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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】シールド端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/40 20110101AFI20250115BHJP
【FI】
H01R24/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021190337
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023077157
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優佑
(72)【発明者】
【氏名】安田 知晃
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-037471(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0311602(US,A1)
【文献】実開平02-037472(JP,U)
【文献】特開2004-055552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド電線のシールド部に接続される外導体を備えたシールド端子であって、
前記外導体は、接続部材と、前記接続部材とは別の取付部材と、を有し、
前記接続部材は、筒部と、前記筒部と交差する方向に延びる延在部と、を有し、
前記取付部材は、前記延在部の外面を覆いつつ前記シールド電線に前記延在部を挟んで圧着される圧着部を有し、
前記延在部と前記筒部とは、側面視L字形をなし、前記延在部と前記筒部のそれぞれの外面間に形成された内角部を介して連続し、さらに、
前記接続部材は、前記延在部とは別に、前記筒部に屈曲して連なって前記シールド電線と前記圧着部との間に挟まれる介在部を有し、
前記取付部材は、前記延在部と前記介在部との間に形成された隙間を閉塞するとともに前記筒部と前記介在部との間に形成された間隙を閉塞する遮蔽部を有している、シールド端子。
【請求項2】
前記圧着部は、前記延在部の外面に接触する基部と、前記基部から突出し、前記シールド電線を包囲するバレルと、を有し、
前記基部に対して前記バレルが位置する側と、前記基部に対して前記筒部が位置する側とは、互いに反対側である、請求項1に記載のシールド端子。
【請求項3】
前記外導体と内導体との間には絶縁性の誘電体が配置され、
前記誘電体は、前記筒部の内側に配置される挿入部と、前記挿入部と交差する方向に延びて前記延在部に沿って配置される誘電本体部と、を有し、
前記接続部材は、前記延在部と対向する位置に対向延在部を有し、
前記対向延在部と前記筒部とは、側面視L字形をなし、前記対向延在部と前記筒部のそれぞれの外面間に形成された外角部を介して連続しており、
前記対向延在部は、前記筒部に対して前記外角部を中心として開放位置と閉止位置とに回動可能であり、前記開放位置において前記筒部の内側が開放され、前記閉止位置において前記延在部との間に前記誘電本体部を挟み込むように構成されている、請求項1または請求項2に記載のシールド端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールド端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接続端子と称されるシールド端子が開示されている。シールド端子は、接続部と端子部とを有して側面視L字形に形成されている。接続部は、外部導体圧着バレル部と、絶縁体囲繞部と、を有している。端子部は、円筒状の端子外部導体を有している。外部導体圧着バレル部、絶縁体囲繞部および端子外部導体は、シールド端子の外導体を構成する。外部導体圧着バレル部は、同軸ケーブル(シールド電線)の外部導体(シールド部)を圧着する際に筒形状に折り曲げられる。このため、外部導体圧着バレル部の先端側と端子外部導体との間である、内側の角部(内角部)には、隙間が形成されてしまう。なお、シールド端子に関する技術は、特許文献2~4にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-107140号公報
【文献】特開2014-107139号公報
【文献】特開平9-120870号公報
【文献】特開平8-153557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、外導体の内角部の隙間から高周波信号によるノイズの流出、侵入が生じ、シールド性能が損なわれる懸念があった。また、外部導体圧着バレル部のバレル形状と端子外部導体の筒形状とを一つの外導体に形成する必要があるため、成形の自由度が制限されるという問題もあった。
【0005】
そこで、本開示は、シールド性能および成形の自由度を向上させることが可能なシールド端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、シールド電線のシールド部に接続される外導体を備えたシールド端子であって、前記外導体は、接続部材と、前記接続部材とは別の取付部材と、を有し、前記接続部材は、筒部と、前記筒部と交差する方向に延びる延在部と、を有し、前記取付部材は、前記延在部の外面を覆いつつ前記シールド電線に前記延在部を挟んで圧着される圧着部を有し、前記延在部と前記筒部とは、側面視L字形をなし、前記延在部と前記筒部のそれぞれの外面間に形成された内角部を介して連続している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シールド性能および成形の自由度を向上させることが可能なシールド端子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1において、シールド電線に接続されたシールド端子の断面図である。
図2図2は、誘電体の斜視図である。
図3図3は、介在部が筒部に対して開放位置にある接続部材の斜視図である。
図4図4は、図3の状態の背面図である。
図5図5は、取付部材の斜視図である。
図6図6は、取付部材の底面図である。
図7図7は、介在部が筒部に対して開放位置にある接続部材に対し、誘電体が組み付けられた状態を示す斜視図である。
図8図8は、図7の状態から介在部が筒部に対して閉止位置に至った状態を示す側面図である。
図9図9は、図8の状態の背面図である。
図10図10は、介在部が筒部に対して閉止位置にある接続部材と、誘電体から引き出されたシールド電線と、を示す斜視図である。
図11図11は、シールド電線に接続されたシールド端子の斜視図である。
図12図12は、実施形態2において、シールド電線に接続されたシールド端子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のシールド端子は、
(1)シールド電線のシールド部に接続される外導体を備えたシールド端子であって、前記外導体は、接続部材と、前記接続部材とは別の取付部材と、を有し、前記接続部材は、筒部と、前記筒部と交差する方向に延びる延在部と、を有し、前記取付部材は、前記延在部の外面を覆いつつ前記シールド電線に前記延在部を挟んで圧着される圧着部を有し、前記延在部と前記筒部とは、側面視L字形をなし、前記延在部と前記筒部のそれぞれの外面間に形成された内角部を介して連続している。
【0010】
上記構成によれば、延在部と筒部とが内角部を介して連続し、内角部には隙間が形成されないため、シールド性能を向上させることができる。また、取付部材が圧着部を有し、接続部材が筒部を有しているため、一つの外導体に圧着部と筒部とが形成される場合と比べ、圧着部と筒部のそれぞれの成形の自由度を向上させることができる。
【0011】
(2)前記圧着部は、前記延在部の外面に接触する基部と、前記基部から突出し、前記シールド電線を包囲するバレルと、を有し、前記基部に対して前記バレルが位置する側と、前記基部に対して前記筒部が位置する側とは、互いに反対側であるのが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、シールド電線に対する圧着部の圧着過程で、バレルを変形させる金型が筒部と干渉するのを回避することができる。
【0013】
(3)前記接続部材は、前記延在部とは別に、前記筒部に屈曲して連なって前記シールド電線と前記圧着部との間に挟まれる介在部を有し、前記取付部材は、前記延在部と前記介在部との間に形成された隙間を閉塞する遮蔽部を有していると良い。
【0014】
上記構成によれば、延在部と介在部との間の隙間も取付部材の遮蔽部によって閉塞されるため、シールド性能をより向上させることができる。
【0015】
(4)前記外導体と内導体との間には絶縁性の誘電体が配置され、前記誘電体は、前記筒部の内側に配置される挿入部と、前記挿入部と交差する方向に延びて前記延在部に沿って配置される誘電本体部と、を有し、前記接続部材は、前記延在部と対向する位置に対向延在部を有し、前記対向延在部と前記筒部とは、側面視L字形をなし、前記対向延在部と前記筒部のそれぞれの外面間に形成された外角部を介して連続しており、前記対向延在部は、前記筒部に対して前記外角部を中心として開放位置と閉止位置とに回動可能であり、前記開放位置において前記筒部の内側が開放され、前記閉止位置において前記延在部との間に前記誘電本体部を挟み込むように構成されていると良い。
【0016】
上記構成によれば、対向延在部が開放位置にあるときに、筒部の内側に誘電体の挿入部を挿入し、延在部に誘電本体部を支持させることができる。対向延在部が閉止位置にあるときには、誘電本体部が対向延在部と延在部との間に挟み込まれ、さらに圧着部がシールド電線に圧着されることで、対向延在部の、開放位置への変位が規制される。同時に、誘電体の、外導体からの抜け出しも規制される。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
本開示の実施形態1のシールド端子10は、図1に示すように、導電性の内導体11と、絶縁性の誘電体12と、導電性の外導体13と、を備えている。誘電体12は、内導体11と外導体13との間に配置され、内導体11と外導体13との間を電気的に絶縁する。シールド端子10は、シールド電線90の端末部に接続される。なお、以下の説明において、前後方向については、図1の左側を前側とする。前側は、シールド電線90の長さ方向の先端側であり、図中符号Fで示す。後側は、前側の反対側であって、図中符号Rで示す。上下方向については、図1の上側を上側とする。上側は、図示しない相手シールド端子への接続側であり、図中符号Uで示す。下側は、上側の反対側であって、図中符号Dで示す。これらの方向は、説明の便宜上定めたものに過ぎず、使用時の態様を限定するわけではない。
【0019】
<シールド電線>
シールド電線90は、同軸ケーブルであって、図1に示すように、芯線91、被覆部92、シールド部93およびシース94を有している。芯線91は、高周波信号を伝送する導体である。被覆部92は、芯線91の外周を覆う絶縁樹脂製の被覆である。シールド部93は、被覆部92の外周を覆う編組線である。このシールド部93は、編組線に、銅箔、金箔、アルミ箔等の金属箔を追加した構造であっても良い。シース94は、シールド部93の外周を覆う絶縁樹脂製の被覆である。シールド電線90の端末部においては、シース94の除去によってシールド部93が露出し、さらに被覆部92の除去によって芯線91が露出している。露出したシールド部93と、被覆部92との間には、円筒状の導電性のスリーブ95が介挿されている。
【0020】
<内導体>
内導体11は、金属板を曲げ加工等して一体に形成されている。内導体11は、図1に示すように、側面視L字形をなし、後側に、芯線圧着部14を有し、前側に、上下方向に延びる相手内導体接続部15を有している。芯線圧着部14は、シールド電線90の芯線91に圧着されて電気的に接続されている。相手内導体接続部15は、図示しない相手シールド端子の相手内導体に接触して電気的に接続される。
【0021】
<誘電体>
誘電体12は、合成樹脂製であって、側面視L字形をなし、図1および図2に示すように、上下方向に沿った挿入部16と、前後方向に沿った誘電本体部17と、を有している。挿入部16は、円筒状をなし、内側に内導体11の相手内導体接続部15が収容される。挿入部16は、下側に位置する下側部71と、上側に位置する上側部72と、上側部72と下側部71との間に位置する段差部73と、を有している。上側部72は、段差部73を介して下側部71よりも小径に形成されている。下側部71の外周面には、上下方向に延びる凹溝74が形成されている。凹溝74の上端は段差部73に開口している。
誘電本体部17は、角筒状をなし、内側に内導体11の芯線圧着部14が収容される。誘電本体部17の前部が挿入部16の後部に連結されている。図1に示すように、誘電本体部17と挿入部16のそれぞれの内側は、互いに連通して側断面視L字形の内導体収容空間S1を形成している。
【0022】
図2に示すように、誘電本体部17の下壁19は、挿入部16の前下端部にヒンジ部18を介して連結され、ヒンジ部18を中心として開閉可能とされている。誘電本体部17の下壁19が開状態にあるときに、挿入部16の下方が開放され、挿入部16の内側に下方から相手内導体接続部15を挿入可能とされている。
【0023】
図10に示すように、誘電本体部17の上側の左右角部には、前後方向に延びるリブ状の被係合部21が対をなして形成されている。被係合部21の外面には、角部の面取りによって傾斜した斜面部22が形成されている。
【0024】
<外導体>
外導体13は、一枚の金属板を曲げ加工等して一体に形成されている。外導体13は、図1に示すように、全体として側面視L字形をなし、接続部材23と、取付部材24と、を有している。接続部材23と取付部材24とは、それぞれ別体であって、互いに分離可能とされている。
【0025】
接続部材23は、後述する閉止位置において、図8に示すように、側面視L字形をなし、円筒状の筒部25と、筒部25と交差して連なる板片状の延在部26および介在部27と、を有している。なお、以下の接続部材23の説明において、前後方向および上下方向の基準は、特にことわらない限り、後述する閉止位置(図8に示す状態)にある状態を基準とする。
【0026】
筒部25は、軸心を上下方向に向けて配置される。筒部25の内側には、上方から図示しない相手シールド端子の相手外導体が挿入される。
筒部25の上部32には、複数の弾性接触部28(図8では1つのみ図示)が形成されている。各弾性接触部28は、筒部25に周方向に間隔を置いて配置されている。また、各弾性接触部28は、筒部25における両側のスリット29間に撓み変形可能に形成されている。各弾性接触部28は、筒部25の内側に突出し、相手シールド端子の相手外導体と接触可能な接点部分を有している。また、筒部25の上部32の前側には、各弾性接触部28よりも下方に、図1に示す突起75が形成されている。突起75は、筒部25の一部から内側に切り起こされ、上方へ行くに従って後傾する形状である。突起75は、誘電体12の凹溝74に嵌合可能とされている。
【0027】
筒部25の下部31は、図3に示すように、断面円弧状をなし、閉止位置において後方が開放され、後述する開放位置(図3に示す状態)においては後方に加えて下方も開放されている。図3および図4に示すように、筒部25の下部31と筒部25の上部32との間には、左右一対の係合凹部33が形成されている。各係合凹部33は、前後方向に沿って延びて後方に開放されている。筒部25の下部31における各係合凹部33の下方には、左右一対の係合部34が形成されている。各係合部34は、左右方向(内外方向)に撓み変形可能とされている。各係合部34は、後端に、上下方向に沿った開放端35を有している。
【0028】
延在部26は、筒部25の上部32の後下端部から屈曲して後方へ延びるように形成されている。延在部26は、各係合部34の開放端35よりも上方に配置されている。図8に示すように、筒部25の上部32と延在部26とは、側面視L字形をなし、L字の内側の角部分である内角部36を介して連続してつながっている。内角部36は、延在部26の外面(上面)と筒部25の外面(後面)との間に、側面視α(0°<α<180°、好ましくは80°<α<100°、特に好ましくはα=90°)の交差角度を有している。
【0029】
介在部27は、図3に示すように、筒部25の下部31の下端に一体に連結されている。介在部27は、図8に示す閉止位置において下部31の下端から屈曲して後方へ延びる対向延在部37を有している。対向延在部37は、延在部26の下方に、延在部26と対向して配置されている。対向延在部37と延在部26との間には、誘電本体部17が挟まるように配置される。
【0030】
対向延在部37は、各係合部34の開放端35よりも下方に配置されている。対向延在部37と筒部25とは、側面視L字形をなし、L字の外側の角部分である外角部38を介して連続してつながっている。外角部38は、対向延在部37の外面(下面)と筒部25の外面(前面)との間に形成されている。
【0031】
介在部27は、図3および図4に示すように、対向延在部37の前後中間部の左右側端から屈曲して立ち上がる一対の側壁部39を有している。各側壁部39の前端は、図8に示すように、閉止位置において、各係合部34の開放端35と平行に対向するように、上下方向に沿って配置されている。各側壁部39および後述する各側方延在部41のそれぞれの上端と、延在部26の左右側端との間には、隙間G1が形成されている。
【0032】
また、介在部27は、各側壁部39の後端から後方に延びる一対の側方延在部41を有している。各側方延在部41は、図3および図4に示すように、後方へ向けて拡開するように傾斜する一対の傾斜部42と、各傾斜部42から介在部27の後端にかけて左右方向に一定間隔で延びる一対の電線保持部43と、を有している。同様に、延在部26と対向延在部37も、図8に示すように、後方へ向けて拡開するように傾斜する一対の傾斜部42と、各傾斜部42から介在部27の後端にかけて上下方向に一定間隔で延びる一対の電線保持部43と、を有している。
【0033】
各電線保持部43は、それぞれ断面円弧状をなし、シールド電線90のシールド部93の外周面に沿って配置される。図9に示すように、各電線保持部43を互いに連ねることで仮想円C1を形成することができる。各電線保持部43は、延在部26、対向延在部37および各側方延在部41が撓み変形することにより、仮想円C1の内径を変更させる。この仮想円C1は、後述する圧着部59の圧着過程で縮径させられる。
【0034】
また、図4に示すように、各電線保持部43には、周方向に間隔を置いて、断面矩形の止め孔44が貫通して形成されている。シールド電線90のシールド部93は、各止め孔44に食い込んで係止可能とされている。対向延在部37の電線保持部43には、断面矩形の係止孔45が貫通して形成されている。係止孔45は、止め孔44よりも後方において止め孔44より大きい開口径で形成されている。係止孔45には、図6に示す係止片56が嵌まり込んで係止可能とされている。
【0035】
既述した外角部38は、図1に示すように、介在部27と筒部25とをつなぐ回動中心部46に形成されている。回動中心部46は、図3および図4に示すように、可撓帯状をなしている。介在部27は、回動中心部46を中心として、筒部25に対して開放位置(図3図4および図7に示す状態)と閉止位置(図1図8図9図11に示す状態)とに回動可能とされている。開放位置では、介在部27が上下方向に沿って配置され、筒部25および延在部26のそれぞれの下方が開放される。閉止位置では、介在部27が前後方向に沿って配置され、筒部25および延在部26のそれぞれの下方が対向延在部37によって閉塞される。
【0036】
続いて、取付部材24について説明する。取付部材24は、前後方向に延びる形状であり、図1および図11に示すように、接続部材23に上方から取り付けられ、延在部26の外面を覆うように配置される。取付部材24は、図5および図6に示すように、基部47と、一対のバレル48と、一対のシースバレル49と、一対の遮蔽部51と、を有している。
【0037】
基部47は、前後方向に延びる帯板状をなしている。基部47の前部には、平坦な平面部52が形成されている。図11に示すように、平面部52には、突片部53が曲げ起こして形成されている。突片部53は、シールド端子10を収容する図示しないハウジングの凹み内に嵌合され、シールド端子10をハウジングに位置決めする機能を果たす。平面部52には、突片部53の曲げ起こしに起因する開口部54が形成されている。突片部53は、左右方向に沿って配置され、開口部54の前端から立ち上がる形状である。突片部53の下端部の前側には、開口部54側から叩き出された補強部76が形成されている。
【0038】
基部47の後部には、後方基部55が形成されている。各バレル48は、後方基部55の前部の左右両端から下方に突出する板片状をなしている。各バレル48は、図1に示すように、電線保持部43を間に挟んで、シールド電線90のシールド部93に圧着される。シールド部93は、電線保持部43とスリーブ95との間に挟まれた状態で、外導体13に電気的に接続される。
【0039】
各シースバレル49は、後方基部55の後部の左右両端から下方に突出する板片状に形成されている。各シースバレル49は、シールド電線90のシース94に圧着される。各シースバレル49の先端には、それぞれ凹部57および凸部58が形成されている。各シースバレル49がシールド電線90のシース94に接続された状態において、各シースバレル49と後方基部55とが筒状に形成され、凹部57および凸部58が互いに噛み合って係止される。なお、取付部材24の後部において、各バレル48、各シースバレル49および後方基部55は、本開示の圧着部59を構成する。
【0040】
各遮蔽部51は、図5に示すように、平面部52の左右側端から下方に突出する板片状に形成されている。各遮蔽部51は、図11に示すように、各側壁部39および各側方延在部41のそれぞれの外面を覆い、延在部26と介在部27との間に形成された隙間G1(図8を参照)を閉塞する。各遮蔽部51の後端は各バレル48に連結されている。各遮蔽部51の前側には、側面視矩形状の一対の抱持片61が形成されている。各抱持片61は、各遮蔽部51の後側よりも下方へ大きく突出しており、各係合部34の開放端35と各側壁部39の前端との間に形成された間隙G2(図8および図11を参照)を閉塞する。
【0041】
<シールド端子の組み立て方法および作用>
まず、接続部材23において、介在部27が筒部25に対して開放位置に開放される(図3および図4を参照)。その状態で、誘電体12が接続部材23の内側に図示下方(実際は上方)から挿入される。誘電体12の挿入過程において、突起75が凹溝74に位置決め状態で嵌合される(図1を参照)。また、誘電体12の挿入完了時には、誘電本体部17の上面における各被係合部21間に延在部26が位置決め状態で接触し、誘電体12の挿入動作が停止される。
【0042】
誘電本体部17の下壁19が開状態に開放され、内導体11が誘電体12の内導体収容空間S1に図示下方(実際は上方)から挿入される。内導体11は予めシールド電線90の端末部に接続されている。内導体11が誘電体12の内側に挿入されると、相手内導体接続部15が挿入部16の内側に配置され、芯線圧着部14が誘電本体部17の内側に配置される。続いて、介在部27が回動中心部46を中心として回動され、筒部25に対して閉止位置に閉止される(図8図10を参照)。
【0043】
接続部材23の外側に取付部材24が重ねて配置され、取付部材24の圧着部59が図示しない圧着用の金型にセットされた状態で、各バレル48が図示しない可動型に押圧されて内側に変形させられる。各電線保持部43も各バレル48に押圧されて内側に変形させられる。これにより、各バレル48は、各電線保持部43を介して、シールド電線90のシールド部93に圧着される。その結果、外導体13がシールド電線90のシールド部93に電気的に接続される(図1および図11を参照)。また、取付部材24は、各バレル48によって接続部材23に保持される。さらに、介在部27は、各バレル48によって、筒部25に対して閉止位置に保持される。
【0044】
各シースバレル49は、各バレル48の圧着加工と同時または前後して、シールド電線90のシース94に直接圧着されて機械的に接続される。なお、図示しない可動型は、各バレル48および各シースバレル49の位置する側に配置されているので、筒部25との干渉を回避し易くなっている。
【0045】
上記によって取付部材24が接続部材23に取り付けられた状態において、延在部26と介在部27との間に形成された隙間G1が遮蔽部51および圧着部59によって覆われ、筒部25と介在部27との間に形成された間隙G2も遮蔽部51によって覆われる。また、延在部26と筒部25とが内角部36を介して側面視L字形に連続して形成されているため、内角部36の位置で切れ目が生じることもない(図1を参照)。よって、本実施形態1によれば、シールド端子10からのノイズの漏洩およびシールド端子10へのノイズの侵入が抑えられ、シールド性能を向上させることができる。特に、圧着部59が取付部材24に形成され、筒部25が取付部材24とは別の接続部材23に形成されているため、圧着部59と筒部25のそれぞれの成形の自由度を高めることができる。このため、例えば、圧着部59の各バレル48と筒部25とを前後方向に近接して配置させることが可能となる。
【0046】
<実施形態2>
本実施形態2のシールド端子10Aは、図12に示すように、実施形態1のシールド電線90よりも小径のシールド電線90Aに接続される。シールド電線90Aは、実施形態1のスリーブ95に相当するものを備えていない。実施形態2のシールド端子10Aは、取付部材24Aの圧着部59Aに第2バレル62が形成されている点と、接続部材23の各傾斜部42が各電線保持部43へ向けて窄まるように傾斜している点と、で実施形態1とは異なる。その他は、実施形態1と同様であるので、実施形態1と同一または相当する部位には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
圧着部59Aの第2バレル62は、各シースバレル49と各バレル48との間に、対をなして形成されている。各第2バレル62は、シースバレル49およびバレル48と同様、オープンバレル状をなし、後方基部55の左右両端から突出している。
【0048】
各第2バレル62は、接続部材23よりも後方において、シールド電線90Aのシールド部93に直接圧着されて電気的に接続されている。各第2バレル62の筒形状の径寸法、詳細には各第2バレル62と後方基部55とによって形成される筒形状の径寸法は、バレル48およびシースバレル49のそれぞれの筒形状の径寸法よりも小さくされている。
【0049】
本実施形態2によれば、各第2バレル62がシールド電線90Aのシールド部93に直接圧着されるため、シールド電線90Aと外導体13との接続状態を安定して維持することができる。
【0050】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
実施形態1および実施形態2の場合、接続部材には一対の側方延在部が形成されていた。しかし、他の実施形態として、接続部材から一対の側方延在部の少なくとも1つを省略しても良い。
実施形態1および実施形態2の場合、接続部材には遮蔽部が形成されていた。しかし、他の実施形態として、接続部材から遮蔽部を省略しても良い。
実施形態1および実施形態2の場合、取付部材にはシースバレルが形成されていた。しかし、他の実施形態として、取付部材からシースバレルを省略しても良い。例えば、シースバレルは接続部材に形成されていても良い。
実施形態1および実施形態2の場合、内角部は筒部と延在部とを直角状に連ねていた。しかし、他の実施形態として、内角部は筒部と延在部とを曲面状に連ねていても良い。
【符号の説明】
【0051】
10,10A…シールド端子
11…内導体
12…誘電体
13…外導体
14…芯線圧着部
15…相手内導体接続部
16…挿入部
17…誘電本体部
18…ヒンジ部
19…下壁
21…被係合部
22…斜面部
23…接続部材
24,24A…取付部材
25…筒部
26…延在部
27…介在部
28…弾性接触部
29…スリット
31…下部
32…上部
33…係合凹部
34…係合部
35…開放端
36…内角部
37…対向延在部
38…外角部
39…側壁部
41…側方延在部
42…傾斜部
43…電線保持部
44…止め孔
45…係止孔
46…回動中心部
47…基部
48…バレル
49…シースバレル
51…遮蔽部
52…平面部
53…突片部
54…開口部
55…後方基部
56…係止片
57…凹部
58…凸部
59,59A…圧着部
61…抱持片
62…第2バレル
71…下側部
72…上側部
73…段差部
74…凹溝
75…突起
76…補強部
90,90A…シールド電線
91…芯線
92…被覆部
93…シールド部
94…シース
95…スリーブ
α…交差角度
C1…仮想円
G1…隙間
G2…間隙
S1…内導体収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12