(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/18 20060101AFI20250115BHJP
【FI】
B60R21/18
(21)【出願番号】P 2021185103
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05062662(US,A)
【文献】特開2020-066425(JP,A)
【文献】特開2010-132215(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04306528(DE,A1)
【文献】特開2008-049834(JP,A)
【文献】特開2020-164145(JP,A)
【文献】特開2015-051744(JP,A)
【文献】特開2009-166774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が把持して操舵中心軸回りに回転操作するハンドルの操舵部が、上面側における操舵中心軸と略直交方向の運転者と対向する運転者対向面、を後下がりに傾斜させて配設される構成として、
作動時、前記操舵部と運転者との間に膨張したエアバッグを配設させる構成のエアバッグ装置であって、
前記エアバッグを折り畳んだ収納部位が、運転者の着座する運転席に配設されるシートベルトにおけるラップベルト部の部位として、膨張時の前記エアバッグを、前記収納部位から上方へ展開膨張させて、前記操舵部と前記運転者の上半身との間に配置させるように、配設され、
膨張完了時の前記エアバッグが、前面側に、前記ハンドルの前記運転者対向面に支持されるハンドル支持面
であって、略直方体形状の前側膨張部の前面をなすハンドル支持面を備えるとともに、上
部後面側
に、運転者の頭部を受止可能な頭受止膨張部
であって、前記前側膨張部の後面から後方に突出する略楕円形状の後側膨張部の後面をなす頭受止膨張部を備えて構成されており、
前記エアバッグを膨張させるために前記エアバッグに供給される膨張用ガスを放出するインフレーターが、前記運転席の座部の下面に取り付けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記インフレーターから放出された膨張用ガスを前記エアバッグに案内する導管部と、
折り畳まれた前記エアバッグを前記ラップベルトに取り付けるベルト取付部と、
前記ベルト取付部と折り畳まれた前記エアバッグを覆うカバーと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
膨張完了時の前記エアバッグの前記ハンドル支持面における前記ハンドルの前記運転者対向面から前記収納部位側に延びる下部領域が、前記操舵部の後端を越えて前方へ突出することを抑制されて、前記収納部位に緩やかに連結される突出抑制面部としていることを特徴とする請求項1
又は2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動時、運転者が把持するハンドルの操舵部と運転者との間に、膨張したエアバッグを配設させて、運転者を保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作動時に、運転者が把持するハンドルの操舵部と運転者との間に、膨張したエアバッグを配設させるエアバッグ装置としては、折り畳んだエアバッグを、運転席における座部の左右方向の中央付近に、収納させ、作動時、運転者の左右の大腿部の間の位置の収納部位から、上方へ突出させて、ハンドルの操舵部と運転者との間に、膨張したエアバッグを配設させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、着座した運転者が装着したシートベルトのラップベルト部の前方側に、運転席の左右両側付近に連結させて形状保持性を有したラップバーを配設させ、折り畳んだエアバッグをラップバーに収納し、作動時、ラップバーの収納部位から、上方へ突出させて、ハンドルの操舵部と運転者との間に、膨張したエアバッグを配設させるものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-104592号公報
【文献】特開2013-139184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のエアバッグ装置では、着座した運転者の大腿部の間からエアバッグが上方へ突出する構成であり、運転者の姿勢が悪ければ、ハンドルの操舵部の運転者側と逆側となる裏面側に、エアバッグが展開膨張する虞れがあり、その場合には、前方移動する運転者の頭部をハンドルの操舵部から的確に保護できなくなってしまう。なお、ハンドルの操舵部は、後上がりに配設される操舵中心軸回りに回転操作するもので、操舵部の上面側における操舵中心軸と略直交方向の運転者と対向する運転者対向面が、後下がりに傾斜させて配設されることとなって、操舵部の下端側が、運転者側に接近して配設されることから、特許文献1のエアバッグ装置では、膨張するエアバッグが、運転者の大腿部と干渉して、突出方向がぶれれば、操舵部の裏面側に進入する事態を招く虞れが生じ易い。また、特許文献2のエアバッグ装置では、シートベルトとは別に、ラップバーを着座した運転者の前方側にセットする必要があり、簡便に装着できず、装着に手間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便に装着でき、かつ、膨張完了時のエアバッグがハンドルの操舵部から的確に運転者の頭部を保護できるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置は、運転者が把持して操舵中心軸回りに回転操作するハンドルの操舵部が、上面側における操舵中心軸と略直交方向の運転者と対向する運転者対向面、を後下がりに傾斜させて配設される構成として、
作動時、前記操舵部と運転者との間に膨張したエアバッグを配設させる構成のエアバッグ装置であって、
前記エアバッグを折り畳んだ収納部位が、運転者の着座する運転席に配設されるシートベルトにおけるラップベルト部の部位として、膨張時の前記エアバッグを、前記収納部位から上方へ展開膨張させて、前記操舵部と前記運転者の上半身との間に配置させるように、配設され、
膨張完了時の前記エアバッグが、前面側に、前記ハンドルの前記運転者対向面に支持されるハンドル支持面、を備えるとともに、上部側に、後面側で運転者の頭部を受止可能な頭受止膨張部、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るエアバッグ装置では、運転席に着座した運転者が装着するシートベルトのラップベルト部の部位に、折り畳まれたエアバッグを収納した収納部位が配設されている。そのため、運転者がシートベルトを装着して、シートベルトにおけるラップベルト部を、着座した運転者の腰部の前に配置させれば、容易に、エアバッグ装置のエアバッグの収納部位を、運転者に対して、装着できる。そして、運転者の腰部の前にエアバッグの収納部位が配設された後、エアバッグ装置が作動されれば、膨張時のエアバッグを、収納部位から上方へ展開膨張させて、ハンドルの操舵部と運転者の上半身との間に配置させ、そして、前面側のハンドル支持面をハンドルの操舵部の運転者対向面側に配置させ、上部側に、後面側で運転者の頭部を受止可能な頭受止膨張部を配置させて、膨張を完了させることから、前方移動する運転者の上半身がハンドルの操舵部と干渉しようとしても、ハンドルの操舵部の運転者対向面にハンドル支持面を支持させて、反力を確保したエアバッグの頭受止膨張部が、的確に、頭部を受け止めて保護できる。なお、運転者に装着するシートベルトのラップベルト部は、ハンドルの操舵部の後端より、後下方向にずれて配置されることから、エアバッグの収納部位も、ハンドルの操舵部の後端より、後下方向にずれて配置されることとなって、収納部位から上方へ展開膨張するエアバッグは、操舵部に干渉し難く、円滑に、ハンドルの操舵部と運転者の上半身との間に配置されることとなる。
【0009】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、簡便に装着でき、かつ、膨張完了時のエアバッグがハンドルの操舵部から的確に運転者の頭部を保護することができる。
【0010】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、膨張完了時の前記エアバッグが、前後方向の厚さ寸法を、上端側から下端側の収納部位にかけて、徐々に、小さくするように構成されていることが望ましい。
【0011】
このような構成では、ハンドルの操舵部の運転者対向面と着座した運転者の上半身の前面側との間の前後方向の距離が、上部から下部にかけて、徐々に、小さくなるのに対応して、ハンドルの操舵部と運転者の上半身との間のスペースを塞ぐように、エアバッグが膨張することとなり、エアバッグは、その後面側で、前方移動する運転者の頭部を含めた上半身の略全域を、迅速かつ好適に、受け止めて保護可能となる。
【0012】
この場合、膨張完了時の前記エアバッグが、左右方向の側方から見た外形形状を、前面側の前記ハンドル支持面と後面側の運転者を受け止める運転者拘束面とを前記収納部位側の下端側にかけて、相互に接近する2辺と、前記ハンドル支持面と前記運転者拘束面との上端付近相互を連結する上辺と、を備えた略三角形状としていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、膨張完了時のエアバッグの運転者拘束面が、略平面状としており、部分的に突出する部位を有さずに、広い面積で、運転者の頭部を含めた上半身をソフトに受け止めることができる。また、膨張完了時のエアバッグが、側方から見て、略三角形状、すなわち、各々、略平面状としたハンドル支持面、運転者拘束面、及び、ハンドル支持面と運転者拘束面との上端相互を連結する上面と、からなる略三角形状として、エアバッグの上面側が上方へ大きく膨らむ曲面状の形状でないことから、容積を小さくできて、エアバッグをコンパクトに構成できる。
【0014】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、膨張完了時の前記エアバッグの前記ハンドル支持面における前記ハンドルの前記運転者対向面から前記収納部位側に延びる下部領域が、前記操舵部の後端を越えて前方へ突出することを抑制されて、前記収納部位に緩やかに連結される突出抑制面部としていることが望ましい。
【0015】
このような構成では、作動時におけるラップベルト部の収納部位からエアバッグが上方へ展開膨張する際、膨張完了時のエアバッグ自体が、ハンドル支持面におけるハンドルの運転者対向面側から収納部位側に連結される下部領域に、操舵部の後端を越えて前方に突出するような部位、を具備していないことから、操舵部の裏面(運転者対向面と逆側の面)側に、進入して引っ掛ることが無い。そのため、エアバッグは、膨張完了形状まで、迅速に展開膨張して、上部側に頭受止膨張部を配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のエアバッグ装置における作動前の状態を示す運転席の右側面図である。
【
図2】実施形態のエアバッグ装置における作動前の状態を示す運転席の正面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグ装置における作動前の状態を示す運転席の左側面図である。
【
図4】実施形態のエアバッグの収納部位に概略断面図であり、
図2のIV-IV部位に対応する。
【
図5】実施形態のエアバッグ装置の作動時における右側面図である。
【
図6】実施形態のエアバッグ装置におけるエアバッグの単体での膨張完了時を示す概略斜視図である。
【
図7】実施形態に使用するエアバッグ、導管部、及び、ベルト取付部、を形成する構成材料の平面図である。
【
図8】実施形態のエアバッグ装置の変形例における作動時における右側面図である。
【
図9】
図8に示すエアバッグ装置におけるエアバッグの単体での膨張完了時を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ装置30は、
図1~3に示すように、ハンドル3の後方側に配置された運転席(シート)10に配設されている。運転席10は、運転者MDが着座するシートであり、背もたれ部12と座部14とを備えている。なお、実施形態のエアバッグ装置30は、シートベルト20とともに、運転者MDを保護する運転者保護装置18を構成することとなる。
【0018】
ハンドル3は、車両を操舵するステアリング装置1の操舵中心軸2を構成する図示しないステアリングシャフトの後端に連結されており、そして、運転者MDが把持してハンドル3を操舵する略円環状の操舵部4を備えて構成されている。操舵部4は、車両の操舵時、回転中心軸2周りに回転操舵し、操舵部4の上面側は、操舵中心軸2の略直交方向に沿って配置されており、操舵中心軸2が後上がりに傾斜していることから、後下がりの傾斜面として、運転者MDに対向する運転者対向面4a、を構成している。
【0019】
シートベルト20は、運転席10に着座した運転者MDを拘束できるように、運転席10の左右方向の一方側(実施形態では右方側)において、背もたれ部12の右側の上部12aに配設されたリトラクタ23から繰り出し可能に配設されており、リトラクタ23から下方に延びた先端20aを運転席10の座部14の右側部16側のアンカ部材25に連結させている。運転者MDが運転席10に着座した状態で、アンカ部材25とリトラクタ23との間に配設されたタング28を、リトラクタ23からシートベルト20を繰り出しつつ、座部14の左側部15側に配設されたバックル27に締結させれば、シートベルト20におけるタング28からアンカ部材25までの部位が、運転者MDの腰部MWの前方を覆って、運転者MDの腰部MWの前方移動を抑制するラップベルト部22となり、シートベルト20におけるタング28からリトラクタ23までの部位が、運転者MDの胸部MBを含めた上半身MUの前方移動を抑制するショルダーベルト部21となる。
【0020】
なお、
図3に示す符号26の部材は、シートベルト20を、挿通可能として、座部14の右側部16から外れないように押えておく押え部材である。また、バックル27には、図示しないリリースボタンが配設されており、締結したタング28を締結解除する際、リリースボタンを押圧操作すれば、タング28をバックル27から取り外すことができる。さらに、リトラクタ23は、シートベルト20の急激な引き出しがあれば、引き出しを停止させ、さらに、車両の衝突等があれば、引き出したシートベルト20を巻き取り可能なプリテンショナーを配設させて構成されている。
【0021】
そして、シートベルト20が運転者MDに装着された状態において、ラップベルト部22の上面22a側における左右方向の中央付近は、エアバッグ装置30における折り畳まれたエアバッグ40の収納部位(実施形態の場合、取付部位、若しくは、配置部位、とも言える)29としている。なお、運転者MDに装着するシートベルト20のラップベルト部22は、ハンドル3の操舵部4の後端4cより、後下方向にずれて配置されることから、エアバッグ40の収納部位29も、ハンドル3の操舵部4の後端4cより、後下方向にずれて配置されることとなる。
【0022】
エアバッグ装置30は、膨張用ガスGの流入時に、収納部位29から上方へ展開膨張して、操舵部4と運転者MDの上半身MUとの間に配置されるエアバッグ40と、エアバッグ40に膨張用ガスG(
図5,6参照)を供給するインフレーター31と、インフレーター31からの膨張用ガスGをエアバッグ40の流入口部56まで案内する導管部58と、ラップベルト部22の収納部位29に折り畳んだエアバッグ40を取り付けておくベルト取付部62と、折り畳んだエアバッグ40をベルト取付部62とともに覆っておく破断可能なカバー64と、を備えて構成されている(
図2,4参照)。
【0023】
インフレーター31は、膨張用ガスGを吐出する略円柱状のインフレーター本体32と、インフレーター本体32から突出して略L字状に屈曲するパイプ部33と、を備えて、運転席10の座部14の後面側に取付固定されている(
図1,2参照)。パイプ部33には、エアバッグ40に接続される導管部58の先端部58b側が、外装され、さらに、クランプ34で締め付けられて、連結されている。
【0024】
導管部58は、元部58a側を、エアバッグ40の膨張用ガスGを流入させるための流入口部56に、連結させている(
図6参照)。元部58aの上面(表面)58aa側には、流入口部56の流入口56aに対応する連通口59が開口されている。
【0025】
ベルト取付部62は、導管部58の元部58aの下面(裏面)58ab側に連結されて、円環状として、ラップベルト部22の収納部位(取付部位)29を包むことにより、ラップベルト部22に取り付けられて配設されている(
図4参照)。
【0026】
ベルト取付部62は、ラップベルト部22を挿通させる挿通孔62aを有した筒状として、導管部58の元部58aの下面58abに取り付けられている。
【0027】
カバー64は、可撓性を有して破断可能な布等のシート材から形成されて、折り畳まれたエアバッグ40と、導管部58の元部58aと、ラップベルト部22を挿通させたベルト取付部62と、を覆って、配設されている。
【0028】
エアバッグ40は、シートベルト20のラップベルト部22となる部位の上面22a側における左右方向の中央付近を収納部位(取付部位)29として、折り畳まれて収納されている。エアバッグ40は、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。なお、導管部58やベルト取付部62も、エアバッグ40と同様に、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。
【0029】
そして、エアバッグ40は、膨張完了時、
図1~3,5に示すように、前面41c側に、ハンドル3の操舵部4における運転者対向面4aに支持されるハンドル支持面50、を備えるとともに、上部40a側に、後面40d側で運転者MDの頭部MHを受止可能な頭受止膨張部54、を備えて構成されている。
【0030】
詳しくは、実施形態の場合、膨張完了時のエアバッグ40は、周壁41が、略長方形状の前壁部42と、略長方形状の後壁部44と、前壁部42と後壁部44との間の略三角形状の左右の側壁部46(L,R)と、略長形状の上壁部48と、を備えて構成されるとともに、左右方向から見て、略三角柱状としている(
図5,6参照)。
【0031】
換言すれば、膨張完了時のエアバッグ40が、左右方向の側方から見た外形形状を、前面40c側のハンドル支持面50と後面40d側の運転者MDを受け止める運転者拘束面53とを収納部位29側の下端50ba,53ba側にかけて、相互に接近する2辺SF,SBと、ハンドル支持面50と運転者拘束面53との上端50aa,53aa付近相互を連結する上辺SUと、を備えた略三角形状としている。そのため、実施形態では、膨張完了時のエアバッグ40が、前後方向の厚さ寸法TL(
図1,5参照)を、上端40aa側から下端40ba側の収納部位29にかけて、徐々に、小さくするように構成されている。
【0032】
エアバッグ40の下端40ba付近は、エアバッグ40内に膨張用ガスGを流入させるための流入口56aを開口させた流入口部56としている(
図6参照)。流入口56aは、実施形態の場合、2個開口されて、左右方向に並設されており、流入口部56には、導管部58の元部58aが、各流入口56aに連通口59を連通させるように、連結されている。
【0033】
さらに、実施形態の場合、車両搭載状態でのエアバッグ40の膨張完了時、エアバッグ40のハンドル支持面50におけるハンドル3の運転者対向面4aから収納部位29側に延びる下部領域(下部)50bが、操舵部4の後端4cを越えて前方へ突出することを抑制されて、収納部位29に緩やかに連結される突出抑制面部51としている(
図5参照)。
【0034】
なお、ハンドル支持面50の上部50a側は、上端50aaをハンドル3の運転者対向面4aを越えた上方まで延びるように、配設されている。
【0035】
また、膨張完了時のエアバッグ40は、ハンドル支持面50と運転者拘束面53との相互の交差角度θ(
図5参照)を、10~50°の範囲内(好ましくは、20~40°の範囲内)の約30°として、形成されている。
【0036】
エアバッグ40を形成するバッグ用基布70は、
図7に示すように、エアバッグ40の前壁部42を構成する略長方形形状の前壁用部位71と、前壁用部位71の長手方向に沿って連なって、エアバッグ40の後壁部44を構成する略長方形形状の後壁用部位72と、前壁用部位71の長手方向に沿って連なって、エアバッグ40の上壁部48を構成する略長方形形状の上壁用部位75と、前壁用部位71の左右両側にそれぞれ連なって、エアバッグ40の左右の側壁部46(L,R)を構成する略三角形形状の側壁用部位73,74と、を備えて構成されている。前壁用部位71と後壁用部位72との境界部付近には、流入口56a,56aが開口されている。
【0037】
導管部58は、上面側と下面側とを形成する表側材77と裏側材78との外周縁相互を縫合して形成されている。表側材77には、連通口59が形成され、裏側材78には、ベルト取付部62と連結される連結部位78aが配設されることとなる。
【0038】
ベルト取付部62は、1枚のシート状の取付用部材80から構成され、取付用部材80の端縁80a,80a相互を縫合して、ラップベルト部22を包んで、ラップベルト部22に取り付けられることとなる。符号80bの部位は、導管部58の連結部位78aに連結される連結部位である。
【0039】
エアバッグ40の製造は、導管部58を結合させつつ、製造する。すなわち、流入口56aの設けられたバッグ用基布70の流入口56a,56aの周縁に、導管部58の表側材77の連通口59,59の周縁を縫合しておき、バッグ用基布70の左右の側壁用部位73,74の側縁73a,74aを、後壁用部位72の側縁72a,72bと縫合し、また、左右の側壁用部位73,74の端縁73b,74bと上壁用部位75の側縁75a,75bとを相互に縫合し、そして、上壁用部位75の端縁75cと後壁用部位72の端縁72cとを相互に縫合すれば、エアバッグ40の周壁41を形成することができる。そして、取付用部材80の連結部位80bを連結部位78aに連結した導管部58の裏側材78と、エアバッグ40の周壁41に連結させた導管部58の表側材77との外周縁相互を縫合して、導管部58を形成すれば、導管部58を連結させたエアバッグ40を形成することができる。そして、エアバッグ40を折り畳んで、その折畳体85をラップベルト部22の収納部位29に取り付ける。この取り付けは、取付用部材80の端縁80a,80a相互を縫合していない状態のベルト取付部62を、シートベルト20のラップベルト部22の収納部位(取付部位)29に、包むように配置させて、取付用部材80の端縁80a,80a相互を縫合して、環状の挿通孔62aを形成してベルト取付部62を形成しつつ、ベルト取付部62をラップベルト部22の収納部位(取付部位)29に取り付け、そして、折り畳んだエアバッグ40(折畳体85)を、ベルト取付部62や導管部58の元部58aとともに、カバー64で包めば、シートベルト20の収納部位29に折畳体85を取り付けることができる。さらに、エアバッグ40から延びる導管部58の先端部58bをインフレーター31のインフレーター本体32から延びるパイプ部33に接続させれば、エアバッグ装置30を運転席10に搭載することができる。
【0040】
実施形態のエアバッグ装置30では、運転席10に着座した運転者MDが装着するシートベルト20のラップベルト部22の部位に、折り畳まれたエアバッグ40を収納した収納部位29が配設されている。そのため、運転者MDがシートベルト20を装着して、シートベルト20におけるラップベルト部22を、着座した運転者MDの腰部MWの前に配置させれば、容易に、エアバッグ装置30のエアバッグ40の収納部位29を、運転者MDに対して、装着できる。そして、運転者MDの腰部MWの前にエアバッグ40の収納部位29が配設された後、車両が衝突して、エアバッグ装置30が作動されれば、膨張時のエアバッグ40は、収納部位29から上方へ展開膨張して、ハンドル3の操舵部4と運転者MDの上半身MUとの間に配置させ、そして、
図5に示すように、前面40c側のハンドル支持面50をハンドル3の操舵部4の運転者対向面4a側に配置させ、上部40a側に、後面40d側で運転者MDの頭部MHを受止可能な頭受止膨張部54を配置させて、膨張を完了させる。そのため、前方移動する運転者MDの上半身MUがハンドル3の操舵部4と干渉しようとしても、ハンドル3の操舵部4の運転者対向面4aにハンドル支持面50を支持させて、反力を確保したエアバッグ40の頭受止膨張部54が、的確に、頭部MHを受け止めて保護できる。なお、ラップベルト部22におけるエアバッグ40の収納部位29は、ハンドル3の操舵部4の後端4cより、後下方向にずれて配置されることから、収納部位29から上方へ展開膨張するエアバッグ40は、操舵部4に干渉し難く、円滑に、ハンドル3の操舵部4と運転者MDの上半身MUとの間に配置されることとなる。
【0041】
したがって、実施形態のエアバッグ装置30では、簡便に装着でき、かつ、膨張完了時のエアバッグ40がハンドル3の操舵部4から的確に運転者MDの頭部MHを保護することができる。
【0042】
そして、実施形態のエアバッグ装置30では、膨張完了時のエアバッグ40が、前後方向の厚さ寸法TLを、上端40aa側から下端40ba側の収納部位29にかけて、徐々に、小さくするように構成されている。
【0043】
そのため、実施形態では、ハンドル3の操舵部4の運転者対向面4aと着座した運転者MDの上半身MUの前面側との間の前後方向の距離FLが、上部から下部にかけて、徐々に、小さくなるのに対応して(
図1,5参照)、ハンドル3の操舵部4と運転者MDの上半身MUとの間のスペースSP(
図1参照)を塞ぐように、エアバッグ40が膨張することとなり、エアバッグ40は、その後面40d側で、前方移動する運転者MDの頭部MHを含めた上半身MUの略全域を、迅速かつ好適に、受け止めて保護可能となる。
【0044】
この場合、実施形態では、膨張完了時のエアバッグ40が、左右方向の側方から見た外形形状を、前面40c側のハンドル支持面50と後面40d側の運転者MDを受け止める運転者拘束面53とを収納部位29側の下端40ba側にかけて、相互に接近する2辺SF,SBと、ハンドル支持面50と運転者拘束面53との上端50aa,53aa付近相互を連結する上辺SUと、を備えた略三角形状としている(
図5参照)。
【0045】
そのため、実施形態では、膨張完了時のエアバッグ40の運転者拘束面53が、略平面状としており、部分的に突出する部位を有さずに、広い面積で、運転者MDの頭部MHを含めた上半身MUをソフトに受け止めることができる。また、膨張完了時のエアバッグ40が、側方から見て、略三角形状、すなわち、各々、略平面状としたハンドル支持面50、運転者拘束面53、及び、ハンドル支持面50と運転者拘束面53との上端50aa,53aa相互を連結する上面40eと、からなる略三角形状として、エアバッグ40の上面40e側が上方へ大きく膨らむ曲面状の形状でないことから、容積を小さくできて、エアバッグ40をコンパクトに構成できる。
【0046】
また、実施形態の場合、膨張完了時のエアバッグ40が、ハンドル支持面50と運転者拘束面53との相互の交差角度θを、10~50°の範囲内(好ましくは、20~40°の範囲内)の約30°として、形成されている。
【0047】
そのため、実施形態の場合、ハンドル支持面50と運転者拘束面53との交差角度θが、10°未満でないことから、膨張完了時のエアバッグ40の前後方向の厚さ寸法を確保できて、クッション性よく、運転者MDの上半身を受け止めて保護できる。また、ハンドル支持面50と運転者拘束面53との交差角度が、50°を越えないことから、膨張完了時のエアバッグ40の上端40aa側の後方への突出量を抑えることができて、運転者MDの頭部を含めた上半身MUを、クッション性よく、受け止め可能となる。
【0048】
そしてまた、実施形態のエアバッグ装置30では、膨張完了時のエアバッグ40のハンドル支持面50におけるハンドル3の運転者対向面4aから収納部位29側に延びる下部領域50bが、操舵部4の後端4cを越えて前方へ突出することを抑制されて、収納部位29に緩やかに連結される突出抑制面部51としている。
【0049】
そのため、実施形態では、作動時におけるラップベルト部22の収納部位29からエアバッグ40が上方へ展開膨張する際、膨張完了時のエアバッグ40自体が、ハンドル支持面50におけるハンドル3の運転者対向面4a側から収納部位29側に連結される下部領域50bに、操舵部4の後端4cを越えて前方に突出するような部位、を具備していないことから、操舵部4の裏面(運転者対向面4aと逆側の面)4b側に、進入して引っ掛ることが無い。そのため、エアバッグ40は、膨張完了形状まで、迅速に展開膨張して、上部40a側に頭受止膨張部54を配設することができる。
【0050】
なお、実施形態のエアバッグ40は、側方から見て略三角柱状としているが、膨張完了時のエアバッグは、前面側に、ハンドルの運転者対向面に支持されるハンドル支持面、を備えるとともに、上部側に、後面側で運転者の頭部を受止可能な頭受止膨張部、を備えて構成されていればよい。そのため、例えば、
図7,8に示すエアバッグ装置30Aのエアバッグ40Aのように、膨張完了時、略直方体形状の前側膨張部90と、前側膨張部90の上部後面側に、略楕円球状の後側膨張部91と、を備えた形状としてもよい。
【0051】
このエアバッグ40Aでは、膨張完了時の略直方体形状の前側膨張部90の前面90aが、ハンドル3の操舵部4の運転者対向面4aに支持されるハンドル支持面50Aとなり、後側膨張部91が、後面側で運転者MDの頭部MHを受止可能な頭受止膨張部54Aを構成することとなる。なお、インフレーター31からの膨張用ガスGは、導管部58の連通口59を経て、流入口56aからエアバッグ40Aの前側膨張部90内に流入し、前側膨張部90の上部に設けられた連通口92を経て、後側膨張部91内に流入して、エアバッグ40Aが膨張している。
【0052】
なお、実施形態では、シートベルト20をシート付けとして、シートベルト20を繰り出すリトラクタ23とシートベルト20の先端20aを連結させたアンカ部材25とを、運転席(シート)10の右方側に配設した場合を示したが、シートベルト20を繰り出すリトラクタ23とシートベルト20の先端20aを連結させたアンカ部材25とを、車両の車体側、すなわち、ピラー部付近に配設して、詳しくは、運転席10の側方のBピラーの上部側から、シートベルト20を繰り出すようにして、シートベルト20の先端20aをBピラーの下部付近に配設したアンカ部材25に連結して、シートベルト20を車体付けとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
2…操舵中心軸、3…ハンドル、4…操舵部、4a…(上面)運転者対向面、4b…(下面)裏面、4c…後端、10…(シート)運転席、20…シートベルト、21…ショルダーベルト部、22…ラップベルト部、29…(取付部位、配置部位)収納部位、30,30A…エアバッグ装置、40,40A…エアバッグ、40a…上部、40aa…上端、40b…下部、40ba…下端、40c…前面、40d…後面、50,50A…ハンドル支持面、50aa…上端、50b…(下側領域)下部、50ba…下端、51…突出抑制面部、53…運転者拘束面、53aa…上端、53ba…下端、54,54A…頭受止膨張部、90…前側膨張部、90a…(ハンドル支持面)前面、91…(頭受止膨張部)後側膨張部、
SF…(前側)辺、SB…(後側)辺、SU…上辺、TL…(前後方向の)厚さ寸法、MD…運転者、MU…上半身、MH…頭部。