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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】離型フィルムおよび成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20250115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B29C43/34
B32B27/00 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024050415
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-05-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】服部 哲也
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214028(JP,A)
【文献】国際公開第2021/060151(WO,A1)
【文献】特開2021-054072(JP,A)
【文献】特開2009-090647(JP,A)
【文献】特開2020-199769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/26-45/44
B29C 45/64-45/68
B29C 45/73
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、該第1離型層に積層されたクッション層とを有する離型フィルムであって、
前記第1離型層は、その表面において、突出谷部の平均深さである突出谷部高さSvkが5μm以上30μm以下であり、コア部と前記突出谷部とを分ける負荷面積率Smr2が75%以上99%以下であることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
前記離型フィルムは、前記クッション層の前記第1離型層と反対側に積層された、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層を有する請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記第1熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂またはポリ4-メチル1-ペンテン樹脂を含む請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記クッション層は、ポリエステル系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを含む第3熱可塑性樹脂組成物からなる請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記第1離型層は、その平均厚さが7μm以上38μm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記クッション層は、その平均厚さが40μm以上110μm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記離型フィルムは、その平均厚さが50μm以上180μm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記離型フィルムが、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物の表面に、
前記第1離型層側の表面が接するように重ねて用いられる請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項9】
請求項1に記載の離型フィルムの前記第1離型層が対象物側になるように、
前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、前記離型フィルムを配置する工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される側の面が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されていることを特徴とする成型品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよび成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、回路が露出したフレキシブル回路基板に対して、カバーレイフィルムを、カバーレイフィルムが備える接着剤層を介して、加熱プレスにより接着してフレキシブルプリント回路基板、すなわち積層体を形成する際に、離型フィルムが一般的に使用されている。
【0003】
このような離型フィルムを用いたフレキシブルプリント回路基板、換言すればフレキシブル回路基板とカバーレイフィルムとの積層体の形成の際に、離型フィルムには、2つの特性、すなわち、離型性および滑り性に優れることが要求されてきた。
【0004】
まず、フレキシブル回路基板に対するカバーレイフィルムの積層の後には、形成されたフレキシブルプリント回路基板から、優れた離型性をもって離型フィルムが剥離されることが求められる。
【0005】
より具体的には、フレキシブルプリント回路基板から、離型フィルムを剥離させる際に、フレキシブルプリント回路基板に対して、離型フィルムが優れた離型性を発揮して、フレキシブルプリント回路基板における折れシワおよび破断の発生が抑制されることが求められる。
【0006】
また、滑り性を高めることにより、フレキシブル回路基板に対する傷付き、損傷が防止される。具体的には、フレキシブルプリント回路基板に離型フィルムを積層するために離型フィルムをローラー搬送する際、離型フィルムが優れた滑り性を発揮することにより、搬送時のシワの発生を抑制するとともに、搬送時、巻き出し時、巻き取り時にずれが生じるのを防止し、歩留まりよく効果的に積層体を製造することができる。
【0007】
しかしながら、従来の離型フィルムでは、離型性および滑り性に関して十分な検討がなされておらず、離型性および滑り性が不十分であった。このため、フレキシブルプリント回路基板における折れシワおよび破断が発生したり、搬送時に離型フィルムにシワが生じたりといった搬送不良が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-88351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、搬送時の離型フィルムにシワが生じるのを防止または抑制しつつ、凹部に対する離型フィルムの埋め込みの後に、早期に離型フィルムを剥離させ得ることに基づいて、優れた生産性をもって成型品を製造することができる離型フィルム、および、かかる離型フィルムを用いた成型品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、該第1離型層に積層されたクッション層とを有する離型フィルムであって、
前記第1離型層は、その表面において、突出谷部の平均深さである突出谷部高さSvkが5μm以上30μm以下であり、コア部と前記突出谷部とを分ける負荷面積率Smr2が75%以上99%以下であることを特徴とする離型フィルム。
【0012】
) 前記離型フィルムは、前記クッション層の前記第1離型層と反対側に積層された、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層を有する上記(1)に記載の離型フィルム。
【0013】
) 前記第1熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂またはポリ4-メチル1-ペンテン樹脂を含む上記(1)または(2)に記載の離型フィルム。
【0014】
) 前記クッション層は、ポリエステル系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを含む第3熱可塑性樹脂組成物からなる上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0015】
) 前記第1離型層は、その平均厚さが7μm以上38μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0016】
) 前記クッション層は、その平均厚さが40μm以上110μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0017】
) 前記離型フィルムは、その平均厚さが50μm以上180μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0018】
) 前記離型フィルムが、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物の表面に、
前記第1離型層側の表面が接するように重ねて用いられる上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルム。
【0019】
) 上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルムの前記第1離型層が対象物側になるように、
前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、前記離型フィルムを配置する工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される側の面が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されていることを特徴とする成型品の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1離型層は、その表面において、突出谷部の平均深さである突出谷部高さSvkが5μm以上である。このため、フレキシブル回路基板とカバーレイフィルムとを用いてフレキシブルプリント回路基板を得る際に、この離型フィルムを用いることで、フレキシブルプリント回路基板から、離型フィルムを剥離させるときに、フレキシブルプリント回路基板に対して、離型フィルムが優れた離型性を発揮して、フレキシブルプリント回路基板における折れシワおよび破断の発生を抑制することができる。また、適正な滑り性を発揮し、搬送時の離型フィルムにシワが発生するのを防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】フレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機の主要部を示す側面図である。
図2図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における各工程を示す縦断面図である。
図3図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における加熱プレス工程を示す縦断面図である。
図4】本発明の離型フィルムの実施形態を示す縦断面図である。
図5図4に示す離型フィルムのA部を部分的に拡大した部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
なお、以下では、本発明の離型フィルムを用いた、フレキシブルプリント回路基板の製造を、ロールツーロールプレス機を用いて製造する場合を一例に説明する。また、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法を説明するのに先立って、まず、このフレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機について説明する。
【0024】
<ロールツーロールプレス機>
図1は、フレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機の主要部を示す側面図、図2は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における各工程を示す縦断面図、図3は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における加熱プレス工程を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図3中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
【0025】
図1ないし図3に示すように、ロールツーロールプレス機100(RtoRプレス機)は、離型フィルム10(10A、10B)、フレキシブルプリント回路基板200(以下「FPC」と言うこともある。)およびガラスクロス300A、300Bを搬送する搬送手段(図示せず)と、FPC200が備えるフレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220(以下、「CLフィルム」と言うこともある。)とにおいて、離型フィルム10を用いてフレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220を加熱プレスすることで接合する加熱プレス手段50と、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されたFPC200から、離型フィルム10を離型(剥離)させる離型手段60とを備えている。
【0026】
搬送手段は、それぞれ異なる巻出しローラに巻回されたFPC200、離型フィルム10A、10B、および、ガラスクロス300A、300Bを、それぞれ、これらの長手方向に沿って、テンショナ(テンションローラー)の回転により、搬送するとともに、加熱プレス手段50および離型手段60による処理後に、巻取りローラが巻回するものである。
【0027】
なお、各ローラは、それぞれ、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料で構成されている。また、これらのローラは、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いており、互いに離間して配置されている。
【0028】
加熱プレス手段50は、図1に示すように、加熱圧着部52を有している。
加熱圧着部52は、一対の加熱圧着板521を有している。加熱圧着板521は、搬送手段により搬送されるとともに、重ね合わされた状態とされたガラスクロス300A、離型フィルム10A、FPC200、離型フィルム10Bおよびガラスクロス300Bに対向して、その上方および下方に1つずつ配置されている。そして、重ね合わされた状態とされたガラスクロス300A、離型フィルム10A、FPC200、離型フィルム10Bおよびガラスクロス300Bが、加熱圧着板521同士の間を通過する際に、加熱圧着板521により、ガラスクロス300A、300Bと、離型フィルム10A、10Bとを介して、FPC200が加熱しつつ加圧される。したがって、図2(a)に示すように、CLフィルム220が備える接着剤層222の硬化反応が、この加熱により進行するため、FPC200において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが接着剤層222を介して接合される。
【0029】
換言すれば、カバーレイ221とフレキシブル回路基板210とが、接着剤層222を介して接合される(図2(a)参照)。また、FPC200の加熱・加圧の際、すなわち、カバーレイ221とフレキシブル回路基板210との接着剤層222を介した接合の際に、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10が埋入されることとなる。そのため、凹部223内における、接着剤層222に由来する接着剤のしみ出しが抑制される(図2(b)参照)。
【0030】
なお、加熱圧着板521により加熱圧着される前において、FPC200は、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを重ね合わせることで積層された状態となってはいるが、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とは、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されていない。そして、加熱圧着板521による圧着により、CLフィルム220が備える接着剤層222がフレキシブル回路基板210に密着し、さらに、この状態で、加熱圧着板521による加熱により、接着剤層222の硬化反応が進行することで、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが接着剤層222を介して接合される。
【0031】
離型手段60は、図1に示すように、加熱プレス手段50に対して、搬送方向の下流側に配置されている。この離型手段60は、FPC200と離型フィルム10A、10Bとを離間させるように構成されている。ここで、加熱プレス手段50が備える加熱圧着部52において、図2(b)に示すように、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10が埋入される。これにより、CLフィルム220(FPC200)に離型フィルム10が接合されているが、この離型手段60の作用により、CLフィルム220(FPC200)から離型フィルム10を剥離(離型)させ得るように構成されている(図2(c)参照)。したがって、離型手段60による作用に基づいて、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが接着剤層222を介して接合された構成をなすFPC200が、離型フィルム10から剥離された状態で得られることとなる。
【0032】
以上のようなロールツーロールプレス機100を用いて、フレキシブルプリント回路基板200(FPC200)を製造し得る。以下、このロールツーロールプレス機を用いたFPC200の製造方法について説明する。なお、このFPC200の製造方法に、本発明の成型品の製造方法が適用される。
【0033】
FPC200の製造方法は、本実施形態では、図1ないし図3に示すように、それぞれがシート状をなす、ガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとを、この順で重ね合わされた状態をなす積層体とする第1の工程と、かかる積層体を加熱プレスすることで、FPC200において、フレキシブル回路基板210に対してカバーレイ221(CLフィルム220)を、接着剤層222を介して接合する第2の工程と、FPC200から離型フィルム10(10A、10B)を離型させて、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されているFPC200を得る第3の工程と、を有する。
【0034】
以下、これらの各工程について、順次説明する。
(第1の工程)
まず、それぞれがシート状をなす、巻出しローラにそれぞれ巻回されたガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとを、搬送手段による搬送の際に、この順で重ね合わされた状態をなす積層体とする(離型フィルム配置工程、図1図2(a)、図3参照。)。
【0035】
なお、各部材(フィルム)を積層体に積層する方法は特に限定されず、例えば、ロールにより押し付けながら積層してもよいし、プレスにより押し付けながら積層してもよい。また、各部材を積層する順番も、任意に行うことが出来る。例えば、すべての部材を同時に積層してもよいし、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210を事前に積層しておき、その後その他の部材を同時に積層してもよい。
【0036】
また、この第1の工程における前記積層体の形成により、本発明の成型品の製造方法における、対象物(FPC200)上に離型フィルム10を配置する工程が構成される。
【0037】
(第2の工程)
次に、ガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとが、この順で重ね合わされた積層体を、加熱プレス手段50(加熱圧着部52)を用いて、加圧しつつ加熱(加熱プレス)することで、接着剤層222がフレキシブル回路基板210に密着した状態で、接着剤層222の硬化反応が進行することから、FPC200において、フレキシブル回路基板210に対してカバーレイ221(CLフィルム220)が、接着剤層222を介して接合された接合体が形成される(加熱プレス工程、図1図2(b)、図3参照。)。
【0038】
そして、この際に、カバーレイ221に離型フィルム10Aが密着しつつ、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10Aが埋入されることから、凹部223内における、接着剤層222に由来する接着剤のしみ出しが抑制される。
【0039】
この第2の工程(加熱プレス工程)において、FPC200を加熱する温度は、特に限定されないが、例えば、100℃以上250℃以下であることが好ましく、150℃以上200℃以下であることがより好ましい。
【0040】
また、第2の工程において、FPC200を加圧する際に、加熱圧着部52において設定される圧力は、特に限定されないが、好ましくは1MPa以上14MPa以下に設定され、より好ましくは5MPa以上14MPa以下に設定される。
【0041】
さらに、前記積層体を搬送する搬送速度は、好ましくは40mm/sec以上400mm/sec以下に設定され、より好ましくは100mm/sec以上350mm/sec以下に設定される。換言すれば、第2の工程(本工程)において、前記積層体を、加熱プレス手段50を用いて加熱プレスし、剥離工程(次工程)において、前記接合体から離型フィルム10が剥離されるまでの密着時間は、好ましくは1.0sec以上10.0sec以下に設定され、より好ましくは4.0sec以上7.0sec以下に設定される。
【0042】
なお、第2の工程により、本発明の成型品の製造方法における、離型フィルム10が配置された対象物(FPC200)に対し、加熱プレスを行う工程が構成される。また、カバーレイ221(成型品)が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料で構成される場合には、対象物(FPC200)の離型フィルム10が配置される側の面を、カバーレイ221が構成する。そして、このカバーレイ221の表面に、第1離型層1側の表面が接するように離型フィルム10が重ねて用いられているため、離型フィルム10により、凹部223が形成されたカバーレイ221の形状を維持して、熱硬化性樹脂を硬化させ得ることから、フレキシブル回路基板210上に、カバーレイ221(成型品)を優れた精度で成型することができる。また、前記密着時間が前記範囲内に設定されているため、離型フィルム10により、凹部223が形成されたカバーレイ221の形状を維持した状態で、カバーレイ221を構成する熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させることができる。
【0043】
また、本発明の成型品の製造方法は、離型フィルム10の第1離型層1が対象物(FPC200)側になるように、対象物(FPC200)上に離型フィルム10を配置する工程(第1の工程)と、離型フィルム10が配置された対象物(FPC200)に対し、加熱プレスを行う工程(第2の工程)と、を含み、離型フィルム10を配置する工程において、対象物(FPC200)の離型フィルム10が配置される側の面が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている。これにより、離型フィルム10により、凹部223が形成されたカバーレイ221の形状を維持して、熱硬化性樹脂を硬化させ得ることから、フレキシブル回路基板210上に、カバーレイ221(成型品)を優れた精度で成型することができる。また、前記密着時間が前記範囲内に設定されているため、離型フィルム10により、凹部223が形成されたカバーレイ221の形状を維持した状態で、カバーレイ221を構成する熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態においては加熱プレスにより加熱する手段を示したが、必ずしもこの方法に限定されるものではなく、例えば赤外線により加熱してもよいし、加熱ロールによる加熱を行ってもよい。
【0045】
(第3の工程)
次に、離型手段60において、FPC200から離型フィルム10(10A、10B)を離型させる。すなわち、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210との接合体から、離型フィルム10Aと離型フィルム10Bとを剥離する。これにより、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されているFPC200を得る(剥離工程、図1図2(c)、図3参照。)。
【0046】
なお、離型手段60としては、特に限定されず、例えば、外側に真空装置を設置し、真空引きすることで剥離する構成のものであってもよいし、前記接合体と離型フィルム10A、10Bの間に空気を送り込むことで剥離する構成のものであってもよいし、接合体と離型フィルム10A、10Bの間に棒を挟みこみ剥離する構成のものであってもよい。
【0047】
その後、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210の接合体と、ガラスクロス300A、離型フィルム10A、離型フィルム10B、ガラスクロス300Bとをそれぞれの巻取りローラにて巻き取る。
【0048】
このような巻取りにより、CLフィルム220に備えられた接着剤層222を介して接合されたFPC200が、巻取りローラに巻き取られた状態で、フレキシブル回路基板210およびCLフィルム220を連続的に得られることとなる。
【0049】
以上のように、離型フィルム10を用いたロールツーロールプレス機100による、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法を適用することで、連続的にフレキシブルプリント回路基板200が製造される。
【0050】
なお、上記第3の工程の後に、巻取りローラに巻き取られた状態のフレキシブルプリント回路基板200、または巻き取られたフレキシブルプリント回路基板200を個々の状態に切断した枚葉の状態のものを、オーブンなどで加熱することで、カバーレイ221を構成する熱硬化性樹脂の硬化反応をさらに進行させて、カバーレイ221を硬化させる工程を含んでいてもよい。
【0051】
このフレキシブルプリント回路基板200の製造に用いられる離型フィルム10に、本発明の離型フィルムが適用される。以下、本発明の離型フィルムが適用された、離型フィルム10について、説明する。
【0052】
<離型フィルム10>
図4は、本発明の離型フィルムの実施形態を示す縦断面図、図5は、図4に示す離型フィルムのA部を部分的に拡大した部分拡大縦断面図である。
【0053】
離型フィルム10は、図4に示すように、本実施形態において、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とがこの順で積層された積層体で構成されており、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、第1離型層1側の表面が接するように重ねて用いられる。
【0054】
以下、この離型フィルム10を構成する各層について説明する。
<クッション層3>
まず、クッション層3について説明する。このクッション層3は、図4および図5に示すように、第1離型層1と第2離型層2との間の中間層として配置されている。
【0055】
このクッション層3は、第3熱可塑性樹脂組成物からなり、この第3熱可塑性樹脂組成物は、離型フィルム10に凹部223に対する埋め込み性を付与しつつ、複数種の熱可塑性樹脂を含有しているものが好ましく用いられる。これにより、十分な追従性を担保できる。
【0056】
複数種の熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、ポリオレフィン系樹脂同士の組み合わせ、および、ポリアミド系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ等が挙げられるが、中でも、ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせを選択することで、上記効果をより確実に発揮することができる。
【0057】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いる場合、このポリエステル系樹脂は、これらのブレンド体であってもよいし、共重合体であってもよい。これらの中でも、ポリエステル系樹脂は、特に、ポリブチレンテレフタレートであるのが好ましい。これにより、クッション層3に優れた凹部223に対する追従性を付与することができる。また、第1離型層1を構成する第1熱可塑性樹脂組成物に、ポリブチレンテレフタレートが含まれる場合、クッション層3を、第1離型層1に対して優れた密着性を発揮するものとし得る。
【0058】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロプレン等のα-オレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等を重合体成分として有する、エチレンとヘキセンとの共重合体、エチレンとオクテンとの共重合体、α-オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体のようなα-オレフィン系共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体)およびエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(エチレン(メタ)アクリル酸共重合体)のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、クッション層3に優れた凹部223に対する追従性を付与することができる。
【0059】
ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせとする場合、この第3熱可塑性樹脂組成物における、ポリエステル系樹脂の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、8重量%以上40重量%以下であることがより好ましい。これにより、離型フィルム10に優れた凹部223に対する追従性を付与することができる。
【0060】
また、クッション層3を構成する第3熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料(熱可塑性樹脂)の他に、結晶核剤、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤のような添加剤が含まれていてもよい。
【0061】
さらに、このクッション層3の150℃における貯蔵弾性率E’は、0.1MPa以上であるのが好ましく、0.5MPa以上150MPa以下であるのがより好ましく、1MPa以上100MPa以下であるのがさらに好ましい。クッション層3の150℃における貯蔵弾性率E’を、上記のように設定することで、前記第2の工程における、凹部223に対する離型フィルム10の埋め込みの際に、離型フィルム10の縁部から、クッション層3の一部がはみ出し、FPC200に付着するのを、的確に抑制または防止することができる。したがって、FPC200の汚染を、的確に抑制または防止することができる。また、前記第3の工程における、離型フィルム10の引き剥がし(剥離)を、容易に行うことが可能となる。
【0062】
なお、クッション層3の150℃における貯蔵弾性率E’は、例えば、JIS K7244-4に準拠して、幅4mm、長さ20mmのクッション層3を用意し、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、「DMA7100」)を用いて、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minとして測定することで得ることができる。
【0063】
さらに、このクッション層3は、その平均厚さTkが好ましくは40μm以上110μm以下に設定され、より好ましくは50μm以上90μm以下に設定される。これにより、十分な追従性を担保することができる。
【0064】
<第1離型層1>
次に、第1離型層1について説明する。この第1離型層1は、図4および図5に示すように、クッション層3の一方の面側に積層されている。
【0065】
第1離型層1は、可撓性を備え、前述した、離型フィルム10を用いたフレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、この第1離型層1が接触するように、離型フィルム10が重ね合わされる。そして、この製造方法の前記第2の工程において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを、接着剤層222を介して接合する際に、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とで形成される凹部223の形状に追従して、押し込まれる層であり、離型フィルム10が破断するのを防止する保護(緩衝)材として機能するものである。さらに、第1離型層1は、前記第3の工程において、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性を発揮させるための接触層としての機能を有している。
【0066】
したがって、離型フィルム10を、前記第2の工程において、FPC200に形成された凹部223に、接着剤層222に由来する接着剤がしみ出すのを的確に抑制または防止することができる。また、前記第2の工程における、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されたFPC200の形成の後に、前記第3の工程において、FPC200から離型フィルム10を剥離させる際に、FPC200に、伸びおよび破断が生じるのを的確に抑制または防止することができる。また、クッション層3を構成する第3熱可塑性樹脂組成物に、ポリエステル系樹脂が含まれる場合、第1離型層1を、クッション層3に対して優れた密着性を発揮するものとし得る。
【0067】
また、第1離型層1は、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、この第1離型層1が接触している。したがって、この製造方法の前記第2の工程において、FPC200を加熱プレスする際に、加熱圧着板521からの熱を、CLフィルム220に伝達する機能をも有している。
【0068】
第1離型層1は、表面に凹凸形状を有する。第1離型層1は、その表面において、突出谷部の平均深さである突出谷部高さSvkが5μm以上であることが好ましい。このような面粗さの第1離型層1を有することにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができる。また、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。
【0069】
突出谷部高さSvk[μm]は、ISO 25178に準拠して求めることができる。具体的には、突出谷部高さSvk[μm]は、以下のようにして求められる。
【0070】
走査型白色干渉顕微鏡(キーエンス社製「レーザー顕微鏡VK-X3000」)を用い、対物レンズを20倍として、4枚の連結画像(測定範囲:約2000μm×1500μm)を取得する。得られた画像について平均面(基準面)の設定処理を行う。次いで、ガウシアンフィルター処理を行い、カットオフ波長をそれぞれSフィルタ:2.5μm、Lフィルタ:8mmに設定する。このような処理結果から、その表面において、突出谷部の深さの平均値を算出して、突出谷部高さSvk[μm]を求める。
【0071】
突出谷部高さSvkが5μm未満であると、離型性および滑り性が不十分となり、フレキシブルプリント回路基板200の製造の際に、フレキシブルプリント回路基板200における折れシワおよび破断が発生したり、フレキシブル回路基板210に傷が付いたりといった不具合が生じる可能がある。さらに、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができない。
【0072】
突出谷部高さSvkは、6μm以上30μm以下であることが好ましく、6μm以上25μm以下であることがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
【0073】
コア部と突出谷部とを分ける負荷面積率Smr2が75%以上であることが好ましい。これにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができる。また、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。負荷面積率Smr2は、ISO 25178に準拠して求めることができる。
【0074】
負荷面積率Smr2は、80%以上99%以下であることが好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
【0075】
また、第1離型層1は、その表面の平均面からの高さの最大値である最大山高さをSp[μm]、平均面からの高さの最小値の絶対値である最大谷深さをSv[μm]としたとき、Sp+Sv≧27の関係を満たすことが好ましい。このような面粗さの第1離型層1を有することにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができる。また、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。Sp[μm]およびSv[μm]は、ISO 25178に準拠して求めることができる。具体的には、Sp[μm]およびSv[μm]は、以下のようにして求められる。
【0076】
走査型白色干渉顕微鏡(キーエンス社製「レーザー顕微鏡VK-X3000」)を用い、対物レンズを20倍として、4枚の連結画像(測定範囲:約2000μm×1500μm)を取得する。得られた画像について平均面(基準面)の設定処理を行う。次いで、ガウシアンフィルター処理を行い、カットオフ波長をそれぞれSフィルタ:2.5μm、Lフィルタ:8mmに設定する。このような処理結果から、平均面からの高さの最大値である最大山高さを算出してSp[μm]を求め、平均面からの高さの最小値の絶対値である最大谷深さを算出してSv[μm]を求めることができる。
【0077】
Sp+Svは、30μm以上90μm以下であるのが好ましく、35μm以上80μm以下であるのがより好ましい。これにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができるとともに、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。
【0078】
第1離型層1の表面において、Sp+Sv≧27とする方法としては、特に限定されないが、例えば、第1離型層1に後述する無機粒子または有機粒子等のフィラーを配合する方法や、プラズマ処理等の表面処理方法、ロール転写による方法等が挙げられる。フィラーの大きさを調整したり、表面処理の条件を調整することにより、Sp+Sv≧27とすることができる。
【0079】
最大山高さSpは、10μm以上であることが好ましい。これにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができる。また、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。
【0080】
最大山高さSpは、10μm以上60μm以下であるのが好ましく、15μm以上50μm以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
【0081】
最大谷深さSvは、10μm以上であることが好ましい。これにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができる。また、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。
【0082】
最大谷深さSvは、10μm以上60μm以下であるのが好ましく、15μm以上50μm以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
【0083】
また、第1離型層1は、その表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均である算術平均高さSaが2.3μm超であることが好ましい。このような面粗さの第1離型層1を有することにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができる。また、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。
【0084】
算術平均高さSaは、第1離型層1の表面の平均面に対して、各突出部の高さ、すなわち、各点の高さの差の絶対値の平均を表す値である。算術平均高さSaは、ISO 25178に準拠して求めることができる。具体的には、算術平均高さSaは、以下のようにして求められる。
【0085】
走査型白色干渉顕微鏡(キーエンス社製「レーザー顕微鏡VK-X3000」)を用い、対物レンズを20倍として、4枚の連結画像(測定範囲:約2000μm×1500μm)を取得する。得られた画像について平均面(基準面)の設定処理を行う。次いで、ガウシアンフィルター処理を行い、カットオフ波長をそれぞれSフィルタ:2.5μm、Lフィルタ:0.8mmに設定する。このような処理結果から、各点の高さの差の絶対値の平均を算出する。
【0086】
算術平均高さSaは、2.5μm以上10.0μm以下であるのが好ましく、2.9μm以上9.0μm以下であるのがより好ましい。これにより、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性をより確実に発揮することができるとともに、滑り性をより確実に高め、離型フィルム10の搬送を良好かつ円滑に行うことができる。
【0087】
第1離型層1の表面の算術平均高さSaを2.3μm超とする方法としては、特に限定されないが、例えば、第1離型層1に後述する無機粒子または有機粒子等のフィラーを配合する方法や、プラズマ処理等の表面処理方法、ロール転写による方法等が挙げられる。フィラーの大きさを調整したり、表面処理の条件を調整することにより、算術平均高さSaを2.3μm超とすることができる。
【0088】
この第1離型層1は、第1熱可塑性樹脂組成物からなる。また、この第1熱可塑性樹脂組成物は、例えば、主としてポリエステル系樹脂またはポリ4-メチル1-ペンテン樹脂を含むことが好ましい。これにより、第1離型層1に、前述した機能を比較的容易に付与することができる。
【0089】
また、ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前述した第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたものと同様のものを用いることができ、中でも、特に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であるのが好ましい。これにより、ポリエステル系樹脂を用いることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。また、クッション層3を構成する第3熱可塑性樹脂組成物に、ポリブチレンテレフタレートが含まれる場合、第1離型層1を、クッション層3に対して優れた密着性を発揮するものとし得る。
【0090】
また、第1熱可塑性樹脂組成物は、主としてポリエステル系樹脂で構成される場合、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂が含まれていてもよく、この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル1-ペンテンのようなポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレンのようなポリスチレン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
また、第1熱可塑性樹脂組成物は、前述した熱可塑性樹脂の他に、さらに、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0092】
無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物、Eガラス、Dガラス、Sガラス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
また、有機粒子としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン粒子、アクリル粒子、ポリイミド粒子、ポリエステル粒子、シリコーン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリエチレン粒子、フッ素樹脂粒子およびコアシェル粒子等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
さらに、無機粒子および有機粒子は、その平均粒子径が3μm以上40μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましい。これにより、第1熱可塑性樹脂組成物中に、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも一方が含まれる場合に、第1離型層1のクッション層3と反対側の表面における表面粗さを、上述する範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0095】
また、この第1離型層1は、その平均厚さT1が好ましくは7μm以上38μm以下に設定され、より好ましくは10μm以上30μm以下に設定される。これにより、第1離型層1の平均厚さが適切な範囲内に設定されるため、第1離型層1に、前述した第1離型層1としての機能をより確実に付与することができる。
【0096】
なお、第1離型層1の平均厚さT1は、上記の通り、第1離型層1のクッション層3と反対側の表面が凹凸形状を有する場合、凸部では凸部を含む位置、また、凹部では凹部を含む位置で、それぞれ、その厚さを測定した測定値の平均値とする。
【0097】
また、第1離型層1を構成する第1熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料、無機粒子、有機粒子の他に、前記第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたものと同様の添加剤が含まれていてもよい。
【0098】
<第2離型層2>
次に、第2離型層2について説明する。
【0099】
離型フィルム10は、図4および図5に示すように、クッション層3の他方の面側、すなわち、クッション層3の第1離型層1と反対の面側に積層された、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層2を有する。
【0100】
第2離型層2は、可撓性を備え、前述した、離型フィルム10を用いたフレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、第1離型層1が接触するように、離型フィルム10が重ね合わされ、そして、この製造方法の前記第2の工程において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを、接着剤層222を介して接合する際に、加熱圧着板521からの力を、クッション層3に伝達する層として機能するものである。さらに、第2離型層2は、前記第3の工程において、ガラスクロス300と離型フィルム10との間で優れた離型性を発揮させるための接触層としての機能を有している。
【0101】
また、第2離型層2は、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、加熱圧着板521に対して、この第2離型層2がガラスクロス300を介して接触している。したがって、この製造方法の前記第2の工程において、FPC200を加熱プレスする際に、加熱圧着板521からの熱を、クッション層3に伝達する機能をも有している。
【0102】
第2離型層2は、第2熱可塑性樹脂組成物からなる。また、この第2熱可塑性樹脂組成物は、前記第1熱可塑性樹脂組成物と同様に、主としてポリエステル系樹脂を含むことが好ましい。これにより、第2離型層2に、前述した機能を確実に付与することができる。
【0103】
また、ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前述した第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたものと同様のものを用いることができ、中でも、特に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であるのが好ましい。これにより、ポリエステル系樹脂を用いることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0104】
なお、第2熱可塑性樹脂組成物は、主としてポリエステル系樹脂で構成される場合、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂が含まれていてもよく、この熱可塑性樹脂としては、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0105】
また、第2熱可塑性樹脂組成物は、前述した熱可塑性樹脂の他に、さらに、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0106】
無機粒子および有機粒子としては、特に限定されないが、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0107】
かかる構成をなす第2離型層2は、その150℃における貯蔵弾性率E’が50MPa以上であるのが好ましく、50MPa以上1000MPa以下であるのがより好ましい。これにより、第2離型層2に、前述した機能を確実に付与することができる。
【0108】
また、この第2離型層2は、その平均厚さT2が好ましくは7μm以上38μm以下に設定され、より好ましくは10μm以上30μm以下に設定される。これにより、第2離型層2に、前述した機能をより確実に付与することができる。
【0109】
さらに、第2離型層2を構成する第2熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料、無機粒子、有機粒子の他に、前記第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたものと同様の添加剤が含まれていてもよい。
【0110】
また、第1離型層1と第2離型層2とにおいて、第1熱可塑性樹脂組成物と第2熱可塑性樹脂組成物とは、同一であっても異なっていてもよいが、代替性を有すると言う観点からは、同一もしくは同質であることが好ましい。さらに、第1離型層1と第2離型層2とにおいて、その平均厚さT1、T2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0111】
以上のような第1離型層1とクッション層3と第2離型層2とが積層された構成をなす離型フィルム10において、その平均厚さTtは、50μm以上180μm以下であることが好ましく、80μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0112】
なお、離型フィルム10は、本実施形態では、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とが、この順で積層された積層体で構成されるが、かかる構成に限定されず、例えば、第1離型層1とクッション層3との間、および、第2離型層2とクッション層3との間の少なくとも一方に配置された、接着剤層のような中間層を備える積層体で構成されるものであってもよい。
【0113】
また、離型フィルム10は、前記第3の工程において、ガラスクロス300と離型フィルム10との間で優れた離型性を維持し得るのであれば、ガラスクロス300に接触する第2離型層2が、省略されたものであってもよい。
【0114】
以上、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0115】
例えば、前記実施形態では、本発明の離型フィルムを、加熱圧着板同士の間に配置されたフレキシブルプリント回路基板を1段に積層して製造するプレス成型法に適用する場合について説明したが、積層されるフレキシブルプリント回路基板の数は、1段に限定されず、2段以上であってもよい。
【0116】
また、本発明の離型フィルムを、加熱圧着板同士の間に配置されたフレキシブルプリント回路基板に対してロールツーロールプレス機を用いて加圧する場合に適用されることとしたが、これに限定されず、フレキシブルプリント回路基板に対する加圧は、例えば、プレス成型法を用いて実施することもできるし、さらには、真空圧空成形法を用いて実施することもできる。
【実施例
【0117】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0118】
1.原材料の準備
離型フィルムを製造するための原材料として、それぞれ、以下のものを用意した。
【0119】
・熱可塑性樹脂材料
エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA、住友化学社製、「WD203-1」)
ポリプロピレン(PP、プライムポリプロ社製、「E111G」)
ポリブチレンテレフタレート(PBT、長春石油化学社製、「1100-630S」)
共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「5505S」)
【0120】
2.離型フィルムの製造
<実施例1>
まず、第1熱可塑性樹脂組成物として、ポリブチレンテレフタレート(PBT、1100-630S)70重量%と、共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT、5505S)30重量%とで構成されるものを用意した。また、第2熱可塑性樹脂組成物として、ポリブチレンテレフタレート(PBT、1100-630S)100重量%で構成されるものを用意した。さらに、第3熱可塑性樹脂組成物として、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA、WD203-1)55重量%と、ポリプロピレン(PP、E111G)20重量%と、ポリブチレンテレフタレート(PBT、1100-630S)25重量%とで構成されるものを用意した。
【0121】
次いで、3台の押出機に第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物を供給し、マルチマニホールドダイより共押出して、第1離型層1、クッション層3および第2離型層2の順に積層された離型フィルム10を得た。
【0122】
なお、得られた離型フィルム10において、第1離型層1の平均厚さT1は20μm、クッション層3の平均厚さTkは80μm、第2離型層2の平均厚さT2は20μmであった。
【0123】
この際、第1離型層1に対して、第1ロールおよびタッチロールの少なくともいずれか一方を用いて、表面形状を転写する粗面処理を行った。
【0124】
また、第1離型層1の表面において、突出谷部の平均深さである突出谷部高さSvkが5μmであった。
【0125】
また、第1離型層1の表面において、コア部と突出谷部とを分ける負荷面積率Smr2が92%であった。
【0126】
また、第1離型層1の表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均である算術平均高さSaが3.1μmであった。
【0127】
また、第1離型層1の表面の平均面からの高さの最大値である最大山高さをSp[μm]、平均面からの高さの最小値の絶対値である最大谷深さをSv[μm]としたとき、Sp+Svが28μmであった。
【0128】
突出谷部高さSvk、負荷面積率Smr2、算術平均高さSa、および最大山高さSp+最大谷深さSvは、以下のようにして求めた。
【0129】
走査型白色干渉顕微鏡(キーエンス社製「レーザー顕微鏡VK-X3000」)を用い、対物レンズを20倍として、4枚の連結画像(測定範囲:約2000μm×1500μm)を取得する。得られた画像について平均面(基準面)の設定処理を行う。次いで、ガウシアンフィルター処理を行い、カットオフ波長をそれぞれSフィルタ:2.5μm、Lフィルタ:0.8mmに設定する。そして、処理結果から、突出谷部高さSvk、負荷面積率Smr2、算術平均高さSa、および最大山高さSp+最大谷深さSvを求めた。この際、連結画像を第1象限から第4象限までの4領域それぞれの値を求めて、その平均値を値とした。
【0130】
<実施例2~9、比較例1、2>
第1離型層1の表面において、粗面処理の条件を調整し、突出谷部高さSvk、負荷面積率Smr2、算術平均高さSa、および最大山高さSp+最大谷深さSvを、表1のように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2~9、比較例1、2の離型フィルム10を得た。
【0131】
3.評価
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、以下の評価を行った。
【0132】
3-1.離型フィルムの離型性
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、幅270mmのものとし、そして、フレキシブル回路基板210に、カバーレイフィルム220(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、このカバーレイフィルム220が備える接着剤層222をフレキシブル回路基板210側にして貼付することで形成される、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるFPC200(積層体)とした後に、離型フィルム10を、図3に示すように積層されたFPC200に対して、RtoRプレス機(TRM社製、「RR Q-CURE 100TON CONTINUOUS LAMINATOR」)を用いて、180℃、110kg/cm、150secの設定条件で押し込んだ。その後、離型手段60としてFPC200と離型フィルム10の間に棒を挟み込み剥離する構成を適用し、搬送速度200mm/s、送り量500mm、加熱圧着板521から離型手段60までの距離を50mmとし、離型フィルム10を引き剥がした。その際の、離型フィルム10の引き剥がし易さ(離型性)について、以下の基準に従って評価した。
【0133】
[評価基準]
◎:離型フィルム引き剥がし時に、剥離可能である。
×:離型フィルム引き剥がし時に、クッション層同士の融着や離型フィルムの伸びや破断によって剥離が困難である。
【0134】
3-2.離型フィルムの滑り性
(外観シワ)
滑り性が良好なことによる、シワ発生抑制の抑制効果を以下の通り評価した。
【0135】
L/Sが100/100μmの電気配線が形成された絶縁基板(FPC)表面に対し、接着剤がコーティングされている側の面が接触するように開口部を有するカバーレイを仮止めした試験片を作製した。次いで、離型フィルム10を試験片に175℃、11MPa、120secの条件でロールツーロールプレス機にて加圧貼付して、加圧直後に200mm/sで搬送しつつ、前記試験片と当該離型フィルム10とを引き剥がした。試験片表面について、JPCA規格の「7.5.7.2項しわ」に準じて測定した。
【0136】
[評価基準]
◎:シワ発生率 1.0%未満
○:シワ発生率 1.0%以上、2.0%未満
×:シワ発生率 2.0%以上
【0137】
3-3.まとめ
前記3-1.離型フィルムの離型性、および前記3-2.離型フィルムの滑り性において得られた評価結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
表1に示すように、各実施例では、第1離型層1は、その表面において、突出谷部の平均深さである突出谷部高さSvkが5μm以上に設定されており、その結果、離型性および滑り性に優れている結果を示した。
【0140】
これに対して、各比較例では、突出谷部高さSvkが5μm以上に設定されておらず、これに起因して、離型性および滑り性に優れているとは言えない結果を示した。
【符号の説明】
【0141】
1 第1離型層
2 第2離型層
3 クッション層
10 離型フィルム
10A 離型フィルム
10B 離型フィルム
50 加熱プレス手段
52 加熱圧着部
60 離型手段
100 ロールツーロールプレス機
200 フレキシブルプリント回路基板(FPC)
210 フレキシブル回路基板
220 カバーレイフィルム(CLフィルム)
221 カバーレイ
222 接着剤層
223 凹部
300A ガラスクロス
300B ガラスクロス
521 加熱圧着板
T1 第1離型層の平均厚さ
T2 第2離型層の平均厚さ
Tk クッション層の平均厚さ
Tt 離型フィルムの平均厚さ
【要約】
【課題】離型性および滑り性に優れる離型フィルム、および、かかる離型フィルムを用いた成型品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の離型フィルム10は、第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層1と、該第1離型層1に積層されたクッション層3とを有する離型フィルムであって、第1離型層1は、その表面において、突出谷部の平均深さである突出谷部高さSvkが5μm以上である。また、コア部と突出谷部とを分ける負荷面積率Smr2が80%以上であることが好ましい。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5