(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】推定システムおよび車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/13 20190101AFI20250115BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20250115BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20250115BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250115BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20250115BHJP
B60L 58/15 20190101ALI20250115BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250115BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250115BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250115BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250115BHJP
【FI】
B60L58/13
G01R31/387
G01R31/3828
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/15
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H02J7/00 X
H02J7/00 P
B60L3/00 S
(21)【出願番号】P 2022045261
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 信行
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029455(JP,A)
【文献】特開2020-061824(JP,A)
【文献】特許第5626465(JP,B2)
【文献】特開2014-187853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する充電処理、および前記蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成された処理装置とを備え、
前記充電処理は、前記蓄電装置の満充電SOCよりも低い上限SOCを前記蓄電装置のSOCが超過しないように前記蓄電装置を充電する制限充電処理を含み、
前記推定処理は、前記充電処理により前記蓄電装置に充電される充電量を、前記充電処理による前記SOCの増分を示すΔSOCで除算することによって前記満充電容量を推定する処理を含み、
前記処理装置は、
前記満充電容量の推定精度の低下を示す条件が成立する場合に、第1の処理または第2の処理を実行し、
前記条件が成立しない場合に前記制限充電処理を実行し、
前記第1の処理は、前記制限充電処理において設定される前記上限SOCを、前記条件が成立しない場合よりも引き上げて前記充電処理を実行する処理を含み、
前記第2の処理は、前記制限充電処理を実行することなく前記充電処理を実行する処理を含み、
前記上限SOCがユーザにより設定されている場合に、前記処理装置は、前記第1の処理または前記第2の処理を実行し、
前記条件は、前記上限SOCが前記ユーザにより設定されている状態がしきい時間以上継続している条件を含む、推定システム。
【請求項2】
前記条件は、前記制限充電処理がしきい回数以上連続して実行される条件を含む、請求項
1に記載の推定システム。
【請求項3】
蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する充電処理、および前記蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成された処理装置とを備え、
前記充電処理は、前記蓄電装置の満充電SOCよりも低い上限SOCを前記蓄電装置のSOCが超過しないように前記蓄電装置を充電する制限充電処理を含み、
前記推定処理は、前記充電処理により前記蓄電装置に充電される充電量を、前記充電処理による前記SOCの増分を示すΔSOCで除算することによって前記満充電容量を推定する処理を含み、
前記処理装置は、
前記満充電容量の推定精度の低下を示す条件が成立する場合に、第1の処理または第2の処理を実行し、
前記条件が成立しない場合に前記制限充電処理を実行し、
前記第1の処理は、前記制限充電処理において設定される前記上限SOCを、前記条件が成立しない場合よりも引き上げて前記充電処理を実行する処理を含み、
前記第2の処理は、前記制限充電処理を実行することなく前記充電処理を実行する処理を含み、
前記上限SOCがユーザにより設定されている場合に、前記処理装置は、前記第1の処理または前記第2の処理を実行し、
前記条件は、前記制限充電処理がしきい回数以上連続して実行される条件を含む
、推定システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記第1の処理または前記第2の処理を実行する場合にその旨を報知する報知処理をさらに実行する、請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の推定システム。
【請求項5】
前記処理装置は、前記第1の処理を実行する場合の前記蓄電装置の充電開始時におけるSOCを引き下げるようにユーザに報知するための引き下げ報知処理をさらに実行する、請求項
4に記載の推定システム。
【請求項6】
蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する充電処理、および前記蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成された処理装置とを備え、
前記充電処理は、前記蓄電装置の満充電SOCよりも低い上限SOCを前記蓄電装置のSOCが超過しないように前記蓄電装置を充電する制限充電処理を含み、
前記推定処理は、前記充電処理により前記蓄電装置に充電される充電量を、前記充電処理による前記SOCの増分を示すΔSOCで除算することによって前記満充電容量を推定する処理を含み、
前記処理装置は、
前記満充電容量の推定精度の低下を示す条件が成立する場合に、第1の処理または第2の処理を実行し、
前記条件が成立しない場合に前記制限充電処理を実行し、
前記第1の処理は、前記制限充電処理において設定される前記上限SOCを、前記条件が成立しない場合よりも引き上げて前記充電処理を実行する処理を含み、
前記第2の処理は、前記制限充電処理を実行することなく前記充電処理を実行する処理を含み、
前記処理装置は、前記第1の処理または前記第2の処理を実行する場合にその旨を報知する報知処理をさらに実行し、
前記処理装置は、前記第1の処理を実行する場合の前記蓄電装置の充電開始時におけるSOCを引き下げるようにユーザに報知するための引き下げ報知処理をさらに実行する
、推定システム。
【請求項7】
蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する充電処理、および前記蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成された処理装置とを備え、
前記充電処理は、前記蓄電装置の満充電SOCよりも低い上限SOCを前記蓄電装置のSOCが超過しないように前記蓄電装置を充電する制限充電処理を含み、
前記推定処理は、前記充電処理により前記蓄電装置に充電される充電量を、前記充電処理による前記SOCの増分を示すΔSOCで除算することによって前記満充電容量を推定する処理を含み、
前記処理装置は、
前記満充電容量の推定精度の低下を示す条件が成立する場合に、第1の処理または第2の処理を実行し、
前記条件が成立しない場合に前記制限充電処理を実行し、
前記第1の処理は、前記制限充電処理において設定される前記上限SOCを、前記条件が成立しない場合よりも引き上げて前記充電処理を実行する処理を含み、
前記第2の処理は、前記制限充電処理を実行することなく前記充電処理を実行する処理を含み、
前記充電処理は、前記蓄電装置の充電終了時におけるSOCが第1基準値よりも高くなるように、かつ、前記第1基準値未満の第2基準値よりも前記蓄電装置の充電開始時におけるSOCが低い状態で前記蓄電装置を充電する基準充電処理を含み、
前記条件は、前記基準充電処理の終了時刻から、前記基準充電処理が実行されない状態がしきい継続時間以上継続する条件を含む
、推定システム。
【請求項8】
前記しきい継続時間は、前記蓄電装置の使用開始時から経過した時間が短いほど短い、請求項7に記載の推定システム。
【請求項9】
蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する充電処理、および前記蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成された処理装置とを備え、
前記充電処理は、前記蓄電装置の満充電SOCよりも低い上限SOCを前記蓄電装置のSOCが超過しないように前記蓄電装置を充電する制限充電処理を含み、
前記推定処理は、前記充電処理により前記蓄電装置に充電される充電量を、前記充電処理による前記SOCの増分を示すΔSOCで除算することによって前記満充電容量を推定する処理を含み、
前記処理装置は、
前記満充電容量の推定精度の低下を示す条件が成立する場合に、第1の処理または第2の処理を実行し、
前記条件が成立しない場合に前記制限充電処理を実行し、
前記第1の処理は、前記制限充電処理において設定される前記上限SOCを、前記条件が成立しない場合よりも引き上げて前記充電処理を実行する処理を含み、
前記第2の処理は、前記制限充電処理を実行することなく前記充電処理を実行する処理を含み、
前記推定精度は、前記蓄電装置の充電開始時におけるSOCおよび前記蓄電装置の充電終了時におけるSOCに従って決定され、
前記条件は、前記推定精度がしきい精度以下になる条件を含む
、推定システム。
【請求項10】
前記蓄電装置は、車両に搭載されており、
前記充電処理は、前記車両の外部に設けられた電力設備からの電力を用いて前記蓄電装置を充電する外部充電処理であり、
前記充電量は、前記外部充電処理の開始時から前記外部充電処理の終了時までに前記電力設備から前記蓄電装置に充電される電力量である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の推定システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の推定システムを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置の満充電容量を推定する推定システムおよびそれを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-195681号公報(特許文献1)は、車載のバッテリの容量測定装置を開示する。この容量測定装置は、空状態のバッテリが満充電状態まで充電されるときに充電電流の積算値(充電量)を算出することによってバッテリの満充電容量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置が空状態から満充電状態まで充電されない場合であっても、蓄電装置の満充電容量を推定することができる。例えば、蓄電装置の充電による蓄電装置のSOC(State Of Charge:満充電状態に対する蓄電量を0~100%で表わしたもの)の増分(ΔSOC)で蓄電装置の充電量を除算することによって満充電容量を推定する手法が知られている。この手法が用いられる場合、ΔSOCが大きいほど満充電容量の推定精度は高くなる。その一方で、蓄電装置が満充電状態まで充電されるほどΔSOCが大きい場合、蓄電装置が高充電状態となることにより蓄電装置の劣化が進行しやすくなる。
【0005】
近年、蓄電装置の容量が増加してきている。蓄電装置の容量が増加すると、蓄電装置の劣化を抑制するために蓄電装置が満充電状態まで充電されないことが好まれることがある。例えば、満充電SOCよりも低い上限SOCが設定され、SOCが上限SOCを超過しないように蓄電装置が充電されることがある。蓄電装置が満充電状態まで充電されない場合、蓄電装置が満充電状態まで充電される場合よりも充電に伴うΔSOCが小さくなるケースが多くなる。その結果、上記の手法を用いて推定される満充電容量の精度が低下する可能性がある。
【0006】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置の劣化の抑制と満充電容量の推定精度の向上とを両立することができる推定システムおよび車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の推定システムは、蓄電装置と、処理装置とを備える。処理装置は、蓄電装置を充電する充電処理、および蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成される。充電処理は、蓄電装置の満充電SOCよりも低い上限SOCを蓄電装置のSOCが超過しないように蓄電装置を充電する制限充電処理を含む。推定処理は、充電処理により蓄電装置に充電される充電量を、充電処理によるSOCの増分を示すΔSOCで除算することによって満充電容量を推定する処理を含む。処理装置は、満充電容量の推定精度の低下を示す条件が成立する場合に、第1の処理または第2の処理を実行し、上記の条件が成立しない場合に制限充電処理を実行する。第1の処理は、制限充電処理において設定される上限SOCを、条件が成立しない場合よりも引き上げて充電処理を実行する処理を含む。第2の処理は、制限充電処理を実行することなく充電処理を実行する処理を含む。
【0008】
上記の構成とすることにより、条件が成立していない場合には、制限充電処理が実行されるため、蓄電装置が満充電状態まで充電されない。その結果、蓄電装置の劣化が抑制される。他方、条件が成立した場合には、上限SOCが引き上げられた状態で充電処理が実行されるか、または制限充電処理が実行されることなく(すなわち上限SOCが設定されない状態で)充電処理が実行される。これにより、条件が成立していない場合よりもΔSOCが増大する。その結果、満充電容量の推定結果の誤差が低減される。したがって、蓄電装置の劣化の抑制と、満充電容量の推定精度の向上とを両立させることができる。
【0009】
上限SOCがユーザにより設定されている場合に、処理装置は、第1の処理または第2の処理を実行してもよい。
【0010】
上記の構成とすることにより、ユーザによる上限SOCの設定を可能にしつつ、第1の処理または第2の処理が実行される。これにより、ユーザの利便性を向上しつつ満充電容量の推定精度を向上させることができる。
【0011】
上記の条件は、上限SOCがユーザにより設定されている状態がしきい時間以上継続している条件を含んでもよい。
【0012】
上限SOCがユーザにより設定されている状態が継続する時間が長くなるほど、蓄電装置が満充電されない時間が長くなる。そのため、ΔSOCが小さい状態で推定処理が実行される可能性が高くなる。その結果、満充電容量の推定精度が低下する可能性がある。上記の構成とすることにより、上限SOCがユーザにより設定されている状態がしきい時間以上継続するまで、制限充電処理を実行することができる。その一方で、この状態がしきい時間以上継続すると、第1の処理または第2の処理が実行される。その結果、適切なタイミングにおいて第1の処理または第2の処理を実行することができる。
【0013】
上記の条件は、制限充電処理がしきい回数以上連続して実行される条件を含んでもよい。
【0014】
制限充電処理が連続して実行される回数が多くなるほど、蓄電装置が満充電されない時間が長くなる。そのため、ΔSOCが小さい状態で推定処理が実行される可能性が高くなる。その結果、満充電容量の推定精度が低下する可能性がある。上記の構成とすることにより、制限充電処理がしきい回数以上連続して実行されると、第1の処理または第2の処理が実行される。その結果、適切なタイミングにおいて第1の処理または第2の処理を実行することができる。
【0015】
処理装置は、第1の処理または第2の処理を実行する場合にその旨を報知する報知処理をさらに実行してもよい。
【0016】
上記の構成とすることにより、第1の処理または第2の処理が実行されることがユーザに報知される。その結果、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0017】
処理装置は、第1の処理を実行する場合の蓄電装置の充電開始時におけるSOCを引き下げるようにユーザに報知するための引き下げ報知処理をさらに実行してもよい。
【0018】
上記の構成とすることにより、蓄電装置の充電開始時におけるSOCを引き下げるための動機付けがユーザに与えられる。これにより、ΔSOCを増大させることができる。
【0019】
充電処理は、蓄電装置の充電終了時におけるSOCが第1基準値よりも高くなるように、かつ、第1基準値未満の第2基準値よりも蓄電装置の充電開始時におけるSOCが低い状態で蓄電装置を充電する基準充電処理を含んでもよい。上記の条件は、基準充電処理の終了時刻から、基準充電処理が実行されない状態がしきい継続時間以上継続する条件を含んでもよい。
【0020】
上記の状態がしきい継続時間以上継続する場合、蓄電装置が十分に充電されない状態が長期間にわたって継続していると考えられる。上記の構成とすることにより、この状態がしきい継続時間以上継続するまで、制限充電処理を実行することができる。その一方で、上記の状態がしきい継続時間以上継続する場合、第1の処理または第2の処理が実行される。その結果、適切なタイミングにおいて第1の処理または第2の処理を実行することができる。
【0021】
しきい継続時間は、蓄電装置の使用開始時から経過した時間が短いほど短くてもよい。
蓄電装置の満充電容量は、蓄電装置の使用開始時から経過した時間が短いほど変化(低下)しやすい。上記の構成とすることにより、満充電容量が変化しやすい期間ほど、しきい継続時間が短くなるため、第1の処理または第2の処理が実行されやすくなる。その結果、第1の処理または第2の処理の頻度が高められる。したがって、満充電容量の推定処理が適切に実行される頻度を高めることができる。
【0022】
推定精度は、蓄電装置の充電開始時におけるSOCおよび蓄電装置の充電終了時におけるSOCに従って決定されてもよい。上記の条件は、推定精度がしきい精度以下になる条件を含んでもよい。
【0023】
上記の構成とすることにより、推定精度がしきい精度以下である場合に第1の処理または第2の処理が実行される。これにより、適切なタイミングにおいて第1の処理または第2の処理を実行することができる。
【0024】
蓄電装置は、車両に搭載されていてもよい。充電処理は、車両の外部に設けられた電力設備からの電力を用いて蓄電装置を充電する外部充電処理であってもよい。上記の充電量は、外部充電処理の開始時から外部充電処理の終了時までに電力設備から蓄電装置に充電される電力量であってもよい。
【0025】
上記の構成とすることにより、外部充電が実行される場合に満充電容量の推定精度を向上させることができる。
【0026】
本開示の車両は、上記の推定システムを備える。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、蓄電装置の劣化の抑制と満充電容量の推定精度の向上とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態1に従う車両の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】上限SOCの設定のためにユーザ端末のHMI装置に表示される画面の一例を示す図である。
【
図3】バッテリの満充電容量を推定するための推定処理を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1においてECUにより実行されるバッテリの満充電容量の推定処理を説明するための図である。
【
図5】上限SOCを引き上げるためにユーザ端末の表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【
図6】上限SOCを引き上げるためにユーザ端末の表示装置に表示される画面の他の例を示す図である。
【
図7】制限充電処理に関連してECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1において上限SOCの引き上げに関連してECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】上限SOCの解除に関連してECUにより実行される処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図10】変形例1においてECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】バッテリの満充電容量と、バッテリの使用開始時からの経過時間との関係を示す図である。
【
図12】変形例3においてECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】変形例4においてECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】ECUがバッテリの満充電容量の推定精度を決定する方法を説明するための図である。
【
図15】実施の形態2において満充電容量の推定に関連してECUにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を繰り返さない。実施の形態およびその変形例の各々は、矛盾が無い限り適宜組み合わせられてもよい。
【0030】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に従う車両の全体構成を概略的に示す図である。
図1を参照して、車両1は、バッテリ10を備える電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。車両1は、車両1の外部に設けられる電力設備85(後述)から供給される電力を用いてバッテリ10を充電する外部充電を実行可能に構成される。
【0031】
車両1は、PCU(Power Control Unit)30と、インレット40と、充電装置50と、モータジェネレータ62と、駆動輪66と、推定システム2とを備える。
【0032】
PCU30は、インバータ(図示せず)を含む。インバータは、バッテリ10から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ62に変換後の電力を供給するように構成されている。
【0033】
インレット40は、車両1の外部に設けられた電力設備85から充電ケーブルを通じて受電するように構成される。車両1が充電ケーブルを通じて電力設備85に接続されているか否か状態を示す信号(ケーブル接続信号PISW)は、インレット40からECU100に伝達される。
【0034】
充電装置50は、インレット40により受電された電力(交流電力)をバッテリ10の充電に適した直流電力に変換することによってバッテリ10を充電するように構成される。充電装置50は、たとえばインバータおよびコンバータ(いずれも図示せず)を含んで構成されている。
【0035】
モータジェネレータ62は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータジェネレータ62は、PCU30から供給される電力を用いて駆動輪66を駆動する。これにより、車両1が走行する。
【0036】
推定システム2は、バッテリ10と、監視ユニット20と、HMI(Human Machine Interface)装置70と、通信装置80と、ECU(Electronic Control Unit)100とを備える。
【0037】
バッテリ10は、車両1の走行用の電力を蓄えるように構成されている二次電池である。バッテリ10の充電状態は、SOC(State of Charge)により表される。バッテリ10は、電気二重層キャパシタなどの他の蓄電装置により代替されてもよい。
【0038】
監視ユニット20は、電圧センサ21と、電流センサ22と、温度センサ23とを含む。電圧センサ21は、バッテリ10の電圧VBを検出する。電流センサ22は、バッテリ10に入出力される電流IB(例えば、バッテリ10の充電電流)を検出する。温度センサ23は、バッテリ10の温度TBを検出する。
【0039】
HMI装置70は、表示装置72と、入力装置74とを含む。表示装置72は、車両1のユーザに様々な情報を表示する。入力装置74は、車両1のユーザの操作の入力を受けるように構成される。この例では、表示装置72および入力装置74は、タッチスクリーンを構成する。HMI装置70は、スピーカをさらに含んでもよい。
【0040】
通信装置80は、車両1の外部の機器(例えば、電力設備85およびユーザ端末90)と通信するように構成される。通信装置80は、例えばCAN(Controller Area Network)通信により電力設備85と各種情報をやり取りする。通信装置80は、例えば無線通信によりユーザ端末90と各種情報をやり取りする。
【0041】
ECU100は、プロセッサ100Aと、メモリ100Bとを含む。プロセッサ100Aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。メモリ100Bは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、プロセッサ100Aにより実行されるプログラムを記憶する。RAMは、ワーキングメモリとして機能する。
【0042】
ECU100は、車両1の各機器(例えば、PCU30、充電装置50、モータジェネレータ62、HMI装置70、および通信装置80)を制御する。
【0043】
ECU100は、ケーブル接続信号PISWの信号レベルに従って車両1と電力設備85との接続状態(すなわち、車両1が電力設備85に接続されているか否か)を判定する。ECU100は、HMI装置70の入力装置74に行われたユーザ操作の結果を示す信号をHMI装置70から受ける。
【0044】
ECU100は、バッテリ10を充電する充電処理を実行するように構成されている。以下の説明において、充電処理が外部充電処理であるケースを主に説明する。外部充電処理は、電力設備85からの電力を用いてバッテリ10を充電する処理である。この例では、外部充電処理は、電力設備85からの電力を充電装置50に変換させて変換後の電力を用いてバッテリ10を充電する処理である。
【0045】
ECU100は、一例として、電力設備85から車両1への給電の開始を指示する操作がHMI装置85B(後述)を用いて行われたことを示す信号を電力設備85から受信すると外部充電処理を開始する。そして、ECU100は、バッテリ10のSOCがしきいSOCに到達したか否かを判定する。しきいSOCは、例えば、バッテリ10が満充電されているときのSOCである満充電SOC(100%)、または満充電SOCよりも低い上限SOCである。上限SOCの設定方法については、後ほど詳しく説明する。SOCがしきいSOCに到達すると、ECU100は、外部充電を終了する。具体的には、ECU100は、電力設備85から車両1への給電が終了されるように電力設備85に給電停止要求を出力する。
【0046】
外部充電終了時におけるSOCが第1基準値(例えば、80%)よりも高くなるように、かつ、第1基準値未満の第2基準値(例えば、30%)よりも外部充電開始時におけるSOCが低い状態で外部充電処理が実行される場合(すなわち、SOCが第2基準値である状態から第1基準値である状態まで上昇するように外部充電処理が実行される場合)、この外部充電処理を基準充電処理とも呼ぶ。基準充電処理の終了時刻を「基準時刻」とも表す。
【0047】
ECU100は、バッテリ10のSOCが上限SOCを超過しないようにバッテリ10を充電する制限充電処理を実行可能に構成されている。制限充電処理は、バッテリ10の劣化を抑制するために実行される。
【0048】
ECU100は、監視ユニット20の各センサから検出値(電圧VB、電流IBおよび温度TB)を受ける。ECU100は、上記の検出値に従ってバッテリ10のSOCを算出する。
【0049】
ECU100は、バッテリ10の満充電容量を推定する「推定処理」を実行する。ECU100は、監視ユニット20の各センサからの検出値と、メモリ100Bに記憶されたプログラムおよびマップとに従って推定処理を実行する。ECU100は、充電処理を実行する度に推定処理を実行してもよいし、所定回数の充電処理を実行する度に推定処理を実行してもよい。推定処理については、後ほど詳しく説明する。
【0050】
電力設備85は、電源85Aと、HMI装置85Bとを含む。電源85Aは、例えば商用電源であり、車両1に交流電力を給電するように構成される。HMI装置85Bは、電力設備85から車両1への給電に関するユーザ操作(例えば、給電を開始または停止するための操作)を受けるように構成される。このユーザ操作の結果を示す信号は、例えばCAN通信により車両1に伝達される。
【0051】
ユーザ端末90は、車両1のユーザが携帯可能な通信端末であり、例えば、スマートフォンである。ユーザ端末90は、通信装置98と、HMI装置94と、制御装置99とを含む。通信装置98は、車両1と無線で通信するように構成される。
【0052】
HMI装置94は、表示装置95および入力装置97を含む。HMI装置94は、スピーカをさらに含んでもよい。表示装置95は、ユーザに様々な情報を表示する。入力装置97は、ユーザ操作の入力を受ける。ユーザ操作は、例えば、車両1の外部充電終了時における上限SOCを設定するための操作である。表示装置95および入力装置97は、タッチスクリーンを構成する。
【0053】
制御装置99は、ユーザ端末90の各機器(例えば、HMI装置94および通信装置98)を制御する。制御装置99は、例えば、入力装置97がユーザ操作の入力を受けた場合に、そのユーザ操作の結果を示す信号を通信装置98を通じて車両1に送信する。
【0054】
図2は、上限SOCの設定のためにユーザ端末90のHMI装置94に表示される画面の一例を示す図である。
【0055】
図2を参照して、画面700は、メッセージ710と、設定入力部715と、設定表示部720と、ボタン725とを含む。
【0056】
メッセージ710は、上限SOCの設定値を入力するようにユーザに促している。設定入力部715は、ユーザから上限SOCの設定値(X%)の入力を受ける。設定表示部720は、上限SOCの現在の設定値(Y%)を表示している。
【0057】
ボタン725は、上限SOCの設定値を車両1に出力するためのユーザ操作を受けるために設けられる。上限SOCの設定値(X%)が設定入力部715に入力された状態でボタン725が操作されると、上限SOCの設定値がユーザ端末90から車両1に出力される。これにより、上限SOCの設定値が(Y%からX%に)上書きされる。
【0058】
図3は、バッテリ10の満充電容量を推定するための推定処理を説明するための図である。この例は、ECU100による後述の処理が実行されない場合の比較例である。
【0059】
図3を参照して、ΔSOCは、外部充電処理が実行される場合の充電開始SOC(SOC1)と充電終了SOC(SOC2)との差分である(ΔSOC=SOC2-SOC1)。充電開始SOCは、外部充電開始時におけるSOCである。充電終了SOCは、外部充電終了時におけるSOCである。この例では、充電終了SOCは、制限充電処理において設定される上限SOCに等しく、SOC2Aである。SOCFは、満充電SOCに相当する。
【0060】
ECUは、外部充電処理によりバッテリ10に充電される充電量(ΔAh)を、外部充電処理によるSOCの増分を示すΔSOCで除算することによって満充電容量を推定する。すなわち、ECUは、バッテリ10の満充電容量の推定値Ceを次式(1)に従って推定する。
【0061】
Ce=(ΔAh/ΔSOC)×100 [Ah] …(1)
ΔAhは、外部充電開始時から外部充電終了時までの電流IBの積算値(時間積算値)である。ΔSOCが大きいほど、推定値Ceの精度が高くなる。その一方で、バッテリ10が満充電状態まで充電されるほどΔSOCが大きい場合、バッテリ10が高充電状態となることによりバッテリ10の劣化が進行しやすくなる。
【0062】
近年、バッテリ10の容量が増加してきている。バッテリ10の容量が増加すると、バッテリ10の劣化を抑制するためにバッテリ10が満充電状態まで充電されないことが好まれることがある。例えば、バッテリ10の満充電SOCよりも低い上限SOCが(一例として、
図2の画面700を用いて)設定され、制限充電処理が実行されることがある。バッテリ10が満充電状態まで充電されない場合、バッテリ10が満充電状態まで充電される場合よりも充電に伴うΔSOCが小さくなるケースが多くなる。その結果、上式(1)を用いて推定される満充電容量の精度(推定値Ceの精度)が低下する可能性がある。
【0063】
例えば、上限SOCが設定されている場合、上限SOCが設定されていない場合(充電終了SOCが満充電SOCである場合)よりも上式(1)のΔSOCが小さい(充電開始SOCは等しいものとする)。その結果、推定値Ceのバラつきが大きくなるため、推定値Ceの精度が低下する可能性がある。特に、長期間にわたってバッテリ10が満充電されない場合、推定値Ceの精度が顕著に低下する。このように、上限SOCが設定されると推定値Ceの精度が低下する可能性がある。
【0064】
実施の形態1に従う車両1は、上記の問題に対処するための構成を備える。以下、詳しく説明する。
【0065】
図4は、実施の形態1においてECU100により実行されるバッテリ10の満充電容量の推定処理を説明するための図である。
【0066】
図4を参照して、ECU100は、比較例(
図3)の場合と同様に、上式(1)のΔSOCによりΔAhを除算することによって満充電容量の推定処理(推定値Ceの算出処理)を実行する。その一方で、ECU100は、満充電容量の推定精度の低下を示す所定条件が成立する場合に、第1の処理または第2の処理を実行する。第1の処理は、制限充電処理において設定される上限SOCを、上記の所定条件が成立しない場合よりも引き上げて(SOC2AからSOC2Bに引き上げて)充電処理を実行する処理である。この例では、SOC2Bは、SOCFに等しいものとするが、SOC2AとSOCFとの間の範囲内であってもよい。第2の処理は、制限充電処理を実行することなく充電処理を実行する処理である。第2の処理は、上限SOCの設定を解除して(すなわち、上限SOCが設定されている場合であっても前述のしきいSOCを上限SOCではなく満充電SOCに設定して)、充電終了SOCが満充電SOCになるように充電処理を実行する処理である。第2の処理は、画面700を用いて上限SOCを設定するためのユーザ操作が行われた場合であってもそのユーザ操作をキャンセルして(バッテリ10が満充電状態まで充電されるように)外部充電処理を実行する処理であってもよい。上記の所定条件が成立しない場合に、ECU100は、上限SOCがSOC2Aである状態で制限充電処理を実行する。
【0067】
上記の構成とすることにより、所定条件が成立していない場合には、制限充電処理が実行されるため、バッテリ10が満充電状態まで充電されない。その結果、バッテリ10の劣化が抑制される。他方、所定条件が成立した場合には、上限SOCが引き上げられた状態で充電処理が実行されるか(第1の処理)、または制限充電処理が実行されることなく(すなわち上限SOCが設定されない状態で)充電処理が実行される(第2の処理)。
【0068】
第1の処理が実行されると、上限SOC(充電終了SOCとしてのSOC2)が比較例の場合よりも引き上げられる。これにより、ΔSOCがΔSOC1からΔSOC2に増大する。すなわち、上式(1)のΔSOCが比較例の場合よりも大きくなる。その結果、推定値Ceのバラつきが比較例の場合よりも低減される。よって、推定値Ceの誤差が低減されるため、推定値Ceの精度(満充電容量の推定精度)が向上する。
【0069】
あるいは、第2の処理が実行されると、外部充電終了時におけるSOC(SOC2)が満充電SOC(SOCF)になる。これにより、比較例の場合よりもΔSOCが増大する。その結果、満充電容量の推定精度を向上することができる。以上から、実施の形態1によれば、バッテリ10の劣化の抑制と、満充電容量の推定精度の向上とを両立させることができる。
【0070】
第1の処理または第2の処理は、上限SOCが(例えば、
図2の画面700を用いて)ユーザにより設定されている場合にECU100により実行されると特に効果的である。これにより、ユーザによる上限SOCの設定を可能にしつつ、第1の処理または第2の処理が実行される。その結果、ユーザの利便性を向上しつつ満充電容量の推定精度を向上させることができる。
【0071】
ECU100は、第1の処理または前記第2の処理を実行する場合にその旨(すなわち、第1の処理または第2の処理を実行すること)をユーザに報知する報知処理をさらに実行してもよい。
【0072】
例えば、第1の処理の実行がユーザに報知されると、(例えば画面700を用いて)上限SOCを現在の設定値(例えば、
図2のY%)から引き上げるための動機付けがユーザに与えられる。これにより、上限SOCを引き上げることができる。さらに、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0073】
図5は、上限SOCを引き上げるためにユーザ端末90の表示装置95に表示される画面の一例を示す図である。
【0074】
図5を参照して、画面900は、長期間(例えば、1カ月などの所定期間)にわたってバッテリ10が満充電されていない場合に表示される。画面900は、メッセージ927を含む。メッセージ927は、N回の外部充電以内にバッテリ10を満充電するようにユーザに促している。この例では、メッセージ927は、ユーザ端末90に表示される画面700を用いて上限SOCを満充電SOCに設定するようにユーザに促しているものとする。
【0075】
画面900が表示された後にバッテリ10が満充電されない場合には、画面900が次回に表示されるときのメッセージ927における数字「N」が小さくなる。Nは、小さくなるほど強調表示されてもよい。例えば、Nが所定のしきい値以上である場合にはNが第1の色(例えば青色)に表示される一方で、Nがしきい値を下回った場合にはNが第2の色(例えば赤色などの注意色)に表示されてもよい。このようにNが強調表示されると、可能な限り早くバッテリ10を満充電するようにユーザに効果的に促すことができる。
【0076】
ECU100は、上限SOCを引き上げることに同意するか否かをユーザに問い合わせるための報知を行うように構成されていてもよい。このようにユーザへの問い合わせが行われると、ユーザの利便性をさらに向上させることができる。以下、詳しく説明する。
【0077】
図6は、上限SOCを引き上げるためにユーザ端末90の表示装置95に表示される画面の他の例を示す図である。
【0078】
図6を参照して、画面950は、長期間(例えば、所定期間)にわたってバッテリ10が満充電されていない場合に表示される。画面900は、メッセージ960と、ボタン965,970とを含む。メッセージ960は、上限SOCをその現在の設定値から引き上げてもよいか否かをユーザに問い合わせる。
【0079】
ボタン965,970は、ユーザにより操作される。ボタン965が操作されると、ECU100は、上限SOCを現在の設定値から引き上げる。ボタン970が操作されると、上限SOCは、現在の設定値に維持される。
【0080】
図7は、制限充電処理に関連してECU100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、上限SOCが設定されている場合に車両1が電力設備85に接続されると開始される。
【0081】
図7を参照して、ECU100は、FLAGを0に設定する(ステップS105)。このFLAGは、バッテリ10が十分に充電されたか否かをECU100が判定するために用いられる。
【0082】
次いで、ECU100は、車両1の外部充電の開始が指示されたか否かを判定する(ステップS110)。ECU100は、例えば、HMI装置85Bを用いて電力設備85から車両1への給電が指示されたか否かを示す信号をCAN通信により電力設備85から受信する。そして、ECU100は、その信号に従ってステップS110の判定処理を実行する。
【0083】
外部充電の開始が指示されていない場合(ステップS110においてNO)、ECU100は、外部充電の開始が指示されるまで上記の判定処理を実行する。他方、外部充電の開始が指示された場合(ステップS110においてYES)、処理はステップS115に進む。
【0084】
次いで、ECU100は、充電開始SOCが基準値RVSよりも低いか否かを判定する(ステップS115)。基準値RVSは、前述の第2基準値に相当し、後述の基準値RVEよりも低い値として適宜予め定められる(例えば、30%)。充電開始SOCが基準値RVS以上である場合(ステップS115においてNO)、処理は、ステップS125に進む。他方、充電開始SOCが基準値RVSよりも低い場合(ステップS115においてYES)、ECU100は、FLAGを1に設定し(ステップS120)、ステップS125に処理を進める。
【0085】
次いで、ECU100は、SOCが上限SOCに到達したか否かを判定する(ステップS125)。SOCが上限SOCに到達していない場合(ステップS125においてNO)、ECU100は、SOCが上限SOCに到達するまでこの判定処理を実行する。他方、SOCが上限SOCに到達した場合(ステップS125においてYES)、ECU100は、外部充電を終了する(ステップS126)。この場合、充電終了SOCは、上限SOCである。その後、処理は、ステップS130に進む。
【0086】
次いで、ECU100は、充電終了SOCが基準値RVEよりも高いか否かに従って処理を切り替える(ステップS130)。基準値RVEは、前述の第1基準値に相当し、満充電SOC以下の値(例えば、80%)として適宜予め定められる。
【0087】
充電終了SOCが基準値RVE以下である場合(ステップS130においてNO)、
図7の処理は終了する。
【0088】
他方、充電終了SOCが基準値RVEよりも高い場合(ステップS130においてYES)、ECU100は、FLAGの値に従って処理を分岐させる(ステップS135)。FLAGが0である場合(ステップS135においてNO)、
図7の処理が終了する。
【0089】
他方、FLAGが1である場合(ステップS135においてYES)、充電開始SOCが基準値RVSを下回るほど十分に低い状態で外部充電処理が開始し(ステップS115においてYES)、かつ、充電終了SOCが基準値RVEを超過するほど十分に高くなるように外部充電処理が終了している(ステップS130においてYES)。このように外部充電処理が開始および終了する場合、外部充電処理は、基準充電処理である。ECU100は、基準充電処理を実行した場合、バッテリ10が十分に充電されたと判定し、充電終了時刻(基準時刻)をメモリ100Bに格納する(ステップS140)。その後、
図7の処理を終了する。
【0090】
図8は、実施の形態1において上限SOCの引き上げに関連してECU100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の時間間隔ごとに実行される。
【0091】
図8を参照して、ECU100は、満充電容量の推定精度の低下を示す所定条件が成立したか否かを判定する(ステップS205)。この例では、所定条件は、基準充電処理が実行されない状態が基準時刻からしきい継続時間THD以上継続することであるものとする。そのため、ステップS205の判定処理は、バッテリ10が十分に充電されない状態がしきい継続時間THD以上継続したか否かを判定する処理に相当する。しきい継続時間THDは、基準充電処理が実行されない状態が継続した時間がしきい継続時間THD未満であればバッテリ10の満充電容量の推定精度が実質的に変化しない時間として実験により適宜予め定められる。
【0092】
基準充電処理が実行されない状態が基準時刻からしきい継続時間THD以上継続していない場合(ステップS205においてNO)、ECU100は、
図8の処理を終了する。ECU100は、上記の状態がしきい継続時間THD以上継続するまでの期間中に外部充電処理を実行する場合には、制限充電処理を実行する。他方、上記の状態がしきい継続時間THD以上継続した場合(ステップS205においてYES)、処理は、ステップS210に進む。
【0093】
次いで、ECU100は、上限SOCを現在の設定値から(例えば、満充電SOCに)引き上げるためにユーザに報知する処理を実行する(ステップS210)。この例では、ECU100は、ユーザ端末90の表示装置95に画面950(
図6)を表示するように、通信装置80を通じてユーザ端末90に要求を出力する。
【0094】
次いで、ECU100は、上限SOCを引き上げる許可がなされたか否かを判定する(ステップS215)。
【0095】
上限SOCを引き上げる許可がなされた場合、例えば、画面950のボタン965が所定時間内に操作された場合(ステップS215においてYES)、ECU100は、制限充電処理において設定される上限SOCを現在の設定値から引き上げる(ステップS220)。引き上げ前の設定値は、ステップS205において処理がNOに分岐する場合に制限充電処理が実行されるときの上限SOCの設定値に等しいものとする。
【0096】
他方、上限SOCを引き上げる許可がなされなかった場合、例えば、画面950のボタン970が所定時間内に操作された場合(ステップS215においてNO)、ECU100は、上限SOCを現在の設定値に維持する(ステップS225)。
【0097】
ステップS220またはS225の後、ECU100は、外部充電が実行されたか否かに従って処理を切り替える(ステップS230)。ステップS220の後に外部充電が実行される場合、前述の所定条件が成立しない場合よりも上限SOCが引き上げられた状態でECU100により充電処理が実行される(第1の処理)。ステップS225の後に外部充電が実行される場合、上限SOCが維持された状態で充電処理が実行される。
【0098】
ステップS220またはS225の後からステップS230までの間に外部充電が実行されていない場合(ステップS230においてNO)、ECU100は、外部充電が実行されるまでステップS230の判定処理を実行する。他方、外部充電が実行された場合(ステップS230においてYES)、処理は、ステップS240に進む。
【0099】
次いで、ECU100は、上式(1)を用いてバッテリ10の満充電容量を推定する推定処理を実行する(ステップS240)。
【0100】
上記の説明において、所定条件が成立した場合(例えば、ステップS205においてYESの場合)に、ECU100は、上限SOCを引き上げて外部充電処理を実行したり(第1の処理)、その旨を報知するものとしたが(ステップS210)、制限充電処理を実行することなく(バッテリ10が満充電されるように)外部充電処理を実行したり(第2の処理)、その旨を報知してもよい。以下、第1の処理に代えて第2の処理が上限SOCの解除に関連してECU100により実行される場合の処理を説明する。
【0101】
ステップS210において、ECU100は、上限SOCを解除するためにユーザに報知を行う。その次のステップS215において、ECU100は、上限SOCを解除する許可がなされたか否かに従って処理を切り替える。この許可がなされた場合、ステップS220において、ECU100は、上限SOCを解除する。上限SOCの解除後に外部充電が実行される場合、制限充電処理が実行されることなくECU100により充電処理が実行される。そして、満充電容量の推定処理が実行される(ステップS240)。
【0102】
図9は、上限SOCの解除に関連してECU100により実行される処理の他の例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の時間間隔ごとに実行される。
【0103】
図9を参照して、ステップS305,S340の処理は、それぞれ、ステップS205,S240(
図8)の処理と同様である。
【0104】
次いで、ECU100は、上限SOCを設定するためのユーザ操作が行われたか否かを判定する(ステップS310)。このユーザ操作が行われていない場合(ステップS310においてNO)、ECU100は、
図9の処理を終了する。他方、上記のユーザ操作が行われた場合(ステップS310においてYES)、上限SOCの設定値がユーザ端末90から車両1に出力され、処理は、ステップS312に進む。
【0105】
次いで、ECU100は、ユーザ操作により出力された上限SOCの設定値が所定値よりも低いか否かを判定する(ステップS312)。この所定値は、例えば、基準値RVEと同じである。上記の設定値が所定値以上である場合(ステップS312においてNO)、バッテリ10が十分に充電される可能性が相対的に高い。この場合、処理は、ステップS330に進む。他方、上限SOCの設定値が所定値よりも低い場合(ステップS312においてYES)、バッテリ10が十分に充電される可能性が相対的に低い。この場合、処理は、ステップS315に進む。
【0106】
次いで、ECU100は、制限充電処理を実行することなく外部充電処理を実行することを(この例では、ユーザ操作により出力された上限SOCの設定値をキャンセルして外部充電処理を実行すること)をユーザに報知する処理を実行する(ステップS315)。ECU100は、例えば、この報知を行うための画面をユーザ端末90の表示装置95に表示するように、通信装置80を通じてユーザ端末90に要求を出力する。
【0107】
次いで、ECU100は、制限充電処理を実行することなく外部充電処理を実行することにユーザが同意したか否かを判定する(ステップS320)。ECU100は、例えば、ユーザが同意したか否かを示す信号(すなわち、ステップS315の報知に応答してユーザ端末90のHMI装置94に行われたユーザ操作の結果を示す信号)を、通信装置80を通じてユーザ端末90から受信し、その信号に従って上記の判定処理を実行する。
【0108】
ユーザが同意する場合(ステップS320においてYES)、ECU100は、ユーザ端末90から出力される上限SOCの設定値をキャンセルする(ステップS325)。そして、ECU100は、外部充電の開始が指示されたか否かを判定する(ステップS335)。外部充電の開始が指示されていない場合(ステップS335においてNO)、ECU100は、外部充電の開始が指示されるまで上記の判定処理を実行する。他方、外部充電の開始が指示された場合(ステップS335においてYES)、ECU100は、制限充電処理を実行することなく外部充電処理を実行する(ステップS336)。
【0109】
ステップS320においてユーザが同意しない場合(ステップS320においてNO)、ECU100は、ユーザ操作に従って上限SOCを設定する(ステップS330)。すなわち、ECU100は、ユーザ操作により出力された設定値を上限SOCとして設定する。
【0110】
次いで、ECU100は、外部充電の開始が指示されたか否かを判定する(ステップS338)。外部充電の開始が指示されていない場合(ステップS338においてNO)、ECU100は、外部充電の開始が指示されるまで上記の判定処理を実行する。他方、外部充電の開始が指示された場合(ステップS338においてYES)、ECU100は、ユーザ操作により設定された上限SOCに従って外部充電処理を実行する(ステップS339)。
【0111】
ステップS336またはステップS339の後、ECU100は、満充電容量の推定処理を実行し(ステップS340)、
図9の処理を終了する。
【0112】
ECU100は、基準充電処理が実行されない状態が基準時刻から継続した時間(継続時間)が長いほどステップS312における所定値を(例えば、段階的に)上昇させてもよい。これにより、この継続時間が十分に長い場合には、所定値が満充電SOCに実質的に等しくなるほど高くなる。これにより、ユーザ操作により出力される上限SOCの設定値が満充電SOCに近いほど十分に高くない限り、この設定値がキャンセルされ得る。その結果、十分に高い上限SOCのみが設定され得るため、上限SOC(充電終了SOC)を必然的に十分に高くすることができる。したがって、満充電容量の推定精度を高めることができる。
【0113】
以上のように、本実施の形態に従う推定システム2によれば、バッテリ10の劣化の抑制と、満充電容量の推定精度の向上とを両立させることができる。
【0114】
[実施の形態1の変形例1]
この変形例1では、ECU100は、第1の処理を実行する場合の充電開始SOCを引き下げるように、第1の処理の実行前にユーザに報知するための引き下げ報知処理をさらに実行する。ECU100は、例えば、充電開始SOCが基準値RVSよりも低い状態で外部充電を開始するようにユーザに報知する画面を画面950(
図6)に加えてユーザ端末90の表示装置95に表示するように、通信装置80を通じてユーザ端末90に要求を出力する。
【0115】
このような構成とすることにより、充電開始SOCを引き下げるための動機付けがユーザに与えられる。すなわち、ユーザは、SOCが十分に低くなるまで車両1を使用するように促される。ユーザは、上記の報知に応答して、充電開始SOCが通常の充電開始SOCから引き下げされた状態で車両1の外部充電を開始し得る。通常の充電開始SOCとは、ユーザが日常生活においてしばしば車両1の外部充電の開始を希望するときのSOCである。上記のように外部充電が開始されると、充電開始SOCが引き下げられるため、ΔSOCをさらに増大させることができる。
【0116】
図10は、この変形例1においてECU100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の時間間隔ごとに実行される。
【0117】
図10を参照して、このフローチャートは、ステップS412の処理がステップS210(
図8)に代えて実行される点において、
図8のフローチャートとは異なる。ステップS405,S415~S440の処理は、それぞれ、ステップS205,S215~S240の処理と同様である。
【0118】
満充電容量の推定精度の低下を示す所定条件が成立すると(ステップS405においてYES)、ECU100は、上限SOCを引き上げるとともに第1の処理の実行前に充電開始SOCを引き下げるようにユーザに報知する処理を実行する(ステップS412)。この報知処理は、前述の引き下げ報知処理を含む。その後、処理は、ステップS415に進む。そして、ステップS415において許可がなされると(ステップS415においてYES)、上限SOCが引き上げられた後に外部充電処理が実行される(第1の処理)。
【0119】
この外部充電処理の開始時の充電開始SOCが通常の充電開始SOCよりも引き下げられるように車両1がユーザにより使用されている場合、充電開始SOCが引き下げされない場合よりもΔSOCを増大させることができる。その結果、この変形例1によれば、満充電容量の推定処理をより適切に実行することができる。
【0120】
[実施の形態1の変形例2]
しきい継続時間THDは、バッテリ10の使用開始時から経過した時間が短いほど短くなるように決定されてもよい。バッテリ10の使用開始時とは、例えば、工場において新品のバッテリ10が車両1に組み込まれた時、またはユーザがHMI装置94を用いて車両1の利用登録を行った時である。
【0121】
図11は、バッテリ10の満充電容量と、バッテリ10の使用開始時からの経過時間との関係を示す図である。
【0122】
図11を参照して、時刻t0は、バッテリ10の使用開始時である。期間P1は、時刻t0~t3の期間である。期間P2は、時刻t3~t5の期間である。期間P1,P2の各々の長さは、いずれもΔTである。
【0123】
線500は、バッテリ10の満充電容量の推移を示す。線500は、時刻t0からの経過時間tが短いほど満充電容量が低下しやすいことを示す。例えば、期間P1中は、期間P2中よりも満充電容量が変化(低下)しやすい(満充電容量の変化率が高い)。そのため、期間P1中は、他の期間(例えば、期間P2)と比べて、より精度の高い満充電容量の推定処理が要望される。
【0124】
この例では、ECU100は、期間P1中のしきい継続時間THD(THD11)が期間P2中のしきい継続時間THD(THD12)よりも短くなるように各期間のしきい継続時間THDを決定する(THD11<THD12)。
【0125】
例えば、期間P1中においては、ECU100は、基準時刻としての時刻t1から、基準充電処理が実行されない状態がしきい継続時間THD(THD11)継続した場合(時刻t2以降)に、第1の処理または第2の処理を実行する。
【0126】
他方、期間P2中においては、ECU100は、基準時刻としての時刻t4から、基準充電処理が実行されない状態がしきい継続時間THD(THD12)継続した場合(時刻t5以降)に、第1の処理または第2の処理を実行する。
【0127】
以上のようにしきい継続時間THDが決定されると、推定精度が変化しやすい期間ほど、しきい継続時間THDが短くなる。これにより、第1の処理または第2の処理が実行されやすくなる。これにより、第1の処理または第2の処理の頻度が高められる。したがって、満充電容量の推定処理が適切に実行される頻度を高めることができる。
【0128】
[実施の形態1の変形例3]
満充電容量の推定精度の低下を示す所定条件は、上限SOCがユーザにより設定されている状態がしきい時間以上継続している条件であってもよい。しきい時間は、この状態が継続する時間がしきい時間未満であればバッテリ10の満充電容量の推定精度が実質的に変化しない時間として適宜予め定められる。
【0129】
上記の状態が継続する時間が長くなるほど、バッテリ10が満充電されない時間が長くなる。そのため、ΔSOCが小さい状態で推定処理が実行される可能性が高くなる。その結果、満充電容量の推定精度が低下する可能性がある。上記のように所定条件が決定されると、上限SOCがユーザにより設定されている状態がしきい時間以上継続するまで、制限充電処理を実行することができる。その一方で、この状態がしきい時間以上継続すると、第1の処理または第2の処理が実行される。以下の説明においては、第1の処理および第2の処理のうち第1の処理が実行されるケースを主に説明する。
【0130】
図12は、この変形例3においてECU100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の時間間隔ごとに実行される。
【0131】
図12を参照して、このフローチャートは、ステップS506の処理がステップS205(
図8)に代えて実行される点において、
図8のフローチャートとは異なる。ステップS510~S540の処理は、それぞれ、ステップS210~S240の処理と同様である。
【0132】
ECU100は、上限SOCがユーザにより設定されている状態がしきい時間THT以上継続したか否かを判定する(ステップS506)。この状態がしきい時間THT以上継続していない場合(ステップS506においてNO)、ECU100は、
図12の処理を終了する。他方、上記の状態がしきい時間THT以上継続した場合(ステップS506においてYES)、処理は、ステップS510に進む。その後、ステップS520において上限SOCが引き上げられて充電処理が実行される(第1の処理)。上記の状態がしきい時間THT以上継続した場合に、ECU100は、制限充電処理を実行することなく外部充電処理を実行してもよい(第2の処理)。
【0133】
以上のように、この変形例3によれば、適切なタイミングにおいて第1の処理または第2の処理を実行することができる。
【0134】
[実施の形態1の変形例4]
満充電容量の推定精度の低下を示す所定条件は、外部充電処理が実行される場合に制限充電処理がしきい回数以上連続して実行される条件であってもよい。しきい回数は、満充電容量の推定精度の低下を防止するための値として適宜予め定められる。
【0135】
制限充電処理が連続して実行される回数が多くなるほど、バッテリ10が満充電されない時間が長くなる。そのため、ΔSOCが小さい状態で推定処理が実行される可能性が高くなる。その結果、満充電容量の推定精度が低下する可能性がある。上記のように所定条件が決定されると、制限充電処理がしきい回数以上連続して実行された場合に第1の処理または第2の処理が実行される。以下の説明においては、第1の処理および第2の処理のうち第1の処理が実行されるケースを主に説明する。
【0136】
図13は、この変形例4においてECU100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の時間間隔ごとに実行される。
【0137】
図13を参照して、このフローチャートは、ステップS606の処理がステップS205(
図8)に代えて実行され、かつ、ステップS650の処理がさらに実行される点において、
図8のフローチャートとは異なる。ステップS610~S640の処理は、それぞれ、ステップS210~S240の処理と同様である。
【0138】
ECU100は、制限充電処理がしきい回数THN以上連続して実行されたか否かを判定する(ステップS606)。制限充電処理が連続して実行された回数(実行回数N)は、メモリ100Bに格納されている。ECU100は、制限充電処理を実行すると実行回数Nを1カウントアップし、カウントアップ後の実行回数Nがしきい回数THN以上であるか否かを判定することによって上記の判定処理を実行する。
【0139】
制限充電処理がしきい回数THN以上連続して実行されていない場合(ステップS606においてNO)、ECU100は、
図13の処理を実行する。他方、制限充電処理がしきい回数THN以上連続して実行された場合(ステップS606においてYES)、処理は、ステップS610に進む。
【0140】
ステップS610~S640の処理が実行された後、ECU100は、実行回数Nを0にリセットし(ステップS650)、
図13の処理を終了する。
【0141】
以上のように、この変形例4によれば、適切なタイミングにおいて第1の処理または第2の処理を実行することができる。
【0142】
[実施の形態2]
この実施の形態2では、充電開始SOCと充電終了SOCとに従ってバッテリ10の満充電容量の推定精度が決定(算出)され、その推定精度がしきい値以下である場合に、第1または第2の処理が実行される。この場合、満充電容量の推定精度の低下を示す所定条件は、推定精度がしきい精度以下になる条件であってもよい。
【0143】
図14は、ECU100がバッテリ10の満充電容量の推定精度を決定する方法を説明するための図である。
【0144】
図14を参照して、テーブル800は、メモリ100Bに格納されている。テーブル800は、充電開始SOC(SOC1)と充電終了SOC(SOC2>SOC1)との組み合わせと、満充電容量の推定精度との関係を示す。
【0145】
外部充電が終了すると、ECU100は、テーブル800を用いて、充電開始SOCと充電終了SOCとに従って満充電容量の推定精度を決定する。例えば、充電開始SOCがSOCAであり、かつ、充電終了SOCがSOCBである場合(SOCA<SOCB)、ECU100は、推定精度をPABとして決定する。
【0146】
推定精度は、基本的に充電開始SOCと充電終了SOCとの差分(ΔSOC=SOC2-SOC1)が大きいほど高い。例えば、PAD>PAC>PABである。充電開始SOCおよび充電終了SOCの組み合わせに対応する推定精度は、バッテリ10の特性に基づいて実験により適宜予め定められる。
【0147】
ECU100は、テーブル800を用いて決定された推定精度そのものではなく、この推定精度と満充電容量の推定精度の履歴とに従って満充電容量の推定精度を算出してもよい。この履歴は、メモリ100Bに格納されているものとする。このように満充電容量の推定精度が算出されると、満充電容量の推定精度の履歴を満充電容量の推定精度の算出処理に反映させることができる。
【0148】
ECU100は、例えば、次式(2)を用いて満充電容量の推定精度を算出し、その推定精度がしきい精度以下である場合に第1の処理または第2の処理を実行する。
【0149】
PRn=PR(n-1)×(1-RR)+Pn×RR …(2)
上式(2)において、PRnは、バッテリ10の使用開始時を起点としてn回目の外部充電が実行されたときに(この例では、外部充電が今回実行されたときに)算出される満充電容量の推定精度を表す。PRnは、以下のPR(n-1)に関係しているため、満充電容量の推定精度の履歴を反映する。
【0150】
PR(n-1)は、n-1回目の外部充電が実行されたとき(外部充電が前回実行されたとき)に算出される満充電容量の推定精度を表す。
【0151】
Pnは、今回の外部充電が実行されたときに、テーブル800そのものを用いて決定される満充電容量の推定精度である。すなわち、Pnは、満充電容量の推定精度の履歴とは無関係である。
【0152】
RRは、今回の外部充電に関するPnと、前回の外部充電に関するPR(n-1)との各々がPRnにどの程度反映されるかを示す反映率である(0≦RR≦1)。RRが1に近づくほど、今回の外部充電に関するPnがよりPRnに反映される。例えば、RRが1である場合、上式(2)の右辺における第2項は、Pnに一致する。RRは、事前の評価試験により適宜予め定められる。
【0153】
図15は、実施の形態2において満充電容量の推定に関連してECU100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、上限SOCが設定されている場合に車両1が電力設備85に接続されると開始される。以下の説明において、
図7~
図9を適宜参照する。
【0154】
図15を参照して、ECU100は、ステップS105~S140(
図7)と同様の処理を実行する。
【0155】
次いで、ECU100は、充電開始SOCおよび充電終了SOCに従って、テーブル800を用いて満充電容量の推定精度を決定する(ステップS750)。ECU100は、上式(2)をさらに用いて満充電容量の推定精度を算出してもよい。
【0156】
次いで、ECU100は、推定精度がしきい精度以下であるか否かを判定する(ステップS755)。推定精度がしきい精度よりも高い場合(ステップS755においてNO)、ECU100は、上限SOCを現在の設定値に維持する(ステップS225と同様の処理)。その後、ECU100は、ステップS230~S240(
図8)と同様の処理を実行する。
【0157】
他方、推定精度がしきい精度以下である場合(ステップS755においてYES)、ECU100は、上限SOCを現在の設定値から引き上げるためにユーザに報知する処理を実行する(ステップS210と同様の処理)。その後、ECU100は、ステップS215~S240と同様の処理を実行する。ECU100は、例えば、第1の処理(ステップS220,S235)を実行する。
【0158】
上記において、推定精度がしきい精度以下である場合に、ECU100は、ステップS215~S240と同様の処理を実行するものとしたが、ステップS310~S340(
図9)の処理を実行してもよい。これらの処理において、ステップS335で処理がYESに分岐した場合には、ECU100は、ステップS336の処理(第2の処理)を実行する。
【0159】
以上のように、実施の形態2によれば、適切なタイミングにおいて第1の処理または第2の処理を実行することができる。
【0160】
[その他の変形例]
ECU100は、テーブル800を用いて算出した推定精度と満充電容量の推定精度(推定値Ce)とをユーザ端末90の表示装置95に表示するように通信装置80を通じてユーザ端末90に要求を出力してもよい。車両1のような電動車両に搭載される蓄電装置の品質を保証するために蓄電装置の満充電容量を高精度でユーザに表示することが法規において必要とされることがある。上記のように要求が出力されると、そのような法規を満たすことができる。
【0161】
ユーザへの報知は、HMI装置94のスピーカを用いて音声により行われてもよい。あるいは、ユーザへの報知は、車両1のHMI装置70の表示装置72を用いて画面表示により、またはHMI装置70のスピーカを用いて音声により行われてもよい。
【0162】
電力設備85は、直流電力設備であってもよい。すなわち、電力設備85は、電源85Aから供給される交流電力を直流電力に変換する電力変換装置をさらに備えていてもよい。この場合、車両1の充電装置50が必須ではなく、上記の直流電力は、充電装置50を介することなくバッテリ10に直接的に供給される。このように電力設備85が直流電力設備である場合であっても、ECU100による第1の処理および第2の処理は、満充電容量の推定精度の向上の観点から効果的である。
【0163】
電力設備85は、車両1に非接触で電力を送電する送電装置を含んでもよい。この場合、車両1は、その送電装置から非接触で受電する受電装置をさらに含んでもよい。そして、ECU100は、この受電装置により受電された電力を用いてバッテリ10を充電する非接触充電処理を外部充電処理として実行するように構成されていてもよい。
【0164】
車両1は、ECU100が外部充電処理を実行可能である限り、エンジンをさらに備えるプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの他の電動車両であってもよい。
【0165】
画面700(
図2)は、車両1のHMI装置70に表示されてもよい。すなわち、ユーザは、HMI装置70を用いて上限SOCを設定することができる。この場合、上限SOCの設定値は、HMI装置70からECU100に出力される。
【0166】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0167】
1 車両、2 推定システム、10 バッテリ、70,85B,94 HMI装置、85 電力設備、100A プロセッサ、100B メモリ、800 テーブル。