(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】走査型プローブ顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G01Q 30/02 20100101AFI20250115BHJP
G01Q 20/02 20100101ALI20250115BHJP
【FI】
G01Q30/02
G01Q20/02
(21)【出願番号】P 2023548109
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2022011934
(87)【国際公開番号】W WO2023042444
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2021149504
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 賢治
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-069657(JP,A)
【文献】特開2002-196247(JP,A)
【文献】特開2006-242665(JP,A)
【文献】特開2011-257504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0229262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00 - 90/00
G02B 7/04
G02B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対向して配置される探針を含むカンチレバーと、
前記カンチレバーおよび前記試料を含む観察対象領域内における観察対象体の拡大画像を取得可能な位置に配置される光学顕微鏡と、
前記観察対象体を移動させるための動作をする第1駆動源と、
前記光学顕微鏡を移動させるための動作をする第2駆動源と、
前記第1駆動源および前記第2駆動源を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
初期位置から前記観察対象体に対して前記光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、前記焦点を確認しながら
第1速度で前記光学顕微鏡を移動させ、前記焦点が合った状態における前記光学顕微鏡と前記観察対象体との相対位置を特定することが可能な情報を記憶し、
新たに前記観察対象体に対して前記光学顕微鏡の焦点を合わせる場合に、記憶された前記相対位置を特定することが可能な情報に基づいて、前記相対位置となるまで
前記第1速度よりも高速度の第3速度で前記光学顕微鏡を移動させた後、前記観察対象体に対して前記光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、前記焦点を確認しながら
前記第1速度よりも低速度の第2速度で前記光学顕微鏡を移動させる制御をする、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
試料に対向して配置される探針を含むカンチレバーと、
前記カンチレバーの拡大画像を取得可能な位置に配置される光学顕微鏡と、
前記カンチレバーを移動させるための動作をする第1パルスモータと、
前記光学顕微鏡を移動させるための動作をする第2パルスモータと、
前記第1パルスモータおよび前記第2パルスモータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記第1パルスモータに供給する第1パルスの数に応じた移動距離で前記カンチレバーを第1初期位置から移動させる制御をすることが可能であり、
前記第2パルスモータに供給する第2パルスの数に応じた移動距離で前記光学顕微鏡を第2初期位置から移動させる制御をすることが可能であり、
前記第2初期位置から前記カンチレバーに対して前記光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、前記焦点を確認しながら
第1速度で前記光学顕微鏡を移動させ、前記焦点が合った状態における前記光学顕微鏡と前記カンチレバーとの相対位置を特定することが可能な前記第1パルスの供給数および前記第2パルスの供給数を記憶し、
新たに前記カンチレバーに対して前記光学顕微鏡の焦点を合わせる場合に、記憶された前記第1パルスの供給数および前記第2パルスの供給数に基づいて、前記相対位置となるまで
前記第1速度よりも高速度の第3速度で前記光学顕微鏡を移動させた後、前記カンチレバーに対して前記光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、前記焦点を確認しながら
前記第1速度よりも低速度の第2速度で前記光学顕微鏡を移動させる制御をする、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記第1パルスモータは、前記第1パルスが供給されるごとに前記カンチレバーを第1距離ずつ移動させ、
前記第2パルスモータは、前記第2パルスが供給されるごとに前記光学顕微鏡を第2距離ずつ移動させる、請求項2に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記制御装置は、記憶された前記第1パルスの供給数および前記第2パルスの供給数に基づいて、前記相対位置となるまで前記光学顕微鏡を移動させる場合に、記憶された前記第1パルスの供給数および前記第2パルスの供給数と、前記第1パルスが供給されるごとに前記カンチレバーが移動する第1距離と、前記第2パルスが供給されるごとに前記光学顕微鏡が移動する第2距離とに基づいて、前記第2パルスモータに供給する前記第2パルスの数を設定する、請求項2または請求項3に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記カンチレバーを移動させる第1駆動機構と、
前記光学顕微鏡を移動させる第2駆動機構とをさらに備え、
前記第1パルスモータは、前記第1パルスが供給されるごとに前記第1駆動機構により前記カンチレバーを移動させ、
前記第2パルスモータは、前記第2パルスが供給されるごとに前記第2駆動機構により前記光学顕微鏡を移動させる、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡では、カンチレバーの先端部に形成された探針が試料に対向して配置される。走査型プローブ顕微鏡では、試料に近づけたカンチレバーの反りまたは振動の変化を、カンチレバー背面に照射したレーザの反射光の変化に変換してフォトディテクタによって検出する。フォトディテクタは、反射光の位置、強度、および位相等の変化を検出する。走査型プローブ顕微鏡は、フォトディテクタが検出した情報を様々な物理情報に変換することにより、試料の様々な物理情報を測定する。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡では、試料またはカンチレバーのような観察対象体の状態を観察するために、試料およびカンチレバーを含む観察対象領域内における観察対象体の拡大画像を取得可能な位置に光学顕微鏡が配置される。
【0004】
走査型プローブ顕微鏡では、試料の測定に先だって、カンチレバーの背面にレーザ光が正しく照射されるように、レーザ光の光軸調整が行われる。レーザ光の光軸調整が行われる場合には、カンチレバーの背面にレーザ光が正しく照射されることを確認するために、光学顕微鏡の焦点をカンチレバーの背面のような観察対象体に合せる必要がある。
【0005】
光学顕微鏡の焦点を観察対象体に合せる場合には、例えば光学顕微鏡を、観察対象体から最も離れた位置などの初期位置から、観察対象体に対して光学顕微鏡の焦点が合う位置まで観察対象体に向けて移動させるなど、光学顕微鏡の位置を移動させることに基づいて、光学顕微鏡の焦点を観察対象体に合せる動作が実行される。
【0006】
光学顕微鏡の焦点を観察対象体に合せる動作を実行する場合には、観察対象体に対して光学顕微鏡の焦点が合っているかどうかを、光学顕微鏡により得られた画像に基づいて観察対象領域内における観察対象体の画像処理を実行して確認しながら、光学顕微鏡を比較的広範囲で移動させることが必要である。
【0007】
レーザ光の光軸調整に関する技術の一例としては、特許文献1(特許第6627953号公報)に、画像に基づいてレーザ光のスポットの位置とカンチレバーの先端の位置とを特定する画像処理部を備える走査型プローブ顕微鏡が開示されている。特許文献1に開示された走査型プローブ顕微鏡は、特定されたレーザ光のスポットの位置とカンチレバーの先端の位置とに基づいてレーザ光源の位置を調整する光軸調整部をさらに備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の走査型プローブ顕微鏡では、光学顕微鏡の焦点を観察対象体に合せるために、観察対象体に対して光学顕微鏡の焦点が合っているかどうかを画像処理を実行して確認しながら、光学顕微鏡を比較的広範囲で移動させていた。これにより、光学顕微鏡の焦点を観察対象体に合せるために光学顕微鏡を移動させる速度に制限が生じる。そして、光学顕微鏡を移動させる速度に制限が生じることにより、光学顕微鏡の焦点を観察対象体に合せる場合に要する時間が長期間化するという問題があった。
【0010】
この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、光学顕微鏡の焦点を合せる際に要する期間を短期間化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のある局面に従う走査型プローブ顕微鏡は、試料に対向して配置される探針を含むカンチレバーと、カンチレバーおよび試料を含む観察対象領域内における観察対象体の拡大画像を取得可能な位置に配置される光学顕微鏡と、観察対象体を移動させるための動作をする第1駆動源と、光学顕微鏡を移動させるための動作をする第2駆動源と、第1駆動源および第2駆動源を制御する制御装置とを備える。制御装置は、初期位置から観察対象体に対して光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡を移動させ、焦点が合った状態における光学顕微鏡と観察対象体との相対位置を特定することが可能な情報を記憶し、新たに観察対象体に対して光学顕微鏡の焦点を合わせる場合に、記憶された相対位置を特定することが可能な情報に基づいて、相対位置となるまで光学顕微鏡を移動させた後、観察対象体に対して光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡を移動させる制御をする。
【0012】
この発明の別の局面に従う走査型プローブ顕微鏡は、試料に対向して配置される探針を含むカンチレバーと、カンチレバーの拡大画像を取得可能な位置に配置される光学顕微鏡と、カンチレバーを移動させるための動作をする第1パルスモータと、光学顕微鏡を移動させるための動作をする第2パルスモータと、第1パルスモータおよび第2パルスモータを制御する制御装置とを備える。制御装置は、第1パルスモータに供給する第1パルスの数に応じた移動距離でカンチレバーを第1初期位置から移動させる制御をすることが可能であり、第2パルスモータに供給する第2パルスの数に応じた移動距離で光学顕微鏡を第2初期位置から移動させる制御をすることが可能であり、第2初期位置からカンチレバーに対して光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡を移動させ、焦点が合った状態における光学顕微鏡とカンチレバーとの相対位置を特定することが可能な第1パルスの供給数および第2パルスの供給数を記憶し、新たにカンチレバーに対して光学顕微鏡の焦点を合わせる場合に、記憶された第1パルスの供給数および第2パルスの供給数に基づいて、相対位置となるまで光学顕微鏡を移動させた後、カンチレバーに対して光学顕微鏡の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡を移動させる制御をする。
【発明の効果】
【0013】
光学顕微鏡の焦点を合せる際に要する期間を短期間化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の走査型プローブ顕微鏡1の主な構造体の構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】実施形態の走査型プローブ顕微鏡1の主な構造体および制御回路の構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一の符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0016】
[走査型プローブ顕微鏡1の主な構造体および制御回路の構成]
図1は、実施形態の走査型プローブ顕微鏡1の主な構造体の構成を模式的に示す側面図である。
図2は、実施形態の走査型プローブ顕微鏡1の主な構造体および制御回路の構成を模式的に示すブロック図である。以下の説明では、走査型プローブ顕微鏡1の接地面をXY平面とし、XY平面に対して垂直な軸をZ軸とする。
【0017】
図1および
図2を参照して、走査型プローブ顕微鏡1は、主たる構成要素として、カンチレバー2、ホルダ41、ヘッド4、ケース5、光学系20、駆動装置30,40、スキャナ7、試料保持部6、光学顕微鏡9、駆動回路31,32,33、第1パルスモータ8、第2パルスモータ10、モータ軸81,11、連結機構82、および、制御装置100を備える。
図2においては、制御系の構成を明確化するために、ヘッド4の一部を省略した図形が示されている。
【0018】
カンチレバー2は、試料Sの測定時において試料保持部6に載置された試料Sの上方に位置するように設けられている。カンチレバー2は、一方端側である後端側が上下方向に移動可能にホルダ41に支持されており、他方端側である先端側に探針3を有する。
【0019】
ホルダ41は、連結機構82により連結されて連動する複数本のアーム部材からなるヘッド4のうちの1つのアーム部材に取付けられている。ホルダ41は、Z軸方向における上下方向に移動可能なヘッド4の上下方向の移動に従って、Z軸方向において上下方向に移動する。ヘッド4は、Z方向の部材の一部が収納される筒状のケース5で覆われた部分に形成されたネジ部51と、第1パルスモータ8のモータ軸81に同軸的に取付けられたギヤ52とが噛み合わせられて構成される動作方向変換機構よりなる駆動機構50により、Z軸方向において上下方向に駆動される。駆動機構50においては、モータ軸81の回転動作がヘッド4のZ方向への移動動作に変換される。ヘッド4は、駆動機構50以外の駆動機構により、XY方向にも移動させることが可能である。
【0020】
駆動回路31は、駆動源としての第1パルスモータ8にパルスを供給することにより、第1パルスモータ8を駆動する。駆動回路32は、駆動源としての第2パルスモータ10にパルスを供給することにより、第2パルスモータ10を駆動する。第1パルスモータ8は、1つのパルスが供給されるごとに第1回転量ずつ回転する。第2パルスモータ10は、1つのパルスが供給されるごとに第2回転量ずつ回転する。
【0021】
光学系20は、測定時に、カンチレバー2の裏面(試料Sと対向する表面と反対側の面)にレーザ光LAを照射し、カンチレバー2の裏面で反射されたレーザ光LAを検出する。制御装置100は、光学系20が検出したレーザ光LAに基づいて、カンチレバー2の撓みを演算する。光学系20は、レーザ光源24と、ビームスプリッタ21と、反射鏡22と、検出器23とを備える。
【0022】
レーザ光源24は、レーザ光LAを発射するレーザ発振器などによって構成される。レーザ光源24から発射されたレーザ光LAは、ビームスプリッタ21で反射されて、カンチレバー2に照射される。カンチレバー2に照射されたレーザ光LAは、カンチレバー2の裏面で反射され、反射鏡22によってさらに反射されて、検出器23に入射される。検出器23は、カンチレバー2の裏面で反射されたレーザ光LAを受けるための受光面230を有する。検出器23は、受光面230が受けたレーザ光LAを検出し、得られた検出結果を制御装置100に出力する。
【0023】
駆動装置30は、モータよりなる駆動源と、駆動源の駆動力によってレーザ光源24を移動させる駆動機構とを含む。駆動装置30は、レーザ光源24から発射するレーザ光LAの光軸に対して直交する面(
図1に示す例では、YZ平面)に沿ってレーザ光源24を移動させる。駆動装置30は、制御装置100からの制御信号に従ってモータを駆動させることで、レーザ光源24を移動させ、レーザ光LAがカンチレバー2に反射するようにレーザ光LAの光軸が調整される。
【0024】
駆動装置40は、モータよりなる駆動源と、駆動源の駆動力によって検出器23を移動させる駆動機構とを含む。駆動装置40は、反射鏡22によって反射されて受光面230に入射するレーザ光LAの光軸と直交する面(
図1に示す例では、YZ平面)に沿って検出器23を移動させる。駆動装置40は、たとえば、制御装置100からの制御信号に従ってモータを駆動させることで、検出器23を移動させ、カンチレバー2で反射されたレーザ光LAが、受光面230の中央に入射するように検出器23の位置が調整される。
【0025】
スキャナ7は円筒形状を有する。試料Sは、スキャナ7上に載置された試料保持部6の上に保持される。スキャナ7は、試料Sを互いに直交するX、Yの2軸方向に走査するXYスキャナと、試料SをX軸およびY軸に対して直交するZ軸方向に微動させるZスキャナとを有する。XYスキャナおよびZスキャナは、駆動回路33から印加される電圧によって変形する圧電素子を駆動源としている。XYスキャナおよびZスキャナによってスキャナ7は3次元方向に駆動される。
【0026】
駆動回路33は、スキャナ7に含まれる圧電素子に電圧を印加することにより、スキャナ7を3次元方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に駆動する。これにより、駆動回路33は、スキャナ7上の試料保持部6に載置された試料Sと探針3との間の相対的な位置関係を変化させることができる。
【0027】
光学顕微鏡9は、探針3の上方に配置されており、観察対象体であるカンチレバー2および試料Sを含む観察対象領域内をイメージセンサ等により撮像することにより観察対象体の拡大画像を取得可能である。光学顕微鏡9は、撮像視野に存在する観察対象体を撮像して画像データを取得する。光学顕微鏡9は、取得した画像データを制御装置100に出力する。光学顕微鏡9が取得した画像データは、たとえば、レーザ光LAの光軸を調整するため、および、観察対象体に対する光学顕微鏡9の焦点を合わせるため等に用いられる。
【0028】
光学顕微鏡9は、光学顕微鏡9のケースの内部においてZ方向に設けられた部材に形成されたネジ部91と、第2パルスモータ10のモータ軸11に同軸的に取付けられたギヤ92とが噛み合わせられて構成される動作方向変換機構よりなる駆動機構90により、Z軸方向において上下方向に駆動される。駆動機構90においては、モータ軸11の回転動作が光学顕微鏡9のZ方向への移動動作に変換される。
【0029】
制御装置100は、走査型プローブ顕微鏡1を構成する各部の動作を制御する。制御装置100は、一例として、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従って構成される。なお、制御装置100は、走査型プローブ顕微鏡1に専用のハードウェアを用いて実装されてもよい。制御装置100は、プロセッサ101、メモリ102、表示部103、および、入力部104を備える。また、制御装置100は、プロセッサ101およびメモリ102を備えたものであり、表示部103および入力部104が、制御装置100に含まれない表示装置および入力装置として、制御装置100に接続される構成であってもよい。
【0030】
プロセッサ101は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)またはMP
U(Multi Processing Unit)などの演算処理部である。プロセッサ101は、メモリ
102に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、後述する制御装置100の処理の各々を実現する。なお、
図2の例では、プロセッサが単数である構成を例示しているが、制御装置100は、複数のプロセッサを有していてもよい。
【0031】
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって実現される。メモリ102は、プロセッサ101によって実行されるプログラム、またはプロセッサ101によって用いられるデータなどを記憶する。たとえば、メモリ102は、
図3に示すような処理を実行するためのプログラム等の各種のプログラムを格納する。
【0032】
なお、メモリ102は、コンピュータの一種である制御装置100が可読可能な形式で非一時的にプログラムを記録することができれば、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk-Read Only Memory)、
USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリーカード、FD(Flexible Disk)、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、磁気テープ、カセットテープ、MO
(Magnetic Optical Disc)、MD(Mini Disc)、IC(Integrated Circuit)カード(メモリーカードを除く)、光カード、マスクROM、またはEPROMであってもよい。
【0033】
表示部103は、液晶表示パネルなどによって構成される。表示部103は、たとえば、走査型プローブ顕微鏡1によって測定した測定結果、または走査型プローブ顕微鏡1による測定を行うための各種設定画面などを表示する。
【0034】
入力部104は、マウス、キーボードなどによって構成される。入力部104は、入力部104を介して入力された情報を受け付ける入力インターフェイスである。なお、制御装置100は、表示部103および入力部104が一体となった、タッチパネルを備えてもよい。
【0035】
制御装置100は、駆動回路31に制御信号を送り、駆動回路31が制御信号に応じたパルスを第1パルスモータ8に供給することにより、第1パルスモータ8を駆動する。制御装置100は、駆動回路32に制御信号を送り、駆動回路32が制御信号に応じたパルスを第2パルスモータ10に供給することにより、第2パルスモータ10を駆動する。制御装置100は、駆動回路33に制御信号を送り、駆動回路33が制御信号に応じた電圧をスキャナ7に印加することにより、スキャナ7を駆動する。
【0036】
制御装置100は、駆動装置30に制御信号を送り、駆動装置30が制御信号に応じてモータを駆動することにより、駆動装置30によりレーザ光源24を移動させる。制御装置100は、駆動装置40に制御信号を送り、駆動装置40が制御信号に応じてモータを駆動することにより、駆動装置40により検出器23を移動させる。
【0037】
[光学顕微鏡9の焦点調整処理]
図3を参照して、焦点調整処理について説明する。焦点調整処理は、例えばカンチレバー2のような観察対象体に対して光学顕微鏡9の焦点を合わせるための焦点調整をする処理である。
【0038】
図3は、焦点調整処理のフローチャートである。焦点調整処理を実行するプログラムは、制御装置100のメモリ102に記憶されており、プロセッサ101により実行される。以下の説明においては、パルスの名称を区別しやすくするために、第1パルスモータ8に供給するパルスを第1パルスという名称で示し、第2パルスモータ10に供給するパルスを第2パルスという名称で示す場合がある。
【0039】
プロセッサ101は、焦点調整処理において以下のような処理を実行する。プロセッサ101は、ステップS1により、現在が、光学顕微鏡9の焦点を合わせるための焦点初期設定時であるか否かを判定する。
【0040】
プロセッサ101は、ステップS1により焦点初期設定時ではないと判定された場合に、後述するステップS4に進む。一方、プロセッサ101は、ステップS1により焦点初期設定時であると判定された場合に、ステップS2により、次のような処理を実行する。
【0041】
プロセッサ101は、ステップS2において、ヘッド4が停止した状態で光学顕微鏡9を初期位置から比較的に低速度である第1速度で移動させながら、光学顕微鏡9により得られる画像に基づいて、カンチレバー2に焦点が合う位置を判定した後、判定した位置の近辺を第1速度よりも低速度の第2速度で光学顕微鏡9をゆっくりと移動させながら、光学顕微鏡9により得られる画像に基づいて、焦点が合った位置を判定し、焦点があった相対位置を確定させる。
【0042】
ステップS2における「初期位置」は、例えば光学顕微鏡9がカンチレバー2に対して最も遠い位置である。ステップS2における「カンチレバー2に焦点が合う位置」は、光学顕微鏡9により得られるカンチレバー2の周辺画像において、カンチレバー2の画素と、その画素に隣り合う画素とを比較した場合のコントラスト比等のフォーカス値が最も大きくなった位置である。つまり、隣り合う画素を特定するデータ値の差異が最も大きく異なる場合に、光学顕微鏡9により得られるカンチレバー2の周辺画像に基づいて、光学顕微鏡9の焦点が合った状態であると判定される。
【0043】
ステップS2における「相対位置」は、光学顕微鏡9の位置とカンチレバー2の位置との相対位置である。
【0044】
次に、プロセッサ101は、ステップS3において、焦点が合った光学顕微鏡9とカンチレバー2との相対位置を特定するために、焦点初期設定時において、光学顕微鏡9を初期位置から移動させるために第2パルスモータ10に供給した第2パルスのパルス数としての第1データと、焦点初期設定時において、カンチレバー2を初期位置から移動させるために第1パルスモータ8に供給した第1パルスのパルス数としての第2データとをメモリ102に記憶する。この場合の焦点初期設定時においては、ヘッド4が停止した状態で光学顕微鏡9を移動させたので、第2データは、第1パルスモータ8に供給した第1パルスのパルス数が0パルスであるため「0」である。焦点初期設定時において、例えば、初期位置から第2パルスモータ10に供給した第2パルスのパルス数が10パルスである場合は、10パルスというデータが第1データとして記憶され、0パルスというデータが第2データとして記憶される。
【0045】
次に、プロセッサ101は、ステップS4において、前述のような焦点初期設定の終了後に実行され得る焦点調整時であるか否かを判定する。焦点初期設定の終了後に実行される焦点調整時とは、例えば、カンチレバー2を交換するため、および、試料Sを測定するため等において、光学顕微鏡9の位置を固定した状態でヘッド4を上下動作させてカンチレバー2を上下動作させたことにより、カンチレバー2に対する光学顕微鏡9の焦点が合わなくなり、焦点を調整する動作を実行する場合をいう。
【0046】
プロセッサ101は、ステップS4において焦点調整時ではないと判定された場合に、処理を終了する。一方、プロセッサ101は、ステップS4において焦点調整時であると判定された場合に、ステップS5において、焦点初期設定時の第1データおよび第2データの記憶データをメモリ102から読出し、さらに、例えばカンチレバー2を交換するため、および、試料Sを測定するために光学顕微鏡9の位置を固定した状態でヘッド4を上下動作させた場合のように、焦点調整が必要となるヘッド4の動作時において第1パルスモータ8に供給したパルス数としての第3データと、第2パルスモータ10に供給した第2パルスのパルス数としての第4データとの記憶データをメモリ102から読出す。これにより、焦点調整が必要となるヘッド4の動作時に第1パルスモータ8および第2パルスモータ10に供給されたパルス数が取得される。
【0047】
例えば、カンチレバー2を交換するため、および、試料Sを測定するために光学顕微鏡9の位置を固定した状態でヘッド4を上下動作させた場合のように、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された場合に、プロセッサ101は、
図3のプログラムとは別のプログラムにより、第1パルスモータ8に供給した第1パルスのパルス数としての第3データと、第2パルスモータに供給した第2パルスのパルス数としての第4データとのデータをメモリ102に記憶する。このように焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された場合にメモリ102に記憶されたデータが、ステップS5により読出される。
【0048】
この場合の第3データは、光学顕微鏡9が停止した状態でヘッド4を移動させたため、第2パルスモータ10に供給した第2パルスのパルス数が0パルスであるため「0」である。例えば、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された場合にヘッド4を動作させるために供給した第1パルスのパルス数が20パルスである場合は、20パルスというデータが第3データとして記憶され、0パルスというデータが第4データとして記憶される。
【0049】
このように、ステップS5により、焦点初期設定時にS3でメモリ102に記憶された第1データおよび第2データを読出し、さらに、焦点調整が必要となるヘッド4の動作時にメモリ102に記憶された、ヘッド4の動作時に第1パルスモータ8に供給した第1パルスのパルス数のデータ(第3データ)、および、ヘッド4の動作時に第2パルスモータ10に供給した第2パルスのパルス数のデータ(第4データ)が読出される。
【0050】
プロセッサ101は、ステップS6において、S5で読出された第1データ~第4データと、第1パルスモータ8の1パルス動作量と、第2パルスモータ10の1パルス動作量とに基づき、再度、カンチレバー2に対する光学顕微鏡9の焦点を合わせるために、焦点初期設定時に焦点が合ったカンチレバー2と光学顕微鏡9との相対位置となるまで光学顕微鏡9を移動させるために第2パルスモータ10に供給する第2パルス数を演算する。
【0051】
ステップS6における「第1パルスモータ8の1パルス動作量」は、第1パルスモータ8に1つのパルスを供給した場合に動作するヘッド4の動作量、すなわち、カンチレバー2の動作量である。ステップS6における「第2パルスモータ10の1パルス動作量」は、第2パルスモータ10に1つのパルスを供給した場合に動作する光学顕微鏡9の動作量である。
【0052】
ステップS6では、焦点初期設定後、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された場合に、再度、カンチレバー2に対する光学顕微鏡9の焦点を合わせるために、焦点初期設定時に焦点が合ったカンチレバー2と光学顕微鏡9との相対位置となるまで光学顕微鏡9を焦点初期設定時よりも高速度で移動させるために第2パルスモータ10に供給するパルス数を演算する。
【0053】
ステップS6では、第2パルスモータ10に供給するパルス数を次のように演算する。S5で読出された第1データと第2データにおいて、第1データは、焦点の初期設定時にカンチレバー2を初期位置から移動させるために第1パルスモータ8に供給された第1パルスのパルス数を示している。第2データは、焦点初期設定時に光学顕微鏡9を初期位置から移動させるために第2パルスモータ10に供給された第2パルスのパルス数を示している。
【0054】
第1データのパルス数と、第1パルスモータ8の1パルス動作量とを乗算すると、焦点初期設定時において、カンチレバー2が初期位置から移動した距離が算出される。第2データのパルス数と、第2パルスモータ10の1パルス動作量とを乗算すると、焦点初期設定時において、光学顕微鏡9が初期位置から移動した距離が算出される。一例として、前述のように、第1データが「10パルス」、第2データが「0パルス」、第1パルスモータ8の1パルス動作量が「0.2(mm/パルス)、第2パルスモータ10の1パルス動作量が「0.1(mm/パルス)である場合に、カンチレバー2が初期位置から移動した距離は0mmと算出され、光学顕微鏡9が初期位置から移動した距離は2.0mmと算出される。なお、より具体的には、第1パルスモータ8は、試料Sの測定精度を向上させるために、nm単位で試料Sとカンチレバー2とを接近させる必要がある。このため、精密な動作制御ができるようにするために、第1パルスモータ8は1パルス動作量が例えばnmオーダーの値に設定されている。一方、第2パルスモータ10は、1パルス動作量が第1パルスモータ8よりも大きいμmオーダーの値に設定されている。また、光学顕微鏡9の焦点調整のための一般的な移動距離は、例えば0.5mm~2.0mmの範囲内の値が用いられる。
【0055】
カンチレバー2の初期位置と光学顕微鏡9の初期位置との相対位置は、メモリ102に予め記憶されている。したがって、ステップS6では、第1データのパルス数、第1パルスモータ8の1パルス動作量、第2データのパルス数、および、第2パルスモータ10の1パルス動作量に基づいて、焦点初期設定時において、焦点が合った状態での光学顕微鏡9とカンチレバー2との相対位置(距離)を求めることができる。
【0056】
第3データのパルス数と、第1パルスモータ8の1パルス動作量とを乗算すると、焦点初期設定後に、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された場合において、カンチレバー2が焦点初期設定時の位置から移動した距離が算出される。第4データのパルス数と、第2パルスモータ10の1パルス動作量とを乗算すると、焦点初期設定後に、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された場合において、光学顕微鏡9が焦点初期設定時の位置から移動した距離が算出される。一例として、前述のように、第3データが「20パルス」、第4データが「0パルス」、第1パルスモータ8の1パルス動作量が「0.2(mm/パルス)、第2パルスモータ10の1パルス動作量が「0.1(mm/パルス)である場合に、カンチレバー2が焦点初期設定時の位置から移動した距離は4.0mmと算出され、光学顕微鏡9が焦点初期設定時の位置から移動した距離は0mmと算出される。
【0057】
このように、ステップS6では、第3データのパルス数、第1パルスモータ8の1パルス動作量、第4データのパルス数、および、第2パルスモータ10の1パルス動作量に基づいて、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された状態での光学顕微鏡9とカンチレバー2との相対位置(距離)を求めることができる。
【0058】
そして、ステップS6では、第3データのパルス数、第1パルスモータ8の1パルス動作量、第4データのパルス数、および、第2パルスモータ10の1パルス動作量に基づいて、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された状態での光学顕微鏡9とカンチレバー2との相対位置(距離)から、第1データのパルス数、第1パルスモータ8の1パルス動作量、第2データのパルス数、および、第2パルスモータ10の1パルス動作量に基づいて、焦点初期設定時において、焦点が合った状態での光学顕微鏡9とカンチレバー2との相対位置(距離)となるまで、光学顕微鏡9を移動させるために必要となる第2パルスモータ10の第2パルスのパルス数を演算する。
【0059】
このような演算においては、例えば、焦点調整が必要となるような動作態様でヘッド4が駆動された状態での相対位置(距離)と、焦点初期設定時における相対位置(距離)との差を演算し、算出された相対位置(距離)の差が「0」となるまで光学顕微鏡9を移動させるために必要となる第2パルスモータ10の第2パルスのパルス数が、相対位置(距離)差と第2パルスモータ10の1パルス動作量とに基づいて算出される。
【0060】
次に、プロセッサ101は、ステップS7において、ステップS6での演算により得られたパルス数の第2パルスを第2パルスモータ10に供給し、光学顕微鏡9により得られる画像に基づく焦点が合う位置の判定をせずに、光学顕微鏡9を焦点初期設定時の第1速度よりも高速度の第3速度で移動させる制御を実行する。これにより、カンチレバー2に対して焦点が合うと推測される位置まで光学顕微鏡9が比較的高速度で移動させることができる。
【0061】
次に、プロセッサ101は、ステップS8において、ステップS6で算出されたパルス数に基づくステップS7での光学顕微鏡9の移動が終了した後、移動後の近辺において、光学顕微鏡9を焦点初期設定時の第2速度と同じ速度でゆっくりと移動させながら、光学顕微鏡9により得られる画像に基づいて、焦点が合った位置を判定する。これにより、カンチレバー2に対して光学顕微鏡9により焦点が合う位置を画像処理によって正確に判定する測定を実行することができる。このように、ステップS8において、焦点初期設定後の焦点調整を実現することができる。
【0062】
図3で説明した焦点調整処理が実行されることにより、次のような効果を得ることができる。焦点が合った状態における光学顕微鏡9とカンチレバー2のような観察対象体との相対位置を特定することが可能な第1パルスの供給数および第2パルスの供給数のデータのような情報を記憶し、新たに観察対象体に対して光学顕微鏡9の焦点を合わせる場合に、記憶された相対位置を特定することが可能な情報に基づいて、焦点が合った状態における相対位置となるまで光学顕微鏡9を移動させた後、観察対象体に対して光学顕微鏡9の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡9を移動させる制御をする。これにより、新たに観察対象体に対して光学顕微鏡9の焦点を合わせる場合に、焦点が合った状態における光学顕微鏡9と観察対象体との相対位置となるまで光学顕微鏡9を移動させる途中で焦点を確認する必要がなくなるので、光学顕微鏡9の焦点を合せる際に要する期間を短期間化することができる。光学顕微鏡9を移動させる途中で焦点を確認しない場合には、焦点を確認するための画像処理等の各種処理を実行する必要がなくなるので、光学顕微鏡9を移動させる途中で焦点を確認する場合と比べて、各種処理の実行を待たずに、光学顕微鏡9を高速度で移動させることができる。したがって、このように、光学顕微鏡9を第3速度のような高速度で移動させることができることにより、光学顕微鏡9の焦点を合せる際に要する期間を短期間化することができる。
【0063】
[実施の形態の変形例]
(1) 前述の実施の形態では、光学顕微鏡9の観察対象体がカンチレバー2である例を示したが、これに限らず、光学顕微鏡9の観察対象体は、試料Sなど、カンチレバー2以外の観察対象体であってもよい。
【0064】
(2) 光学顕微鏡9の観察対象体が試料Sである場合は、光学顕微鏡9が試料Sに焦点を合わせるようにすればよい。
【0065】
(3) 光学顕微鏡9の観察対象体が試料Sである場合は、スキャナ7の圧電素子が観察対象体の駆動源である。
【0066】
(4) 試料Sを観察対象体とする場合は、光学顕微鏡9と試料Sとの相対位置を特定することが可能な情報として、駆動回路33から印加される電圧を用いてもよい。
【0067】
(5) 駆動機構50および駆動機構90は、少なくとも一方にラックアンドピニオン機構等のその他の駆動機構を用いてもよい。
【0068】
(6) 第1パルスモータ8および第2パルスモータ10のようなパルスモータは、ステッピングモータ等のパルスの供給を受けて駆動するものであれば、すべての種類のモータが対象となる。
【0069】
(7)
図3の焦点調整処理においては、焦点初期設定時に焦点が合うと判定された相対位置となるまで、カンチレバー2に対して光学顕微鏡9を第3速度で移動させた後、移動後の位置の近辺において焦点が合う位置を判定して確定させる例を説明した。しかし、これに限らず、焦点初期設定時に焦点が合うと判定された相対位置から予め定められた距離(例えば数mm)だけ前方または後方に離れた位置まで光学顕微鏡9を第3速度で移動させた後、初期設定時に焦点が合うと判定された相対位置を含む移動後の位置の近辺において焦点が合う位置を判定して確定させるようにしてもよい。
【0070】
[付記]
本開示の走査型プローブ顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡1)は、以下の特徴を備える。
【0071】
(1) 試料(試料S)に対向して配置される探針(探針3)を含むカンチレバー(カンチレバー2)と、カンチレバー(カンチレバー2)および試料(試料S)を含む観察対象領域内における観察対象体(カンチレバー2または試料S)の拡大画像を取得可能な位置に配置される光学顕微鏡(光学顕微鏡9)と、観察対象体(カンチレバー2)を移動させるための動作をする第1駆動源(第1パルスモータ8)と、光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させるための動作をする第2駆動源(第2パルスモータ10)と、第1駆動源(第1パルスモータ8)および第2駆動源(第2パルスモータ10)を制御する制御装置(制御装置100)とを備え、制御装置(制御装置100)は、初期位置から観察対象体(カンチレバー2または試料S)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させ(ステップS2)、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)と観察対象体との相対位置を特定することが可能な情報(第1パルスの供給数および第2パルスの供給数のデータ)を記憶し(ステップS3)、新たに観察対象体(カンチレバー2または試料S)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合わせる場合に、記憶された相対位置を特定することが可能な情報(第1パルスの供給数および第2パルスの供給数のデータ)に基づいて、相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させた(ステップS7)後、観察対象体(カンチレバー2または試料S)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる制御をする(ステップS8)。
【0072】
このような構成によれば、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)と観察対象体(カンチレバー2または試料S)との相対位置を特定することが可能な情報(第1パルスの供給数および第2パルスの供給数のデータ)を記憶し、新たに観察対象体(カンチレバー2または試料S)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合わせる場合に、記憶された相対位置を特定することが可能な情報(第1パルスの供給数および第2パルスの供給数のデータ)に基づいて、焦点が合った状態における相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させた後、観察対象体(カンチレバー2または試料S)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる制御をする。これにより、新たに観察対象体(カンチレバー2または試料S)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合わせる場合に、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)と観察対象体(カンチレバー2または試料S)との相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる途中で焦点を確認する必要がなくなるので、光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合せる際に要する期間を短期間化することができる。
【0073】
(2) 試料(試料S)に対向して配置される探針(探針3)を含むカンチレバー(カンチレバー2)と、カンチレバー(カンチレバー2)の拡大画像を取得可能な位置に配置される光学顕微鏡(光学顕微鏡9)と、カンチレバー(カンチレバー2)を移動させるための動作をする第1パルスモータ(第1パルスモータ8)と、光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させるための動作をする第2パルスモータ(第2パルスモータ10)と、第1パルスモータ(第1パルスモータ8)および第2パルスモータ(第2パルスモータ10)を制御する制御装置(制御装置100)とを備え、制御装置(制御装置100)は、第1パルスモータ(第1パルスモータ8)に供給する第1パルスの数に応じた移動距離でカンチレバー(カンチレバー2)を第1初期位置から移動させる制御をすることが可能であり、第2パルスモータ(第2パルスモータ10)に供給する第2パルスの数に応じた移動距離で光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を第2初期位置から移動させる制御をすることが可能であり、第2初期位置からカンチレバー(カンチレバー2)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させ(ステップS2)、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)とカンチレバー(カンチレバー2)との相対位置を特定することが可能な第1パルスの供給数および第2パルスの供給数を記憶し(ステップS3)、新たにカンチレバー(カンチレバー2)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合わせる場合に、記憶された第1パルスの供給数および第2パルスの供給数に基づいて、相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させた(ステップS7)後、カンチレバー(カンチレバー2)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる制御をする(ステップS8)。
【0074】
このような構成によれば、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)とカンチレバー(カンチレバー2)との相対位置を特定することが可能な第1パルスの供給数および第2パルスの供給数を記憶し、新たにカンチレバー(カンチレバー2)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合わせる場合に、記憶された第1パルスの供給数および第2パルスの供給数に基づいて、焦点が合った状態における相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させた後、カンチレバー(カンチレバー2)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点が合う位置まで、焦点を確認しながら光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる制御をするので、新たにカンチレバー(カンチレバー2)に対して光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合わせる場合に、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)とカンチレバー(カンチレバー2)との相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる途中で焦点を確認する必要がなくなるので、光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の焦点を合せる際に要する期間を短期間化することができる。
【0075】
(3) 第1パルスモータ(第1パルスモータ8)は、第1パルスが供給されるごとにカンチレバー(カンチレバー2)を第1距離ずつ移動させ、第2パルスモータ(第2パルスモータ10)は、第2パルスが供給されるごとに光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を第2距離ずつ移動させる。
【0076】
このような構成によれば、第1パルスモータ(第1パルスモータ8)が、第1パルスが供給されるごとにカンチレバー(カンチレバー2)を第1距離ずつ移動させ、第2パルスモータ(第2パルスモータ10)が、第2パルスが供給されるごとに光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を第2距離ずつ移動させるので、第1パルスの供給数と第2パルスの供給数との関係により、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)とカンチレバー(カンチレバー2)との相対位置を特定することができる。
【0077】
(4) 制御装置(制御装置100)は、記憶された第1パルスの供給数および第2パルスの供給数に基づいて、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)とカンチレバー(カンチレバー2)との相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる場合に、記憶された第1パルスの供給数および第2パルスの供給数と、第1パルスが供給されるごとにカンチレバーが移動する第1距離と、第2パルスが供給されるごとに光学顕微鏡(光学顕微鏡9)が移動する第2距離とに基づいて、第2パルスモータ(第2パルスモータ10)に供給する第2パルスの数を設定する(ステップS6)。
【0078】
このような構成によれば、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)とカンチレバー(カンチレバー2)との相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる場合に、記憶された第1パルスの供給数および第2パルスの供給数と、第1パルスが供給されるごとにカンチレバーが移動する第1距離と、第2パルスが供給されるごとに光学顕微鏡(光学顕微鏡9)が移動する第2距離とに基づいて、第2パルスモータ(第2パルスモータ10)に供給する第2パルスの数を設定するので、焦点が合った状態における光学顕微鏡(光学顕微鏡9)とカンチレバー(カンチレバー2)との相対位置となるまで光学顕微鏡(光学顕微鏡9)の移動量を第2パルスモータ(第2パルスモータ10)に供給する第2パルスの数により決めることができる。
【0079】
(5) カンチレバー(カンチレバー2)を移動させる第1駆動機構(駆動機構50)と、光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる第2駆動機構(駆動機構90)とをさらに備え、第1パルスモータ(第1パルスモータ8)は、第1パルスが供給されるごとに第1駆動機構(駆動機構50)によりカンチレバー(カンチレバー2)を移動させ、第2パルスモータ(第2パルスモータ10)は、第2パルスが供給されるごとに第2駆動機構(駆動機構90)により光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させる。
【0080】
このような構成によれば、第1パルスモータ(第1パルスモータ8)が、第1パルスが供給されるごとに第1駆動機構(駆動機構50)によりカンチレバー(カンチレバー2)を移動させ、第2パルスモータ(第2パルスモータ10)が、第2パルスが供給されるごとに第2駆動機構(駆動機構90)により光学顕微鏡(光学顕微鏡9)を移動させるので、第1パルスモータ(第1パルスモータ8)および第2パルスモータ(第2パルスモータ10)のようなパルスモータに供給するパルス数により、カンチレバー(カンチレバー2)および光学顕微鏡(光学顕微鏡9)のような駆動対象の移動量を容易に設定することができる。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
S 試料、3 探針、2 カンチレバー、9 光学顕微鏡、8 第1パルスモータ、10 第2パルスモータ、50,90 駆動機構、1 走査型プローブ顕微鏡。