(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】吊下機構
(51)【国際特許分類】
B65G 1/14 20060101AFI20250115BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B65G1/14 H
B65G1/04 551A
(21)【出願番号】P 2022006757
(22)【出願日】2022-01-19
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】城石 景祐
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-298201(JP,A)
【文献】特開2018-043867(JP,A)
【文献】特開2020-075819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/133
1/14-1/20
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部に吊り下げられる第1吊下部材と、
前記第1吊下部材に吊り下げられるように支持される第2吊下部材と、
前記第1吊下部材と前記第2吊下部材とを連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記第1吊下部材に接続される第1連結部材と、前記第2吊下部材に接続される第2連結部材とを有し、
前記第1連結部材は第1連結面を有し、
前記第2連結部材は前記第1連結面と接触する第2連結面を有し、
前記第1連結面および前記第2連結面のいずれか一方は凸状曲面であり、他方は凹状曲面であ
り、
前記凹状曲面を有する前記第1連結部材および前記第2連結部材のいずれか一方は、他方に接続される軸部が挿通される貫通孔と、当該貫通孔から側面にわたって形成される切欠きとを有する、吊下機構。
【請求項2】
前記軸部は、前記第1連結部材に接続される前記第1吊下部材である、請求項1に記載の吊下機構。
【請求項3】
前記軸部は、前記第2連結部材に接続される、前記第2連結部材と前記第2吊下部材とを連結する連結軸である、請求項1に記載の吊下機構。
【請求項4】
前記第2吊下部材は、連結部において前記第1吊下部材に着脱可能に設けられている、請求項1から
3のいずれか1項に記載の吊下機構。
【請求項5】
前記支持部に対する前記第1連結面の高さを調整する第1高さ調整機構と、
前記
第2連結部材に対する前記第2吊下部材の高さを調整する第2高さ調整機構を有している、請求項1から
3のいずれか1項に記載の吊下機構。
【請求項6】
前記第2吊下部材には、物品を収納する収納体が取り付けられる、請求項1から
5のいずれか1項に記載の吊下機構。
【請求項7】
前記支持部は天井であり、
前記第2吊下部材には、天井搬送車を走行させるレールが取り付けられている、請求項1から
5のいずれか1項に記載の吊下機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊下機構に関する。
【背景技術】
【0002】
天井などの支持部に吊り下げられて物品を保管する保管棚が知られている。例えば、特許文献1には、吊りフレームによって棚モジュールを天井から吊り下げる保管棚が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の吊りフレームは、天井に直接固定される固定部を有しており、固定部から下方に伸びる吊部によって棚モジュールを吊り下げている。このような吊りフレームは、天井が傾いていたり、天井への固定の施工が適正でなかったりすると、水平面に対して傾いた状態で天井に固定されることがある。このような場合、吊りフレームを介して吊り下げられた棚モジュールが水平に配置されなくなるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、吊り下げる対象物を水平に設置することを容易にする吊下機構を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る吊下機構は、支持部に吊り下げられる第1吊下部材と、前記第1吊下部材に吊り下げられるように支持される第2吊下部材と、前記第1吊下部材と前記第2吊下部材とを連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記第1吊下部材側に設けられた第1連結面と、前記第2吊下部材側に設けられ、前記第1連結面と接触する第2連結面とを有し、前記第1連結面および前記第2連結面のいずれか一方は凸状曲面であり、他方は凹状曲面である。
【0007】
上記構成によれば、連結部において凸状曲面と凹状曲面とが接触する。これにより、第1吊下部材が水平面に対して傾いていても、凸状曲面が凹状曲面に対して摺動するか、または凹状曲面が凸状曲面に対して摺動する。それゆえ、第2吊下部材が、傾いた第1吊下部材に対して鉛直下方に向くことができる。したがって、第2吊下部材によって吊り下げられる吊り下げの対象物を水平な姿勢に維持しやすくなる。
【0008】
前記吊下機構において、前記第1連結面および前記第2連結面のいずれか一方は凸状球面であり、他方は凹状球面である。
【0009】
上記構成によれば、第1連結面および第2連結面がより円滑に接触することができる。これにより、凸状球面と凹状球面との間で摺動がしやすくなる。したがって、吊り下げの対象物をより水平な姿勢に維持しやすくなる。
【0010】
前記吊下機構において、前記凹状球面の曲率半径は前記凸状球面の曲率半径より大きい。
【0011】
上記構成によれば、凸状球面と凹状球面との接触面積が小さくなる。これにより、両球面の曲率半径が同じである場合のように凸状球面と凹状球面とが嵌まり合うことがなく、凹状球面に対して凸状球面がより自由に動くことができる。
【0012】
前記吊下機構において、前記第2吊下部材は、連結部において前記第1吊下部材に着脱可能に設けられている。
【0013】
上記構成によれば、吊下機構を第1吊下部材および第2吊下部材に分解した状態で設置する現場に持ち込むことができる。
【0014】
前記吊下機構において、前記支持部に対する前記第1連結面の高さを調整する第1高さ調整機構と、前記第1連結面に対する前記第2吊下部材の高さを調整する第2高さ調整機構を有している。
【0015】
上記構成によれば、吊下機構を第1吊下部材および第2吊下部材を分解した状態で、それぞれの高さを調整する作業を行うことができる。これにより、第2吊下部材に重量物を取り付ける場合に、それぞれの高さ調整が完了した状態で第2吊下部材を第1吊下部材に接続することにより、重量物を取り付けた状態での高さ調整を行うことから開放される。したがって、高さ調整作業の負担を軽減することができる。
【0016】
前記吊下機構において、前記第1連結面は凸状曲面であり、前記第2連結面は凹状曲面であってよい。あるいは、前記吊下機構において、前記第1連結面は凹状曲面であり、前記第2連結面は凸状曲面であってもよい。
【0017】
前記吊下機構において、前記第2吊下部材には、物品を収納する収納体が取り付けられる。
【0018】
上記構成によれば、収納体を水平な姿勢に維持しやすくすることができる。これにより、物品を安定して収納することができる。
【0019】
前記吊下機構において、前記支持部は天井であり、
前記第2吊下部材には、天井搬送車を走行させるレールが取り付けられている。
【0020】
上記構成によれば、レールを走行する天井搬送車を水平な姿勢に維持しやすくすることができる。これにより、天井搬送車を安定して走行させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、吊り下げる対象物を水平に設置することを容易にする吊下機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1および2に係る吊下機構が用いられる移載システムの構成を示す正面図である。
【
図2】実施形態1に係る吊下機構の構成を示す部分断面図である。
【
図3】上記吊下機構における連結部材の上方から見た構成を示す斜視図である。
【
図4】上記連結部材の下方から見た構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る吊下機構の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔移載システムの構成〕
本発明の実施形態に係る吊下機構が用いられる移載システム10について、
図1を参照して説明する。
図1は、移載システム10の構成を示す正面図である。
【0024】
図1に示すように、移載システム10は、天井100(支持部)に吊り下げられるように設けられている。移載システム10は、吊下機構1と、天井搬送車2と、保管棚3(収納体)と、レール4とを備えている。
【0025】
吊下機構1は、保管棚3およびレール4を天井に吊り下げる機構である。吊下機構1については、後述する実施形態1,2において詳細に説明する。
【0026】
レール4は、天井搬送車2の移動経路に配置されており、上面部4aと、一対の側部4bと、一対の下面部4cとを有している。上面部4aは、吊下機構1に取り付けられる部分であり、天井100に対向するように配置されている。側部4bは、上面部4aの両側端縁から垂下するように設けられた側壁の部分である。下面部4cは、側部4bの下端縁から側部4bの内壁面側に伸びるように短く形成されており、天井搬送車2に設けられた後述する車輪24が転動する軌道面を形成している。
【0027】
天井搬送車2は、レール4に吊り下げられた状態でレール4に沿って走行することにより、容器5(物品)を搬送先に搬送する。容器5は、本体5aを有しており、本体5a内に、例えば、半導体製造に用いられるウェハ、レチクルなどの物品を収容する。天井搬送車2は、箱体21と、移載機構22と、駆動部23と、車輪24と、支持軸25とを有している。
【0028】
箱体21は、容器5を収納するとともに、上部に移載機構22が配置されている。箱体21は、容器5の出し入れが可能となるように、箱体21の一側面側が開放されている。
【0029】
移載機構22は、容器5を箱体21から保管棚3へ移動させるとともに、保管棚3から箱体21に移動させることにより、容器5の移載を行う。移載機構22は、本体5aの上端面に設けられたフランジ部5bを把持する機構と、
図1におけるX1方向への進出移動およびX2方向への退行移動をする機構とを有している。
【0030】
駆動部23は、車輪24を駆動する動力の発生源であり、モータなどにより構成されている。駆動軸23aは、駆動軸23aを有している。駆動軸23aは、車輪24側に突出するように設けられており、車輪24の車軸に直結されている。車輪24は、それぞれ対応する下面部4cの上端面上を転動する位置に配置されている。
【0031】
支持軸25は、箱体21を駆動部23に吊り下げるように支持する軸部材である。支持軸25は、駆動部23の下端面と箱体21の上端面とを接続するように設けられている。
【0032】
保管棚3は、レール4の所要箇所に設けられており、天井搬送車2から移載された容器を一時的に保管する。保管棚3は、サイドトラックバッファ(STB)、アンダートラックストレージ(UTS)などとして設けられている。
【0033】
保管棚3は、天板31と、底板32と、接続部材33とを有している。天板31は、吊下機構1に取り付けられた方形を成す板状の部材である。底板32は、天板31と対向するように天板31の下方に配置された方形を成す板状の部材であり、容器5が載置される。接続部材33は、4本設けられており、天板31の下端面の四隅と底板32の上端面の四隅とを接続する。
【0034】
なお、吊下機構1は、2軸調位置整機構(図示せず)を介して天井100に支持されていてもよい。2軸調位置整機構は、水平面において、
図1に示すX1方向およびX2方向の位置と、X1方向およびX2方向に直交する方向の位置とを調整する。2軸調位置整機構は、天井100に代わって支持部として機能する。
【0035】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図2~
図6を参照して詳細に説明する。
【0036】
図2は、実施形態1に係る吊下機構1Aの構成を示す部分断面図である。
図3は、吊下機構1における連結部材71の上方から見た構成を示す斜視図である。
図4は、連結部材71の下方から見た構成を示す斜視図である。
図5は、連結部材71の構成を示す平面図である。
図6は、
図5のA-A線矢視断面図である。
【0037】
図2に示す吊下機構1Aは、上述した吊下機構1として移載システム10に用いられる。
図2に示すように、吊下機構1Aは、上部機構6と、下部機構7とを備えている。上部機構6は、天井100に支持される機構である。下部機構7は、上部機構6と連結されるように上部機構6に吊り下げられる機構である。
【0038】
上部機構6は、吊下軸61(第1吊下部材)と、連結部材62と、ナット63とを有している。吊下軸61は、図示はしないが、上端部が天井100の上面側に突出するように貫通している。吊下軸61の上端部および下端部の外周には、雄ネジが形成されている。ナット63は、吊下軸61に外嵌されており、回されることにより吊下軸61の軸方向に移動する。また、吊下軸61の上端部には、図示しないナット(上部ナット)が外嵌されている。
【0039】
上部ナットとナット63とで天井100を挟持することにより、吊下軸61は天井100に固定される。また、上部ナットおよびナット63を回すことにより、吊下軸61が上部ナットおよびナット63に対して上下方向に移動する。このように、吊下軸61、上部ナットおよびナット63は、高さ調整機構(第1高さ調整機構)を構成している。
【0040】
連結部材62は、凸状曲面(第1連結面)、具体的には凸状球面を有する部材である。連結部材62は、球体であるが、球体である必要はなく、後述する連結部材71の凹面部71aと接触する面が凸状球面であれば、例えば半球体であってもよい。
【0041】
連結部材62は、吊下軸61の下端部と接続されている。具体的には、連結部材62には、上端から中心に向かって雌ネジを有する孔62aが形成されており、吊下軸61の下端部が連結部材62の孔62aとネジの嵌め合いで接続されている。連結部材62を吊下軸61に対して回すことによりネジの嵌め合い位置が上下して、連結部材62が吊下軸61に接続される高さを変更することができる。このように、吊下軸61および連結部材62のネジの嵌め合いは、高さ調整機構(第1高さ調整機構)を構成している。
【0042】
下部機構7は、連結部材71と、支持板72と、吊下軸73(第2吊下部材)と、連結軸74と、ナット75,76とを有している。連結軸74およびナット75,76は、4組設けられている。
【0043】
連結部材71は、
図3から
図6に示すように、上面視でほぼ正方形を成しており、所定の厚みを有する。連結部材71における下面側の中央には、凹状曲面、具体的には凹状球面を成す凹面部71a(第2連結面)が窪むように形成されている。凹面部71aの曲率半径は、連結部材62の曲率半径より大きい。
【0044】
凹面部71aの中心には、凹面部71aから連結部材71の上端面にまで貫通する軸孔71bが形成されている。軸孔71bは、吊下軸61に対して軸孔71bの中心が所定角度傾斜しても、軸孔71bを形成する連結部材71の内壁面が吊下軸61に接触しない大きさ、すなわち直径を有するように形成されている。
【0045】
また、軸孔71bの一側端から連結部材71の一つの側面にわたって、軸孔71bに通じる切欠き71cが直線状に形成されている。切欠き71cは、吊下軸61の直径よりやや広く、軸孔71bの直径よりも狭い幅を有するように形成されている。また、連結部材71の四隅の箇所には、それぞれ1つずつネジ孔71dが形成されている。
【0046】
連結軸74は、上端部および下端部の外周にそれぞれ雄ネジが形成されている。上端部の雄ネジは、ネジ孔71dに嵌め合う。ナット75は、連結軸74の上端部に外嵌されている。連結軸74の上端部は、ナット75を回すことにより、ネジ孔71d内を上下方向に移動する。これにより、連結軸74は、ナット75に対して上下方向に移動する。このように、連結軸74およびナット75は、高さ調整機構(第2高さ調整機構)を構成している。
【0047】
支持板72は、ほぼ正方形を成す板状の部材である。支持板72の四隅の箇所には、それぞれ1つずつネジ孔72aが設けられている。ネジ孔72aは、ネジ孔71dに対向する位置に形成されている。ネジ孔72aには、連結軸74における下端部の雄ネジが嵌め合う。ナット76は、連結軸74の下端部に外嵌されている。連結軸74の下端部は、ナット76を回すことにより、ネジ孔72a内を上下方向に移動する。これにより、連結軸74は、ナット76に対して上下方向に移動する。このように、連結軸74およびナット76は、高さ調整機構(第2高さ調整機構)を構成している。
【0048】
吊下軸73は、支持板72の下面に接合されている。吊下軸73は、下方に伸びるように設けられており、保管棚3の天板31およびレール4の上面部4aと接続されている。
【0049】
吊下機構1Aにおいて、連結部材62および連結部材71は、連結部200を構成している。連結部200は、吊下軸61と吊下軸73とを連結する。
【0050】
上記のように構成される吊下機構1Aは、連結部200において、連結部材62と連結部材71の凹面部71aとが接触する。これにより、連結部材71の凹面部71aが連結部材62の球面に対して摺動する。それゆえ、天井100が水平ではなく傾いていたり、天井100への吊下軸61の固定の施工が適正でなかったりすることで、吊下軸61が水平面に対して傾いていても、吊下軸73が、傾いた吊下軸61に対して鉛直下方に向くことができる。したがって、吊下軸73によって吊り下げられる吊り下げの対象物としての保管棚3を水平な姿勢に維持しやすくなる。しかも、下部機構7が保管棚3またはレール4より下方の部分とともに横揺れしても、横揺れを減衰させることができる。したがって、上部機構6に与えられる横揺れによる影響を軽減することができる。
【0051】
また、連結部材62の球面が凸状球面であり、連結部材71の凹面部71aが凹状球面である。これにより、連結部材62と凹面部71aとが円滑に接触することができる。それゆえ、連結部材62と凹面部71aとの間で摺動がしやすくなる。したがって、保管棚3をより水平な姿勢に維持しやすくなる。しかも、下部機構7より下方の部分で生じた横揺れの減衰効果を高めることができる。
【0052】
また、連結部材71の凹面部71aの曲率半径は連結部材62の曲率半径より大きい。これにより、連結部材62の球面と連結部材71の凹面部71aとの接触面積が小さくなる。したがって、連結部材62に対して凹面部71aがより自由に動くことができる。これに対し、連結部材62の球面と連結部材71の凹面部71aとの曲率半径が同じである場合は、それぞれの球面が嵌まり合うため、凹面部71aが連結部材62に対して自由に動けなくなる。
【0053】
また、連結部材71が切欠き71cを有するので、切欠き71cを上部機構6の吊下軸61に沿わせるように連結部材71を水平方向に移動させることにより、吊下軸73を含む下部機構7を上部機構6に着脱可能に設けることができる。これにより、吊下機構1Aを、吊下軸61を含む上部機構6および吊下軸73を含む下部機構7に分解した状態で、設置する現場に持ち込むことができる。
【0054】
また、吊下軸61に対する連結部材62およびナット63の嵌め合いは、天井100に対する連結部材62の高さを調整する高さ調整機構(第1高さ調整機構)を構成する。一方、連結軸74に対するナット75,76の嵌め合いは、連結部材62に対する吊下軸73の高さを調整する高さ調整機構(第2高さ調整機構)を構成する。
【0055】
これにより、吊下機構1Aを上部機構6および下部機構7に分解した状態で、それぞれの高さを調整する作業を行うことができる。それゆえ、吊下軸73に重量物を取り付ける場合に、それぞれの高さ調整が完了した状態で下部機構7を上部機構6に接続することにより、重量物を取り付けた状態で高さ調整を行うことから開放される。したがって、高さ調整作業の負担を軽減することができる。
【0056】
また、上部機構6に凸状曲面(凸状球面)を形成する連結部材62が設けられ、下部機構7に凹状曲面(凹状球面)を形成する連結部材71が設けられている。これにより、上部機構6の高さ調整は、連結部材62およびナット63の2箇所のみとなり、高さ調整の作業を簡素化することができる。
【0057】
また、吊下軸73には、容器5を収納する保管棚3が取り付けられる。これにより、保管棚3を水平な姿勢に維持しやすくすることができる。したがって、容器5を安定して収納することができる。しかも、保管棚3に横揺れが生じても、その横揺れを減衰させることができる。横揺れの減衰によっても、容器5を安定して収納することができる。
【0058】
また、吊下軸73には、天井搬送車2を走行させるレール4が取り付けられている。これにより、レール4を走行する天井搬送車2を水平な姿勢に維持しやすくすることができる。したがって、天井搬送車2を安定して走行させることができる。しかも、天井搬送車2が横揺れしても、その横揺れを減衰させることができる。横揺れの減衰によっても、天井搬送車2を安定して走行させることができる。
【0059】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図7を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図7は、実施形態2に係る吊下機構1Bの構成を示す部分断面図である。
【0060】
図7に示す吊下機構1Bは、上述した吊下機構1として移載システム10に用いられる。
図7に示すように、吊下機構1Bは、上部機構8と、下部機構9とを備えている。上部機構8は、天井100に支持される機構である。下部機構9は、上部機構8と連結されるように上部機構8に吊り下げられる機構である。
【0061】
上部機構8は、連結部材71と、吊下軸81(第1吊下部材)と、ナット82,83とを有している。吊下軸81およびナット82,83は、4組設けられている。連結部材71は、実施形態1の吊下機構1Aにおける連結部材71とは異なり、凹面部71aを上側に向けるように配置されている。吊下機構1Bにおいて、凹面部71aは第1連結面を形成している。
【0062】
吊下軸81は、図示はしないが、上部が天井100の上面側に突出するように貫通している。吊下軸81の上端部および下端部の外周には、それぞれ雄ネジが形成されている。ナット82は、吊下軸81の上端部に外嵌されており、回されることにより吊下軸81の軸方向に移動する。また、吊下軸81の上端部には、天井100の上面側に配置された図示しないナット(上部ナット)が外嵌されている。
【0063】
上部ナットとナット82とで天井100を挟持することにより、吊下軸81は天井100に固定される。また、上部ナットおよびナット82を回すことにより、吊下軸81が上部ナットおよびナット82に対して上下方向に移動する。このように、吊下軸81、上部ナットおよびナット82は、高さ調整機構(第1高さ調整機構)を構成している。
【0064】
吊下軸81の下端部は、連結部材71のネジ孔71dと嵌め合うようにネジ孔71dに挿入されている。ナット83は、吊下軸81の下端部に外嵌されている。吊下軸81の下端部は、ナット83を回すことにより、ネジ孔71d内を上下方向に移動する。これにより、吊下軸81は、ナット83に対して上下方向に移動する。このように、吊下軸81およびナット83は、高さ調整機構(第1高さ調整機構)を構成している。
【0065】
下部機構9は、連結部材91と、支持板92と、吊下軸93(第2吊下部材)と、連結軸94と、ナット95とを有している。
【0066】
連結部材91は、凸状曲面(第2連結面)、具体的には凸状球面を有する部材である。連結部材91は、球体であるが、球体である必要はなく、連結部材71の凹面部71aと接触する面が凸状球面であれば、例えば半球体であってもよい。凹面部71aの曲率半径は、連結部材91の曲率半径より大きい。
【0067】
連結部材91は、連結軸94の上端部と接続されている。具体的には、連結部材91は、下端から中心に向かって雌ネジを有する孔91aが形成される一方、連結軸94の上端部の外周には雄ネジが形成されており、連結軸94の上端部が連結部材91の孔91aとネジの嵌め合いで接続されている。連結部材91を連結軸94に対して回すことによりネジの嵌め合い位置が上下して、連結部材91が連結軸94に接続される高さを変更することができる。このように、連結部材91および連結軸94のネジの嵌め合いは、高さ調整機構(第2高さ調整機構)を構成している。
【0068】
支持板92は、ほぼ正方形を成す板状の部材である。吊下軸93は、支持板92の下面に接合されている。吊下軸93は、下方に伸びるように設けられており、保管棚3の天板31およびレール4の上面部4aと接続されている。支持板92の中央には、支持板92の両面に貫通する孔92aが設けられている。また、吊下軸93の上端部における中央には、孔92aに連なるネジ孔93aが設けられている。
【0069】
連結軸94の下部の外周には、雄ネジが形成されている。連結軸94の下部は、支持板92の孔92aに挿通され、さらに吊下軸93のネジ孔93aに嵌め合うように挿入されている。また、ナット95は、連結軸94の下部に外嵌されている。連結軸94の下部は、ナット95を回すことにより、ネジ孔93a内を上下方向に移動する。これにより、連結軸94は、ナット95に対して上下方向に移動する。このように、連結軸94およびナット95は、高さ調整機構(第2高さ調整機構)を構成している。
【0070】
連結軸94は、連結部材71の軸孔71bに挿通されている。軸孔71bは、連結部材71の軸孔71bに対して連結軸94の中心が所定角度傾斜しても、連結軸94が軸孔71bを形成する連結部材71の内壁面に接触しない大きさ、すなわち直径を有するように形成されている。
【0071】
吊下機構1Bにおいて、連結部材71および連結部材91は、連結部300を構成している。連結部300は、吊下軸81と吊下軸73とを連結する。
【0072】
上記のように構成される吊下機構1Bは、連結部300において、連結部材91と連結部材71の凹面部71aとが接触する。これにより、連結部材91の球面が連結部材71の凹面部71aに対して摺動する。天井100が水平ではなく傾いていたり、天井100への吊下軸61の固定の施工が適正でなかったりすることで、吊下軸81が水平面に対して傾いていても、吊下軸93が、傾いた吊下軸81に対して鉛直下方に向くことができる。したがって、吊下軸93によって吊り下げられる吊り下げの対象物としての保管棚3を水平な姿勢に維持しやすくなる。しかも、下部機構9が保管棚3またはレール4より下方の部分とともに横揺れしても、横揺れを減衰させることができる。したがって、上部機構8に与えられる横揺れによる影響を軽減することができる。
【0073】
また、連結部材91の球面が凸状球面であり、連結部材71の凹面部71aが凹状球面である。これにより、連結部材91と凹面部71aとが円滑に接触することができる。それゆえ、連結部材91と凹面部71aとの間で摺動がしやすくなる。したがって、保管棚3をより水平な姿勢に維持しやすくなる。しかも、下部機構9より下方の部分で生じた横揺れの減衰効果を高めることができる。
【0074】
また、連結部材71の凹面部71aの曲率半径は連結部材91の曲率半径より大きい。これにより、連結部材91の球面と連結部材71の凹面部71aとの接触面積が小さくなる。したがって、凹面部71aに対して連結部材91がより自由に動くことができる。これに対し、連結部材91の球面と連結部材71の凹面部71aとの曲率半径が同じである場合は、それぞれの球面が嵌まり合うため、連結部材91が凹面部71aに対して自由に動けなくなる。
【0075】
また、連結部材71が切欠き71cを有するので、下部機構9の連結軸94を切欠き71cに沿わせるように連結部材91を水平方向に移動させることにより、連結軸94を含む下部機構9を上部機構8に着脱可能に設けることができる。これにより、吊下機構1Bを、吊下軸81を含む上部機構8および連結軸94を含む下部機構9に分解した状態で、設置する現場に持ち込むことができる。
【0076】
また、吊下軸81に対するナット82,83の嵌め合いは、天井100に対する連結部材71の高さを調整する高さ調整機構(第1高さ調整機構)を構成する。一方、連結軸94に対する連結部材91およびナット95の嵌め合いは、連結部材91に対する吊下軸93の高さを調整する高さ調整機構(第2高さ調整機構)を構成する。
【0077】
これにより、吊下機構1Bを上部機構8および下部機構9に分解した状態で、それぞれの高さを調整する作業を行うことができる。それゆえ、吊下軸93に重量物を取り付ける場合に、それぞれの高さ調整が完了した状態で下部機構9を上部機構8に接続することにより、重量物を取り付けた状態で高さ調整を行うことから開放される。したがって、高さ調整作業の負担を軽減することができる。
【0078】
また、上部機構8に凹状曲面(凹状球面)を形成する連結部材71が設けられ、下部機構9に凸状曲面(凸状球面)を形成する連結部材91が設けられている。
【0079】
また、吊下軸93には、容器5を収納する保管棚3が取り付けられる。これにより、保管棚3を水平な姿勢に維持しやすくすることができる。したがって、容器5を安定して収納することができる。しかも、保管棚3に横揺れが生じても、その横揺れを減衰させることができる。横揺れの減衰によっても、容器5を安定して収納することができる。
【0080】
また、吊下軸93には、天井搬送車2を走行させるレール4が取り付けられる。これにより、レール4を走行する天井搬送車2を水平な姿勢に維持しやすくすることができる。したがって、天井搬送車2を安定して走行させることができる。しかも、天井搬送車2が横揺れしても、その横揺れを減衰させることができる。横揺れの減衰によっても、天井搬送車2を安定して走行させることができる。
【0081】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B 吊下機構
3 保管棚(収納体)
5 容器(物品)
61 吊下軸(第1吊下部材,第1高さ調整機構)
62 連結部材(第1連結面,凸状曲面,凸状球面,第1高さ調整機構)
63 ナット(第1高さ調整機構)
71a 凹面部(第1連結面,第2連結面,凹状球面)
73 吊下軸(第2吊下部材)
74,94 連結軸(第2高さ調整機構)
75,76,95 ナット(第2高さ調整機構)
81 吊下軸(第1吊下部材,第1高さ調整機構)
82,83 ナット(第1高さ調整機構)
91 連結部材(第2連結面,凸状曲面,凸状球面,第2高さ調整機構)
93 吊下軸(第2吊下部材)
100 天井(支持部)
200,300 連結部