対応する所定の目標回転速度となるように、リニアソレノイドバルブSLPによってプライマリ油圧Ppri が制御される。また、油圧シリンダ64cへ供給されるセカンダリ油圧Psec が油圧作動制御部72に設けられたリニアソレノイドバルブSLSによって調圧制御されることにより、伝動ベルト66が滑りを生じないようにベルト挟圧力が調整される。リニアソレノイドバルブSLP、SLSは油圧制御用ソレノイドバルブで、電子制御装置80によって電気的に制御されることによりプライマリ油圧Ppri 、セカンダリ油圧Psec をそれぞれ調圧する。
【0031】
出力軸30は、プーリ回転軸62に対して同軸に相対回転可能に配設されており、その出力軸30とセカンダリプーリ64との間に設けられた前記ベルト走行用クラッチC2により、それ等の出力軸30とセカンダリプーリ64との間の動力伝達が断接される。このベルト走行用クラッチC2が係合させられると、エンジン12の出力が入力軸22から無段変速機24を経由して出力軸30に伝達されるようになり、第2動力伝達経路TP2が成立させられて前進走行が可能となる。ベルト走行用クラッチC2は、複数の摩擦材が油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の摩擦係合装置であり、その油圧シリンダに供給されるC2係合油圧Pc2が、油圧作動制御部72に設けられたリニアソレノイドバルブSL2によって調圧制御されることにより、その係合力すなわち伝達トルク容量が連続的に調整される。リニアソレノイドバルブSL2は油圧制御用ソレノイドバルブで、電子制御装置80によって電気的に制御されることによりC2係合油圧Pc2を調圧する。
【0032】
このような車両用動力伝達装置10において、前記ギヤ変速機構28のギヤ比等によって定まる前記第1動力伝達経路TP1の変速比gは、第2動力伝達経路TP2の変速比γの最大値γmax よりも大きく、車両発進時や高負荷走行時には第1動力伝達経路TP1を用いるギヤ走行モードで走行し、車速Vの上昇や要求駆動力の減少などに伴って第2動力伝達経路TP2を用いるベルト走行モードに切り替えられる。すなわち、変速比がgのギヤ走行モードは第1速ギヤ段に相当し、無段変速機24の変速比γが最大値γmax 或いはそれに近い第2変速比γsの状態のベルト走行モードは第2速ギヤ段に相当する。そして、ギヤ走行モード(変速比g)から第2変速比γsのベルト走行モードへのモード切替(アップシフト)は、前進用クラッチC1を開放するとともにベルト走行用クラッチC2を係合するクラッチツークラッチ変速によって実行される。また、第2変速比γsのベルト走行モードからギヤ走行モード(変速比g)へのモード切替(ダウンシフト)は、ベルト走行用クラッチC2を開放するとともに前進用クラッチC1を係合するクラッチツークラッチ変速によって実行される。変速比g、γは、出力回転速度(出力軸30の回転速度)Nout に対する入力回転速度Ninの比(Nin/Nout )で、変速比g、γsは何れも1.0より大きく、入力軸22に対して出力軸30が減速回転させられる。出力回転速度Nout は車速Vに対応し、入力回転速度Ninはタービン回転速度Ntと一致する。
【0033】
このような車両8は、エンジン12の出力制御、車両用動力伝達装置10の複数の走行モードの切替制御、無段変速機24の変速制御およびベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチLUの係合開放制御、などを行なうコントローラとして電子制御装置80を備えている。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを有する所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。すなわち、電子制御装置80は、機能的にエンジン制御部82、走行モード切替制御部86、およびCVT(Continuously Variable Transmission)変速制御部88等を備えている。電子制御装置80は、車両8の制御装置に相当し、必要に応じてエンジン制御用、油圧制御用等の複数のコンピュータを含んで構成される。
【0034】
電子制御装置80には、レバーポジションセンサ92からシフトレバー90の操作位置であるレバーポジションLpoを表す信号が供給される他、アクセル開度センサ94、タービン回転速度センサ96、出力回転速度センサ98等から、アクセルペダル93の操作量であるアクセル開度Acc、タービン回転速度Nt 、出力回転速度Nout を表す信号など、各種の制御に必要な種々の情報が供給されるようになっている。シフトレバー90は、レバーポジションLpoとしてP位置、R位置、N位置、D位置等へ操作可能で、P位置へ操作されることにより駐車用のPレンジが選択され、R位置へ操作されることにより後進走行用のRレンジが選択され、N位置へ操作されることにより動力伝達を遮断するNレンジが選択され、D位置へ操作されることにより前進走行用のDレンジが選択される。アクセル開度Accは運転者の駆動力要求量に対応する。また、電子制御装置80からは、前記油圧作動制御部72のソレノイドバルブをそれぞれ制御するための油圧制御指令信号Sp が出力される他、エンジン12を制御するためのエンジン制御指令信号Se が出力される。エンジン12は、電子スロットル弁や燃料噴射装置、点火装置等を含むエンジン制御機器76を備えており、エンジン制御指令信号Se によりそのエンジン制御機器76が制御されることにより、エンジントルクTe 等が制御される。
【0035】
エンジン制御部82は、例えばアクセル開度Accに基づいて目標エンジントルクTetgtを設定し、その目標エンジントルクTetgtに応じてエンジン12のトルクであるエンジントルクTe を増減するように、エンジン制御指令信号Se を出力してスロットル弁開度や燃料噴射量などを制御する。また、アクセル開度Accおよび車速V等に基づいて要求駆動力Frdemを算出し、その要求駆動力Frdemが得られる目標エンジントルクTetgtを設定して、その目標エンジントルクTetgtが得られるようにエンジン12を制御するようにしても良いなど、種々の態様が可能である。
【0036】
走行モード切替制御部86は、Dレンジ等の前進走行時に、第1動力伝達経路TP1を用いて走行するギヤ走行モードと、第2動力伝達経路TP2を用いて走行するベルト走行モードと、を切り替える走行モード切替制御を実行する。ギヤ走行モードとベルト走行モードとは、例えば通常の有段変速機の変速マップにおける第1速ギヤ段と第2速ギヤ段とを切り替える為の変速線に従って切り替えられる。この変速マップは、例えばアクセル開度Accおよび車速V等の運転状態に基づいて定められ、例えばアクセル開度Accが小さく車速Vが高くなると、ギヤ走行モードからベルト走行モードへアップシフトし、アクセル開度Accが大きく車速Vが低くなると、ベルト走行モードからギヤ走行モードへダウンシフトするように定められる。すなわち、車両発進時等の低車速時にはギヤ走行モードで走行し、所定車速以上ではベルト走行モードで走行する。具体的には、ギヤ走行モードからベルト走行モードへアップシフトするモード切替の際には、無段変速機24の変速比γが第2変速比γsとされた状態で、前進用クラッチC1を開放するとともにベルト走行用クラッチC2を係合させるクラッチツークラッチ変速を実行するように油圧制御指令信号Sp を出力する。また、ベルト走行モードからギヤ走行モードへダウンシフトするモード切替の際には、無段変速機24の変速比γが第2変速比γsとされた状態で、ベルト走行用クラッチC2を開放するとともに前進用クラッチC1を係合させるクラッチツークラッチ変速を実行するように油圧制御指令信号Sp を出力する。
【0037】
CVT変速制御部88は、Dレンジのベルト走行モード時において、無段変速機24の変速制御を実行する。この変速制御は、例えばアクセル開度Accおよび車速V等の運転状態に基づいて予め定められた変速マップに従って目標入力回転速度Nintgt を算出し、実際の入力回転速度Ninが目標入力回転速度Nintgt となるように、油圧制御指令信号Sp を出力して無段変速機24の変速比γを増減するように行なわれる。具体的には、例えばアクセル開度Accが大きく車速Vが低い程入力回転速度Ninが相対的に高くなるように、言い換えれば変速比γが大きいローギヤ側になり、アクセル開度Accが小さく車速Vが高い程入力回転速度Ninが相対的に低くなるように、言い換えれば変速比γが小さいハイギヤ側になるように、変速比γが制御される。この無段変速機24の変速制御は、基本的には前記第2変速比γs~最小変速比γmin の範囲内で行なわれる。CVT変速制御部88は、例えば第2変速比γs~最小変速比γmin の間で変速比γを連続的に変化させるが、有段変速機のように変速比γを段階的に変化させることも可能である。
【0038】
ここで、アクセル開度Accの変化に伴ってエンジントルクTe が急に増加または減少させられると、そのトルク変化に起因して動力伝達経路、例えばドライブシャフト38L、38R等で共振が発生する恐れがある。このため、動力伝達経路の共振周波数frに基づいてエンジントルクTe のトルク変化率Rteを制御し、共振を低減することが特許文献1等で提案されているが、この共振周波数frは、例えば
図3に示されるように無段変速機24の変速比γによって変化するため、エンジントルクTe を増減させる過程で無段変速機24が変速されると、共振周波数frが変化して共振抑制効果が適切に得られなくなる可能性がある。これに対し、本実施例では、エンジントルクTe を増減させる過程で無段変速機24が変速された場合でも、共振周波数frの変化に拘らず所定の共振抑制効果が得られるようにするエンジントルク変更制御部84が、前記エンジン制御部82に設けられている。エンジントルク変更制御部84は、駆動力源トルク変更制御部に相当する。
【0039】
エンジントルク変更制御部84は、
図2のフローチャートのステップS1~S7(以下、ステップを省略して単にS1~S7と言う。他のフローチャートも同じ。)に従って信号処理を実行する。
図2のフローチャートは、Dレンジのベルト走行モードによる走行時に実行され、S1では、アクセル操作等による入力トルク変化が発生したか否かを判断する。すなわち、エンジントルクTe を予め定められた変化幅以上増加または減少させる急増減時か否かを判断し、急増減時でなければそのまま終了するが、急増減時の場合にはS2以下を実行する。例えば、アクセル開度Accが略0のアクセルOFFの惰性走行状態からアクセルペダル93の踏込み操作に従ってエンジントルクTe を所定量以上立ち上げるチップイン加速時か否かを判断する。
【0040】
S2では、動力伝達経路の共振周波数fr、具体的にはドライブシャフト38L、38Rの共振周波数frに基づいて、エンジントルクTe を増減させる際の変化率であるトルク変化率Rteを決定する。共振周波数frは、無段変速機24の変速比γに応じて変化するため、先ず、変速比γに応じて共振周波数frを求める。すなわち、入力回転速度Nin(=Nt )を出力回転速度Nout で割り算することにより、現在(制御開始時)の無段変速機24の変速比γである当初変速比γ0を算出するとともに、
図3に示すような予め定められた関係から当初共振周波数fr0 を求める。変速比γと共振周波数frとの関係は、例えば車両8毎に定められるが、一般に
図3に示されるように変速比γが大きくなるに従って共振周波数frは低くなる。そして、その当初共振周波数fr0 の逆数(1/fr0 )の当初変更時間tf0 (=1/fr0 )でエンジントルクTe が目標エンジントルクTetgtまで変更されるように、制御開始時の当初トルク変化率Rte0 を算出する。例えば
図5に示すように現在のエンジントルクTe がTe0で、目標エンジントルクTetgtがTe1である場合、トルク変更量Ti0=(Te1-Te0)であり、そのトルク変更量Ti0を当初変更時間tf0 で割り算することにより、当初トルク変化率Rte0 (=Ti0/tf0 )が求められる。
【0041】
そして、その算出された当初トルク変化率Rte0 でエンジントルクTe が変更されるようにエンジン12を制御する。これにより、ドライブシャフト38R、38Lのトルク(DSトルク)Tdsの振幅であるDSトルク振幅ΔTdsを抑制しつつ、エンジントルクTe を速やかに増減させることができる。
図4は、エンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで変化させる所要時間である変更時間tfと、DSトルク振幅ΔTdsとの関係を説明する図で、
図5のトルク変更量Ti0に相当するトルク変更量の大小に拘らず、変更時間tfが共振周波数frの逆数の時間(1/fr)の場合にDSトルク振幅ΔTdsは極小になる。すなわち、トルク変更量Ti0を、当初共振周波数fr0 の逆数である当初変更時間tf0 で割り算して求められた当初トルク変化率Rte0 で、エンジントルクTe を増減させれば、DSトルク振幅ΔTdsを極小状態に維持してエンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで変更することができる。
【0042】
図6は、チップイン加速時に
図2のフローチャートに従ってエンジントルクTe の立ち上げ制御が行なわれた場合のタイムチャートの一例であり、時間t1は、アクセルOFFの惰性走行状態からアクセルペダル93が踏込み操作された時間である。そして、アクセル開度Accに基づいて目標エンジントルクTetgt=Te1が算出されるとともに、当初変速比γ0に応じて求められる当初共振周波数fr0 から当初変更時間tf0 が算出され、その当初変更時間tf0 とトルク変更量Ti0=(Te1-Te0)とから、当初トルク変化率Rte0 (=Ti0/tf0 )が決定され、時間t2で、その当初トルク変化率Rte0 でエンジントルクTe を立ち上げるトルク変更制御が開始される。
【0043】
このようなトルク変更制御が開始されると、
図2のS3以下が実行される。S3では、トルク変更制御開始後の経過時間tax と、トルク変更制御開始後のエンジントルクTe の変化量Tixと、無段変速機24の変速比γxに応じて定まる現時点txの共振周波数frx とに基づいて、現時点txでエンジントルクTe の変更を中止した場合に発生すると予測されるDSトルクTdsのトルク変動の振幅であるトルク振幅予測値Atdsxを、前記(1) 式に従って算出する。
図5は、上記経過時間tax 、エンジントルクTe の変化量Tix、変速比γxを例示した図で、時間t1はトルク変更制御の開始時間であり、時間t2は当初予定の制御終了時間、すなわち変速比γの変化が無い場合の制御終了時間である。この
図5は、エンジントルクTe を増加させるトルク変更制御の過程で無段変速機24がダウンシフトされ、変速比γが増加させられた場合である。この変速比γの変化に伴って、共振周波数frは、例えば
図3に示されるように変化する。すなわち、変速比γがγ0からγxまで増加させられることにより、共振周波数frはfr0 からfrx まで低下する。
【0044】
前記(1) 式は、チップイン加速時におけるトルク振幅等を考察した
図7~
図12に示す知見に基づいて求められた演算式である。
図7は、1自由度のばね・マス系における入力トルク立ち上げ量Tis、伝達トルク振幅At 、立ち上げ時間ts、共振周波数の周期Tの関係を説明する図で、それ等の変数は(A)の演算式で示す関係となる。伝達トルク振幅At は(1) 式のトルク振幅予測値Atdsxに対応し、入力トルク立ち上げ量Tisは(1) 式のエンジントルクTe の変化量Tixに対応し、立ち上げ時間tsは(1) 式の経過時間tax に対応し、周期Tは共振周波数frx に対応する。
【0045】
しかしながら、前記車両8のようなCVT搭載車両は、変速比γの変化に伴って共振周波数が変化するため、
図8に示すように多自由度のばね・マス系となり、(B)式で示すような複雑な理論式が必要になる。この多自由度のばね・マス系を一般化するため、
図9に示すように入力トルク立ち上げ量Tisを一定(100Nm)に固定するとともに、立ち上げ時間tsでランプ入力、すなわち一定の変化率で立ち上げると仮定し、変速比γを0.1刻みで変更して立ち上げ時間tsと伝達トルク振幅At との関係をモデルから導出すると、
図10に示す特性が得られる。この
図10の特性を1自由度の理論式に基づいて導出し直すと、
図11に示す特性になる。
図10、
図11の特性は、何れも変速比γが大きくなるに従って、伝達トルク振幅At が極小となる立ち上げ時間tsが長くなる方向(図の右方向)へ変化している。
図11の特性は、
図12の理論式(C)で表すことが可能で、入力トルク立ち上げ量Tisおよび共振周波数frを変数として備えることにより、入力トルク立ち上げ量Tisや立ち上げ時間tsの違い、或いは無段変速機24の変速比γの変化に拘らず、伝達トルク振幅At を算出することができる。前記(1) 式は、この理論式(C)に基づいて定められたものであり、前記係数K1は車両8のハード諸元に応じて定められる。係数K1は、共振周波数frx に応じて決定される。また、エンジントルクTe の増加か減少かによって、係数K1として異なる値が定められても良い。
【0046】
図2に戻って、S4では、S3で算出されたトルク振幅予測値Atdsxが、予め定められた許容値α1よりも大きいか否かを判断する。すなわち、変速比γの変化に伴って共振周波数frが変化すると、
図4から明らかなようにDSトルク振幅ΔTdsが極小となる変更時間tf(=1/fr)が変化し、DSトルク振幅ΔTdsに対応するトルク振幅予測値Atdsxが大きくなるため、許容値α1以下であればS6で現状のトルク変化率Rteを維持したままトルク変更制御を継続し、許容値α1を超えたらS5を実行してトルク変化率Rteを再計算する。許容値α1は、例えばDSトルク振幅ΔTdsにより乗員が違和感を感じない上限値等で、例えば予め一定値が設定されるが、アクセル開度Accの変化速度やトルク変更量Ti0等の運転状態に応じて可変設定されても良い。本実施例では、S4の判断がYES(肯定)になること、すなわちAtdsx>α1になることが、予め定められた再設定条件である。なお、トルク振幅予測値Atdsxが増加から減少に転じたり、更に増加に転じたりした場合にトルク変化率Rteを再計算するようにしても良いなど、再設定条件は適宜変更できる。
【0047】
S5では、例えば現時点txの共振周波数frx に基づいて、前記S2と同様にしてトルク変化率Rteを再計算する。例えば、
図6に示すように時間t3で変速比γが変化し始め、その変速比γの変化に伴う共振周波数frの変化により、時間t4でAtdsx>α1になってS4の判断がYESになった場合には、その時間t4の時点の共振周波数frx の逆数(1/frx )を変更時間tfx として、制御開始時間t2から変更時間tfx が経過した時間t6でエンジントルクTe が目標エンジントルクTe1に達するトルク変化率Rtex を算出する。具体的には、現時点のエンジントルクTexから目標エンジントルクTe1までの残トルクΔTe を、現在時間t4から時間t6までの残時間Δt(=t6-t4= tfx-tax )で割り算することにより、トルク変化率Rtex (=ΔTe /Δt) を求める。そして、その新たなトルク変化率Rtex でエンジントルクTe が立ち上がるようにエンジン12を制御する。なお、目標変速比である変速比γ1に基づいてトルク変化率Rtex を定めることもできるし、共振周波数frと無関係にトルク変化率Rteを一定量だけ増減しても良いなど、必ずしもS2と同様の考え方でトルク変化率Rteを設定する必要はない。
【0048】
S7では、エンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで変更するトルク変更制御が終了したか否かを判断し、トルク変更制御が終了するまでS3以下のステップを繰り返し実行する。また、トルク変更制御が終了したら、一連の制御を終了してS1以下を改めて実行する。
【0049】
図6の実線は、
図2のフローチャートに従ってエンジントルクTe の立ち上げ制御が行なわれ、時間t4でトルク変化率RteがRte0 からRtex に変更された本実施例の場合で、変速比γの変化に拘らずDSトルク振幅ΔTdsが比較的小さく維持される。
図6の破線は、変速比γの変化に拘らず当初トルク変化率Rte0 のままエンジントルクTe を目標エンジントルクTe1まで立ち上げた比較例で、時間t5で目標エンジントルクTe1まで立ち上げることができるものの、DSトルク振幅ΔTdsは本実施例に比べて大きくなる。また、
図6の一点鎖線は、比較例のようにDSトルク振幅ΔTdsが大きくなることを防止しつつ、できるだけ速やかにエンジントルクTe を立ち上げることができるように、共振周波数frの変化を考慮することなくトルク変化率Rteを設定した号口相当の従来例で、DSトルク振幅ΔTdsは比較例程大きくないものの、立ち上げ終了時間が時間t7まで遅くなる。例えばエンジントルクTe を150Nm程度まで立ち上げてDSトルクTdsを500Nm程度とした場合のDSトルク振幅ΔTdsを比較すると、実線で示した本実施例は60Nm程度であるのに対し、破線で示した比較例では180Nm程度、一点鎖線で示した従来例では120Nm程度であり、本実施例によれば立ち上げ時間を比較的短く維持しつつDSトルク振幅ΔTdsを大幅に低減することができた。
【0050】
このように本実施例の車両8のエンジントルク変更制御部84によれば、当初設定したトルク変化率Rte0 でエンジントルクTe を変化させる過程で、無段変速機24の変速比γの変化に起因する共振周波数frの変化に伴ってDSトルクTdsに生じるトルク変動の振幅ΔTdsの予測値であるトルク振幅予測値Atdsxを計算し、そのトルク振幅予測値Atdsxが許容値α1を超えて変化した場合にはトルク変化率Rteを変更するため、無段変速機24の変速比γの変化に起因する共振周波数frの変化に拘らず、DSトルク振幅ΔTdsの増加を抑制することができる。
【0051】
また、トルク変更制御開始後の経過時間tax と、トルク変更制御開始後のエンジントルクTe の変化量Tixと、無段変速機24の変速比γの変化に伴って変化する共振周波数frx とに基づいて、現時点でエンジントルクTe の変更を中止した場合のトルク振幅予測値Atdsxを(1) 式に従って算出するため、共振周波数frの変化に起因するDSトルク振幅ΔTdsの増加を適切に予測して、そのDSトルク振幅ΔTdsの増加が抑制されるようにエンジントルクTe を制御することができる。
【0052】
また、トルク変更制御を開始する際に、当初共振周波数fr0 の逆数の当初変更時間tf0 でエンジントルクTe が目標エンジントルクTetgtまで変化させられるように当初トルク変化率Rte0 が設定されるため、動力伝達経路の共振すなわちDSトルク振幅ΔTdsを適切に抑制することができる。
【0053】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0054】
図13は、前記
図2の代わりにエンジントルク変更制御部84によって実行される信号処理を説明するフローチャートである。
図13のR1、R3、R6、R7は前記実施例のS1、S3、S6、S7と同じで、R2、R4、およびR5が前記S2、S4、S5と相違する。
図13は、チップイン加速時などアクセルペダル93の踏込み操作に従ってエンジントルクTe を増加させる場合の制御に関するもので、R2では、先ず、エンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで増大させる際のトルク変更量Ti0と、制御開始時の無段変速機24の変速比γ0 に応じて定まる当初共振周波数fr0 とを求める。そして、それ等のトルク変更量Ti0および当初共振周波数fr0 に基づいて、エンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで増大させる立ち上げ時間tsを変数として、ドライブシャフト38L、38Rに生じると予測されるトルク変動の振幅である当初トルク振幅予測値Atds0を前記(2) 式に従って算出する。(2) 式は、前記
図12の理論式(C)に基づいて定められたものであり、前記係数K2は車両8のハード諸元に応じて定められる。係数K2は、当初共振周波数fr0 に応じて決定される。
【0055】
次に、その算出した当初トルク振幅予測値Atds0と立ち上げ時間tsとの関係から、その当初トルク振幅予測値Atds0が所定の狙い値βになる当初立ち上げ時間ts0 を求める。
図14は、当初トルク振幅予測値Atds0と立ち上げ時間tsとの関係の一例で、立ち上げ時間ts=1/fr0 で当初トルク振幅予測値Atds0は極小になるため、それよりも短時間側でAtds0=βとなる立ち上げ時間tsを当初立ち上げ時間ts0 とする。狙い値βは、例えばDSトルク振幅ΔTdsにより運転者が所定の駆動力増加を実感できるように予め一定値が定められるが、アクセル開度Accの変化速度やトルク変更量Ti0等の運転状態に応じて可変設定されても良い。そして、その当初立ち上げ時間ts0 でエンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで増大させる当初トルク変化率Rte0 を算出する。例えば前記
図5、
図6の場合、当初変更時間tf0 (=1/fr0 )の代わりに当初立ち上げ時間ts0 を用いて、トルク変更量Ti0をその当初立ち上げ時間ts0 で割り算することにより、当初トルク変化率Rte0 (=Ti0/ts0 )が求められる。
【0056】
この当初トルク変化率Rte0 でエンジントルクTe が増加させられるようにエンジン12を制御すれば、ドライブシャフト38R、38Lのトルク(DSトルク)Tdsの振幅であるDSトルク振幅ΔTdsが過大になることを抑制しつつ、狙い値βに相当する所定のDSトルク振幅ΔTdsのトルク変動を発生させることができる。
【0057】
一方、このように当初トルク変化率Rte0 でエンジントルクTe を増加させる過程でR3以下のステップが実行され、前記(1) 式に従って算出されるトルク振幅予測値Atdsxが予め定められた許容値α2よりも大きくなった場合には、R5を実行してトルク変化率Rteを再計算する。許容値α2は、例えばDSトルク振幅ΔTdsが狙い値βよりも相当程度大きくなるような値で、前記実施例の許容値α1よりも大きく、例えば予め一定値が設定されるが、アクセル開度Accの変化速度やトルク変更量Ti0等の運転状態に応じて可変設定されても良い。本実施例では、R4の判断がYES(肯定)になること、すなわちAtdsx>α2になることが、予め定められた再設定条件である。
【0058】
R5では、例えば現時点txの共振周波数frx に基づいて、前記R2と同様にしてトルク変化率Rteを再計算する。すなわち、変速比γの変化に伴う共振周波数frの変化に拘らず、狙い値βに相当する所定のDSトルク振幅ΔTdsを発生させることができる新たなトルク変化率Rteを算出する。具体的には、前記当初共振周波数fr0 の代わりに現時点txの共振周波数frx を用いて、前記(2) 式に従って当初トルク振幅予測値Atds0を算出し、その算出した当初トルク振幅予測値Atds0と立ち上げ時間tsとの関係から、当初トルク振幅予測値Atds0が所定の狙い値βになる立ち上げ時間tsx を求める。そして、制御開始時点からの経過時間が立ち上げ時間tsx となった時点でエンジントルクTe が目標エンジントルクTetgtに達するように、前記実施例と同様に残トルクΔTe (Trtgt-Tex)を残時間Δt(= tsx-tax )で割り算することにより、トルク変化率Rtex (=ΔTe /Δt) を求め、その新たなトルク変化率Rtex でエンジントルクTe が立ち上がるようにエンジン12を制御する。なお、共振周波数frと無関係にトルク変化率Rteを一定量だけ減少させても良いなど、必ずしもR2と同様の考え方でトルク変化率Rteを設定する必要はない。
【0059】
本実施例においても、R3~R5の実行で無段変速機24の変速比γの変化に起因する共振周波数frの変化に拘らず、DSトルク振幅ΔTdsの増加を抑制できるなど、前記実施例と同様の作用効果が得られる。また、R2では、エンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで増大させる立ち上げ時間tsを変数として、(2) 式に従って当初トルク振幅予測値Atds0を算出し、その当初トルク振幅予測値Atds0と立ち上げ時間tsとの関係から当初トルク振幅予測値Atds0が所定の狙い値βになる立ち上げ時間ts0 を求め、その立ち上げ時間ts0 でエンジントルクTe を目標エンジントルクTetgtまで増大させるように当初トルク変化率Rte0 が設定される。このため、エンジントルクTe の変化に起因するDSトルク振幅ΔTdsが過大になることを抑制しつつ、狙い値βに相当する所定のDSトルク振幅ΔTdsが発生させられるようになり、運転者のアクセル操作等による車両8の駆動力増加を運転者が実感できるようになる。
【0060】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
8:車両 10:車両用動力伝達装置(動力伝達経路) 12:エンジン(駆動力源) 20L、20R:駆動輪 24:ベルト式無段変速機(無段変速機) 38L、38R:ドライブシャフト 80:電子制御装置(車両の制御装置) 84:エンジントルク変更制御部(駆動力源トルク変更制御部) γ:変速比 Te :エンジントルク(駆動力源トルク) Tetgt、Te1:目標エンジントルク(目標駆動力源トルク) Tix:駆動力源トルクの変化量 Ti0:トルク変更量 tax :経過時間 ts:立ち上げ時間 ts0 :当初立ち上げ時間 fr:共振周波数 frx :共振周波数(現時点の共振周波数) fr0 :当初共振周波数 Rte、Rtex :トルク変化率 Rte0 :当初トルク変化率(トルク変化率) Tds:DSトルク ΔTds:DSトルク振幅(トルク変動の振幅) Atdsx:トルク振幅予測値 Atds0:当初トルク振幅予測値 α1、α2:許容値(再設定条件) β:狙い値