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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ポリアクリル酸系微粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20250115BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20250115BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C08F293/00
C09K3/00 103G
C08J3/12 Z CEY
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021556109
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2020041966
(87)【国際公開番号】W WO2021095740
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2019207466
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西脇 篤史
(72)【発明者】
【氏名】河合 道弘
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智文
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-017000(JP,A)
【文献】特開2010-112983(JP,A)
【文献】特開2008-039941(JP,A)
【文献】特開2019-167446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09K
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸系微粒子であって、
前記ポリアクリル酸系微粒子は、非架橋性構造単位の総質量に対し、アクリル酸又はその塩に由来し、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する構造単位を10質量%以上含むポリアクリル酸系重合体を含み、
平均粒子径が、電界放射走査型電子顕微鏡で観察した画像中の400個の粒子の粒子径の平均値として、0.01μm以上0.20μm以下である、ポリアクリル酸系微粒子。
【請求項2】
前記平均粒子径が、0.01μm以上0.15μm以下である、請求項1に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項3】
前記平均粒子径は、0.01μm以上0.10μm以下である、請求項2に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項4】
前記重合体は、前記アクリル酸に由来する構造単位を20質量%以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項5】
前記重合体が中和度50モル%以上100モル%以下に中和された、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項6】
前記重合体は、架橋性単量体により架橋されたものであり、当該架橋性単量体の使用量が非架橋性単量体の総量に対して0.03モル%以上2モル%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項7】
前記重合体は、リビングラジカル重合活性を有する重合鎖を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項8】
前記重合鎖の分子量分布が2.0以下である、請求項7に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項9】
前記重合体における前記重合鎖の含有量が0.3質量%以上30質量%以下である、請求項7又は8に記載のポリアクリル酸系微粒子。
【請求項10】
ポリアクリル酸系微粒子であって、
前記ポリアクリル酸系微粒子は、その非架橋性構造単位に対し、アクリル酸又はその塩に由来し、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する構造単位を20質量%以上含むポリアクリル酸系重合体を含み、
前記ポリアクリル酸系微粒子の1.2質量%水溶液は、その粘度が5,000mPa・s以上であり、そのヘイズ値が50%以下である、ポリアクリル酸系微粒子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のポリアクリル酸系微粒子を含む、増粘剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ポリアクリル酸系微粒子に関する。
【0002】

(関連出願の相互参照) 本出願は、2019年11月15日に出願された日本国特許出願である特願2019-207466の関連出願であり、この出願に基づく優先権を主張するものであり、この出願に記載された全ての内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリアクリル酸系微粒子は、増粘剤・粘度調整剤、顔料用の沈降防止剤、金属粉の分散安定剤等、広く利用されている。なかでも、水系増粘剤として用いた場合、ポリマーが直鎖のときは曳糸性を有し、ベタツキが感じられるが、架橋度を高めていくにつれて曳糸性は減少し、みずみずしさが感じられるようになるという特徴を備えている。そのため、曳糸性が求められる用途では直鎖型(又は微架橋型)のポリアクリル酸系微粒子が用いられ、曳糸性が不要でみずみずしさが求められる用途では、架橋型ポリアクリル酸系微粒子が用いられる場合が多い。また、架橋型のポリアクリル酸系微粒子は、少量の使用で高い増粘性が得られるという利点もある。
【0004】
ここで、架橋型ポリアクリル酸系微粒子としては、種々のものが知られている。例えば、アクリル酸、メタクリル酸メチル及びジビニルベンゼンを構成単量体単位とする、ポリアクリル酸系微粒子が報告されている(特許文献1)。このポリアクリル酸系微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察した値として、0.7μmであることが記載されている。また、アクリル酸及びジビニルベンゼンを構成単量体単位とするポリアクリル酸系微粒子が開示されているが、その平均粒子径が、走査型電子顕微鏡で観察した値として3.5μmであることが記載されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平04-279604号公報
【文献】特開2006-282772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのポリアクリル酸系微粒子は、例えば、水系増粘剤として使用する場合、目標の粘度に対してポリアクリル酸系微粒子の添加量が多くなり、増粘性に劣るという問題があった。また、ポリアクリル酸系微粒子の水溶液の透明性に劣るという問題もあった。
【0007】
本明細書は、このような事情に鑑み、より一層少ない添加量で高い粘度を発現できる増粘性を有し、かつ、水溶液の透明性に優れるポリアクリル酸系微粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ポリアクリル酸系微粒子について種々検討した結果、その平均粒子径が、増粘効果及び水溶液の透明性に大きく貢献していることを見出した。本明細書によれば、かかる知見に基づき以下の手段が提供される。
【0009】
[1]ポリアクリル酸系微粒子であって、
前記ポリアクリル酸系微粒子は、非架橋性構造単位の総質量に対し、アクリル酸に由来する構造単位を10質量%以上含むポリアクリル酸系重合体を含み、
平均粒子径が、電界放射走査型電子顕微鏡で観察した画像中の400個の粒子の粒子径の平均値として、0.01μm以上0.20μm以下である、ポリアクリル酸系微粒子。
[2]前記平均粒子径が、0.01μm以上0.15μm以下である、[1]に記載のポリアクリル酸系微粒子。
[3]前記平均粒子径は、0.01μm以上0.10μm以下である、[2]に記載のポリアクリル酸系微粒子。
[4]前記重合体は、前記アクリル酸に由来する構造単位を20質量%以上含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリアクリル酸系微粒子。
[5]前記重合体が中和度50モル%以上100モル%以下に中和された、[1]~[4]のいずれかに記載のポリアクリル酸系微粒子。
[6]前記重合体は、架橋性単量体により架橋されたものであり、当該架橋性単量体の使用量が非架橋性単量体の総量に対して0.03モル%以上2モル%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリアクリル酸系微粒子。
[7]前記重合体は、リビングラジカル重合活性を有する重合鎖を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のポリアクリル酸系微粒子。
[8]前記重合鎖の分子量分布が2.0以下である、[7]に記載のポリアクリル酸系微粒子。
[9]前記重合体における前記重合鎖の含有量が0.3質量%以上30質量%以下である、[7]又は[8]に記載のポリアクリル酸系微粒子。
[10]ポリアクリル酸系微粒子であって、
前記ポリアクリル酸系微粒子は、その非架橋性構造単位に対し、アクリル酸に由来する構造単位を20質量%以上含む重合体を含み、
前記ポリアクリル酸系微粒子の1.2質量%水溶液は、その粘度が5,000mPa・s以上であり、そのヘイズ値が50%以下である、ポリアクリル酸系微粒子。
[11][1]~[10]のいずれかに記載のポリアクリル酸系微粒子を含む、増粘剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の開示は、ポリアクリル酸系微粒子に関する。本明細書に開示されるポリアクリル酸系微粒子(以下、単に、重合体微粒子、本微粒子ともいう。)によれば、低濃度での高い増粘性を発揮できる優れた増粘効果と水溶液透明性を有する。このため、高粘度でかつ透明性の高い水系媒体を容易に提供することができる。
【0011】
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された「ポリアクリル酸系微粒子」を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0012】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0013】
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0014】

以下、本明細書に開示される各種実施形態を詳細に説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0015】
以下、ポリアクリル酸系微粒子(以下、単に、本微粒子ともいう。)を構成するポリアクリル酸系重合体の組成等及び本微粒子の平均粒子径等について説明し、その後、本微粒子の製造方法について説明する。
【0016】
(ポリアクリル酸系微粒子)
本微粒子は、ポリアクリル酸系重合体(以下、本重合体ともいう。)を含んでいる。典型的には、本重合体から構成されている。本重合体は、非架橋性単量体に由来する非架橋性構造単位のみから構成されていてもよいし、非架橋性構造単位と架橋性単量体に由来する架橋性構造単位とから構成されていてもよい。
【0017】
(アクリル酸由来構造単位)
本重合体は、少なくともアクリル酸に由来する構造単位を備えている。アクリル酸は、非架橋性単量体に分類され、非架橋性構造単位を構成する。
【0018】
アクリル酸由来構造単位のカルボキシル基は、塩の形態であってもよい。ここで、塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩である。具体的には、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩、エチレンジアミン塩、トリエチレンジアミン塩等のポリアミン等の有機アミンの塩が挙げられる。
【0019】
なかでも、塩は、アルカリ金属塩が好適であり、Li塩、Na塩及びK塩が好適であり、なかでも、Li塩が好適である。
【0020】
本重合体におけるカルボキシル基の中和度は、特に限定するものではないが、例えば、50モル%以上であり、また例えば、60モル%以上であり、また例えば、70モル%以上であり、また例えば、80モル%以上であり、また例えば、90モル%以上であり、また例えば、95モル%以上であり、また例えば100モル%である。中和度の範囲は、例えば、50モル%以上100モル%以下であり、また例えば、60モル%以上100モル%以下であり、また例えば、70モル%以上100モル%以下であり、また例えば、80モル%以上100モル%以下である。
【0021】
本重合体は、本重合体における非架橋性構造単位の総質量に対するアクリル酸由来構造単位の質量の割合は、特に限定するものではないが、例えば、10質量%以上である。なお、非架橋性構造単位の総質量に対する特定構造単位の質量の割合は、非架橋性単量体の総質量に対する特定構造単位が由来する単量体の質量の割合に相当するものである。したがって、非架橋性単量体の総質量に対する特定単量体の質量の割合は、非架橋性構造単位の総質量に対する特定単量体に由来する特定構造単位の質量の割合に相当する。以下、他の構造単位や単量体の質量割合についても、当該解釈が同様に適用される。
【0022】
本重合体における当該割合が10質量%以上であることで、本微粒子の水系の増粘性用途に好適な増粘性等を容易に発揮できる。当該割合は、増粘剤の用途や求められる増粘性等に応じて適宜設定できるが、例えば、15質量%以上であり、また例えば、20質量%以上であり、また例えば、30質量%以上であり、また例えば、35質量%以上であり、また例えば、40質量%以上であり、また例えば、45質量%以上であり、また例えば、50質量%以上であり、また例えば、55質量%以上であり、また例えば、60質量%以上であり、また例えば、65質量%以上であり、また例えば、70質量%であり、また例えば、75質量%以上であり、また例えば、80質量%以上であり、また例えば、85質量%以上であり、また例えば、90質量%以上であり、また例えば、95質量%以上であり、また例えば、100質量%である。
【0023】
(他の非架橋性構造単位(A))
本重合体は、アクリル酸に由来する構造単位以外に、さらに別の非架橋性構造単位を備えることができる。かかる構造単位としては、アクリル酸以外のビニル系単量体であってヒドロキシ基含有ビニル系単量体から選択される1種又は2種以上の非架橋性ビニル単量体に由来する構造単位が挙げられる。
【0024】
ヒドロキシ基含有ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、並びに、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル酸以外のビニル系単量体としては、ヒドロキシ含有ビニル系単量体を組み合わせて用いることが好適である。
【0025】
本重合体における非架橋性構造単位の総質量に対する当該構造単位の総質量の割合は、特に限定するものではないが、例えば、1質量%以上であり、また例えば、5質量%以上であり、また例えば、10質量%以上であり、また例えば、15質量%以上であり、また例えば、20質量%以上であり、また例えば、25質量%以上であり、また例えば、30質量%以上であり、また例えば、35質量%以上であり、また例えば、40質量%以上であり、また例えば、45質量%以上であり、また例えば、50質量%以上である。また、その上限は、例えば、60質量%以下及びであり、また例えば、50質量%以下であり、また例えば、40質量%以下であり、また例えば、30質量%以下である。こうしたビニル系単量体の範囲は、これら下限及び上限を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、10質量%以上60質量%以下であり、また例えば、10質量%以上50質量%以下であり、また例えば、10質量%以上40質量%以下であり、また例えば、10質量%以上30質量%以下である。
【0026】
(他の非架橋性構造単位(B))
また、本重合体は、さらに、スチレン類、(メタ)アクリロニトリル化合物、マレイミド化合物及び不飽和酸無水物に由来する他の構造単位を備えることができる。これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
スチレン類としては、スチレン及びその誘導体が含まれる。具体的な化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。これらのなかでも、重合性の観点から、スチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレンが好ましい。
【0028】
(メタ)アクリロニトリル化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、α-メチルアクリロニトリル等が挙げられる。例えば、アクリロニトリルが用いられる。
【0029】
マレイミド化合物としては、マレイミド及びN-置換マレイミド化合物が含まれる。N-置換マレイミド化合物の具体例としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-ペンチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ステアリルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物;N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキル置換マレイミド化合物;N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-アセチルフェニル)マレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド、N-(4-エトキシフェニル)マレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド等のN-アリール置換マレイミド化合物、N-ベンジルマレイミド等のN-アラルキル置換マレイミド化合物などが挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。例えば、N-フェニルマレイミドが用いられる。
【0030】
また、不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
これらのなかでも、例えば、少なくともスチレン類を含むことが好ましい。スチレン類は、後述するリビングラジカル重合が容易で、適度な疎水性と有機溶媒に対する親和性を付与できるからである。また、本重合体に疎水性ないし有機溶媒に対する親和性を付与することができる。こうすることで、例えば、後述する極性有機溶媒中での分散重合法により重合体微粒子を製造する場合には、当該他の構造単位が、本微粒子の表層に存在する傾向が生じて本微粒子の分散安定性が向上する。
【0032】
非架橋構造単位の総質量に対するスチレン類に由来する構造単位の質量の割合は、特に限定するものではないが、例えば、0.5質量%以上30質量%以下であり、また例えば、0.5質量%以上25質量%以下であり、また例えば、0.5質量%以上10質量%以下である。
【0033】
(メタ)アクリロニトリル化合物、マレイミド化合物及び酸無水物は、それぞれ、単独でも使用できるほか、これら3種のうち1種又は2種以上をスチレン類と組み合わせて用いることが好ましい。これら3種は、いずれも、後述する第1の重合体の疎水性又は有機溶媒親和性を維持、調節又は付与することができるからである。なかでも、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリル化合物、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド化合物及び酸無水物のうちの1種又は2種以上が好ましく、スチレンとアクリロニトリル、スチレンとN-フェニルマレイミドなどの組み合わせが好適である。
【0034】
(他の非架橋性構造単位(C))
なお、本重合体における非架橋性構造単位としては、本微粒子の意図した機能を損なわない限り、さらに、他のビニル系単量体に由来する更に他の構造単位(C)を含めることができる。かかるビニル系単量体としては、特に限定するものではないが、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸並びに不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル等が挙げられ、これのうち、1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
さらにまた、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。非架橋構造単位の総質量に対する当該他の構造単位の質量の割合は、例えば、20質量%以下、また例えば、10質量%以下、また例えば、5質量%以下、また例えば、3質量%以下、また例えば、1質量%以下である。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物などが挙げられる。
【0037】

(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸3-エトキシブチル、(メタ)アクリル酸3-プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ブトキシブチルなどが挙げられる。
【0038】
さらにまた、本重合体は、架橋性構造単位を備えることができる。架橋性構造単位が由来する架橋性単量体については後段にて説明する。
【0039】
本重合体は、例えば、アクリル酸に由来する構造単位又は当該構造単位と他の構造単位Aとを含む重合鎖(好ましくは、他の構造単位Bを含まない。)と、他の構造単位Bを含む重合鎖と、を備える形態を採ることができる。こうした形態を備える本微粒子は、平均粒子径が小さく、かつ、分散性に優れて、高い増粘性と透明性を発揮することができる。
【0040】
(本微粒子の製造)
本微粒子は、乳化重合、分散重合等の公知の重合方法によって合成できるが、本重合体を分散重合によって得ることが好適である。分散重合によれば、平均粒子径の均一性に優れる本微粒子を得ることができるからである。以下、本微粒子を得るのに好適な重合体微粒子の製造方法について説明する。
【0041】
(本微粒子の製造方法)
本微粒子は、例えば、上記した他の構造単位(B)を含む第1の重合鎖とリビングラジカル重合活性単位とを有する第1の重合体の存在下、少なくともアクリル酸を前記リビングラジカル重合活性単位に基づくリビングラジカル重合を用いて分散重合する。これにより、第1の重合鎖に対してアクリル酸由来構造単位を有する第2の重合鎖を結合させた本重合体から、本微粒子を分散微粒子として得ることができる。本製造方法によれば、平均粒子径が小さく制御された本微粒子を得ることができる。第1の重合体を用いることで重合安定性に優れた本重合体の重合工程を実施でき、重合工程中において凝集物の発生を抑制し、粗大粒子の生成を抑制することができるからである。
【0042】
(第1の重合体及びその製造方法)
第1の重合体は、本重合体における他の構造単位(B)を含む第1の重合鎖と、リビングラジカル重合活性単位と、を備えることができる。
【0043】
(第1の重合鎖)
第1の重合鎖は既述の他の非架橋性構造単位(B)が由来する各種単量体から選択される1種又は2種以上のビニル系単量体(以下、第1の単量体ともいう。)を重合して得ることができる。ビニル系単量体の各種の使用態様は、既に述べた態様を本製造方法においても適用できる。
【0044】
スチレン類は、第1の重合鎖を重合するための第1の単量体の総質量のうち、例えば、20質量%以上である。20質量%以上であるとリビングラジカル重合が容易となり、適度な疎水性と有機溶媒に対する親和性を適切に付与できるからである。また例えば、30質量%以上であり、また例えば、35質量%以上であり、また例えば、40質量%以上であり、また例えば、50質量%以上であり、また例えば、60質量%以上であり、また例えば、65質量%以上であり、また例えば、70質量%以上であり、また例えば、75質量%以上である。また、スチレン類は、前記総質量の100質量%以下であり、また例えば、95質量%以下であり、また例えば、90質量%以下であり、また例えば、85質量%以下であり、また例えば、80質量%以下であり、また例えば、75質量%以下である。スチレン類の前記総質量に対する範囲としては、上記した下限及び上限を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、20質量%以上95質量%以下であり、また例えば、30質量%以上75質量%以下であり、また例えば、35質量%以上85質量%以下である。
【0045】
スチレン類と組み合わせて用いる場合、スチレン類以外のこれら1種又は2種以上の単量体の総量は、第1の単量体の総質量のうち、例えば、20質量%以上である。また例えば、25質量%以上であり、また例えば、30質量%以上であり、また例えば、35質量%以上であり、また例えば、40質量%以上であり、また例えば、50質量%以上であり、また例えば、60質量%以上である。また、(メタ)アクリロニトリル化合物は、前記総質量の80質量%以下であり、また例えば、75質量%以下であり、また例えば、70質量%以下であり、また例えば、65質量%以下であり、また例えば、60質量%以下であり、また例えば、55質量%以下であり、また例えば、50質量%以下である。スチレン類以外のこれら1種又は2種以上の第1の単量体の総量としては、上記した下限及び上限を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、20質量%以上65質量%以下であり、また例えば、25質量%以上50質量%以下である。
【0046】
第1の重合鎖は、上記した第1の単量体のみの重合鎖であってもよいが、必要に応じて、上記以外の他のビニル系単量体を第1の単量体として用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸及びこれらのアルキルエステル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル等の公知のビニル系単量体を用いることができる。なお、こうした他の単量体は、第1の重合鎖を構成する単量体の総質量の、例えば10質量%以下、また例えば、5質量%以下、また例えば、3質量%以下、また例えば、1質量%以下であり、また例えば、0.5質量%以下である。これらの単量体は、本微粒子におけるアクリル酸由来構造単位ほか、既述の非架橋性構造単位(C)が由来する単量体である。
【0047】
また、第1の重合体は、上記第1の重合鎖のほかに、他のブロックとしての重合鎖を備えていてもよい。かかる重合鎖を構成するビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、公知の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。こうした(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、既に例示した各種の化合物が挙げられる。かかる他の重合鎖は、後述するリビングラジカル重合活性単位に直接連結され、かつ第1の重合鎖に連結されるように備えられることで、重合体微粒子に用いる第2の単量体の一部を予め、第1の重合体中に備えることができる。こうした他のブロックの重合鎖は、前記第1の重合鎖100質量部に対して、例えば、10質量部以上200質量部以下で備えることができる。これらの単量体は、本微粒子における既述の非架橋性構造単位(C)が由来する単量体である。
【0048】
(リビングラジカル重合活性単位) 第1の重合体は、リビングラジカル重合活性単位を備えることができる。リビングラジカル重合とは、一般に、重合工程において開始反応と成長反応のみからなり、連鎖移動反応又は停止反応などの成長末端を失活される副反応を伴うことがなく、成長末端が重合中は常にラジカル種に基づく成長活性(リビングラジカル重合活性)を保ち続けている重合反応とされている。リビングラジカル重合活性単位とは、リビングラジカル重合における成長活性単位である。また、リビングラジカル重合活性単位は、リビングラジカル重合法の制御剤に由来する単位である。
【0049】
リビングラジカル重合には、その反応機構から、種々知られているが、リビングラジカル重合活性単位は、交換連鎖機構又は結合-解離機構によるリビングラジカル重合であるにおける活性単位とすることができる。これらのリビングラジカル重合であると、容易に、狭い分子量分布の第1の重合体を得ることができるし、重合体微粒子の分散重合にあたって、第1の重合体の重合溶媒への溶解性や分散安定剤としての機能のために種々の単量体を選択することができる。
【0050】
交換連鎖機構によるリビングラジカル重合としては、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ヨウ素移動重合法、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)等が挙げられる。交換連鎖機構によるリビングラジカル重合は、重合体微粒子の平均粒子径を小さくできる点において好ましい。これらのなかでも、RAFT法が及びヨウ素移動重合法が第1の重合体の分子量分布を狭くできる点において好ましい。さらに、RAFT法が好ましく用いられる。
【0051】
結合-解離機構によるリビングラジカル重合としては、例えば、ニトロキシラジカル法(NMP法)が挙げられる。
【0052】
これらの各種のリビングラジカル重合による重合条件は、当業者において周知であり、必要に応じて、RAFT法、ヨウ素移動重合法及びNMP法による第1の重合体の合成について例示する。なお、リビングラジカル重合プロセスには、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等の各種プロセスがあるが、重合体微粒子の製造における重合基点であることや分散安定剤的に機能することを考慮すると、第1の重合体の製造においては、例えば、溶液重合を用いることができる。
【0053】
第1の重合体は、例えばRAFT法の制御剤を用いてRAFT法にて合成することができる。RAFT法は、分子量分布が2.0以下の第1の重合体を得るのに好適なリビングラジカル重合法である。RAFT法におけるリビングラジカル重合の制御剤(RAFT剤)は、特に限定することなく、公知のRAFT剤を用いることができる。例えば、ジチオエステル化合物、キサンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等が挙げられる。RAFT剤は、活性点を1個所備える1官能性のものであってもよいし、2個所以上備える2官能性以上のものを用いることもできる。2官能性以上のRAFT剤は、2方向性以上に重合鎖が伸長するものである。重合体微粒子の製造の観点からは、2官能性又は3官能性以上のRAFT剤を用いることが好適な場合がある。
【0054】
RAFT剤における置換基は、構造単位(B)が由来する単量体や後述する第2の重合鎖を重合する単量体を考慮して適宜決定することができる。また、RAFT剤の使用量は、目標とするMnに応じて適宜調整されるが、第1の単量体100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、また例えば、0.5質量部以上5質量部以下、また例えば、1質量部以上4質量部以下、また例えば、1質量部以上3質量部以下用いることができる。
【0055】
RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、キサンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。より具体的には、例えば、ジベンジルトリチオカーボネート、ジチオベンゾエート・2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート、2-フェニル-2-プロピルベンゾジチオエート、トリチオカーボネート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロパン酸メチル、ジスチリルトリチオカーボネート、ジクミルトリチオカーボネート、ジチオカーバメート、シアノメチルN-メチル-N-フェニルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0056】
RAFT法による重合の際に用いるラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。上記アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤は1種又は2種以上を用いることができる。
【0057】
こうしたラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより狭い重合体を得る点から、ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより狭い重合体を得る点から、第1のビニル系単量体の総質量100質量部に対して、例えば、0.005質量%以上2質量%以下、また例えば、0.005質量%以上1質量%以下、また例えば、0.005質量%以上0.5質量%以下用いることができる。
【0058】
RAFT法では、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施しても良い。連鎖移動剤は公知のものを1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
また、RAFT法では、公知の重合溶媒を用いることができ、ニトリル系溶剤、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、オルトエステル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール及び水等が挙げられる。ニトリル系溶剤の具体例としては、アセトニトリル、イソブチロニトリル及びベンゾニトリル等が挙げられる。芳香族系溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等が挙げられる。ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶剤の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等が挙げられる。オルトエステル系溶剤の具体例としては、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリ(n-プロピル)、オルト蟻酸トリ(イソプロピル)、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトn-酪酸トリメチル、及びオルトイソ酪酸トリメチル等が挙げられる。好ましくは、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤及び/又はアニソールなどの芳香族系溶剤を用いることができる。
【0060】
第1の重合体をリビングラジカル重合で重合する際の濃度は、重合溶媒と第1の単量体など仕込み量の総質量に対して、特に限定するものではないが、例えば、10質量%以上80質量%以下、また例えば、15質量%以上70質量%以下、20質量%以上70質量%以下などとすることができる。
【0061】
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。反応温度が40℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が100℃以下であれば、副反応が抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される。
【0062】
第1の重合体は、また例えば、ヨウ素移動重合法の制御剤を用いてヨウ素移動重合法にて合成することができる。ヨウ素移動重合法における制御剤は、特に限定することなく、公知の制御剤を用いることができる、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化メチレン、ヨードホルム、四ヨウ化炭素、1-フェニルエチルヨージド、ベンジルヨージド、2-ヨードイソ酪酸メチル、2-ヨードイソ酪酸エチル、2-ヨード-2-フェニル酢酸エチル、ビス(2-ヨード-2-フェニル酢酸)エチレングリコール、ビス(2-ヨードイソ酪酸)エチレングリコール等が挙げられる。
【0063】
ヨウ素移動反応の制御剤の使用量は、目標とするMnに応じて適宜調整されるが、第1の単量体100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、また例えば、0.5質量部以上5質量部以下、また例えば、1質量部以上4質量部以下用いることができる。第1の単量体100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、また例えば、0.5質量部以上5質量部以下、また例えば、1質量部以上4質量部以下用いることができる。
【0064】
ヨウ素移動重合法による重合の際に用いるラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)としては、RAFT法と同様の態様及び使用量で、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。ヨウ素移動重合法における反応温度及び重合溶媒、第1の単量体濃度については、RAFT法と同様の態様から適宜選択して適用することができる。
【0065】
第1の重合体は、また例えば、NMP法の制御剤を用いてNMP法にて合成することができる。NMP法における制御剤は、特に限定することなく、公知の制御剤を用いることができる、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル(TEMPO)、N-tert-ブチル-N-[1-ジエチルフォスフォノ-(2,2-ジメチルプロピル)]ニトロキシド(DEPN)、2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン-3-ニトロキシド(TIPNO)、N-tert-ブチル-N-(1-tert-ブチル-2-エチルスルフィニル)プロピル-N-オキシル(BESN)等が挙げられる。
【0066】
NMP法による制御剤の使用量は、目標とするMnに応じて適宜調整されるが、第1の単量体100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、また例えば、0.5質量部以上5質量部以下、また例えば、1質量部以上4質量部以下用いることができる。第1の単量体100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下、また例えば、0.5質量部以上5質量部以下、また例えば、1質量部以上4質量部以下用いることができる。
【0067】
NMP法による重合の際に用いるラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)としては、RAFT法と同様の態様及び使用量で、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。NMP法における反応温度及び重合溶媒、第1の単量体濃度については、RAFT法と同様の態様から適宜選択して適用することができる。
【0068】
所定のリビングラジカル重合により第1の重合体を合成することで、第1の単量体を含む第1の重合鎖とリビング重合活性単位を備える第1の重合体を得ることができる。第1の重合体は、2種以上の第1の重合鎖を備えることもできる。例えば、ある種の組成の1種又は2種以上の第1の単量体を用いてリビングラジカル重合等を実施後に、他の組成で1種又は2種以上の第1の単量体を用いてリビングラジカル重合等を実施することで、異なる組成の第1の単量体由来の単位を有する第1の重合鎖(ブロック)を備える第1の重合体を得ることができる。
【0069】
第1の重合体は、第1の重合鎖とは異なるブロック(他の重合鎖)を備えることもできる。この場合には、第1の重合鎖を備える第1の重合体に、引き続きあるいは新たにラジカル重合開始剤と他のビニル系単量体を供給して、第1の重合鎖とは異なる組成の第1の単量体以外の単量体に由来する単位からなる他の重合鎖(ブロック)を備える第1の重合体を得ることができる。
【0070】
所定のリビングラジカル重合によれば、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)が制御された第1の重合体を得ることができる。第1の重合体のMnは、特に限定するものではないが、例えば、3,000以上であり、また例えば、5,000以上であり、また例えば、7,000以上であり、また例えば、8,000以上であり、また例えば、10,000以上である。また、同Mnは、50,000以下であり、また例えば、30,000以下であり、また例えば、25,000以下であり、また例えば、20,000以下であり、また例えば、15,000以下であり、また例えば、14,000以下であり、また例えば、12,000以下である。Mnの範囲としては、上記した下限及び上限を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、5,000以上25,000以下であり、また例えば、10,000以上25,000以下であり、また例えば、10,000以上15,000以下であり、また例えば、10,000以上14,000以下である。
【0071】
第1の重合体のMwは、特に限定するものではないが、例えば、5,000以上であり、また例えば、7,000以上であり、また例えば、9,000以上であり、また例えば、10,000以上であり、また例えば、13,000以上であり、また例えば、15,000以上である。また、同Mwは、60,000以下であり、また例えば、55,000以下であり、また例えば、50,000以下であり、また例えば、45,000以下であり、また例えば、40,000以下であり、また例えば、36,000以下であり、また例えば、35,000以下であり、また例えば、30,000以下であり、また例えば、25、000以下である。Mwの範囲としては、上記した下限及び上限を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、1,000以上40,000以下であり、また例えば、10,000以上35,000以下であり、また例えば、10,000以上30,000以下であり、また例えば、15,000以上25,000以下である。
【0072】
なお、第1の重合体のMw及びMnは、いずれも、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定することができる。クロマトグラフィー条件の詳細は、後段の実施例に開示する条件を採用することができる。
【0073】
第1の重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定するものではないが、例えば、2.5以下であり、また例えば、2.4以下であり、また例えば、2.3以下であり、また例えば、2.0以下であり、また例えば、1.6以下であり、また例えば、1.5以下であり、また例えば、1.4以下であり、また例えば、1.3以下である。また、分子量分布は、例えば、1.1以上であり、また例えば、1.2以上であり、また例えば、1.3以上であり、また例えば、1.4以上、また例えば、1.5以上である。分子量分布の範囲としては、上記した下限及び上限を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、1.1以上2.5以下、また例えば、1.1以上2.4以下、また例えば、1.1以上2.3以下、また例えば、1.1以上2.0以下などとすることができる。
【0074】
分子量分布は狭いほど、得られる重合体微粒子の平均粒子径が小さくなる傾向がある。平均粒子径が0.2μm以下の重合体微粒子を得るには、分子量分布が2.4以下であることが好適であり、より小さい平均粒子径の重合体微粒子を得るには、同1.7以下であることが好適であり、さらに好適には、同1.6以下であり、一層好適には、1.4以下である。
【0075】
第1の重合体は、第1の重合鎖とリビング重合活性単位とを備えることができるが、典型的には、1官能性の制御剤を用いた場合には、リビング重合活性単位を第1の重合鎖の末端に備える態様となり、2官能性以上の制御剤を用いた場合には、リビング重合活性単位を基点として2方向以上に分岐してそれぞれに第1の重合鎖を備える態様となる。なお、いずれの態様においても、別の重合鎖を備える場合には、この別の重合鎖が、リビング重合活性単位に直接結合され、リビング重合活性単位に対してより遠位側に第1の重合鎖が備えられるように、当該別の重合鎖の遠位末端に第1の重合鎖が結合された態様となっている。
【0076】
(重合体微粒子の製造工程)
第1の重合体の存在下、リビングラジカル重合活性単位に基づくリビングラジカル重合を用いた分散重合により、少なくともアクリル酸を含む1種又は2種以上の単量体(以下、第2の単量体ともいう。)を重合して重合体微粒子を製造することができる。本方法では、第1の重合体のリビングラジカル重合活性単位に対して第2の単量体を重合することにより第2の重合鎖を生成・付与して、第1の重合鎖と第2の重合鎖を備える本重合体を合成し、本重合体による本微粒子を製造することができる。
【0077】
本方法は、第1の重合体を、重合体微粒子の製造時においてアクリル酸の重合の基点として用いるとともに、重合体微粒子の重合溶媒中における分散安定剤として用いることができる。こうすることで、重合安定性、すなわち、重合工程中の重合体微粒子の凝集を抑制して、粗大な凝集粒子の発生を抑制し、平均粒子径が小さく、かつ平均粒子径分布の狭い重合体微粒子を得ることができる。
【0078】
第1の重合体の存在下、第2の単量体を重合して重合体微粒子を製造するのにあたって、第1の重合体を分散安定剤として機能させるためには、例えば、第1の重合体を、第2の単量体の総質量100質量部に対して、0.3質量部以上50質量部以下用いることができる。かかる範囲で用いることで、第1の重合体を分散安定剤として機能させつつ、第2の単量体を主として含有する重合体微粒子を製造することができる。また、第1の重合体が0.3質量部未満であると、十分な分散安定効果が出にくく、重合体微粒子の平均粒子径が0.2μmを超えやすくなり、50質量部を超えても、分散安定剤としての機能性も向上しにくく、かつ重合体微粒子の平均粒子径の低下効果も小さくなってしまうからである。なお、ここでいう第1の重合体は、本重合体にいては、リビングラジカル重合活性を有する重合鎖(第1の重合鎖及びリビングラジカル重合活性単位)に相当している。
【0079】
第1の重合体は、第2の単量体の総質量100質量部に対して、また例えば、0.5質量部以上、また例えば、1質量部以上用いることができる。また、第1の重合体は、例えば、50質量部以下、また例えば、40質量部以下、また例えば、30質量部以下、また例えば、20質量部以下用いることができる。第1の重合体の第2の単量体の総質量100質量部に対する使用量の範囲は、上記上限と下限を適宜組み合わせて設定できるが、例えば、0.3質量部以上30質量部以下であり、また例えば、0.3質量部以上20質量部以下であり、また例えば、0.5質量部以上20質量部以下であり、また例えば、1質量部以上20質量部以下である。
【0080】
第2の単量体は、アクリル酸のほか、既述の他の構造単位Aが由来する単量体から選択される1種又は2種以上を用いることができる。また、アクリル酸などにおけるカルボキシル基は、アクリル酸について既述した塩の形態であってもよい。
【0081】
第2の単量体におけるアクリル酸は、第2の単量体の総質量に対して、例えば、30質量%以上、また例えば、40質量%以上、また例えば、50質量%以上、また例えば、60質量%以上とすることができ、また例えば、70質量%以上とすることができ、また例えば、80質量%以上とすることができ、また例えば、90質量%以上とすることができ、また例えば、95質量%以上とすることができ、また例えば、100質量%とすることができる。第2の単量体の総質量に対するアクリル酸の使用範囲は、上記した各下限及び上限を適宜組み合わせて設定できるが、例えば、60質量%以上100質量%以下であり、また例えば、80質量%以上100質量%以下であり、また例えば、90質量%以上100質量%以下である。
【0082】
また、第2の単量体の総質量に対するヒドロキシ基含有ビニル系単量体の質量の割合は、例えば、5質量%以上であり、また例えば、10質量%以上であり、例えば、20質量%以上であり、また例えば、30質量%以上であり、また例えば、40質量%以上である。また、50質量%以下であり、また例えば、40質量%以下であり、また例えば、30質量%以下であり、また例えば、20質量%以下であり、また例えば、10質量%以下であり、また例えば、5質量%以下である。第2の単量体の総質量に対するヒドロキシ基含有ビニル系単量体の使用範囲は、上記した各下限及び上限を適宜組み合わせて設定できるが、例えば、0質量%以上40質量%以下であり、また例えば、0質量%以上20質量%以下であり、また例えば、0質量%以上10質量%以下である。
【0083】
第2の単量体としては、本微粒子の意図した機能を損なわない限り、他のビニル系単量体を含めることができる。かかるビニル系単量体としては、既に説明した構造単位(C)が由来する単量体から選択される1種又は2種以上とすることができる。こうした第2の単量体は、第2の単量体の総質量に対して、例えば、20質量%以下、また例えば、10質量%以下、また例えば、5質量%以下、また例えば、3質量%以下、また例えば、1質量%以下含有することができる。
【0084】
重合体微粒子の製造工程においては、第2の重合鎖に架橋構造を導入することができる。
【0085】

架橋構造の導入方法は特に制限されるものではなく、例えば以下の方法による態様が例示される。
1)架橋性単量体の共重合
2)ラジカル重合時のポリマー鎖への連鎖移動を利用
3)反応性官能基を有する重合体を合成後、必要に応じて架橋剤を添加して後架橋
これらのなかでも、操作が簡便であり、架橋の程度を制御し易い点から架橋性単量体の共重合による方法が好ましい。
【0086】
架橋性単量体としては、2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体、及び加水分解性シリル基等の自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体等が挙げられる。上記多官能重合性単量体は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの内でも、均一な架橋構造を得やすい点で多官能アルケニル化合物が好ましく、分子内に複数のアリルエーテル基を有する多官能アリルエーテル化合物が特に好ましい。
【0087】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性体のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート;メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等のビスアミド類等を挙げることができる。
【0088】
多官能アルケニル化合物としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース等の多官能アリルエーテル化合物;ジアリルフタレート等の多官能アリル化合物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等を挙げることができる。
【0089】
(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等を挙げることができる。
【0090】
上記自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体の具体的な例としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、加水分解性シリル基を少なくとも1個有するビニル単量体であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有メタクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。
【0092】
架橋性単量体の使用量は、架橋性単量体以外の単量体(非架橋性単量体)の総質量に対して、例えば、0.1質量%以上5質量%以下であり、例えば、0.5質量%以上3質量%以下である。また、架橋性単量体の使用量は、非架橋性単量体の総モル量に対して、例えば、0.01モル%以上2モル%以下であり、また例えば、0.03モル%以上2モル%以下であり、また例えば、0.5モル%以上1モル%以下である。
【0093】
重合体微粒子の製造に際して、第1の重合体がリビングラジカル重合活性単位を備えているため、適切なラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)を添加することで、第2の単量体がリビング重合活性単位に対して重合される。ラジカル重合開始剤としては、RAFT剤について述べた各種の態様から適宜選択することができる。ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより狭い重合体を得る点から、第2の単量体の総質量100質量部に対して、例えば、0.01質量%以上5質量%以下、また例えば、0.02質量%以上3質量%以下、また例えば、0.03質量%以上3質量%以下用いることができる。
【0094】
重合体微粒子の製造は、特に限定するものではないが公知の重合方法を使用することが可能であるが、分散重合法にて行うことが好ましい。分散重合法を採用することで、平均粒子径が小さい重合体微粒子を容易に得ることができる。重合体微粒子の製造に際して用いる重合溶媒は、採用する重合法や第1のビニル系単量体、第2の単量体等の種類に応じて適宜設定することができる。分散重合法を採用する場合には、例えば、第1の重合体の合成時に用いた各種溶剤を適宜用いることができる。例えば、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤を用いることができる。
【0095】
第1の重合体の合成時の重合溶媒を用いることで、第1の重合体を溶解することができるとともに、第1の重合鎖やリビングラジカル重合の制御剤を溶解しやすい良溶媒であるため、第1の重合鎖が重合体微粒子の表層側に存在し、伸長末端となるアクリル酸などからなる第2の重合鎖側を重合体微粒子の内部に存在するように組織化しつつ重合させることができる。このため、分散安定性に優れた微粒子構造を形成しやすくなる。
【0096】
重合体微粒子の製造時の重合溶媒は、さらに、分散重合を考慮して、第2単量体等が溶解するがその重合鎖を含む重合体微粒子が溶解しない貧溶媒である必要があることを考慮して決定することができる。
【0097】
例えば、重合体微粒子の製造時の重合溶媒としては、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤、メタノール、t-ブチルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフランなどのフラン系溶剤テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤のほか、ベンゼン、酢酸エチル、ジクロロエタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン及びn-ヘプタン等が挙げられ、これらの1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、こうした溶剤と水などの高極性溶剤との混合溶媒として用いることもできる。重合体微粒子の重合溶媒に、水などの高極性溶剤を含む場合、(メタ)アクリル酸を重合工程において速やかに中和できる。高極性溶剤の使用量は、媒体の全質量に対して好ましくは0.05~10.0質量%であり、より好ましくは0.1~5.0質量%、さらに好ましくは0.1~1.0質量%である。高極性溶媒の割合が0.05質量%以上であれば、上記中和反応への効果が認められ、10.0質量%以下であれば重合反応への悪影響も見られない。
【0098】
重合工程においては、さらに架橋反応の速度調製剤として酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、サリチル酸、フマール酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、酢酸、EDTA-2ナトリウム、尿素、トリエチルアミン、アンモニア等の金属イオンに対してキレートもしくは配位能をもつ有機酸、有機酸塩、有機塩基などの他に塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸などの無機酸等を併用できる。
【0099】
重合溶媒、第1の重合体、単量体等を含めた重合仕込み量の総質量における第2の単量体の濃度は、特に限定するものではないが、適宜設定できるが、例えば、5質量%以上30質量%以下とすることができ、また例えば、10質量%以上20質量%以下とすることができる。
【0100】
重本微粒子の製造時の重合反応の際の反応温度は、特に限定するものではないが、例えば、40℃以上100℃以下である。また例えば、45℃以上90℃以下であり、また例えば、50℃以上80℃以下である。反応温度が40℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が100℃以下であれば、副反応が抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される。
【0101】
本微粒子の製造にあたっては、適宜、中和工程を備えることができる。典型的には、本微粒子の重合反応液に、水酸化リチウム等、本重合体のカルボキシル基の中和に用いる塩基を含む塩基性化合物を、意図した中和度となる量を添加して、例えば、室温等で数時間~十数時間攪拌を行い、中和した本微粒子の分散液を得ることができる。
【0102】
本微粒子は、重合反応後、必要に応じて中和後に、洗浄操作を適数回行い、沈殿等により回収し、乾燥することにより粉末として取得できる。
【0103】
(本微粒子及びその平均粒子径)
本製造方法によって取得される微粒子は、第1の重合鎖と第2の重合鎖とリビングラジカル重合活性単位を備える態様を備えることができる。本微粒子は、0.01μm以上0.20μm以下の平均粒子径を備えることができる。平均粒子径が0.20μm以下であると、水溶液増粘性及び透明性が双方優れた増粘剤をとして利用することができる。平均粒子径が0.20μmを超えると、増粘性及び透明性とも発揮されなくなる。増粘性と透明性との観点から、また例えば、平均粒子径は、0.01μm以上0.15μm以下であり、また例えば、平均粒子径は0.01μm以上0.10μm以下である。
【0104】
本微粒子の平均粒子径の測定方法は、顕微鏡下に観察された重合体微粒子の粒子径を、画像解析ソフトなどを用いて測定して、これらの平均値を求めることにより得ることができる。電解放射走査型電子顕微鏡で観察した画像中の400個の粒子の粒子径の平均値を本微粒子の平均粒子径とすることができる。より具体的には、以下の方法を採用できる。
【0105】
電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子(株)製JSM-6330F)または当該電子顕微鏡と解像度において同等の顕微鏡を用いて、1枚に50~100個の粒子が観察できる撮影画像を複数枚取得し、得られた画像につき、三谷商事株式会社製の画像解析ソフト「WinROOF」又は当該ソフトと同様の精度及び正確性で粒子数及び粒子径をカウントできるソフトウエアを使用し、粒子数としてトータル200個となるまでカウントし、200個の粒子について粒子径(円相当直径)を測定する。さらに、この操作を、別の撮影画像についても同様に200個の粒子について粒子径を測定する。これら合計400個の粒子径の平均値を、平均粒子径とすることができる。
【0106】
また、本微粒子は、例えば、1.2質量%水溶液時の粘度が5,000mPa・s以上となる増粘性を備えることができる。当該粘度が、5,000mPa・s以上であると、
水系増粘剤として極めて有用である。また例えば、当該粘度は、10,000mPa・s以上であり、また例えば、15,000mPa・s以上であり、また例えば、20,000mPa・s以上であり、また例えば、25,000mPa・s以上であり、また例えば、30,000mPa・s以上であり、また例えば、35,000mPa・s以上であり、また例えば、40,000mPa・s以上である。当該粘度の上限は特に限定するものではないが、例えば、60,000mPa・s以下となる,また例えば50,000mPa・s以下である。
【0107】
増粘性は、以下の方法にて測定することができる。本微粒子を1.2質量%の濃度となるようにイオン交換水を50ccの容器に量りとり、自転/公転式攪拌機(シンキー社製、あわとり錬太郎AR-250又はその同等物)にセットし、次いで、撹拌(自転速度2000rpm/公転速度800rpm、7分)、さらに脱泡(自転速度2200rpm/公転速度60rpm、1分)処理を行い、本微粒子が水に膨潤した状態のハイドロゲルを作製して試料とする。これを25℃で30分間温調し、B型粘度計にて12rpm×90秒後の粘度を水溶液粘度とする。
【0108】
また、本微粒子は、例えば、1.2質量%水溶液のヘイズ値が、50%以下である透明性を備えることができる。ヘイズ値が50%以下であることは、被増粘製品の外観を損なわないため優れている。ヘイズ値は、また例えば、40%以下であり、また例えば、35%以下であり、また例えば、30%以下であり、また例えば、25%以下であり、また例えば、20%以下であり、また例えば、15%以下であり、また例えば、10%以下である。
【0109】
透明性は、以下の方法で測定することができる。ヘイズメーター(機器名NDH-2000、日本電色社製、又はその同等物)を用い、1.2質量%水溶液のヘイズ値(散乱光/全光線透過光×100(%))を測定する。なお、水の全光線透過率を100%とする。
【実施例
【0110】
以下、本明細書の開示をより具体的に説明するために具体例としての実施例を記載する。以下の実施例は、本明細書の開示を説明するためのものであって、その範囲を限定するものではない。以下の実施例において、特に断りのない限り、%は質量%を表し、部は、質量部を表すものとする。
【0111】
(重合体の分子量の測定方法)
以下の実施例において、重合体についての分子量の測定をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて行った。すなわち、THF系GPCにより、ポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。なお、GPCは以下の条件で行った。
【0112】
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本溶媒:テトラヒドロフラン温度:40℃検出器:RI流速:600μL/min
【0113】
(リビング重合活性を有する重合体(第1の重合体)の合成)
(重合体1:P(St/PhMI))
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装着した1LフラスコにRAFT剤(ジベンジルトリチオカーボネート:以下、「DBTTC」ともいう。)2.0部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(日本ファインケム社製、商品名「ABN-E」:以下、「ABN-E」ともいう。)0.014部、スチレン(以下、「St」ともいう。)38部、N-フェニルマレイミド(以下、「PhMI」ともいう。)62部、及びアセトニトリル222部を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。4時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、メタノール/水=90/10(vоl%)から再沈殿精製、真空乾燥することで重合体1を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、得られた重合体1の反応率はSt75%、PhMI75%であった。重合体1の分子量は、Mn10,200、Mw15,300、Mw/Mnは1.51であった。なお、St及びPhMIが、第1の単量体に対応している。重合体の組成及び分子量分布等を表1に示す(以下、同様である。)。
【0114】
(重合体2:P(St/AN))
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装着した1LフラスコにRAFT剤(DBTTC)2.0部、ABN-E0.41部、St75部、アクリロニトリル(以下、「AN」ともいう。)25部、及びアニソール67部を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、80℃の恒温槽で重合を開始した。4時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、メタノール/水=90/10(vоl%)から再沈殿精製、真空乾燥することで重合体2を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、重合体2の反応率はSt73%、AN72%であった。重合体2の分子量は、Mn11,900、Mw15,500、Mw/Mnは1.30であった。なお、St及びANが、第1の単量体に対応している。
【0115】
(重合体3:P(St/無水マレイン酸))
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装着した1LフラスコにRAFT剤(DBTTC)2.0部、ABN-E0.070部、St52部、無水マレイン酸48部、及びアセトニトリル207部を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。4時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、トルエンから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体3を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、得られた重合体3の反応率はSt71%、無水マレイン酸71%であった。重合体3の分子量は、Mn13,800、Mw22,200、Mw/Mnは1.61であった。なお、St及び無水マレイン酸が、第1の単量体に対応している。
【0116】
(重合体4:P(St/PhMI))
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装着した1Lフラスコに、1-フェニルエチルヨージド(1-PEI)3.24部、ABN-E0.019部、St38部、PhMI62部、及びアセトニトリル221部を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。4時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、メタノール/水=90/10(vоl%)から再沈殿精製、真空乾燥することで重合体4を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、重合体4の反応率はSt74%、PhMI74%であった。重合体4の分子量は、Mn13,100、Mw31,100、Mw/Mnは2.37であった。なお、St及びPhMIが、第1の単量体に対応している。
【0117】
(重合体5:P(St/AN)-b-PAA)
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装着した1Lフラスコに、重合体2を70部、ABN-E0.019部、アクリル酸(以下、「AA」ともいう。)100部及びアセトニトリル255部を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。4時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、ヘキサンから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体5を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、AAの反応率は74%であった。重合体5のメチルエステル化後の分子量は、Mn24,800、Mw35,500、Mw/Mnは1.43であった。なお、St及びANが、第1の単量体に対応している。
【0118】
【表1】
St:スチレン
PhMI:N-フェニルマレイミド
AN:アクリロニトリル
AA:アクリル酸
DBTTC:ジベンジルトリチオカーボネート
1-PEI:1-フェニルエチルヨージド
ABN-E:2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、日本ファインケム製、商品名「ABN-E」
【0119】
<重合体微粒子の製造例>
(実施例1)
重合体微粒子の製造実施例1(重合体1を用いたポリアクリル酸系微粒子の製造)
重合には、攪拌翼、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応器を用いた。反応器内にアセトニトリル567部、イオン交換水2.20部、AA100.0部、トリメチロールプロパンジアリルエーテル(ダイソー社製、商品名「ネオアリルT-20」)0.90部、上記重合体(a1)1部、および上記AAに対して1.0モル%に相当するトリエチルアミンを仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後、加温して内温を55℃まで昇温した。内温が55℃で安定したことを確認した後、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V-65」)0.040部を添加したところ、反応液に白濁が認められたため、この点を重合開始点とした。外温(水バス温度)を調整して内温を55℃に維持しながら重合反応を継続し、重合開始点から6時間経過した時点で内温を65℃まで昇温した。内温を65℃で維持し、反応開始点から12時間経過した時点でAAの反応率は97%であり、粒子が媒体に分散したスラリー状の重合体の反応液を得た。12 時間経過後、反応液を冷却し、内温が25℃まで低下した後、水酸化リチウム・一水和物(以下、「LiOH・H2O」という)の粉末52.4部を添加した。添加後室温下12時間撹拌を継続して、P(PhMI/St)-b-PAA-b-P(PhMI/St)のLi 中和物(中和度90モル%)の粒子が媒体に分散したスラリー状のブロック型のポリアクリル酸系重合体の反応液を得た。得られた反応液を遠心分離して重合体微粒子を沈降させた後、上澄みを除去した。その後、重合反応液と同質量のアセトニトリルに沈降物を再分散させた後、遠心分離により重合体微粒子を沈降させて上澄みを除去する洗浄操作を2回繰り返した。沈降物を回収し、減圧条件下、80℃で3時間乾燥処理を行い、揮発分を除去することにより、ポリアクリル酸系微粒子として、ブロック重合体R-1(P(PhMI/St)-b-PAA-b-P(PhMI/St)のLi 中和物)を得た。得られた重合体は吸湿性を有するため、水蒸気バリア性を有する容器に密封保管した。なお、ブロック重合体の粉末をIR測定し、カルボン酸のC=O基由来のピークとカルボン酸LiのC=O由来のピークの強度比より中和度を求めたところ、仕込みからの計算値に等しく90モル%であった。
【0120】
(実施例2~19、比較例1~2)
仕込みを表2A及び2Bに示す通り変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリアクリル酸系微粒子を得た。
【0121】
<平均粒子径の測定>
各実施例及び比較例で得られたポリアクリル酸系微粒子について、電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子(株)製JSM-6330F)を用いて、1枚に50~100個の粒子が観察できる撮影画像を複数枚取得し、得られた画像につき、三谷商事株式会社製の画像解析ソフト「WinROOF」を使用し、粒子数としてトータル200個となるまでカウントし、200個の粒子について粒子径(円相当直径)を測定した。この操作を、別の撮影画像についても同様に200個の粒子について粒子径を測定した。これら合計400個の粒子径の平均値を、平均粒子径とした。結果を表2A及び2Bに示す。
【0122】
<粘度の測定>
純分換算して1.2wt%の濃度となるように、各実施例及び比較例で得られたポリアクリル酸系微粒子とイオン交換水を50ccの容器に量りとり、自転/公転式攪拌機(シンキー社製、あわとり錬太郎AR-250)にセットした。次いで、撹拌(自転速度2000rpm/公転速度800rpm、7分)、さらに脱泡(自転速度2200rpm/公転速度60rpm、1分)処理を行い、ポリアクリル酸系微粒子が水に膨潤した状態のハイドロゲルを作製した。これを25℃で30分間温調し、B型粘度計にて12rpm×90秒後の粘度を水溶液粘度とした。
【0123】
<ヘイズの測定>
上記1.2wt%のハイドロゲルを使用し、ヘイズメーター(機器名NDH-2000、日本電色社製)を用いて、セルに溶液を入れて測定し、ヘイズを求めた。なお、水の全光線透過率を100%とした。結果を表2A及び2Bに示す。
【0124】
【表2A】
【表2B】
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
T-20:トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ダイソー株式会社製、商品名「ネオアリルT-20」
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート(ライトエステルTMP、共栄社化学)
TEA:トリエチルアミン
AcN:アセトニトリル
V-65:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業社製、商品名「V-65」
【0125】
表2A及び2Bに示すように、ポリアクリル酸系微粒子は、いずれもその平均粒子径は、0.20μm以下であり、実施例1~19の結果から明らかなように、高い増粘性を発現した。さらに、その水溶液は、高い透明性を示した。これに対し、粒子径が0.20μm超のポリアクリル酸系微粒子を用いた比較例1及び2は、増粘性及び水溶液の透明性に劣るものであった。
【0126】
また、実施例1~19及び比較例1~2の結果から、第1の重合体(リビングラジカル重合活性を有する重合鎖)を、第2の単量体の総質量に対して0.3部以上用いることが、平均粒子径を0.20μm及びヘイズ値を抑制するのに有効であるほか、第1の重合体を用いることが平均粒子径及びヘイズ値を低減できることに有効であることがわかった。
【0127】
また、第1の重合体が、スチレンを含むほか、マレイミド、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸を含んでいても、いずれも良好な平均粒子径制御効果を備えていることがわかった。さらに、架橋性単量体を不使用若しくは少量であっても、いずれも、十分に小さい平均粒子径の微粒子を得ることができ、特に、架橋性単量体の使用量が少ないと透明性に優れることがわかった。