(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/20 20060101AFI20250115BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20250115BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20250115BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20250115BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20250115BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20250115BHJP
【FI】
F16H1/20
F16C19/06
F16C19/36
F16C33/66 Z
F16C35/077
F16H57/04 K
(21)【出願番号】P 2021125707
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】野元 宣寿
(72)【発明者】
【氏名】西井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小柴 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/202963(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/033976(WO,A1)
【文献】特開2007-247695(JP,A)
【文献】特開2007-145088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/20
F16H 57/04
F16C 19/06
F16C 19/36
F16C 35/077
F16C 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニットの駆動軸に接続された第1軸ユニットを備え、
前記第1軸ユニットは、
前記駆動軸に接続され、外周面に第1軸軌道面を有する第1軸と、
前記第1軸に設けられ、前記第1軸と一体回転する第1出力ギヤと、
前記第1軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
を有し、
前記第1転動体は玉であり、
前記第1軸軌道面は、前記第1軸の前記外周面の周方向に延びる溝であり、
前記第1軸軌道面を構成する前記溝において、前記第1軸の前記外周面の周方向に延びる一対の溝淵部のうち、前記第1出力ギヤに近い側の前記溝淵部は、他方の前記溝淵部よりも大径である、変速機。
【請求項2】
前記第1軸は、前記第1軸軌道面が設けられる部分である軌道面形成部と、前記軌道面形成部と前記第1出力ギヤとの間の部分である中間部とを含み、
前記中間部の外径は、前記軌道面形成部の外径よりも大きい、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記第1軸軌道面の前記溝における前記第1軸の軸方向の形状は、軌道溝仮想円に沿った円弧状を呈し、
前記中間部及び前記第1出力ギヤは、前記軌道溝仮想円に干渉しない、請求項
2に記載の変速機。
【請求項4】
複数の前記転動体のそれぞれを転動自在に保持する保持器を更に備え、
前記保持器は、前記第1軸の軸方向において、前記第1外輪の端部から外側に突出している、請求項1~
3のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項5】
前記第1軸の内部には、前記第1軸の軸方向に沿って延びる第1油路が設けられており、
さらに、前記第1軸には、前記第1油路と前記第1軸の外周面とに連通する第1油孔が設けられており、
前記第1油孔における前記第1軸の外周面における開口部の少なくとも一部は、前記第1軸の径方向において、前記第1外輪の前記内周面に対向している、請求項1~
4のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項6】
前記第1油孔は、前記第1軸の径方向に沿って延在すると共に、前記第1軸の軸方向において、前記第1軸軌道面よりも前記第1油路の油流れ方向の上流側に設けられている、請求項5に記載の変速機。
【請求項7】
前記第1外輪の外周面と前記第1支持部との間には、前記第1外輪を囲むように配置されたOリングが設けられている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項8】
前記第1外輪の外周面には、前記第1外輪の外周面よりも低摩擦な被膜が施されている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項9】
前記第1軸ユニットから動力が伝達される第2軸ユニットを更に備え、
前記第2軸ユニットは、
外周面に第2軸軌道面を有する第2軸と、
前記第2軸に設けられ、前記第1出力ギヤに噛み合うと共に、前記第2軸と一体回転する第2入力ギヤと、
前記第2軸に設けられ、前記第2軸と一体回転する第2出力ギヤと、
前記第2軸を支持する第2支持部に取り付けられ、前記第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、
前記第2軸軌道面と前記第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、
を有し、
前記第1軸の回転軸と前記第2軸の回転軸とは互いに並行である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項10】
前記第2転動体は円すいころであり、
前記第2軸軌道面は、円すい台形を呈し、
前記第2軸は、円すい台形の前記第2軸軌道面の小径側端部に隣接するように設けられた第2小鍔部を更に有し、
前記第2軸の内部には、前記第2軸の軸方向に沿って延びる第2油路が設けられており、
さらに、前記第2軸には、前記第2油路と前記第2小鍔部の外周面とに連通する第2油孔が設けられている、請求項
9に記載の変速機。
【請求項11】
前記第2転動体は玉であり、
前記第2軸軌道面は、前記第2軸の前記外周面の周方向に延びる溝であり、
前記第2軸の内部には、前記第2軸の軸方向に沿って延びる第2油路が設けられており、
さらに、前記第2軸には、前記第2油路と前記第2軸の外周面とに連通する第2油孔が設けられており、
前記第2油孔における前記第2軸の外周面に開口する開口部は、前記第2軸軌道面に隣接している、請求項
9に記載の変速機。
【請求項12】
前記第2転動体は円すいころであり、
前記第2軸軌道面は、円すい台形を呈し、
前記第2軸には、円すい台形の前記第2軸軌道面の小径側端部に隣接する小鍔部が設けられていない、請求項
9に記載の変速機。
【請求項13】
前記第2軸ユニットから動力が伝達されるデファレンシャルギヤユニットを更に備え、
前記デファレンシャルギヤユニットは、
外周面に第3軸軌道面を有するデファレンシャルケースと、
前記デファレンシャルケースに設けられ、前記第2出力ギヤに噛み合うと共に、前記デファレンシャルケースと一体回転する第3入力ギヤと、
前記デファレンシャルケース内に設けられた差動機構と、
前記デファレンシャルケースを支持する第3支持部に取り付けられ、前記第3軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第3外輪軌道面を有する第3外輪と、
前記第3軸軌道面と前記第3外輪軌道面との間に配置された複数の第3転動体と、
を有し、
前記第2軸の回転軸と前記デファレンシャルケースの回転軸とは互いに並行である、請求項
9~12のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項14】
前記第3転動体は円すいころであり、
前記第3軸軌道面は、円すい台形を呈し、
前記デファレンシャルケースは、円すい台形の前記第3軸軌道面の小径側端部に隣接するように設けられた第3小鍔部を更に有し、
前記デファレンシャルケースの内部には、第3油路が設けられており、
さらに、前記デファレンシャルケースには、前記第3油路と前記第3小鍔部の外周面とに連通する第3油孔が設けられている、請求項
13に記載の変速機。
【請求項15】
前記第3転動体は円すいころであり、
前記第3軸軌道面は、円すい台形を呈し、
前記デファレンシャルケースには、円すい台形の前記第3軸軌道面の小径側端部に隣接する小鍔部が設けられていない、請求項
13に記載の変速機。
【請求項16】
前記駆動ユニットを更に備え、
前記駆動ユニットは、
駆動機構と、
外周面に第4軸軌道面を有し、前記駆動機構によって回転駆動されると共に前記第1軸に接続された前記駆動軸と、
前記駆動軸を支持する第4支持部に取り付けられ、前記第4軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第4外輪軌道面を有する第4外輪と、
前記第4軸軌道面と前記第4外輪軌道面との間に配置された複数の第4転動体と、
を有する、請求項1~
15のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項17】
前記駆動軸の内部には、前記駆動軸の軸方向に沿って延びる第4油路が設けられており、
さらに、前記駆動軸には、前記第4油路と前記駆動軸の外周面とに連通する第4油孔が設けられており、
前記第4油孔における前記駆動軸の外周面に開口する開口部は、前記第4軸軌道面に隣接している、請求項
16に記載の変速機。
【請求項18】
駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動軸に接続された第1軸ユニットと、を備え、
前記第1軸ユニットは、
前記駆動軸に接続され、外周面に第1軸軌道面を有する第1軸と、
前記第1軸に設けられ、前記第1軸と一体回転する第1出力ギヤと、
前記第1軸を支持する第1支持部に取り付けられ、前記第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、
前記第1軸軌道面と前記第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、
を有し、
前記駆動ユニットは、
駆動機構と、
内周面に第4軸軌道面を有し、前記駆動機構によって回転駆動されると共に前記第1軸に接続された前記駆動軸と、
前記駆動軸を前記第4軸軌道面の内側から支持する第4支持部の外周に取り付けられ、前記第4軸軌道面の内側に設けられると共に、外周面に第4内輪軌道面を有する第4内輪と、
前記第4軸軌道面と前記第4内輪軌道面との間に配置された複数の第4転動体と、
を有する
、変速機。
【請求項19】
前記第1出力ギヤの歯数、及び前記第1転動体の個数の少なくともいずれかが素数である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項20】
前記第1出力ギヤの歯数、前記第1転動体の個数、前記第2入力ギヤの歯数、前記第2出力ギヤの歯数、及び前記第2転動体の個数の少なくともいずれかが素数である、請求項
9~12のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項21】
前記第1出力ギヤの歯数、前記第1転動体の個数、前記第2入力ギヤの歯数、前記第2出力ギヤの歯数、前記第2転動体の個数、前記第3入力ギヤの歯数、及び前記第3転動体の個数の少なくともいずれかが素数である、請求項
13~15のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項22】
前記第1出力ギヤの歯数、前記第1転動体の個数、及び前記第4転動体の個数の少なくともいずれかが素数である、請求項
16~18のいずれか一項に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットの回転速度を減速又は増速する変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、駆動ユニットの駆動軸の回転速度を減速させて出力する変速機(減速機)がある。このような変速機は、ギヤが設けられた回転軸を複数備え、ギヤ同士を係合させて、駆動軸の回転を複数の回転軸に順次伝達することによって、回転速度を減速させている。このため、このような変速機には、筐体に対して回転軸を回転可能に支持する軸受が複数設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような変速機は、駆動ユニットの駆動軸の回転速度をギヤによって順次減速又は増速させるため、ギヤが設けられた回転軸にブレが生じると、回転性能や耐久性等が低下する可能性が考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、回転軸を安定して回転可能に支持可能な変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る変速機は、駆動ユニットの駆動軸に接続された第1軸ユニットを備え、第1軸ユニットは、駆動軸に接続され、外周面に第1軸軌道面を有する第1軸と、第1軸に設けられ、第1軸と一体回転する第1出力ギヤと、第1軸を支持する第1支持部に取り付けられ、第1軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第1外輪軌道面を有する第1外輪と、第1軸軌道面と第1外輪軌道面との間に配置された複数の第1転動体と、を有する。
【0007】
この変速機では、駆動ユニットの駆動軸に接続された回転軸である第1軸が、第1転動体及び第1外輪を介して第1支持部に回転可能に支持される。つまり、第1軸は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この変速機は、第1軸を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等による第1軸の支持精度の低下を抑制できる。従って、この変速機では、駆動ユニットの駆動軸に接続された第1軸(回転軸)を安定して回転可能に支持することができる。
【0008】
上記の変速機において、第1転動体は玉であり、第1軸軌道面は、第1軸の外周面の周方向に延びる溝であり、第1軸軌道面を構成する溝において、第1軸の外周面の周方向に延びる一対の溝淵部のうち、第1出力ギヤに近い側の溝淵部は、他方の溝淵部よりも大径であってもよい。この場合、この変速機は、第1転動体が第1軸の軸方向の荷重を受ける場合であっても、荷重を受ける側の溝淵部の高さを他方より高くすることにより、第1転動体が溝(第1軸軌道面)を乗り上げることを抑制できる。
【0009】
上記の変速機において、第1転動体は玉であり、第1軸軌道面は、第1軸の外周面の周方向に延びる溝であり、第1軸は、第1軸軌道面が設けられる部分である軌道面形成部と、軌道面形成部と第1出力ギヤとの間の部分である中間部とを含み、中間部の外径は、軌道面形成部の外径よりも大きくてもよい。この場合、この変速機は、第1軸における第1ギヤ周りの剛性を向上させることができる。
【0010】
上記の変速機において、第1軸軌道面の溝における第1軸の軸方向の形状は、軌道溝仮想円に沿った円弧状を呈し、中間部及び第1出力ギヤは、軌道溝仮想円に干渉しなくてもよい。この場合、この変速機は、中間部及び第1出力ギヤに干渉することなく、第1転動体である玉を第1軸軌道面である溝内に適切に配置することができる。
【0011】
上記の変速機は、第1軸の軸方向において、第1外輪と中間部との間には、予め定められた基準長さ以上の隙間が設けられていてもよい。この場合、この変速機は、第1軸の回転時に、第1転動体である玉が第1軸の軸方向に移動したとしても、第1転動体である玉が中間部に干渉することを抑制できる。
【0012】
上記の変速機は、複数の転動体のそれぞれを転動自在に保持する保持器を更に備え、保持器は、第1軸の軸方向において、第1外輪の端部から外側に突出していてもよい。ここで、内輪、外輪、複数の転動体、及び転動体を保持する保持器を備える一般的な軸受は、これらが予め組み立てられた状態で持ち運ばれ、変速機に組み付けられる。このような軸受では、持ち運び時に保持器が外部から衝撃等を受けて破損しないように、軸方向において内輪及び外輪から保持器が飛び出さない構成となっている。しかしながら、本願の変速機では、内輪、外輪、複数の転動体、及び保持器が組み立てられた状態の一般的な軸受の構成を有しておらず、持ち運び時に保持器の破損を防止するための構造の制約を受けない。このため、この変速機は、保持器が受ける制約を抑制することができ、保持器の設計自由度を高めることができる。
【0013】
上記の変速機において、第1軸の内部には、第1軸の軸方向に沿って延びる第1油路が設けられており、さらに、第1軸には、第1油路と第1軸の外周面とに連通する第1油孔が設けられており、第1油孔における第1軸の外周面における開口部の少なくとも一部は、第1軸の径方向において、第1外輪の内周面に対向していてもよい。この場合、この変速機は、第1軸軌道面及び第1外輪軌道面への潤滑油の供給性能を向上させることができる。
【0014】
上記の変速機において、第1油孔は、第1軸の径方向に沿って延在すると共に、第1軸の軸方向において、第1軸軌道面よりも第1油路の油流れ方向の上流側に設けられていてもよい。この場合、この変速機では、第1軸軌道面等への潤滑油の供給経路を短くすることができ、潤滑油をより一層適切に供給することができる。
【0015】
上記の変速機において、第1外輪の外周面と第1支持部との間には、第1外輪を囲むように配置されたOリングが設けられていてもよい。この場合、この変速機は、第1外輪が回転荷重を受けたり振れ回りすることによるクリープの発生を抑制できる。
【0016】
上記の変速機において、第1外輪の外周面には、第1外輪の外周面よりも低摩擦な被膜が施されていてもよい。この場合、この変速機は、第1外輪が回転荷重を受けたり振れ回りすることによるクリープの発生を抑制できる。
【0017】
上記の変速機は、第1軸ユニットから動力が伝達される第2軸ユニットを更に備え、第2軸ユニットは、外周面に第2軸軌道面を有する第2軸と、第2軸に設けられ、第1出力ギヤに噛み合うと共に、第2軸と一体回転する第2入力ギヤと、第2軸に設けられ、第2軸と一体回転する第2出力ギヤと、第2軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、第1軸の回転軸と第2軸の回転軸とは互いに並行であってもよい。この場合、この変速機では、第1軸ユニットから動力が伝達される第2軸が、第2転動体及び第2外輪を介して第2支持部に回転可能に支持される。つまり、第2軸は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この変速機は、第2軸を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等による第2軸の支持精度の低下を抑制できる。従って、この変速機では、第1軸ユニットから動力が伝達される第2軸(回転軸)を安定して回転可能に支持することができる。
【0018】
上記の変速機において、第2転動体は円すいころであり、第2軸軌道面は、円すい台形を呈し、第2軸は、円すい台形の第2軸軌道面の小径側端部に隣接するように設けられた第2小鍔部を更に有し、第2軸の内部には、第2軸の軸方向に沿って延びる第2油路が設けられており、さらに、第2軸には、第2油路と第2小鍔部の外周面とに連通する第2油孔が設けられていてもよい。この場合、この変速機は、第2軸を円すいころ軸受の構造によって回転可能に支持する。そして、この変速機は、第2小鍔部の外周面から第2軸軌道面等に潤滑油を供給することができると共に、円すいころ軸受が持つポンプ作用によってより一層好適に潤滑油を供給することができる。
【0019】
上記の変速機において、第2転動体は玉であり、第2軸軌道面は、第2軸の外周面の周方向に延びる溝であり、第2軸の内部には、第2軸の軸方向に沿って延びる第2油路が設けられており、さらに、第2軸には、第2油路と第2軸の外周面とに連通する第2油孔が設けられており、第2油孔における第2軸の外周面に開口する開口部は、第2軸軌道面に隣接していてもよい。この場合、この変速機は、第2油孔を介して、第2軸軌道面等に対して適切に潤滑油を供給することができる。
【0020】
上記の変速機において、第2転動体は円すいころであり、第2軸軌道面は、円すい台形を呈し、第2軸には、円すい台形の第2軸軌道面の小径側端部に隣接する小鍔部が設けられていなくてもよい。この場合、この変速機では、第2軸ユニットの各部の組付け性を向上させることができる。
【0021】
上記の変速機において、第2軸ユニットから動力が伝達されるデファレンシャルギヤユニットを更に備え、デファレンシャルギヤユニットは、外周面に第3軸軌道面を有するデファレンシャルケースと、デファレンシャルケースに設けられ、第2出力ギヤに噛み合うと共に、デファレンシャルケースと一体回転する第3入力ギヤと、デファレンシャルケース内に設けられた差動機構と、デファレンシャルケースを支持する第3支持部に取り付けられ、第3軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第3外輪軌道面を有する第3外輪と、第3軸軌道面と第3外輪軌道面との間に配置された複数の第3転動体と、を有し、第2軸の回転軸とデファレンシャルケースの回転軸とは互いに並行であってもよい。この場合、第2軸ユニットから動力が伝達されるデファレンシャルケースが、第3転動体及び第3外輪を介して第3支持部に回転可能に支持される。つまり、デファレンシャルケースは、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この変速機は、デファレンシャルケースを支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等によるデファレンシャルケースの支持精度の低下を抑制できる。従って、この変速機では、第2軸ユニットから動力が伝達されるデファレンシャルケース(回転軸)を安定して回転可能に支持することができる。
【0022】
上記の変速機において、第3転動体は円すいころであり、第3軸軌道面は、円すい台形を呈し、デファレンシャルケースは、円すい台形の第3軸軌道面の小径側端部に隣接するように設けられた第3小鍔部を更に有し、デファレンシャルケースの内部には、第3油路が設けられており、さらに、デファレンシャルケースには、第3油路と第3小鍔部の外周面とに連通する第3油孔が設けられていてもよい。この場合、この変速機は、デファレンシャルケースを円すいころ軸受の構造によって回転可能に支持する。そして、この変速機は、第3小鍔部の外周面から第3軸軌道面等に潤滑油を供給することができると共に、円すいころ軸受が持つポンプ作用によってより一層好適に潤滑油を供給することができる。
【0023】
上記の変速機において、第3転動体は円すいころであり、第3軸軌道面は、円すい台形を呈し、デファレンシャルケースには、円すい台形の第3軸軌道面の小径側端部に隣接する小鍔部が設けられていなくてもよい。この場合、この変速機では、デファレンシャルギヤユニットの各部の組付け性を向上させることができる。
【0024】
上記の変速機は、駆動ユニットを更に備え、駆動ユニットは、駆動機構と、外周面に第4軸軌道面を有し、駆動機構によって回転駆動されると共に第1軸に接続された駆動軸と、駆動軸を支持する第4支持部に取り付けられ、第4軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第4外輪軌道面を有する第4外輪と、第4軸軌道面と第4外輪軌道面との間に配置された複数の第4転動体と、を有していてもよい。この場合、駆動ユニットの駆動軸が、第4転動体及び第4外輪を介して第4支持部に回転可能に支持される。つまり、駆動軸は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この変速機は、駆動軸を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等による駆動軸の支持精度の低下を抑制できる。従って、この変速機では、駆動ユニットを備える場合であっても、駆動ユニットの駆動軸(回転軸)を安定して回転可能に支持することができる。
【0025】
上記の変速機において、駆動軸の内部には、駆動軸の軸方向に沿って延びる第4油路が設けられており、さらに、駆動軸には、第4油路と駆動軸の外周面とに連通する第4油孔が設けられており、第4油孔における駆動軸の外周面に開口する開口部は、第4軸軌道面に隣接していてもよい。この場合、この変速機は、第4油孔を介して、第4軸軌道面等に対して適切に潤滑油を供給することができる。
【0026】
上記の変速機は、駆動ユニットを更に備え、駆動ユニットは、駆動機構と、内周面に第4軸軌道面を有し、駆動機構によって回転駆動されると共に第1軸に接続された駆動軸と、駆動軸を第4軸軌道面の内側から支持する第4支持部の外周に取り付けられ、第4軸軌道面の内側に設けられると共に、外周面に第4内輪軌道面を有する第4内輪と、第4軸軌道面と第4内輪軌道面との間に配置された複数の第4転動体と、を有すしていてもよい。この場合、駆動ユニットの駆動軸が、第4転動体及び第4内輪を介して第4支持部に回転可能に支持される。つまり、駆動軸は、軸受の外輪の機能を兼ねている。このように、この変速機は、駆動軸を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等による駆動軸の支持精度の低下を抑制できる。従って、この変速機では、駆動ユニットを備える場合であっても、駆動ユニットの駆動軸(回転軸)を安定して回転可能に支持することができる。
【0027】
上記の変速機において、第1出力ギヤの歯数、及び第1転動体の個数の少なくともいずれかが素数であってもよい。上記の変速機において、第1出力ギヤの歯数、第1転動体の個数、第2入力ギヤの歯数、第2出力ギヤの歯数、及び第2転動体の個数の少なくともいずれかが素数であってもよい。上記の変速機において、第1出力ギヤの歯数、第1転動体の個数、第2入力ギヤの歯数、第2出力ギヤの歯数、第2転動体の個数、第3入力ギヤの歯数、及び第3転動体の個数の少なくともいずれかが素数であってもよい。上記の変速機において、第1出力ギヤの歯数、第1転動体の個数、及び第4転動体の個数の少なくともいずれかが素数であってもよい。これらの場合、変速機は、各部の共振による振れを低減することができる。
【0028】
本発明の第2態様に係る変速機は、駆動ユニットの駆動軸に接続された第1軸ユニットから動力が伝達される第2軸ユニットを備え、第2軸ユニットは、外周面に第2軸軌道面を有する第2軸と、第2軸に設けられ、第1軸ユニットに設けられた第1出力ギヤに噛み合うと共に、第2軸と一体回転する第2入力ギヤと、第2軸に設けられ、第2軸と一体回転する第2出力ギヤと、第2軸を支持する第2支持部に取り付けられ、第2軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第2外輪軌道面を有する第2外輪と、第2軸軌道面と第2外輪軌道面との間に配置された複数の第2転動体と、を有し、第1軸ユニットの第1軸の回転軸と第2軸の回転軸とは互いに並行である。
【0029】
この変速機では、第1軸ユニットから動力が伝達される第2軸が、第2転動体及び第2外輪を介して第2支持部に回転可能に支持される。つまり、第2軸は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この変速機は、第2軸を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等による第2軸の支持精度の低下を抑制できる。従って、この変速機では、第1軸ユニットから動力が伝達される第2軸(回転軸)を安定して回転可能に支持することができる。
【0030】
本発明の第3態様に係る変速機は、駆動ユニットの駆動軸に接続された第1軸ユニットから、第2軸ユニットを介して動力が伝達されるデファレンシャルギヤユニットを備え、デファレンシャルギヤユニットは、外周面に第3軸軌道面を有するデファレンシャルケースと、デファレンシャルケースに設けられ、第2軸ユニットに設けられた第2出力ギヤに噛み合うと共に、デファレンシャルケースと一体回転する第3入力ギヤと、デファレンシャルケース内に設けられた差動機構と、デファレンシャルケースを支持する第3支持部に取り付けられ、第3軸軌道面を囲むように設けられると共に、内周面に第3外輪軌道面を有する第3外輪と、第3軸軌道面と第3外輪軌道面との間に配置された複数の第3転動体と、を有し、第1軸ユニットの第1軸の回転軸と第2軸ユニットの第2軸の回転軸とデファレンシャルケースの回転軸とは互いに並行である。
【0031】
この変速機では、第2軸ユニットから動力が伝達されるデファレンシャルケースが、第3転動体及び第3外輪を介して第3支持部に回転可能に支持される。つまり、デファレンシャルケースは、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この変速機は、デファレンシャルケースを支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等によるデファレンシャルケースの支持精度の低下を抑制できる。従って、この変速機では、第2軸ユニットから動力が伝達されるデファレンシャルケース(回転軸)を安定して回転可能に支持することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の種々の態様によれば、回転軸を安定して回転可能に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、実施形態に係る減速機の主要部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のインプットギヤユニット周りの拡大断面図である。
【
図3】
図3は、第1インプットシャフト軌道面及び第2インプットシャフト軌道面周りの拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のカウンターギヤユニット周りの拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図1のデファレンシャルギヤユニット周りの拡大断面図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第3変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
【
図10】
図10は、第4変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
【
図11】
図11は、第5変形例に係るインプットギヤユニットの拡大断面図である。
【
図12】
図12は、第1変形例に係るカウンターギヤユニットの拡大断面図である。
【
図13】
図13は、第2変形例に係るカウンターギヤユニットの拡大断面図である。
【
図14】
図14は、第3変形例に係るカウンターギヤユニットの拡大断面図である。
【
図15】
図15は、第1変形例に係るデファレンシャルギヤユニットの拡大断面図である。
【
図16】
図16は、第2変形例に係るデファレンシャルギヤユニットの拡大断面図である。
【
図17】
図17は、第1変形例に係る駆動ユニットの拡大断面図である。
【
図18】
図18は、第2変形例に係る駆動ユニットの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下では、本発明に係る変速機として、駆動ユニットの回転速度を減速する減速機を用いて説明する。
【0035】
図1に示されるように、減速機(変速機)1は、インプットギヤユニット(第1軸ユニット)10、カウンターギヤユニット(第2軸ユニット)20、デファレンシャルギヤユニット30、及び駆動ユニット40を備えている。駆動ユニット40は、電動モータを備えている。本実施形態における減速機1は、一例として、駆動ユニット40を有するEV(Electric Vehicle)用3軸並行減速機として構成されている。減速機1は、
図1では省略されているが、インプットギヤユニット10等の各機構を収容する筐体を備えている。
【0036】
[インプットギヤユニットの構成]
インプットギヤユニット10は、駆動ユニット40のロータシャフト42に接続される。つまり、インプットギヤユニット10には、駆動ユニット40のロータシャフト42の回転が直接伝達される。より詳細には、インプットギヤユニット10は、
図2に示されるように、インプットシャフト(第1軸)11、インプットシャフト出力ギヤ(第1出力ギヤ)12、第1インプットシャフト外輪(第1外輪)13、複数の転動体(第1転動体)14、第1インプットシャフト保持器(保持器)15、第2インプットシャフト外輪(第1外輪)16、複数の転動体(第1転動体)17、及び第2インプットシャフト保持器(保持器)18を備えている。
【0037】
インプットシャフト11は、駆動ユニット40のロータシャフト42に接続される。ここでは、インプットシャフト11において、ロータシャフト42に接続される側の端部の外周面には、スプライン11sが形成されている。インプットシャフト11は、スプライン11sによってロータシャフト42とスプライン結合する。また、インプットシャフト11は、外周面に、第1インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面)K11及び第2インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面)K12を有している。
【0038】
第1インプットシャフト軌道面K11は、インプットシャフト11におけるスプライン11sが形成された側の端部に対して反対側の端部近傍の外周面に設けられている。第2インプットシャフト軌道面K12は、インプットシャフト11におけるスプライン11sの近傍の外周面に設けられている。第1インプットシャフト軌道面K11及び第2インプットシャフト軌道面K12は、インプットシャフト11の外周面の周方向に延びる溝である。
【0039】
インプットシャフト出力ギヤ12は、インプットシャフト11に設けられ、インプットシャフト11と一体回転する。インプットシャフト出力ギヤ12は、第1インプットシャフト軌道面K11と第2インプットシャフト軌道面K12との間の位置に設けられている。本実施形態においてインプットシャフト出力ギヤ12は、インプットシャフト11と一体に設けられている。インプットシャフト出力ギヤ12は、カウンターギヤユニット20に動力を出力する。
【0040】
第1インプットシャフト外輪13は、インプットシャフト11を支持するインプットシャフト支持部(第1支持部)C1に取り付けられている。なお、インプットシャフト支持部C1は、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1インプットシャフト外輪13は、第1インプットシャフト軌道面K11を囲むように設けられている。第1インプットシャフト外輪13は、インプットシャフト支持部C1に取り付けられる外周面13a、及びインプットシャフト11の外周面(第1インプットシャフト軌道面K11)に対向する内周面13bを有している。
【0041】
第1インプットシャフト外輪13は、第1インプットシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面)L11を内周面13bに有している。第1インプットシャフト外輪軌道面L11は、第1インプットシャフト外輪13の内周面13bの周方向に延びる溝である。
【0042】
複数の転動体14は、インプットシャフト11の第1インプットシャフト軌道面K11と、第1インプットシャフト外輪13の第1インプットシャフト外輪軌道面L11との間に配置されている。転動体14は、球状を呈する玉である。第1インプットシャフト保持器15は、インプットシャフト11の外周面と第1インプットシャフト外輪13の内周面13bとの間において、複数の転動体14のそれぞれを転動自在に保持する。
【0043】
第2インプットシャフト外輪16は、インプットシャフト11を支持するインプットシャフト支持部C1に取り付けられている。第2インプットシャフト外輪16は、第2インプットシャフト軌道面K12を囲むように設けられている。第2インプットシャフト外輪16は、インプットシャフト支持部C1に取り付けられる外周面16a、及びインプットシャフト11の外周面(第2インプットシャフト軌道面K12)に対向する内周面16bを有している。
【0044】
第2インプットシャフト外輪16は、第2インプットシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面)L12を内周面16bに有している。第2インプットシャフト外輪軌道面L12は、第2インプットシャフト外輪16の内周面16bの周方向に延びる溝である。
【0045】
複数の転動体17は、インプットシャフト11の第2インプットシャフト軌道面K12と、第2インプットシャフト外輪16の第2インプットシャフト外輪軌道面L12との間に配置されている。転動体17は、球状を呈する玉である。第2インプットシャフト保持器18は、インプットシャフト11の外周面と第2インプットシャフト外輪16の内周面16bとの間において、複数の転動体17のそれぞれを転動自在に保持する。
【0046】
このように、インプットシャフト11は、第1インプットシャフト軌道面K11の部位と第2インプットシャフト軌道面K12の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態におけるインプットギヤユニット10は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態におけるインプットギヤユニット10では、インプットシャフト11が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0047】
また、本実施形態におけるインプットギヤユニット10では、第1インプットシャフト外輪13、転動体14、及びインプットシャフト11の第1インプットシャフト軌道面K11により、深溝玉軸受が構成されている。同様に、第2インプットシャフト外輪16、転動体17、及びインプットシャフト11の第2インプットシャフト軌道面K12により、深溝玉軸受が構成されている。
【0048】
本実施形態におけるインプットシャフト11は、第1軌道面形成部(軌道面形成部)11aと、第1中間部(中間部)11bと、を含んでいる。第1軌道面形成部11aは、インプットシャフト11のうち、第1インプットシャフト軌道面K11が設けられる部分である。第1中間部11bは、インプットシャフト11のうち、第1軌道面形成部11aとインプットシャフト出力ギヤ12が設けられる部分との間の部分である。第1中間部11bの外径は、第1軌道面形成部11aの外径よりも大きい。すなわち、第1軌道面形成部11aと第1中間部11bとの接続部分は、段差部となっている。第1中間部11bの半径と第1軌道面形成部11aの半径との差である段差高さD1は、予め定められた高さ以上であるとよい。
【0049】
同様に、本実施形態におけるインプットシャフト11は、第2軌道面形成部(軌道面形成部)11cと、第2中間部(中間部)11dと、を含んでいる。第2軌道面形成部11cは、インプットシャフト11のうち、第2インプットシャフト軌道面K12が設けられる部分である。第2中間部11dは、インプットシャフト11のうち、第2軌道面形成部11cとインプットシャフト出力ギヤ12が設けられる部分との間の部分である。第2中間部11dの外径は、第2軌道面形成部11cの外径よりも大きい。すなわち、第2軌道面形成部11cと第2中間部11dとの接続部分は、段差部となっている。第2中間部11dの半径と第2軌道面形成部11cの半径との差である段差高さD1は、予め定められた高さ以上であるとよい。
【0050】
インプットシャフト11の軸方向(延在方向)において、第1インプットシャフト外輪13と第1中間部11bとの間には、予め定められた基準長さD2以上の隙間が設けられている。同様に、インプットシャフト11の軸方向において、第2インプットシャフト外輪16と第2中間部11dとの間には、予め定められた基準長さD2以上の隙間が設けられている。
【0051】
第1インプットシャフト保持器15は、インプットシャフト11の軸方向において、第1インプットシャフト外輪13の端部から外側に突出している。本実施形態において、第1インプットシャフト保持器15は、インプットシャフト11の軸方向における第1インプットシャフト外輪13の両端部のうち、インプットシャフト出力ギヤ12側とは反対側の端部から突出している。この第1インプットシャフト保持器15の突出量D3は、予め定められた基準突出量以下となっている。
【0052】
同様に、第2インプットシャフト保持器18は、インプットシャフト11の軸方向において、第2インプットシャフト外輪16の端部から外側に突出している。本実施形態において、第2インプットシャフト保持器18は、インプットシャフト11の軸方向における第2インプットシャフト外輪16の両端部のうち、インプットシャフト出力ギヤ12側とは反対側の端部から突出している。この第2インプットシャフト保持器18の突出量D3は、予め定められた基準突出量以下となっている。
【0053】
図3に示されるように、第1インプットシャフト軌道面K11の溝におけるインプットシャフト11の軸方向の形状は、軌道溝仮想円S1に沿った円弧状を呈している。第1中間部11b及びインプットシャフト出力ギヤ12は、軌道溝仮想円S1に干渉しない。同様に、第2インプットシャフト軌道面K12の溝におけるインプットシャフト11の軸方向の形状は、軌道溝仮想円S2に沿った円弧状を呈している。第2中間部11d及びインプットシャフト出力ギヤ12は、軌道溝仮想円S2に干渉しない。なお、
図3では、軌道溝仮想円S1及びS2を示すため、転動体14、第1インプットシャフト保持器15、転動体17、及び第2インプットシャフト保持器18が省略されている。
【0054】
[カウンターギヤユニットの構成]
図1に示されるように、カウンターギヤユニット20は、インプットギヤユニット10から動力が伝達される。より詳細には、カウンターギヤユニット20は、
図4に示されるように、カウンターシャフト(第2軸)21、カウンターシャフト入力ギヤ(第2入力ギヤ)22、カウンターシャフト出力ギヤ(第2出力ギヤ)23、第1カウンターシャフト外輪(第2外輪)24、複数の転動体(第2転動体)25、第1カウンターシャフト保持器26、第2カウンターシャフト外輪(第2外輪)27、複数の転動体(第2転動体)28、及び第2カウンターシャフト保持器29を備えている。
【0055】
カウンターシャフト21には、カウンターシャフト入力ギヤ22を介してインプットギヤユニット10から動力が伝達される。カウンターシャフト21の回転軸A2とインプットシャフト11の回転軸A1とは互いに並行である(
図1参照)。カウンターシャフト21は、外周面に、第1カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面)K21及び第2カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面)K22を有している。
【0056】
第1カウンターシャフト軌道面K21は、カウンターシャフト21の一方の端部近傍の外周面に設けられている。第1カウンターシャフト軌道面K21は、カウンターシャフト21の一方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。第2カウンターシャフト軌道面K22は、カウンターシャフト21の他方の端部近傍の外周面に設けられている。第2カウンターシャフト軌道面K22は、カウンターシャフト21の他方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0057】
カウンターシャフト入力ギヤ22は、カウンターシャフト21に設けられ、カウンターシャフト21と一体回転する。カウンターシャフト入力ギヤ22は、第1カウンターシャフト軌道面K21と第2カウンターシャフト軌道面K22との間の位置に設けられている。カウンターシャフト入力ギヤ22は、インプットギヤユニット10のインプットシャフト出力ギヤ12に噛み合う。これにより、カウンターシャフト21には、カウンターシャフト入力ギヤ22を介してインプットギヤユニット10から動力が伝達される。
【0058】
本実施形態においてカウンターシャフト入力ギヤ22は、カウンターシャフト21と別体として設けられている。カウンターシャフト21とカウンターシャフト入力ギヤ22とは、例えばスプライン結合している。この場合、例えば、カウンターシャフト入力ギヤ22がカウンターシャフト21から抜け出ないように、ナット22aによって抜け止めがされていてもよい。
【0059】
インプットギヤユニット10のインプットシャフト出力ギヤ12に設けられた歯数よりも、カウンターシャフト入力ギヤ22に設けられた歯数の方が多い。このため、インプットギヤユニット10からカウンターギヤユニット20に動力が伝達される際に回転速度が減速される。
【0060】
カウンターシャフト出力ギヤ23は、カウンターシャフト21に設けられ、カウンターシャフト21と一体回転する。カウンターシャフト出力ギヤ23は、カウンターシャフト入力ギヤ22と第2カウンターシャフト軌道面K22との間の位置に設けられている。本実施形態においてカウンターシャフト出力ギヤ23は、カウンターシャフト21と一体に設けられている。カウンターシャフト出力ギヤ23は、デファレンシャルギヤユニット30に動力を出力する。
【0061】
第1カウンターシャフト外輪24は、カウンターシャフト21を支持するカウンターシャフト支持部(第2支持部)C2に取り付けられている。なお、カウンターシャフト支持部C2は、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1カウンターシャフト外輪24は、第1カウンターシャフト軌道面K21を囲むように設けられている。第1カウンターシャフト外輪24は、カウンターシャフト支持部C2に取り付けられる外周面24aを有している。第1カウンターシャフト外輪24の内周面には、第1カウンターシャフト軌道面K21に対向する第1カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面)L21が設けられている。第1カウンターシャフト外輪軌道面L21は、カウンターシャフト21の一方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0062】
複数の転動体25は、カウンターシャフト21の第1カウンターシャフト軌道面K21と第1カウンターシャフト外輪24の第1カウンターシャフト外輪軌道面L21との間に配置されている。転動体25は、円すいころである。第1カウンターシャフト保持器26は、カウンターシャフト21の第1カウンターシャフト軌道面K21と第1カウンターシャフト外輪24の第1カウンターシャフト外輪軌道面L21との間において、複数の転動体25のそれぞれを転動自在に保持する。
【0063】
なお、カウンターシャフト21は、第1カウンターシャフト軌道面K21の小径側端部に隣接して設けられた第1カウンターシャフト小鍔部(第2小鍔部)21aと、第1カウンターシャフト軌道面K21の大径側端部に隣接して設けられた第1カウンターシャフト大鍔部21bと、を有している。
【0064】
第2カウンターシャフト外輪27は、カウンターシャフト21を支持するカウンターシャフト支持部(第2支持部)C2に取り付けられている。第2カウンターシャフト外輪27は、第2カウンターシャフト軌道面K22を囲むように設けられている。第2カウンターシャフト外輪27は、カウンターシャフト支持部C2に取り付けられる外周面27aを有している。第2カウンターシャフト外輪27の内周面には、第2カウンターシャフト軌道面K22に対向する第2カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面)L22が設けられている。第2カウンターシャフト外輪軌道面L22は、カウンターシャフト21の他方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0065】
複数の転動体28は、カウンターシャフト21の第2カウンターシャフト軌道面K22と第2カウンターシャフト外輪27の第2カウンターシャフト外輪軌道面L22との間に配置されている。転動体28は、円すいころである。第2カウンターシャフト保持器29は、カウンターシャフト21の第2カウンターシャフト軌道面K22と第2カウンターシャフト外輪27の第2カウンターシャフト外輪軌道面L22との間において、複数の転動体28のそれぞれを転動自在に保持する。
【0066】
なお、カウンターシャフト21は、第2カウンターシャフト軌道面K22の小径側端部に隣接して設けられた第2カウンターシャフト小鍔部21cと、第2カウンターシャフト軌道面K22の大径側端部に隣接して設けられた第2カウンターシャフト大鍔部21dと、を有している。
【0067】
このように、カウンターシャフト21は、第1カウンターシャフト軌道面K21の部位と第2カウンターシャフト軌道面K22の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態におけるカウンターギヤユニット20は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態におけるカウンターギヤユニット20では、カウンターシャフト21が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0068】
また、本実施形態におけるカウンターギヤユニット20では、第1カウンターシャフト外輪24、転動体25、及びカウンターシャフト21の第1カウンターシャフト軌道面K21により、円すいころ軸受が構成されている。同様に、第2カウンターシャフト外輪27、転動体28、及びカウンターシャフト21の第2カウンターシャフト軌道面K22により、円すいころ軸受が構成されている。
【0069】
[デファレンシャルギヤユニットの構成]
図1に示されるように、デファレンシャルギヤユニット30は、カウンターギヤユニット20から動力が伝達される。より詳細には、デファレンシャルギヤユニット30は、
図5に示されるように、デファレンシャルケース31、デファレンシャル入力(第3入力ギヤ)ギヤ32、差動機構33、第1デファレンシャル外輪(第3外輪)34、複数の転動体(第3転動体)35、第1デファレンシャル保持器36、第2デファレンシャル外輪(第3外輪)37、複数の転動体(第3転動体)38、及び第2デファレンシャル保持器39を備えている。
【0070】
デファレンシャルケース31は、デファレンシャル入力ギヤ32を介してカウンターギヤユニット20から動力が伝達される。デファレンシャルケース31の回転軸A3とカウンターギヤユニット20の回転軸A2とは互いに並行である(
図1参照)。デファレンシャルケース31は、差動機構33を収容する収容空間を内部に有している。デファレンシャルケース31は、外周面に、第1デファレンシャル軌道面(第3軸軌道面)K31及び第2デファレンシャル軌道面(第3軸軌道面)K32を有している。
【0071】
第1デファレンシャル軌道面K31は、デファレンシャルケース31の回転軸A3方向における一方の端部近傍の外周面に設けられている。第1デファレンシャル軌道面K31は、デファレンシャルケース31の一方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。第2デファレンシャル軌道面K32は、デファレンシャルケース31の回転軸A3方向における他方の端部近傍の外周面に設けられている。第2デファレンシャル軌道面K32は、デファレンシャルケース31の他方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0072】
デファレンシャル入力ギヤ32は、デファレンシャルケース31に設けられ、デファレンシャルケース31と一体回転する。デファレンシャルケース31は、第1デファレンシャル軌道面K31と第2デファレンシャル軌道面K32との間の位置に設けられている。デファレンシャル入力ギヤ32は、カウンターギヤユニット20のカウンターシャフト出力ギヤ23と噛み合う。これにより、デファレンシャルケース31には、デファレンシャル入力ギヤ32を介してカウンターギヤユニット20から動力が伝達される。本実施形態において、デファレンシャル入力ギヤ32は、デファレンシャルケース31と一体に設けられている。
【0073】
カウンターギヤユニット20のカウンターシャフト出力ギヤ23に設けられた歯数よりも、デファレンシャル入力ギヤ32に設けられた歯数の方が多い。このため、カウンターギヤユニット20からデファレンシャルギヤユニット30に動力が伝達される際に回転速度が減速される。
【0074】
差動機構33は、デファレンシャルケース31の内部に設けられる。差動機構33は、例えば、ピニオンギヤ及びサイドギヤ等を備える車両用デファレンシャルギヤユニットの差動機構である。差動機構33としては、周知の種々の機構を用いることができる。デファレンシャルケース31には、デファレンシャルケース31の回転軸A3方向の両端部に第1差込口h1及び第2差込口h2がそれぞれ設けられている。差動機構33は、第1差込口h1及び第2差込口h2から差し込まれたドライブシャフト等に駆動力を伝達する。なお、第1差込口h1は、環状に延在する第1デファレンシャル軌道面K31の内側に位置している。第2差込口h2は、環状に延在する第2デファレンシャル軌道面K32の内側に位置している。
【0075】
第1デファレンシャル外輪34は、デファレンシャルケース31を支持するデファレンシャル支持部(第3支持部)C3に取り付けられている。なお、デファレンシャル支持部C3は、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1デファレンシャル外輪34は、第1デファレンシャル軌道面K31を囲むように設けられている。第1デファレンシャル外輪34は、デファレンシャル支持部C3に取り付けられる外周面34aを有している。第1デファレンシャル外輪34の内周面には、第1デファレンシャル軌道面K31に対向する第1デファレンシャル外輪軌道面(第3外輪軌道面)L31が設けられている。第1デファレンシャル外輪軌道面L31は、デファレンシャルケース31の一方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0076】
複数の転動体35は、デファレンシャルケース31の第1デファレンシャル軌道面K31と第1デファレンシャル外輪34の第1デファレンシャル外輪軌道面L31との間に配置されている。転動体35は、円すいころである。第1デファレンシャル保持器36は、デファレンシャルケース31の第1デファレンシャル軌道面K31と第1デファレンシャル外輪34の第1デファレンシャル外輪軌道面L31との間において、複数の転動体35のそれぞれを転動自在に保持する。
【0077】
なお、デファレンシャルケース31は、第1デファレンシャル軌道面K31の小径側端部に隣接して設けられた第1デファレンシャル小鍔部31aと、第1デファレンシャル軌道面K31の大径側端部に隣接して設けられた第1デファレンシャル大鍔部31bと、を有している。
【0078】
第2デファレンシャル外輪37は、デファレンシャルケース31を支持するデファレンシャル支持部C3に取り付けられている。第2デファレンシャル外輪37は、第2デファレンシャル軌道面K32を囲むように設けられている。第2デファレンシャル外輪37は、デファレンシャル支持部C3に取り付けられる外周面37aを有している。第2デファレンシャル外輪37の内周面には、第2デファレンシャル軌道面K32に対向する第2デファレンシャル外輪軌道面(第3外輪軌道面)L32が設けられている。第2デファレンシャル外輪軌道面L32は、デファレンシャルケース31の他方の端部側に向って径が小さくなる円すい台形を呈している。
【0079】
複数の転動体38は、デファレンシャルケース31の第2デファレンシャル軌道面K32と第2デファレンシャル外輪37の第2デファレンシャル外輪軌道面L32との間に配置されている。転動体38は、円すいころである。第2デファレンシャル保持器39は、デファレンシャルケース31の第2デファレンシャル軌道面K32と第2デファレンシャル外輪37の第2デファレンシャル外輪軌道面L32との間において、複数の転動体38のそれぞれを転動自在に保持する。
【0080】
なお、デファレンシャルケース31は、第2デファレンシャル軌道面K32の小径側端部に隣接して設けられた第2デファレンシャル小鍔部(第3小鍔部)31cと、第2デファレンシャル軌道面K32の大径側端部に隣接して設けられた第2デファレンシャル大鍔部31dと、を有している。
【0081】
このように、デファレンシャルケース31は、第1デファレンシャル軌道面K31の部位と第2デファレンシャル軌道面K32の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態におけるデファレンシャルギヤユニット30は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態におけるデファレンシャルギヤユニット30では、デファレンシャルケース31が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0082】
また、本実施形態におけるデファレンシャルギヤユニット30では、第1デファレンシャル外輪34、転動体35、及びデファレンシャルケース31の第1デファレンシャル軌道面K31により、円すいころ軸受が構成されている。同様に、第2デファレンシャル外輪37、転動体38、及びデファレンシャルケース31の第2デファレンシャル軌道面K32により、円すいころ軸受が構成されている。
【0083】
[駆動ユニットの構成]
図1に示されるように、駆動ユニット40は、車両の駆動源となる電動モータユニットを構成する。より詳細には、駆動ユニット40は、
図6に示されるように、モータロータ(駆動機構)41、ロータシャフト(駆動軸)42、第1ロータシャフト外輪(第4外輪)43、複数の転動体(第4転動体)44、第1ロータシャフト保持器45、第2ロータシャフト外輪(第4外輪)46、複数の転動体(第4転動体)47、及び第2ロータシャフト保持器48を備えている。
【0084】
モータロータ41は、電動モータのロータを構成する。図示は省略するが、駆動ユニット40は、駆動機構として、電動モータを構成するマグネット等の部品を備えている。また、駆動ユニット40は、インバータ等の電子部品を備えていてもよい。
【0085】
ロータシャフト42は、モータロータ41の中心部分に設けられている。ロータシャフト42は、モータロータ41によって回転駆動される。ロータシャフト42は、駆動ユニット40の駆動力の出力軸となる。ロータシャフト42は、インプットギヤユニット10のインプットシャフト11に接続される。ロータシャフト42の回転軸A4とインプットシャフト11の回転軸A1とは同一軸線上となっている。
【0086】
ここでは、ロータシャフト42において、インプットシャフト11に接続される側の端部の内周面には、スプライン42sが形成されている。ロータシャフト42のスプライン42sとインプットシャフト11のスプライン11sとがスプライン結合することにより、ロータシャフト42とインプットシャフト11とが接続される。また、ロータシャフト42は、外周面に、第1ロータシャフト軌道面(第4軸軌道面)K41及び第2ロータシャフト軌道面(第4軸軌道面)K42を有している。
【0087】
第1ロータシャフト軌道面K41は、ロータシャフト42におけるインプットシャフト11に接続される側の端部近傍の外周面に設けられている。第2ロータシャフト軌道面K42は、ロータシャフト42における第1ロータシャフト軌道面K41とは反対側の端部近傍の外周面に設けられている。第1ロータシャフト軌道面K41及び第2ロータシャフト軌道面K42は、ロータシャフト42の外周面の周方向に延びる溝である。
【0088】
第1ロータシャフト外輪43は、ロータシャフト42を支持するロータシャフト支持部(第4支持部)C4に取り付けられている。なお、ロータシャフト支持部C4は、例えば、インプットギヤユニット10等を収容する筐体の一部分である。第1ロータシャフト外輪43は、第1ロータシャフト軌道面K41を囲むように設けられている。第1ロータシャフト外輪43は、ロータシャフト支持部C4に取り付けられる外周面43a、及びロータシャフト42の外周面(第1ロータシャフト軌道面K41)に対向する内周面43bを有している。
【0089】
第1ロータシャフト外輪43は、第1ロータシャフト外輪軌道面(第4外輪軌道面)L41を内周面43bに有している。第1ロータシャフト外輪軌道面L41は、第1ロータシャフト外輪43の内周面43bの周方向に延びる溝である。
【0090】
複数の転動体44は、ロータシャフト42の第1ロータシャフト軌道面K41と、第1ロータシャフト外輪43の第1ロータシャフト外輪軌道面L41との間に配置されている。転動体44は、球状を呈する玉である。第1ロータシャフト保持器45は、ロータシャフト42の外周面と第1ロータシャフト外輪43の内周面43bとの間において、複数の転動体44のそれぞれを転動自在に保持する。
【0091】
第2ロータシャフト外輪46は、ロータシャフト42を支持するロータシャフト支持部C4に取り付けられている。第2ロータシャフト外輪46は、第2ロータシャフト軌道面K42を囲むように設けられている。第2ロータシャフト外輪46は、ロータシャフト支持部C4に取り付けられる外周面46a、及びロータシャフト42の外周面(第2ロータシャフト軌道面K42)に対向する内周面46bを有している。
【0092】
第2ロータシャフト外輪46は、第2ロータシャフト外輪軌道面(第4外輪軌道面)L42を内周面46bに有している。第2ロータシャフト外輪軌道面L42は、第2ロータシャフト外輪46の内周面46bの周方向に延びる溝である。
【0093】
複数の転動体47は、ロータシャフト42の第2ロータシャフト軌道面K42と、第2ロータシャフト外輪46の第2ロータシャフト外輪軌道面L42との間に配置されている。転動体47は、球状を呈する玉である。第2ロータシャフト保持器48は、ロータシャフト42の外周面と第2ロータシャフト外輪46の内周面46bとの間において、複数の転動体47のそれぞれを転動自在に保持する。
【0094】
このように、ロータシャフト42は、第1ロータシャフト軌道面K41の部位と第2ロータシャフト軌道面K42の部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本実施形態における駆動ユニット40は、軸受の内輪としてのみ機能する部品を有していない。本実施形態における駆動ユニット40では、ロータシャフト42が、軸受の内輪の機能を兼ねている。
【0095】
また、本実施形態における駆動ユニット40では、第1ロータシャフト外輪43、複数の転動体44、及びロータシャフト42の第1ロータシャフト軌道面K41により、円すいころ軸受が構成されている。同様に、第2ロータシャフト外輪46、転動体47、及びロータシャフト42の第2ロータシャフト軌道面K42により、円すいころ軸受が構成されている。
【0096】
[ギヤ歯数及び転動体の個数]
上述した各ギヤの歯数及び転動体の個数は、それぞれ全て素数となっている。具合的には、インプットギヤユニット10におけるインプットシャフト出力ギヤ12の歯数、転動体14及び17の個数、カウンターギヤユニット20におけるカウンターシャフト入力ギヤ22及びカウンターシャフト出力ギヤ23の歯数、転動体25及び28の個数、デファレンシャルギヤユニット30におけるデファレンシャル入力ギヤ32の歯数、転動体35及び38の個数、駆動ユニット40における転動体44及び47の個数は、全て素数となっている。
【0097】
但し、これらの各ギヤの歯数及び転動体の個数のすべてが素数でなくてもよい。これらの各ギヤの歯数及び転動体の個数の少なくともいずれかが素数であればよい。具体的には、例えば、インプットギヤユニット10におけるインプットシャフト出力ギヤ12の歯数、転動体14及び17の個数の少なくともいずれかが素数であればよい。また、例えば、インプットギヤユニット10におけるインプットシャフト出力ギヤ12の歯数、転動体14及び17の個数、カウンターギヤユニット20におけるカウンターシャフト入力ギヤ22及びカウンターシャフト出力ギヤ23の歯数、転動体25及び28の個数の少なくともいずれかが素数であればよい。
【0098】
あるいは、例えば、インプットギヤユニット10におけるインプットシャフト出力ギヤ12の歯数、転動体14及び17の個数、カウンターギヤユニット20におけるカウンターシャフト入力ギヤ22及びカウンターシャフト出力ギヤ23の歯数、転動体25及び転動体28の個数、デファレンシャルギヤユニット30におけるデファレンシャル入力ギヤ32の歯数、転動体35及び38の個数の個数の少なくともいずれかが素数であればよい。また、例えば、インプットギヤユニット10におけるインプットシャフト出力ギヤ12の歯数、転動体14及び17の個数、駆動ユニット40における転動体44及び47の個数の少なくともいずれかが素数であればよい。
【0099】
以上のように、減速機1では、駆動ユニット40のロータシャフト42に接続された回転軸であるインプットシャフト11が、転動体14及び第1インプットシャフト外輪13を介して並びに転動体17及び第2インプットシャフト外輪16を介して、インプットシャフト支持部C1に回転可能に支持される。つまり、インプットシャフト11は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この減速機1は、インプットシャフト11を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等によるインプットシャフト11の支持精度の低下を抑制できる。また、減速機1では、インプットシャフト11が軸受の内輪の機能を兼ねているため、内輪を別に備える場合に比べて、軸受周りの径方向の大きさを小さくすることができる。そして、この減速機1では、インプットシャフト11の傾きも抑制できる。従って、この減速機1では、駆動ユニット40のロータシャフト42に接続され、最も高速で回転するインプットシャフト11を安定して回転可能に支持することができる。
【0100】
減速機1のインプットシャフト11において、第1中間部11bの外径は、第1インプットシャフト軌道面K11が設けられる第1軌道面形成部11aの外径よりも大きい。同様に、第2中間部11dの外径は、第2インプットシャフト軌道面K12が設けられる第2軌道面形成部11cの外径よりも大きい。この場合、減速機1は、インプットシャフト11におけるインプットシャフト出力ギヤ12周りの剛性を向上させることができる。
【0101】
図3に示されるように、インプットシャフト11に設けられた第1インプットシャフト軌道面K11は、軌道溝仮想円S1に沿った円弧状を呈している。インプットシャフト11の第1中間部11b及びインプットシャフト出力ギヤ12は、軌道溝仮想円S1に干渉しない。同様に、インプットシャフト11に設けられた第2インプットシャフト軌道面K12は、軌道溝仮想円S2に沿った円弧状を呈している。インプットシャフト11の第2中間部11d及びインプットシャフト出力ギヤ12は、軌道溝仮想円S2に干渉しない。この場合、減速機1は、第1中間部11b及びインプットシャフト出力ギヤ12に干渉することなく、転動体14を第1インプットシャフト軌道面K11である溝内に適切に配置することができる。また、減速機1は、第2中間部11d及びインプットシャフト出力ギヤ12に干渉することなく、転動体17を第2インプットシャフト軌道面K12である溝内に適切に配置することができる。
【0102】
インプットシャフト11において、第1中間部11bと第1インプットシャフト外輪13との間には、基準長さD2以上の隙間が設けられている。この場合、インプットシャフト11の回転時に、転動体14がインプットシャフト11の軸方向に移動したとしても、転動体14が第1中間部11bに干渉することを抑制できる。同様に、インプットシャフト11において、第2中間部11dと第2インプットシャフト外輪16との間には、基準長さD2以上の隙間が設けられている。この場合、インプットシャフト11の回転時に、転動体17がインプットシャフト11の軸方向に移動したとしても、転動体17が第2中間部11dに干渉することを抑制できる。
【0103】
インプットギヤユニット10において第1インプットシャフト保持器15は、第1インプットシャフト外輪13の端部から外側に突出している。同様に、第2インプットシャフト保持器18は、第2インプットシャフト外輪16の端部から外側に突出している。ここで、内輪、外輪、複数の転動体、及び転動体を保持する保持器を備える一般的な軸受は、これらが予め組み立てられた状態で持ち運ばれ、減速機に組み付けられる。このような軸受では、持ち運び時に保持器が外部から衝撃等を受けて破損しないように、軸方向において内輪及び外輪から保持器が飛び出さない構成となっている。しかしながら、本実施形態における減速機1では、内輪、外輪、複数の転動体、及び保持器が組み立てられた状態の一般的な軸受の構成を有しておらず、持ち運び時に保持器の破損を防止するための構造の制約を受けない。このため、この減速機1は、第1インプットシャフト保持器15及び第2インプットシャフト保持器18が受ける制約を抑制することができ、第1インプットシャフト保持器15及び第2インプットシャフト保持器18の設計自由度を高めることができる。
【0104】
また、減速機1は、カウンターギヤユニット20を備えている。そして、減速機1では、インプットギヤユニット10から動力が伝達されるカウンターシャフト21が、転動体25及び第1カウンターシャフト外輪24を介して並びに転動体28及び第2カウンターシャフト外輪27を介して、カウンターシャフト支持部C2に回転可能に支持される。つまり、カウンターシャフト21は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この減速機1は、カウンターシャフト21を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等によるカウンターシャフト21の支持精度の低下を抑制できる。従って、この減速機1では、インプットシャフト11と同様に、インプットギヤユニット10から動力が伝達されるカウンターシャフト21を安定して回転可能に支持することができる。
【0105】
また、減速機1は、デファレンシャルギヤユニット30を備えている。そして、減速機1では、カウンターギヤユニット20から動力が伝達されるデファレンシャルケース31が、転動体35及び第1デファレンシャル外輪34を介して並びに転動体38及び第2デファレンシャル外輪37を介して、デファレンシャル支持部C3に回転可能に支持される。つまり、デファレンシャルケース31は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この減速機1は、デファレンシャルケース31を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等によるデファレンシャルケース31の支持精度の低下を抑制できる。従って、この減速機1では、インプットシャフト11等と同様に、カウンターギヤユニット20から動力が伝達されるデファレンシャルケース31を安定して回転可能に支持することができる。
【0106】
また、減速機1は、駆動ユニット40を備えている。そして、減速機1では、駆動ユニット40のロータシャフト42が、転動体44及び第1ロータシャフト外輪43を介して並びに転動体47及び第2ロータシャフト外輪46を介して、ロータシャフト支持部C4に回転可能に支持される。つまり、ロータシャフト42は、軸受の内輪の機能を兼ねている。このように、この減速機1は、ロータシャフト42を支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等によるロータシャフト42の支持精度の低下を抑制できる。従って、この減速機1では、インプットシャフト11等と同様に、駆動ユニット40を備える場合であっても、駆動ユニット40のロータシャフト42を安定して回転可能に支持することができる。
【0107】
上述した各ギヤの歯数及び転動体の個数は、それぞれ全て素数となっている、又は少なくとも一部が素数となっている。この場合、減速機1は、各部の共振による振れを低減することができる。
【0108】
[インプットギヤユニットの変形例]
次に、本実施形態に係る減速機1の変形例について説明する。以下では、上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。まず、インプットギヤユニット10の種々の変形例について説明する。
【0109】
[インプットギヤユニットの第1変形例]
図7に示されるように、第1変形例に係るインプットギヤユニット(第1軸ユニット)10Aは、実施形態に係るインプットギヤユニット10と異なり、片側のみが軸受とインプットシャフトとが一体化された構成となっている。より詳細には、インプットギヤユニット10Aは、インプットシャフト(第1軸)11A、インプットシャフト出力ギヤ12、第2インプットシャフト外輪16、転動体17、第2インプットシャフト保持器18、及び軸受100を備えている。
【0110】
軸受100は、深溝玉軸受である。軸受100は、外輪101、内輪102、複数の転動体103、及び保持器104を有している。転動体103は、球状の玉である。転動体103は、外輪101の外輪軌道面と内輪102の内輪軌道面との間に配置されている。保持器104は、複数の転動体103のそれぞれを転動自在に保持する。内輪102は、第1軌道面形成部11aにおけるスプライン11sが設けられた側の端部に対して反対側の端部近傍の外周面に取り付けられている。外輪101の外周面は、上述したインプットシャフト支持部C1に取り付けられる。
【0111】
この場合であっても、インプットシャフト11Aにおいて第2インプットシャフト軌道面K12が設けられた部分は、インプットシャフト11Aが内輪の機能を兼ねている。このため、インプットギヤユニット10Aは、インプットシャフト11Aを安定して回転可能に支持することができる。
【0112】
[インプットギヤユニットの第2変形例]
図8に示されるように、第2変形例に係るインプットギヤユニット(第1軸ユニット)10Bは、第1インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面)K11B及び第2インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面)K12Bの形状に特徴を有している。より詳細には、インプットギヤユニット10Bは、
図2に示される実施形態に係るインプットギヤユニット10のインプットシャフト11に代えて、インプットシャフト(第1軸)11Bを備えている。
【0113】
インプットシャフト11Bは、外周面に、第1インプットシャフト軌道面K11B及び第2インプットシャフト軌道面K12Bを有している。第1インプットシャフト軌道面K11B及び第2インプットシャフト軌道面K12Bは、それぞれ、インプットシャフト11Bの外周面の周方向の延びる溝である。
【0114】
第1インプットシャフト軌道面K11Bを構成する溝において、インプットシャフト11Bの外周面の周方向に延びる一対の溝の淵部分を、溝淵部F11a及び溝淵部F11bとする。溝淵部F11bは、溝淵部F11aよりもインプットシャフト出力ギヤ12に近い側の淵部分である。インプットシャフト出力ギヤ12に近い側の溝淵部F11bは、溝淵部F11aよりも大径となっている。つまり、第1インプットシャフト軌道面K11Bにおいて、インプットシャフト出力ギヤ12に近い側の肩部分(溝淵部F11b)が、他方の肩部分(溝淵部F11a)よりも高さが高い。
【0115】
また、第2インプットシャフト軌道面K12Bを構成する溝において、インプットシャフト11Bの外周面の周方向に延びる一対の溝の淵部分を、溝淵部F12a及び溝淵部F12bとする。溝淵部F12bは、溝淵部F12aよりもインプットシャフト出力ギヤ12に近い側の淵部分である。インプットシャフト出力ギヤ12に近い側の溝淵部F12bは、溝淵部F12aよりも大径となっている。つまり、第2インプットシャフト軌道面K12Bにおいて、インプットシャフト出力ギヤ12に近い側の肩部分(溝淵部F12b)が、他方の肩部分(溝淵部F12a)よりも高さが高い。
【0116】
このように、インプットギヤユニット10Bは、転動体14及び17がインプットシャフト11Bの軸方向の荷重を受ける場合であっても、荷重を受ける側の溝淵部の高さ(溝淵部F11b及びF12bの高さ)を他方より高くすることにより、転動体14及び17が溝(第1インプットシャフト軌道面K11B及び第2インプットシャフト軌道面K12B)を乗り上げることを抑制できる。
【0117】
[インプットギヤユニットの第3変形例]
図9に示されるように、第3変形例に係るインプットギヤユニット(第1軸ユニット)10Cは、
図2に示される実施形態に係るインプットギヤユニット10のインプットシャフト11に代えて、インプットシャフト(第1軸)11Cを備えている。
【0118】
このインプットシャフト11Cの内部には、インプットシャフト11Cの軸方向に沿って延びる第1油路M11が設けられている。第1油路M11には、図示しない油圧供給源から潤滑油が供給されている。さらに、インプットシャフト11Cには、第1油路M11とインプットシャフト11Cの外周面とに連通する第1油孔M12が設けられている。なお、
図9では第1油孔M12が1つのみ示されているが、インプットシャフト11Cの回転方向の異なる位置に第1油孔M12が2以上設けられていてもよい。第1油孔M12におけるインプットシャフト11Cの外周面における開口部M12aの少なくとも一部は、インプットシャフト11Cの径方向において、第1インプットシャフト外輪13の内周面13bに対向している。つまり、第1油路M11から第1油孔M12の開口部M12aを介して、潤滑油を転動体14周りに供給することができる。
【0119】
また、上述したように、第1油孔M12の開口部M12aの少なくとも一部が第1インプットシャフト外輪13の内周面13bに対向している。これにより、インプットギヤユニット10Cでは、第1インプットシャフト軌道面K11及び第1インプットシャフト外輪軌道面L11への潤滑油の供給性能を向上させることができる。なお、第3変形例に係るインプットギヤユニット10Cにおいて、転動体17側に油孔を設けて潤滑油を供給してもよい。また、転動体14側及び転動体17側の両方に潤滑油を供給する構成であってもよい。
【0120】
[インプットギヤユニットの第4変形例]
図10に示されるように、第4変形例に係るインプットギヤユニット(第1軸ユニット)10Dは、
図9に示される第3変形例に係るインプットギヤユニット10Cの第1油孔M12の位置を変更したものである。より詳細には、第4変形例に係るインプットギヤユニット10Dは、第3変形例に係るインプットギヤユニット10Cの第1油孔M12に代えて、インプットシャフト(第1軸)11Dに設けられた第1油孔M13を有している。なお、インプットシャフト11Dに設けられた第1油路M11には、第1インプットシャフト軌道面K11が形成された側の端部からスプライン11sが設けれた側の端部に向って潤滑油が流れている。つまり、第1油路M11において、第1インプットシャフト軌道面K11側が潤滑油の流れ方向の上流側となり、スプライン11sが設けられている側が潤滑油の流れ方向の下流側となる。
【0121】
第1油孔M13は、インプットシャフト11Dの径方向に沿って延在している。なお、
図10では第1油孔M13が1つのみ示されているが、インプットシャフト11Dの回転方向の異なる位置に第1油孔M13が2以上設けられていてもよい。また、第1油孔M13は、インプットシャフト11Dの軸方向(延在方向)において、第1インプットシャフト軌道面K11よりも第1油路M11における潤滑油の流れ方向(油流れ方向)の上流側に設けられている。
【0122】
この場合、このインプットギヤユニット10Dでは、第1インプットシャフト軌道面K11等への潤滑油の供給経路を短くすることができ、潤滑油をより一層適切に供給することができる。なお、第1油孔M13におけるインプットシャフト11Dの外周面の開口部M13aの少なくとも一部は、第1インプットシャフト外輪13の内周面13bに対向していてもよい。この場合には、第1インプットシャフト軌道面K11周りにより一層効率よく潤滑油を供給することができる。
【0123】
[インプットギヤユニットの第5変形例]
図11に示されるように、第5変形例に係るインプットギヤユニット(第1軸ユニット)10Eは、
図10に示される第4変形例に係るインプットギヤユニット10Dに対してOリング111及び112が追加されたものである。より詳細には、インプットギヤユニット10Eは、第4実施形態に係るインプットシャフト11Dに代えてインプットシャフト(第1軸)11Eを備え、更にOリング111及び112を備えている。
【0124】
インプットシャフト11Eは、第4実施形態に係るインプットシャフト11Dに対して第1油孔M13が省かれている。Oリング111は、第1インプットシャフト外輪13の外周面13aとインプットシャフト支持部C1との間において、第1インプットシャフト外輪13を囲むように配置されている。本変形例においてOリング111は、2つ設けられている。Oリング112は、第2インプットシャフト外輪16の外周面16aとインプットシャフト支持部C1との間において、第2インプットシャフト外輪16を囲むように配置されている。本変形例においてOリング112は、2つ設けられている。
【0125】
Oリング111及び112は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴム、樹脂等)によって構成されている。Oリング111は、本変形例においては、第1インプットシャフト外輪13の外周面13aに設けられた溝内に配置されている。同様に、Oリング112は、本変形例においては、第2インプットシャフト外輪16の外周面16aに設けられた溝内に配置されている。
【0126】
この場合、インプットギヤユニット10Eでは、第1インプットシャフト外輪13及び第2インプットシャフト外輪16が回転荷重を受けたり振れ回りすることによるクリープの発生を抑制できる。
【0127】
なお、クリープの発生を抑制する他の方法として、第1インプットシャフト外輪13の外周面13aに設けられたOリング111に代えて、第1インプットシャフト外輪の外周面に被膜が施されていてもよい。この被膜は、第1インプットシャフト外輪の外周面よりも、表面が低摩擦となっている。この被膜は、例えば、低摩擦な固体潤滑被膜であってもよい。この固体潤滑被膜は、固体潤滑材が配合された膜である。このように、低摩擦な被膜が施されている場合であっても、第1インプットシャフト外輪が回転荷重を受けたり振れ回りすることによるクリープの発生を抑制できる。Oリング112が設けられた第2インプットシャフト外輪16側も同様に、低摩擦な被膜が施されていてもよい。
【0128】
[カウンターギヤユニットの変形例]
次に、カウンターギヤユニット20の種々の変形例について説明する。
【0129】
[カウンターギヤユニットの第1変形例]
図12に示されるように、第1変形例に係るカウンターギヤユニット(第2軸ユニット)20Aは、実施形態に係るカウンターギヤユニット20と異なり、片側のみが軸受とカウンターシャフトとが一体化された構成となっている。また、カウンターシャフトと軸受とが一体化された側においても、カウンターシャフトに小鍔部が設けられていない。より詳細には、カウンターギヤユニット20Aは、カウンターシャフト(第2軸)21A、カウンターシャフト入力ギヤ22、カウンターシャフト出力ギヤ23、第1カウンターシャフト外輪24、転動体25、第1カウンターシャフト保持器26、及び軸受200を備えている。
【0130】
軸受200は、円すいころ軸受である。軸受200は、外輪201、内輪202、複数の転動体203、及び保持器204を有している。転動体203は、円すいころであるである。転動体203は、外輪201の外輪軌道面と内輪202の内輪軌道面との間に配置されている。保持器204は、複数の転動体203のそれぞれを転動自在に保持する。内輪202は、カウンターシャフト21Aにおいてカウンターシャフト出力ギヤ23に近い側の端部近傍の外周面に取り付けられている。外輪201の外周面は、上述したカウンターシャフト支持部C2に取り付けられる。
【0131】
また、カウンターシャフト21Aにおいて、軸受200が取り付けられる側の端部に対して反対側の端部は、上述した転動体25、及び第1カウンターシャフト外輪24を介してカウンターシャフト支持部C2に回転可能に支持される。なお、本変形例においては、円すい台形の第1カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面)K21の小径側端部に隣接する位置には、小鍔部が設けられていない。
【0132】
このような場合であっても、カウンターシャフト21Aにおいて第1カウンターシャフト軌道面K21が設けられた部分は、カウンターシャフト21Aが内輪の機能を兼ねている。このため、カウンターギヤユニット20Aは、カウンターシャフト21Aを安定して回転可能に支持することができる。また、カウンターシャフト21Aにおいて、第1カウンターシャフト軌道面K21が設けられる側の端部には小鍔部が設けられていない。このため、このカウンターギヤユニット20Aでは、各部の組付け性を向上させることができる。
【0133】
[カウンターギヤユニットの第2変形例]
図13に示されるように、第2変形例に係るカウンターギヤユニット(第2軸ユニット)20Bは、
図4に示される実施形態に係るカウンターギヤユニット20のカウンターシャフト21に代えて、カウンターシャフト(第2軸)21Bを備えている。
【0134】
このカウンターシャフト21Bの内部には、カウンターシャフト21Bの軸方向に沿って延びる第2油路M21が設けられている。第2油路M21には、図示しない油圧供給源から潤滑油が供給されている。なお、カウンターシャフト21Bに設けられた第2油路M21には、第1カウンターシャフト軌道面K21が形成された側の端部から第2カウンターシャフト軌道面K22が形成された側の端部に向って潤滑油が流れている。つまり、第2油路M21において、第1カウンターシャフト軌道面K21側が潤滑油の流れ方向の上流側となり、第2カウンターシャフト軌道面K22側が潤滑油の流れ方向の下流側となる。
【0135】
さらに、カウンターシャフト21Bは、第2油路M21とカウンターシャフト21Bに設けられた第1カウンターシャフト小鍔部(第2小鍔部)21aの外周面とに連通する第2油孔M22が設けられている。つまり、第2油路M21から第2油孔M22の開口部M22aを介して、潤滑油を転動体25周りに供給することができる。なお、
図13では第2油孔M22が1つのみ示されているが、カウンターシャフト21Bの回転方向の異なる位置に第2油孔M22が2以上設けられていてもよい。また、第2油孔M22における第1カウンターシャフト小鍔部21aに開口する開口部M22aの少なくとも一部は、カウンターシャフト21Bの径方向において、第1カウンターシャフト外輪24の第1カウンターシャフト外輪軌道面L21に対向している。
【0136】
この場合、このカウンターギヤユニット20Bは、カウンターシャフト21Bを円すいころ軸受の構造によって回転可能に支持する。そして、このカウンターギヤユニット20Bは、第1カウンターシャフト小鍔部21aの外周面から第1カウンターシャフト軌道面K21等に潤滑油を供給することができると共に、円すいころ軸受が持つポンプ作用によってより一層好適に潤滑油を供給することができる。
【0137】
また、上述したように、第2油孔M22の開口部M22aの少なくとも一部が第1カウンターシャフト外輪24の第1カウンターシャフト外輪軌道面L21に対向している。これにより、カウンターギヤユニット20Bでは、第1カウンターシャフト軌道面K21等への潤滑油の供給性能を向上させることができる。なお、第2変形例に係るカウンターギヤユニット20Bにおいて、転動体28側の第2カウンターシャフト小鍔部21cに油孔を設けて潤滑油を供給してもよい。また、転動体25側及び転動体28側の両方に潤滑油を供給する構成であってもよい。
【0138】
[カウンターギヤユニットの第3変形例]
図14に示されるように、第3変形例に係るカウンターギヤユニット(第2軸ユニット)20Cは、深溝玉軸受の構造によってカウンターシャフト(第2軸)21Cを回転可能に支持する。より詳細には、カウンターギヤユニット20Cは、カウンターシャフト21C、カウンターシャフト入力ギヤ22、カウンターシャフト出力ギヤ23、第1カウンターシャフト外輪(第2外輪)210、複数の転動体(第2転動体)211、第1カウンターシャフト保持器212、第2カウンターシャフト外輪(第2外輪)220、複数の転動体(第2転動体)221、及び第2カウンターシャフト保持器222を備えている。
【0139】
カウンターシャフト21Cの外周面には、実施形態に係る第1カウンターシャフト軌道面K21及び第2カウンターシャフト軌道面K22に代えて、第1カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面)K21C及び第2カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面)K22Cがそれぞれ設けられている。第1カウンターシャフト軌道面K21C及び第2カウンターシャフト軌道面K22Cは、それぞれ、カウンターシャフト21Cの外周面の周方向に延びる溝である。
【0140】
第1カウンターシャフト外輪210は、第1カウンターシャフト軌道面K21Cを囲むように配置される。第1カウンターシャフト外輪210の外周面は、上述したカウンターシャフト支持部C2に取り付けられる。第1カウンターシャフト外輪210の内周面には、第1カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面)L21Cが設けられている。第1カウンターシャフト外輪軌道面L21Cは、第1カウンターシャフト外輪210の周方向に延びる溝である。転動体211は、球状を呈する玉である。転動体211は、カウンターシャフト21Cの第1カウンターシャフト軌道面K21Cと第1カウンターシャフト外輪210の第1カウンターシャフト外輪軌道面L21Cとの間に配置される。第1カウンターシャフト保持器212は、複数の転動体211のそれぞれを転動自在に保持する。このように、第1カウンターシャフト外輪210、転動体211、及びカウンターシャフト21Cの第1カウンターシャフト軌道面K21Cにより、深溝玉軸受が構成されている。
【0141】
同様に、第2カウンターシャフト外輪220は、第2カウンターシャフト軌道面K22Cを囲むように配置される。第2カウンターシャフト外輪220の外周面は、上述したカウンターシャフト支持部C2に取り付けられる。第2カウンターシャフト外輪220の内周面には、第2カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面)L22Cが設けられている。第2カウンターシャフト外輪軌道面L22Cは、第2カウンターシャフト外輪220の周方向に延びる溝である。転動体221は、球状を呈する玉である。転動体221は、カウンターシャフト21Cの第2カウンターシャフト軌道面K22Cと第2カウンターシャフト外輪220の第2カウンターシャフト外輪軌道面L22Cとの間に配置される。第2カウンターシャフト保持器222は、複数の転動体221のそれぞれを転動自在に保持する。このように、第2カウンターシャフト外輪220、転動体221、及びカウンターシャフト21Cの第2カウンターシャフト軌道面K22Cにより、深溝玉軸受が構成されている。
【0142】
カウンターシャフト21Cの内部には、カウンターシャフト21Cの軸方向に沿って延びる第2油路M21が設けられている。また、カウンターシャフト21Cには、第2油路M21とカウンターシャフト21Cの外周面とに連通する第2油孔M22が設けられている。なお、
図14では第2油孔M22が1つのみ示されているが、カウンターシャフト21Cの回転方向の異なる位置に第2油孔M22が2以上設けられていてもよい。第2油孔M22におけるカウンターシャフト21Cの外周面に開口する開口部M22aは、第1カウンターシャフト軌道面K21Cに隣接している。
【0143】
ここで、第2油孔M22の開口部M22aが第1カウンターシャフト軌道面K21Cに隣接することとは、開口部M22aの開口縁と第1カウンターシャフト軌道面K21Cとが接している状態を含む。また、第2油孔M22の開口部M22aが第1カウンターシャフト軌道面K21Cに隣接することとは、開口部M22aの開口縁と第1カウンターシャフト軌道面K21Cとが所定の隙間を介して隣接している状態を含む。すなわち、第2油孔M22の開口部M22aが第1カウンターシャフト軌道面K21Cに隣接することとは、第2油孔M22の開口部M22aから、第1カウンターシャフト軌道面K21Cの周りに潤滑油を供給可能な状態であればよい。
【0144】
このように、カウンターギヤユニット20Cは、第2油孔M22を備えることにより、第2油孔M22を介して、第1カウンターシャフト軌道面K21C等に対して適切に潤滑油を供給することができる。また、本変形例では、深溝玉軸受の構成によってカウンターシャフト21Cが支持されている。この場合、円すいころ軸受の構成によって支持されている場合に比べて、少ない潤滑油量によってカウンターシャフト21Cを回転させることができる。
【0145】
さらに、第2油孔M22の開口部M22aの少なくとも一部は、カウンターシャフト21Cの径方向において第1カウンターシャフト外輪210の内周面に対向していてもよい。この場合、カウンターギヤユニット20Cは、第1カウンターシャフト軌道面K21C等への潤滑油の供給性能を向上させることができる。
【0146】
[デファレンシャルギヤユニットの変形例]
次に、デファレンシャルギヤユニットの種々の変形例について説明する。
【0147】
[デファレンシャルギヤユニットの第1変形例]
図15に示されるように、第1変形例に係るデファレンシャルギヤユニット30Aは、実施形態に係るデファレンシャルギヤユニット30と異なり、片側のみが軸受とデファレンシャルケースとが一体化された構成となっている。また、デファレンシャルケースと軸受とが一体化された側においても、デファレンシャルケースに小鍔部が設けられていない。より詳細には、デファレンシャルギヤユニット30Aは、デファレンシャルケース31A、デファレンシャル入力ギヤ32、差動機構33、第2デファレンシャル外輪37、転動体38、第2デファレンシャル保持器39、及び軸受300を備えている。
【0148】
軸受300は、円すいころ軸受である。軸受300は、外輪301、内輪302、複数の転動体303、及び保持器304を有している。転動体303は、円すいころであるである。転動体303は、外輪301の外輪軌道面と内輪302の内輪軌道面との間に配置されている。保持器304は、複数の転動体303のそれぞれを転動自在に保持する。内輪302は、デファレンシャルケース31Aにおいて第2デファレンシャル軌道面K32が設けられる側に対して反対側の端部(第1差込口h1が設けられた側の端部)の外周面に取り付けられている。外輪301の外周面は、上述したデファレンシャル支持部C3に取り付けられる。
【0149】
また、デファレンシャルケース31Aにおいて、軸受300が取り付けられる側の端部に対して反対側の端部は、上述した転動体38、及び第2デファレンシャル外輪37を介してデファレンシャル支持部C3に回転可能に支持される。なお、本変形例においては、円すい台形の第2デファレンシャル軌道面(第3軸軌道面)K32の小径側端部に隣接する位置には、小鍔部が設けられていない。
【0150】
このような場合であっても、デファレンシャルケース31Aにおいて第2デファレンシャル軌道面K32が設けられた部分は、デファレンシャルケース31Aが内輪の機能を兼ねている。このため、デファレンシャルギヤユニット30Aは、デファレンシャルケース31Aを安定して回転可能に支持することができる。また、デファレンシャルケース31Aにおいて、第2デファレンシャル軌道面K32が設けられる側の端部には小鍔部が設けられていない。このため、このデファレンシャルギヤユニット30Aでは、各部の組付け性を向上させることができる。
【0151】
[デファレンシャルギヤユニットの第2変形例]
図16に示されるように、第2変形例に係るデファレンシャルギヤユニット30Bは、
図5に示される実施形態に係るデファレンシャルギヤユニット30のデファレンシャルケース31に代えて、デファレンシャルケース31Bを備えている。
【0152】
このデファレンシャルケース31Bには、第1デファレンシャル軌道面K31に隣接する第2デファレンシャル小鍔部(第3小鍔部)31cの外周面と第2差込口h2とに連通する第3油孔M32が設けられている。なお、
図16では第3油孔M32が1つのみ示されているが、デファレンシャルケース31Bの回転方向の異なる位置に第3油孔M32が2以上設けられていてもよい。第3油孔M32における第2デファレンシャル小鍔部31cの外周面に開口する開口部M32aの少なくとも一部は、第2デファレンシャル外輪37の径方向において、第2デファレンシャル外輪37の第2デファレンシャル外輪軌道面L32に対向している。
【0153】
ここで、このデファレンシャルケース31Bの内部における差動機構33を収容する収容空間には、潤滑油が流通している。そして、第2差込口h2の内側部分にも潤滑油が入り込んでいる。つまり、第2差込口h2(第2差込口h2の内壁面と第2差込口h2に差し込まれるドライブシャフトの外周面との隙間)は、潤滑油の油路(第3油路)として機能する。そして、油路として機能する第2差込口h2から第3油孔M32を介して、第1カウンターシャフト軌道面K21の近傍に潤滑油が供給される。
【0154】
この場合、このデファレンシャルギヤユニット30Bは、デファレンシャルケース31Bを円すいころ軸受の構造によって回転可能に支持する。そして、このデファレンシャルギヤユニット30Bは、第2デファレンシャル小鍔部31cの外周面から第1デファレンシャル軌道面K31等に潤滑油を供給することができると共に、円すいころ軸受が持つポンプ作用によってより一層好適に潤滑油を供給することができる。
【0155】
また、上述したように、第3油孔M32の開口部M32aの少なくとも一部が第2デファレンシャル外輪37の第2デファレンシャル外輪軌道面L32に対向している。これにより、デファレンシャルギヤユニット30Bでは、第2デファレンシャル外輪軌道面L32等への潤滑油の供給性能を向上させることができる。なお、第2変形例に係るデファレンシャルギヤユニット30Bにおいて、転動体35側の第1デファレンシャル小鍔部31aに油孔を設けて潤滑油を供給してもよい。また、転動体35側及び転動体38側の両方に潤滑油を供給する構成であってもよい。
【0156】
[駆動ユニットの変形例]
次に、駆動ユニットの種々の変形例について説明する。
【0157】
[駆動ユニットの第1変形例]
図17に示されるように、第1変形例に係る駆動ユニット40Aは、実施形態に係る駆動ユニット40とは異なり、ロータシャフトの一方の端部が内周側から支持される構成となっている。より詳細には、駆動ユニット40Aは、モータロータ41、ロータシャフト(駆動軸)42A、第1ロータシャフト外輪43、転動体44、第1ロータシャフト保持器45、複数の転動体47A、第2ロータシャフト保持器48A、及び第2ロータシャフト内輪49Aを備えている。
【0158】
ロータシャフト42Aは、実施形態に係る42と同様にインプットシャフト11に接続される。また、ロータシャフト42Aは、第1ロータシャフト軌道面K41及び第2ロータシャフト軌道面(第4軸軌道面)K42Aを有している。第2ロータシャフト軌道面K42Aは、ロータシャフト42における第1ロータシャフト軌道面K41とは反対側の端部近傍の内周面に設けられている。第2ロータシャフト軌道面K42Aは、ロータシャフト42Aの内周面の周方向に延びる溝である。
【0159】
第2ロータシャフト内輪49Aは、ロータシャフト42Aを第2ロータシャフト軌道面K42Aの内側から支持するロータシャフト支持部(第4支持部)C4Aの外周に取り付けられている。第2ロータシャフト内輪49Aは、第2ロータシャフト内輪49Aの外周面が第2ロータシャフト軌道面K42Aに対向するように、第2ロータシャフト軌道面K42Aの内側に設けられる。第2ロータシャフト内輪49Aは、第2ロータシャフト内輪軌道面(第4内輪軌道面)L43Aを外周面に有している。第2ロータシャフト内輪軌道面L43Aは、第2ロータシャフト内輪49Aの内周面の周方向に延びる溝である。
【0160】
複数の転動体47Aは、ロータシャフト42Aの第2ロータシャフト軌道面K42Aと、第2ロータシャフト内輪49Aの第2ロータシャフト内輪軌道面L43Aとの間に配置されている。転動体47Aは、球状を呈する玉である。第2ロータシャフト保持器48Aは、ロータシャフト42Aの内周面と第2ロータシャフト内輪49Aの内周面との間において、複数の転動体47Aのそれぞれを転動自在に保持する。
【0161】
このように、ロータシャフト42Aは、第1ロータシャフト軌道面K41の部位と第2ロータシャフト軌道面K42Aの部位との2カ所において、回転可能に支持される。また、本変形例における駆動ユニット40Aは、第2ロータシャフト軌道面K42Aが設けられた側の端部において、軸受の外輪としてのみ機能する部品を有していない。本変形例におけるロータシャフト42Aにおいて第2ロータシャフト軌道面K42Aが設けられた側の端部では、ロータシャフト42Aが、軸受の外輪の機能を兼ねている。
【0162】
また、本変形例における駆動ユニット40Aでは、第1ロータシャフト外輪43、複数の転動体44、及びロータシャフト42の第1ロータシャフト軌道面K41により、深溝玉軸受が構成されている。同様に、第2ロータシャフト内輪49A、転動体47A、及びロータシャフト42Aの第2ロータシャフト軌道面K42Aにより、深溝玉軸受が構成されている。
【0163】
以上のように、本変形例では、ロータシャフト42Aの一方の端部が、転動体44及び第1ロータシャフト外輪43を介して上述したロータシャフト支持部C4に回転可能に支持される。つまり、ロータシャフト42Aの一方の端部は、軸受の外輪の機能を兼ねている。また、ロータシャフト42Aの他方の端部が、転動体47A及び第2ロータシャフト内輪49Aを介してロータシャフト支持部C4Aに回転可能に支持される。ロータシャフト42Aの他方の端部は、軸受の外輪の機能を兼ねている。このように、この駆動ユニット40Aは、ロータシャフト42Aを支持する機構の部品点数を少なくすることができ、部品精度のばらつき等によるロータシャフト42Aの支持精度の低下を抑制できる。従って、この駆動ユニット40は、ロータシャフト42Aを安定して回転可能に支持することができる。
【0164】
また、転動体47A及び第2ロータシャフト内輪49A等がロータシャフト42Aの内側に位置しているため、モータロータ41等をロータシャフト42Aに組み付けるときの組付性を維持したまま、省スペース化及び小トルク化を図ることができる。
【0165】
[駆動ユニットの第2変形例]
図18に示されるように、第2変形例に係る駆動ユニット40Bは、
図6に示される実施形態に係る駆動ユニット40のロータシャフト42に代えて、ロータシャフト(駆動軸)42Bを備えている。
【0166】
このロータシャフト42Bの内部には、ロータシャフト42Bの軸方向に沿って延びる第4油路M41が設けられている。第4油路M41には、図示しない油圧供給源から潤滑油が供給されている。さらに、ロータシャフト42Bは、第4油路M41とロータシャフト42Bの外周面とに連通する第4油孔M42が設けられている。なお、
図18では第4油孔M42が1つのみ示されているが、ロータシャフト42Bの回転方向の異なる位置に第4油孔M42が2以上設けられていてもよい。第4油孔M42におけるロータシャフト42Bの外周面に開口する開口部M42aは、第2ロータシャフト軌道面(第4軸軌道面)K42に隣接している。つまり、第4油路M41から第4油孔M42の開口部M42aを介して、転動体47周りに供給することができる。
【0167】
ここで、第4油孔M42の開口部M42aが第2ロータシャフト軌道面K42に隣接することとは、開口部M42aの開口縁と第2ロータシャフト軌道面K42とが接している状態を含む。また、第4油孔M42の開口部M42aが第2ロータシャフト軌道面K42に隣接することとは、開口部M42aの開口縁と第2ロータシャフト軌道面K42とが所定の隙間を介して隣接している状態を含む。すなわち、第4油孔M42の開口部M42aが第2ロータシャフト軌道面K42に隣接することとは、第4油孔M42の開口部M42aから、第2ロータシャフト軌道面K42の周りに潤滑油を供給可能状態であればよい。
【0168】
このように、駆動ユニット40Bは、第4油孔M42を備えることにより、第4油孔M42を介して第2ロータシャフト軌道面K42等に対して適切に潤滑油を供給することができる。なお、第2変形例に係る駆動ユニット40Bにおいて、転動体44側に第4油孔M42と同様の油孔を設けて潤滑油を供給してもよい。また、転動体47側及び転動体44側の両方に潤滑油を供給する構成であってもよい。
【0169】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。
【0170】
また、上記実施形態及び各種の変形例では、インプットギヤユニット10(10A,10B,10C,10D,10E)、カウンターギヤユニット20(20A,20B,20C)、デファレンシャルギヤユニット30(30A,30B)、及び駆動ユニット40(40A,40B)のすべてについて、インプットシャフト11等の回転部材と軸受とが一体化された構成となっていたが、これらの各ユニットのいずれか1つ以上において回転部材と軸受とが一体化された構成となっていてもよい。また、上記実施形態及び各種の変形例に係る減速機1において、上述した各ユニット以外に、回転軸を備えるギヤユニットを更に備えていてもよい。
【0171】
上記実施形態及び各種の変形例では、軸受の構造として深溝玉軸受と円すいころ軸受とを例に説明したが、例えばアンギュラ玉軸受または円筒ころ軸受等、他の軸受の構造が用いられてもよい。
【0172】
また、上記では、本発明に係る変速機として減速機を用いて説明した。これに限定されず、本発明に係る変速機は、駆動ユニットの回転速度を増速する増速機であってもよい。本発明に係る変速機が増速機である場合であっても、各ユニット間でのギヤによる回転速度の変換比が上述した減速機1と異なるだけで、減速機1で説明した軸受部分の構成と同様の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0173】
1…減速機(変速機)、10,10A,10B,10C,10D,10E…インプットギヤユニット(第1軸ユニット)、11,11A,11B,11C,11D,11E…インプットシャフト(第1軸)、11a…第1軌道面形成部(軌道面形成部)、11b…第1中間部(中間部)、11c…第2軌道面形成部(軌道面形成部)、11d…第2中間部(中間部)、12…インプットシャフト出力ギヤ(第1出力ギヤ)、13…第1インプットシャフト外輪(第1外輪)、14,17…転動体(第1転動体)、15…第1インプットシャフト保持器(保持器)16…第2インプットシャフト外輪(第1外輪)、18…第2インプットシャフト保持器(保持器)、20,20A,20B,20C…カウンターギヤユニット(第2軸ユニット)、21,21A,21B,21C…カウンターシャフト(第2軸)、21a…第1カウンターシャフト小鍔部(第2小鍔部)、22…カウンターシャフト入力ギヤ(第2入力ギヤ)、23…カウンターシャフト出力ギヤ(第2出力ギヤ)、24,210…第1カウンターシャフト外輪(第2外輪)、27,220…第2カウンターシャフト外輪(第2外輪)、25,28,211,221…転動体(第2転動体)、30,30A,30B…デファレンシャルギヤユニット、31,31A,31B…デファレンシャルケース、32…デファレンシャル入力ギヤ(第3入力ギヤ)、33…差動機構、34…第1デファレンシャル外輪(第3外輪)、35,38…転動体(第3転動体)、37…第2デファレンシャル外輪(第3外輪)、40,40A,40B…駆動ユニット、41…モータロータ(駆動機構)、42,42A,42B…ロータシャフト(駆動軸)、43…第1ロータシャフト外輪(第4外輪)、44,47,47A…転動体(第4転動体)、46…第2ロータシャフト外輪(第4外輪)、111,112…Oリング、A1,A2,A3,A4…回転軸、C1…インプットシャフト支持部(第1支持部)、C2…カウンターシャフト支持部(第2支持部)、C3…デファレンシャル支持部(第3支持部)、C4,C4A…ロータシャフト支持部(第4支持部)、F11a,F11b,F12a,F12b…溝淵部、h2…第2差込口(第3油路)、K11,K11B…第1インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面)、K12,K12B…第2インプットシャフト軌道面(第1軸軌道面)、K21,K21C…第1カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面)、K22,K22C…第2カウンターシャフト軌道面(第2軸軌道面)、K31…第1デファレンシャル軌道面(第3軸軌道面)、K32…第2デファレンシャル軌道面(第3軸軌道面)、K41…第1ロータシャフト軌道面(第4軸軌道面)、K42,K42A…第2ロータシャフト軌道面(第4軸軌道面)、L11…第1インプットシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面)、L12…第2インプットシャフト外輪軌道面(第1外輪軌道面)、L21,L21C…第1カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面)、L22,L22C…第2カウンターシャフト外輪軌道面(第2外輪軌道面)、L31…第1デファレンシャル外輪軌道面(第3外輪軌道面)、L32…第2デファレンシャル外輪軌道面(第3外輪軌道面)、L41…第1ロータシャフト外輪軌道面(第4外輪軌道面)、L42…第2ロータシャフト外輪軌道面(第4外輪軌道面)、L43A…第2ロータシャフト内輪軌道面(第4内輪軌道面)、M11…第1油路、M12,M13…第1油孔、M12a,M13a,M22a,M32a,M42a…開口部、M21…第2油路、M22…第2油孔、M32…第3油孔、M41…第4油路、M42…第4油孔、S1,S2…軌道溝仮想円。