(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】測量用治具
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20250115BHJP
【FI】
G01C15/00
(21)【出願番号】P 2023179620
(22)【出願日】2023-10-18
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 一夫
(72)【発明者】
【氏名】江口 圭介
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209910668(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111497893(CN,A)
【文献】特開2018-001399(JP,A)
【文献】特開2022-117308(JP,A)
【文献】特開2015-131457(JP,A)
【文献】特開平05-177364(JP,A)
【文献】中国実用新案第219757303(CN,U)
【文献】特開2023-073151(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2510248(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00 - 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TS受光機をコンクリート型枠に対して設置する際に使用する
測量用治具であって、
中央に前記
TS受光機の先端を位置決めして保持するための保持部を有し、中央から放射状に延びる4本の脚部を含む平面視で略十字形状の治具本体と、
前記治具本体に対して前記保持部の周囲に4つ配置され、それぞれが前記脚部の長手方向に沿って移動することで前記コンクリート型枠を挟持可能な挟持部とを備え、
前記挟持部のそれぞれは、前記コンクリート型枠を挟持するときに、前記保持部との距離が同距離に保持されることを特徴とする
測量用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の
測量用治具であって、
前記挟持部は、前記コンクリート型枠の側面と当接する型枠側面当接部を有しており、
前記型枠側面当接部は、前記治具本体の長手方向と直交する回転軸周りに回転自在であり、かつ、前記回転軸と直交する断面が略L字形状であることを特徴とする
測量用治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の
測量用治具であって、
前記挟持部のそれぞれは、自然長およびバネ定数が同じ圧縮バネによって前記保持部側に向けて付勢されており、
前記挟持部が前記コンクリート型枠を挟持するときに、前記圧縮バネのバネ力が等しくなることで前記保持部との距離が同距離に保持されることを特徴とする
測量用治具。
【請求項4】
請求項1または2に記載の
測量用治具であって、
1つの前記挟持部が移動された場合に、他の3つの前記挟持部を連動して移動させる連動部を備え、
前記連動部は、それぞれの挟持部と保持部との距離が同距離に保持されるように4つの前記挟持部を連動させることを特徴とする
測量用治具。
【請求項5】
請求項4に記載の
測量用治具であって、
前記連動部は、4つの前記挟持部のうちの任意の2つを繋ぐベルト部材を3本含んでおり、
前記各挟持部は、3本の前記ベルト部材のうちの少なくとも1本に繋がれており、
前記各ベルト部材は、繋がれている2つの前記挟持部の間の所定経路に沿った距離を一定に保つことを特徴とする
測量用治具。
【請求項6】
請求項4に記載の
測量用治具であって、
前記連動部は、前記治具本体に軸支されるピニオンギアと、前記脚部に沿って配置されて前記挟持部のそれぞれに接続され、かつ前記ピニオンギアに噛合するラックギアとを含むことを特徴とする
測量用治具。
【請求項7】
請求項
2に記載の
測量用治具であって、
前記挟持部のそれぞれは、前記治具本体に対して前記回転軸に平行な方向の位置調整が可能であることを特徴とする
測量用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測量用具をコンクリート型枠に対して設置する際に使用する型枠検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
三角測量を行う測量システムとして、例えばトータルステーション(TS)を用いた測量システムが知られており、この測量システムは基礎工事の測量にも用いられる(例えば特許文献1)。トータルステーションとは、角度や距離を測定する測量機器であり、TS本体からレーザ光を照射し、このレーザ光をTS受光機で捕捉することで位置情報を計測することができる。自動追尾型のTSでは、TS本体と無線接続された端末(スマートフォン等)の画面上にTS受光機の位置情報を表示することもできる。端末の画面上に表示された誘導に従うことで、作業者は杭の位置出しや縄張り作業、施工精度確認を行うことができる。
【0003】
基礎工事の施工精度確認では、基礎の芯にTS受光機を設置し、
図10に示すように、辺長や対角といった基礎の長さや敷地境界線までの距離、基礎天端の高さ等を計測する。コンクリートの打設後においては施工位置の修正ができないため、コンクリート打設前の精度確認が特に重要である。このため、TS受光機は、基礎の芯に対して位置決めされる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基礎工事の施工精度確認にトータルステーションを用いる場合、下記のような課題がある。
【0006】
(課題1)一般に、コンクリート打設前の基礎工事段階では、コンクリート型枠(以下、型枠と略称する場合もある)の上に定規を設置し、型枠と定規とを固定することで型枠の動きを抑制し、コンクリートの施工精度を確保している。但し、定規に沿わせてTS受光機を設置しようとしても、基礎の仕様によっては芯位置に定規がなく中空となっているケースがあり、TS受光機の先端を基礎・型枠の芯にあてがうことができず、位置測定を行うことができない。
【0007】
(課題2)
上記の(課題1)が生じる場合、型枠の上部を挟み込むような「巾止め」と言われるプレート材を治具として用い、その上にTS受光機を設置することが考えられる。しかしながら、このような「巾止め」は、一般部(
図11(a))では使用できても、出入隅(
図11(b))、T字部(
図11(c))および十字部(
図11(d))では寸法が足らず、かつ型枠の直角部分にフィットさせることができない。すなわち、TS受光機をコンクリート型枠の任意の箇所に位置決めできない。
【0008】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンクリート型枠の任意の箇所でTS受光機を容易に位置決めできる型枠検査治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示の型枠検査治具は、測量用具をコンクリート型枠に対して設置する際に使用する型枠検査治具であって、中央に前記測量用具の先端を位置決めして保持するための保持部を有し、中央から放射状に延びる4本の脚部を含む平面視で略十字形状の治具本体と、前記治具本体に対して前記保持部の周囲に4つ配置され、それぞれが前記脚部の長手方向に沿って移動することで前記コンクリート型枠を挟持可能な挟持部とを備え、前記挟持部のそれぞれは、前記コンクリート型枠を挟持するときに、前記保持部との距離が同距離に保持されることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、コンクリート型枠に対して4つの挟持部で挟み込むようにして型枠検査治具を取り付けることができる。挟持部の位置はコンクリート型枠のサイズ(挟持箇所の枠幅)に応じて調整可能であるため、コンクリート型枠の任意の箇所に対して型枠検査治具の取付けが可能となる。また、それぞれの挟持部と保持部との距離が同距離に保持されることで、コンクリート型枠に対して測量用具(例えば、TS受光機)を容易に位置決めできる。
【0011】
また、上記型枠検査治具では、前記挟持部は、前記コンクリート型枠の側面と当接する型枠側面当接部を有しており、前記型枠側面当接部は、前記治具本体の長手方向と直交する回転軸周りに回転自在であり、かつ、前記回転軸と直交する断面が略L字形状である構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、断面略L字形状の型枠側面当接部を回転させることで、コンクリート型枠の任意の箇所(一般部、出入隅、T字部、十字部等)に対して、安定した治具取付けが可能となる。
【0013】
また、上記型枠検査治具では、前記挟持部のそれぞれは、自然長およびバネ定数が同じ圧縮バネによって前記保持部側に向けて付勢されており、前記挟持部が前記コンクリート型枠を挟持するときに、前記圧縮バネのバネ力が等しくなることで前記保持部との距離が同距離に保持される構成とすることができる。
【0014】
また、上記型枠検査治具は、1つの前記挟持部が移動された場合に、他の3つの前記挟持部を連動して移動させる連動部を備え、前記連動部は、それぞれの挟持部と保持部との距離が同距離に保持されるように4つの前記挟持部を連動させる構成とすることができる。
【0015】
また、上記型枠検査治具では、前記連動部は、4つの前記挟持部のうちの任意の2つを繋ぐベルト部材を3本含んでおり、前記各挟持部は、3本の前記ベルト部材のうちの少なくとも1本に繋がれており、前記各ベルト部材は、繋がれている2つの前記挟持部の間の所定経路に沿った距離を一定に保つ構成とすることができる。
【0016】
また、上記型枠検査治具では、前記連動部は、前記治具本体に軸支されるピニオンギアと、前記脚部に沿って配置されて前記挟持部のそれぞれに接続され、かつ前記ピニオンギアに噛合するラックギアとを含む構成とすることができる。
【0017】
また、上記型枠検査治具では、前記挟持部のそれぞれは、前記治具本体に対して前記回転軸に平行な方向の位置調整が可能である構成とすることができる。
【0018】
上記の構成によれば、挟持部の高さ調整によって、治具本体の水平調整が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の型枠検査治具は、挟持部の位置がコンクリート型枠のサイズに応じて調整可能であり、かつ、それぞれの挟持部と保持部との距離が同距離に保持されることで、コンクリート型枠に対して測量用具(例えば、TS受光機)を容易に位置決めできるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の一実施形態に係る型枠検査治具の概略構成を示す平面図である。
【
図2】型枠検査治具の概略構成を示す裏面図である。
【
図3】型枠検査治具の概略構成を示す断面図である。
【
図4】治具本体のスリットにおける仕込みナットの嵌合状態を示す模式断面図である。
【
図5】型枠検査治具をコンクリート型枠に取り付けた状態を示す模式断面図である。
【
図6】(a)~(e)は、型枠に対して型枠検査治具の取付状態を模式的に示す平面図である。
【
図7】型枠検査治具における芯出し機構の構成例1を示す模式図である。
【
図8】型枠検査治具における芯出し機構の構成例2を示す模式図である。
【
図9】型枠検査治具における芯出し機構の構成例3を示す模式図である。
【
図10】基礎工事の施工精度確認における測量箇所の例を示す説明図である。
【
図11】(a)~(d)は、型枠に対する巾止めの配置可否を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る型枠検査治具10の概略構成を示す平面図である。
図2は、型枠検査治具10の概略構成を示す裏面図である。
図3は、型枠検査治具10の概略構成を示す断面図(
図1および
図2のIII-III断面)である。型枠検査治具10は、三角測量等において、測量用具をコンクリート型枠である型枠20(
図5参照)に対して設置する際に使用する治具である。本実施形態では、トータルステーション(TS)を用いた測量システムを例示し、型枠検査治具10は、測量用具であるTS受光機30(
図5参照)の設置に使用されるものとする。但し、本発明の適用は、トータルステーション(TS)を用いた測量システムに限定されるものではない。以下の説明では、上下方向は、型枠検査治具10が型枠20に取り付けられた状態における方向を意味するものとする。
【0022】
図1ないし
図3に示すように、型枠検査治具10は、中央から放射状に延びる4本の脚部111を含む平面視で略十字形状の治具本体11と、治具本体11に対して摺動移動可能に取り付けられる4つの挟持部12を備えて構成されている。
【0023】
治具本体11は、その上面において、長手方向の中央にTS受光機30の先端を位置決めして保持するための保持部112を有する。本実施形態では、保持部112は凹部として形成されており、この凹部にTS受光機30のポール先端を嵌合させることでTS受光機30の先端を位置決めできる。
【0024】
また、治具本体11の各脚部111にはスリット113が形成されている。すなわち、治具本体11には、保持部112の周囲に4本のスリット113が形成されている。各スリット113は脚部111の長手方向に沿って形成され、かつ、治具本体11を上下方向に貫通する。スリット113には挟持部12が摺動移動可能にそれぞれ取り付けられる。挟持部12は、スリット113によって案内されることで脚部111の長手方向に沿って摺動移動可能であり、保持部112の周囲に4つ配置されることで型枠20を挟持可能である。
【0025】
挟持部12は、コア121、仕込みナット122および型枠側面当接部123を有している。
【0026】
コア121は、上下方向を長手方向とする棒状部材であり、上から順に、ツマミ1211、雄ネジ部1212、型枠天面当接部1213、軸部1214およびフランジ部1215を有している。ツマミ1211は、ユーザが挟持部12を操作するときに持つ操作用のツマミ部分である。雄ネジ部1212には、仕込みナット122がネジ結合される。型枠天面当接部1213は、型枠検査治具10を型枠20に取り付ける際の上下方向の位置決めに使用される。軸部1214は、型枠側面当接部123の回転軸となる。フランジ部1215は、型枠側面当接部123が軸部1214から抜け落ちることを防止する。
【0027】
仕込みナット122は、スリット113に沿って摺動移動可能に取り付けられ、かつ、スリット113に対して上下方向の移動が規制される。具体例として、
図4に示すように、スリット113は治具本体11の長手方向と直交する断面(
図1および
図2のIV-IV断面)において略十字型の断面形状を有しており、仕込みナット122はこの十字型断面の幅広部分に嵌め込まれる。これにより、仕込みナット122は、スリット113に対して上下方向の移動が規制される。また、仕込みナット122は六角ナットであり、六角形の対向する2辺間距離が、スリット113の幅広部分とほぼ等しいサイズとされている。これにより、仕込みナット122はスリット113内での軸周りの回転が不可とされている。
【0028】
型枠側面当接部123は、軸部1214を回転軸としてコア121に対して回転自在に取り付けられる。型枠側面当接部123は、平面視で(すなわち、回転軸と平行な方向から見て)、コーナー箇所の折れ曲がり角度が90°である略L字形状とされており、かつ、型枠側面当接部123の回転軸はL字のコーナー箇所に設けられている。また、L字におけるコーナー箇所からL字の両端までのそれぞれの距離は等しくされている。
【0029】
図5は、型枠検査治具10を型枠20に取り付けた状態を示す模式断面図である。尚、
図5は、互いに対向する2本の脚部111の長手方向に沿った断面を示している。
【0030】
型枠検査治具10は、4つ(
図5に示されるのは、うち2つ)の挟持部12で型枠20を挟み込むようにして取り付けられる。このとき、型枠検査治具10は、型枠20の天面に型枠天面当接部1213を載せることで上下方向に位置決めされる。型枠20の側面には型枠側面当接部123が当接する。型枠20に取り付けた型枠検査治具10においては、凹部である保持部112にTS受光機30のポール先端を嵌合させることができる。このように型枠検査治具10を用いることで、型枠20に対してTS受光機30が設置される。尚、TS受光機30のポール先端に雄ネジを形成し、保持部112を雌ネジに形成してもよい。この場合、保持部112に対してTS受光機30のポール先端をネジ締結することで、治具本体11の主面に対してTS受光機30を容易に直立させることができる。
【0031】
また、詳細は後述するが、型枠検査治具10は、挟持部12が型枠20を挟持するときに、挟持部12のそれぞれと保持部112との距離を同距離に保持するための芯出し機構を備えている。ここでは、挟持部12と保持部112との距離は、挟持部12の回転軸と保持部112の中心軸との距離L1とする。例えば、
図5において図示されている2つの挟持部12に関しては、この芯出し機構により、一方の挟持部12と保持部112との距離L1と他方の挟持部12と保持部112との距離L1とが同距離に保持される。また、
図5に図示されていない残り2つの挟持部12に関しても、挟持部12と保持部112との距離L1が同距離に保持される。これにより、型枠検査治具10は、型枠20に対するTS受光機30の芯出しを容易に行うことができる。
【0032】
さらに、型枠検査治具10は、挟持部12のコア121を回転させ、挟持部12の雄ネジ部1212と仕込みナット122との相対位置を変化させることで、治具本体11の高さ調整または水平調整を行うことができる。治具本体11の水平調整は、例えば、治具本体11の上面に気泡管水平器40を載置し、気泡管水平器40の気泡を確認しながら行うことができる。
【0033】
本実施形態の型枠検査治具10は、型枠20を4つの挟持部12で挟み込むようにして取り付けでき、挟持部12の位置は型枠20のサイズ(挟持箇所の枠幅)によって調整可能である。このため、型枠検査治具10は、型枠20の任意の箇所(一般部、出入隅、T字部、十字部等)に対して取付可能である。また、挟持部12において、型枠側面当接部123は軸部1214周りに回転自在であり、かつ、軸部1214と直交する断面が略L字形状である。そして、型枠側面当接部123を回転させることで、型枠20の任意の箇所に対して、型枠検査治具10の安定した取付けが可能となる。
【0034】
図6(a)~(e)は、型枠20に対して型枠検査治具10の取付状態を模式的に示す平面図である。
図6(a)および(b)は、型枠検査治具10を型枠20の一般部に取り付けた状態を示す。
図6(c)は、型枠検査治具10を型枠20の出入隅に取り付けた状態を示す。
図6(d)は、型枠検査治具10を型枠20のT字部に取り付けた状態を示す。
図6(e)は、型枠検査治具10を型枠20の十字部に取り付けた状態を示す。尚、
図6(a)~(e)では、型枠検査治具10において型枠側面当接部123の向きが見やすくなるように、治具本体11を仮想線で図示している。
【0035】
図6(a)~(e)に示すように、型枠20に取り付けられた型枠検査治具10では、挟持部12のそれぞれと保持部112との距離が同距離に保持される。これにより、TS受光機30を設置するための保持部112を、型枠20の幅方向中心に簡単に位置決めできる。
【0036】
続いて、型枠検査治具10における芯出し機構の構成例を以下に説明する。
【0037】
(芯出し機構の構成例1)
図7は、型枠検査治具10における芯出し機構の構成例1を示す模式図である。
図7に示す例では、挟持部12のそれぞれにおける仕込みナット122同士が、複数のベルト部材13によって接続されている。より具体的には、型枠検査治具10は、その両端に仕込みナット122が接続された3本のベルト部材13A~13C(区別しない場合はベルト部材13と総称)を有している。また、各仕込みナット122は、3本のベルト部材13のうちの少なくとも1本に繋がれている。
【0038】
図7の例では、4つの仕込みナット122の内の1つを仕込みナット122Aとし、他の3つの仕込みナット122を仕込みナット122Aから時計回り順に仕込みナット122B,仕込みナット122C,仕込みナット122Dとする。ベルト部材13Aは、仕込みナット122Aおよび122Bを接続している。ベルト部材13Bは、仕込みナット122Aおよび122Cを接続している。ベルト部材13Cは、仕込みナット122Aおよび122Dを接続している。
【0039】
また、型枠検査治具10は、治具本体11における何れかのスリット113に対して長手方向の外側(保持部112と反対側)に設けられた複数(
図7の例では3個)の第1円柱状部114と、治具本体11の中央部に設けられた第2円柱状部115とを有している。対向関係にある2本のスリット113に配置された仕込みナット122同士を接続するベルト部材13(
図7の例ではベルト部材13B)は、第1円柱状部114の外側を回る所定経路に沿って、2つの挟持部12の間の距離を一定に保つ機能を有する。また、直交関係にある2本のスリット113に配置された仕込みナット122同士を接続するベルト部材13(
図7の例ではベルト部材13A,13C)は、第1円柱状部114および第2円柱状部115の外側を回る所定経路に沿って、2つの挟持部12の間の距離を一定に保つ機能を有する。
【0040】
ベルト部材13は、高い可撓性を有すると共に、長手方向に対する伸縮性が低い材質とされる。加えて、ベルト部材13は、
図7に示される直線部分では、曲がりや撓みを発生させないことが好ましい。このため、ベルト部材13は、例えばコンベックスに使用されるような、凸状の断面を有する金属製ベルト等が好適に使用できる。本構成例1では、ベルト部材13が、特許請求の範囲の記載の連動部に相当する。
【0041】
本構成例1の芯出し機構では、1つの挟持部12をスリット113の長手方向に沿って移動させると、ベルト部材13を介して他の3つの挟持部12も移動する。このとき、4つの挟持部12は、移動方向が全て内向き(保持部112へ向かう向き)もしくは全て外向き(保持部112から離れる向き)であり、かつ移動量が同じとなる。すなわち、上記芯出し機構により、挟持部12のそれぞれと保持部112との距離L1を、常に同距離に保持することが可能となる。
【0042】
尚、上記芯出し機構においては、治具本体11の内部にベルト部材13、第1円柱状部114および第2円柱状部115を配置することが好ましい。すなわち、治具本体11の内部に空間を形成し、この空間内にベルト部材13、第1円柱状部114および第2円柱状部115を収容する構成とすることが好ましい。
【0043】
また、本構成例1において、3本のベルト部材13の配置は
図7の例に限定されるものではなく、他の任意の配置例とすることができる。例えば、3本のベルト部材13は、(a)仕込みナット122Aおよび122Bを接続するベルト部材13、(b)仕込みナット122Bおよび122Cを接続するベルト部材13、(c)仕込みナット122Cおよび122Dを接続するベルト部材13であってもよい。あるいは、3本のベルト部材13は、(a)仕込みナット122Aおよび122Cを接続するベルト部材13、(b)仕込みナット122Bおよび122Dを接続するベルト部材13、(c)仕込みナット122Aおよび122Dを接続するベルト部材13であってもよい。
【0044】
また、3本のベルト部材13は、平面視においてその経路が重なる場合、上下方向に経路をずらして配置される。
図7の例では、ベルト部材13Cがベルト部材13Aおよび13Bの両方に対して経路が重なっているため、ベルト部材13Cはベルト部材13Aおよび13Bの両方に対して上下方向の位置がずらされる。また、ベルト部材13A,13B同士は、平面視において経路が重なっていないため、上下方向において同位置の配置であってもよい。
【0045】
(芯出し機構の構成例2)
図8は、型枠検査治具10における芯出し機構の構成例2を示す模式図である。
図8に示す例では、挟持部12のそれぞれにおける仕込みナット122に対して、仕込みナット122の外側(保持部112と反対側)に圧縮バネ14がスリット113内に配置されている。これにより、挟持部12のそれぞれは、圧縮バネ14によって保持部112側に向けて付勢されている。本構成例では、それぞれのスリット113の外側端部と保持部112との距離L2が互いに等しくされている。また、2つの圧縮バネ14は、自然長およびバネ定数が互いに等しい同一種類のバネとされている。
【0046】
本構成例2の芯出し機構では、型枠検査治具10を型枠20に取り付けたとき、4つの圧縮バネ14に生じるバネ力が等しくなる状態で安定する。このとき、4つの圧縮バネ14は同一種類のバネであることから、各圧縮バネ14のバネ長L3が互いに等しくなる。
図8に示す通り、全てのL2が等しく、かつ全てのL3が等しい場合、全ての挟持部12において保持部112との距離L1を同距離に保持することが可能となる。
【0047】
(芯出し機構の構成例3)
図9は、型枠検査治具10における芯出し機構の構成例3を示す模式図である。
図9に示す例では、4つのスリット113の中央にピニオンギア151を設け、挟持部12の仕込みナット122には、スリット113の長手方向に沿って(すなわち、脚部111に沿って配置されて)内側に延びるラックギア152がそれぞれ設けられる。4本のラックギア152は、ピニオンギア151の周囲に90°間隔で対称となるように設けられ、共にピニオンギア151に対して噛合している。本構成例3では、ピニオンギア151およびラックギア152が、特許請求の範囲の記載の連動部に相当する。
【0048】
本構成例3の芯出し機構では、1つの挟持部12をスリット113の長手方向に沿って移動させると、ピニオンギア151およびラックギア152を介して他の3つの挟持部12も移動する。このとき、4つの挟持部12は、移動方向が全て内向き(保持部112へ向かう向き)もしくは全て外向き(保持部112から離れる向き)であり、かつ移動量が同じとなる。すなわち、上記芯出し機構により、挟持部12のそれぞれと保持部112との距離L1を、常に同距離に保持することが可能となる。
【0049】
尚、上記芯出し機構においては、治具本体11の内部にピニオンギア151およびラックギア152を配置することが好ましい。すなわち、治具本体11の内部に空間を形成し、この空間内にピニオンギア151およびラックギア152を収容する構成とすることが好ましい。また、上記芯出し機構では、平面視においてピニオンギア151と保持部112との配置箇所が重なるため、ピニオンギア151および保持部112は上下方向において干渉しない構成とされる必要がある。このため、治具本体11の上面の中央部(2つのスリット113の間)に凸部を設け、この凸部の天面に保持部112を形成してもよい。
【0050】
さらに、4本のラックギア152は、平面視においてその経路が重なるものについては、上下方向に経路をずらして配置される。
図10の例では、互いに90°の間隔で配置された2つのラックギア152については、その経路が重なるため、上下方向の位置がずらされる。また、互いに180°の間隔で配置された(対向位置にある)2つのラックギア152については、その経路が重ならないため、上下方向において同位置の配置とされていてもよい。
【0051】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【0052】
本開示の型枠検査治具10は、以下の付記に係る様々な形態で実現することが可能である。
【0053】
(付記1)
測量用具をコンクリート型枠に対して設置する際に使用する型枠検査治具であって、
中央に前記測量用具の先端を位置決めして保持するための保持部を有し、中央から放射状に延びる4本の脚部を含む平面視で略十字形状の治具本体と、
前記治具本体に対して前記保持部の周囲に4つ配置され、それぞれが前記脚部の長手方向に沿って移動することで前記コンクリート型枠を挟持可能な挟持部とを備え、
前記挟持部のそれぞれは、前記コンクリート型枠を挟持するときに、前記保持部との距離が同距離に保持されることを特徴とする型枠検査治具。
【0054】
(付記2)
付記1に記載の型枠検査治具であって、
前記挟持部は、前記コンクリート型枠の側面と当接する型枠側面当接部を有しており、
前記型枠側面当接部は、前記治具本体の長手方向と直交する回転軸周りに回転自在であり、かつ、前記回転軸と直交する断面が略L字形状であることを特徴とする型枠検査治具。
【0055】
(付記3)
付記1または2に記載の型枠検査治具であって、
前記挟持部のそれぞれは、自然長およびバネ定数が同じ圧縮バネによって前記保持部側に向けて付勢されており、
前記挟持部が前記コンクリート型枠を挟持するときに、前記圧縮バネのバネ力が等しくなることで前記保持部との距離が同距離に保持されることを特徴とする型枠検査治具。
【0056】
(付記4)
付記1または2に記載の型枠検査治具であって、
1つの前記挟持部が移動された場合に、他の3つの前記挟持部を連動して移動させる連動部を備え、
前記連動部は、それぞれの挟持部と保持部との距離が同距離に保持されるように4つの前記挟持部を連動させることを特徴とする型枠検査治具。
【0057】
(付記5)
付記4に記載の型枠検査治具であって、
前記連動部は、4つの前記挟持部のうちの任意の2つを繋ぐベルト部材を3本含んでおり、
前記各挟持部は、3本の前記ベルト部材のうちの少なくとも1本に繋がれており、
前記各ベルト部材は、繋がれている2つの前記挟持部の間の所定経路に沿った距離を一定に保つことを特徴とする型枠検査治具。
【0058】
(付記6)
付記4に記載の型枠検査治具であって、
前記連動部は、前記治具本体に軸支されるピニオンギアと、前記脚部に沿って配置されて前記挟持部のそれぞれに接続され、かつ前記ピニオンギアに噛合するラックギアとを含むことを特徴とする型枠検査治具。
【0059】
(付記7)
付記1から6の何れか1項に記載の型枠検査治具であって、
前記挟持部のそれぞれは、前記治具本体に対して前記回転軸に平行な方向の位置調整が可能であることを特徴とする型枠検査治具。
【符号の説明】
【0060】
10 型枠検査治具
11 治具本体
111 脚部
112 保持部
113 スリット
114 第1円柱状部
115 第2円柱状部
12 挟持部
121 コア
1211 ツマミ
1212 雄ネジ部
1213 型枠天面当接部
1214 軸部(回転軸)
1215 フランジ部
122 仕込みナット
123 型枠側面当接部
13,13A~13C ベルト部材(連動部)
14 圧縮バネ
151 ピニオンギア(連動部)
152 ラックギア(連動部)
20 型枠(コンクリート型枠)
30 TS受光機(測量用具)
40 気泡管水平器
【要約】 (修正有)
【課題】コンクリート型枠の任意の箇所でTS受光機を容易に位置決めできる型枠検査治具を提供することを目的とする。
【解決手段】型枠検査治具10は、TS受光機30を型枠20に対して設置する際に使用するものであり、中央にTS受光機30の先端を位置決めして保持するための保持部112を有し、中央から放射状に延びる4本の脚部111を含む平面視で略十字形状の治具本体11と、治具本体11に対して保持部112の周囲に4つ配置され、それぞれが脚部111の長手方向に沿って移動することで型枠20を挟持可能な挟持部12とを備える。挟持部12のそれぞれは、型枠20を挟持するときに、保持部112との距離が同距離に保持される。
【選択図】
図5