(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】カラー表示体、認証媒体、および、カラー表示体の真贋判定方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20250115BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20250115BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20250115BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20250115BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/28
B42D25/328
B42D25/305
(21)【出願番号】P 2022514130
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015016
(87)【国際公開番号】W WO2021206163
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2020070966
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】杉原 啓太郎
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0162771(US,A1)
【文献】特開2003-215319(JP,A)
【文献】特開2016-114770(JP,A)
【文献】特開2007-298777(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070431(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219807(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0258835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18、5/20-5/28
B42D 25/305、25/328
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボス層に、高屈折率層、保護層が順次形成され、前記各層のうち、前記高屈折率層の屈折率が最も高く、前記エンボス層は、少なくとも可視光の中心波長より短い周期構造を有した第1の領
域を有し、前記第1の領
域は、表示面において、短冊状の長手方向の端辺が相互に接続し、前記長手方向と直交方向では離間し、前記周期構造の周期方向が前記長手方向に配置され
、
前記エンボス層において、第1の周期構造で構成された複数の短冊状の前記第1の領域と、複数の周期が混在する第2の周期構造で構成された複数の第2の領域とが、少なくとも前記長手方向もしくは前記直交方向へ交互に配置し、前記第2の領域は前記第1の領域より小さい寸法であり、
前記第2の領域において、前記第2の周期構造に堆積された前記高屈折率層の混在周期構成との干渉により、1次回折光が射出することを特徴とする、カラー表示体。
【請求項2】
前記第1の領
域において、前記周期構造に堆積された前記高屈折率層の周期構成との共鳴により、0次回折光が射出することを特徴とする、請求項1に記載のカラー表示体。
【請求項3】
前記第1の領
域に含まれる前記周期構造は、選択的に利用される複数の周期の最小公倍数を被除数、選択的に利用される複数の周期の最大公約数を除数として得られる値の整数倍が前記第1の領
域の長手方向の寸法となることを特徴とする、請求項1または2に記載のカラー表示体。
【請求項4】
前記表示面と、前記カラー表示体を観察する観察者の視線方向を含む平面とが形成する角度が観察角度であり、前記第1の領
域で射出する0次回折光と、前記第2の領
域で射出する1次回折光とは、前記観察角度が異なることを特徴とする、請求項
1に記載のカラー表示体。
【請求項5】
前記第1の領
域で射出する0次回折光の観察角度においてカラー画像を形成し、前記第2の領
域で射出する1次回折光の観察角度においてグレースケール画像を形成することを特徴とする、請求項
1から
4のうち何れか1項に記載のカラー表示体。
【請求項6】
少なくとも前記第1の領
域と前記第2の領
域との何れか一方によって構成される各画像が、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして利用されることを特徴とする、請求項
1から
5のうち何れか1項に記載のカラー表示体。
【請求項7】
前記第1の周期構造は凸面と凹面を含み、前記凸面と隣り合う前記凹面との間の距離が凹凸間の高さであり、前記第1の領
域には、前記凹凸間の高さ、前記凸面と前記凹面との寸法比率、および周期のうち少なくとも何れかが局所的に異なる第1のサブ領
域が含まれ、前記第1のサブ領
域によって構成される認証コードが、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして利用されることを特徴とする、請求項
1から
6のうち何れか1項に記載のカラー表示体。
【請求項8】
前記第1の領
域によって構成される前記カラー画像を観察する視点の位置が観察位置であり、前記カラー表示体が広がる平面の法線を回転軸として、前記カラー表示体は、第1の位置と第2の位置とを有し、前記第2の位置は、前記回転軸を中心として前記第1の位置から90°だけ前記カラー表示体を回転させた位置であり、前記カラー表示体が前記第1の位置に位置するときに前記観察位置に対して第1の色を有した第1のカラー画
像を表示し、前記カラー表示体が前記第2の位置に位置するときに前記観察位置に対して第2の色を有した第2のカラー画
像を表示し、前記第1の領
域では局所的に複数の周期が含まれる第2のサブ領
域が含まれ、前記第2のサブ領
域は前記第1の位置および前記第2の位置の両方において同じ色を有した認証コードとして形成され、認証コードが、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして利用されることを特徴とする、請求項
5に記載のカラー表示体。
【請求項9】
前記第2の領
域において、前記第2の周期構造の周期が複数含まれるが、局所的に1つの周期によって構成される第3のサブ領
域が含まれ、前記第3のサブ領域
によって構成される認証コードが、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして利用されることを特徴とする、請求項
1から
5のうち何れか1項に記載のカラー表示体。
【請求項10】
前記第2の領
域において、前記第2の周期構造に含まれる複数の周期の関係が局所的に異なる第4のサブ領
域が含まれ、前記第4のサブ領
域によって構成される認証コードが、認証コードが、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして利用されることを特徴とする、請求項
1から
5のうち何れか1項に記載のカラー表示体。
【請求項11】
前記第2の領
域において、前記第2の周期構造の凸面と凹面が並ぶ方向が局所的に異なる第5のサブ領
域が含まれ、前記第5のサブ領
域によって構成される認証コードが、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして利用されることを特徴とする、請求項
1から
5のうち何れか1項に記載のカラー表示体。
【請求項12】
前記第1の領
域と前記第2の領
域とは異なる第3の領
域によって構成される認証コードが、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして利用されることを特徴とする、請求項
1から
4のうち何れか1項に記載のカラー表示体。
【請求項13】
請求項1乃至
12のうち何れか1項に記載のカラー表示体を備えたことを特徴とする、認証媒体。
【請求項14】
請求項
1乃至
5のうち何れか1項に記載のカラー表示体の真贋判定方法であって、
少なくとも前記第1の領
域と前記第2の領
域の何れか一方によって構成される各画像を認証コードし、
前記認証コードの機械読み取りを行い、
前記機械読み取りの結果に基づいて、前記カラー表示体の真贋判定を行うことを特徴とする、
カラー表示体の真贋判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、カラー表示体、認証媒体、および、カラー表示体の真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導波モード共鳴を利用した光学デバイスが提案されている。この光学デバイスは、可視光の波長よりも小さい周期で並ぶ回折格子であるサブ波長格子を備えている。サブ波長格子に光が入射すると、光が入射する側の空間に対し、回折光の反射が抑えられる一方で、導波モード共鳴による光の反射が生じる。導波モード共鳴は、特定の波長域の光が光学デバイス内を多重反射しながら伝播することによって共鳴を起こし、これによって、当該波長域の光が高い強度を有した反射光として光学デバイスにおいて反射される現象である。こうした光学デバイスは、対象に対して偽造の困難性および意匠性の少なくとも一方を付与するカラー表示体として利用されている(例えば、日本国特開2018-063305号公報参照)。
【0003】
また、回折格子の配列から回折の方向を任意に制御し、観察する角度に応じた回折現象を起こす画素領域を決定し、観察角度によって像が変化する、チェンジングという技術も利用されている(例えば、日本国特開平4-136810号公報参照)。
【0004】
この技術を利用して、マトリックス上に画素を配置し、複数の画素に任意の入射角度に対して回折を発生させる格子構造を形成し、観察する角度によって像を連続的に変化させるカラー表示体が利用されている(例えば、日本国特開2011-170178号公報参照)。
【発明の概要】
【0005】
ところで、カラー表示体では、カラー表示体の用途、カラー表示体が適用される環境、および、カラー表示体に期待される機能などに応じて、特定の波長を有した光を反射することや、互いに異なる波長を有した複数の光を射出することが求められる。こうした要請は、上述した用途、環境、および、機能が多様化する近年において、高まる一方である。
【0006】
複数の画素に任意の構造を設け、複数の光を射出する豊かな色表現を有した意匠性の高いカラー表示体が適用されるが、画素ごとに異なる構造が割り当てられるために反射率が低下し、視認性の低いカラー表示体となる。
【0007】
また、単位画素あたりの反射率を高めるには画素サイズを大きくする必要がある。しかしながら、画素サイズを大きくすると、解像度が低下するので、視認性の低いカラー表示体となる。このように、解像度が高く、かつ、豊かな色表現を有するカラー表示体を実現することがことは困難である。したがって、解像度が高く、かつ、豊かな色表現を有するカラー表示体が求められている。
【0008】
本開示は、導波モード共鳴により、反射光の強度を高め、かつ、波長を多様化することにより、解像度が高く、かつ、豊かな色表現を有するカラー表示体、認証媒体、およびカラー表示体の真贋判定方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記課題を解決するためのカラー表示体は、エンボス層に、高屈折率層、保護層が順次形成され、各層のうち、高屈折率層の屈折率が最も高く、エンボス層は、少なくとも可視光の中心波長より短い周期構造を有した第1の領域(A)を有し、第1の領域(A)は、表示面において、短冊状の長手方向の端辺が相互に接続し、長手方向と直交方向では離間し、周期構造の周期方向が長手方向に配置される。
【0010】
上記課題を解決するための認証媒体は、上記カラー表示体と、カラー表示体を支持する支持体とを備える。
【0011】
エンボス層、高屈折率層、および、保護層から形成されるカラー表示体は、エンボス層の表面に追従した高屈折率層が導波層となり、導波モード共鳴が生じる。
【0012】
導波モード共鳴で伝播する光は、周期構造によって生じる回折光であるため、導波モード共鳴によって生じる反射光は、長軸と短軸とを有する領域に配置される周期構造の並ぶ方向によって、反射光の増減が生じる。
【0013】
そのため、上記構成によれば、長軸と短軸とを有する領域では、導波モード共鳴効果を制御できる。
【0014】
上記カラー表示体において、第1の領域(A)において、周期構造に堆積された高屈折率層の周期構成との共鳴により、0次回折光が射出する。
【0015】
上記構成によれば、高屈折率層が導波層として伝播し、入射空間となるエンボス層または保護層の内部に局在的に浸透し、浸透した光と入射光とが、エンボス層または保護層の表面で反射する光と干渉し、強め合うことで、0次回折光として射出できる。
【0016】
上記カラー表示体において、第1の領域(A)に含まれる周期構造は、選択的に利用される複数の周期の最小公倍数を被除数、選択的に利用される複数の周期の最大公約数を除数として得られる値の整数倍が第1の領域(A)の長手方向の寸法となる。
【0017】
上記構成によれば、複数の周期構造を第1の領域(A)に配置する場合、第1の領域(A)の長手方向の寸法と周期の関係によって局所的に周期が乱れることなく、損失無く0次回折光として射出できる。
【0018】
上記カラー表示体では、エンボス層において、第1の周期構造で構成された複数の短冊状の第1の領域(A)と、複数の周期が混在する第2の周期構造で構成された複数の第2の領域(B)とが、少なくとも長手方向もしくは直交方向へ交互に配置し、第2の領域(B)の寸法は、第1の領域(A)の寸法よりも小さい。
【0019】
上記構成によれば、第1の領域(A)で構成される光学効果と、第2の領域(B)で構成される光学効果とは異なるため、意匠性の高いカラー表示体を提供できる。
【0020】
上記カラー表示体では、第2の領域(B)において、第2の周期構造に堆積された高屈折率層の混在周期構成との干渉により、1次回折光が射出する。
【0021】
上記構成によれば、0次回折光として射出する第1の領域(A)は、入射角度に依存した反射角度で視認できる。一方、1次回折光として射出する第2の領域(B)は、反射角度を制御できるので、0次回折光と同じ角度へ、または、別の角度へ射出でき、意匠性の高いカラー表示体を提供できる。
【0022】
上記カラー表示体において、表示面と、カラー表示体を観察する観察者の視線方向を含む平面とが形成する角度が、観察角度である。第1の領域(A)で射出する0次回折光と、第2の領域(B)で射出する1次回折光とは、観察角度が異なる。
【0023】
上記構成によれば、第1の領域(A)を観察可能な角度と、第2の領域(B)を観察可能な角度とが異なるので、視認性の高いカラー表示体を提供できる。
【0024】
上記カラー表示体において、第1の領域(A)で射出する0次回折光の観察角度においてカラー画像を形成し、第2の領域(B)で射出する1次回折光の観察角度においてグレースケール画像を形成する。
【0025】
上記構成によれば、異なる角度で、カラー画像とグレースケール画像とを観察できるので、画像の変化、色の出現や消失を認識することで、高い意匠性を実現でき、真贋判定の基準とできる。
【0026】
上記カラー表示体において、少なくとも第1の領域(A)と第2の領域(B)との何れか一方によって構成される各画像を、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして適用できる。
【0027】
上記構成によれば、第1の領域(A)または第2の領域(B)で構成する画像、あるいは画像要素となるカラー要素やグレースケール要素を、認証コードとして記憶できるので、真贋判定として適用できる。
【0028】
上記カラー表示体において、第1の周期構造は、凸面と凹面とを含み、凸面と、隣り合う凹面との間の距離は、凹凸間の高さであり、第1の領域(A)は、凹凸間の高さ、凸面と凹面との寸法比率、および周期のうち少なくとも何れかが局所的に異なる第1のサブ領域(A1)を含み、第1のサブ領域(A1)によって構成される認証コードを、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして適用できる。
【0029】
上記構成によれば、導波モード共鳴で生じる反射光は、凹凸間の高さ、凸面と凹面との寸法比率、および周期によって、波長や強度を変化させることができる。このため、第1の領域(A)と第1のサブ領域(A1)とで、異なるカラー情報を持つことができ、第1のサブ領域(A1)を認証コードとして記憶させることで、真贋判定として適用できる。
【0030】
上記カラー表示体において、第1の領域(A)によって構成されるカラー画像を観察する視点の位置が観察位置である。カラー表示体は、カラー表示体が広がる平面の法線を回転軸として、第1の位置と第2の位置とを有する。第2の位置は、回転軸を中心として第1の位置から90°だけカラー表示体を回転させた位置である。カラー表示体は、第1の位置に位置するときに、観察位置に対して、第1の色を有した第1のカラー画像(1)を表示する。また、カラー表示体は、第2の位置に位置するときに、観察位置に対して、第2の色を有した第2のカラー画像(2)を表示する。第1の領域(A)では、局所的に複数の周期が含まれる第2のサブ領域(A2)が含まれる。第2のサブ領域(A2)は、第1の位置および第2の位置の両方において、同じ色を有した認証コードとして形成される。認証コードは、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして適用できる。
【0031】
上記構成によれば、導波モード共鳴は、観察位置が、第1の位置であるか、第2の位置であるかによって、射出する反射光のカラー情報が異なる。よって、第1の位置および第2の位置で生じるカラー情報を制御することで、第2のサブ領域(A2)のように、どちらでも同じカラー情報を持たせることができ、第2のサブ領域(A2)を、認証コードとして記憶させることで、真贋判定として適用できる。
【0032】
上記カラー表示体において、第2の領域(B)では、第2の周期構造の周期が複数含まれるが、局所的に1つの周期によって構成される第3のサブ領域(B1)が含まれる。第3のサブ領域(B1)によって構成される認証コードを、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして適用できる。
【0033】
上記構成によれば、第2の領域(B)で反射されるグレースケール情報に対して、第3のサブ領域(B1)にカラー情報を持たせることができる。したがって、第3のサブ領域(B1)を、認証コードとして記憶させることで、真贋判定として適用できる。
【0034】
上記カラー表示体において、第2の領域(B)において、第2の周期構造に含まれる複数の周期の関係が局所的に異なる第4のサブ領域(B2)が含まれる。したがって、第4のサブ領域(B2)によって構成される認証コードを、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして適用できる。
【0035】
上記構成によれば、第2の領域(B)に含まれる周期情報によって、射出する角度を制御できる。したがって、第2の領域(B)で射出する角度と異なる第4のサブ領域(B2)を、認証コードとして記憶させることで、真贋判定に適用できる。
【0036】
上記カラー表示体では、第2の領域(B)において、第2の周期構造の凸面と凹面とが並ぶ方向が局所的に異なる第5のサブ領域(B3)が含まれる。したがって、第5のサブ領域(B3)によって構成される認証コードを、機械読み取り可能な真贋判定用の認証コードとして適用できる。
【0037】
上記構成によれば、第2の領域(B)で反射されるグレースケール情報に対して、第5のサブ領域(B3)は、グレースケールの階調情報を持たせることができる。したがって、第5のサブ領域(B3)によって構成される認証コードを、真贋判定として適用できる。
【0038】
上記カラー表示体において、第1の領域(A)と第2の領域(B)とは異なる第3の領域(C)によって構成される認証コードを、機械で読み取ることで、真贋判定に適用できる。
【0039】
上記構成によれば、新たな第3の領域(C)を設けることで、第1の領域(A)と第2の領域(B)とに異なる情報を持たせることができる。したがって、第3の領域(C)によって構成される認証コードを、真贋判定として適用できる。
【0040】
本開示によれば、導波モード共鳴により、反射光の強度を高め、かつ、波長を多様化できるので、解像度が高く、かつ、豊かな色表現を有するカラー表示体、認証媒体、および、カラー表示体の真贋判定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、第1実施形態のカラー表示体における構造を観察者および光源とともに模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1が示すカラー表示体における光の挙動を示す模式図である。
【
図3】
図3は、導波モード共鳴について説明するためのカラー表示体の模式図である。
【
図4】
図4は、導波モード共鳴に関する更なる説明のために、光の挙動を示す模式図である。
【
図5】
図5は、導波モード共鳴に関する更なる説明のために、光の挙動を示す模式図である。
【
図6】
図6は、凹凸面の方位角と、観察者の視線方向との関係を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、凹凸面の方位角と、波長毎の反射率のスペクトルとの関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、カラー表示体の傾きと、反射率との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、カラー表示体の傾きと、反射率との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、第1実施形態のカラー表示体における凹凸面を含む領域を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、領域内に含まれる凹凸面の向きについて説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、カラー表示体の領域について説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、カラー表示体の領域の配置と、反射率との関係を示すグラフである。
【
図15】
図15は、観察者がカラー表示体を観察する状態を模式的に示す模式図である。
【
図16】
図16は、カラー表示体の効果の一例を示す模式図である。
【
図17】
図17は、カラー表示体を製造する際の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図18】
図18は、第2実施形態のカラー表示体における領域を説明するための模式図である。
【
図19】
図19は、混在周期構造の配置密度と回折角度との関係を示すグラフである。
【
図20】
図20は、r値が互いに異なる9つのカラー表示体における反射光スペクトルを示す図である。
【
図21】
図21は、xy色度図における9つのカラー表示体が反射した光の色を示す図である。
【
図23】
図23は、観察角度における第1の範囲と第2の範囲との関係を示す模式図である。
【
図24】
図24は、観察者がカラー表示体を観察している状態を示す模式図である。
【
図25】
図25は、カラー表示体を備える認証媒体が表示する画像を示す平面図である。
【
図26】
図26は、カラー表示体における第1の位置と第2の位置とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[第1実施形態]
図面を参照して、カラー表示体、認証媒体、およびカラー表示体の真贋判定方法の第1実施形態を説明する。以下では、カラー表示体の構造、凹凸面の形状、凹凸面の方位角、カラー表示体の作用、およびカラー表示体の製造方法を順に説明する。
【0043】
(カラー表示体の構造)
図1から
図9を参照して、第1実施形態のカラー表示体の構造を説明する。
【0044】
図1は、第1実施形態のカラー表示体における構造を観察者および光源とともに模式的に示す断面図である。
【0045】
図1に示されるように、カラー表示体10は、エンボス層11と、高屈折率層12と、保護層13とを備える。カラー表示体10において、エンボス層11、高屈折率層12、および保護層13が、記載の順に積層される。各層11,12,13は、光透過性を有する。
【0046】
エンボス層11が屈折率n1を有し、保護層13が屈折率n3を有し、高屈折率層12が屈折率n2を有する。屈折率n2は、屈折率n1および屈折率n3よりも高い。屈折率n1は、屈折率n3と同じ値、あるいは、異なる値とできる。
【0047】
エンボス層11は、高屈折率層12と接する表面11Sの少なくとも一部に、凹凸面11S1を含む。
図1に示す例では、表面11Sの全体が凹凸面11S1である。凹凸面11S1の周期dは、可視の中心波長以下とできる。凹凸面11S1の周期dは、可視の下限波長の半分以上とできる。具体的には、凹凸面11S1の周期dは、250nm以上、500nm以下の範囲に含まれる。凹凸面11S1が含む凹面と凸面とが並ぶ方向、すなわち、
図1が示す例では、紙面の左右方向において、1周期には、1つの凹面と1つの凸面とが含まれる。1周期は、1つの凹面と1つの凸面とを交互に配置できる。凹凸面11S1は、カラー表示体10が広がる平面に対して直交する断面において波形状を有する。凹凸面11S1では、当該波形状が、紙面の奥行方向に沿って連なる。
【0048】
高屈折率層12は、エンボス層11の表面11Sに追従可能な厚さを有する。高屈折率層12は、数nm以上、百数十nm以下の厚さとできる。カラー表示体10が広がる平面に対して直交する断面において、高屈折率層12は、凹凸面11S1に倣う波形状を有する。高屈折率層12では、当該波形状が、紙面の奥行方向に沿って連なる。
【0049】
カラー表示体10には、エンボス層11に対して高屈折率層12とは反対側に位置する光源LSから光が入射する。光源LSは、例えば、太陽、または照明器具とできる。カラー表示体10は、エンボス層11に対して高屈折率層12とは反対側から観察者OBによって観察される。観察者OBの視点の位置である観察位置OPは、エンボス層11に対して高屈折率層12とは反対側の空間における任意の位置である。観察者OBが観察位置OPからカラー表示体10を視認する方向が、観察者OBの視線方向DOBである。
【0050】
本実施形態では、視線方向DOBを含む平面と、カラー表示体10が広がる平面とが形成する角度を、観察角度と定義する。エンボス層11において、上述した表面11Sと反対側の面は、十分に平坦度が高く、平坦面であると見なすことができる。なお、面の粗さが波長に対して十分小さい、典型的には、1/10以下の場合、平坦面と見なすことができる。そのため、観察角度は、視線方向DOBを含む平面と、エンボス層11において表面11Sとは反対側の面とが形成する角度と定義できる。
【0051】
次に、
図2から
図5を参照して、カラー表示体10において生じる導波モード共鳴について説明する。
【0052】
図2は、
図1が示すカラー表示体における光の挙動を示す模式図である。
【0053】
図2に示されるように、導波モード共鳴は、上述したように、少なくとも3層を有するカラー表示体10において生じる。これら3層では、屈折率が最も高い層を中央に有し、かつ、中央に位置する層が、中央に位置する層とは異なる屈折率を有した2つの層によって挟まれていることが、導波モード共鳴を生じさせる必須条件である。すなわち、カラー表示体10において、上述の高屈折率層12が、エンボス層11と保護層13とによって挟まれている必要がある。
【0054】
カラー表示体10において、高屈折率層12は、導波層に含まれる。カラー表示体10に入射した入射光ILのなかで、高屈折率層12によって回折された光の一部は、エンボス層11と高屈折率層12との境界、および、高屈折率層12と保護層13との境界において全反射しながら高屈折率層12を伝播する。こうした光の伝播は、高屈折率層12の屈折率n2が、エンボス層11の屈折率n1よりも高く、かつ、保護層13の屈折率n3よりも高いことによって生じる。なお、入射光ILのなかで、以下に説明する導波の伝播条件を満たす波長を有した光のみが伝播光LGとして高屈折率層12を伝播し、伝播の結果として、高い輝度を有した反射光RLとしてカラー表示体10において反射される。反射光RLは、正反射の方向に反射される。一方、伝播条件を満たさない波長を有した光は、カラー表示体10を透過する透過光TLとしてカラー表示体10から出て行く。
【0055】
図3は、導波モード共鳴を説明するためのカラー表示体の模式図である。
【0056】
図3には、導波の伝播条件を説明するために、カラー表示体10が模式的に示される。カラー表示体10は、カラー表示体10内を伝播する光から見て、高屈折率層12の凹面と凸面とが並ぶ方向において、高屈折率層12の一部とエンボス層11あるいは保護層13の一部とが交互に並ぶ構造をしている。すなわち、凹面と凸面とが並ぶ方向において、高屈折率部と低屈折率部とが交互に並ぶ。
【0057】
伝播条件は、周期dにおける高屈折率層12の占有率F、入射光ILの波長λ、凹凸面の周期d、波数k、および逆格子ベクトルKを用いて、以下の式(1)から式(6)によって表すことができる。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
ここで、
k = 2π/λ … 式(4)
K = 2π/d … 式(5)
β = (2π/λ)・neff … 式(6)
である。
【0062】
式(3)において、入射光ILの入射角度θと、回折次数mは整数である。また、式(3)において、導波層、すなわち高屈折率層12の伝播定数βは、入射光ILの波長λと、高屈折率層12の有効屈折率neffに依存する。式(1)は、TE波に対する高屈折率層12の有効屈折率neffを示し、式(2)は、TM波に対する高屈折率層12の有効屈折率neffを示す。高屈折率層12の有効屈折率neffは、凹凸面の周期dが入射光ILの波長λよりも短い場合に、TE波に対する有効屈折率neffと、TM波に対する有効屈折率neffとが互いに異なる。各有効屈折率neffは、周期dにおける高屈折率層12の占有率によって決まる。
【0063】
図3は、導波モード共鳴を説明するためのカラー表示体の模式図である。
【0064】
図3において、高屈折率層12の幅がaであり、エンボス層11あるいは保護層13の幅がbである。そのため、周期dにおける高屈折率層12の占有率は、周期dに対する幅aの比であり、周期dにおけるエンボス層11あるいは保護層13の占有率は、周期dに対する幅bの比である。
【0065】
上記式(1)から式(6)を満たす導波条件は、以下の式によって表すことができる。
【0066】
neff>n1,n3 … 式(7)
λ>d … 式(8)
上述したように、有効屈折率neffは、周期dにおける高屈折率層12の占有率(a/d)によって決まることから、以下の関係を導くことができる。
【0067】
n2>n1,n3 … 式(9)
また、有効屈折率neffを適用して、カラー表示体10において導波される光の波長と、当該波長を有した光の反射率とを求めることができる。すなわち、有効屈折率neffを調整して、導波モード共鳴を利用し、高い輝度を有した有彩色の光を、カラー表示体10に反射させることができる。なお、導波モード共鳴を利用した有彩色の光の反射を、0次回折光とも表現できる。
【0068】
例えば、周期dを変調するだけで、上記式(1)から式(6)を満たす導波光の波長を変化させることができる。また、カラー表示体10の凹凸面11Sの周期がそれぞれ異なる凹凸面をそれぞれ含ませることで、r,g,bの色を表示可能とし、フルカラーで意匠性の高いカラー表示体10を提供できる。
【0069】
また、上記式から明らかなように、有効屈折率neffおよび伝播定数βは、これらを導出する式中に含まれるパラメーター、すなわち、屈折率n1から屈折率n3、周期d、および、占有率Fが変更されることによって、導波モード共鳴によって反射される光の波長と反射率とを制御できる。さらに、導波モード共鳴によって反射される光は、カラー表示体10に入射する入射光ILの入射角度θにも依存する。そのため、導波モード共鳴を適用したカラー表示体は、これらパラメーターによって、その反射光を定め、カラー表示体が反射する光をセンサーで読み取り、そのパラメーターにより定まる光と容易に対比できる。そのためカラー表示体は、機械読み取りによる判定に適用できる。
【0070】
また、有効屈折率neffと屈折率n1との差や、有効屈折率neffと屈折率n3との差が大きいほど、導波モード共鳴により反射される光の反射率は高くなる。すなわち、高屈折率層12の占有率Fが大きいほど、光の反射率を高くできる。このように、有効屈折率neffと屈折率n1との差や、有効屈折率neffと屈折率n3との差に応じて光の反射率が決まる。そのため、エンボス層11および保護層13に適用できる材料、言い換えれば屈折率が固定されている場合には、エンボス層11における凹凸面11S1の形状、および、高屈折率層12の厚さなどによって有効屈折率neffを制御できる。これは、カラー表示体10が反射する光の波長を多様化させる上で有用である。
【0071】
図4は、導波モード共鳴について更なる説明をするために光の挙動を模式的に示した図である。
【0072】
図4では導波を理解しやすくするため、高屈折率層12、エンボス層11、保護層13がそれぞれ平坦な積層体であると仮定する。上述の通り、高屈折率層12によって回折された光の一部は、エンボス層11と高屈折率層12との境界、および、高屈折率層12と保護層13との境界において全反射しながら高屈折率層12を伝播する伝播光LGとなる。
【0073】
例えば、伝播光LGがエンボス層11の界面へ進行する際、伝播光LGの入射角度θが、エンボス層11の屈折率n1と高屈折率層12の屈折率n2との関係より生じる臨界角以上であれば、エンボス層11と高屈折率層12との界面で全反射が生じる。
【0074】
しかし、伝播光LGは、波数の境界面に対する垂直成分が虚数であるため、低屈折率であるエンボス層11の内部に浸透する。この浸透光は、エバネッセント光と称され、
図4に示すエバネッセント光LEとして現れる。エバネッセント光LEは、遠距離に伝播できず、伝播距離hは、波長程度しか浸透しない。さらに、界面から離れるに従って強度が指数関数的に減衰するため、エバネッセント光LEは、観察者OBには視認できない。しかし、エバネッセント光LEと入射光ILとが干渉した光は、伝播光となり、観察者OBによって認識される。
【0075】
エバネッセント光LEは、入射光ILの入射角度と高屈折率層12の膜厚とが固定されると、特定の波長帯で導波モードが励起されるので、強度が高まる。よって、高屈折率層12を、均一な膜厚とできる。
【0076】
図5は、導波モード共鳴について更なる説明するための光の挙動を示す模式図である。
【0077】
図5では、
図4の伝播光LGの更なる説明をするために、光の挙動が模式的に示される。エバネッセント光LEの強度は、伝播光LGの強度が高まるにつれて高くなる。伝播光LGは、エンボス層11と高屈折率層12との界面、および、保護層13と高屈折率層12との界面で、多重反射しながら伝播するが、反射する平面波の位相が揃うときに励起される。例えば、伝播光LGが点Pにあるときと、反射して点Qにあるときとでは、高屈折率層12の導波路内で反射する光路長が、2πの整数倍になるために、位相が揃い、励起され、伝播光LGの強度が高まる。このように、高屈折率層12の導波路内の光が多重反射する回数が多いほどエバネッセント光LEの強度が高まり、カラー表示体10の視認性も向上する。
【0078】
図4と
図5で光の挙動を模式的に説明したが、カラー表示体10は、凹凸を有した周期構造を有し、その周期構造による回折波が伝播光LGとなる。先の説明の通り、多重反射する回数が多いほどエバネッセント光LEの強度も高くなるので、周期構造を配置する領域を大きくすることが望ましい。
【0079】
(凹凸面の方位角)
次に、
図6から
図9を参照して、凹凸面11S1の方位角について説明する。
【0080】
図6は、凹凸面の方位角と、観察者の視線方向との関係を説明するための模式図である。
【0081】
図6では、観察者OBの視線方向DOBと、凹凸面11S1の方位角との関係を示している。なお、
図1において、カラー表示体の10内に図示された凹凸面11S1の波形形状が、紙面の奥行方向に沿って連なっている方向が、凸面S1Aの延びる方向である。
【0082】
図6(a)に示されるように、カラー表示体10が備える凸面S1Aは、1つの方向に沿って延びている。
図6(a)に示す例では、凸面S1Aは紙面の上下方向に沿って延びている。凹凸面11S1の方位角は、凸面S1Aが延びる方向と、カラー表示体10が広がる平面に沿う任意の方向である基準方向とが形成する角度である。本例では、基準方向を紙面の左右方向とする。この場合、基準方向と凸面S1Aが延びる方向とが形成する角度は、90°である。そのため、凹凸面11S1の方位角は、90°である。観察者OBの視線方向DOBを、カラー表示体10が広がる平面に投影した投影方向は、紙面の上下方向である。投影方向は、凸面S1Aが延びる方向と平行である。すなわち、凹凸面11S1は、観察者OBに対して縦向きである。
【0083】
図6(b)に示す例では、凸面S1Aは紙面の左右方向に沿って延びている。紙面の左右方向が基準方向であるので、基準方向と凸面S1Aが延びる方向とが形成する角度は、0°である。そのため、凹凸面11S1の方位角は0°である。観察者OBの視線方向DOBを、カラー表示体10が広がる平面に投影した投影方向は、紙面の上下方向である。投影方向は、凸面S1Aが延びる方向と直交する。すなわち、凹凸面11S1は、観察者OBに対して横向きである。
【0084】
図7は、凹凸面の方位角と、波長毎の反射率のスペクトルとの関係を示すグラフである。
【0085】
図7では、カラー表示体10が反射した反射光RLの波長と反射率との関係が示されている。なお、
図7において、実線で示されるスペクトルは、凹凸面11S1が縦向きであるカラー表示体10によって得られるスペクトルであり、破線で示されるスペクトルは、凹凸面11Sが横向きに配置されたカラー表示体10によって得られるスペクトルである。なお、反射光RLのスペクトルを得る際には、測定装置が備える受光素子からカラー表示体10に向かう方向を測定方向に設定し、測定方向を上述した視線方向DOBと見なしている。
【0086】
図7に示されるように、凹凸面11Sが縦向きに配置されたカラー表示体10、および、凹凸面11Sが横向きに配置されたカラー表示体10のいずれであっても、スペクトルrによって示される赤色の光、スペクトルgによって示される緑色の光、およびスペクトルbによって示される青色の光を反射できる。ただし、いずれのスペクトルr,g,bにおいても実線で示されるスペクトルr,g,bでのピーク強度が、破線で示されるスペクトルr,g,bのピーク強度よりも高い。そのため、カラー表示体10は、観察者OBに対して凹凸面11Sを縦向きにできる。言い換えれば、カラー表示体10は、観察者OBに対して、凹凸面11Sが縦向きである場合に、凹凸面11Sに記録された意図した画像を表示できる。
【0087】
図8は、カラー表示体の傾きと、反射率との関係を示すグラフである。
【0088】
図9は、カラー表示体の傾きと、反射率との関係を示すグラフである。
【0089】
図8および
図9には、
図7と同様、カラー表示体10が反射した反射光RLの波長と、反射率との関係を示している。
図8および
図9の両方において、カラー表示体10の位置を基準位置に対して20°から向けたときのスペクトルSP
1が実線で示され、30°傾けたときのスペクトルSP
2が破線で示され、40°傾けたときのスペクトルSP
3が一点鎖線で示されている。なお、カラー表示体10を水平面に位置させた場合のカラー表示体10の位置が、基準位置である。また、
図8は、縦向きに配置されたカラー表示体10によって得られるスペクトルである。一方で、
図9は、横向きに配置されたカラー表示体10によって得られるスペクトルである。
【0090】
図8に示されるように、縦向きに配置されたカラー表示体10では、カラー表示体10が基準位置に対して20°傾けられたスペクトルSP
1と、基準位置に対して40°傾けられたスペクトルSP
3との間において、ピークにおける波長の差が50nm未満である。
【0091】
一方で、
図9に示されるように、凹凸面11Sが横向きであるカラー表示体10では、カラー表示体10が基準位置に対して20°傾けられたスペクトルSP
1と、基準位置に対して40°傾けられた場スペクトルSP
3との間において、ピークにおける波長の差が、50nm以上100nm未満である。
【0092】
このように、カラー表示体10が基準位置に対して傾けられた場合に、カラー表示体10が反射する反射光RLの色における変化を抑えるうえでは、カラー表示体10は、観察者OBに対して、凹凸面11Sを縦向きにできる。言い換えれば、カラー表示体10は、観察者OBに、凹凸面11Sが縦向きである場合に、凹凸面11Sに記録された意図した画像を表示できるように構成できる。
【0093】
なお、カラー表示体10の反射光RLは、1次回折光を含むことができる。1次回折光は、凸面S1Aが延びる方向と直交し、かつ、カラー表示体10が広がる平面に直交する平面に反射される。そのため、カラー表示体10が、観察者OBに対して、凹凸面11S1が横向きである場合には、観察者OBは、カラー表示体10が反射した1次回折光を視認できる。また、観察者OBは、自身が視認した1次回折光を、0次回折光、すなわち、導波モード共鳴による反射光RLであると誤認する可能性がある。カラー表示体10が、観察者OBに対して、凹凸面11S1が縦向きである場合には、観察者OBが1次回折光を0次回折光であると誤認する可能性を低くすることもできる。
【0094】
(カラー表示体の作用)
図10から
図16を参照して、カラー表示体10の作用を説明する。
【0095】
図10は、第1実施形態のカラー表示体における凹凸面を含む領域を説明するための模式図である。
【0096】
図10に示されるように、エンボス層11の表面11Sにおける一部に周期構造となる凹凸面11S1を含む領域Aでモチーフ20を構成する。上述の通り、周期によって反射する光の色を制御できるため、構成するモチーフ20はカラー表示が可能となり、領域Aに含まれる周期構造を、複数の周期で構成すると、色彩豊かなモチーフ20を表示できる。さらに、凹凸面11S1の凸面と凹面が隣接する凹凸面の高さでも変化量は少ないが色彩を変化させることが可能であり、領域Aに含まれる凹凸面11S1の凹凸情報、または異なる領域Aに含まれる凹凸面11S1の凹凸情報によって自由度の高い色彩豊かなモチーフ20を表示できるので、意匠性の高いカラー表示体10を提供できる。
【0097】
また、先の説明の通り、凹凸面11Sが縦向きである場合には、モチーフ20を視認する場合、観察者OBが1次回折光を0次回折光であると誤認する可能性を低くすることができる。
【0098】
【0099】
図11では、領域Aがより詳しく説明され、
図11(a)における領域Aは、短冊状の長手方向と短手方向が存在し、長手方向に凹凸面11Sが縦向きで配置される。これは周期構造から生じる伝播光LGの多重反射する回数を多くするためであり、回数が多ければエバネッセント光LEの増強、ならびに0次回折光の反射率が向上し、観察者OBに視認性の高いカラー表示体10を提供できる。短手方向はモチーフの画素に直結し、精細なモチーフを再現するには観察者によって解像されない寸法が好ましく、少なくとも100μm以下、より好ましくは60μmとできる。また、長手方向はエバネッセント光LEを増強するため、短手方向より寸法が大きい方が好ましく、少なくとも寸法比率が2倍以上あると0次回折光の反射率の上昇が確認され、画素として利用するうえでモチーフ形成の自由度を考慮し30倍以下とできる。
【0100】
また、領域Aの長手方向と直交方向となる短手方向は相互に離間しており、離間する領域11S2はエンボス層11の表面11Sとすることも、別の要素を含めることもできる。例えば、領域11S2を、着色インキを含む領域とすると、領域Aでは0次回折光が特定角度でしか観察できない。一方、領域11S2は角度依存なく観察できるため、角度によってモチーフ20の色彩変化や、モチーフ自体の変化が可能となり、その変化を真贋の判定基準とできる。
【0101】
領域11S2の一例として着色インキを挙げたが、着色インキだけでなく、領域Aで構成する凹凸面11S1の周期構造と異なる周期構造や、周期性を持たない散乱構造、他にも液晶材料や磁性顔料といった、光学的に可変な要素を含むこともできる。
【0102】
また、
図11(b)のように、領域Aで構成する凹凸面11S1の周期が同一である場合、長手方向の端辺が相互に接続でき、この接続によって、周期構造から生じる伝播光LGの多重反射回数をより多くすることができ、エバネッセント光LEの増強、ならびに0次回折光の反射率が向上し、観察者に視認性の高いカラー表示体10を提供できる。
【0103】
領域Aの長手方向同士は少なくとも20μm以上、より好ましくは50μm以上の端辺が相互に接続していると、伝播光LGの多重反射の妨げにならずエバネッセント光LEの増強が見込める。また、上記値を満たす場合、
図11(b)のように各領域Aの長軸の並ぶ位置がわずかにずれていても本発明の実施形態の効果を得られる。このずれは端辺の長さの50%以内とできる。これにより、十分にエバネッセント光LEの増強が見込める。さらに10%以下としてもよい。これによりエバネッセント光LEの増強はズレがない状態とそん色ない程度とできる。
【0104】
領域Aの長手方向の輪郭線は直線、曲線、またはその組み合わせとできる。領域Aの短手方向の輪郭線は直線、曲線、またはその組み合わせとできる。領域Aの輪郭形状は、長方形、角が丸い長方形、8角形とできる。また、領域Aの長手方向の輪郭線を曲線とし、域Aの短手方向の輪郭線を直線とできる。領域Aは画素に直結するため、領域Aと領域11S2の境界を強調させることや、反対に強調させず曖昧な境界を持たせることは表示するモチーフの自由度を高めることになる。領域11S2の境界部となる領域Aの輪郭線を直線にすることで境界を強調させることができるのに対し、領域11S2の境界部となる領域Aの輪郭線を曲線とすることで境界を強調させないこともできる。この曲線は、半円、半楕円、自由曲線とできる。また曲線の曲率半径は一定または可変とできる。曲率半径は、端辺の長さより短く、端辺の長さの1%以下とできる。
【0105】
また、領域Aの短手方向は全てが同じ寸法ではなくてもよく、端辺の寸法を、それ以外の寸法より短くできる。また、相互に接続する部分に近づくにつれて短手方向の寸法を短くできる。
【0106】
このように、領域Aの中で短手方向の寸法を変更することにより、モチーフの領域Aの中で発現する0次回折光の反射スペクトルを変化させることができる。そのため、領域Aの中でも、波長が同じであっても、反射率によって彩度が変化するため、豊かな色表現とできる。
【0107】
更に、カラー表示体10において、領域Aに配置される凹凸面11S1の周期構造の複数の周期の最小公倍数を被除数とし、複数の周期の最大公約数を除数として得られる値の整数倍を、領域Aの長手方向の寸法とできる。
【0108】
これまでに説明した通り、凹凸面11S1の周期構造の回折波が、最終的に0次回折光として射出されるため、領域Aに凹凸面11S1の周期構造を配置する際、長手方向の寸法によって、端部の周期がずれてしまい、結果的に0次回折光の強度低下をもたらす。しかしながら、上記寸法の制約をとることによって、利用する複数の周期すべてで、領域Aでの周期ずれは発生せず、強度低下のない視認性の高いカラー表示体10を提供できる。
【0109】
上記構成によれば、接続する領域A同士が構成する凹凸面11Sの周期がそれぞれ異なっていても、接続する部分で周期のずれが生じることなく、強度低下のないカラー表示体10を提供できる。
【0110】
図12は、領域内に含まれる凹凸面の向きについて説明するための模式図である。
【0111】
図12には、領域Aに凹凸面11S1の周期構造が配置されたときの模式的な図が示されている。
【0112】
これまで説明した通り、カラー表示体10は、領域Aの長軸方向に凹凸面11S1の周期構造が縦方向に並ぶように配置できる。
図12(a)は、
図6(a)同様に、凹凸面11S1の方位角が90°に配置され、
図12(b)は、凹凸面11S1の方位角が、45°に配置される。伝播光LGの強度を高めるためには、導波路内を長くする必要があり、短いと伝播光LGの強度が低くなる。
図12(a)の断面SLa1、断面SLa2、および断面SLa3の導波路内は同じ長さを有し、
図12(a)は、どの断面SLaをみても導波路内が同じ長さになる。
【0113】
一方、
図12(b)の断面SLb1、断面SLb2、および断面SLb3の導波路内の長さは全て異なり、
図11(b)は見る断面によって導波路内の長さが異なり、伝播光LGの強度が低くなる。よって、伝播光LGの強度を高めるために、凹凸面11S1の方位角を、90°もしくは0°に配置することが好ましい。また、上述の通り、凹凸面11S1の方位角を0°に配置すると、1次回折光が含まれる場合があるため、凹凸面11S1の方位角を90°に配置するのがより好ましい。
【0114】
図13は、カラー表示体の領域について説明するための模式図である。
【0115】
図13によれば、カラー表示体10を用いて本開示の効果が模式的に説明され、特に、
図13(a)では、カラー表示体10にあるモチーフ25が領域Aで構成されており、領域Aは短冊状の長手方向と短手方向が存在し、長手方向に凹凸面11S1が縦向きで配置される。また、短手方向を寸法Sとし、寸法Sだけ離間している。離間する領域11S2は、領域Aの0次回折光と異なる角度に反射する凹凸面11S1で構成される。一方、
図13(b)は、寸法Sの正方格子状に領域を区分し、凹凸面11S1と、離間する領域11S2とがそれぞれ交互に配置しモチーフ25を構成する。なお、
図13(a)と
図13(b)で利用する領域Aと、離間する領域11S2との表面積は等しいとする。
【0116】
図14は、カラー表示体の領域の配置と、反射率との関係を示すグラフである。
【0117】
図14には、
図13で説明したカラー表示体10のモチーフ25に対する導波モード共鳴による0次回折光の反射率と波長との関係が示される。
図14は、エンボス層11の凹凸面11S1に300nm周期の正弦波曲線構造を利用し、凸面と凹面が隣接する凹凸面の高さを110nmで形成し、高屈折率層12を屈折率1.95のTiO
2で構成し、エンボス層11、保護層13の屈折率を1.45にしたカラー表示体10を作製し、分光反射スペクトルを測定した結果である。
図14において、実線で示されるスペクトルSP
4は、
図13(a)で説明したカラー表示体10のものに対応し、破線で示されるスペクトルSP
5は、
図13(b)で説明したカラー表示体10のものに対応する。それぞれの0次回折光の反射率を比べると、表面積が同じであっても
図13(a)のカラー表示体10の反射率が高く、
図13(b)のカラー表示体10より約30%の反射率向上が確認できる。
【0118】
これまでの説明の通り、
図13(a)のカラー表示体10は、
図13(b)のカラー表示体10よりも、周期構造から生じる伝播光LGの多重反射の回数を、より増加させることができ、エバネッセント光LEの増強、ならびに0次回折光の反射率の向上が達成される。0次回折光の反射率が高くなると、観察者OBの視認性が高まり、真贋判定の容易性も高まる。
【0119】
領域Aの短手方向の寸法Sは、モチーフ25を構成する解像度になるため、カラー表示体10を観察する際、認識されない寸法が好ましく、少なくとも100μm以下、より好ましくは60μm以下とできる。
【0120】
図15は、観察者がカラー表示体を観察する状態を模式的に示す模式図である。
【0121】
図15に示されるように、観察者OBがカラー表示体10を観察する際には、観察者OBは、領域Aで生成する導波モード共鳴によって反射された0次回折光を、正反射の方向において観察できる。光源LSからの入射光ILの入射角αは、反射光RLである0次回折光の反射角βと互いに等しい。反射光RLが有する波長は、可視光の範囲に含まれ、これによって、カラー表示体10は、有彩色の像を表示できる。
【0122】
図16は、カラー表示体の効果の一例を示す模式図である。
【0123】
図16には、領域Aおよび着色インキを含む領域11S2が存在するカラー表示体10の効果の一例が示される。領域Aでは、0次回折光が角度βで観察できるのに対し、領域11S2は、角度依存なく観察できるため、観察角度によってモチーフ28の外観を変化させることができる。例えば、入射光ILが入射角αで入射すると、反射角βと異なる角度で観察した際のカラー表示体10に表示されるモチーフ28は、
図16(a)となるのに対し、反射角βの角度で観察した際のモチーフ29は、
図16(b)のようにできる。それぞれの領域特性を活かし、領域11S2で表示するモチーフ28に、領域Aの要素を組み合わせて、新たなモチーフ29を表示できる。これは、観察角度を変えることでモチーフの変化を観察者OBに認識させることができるため、モチーフの変化を、真贋判定の基準とできる。また、領域の組み合わせに限らず、例えば、領域11S2を、領域Aと異なる角度に反射させる凹凸面11S1を構成すれば、観察角度によって全く異なるモチーフを表示できる。
【0124】
(真贋の判定方法)
図15を用いて説明した通り、観察者OBがカラー表示体10を観察する際には、観察者OBは、導波モード共鳴によって反射された0次回折光を、正反射の方向において観察できる。これを観察者OBの視点から言い換えると、観察者OBがカラー表示体10を観察すると、正反射の方向で有彩色の反射光が出現し、正反射の方向と異なる方向で有彩色の反射光が消失すると言えるため、これを、カラー表示体10の真贋の判定方法として利用できる。
【0125】
一方、1次回折光の反射光は、様々な方向に分光して反射されるため、観察者OBが観察方向を変えると色遷移を視認可能となる。しかし、観察者OBがどの方向で、どの色だと真正であるかなどは判断できない。このため、真贋の判定に、0次回折光を利用できる。また、上述の通り、凹凸面11S1の方位角を90°に配置することで、凹凸面11S1の1次回折光を観察者OBへ視認させないようにすることは、意匠の他、真贋の判定方法としても効果的である。
【0126】
(カラー表示体の製造方法)
図17を参照して、カラー表示体10の製造方法を説明する。
【0127】
図17は、カラー表示体を製造する際の手順を説明するためのフローチャートである。
【0128】
図17に示されるように、カラー表示体10の製造方法は、スタンパーを作成する原版作成工程(ステップS11)、エンボス層11を形成する第1層形成工程(ステップS12)、高屈折率層12を形成する第2層形成工程(ステップS13)、および、保護層13を形成する第3層形成工程(ステップS14)を含む。
【0129】
スタンパーを作成する原版作成工程では、まず、電子線描画を適用したリソグラフィで原版を作成する。原版を作成する際には、ポジ型のレジスト材料を準備する。次いで、レジスト材料によってレジスト層を形成する。そして、エンボス層11の表面11Sが有する形状に応じてレジスト層に電子線を照射する。レジスト層はポジ型のレジストによって形成されているため、レジスト層のなかで、現像後にレジスト層から除去したい部分に電子線を照射する。ポジ型のレジスト材料を適用した場合には、電子線が照射された部分が、現像後のレジスト層から除去される。
【0130】
さらに、形成した原版から電鋳により、原版が有する凹凸形状をエンボス層11に転写するためのスタンパーを作製する。そして、エンボス層11を形成するための樹脂層に、スタンパーが有する凹凸形状を転写することによって、エンボス層11を形成する。
【0131】
エンボス層11を形成する第1層形成工程では、まず、エンボス層11を形成するための合成樹脂を準備する。エンボス層11を形成するための合成樹脂は、熱可塑樹脂、熱硬化樹脂、光硬化樹脂とできる。合成樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂である。そして、エンボス層11を形成するための合成樹脂を含む塗膜を塗布した後に、塗膜に対して、転写版が有する凹凸形状を転写することによって、エンボス層11とできる。
【0132】
高屈折率層12を形成する第2層形成工程では、まず、エンボス層11の表面11Sを覆うように高屈折率層12を形成する。高屈折率層12を形成するための誘電体は、金属化合物、および、酸化ケイ素などとできる。金属化合物は、金属酸化物、金属硫化物、および、フッ化金属とできる。金属化合物は、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ(NbO2)、および、硫化亜鉛とできる。
【0133】
金属酸化物が有する酸化度を、第1の値から第2の値に変えることによって、金属酸化物が有する屈折率を、第1の値から第2の値に変えることができる。金属酸化物のなかでも、酸化チタンは、高い屈折率を有するため、高屈折率層12の形成材料に適している。なお、酸化チタンの屈折率を第1の値から第2の値に変える場合には、酸化チタンの体積密度を第1の値から第2の値に変えることでできる。一般に、高屈折率層12を形成する酸化チタンの体積密度が高いほど、高屈折率層12の屈折率は高い。
【0134】
高屈折率層12は、堆積法を適用して形成できる。高屈折率層12を形成する堆積法は、化学体積法、または物理堆積法とできる。物理堆積法は、例えば、スパッタ法、および、真空蒸着法とできる。
【0135】
保護層13を形成する第3層形成工程では、まず、保護層13を形成するための合成樹脂を準備する。保護層13を形成するための合成樹脂は、エンボス層11の形成に適用可能な合成樹脂とできる。保護層13を形成するための合成樹脂を含む塗膜を調製した後に、高屈折率層12を覆うように高屈折率層12に対して塗膜を塗布する。次いで、塗膜を硬化させることによって、保護層13を有したカラー表示体10を得ることができる。
【0136】
以上説明したように、カラー表示体、認証媒体、および、カラー表示体の真贋判定方法の第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0137】
(1)エンボス層11と高屈折率層12と保護層13とが順に積層する構成において、エンボス層11の表面11Sに凹凸面11Sが存在するとき、カラー表示体10に入射した光は、導波条件を満たす波長成分が反射する。
【0138】
(2)凹凸面11Sの周期dによって導波する波長を制御することができ、カラー表示体10の凹凸面11Sの周期dが、それぞれ異なる周期を含むことで、r、g、bの色の表示を可能とし、フルカラーで意匠性の高いカラー表示体10を実現できる。
【0139】
(3)光源LSがカラー表示体10に入射すると、高屈折率層12にて回折された光の一部が導波条件を満たす波長で、高屈折率層12を伝播する伝播光LGが生じ、導波路内の長さを存分に満たすことで、伝播する光の多重反射する光の位相が揃い、励起され、伝播光LGが高められる。これによって、領域Aで反射する光の強度を高め、視認性の高いカラー表示体10を提供できる。
【0140】
(4)領域Aに配置される周期構造の周期が並ぶ方向が、領域Aの長軸方向となることで、伝播光LGの強度が高められ、輝度の高いカラー表示体10を提供できる。
【0141】
(5)カラー表示体10は、導波モード共鳴によって反射された0次回折光を正反射の方向において観察者OBが観察でき、正反射の方向と異なる方向で視認できなくなるため、真贋の判定方法として利用できる。
【0142】
[第2実施形態]
図面を参照して、カラー表示体、認証媒体、およびカラー表示体の真贋判定方法の第2実施形態を説明する。第2実施形態のカラー表示体は、第1実施形態のカラー表示体10で表示するモチーフ25の表示領域において、モチーフ25を構成する領域Aと異なる領域Bが存在する点で、第1実施形態のカラー表示体10と異なる。そのため、以下では、第2実施形態のカラー表示体における第1実施形態のカラー表示体10との相違点を詳しく説明する。一方で、第2実施形態のカラー表示体において、第1実施形態のカラー表示体10と共通する構成には、第1実施形態のカラー表示体10と同一の符号を付し、当該構成の詳しい説明を省略する。また、以下では、カラー表示体の構成、カラー表示体の真贋の判定方法を順に説明する。
【0143】
(カラー表示体の構成)
図18から
図26を参照して、第2実施形態のカラー表示体の構成を説明する。
【0144】
図18は、第2実施形態のカラー表示体における凹凸面を含む領域を説明するための模式図である。
【0145】
図18のカラー表示体20は、
図13(a)のカラー表示体10が表示するモチーフ25が構成される表示領域に、モチーフ25を構成する領域と異なる領域Bが含まれたモチーフ35が形成されている。領域Bは少なくとも領域Aの長手方向もしくは短手方向へ交互に配置し、領域Aより小さい寸法で構成される。
【0146】
領域Bには複数の周期が混在する混在周期構造11S3が配置され、周期構造による回折光を生じる。この構成の場合、領域Aの導波モード共鳴の効果と異なり、単純な回折光が表示面に射出できるため、伝播光LGの多重反射を考慮することなく設計でき、結果的に領域Aの寸法より小さくても存分な効果を得ることができる。また、領域Aの0次回折光と異なる角度へ射出できるため、領域Aで構成されるモチーフ35とは異なる外観を有した異なるモチーフを形成できる。
【0147】
カラー表示体20の表示領域には、領域Aと領域Bの他に、離間する領域11S2を含めことができ、さらには、カラー表示体10で説明した要素を含めることができる。
【0148】
領域Bに配置される複数の周期が混在する混在周期構造11S3は、堆積された高屈折率層12の混在周期構成との干渉により1次回折光として射出できる。また、回折光を強く射出するには1次回折光の設計が最も容易であるため、1次回折光とできる。
【0149】
1次回折光を利用する場合には、以下の式(10)に基づき設定できる。
【0150】
mλ = d(sinγ+sinΔ) … 式(10)
なお、式(10)において、dは周期構造の周期であり、λは周期構造において反射される光の波長であり、γは入射する入射光の入射角度であり、Δは周期構造において回折される光の回折角である。
【0151】
周期構造が、同一の周期dを有する場合には、反射する1次回折光は分光される。結果として、領域Bが観察者OBによって観察された場合には、観察者OBは、周期構造が表示する虹色を有した画像を視認できる。特に、周期dが、500nm以上、20000nm以下である場合に、周期構造は顕著な虹色を呈する。
【0152】
一方で、以下のように設計されることによって、無彩色の光も反射できる。まず、上述した式(10)を適用して算出される周期dを、基準周期drに設定する。次いで、基準周期drに対する正の方向、すなわち基準周期drよりも大きい範囲において、複数の周期dを離散的に設定し、かつ、基準周期drに対する負の方向、すなわち基準周期drよりも小さい範囲において、複数の周期dを離散的に設定する。こうして設定された複数の周期dの各々に対応する周期構造を設計する。
【0153】
この構成によれば、複数の波長の光が混合されるため、特定の角度で無彩色、すなわち白色光により形成される領域Bが視認される。
【0154】
なお、上述した複数の周期dを設計する場合には、比視感度が高い波長の光の反射可能な周期dを、基準周期drに設定できる。比視感度が高い波長の光は、例えば540nm以上、560nm以下の範囲に含まれる波長を有した緑色光である。この場合には、比視感度が高い緑色光と、緑色光に準じた比視感度を有する光とが、混在周期構造11S3が反射する光に含まれる。そのため、混在周期構造11S3が表示する領域Bが、容易に視認される。また、混在周期構造11S3が反射する光が、緑色光を基準として、より長い波長を有した赤色光と、より短い波長を有した青色光とを含むことができる。これにより、混在周期構造11S3が反射する光を、容易に、無彩色の光とできる。
【0155】
混在周期構造11S3において、基準周期drを有した多段面S2Aの密度が最も高く、かつ、基準周期drからのずれ量が大きい周期dを有した周期構造ほど、混在周期構造11S3における密度を小さくできる。これにより、上述した特定の観察位置以外の観察位置に反射される1次回折光の強度を低くできる。
【0156】
無彩色の光を反射することが可能な混在周期構造11S3は、以下の式(11)から式(13)を満たすことが好ましい。ただし、以下の式(11)において、r値は、回折角度θが有する範囲θR’に寄与するパラメーターである。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
図19は、混在周期構造の配置密度と回折角度との関係を示すグラフである。
【0161】
図19では、上記式(11)から式(13)を満たす曲線が示される。
図19に示されるように、上記式(11)から式(13)において、θ
R’は回折角度θの範囲である。θ’は離散間隔、すなわち、ある周期構造における1次回折光の回折角度θと、その周期構造の次に大きい周期dまたは小さい周期dを有した周期構造における1次回折光の回折角度θとの差である。θ
n’は離散角、すなわち、ある周期構造における1次回折光の回折角度θと、基準周期drを有した周期構造における1次回折光の回折角度θとの差である。ρ
n’は、特定の離散角θ
n’を有した周期構造が全ての混在周期構造11S3に占める密度である。r値は、回折角度θが有する範囲θ
R’に寄与するパラメーターである。r値は、混在周期構造11S3が反射する光が無彩色であることを実現する上で重要なパラメーターであり、221以下とできる。
【0162】
式(11)から式(13)を満たす混在周期構造11S3では、周期構造の1次回折角度が、基準周期drに対応する0°を基準として、各多段面S2Aにおける回折角度θである離散角θn’が、離散間隔θ’ずつ変化する。そして、混在周期構造11S3において、基準周期drを有した周期構造の密度が極大値を有し、かつ、周期構造が有する離散角θn’が大きくなるほど、その周期構造の密度が小さくなる。
【0163】
このように、式(11)から式(13)を満たす混在周期構造11S3は、周期構造の周期dに複数の値を含む。そのため、混在周期構造11S3が周期dに1つの値のみを含む周期構造に比べて、混在周期構造11S3の偽造や、混在周期構造11S3を含むカラー表示体20の偽造が困難である。
【0164】
また、混在周期構造11S3をブレーズド回折格子構造とすることで、回折光が、プラスもしくはマイナス方向に集光するため、カラー表示体20の表現したいモチーフによって選択的に利用できる。一般的な回折格子は、式(10)を満たす回折角度へしか反射しないが、式(11)から式(13)を満たす混在周期構造11S3は、複数の周期と密度の関係により、反射角度を制御できる。また、回折格子の他にも反射角度を制御する構造として、指向性を有する散乱構造が一般的に利用される。しかし、これは、反射の方位方向を制御できるが、仰角方向を制御できないため、式(11)から式(13)を満たす混在周期構造11S3のような光学効果の実現は不可能である。
【0165】
図20は、r値が互いに異なる9つのカラー表示体における反射光スペクトルを示す図であり、横軸が受光角度、縦軸が受光強度を示す。
【0166】
図20には、540nmの波長を有した光が、0°、すなわち真上から入射した場合に、25°に1次回折する混在周期構造11S3を基準としたカラー表示体20によって得られたスペクトルS1~S9が示される。また、r値は、255、238、221、204、187、170、153、136および、119のいずれかに設定される。
【0167】
図20に示されるように、r値を255に設定した場合にスペクトルS1が得られ、r値を238に設定した場合にスペクトルS2が得られ、r値を221に設定した場合にスペクトルS3が得られる。また、r値を204に設定した場合にスペクトルS4が得られ、r値を187に設定した場合にスペクトルS5が得られ、r値を170に設定した場合にスペクトルS6が得られる。また、r値を153に設定した場合にスペクトルS7が得られ、r値を136に設定した場合にスペクトルS8が得られ、r値を119に設定した場合にスペクトルS9が得られる。
【0168】
スペクトルS1~S9から明らかなように、r値を小さくするほど、カラー表示体20から反射される光の受光角度、言い換えれば1次回折角の範囲が広がる。一方、r値を大きくするほど、25°において受光される光の強度、すなわち25°に反射される1次回折光の強度が高くなる。
【0169】
図21は、xy色度図における9つのカラー表示体が反射した光の色を示す図である。
【0170】
図21に示されるように、スペクトルS1を有する反射光、および、スペクトルS2を有する反射光は、緑色を有する。これに対して、スペクトルS3~S9のいずれかを有する反射光は、白色を有する。そのため、上記式(8)におけるr値は、221以下とできる。また、r値を、204以上、221以下の範囲とできる。これにより、反射光における強度の低下を抑えることができる。
【0171】
なお、
図21において、破線で囲まれる領域が、白色点WP(x=0.33,y=0.33)を示す白色の領域である。
【0172】
本実施形態における混在周期構造11S3は、上記式(11)から式(13)を満たすことによって、無彩色の第2のモチーフを表示するように構成される。そのため、領域Aによって構成されるモチーフを有彩画像、領域Bで構成されるモチーフを無彩画像とでき、観察角度によって変化するモチーフの誘目性を高めることができる。
【0173】
有彩画像は、有彩色を利用した画像である。有彩画像は、色相の違いを利用した画像とできる。有彩画像は、色差が、CIE1976による色彩値L*a*b*のうち、明度L*以外のa*b*での色差ΔE*ab=√(Δa*)^2+(Δb*)^2)が互いに5以上である2つの領域を有することができる。この時、色彩値L*a*b*を、直径3mmの範囲での色彩値L*a*b*とできる。
【0174】
無彩画像は、無彩彩色また淡色を利用した画像である。無彩画像は、濃淡の階調を有したグレースケール画像とできる。無彩画像は、無色または単色とできる。有彩画像では、画像が有する彩度が高いほど、2つの領域における色差が同じであっても色の多様性を向上できる。これにより、有彩画像を、複雑な(intricate)柄の外観とできる。また、画像が有する彩度が高いほど、有彩画像の外的美観を向上できる。
【0175】
混在周期構造11S3は領域B内において、周期の並ぶ周期方向を同一に設定し、かつ複数の領域Bでは、周期方向が異なっていても良い。上記で説明した無彩色の光は、周期方向によって、観察者に、異なる強度を持った光として認識され、複数の方向を有した領域Bによって構成されるモチーフは、階調を有したグレースケール画像として形成できる。
【0176】
【0177】
図22を用いて、領域Aと領域Bとの関係を説明する。
図22(a)が示すカラー表示体30では、カラー表示体30が広がる平面と対向する方向から見て、領域Aは、表面11Sの中央部を含む位置に配置される。また、領域Bは、領域Aと同様、表面11Sの中央部を含む位置に配置される。なお、本実施形態では、領域Aで構成する外形が太陽を示す形状を有する一方で、領域Bの外形がハートを示す形状を有する。しかしながら、領域Aの外形、および、領域Bの外形は、これらの形状以外の形状とできる。カラー表示体30が広がる平面と対向する方向から見て、領域Aが区画する領域は、領域Bの外形が区画する領域と重なる。ただし、カラー表示体30が広がる平面と対向する方向から見て、領域Aと、領域Bとは互いに重ならない。
【0178】
なお、
図22(b)が示すように、カラー表示体30が広がる平面と対向する方向から見て、領域Aは、領域Bに重ならない場合がある。
【0179】
図23は、観察角度における第1の範囲と第2の範囲との関係を示す模式図である。
【0180】
図23に示されるように、カラー表示体30が位置する平面と、カラー表示体30を観察する観察者OBの視線方向DOBを含む平面とが形成する角度が、観察角度θOBである。領域Aは、観察角度θOBにおける範囲θOB1にて観察される第1のモチーフを表示する。領域Bは、観察角度θOBにおける範囲θOB2にて観察される第2のモチーフを表示する。
【0181】
範囲θOB1は、範囲θOB2が含む観察角度θOB以外の観察角度を含み、範囲θOB2は、範囲θOB1が含む観察角度θOB以外の観察角度を含む。
【0182】
これにより、カラー表示体30の観察角度θOBには、第1のモチーフのみが表示される観察角度θOBと、第2のモチーフのみが表示される観察角度θOBとが含まれる。そのため、特定の観察角度θOBにおいて、観察者OBは、各画像を他の画像によって妨げられることなく視認できる。
【0183】
本実施形態では、範囲θOB2は、観察角度θOBにおいて範囲θOB1とは異なる。また、カラー表示体30は、観察角度θOBにおける範囲θOB3(図示せず)において、第1のモチーフおよび第2のモチーフの両方を表示しない。範囲θOB3は、範囲θOB1と範囲θOB2との間の観察角度θOBを含む。
【0184】
領域Aは、光源LSからの光を、正反射の方向に反射するため、範囲θOB1は、正反射の方向を含む。領域Bが光を反射する観察角度θOBは、混在周期構造11S3が有する周期構造の周期dと、周期が並ぶ方向とによって決まる。
【0185】
なお、本実施形態では、範囲θOB2は、範囲θOB1とは異なる範囲であるが、範囲θOB2は、範囲θOB1の一部と、範囲θOB1とは異なる範囲を含むことができる。また、観察角度θOBに、図示しない範囲θOB3が設定される場合には、範囲θOB3は、上述した範囲θOB1と範囲θOB2との間の観察角度θOBに加えて、以下の範囲を含むことができる。すなわち、範囲θOB3は、カラー表示体30が広がる平面と、範囲θOB2との間の範囲であって、かつ、範囲θOB1を含まない範囲を含むことができる。あるいは、範囲θOB3は、カラー表示体30が広がる平面と、範囲θOB1との間の範囲であって、かつ、範囲θOB2を含まない範囲を含むことができる。
【0186】
(カラー表示体の作用)
図24から
図26を参照して、カラー表示体30の作用を説明する。なお、以下では、カラー表示体30が認証媒体に適用された場合の作用を説明する。
【0187】
図24は、観察者がカラー表示体を観察している状態を示す模式図である。
【0188】
図24に示されるように、認証媒体40の観察者OBは、認証媒体40を自身の手に把持した状態で認証媒体40を観察できる。
図24に示される例では、観察者OBは、水平方向に沿う基準面Ph1に対して、角度θ1だけ認証媒体40を傾けた状態で、認証媒体40を観察する。または、観察者OBは、基準面Ph1に対して、角度θ2だけ認証媒体70を傾けた状態で、認証媒体40を観察する。または、観察者OBは、基準面Ph1に対して、角度θ3だけ認証媒体40を傾けた状態で、認証媒体40を観察する。角度θ1は角度θ2よりも大きく、角度θ2は角度よりも大きい。
【0189】
図25は、カラー表示体を備える認証媒体が表示する画像を示す平面図である。
【0190】
図25では、認証媒体40の傾きに応じて観察者OBによって視認される認証媒体40の状態が示される。
【0191】
図25(a)に示す例では、認証媒体40は、カラー表示体30と、カラー表示体30を支持する支持体31とを備える。本実施形態では、認証媒体40は、支持体31に支持された情報記録媒体32をさらに備える。支持体31は、例えば合成樹脂製のシートである。支持体31には、各種の情報を記録できる。各種の情報は、例えば、認証媒体40の種類、認証媒体40の所有者の生体情報、非生体情報、および、その双方の情報とできる。生体情報の実例は、所有者の顔写真、所有者の自署、および、所有者の指紋とできる。非生体情報の実例は、所有者の名前、所有者の国籍、所有者の生年月日、所有者の国籍コード、所有者コードとできる。情報記録媒体32は、例えばICチップとできる。なお、認証媒体40は、情報記録媒体32を有していなくてもよい。
【0192】
認証媒体40は、観察者OBの観察位置OPに対して、領域Aが第1のモチーフを表示せず、かつ、領域Bが第2のモチーフを表示しない状態を有する。上述したように、本実施形態では、観察角度θOBが、図示しない範囲θOB3である場合に、認証媒体40は、第1のモチーフおよび第2のモチーフの両方を表示しない。すなわち、観察者OBが、認証媒体40を角度θ2で傾けた場合に、認証媒体40は、第1のモチーフおよび第2のモチーフの両方を表示しない。
【0193】
認証媒体40が第1のモチーフおよび第2のモチーフを表示しない状態では、支持体31に記録された情報が、観察者OBによって容易に視認される。このように、カラー表示体30が、観察角度θOBにおける図示しない範囲θOB3内において観察者OBに観察されることによって、カラー表示体30が表示する第1のモチーフおよび第2のモチーフ以外のカラー表示体30の状態が、観察者によって容易に把握される。
【0194】
一方、
図25(b)に示す例では、認証媒体40は、観察者OBの観察位置OPに対して、領域Aが第1のモチーフPIC1(以下、単に「モチーフPIC1」と称する)を表示する一方で、領域Bが第2のモチーフを表示しない状態を有する。上述したように、本実施形態では、観察角度θOBが範囲θOB1である場合に、認証媒体40は、モチーフPIC1を表示する一方で、第2のモチーフを表示しない。すなわち、観察者OBが、認証媒体40を角度θ1で傾けた場合に、認証媒体40は、モチーフPIC1を表示し、第2のモチーフを表示しない。
【0195】
さらに、
図25(c)が示す例では、認証媒体40は、観察者OBの観察位置OPに対して、領域AがモチーフPIC1を表示しない一方で、領域Bが第2のモチーフPIC2(以下、単に「モチーフPIC2」と称する)を表示する状態を有する。上述したように、本実施形態では、観察角度θOBが範囲θOB2内にある場合に、認証媒体40は、モチーフPIC1を表示しない一方で、モチーフPIC2を表示する。すなわち、観察者OBが、認証媒体40を角度θ3で傾けた場合に、認証媒体40は、モチーフPIC1を表示せず、モチーフPIC2を表示する。
【0196】
図26は、カラー表示体における第1の位置と第2の位置とを説明するための図である。
【0197】
図26は、観察者OBの観察位置OP、および、図示されない光源の位置を固定した状態で、回転軸Zを中心にカラー表示体30を回転させる状態を示す。
【0198】
図26(a)に示されるように、カラー表示体30が広がる平面の法線が、回転軸Zである。カラー表示体30は、例えば水平面に平行な面に沿って任意の位置に配置される。当該任意の位置が、カラー表示体30が有する第1の位置である。
【0199】
図26(b)に示されるように、カラー表示体30は、第1の位置とは異なる第2の位置を有する。第2の位置は、回転軸Zを中心として第1の位置から90°だけカラー表示体30を回転させた位置である。本実施形態では、第1の位置に位置するカラー表示体30を左回りに90°だけ回転させた位置が第2の位置であるが、右回りに90°だけ回転させた位置を第2の位置ともできる。
【0200】
領域Aは、カラー表示体30が第1の位置に位置するときに、観察位置OPに対して第1の色を有したモチーフPIC1を表示する。例えば、
図26(b)を参照して先に説明したモチーフPIC1が、第1の色を有したモチーフPIC1である。第1の色は、有彩色に含まれる色である。
【0201】
一方、
図26(a)に示されるように、領域Aは、カラー表示体30が第2の位置に位置するときに、観察位置OPに対して第2の色を有したモチーフPIC1を表示する。第2の色は、第1の色とは異なる。なお、第2の色も、第1の色と同様、有彩色に含まれる色である。カラー表示体30を回転させることによって、カラー表示体30において、カラー表示体30に入射する光から見た見かけ上の有効屈折率n
effが、回転前とは異なる値になる。そのため、カラー表示体30が第1の位置に位置する場合のモチーフPIC1の色と、カラー表示体30が第2の位置に位置する場合のモチーフPIC1の色とが互いに異なるように、モチーフPIC1が観察者OBによって視認される。
【0202】
領域Bは、カラー表示体30が第1の位置に位置するときに、観察位置OPに対して第1の輝度を有したモチーフPIC2を表示する。例えば、
図25(c)を参照して先に説明したモチーフPIC2が、第1の輝度を有したモチーフPIC1である。第1の輝度は、観察者OBが、カラー表示体30がモチーフPIC2を表示していることを視認できる輝度である。
【0203】
一方、
図26(b)に示されるように、領域Bは、カラー表示体30が第2の位置に位置するときに、観察位置OPに対して第2の輝度を有したモチーフPIC2を表示する。第2の輝度は、第1の輝度とは異なる。本実施例では、第2の輝度によって、観察者OBは、カラー表示体30がモチーフPIC2を表示していることを視認できる。しかし、第2の輝度は、第1の輝度よりも低い。なお、第2の輝度を、第1の輝度よりも高くすることもできる。
【0204】
カラー表示体30が回転することによって、観察者OBから見た領域Bで構成する混在周期構造11S3の周期が並ぶ向きが、回転前の向きから変わる。そのため、領域Bにおいて反射された光のうち、観察者OBが観察可能な光の割合が変わる。これにより、カラー表示体30が第1の位置に位置する場合のモチーフPIC2の輝度と、カラー表示体30が第2の位置に位置する場合のモチーフPIC2の輝度とが互いに異なるように、モチーフPIC2が観察者OBによって視認される。
【0205】
このように、カラー表示体30は、モチーフPIC1について、観察者OBに対して互いに異なる印象を与えることができる2つの状態を有することができ、また、モチーフPIC2についても、観察者OBに対して互いに異なる印象を与えることができる2つの状態を有する。
【0206】
これまでに説明した内容より、認証媒体40を観察角度および回転角度によってそれぞれのモチーフの外観を変化させることが可能となるため、観察者が真贋の判定を行う方法として容易に利用できる。
【0207】
以上説明したように、カラー表示体、認証媒体、および、カラー表示体の真贋判定方法の第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得る。
【0208】
(6)エンボス層11の表面11Sが、領域Aで構成する周期構造11S1と、領域Bで構成する混在周期構造11S3とを有するため、エンボス層11の表面11Sが周期構造11S1のみを有する場合に比べて、エンボス層11を備えるカラー表示体の偽造を困難にする。
【0209】
(7)モチーフPIC1とモチーフPIC2との両方が有彩画像の場合、および、モチーフPIC1とモチーフPIC2との両方が無彩画像の場合に比べて、カラー表示体30の誘目性が高まる。
【0210】
(8)カラー表示体30の観察角度θOBには、モチーフPIC1のみが表示される観察角度θOBと、モチーフPIC2のみが表示される観察角度θOBとが含まれる。そのため、特定の観察角度θOBにおいて、観察者OBは、各画像を他の画像によって妨げられることなく視認できる。
【0211】
(9)カラー表示体30が、観察角度θOBにおける範囲θOB3内において観察者OBに観察されることによって、カラー表示体30が表示するモチーフPIC1およびモチーフPIC2以外のカラー表示体30の状態が、観察者によって容易に把握される。
【0212】
(10)カラー表示体30は、モチーフPIC1について、観察者OBに対して互いに異なる印象を与える2つの状態を有することができ、また、モチーフPIC2についても、観察者OBに対して互いに異なる印象を与える2つの状態を有することができる。
【0213】
[第2実施形態の変形例]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように変形して実施できる。
【0214】
(混在周期構造11S3)
混在周期構造11S3は、第1の位置に位置する場合と、第2の位置に位置する場合とにおいて、互いに同一の輝度を有するモチーフPIC2を表示できる。この場合であっても、周期構造11S1が有彩色の画像を表示し、かつ、混在周期構造11S3が無彩色の画像を表示する場合には、上述に準じた効果を得ることができる。
【0215】
(観察角度)
周期構造11S1が有する第1の範囲と、混在周期構造11S3が有する第2の範囲とは、互いに同じ範囲とできる。すなわち、第1の範囲における最小値は、第2の範囲における最小値と等しく、かつ、第1の範囲における最大値は、第2の範囲における最大値と等しくできる。この場合であっても、周期構造11S1が有彩色の画像を表示し、かつ、混在周期構造11S3が無彩色の画像を表示する場合には、上述に準じた効果を得ることができる。
【0216】
[第1、第2実施形態の応用例]
これまで説明してきた第1実施形態ならびに第2実施形態について、更なる応用例について説明する。これまでは、視覚効果を中心に説明してきたが、以下では、視覚効果だけでなく、機械的な読み取り活用および真贋判定方法について説明する。カラー表示体は、観察者による視覚効果での真贋判定ももちろん可能となるが、観察者が読み取ることができない複雑な、もしくは観察者の眼で分離できない細かな情報を、機械で高解像度に読み取ることで真贋判定を行うことができる。
【0217】
カラー表示体30の表示面は、領域Aで構成される第1のモチーフのカラー画像と、領域Bで構成される第2のモチーフのグレースケール画像とを備えているため、カラーとグレースケールの何れか一方、もしくは両方とも認証コードとして記憶させることができるので、機械読み取りとして利用でき、真贋判定に利用できる。
【0218】
また、モチーフPIC1とモチーフPIC2とは、観察角度を制御できるため、観察角度によって得られるモチーフ情報を認証コードとして記録できる。この認証コードは、機械で読み取り可能であり、真正の検証に利用できる。
【0219】
更に、式(1)から(6)で説明した導波モード共鳴の効果は、周期構造を有する凹凸面11S1の凸面と凹面との間の距離である凹凸間の高さや、凸面と凹面との寸法比率、および周期によって共鳴する波長を変化させられるため、これらのうち少なくとも何れかが変化したサブ領域A1が領域Aに含まれる場合、サブ領域A1を認証コードとして記録できる。この認証コードは、機械で読み取り可能であり、真正の検証に利用できる。
【0220】
その他にも、
図26で説明したカラー表示体30のように、領域Aは観察位置によって視認できる色を変化させ、例えば、領域Aが第1の位置で青色を、第2の位置で赤色を観察できると仮定すると、少なくとも領域Aの一部が、第1の位置で赤色、第2の位置で青色となるサブ領域A2を含む場合、領域Aとサブ領域A2が混色され、第1の位置でも第2の位置でも同じ色(紫色)を表示でき、第1の位置と第2の位置とで色が変化しない領域を認証コードとして記録できる。この認証コードは、機械読み取り可能であり、真正の検証に利用できる。
【0221】
また、領域Bは、複数の周期が含まれた混在周期構造11S3を有するが局所的に1つの周期によって構成されるサブ領域B1を含む場合、無彩色となる領域Bの中に局所的に色を持つことができるため、サブ領域B1によって構成されるカラーサブ領域を、認証コードとして記録できる。この認証コードは、機械読み取り可能であり、真正の検証に利用できる。
【0222】
また、領域Bの混在周期構造11S3に含まれる複数の周期の関係が局所的に異なる領域B2が含まれる場合、反射する角度もしくは、無彩色の色彩情報を局所的に変化させられるため、サブ領域B2を、機械読み取り可能な認証コードとして記録し、真贋判定に利用できる。
【0223】
また、領域Bの混在周期構造11S3の凸面と凹面が並ぶ方向が局所的に異なるサブ領域B3が含まれる場合、無彩色のグレースケール情報を局所的に変化させられるため、サブ領域B3によって構成されるグレースケール情報が異なるサブ領域B3を、認証コードとして記録できる。この認証コードは、機械読み取り可能であり、真正の検証に利用できる。
【0224】
さらに、領域Aと領域Bとに、異なる領域Cが含まれる場合、領域Aと領域Bのそれぞれの光学効果と異なる効果を認証コードとして記録できる。この認証コードは、機械読み取り可能であり、真正の検証に利用できる。ここでの領域Cは、領域11S2とでき、その他新たに設けた領域ともできる。
【0225】
真正の検証の方法には、記録された認証コードの機械読み取りの結果を利用できる。当該検証では、機械側にて実行できる、あるいは、機械がコンピューターに接続され、コンピューターが機械から送信された機械読み取りの結果に基づき判定できる。あるいは、コンピューターが機械と検証用のサーバーとに接続され、コンピューターが機械から送信された機械読み取りの結果をサーバーに送信し、サーバーが判定の結果をコンピューターに送信できる。
【0226】
(認証コード)
機械読み取り可能な認証コードは、特に限定するものでなく、上述のモチーフ画像の他に、文字とすることも、数字および記号などとすることも、これらの組み合わせとすることもできる。あるいは1次元バーコードや2次元バーコードなどとすることもできる。
【0227】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。