(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】回転電機用ロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20250115BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2021171579
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 亜美
(72)【発明者】
【氏名】津田 哲平
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-113052(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076045(WO,A1)
【文献】特開2021-125970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿って複数の磁極を有する回転電機用ロータであって、
前記複数の磁極のそれぞれに対して径方向外側の第1磁石孔と径方向内側の第2磁石孔とが形成されたロータコアと、
前記複数の磁極を形成する複数の永久磁石と、を備え、
前記複数の永久磁石は、
前記第1磁石孔に設けられる複数の第1永久磁石と、
前記第2磁石孔に設けられ、軸方向視で径方向内側に凸となる円弧形状を有する複数の第2永久磁石と、を含み、
一の磁極に係る前記複数の第2永久磁石は、前記一の磁極に係るd軸に関して対称に配置される一対の第2永久磁石を含み、
前記一対の第2永久磁石のうちの周方向一方側の第2永久磁石は、軸方向視で、前記円弧形状に係る円弧の中心が、前記d軸に対して前記周方向一方側にオフセットし、
前記一対の第2永久磁石のうちの周方向他方側の第2永久磁石は、軸方向視で、前記円弧形状に係る円弧の中心が、前記d軸に対して前記周方向他方側にオフセットして
おり、
前記一対の第2永久磁石の外形の径方向外側の円弧に係る直径φ
2
は、前記ロータコアの直径をΦとし、前記複数の磁極による極数をMとしたとき、以下の関係式を満たす、
φ
2
<Φ×sin(π/M)
、回転電機用ロータ。
【請求項2】
前記複数の第1永久磁石は、軸方向視で径方向内側に凸となる円弧形状を有し、
前記一の磁極に係る前記複数の第1永久磁石は、前記d軸に関して対称に、かつ、前記d軸を通るブリッジ部を介して離間する別々の前記第1磁石孔内に、配置される一対の第1永久磁石を含み、
前記一対の第1永久磁石のうちの前記周方向一方側の第1永久磁石は、軸方向視で、前記円弧形状に係る円弧の中心が、前記d軸に対して前記周方向一方側にオフセットし、
前記一対の第1永久磁石のうちの前記周方向他方側の第1永久磁石は、軸方向視で、前記円弧形状に係る円弧の中心が、前記d軸に対して前記周方向他方側にオフセットしている、請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項3】
前記複数の第1永久磁石及び前記複数の第2永久磁石は、共通の磁石片により形成され、
一の前記第2磁石孔には、2つ以上の前記共通の磁石片が配置される、請求項1または2に記載の回転電機用ロータ。
【請求項4】
軸方向に視たときの前記一の磁極に係る前記第1磁石孔と前記第2磁石孔との間の幅であって、磁路に対して交差する方向の幅は、前記ロータコアの外周面から前記d軸に向かうにつれて徐々に大きくなる、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
円弧状の永久磁石を外径側と内径側の2層で配置する回転電機用ロータにおいて、外径側円弧磁石の円弧中心が、d軸上に位置し、d軸に対して周方向一方側の内径側円弧磁石の円弧中心が、d軸に対し周方向他方側にオフセットし、d軸に対して周方向他方側の内径側円弧磁石の円弧中心が、d軸に対し周方向一方側にオフセットする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術のように、d軸に関して対称に配置された周方向一方側と周方向他方側の各内径側円弧磁石の円弧中心が、それぞれ、d軸に対し周方向他方側と周方向一方側にオフセットする構成では、内径側円弧磁石の周方向両端部のうちの、d軸側の端部がロータ内径側に近づく傾向となる。この場合、良好な着磁性を確保しつつ、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を確保することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、良好な着磁性を確保しつつ、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、周方向に沿って複数の磁極を有する回転電機用ロータであって、
前記複数の磁極のそれぞれに対して径方向外側の第1磁石孔と径方向内側の第2磁石孔とが形成されたロータコアと、
前記複数の磁極を形成する複数の永久磁石と、を備え、
前記複数の永久磁石は、
前記第1磁石孔に設けられる複数の第1永久磁石と、
前記第2磁石孔に設けられ、軸方向視で径方向内側に凸となる円弧形状を有する複数の第2永久磁石と、を含み、
一の磁極に係る前記複数の第2永久磁石は、前記一の磁極に係るd軸に関して対称に配置される一対の第2永久磁石を含み、
前記一対の第2永久磁石のうちの周方向一方側の前記第2永久磁石は、軸方向視で、前記円弧形状に係る円弧の中心が、前記d軸に対して前記周方向一方側にオフセットし、
前記一対の第2永久磁石のうちの周方向他方側の前記第2永久磁石は、軸方向視で、前記円弧形状に係る円弧の中心が、前記d軸に対して前記周方向他方側にオフセットしている、回転電機用ロータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、良好な着磁性を確保しつつ、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施例によるモータ(回転電機の一例)の断面構造を概略的に示す断面図である。
【
図2】ロータの断面図(軸方向に垂直な平面による断面図)である。
【
図3】
図2に示した一の磁極に係る部分の拡大図である。
【
図4】第1又は第2永久磁石の半径の上限を概念的に示す説明図である。
【
図6】比較例との対比を兼ねた説明図(その1)である。
【
図7】比較例との対比を兼ねた説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
図1は、一実施例によるモータ1(回転電機の一例)の断面構造を概略的に示す断面図である。
図2は、ロータ30の断面図(軸方向に垂直な平面による断面図)である。なお、
図2等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0011】
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、以下で、特に言及しない限り(すなわち、円弧状の永久磁石の外形に関する説明以外)、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。なお、円弧状の永久磁石の外形に関しては、永久磁石の円弧を基準とし、例えば、円弧状の永久磁石の外形の径方向外側とは、永久磁石の円弧に係る径方向外側を意味する。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
【0012】
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0013】
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
【0014】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。
【0015】
ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34と、エンドプレート35A、35Bと、第1永久磁石61及び第2永久磁石62とを備える。
【0016】
ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側の表面に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータコア32は、軸孔320を有し、軸孔320にロータシャフト34が嵌合される。ロータコア32は、ロータシャフト34に焼き嵌め、圧入、又はその類により固定されてよい。例えば、ロータコア32は、ロータシャフト34にキー結合やスプライン結合により結合されてもよい。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
【0017】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板により形成される。ロータコア32の内部には、複数の第1永久磁石61及び複数の第2永久磁石62(
図2参照)が埋め込まれる。すなわち、ロータコア32は、軸方向に貫通する複数の磁石孔321、322(
図2参照)を有し、磁石孔321、322内に第1永久磁石61及び第2永久磁石62が挿入され固定される。なお、変形例では、ロータコア32は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。
【0018】
ロータコア32は、
図2に示すように、軸方向に視て(すなわち軸方向視で)、回転軸12を中心とした回転対称の形態を有する。
図2に示す例では、ロータコア32は、回転軸12を中心として45度回転するごとに、各組の第1永久磁石61及び第2永久磁石62が重なる形態である。
【0019】
複数の第1永久磁石61及び第2永久磁石62は、ネオジウム等により形成されてよい。本実施例では、一例として、
図2に示すように、複数の第1永久磁石61及び第2永久磁石62は、軸方向に視て、第1永久磁石61及び第2永久磁石62がそれぞれ対をなして略V字状(径方向外側が開く態様の略V字状)に配置されている。この場合、対の第1永久磁石61の間及び対の第2永久磁石62の間に、共通の磁極が形成される。なお、複数の第1永久磁石61及び第2永久磁石62は、周方向でS極とN極とが交互に現れる態様で配置される。なお、本実施例では、磁極数が8つであるが、磁極数は任意である。
【0020】
なお、
図1には、特定の構造を有するモータ1が示されるが、モータ1の構造は、かかる特定の構造に限定されない。例えば、
図1では、ロータシャフト34は、中空であるが、中実であってもよい。
【0021】
次に、
図3以降を参照して、ロータコア32及び第1永久磁石61及び第2永久磁石62を更に説明する。以下では、ある一の磁極に係る構成について説明するが、他の磁極に係る構成についても同様であってよい。
【0022】
図3は、
図2に示した一の磁極に係る部分の拡大図である。一の磁極に係る構成は、基本的に、d軸(
図3では「d-axis」と英語表記)に関して対称である。
図3では、d軸を中心としてX1側とX2側が定義されている。
図4は、第1永久磁石61及び第2永久磁石62の半径の上限を概念的に示す説明図である。
図4には、ロータコア32の外形に対応する円402とともに、磁石構成の説明用の円400が示されている。また、
図4において、円402を8分割する点線は、q軸の方向に対応する。
【0023】
ロータコア32には、径方向外側の磁石孔321(以下、「第1磁石孔321」と称する)と、径方向内側の磁石孔322(以下、「第2磁石孔322」と称する)とが、形成される。
【0024】
第1磁石孔321は、d軸に関して対称となる態様で、2つが対となって略V字状(径方向外側が開く態様の略V字状)に形成される。第1磁石孔321のそれぞれには、第1永久磁石61が設けられる。なお、第1磁石孔321と第1永久磁石61との間には、第1永久磁石61の長手方向両端部において隙間が設けられてもよい。なお、この隙間は、空洞であってもよいし、樹脂等が充填されてもよい。
【0025】
本実施例では、第1永久磁石61は、軸方向に視て、径方向内側に凸となる円弧形状を有する。第1永久磁石61は、熱間押出し成形等により形成されたリング磁石を、対応する径方向の長さで切断することで、形成されてよい。
【0026】
第1永久磁石61の外形の径方向外側の円弧に係る直径φ
1(
図3では、同外形の径方向内側の円弧の半径R1が図示)は、好ましくは、比較的小さく、例えば、ロータコア32の直径をΦとし、複数の磁極による極数をM(本実施例では、一例として「8」)としたとき、以下の関係式を満たすほど小さくてよい。
φ
1<Φ×sin(π/M) 式(1)
この場合、右辺は、
図4に概念的に示すように、半径=Φ/2かつ中心角=2π/Mである扇形内の円400であって、d軸上に中心を有しq軸に接する円400の直径に対応する。
【0027】
また、本実施例では、対の第1永久磁石61は、それぞれの第1永久磁石61の円弧形状の中心(軸方向に視たときの曲率中心)が、d軸に対してオフセットする。この際、d軸に対してオフセットする側は、d軸に対してそれぞれに対応する第1永久磁石61が配置される側である。すなわち、X1側の第1永久磁石61は、その円弧形状の中心がd軸に対してX1側にオフセットし、かつ、X2側の第1永久磁石61は、その円弧形状の中心がd軸に対してX2側にオフセットする(
図3のオフセット量d1参照)。以下、このように一の第1永久磁石61の円弧形状の中心が、d軸に対して、当該一の第1永久磁石61の配置側にオフセットする構成を、「d軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成」とも称する。これは、後述する第2永久磁石62についても同様である。
【0028】
このような、第1永久磁石61について、d軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成は、式(1)及び式(2)を満たすような比較的小さい半径の第1永久磁石61を配置することで、より容易に実現できる。これは、
図4に示す円400の半径を、X1側のq軸に接する状態を維持しつつ小さくすると、円の曲率中心がd軸に対してX1側に移動することからも分かる。
【0029】
第2磁石孔322は、第1磁石孔321よりも径方向内側に設けられる。第2磁石孔322は、d軸に関して対称となる態様で、2つが対となって略V字状(径方向外側が開く態様の略V字状)に形成される。第2磁石孔322のそれぞれには、第2永久磁石62が設けられる。なお、第2磁石孔322と第2永久磁石62との間には、第2永久磁石62の長手方向両端部において隙間が設けられてもよい。なお、この隙間は、空洞であってもよいし、樹脂等が充填されてもよい。
【0030】
本実施例では、第2永久磁石62は、軸方向に視て、径方向内側に凸となる円弧形状を有する。第2永久磁石62は、第1永久磁石61と同様、熱間押出し成形等により形成されたリング磁石を、対応する径方向の長さで切断することで、形成されてよい。この場合、第2永久磁石62を形成するためのリング磁石は、第1永久磁石61を形成するためのリング磁石と共通であってもよい。すなわち、第1永久磁石61及び第2永久磁石62は、同じ円環形状を有し、かつ、同じ幅寸法(
図3のt1、t2参照)を有してもよい。この場合、リング磁石の共用化により生産性を高めることができる。
【0031】
第2永久磁石62の外形の径方向外側の円弧に係る直径φ
2(
図3では、同外形の径方向内側の円弧の半径R2が図示)は、好ましくは、ロータコア32の直径をΦとし、複数の磁極による極数をMとしたとき、以下の関係式を満たす、
φ
2<Φ×sin(π/M) 式(2)
なお、式(2)は、上述した式(1)と同じ関係である。
【0032】
また、本実施例では、対の第2永久磁石62は、上述した対の第1永久磁石61と同様、d軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成を有する。すなわち、X1側の第2永久磁石62は、その円弧形状の中心がd軸に対してX1側にオフセットし、かつ、X2側の第2永久磁石62は、その円弧形状の中心がd軸に対してX2側にオフセットする(
図3のオフセット量d2参照)。なお、
図3に示す例では、対の第2永久磁石62に係るオフセット量d2は、対の第1永久磁石61に係るオフセット量d1に対してわずかに小さいが、同じであってもよいし、オフセット量d1よりもわずかに大きくてもよい。
【0033】
ロータコア32は、このような第1磁石孔321及び第2磁石孔322を有することで、径方向にブリッジ部を介してのみ接続される3つの部位3211、3212、3213(以下、第1部位3211、第2部位3212、第3部位3213とも称する)を有する。
【0034】
具体的には、第1部位3211は、第1磁石孔321よりも径方向外側に延在する。第1部位3211は、ロータコア32の外周面328の一部328Aを形成する。
【0035】
第2部位3212は、径方向で第2磁石孔322と第1磁石孔321との間を通って周方向両側がロータコア32の外周面328まで延在する。第2部位3212は、第1部位3211の周方向両側において、ロータコア32の外周面328の一部328B(以下、「第2部位3212の外周面部328B」とも称する)を形成する。第2部位3212は、q軸磁束の磁路を形成する。具体的には、q軸磁束は、第2部位3212の一端(一方側の外周面部328B)から他端(他方側の外周面部328B)に向けて第2磁石孔322と第1磁石孔321との間を通って流れる。
【0036】
本実施例では、第2部位3212の幅であって、磁路に対して交差する方向の幅は、外周面部328Bからd軸に向かうにつれて、徐々に大きくなる。例えば、
図3に示すように、第1永久磁石61及び第2永久磁石62の径方向内側端部(周方向でd軸に近い側の端部)における同幅L2は、第1永久磁石61及び第2永久磁石62の径方向外側端部(周方向でd軸から遠い側の端部)における同幅L1により大きくなる。このような第2部位3212の幅の特徴は、第1永久磁石61及び第2永久磁石62についてd軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成を実現することで、容易化される。すなわち、第1永久磁石61及び第2永久磁石62についてd軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成を実現することで、第2部位3212の幅を、外周面部328Bからd軸に向かうにつれて、徐々に大きくする構成が容易となる。これにより、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を容易に実現できる。
【0037】
第3部位3213は、第2磁石孔322よりも径方向内側を通って周方向両側がロータコア32の外周面328まで延在する。第3部位3213は、第2部位3212の周方向両側において、ロータコア32の外周面328の一部328Cを形成する。
【0038】
また、ロータコア32は、このような3つの部位3211、3212、3213を有することで、3つの部位3211、3212、3213を繋ぐ複数のブリッジ部41、42、43、44を有する。
【0039】
ブリッジ部41(以下、「第1ブリッジ部41」と称する)は、第2部位3212に対して第1部位3211を径方向外側で支持する。第1ブリッジ部41は、第1部位3211の周方向両側に対で設けられる。第1ブリッジ部41は、ロータコア32の外周面328と第1磁石孔321の間に延在する。
【0040】
ブリッジ部42(以下、「第2ブリッジ部42」と称する)は、第3部位3213に対して第2部位3212を径方向外側で支持する。第2ブリッジ部42は、第2部位3212の周方向両側に対で設けられる。第2ブリッジ部42は、ロータコア32の外周面328と第2磁石孔322の間に延在する。
【0041】
ブリッジ部43(以下、「第1センタブリッジ部43」と称する)は、第2部位3212に対して第1部位3211をd軸上で支持する。
【0042】
ブリッジ部44(以下、「第2センタブリッジ部44」と称する)は、第3部位3213に対して第2部位3212をd軸上で支持する。
【0043】
次に、
図5から
図7を参照して、本実施例のロータ30の更なる効果について説明する。
図5は、着磁性の説明図であり、
図6及び
図7は、第1永久磁石61及び第2永久磁石62の円弧形状の半径及び配置に関する効果の説明図である。
図5には、第1永久磁石61及び第2永久磁石62が設けられたロータコア32の上面視において、第1永久磁石61及び第2永久磁石62に対する着磁用の磁束(以下、「着磁磁束」と称する)の流れが矢印R500で模式的に示されている。
【0044】
本実施例によれば、上述したように、第1永久磁石61及び第2永久磁石62についてd軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成を実現することで、上述した良好な磁路幅を実現できるだけではなく、
図5に示すように、着磁磁束の流れやすい位置に、第1永久磁石61及び第2永久磁石62を配置できる。これにより、良好なモータ1の出力特性(トルク特性)を実現できる。
【0045】
図6には、比較例として、円弧形状の半径が比較的大きい場合の第1永久磁石61’及び第2永久磁石62’のそれぞれの外形が点線で示されている。この場合、
図6に示すように、第2部位3212の幅Lが、実線に比べて小さくなる。すなわち、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅(第2部位3212における磁路幅)を実現することが難しくなる。
【0046】
他方、
図7に示す比較例では、
図6に示す比較例とは異なり、円弧形状の半径が比較的大きい第2永久磁石62’を用いて第2部位3212の幅Lを比較的大きくすべく、
図7にて点線で示すように、d軸に近い側の同幅が広がる方向に第2永久磁石62’の配置角度が変化されている。この場合、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を実現できるものの、着磁磁束の流れやすい位置から第2永久磁石62’の位置がずれやすくなり、着磁性の低下を招くおそれがある。なお、
図7において、円弧700は、第2永久磁石62の最内径位置を通る円弧であり、円弧702は、第2永久磁石62’の最内径位置を通る円弧である。
【0047】
この点、本実施例によれば、上述したように、式(1)及び式(2)を満たすような比較的小さい半径の第1永久磁石61及び第2永久磁石62を配置することで、良好な着磁性を確保しつつ、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を実現できる。
【0048】
なお、本実施例では、第1永久磁石61は、好ましい例として、第2永久磁石62と同じ円弧形状であるが、これに限られない。例えば、第1永久磁石61は、第2永久磁石62よりも半径が大きい円弧形状を有してもよいし、究極的には直線状の形態であってもよい。
【0049】
次に、
図8以降を参照して、各種の変形例とともに、本実施例の更なる効果について説明する。
図8以降においては、上述した実施例と同様であってよい構成要素には、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0050】
図8は、第1変形例によるロータ30Aの説明図であり、前出の
図3と同様、一の磁極に係る構成を軸方向視で拡大して示す平面図である。
【0051】
第1変形例によるロータ30Aは、上述した実施例によるロータ30に対して、ロータコア32がロータコア32Aで置換され、かつ、第1永久磁石61が第1永久磁石61Aで置換された点が異なる。
【0052】
ロータコア32Aは、上述した実施例のロータコア32に対して、第1磁石孔321が第1磁石孔321Aで置換された点が異なる。第1磁石孔321Aは、
図8に示すように、一の磁極に対して1つだけ設けられる。これに伴い、第1センタブリッジ部43が省略され、それに伴い、第1ブリッジ部41Aが第1ブリッジ部41に比べて径方向の厚みを有する。
【0053】
第1永久磁石61Aは、上述した実施例の第1永久磁石61に対して、一の磁極に対して1つだけ設けられる点が異なる。この場合、第1永久磁石61Aは、上述した実施例の第1永久磁石61と同様の円弧形状であってよい。第1永久磁石61Aの円弧形状の中心は、d軸上に位置する。
【0054】
かかる第1変形例によっても、上述した実施例と同様の第2永久磁石62を有することで、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を実現できる。
【0055】
なお、第1変形例では、第1センタブリッジ部43が省略されることから、第1永久磁石61Aに係る遠心力を支持する第1ブリッジ部41Aは、第1ブリッジ部41に比べて径方向の厚みが大きくなる。かかる径方向の厚みが大きい第1ブリッジ部41Aは、漏れ磁束を増加させてしまう点で不利である。換言すると、上述した実施例によれば、比較的小さい半径の第1永久磁石61を利用しつつ、第1永久磁石61についてd軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成を実現できる。これにより、上述した実施例によれば、第1センタブリッジ部43により第1ブリッジ部41の径方向の厚みを比較的小さくでき、その結果、漏れ磁束を低減できる。
【0056】
図9は、第2変形例によるロータ30Bの説明図であり、前出の
図3と同様、一の磁極に係る構成を軸方向視で拡大して示す平面図である。
【0057】
第2変形例によるロータ30Bは、上述した実施例によるロータ30に対して、第2永久磁石62が第2永久磁石62Bで置換された点が異なる。
【0058】
第2永久磁石62Bは、
図9に示すように、一の第2磁石孔322に対して2つ配置されている点が、1つだけ配置される上述した実施例の第2永久磁石62とは異なる。この場合、第2永久磁石62Bは、周方向の長さを含め第1永久磁石61と同じ構成であってよい。すなわち、第1永久磁石61及び第2永久磁石62Bは、共通の磁石片により形成されてよい。この場合、第1永久磁石61と第2永久磁石62Bを区別せずに製造できるので、生産性を高めることができる。また、一の第2磁石孔322に対して2つの第2永久磁石62Bが配置されることで、高い生産性を維持しつつ、第2永久磁石全体としての必要な磁石量を確保できる。なお、歩留まりを高めるために、共通の磁石片は、切断前の円形のリング磁石の周長(円周の長さ)に対して、整数で割り切れる周長を有してよい。
【0059】
かかる第2変形例によっても、上述した実施例と同様に、良好な着磁性を確保しつつ、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を実現できる。
【0060】
なお、第2変形例では、一の第2磁石孔322に対して2つの同一の第2永久磁石62Bが設けられるが、一の第2磁石孔322に対して3つ以上の第2永久磁石62Bが設けられてもよい。また、一の第1磁石孔321に対して、2つ以上の同一の第1永久磁石61が設けられてもよい。
【0061】
また、第2変形例では、
図9に示すように、一の第2磁石孔322に設けられる2つの第2永久磁石62Bは、周方向で隣接しているが、周方向で僅かに離間されてもよい。
【0062】
図10は、第3変形例によるロータ30Cの説明図であり、前出の
図3と同様、一の磁極に係る構成を軸方向視で拡大して示す平面図である。
【0063】
第3変形例によるロータ30Cは、上述した実施例によるロータ30に対して、ロータコア32がロータコア32Cで置換され、かつ、第2永久磁石62が第2永久磁石62Cで置換された点が異なる。
【0064】
ロータコア32Cは、上述した実施例のロータコア32に対して、第2磁石孔322が第2磁石孔322Cで置換された点が異なる。第2磁石孔322Cは、
図10に示すように、一の磁極に対して3つ設けられる。これに伴い、第2センタブリッジ部44が2つの第2センタブリッジ部44Cで置換される。
【0065】
第2永久磁石62Cは、上述した実施例の第2永久磁石62に対して、一の磁極に対して3つ設けられる点が異なる。すなわち、第2永久磁石62Cは、d軸に対してX1側の第2永久磁石621Cと、d軸に対してX2側の第2永久磁石622Cと、中央の第2永久磁石623Cとを含む。第2永久磁石621C、622Cは、上述した実施例の対の第2永久磁石62と同様の形態及び配置であってよい。ただし、
図10に示す例では、第2永久磁石621C、622Cは、上述した実施例の対の第2永久磁石62に対して周方向の長さだけが異なる。この場合、第2永久磁石621C、622Cは、周方向の長さを含め第1永久磁石61と同じ構成であってもよい。
【0066】
中央の第2永久磁石623Cは、軸方向に視て、径方向内側に凸となる円弧形状を有してよい。中央の第2永久磁石623Cの円弧形状の中心は、d軸上に位置する。
【0067】
かかる第2変形例によっても、一の磁極に係る第2永久磁石62Cは、一の磁極に係るd軸に関して対称に配置される一対の第2永久磁石621C、622Cを備え、一対の第2永久磁石621C、622Cは、上述した実施例の対の第2永久磁石62と同様の構成を有するため、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。すなわち、第2部位3212の幅を、外周面部328Bからd軸に向かうにつれて徐々に大きくすることで、リラクタンストルク向上効果の大きい磁路幅を実現できる。
【0068】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0069】
例えば、上述した実施例では、好ましい例として、第1永久磁石61及び第2永久磁石62の双方についてd軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成を実現するが、第2永久磁石62についてのみd軸に対して円弧中心が同一側にオフセットする構成を実現してもよい。
【0070】
また、上述した実施例では、第1永久磁石61及び第2永久磁石62による2層配置であるが、第2永久磁石62よりも径方向内側に更なる永久磁石を配置してなる3層以上の配置において適用されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1・・・モータ(回転電機)、30、30A、30B、30C・・・ロータ、32、32A、32C・・・ロータコア、321、321A・・・第1磁石孔、322、322C・・・第2磁石孔、328・・・外周面、61、61A・・・第1永久磁石、62、62B、62C・・・第2永久磁石