(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ブレーキ装置及び緩衝部材
(51)【国際特許分類】
F16D 55/225 20060101AFI20250115BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20250115BHJP
F16D 121/22 20120101ALN20250115BHJP
【FI】
F16D55/225 102C
F16D65/18
F16D121:22
(21)【出願番号】P 2023132397
(22)【出願日】2023-08-16
【審査請求日】2023-08-16
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 諒太郎
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-049534(JP,A)
【文献】特開2005-180626(JP,A)
【文献】特開2019-001598(JP,A)
【文献】特開2023-046997(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155508(WO,A1)
【文献】実開昭62-018436(JP,U)
【文献】特開2003-201080(JP,A)
【文献】特開2011-148586(JP,A)
【文献】特開2015-055259(JP,A)
【文献】特開2017-030940(JP,A)
【文献】特開2017-180662(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155509(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 55/225
F16D 65/18
B66B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面から前記第2の面へ貫通する穴が形成されたフィールドと、
前記フィールドに設けられた電磁コイルと、
前記第1の面と対向するように配置され、前記電磁コイルに通電されたとき前記第1の面に近づくアーマチュアと、
前記アーマチュアと前記フィールドとの間に配置され、前記第1の面から離れる方向に向かって前記アーマチュアを付勢する付勢部と、
前記第2の面から前記第1の面に向かって前記穴に挿入可能に形成され、一端に緩衝部が配置され、前記アーマチュアが前記第1の面に近づいたとき、前記アーマチュアが前記緩衝部に接触するように前記穴に配置される緩衝部材と、
を備え、
前記緩衝部材は、前記緩衝部材が前記穴に配置されたとき、前記フィールドに接触することで前記緩衝部材が前記アーマチュアに近づく方向に移動することを制限する鍔部を有し、
前記緩衝部は、前記鍔部が前記フィールドに接触した状態において、前記アーマチュアの接触により前記第1の面と前記アーマチュアが接触するように収縮するブレーキ装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記緩衝部を支持する支持部を有し、
前記支持部は、磁性体から形成される請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記フィールドと同一の材料から形成される請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記緩衝部材は、前記緩衝部を支持する支持部を有し、
前記支持部の外周面に第1のねじが形成され、
前記穴の内周面に前記第1のねじと噛み合う第2のねじが形成される請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記穴は、小穴及び前記小穴に連通する大穴を有し、
前記小穴の内径は、前記大穴の内径よりも小さく、
前記小穴は、前記大穴より前記アーマチュア側に形成され、
前記鍔部の外径は、前記小穴の内径より大きく、前記大穴の内径より小さく、前記大穴に配置される請求項1から4のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記緩衝部は、前記支持部に嵌合することで前記支持部に支持される請求項2から4のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキ装置及び緩衝部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ装置は、フィールドに形成された収容室に緩衝部、カラー及び押圧ロッドが収容される。アーマチュアが制動位置から許容位置に移動する過程において、押圧ロッドは、アーマチュアと一体となって移動し、カラーを介して間接的に緩衝部に当接する。緩衝部は、フィールドとアーマチュアとが当接する際の音の発生を抑制している。また、収容室の開口を開閉する蓋を外すことにより、ブレーキ装置を分解することなく、緩衝部を交換することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のブレーキ装置では、緩衝部を容易に交換することができるが、緩衝部がアーマチュアに直接接触しないため、フィールドとアーマチュアとが接触する際の接触音の発生を抑制しづらいという課題があった。
【0005】
本開示は上記の課題を解決するためになされたものであり、緩衝部を容易に交換することができ、かつ、フィールドとアーマチュアとが接触する際の接触音の発生を抑制することができるブレーキ装置及び緩衝部材を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかるブレーキ装置は、第1の面及び第2の面を有し、第1の面から第2の面へ貫通する穴が形成されたフィールドと、フィールドに設けられた電磁コイルと、第1の面と対向するように配置され、電磁コイルに通電されたとき第1の面に近づくアーマチュアと、アーマチュアとフィールドとの間に配置され、第1の面から離れる方向に向かってアーマチュアを付勢する付勢部と、第2の面から第1の面に向かって穴に挿入可能に形成され、一端に緩衝部が配置され、アーマチュアが第1の面に近づいたとき、アーマチュアが緩衝部に接触するように穴に配置される緩衝部材と、を備え、緩衝部材は、緩衝部材が穴に配置されたとき、フィールドに接触することで緩衝部材がアーマチュアに近づく方向に移動することを制限する鍔部を有し、緩衝部は、鍔部がフィールドに接触した状態において、アーマチュアの接触により第1の面とアーマチュアが接触するように収縮する。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかるブレーキ装置及び緩衝部材は、緩衝部を容易に交換することができ、かつ、フィールドとアーマチュアとが接触する際の接触音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機の正面図である。
【
図2】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機の側面図である。
【
図3】実施の形態1におけるブレーキ装置の断面図である。
【
図4】実施の形態1における緩衝部材の斜視図である。
【
図5】実施の形態1におけるブレーキ装置の断面図である。
【
図6】実施の形態1におけるブレーキ装置の断面図である。
【
図7】実施の形態1におけるブレーキ装置の断面図である。
【
図8】実施の形態1におけるブレーキ装置の断面図である。
【
図9】実施の形態1における変形例を示す緩衝部材の斜視図である。
【
図10】実施の形態1における変形例を示す緩衝部材の斜視図である。
【
図11】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下に実施の形態1にかかるブレーキ装置8を詳細に説明する。なお、各図面における同一の符号は同一又は相当の構成を表している。
【0011】
図1、2に示すように、ブレーキ装置8は例えばエレベータ用巻上機1に設けられる。エレベータ用巻上機1は、機械台2の上部に固定され、機械台2に支持される。
【0012】
エレベータ用巻上機1は、綱車3、ブレーキディスク4、回転軸5、モータ6、軸受台7、及びブレーキ装置8を備える。
【0013】
綱車3の外周面には、主ロープ(図示せず)が巻き掛けられる。綱車3は、回転軸5と一体に回転するように、回転軸5に固定される。
【0014】
ブレーキディスク4は、円板状に形成される。ブレーキディスク4は、綱車3に固定され、綱車3と一体に回転する。ブレーキディスク4がブレーキ装置8に制動されると、綱車3が制動される。
【0015】
回転軸5は、その一端がモータ6に回転可能に支持され、その他端が軸受台7に回転可能に支持される。モータ6は、回転軸5を介して綱車3及びブレーキディスク4を回転させる。
【0016】
ブレーキ装置8は、ブレーキディスク4の回転を制動することにより、綱車3の回転を制動する。ブレーキ装置8は、例えば2つ設けられる。2つのブレーキ装置8は、
図1の紙面において左右方向に延びる軸受台7の取付部7aにそれぞれ取り付けられる。
【0017】
図3に、
図1のエレベータ用巻上機1のA-A’断面におけるブレーキ装置8の断面図を示す。ブレーキ装置8は、フィールド10、アーマチュア20、ブレーキパッド31、32、ブレーキ軸40、連結部材50、バネ60、付勢部であるバネ70、電磁コイル80、ガイド部90及び緩衝部材100を備える。
【0018】
フィールド10は、磁性体から形成され、アーマチュア20に対向して配置される。フィールド10は、磁性体のうち例えば鋼から形成される。フィールド10は、第1の面11及び第2の面12を有する。第1の面11は、アーマチュア20と対向する面である。第2の面12は、アーマチュア20からフィールド10に向かう方向と平行な方向において、アーマチュア20とは反対側にある面である。以下の説明において、アーマチュア20からフィールド10に向かう方向と平行な方向を左右方向とも呼ぶ。また、アーマチュア20からフィールド10に向かう方向を右方向とも呼び、フィールド10からアーマチュア20に向かう方向を左方向とも呼ぶ。
【0019】
フィールド10は、左右方向に移動可能となるように軸受台7の取付部7aに取り付けられる。
【0020】
第1の面11には、バネ70を収納するバネ収納穴13、電磁コイル80を収納するコイル収納溝14、ガイド部90を収納するガイド部収納穴15が形成される。
【0021】
バネ収納穴13は、右方向にへこんでいる窪みである。バネ収納穴13は、2つ設けられる。バネ収納穴13には、バネ70の一端が収納される。
【0022】
コイル収納溝14は、第1の面11に沿って環状に形成された溝である。コイル収納溝14には、電磁コイル80が収納される。
【0023】
ガイド部収納穴15は、右方向にへこんでいる窪みである。ガイド部収納穴15は、2つ設けられる。ガイド部収納穴15には、ガイド部90の一端が収納される。
【0024】
フィールド10には、第1の面11から第2の面12へ貫通する穴16が形成される。穴16は、
図3の紙面の奥行方向における断面が円形となるように形成される。穴16は、小穴16a及び大穴16bを有する。小穴16aと大穴16bとは、連通している。小穴16aの内径は、大穴16bの内径よりも小さい。小穴16aは、大穴16bよりもアーマチュア20側に形成される。
【0025】
アーマチュア20は、磁性体から形成される。アーマチュア20は、磁性体のうち例えば鋼から形成される。アーマチュア20は、第3の面21及び第4の面22を有する。第3の面21は、フィールド10の第1の面11に対向する面である。第4の面22は、左右方向においてフィールド10とは反対側にある面である。
【0026】
第3の面21には、ガイド部90を収納するガイド部収納穴23が形成される。ガイド部収納穴23は、左方向にへこんでいる窪みである。ガイド部収納穴23は、2つ設けられる。ガイド部収納穴23には、ガイド部90の他端が収納される。
【0027】
ブレーキパッド31、32は、左右方向からブレーキディスク4を挟むように、ブレーキディスク4に対向してそれぞれ配置される。ブレーキパッド31は、左右方向においてブレーキパッド32よりアーマチュア20側に配置される。ブレーキパッド31は、ブレーキ軸40を介してアーマチュア20に接続される。ブレーキパッド32は、連結部材50を介してフィールド10に接続される。
【0028】
ブレーキ軸40は、一端がブレーキパッド31に接続され、他端がアーマチュア20に接続される。ブレーキパッド31及びブレーキ軸40は、アーマチュア20と一体となって移動する。
【0029】
連結部材50は、ブレーキパッド32とフィールド10とを連結する。ブレーキパッド32及び連結部材50は、フィールド10と一体となって移動する。連結部材50は、左右方向に直交する方向に延びる延伸部51を有する。
【0030】
バネ60は、左右方向において延伸部51と軸受台7との間に配置される。バネ60の一端は、延伸部51に固定され、バネ60の他端は軸受台7に固定される。バネ60は、例えば圧縮コイルばねである。なお、バネ60は、板バネであってもよい。また、バネ60の代わりに、ゴム又は発泡ウレタン等を用いてもよい。
【0031】
バネ70は、2つ設けられ、左右方向においてアーマチュア20とフィールド10との間に配置される。バネ70の一端は、バネ収納穴13に収納される。バネ70の一端はバネ収納穴13の底面に接し、バネ70の他端はアーマチュア20の第3の面21に接する。バネ70は、アーマチュア20を付勢し、ブレーキパッド31をブレーキディスク4に接触させる。バネ70は、例えば圧縮コイルばねである。バネ70は、板バネであってもよい。また、付勢部として、ゴム又は発泡ウレタン等を用いてもよい。
【0032】
電磁コイル80は、フィールド10に設けられる。具体的には、フィールド10のコイル収納溝14に収納される。
【0033】
ガイド部90は、アーマチュア20の左右方向における移動を案内する部材である。ガイド部90は、2つ設けられ、左右方向においてフィールド10とアーマチュア20との間に配置される。ガイド部90の一端はガイド部収納穴15に収納され、ガイド部90の他端はガイド部収納穴23に収納される。
【0034】
緩衝部材100は、第2の面12から第1の面11に向かって穴16に挿入可能に形成されている。緩衝部材100は、穴16に配置され、ねじ(図示せず)でフィールド10に固定される。緩衝部材100は、例えば棒状に形成される。
【0035】
図4に示すように、緩衝部材100は、緩衝部110、支持部120及び鍔部130を有する。
【0036】
緩衝部110は、緩衝部材100の一端に配置される。
図5に示すように、緩衝部材100が穴16に配置されたとき、緩衝部110は、例えばフィールド10の第1の面11から0.5mm突出している。緩衝部110は、フィールド10とアーマチュア20とが接触する際の衝撃及び接触音の発生を抑制する。緩衝部110は、例えばゴムであって、環状に形成される。なお、緩衝部110は、フィールド10とアーマチュア20とが接触する際の衝撃及び接触音の発生のうち、いずれか一方を抑制するものであればよい。また、緩衝部110が第1の面11から突出する長さは、0.5mmに限定されない。アーマチュア20が第1の面11に近づいたとき、アーマチュア20が緩衝部110に接触するように、緩衝部材100が穴16に配置されればよい。
【0037】
支持部120は、磁性体から形成され、円柱状に形成される。支持部120は、磁性体のうちフィールド10と同一の材料から形成されるとより好ましい。支持部120の一端に、
図4の紙面において上方向に突出する突起部121を有する。緩衝部110は、支持部120の突起部121に嵌合することで支持部120に支持される。
【0038】
鍔部130は、緩衝部材100の他端に配置される。鍔部130は、環状であり、支持部120から支持部120の径方向に向かって突出している。鍔部130は、磁性体から形成される。鍔部130は、磁性体のうち、フィールド10と同一の材料から形成されるとより好ましい。鍔部130は、支持部120と一体成形されていてもよい。鍔部130の外径は、小穴16aの内径よりも大きい。そのため、緩衝部材100が第2の面12から第1の面11に向かって穴16に挿入され、穴16に配置されたとき、鍔部130が小穴16aに進入できない。つまり、鍔部130は、フィールド10に接触することで緩衝部材100がアーマチュア20に近づく方向に移動することを制限する。また、鍔部130の外径が大穴16bの内径より小さい。そのため、緩衝部材100が穴16に配置されたとき、鍔部130は大穴16bに配置される。
【0039】
次に、ブレーキ装置8の動作について説明する。
【0040】
まず、ブレーキ装置8がブレーキディスク4の回転を制動する状態からブレーキディスク4の回転を制動しない状態に遷移するときの動作について、
図5、6、7を用いて説明する。以下の説明において、ブレーキ装置8がブレーキディスク4の回転を制動する状態を制動状態とも呼び、ブレーキ装置8がブレーキディスク4の回転を制動しない状態を非制動状態とも呼ぶ。
【0041】
図5に示すように、電磁コイル80に通電されていないとき、ブレーキ装置8は制動状態である。このとき、ブレーキパッド31は、アーマチュア20を介してバネ70に付勢され、ブレーキディスク4に接触している。また、ブレーキパッド32は、ブレーキディスク4に接触している。
【0042】
電磁コイル80に通電されると、フィールド10が磁化される。そして、
図6に示すように、フィールド10が左方向に、つまりアーマチュア20に近づく方向に移動する。言い換えると、電磁コイル80に通電されたとき、アーマチュア20の第3の面21がフィールド10の第1の面11に相対的に近づく。そして、アーマチュア20が緩衝部110に接触する。その後、フィールド10がさらに左方向に移動し、第1の面11とアーマチュア20の第3の面21が接触する。このとき、緩衝部110は、フィールド10とアーマチュア20とが接触する際の衝撃及び接触音の発生を抑制する。
【0043】
フィールド10が左方向に移動すると、ブレーキパッド32及び連結部材50も左方向に移動し、ブレーキパッド32がブレーキディスク4から離れる。このとき、バネ60は引き伸ばされており、バネ60が縮む方向に力が働いている。
【0044】
図7に示すように、バネ60が縮むことにより、連結部材50が右方向に移動する。この移動に連動して、ブレーキパッド32及びフィールド10が右方向に移動する。また、このとき、フィールド10が磁化されているため、フィールド10がアーマチュア20を吸引している。そのため、フィールド10が右方向に移動すると、アーマチュア20も右方向に移動する。さらに、アーマチュア20の移動に連動して、ブレーキパッド31及びブレーキ軸40も右方向に移動する。ブレーキパッド31が右方向に移動すると、ブレーキパッド31がブレーキディスク4から離れ、ブレーキ装置8が非制動状態となる。
【0045】
次に、ブレーキ装置8が非制動状態から制動状態に遷移するときの動作について、
図5、8を用いて説明する。
【0046】
ブレーキ装置8が非制動状態であるときに電磁コイル80への通電を停止すると、フィールド10の磁力が消失する。フィールド10の磁力が消失すると、
図8に示すように、アーマチュア20がバネ70に付勢され、アーマチュア20が左方向に移動する。この移動に連動して、ブレーキ軸40及びブレーキパッド31が左方向に移動する。そして、ブレーキパッド31がブレーキディスク4に接触する。このとき、アーマチュア20の第3の面21がフィールド10の第1の面11から離れる。
【0047】
バネ70が伸びることにより、フィールド10が付勢され、フィールド10が右方向に移動する。この移動に連動し、連結部材50及びブレーキパッド32が右方向に移動する。そして、
図5に示すように、ブレーキパッド32がブレーキディスク4に接触し、ブレーキ装置8が制動状態となる。
【0048】
ブレーキ装置8が制動状態と非制動状態との遷移を繰り返すと、アーマチュア20の接触により緩衝部110が摩耗することがある。緩衝部110が摩耗した際に、作業員が緩衝部110を交換する作業について、
図5を用いて説明する。なお、緩衝部110が摩耗しているか否かに関わらず緩衝部110が交換されてもよい。
【0049】
まず、作業員は、緩衝部材100をフィールド10に固定するねじ(図示せず)を緩め、右方向に向かって緩衝部材100を穴16から引き抜く。つまり、緩衝部材100は、第1の面11から第2の面12に向かう方向に引き抜かれる。
【0050】
次に、作業員は、摩耗した緩衝部110を突起部121から取り外し、新しい緩衝部110を突起部121に嵌合させる。
【0051】
最後に、作業員は、左方向に向かって緩衝部材100を穴16に挿入する。つまり、緩衝部材100は、第2の面12から第1の面11に向かって穴16に挿入される。作業員は、緩衝部材100を穴16に配置した後、緩衝部材100をフィールド10にねじで固定する。
【0052】
このような実施の形態1にかかるブレーキ装置8にあっては、第1の面11から第2の面12へ貫通する穴16が形成されたフィールド10、及び、第2の面12から第1の面11に向かって穴16に挿入可能に形成され、一端に緩衝部110を配置され、アーマチュア20がフィールド10の第1の面11に近づいたとき、アーマチュア20が緩衝部110に接触するように穴16に配置される緩衝部材100を備える。このような構成により、ブレーキ装置8を分解することなく緩衝部材100を穴16から引き抜くことができ、かつ、緩衝部材100を穴16に挿入することができる。そのため、緩衝部材100の一端に配置された緩衝部110を容易に交換することができる。なお、ブレーキ装置8の分解には、フィールド10を軸受台7の取付部7aから取り外すこと等が含まれる。また、緩衝部110がアーマチュア20に直接接触するように緩衝部材100が穴16に配置されるため、フィールド10とアーマチュア20とが接触する際の衝撃及び接触音の発生を抑制することができる。
【0053】
このような実施の形態1にかかる緩衝部材100にあっては、第2の面12から第1の面11に向かって穴16に挿入可能に形成され、一端に緩衝部110を配置され、アーマチュア20がフィールド10の第1の面11に近づいたとき、アーマチュア20が緩衝部110に接触するように穴16に配置される。上述と同様に、緩衝部材100の一端に配置された緩衝部110を容易に交換することができる。また、フィールド10とアーマチュア20とが接触する際の衝撃及び接触音の発生を抑制することができる。
【0054】
さらに、実施の形態1にかかるブレーキ装置8にあっては、緩衝部材100が緩衝部110を支持する支持部120を有し、支持部120が磁性体から形成される。一般的に、磁性体の透磁率は、非磁性体の透磁率より大きい。そのため、非磁性体で形成された支持部120が穴16に配置される場合と比較して、磁性体で形成された支持部120が穴16に配置されたほうがフィールド10に発生する磁力を大きくすることができる。
【0055】
さらに、実施の形態1にかかるブレーキ装置8にあっては、緩衝部材100が鍔部130を有する。鍔部130は、緩衝部材100が穴16に配置されたとき、フィールド10に接触することで緩衝部材100がアーマチュア20に近づく方向に移動することを制限する。そのため、作業員が第2の面12から第1の面11に向かって緩衝部材100を挿入する度、同じ位置で緩衝部材100が停止させることができる。例えば、当該位置を、緩衝部110がフィールド10の第1の面11から0.5mm突出する位置にすると、緩衝部材100の位置の調整が容易となる。
【0056】
さらに、実施の形態1にかかるブレーキ装置8にあっては、緩衝部110が突起部121に嵌合することで、緩衝部110が支持部120に支持される。緩衝部110を支持部120に嵌合させずに、接着剤を用いて緩衝部110を支持部120に支持させることもできる。しかし、緩衝部110と支持部120との間に接着剤を塗布すると、接着剤の厚みが均等でないことにより緩衝部110が支持部120の軸方向に対して傾くことがある。一方で、緩衝部110を支持部120に嵌合させることで、接着剤を用いずに緩衝部110を支持部120に支持させることができる。そのため、緩衝部110が支持部120の軸方向に対して傾くことを抑制することができる。
【0057】
なお、ブレーキ装置8が2つ設けられる例について説明したが、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0058】
なお、
図9に示すように、緩衝部110に凸部111を設け、支持部120に凹部122を設けてもよい。緩衝部110の凸部111を支持部120の凹部122に嵌合させることで、支持部120に緩衝部110を支持させてもよい。
【0059】
なお、
図10に示すように、緩衝部110を円柱状に形成してもよく、支持部120が突起部121を有さなくてもよい。緩衝部110と支持部120との間に接着剤を塗布することにより支持部120に緩衝部110を支持させてもよい。
【0060】
なお、支持部120及び鍔部130が非磁性体から形成されてもよい。また、緩衝部110、支持部120及び鍔部130をゴム等の緩衝性を有する材料により一体に形成してもよい。
【0061】
支持部120の外周面に第1のねじである雄ねじが形成され、フィールド10の内周面に支持部120の雄ねじと噛み合う第2のねじである雌ねじが形成されてもよい。このような構成の場合、支持部120を回転させることで緩衝部材100を左右方向に移動させ、緩衝部110とアーマチュア20との距離を調整する。そのため、支持部120の回転量により緩衝部材100の位置を安定的に変更させることができる。また、緩衝部材100の位置を細かく調整することができる。
【0062】
なお、穴16は、大穴16bを有さなくてもよい。この場合において、緩衝部材100が穴16に配置されたとき、鍔部130はフィールド10の第2の面12に接する。
【0063】
なお、
図11に示すように、第2の面12は、第1の面11に隣接する面であってもよい。この場合において、穴16は、左右方向に対して傾く方向に延びている。
【0064】
ブレーキ装置8は、ディスクブレーキであってもよいし、ドラムブレーキであってもよい。
【0065】
ブレーキ装置8の動作の説明において、フィールド10が移動することにより、アーマチュア20がフィールド10の第1の面11に相対的に近づく例について説明した。ブレーキ装置8の種類又は機構等によっては、アーマチュア20が移動することにより、アーマチュア20がフィールド10の第1の面11に近づいてもよい。また、フィールド10及びアーマチュア20が移動することにより、アーマチュア20がフィールド10の第1の面11に近づいてもよい。つまり、アーマチュア20が第1の面11に近づくことには、フィールド10及びアーマチュア20のうち少なくともいずれか一方が移動して、アーマチュア20が第1の面11に相対的に近づくことが含まれる。
【0066】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面から前記第2の面へ貫通する穴が形成されたフィールドと、
前記フィールドに設けられた電磁コイルと、
前記第1の面と対向するように配置され、前記電磁コイルに通電されたとき前記第1の面に近づくアーマチュアと、
前記アーマチュアと前記フィールドとの間に配置され、前記第1の面から離れる方向に向かって前記アーマチュアを付勢する付勢部と、
前記第2の面から前記第1の面に向かって前記穴に挿入可能に形成され、一端に緩衝部が配置され、前記アーマチュアが前記第1の面に近づいたとき、前記アーマチュアが前記緩衝部に接触するように前記穴に配置される緩衝部材と、
を備えるブレーキ装置。
(付記2)
前記緩衝部材は、前記緩衝部を支持する支持部を有し、
前記支持部は、磁性体から形成される付記1に記載のブレーキ装置。
(付記3)
前記支持部は、前記フィールドと同一の材料から形成される付記2に記載のブレーキ装置。
(付記4)
前記緩衝部材は、前記緩衝部を支持する支持部を有し、
前記支持部の外周面に第1のねじが形成され、
前記穴の内周面に前記第1のねじと噛み合う第2のねじが形成される付記1から3のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
(付記5)
前記緩衝部材は、前記緩衝部材が前記穴に配置されたとき、前記フィールドに接触することで前記緩衝部材が前記アーマチュアに近づく方向に移動することを制限する鍔部を有する付記1から4のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
(付記6)
前記緩衝部は、前記支持部に嵌合することで前記支持部に支持される付記2から5のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
(付記7)
第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面から前記第2の面へ貫通する穴が形成されたフィールドと、前記フィールドに設けられた電磁コイルと、前記第1の面と対向するように配置され、前記電磁コイルに通電されたとき前記第1の面に近づくアーマチュアと、前記アーマチュアと前記フィールドとの間に配置され、前記第1の面から離れる方向に向かって前記アーマチュアを付勢する付勢部とを備えるブレーキ装置に用いられる緩衝部材であって、
前記第2の面から前記第1の面に向かって前記穴に挿入可能に形成され、一端に緩衝部が配置され、前記アーマチュアが前記第1の面に近づく方向に移動したとき、前記アーマチュアが前記緩衝部に接触するように前記穴に配置される緩衝部材。
【符号の説明】
【0067】
1 エレベータ用巻上機、2 機械台、3 綱車、4 ブレーキディスク、5 回転軸、6 モータ、7 軸受台、7a 取付部、8 ブレーキ装置、10 フィールド、11 第1の面、12 第2の面、13 バネ収納穴、14 コイル収納溝、15 ガイド部収納穴、16 穴、16a 小穴、16b 大穴、20 アーマチュア、21 第3の面、22 第4の面、23 ガイド部収納穴、31 ブレーキパッド、32 ブレーキパッド、40 ブレーキ軸、50 連結部材、51 延伸部、60 バネ、70 バネ、80 電磁コイル、90 ガイド部、100 緩衝部材100 緩衝部、120 支持部、121 突起部、130 鍔部
【要約】
【課題】緩衝部110を容易に交換することができ、かつ、フィールド10とアーマチュア20とが接触する際の接触音の発生を抑制することができるブレーキ装置8及び緩衝部材100を得る。
【解決手段】ブレーキ装置8は、フィールド10、電磁コイル80、アーマチュア20、付勢部70及び緩衝部材100を備える。フィールド10は、第1の面11及び第2の面12を有し、第1の面11から第2の面12へ貫通する穴16が形成される。緩衝部材100は、第2の面12から第1の面11に向かって穴16に挿入可能に形成され、一端に緩衝部110が配置され、アーマチュア20が第1の面11に近づいたとき、アーマチュア20が緩衝部110に接触するように穴16に配置される。
【選択図】
図3