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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】係合装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/52 20060101AFI20250115BHJP
   F16D 28/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
F16D13/52 D
F16D28/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023562380
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2022042575
(87)【国際公開番号】W WO2023090364
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021188939
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021188940
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021211353
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03278774(US,A)
【文献】実開昭57-200398(JP,U)
【文献】米国特許第03235045(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/52
F16D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転部材と第2回転部材とを選択的に係合するクラッチ機構と、
前記第1回転部材及び前記第2回転部材のいずれか一方である対象回転部材と非回転部材とを選択的に係合するブレーキ機構と、を備えた係合装置であって、
前記クラッチ機構及び前記ブレーキ機構の係合の状態を変化させる押圧機構を備え、
前記第1回転部材の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記クラッチ機構は、前記第1回転部材と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素と、前記第2回転部材と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素と、を備え、
前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素は、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記ブレーキ機構は、前記対象回転部材と一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素と、前記非回転部材に固定された第4摩擦係合要素と、を備え、
前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素に対して前記軸方向第2側に離間した位置で、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記押圧機構は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素と、前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素と、の前記軸方向の間に配置された押圧部と、前記押圧部と連動するように連結された被駆動部と、前記被駆動部を前記軸方向に移動させる直動機構と、を備え、
前記第1回転部材、前記第2回転部材、前記第1摩擦係合要素、前記第2摩擦係合要素、前記第3摩擦係合要素、及び前記第4摩擦係合要素が、同軸上に配置され、
前記直動機構によって前記被駆動部が前記軸方向第1側に移動するか前記軸方向第2側に移動するに応じて、前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構とが選択的に係合され
前記第1回転部材は、前記第1摩擦係合要素が連結された第1連結部を備え、
前記第2回転部材は、前記第2摩擦係合要素が連結された第2連結部を備え、
前記対象回転部材は、前記第3摩擦係合要素が連結された第3連結部を備え、
前記非回転部材は、前記第4摩擦係合要素が連結された第4連結部を備え、
前記第1連結部は、前記第1摩擦係合要素に対して径方向の外側であって、前記径方向に沿う径方向視で前記第1摩擦係合要素と重複する位置に配置され、
前記第3連結部は、前記第3摩擦係合要素に対して前記径方向の外側であって、前記径方向視で前記第3摩擦係合要素と重複する位置に配置され、
前記第2連結部は、前記第2摩擦係合要素に対して前記径方向の内側であって、前記径方向視で前記第2摩擦係合要素及び前記第1連結部と重複する位置に配置され、
前記第4連結部は、前記第4摩擦係合要素に対して前記径方向の内側であって、前記径方向視で前記第4摩擦係合要素及び前記第3連結部と重複する位置に配置され、
前記直動機構は、前記第2連結部に対して前記軸方向第2側に配置されていると共に、前記第4連結部に対して前記径方向の内側であって前記径方向視で前記第4連結部と重複する位置に配置されている、係合装置。
【請求項2】
第1回転部材と第2回転部材とを選択的に係合するクラッチ機構と、
前記第1回転部材及び前記第2回転部材のいずれか一方である対象回転部材と非回転部材とを選択的に係合するブレーキ機構と、を備えた係合装置であって、
前記クラッチ機構及び前記ブレーキ機構の係合の状態を変化させる押圧機構を備え、
前記第1回転部材の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記クラッチ機構は、前記第1回転部材と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素と、前記第2回転部材と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素と、を備え、
前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素は、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記ブレーキ機構は、前記対象回転部材と一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素と、前記非回転部材に固定された第4摩擦係合要素と、を備え、
前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素に対して前記軸方向第2側に離間した位置で、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記押圧機構は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素と、前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素と、の前記軸方向の間に配置された押圧部と、前記押圧部と連動するように連結された被駆動部と、前記被駆動部を前記軸方向に移動させる直動機構と、を備え、
前記第1回転部材、前記第2回転部材、前記第1摩擦係合要素、前記第2摩擦係合要素、前記第3摩擦係合要素、及び前記第4摩擦係合要素が、同軸上に配置され、
前記直動機構によって前記被駆動部が前記軸方向第1側に移動するか前記軸方向第2側に移動するに応じて、前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構とが選択的に係合され
前記押圧部は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素を前記軸方向に押圧する第1押圧部分と、前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素を前記軸方向に押圧する第2押圧部分と、を備え、
前記第1押圧部分は、前記第1回転部材又は前記第2回転部材に対して、前記軸方向に相対移動可能であると共に一体的に回転する状態で支持され、
前記第2押圧部分は、前記非回転部材に対して、前記軸方向に相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で支持され、
前記第1押圧部分と前記第2押圧部分とは、相対回転可能な状態で、前記軸方向に連動するように構成され、
前記被駆動部は、前記第2押圧部分と一体的に前記軸方向に移動するように連結されている、係合装置。
【請求項3】
第1回転部材と第2回転部材とを選択的に係合するクラッチ機構と、
前記第1回転部材及び前記第2回転部材のいずれか一方である対象回転部材と非回転部材とを選択的に係合するブレーキ機構と、を備えた係合装置であって、
前記クラッチ機構及び前記ブレーキ機構の係合の状態を変化させる押圧機構を備え、
前記第1回転部材の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記クラッチ機構は、前記第1回転部材と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素と、前記第2回転部材と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素と、を備え、
前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素は、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記ブレーキ機構は、前記対象回転部材と一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素と、前記非回転部材に固定された第4摩擦係合要素と、を備え、
前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素に対して前記軸方向第2側に離間した位置で、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記押圧機構は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素と、前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素と、の前記軸方向の間に配置された押圧部と、前記押圧部と連動するように連結された被駆動部と、前記被駆動部を前記軸方向に移動させる直動機構と、を備え、
前記第1回転部材、前記第2回転部材、前記第1摩擦係合要素、前記第2摩擦係合要素、前記第3摩擦係合要素、及び前記第4摩擦係合要素が、同軸上に配置され、
前記直動機構によって前記被駆動部が前記軸方向第1側に移動するか前記軸方向第2側に移動するに応じて、前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構とが選択的に係合され
前記直動機構は、前記非回転部材に対して回転自在に支持されたねじ軸と、前記ねじ軸に螺合するナット部材と、を備え、
前記ナット部材は、前記被駆動部と一体的に前記軸方向に移動するように連結され、
前記ねじ軸は、前記第1摩擦係合要素、前記第2摩擦係合要素、前記第3摩擦係合要素、及び前記第4摩擦係合要素に対して、同軸上であって径方向の内側に配置され、
前記ねじ軸を回転駆動するための駆動源と、前記駆動源と前記ねじ軸との間の動力伝達を行う伝達機構と、を更に備え、
前記駆動源は、前記ねじ軸とは別軸上に配置され、
前記駆動源の前記軸方向における配置領域が、前記第1回転部材の前記軸方向における配置領域と重なっており、
前記伝達機構は、前記直動機構に対して前記軸方向第2側に配置され、
前記第1回転部材から前記軸方向第1側に延在するように配置された第1軸部材が、前記第1回転部材と一体的に回転するように連結され、
前記第2回転部材から前記軸方向第1側に延在するように配置された第2軸部材が、前記第2回転部材と一体的に回転するように連結されている、係合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ機構及びブレーキ機構を備えた係合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような係合装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1に開示された係合装置(3)は、第1回転部材(33)と第2回転部材(34)とを選択的に係合するクラッチ機構(31)と、第1回転部材(33)を非回転部材(35)に対して選択的に係合するブレーキ機構(32)と、を備えている。
【0004】
クラッチ機構(31)は、第1回転部材(33)と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素(31b)と、第2回転部材(34)と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素(31a)と、を備えている。ブレーキ機構(32)は、第1回転部材(33)と一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素(32a)と、非回転部材(35)に固定された第4摩擦係合要素(32b)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-197846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された係合装置(3)は、クラッチ機構(31)の第1摩擦係合要素(31b)及び第2摩擦係合要素(31a)を軸方向(特許文献1の図2における左右方向)に押圧する第1押圧機構(72)と、ブレーキ機構(32)の第3摩擦係合要素(32a)及び第4摩擦係合要素(32b)を軸方向に押圧する第2押圧機構(77)と、を備えている。
【0007】
クラッチ機構(31)とブレーキ機構(32)とは、径方向(特許文献1の図2における上下方向)に並んで配置されている。また、第1押圧機構(72)は、クラッチ機構(31)に対して軸方向の一方側(特許文献1の図2における右側)に配置されている。そして、第2押圧機構(77)は、ブレーキ機構(32)に対して軸方向の他方側(特許文献1の図2における右側)に配置されている。このような構成は、係合装置(3)の大型化を招いていた。
【0008】
そこで、クラッチ機構及びブレーキ機構を備えた構成において、小型化を図ることができる係合装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に鑑みた、係合装置の特徴構成は、
第1回転部材と第2回転部材とを選択的に係合するクラッチ機構と、
前記第1回転部材及び前記第2回転部材のいずれか一方である対象回転部材と非回転部材とを選択的に係合するブレーキ機構と、を備えた係合装置であって、
前記クラッチ機構及び前記ブレーキ機構の係合の状態を変化させる押圧機構を備え、
前記第1回転部材の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記クラッチ機構は、前記第1回転部材と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素と、前記第2回転部材と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素と、を備え、
前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素は、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記ブレーキ機構は、前記対象回転部材と一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素と、前記非回転部材に固定された第4摩擦係合要素と、を備え、
前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素に対して前記軸方向第2側に離間した位置で、互いに前記軸方向に対向するように配置され、前記軸方向に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記押圧機構は、前記第1摩擦係合要素及び前記第2摩擦係合要素と、前記第3摩擦係合要素及び前記第4摩擦係合要素と、の前記軸方向の間に配置された押圧部と、前記押圧部と連動するように連結された被駆動部と、前記被駆動部を前記軸方向に移動させる直動機構と、を備え、
前記第1回転部材、前記第2回転部材、前記第1摩擦係合要素、前記第2摩擦係合要素、前記第3摩擦係合要素、及び前記第4摩擦係合要素が、同軸上に配置され、
前記直動機構によって前記被駆動部が前記軸方向第1側に移動するか前記軸方向第2側に移動するに応じて、前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構とが選択的に係合される点にある。
【0010】
この特徴構成によれば、直動機構により被駆動部を介して軸方向に移動する押圧部が、第1摩擦係合要素及び第2摩擦係合要素と、それらに対して軸方向第2側に配置された第3摩擦係合要素及び第4摩擦係合要素との軸方向の間に配置されている。そして、直動機構により被駆動部が軸方向第1側に移動することで、第1摩擦係合要素及び第2摩擦係合要素が押圧部により押圧されてクラッチ機構が係合状態となると共に、押圧部による第3摩擦係合要素及び第4摩擦係合要素の押圧が解除されてブレーキ機構が解放状態となる。一方、直動機構により被駆動部が軸方向第2側に移動することで、第3摩擦係合要素及び第4摩擦係合要素が押圧部により押圧されてブレーキ機構が係合状態となると共に、押圧部による第1摩擦係合要素及び第2摩擦係合要素の押圧が解除されてクラッチ機構が解放状態となる。これにより、クラッチ機構とブレーキ機構との係合の状態を、共通の押圧機構により変化させることができる。したがって、クラッチ機構及びブレーキ機構を備えた構成において、係合装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る係合装置の軸方向に沿う断面図
図2】第1の実施形態に係る係合装置の軸方向に沿う断面図の一部拡大図
図3】第2の実施形態に係る係合装置の軸方向に沿う断面図
図4】第2の実施形態に係る係合装置の軸方向に沿う断面図の一部拡大図
図5】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
図6】第1の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図7】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の遊星歯車機構の速度線図
図8】第2の実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
図9】第2の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図10】第3の実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
図11】第3の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図12】第3の実施形態に係る両用駆動装置の軸方向に沿う断面図の一部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施形態に係る係合装置
以下では、第1の実施形態に係る係合装置100について、図面を参照して説明する。図1に示すように、係合装置100は、第1回転部材81と第2回転部材82とを選択的に係合するクラッチ機構1と、第1回転部材81及び第2回転部材82のいずれか一方である対象回転部材8Tと非回転部材NRとを選択的に係合するブレーキ機構2と、クラッチ機構1及びブレーキ機構2の係合の状態を変化させる押圧機構3と、を備えている。
【0013】
第1回転部材81と第2回転部材82とは、互いに相対回転自在に支持されている。以下の説明では、第1回転部材81の回転軸心に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、第1回転部材81等の回転部材の回転軸心に直交する方向を、各回転軸心を基準とした「径方向R」とする。なお、どの回転軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの回転軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0014】
本実施形態では、非回転部材NRは、係合装置100を収容するケース9である。本実施形態では、ケース9は、第1周壁部91と、第1側壁部92と、支持壁部93と、カバー部94と、を備えている。
【0015】
第1周壁部91は、第1回転部材81及び第2回転部材82の径方向Rの外側を覆うように形成されている。第1側壁部92は、第1回転部材81及び第2回転部材82の軸方向第1側L1を覆うように形成されている。支持壁部93は、第1回転部材81及び第2回転部材82の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。カバー部94は、支持壁部93の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。
【0016】
本実施形態では、第1周壁部91は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第1周壁部91の軸方向第1側L1の開口が、第1側壁部92によって塞がれている。また、第1周壁部91の軸方向第2側L2の開口が、支持壁部93によって塞がれている。本例では、第1周壁部91と第1側壁部92とが一体的に形成され、第1ケース部9Aを構成している。そして、第1周壁部91に対して径方向Rの内側に支持壁部93が位置するように、当該支持壁部93を備えた第2ケース部9Bが、軸方向第1側L1から第1ケース部9Aに嵌め込まれている。また、カバー部94を備えた第3ケース部9Cが、第2ケース部9Bに対して軸方向第1側L1から接合されている。
【0017】
クラッチ機構1は、第1回転部材81と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素11と、第2回転部材82と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素12と、を備えている。
【0018】
第1摩擦係合要素11と第2摩擦係合要素12とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第1摩擦係合要素11と第2摩擦係合要素12とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。本実施形態では、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0019】
ブレーキ機構2は、対象回転部材8Tと一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素21と、非回転部材NRに固定された第4摩擦係合要素22と、を備えている。なお、本実施形態では、第1回転部材81が対象回転部材8Tである。
【0020】
第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。また、第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12に対して軸方向第2側L2に離間して配置されている。本実施形態では、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0021】
第1回転部材81、第2回転部材82、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22は、第1軸X1上に配置されている。つまり、第1回転部材81、第2回転部材82、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22は、同軸上に配置されている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、第1回転部材81は、第1摩擦係合要素11が連結された第1連結部8aを備えている。そして、第2回転部材82は、第2摩擦係合要素12が連結された第2連結部8bを備えている。また、対象回転部材8Tは、第3摩擦係合要素21が連結された第3連結部8cを備えている。つまり、本実施形態では、第1回転部材81が第3連結部8cを備えている。また、非回転部材NRは、第4摩擦係合要素22が連結された第4連結部8dを備えている。
【0023】
第1連結部8aは、第1摩擦係合要素11に対して径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視で第1摩擦係合要素11と重複する位置に配置されている。つまり、第1摩擦係合要素11は、第1連結部8aによって径方向Rの外側から支持されている。そして、第1摩擦係合要素11は、第1連結部8aに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。本例では、第1摩擦係合要素11の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第1連結部8aの内周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0024】
第2連結部8bは、第2摩擦係合要素12に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2摩擦係合要素12及び第1連結部8aと重複する位置に配置されている。つまり、第2摩擦係合要素12は、第2連結部8bによって径方向Rの内側から支持されている。そして、第2摩擦係合要素12は、第2連結部8bに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。本例では、第2摩擦係合要素12の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第2連結部8bの外周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されている。
【0025】
第3連結部8cは、第3摩擦係合要素21に対して径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視で第3摩擦係合要素21と重複する位置に配置されている。つまり、第3摩擦係合要素21は、第3連結部8cによって径方向Rの外側から支持されている。そして、第3摩擦係合要素21は、第3連結部8cに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。本例では、第3摩擦係合要素21の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第3連結部8cの内周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されている。
【0026】
第4連結部8dは、第4摩擦係合要素22に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第4摩擦係合要素22及び第3連結部8cと重複する位置に配置されている。つまり、第4摩擦係合要素22は、第4連結部8dによって径方向Rの内側から支持されている。そして、第4摩擦係合要素22は、第4連結部8dに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。本例では、第4摩擦係合要素22の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第4連結部8dの外周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されている。
【0027】
図2に示すように、本実施形態では、第1回転部材81は、第1外側支持部811と、第1径方向延在部812と、を備えている。
【0028】
第1外側支持部811は、第1軸X1を軸心とする筒状に形成されている。本実施形態では、第1外側支持部811に、第1連結部8a及び第3連結部8cが配置されている。
【0029】
第1径方向延在部812は、第1軸X1を基準とする径方向Rに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第1径方向延在部812は、第1外側支持部811における軸方向第1側L1の端部から径方向Rの内側に延在するように形成されている。また、本実施形態では、第1径方向延在部812は、第1軸受B1を介して、ケース9の第1側壁部92に対して回転自在に支持されている。本例では、第1軸受B1は、第1径方向延在部812と第1側壁部92との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。
【0030】
本実施形態では、第2回転部材82は、第1内側支持部821を備えている。第1内側支持部821は、第1外側支持部811に対して径方向Rの内側に配置されている。本実施形態では、第1内側支持部821に、第2連結部8bが配置されている。
【0031】
本実施形態では、ケース9の支持壁部93は、第2内側支持部931を備えている。第2内側支持部931は、第1外側支持部811に対して径方向Rの内側に配置されている。本実施形態では、第2内側支持部931は、第1軸X1を軸心とする筒状に形成されている。本実施形態では、第2内側支持部931に、第4連結部8dが配置されている。
【0032】
押圧機構3は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12と、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22と、の軸方向Lの間に配置された押圧部31と、押圧部31と連動するように連結された被駆動部32と、被駆動部32を軸方向Lに移動させる直動機構33と、を備えている。
【0033】
直動機構33により被駆動部32が軸方向第1側L1に移動することで、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12が押圧部31により押圧されてクラッチ機構1が係合状態となると共に、押圧部31による第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22の押圧が解除されてブレーキ機構2が解放状態となる。一方、直動機構33により被駆動部32が軸方向第2側L2に移動することで、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22が押圧部31により押圧されてブレーキ機構2が係合状態となると共に、押圧部31による第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12の押圧が解除されてクラッチ機構1が解放状態となる。このように、直動機構33によって被駆動部32が軸方向第1側L1に移動するか軸方向第2側L2に移動するに応じて、クラッチ機構1とブレーキ機構2とが選択的に係合される。
【0034】
以上のように、係合装置100は、
第1回転部材81と第2回転部材82とを選択的に係合するクラッチ機構1と、
第1回転部材81及び第2回転部材82のいずれか一方である対象回転部材8Tと非回転部材NRとを選択的に係合するブレーキ機構2と、を備えた係合装置100であって、
クラッチ機構1及びブレーキ機構2の係合の状態を変化させる押圧機構3を備え、
クラッチ機構1は、第1回転部材81と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素11と、第2回転部材82と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素12と、を備え、
第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12は、互いに軸方向Lに対向するように配置され、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合し、
ブレーキ機構2は、対象回転部材8Tと一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素21と、非回転部材NRに固定された第4摩擦係合要素22と、を備え、
第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12に対して軸方向第2側L2に離間した位置で、互いに軸方向Lに対向するように配置され、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合し、
押圧機構3は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12と、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22と、の軸方向Lの間に配置された押圧部31と、当該押圧部31と連動するように連結された被駆動部32と、当該被駆動部32を軸方向Lに移動させる直動機構33と、を備え、
第1回転部材81、第2回転部材82、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22が、同軸上に配置され、
直動機構33によって被駆動部32が軸方向第1側L1に移動するか軸方向第2側L2に移動するに応じて、クラッチ機構1とブレーキ機構2とが選択的に係合される。
【0035】
この構成によれば、直動機構33により被駆動部32を介して軸方向Lに移動する押圧部31が、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12と、それらに対して軸方向第2側L2に配置された第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22との軸方向Lの間に配置されている。そして、直動機構33により被駆動部32が軸方向第1側L1に移動することで、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12が押圧部31により押圧されてクラッチ機構1が係合状態となると共に、押圧部31による第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22の押圧が解除されてブレーキ機構2が解放状態となる。一方、直動機構33により被駆動部32が軸方向第2側L2に移動することで、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22が押圧部31により押圧されてブレーキ機構2が係合状態となると共に、押圧部31による第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12の押圧が解除されてクラッチ機構1が解放状態となる。これにより、クラッチ機構1とブレーキ機構2との係合の状態を、共通の押圧機構3により変化させることができる。したがって、クラッチ機構1及びブレーキ機構2を備えた構成において、係合装置100の小型化を図ることができる。
【0036】
本実施形態では、直動機構33は、非回転部材NRに対して回転自在に支持されたねじ軸331と、当該ねじ軸331に螺合するナット部材332と、を備えている。
【0037】
ねじ軸331の外周部には、ねじ山が形成されている。ねじ軸331は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、ねじ軸331は、第1軸X1上に配置されている。
【0038】
ナット部材332の内周部には、ねじ軸331のねじ山に係合する溝が形成されている。ナット部材332は、ねじ軸331が回転することにより、当該回転方向とねじ軸331のねじ山の向きとに応じて軸方向Lに沿う直線運動を行う。本実施形態では、ナット部材332は、被駆動部32と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。そのため、本実施形態では、ねじ軸331の回転に伴い、ナット部材332及び被駆動部32を介して、押圧部31が軸方向Lに移動する。
【0039】
また、本実施形態では、ナット部材332は、非回転部材NRに対して、軸方向Lに相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で支持されている。本例では、ナット部材332は、ケース9における支持壁部93の第2内側支持部931に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、ナット部材332は、当該ナット部材332の外周部と第2内側支持部931の内周部との径方向Rの間に配置された連結部材33aにより、ケース9に対して軸方向Lに相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で、第2内側支持部931に連結されている。
【0040】
本実施形態では、直動機構33は、第2連結部8bに対して軸方向第2側L2に配置されている。更に、直動機構33は、第4連結部8dに対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第4連結部8dと重複する位置に配置されている。本例では、直動機構33のねじ軸331及びナット部材332は、第2回転部材82の第1内側支持部821よりも軸方向第2側L2に配置されている。更に、ねじ軸331及びナット部材332は、ケース9における支持壁部93の第2内側支持部931よりも径方向Rの内側に配置されている。
【0041】
このように、本実施形態では、第1回転部材81は、第1摩擦係合要素11が連結された第1連結部8aを備え、
第2回転部材82は、第2摩擦係合要素12が連結された第2連結部8bを備え、
対象回転部材8Tは、第3摩擦係合要素21が連結された第3連結部8cを備え、
非回転部材NRは、第4摩擦係合要素22が連結された第4連結部8dを備え、
第1連結部8aは、第1摩擦係合要素11に対して径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視で第1摩擦係合要素11と重複する位置に配置され、
第3連結部8cは、第3摩擦係合要素21に対して径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視で第3摩擦係合要素21と重複する位置に配置され、
第2連結部8bは、第2摩擦係合要素12に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2摩擦係合要素12及び第1連結部8aと重複する位置に配置され、
第4連結部8dは、第4摩擦係合要素22に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第4摩擦係合要素22及び第3連結部8cと重複する位置に配置され、
直動機構33は、第2連結部8bに対して軸方向第2側L2に配置されていると共に、第4連結部8dに対して径方向Rの内側であって径方向Rに沿う径方向視で第4連結部8dと重複する位置に配置されている。
【0042】
この構成によれば、直動機構33が、第2回転部材82の第2連結部8bに対して軸方向第2側L2に配置されている。これにより、直動機構33が第2連結部8bと径方向視で重複するように配置された構成と比べて、係合装置100の径方向Rの寸法を小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、直動機構33が、非回転部材NRの第4連結部8dに対して径方向Rの内側であって径方向Rに沿う径方向視で第4連結部8dと重複する位置に配置されている。これにより、直動機構33が第4連結部8dよりも軸方向Lにずれて配置された構成と比べて、係合装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。また、非回転部材NRの第4連結部8dに対して径方向Rの内側に配置された直動機構33を、非回転部材NRによって支持することが容易であるため、直動機構33の支持構造を簡素化し易い。
【0043】
本実施形態では、押圧部31は、第1押圧部分311と、第2押圧部分312と、を備えている。
【0044】
第1押圧部分311は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12を軸方向Lに押圧するように構成されている。第2押圧部分312は、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22を軸方向Lに押圧するように構成されている。本実施形態では、第1押圧部分311と第2押圧部分312とは、軸方向Lに対向するように配置された別部材により構成されている。そして、第1押圧部分311と第2押圧部分312とは、第4軸受B4を介して、互いに相対回転自在に支持されている。そのため、本実施形態では、第1押圧部分311と第2押圧部分312とは、相対回転可能な状態で、軸方向Lに連動するように構成されている。なお、本例では、第4軸受B4は、第1押圧部分311と第2押圧部分312との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。
【0045】
第1押圧部分311は、第1回転部材81又は第2回転部材82に対して、軸方向Lに相対移動可能であると共に一体的に回転する状態で支持されている。本実施形態では、第1押圧部分311は、第1回転部材81の第1外側支持部811に対して、軸方向Lに相対移動可能であると共に一体的に回転する状態で支持されている。本例では、第1押圧部分311の径方向Rの外側の端部が、第1連結部8aに連結されている。
【0046】
第2押圧部分312は、非回転部材NRに対して、軸方向Lに相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で支持されている。本実施形態では、第2押圧部分312は、被駆動部32と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。本例では、第2押圧部分312から径方向Rの内側に延在するように、被駆動部32が形成されている。また、上述したように、本実施形態では、ナット部材332が、非回転部材NRに対して軸方向Lに相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で支持されている。そのため、本実施形態では、第2押圧部分312は、被駆動部32及びナット部材332を介して、非回転部材NRに対して軸方向Lに相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で支持されている。
【0047】
このように、本実施形態では、押圧部31は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12を軸方向Lに押圧する第1押圧部分311と、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22を軸方向Lに押圧する第2押圧部分312と、を備え、
第1押圧部分311は、第1回転部材81又は第2回転部材82に対して、軸方向Lに相対移動可能であると共に一体的に回転する状態で支持され、
第2押圧部分312は、非回転部材NRに対して、軸方向Lに相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で支持され、
第1押圧部分311と第2押圧部分312とは、相対回転可能な状態で、軸方向Lに連動するように構成され、
被駆動部32は、第2押圧部分312と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。
【0048】
この構成によれば、直動機構33により軸方向Lに移動する被駆動部32が、非回転部材NRに対して相対回転が規制された状態で支持された第2押圧部分312と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。これにより、被駆動部32が第1回転部材81又は第2回転部材82に対して一体的に回転する状態で支持された第1押圧部分311と一体的に軸方向Lに移動するように連結された構成と比べて、押圧機構3の簡素化を図り易い。
【0049】
上述したように、本実施形態では、ねじ軸331は、第1軸X1上に配置されている。つまり、本実施形態では、ねじ軸331は、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22と同軸上に配置されている。また、本実施形態では、ねじ軸331は、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22に対して、径方向Rの内側に配置されている。
【0050】
このように、本実施形態では、直動機構33は、非回転部材NRに対して回転自在に支持されたねじ軸331と、当該ねじ軸331に螺合するナット部材332と、を備え、
ナット部材332は、被駆動部32と一体的に軸方向Lに移動するように連結され、
ねじ軸331は、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22に対して、同軸上であって径方向Rの内側に配置されている。
【0051】
この構成によれば、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22に対して径方向Rの内側に、ナット部材332を軸方向Lに移動させるためのねじ軸331が配置されている。これにより、ねじ軸331を回転駆動させるための駆動力を、それらの摩擦係合要素11,12,21,22に対して軸方向Lの外側からねじ軸331に伝達し易い。したがって、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12と第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22との軸方向Lの間に配置された押圧部31を、ナット部材332及び被駆動部32を介して軸方向Lに移動可能な構造を実現することが容易となっている。
また、本構成によれば、直動機構33のねじ軸331を、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22の少なくとも一部と径方向Rに沿う径方向視で重複するように配置し易い。これにより、直動機構33の配置による、係合装置100の軸方向Lへの大型化を抑制することができる。
【0052】
図1に示すように、本実施形態では、係合装置100は、ねじ軸331を回転駆動するための駆動源4と、当該駆動源4とねじ軸331との間の動力伝達を行う伝達機構5と、を更に備えている。
【0053】
本実施形態では、駆動源4は、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。つまり、本実施形態では、駆動源4は、ねじ軸331とは別軸上に配置されている。そして、駆動源4の軸方向Lにおける配置領域が、第1回転部材81の軸方向Lにおける配置領域と重なっている。また、本実施形態では、伝達機構5は、直動機構33に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0054】
図2に示すように、本実施形態では、第1回転部材81は、第1軸部材10と一体的に回転するように連結されている。第1軸部材10は、第1回転部材81から軸方向第1側L1に延在するように配置されている。本実施形態では、第1軸部材10は、第1軸X1を軸心とする筒状に形成されている。そして、第1軸部材10は、第1回転部材81の第1外側支持部811における径方向Rの内側の端部から軸方向第1側L1に延在するように形成されている。本例では、第1軸部材10は、第1回転部材81と一体的に形成されている。また、本実施形態では、第1軸部材10は、ケース9の第1側壁部92を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第1軸部材10は、第2軸受B2を介して、第1側壁部92に対して回転自在に支持されている。本例では、第2軸受B2は、第1軸部材10と第1側壁部92との径方向Rの間に配置されたラジアル軸受である。
【0055】
本実施形態では、第2回転部材82は、第2軸部材20と一体的に回転するように連結されている。第2軸部材20は、第2回転部材82から軸方向第1側L1に延在するように配置されている。本実施形態では、第2軸部材20は、第2回転部材82の第1内側支持部821から軸方向第1側L1に延在するように形成されている。そして、第2軸部材20は、第1軸X1上に配置されている。本例では、第2軸部材20は、第2回転部材82と一体的に形成されている。また、本実施形態では、第2軸部材20は、第1軸部材10の径方向Rの内側を通るように配置されている。そして、第2軸部材20は、第3軸受B3を介して、第1軸部材10に対して相対回転自在に支持されている。本例では、第3軸受B3は、第1軸部材10と第2軸部材20との径方向Rの間に配置されたラジアル軸受である。
【0056】
なお、係合装置100は、例えば、内燃機関等の駆動力源の駆動力を車輪に伝達する車両用駆動装置に設けられる。この場合、第1軸部材10及び第2軸部材20の一方は、内燃機関等の駆動力源に駆動連結される。そして、第1軸部材10及び第2軸部材20の他方は、車輪に駆動連結される。
【0057】
このように、本実施形態では、ねじ軸331を回転駆動するための駆動源4と、当該駆動源4とねじ軸331との間の動力伝達を行う伝達機構5と、を更に備え、
駆動源4は、ねじ軸とは別軸上に配置され、
駆動源4の軸方向Lにおける配置領域が、第1回転部材81の軸方向Lにおける配置領域と重なっており、
伝達機構5は、直動機構33に対して軸方向第2側L2に配置され、
第1回転部材81から軸方向第1側L1に延在するように配置された第1軸部材10が、第1回転部材81と一体的に回転するように連結され、
第2回転部材82から軸方向第1側L1に延在するように配置された第2軸部材20が、第2回転部材82と一体的に回転するように連結されている。
【0058】
この構成によれば、駆動源4が第1回転部材81に対して同軸上であって軸方向Lにずれた位置に配置された構成と比べて、係合装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0059】
図1に示すように、本実施形態では、伝達機構5は、第1ギヤ51と、第2ギヤ52と、第3ギヤ53と、第4ギヤ54と、連結体55と、を備えている。
【0060】
第1ギヤ51は、駆動源4の出力軸と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1ギヤ51は、第2軸X2上に配置されている。そして、第1ギヤ51は、駆動源4に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0061】
第2ギヤ52は、第1ギヤ51に噛み合っている。本実施形態では、第2ギヤ52は、第1ギヤ51よりも大径に形成されている。第3ギヤ53は、第2ギヤ52と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第3ギヤ53は、第2ギヤ52よりも小径に形成されている。また、第3ギヤ53は、第2ギヤ52に対して軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、第2ギヤ52及び第3ギヤ53は、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。また、本実施形態では、第2ギヤ52及び第3ギヤ53は、第1軸体56により非回転部材NRに対して回転自在に支持されている。第1軸体56は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第1軸体56の軸方向第1側L1の端部が、支持壁部93に対して回転自在に支持されている。そして、第1軸体56の軸方向第2側L2の端部が、カバー部94に対して回転自在に支持されている。
【0062】
第4ギヤ54は、第3ギヤ53に噛み合っている。本実施形態では、第4ギヤ54は、第3ギヤ53よりも大径に形成されている。本実施形態では、第4ギヤ54は、第1軸X1上に配置されている。また、本実施形態では、第4ギヤ54は、第2軸体57により非回転部材NRに対して回転自在に支持されている。第2軸体57は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第2軸体57の軸方向第2側L2の端部が、カバー部94に対して回転自在に支持されている。一方、第2軸体57の軸方向第1側L1の端部は、連結体55と一体的に回転するように連結されている。
【0063】
本実施形態では、第2ギヤ52の歯数は、第1ギヤ51の歯数よりも多い。そして、第4ギヤ54の歯数は、第2ギヤ52と一体的に回転する第3ギヤ53の歯数よりも多い。そのため、本実施形態では、駆動源4から第1ギヤ51に伝達された回転は、第1ギヤ51と第2ギヤ52との間で減速されて、第3ギヤ53に伝達される。そして、第3ギヤ53の回転は、第3ギヤ53と第4ギヤ54との間で減速されて、連結体55に伝達される。
【0064】
連結体55は、第4ギヤ54とねじ軸331とが一体的に回転するように、それらを連結する。本実施形態では、連結体55は、軸方向第2側L2が開口する筒状に形成されている。そして、連結体55に対して径方向Rの内側に第2軸体57が配置された状態で、連結体55と第2軸体57とが一体的に回転するように連結されている。また、本実施形態では、連結体55から軸方向第1側L1にねじ軸331が延在するように配置された状態で、連結体55とねじ軸331とが一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結体55、第2軸体57、及びねじ軸331は、支持壁部93を軸方向Lに貫通するように配置されている。
【0065】
図2に示すように、本実施形態では、連結体55は、筒状に形成された、支持壁部93の第2内側支持部931に対して径方向Rの内側に配置されている。本実施形態では、連結体55には、当該連結体55から径方向Rの外側に突出するように形成された被支持部551が設けられている。そして、第2内側支持部931には、当該第2内側支持部931から径方向Rの内側に突出し、被支持部551に対して軸方向第1側L1から対向するように形成された軸受支持部932が設けられている。被支持部551は、第5軸受B5を介して、軸受支持部932に対して回転自在に支持されている。これにより、連結体55は、非回転部材NRに対して軸方向第1側L1に相対移動することが規制された状態で、非回転部材NRに対して回転自在に支持されている。なお、本例では、第5軸受B5は、被支持部551と軸受支持部932との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。
【0066】
また、本実施形態では、環状の蓋部933が、被支持部551に対して軸方向第2側L2から対向するように、支持壁部93に固定されている。被支持部551は、第6軸受B6を介して、蓋部933に対して回転自在に支持されている。これにより、連結体55は、非回転部材NRに対して軸方向第2側L2に相対移動することが規制された状態で、非回転部材NRに対して回転自在に支持されている。なお、本例では、第6軸受B6は、被支持部551と蓋部933との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。
【0067】
本実施形態では、押圧部31による第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12に対する押圧力と、押圧部31による第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22に対する押圧力とを検出する圧力センサ(図示を省略)が設けられている。この圧力センサは、例えば、被支持部551と軸受支持部932との軸方向Lの間、又は、被支持部551と蓋部933との軸方向Lの間に配置される。これにより、被駆動部32、ナット部材332、ねじ軸331を介して連結体55に伝達される、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22から押圧部31が受ける力を、圧力センサにより測定することができる。そして、この測定した力に基づいて、押圧部31による第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12に対する押圧力と、押圧部31による第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22に対する押圧力とを算出することができる。
【0068】
2.第2の実施形態に係る係合装置
以下では、第2の実施形態に係る係合装置100について、図3及び図4を参照して説明する。本実施形態では、第2回転部材82が対象回転部材8Tである点で、上記第1の実施形態とは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0069】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、第2回転部材82が対象回転部材8Tである。そのため、本実施形態では、第2回転部材82が、第3摩擦係合要素21が連結された第3連結部8cを備えている。
【0070】
図4に示すように、本実施形態では、第2回転部材82は、第1内側支持部821に加えて、第2外側支持部822と、第2径方向延在部823と、を更に備えている。
【0071】
第2外側支持部822は、第1軸X1を軸心とする筒状に形成されている。本実施形態では、第2外側支持部822に、第3連結部8cが配置されている。一方、本実施形態では、第1回転部材81の第1外側支持部811には、第3連結部8cが配置されておらず、第1連結部8aが配置されている。本実施形態における第1外側支持部811の軸方向Lの寸法は、上記第1の実施形態における第1外側支持部811の軸方向Lの寸法よりも小さい。そして、第1外側支持部811は、第2外側支持部822に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0072】
第2径方向延在部823は、第1軸X1を基準とする径方向Rに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第2径方向延在部823は、第2外側支持部822における軸方向第1側L1の端部から径方向Rの内側に延在するように形成されている。そして、第2径方向延在部823は、第1内側支持部821に対して、軸方向Lに相対移動可能であると共に一体的に回転する状態で支持されている。本例では、第2径方向延在部823の径方向Rの内側の端部が、第2連結部8bに連結されている。また、本実施形態では、第2径方向延在部823は、第1押圧部分311と一体的に回転するように連結されている。本例では、第2径方向延在部823は、第1押圧部分311と一体的に形成されている。
【0073】
3.第1の実施形態に係る車両用駆動装置
以下では、上記第1の実施形態に係る係合装置100を備えた、第1の実施形態に係る車両用駆動装置1000について、図5から図9を参照して説明する。図5及び図6に示すように、車両用駆動装置1000は、ステータST及びロータRTを備えた回転電機MGと、ロータRTと一体的に回転する入力軸ISと、車輪W(図6参照)に駆動連結される出力ギヤOGと、当該出力ギヤOGに連動して回転するように連結された駆動ギヤDGと、遊星歯車機構PL及び上記の係合装置100を備えた変速機TMと、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置1000は、それぞれが互いに異なる車輪Wと一体的に回転する一対の出力部材OMと、出力ギヤOGの回転を一対の出力部材OMに分配する差動歯車機構DFと、を更に備えている。
【0074】
駆動ギヤDG、遊星歯車機構PL、及び係合装置100は、ロータRTの回転軸心である第1軸X1上に配置されている。つまり、ロータRTと遊星歯車機構PLと係合装置100と駆動ギヤDGとが、同軸上に配置されている。本実施形態では、出力ギヤOG、一対の出力部材OM、及び差動歯車機構DFは、第1軸X1とは異なる第4軸X4上に配置されている。本例では、第1軸X1と第4軸X4とは、互いに平行に配置されている。
【0075】
本実施形態では、軸方向Lにおいて、入力軸ISに対して回転電機MGが配置される側を軸方向第1側L1とし、その反対側を軸方向第2側L2としている。
【0076】
回転電機MGは、車輪W(図6参照)の駆動力源として機能する。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機MGは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機MGは、車輪Wの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0077】
回転電機MGのステータSTは、非回転部材NRに固定されている。回転電機MGのロータRTは、ステータSTに対して回転可能に支持されている。
【0078】
図5に示すように、本実施形態では、非回転部材NRは、ケース9である。ケース9は、回転電機MG、入力軸IS、出力ギヤOG、駆動ギヤDG、変速機TM、出力部材OM、及び差動歯車機構DFを収容している。本実施形態では、ケース9は、第1周壁部91、第1側壁部92、支持壁部93、及びカバー部94に加えて、第2周壁部91aと、第3周壁部91bと、第4周壁部91cと、第2側壁部92aと、第3側壁部92bと、第4側壁部92dと、を更に備えている。
【0079】
第2周壁部91aは、回転電機MGの径方向Rの外側を覆うように形成されている。第3周壁部91bは、駆動ギヤDG及び遊星歯車機構PLの径方向Rの外側を覆うように形成されている。第4周壁部91cは、一対の出力部材OM及び差動歯車機構DFの径方向Rの外側を覆うように形成されている。本実施形態では、第1周壁部91は、係合装置100の径方向Rの外側を覆うように形成されている。
【0080】
第2側壁部92aは、回転電機MGの軸方向第1側L1を覆うように形成されている。第3側壁部92bは、回転電機MGと、出力ギヤOG、駆動ギヤDG、及び差動歯車機構DFとを、軸方向Lに隔てるように形成されている。第4側壁部92dは、差動歯車機構DFの軸方向第2側L2を覆うように形成されている。本実施形態では、支持壁部93は、係合装置100の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。そして、カバー部94は、支持壁部93の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。また、第1側壁部92は、遊星歯車機構PLと係合装置100とを、軸方向Lに隔てるように形成されている。
【0081】
本実施形態では、第2周壁部91aは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第2周壁部91aの軸方向第1側L1の開口が、第2側壁部92aによって塞がれている。また、第2周壁部91aの軸方向第2側L2の開口が、第3側壁部92bによって塞がれている。本例では、第2周壁部91aと第2側壁部92aとが、一体的に形成されている。そして、第2周壁部91aの軸方向第1側L1の開口に、第3側壁部92bが軸方向第2側L2から嵌め込まれている。
【0082】
また、本実施形態では、第3周壁部91bは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第3周壁部91bの軸方向第2側L2の開口が、第1側壁部92によって塞がれている。また、本実施形態では、第4周壁部91cは、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第4周壁部91cの軸方向第2側L2の開口が、第4側壁部92dによって塞がれている。本例では、第3周壁部91bと第4周壁部91cと第1側壁部92と第4側壁部92dとが、一体的に形成されている。そして、第3周壁部91b及び第4周壁部91cの軸方向第1側L1の開口が、第3側壁部92bにより塞がれるように、第3周壁部91b及び第4周壁部91cの軸方向第1側L1の端部と、第2周壁部91aの軸方向第2側L2の端部とが、互いに接合されている。
【0083】
また、本実施形態では、第1周壁部91は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第1周壁部91の軸方向第2側L2の開口が、支持壁部93によって塞がれている。本例では、第1周壁部91の軸方向第1側L1の開口が、第1側壁部92により塞がれるように、第1周壁部91が第1側壁部92と一体的に形成されている。そして、第1周壁部91の軸方向第2側L2の開口に、支持壁部93が軸方向第2側L2から嵌め込まれている。更に、支持壁部93に、軸方向第2側L2からカバー部94が接合されている。
【0084】
遊星歯車機構PLは、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備えている。そして、遊星歯車機構PLは、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の回転速度の順が記載の順となるように構成されている。ここで、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、遊星歯車機構の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、遊星歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、各回転要素の回転速度の順は、各回転要素の速度線図(図7等参照)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。速度線図における各回転要素に対応する軸の配置方向は、速度線図の描き方によって異なるが、その配置順は遊星歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。
【0085】
本実施形態では、遊星歯車機構PLは、第1サンギヤS1、第1キャリヤC1、及び第1リングギヤR1を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0086】
第1回転要素E1は、入力軸ISと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1回転要素E1は、第1サンギヤS1である。
【0087】
第2回転要素E2は、駆動ギヤDGと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2回転要素E2は、第1キャリヤC1である。第1キャリヤC1は、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に噛み合う第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持している。第1ピニオンギヤP1は、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第1キャリヤC1と共に第1サンギヤS1を中心として回転(公転)する。第1ピニオンギヤP1は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
【0088】
第3回転要素E3は、係合装置100の係合の状態に応じて、非回転部材NRに連結される第1状態と、第1回転要素E1又は第2回転要素E2と一体的に回転するように連結される第2状態とに切り換えられる。本実施形態では、第3回転要素E3は、第1リングギヤR1である。第1リングギヤR1は、第1サンギヤS1及び第1キャリヤC1に対して径方向Rの外側に配置された内歯のギヤである。
【0089】
本実施形態では、係合装置100は、クラッチ機構1と、ブレーキ機構2と、押圧機構3と、を備えている。
【0090】
クラッチ機構1は、互いに相対回転自在に支持された第1回転部材81と第2回転部材82とを選択的に係合するように構成されている。クラッチ機構1は、第1回転部材81と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素11と、第2回転部材82と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素12と、を備えている。
【0091】
第1摩擦係合要素11と第2摩擦係合要素12とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第1摩擦係合要素11と第2摩擦係合要素12とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。本実施形態では、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0092】
ブレーキ機構2は、第1回転部材81と非回転部材NRとを選択的に係合するように構成されている。ブレーキ機構2は、第1回転部材81と一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素21と、非回転部材NRに固定された第4摩擦係合要素22と、を備えている。
【0093】
第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。また、第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12に対して軸方向第2側L2に離間して配置されている。本実施形態では、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0094】
本実施形態では、第1回転部材81は、第1外側支持部811を備えている。第1外側支持部811は、第1軸X1を軸心とする筒状に形成されている。第1外側支持部811は、第1摩擦係合要素11及び第3摩擦係合要素21を、径方向Rの外側から支持している。本例では、第1摩擦係合要素11及び第3摩擦係合要素21の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第1外側支持部811の内周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されている。
【0095】
また、本実施形態では、第2回転部材82は、第1内側支持部821を備えている。第1内側支持部821は、第1外側支持部811に対して径方向Rの内側に配置されている。第1内側支持部821は、第2摩擦係合要素12を、径方向Rの内側から支持している。本例では、第2摩擦係合要素12の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第1内側支持部821の外周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されている。
【0096】
また、本実施形態では、ケース9の支持壁部93は、第2内側支持部931を備えている。第2内側支持部931は、第1外側支持部811に対して径方向Rの内側であって、第1内側支持部821に対して軸方向第2側L2に配置されている。第2内側支持部931は、第4摩擦係合要素22を、径方向Rの内側から支持している。本例では、第4摩擦係合要素22の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第2内側支持部931の外周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されている。
【0097】
本実施形態では、第1回転部材81は、第1軸部材10と一体的に回転するように連結されている。第1軸部材10は、第1回転部材81から軸方向第1側L1に延在するように配置されている。また、第1軸部材10は、ケース9の第1側壁部92を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第1軸部材10は、第1側壁部92よりも軸方向第1側L1において、遊星歯車機構PLの第1リングギヤR1と一体的に回転するように連結されている。また、第1軸部材10は、第2軸受B2を介して、第1側壁部92に対して回転自在に支持されている。
【0098】
また、本実施形態では、第2回転部材82は、第1回転部材81に対して径方向Rの内側に配置されている。また、第2回転部材82は、第2軸部材20と一体的に回転するように連結されている。第2軸部材20は、第2回転部材82から軸方向第1側L1に延在するように配置されている。また、第2軸部材20は、第1軸部材10に対して径方向Rの内側に配置されている。そして、第2軸部材20は、第3軸受B3を介して、第1軸部材10に対して相対回転自在に支持されている。本実施形態では、入力軸ISが第2軸部材20に対応する。
【0099】
押圧機構3は、クラッチ機構1及びブレーキ機構2の係合の状態を変化させるように構成されている。本実施形態では、押圧機構3は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12を押圧する第1押圧部分311と、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22を押圧する第2押圧部分312と、第1押圧部分311及び第2押圧部分312を軸方向Lに移動させる直動機構33と、当該直動機構33に駆動源4の動力を伝達する伝達機構5と、を備えている。
【0100】
本実施形態では、第1押圧部分311と第2押圧部分312とは、軸方向Lに対向するように配置された別部材により構成されている。そして、第1押圧部分311と第2押圧部分312とは、第4軸受B4を介して、互いに相対回転自在に支持されている。そのため、本実施形態では、第1押圧部分311と第2押圧部分312とは、相対回転可能な状態で、軸方向Lに連動するように構成されている。なお、本例では、第4軸受B4は、第1押圧部分311と第2押圧部分312との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。
【0101】
本実施形態では、直動機構33は、ボールねじにより構成されている。本例では、直動機構33のねじ軸331に螺合されたナット部材332が、第2押圧部分312と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。
【0102】
本実施形態では、伝達機構5は、複数のギヤにより構成されている。本例では、上記の駆動源4からの回転が、互いに噛み合うギヤの間で減速されて、直動機構33に伝達される。
【0103】
直動機構33により第1押圧部分311及び第2押圧部分312が軸方向第1側L1に移動することで、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12が第1押圧部分311により押圧されてクラッチ機構1が係合状態となると共に、第2押圧部分312による第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22の押圧が解除されてブレーキ機構2が解放状態となる。この状態では、第1回転部材81が非回転部材NRに対して回転すると共に、第1回転部材81と第2回転部材82とが一体的に回転する。そのため、第1回転部材81に連結された第1リングギヤR1と、駆動ギヤDGに連結された第1キャリヤC1と、入力軸IS及び第2回転部材82に連結された第1サンギヤS1とが一体的に回転する。その結果、ロータRTの回転が、そのまま駆動ギヤDGに伝達される(図7の符号G2参照)。
【0104】
一方、直動機構33により第1押圧部分311及び第2押圧部分312が軸方向第2側L2に移動することで、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22が第2押圧部分312により押圧されてブレーキ機構2が係合状態となると共に、第1押圧部分311による第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12の押圧が解除されてクラッチ機構1が解放状態となる。この状態では、第1回転部材81が非回転部材NRに対して相対回転が規制されると共に、第2回転部材82が第1回転部材81に対して相対回転する。そのため、第1回転部材81に連結された第1リングギヤR1と、駆動ギヤDGに連結された第1キャリヤC1と、入力軸IS及び第2回転部材82に連結された第1サンギヤS1とが、互いに相対回転する。その結果、ロータRTの回転が、遊星歯車機構PLにおいて減速されて駆動ギヤDGに伝達される(図7の符号G1参照)。
【0105】
駆動ギヤDGは、軸方向LにおけるロータRTと変速機TMとの間に配置されている。本実施形態では、第1軸X1上において、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて、ロータRT、駆動ギヤDG、遊星歯車機構PL、及び係合装置100が記載の順に配置されている。
【0106】
入力軸ISは、軸方向Lに延在するように形成されている。入力軸ISは、駆動ギヤDGを軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、入力軸ISは、ロータRTと第1回転要素E1(ここでは、第1サンギヤS1)とを一体的に回転するように連結している。本実施形態では、入力軸ISは、第5軸受B5を介して、駆動ギヤDGに対して相対回転自在に支持されている。また、本実施形態では、入力軸ISは、ケース9の第3側壁部92bを軸方向Lに貫通している。そして、入力軸ISは、第6軸受B6を介して、第3側壁部92bに対して回転自在に支持されている。また、本実施形態では、入力軸ISは、遊星歯車機構PLを軸方向Lに貫通し、第2回転部材82と一体的に回転するように連結されている。そして、入力軸ISは、第7軸受B7を介して、遊星歯車機構PLの第1キャリヤC1に対して相対回転自在に支持されている。
【0107】
出力ギヤOGは、駆動ギヤDGよりも大径である。そのため、駆動ギヤDGの回転は、当該駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの間で減速される。本実施形態では、出力ギヤOGは、駆動ギヤDGに直接噛み合っている。
【0108】
本実施形態では、出力ギヤOGは、軸方向Lに沿う軸方向視で、回転電機MG及び遊星歯車機構PLの双方と重複するように配置されている。図5に示す例では、出力ギヤOGは、軸方向Lに沿う軸方向視で、回転電機MGのステータST及びロータRTに重複すると共に、遊星歯車機構PLの第1サンギヤS1、第1キャリヤC1、及び第1リングギヤR1に重複するように配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0109】
この構成によれば、出力ギヤOGの大径化を図り、駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの間の減速比を大きく確保し易い。その結果、回転電機MGの小型化を図り易い。
また、本構成によれば、駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの軸間距離(第1軸X1と第4軸X4との径方向Rの距離)を小さく抑え易い。したがって、車両用駆動装置1000の径方向Rの寸法を小さく抑え易い。
【0110】
また、本実施形態では、駆動ギヤDGは、遊星歯車機構PLの第1サンギヤS1よりも小径である。この構成によれば、駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの径方向Rの寸法差を大きくして、駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの間の減速比を大きく確保し易い。その結果、回転電機MGの小型化を図り易い。また、本実施形態では、駆動ギヤDGは、遊星歯車機構PLの第1キャリヤC1よりも小径である。本例では、駆動ギヤDGは、第1キャリヤC1に支持された第1ピニオンギヤP1の公転軌跡よりも小径である。この構成によれば、遊星歯車機構PLに対して軸方向Lにおける駆動ギヤDGの側(ここでは、軸方向第1側L1)から第1ピニオンギヤP1を組み付ける際に、駆動ギヤDGとの干渉を回避しつつ、容易に第1ピニオンギヤP1を組み付けることができる。
【0111】
一対の出力部材OMは、軸方向Lに並んで配置されている。軸方向第1側L1の出力部材OMは、軸方向Lに延在する第1ドライブシャフトDS1(図6参照)を介して、軸方向第1側L1の車輪Wと一体的に回転するように連結されている。また、軸方向第2側L2の出力部材OMは、軸方向Lに延在する第2ドライブシャフトDS2(図6参照)を介して、軸方向第2側L2の車輪Wと一体的に回転するように連結されている。以下の説明では、軸方向第1側L1の出力部材OMを「第1出力部材OM1」とし、軸方向第2側L2の出力部材OMを「第2出力部材OM2」とする。
【0112】
差動歯車機構DFは、第2サンギヤS2、第2キャリヤC2、及び第2リングギヤR2を備えた遊星歯車式の差動歯車機構である。本実施形態では、差動歯車機構DFは、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。そのため、本実施形態では、第2キャリヤC2は、第2サンギヤS2に噛み合う内側ピニオンギヤP21と、第2リングギヤR2に噛み合う外側ピニオンギヤP22とを回転自在に支持している。
【0113】
第2サンギヤS2は、第1出力部材OM1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2サンギヤS2から軸方向第1側L1に第1出力部材OM1が延在するように配置されている。そして、第1出力部材OM1は、第8軸受B8を介して、第2キャリヤC2に対して相対回転自在に支持されている。また、本実施形態では、第1出力部材OM1は、ケース9の第3側壁部92b及び第2側壁部92aを軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第1出力部材OM1は、第9軸受B9を介して第3側壁部92bに対して回転自在に支持されていると共に、第10軸受B10を介して第2側壁部92aに対して回転自在に支持されている。
【0114】
第2キャリヤC2は、第2出力部材OM2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2キャリヤC2から軸方向第2側L2に第2出力部材OM2が延在するように配置されている。そして、第2出力部材OM2は、第11軸受B11を介して、第2リングギヤR2に対して相対回転自在に支持されている。また、本実施形態では、第2出力部材OM2は、ケース9の第4側壁部92dを軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第2出力部材OM2は、第12軸受B12を介して第4側壁部92dに対して回転自在に支持されている。
【0115】
第2リングギヤR2は、出力ギヤOGと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2リングギヤR2は、出力ギヤOGに対して径方向Rの内側に配置されている。更に、第2リングギヤR2は、径方向Rに沿う径方向視で、出力ギヤOGと重複するように配置されている。
【0116】
図7に、本実施形態に係る遊星歯車機構PLの速度線図を示す。図7の速度線図において、縦線は、遊星歯車機構PLの各回転要素の回転速度に対応している。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれは、遊星歯車機構PLの各回転要素に対応している。また、図7の速度線図において、複数本の縦線の上方に示された符号は、対応する遊星歯車機構PLの回転要素の符号である。そして、複数本の縦線の下方に示された符号は、上方に示された符号に対応する回転要素と一体的に回転する要素の符号である。また、図7の速度線図において、第3回転要素E3に対応する縦線上の黒塗りの円は、ブレーキ機構2が直結係合状態であることを示している。なお、「直結係合状態」とは、摩擦係合装置の入力要素と出力要素との間に回転速度差がない係合状態である。
【0117】
ブレーキ機構2が係合状態となり、クラッチ機構1が解放状態となった場合には、変速機TMに第1変速段G1が形成された状態となる。この状態では、図7に示すように、第1回転部材81に連結された第1リングギヤR1と、駆動ギヤDGに連結された第1キャリヤC1と、入力軸IS及び第2回転部材82に連結された第1サンギヤS1とが、互いに相対回転する。その結果、ロータRTの回転が、遊星歯車機構PLにおいて第1変速段G1に応じた変速比で減速されて駆動ギヤDGに伝達される。
【0118】
一方、クラッチ機構1が係合状態となり、ブレーキ機構2が解放状態となった場合には、変速機TMに第2変速段G2が形成された状態となる。この状態では、第1回転部材81に連結された第1リングギヤR1と、駆動ギヤDGに連結された第1キャリヤC1と、入力軸IS及び第2回転部材82に連結された第1サンギヤS1とが一体的に回転する。その結果、第2変速段G2に応じた変速比が1となるため、ロータRTの回転が、そのまま駆動ギヤDGに伝達される。
【0119】
4.第2の実施形態に係る車両用駆動装置
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置1000について、図8及び図9を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置1000は、出力ギヤOGが、駆動ギヤDGに直接噛み合わず、駆動ギヤDGに噛み合うアイドラギヤIGに噛み合っている点で、上記第1の実施形態に係る車両用駆動装置1000とは異なっている。以下では、上記第1の実施形態に係る車両用駆動装置1000との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態に係る車両用駆動装置1000と同様とする。
【0120】
図8及び図9に示すように、本実施形態では、上述したように、出力ギヤOGが、駆動ギヤDGに噛み合うアイドラギヤIGに噛み合っている。つまり、出力ギヤOGと駆動ギヤDGとが、アイドラギヤIGの周方向の互いに異なる位置において、アイドラギヤIGに噛み合っている。
【0121】
本実施形態では、出力ギヤOGは、軸方向Lに沿う軸方向視で、回転電機MGと重複するが、遊星歯車機構PLとは重複していない。
【0122】
また、本実施形態では、ケース9が、第2周壁部91a及び第2側壁部92aを備えていない。これに伴い、本実施形態では、第1出力部材OM1を第2側壁部92aに対して回転自在に支持する第10軸受B10が設けられていない。そして、第1出力部材OM1が、上記第1実施形態のものと比べて、軸方向Lの寸法が短い。
【0123】
また、本実施形態では、第3側壁部92bが、第3周壁部91b及び第4周壁部91cと一体的に形成されている。また、第1側壁部92が、第3周壁部91bとは別部材で構成されている。
【0124】
以上のように、車両用駆動装置1000は、
ロータRTを備えた回転電機MGと、
ロータRTと一体的に回転する入力軸ISと、
車輪Wに駆動連結される出力ギヤOGと、
遊星歯車機構PL及び係合装置100を備えた変速機TMと、を備えた車両用駆動装置1000であって、
遊星歯車機構PLは、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備え、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の回転速度の順が記載の順となるように構成され、
第1回転要素E1は、入力軸ISと一体的に回転するように連結され、
第2回転要素E2は、駆動ギヤDGと一体的に回転するように連結され、
第3回転要素E3は、係合装置100の係合の状態に応じて、非回転部材NRに連結される第1状態と、第1回転要素E1又は第2回転要素E2と一体的に回転するように連結される第2状態とに切り換えられ、
ロータRTと遊星歯車機構PLと係合装置100と駆動ギヤDGとが同軸上に配置され、
駆動ギヤDGは、軸方向LにおけるロータRTと変速機TMとの間に配置され、
入力軸ISは、駆動ギヤDGを軸方向Lに貫通して、ロータRTと第1回転要素E1とを一体的に回転するように連結し、
出力ギヤOGは、駆動ギヤDGよりも大径であり、
駆動ギヤDGと出力ギヤOGとが噛み合い、又は、駆動ギヤDGに噛み合うアイドラギヤIGと出力ギヤOGとが噛み合っている。
【0125】
この構成によれば、遊星歯車機構PLの第2回転要素E2と一体的に回転するように連結された駆動ギヤDGが、当該駆動ギヤDGよりも大径に形成された出力ギヤOGに直接、又はアイドラギヤIGを介して噛み合っている。これにより、駆動ギヤDGに伝達された第2回転要素E2の回転を、当該駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの間で減速させることができる。そのため、例えば、第2回転要素E2の回転を減速させる遊星歯車機構PLを備えた構成と比べて、車両用駆動装置1000の構成を簡素化することができる。説明を加えると、アイドラギヤIGを備えていない構成では、第3回転要素E3が第2状態の場合、回転電機MGから出力ギヤOGまでの動力伝達経路におけるギヤの噛み合いは駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの噛み合いの1箇所のみである。一方、第3回転要素E3が第1状態の場合では、遊星歯車機構PLの内部での噛み合いが増加するのみである。このように、車両用駆動装置1000の全体としてのギヤの噛み合いの数が少ないため、回転電機MGから出力ギヤOGまでの動力伝達経路の伝達効率を高め易い。また、アイドラギヤIGを備えた構成であっても、当該アイドラギヤIGを備えていない構成と比べてギヤの噛み合いが1つ増加するのみであり、同様に回転電機MGから出力ギヤOGまでの動力伝達経路の伝達効率を高め易い。
また、本構成によれば、ロータRTと変速機TMと駆動ギヤDGとが同軸上に配置され、軸方向LにおけるロータRTと変速機TMとの間に駆動ギヤDGが配置されている。これにより、駆動ギヤDGが径方向Rに沿う径方向視でロータRT及び変速機TMの少なくとも一方と重複するように配置された構成と比べて、車両用駆動装置1000の径方向Rの寸法を小さく抑えることができる。更に、駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの径方向Rの寸法差を大きくして、駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの間の減速比を大きく確保し易い。その結果、回転電機MGの小型化を図り易い。
以上のように、本構成によれば、遊星歯車機構PL及び係合装置100を有する変速機TMを備えた構成において、小型で簡素な構成の車両用駆動装置1000を実現できる。
【0126】
また、上記第1及び第2実施形態において、車両用駆動装置1000は、
車輪Wと一体的に回転する出力部材OMを更に備え、
出力ギヤOGは、出力部材OMと同軸上に配置されている。
【0127】
この構成によれば、ロータRT及び変速機TMと同軸上に配置された駆動ギヤDGに直接、又はアイドラギヤIGを介して噛み合う出力ギヤOGが、車輪Wと一体的に回転する出力部材OMと同軸上に配置されている。これにより、車両用駆動装置1000の全体として軸数を少なく抑え易い。したがって、車両用駆動装置1000の径方向Rの寸法を小さく抑えることができる。
【0128】
また、上記第1及び第2実施形態において、車両用駆動装置1000は、
それぞれが互いに異なる車輪Wと一体的に回転する一対の出力部材OMと、
第2サンギヤS2、第2キャリヤC2、及び第2リングギヤR2を備え、出力ギヤOGの回転を一対の出力部材OMに分配する、遊星歯車式の差動歯車機構DFと、を更に備え、
出力ギヤOGは、リングギヤよりも径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視でリングギヤと重複する位置に配置されている。
【0129】
この構成によれば、差動歯車機構DFが遊星歯車式であるため、差動歯車機構DFが傘歯車式である構成と比べて、車両用駆動装置1000の軸方向Lの寸法を小さく抑え易い。
また、本構成によれば、出力ギヤOGが第2リングギヤR2よりも径方向Rの外側に配置されている。これにより、出力ギヤOGの大径化を図り、駆動ギヤDGと出力ギヤOGとの間の減速比を大きく確保し易い。その結果、回転電機MGの小型化を図り易い。
また、本構成によれば、出力ギヤOGが径方向Rに沿う径方向視で第2リングギヤR2と重複するように配置されている。これにより、出力ギヤOGが第2リングギヤR2に対して軸方向Lにずれて配置された構成と比べて、車両用駆動装置1000の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0130】
また、上記第1及び第2実施形態において、遊星歯車機構PLは、係合装置100に対して軸方向LにおけるロータRTの側に配置されている。
【0131】
この構成によれば、遊星歯車機構PLの第1回転要素E1とロータRTとの連結構造、及び、遊星歯車機構PLの第2回転要素E2と駆動ギヤDGとの連結構造を簡素化し易い。したがって、車両用駆動装置1000の小型化を図り易い。
【0132】
5.第3の実施形態に係る車両用駆動装置
以下では、上記第2の実施形態に係る係合装置100を備えた、第3の実施形態に係る車両用駆動装置1000について、図10から図12を参照して説明する。図10及び図11に示すように、車両用駆動装置1000は、ステータST及びロータRTを備えた回転電機MGと、ロータRTの回転が伝達される入力部材IMと、車輪W(図11参照)と一体的に回転する出力部材OMと、入力部材IMの回転を減速して出力部材OMに伝達する減速機RDと、入力部材IMと非回転部材NRとを選択的に係合するブレーキ機構2と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置1000は、ロータRTと入力部材IMとを選択的に係合するクラッチ機構1と、ブレーキ機構2及びクラッチ機構1の双方の係合の状態を変化させる駆動機構7と、非回転部材NRとしてのケース9と、を更に備えている。なお、本実施形態では、車両用駆動装置1000は、インホイールモータと称される、車輪Wの駆動装置として構成されている。
【0133】
ロータRT、入力部材IM、出力部材OM、及びブレーキ機構2は、同軸上に配置されている。言い換えると、ロータRT、入力部材IM、及びブレーキ機構2が、車輪Wと一体的に回転する出力部材OMと同軸上、つまり、車輪Wの回転軸心と同軸上に配置されている。本実施形態では、減速機RD及びクラッチ機構1も、それらと同軸上に配置されている。
【0134】
図10に示すように、ケース9は、回転電機MG、入力部材IM、出力部材OM、減速機RD、ブレーキ機構2、クラッチ機構1、及び駆動機構7を収容している。本実施形態では、ケース9は、出力部材OM及び駆動機構7を、それらの一部が外部に露出した状態で収容している。また、本実施形態では、ケース9は、第1周壁部91、第1側壁部92、支持壁部93、及びカバー部94に加えて、第5側壁部95と、第6側壁部96と、を更に備えている。
【0135】
第1周壁部91は、軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2が開口する筒状に形成されている。第5側壁部95及び第6側壁部96は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。第5側壁部95は、第1周壁部91の軸方向第1側L1の開口を塞ぐように配置されている。第6側壁部96は、第1周壁部91の軸方向第2側L2の開口を塞ぐように配置されている。
【0136】
第1側壁部92は、第1周壁部91から径方向Rの内側に向けて延在するように形成されている。第1側壁部92は、第5側壁部95と第6側壁部96との軸方向Lの間に配置されている。本実施形態では、第1側壁部92と第5側壁部95との軸方向Lの間に、減速機RDが配置されている。そして、第1側壁部92と第6側壁部96との軸方向Lの間に、回転電機MG、ブレーキ機構2、及びクラッチ機構1が配置されている。
【0137】
カバー部94は、第6側壁部96の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。本実施形態では、車両用駆動装置1000を車体に連結するための複数の車体連結部材C1が、第6側壁部96から軸方向第2側L2に突出するように、ロータRTの回転軸心を中心とする周方向に分散配置されている。そして、複数の車体連結部材C1に対して径方向Rの内側に、カバー部94が配置されている。
【0138】
回転電機MGは、車輪W(図11参照)の駆動力源として機能する。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機MGは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機MGは、車輪Wの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0139】
回転電機MGのステータSTは、非回転部材NRに固定されている。本実施形態では、ステータSTは、ケース9の第1周壁部91に固定されている。回転電機MGのロータRTは、ステータSTに対して回転可能に支持されている。本実施形態では、ロータRTは、ステータSTに対して径方向Rの内側に配置されている。
【0140】
図12に示すように、本実施形態では、回転電機MGは、ロータ支持部材13を更に備えている。ロータ支持部材13は、ロータRTをケース9に対して回転可能に支持する部材である。本実施形態では、ロータ支持部材13は、外側筒状部131と、内側筒状部132と、接続部133と、を備えている。
【0141】
外側筒状部131は、ロータRTと同軸の筒状に形成されている。外側筒状部131は、ロータRTを径方向Rの内側から支持するように配置されている。本実施形態では、外側筒状部131が第1回転部材81に対応する。
【0142】
内側筒状部132は、外側筒状部131と同軸の筒状に形成されている。内側筒状部132は、外側筒状部131よりも小径に形成されている。本実施形態では、内側筒状部132は、第2軸受B2を介して、ケース9の第1側壁部92に対して回転可能に支持されている。第2軸受B2は、内側筒状部132と第1側壁部92との径方向Rの間に配置されたラジアル軸受である。図示の例では、第2軸受B2は、内側筒状部132を径方向Rの外側から支持するように配置された玉軸受である。本実施形態では、内側筒状部132が第1軸部材10に対応する。
【0143】
接続部133は、外側筒状部131と内側筒状部132とを接続するように、径方向Rに沿って延在している。本実施形態では、接続部133の径方向Rの外側の端部が、外側筒状部131の軸方向第1側L1の端部に連結されている。また、接続部133の径方向Rの内側の端部が、内側筒状部132の軸方向第2側L2の端部に連結されている。図示の例では、外側筒状部131と内側筒状部132と接続部133とが一体的に形成されている。
【0144】
また、本実施形態では、接続部133は、第1軸受B1を介して、ケース9の第1側壁部92に対して回転可能に支持されている。第1軸受B1は、接続部133と第1側壁部92との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。図示の例では、第1軸受B1は、接続部133を軸方向第1側L1から支持するように配置された玉軸受である。
【0145】
本実施形態では、入力部材IMは、第2回転部材82と、第2軸部材20とを含む。第2軸部材20は、ケース9の第1側壁部92を軸方向Lに貫通するように配置されている。また、本実施形態では、第2軸部材20は、ロータ支持部材13の内側筒状部132に対して、径方向Rの内側に配置されている。そして、第2軸部材20は、第3軸受B3を介して、内側筒状部132に対して相対回転可能に支持されている。第3軸受B3は、第2軸部材20と内側筒状部132との径方向Rの間に配置されたラジアル軸受である。
【0146】
本実施形態では、ブレーキ機構2とクラッチ機構1とは、軸方向Lに並んで配置されている。図示の例では、ブレーキ機構2に対して軸方向第1側L1にクラッチ機構1が配置されている。
【0147】
図12に示すように、本実施形態では、ブレーキ機構2は、第3摩擦係合要素21と、第4摩擦係合要素22と、第2外側支持部822と、第2内側支持部931と、第2押圧部分312と、を備えている。
【0148】
第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第3摩擦係合要素21と第4摩擦係合要素22とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。本実施形態では、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22のそれぞれは、ロータRTと同軸の円板状に形成されている。そして、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0149】
第2外側支持部822は、第3摩擦係合要素21と一体的に回転するように、第3摩擦係合要素21を軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第2外側支持部822は、ロータRTと同軸の筒状に形成されている。そして、第2外側支持部822は、第3摩擦係合要素21を径方向Rの外側から支持している。本例では、第2外側支持部822の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第3摩擦係合要素21の外周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0150】
第2内側支持部931は、第4摩擦係合要素22と一体的に回転するように、第4摩擦係合要素22を軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第2内側支持部931は、第2外側支持部822と同軸であって、第2外側支持部822よりも小径の筒状に形成されている。そして、第2内側支持部931は、第4摩擦係合要素22を径方向Rの内側から支持している。本例では、第2内側支持部931の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第4摩擦係合要素22の内周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0151】
第2外側支持部822は、入力部材IMと一体的に回転するように連結されている。第2内側支持部931は、非回転部材NRに固定されている。本実施形態では、第2内側支持部931は、非回転部材NRとしてのケース9が備える支持壁部93に固定されている。支持壁部93は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、支持壁部93は、第6側壁部96におけるカバー部94により覆われた部分に対して、軸方向第1側L1から接合されている。図示の例では、第2内側支持部931は、支持壁部93から軸方向第1側L1に突出するように、支持壁部93と一体的に形成されている。
【0152】
第2押圧部分312は、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22を押圧するように構成されている。本実施形態では、第2押圧部分312は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。そして、第2押圧部分312は、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22を軸方向第1側L1から押圧するように配置されている。
【0153】
本実施形態では、クラッチ機構1は、第1摩擦係合要素11と、第2摩擦係合要素12と、第1外側支持部811と、第1内側支持部821と、第1押圧部分311と、を備えている。
【0154】
第1摩擦係合要素11と第2摩擦係合要素12とは、互いに軸方向Lに対向するように配置されている。そして、第1摩擦係合要素11と第2摩擦係合要素12とは、軸方向Lに押し付けられることで互いに摩擦係合する。本実施形態では、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12のそれぞれは、ロータRTと同軸の円板状に形成されている。そして、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12は、複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0155】
第1外側支持部811は、第1摩擦係合要素11と一体的に回転するように、第1摩擦係合要素11を軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第1外側支持部811は、ロータRTと同軸の筒状に形成されている。そして、第1外側支持部811は、第1摩擦係合要素11を径方向Rの外側から支持している。本例では、第1外側支持部811の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第1摩擦係合要素11の外周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0156】
第1内側支持部821は、第2摩擦係合要素12と一体的に回転するように、第2摩擦係合要素12を軸方向Lに摺動可能に支持している。本実施形態では、第1内側支持部821は、第1外側支持部811と同軸であって、第1外側支持部811よりも小径の筒状に形成されている。そして、第1内側支持部821は、第2摩擦係合要素12を径方向Rの内側から支持している。本例では、第1内側支持部821の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。一方、第2摩擦係合要素12の内周部にも、同様のスプライン歯が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。
【0157】
第1押圧部分311は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12を押圧するように構成されている。本実施形態では、第1押圧部分311は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。そして、第1押圧部分311は、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12を軸方向第2側L2から押圧するように配置されている。また、本実施形態では、第1押圧部分311は、ブレーキ機構2の第2外側支持部822と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、第1押圧部分311の径方向Rの外側の端部と、第2外側支持部822の軸方向第1側L1の端部とが連結するように、第1押圧部分311と第2外側支持部822とが一体的に形成されている。
【0158】
また、本実施形態では、第1押圧部分311は、第4軸受B4を介して、第2押圧部分312に対して相対回転可能に支持されている。第4軸受B4は、第1押圧部分311と第2押圧部分312との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。図示の例では、第4軸受B4は、第1押圧部分311を軸方向第2側L2から支持すると共に、第2押圧部分312を軸方向第1側L1から支持するように配置された玉軸受である。
【0159】
第1外側支持部811は、ロータRTと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1外側支持部811は、ロータ支持部材13の外側筒状部131に対して、径方向Rの内側から連結されている。図示の例では、第1外側支持部811は、外側筒状部131と一体的に形成されている。
【0160】
第1内側支持部821は、入力部材IMと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1内側支持部821は、入力部材IMにおけるロータ支持部材13の接続部133よりも軸方向第2側L2に位置する部分(ここでは、第2回転部材82)に対して、径方向Rの外側から連結されている。図示の例では、第1内側支持部821は、入力部材IMと一体的に形成されている。
【0161】
また、第1内側支持部821は、ブレーキ機構2の第2外側支持部822と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1内側支持部821は、第2外側支持部822に連結された第1押圧部分311と一体的に回転するように、第1押圧部分311を軸方向Lに摺動可能に支持している。本例では、第1押圧部分311の内周部には、第1内側支持部821の外周部に形成されたスプライン歯に係合するスプライン歯が、周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン歯同士が係合されている。こうして、ブレーキ機構2の第3摩擦係合要素21と、クラッチ機構1の第2摩擦係合要素12とが、一体的に回転する。
【0162】
ブレーキ機構2は、回転電機MGのロータRTに対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視でロータRTと重複する位置に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0163】
本実施形態では、クラッチ機構1も、ロータRTに対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視でロータRTと重複する位置に配置されている。
【0164】
上記の通り、入力部材IMの回転を減速して出力部材OMに伝達する減速機RDが設けられているため、ロータRTの慣性モーメントが減速機RDの減速比に応じて増幅されて出力部材OMに作用する。その結果、例えば、車輪Wの段差乗り上げ、波状路の走行等に起因して、車輪Wから出力部材OMに大きなトルク変動が伝達された場合等に、駆動力の伝達経路に作用するトルクが過大になり易い。これに対して、駆動力の伝達経路上に配置された部材の強度を大きく確保すると、それらの部材の大型化を招くことになる。
本構成によれば、ロータRTと入力部材IMとを選択的に係合するクラッチ機構1が設けられている。これにより、駆動力の伝達経路に過大なトルクが作用した場合に、クラッチ機構1がスリップすることで、ロータRTと入力部材IMとの間で伝達される駆動力が過大になることを回避できる。したがって、駆動力の伝達経路上に配置された部材の小型化を図ることができる。
また、本構成によれば、クラッチ機構1を解放状態とすることで、ロータRTを入力部材IM(延いては車輪W)から切り離すことができる。これにより、車両が慣性で走行している間や他の駆動源の駆動力により走行している間等に、回転電機MGを停止させることができる。したがって、車両用駆動装置1000のエネルギ効率を高めることができる。
【0165】
駆動機構7は、ブレーキ機構2を係合状態とすると共にクラッチ機構1を解放状態とする第1状態と、ブレーキ機構2を解放状態とすると共にクラッチ機構1を係合状態とする第2状態と、に状態変化するように構成されている。本実施形態では、駆動機構7は、ブレーキ機構2を解放状態とすると共にクラッチ機構1を解放状態とする第3状態にも状態変化するように構成されている。第3状態において、上述したように、車両が慣性で走行している間や他の駆動源の駆動力により走行している間等に、回転電機MGを停止させることができる。図10に示すように、本実施形態では、駆動機構7は、直動機構33と、伝達機構5と、駆動源4と、を備えている。
【0166】
直動機構33は、ブレーキ機構2の第2押圧部分312及びクラッチ機構1の第1押圧部分311を、軸方向Lに移動させるように構成されている。本実施形態では、第2押圧部分312及び第1押圧部分311は、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22と、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12との軸方向Lの間に配置されている。そのため、直動機構33が第2押圧部分312及び第1押圧部分311の双方を移動させ易い構成となっている。
【0167】
図12に示すように、本実施形態では、直動機構33は、非回転部材NRに対して回転自在に支持されたねじ軸331と、当該ねじ軸331に螺合するナット部材332と、を備えている。
【0168】
ねじ軸331の外周部には、ねじ山が形成されている。ねじ軸331は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、ねじ軸331は、ブレーキ機構2及びクラッチ機構1と同軸上に配置されている。また、本実施形態では、ねじ軸331は、ブレーキ機構2の第2内側支持部931に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2内側支持部931と重複する位置に配置されている。
【0169】
ナット部材332の内周部には、ねじ軸331のねじ山に係合する溝が形成されている。ナット部材332は、ねじ軸331が回転することにより、当該回転方向とねじ軸331のねじ山の向きとに応じて軸方向Lに沿う直線運動を行う。
【0170】
本実施形態では、ナット部材332は、ブレーキ機構2の第2押圧部分312と一体的に軸方向Lに移動するように連結されている。また、上述したように、本実施形態では、第2押圧部分312と第1押圧部分311との軸方向Lの間に、第4軸受B4が配置されている。そのため、本実施形態では、ナット部材332が軸方向第1側L1に移動するようにねじ軸331が回転すると、ナット部材332を介して第2押圧部分312が軸方向第1側L1に移動すると共に、第4軸受B4を介して第1押圧部分311も軸方向第1側L1に移動する。その結果、第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12が第1押圧部分311によって押圧されて、クラッチ機構1が係合状態となると共に、第2押圧部分312による第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22の押圧が解除されて、ブレーキ機構2が解放状態となる。この状態では、ロータRTと入力部材IMとの間で、動力伝達が行われる。
【0171】
一方、本実施形態では、ナット部材332が軸方向第2側L2に移動するようにねじ軸331が回転すると、ナット部材332を介して第2押圧部分312が軸方向第2側L2に移動する。その結果、第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22が第2押圧部分312によって押圧されて、ブレーキ機構2が係合状態となると共に、第1押圧部分311による第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12の押圧が解除されて、クラッチ機構1が解放状態となる。この状態では、ロータRTと入力部材IMとの間での動力伝達が遮断される。
【0172】
伝達機構5は、直動機構33に駆動源4の動力を伝達するように構成されている。図10に示すように、本実施形態では、伝達機構5は、第1ギヤ51と、第2ギヤ52と、第3ギヤ53と、第4ギヤ54と、連結体55と、を備えている。
【0173】
第1ギヤ51は、駆動源4の出力軸と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1ギヤ51は、直動機構33のねじ軸331と同軸上に配置されている。そして、第1ギヤ51は、駆動源4に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0174】
第2ギヤ52は、第1ギヤ51に噛み合っている。本実施形態では、第2ギヤ52は、第1ギヤ51よりも大径に形成されている。第3ギヤ53は、第2ギヤ52と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第3ギヤ53は、第2ギヤ52よりも小径に形成されている。また、第3ギヤ53は、第2ギヤ52に対して軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、第2ギヤ52及び第3ギヤ53は、第1軸体56によりケース9に対して回転自在に支持されている。第1軸体56は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第1軸体56は、第6側壁部96を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第1軸体56の軸方向第1側L1の端部が、支持壁部93に対して回転自在に支持されている。また、第1軸体56の軸方向第2側L2の端部が、カバー部94に対して回転自在に支持されている。
【0175】
第4ギヤ54は、第3ギヤ53に噛み合っている。本実施形態では、第4ギヤ54は、第3ギヤ53よりも大径に形成されている。本実施形態では、第4ギヤ54は、直動機構33のねじ軸331と同軸上に配置されている。また、本実施形態では、第4ギヤ54は、第2軸体57を介して連結体55と一体的に回転するように連結されている。第2軸体57は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第2軸体57は、第6側壁部96及び支持壁部93を軸方向Lに貫通するように配置されている。
【0176】
本実施形態では、第2ギヤ52の歯数は、第1ギヤ51の歯数よりも多い。そして、第4ギヤ54の歯数は、第2ギヤ52と一体的に回転する第3ギヤ53の歯数よりも多い。そのため、本実施形態では、駆動源4から第1ギヤ51に伝達された回転は、第1ギヤ51と第2ギヤ52との間で減速されて、第3ギヤ53に伝達される。そして、第3ギヤ53の回転は、第3ギヤ53と第4ギヤ54との間で減速されて、連結体55に伝達される。
【0177】
図12に示すように、連結体55は、第4ギヤ54とねじ軸331とが一体的に回転するように、それらを連結する。本実施形態では、連結体55は、軸方向第2側L2が開口する筒状に形成されている。そして、連結体55に対して径方向Rの内側に第2軸体57が配置された状態で、連結体55と第2軸体57とが一体的に回転するように連結されている。また、本実施形態では、連結体55から軸方向第1側L1にねじ軸331が突出するように配置された状態で、連結体55とねじ軸331とが一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結体55は、ブレーキ機構2の第2内側支持部931に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で第2内側支持部931と重複する位置に配置されている。
【0178】
駆動源4は、直動機構33を駆動させるための動力を発生する装置である。本実施形態では、駆動源4は、カバー部94に支持されている。図示の例では、駆動源4は、カバー部94に軸方向第2側L2から連結されている。なお、本例では、駆動源4は、電動モータである。
【0179】
上記の通り、本実施形態では、車両用駆動装置1000は、ブレーキ機構2及びクラッチ機構1の双方の係合の状態を変化させる駆動機構7を更に備え、
ブレーキ機構2とクラッチ機構1とが軸方向Lに並んで配置され、
駆動機構7は、ブレーキ機構2を係合状態とすると共にクラッチ機構1を解放状態とする第1状態と、ブレーキ機構2を解放状態とすると共にクラッチ機構1を係合状態とする第2状態と、に状態変化するように構成されている。
【0180】
この構成によれば、ブレーキ機構2及びクラッチ機構1の双方の係合の状態を、共通の駆動機構7により変化させることができる。したがって、ブレーキ機構2及びクラッチ機構1のそれぞれが別の駆動機構により駆動される構成に比べて、車両用駆動装置1000の小型化を図り易い。
【0181】
本実施形態では、減速機RDは、サンギヤSG、キャリヤCR、及びリングギヤRGを備えた遊星歯車機構である。ここでは、減速機RDは、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。また、本実施形態では、減速機RDは、径方向Rに沿う径方向視で、回転電機MGと重複しない位置に配置されている。図示の例では、減速機RDは、回転電機MGよりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0182】
図10に示すように、本実施形態では、サンギヤSGは、入力部材IMと一体的に回転するように連結されている。つまり、本実施形態では、サンギヤSGは、減速機RDの入力要素である。図示の例では、サンギヤSGは、入力部材IMにおけるケース9の第1側壁部92よりも軸方向第1側L1に位置する部分に形成されている。また、本実施形態では、サンギヤSGは、ロータRTよりも径方向Rの内側に配置されている。図示の例では、サンギヤSGは、ブレーキ機構2の第3摩擦係合要素21及び第4摩擦係合要素22、並びに、クラッチ機構1の第1摩擦係合要素11及び第2摩擦係合要素12よりも、径方向Rの内側に配置されている。
【0183】
キャリヤCRは、ピニオンギヤPGを回転自在に支持している。ピニオンギヤPGは、サンギヤSG及びリングギヤRGに噛み合っている。ピニオンギヤPGは、その軸心回りに回転(自転)すると共に、キャリヤCRと共にサンギヤSGを中心として回転(公転)する。ピニオンギヤPGは、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。
【0184】
本実施形態では、キャリヤCRは、出力部材OMと一体的に回転するように連結されている。つまり、本実施形態では、キャリヤCRは、減速機RDの出力要素である。また、本実施形態では、キャリヤCRは、第13軸受B13を介してケース9に対して回転可能に支持された第1被支持部CRaと、第14軸受B14を介してケース9に対して回転可能に支持された第2被支持部CRbと、を備えている。
【0185】
本実施形態では、第1被支持部CRaは、サンギヤSGと同軸の筒状に形成されている。そして、第1被支持部CRaは、ケース9の第5側壁部95を軸方向Lに貫通するように、ピニオンギヤPGに対して軸方向第1側L1に配置されている。第13軸受B13は、第1被支持部CRaと第5側壁部95との径方向Rの間に配置されたラジアル軸受である。図示の例では、第13軸受B13は、第1被支持部CRaを径方向Rの外側から支持するように配置されている。また、第13軸受B13は、当該第13軸受B13の転動体と軌道輪との接触点を通る仮想線(作用線)が軸方向Lに対して傾斜したアンギュラ玉軸受である。
【0186】
本実施形態では、第2被支持部CRbは、第1被支持部CRaと同軸の筒状に形成されている。そして、第2被支持部CRbは、ピニオンギヤPGに対して軸方向第2側L2に配置されている。第14軸受B14は、第2被支持部CRbとケース9の第1側壁部92との径方向Rの間に配置されたラジアル軸受である。図示の例では、第14軸受B14は、第2被支持部CRbを径方向Rの内側から支持するように配置されている。また、第14軸受B14は、当該第14軸受B14の転動体と軌道輪との接触点を通る仮想線(作用線)が軸方向Lに対して傾斜したアンギュラ玉軸受である。ここでは、第13軸受B13及び第14軸受B14は、それらの作用線が軸方向Lに対して傾斜する方向が逆向きとなるように配置されている。
【0187】
本実施形態では、リングギヤRGは、ケース9に固定されている。図示の例では、リングギヤRGは、ケース9の第1側壁部92と一体的に形成されている。また、本実施形態では、リングギヤRGは、軸方向Lに沿う軸方向視で、ステータSTと重複するように配置されている。
【0188】
上記の通り、本実施形態では、減速機RDは、サンギヤSG、キャリヤCR、及びリングギヤRGを備えた遊星歯車機構であり、径方向Rに沿う径方向視で回転電機MGと重複しない位置に配置され、
ロータRTは、回転電機MGのステータSTに対して径方向Rの内側に配置され、
リングギヤRGは、軸方向Lに沿う軸方向視でステータSTと重複するように配置され、
サンギヤSGは、ロータRTよりも径方向Rの内側に配置されている。
【0189】
この構成によれば、リングギヤRGとサンギヤSGとの径方向Rの寸法差を大きく確保することができる。これにより、減速機RDの減速比を大きく確保し易い。
【0190】
また、本実施形態では、減速機RDは、1つの遊星歯車機構により構成されている。この構成によれば、例えば、平行軸歯車機構と遊星歯車機構とが軸方向Lに並んだ構成に比べて、減速機RDの軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0191】
本実施形態では、出力部材OMは、ホイールハブである。本実施形態では、出力部材OMは、連結部OMaと、接合部OMbと、を備えている。
【0192】
連結部OMaは、減速機RDの出力要素と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結部OMaは、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。そして、連結部OMaは、キャリヤCRの第1被支持部CRaに対して径方向Rの内側に配置された状態で、第1被支持部CRaと一体的に回転するように連結されている。
【0193】
接合部OMbは、車輪Wに接合されるように構成されている。本実施形態では、接合部OMbは、連結部OMaにおけるキャリヤCRの第1被支持部CRaよりも軸方向第1側L1の部分から、径方向Rの外側に突出するように形成されている。そして、接合部OMbは、その軸心を中心とする周方向に分散配置された複数の車輪連結部材C2により、車輪Wに対して軸方向第2側L2に配置された状態で車輪Wに連結される。
【0194】
このように、本実施形態では、出力部材OMは、車輪Wに接合される接合部OMbを備えたホイールハブであり、
接合部OMbと回転電機MGとの軸方向Lの間に、減速機RDが配置されている。
【0195】
この構成によれば、減速機RDが径方向Rに沿う径方向視で回転電機MGと重複するように配置された構成に比べて、回転電機MGの径方向Rの寸法を大きく確保しつつ、車両用駆動装置1000の径方向Rの寸法を小さく抑え易い。
【0196】
以上のように、車両用駆動装置1000は、
ロータRTを備えた回転電機MGと、
ロータRTの回転が伝達される入力部材IMと、
車輪Wと一体的に回転する出力部材OMと、
入力部材IMの回転を減速して出力部材OMに伝達する減速機RDと、
入力部材IMと非回転部材NRとを選択的に係合するブレーキ機構2と、を備えた車両用駆動装置1000であって、
ブレーキ機構2は、ロータRTに対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視でロータRTと重複する位置に配置され、
ロータRT、入力部材IM、及びブレーキ機構2が、出力部材OMと同軸上に配置されている。
【0197】
この構成によれば、ロータRTがブレーキ機構2に対して径方向Rの外側に配置されている。これにより、回転電機MGがブレーキ機構2よりも径方向Rに大きくなるため、回転電機MGの大径化による出力トルクの増大を図り易い。また、本構成によれば、ブレーキ機構2が径方向Rに沿う径方向視でロータRTと重複する位置に配置されている。これにより、ブレーキ機構2がロータRTよりも軸方向Lの一方側に配置された構成に比べて、車両用駆動装置1000の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。したがって、本構成によれば、回転電機MGの出力トルクを大きく確保しつつ、軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、ロータRT、入力部材IM、及びブレーキ機構2が、車輪Wと一体的に回転する出力部材OMと同軸上に配置されている。これにより、例えばインホイールモータのような車輪Wの駆動装置に適した構成を実現できる。
【0198】
6.その他の実施形態
(1)上記の実施形態に係る係合装置100では、直動機構33が第2連結部8bに対して軸方向第2側L2に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、直動機構33が第2連結部8bと径方向Rに沿う径方向視で重複するように配置されていても良い。
【0199】
(2)上記の実施形態に係る係合装置100では、直動機構33が非回転部材NRの第4連結部8dに対して径方向Rの内側であって径方向Rに沿う径方向視で第4連結部8dと重複する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、直動機構33が第4連結部8dに対して軸方向第1側L1又は軸方向第2側L2にずれて配置されていても良い。
【0200】
(3)上記の実施形態に係る係合装置100では、被駆動部32が、非回転部材NRに対して相対回転が規制された状態で支持された第2押圧部分312と一体的に軸方向Lに移動するように連結された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、被駆動部32が、第1回転部材81又は第2回転部材82に対して一体的に回転する状態で支持された第1押圧部分311と一体的に軸方向Lに移動するように連結されていても良い。
【0201】
(4)上記の実施形態に係る係合装置100では、直動機構33がねじ軸331とナット部材332とを備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、直動機構33が、レールと、当該レールに沿ってスライド移動するスライド部材と、を備えていても良い。
【0202】
(5)上記の実施形態に係る係合装置100では、ねじ軸331が、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22に対して、同軸上であって径方向Rの内側に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ねじ軸331が、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22とは別軸上に配置されていても良い。また、ねじ軸331が、第1摩擦係合要素11、第2摩擦係合要素12、第3摩擦係合要素21、及び第4摩擦係合要素22に対して径方向Rの外側に配置されていても良い。
【0203】
(6)上記の実施形態に係る係合装置100では、駆動源4がねじ軸331とは別軸上に配置され、駆動源4の軸方向Lにおける配置領域が、第1回転部材81の軸方向Lにおける配置領域と重なっている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、駆動源4がねじ軸331と同軸上に配置されていても良い。また、駆動源4が第1回転部材81に対して軸方向第1側L1又は軸方向第2側L2にずれて配置されていても良い。
【0204】
(7)上記の実施形態に係る係合装置100では、伝達機構5が駆動源4の回転を減速してねじ軸331に伝達する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、伝達機構5が駆動源4の回転をそのままねじ軸331に伝達する構成としても良い。
【0205】
(8)上記第1及び第2の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、遊星歯車機構PLがシングルピニオン型の遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、遊星歯車機構PLがダブルピニオン型の遊星歯車機構であっても良い。この場合、例えば、第1回転要素E1が第1サンギヤS1であり、第2回転要素E2が第1リングギヤR1であり、第3回転要素E3が第1キャリヤC1である構成とすることができる。
【0206】
(9)上記第1及び第2の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、出力ギヤOGの回転を一対の出力部材OMに分配する差動歯車機構DFを備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動歯車機構DFを備えず、出力ギヤOGの回転を1つの出力部材OMに伝達する構成としても良い。
【0207】
(10)上記第1及び第2の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、出力ギヤOGが出力部材OMと同軸上に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、出力ギヤOGが出力部材OMとは別軸上に配置されていても良い。
【0208】
(11)上記第1及び第2の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、差動歯車機構DFが遊星歯車式の差動歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、それぞれが異なる出力部材OMと一体的に回転するように連結された一対のサイドギヤと、当該一対のサイドギヤに噛み合う複数のピニオンギヤと、を備えた傘歯車式の差動歯車機構であっても良い。
【0209】
(12)上記第1及び第2の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、遊星歯車機構PLが係合装置100に対して軸方向LにおけるロータRTの側(軸方向第1側L1)に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、遊星歯車機構PLが係合装置100に対して軸方向LにおけるロータRTの側とは反対側(軸方向第2側L2)に配置されていても良い。
【0210】
(13)上記第3の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、車両用駆動装置1000がインホイールモータとして構成され、出力部材OMが車輪Wに接合される接合部OMbを備えた構成を例として説明したが、そのような構成に限定されない。例えば、出力部材OMが車輪Wと一体的に回転するように連結されたドライブシャフトである構成としても良い。
【0211】
(14)上記第3の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、ロータRTと入力部材IMとを選択的に係合するクラッチ機構1を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、クラッチ機構1を備えていない構成としても良い。
【0212】
(15)上記第3の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、ブレーキ機構2及びクラッチ機構1の双方の係合の状態を変化させる駆動機構7を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、ブレーキ機構2の係合の状態を変化させる駆動機構と、クラッチ機構1の係合の状態を変化させる駆動機構とが、独立して設けられた構成としても良い。
【0213】
(16)上記第3の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、減速機RDが径方向Rに沿う径方向視で回転電機MGと重複しない位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速機RDが径方向Rに沿う径方向視で回転電機MGと重複するように配置されていても良い。
【0214】
(17)上記第3の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、減速機RDがシングルピニオン型の遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、減速機RDがダブルピニオン型の遊星歯車機構であっても良い。この場合、例えば、サンギヤSGが入力部材IMと一体的に回転するように連結され、リングギヤRGが出力部材OMと一体的に回転するように連結され、キャリヤCRが非回転部材NRに固定された構成とすることができる。
【0215】
(18)上記第3の実施形態に係る車両用駆動装置1000では、減速機RDが1つの遊星歯車機構により構成された形態を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、別軸上に配置されて互いに噛み合うギヤを備えた平行軸歯車機構により、減速機RDが構成されていても良い。
【0216】
(19)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0217】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した係合装置(100)の概要について説明する。
【0218】
係合装置(100)は、
第1回転部材(81)と第2回転部材(82)とを選択的に係合するクラッチ機構(1)と、
前記第1回転部材(81)及び前記第2回転部材(82)のいずれか一方である対象回転部材(8T)と非回転部材(NR)とを選択的に係合するブレーキ機構(2)と、を備えた係合装置(100)であって、
前記クラッチ機構(1)及び前記ブレーキ機構(2)の係合の状態を変化させる押圧機構(3)を備え、
前記第1回転部材(81)の回転軸心に沿う方向を軸方向(L)とし、前記軸方向(L)の一方側を軸方向第1側(L1)とし、前記軸方向(L)の他方側を軸方向第2側(L2)として、
前記クラッチ機構(1)は、前記第1回転部材(81)と一体的に回転するように連結された第1摩擦係合要素(11)と、前記第2回転部材(82)と一体的に回転するように連結された第2摩擦係合要素(12)と、を備え、
前記第1摩擦係合要素(11)及び前記第2摩擦係合要素(12)は、互いに前記軸方向(L)に対向するように配置され、前記軸方向(L)に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記ブレーキ機構(2)は、前記対象回転部材(8T)と一体的に回転するように連結された第3摩擦係合要素(21)と、前記非回転部材(NR)に固定された第4摩擦係合要素(22)と、を備え、
前記第3摩擦係合要素(21)及び前記第4摩擦係合要素(22)は、前記第1摩擦係合要素(11)及び前記第2摩擦係合要素(12)に対して前記軸方向第2側(L2)に離間した位置で、互いに前記軸方向(L)に対向するように配置され、前記軸方向(L)に押し付けられることで互いに摩擦係合し、
前記押圧機構(3)は、前記第1摩擦係合要素(11)及び前記第2摩擦係合要素(12)と、前記第3摩擦係合要素(21)及び前記第4摩擦係合要素(22)と、の前記軸方向(L)の間に配置された押圧部(31)と、前記押圧部(31)と連動するように連結された被駆動部(32)と、前記被駆動部(32)を前記軸方向(L)に移動させる直動機構(33)と、を備え、
前記第1回転部材(81)、前記第2回転部材(82)、前記第1摩擦係合要素(11)、前記第2摩擦係合要素(12)、前記第3摩擦係合要素(21)、及び前記第4摩擦係合要素(22)が、同軸上に配置され、
前記直動機構(33)によって前記被駆動部(32)が前記軸方向第1側(L1)に移動するか前記軸方向第2側(L2)に移動するに応じて、前記クラッチ機構(1)と前記ブレーキ機構(2)とが選択的に係合される。
【0219】
この構成によれば、直動機構(33)により被駆動部(32)を介して軸方向(L)に移動する押圧部(31)が、第1摩擦係合要素(11)及び第2摩擦係合要素(12)と、それらに対して軸方向第2側(L2)に配置された第3摩擦係合要素(21)及び第4摩擦係合要素(22)との軸方向(L)の間に配置されている。そして、直動機構(33)により被駆動部(32)が軸方向第1側(L1)に移動することで、第1摩擦係合要素(11)及び第2摩擦係合要素(12)が押圧部(31)により押圧されてクラッチ機構(1)が係合状態となると共に、押圧部(31)による第3摩擦係合要素(21)及び第4摩擦係合要素(22)の押圧が解除されてブレーキ機構(2)が解放状態となる。一方、直動機構(33)により被駆動部(32)が軸方向第2側(L2)に移動することで、第3摩擦係合要素(21)及び第4摩擦係合要素(22)が押圧部(31)により押圧されてブレーキ機構(2)が係合状態となると共に、押圧部(31)による第1摩擦係合要素(11)及び第2摩擦係合要素(12)の押圧が解除されてクラッチ機構(1)が解放状態となる。これにより、クラッチ機構(1)とブレーキ機構(2)との係合の状態を、共通の押圧機構(3)により変化させることができる。したがって、クラッチ機構(1)及びブレーキ機構(2)を備えた構成において、係合装置(100)の小型化を図ることができる。
【0220】
ここで、前記第1回転部材(81)は、前記第1摩擦係合要素(11)が連結された第1連結部(8a)を備え、
前記第2回転部材(82)は、前記第2摩擦係合要素(12)が連結された第2連結部(8b)を備え、
前記対象回転部材(8T)は、前記第3摩擦係合要素(21)が連結された第3連結部(8c)を備え、
前記非回転部材(NR)は、前記第4摩擦係合要素(22)が連結された第4連結部(8d)を備え、
前記第1連結部(8a)は、前記第1摩擦係合要素(11)に対して径方向(R)の外側であって、前記径方向(R)に沿う径方向視で前記第1摩擦係合要素(11)と重複する位置に配置され、
前記第3連結部(8c)は、前記第3摩擦係合要素(21)に対して前記径方向(R)の外側であって、前記径方向視で前記第3摩擦係合要素(21)と重複する位置に配置され、
前記第2連結部(8b)は、前記第2摩擦係合要素(12)に対して前記径方向(R)の内側であって、前記径方向視で前記第2摩擦係合要素(12)及び前記第1連結部(8a)と重複する位置に配置され、
前記第4連結部(8d)は、前記第4摩擦係合要素(22)に対して前記径方向(R)の内側であって、前記径方向視で前記第4摩擦係合要素(22)及び前記第3連結部(8c)と重複する位置に配置され、
前記直動機構(33)は、前記第2連結部(8b)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置されていると共に、前記第4連結部(8d)に対して前記径方向(R)の内側であって前記径方向視で前記第4連結部(8d)と重複する位置に配置されていると好適である。
【0221】
この構成によれば、直動機構(33)が、第2回転部材(82)の第2連結部(8b)に対して軸方向第2側(L2)に配置されている。これにより、直動機構(33)が第2連結部(8b)と径方向視で重複するように配置された構成と比べて、係合装置(100)の径方向(R)の寸法を小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、直動機構(33)が、非回転部材(NR)の第4連結部(8d)に対して径方向(R)の内側であって径方向(R)に沿う径方向視で第4連結部(8d)と重複する位置に配置されている。これにより、直動機構(33)が第4連結部(8d)よりも軸方向(L)にずれて配置された構成と比べて、係合装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑えることができる。また、非回転部材(NR)の第4連結部(8d)に対して径方向(R)の内側に配置された直動機構(33)を、非回転部材(NR)によって支持することが容易であるため、直動機構(33)の支持構造を簡素化し易い。
【0222】
また、前記押圧部(31)は、前記第1摩擦係合要素(11)及び前記第2摩擦係合要素(12)を前記軸方向(L)に押圧する第1押圧部分(311)と、前記第3摩擦係合要素(21)及び前記第4摩擦係合要素(22)を前記軸方向(L)に押圧する第2押圧部分(312)と、を備え、
前記第1押圧部分(311)は、前記第1回転部材(81)又は前記第2回転部材(82)に対して、前記軸方向(L)に相対移動可能であると共に一体的に回転する状態で支持され、
前記第2押圧部分(312)は、前記非回転部材(NR)に対して、前記軸方向(L)に相対移動可能であると共に相対回転が規制された状態で支持され、
前記第1押圧部分(311)と前記第2押圧部分(312)とは、相対回転可能な状態で、前記軸方向(L)に連動するように構成され、
前記被駆動部(32)は、前記第2押圧部分(312)と一体的に前記軸方向(L)に移動するように連結されていると好適である。
【0223】
この構成によれば、直動機構(33)により軸方向(L)に移動する被駆動部(32)が、非回転部材(NR)に対して相対回転が規制された状態で支持された第2押圧部分(312)と一体的に軸方向(L)に移動するように連結されている。これにより、被駆動部(32)が第1回転部材(81)又は第2回転部材(82)に対して一体的に回転する状態で支持された第1押圧部分(311)と一体的に軸方向(L)に移動するように連結された構成と比べて、押圧機構(3)の簡素化を図り易い。
【0224】
また、前記直動機構(33)は、前記非回転部材(NR)に対して回転自在に支持されたねじ軸(331)と、前記ねじ軸(331)に螺合するナット部材(332)と、を備え、
前記ナット部材(332)は、前記被駆動部(32)と一体的に前記軸方向(L)に移動するように連結され、
前記ねじ軸(331)は、前記第1摩擦係合要素(11)、前記第2摩擦係合要素(12)、前記第3摩擦係合要素(21)、及び前記第4摩擦係合要素(22)に対して、同軸上であって径方向(R)の内側に配置されていると好適である。
【0225】
この構成によれば、第1摩擦係合要素(11)、第2摩擦係合要素(12)、第3摩擦係合要素(21)、及び第4摩擦係合要素(22)に対して径方向(R)の内側に、ナット部材(332)を軸方向(L)に移動させるためのねじ軸(331)が配置されている。これにより、ねじ軸(331)を回転駆動させるための駆動力を、それらの摩擦係合要素(11,12,21,22)に対して軸方向(L)の外側からねじ軸(331)に伝達し易い。したがって、第1摩擦係合要素(11)及び第2摩擦係合要素(12)と第3摩擦係合要素(21)及び第4摩擦係合要素(22)との軸方向(L)の間に配置された押圧部(31)を、ナット部材(332)及び被駆動部(32)を介して軸方向(L)に移動可能な構造を実現することが容易となっている。
また、本構成によれば、直動機構(33)のねじ軸(331)を、第1摩擦係合要素(11)、第2摩擦係合要素(12)、第3摩擦係合要素(21)、及び第4摩擦係合要素(22)の少なくとも一部と径方向(R)に沿う径方向視で重複するように配置し易い。これにより、直動機構(33)の配置による、係合装置(100)の軸方向(L)への大型化を抑制することができる。
【0226】
前記直動機構(33)が前記ねじ軸(331)と前記ナット部材(332)とを備えた構成において、
係合装置(100)は、前記ねじ軸(331)を回転駆動するための駆動源(4)と、前記駆動源(4)と前記ねじ軸(331)との間の動力伝達を行う伝達機構(5)と、を更に備え、
前記駆動源(4)は、前記ねじ軸(331)とは別軸上に配置され、
前記駆動源(4)の前記軸方向(L)における配置領域が、前記第1回転部材(81)の前記軸方向(L)における配置領域と重なっており、
前記伝達機構(5)は、前記直動機構(33)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置され、
前記第1回転部材(81)から前記軸方向第1側(L1)に延在するように配置された第1軸部材(10)が、前記第1回転部材(81)と一体的に回転するように連結され、
前記第2回転部材(82)から前記軸方向第1側(L1)に延在するように配置された第2軸部材(20)が、前記第2回転部材(82)と一体的に回転するように連結されていると好適である。
【0227】
この構成によれば、駆動源(4)が第1回転部材(81)に対して同軸上であって軸方向(L)にずれた位置に配置された構成と比べて、係合装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本開示に係る技術は、クラッチ機構及びブレーキ機構を備えた係合装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0229】
100:係合装置、1:クラッチ機構、11:第1摩擦係合要素、12:第2摩擦係合要素、2:ブレーキ機構、21:第3摩擦係合要素、22:第4摩擦係合要素、3:押圧機構、31:押圧部、32:被駆動部、33:直動機構、81:第1回転部材、82:第2回転部材、8T:対象回転部材、10:第1軸部材、20:第2軸部材、NR:非回転部材、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側
図1
図2
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