IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-受電装置及び非接触給電システム 図1
  • 特許-受電装置及び非接触給電システム 図2
  • 特許-受電装置及び非接触給電システム 図3
  • 特許-受電装置及び非接触給電システム 図4
  • 特許-受電装置及び非接触給電システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】受電装置及び非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20250115BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250115BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/10 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022579363
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044972
(87)【国際公開番号】W WO2022168430
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2021018195
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋靖
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0067208(US,A1)
【文献】特開2002-320343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00-50/90
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
B60L1/00-3/12
B60L5/00-5/42
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流値が一定の電力を供給する電源から、前記電力を非接触で受電する受電部と、
前記受電部に接続され、前記受電部から供給される前記電力を制御して負荷に供給する昇降圧チョッパと、
前記昇降圧チョッパに接続され、前記昇降圧チョッパを介して前記負荷に前記電力を供給する補助電源と、
前記昇降圧チョッパを迂回して前記受電部から前記補助電源に前記電力を供給させるバイパス部と、を備え、
前記バイパス部は、前記受電部から当該バイパス部を介した前記補助電源への前記電力の供給のオン・オフを切り替える切替部を備え、
前記切替部は、所定条件を満たす場合にオンとなり前記受電部から前記バイパス部を介して前記補助電源に前記電力を供給させ、前記所定条件を満たさない場合にオフとなり前記受電部から前記バイパス部を介した前記補助電源への前記電力の供給を停止させ、
前記所定条件は、前記補助電源の電圧が第1の所定値以下である場合を含み、
前記切替部がオン及びオフのいずれの状態においても、前記受電部から前記昇降圧チョッパを介して前記負荷に前記電力が供給される、受電装置。
【請求項2】
前記所定条件は、前記昇降圧チョッパの入力電圧が第2の所定値以下である場合を含み、
前記切替部は、前記補助電源の前記電圧が前記第1の所定値以下であり、且つ、前記昇降圧チョッパの前記入力電圧が前記第2の所定値以下である場合にオンとなる、請求項に記載の受電装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記昇降圧チョッパの出力電圧が第3の所定値以上である場合を含み、
前記切替部は、前記補助電源の前記電圧が前記第1の所定値以下であると共に、前記昇降圧チョッパの前記入力電圧が前記第2の所定値以下であり、且つ、前記昇降圧チョッパの前記出力電圧が前記第3の所定値以上である場合にオンとなる、請求項に記載の受電装置。
【請求項4】
前記バイパス部は、コンパレータを含む回路である、請求項1~のいずれか一項に記載の受電装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の受電装置と、
電流値が一定である電力を前記受電装置に送電する送電装置と、を備える、非接触給電システム。
【請求項6】
前記送電装置は、軌道レールに沿って設けられている給電線を有し、
前記受電装置は、前記軌道レールを走行する走行車に設けられている、請求項に記載の非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置及び非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流を整流する整流器と、整流器の出力を平滑にする平滑用コンデンサとを有するAC/DC電源装置の突入電流防止回路であって、平滑用コンデンサに流入する電流の電流値に応じた信号を出力する信号出力手段と、信号に応じて突入電流が平滑用コンデンサに流入しないようにインピーダンスを変化させる、整流器及び平滑用コンデンサ間に挿入された可変インピーダンス手段と、を備える突入電流防止回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-32982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の装置では、可変インピーダンス手段(トランジスタ)によって流入電流を調整することにより、平滑用コンデンサに流入するチャージ電流による突入電流(インラッシュ電流)発生防止を図っている。従来の装置では、例えばコンデンサが大容量である場合、長時間に亘って流入電流の電流値を調整して突入電流の発生を防止する必要がある。しかしながら、従来の装置では、長時間に亘って流入電流の電流値を調整すると、回路の発熱が大きくなり得る。そのため、突入電流の発生を長時間に亘って防止し続けることは困難である。
【0005】
本発明の一側面は、長時間の充電時間に亘って突入電流の発生を防止できる受電装置及び非接触給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る受電装置は、電流値が一定の電力を供給する電源から、電力を非接触で受電する受電部と、受電部に接続され、受電部から供給される電力を制御して負荷に供給する昇降圧チョッパと、昇降圧チョッパに接続され、昇降圧チョッパを介して負荷に電力を供給する補助電源と、昇降圧チョッパを迂回して受電部から補助電源に電力を供給させるバイパス部と、を備え、バイパス部は、補助電源の電圧が第1の所定値以下である場合に、当該バイパス部を介して受電部から補助電源に電力を供給させる。
【0007】
本発明の一側面に係る受電装置では、バイパス部は、補助電源の電圧が第1の所定値以下である場合に、バイパス部を介して受電部から補助電源に電力を供給させる。補助電源の初期充電時は、補助電源の電圧が第1の所定値以下である。受電装置では、補助電源の初期充電時にバイパス部を介して受電部から補助電源に電力を供給することにより、初期充電時(電源投入時)に受電部から補助電源に一定の電流値(定常電流値)を超える突入電流が発生することを防止できる。また、受電装置では、従来の装置とは異なり、流入電流の電流値を調整する必要がないため、充電中の発熱を抑制できる。したがって、受電装置では、長時間の充電時間に亘って突入電流の発生を防止できる。
【0008】
一実施形態においては、バイパス部は、受電部から当該バイパス部を介した補助電源への電力の供給のオン・オフを切り替える切替部を備え、切替部は、所定条件を満たす場合にオンとなり受電部からバイパス部を介して補助電源に電力を供給させ、所定条件を満たさない場合にオフとなり受電部からバイパス部を介した補助電源への電力の供給を停止させ、所定条件は、補助電源の電圧が第1の所定値以下である場合を含んでいてもよい。この構成では、切替部によってオン・オフを切り替えることにより、補助電源の電圧が第1の所定値以下である場合において、受電部からバイパス部を介した補助電源への電力の供給を行うことができる。
【0009】
一実施形態においては、所定条件は、昇降圧チョッパの入力電圧が第2の所定値以下である場合を含み、切替部は、補助電源の電圧が第1の所定値以下であり、且つ、昇降圧チョッパの入力電圧が第2の所定値以下である場合にオンとなってもよい。この構成では、バイパス部に大きな電圧が加わることを回避することができる。
【0010】
一実施形態においては、所定条件は、昇降圧チョッパの出力電圧が第3の所定値以上である場合を含み、切替部は、補助電源の電圧が第1の所定値以下であると共に、昇降圧チョッパの入力電圧が第2の所定値以下であり、且つ、昇降圧チョッパの出力電圧が第3の所定値以上である場合にオンとなってもよい。この構成では、昇降圧チョッパに給電された後に補助電源を充電することができる。
【0011】
一実施形態においては、バイパス部は、コンパレータを含む回路であってもよい。この構成では、動作電圧を高くすることができると共に、ノイズの影響を受け難くすることができる。
【0012】
本発明の一側面に係る非接触給電システムは、上記の受電装置と、電流値が一定である電力を受電装置に送電する送電装置と、を備える。
【0013】
本発明の一側面に係る非接触給電システムは、上記の受電装置を備えている。したがって、非接触給電システムでは、長時間の充電時間に亘って突入電流の発生を防止できる。
【0014】
一実施形態においては、送電装置は、軌道レールに沿って設けられている給電線を有し、受電装置は、軌道レールを走行する走行車に設けられていてもよい。この構成では、非接触給電システムが搬送システムに適用される場合において、長時間の充電時間に亘って突入電流の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、長時間の充電時間に亘って突入電流の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る搬送システムの軌道を模式的に示す図である。
図2図2は、非接触給電装置の構成を示す図である。
図3図3は、受電装置の構成を示す図である。
図4図4は、バイパス回路の電圧監視部の構成を示す図である。
図5図5は、受電装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1に示されるように、搬送システム(非接触給電システム)1は、非接触給電装置(送電装置)10と、天井搬送車(走行車)30と、を備えている。搬送システム1は、軌道レールTに沿って走行可能な天井搬送車30を用いて、物品(図示省略)を搬送するためのシステムである。搬送システム1では、軌道レールTに設けられた給電線21A,21Bから非接触で天井搬送車30に電力が供給される。天井搬送車30は、供給された電力によって天井搬送車30の走行、あるいは、天井搬送車30に設けられた各種装置を駆動する。
【0019】
天井搬送車30には、例えば、天井吊り下げ式のクレーン、OHT(Overhead Hoist Transfer)等が含まれる。物品には、例えば、複数の半導体ウェハを格納する容器、ガラス基板を格納する容器、レチクルポッド、FOSB,SMIF Pod、一般部品等が含まれる。ここでは、例えば、工場等において、天井搬送車30が、工場の天井に敷設された軌道レールTに沿って走行する搬送システム1を例に挙げて説明する。
【0020】
軌道レールTは、例えば、周回軌道である。給電線21A,21Bは、非接触給電装置10から電力が供給されている。給電線21A,21Bは、天井搬送車30の走行方向における軌道レールTの下方であって軌道中央を基準とする右側及び左側の少なくとも一方に配置されている。なお、給電線21Bは、給電線21Aの下方に設けられているため、図1において給電線21Aの下に重なった状態となっている。
【0021】
給電線21A,21Bは、切換部40によって軌道レールTに対する配置が変えられる。給電線21A,21Bは、非接触給電装置10に接続された当初の領域では、軌道レールTの左側に配置されている。軌道レールTを天井搬送車30の走行方向に進むと、給電線21A,21Bは、切換部40によって軌道レールTの左側から右側に配置が切り替えられる。給電線21A,21Bが軌道レールTの右側に配置されることにより、図1に示されるように、軌道レールTから分岐した支線TAを天井搬送車30が走行する場合でも電力の供給を継続して行うことができる。
【0022】
図2に示されるように、非接触給電装置10は、天井搬送車30に非接触で電力を供給する。非接触給電装置10は、電流値が一定である電力を供給する。非接触給電装置10は、電源11と、配線用遮断器12と、ノイズフィルター13と、力率改善用機器14と、整流器15と、平滑器16と、インバータ17と、フィルタ回路18と、第1電流センサ19と、第2電流センサ20と、給電線21A,21Bと、制御装置22と、備えている。ノイズフィルター13、力率改善用機器14、整流器15及び平滑器16は、電力変換器25を構成している。
【0023】
電源11は、商用電源等の交流電源を供給する設備であり、交流電力(三相200V)を供給する。交流電力の周波数は、例えば、50Hz又は60Hzである。配線用遮断器12は、過電流が流れたときに電路を開放する。ノイズフィルター13は、交流電力のノイズを除去する。力率改善用機器14は、入力電流を正弦波に近づけることで力率を改善する。整流器15は、電源11(力率改善用機器14)から供給された交流電力を直流電力に変換する。平滑器16は、整流器15において変換された直流電力を平滑化する。電力変換器25は、昇降圧機能をさらに有していてもよい。
【0024】
インバータ17は、平滑器16から出力された直流電力を交流電力に変換してフィルタ回路18に出力する。インバータ17は、複数のスイッチング素子23を有している。スイッチング素子23は、電気的な開閉を切り替え可能な要素である。
【0025】
フィルタ回路18は、インバータ17と給電線21A,21Bとの間に設けられる。フィルタ回路18は、高調波ノイズを抑制する。フィルタ回路18は、リアクトルRT1と、コンデンサC0と、コンデンサC1と、リアクトルRT2と、コンデンサC2と、を有している。リアクトルRT1とコンデンサC0とは、直列に接続されており、第1共振回路RC1を構成している。リアクトルRT2とコンデンサC2とは、直列に接続されており、第2共振回路RC2を構成している。第1共振回路RC1と第2共振回路RC2とは、直列に接続されている。コンデンサC1は、第1共振回路RC1及び第2共振回路RC2に対して、並列に接続されている。
【0026】
第1電流センサ19は、インバータ17から出力された、すなわちインバータ17を流れる電流I1(インバータ電流)を検出する。第1電流センサ19は、検出した電流I1を示す第1電流信号を制御装置22に出力する。第2電流センサ20は、第2共振回路RC2を通過した交流電力の電流I2(給電電流)を検出する。第2電流センサ20は、検出した電流I2を示す第2電流信号を制御装置22に出力する。
【0027】
給電線21A,21Bは、天井搬送車30の受電部310a(後述)に非接触で給電するためのコイルを構成している。給電線21A,21Bは、フィルタ回路18から交流電力が供給されることによって、磁束を発生する。給電線21A,21Bは、インダクタンスRLを有している。本実施形態では、複数の給電線21A,21Bを流れる交流電流は互いに位相が同期していない。
【0028】
制御装置22は、インバータ17の動作を制御する。制御装置22は、集積回路に実装されたコンピュータシステムあるいはプロセッサである。制御装置22は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等、及び入出力インターフェース等から構成される。ROMには、各種プログラム又はデータが格納されている。
【0029】
制御装置22は、制御部24を有している。制御装置22は、フィルタ回路18の第1電流センサ19及び第2電流センサ20と接続されている。制御装置22には、第1電流センサ19及び第2電流センサ20のそれぞれから出力される第1電流信号及び第2電流信号が入力される。
【0030】
制御部24は、インバータ17を制御することによって、給電線21A,21Bに供給される交流電力の大きさを制御し、天井搬送車30に供給される電力の大きさを制御する。本実施形態では、電力制御は、位相シフト制御を用いて行われる。制御部24は、第1電流センサ19及び第2電流センサ20のそれぞれから出力される第1電流信号及び第2電流信号に基づいて、天井搬送車30に送電される電力の値が目標値になるように電力制御を行う。これにより、天井搬送車30には、電流値が一定の電力が供給される。
【0031】
図1に示されるように、天井搬送車30は、軌道レールTに沿って走行し、物品を搬送する。天井搬送車30は、物品を移載可能に構成されている。搬送システム1が備える天井搬送車30の台数は、特に限定されず、複数である。
【0032】
図3に示されるように、天井搬送車30は、受電装置31と、駆動装置32と、移載装置33と、制御装置34と、を備えている。
【0033】
受電装置31は、非接触給電装置10から送電された電力を非接触で受電する。受電装置31は、受電した電力を駆動装置32、移載装置33及び制御装置34に供給する。受電装置31は、受電ユニット310と、昇降圧チョッパ311と、コンデンサユニット(補助電源)312と、双方向電源313と、バイパス回路(バイパス部)314と、を有している。受電装置31は、コンデンサC11及びコンデンサC12等も含んでいる。コンデンサC11及びコンデンサC12は、平滑用コンデンサである。
【0034】
受電ユニット310は、給電線21A,21Bから電力を非接触で受電する。受電ユニット310は、受電部310aと、並列共振部310bと、を含んでいる。受電部310aは、電力を受け取るためのコイルである。給電線21A,21Bによって発生された磁束が受電部310aに鎖交することによって、受電部310aに交流電力が生じる。受電部310aは、交流電力を並列共振部310bに供給する。並列共振部310bは、受電部310aから供給された交流電力の高周波電流を整流すると共に、直流電力(以下、単に「電力」と称する)を生成する。並列共振部310bは、コンデンサ及びダイオード等を含んで構成されている。並列共振部310bは、電力を出力する。
【0035】
昇降圧チョッパ311は、電力を制御する。昇降圧チョッパ311は、受電ユニット310又はコンデンサユニット312から供給された電力の電圧を昇圧又は降圧する。昇降圧チョッパ311は、コンデンサ、ダイオード及びインダクタ等を含んで構成されている。昇降圧チョッパ311は、受電ユニット310に接続されている。昇降圧チョッパ311は、電力を駆動装置32等の負荷に供給する。
【0036】
コンデンサユニット312は、充電及び放電を行う。コンデンサユニット312は、受電ユニット310から供給される電力で充電すると共に、双方向電源313を介して供給される回生電力で充電する。コンデンサユニット312は、駆動装置32等の負荷への電力供給をアシストするために、必要に応じて放電する。コンデンサユニット312は、複数のコンデンサを含んで構成されている。コンデンサユニット312の容量は、例えば、30Fである。コンデンサユニット312は、受電ユニット310及び昇降圧チョッパ311に接続されている。具体的には、コンデンサユニット312の入力端は、接続線L1,L3及び接続線L2によって、受電ユニット310の出力側及び昇降圧チョッパ311の入力側に接続されている。なお、接続線L1と接続線L3との間には、スイッチ318が設けられている。
【0037】
双方向電源313は、直流と交流とを双方向に変換する。双方向電源313は、双方向のDC/DCコンバータを含んでいる。双方向電源313の出力端は、受電装置31の出力側に接続されている。双方向電源313は、負荷(モータ等)からの回生電力を変換してコンデンサユニット312に供給する。
【0038】
バイパス回路314は、受電ユニット310から供給された電力をバイパスする。バイパス回路314は、昇降圧チョッパ311を迂回して受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力を供給させる。バイパス回路314は、所定条件を満たす場合に、バイパス回路314を介して受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力を供給させる。バイパス回路314は、昇降圧チョッパ311を介さずに、受電ユニット310とコンデンサユニット312との間に接続されている。
【0039】
図3及び図4に示されるように、バイパス回路314は、第1コンパレータ回路315と、第2コンパレータ回路316と、第3コンパレータ回路317と、スイッチ(切替部)318と、を有している。第1コンパレータ回路315、第2コンパレータ回路316及び第3コンパレータ回路317は、電圧監視部319を構成している。
【0040】
第1コンパレータ回路315は、昇降圧チョッパ311の入力電圧を監視する。第1コンパレータ回路315は、第1コンパレータCP1と、抵抗R11,R12,R13と、ダイオードD11と、を含んで構成されている。第1コンパレータCP1の第1端子(非反転入力)には、接続線L4を介して、昇降圧チョッパ311の入力電圧が入力される。接続線L4は、昇降圧チョッパ311の入力側に接続されている。なお、図3では、接続線L4は、昇降圧チョッパ311の入力側において、接続線L1と異なる位置に接続されているが、実際には同じ位置に接続されている。
【0041】
第1コンパレータCP1の第2端子(反転入力)は基準端子であり、第2の所定値の電圧が入力される。本実施形態では、第2の所定値は、60Vである。第1コンパレータ回路315は、比較結果(電圧)を出力する。第1コンパレータ回路315から出力された比較結果は、NOTゲートG1及び接続線L5を介してスイッチ318に出力される。
【0042】
第2コンパレータ回路316は、昇降圧チョッパ311の出力電圧を監視する。第2コンパレータ回路316は、第2コンパレータCP2と、抵抗R21,R22,R23と、ダイオードD21と、を含んで構成されている。第2コンパレータCP2の第1端子には、接続線L6を介して、昇降圧チョッパ311の出力電圧が入力される。接続線L6は、昇降圧チョッパ311の出力側に接続されている。第2コンパレータCP2の第2端子は基準端子であり、第3の所定値の電圧が入力される。本実施形態では、第3の所定値は、320Vである。第2コンパレータ回路316は、第2コンパレータ回路316から出力された比較結果は、緩衝増幅器G2及び接続線L5を介してスイッチ318に出力される。
【0043】
第3コンパレータ回路317は、コンデンサユニット312の電圧を監視する。第3コンパレータ回路317は、第3コンパレータCP3と、抵抗R31,R32,R33と、ダイオードD31と、を含んで構成されている。第3コンパレータCP3の第1端子には、接続線L7を介して、コンデンサユニット312の電圧が入力される。接続線L7は、コンデンサユニット312の入力側(接続線L3)に接続されている。第3コンパレータCP3の第2端子は基準端子であり、第1の所定値の電圧が入力される。本実施形態では、第1の所定値は、60Vである。第3コンパレータ回路317から出力された比較結果は、NOTゲートG3及び接続線L5を介してスイッチ318に出力される。なお、図3では、接続線L7は、コンデンサユニット312の入力端と異なる位置に接続されているが、実際にはコンデンサユニット312の入力端に接続されている。
【0044】
スイッチ318は、受電ユニット310からコンデンサユニット312への電力の供給のオン・オフを切り替える。スイッチ318は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。スイッチ318は、所定条件を満たす場合にオンとなり受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力を供給させる。スイッチ318は、所定条件を満たさない場合にオフとなり受電ユニット310からコンデンサユニット312への電力の供給を停止させる。スイッチ318は、第1コンパレータ回路315、第2コンパレータ回路316及び第3コンパレータ回路317から出力された比較結果に基づいて、オン・オフを切り替える。スイッチ318がオンの場合、受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力が供給される。スイッチ318がオフの場合、受電ユニット310から受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力が供給されない。
【0045】
スイッチ318は、第1コンパレータ回路315から出力された比較結果が60V以下であり、第2コンパレータ回路316から出力された比較結果が320V以上であり、第3コンパレータ回路317から出力された比較結果が60V以下である場合にオンになる。すなわち、スイッチ318は、所定条件として、(1)昇降圧チョッパ311の入力電圧が60V以下であり、(2)昇降圧チョッパ311の出力電圧が320V以上であり、(3)コンデンサユニット312の電圧が60V以下である条件を満たす場合にオンになる。
【0046】
スイッチ318は、第1コンパレータ回路315から出力された比較結果が60Vよりも大きい、第2コンパレータ回路316から出力された比較結果が320V未満である、又は、第3コンパレータ回路317から出力された比較結果が60Vよりも大きい場合にオフになる。すなわち、スイッチ318は、所定条件として、上記(1)、(2)又は(3)を満たさない場合にはオフになる。
【0047】
コンデンサユニット312の初期充電時における、受電装置31の動作について図5を参照して説明する。初期充電時において、スイッチ318は、オフになっている。すなわち、受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力が供給されない状態である。図5では、受電ユニット310の電圧、昇降圧チョッパ311の出力電圧、昇降圧チョッパ311の入力電圧、コンデンサユニット312の電圧、及び、スイッチ318のオン/オフを示している。
【0048】
図5に示されるように、受電装置31では、受電ユニット310が給電線21A,21Bから受電を開始すると、昇降圧チョッパ311の入力電圧及び出力電圧が上昇する。昇降圧チョッパ311の入力電圧及び出力電圧が320Vに到達した後、軽負荷が加わると、昇降圧チョッパ311の入力電圧が低下する。昇降圧チョッパ311の入力電圧が低下して60V以下となり、コンデンサユニット312の電圧が60V以下である場合、スイッチ318がオンなる。すなわち、スイッチ318は、昇降圧チョッパ311の入力電圧が60V以下であり、昇降圧チョッパ311の出力電圧が320V以上であり、コンデンサユニット312の電圧が60V以下である場合にオンになる。これにより、スイッチ318(バイパス回路314)を介して、受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力が供給され、コンデンサユニット312の充電が開始される。
【0049】
コンデンサユニット312が満充電となり、コンデンサユニット312の電圧が60Vよりも大きくなると、スイッチ318がオフになる。
【0050】
図3に示されるように、駆動装置32は、複数の車輪(図示省略)を回転駆動させる。駆動装置32は、例えば、電動モータ又はリニアモータなどが用いられ、駆動するための電力として受電装置31から供給される電力を用いる。
【0051】
移載装置33は、搬送する物品を保持して収容可能であり、物品を移載する。移載装置33は、例えば、物品を保持して突出させる横出し機構、及び物品を下方に移動させる昇降機構等を備えており、横出し機構及び昇降機構を駆動することにより、移載先であるストッカ等の保管装置のロードポート又は処理装置のロードポートなどに対して物品の受け渡しを行う。移載装置33は、駆動するための電力として受電装置31から供給される電力を用いる。
【0052】
制御装置34は、駆動装置32及び移載装置33を制御する。制御装置34は、駆動するための電力として受電装置31から供給される電力を用いる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送システム1の天井搬送車30は、受電装置31を備えている。受電装置31では、バイパス回路314は、コンデンサユニット312の電圧が第1の所定値以下である場合に、バイパス回路314を介して受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力を供給させる。コンデンサユニット312の初期充電時は、コンデンサユニット312の電圧が第1の所定値以下である。受電装置31では、コンデンサユニット312の初期充電時にバイパス回路314を介して受電ユニット310からコンデンサユニット312に電力を供給することにより、初期充電時(電源投入時)に受電ユニット310からコンデンサユニット312に一定の電流値(定常電流値)を超える突入電流が発生することを防止できる。また、受電装置31では、従来の装置とは異なり、流入電流の電流値を調整する必要がないため、充電中の発熱を抑制できる。したがって、受電装置31では、長時間の充電時間に亘って突入電流の発生を防止できる。
【0054】
本実施形態に係る受電装置31では、バイパス回路314は、受電ユニット310からバイパス回路314を介したコンデンサユニット312への電力の供給のオン・オフを切り替えるスイッチ318を備える。スイッチ318は、所定条件を満たす場合にオンとなり受電ユニット310からバイパス回路314を介してコンデンサユニット312に電力を供給させ、所定条件を満たさない場合にオフとなり受電ユニット310からバイパス回路314を介したコンデンサユニット312への電力の供給を停止させる。スイッチ318は、昇降圧チョッパ311の入力電圧が第2の所定値以下である共に、昇降圧チョッパ311の出力電圧が第3の所定値以上であり、且つ、コンデンサユニット312の電圧が第1の所定値以下である場合にオンとなる。この構成では、バイパス回路314に大きな電圧が加わることを回避することができる。また、昇降圧チョッパ311に給電された後にコンデンサユニット312を充電することができる。さらに、コンデンサユニット312の電圧が第1の所定値以下である場合において、受電ユニット310からコンデンサユニット312への電力の供給を確実に行うことができる。
【0055】
本実施形態に係る受電装置31では、バイパス回路314は、第1コンパレータCP1、第2コンパレータCP2及び第3コンパレータCP3を含んで構成されている。この構成では、動作電圧を高くすることができると共に、ノイズの影響を受け難くすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0057】
上記実施形態では、軌道レールTが周回軌道である形態を一例に説明した。しかし、軌道レールTの形態はこれに限定されない。
【0058】
上記実施形態では、バイパス部がバイパス回路314である形態を一例に説明した。しかし、バイパス部は、集積回路に実装されたコンピュータシステムあるいはプロセッサであってもよい。この構成では、装置の小型化を図ることができる。
【0059】
上記実施形態では、補助電源がコンデンサユニット312である形態を一例に説明した。しかし、補助電源は、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、スイッチ318は、所定条件として、(1)昇降圧チョッパ311の入力電圧が60V以下であり、(2)昇降圧チョッパ311の出力電圧が320V以上であり、(3)コンデンサユニット312の電圧が60V以下である条件を満たす場合にオンになる形態を一例に説明した。しかし、スイッチ318は、少なくとも(1)の条件を満たす場合にオンとなってもよい。
【0061】
上記実施形態では、非接触給電システムが搬送システム1に適用されている形態を一例に説明した。しかし、非接触給電システムは他のシステムに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…搬送システム(非接触給電システム)、10…非接触給電装置(送電装置)、21A,21B…給電線、30…天井搬送車(走行車)、31…受電装置、310…受電ユニット(受電部)、311…昇降圧チョッパ、312…コンデンサユニット(補助電源)、314…バイパス回路(バイパス部)、318…スイッチ(切替部)、T…軌道レール。
図1
図2
図3
図4
図5