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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】制御システムおよび管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250115BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20250115BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20250115BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20250115BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J3/32
H02J3/46
H02J7/02 J
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2024162012
(22)【出願日】2024-09-19
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛内 俊晴
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7435628(JP,B2)
【文献】特開2012-120284(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132586(WO,A1)
【文献】特開2023-094363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 3/32
H02J 3/46
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を放電および充電する蓄電装置を含む複数の蓄電ユニットにより電力系統との合成点における有効電力を調整する蓄電システムを制御する制御システムであって、
前記直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、前記蓄電システムおよび前記合成点の間の変電設備と前記蓄電システムとの間の相互間の変圧による変電損失とを含む電力損失を、前記有効電力の基礎指令値に付加することで、前記複数の蓄電ユニットにおける前記蓄電装置が放電または充電すべき電力の合計値である合計直流電力指令値を算定する指令算定部と、
前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき有効電力配分値を前記合計直流電力指令値から算定する指令配分部と、
前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの有効電力配分値を指示する動作指示部と
を具備する制御システム。
【請求項2】
前記指令配分部は、
前記複数の蓄電ユニットの各々について配分係数を設定する係数設定部と、
前記合計直流電力指令値のうち前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき第1電力配分値を、前記各蓄電ユニットの配分係数に応じて算定する配分処理部とを含む
請求項1の制御システム。
【請求項3】
前記指令配分部は、
前記複数の蓄電ユニットの各々について制限値を設定する制限値設定部をさらに含み、
前記配分処理部は、
前記複数の蓄電ユニットのうち前記第1電力配分値が前記制限値を超過する1以上の蓄電ユニットについて当該超過値を合計した合計超過値を、前記複数の蓄電ユニットのうち前記第1電力配分値が前記制限値を超過しない1以上の蓄電ユニットの各々に配分する
請求項2の制御システム。
【請求項4】
前記制限値設定部は、
前記複数の蓄電ユニットの各々について、当該蓄電ユニットの相異なる状態に関する複数の候補値から前記制限値を選択する
請求項3の制御システム。
【請求項5】
前記複数の候補値は、前記蓄電装置の電圧に応じた第1候補値を含み、
前記第1候補値は、
前記電圧が第1範囲内の数値である場合には第1値に設定され、
前記電圧が前記第1範囲とは相違する第2範囲内の数値である場合には前記第1値とは相違する第2値に設定され、
前記電圧が前記第1範囲と前記第2範囲との間の第3範囲内の数値である場合には、前記電圧に応じて前記第1値と前記第2値との間で変化する数値に設定される
請求項4の制御システム。
【請求項6】
前記複数の候補値は、前記蓄電装置の充電率に応じた第2候補値を含み、
前記第2候補値は、
前記充電率が第1範囲内の数値である場合には第1値に設定され、
前記充電率が前記第1範囲とは相違する第2範囲内の数値である場合には前記第1値とは相違する第2値に設定され、
前記充電率が前記第1範囲と前記第2範囲との間の第3範囲内の数値である場合には、前記充電率に応じて前記第1値と前記第2値との間で変化する数値に設定される
請求項4の制御システム。
【請求項7】
前記複数の候補値は、前記蓄電装置の温度に応じた第3候補値を含み、
前記第3候補値は、
前記温度が第1範囲内の数値である場合には第1値に設定され、
前記温度が前記第1範囲とは相違する第2範囲内の数値である場合には前記第1値とは相違する第2値に設定され、
前記温度が前記第1範囲と前記第2範囲との間の第3範囲内の数値である場合には、前記温度に応じて前記第1値と前記第2値との間で変化する数値に設定される
請求項4の制御システム。
【請求項8】
前記係数設定部は、
前記複数の蓄電ユニットの各々について加重値を設定する第1処理と、
前記複数の蓄電ユニットの各々について、当該蓄電ユニットの運転ワットアワー容量に応じた補正値を設定する第2処理と、
前記複数の蓄電ユニットの各々について、前記加重値と前記補正値とに応じて前記配分係数を算定する第3処理とを実行する
請求項2の制御システム。
【請求項9】
前記第1処理は、
前記蓄電ユニットにおける前記蓄電装置の充電率を所定の標準範囲内の数値に正規化する正規化処理と、
前記正規化後の充電率と基準値との第1偏差を算定する偏差算定処理と、
前記第1偏差に応じて前記加重値を設定する加重値設定処理とを含む
請求項8の制御システム。
【請求項10】
前記加重値設定処理においては、
前記第1偏差が第1閾値を下回る数値から当該第1閾値を上回る数値に変化した場合に、前記加重値を所定の第1値に設定し、
前記第1偏差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を上回る数値から当該第2閾値を下回る数値に変化した場合に、前記加重値を、前記第1偏差に応じた第2値に設定する
請求項9の制御システム。
【請求項11】
前記加重値設定処理においては、
第1偏差と加重値との関係を前記合計直流電力指令値に応じて決定し、
前記偏差算定処理により算定された第1偏差に対して前記関係にある数値を前記加重値として設定する
請求項9の制御システム。
【請求項12】
前記第1処理は、
当該蓄電ユニットにおける前記蓄電装置の温度を所定の標準範囲内の数値に正規化する正規化処理と、
前記正規化後の温度と基準値との第2偏差を算定する偏差算定処理と、
前記第2偏差に応じて前記加重値を設定する加重値設定処理とを含む
請求項8の制御システム。
【請求項13】
前記加重値設定処理においては、
前記第2偏差が第1閾値を下回る数値から当該第1閾値を上回る数値に変化した場合に、前記加重値を所定の第1値に設定し、
前記第2偏差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を上回る数値から当該第2閾値を下回る数値に変化した場合に、前記加重値を、前記温度偏差に応じた第2値に設定する
請求項12の制御システム。
【請求項14】
前記加重値設定処理においては、
第2偏差と加重値との関係を前記合計直流電力指令値に応じて決定し、
前記偏差算定処理により算定された第2偏差に対して前記関係にある数値を前記加重値として設定する
請求項12の制御システム。
【請求項15】
前記第1処理は、
当該蓄電ユニットにおける前記蓄電装置の充放電回数を所定の標準範囲内の数値に正規化する正規化処理と、
前記正規化後の充放電回数と基準値との第3偏差を算定する偏差算定処理と、
前記第3偏差に応じて前記加重値を設定する加重値設定処理とを含む
請求項8の制御システム。
【請求項16】
前記加重値設定処理においては、
前記第3偏差が第1閾値を下回る数値から当該第1閾値を上回る数値に変化した場合に、前記加重値を所定の第1値に設定し、
前記第3偏差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を上回る数値から当該第2閾値を下回る数値に変化した場合に、前記加重値を、前記第3偏差に応じた第2値に設定する
請求項15の制御システム。
【請求項17】
前記加重値設定処理においては、
第3偏差と加重値との関係を前記合計直流電力指令値に応じて決定し、
前記偏差算定処理により算定された第3偏差に対して前記関係にある数値を前記加重値として設定する
請求項15の制御システム。
【請求項18】
前記第1処理においては、
当該蓄電ユニットにおける蓄電装置の充電率に応じた第1加重値と、
前記蓄電装置の温度に応じた第2加重値と、
前記蓄電装置の充放電回数に応じた第3加重値と
に応じて前記加重値を設定する
請求項8の制御システム。
【請求項19】
前記第1処理は、前記配分係数の時間的な変動の速度を低減する処理を含む
請求項8の制御システム。
【請求項20】
前記複数の蓄電ユニットのうち一の蓄電ユニットを起動または停止する場合に、
前記係数設定部は、所定の時間をかけて前記配分係数を経時的に変化させ、
前記制限値設定部は、所定の時間をかけて前記制限値を経時的に変化させる
請求項3の制御システム。
【請求項21】
前記蓄電システムは、保守状態にある蓄電ユニットを含み、
前記指令算定部は、前記保守状態にある蓄電ユニットに関する保守用の電力を前記基礎指令値に付加する
請求項1の制御システム。
【請求項22】
前記指令算定部は、前記基礎指令値から補正電力を減算することで前記合計直流電力指令値を算定し、
前記配分処理部は、
前記複数の蓄電ユニットのうち優先ユニット以外の各通常ユニットについて、前記合計直流電力指令値から前記有効電力配分値を算定し、
前記優先ユニットについて、前記補正電力を前記有効電力配分値として設定する
請求項2の制御システム。
【請求項23】
前記指令算定部は、前記複数の蓄電ユニットが生成すべき無効電力の合計値である合計無効電力指令値を算定し、
前記指令配分部は、前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき無効電力配分値を前記合計無効電力指令値から算定し、
前記動作指示部は、前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの無効電力配分値を指示する
請求項1の制御システム。
【請求項24】
前記指令算定部は、発電システムが生成する有効電力を前記基礎指令値から減算する
請求項1の制御システム。
【請求項25】
前記指令算定部は、負荷設備が消費する有効電力を前記基礎指令値に付加する
請求項1の制御システム。
【請求項26】
直流電力を放電および充電する蓄電装置を含む複数の蓄電ユニットにより電力系統との合成点における有効電力を調整する蓄電システムと、
前記蓄電システムを制御する制御システムとを具備し、
前記制御システムは、
前記直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、前記蓄電システムおよび前記合成点の間の変電設備と前記蓄電システムとの間の相互間の変圧による変電損失とを含む電力損失を、前記有効電力の基礎指令値に付加することで、前記複数の蓄電ユニットにおける前記蓄電装置が放電または充電すべき電力の合計値である合計直流電力指令値を算定する指令算定部と、
前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき有効電力配分値を前記合計直流電力指令値から算定する指令配分部と、
前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの有効電力配分値を指示する動作指示部と
を具備する管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の蓄電装置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電力系統との間で授受すべき電力の指令値に応じて複数の蓄電装置を制御する技術が、従来から提案されている。例えば特許文献1には、交直変換装置と蓄電池とで構成された複数のバンクを具備する蓄電池システムにおいて、充電要請または放電要請による指令値に応じて各蓄電池の充放電を制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-94363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各蓄電装置から合成点までの経路においては様々な電力損失が発生し得る。したがって、複数の蓄電装置に指示される有効電力の配分を適正に算定する観点から、さらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る制御システムは、直流電力を放電および充電する蓄電装置を含む複数の蓄電ユニットにより電力系統との合成点における有効電力を調整する蓄電システムを制御する制御システムであって、前記直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、前記蓄電システムおよび前記合成点の間の変電設備と前記蓄電システムとの間の相互間の変圧による変電損失とを含む電力損失を、前記有効電力の基礎指令値に付加することで、前記複数の蓄電ユニットにおける前記蓄電装置が放電または充電すべき電力の合計値である合計直流電力指令値を算定する指令算定部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき有効電力配分値を前記合計直流電力指令値から算定する指令配分部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの有効電力配分値を指示する動作指示部とを具備する。
【0006】
本開示のひとつの態様に係る管理システムは、直流電力を放電および充電する蓄電装置を含む複数の蓄電ユニットにより電力系統との合成点における有効電力を調整する蓄電システムと、前記蓄電システムを制御する制御システムとを具備し、前記制御システムは、前記直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、前記蓄電システムおよび前記合成点の間の変電設備と前記蓄電システムとの間の相互間の変圧による変電損失とを含む電力損失を、前記有効電力の基礎指令値に付加することで、前記複数の蓄電ユニットにおける前記蓄電装置が放電または充電すべき電力の合計値である合計直流電力指令値を算定する指令算定部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき有効電力配分値を前記合計直流電力指令値から算定する指令配分部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの有効電力配分値を指示する動作指示部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る管理システムの構成を例示するブロック図である。
図2】制御システムの構成を例示するブロック図である。
図3】制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図4】複数の蓄電ユニットを仮想的に統合した等価回路図である。
図5】指令算定部の動作の説明図である。
図6】指令算定部の動作の説明図である。
図7】指令配分部の構成を例示するブロック図である。
図8】合計直流電力指令値が放電を示す場合における配分処理部の動作の具体例である。
図9】有効電力配分値と合成点電力との関係の説明図である。
図10】合計直流電力指令値が充電を示す場合における配分処理部の動作の具体例である。
図11】有効電力配分値と合成点電力との関係の説明図である。
図12】制御処理のフローチャートである。
図13】第2実施形態における制限設定部の構成を例示するブロック図である。
図14】候補値設定部が電圧に応じて候補値を設定する動作の説明図である。
図15】候補値設定部が充電率に応じて候補値を設定する動作の説明図である。
図16】候補値設定部が温度に応じて候補値を設定する動作の説明図である。
図17】蓄電装置が放電により吸熱する場合における温度と候補値との関係である。
図18】候補値設定部が電圧に応じて候補値を設定する動作の説明図である。
図19】候補値設定部が充電率に応じて候補値を設定する動作の説明図である。
図20】候補値設定部が温度に応じて候補値を設定する動作の説明図である。
図21】蓄電装置が充電により発熱する場合における温度と候補値との関係である。
図22】第3実施形態における係数設定部の動作の説明図である。
図23】第3実施形態における係数設定部の動作の説明図である。
図24】運転ワットアワー容量の説明図である。
図25】第4実施形態における第1処理の説明図である。
図26】第4実施形態において加重値を算定する処理の説明図である。
図27】合計直流電力指令値が充電を示す場合における加重値の説明図である。
図28】第4実施形態において加重値を算定する処理の説明図である。
図29】第4実施形態において加重値を算定する処理の説明図である。
図30】第5実施形態における第1処理の説明図である。
図31】第5実施形態においてが加重値を算定する処理の説明図である。
図32】第5実施形態においてが加重値を算定する処理の説明図である。
図33】第5実施形態において加重値α[m]を算定する処理の説明図である。
図34】合計直流電力指令値が充電を示す場合における加重値の説明図である。
図35】第6実施形態における第1処理の説明図である。
図36】第6実施形態において加重値を算定する処理の説明図である。
図37】第6実施形態において加重値を算定する処理の説明図である。
図38】第7実施形態における第1処理の説明図である。
図39】、第8実施形態における係数設定部の動作の説明図である。
図40】平滑処理の説明図である。
図41】平滑処理を実現する具体的な構成の説明図である。
図42】蓄電システムによる放電の実行中に1個の蓄電ユニットが追加的に起動される場合の動作に関する説明図である。
図43】配分係数および配分値の時間的な変化に関する説明図である。
図44】蓄電システムによる充電の実行中に1個の蓄電ユニットが追加的に起動される場合の動作に関する説明図である。
図45】配分係数および配分値の時間的な変化に関する説明図である。
図46】蓄電システムによる放電の実行中に1個の蓄電ユニットが停止される場合の動作に関する説明図である。
図47】配分係数および配分値の時間的な変化に関する説明図である。
図48】蓄電システムによる充電の実行中に1個の蓄電ユニットが停止される場合の動作に関する説明図である。
図49】配分係数および配分値の時間的な変化に関する説明図である。
図50】第11実施形態における指令算定部の動作の説明図である。
図51】第11実施形態における管理システムの動作の説明図である。
図52】第1実施形態の動作ケース1における管理システムの動作の説明図である。
図53】第1実施形態の動作ケース1における管理システムの動作の説明図である。
図54】第1実施形態の動作ケース2における管理システムの動作の説明図である。
図55】第1実施形態の動作ケース2における管理システムの動作の説明図である。
図56】第1実施形態の動作ケース3における管理システムの動作の説明図である。
図57】第1実施形態の動作ケース3における管理システムの動作の説明図である。
図58】第1実施形態の動作ケース4における管理システムの動作の説明図である。
図59】第1実施形態の動作ケース4における管理システムの動作の説明図である。
図60】第13実施形態における制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図61】第13実施形態における指令算定部の動作の説明図である。
図62】指令配分部が各蓄電ユニットの無効電力配分値を算定する動作の説明図である。
図63】第14実施形態に係る管理システムの構成を例示するブロック図である。
図64】第15実施形態に係る管理システムの構成を例示するブロック図である。
図65】第16実施形態における蓄電ユニットの構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0009】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る管理システム100の構成を例示するブロック図である。管理システム100は、電力系統10との間で交流電力を授受するシステムである。電力系統10は、例えば、火力発電所または原子力発電所等の発電設備23(図示略)により生成された交流電力を、事業設備または一般家庭等の需要家に供給するための配電系統または送電系統である。管理システム100は、合成点11において電力系統10に接続される。合成点11は、電力系統10と管理システム100との境界に相当する連系点である。
【0010】
図1に例示される通り、管理システム100は、変電設備21と負荷設備22と蓄電システム30と制御システム40とを具備する。蓄電システム30は、電力系統10との間で交流電力を授受する電力設備である。
【0011】
変電設備21は、蓄電システム30を構成する複数の蓄電ユニットU[m]の出力および負荷設備22の入力を集約し、これらと合成点11との間で授受される交流電力の電圧を変圧器により変圧する電力設備である。なお、変電設備21の変圧器は省略されてもよい。負荷設備22は、蓄電システム30または電力系統10から供給される電力の消費により動作する各種の負荷(所内負荷)である。例えば、負荷設備22は、管理システム100の各要素(変電設備21、蓄電システム30または制御システム40)に対して制御電源、操作電源または補機動力を供給する各種の設備を含む。具体的には、変電設備21からの供給電圧を変圧する所内用変圧器、変電設備21または交直変換器322に制御電源または操作電源を供給する直流電源装置、異常発生時に電力を供給する無停電電源装置(UPS)、蓄電装置31に補機動力(例えば空調設備等の補機設備に必要な駆動電力)または制御電源を供給する電源装置、変電設備21や交直変換器322に使用される送油ポンプまたは冷却ファン、電力会社との保安電話等に使用される通信装置、敷地または建物等に設置された照明設備または空調設備、温度または湿度等の環境情報を計測する計測システム、あるいは、各種の消防設備(煙感知器、熱感知器、火災報知器等)が、負荷設備22として例示される。なお、負荷設備22は省略されてもよい。
【0012】
第1実施形態の蓄電システム30は、複数の蓄電ユニットU[m](m=1~5)で構成される。なお、以下の説明においては蓄電システム30が5個の蓄電ユニットU[1]~U[5]を含む形態を便宜的に例示する。ただし、蓄電システム30を構成する蓄電ユニットU[m]の個数は任意に変更され得る。
【0013】
複数の蓄電ユニットU[m]の各々は、電力の充電および放電が可能な電力設備である。図1に例示される通り、各蓄電ユニットU[m]は、蓄電装置31と電力調整装置32とを具備する。蓄電装置31は、直流電力を放電および充電する2次電池である。蓄電装置31の種類は任意であるが、例えばリチウムイオン電池またはナトリウム硫黄電池が蓄電装置31として例示される。
【0014】
電力調整装置32は、蓄電装置31の放電および充電を制御するPCS(Power Conditioning System)である。具体的には、電力調整装置32は、変圧器321と交直変換器322とを具備する。変圧器321は、交流電力の電圧を変換する。交直変換器322は、直流電力と交流電力とを相互に変換する。具体的には、交直変換器322は、蓄電装置31の放電により供給される直流電力を交流電力に変換し、変圧器321は、交直変換器322による変換後の交流電力の電圧を変換して合成点11に供給する。また、変圧器321は、電力系統10から供給される交流電力の電圧を変換し、変圧器321による変圧後の交流電力を直流電力に変換して蓄電装置31に供給する。以上の説明の通り、蓄電システム30は、蓄電装置31を含む複数の蓄電ユニットU[m]により電力系統10との合成点11における有効電力を調整する。なお、変圧器321は省略されてもよい。また、複数の蓄電ユニットU[m]が1個の変圧器321を共用してもよい。
【0015】
制御システム40は、蓄電システム30を制御するコンピュータシステム(PMS:Power Management System)である。具体的には、制御システム40は、蓄電システム30の各蓄電ユニットU[m]に対して有効電力配分値P[m]を指示する。各蓄電ユニットU[m]は、有効電力配分値P[m]に相当する直流電力の放電または充電を蓄電装置31に実行させる。有効電力配分値P[m]は、蓄電ユニットU[m]が放電または充電すべき交流電力の電力値である。具体的には、有効電力配分値P[m]の正数は放電(すなわち蓄電ユニットU[m]から合成点11に対する給電)の指令に相当し、有効電力配分値P[m]の負数は充電(すなわち蓄電ユニットU[m]による合成点11からの受電)の指令に相当する。なお、有効電力配分値P[m]の負数が放電の指令に相当し、有効電力配分値P[m]の正数が充電の指令に相当してもよい。
【0016】
図2は、制御システム40の構成を例示するブロック図である。図2に例示される通り、制御システム40は、制御装置41と記憶装置42と送受信装置43とを具備する。なお、制御システム40は、単体の装置により実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。
【0017】
制御装置41は、制御システム40の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、例えばPLD(Programmable Logic Device)、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置41が構成される。
【0018】
記憶装置42は、制御装置41が実行するプログラムと制御装置41が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置42は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置42が構成されてもよい。制御システム40に対して着脱される可搬型の記録媒体が、記憶装置42として利用されてもよい。
【0019】
送受信装置43は、外部装置との間で有線または無線により信号を送受信する。具体的には、送受信装置43は、例えば専用線等の通信網(図示略)を介して各蓄電ユニットU[m](具体的には電力調整装置32)と通信する。例えば、有効電力配分値P[m]が送受信装置43から各蓄電ユニットU[m]に送信される。なお、送受信装置43と各蓄電ユニットU[m](具体的には電力調整装置32)との間で授受される信号は、デジタル信号およびアナログ信号の何れでもよい。
【0020】
図3は、制御システム40の機能的な構成を例示するブロック図である。制御装置41は、記憶装置42に記憶されたプログラムを実行することで、複数の蓄電ユニットU[m]を制御するための複数の機能(指令算定部51,指令配分部52,動作指示部53)を実現する。
【0021】
図3に例示される通り、制御システム40には基礎指令値C0が入力される。基礎指令値C0は、電力系統10との合成点11における有効電力(以下「合成点電力」という)の指令値である。すなわち、基礎指令値C0は、管理システム100の全体により放電または充電されるべき電力の合計値である。基礎指令値C0は、合成点電力の数値を指示するほか、合成点11に対する電力の方向(放電/充電)を符号により指示する。具体的には、蓄電システム30から合成点11に対する給電(すなわち蓄電ユニットU[m]による放電)は正数により指示され、蓄電システム30による合成点11からの受電(すなわち蓄電ユニットU[m]による充電)は負数により指示される。
【0022】
基礎指令値C0は、例えば卸電力市場または需給調整市場等の電力市場を管理する外部システムから制御システム40に送信される。すなわち、基礎指令値C0は、各種の電力市場において管理システム100が取引すべき電力の合計値である。
【0023】
図3の指令算定部51は、基礎指令値C0から合計直流電力指令値Cpを算定する。合計直流電力指令値Cpは、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31から合成点11までの電力損失を基礎指令値C0に付加した指令値である。具体的には、合計直流電力指令値Cpは、各蓄電装置31から合成点11までに電力損失が付随する場合でも合成点電力が基礎指令値C0に維持されるように、各蓄電装置31が生成すべき直流電力の合計値を指定する。すなわち、合計直流電力指令値Cpは、基礎指令値C0を実現するために複数の蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31が放電または充電すべき直流電力の合計値である。
【0024】
図4は、複数の蓄電ユニットU[m]を仮想的に統合した等価回路図である。図4に例示される通り、複数の蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31は1個の蓄電装置31eqに等価的に置換され、複数の蓄電ユニットU[m]における電力調整装置32は1個の電力調整装置32eqに等価的に置換される。
【0025】
図4に例示される通り、指令算定部51が算定する合計直流電力指令値Cpは、蓄電装置31eqが放電または受電すべき直流電力の合計値である。以上の説明から理解される通り、合計直流電力指令値Cpは、合成点11に設定されるべき交流電力(すなわち基礎指令値C0が指定する合成点電力)を、蓄電装置31が生成する直流電力に等価的に換算した数値とも表現される。
【0026】
図4に例示される通り、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31から合成点11までの経路においては、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とが発生する。
【0027】
変電損失X1は、変電設備21による変圧に起因した電力損失である。すなわち、変電損失X1は、蓄電システム30と変電設備21との間の交流電圧と合成点11における電圧との相互間の変圧により発生する損失(例えば負荷損および無負荷損)である。
【0028】
変電損失X1は、基礎指令値C0に相当する電力が合成点11を相互に通過する際に変電設備21の変圧器に発生する銅損の計算値と、変電設備21に電圧が印加される際に変電設備21の変圧器に発生する鉄損とを加算することで算定される。変電設備21における変圧器の漂遊負荷損または誘電体損が、変電損失X1に加算されてもよい。なお、変電損失X1は、基礎指令値C0に相当する合成点11の電力(または合成点11に設置された電力計測器による計測値)と、変電設備21の入力に設置された計測器による計測値との差分の絶対値により算定されてもよい。また、蓄電システム30と変電設備21との間の線路損失が変電損失X1に加算されてもよい。
【0029】
負荷損失X2は、負荷設備22による電力の消費に起因した電力損失である。すなわち、負荷損失X2は、負荷設備22が消費する有効電力に相当する。負荷損失X2は、例えば計測器により計測された計測値に応じて算定される。なお、負荷設備22について事前に設定された計画値に応じて負荷損失X2が算定されてもよい。また、蓄電システム30と負荷設備22との間の線路損失が負荷損失X2に加算されてもよい。
【0030】
変換損失X3は、各蓄電ユニットU[m]の電力調整装置32による電力変換に起因した変換損失x[m]を複数の蓄電ユニットU[m]にわたり合計した電力損失である。各蓄電ユニットU[m]の変換損失x[m]は、蓄電装置31と電力調整装置32との間の直流電力と、制御システム40と変電設備21との間の交流電力との間の変換により発生する損失である。
【0031】
変換損失x[m]は、蓄電ユニットU[m]における変圧器321の損失(例えば負荷損および無負荷損)と交直変換器322の損失との合計である。変圧器321と交直変換器322との間の線路損失が変換損失x[m]に加算されてもよい。
【0032】
変圧器321の損失は、有効電力配分値P[m]に相当する電力が変圧器321を相互に通過する際に発生する変圧器321の銅損の計算値と、変圧器321に電圧が印加される際に発生する変圧器321の鉄損とを加算することで算出される。変圧器321の漂遊負荷損または誘電体損が、変換損失x[m]に加算されてもよい。なお、変圧器321の損失は、変圧器321に入力される有効電力配分値P[m]に相当する電力(または変圧器321の入力に設けられた電力計測器による計測値)と、変圧器321の出力に設けられた電力計測器による計測値との差分の絶対値により算定されてもよい。
【0033】
交直変換器322の損失は、例えば、有効電力配分値P[m](または交直変換器322の交流側に設置された電力計測器による計測値)と、直流電力の計測値との差分の絶対値により算定される。
【0034】
図5および図6は、指令算定部51の動作の説明図である。図5は、蓄電システム30による放電が基礎指令値C0により指示された場合(C0>0)における指令算定部51の動作である。図5に例示される通り、指令算定部51は、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とを含む電力損失(X1+X2+X3)を基礎指令値C0に付加することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。図5においては、各蓄電ユニットU[m]の変換損失x[m]が「1」であるため、変換損失X3が「5」である状態が例示されている。
【0035】
図6は、蓄電システム30による充電が基礎指令値C0により指示された場合(C0<0)における指令算定部51の動作である。基礎指令値C0が負数であるのに対し、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とは正数である。蓄電システム30による充電が基礎指令値C0により指示された場合も、図5の場合と同様に、指令算定部51は、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とを含む電力損失(X1+X2+X3)を基礎指令値C0に付加することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【0036】
すなわち、指令算定部51は、以下の数式(1)で表現される通り、基礎指令値C0に変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とを加算することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【数1】
【0037】
図3の指令配分部52は、合計直流電力指令値Cpのうち複数の蓄電ユニットU[m]の各々に配分されるべき有効電力の指令値(以下「有効電力配分値P[m]」という)を算定する。有効電力配分値P[m]は、各蓄電ユニットU[m]が放電(P[m]>0)または充電(P[m]<0)すべき交流電力の指令値である。
【0038】
動作指示部53は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々に対して当該蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]を指示する。具体的には、動作指示部53は、指令配分部52が算定した有効電力配分値P[m]を送受信装置43により蓄電ユニットU[m]に送信する。
【0039】
図7は、指令配分部52の具体的な構成を例示するブロック図である。図7に例示される通り、指令配分部52は、係数設定部521と制限値設定部522と配分処理部523とを具備する。
【0040】
係数設定部521は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について配分係数K[m](K[1]~K[5])を設定する。各配分係数K[m]は、合計直流電力指令値Cpのうち蓄電ユニットU[m]が分担すべき電力の比率を表す正数である。第1実施形態の係数設定部521は、例えば各蓄電装置31の仕様または状態に応じて配分係数K[m]を設定する。
【0041】
制限値設定部522は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について制限値L[m](L[1]~L[5])を設定する。各制限値L[m]は、有効電力配分値P[m]を所定の範囲に制限するための数値である。制限値L[m]は、蓄電装置31の放電に関する制限値L[m]_d(d:discharge)と蓄電装置31の充電に関する制限値L[m]_c(c:charge)とを含む。第1実施形態の制限値設定部522は、例えば各蓄電装置31の仕様または状態に応じて制限値L[m]を設定する。
【0042】
配分処理部523は、各蓄電ユニットU[m]に配分されるべき有効電力配分値P[m]を合計直流電力指令値Cpから算定する。第1実施形態の配分処理部523は、各蓄電ユニットU[m]について係数設定部521が設定した配分係数K[m]と、各蓄電ユニットU[m]について制限値設定部522が設定した制限値L[m](L[m]_d,L[m]_c)とに応じて、合計直流電力指令値Cpを複数の有効電力配分値P[m]に配分する。
【0043】
図8から図11は、配分処理部523による動作の説明図である。まず、図8は、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)における配分処理部523の動作の具体例である。
【0044】
ステップSa1において、配分処理部523は、合計直流電力指令値Cpのうち各蓄電ユニットU[m]に配分されるべき電力配分値Pa[m]を、各蓄電ユニットU[m]の配分係数K[m]に応じて算定する。具体的には、各電力配分値Pa[m]が配分係数K[m]に対応する比率となるように、配分処理部523は各電力配分値Pa[m]を算定する。なお、電力配分値Pa[m]は、「第1電力配分値」の一例である。
【0045】
例えば、配分処理部523は、以下の数式(2)の演算により各電力配分値Pa[m]を算定する。すなわち、配分処理部523は、複数の配分係数K[m](K[1]~K[5])の合計値ΣK[m]に対する各配分係数K[m]の比率を、図5に例示した放電の合計直流電力指令値Cpに乗算することで、各電力配分値Pa[m]を算定する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態によれば、各蓄電ユニットU[m]の配分係数K[m]に応じて合計直流電力指令値Cpを複数の蓄電ユニットU[m]の各々に配分できる。
【数2】
【0046】
ステップSa1により算定された電力配分値Pa[m]は、放電用の制限値L[m]_dを超過する場合がある。合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合において、電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過する場合とは、電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを上回る場合(Pa[m]>L[m]_d)である。例えば、図8には、蓄電ユニットU[1]の電力配分値Pa[1](=50)が制限値L[1]_d(=40)を超過し、蓄電ユニットU[2]の電力配分値Pa[2](=40)が制限値L[2]_d(=30)を超過した場合が例示されている。
【0047】
配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過する1以上の蓄電ユニットU[m]について当該超過値(Pa[m]-L[m]_d)を合計した合計超過値E1を、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]の各々に配分する(Sa2~Sa5)。
【0048】
具体的には、図8のステップSa2において、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過する1以上の蓄電ユニットU[m]について、電力配分値Pa[m]と制限値L[m]_dとの差分(すなわち超過値)を合計することで合計超過値E1を算定する。図8の状況においては、蓄電ユニットU[1]の超過値(Pa[1]-L[1]_d)である「10」と、蓄電ユニットU[2]の超過値(Pa[2]-L[2]_d)である「10」とを合計した「20」が、合計超過値E1として算定される。
【0049】
ステップSa3において、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]について、制限値L[m]_dと電力配分値Pa[m]との差分(すなわち余裕値)を合計することで合計空き電力E2を算定する。図8の状況においては、蓄電ユニットU[4]の余裕値(L[4]_d-Pa[4])である「10」と、蓄電ユニットU[5]の余裕値(L[5]_d-Pa[5])である「20」とを合計した「30」が、合計空き電力E2として算定される。
【0050】
ステップSa4において、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]について、追加配分値ΔP[m]を算定する。具体的には、配分処理部523は、以下の数式(3a)の演算により各追加配分値ΔP[m]を算定する。すなわち、配分処理部523は、合計空き電力E2に対する各余裕値(L[m]_d-Pa[m])の比率を合計超過値E1に乗算することで、追加配分値ΔP[m]を算定する。
【数3A】
【0051】
ステップSa5において、配分処理部523は、各蓄電ユニットU[m]について電力配分値Pb[m]を算定する。すなわち、各電力配分値Pa[m]が電力配分値Pb[m]に更新される。具体的には、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過する1以上の蓄電ユニットU[m]について、制限値L[m]_dを更新後の電力配分値Pb[m]として設定する。また、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_dを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]について、電力配分値Pa[m]に追加配分値ΔP[m]を加算することで更新後の電力配分値Pb[m]を算定する。複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]と制限値L[m]_dとが相等しい蓄電ユニットU[m]については、電力配分値Pa[m]が電力配分値Pb[m]として採用される。電力配分値Pb[m]は、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31が放電すべき直流電力の指令値である。
【0052】
ステップSa6において、配分処理部523は、各蓄電ユニットU[m]について算定した電力配分値Pb[m]から当該蓄電ユニットU[m]における変換損失x[m]を減算することで、有効電力配分値P[m]を算定する(P[m]=Pb[m]-x[m])。すなわち、有効電力配分値P[m]は、前述の通り、蓄電ユニットU[m]が放電すべき有効電力の指令値である。合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)に配分処理部523が有効電力配分値P[m]を算定する動作は、以上の通りである。
【0053】
前述の通り、各蓄電ユニットU[m]と合成点11との間では、変電設備21による変電損失X1と負荷設備22による負荷損失X2とが発生する。図9に例示される通り、以上の手順で算定された有効電力配分値P[m]の合計値ΣP[m]から変電損失X1と負荷損失X2とが減殺される結果、管理システム100から合成点11に対して、基礎指令値C0(=130)に相当する交流電力が供給される。
【0054】
図10は、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)における配分処理部523の動作の具体例である。
【0055】
ステップSa1において、配分処理部523は、合計直流電力指令値Cpのうち各蓄電ユニットU[m]に配分されるべき電力配分値Pa[m]を、各蓄電ユニットU[m]の配分係数K[m]に応じて算定する。具体的には、各電力配分値Pa[m]が配分係数K[m]に対応する比率となるように、配分処理部523は各電力配分値Pa[m]を算定する。すなわち、配分処理部523は、前述の数式(2)の通り、複数の配分係数K[m](K[1]~K[5])の合計値ΣK[m]に対する各配分係数K[m]の比率を、図6に例示した充電の合計直流電力指令値Cpに乗算することで、各電力配分値Pa[m]を算定する。
【0056】
ステップSa1により算定された電力配分値Pa[m]は、充電用の制限値L[m]_cを超過する場合がある。合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合において、電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過する場合とは、電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを下回る場合(Pa[m]<L[m]_c)である。例えば、図10には、蓄電ユニットU[4]の電力配分値Pa[4](=-40)が制限値L[4]_c(=-30)を超過し、蓄電ユニットU[5]の電力配分値Pa[5](=-50)が制限値L[5]_c(=-40)を超過した場合が例示されている。
【0057】
配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過する1以上の蓄電ユニットU[m]について当該超過値(Pa[m]-L[m]_c)を合計した合計超過値E1を、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]の各々に配分する(Sa2~Sa5)。
【0058】
具体的には、図10のステップSa2において、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過する1以上の蓄電ユニットU[m]について、電力配分値Pa[m]と制限値L[m]_cとの差分(すなわち超過値)を合計することで合計超過値E1を算定する。図10の状況においては、蓄電ユニットU[4]の超過値(Pa[4]-L[4]_c)である「-10」と、蓄電ユニットU[5]の超過値(Pa[5]-L[5]_c)である「-10」とを合計した「-20」が、合計超過値E1として算定される。
【0059】
ステップSa3において、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]について、制限値L[m]_cと電力配分値Pa[m]との差分(すなわち余裕値)を合計することで合計空き電力E2を算定する。図10の状況においては、蓄電ユニットU[4]の余裕値(L[1]_c-Pa[1])である「-20」と、蓄電ユニットU[2]の余裕値(L[2]_c-Pa[2])である「-10」とを合計した「-30」が、合計空き電力E2として算定される。
【0060】
ステップSa4において、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]について、追加配分値ΔP[m]を算定する。具体的には、配分処理部523は、以下の数式(3b)の演算により各追加配分値ΔP[m]を算定する。すなわち、配分処理部523は、合計空き電力E2に対する各余裕値(L[m]_c-Pa[m])の比率を合計超過値E1に乗算することで、追加配分値ΔP[m]を算定する。
【数3B】
【0061】
ステップSa5において、配分処理部523は、各蓄電ユニットU[m]について電力配分値Pb[m]を算定する。すなわち、各電力配分値Pa[m]が電力配分値Pb[m]に更新される。具体的には、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過する1以上の蓄電ユニットU[m]について、制限値L[m]_cを更新後の電力配分値Pb[m]として設定する。また、配分処理部523は、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]_cを超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]について、電力配分値Pa[m]に追加配分値ΔP[m]を加算することで更新後の電力配分値Pb[m]を算定する。複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]と制限値L[m]_cとが相等しい蓄電ユニットU[m]については、電力配分値Pa[m]が電力配分値Pb[m]として採用される。電力配分値Pb[m]は、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31が充電すべき直流電力の指令値である。
【0062】
ステップSa6において、配分処理部523は、各蓄電ユニットU[m]について算定した電力配分値Pb[m]から当該蓄電ユニットU[m]における変換損失x[m]を減算することで、有効電力配分値P[m]を算定する(P[m]=Pb[m]-x[m])。すなわち、有効電力配分値P[m]は、前述の通り、蓄電ユニットU[m]が充電すべき有効電力の指令値である。合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)に配分処理部523が有効電力配分値P[m]を算定する動作は、以上の通りである。
【0063】
前述の通り、各蓄電ユニットU[m]と合成点11との間では、変電設備21による変電損失X1と負荷設備22による負荷損失X2とが発生する。図11に例示される通り、以上の手順で算定された有効電力配分値P[m]の合計値ΣP[m]から変電損失X1と負荷損失X2とが減殺される結果、合成点11から管理システム100に対して、基礎指令値C0(=-170)に相当する交流電力が供給される。
【0064】
図12は、制御システム40の全体的な動作(以下「制御処理」という)のフローチャートである。例えば所定の周期で図12の制御処理が反復される。
【0065】
制御処理が開始されると、制御装置41(指令算定部51)は、基礎指令値C0を取得する(S1)。制御装置41(指令算定部51)は、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とを含む電力損失を基礎指令値C0に付加することで、合計直流電力指令値Cpを算定する(S2)。
【0066】
制御装置41(指令配分部52)は、合計直流電力指令値Cpのうち複数の蓄電ユニットU[m]の各々に配分されるべき電力の指令値である有効電力配分値P[m]を算定する(S3)。有効電力配分値P[m]を算定する処理の具体例は、図8および図10を参照して前述した通りである。制御装置41(動作指示部53)は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々に対して当該蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]を指示する(S4)。
【0067】
なお、直流電力の指令に応じて直流電力を応答する蓄電ユニットU[m]が蓄電システム30に含まれる場合、制御装置41(動作指示部53)は、当該蓄電ユニットU[m]に対して、当該蓄電ユニットU[m]について算定された電力配分値Pb[m]を指示する場合がある。また、変圧器321と交直変換器322との間の地点における有効電力の指示に応じて当該地点の有効電力を応答する蓄電ユニットU[m]が蓄電システム30に含まれる場合、制御装置41(動作指示部53)は、当該蓄電ユニットU[m]について算定された電力配分値Pb[m]から当該蓄電ユニットU[m]における変圧器321の損失を減算した数値を、当該蓄電ユニットU[m]に対して指示してもよい。
【0068】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、蓄電装置31が放電または充電する直流電力と交流電力との間の変換による変換損失X3と、変電設備21と蓄電システム30との間の相互間の変圧による変電損失X1とを含む電力損失が基礎指令値C0に付加されることで合計直流電力指令値Cpが算定され、合計直流電力指令値Cpが各蓄電ユニットU[m]に配分される。したがって、変電損失X1と変換損失X3とを考慮せずに基礎指令値C0を各蓄電ユニットU[m]に配分する形態と比較して、各蓄電ユニットU[m]に指示される有効電力配分値P[m]を適正に算定できる。基礎指令値C0が微小な場合には、当該基礎指令値C0に対する変換損失(X1~X3)の影響が相対的に増大するから、変電損失X1と変換損失X3とが基礎指令値C0に加味される第1実施形態の構成は特に有効である。
【0069】
また、第1実施形態においては、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]を超過する1以上の蓄電ユニットU[m]について当該超過値を合計した合計超過値E1が、複数の蓄電ユニットU[m]のうち電力配分値Pa[m]が制限値L[m]を超過しない1以上の蓄電ユニットU[m]の各々に配分される。したがって、合成点電力を基礎指令値C0に維持しながら、各蓄電ユニットU[m]に配分される電力を制限値L[m]の範囲内に抑制できる。
【0070】
2.第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0071】
第2実施形態においては、制限値設定部522の構成および動作が第1実施形態とは相違する。制限値設定部522以外の要素の構成および動作は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0072】
図13は、第2実施形態における制限値設定部522の構成を例示するブロック図である。第2実施形態の送受信装置43は、各蓄電ユニットU[m]から状態データD[m]を受信する。状態データD[m]は、蓄電ユニットU[m](特に蓄電装置31)の状態を表すデータである。具体的には、状態データD[m]は、蓄電装置31の電圧V[m]、充電率S[m]および温度T[m]を含む。電圧V[m]は、蓄電装置31の放電または充電に使用される直流電圧(例えば蓄電装置31の出力端子の電圧)の測定値である。充電率S[m]は、蓄電装置31の容量(満充電容量)に対する現在の充電量の比率(SOC:State of Charge)である。温度T[m]は、蓄電装置31の温度の測定値である。
【0073】
図13に例示される通り、制限値設定部522は、第1設定部61と第2設定部62とを含む。第1設定部61は、各蓄電ユニットU[m]について放電用の制限値L[m]_dを設定する。具体的には、第1設定部61は、各蓄電ユニットU[m]から取得した状態データD[m]に応じて当該蓄電ユニットU[m]の制限値L[m]_dを設定する。同様に、第2設定部62は、各蓄電ユニットU[m]について充電用の制限値L[m]_cを設定する。具体的には、第2設定部62は、各蓄電ユニットU[m]から取得した状態データD[m]に応じて当該蓄電ユニットU[m]の制限値L[m]_cを設定する。
【0074】
[第1設定部61]
第1設定部61は、候補値設定部611と候補値設定部612と候補値設定部613と候補値選択部614とを含む。候補値設定部611は、蓄電装置31の電圧V[m]に応じて候補値Z1[m]_dを設定する。候補値設定部612は、蓄電装置31の充電率S[m]に応じて候補値Z2[m]_dを設定する。候補値設定部613は、蓄電装置31の温度T[m]に応じて候補値Z3[m]_dを設定する。なお、候補値Z1[m]_dは「第1候補値」の一例であり、候補値Z2[m]_dは「第2候補値」の一例であり、候補値Z3[m]_dは「第3候補値」の一例である。
【0075】
候補値選択部614は、複数の候補値Z[m]_dから制限値L[m]_dを選択する。複数の候補値Z[m]_dは、候補値Z1[m]_dと候補値Z2[m]_dと候補値Z3[m]_dとに加えて、候補値Z4[m]_dと候補値Z5[m]_dとを含む。候補値Z4[m]_dは、蓄電ユニットU[m]のうち交直変換装置24の直流端における放電側の容量である。候補値Z5[m]_dは、蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31の仕様に応じた放電側の要求値である。具体的には、候補値選択部614は、複数の候補値Z[m]_dのうちの最小値を制限値L[m]_dとして選択する。
【0076】
以上の説明から理解される通り、制限値設定部522は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について、当該蓄電ユニットU[m]の相異なる状態に関する複数の候補値Z[m]_dから制限値L[m]_dを選択する。したがって、蓄電ユニットU[m]の状態に関する複数の観点から制限値L[m]_dを適切に設定できる。候補値Z1[m]_dと候補値Z2[m]_dと候補値Z3[m]_dとの設定について以下に詳述する。
【0077】
[候補値設定部611による候補値Z1[m]_dの設定]
図14は、候補値設定部611が電圧V[m]に応じて候補値Z1[m]_dを設定する動作の説明図である。電圧V[m]と候補値Z1[m]_dとの関係が、図14に例示されている。なお、電圧V[m]と候補値Z1[m]_dとの関係に間する各要素(R11[m]_d,R12[m]_d,R13[m]_d,V1[m]_d,V2[m]_d,z11[m]_d,z12[m]_d,z13[m]_d)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0078】
図14に例示される通り、電圧V[m]の範囲は、第1範囲R11[m]_dと第2範囲R12[m]_dと第3範囲R13[m]_dとに区分される。第1範囲R11[m]_dは、所定の電圧V1[m]_dを下回る正数の範囲である。第2範囲R12[m]_dは、所定の電圧V2[m]_dを上回る範囲である。電圧V2[m]_dは電圧V1[m]_dを上回る。第3範囲R13[m]_dは、第1範囲R11[m]_dと第2範囲R12[m]_dとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R13[m]_dは、電圧V1[m]_dと電圧V2[m]_dとの間の範囲である。
【0079】
電圧V[m]が第1範囲R11[m]_d内の数値である場合、候補値設定部611は、候補値Z1[m]_dを第1値z11[m]_dに設定する。他方、電圧V[m]が第2範囲R12[m]_d内の数値である場合、候補値設定部611は、候補値Z1[m]_dを第2値z12[m]_dに設定する。第1値z11[m]_dは、第2値z12[m]_dを下回る固定値である。具体的には、第1値z11[m]_dは、0を僅かに下回る負数に設定される。他方、第2値z12[m]_dは、電圧V[m]に応じて変化する正数の可変値である。具体的には、第2値z12[m]_dは、電圧V[m]に対して所定の勾配で単調増加する。なお、図14の第2値z12[m]_dは、例えば、電圧V[m]と蓄電ユニットU[m]の放電側の電流制限値との乗算により算定される。したがって、電圧V[m]が第2範囲R12[m]_d内の数値である場合、蓄電ユニットU[m]の放電側の電流制限値を超過しないように候補値Z1[m]_d(さらには制限値L[m]_d)を設定できる。
【0080】
電圧V[m]が第3範囲R13[m]_d内の数値である場合、候補値設定部611は、候補値Z1[m]_dを、第1値z11[m]_dと第2値z12[m]_dとの間で電圧V[m]に応じて変化する第3値z13[m]_dに設定する。第3値z13[m]_dは、電圧V[m]に対して所定の勾配で単調増加する。電圧V[m]に対する第3値z13[m]_dの勾配は、電圧V[m]に対する第2値z12[m]_dの勾配を上回る。
【0081】
以上の通り、第2実施形態においては、蓄電装置31の電圧V[m]に応じて候補値Z1[m]_dが設定される。したがって、蓄電装置31の電圧V[m]の観点から制限値L[m]_dを適切に設定できる。また、電圧V[m]が第3範囲R13[m]_d内の数値である場合、候補値Z1[m]_dは第1値z11[m]_dと第2値z12[m]_dとの間で電圧V[m]に応じて変化する。したがって、候補値Z1[m]_dが第1値z11[m]_dおよび第2値z12[m]_dの何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置31の電圧V[m]に応じた制限値L[m]_dの急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。また、電圧V[m]が第2範囲R12[m]_d内の数値である場合の候補値Z1[m]_d(第2値z12[m]_d)を、電圧V[m]と蓄電ユニットU[m]の放電側の電流制限値との乗算により算定する構成によれば、蓄電ユニットU[m]の放電側の電流制限値を超過しないように候補値Z1[m]_d(ひいては制限値L[m]_d)を設定できる。
【0082】
なお、候補値Z1[m]_dの最小値である第1値z11[m]_dは、蓄電装置31の充電を指示する負数に設定される。したがって、蓄電装置31の電圧V[m]が第1範囲R11[m]_d内に低下した状態では、蓄電装置31の微小な充電が実行され、結果的に電圧V[m]を特定の範囲まで上昇させることが可能である。
【0083】
[候補値設定部612による候補値Z2[m]_dの設定]
図15は、候補値設定部612が充電率S[m]に応じて候補値Z2[m]_dを設定する動作の説明図である。充電率S[m]と候補値Z2[m]_dとの関係が、図15に例示されている。なお、電圧V[m]と候補値Z2[m]_dとの関係に間する各要素(R21[m]_d,R22[m]_d,R23[m]_d,S1[m]_d,S2[m]_d,z21[m]_d,z22[m]_d,z23[m]_d)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0084】
図15に例示される通り、充電率S[m]の範囲は、第1範囲R21[m]_dと第2範囲R22[m]_dと第3範囲R23[m]_dとに区分される。第1範囲R21[m]_dは、所定の充電率S1[m]_dを下回る範囲である。第2範囲R22[m]_dは、所定の充電率S2[m]_dを上回る範囲である。充電率S2[m]_dは充電率S1[m]_dを上回る。第3範囲R23[m]_dは、第1範囲R21[m]_dと第2範囲R22[m]_dとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R23[m]_dは、充電率S1[m]_dと充電率S2[m]_dとの間の範囲である。
【0085】
充電率S[m]が第1範囲R21[m]_d内の数値である場合、候補値設定部612は、候補値Z2[m]_dを第1値z21[m]_dに設定する。他方、充電率S[m]が第2範囲R22[m]_d内の数値である場合、候補値設定部612は、候補値Z2[m]_dを第2値z22[m]_dに設定する。第1値z21[m]_dは、0を僅かに下回る固定値である。第2値z22[m]_dは、第1値z21[m]_dを上回る固定値である。
【0086】
充電率S[m]が第3範囲R23[m]_d内の数値である場合、候補値設定部612は、候補値Z2[m]_dを、第1値z21[m]_dと第2値z22[m]_dとの間で充電率S[m]に応じて変化する第3値z23[m]_dに設定する。第3値z23[m]_dは、充電率S[m]に対して所定の勾配で単調増加する。
【0087】
以上の通り、第2実施形態においては、蓄電装置31の充電率S[m]に応じて候補値Z2[m]_dが設定される。したがって、蓄電装置31の充電率S[m]の観点から制限値L[m]_dを適切に設定できる。また、充電率S[m]が第3範囲R23[m]_d内の数値である場合、候補値Z2[m]_dは第1値z21[m]_dと第2値z22[m]_dとの間で充電率S[m]に応じて変化する。したがって、候補値Z2[m]_dが第1値z21[m]_dおよび第2値z22[m]_dの何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置31の充電率S[m]に応じた制限値L[m]_dの急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。
【0088】
なお、候補値Z2[m]_dの最小値である第1値z21[m]_dは、蓄電装置31の充電を指示する負数に設定される。したがって、蓄電装置31の充電率S[m]が第1範囲R21[m]_d内に低下した状態では、蓄電装置31の微小な充電が実行され、結果的に充電率S[m]を特定の範囲まで上昇させることが可能である。
【0089】
[候補値設定部613による候補値Z3[m]_dの設定]
図16は、候補値設定部613が温度T[m]に応じて候補値Z3[m]_dを設定する動作の説明図である。温度T[m]と候補値Z3[m]_dとの関係が、図16に例示されている。また、図16においては、放電により発熱する特性の蓄電装置31が想定されている。なお、電圧V[m]と候補値Z3[m]_dとの関係に間する各要素(R31[m]_d,R32[m]_d,R33[m]_d,T1[m]_d,T2[m]_d,z31[m]_d,z32[m]_d,z33[m]_d)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0090】
図16に例示される通り、温度T[m]の範囲は、第1範囲R31[m]_dと第2範囲R32[m]_dと第3範囲R33[m]_dとに区分される。第1範囲R31[m]_dは、所定の温度T1[m]_dを上回る範囲である。第2範囲R32[m]_dは、所定の温度T2[m]_dを下回る範囲である。温度T2[m]_dは温度T1[m]_dを下回る。第3範囲R33[m]_dは、第1範囲R31[m]_dと第2範囲R32[m]_dとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R33[m]_dは、温度T1[m]_dと温度T2[m]_dとの間の範囲である。
【0091】
温度T[m]が第1範囲R31[m]_d内の数値である場合、候補値設定部613は、候補値Z3[m]_dを第1値z31[m]_dに設定する。他方、温度T[m]が第2範囲R32[m]_d内の数値である場合、候補値設定部613は、候補値Z3[m]_dを第2値z32[m]_dに設定する。第1値z31[m]_dは、0を僅かに下回る固定値である。第2値z32[m]_dは、第1値z31[m]_dを上回る固定値である。
【0092】
温度T[m]が第3範囲R33[m]_d内の数値である場合、候補値設定部613は、候補値Z3[m]_dを、第1値z31[m]_dと第2値z32[m]_dとの間で温度T[m]に応じて変化する第3値z33[m]_dに設定する。第3値z33[m]_dは、温度T[m]に対して所定の勾配で単調減少する。
【0093】
他方、図17は、蓄電装置31が放電により吸熱する場合における温度T[m]と候補値Z3[m]_dとの関係である。図17に例示される通り、温度T[m]の範囲は、第1範囲R31[m]_dと第2範囲R32[m]_dと第3範囲R33[m]_dとに区分される。第1範囲R31[m]_dは、所定の温度T1[m]_dを下回る範囲である。第2範囲R32[m]_dは、所定の温度T2[m]_dを上回る範囲である。温度T2[m]_dは温度T1[m]_dを上回る。第3範囲R33[m]_dは、第1範囲R31[m]_dと第2範囲R32[m]_dとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R33[m]_dは、温度T1[m]_dと温度T2[m]_dとの間の範囲である。
【0094】
温度T[m]が第1範囲R31[m]_d内の数値である場合、候補値設定部613は、候補値Z3[m]_dを第1値z31[m]_dに設定する。他方、温度T[m]が第2範囲R32[m]_d内の数値である場合、候補値設定部613は、候補値Z3[m]_dを第2値z32[m]_dに設定する。第1値z31[m]_dは、0を僅かに下回る固定値である。第2値z32[m]_dは、第1値z31[m]_dを上回る固定値である。
【0095】
温度T[m]が第3範囲R33[m]_d内の数値である場合、候補値設定部613は、候補値Z3[m]_dを、第1値z31[m]_dと第2値z32[m]_dとの間で温度T[m]に応じて変化する第3値z33[m]_dに設定する。第3値z33[m]_dは、温度T[m]に対して所定の勾配で単調増加する。
【0096】
以上の通り、第2実施形態においては、蓄電装置31の温度T[m]に応じて候補値Z3[m]_dが設定される。したがって、蓄電装置31の温度T[m]の観点から制限値L[m]_dを適切に設定できる。また、温度T[m]が第3範囲R33[m]_d内の数値である場合、候補値Z3[m]_dは第1値z31[m]_dと第2値z32[m]_dとの間で温度T[m]に応じて変化する。したがって、候補値Z3[m]_dが第1値z31[m]_dおよび第2値z32[m]_dの何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置31の温度T[m]に応じた制限値L[m]_dの急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。
【0097】
なお、候補値Z3[m]_dの最小値である第1値z31[m]_dは、蓄電装置31の充電を指示する負数に設定される。したがって、蓄電装置31の温度T[m]が第1範囲R31[m]_d内にある状態では、蓄電装置31の微小な充電が実行され、結果的に温度T[m]を特定の範囲に復帰させることが可能である。
【0098】
[第2設定部62]
図13の第2設定部62は、候補値設定部621と候補値設定部622と候補値設定部623と候補値選択部624とを含む。候補値設定部621は、蓄電装置31の電圧V[m]に応じて候補値Z1[m]_cを設定する。候補値設定部622は、蓄電装置31の充電率S[m]に応じて候補値Z2[m]_cを設定する。候補値設定部623は、蓄電装置31の温度T[m]に応じて候補値Z3[m]_cを設定する。なお、候補値Z1[m]_cは「第1候補値」の一例であり、候補値Z2[m]_cは「第2候補値」の一例であり、候補値Z3[m]_cは「第3候補値」の一例である。
【0099】
候補値選択部624は、複数の候補値Z[m]_cから制限値L[m]_cを選択する。複数の候補値Z[m]_cは、候補値Z1[m]_cと候補値Z2[m]_cと候補値Z3[m]_cとに加えて、候補値Z4[m]_cと候補値Z5[m]_cとを含む。候補値Z4[m]_cは、蓄電ユニットU[m]のうち交直変換装置24の直流端における充電側の容量である。候補値Z5[m]_cは、蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31の仕様に応じた充電側の要求値である。具体的には、候補値選択部624は、複数の候補値Z[m]_cのうちの最大値を制限値L[m]_cとして選択する。
【0100】
以上の説明から理解される通り、制限値設定部522は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について、当該蓄電ユニットU[m]の相異なる状態に関する複数の候補値Z[m]_cから制限値L[m]_cを選択する。したがって、蓄電ユニットU[m]の状態に関する複数の観点から制限値L[m]_cを適切に設定できる。候補値Z1[m]_cと候補値Z2[m]_cと候補値Z3[m]_cとの設定について以下に詳述する。
【0101】
[候補値設定部621による候補値Z1[m]_cの設定]
図18は、候補値設定部621が電圧V[m]に応じて候補値Z1[m]_cを設定する動作の説明図である。電圧V[m]と候補値Z1[m]_cとの関係が、図18に例示されている。なお、電圧V[m]と候補値Z1[m]_cとの関係に間する各要素(R11[m]_c,R12[m]_c,R13[m]_c,V1[m]_c,V2[m]_c,z11[m]_c,z12[m]_c,z13[m]_c)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0102】
図18に例示される通り、電圧V[m]の範囲は、第1範囲R11[m]_cと第2範囲R12[m]_cと第3範囲R13[m]_cとに区分される。第1範囲R11[m]_cは、所定の電圧V1[m]_cを上回る範囲である。第2範囲R12[m]_cは、所定の電圧V2[m]_cを下回る範囲である。電圧V2[m]_cは電圧V1[m]_cを下回る。第3範囲R13[m]_cは、第1範囲R11[m]_cと第2範囲R12[m]_cとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R13[m]_cは、電圧V1[m]_cと電圧V2[m]_cとの間の範囲である。
【0103】
電圧V[m]が第1範囲R11[m]_c内の数値である場合、候補値設定部621は、候補値Z1[m]_cを第1値z11[m]_cに設定する。他方、電圧V[m]が第2範囲R12[m]_c内の数値である場合、候補値設定部621は、候補値Z1[m]_cを第2値z12[m]_cに設定する。第1値z11[m]_cは、第2値z12[m]_cを上回る固定値である。具体的には、第1値z11[m]_cは、0を僅かに上回る正数に設定される。他方、第2値z12[m]_cは、電圧V[m]に応じて変化する負数の可変値である。具体的には、第2値z12[m]_cは、電圧V[m]に対して所定の勾配で単調減少する。なお、図18の第2値z12[m]_cは、例えば、電圧V[m]と蓄電ユニットU[m]の充電側の電流制限値との乗算により算定される。したがって、電圧V[m]が第2範囲R12[m]_c内の数値である場合、蓄電ユニットU[m]の充電側の電流制限値を超過しないように候補値Z1[m]_c(さらには制限値L[m]_c)を設定できる。
【0104】
電圧V[m]が第3範囲R13[m]_c内の数値である場合、候補値設定部621は、候補値Z1[m]_cを、第1値z11[m]_cと第2値z12[m]_cとの間で電圧V[m]に応じて変化する第3値z13[m]_cに設定する。第3値z13[m]_cは、電圧V[m]に対して所定の勾配で単調増加する。電圧V[m]に対する第3値z13[m]_cの勾配は、電圧V[m]に対する第2値z12[m]_cの勾配を上回る。
【0105】
以上の通り、第2実施形態においては、蓄電装置31の電圧V[m]に応じて候補値Z1[m]_cが設定される。したがって、蓄電装置31の電圧V[m]の観点から制限値L[m]_cを適切に設定できる。また、電圧V[m]が第3範囲R13[m]_c内の数値である場合、候補値Z1[m]_cは第1値z11[m]_cと第2値z12[m]_cとの間で電圧V[m]に応じて変化する。したがって、候補値Z1[m]_cが第1値z11[m]_cおよび第2値z12[m]_cの何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置31の電圧V[m]に応じた制限値L[m]_cの急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。また、電圧V[m]が第2範囲R12[m]_c内の数値である場合の候補値Z1[m]_c(第2値z12[m]_c)を、電圧V[m]と蓄電ユニットU[m]の充電側の電流制限値との乗算により算定する構成によれば、蓄電ユニットU[m]の充電側の電流制限値を超過しないように候補値Z1[m]_c(ひいては制限値L[m]_c)を設定できる。
【0106】
なお、候補値Z1[m]_cの最大値である第1値z11[m]_cは、蓄電装置31の放電を指示する正数に設定される。したがって、蓄電装置31の電圧V[m]が第1範囲R11[m]_c内に上昇した状態では、蓄電装置31の微小な放電が実行され、結果的に電圧V[m]を特定の範囲まで低下させることが可能である。
【0107】
[候補値設定部622による候補値Z2[m]_cの設定]
図19は、候補値設定部622が充電率S[m]に応じて候補値Z2[m]_cを設定する動作の説明図である。充電率S[m]と候補値Z2[m]_cとの関係が、図19に例示されている。なお、電圧V[m]と候補値Z2[m]_cとの関係に間する各要素(R21[m]_c,R22[m]_c,R23[m]_c,S1[m]_c,S2[m]_c,z21[m]_c,z22[m]_c,z23[m]_c)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0108】
図19に例示される通り、充電率S[m]の範囲は、第1範囲R21[m]_cと第2範囲R22[m]_cと第3範囲R23[m]_cとに区分される。第1範囲R21[m]_cは、所定の充電率S1[m]_cを上回る範囲である。第2範囲R22[m]_cは、所定の充電率S2[m]_cを下回る範囲である。充電率S2[m]_cは充電率S1[m]_cを下回る。第3範囲R23[m]_cは、第1範囲R21[m]_cと第2範囲R22[m]_cとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R23[m]_cは、充電率S1[m]_cと充電率S2[m]_cとの間の範囲である。
【0109】
充電率S[m]が第1範囲R21[m]_c内の数値である場合、候補値設定部622は、候補値Z2[m]_cを第1値z21[m]_cに設定する。他方、充電率S[m]が第2範囲R22[m]_c内の数値である場合、候補値設定部622は、候補値Z2[m]_cを第2値z22[m]_cに設定する。第1値z21[m]_cは、0を僅かに上回る固定値である。第2値z22[m]_cは、第1値z21[m]_cを下回る固定値である。
【0110】
充電率S[m]が第3範囲R23[m]_c内の数値である場合、候補値設定部622は、候補値Z2[m]_cを、第1値z21[m]_cと第2値z22[m]_cとの間で充電率S[m]に応じて変化する第3値z23[m]_cに設定する。第3値z23[m]_cは、充電率S[m]に対して所定の勾配で単調増加する。
【0111】
以上の通り、第2実施形態においては、蓄電装置31の充電率S[m]に応じて候補値Z2[m]_cが設定される。したがって、蓄電装置31の充電率S[m]の観点から制限値L[m]_cを適切に設定できる。また、充電率S[m]が第3範囲R23[m]_c内の数値である場合、候補値Z2[m]_cは第1値z21[m]_cと第2値z22[m]_cとの間で充電率S[m]に応じて変化する。したがって、候補値Z2[m]_cが第1値z21[m]_cおよび第2値z22[m]_cの何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置31の充電率S[m]に応じた制限値L[m]_cの急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。
【0112】
なお、候補値Z2[m]_cの最大値である第1値z21[m]_cは、蓄電装置31の放電を指示する正数に設定される。したがって、蓄電装置31の電圧V[m]が第1範囲R21[m]_c内に上昇した状態では、蓄電装置31の微小な放電が実行され、結果的に電圧V[m]を特定の範囲まで低下させることが可能である。
【0113】
[候補値設定部623による候補値Z3[m]_cの設定]
図20は、候補値設定部623が温度T[m]に応じて候補値Z3[m]_cを設定する動作の説明図である。温度T[m]と候補値Z3[m]_cとの関係が、図20に例示されている。なお、電圧V[m]と候補値Z3[m]_cとの関係に間する各要素(R31[m]_c,R32[m]_c,R33[m]_c,T1[m]_c,T2[m]_c,z31[m]_c,z32[m]_c,z33[m]_c)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。また、図20においては、充電により吸熱する特性の蓄電装置31が想定されている。
【0114】
図20に例示される通り、温度T[m]の範囲は、第1範囲R31[m]_cと第2範囲R32[m]_cと第3範囲R33[m]_cとに区分される。第1範囲R31[m]_cは、所定の温度T1[m]_cを下回る範囲である。第2範囲R32[m]_cは、所定の温度T2[m]_cを上回る範囲である。温度T2[m]_cは温度T1[m]_cを上回る。第3範囲R33[m]_cは、第1範囲R31[m]_cと第2範囲R32[m]_cとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R33[m]_cは、温度T1[m]_cと温度T2[m]_cとの間の範囲である。
【0115】
温度T[m]が第1範囲R31[m]_c内の数値である場合、候補値設定部623は、候補値Z3[m]_cを第1値z31[m]_cに設定する。他方、温度T[m]が第2範囲R32[m]_c内の数値である場合、候補値設定部623は、候補値Z3[m]_cを第2値z32[m]_cに設定する。第1値z31[m]_cは、0を僅かに上回る固定値である。第2値z32[m]_cは、第1値z31[m]_cを下回る固定値である。
【0116】
温度T[m]が第3範囲R33[m]_c内の数値である場合、候補値設定部623は、候補値Z3[m]_cを、第1値z31[m]_cと第2値z32[m]_cとの間で温度T[m]に応じて変化する第3値z33[m]_cに設定する。第3値z33[m]_cは、温度T[m]に対して所定の勾配で単調減少する。
【0117】
図21は、蓄電装置31が充電により発熱する場合における温度T[m]と候補値Z3[m]_cとの関係である。図21に例示される通り、温度T[m]の範囲は、第1範囲R31[m]_cと第2範囲R32[m]_cと第3範囲R33[m]_cとに区分される。第1範囲R31[m]_cは、所定の温度T1[m]_cを上回る範囲である。第2範囲R32[m]_cは、所定の温度T2[m]_cを下回る範囲である。温度T2[m]_cは温度T1[m]_cを下回る。第3範囲R33[m]_cは、第1範囲R31[m]_cと第2範囲R32[m]_cとの間の範囲である。すなわち、第3範囲R33[m]_cは、温度T1[m]_cと温度T2[m]_cとの間の範囲である。
【0118】
温度T[m]が第1範囲R31[m]_c内の数値である場合、候補値設定部623は、候補値Z3[m]_cを第1値z31[m]_cに設定する。他方、温度T[m]が第2範囲R32[m]_c内の数値である場合、候補値設定部623は、候補値Z3[m]_cを第2値z32[m]_cに設定する。第1値z31[m]_cは、0を僅かに上回る固定値である。第2値z32[m]_cは、第1値z31[m]_cを下回る固定値である。
【0119】
温度T[m]が第3範囲R33[m]_c内の数値である場合、候補値設定部623は、候補値Z3[m]_cを、第1値z31[m]_cと第2値z32[m]_cとの間で温度T[m]に応じて変化する第3値z33[m]_cに設定する。第3値z33[m]cは、温度T[m]に対して所定の勾配で単調増加する。
【0120】
以上の通り、第2実施形態においては、蓄電装置31の温度T[m]に応じて候補値Z3[m]_cが設定される。したがって、蓄電装置31の温度T[m]の観点から制限値L[m]_cを適切に設定できる。また、温度T[m]が第3範囲R33[m]_c内の数値である場合、候補値Z3[m]_cは第1値z31[m]_cと第2値z32[m]_cとの間で温度T[m]に応じて変化する。したがって、候補値Z3[m]_cが第1値z31[m]_cおよび第2値z32[m]_cの何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置31の温度T[m]に応じた制限値L[m]_cの急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。
【0121】
なお、候補値Z3[m]_cの最大値である第1値z31[m]_cは、蓄電装置31の放電を指示する正数に設定される。したがって、蓄電装置31の温度T[m]が第1範囲R31[m]_c内にある状態では、蓄電装置31の微小な放電が実行され、結果的に温度T[m]を特定の範囲に復帰させることが可能である。
【0122】
なお、状態データD[m]の各要素(電圧V[m]、充電率S[m]または温度T[m])と候補値Z[m]との関係は、図14から図21に例示した関係に限定されない。例えば、状態データD[m]の各要素に対して候補値Z[m]が曲線状に変化する関係が成立してもよい。
【0123】
3.第3実施形態
第3実施形態においては、配分係数K[m]を設定する係数設定部521の動作が第1実施形態とは相違する。係数設定部521以外の要素の構成および動作は第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0124】
図22および図23は、第3実施形態における係数設定部521の動作の説明図である。第3実施形態の係数設定部521は、第1処理Sb1と第2処理Sb2と第3処理Sb3とを実行することで各蓄電ユニットU[m]の配分係数K[m]を設定する。
【0125】
第1処理Sb1は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について加重値α[m]を設定する処理である。加重値α[m]は、配分係数K[m]の基礎となる基準値である。第3実施形態においては、各加重値α[m]が共通の正数に設定された場合を想定する。ただし、各加重値α[m]は相違してもよい。
【0126】
第2処理Sb2は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について、当該蓄電ユニットU[m]の運転ワットアワー容量B[m]に応じた補正値β[m]を設定する処理である。具体的には、第2処理Sb2は、処理Sb21と処理Sb22とを含む。
【0127】
処理Sb21は、各蓄電ユニットU[m]の運転ワットアワー容量B[m]を算定する処理である。運転ワットアワー容量B[m]は、蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の容量に相当する電力量(Wh)である。図23に例示される通り、運転ワットアワー容量B[m]は蓄電ユニットU[m]毎に相違し得る。
【0128】
図24は、運転ワットアワー容量B[m]の説明図である。図24には、蓄電ユニットU[m]の全ワットアワー容量B_all[m]が図示されている。全ワットアワー容量B_all[m]は、蓄電ユニットU[m]において論理的に使用可能な全容量である。具体的には、全ワットアワー容量B_all[m]は、蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の初期ワットアワー容量B0[m]と健全性H[m]とにより算定される。
【0129】
初期ワットアワー容量B0[m]は、蓄電装置31の初期的なワットアワー容量(すなわち無劣化の蓄電装置31に想定されるワットアワー容量の最大値)である。健全性H[m]は、初期ワットアワー容量B0[m]に対する現在のワットアワー容量の比率(SOH:State of Health)である。係数設定部521は、例えば、健全性H[m]と初期ワットアワー容量B0[m]との乗算により全ワットアワー容量B_all[m]を算定する(B_all[m]=H[m]×B0[m])。
【0130】
また、蓄電装置31は、所定の範囲(以下「運用充電率範囲Rs[m]」という)内の充電率S[m]により運用される。すなわち、運用充電率範囲Rs[m]は、蓄電装置31を使用可能な充電率S[m]の仕様上の範囲である。具体的には、運用充電率範囲Rs[m]は、充電率S[m]の最小値Smin[m]と最大値Smax[m]との間の範囲である。図24に例示される通り、運転ワットアワー容量B[m]は、充電率S[m]の運用充電率範囲Rs[m]に対応する。係数設定部521は、第2処理Sb2の処理Sb21において、以下の数式(4)の演算により運転ワットアワー容量B[m]を算定する。
【数4】
【0131】
図22および図23における第2処理Sb2の処理Sb22は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について、当該蓄電ユニットU[m]の運転ワットアワー容量B[m]に応じて補正値β[m]を算定する処理である。具体的には、係数設定部521は、複数の蓄電ユニットU[m]にわたる運転ワットアワー容量B[m]の合計値ΣB[m]に対する運転ワットアワー容量B[m]の比率を補正値β[m]として算定する(β[m]=B[m]/ΣB[m])。ただし、補正値β[m]を算定する方法は以上の例示に限定されない。
【0132】
第3処理Sb3は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について、加重値α[m]と補正値β[m]とに応じて配分係数K[m]を算定する処理である。具体的には、加重値α[m]と補正値β[m]との乗算値が配分係数K[m]として算定される(K[m]=α[m]×β[m])。ただし、配分係数K[m]を算定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、加重値α[m]と補正値β[m]との加重和が配分係数K[m]として算定される構成、または、加重値α[m]と補正値β[m]とを含む所定の演算により配分係数K[m]が算定される構成も想定される。また、補正値β[m]の利用は省略されてもよい。例えば、加重値α[m]のみを適用した所定の演算により配分係数K[m]が算定されてもよい。
【0133】
以上の説明の通り、第3実施形態の係数設定部521は、各蓄電ユニットU[m]の運転ワットアワー容量B[m]に応じて配分係数K[m]を設定する。例えば、運転ワットアワー容量B[m]が大きいほど配分係数K[m]が大きい数値に設定される。第1実施形態の説明から理解される通り、概略的には、配分係数K[m]が大きいほど各蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]は大きい数値となる。
【0134】
配分係数K[m]が各蓄電ユニットU[m]の運転ワットアワー容量B[m]に依存しない形態(以下「対比例」という)においては、例えば、運転ワットアワー容量B[m]が小さい蓄電装置31の配分係数K[m]が大きい数値に設定される可能性がある。したがって、対比例においては、有効電力配分値P[m]に応じた放電または充電に必要な時間、または蓄電装置31の充電率が、蓄電ユニットU[m]毎に顕著に相違し得る。以上のように各蓄電ユニットU[m]の間で蓄電装置31の放電または充電の条件が顕著に相違すると、蓄電装置31の特性劣化の進行度が蓄電ユニットU[m]毎に相違するという課題がある。
【0135】
第3実施形態においては、前述の通り、各蓄電ユニットU[m]の運転ワットアワー容量B[m]に応じて配分係数K[m]が設定される。したがって、各蓄電ユニットU[m]の間における放電または充電の時間または蓄電装置31の充電率のばらつきが抑制される。したがって、第3実施形態によれば、対比例と比較して、蓄電装置31の特性劣化の進行度が蓄電ユニットU[m]間でばらつくことを抑制できる。
【0136】
4.第4実施形態
第3実施形態においては、各加重値α[m]が共通の正数に設定された場合を便宜的に例示した。第4実施形態は、第3実施形態において係数設定部521が加重値α[m]を設定する第1処理Sb1の具体例である。
【0137】
図25は、第4実施形態における第1処理Sb1の説明図である。なお、図25には、前述の運用充電率範囲Rs[m]が例示されている。前述の通り、運用充電率範囲Rs[m]は、充電率S[m]の最小値Smin[m]と最大値Smax[m]との間の範囲である。図25に例示される通り、第4実施形態の第1処理Sb1は、正規化処理Sb11と偏差算定処理Sb12と加重値設定処理Sb13とを含む。
【0138】
蓄電装置31の運用充電率範囲Rs[m]は蓄電ユニットU[m]毎に相違し得る。具体的には、最小値Smin[m]および最大値Smax[m]の一方または双方が蓄電ユニットU[m]毎に相違し得る。正規化処理Sb11は、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31の充電率S[m]を、所定の数値範囲(以下「標準範囲Rs_n」という)内の充電率Sn[m]に正規化する処理である。
【0139】
標準範囲Rs_nは、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通する数値範囲である。具体的には、標準範囲Rs_nは、最小値0から最大値1までの範囲である。すなわち、正規化後の充電率Sn[m]は、各蓄電ユニットU[m]の運用充電率範囲Rs[m]に関わらず、最小値0から最大値1までの標準範囲Rs_n内の数値となる。
【0140】
具体的には、正規化処理Sb11において、係数設定部521は、以下の数式(5)の演算により正規化後の充電率Sn[m]を算定する。
【数5】
【0141】
偏差算定処理Sb12は、正規化処理Sb11による正規化後の充電率Sn[m]と基準値Srefとの偏差ΔS[m]を算定する処理である(ΔS[m]=Sn[m]-Sref)。基準値Srefは、例えば複数の蓄電ユニットU[m]にわたる充電率Sn[m]の代表値である。具体的には、充電率Sn[m]の平均値(例えば単純平均)が基準値Srefとして偏差ΔS[m]の算定に利用される。なお、偏差ΔS[m]は「第1偏差」の一例である。
【0142】
加重値設定処理Sb13は、偏差算定処理Sb12により算定した偏差ΔS[m]に応じて加重値α[m]を設定する処理である。
【0143】
偏差ΔS[m]が大きい蓄電ユニットU[m]ほど、他の蓄電ユニットU[m]と比較して充電率Sn[m]が相対的に高い。したがって、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)には、偏差ΔS[m]が大きい蓄電ユニットU[m]ほど、優先的に放電に割当てるべきである。他方、配分係数K[m]が大きいほど(加重値α[m]が大きいほど)、各蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]は大きい数値となる。以上の事情を考慮して、第4実施形態の係数設定部521は、偏差ΔS[m]が大きいほど、加重値α[m]を大きい数値に設定する。
【0144】
他方、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)には、偏差ΔS[m]が小さい蓄電ユニットU[m]ほど、優先的に充電に割当てるべきである。他方、配分係数K[m]が大きいほど(加重値α[m]が大きいほど)、各蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]は大きい数値となる。以上の事情を考慮して、第4実施形態の係数設定部521は、偏差ΔS[m]が小さいほど、加重値α[m]を大きい数値に設定する。
【0145】
以上の説明の通り、第4実施形態においては、各蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の充電率S[m]に応じて加重値α[m](ひいては配分係数K[m])が設定されるから、各蓄電装置31の充電率S[m]が相互に近付くように各配分係数K[m]を設定できる。したがって、各蓄電ユニットU[m]の出力が蓄電装置31の充電率S[m]に起因して制限される可能性を低減できる。すなわち、蓄電システム30全体の蓄電容量を有効に利用できる。
【0146】
係数設定部521が偏差ΔS[m]に応じて加重値α[m]を算定する方法として、第4実施形態においては、以下に例示する態様4Aおよび4Bが採用され得る。
【0147】
[態様4A]
図26および図27は、第4実施形態の態様4Aにおいて係数設定部521が加重値α[m]を算定する処理の説明図である。具体的には、充電率S[m]の偏差ΔS[m]と加重値α[m]との関係が図26および図27には図示されている。
【0148】
図26は、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)における加重値α[m]の説明図である。図26に例示される通り、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合、係数設定部521は、概略的には、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)に設定する。関数値Fa(ΔS)は、偏差ΔS[m]に応じた可変値である。偏差ΔS[m]が大きいほど関数値Fa(ΔS)は大きい数値に設定される。なお、関数値Fa(ΔS)は、「第2値」の一例である。
【0149】
図26には、閾値Y1および閾値Y2が図示されている。閾値Y1および閾値Y2は正数である。閾値Y1は閾値Y2を上回る(Y1>Y2)。係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y1を下回る数値から閾値Y1を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)から最大値1(第1値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔS[m]が大きい蓄電ユニットU[m]が優先的に放電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y2を上回る数値から数値Y2を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)に設定する。
【0150】
また、図26には、閾値Y3および閾値Y4が図示されている。閾値Y3および閾値Y4は負数である。閾値Y3は閾値Y4を下回る(Y3<Y4)。係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y3を上回る数値から閾値Y3を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)から最小値0(第2値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔS[m]が小さい蓄電ユニットU[m]の放電が優先的に回避されるように、各有効電力配分値P[m]が設定される。また、係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y4を下回る数値から数値Y4を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)に設定する。
【0151】
図27は、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)における加重値α[m]の説明図である。図27に例示される通り、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合、係数設定部521は、概略的には、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)に設定する。関数値Fa(ΔS)は、偏差ΔS[m]に応じた可変値である。偏差ΔS[m]が大きいほど関数値Fa(ΔS)は小さい数値に設定される。
【0152】
係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y1を下回る数値から閾値Y1を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)から最小値0(第1値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔS[m]が大きい蓄電ユニットU[m]の充電が優先的に回避されるように、各有効電力配分値P[m]が設定される。また、係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y2を上回る数値から数値Y2を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)に設定する。
【0153】
係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y3を上回る数値から閾値Y3を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)から最大値1(第2値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔS[m]が小さい蓄電ユニットU[m]が優先的に充電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。また、係数設定部521は、偏差ΔS[m]が閾値Y4を下回る数値から数値Y4を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔS)に設定する。
【0154】
以上の通り、態様4Aにおいては、偏差ΔS[m]と加重値α[m]との関係がヒステリシス特性を示す。したがって、偏差ΔS[m]が各閾値(Y1,Y2,Y3,Y4)の近傍で変動した場合でも、加重値α[m]について過度に頻繁な変動を抑制できる。なお、偏差ΔS[m]に関する各閾値(Y1,Y2,Y3,Y4)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0155】
[態様4B]
図28および図29は、第4実施形態の態様4Bにおいて係数設定部521が加重値α[m]を算定する処理の説明図である。具体的には、充電率S[m]の偏差ΔS[m]と加重値α[m]との関係Fb(ΔS)が図28および図29には図示されている。
【0156】
図28は、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)における加重値α[m]の説明図である。図28に例示される通り、関係Fb(ΔS)は、偏差ΔS[m]の所定の正数s1と加重値α[m]の最大値1とに対応する地点を通過する直線で表現される。係数設定部521は、偏差ΔS[m]に対して関係Fb(ΔS)にある数値を加重値α[m]として設定する。
【0157】
また、係数設定部521は、合計直流電力指令値Cpに応じて関係Fb(ΔS)を決定する。具体的には、係数設定部521は、合計直流電力指令値Cpの絶対値|Cp|に応じて関係Fb(ΔS)の勾配を変化させる。例えば、絶対値|Cp|が大きいほど関係Fb(ΔS)の勾配は減少する。具体的には、関係Fb(ΔS)は、関係F1と関係F2との間で絶対値|Cp|に応じて変化する。
【0158】
関係Fb(ΔS)が関係F1に設定された状態では、偏差ΔS[m]が負数s2から正数s1までの広い範囲内にある蓄電ユニットU[m]について、加重値α[m]が正数に設定される。加重値α[m]が正数に設定されることで配分係数K[m]も正数に設定されるから、多数の蓄電ユニットU[m]が放電を実行するように各有効電力配分値P[m]が設定される。正数s1および負数s2は任意の数値である。
【0159】
関係Fb(ΔS)が関係F2に設定された状態では、偏差ΔS[m]が正数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が正数に設定される。他方、偏差ΔS[m]が負数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が0に設定されるから、配分係数K[m]も0に設定される。すなわち、偏差ΔS[m]が正数の範囲内にある一部の蓄電ユニットU[m]が優先的に放電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。
【0160】
図29は、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)における加重値α[m]の説明図である。図29に例示される通り、関係Fb(ΔS)は、偏差ΔS[m]の所定の負数s2と加重値α[m]の最大値1とに対応する地点を通過する直線で表現される。係数設定部521は、偏差ΔS[m]に対して関係Fb(ΔS)にある数値を加重値α[m]として設定する。
【0161】
係数設定部521は、合計直流電力指令値Cpに応じて関係Fb(ΔS)を決定する。具体的には、係数設定部521は、合計直流電力指令値Cpの絶対値|Cp|に応じて関係Fb(ΔS)の勾配を変化させる。例えば、絶対値|Cp|が大きいほど関係Fb(ΔS)の勾配は減少する。具体的には、関係Fb(ΔS)は、関係F1と関係F2との間で絶対値|Cp|に応じて変化する。
【0162】
関係Fb(ΔS)が関係F1に設定された状態では、偏差ΔS[m]が負数s2から正数s1までの広い範囲内にある蓄電ユニットU[m]について、加重値α[m]が正数に設定される。加重値α[m]が正数に設定されることで配分係数K[m]も正数に設定されるから、多数の蓄電ユニットU[m]が充電を実行するように各有効電力配分値P[m]が設定される。
【0163】
関係Fb(ΔS)が関係F2に設定された状態では、偏差ΔS[m]が負数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が正数に設定される。他方、偏差ΔS[m]が正数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が0に設定されるから、配分係数K[m]も0に設定される。すなわち、偏差ΔS[m]が負数の範囲内にある一部の蓄電ユニットU[m]が優先的に充電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。
【0164】
以上の説明の通り、態様4Bによれば、偏差ΔS[m]と加重値α[m]との関係Fb(ΔS)が合計直流電力指令値Cpに応じて決定される。したがって、偏差ΔS[m]と加重値α[m]との関係が固定である形態と比較して、合計直流電力指令値Cpを複数の蓄電ユニットU[m]に対して適切に配分できる。なお、関係Fb(ΔS)を合計直流電力指令値Cpに応じて変化させる構成は省略されてもよい。すなわち、関係Fb(ΔS)は、例えば関係F1と関係F2との間の固定的な関係でもよい。
【0165】
5.第5実施形態
第3実施形態においては、各加重値α[m]が共通の正数に設定された場合を便宜的に例示した。第5実施形態は、第4実施形態と同様に、第3実施形態において係数設定部521が加重値α[m]を設定する第1処理Sb1の具体例である。
【0166】
図30は、第5実施形態における第1処理Sb1の説明図である。図30に例示される通り、第5実施形態の第1処理Sb1は、第4実施形態と同様に、正規化処理Sb11と偏差算定処理Sb12と加重値設定処理Sb13とを含む。
【0167】
図30には、蓄電装置31の運用温度範囲Rt[m]が例示されている。運用温度範囲Rt[m]は、蓄電装置31を使用可能な温度T[m]の仕様上の範囲である。具体的には、運用温度範囲Rt[m]は、温度T[m]の最小値Tmin[m]と最大値Tmax[m]との間の範囲である。
【0168】
蓄電装置31の運用温度範囲Rt[m]は蓄電ユニットU[m]毎に相違し得る。具体的には、最小値Tmin[m]および最大値Tmax[m]の一方または双方が蓄電ユニットU[m]毎に相違し得る。正規化処理Sb11は、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31の温度T[m]を、所定の数値範囲(以下「標準範囲Rt_n」という)内の温度Tn[m]に正規化する処理である。
【0169】
標準範囲Rt_nは、第4実施形態の標準範囲Rs_nと同様に、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通する数値範囲である。正規化処理Sb11において、係数設定部521は、以下の数式(6)の演算により正規化後の温度Tn[m]を算定する。
【数6】
【0170】
偏差算定処理Sb12は、正規化処理Sb11による正規化後の温度Tn[m]と基準値Trefとの偏差ΔT[m]を算定する処理である(ΔT[m]=Tn[m]-Tref)。基準値Trefは、例えば複数の蓄電ユニットU[m]にわたる温度Tn[m]の代表値(例えば平均値)である。なお、偏差ΔT[m]は「第2偏差」の一例である。
【0171】
加重値設定処理Sb13は、偏差算定処理Sb12により算定した偏差ΔT[m]に応じて加重値α[m]を設定する処理である。なお、以下の説明においては、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31が放電により吸熱し、充電により放熱する場合を想定する。すなわち、蓄電装置31の温度T[m]は、放電により低下し、充電により上昇する。
【0172】
偏差ΔT[m]が大きい蓄電ユニットU[m]ほど、他の蓄電ユニットU[m]と比較して温度Tn[m]が相対的に高い。したがって、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)には、偏差ΔT[m]が大きい蓄電ユニットU[m]ほど、優先的に放電に割当てることで温度T[m]を低下させるべきである。以上の事情を考慮して、第5実施形態の係数設定部521は、偏差ΔT[m]が大きいほど、加重値α[m]を大きい数値に設定する。
【0173】
他方、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)には、偏差ΔT[m]が小さい蓄電ユニットU[m]ほど、優先的に充電に割当てることで温度T[m]を上昇させるべきである。以上の事情を考慮して、第5実施形態の係数設定部521は、偏差ΔT[m]が小さいほど、加重値α[m]を大きい数値に設定する。
【0174】
以上の説明の通り、第5実施形態においては、各蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の温度T[m]に応じて加重値α[m](ひいては配分係数K[m])が設定されるから、各蓄電装置31の温度T[m]が相互に近付くように各配分係数K[m]を設定できる。したがって、各蓄電ユニットU[m]の出力が蓄電装置31の温度T[m]のばらつきに起因して制限される可能性を低減できる。すなわち、蓄電システム30全体の蓄電容量を有効に利用できる。
【0175】
係数設定部521が偏差ΔT[m]に応じて加重値α[m]を算定する方法として、第5実施形態においては、以下に例示する態様5Aおよび態様5Bが採用され得る。
【0176】
[態様5A]
図31および図32は、第5実施形態の態様5Aにおいて係数設定部521が加重値α[m]を算定する処理の説明図である。具体的には、温度T[m]の偏差ΔT[m]と加重値α[m]との関係が図31および図32には図示されている。
【0177】
図31は、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)における加重値α[m]の説明図である。図31に例示される通り、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合、係数設定部521は、概略的には、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)に設定する。関数値Fa(ΔT)は、偏差ΔT[m]に応じた可変値である。偏差ΔT[m]が大きいほど関数値Fa(ΔT)は大きい数値に設定される。なお、関数値Fa(ΔT)は、「第2値」の一例である。
【0178】
係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y1を下回る数値から閾値Y1を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)から最大値1(第1値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔT[m]が大きい蓄電ユニットU[m]が優先的に放電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y2を上回る数値から数値Y2を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)に設定する。
【0179】
係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y3を上回る数値から閾値Y3を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)から最小値0(第2値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔT[m]が小さい蓄電ユニットU[m]の放電が優先的に回避されるように、各有効電力配分値P[m]が設定される。また、係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y4を下回る数値から数値Y4を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)に設定する。
【0180】
図32は、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)における加重値α[m]の説明図である。図32に例示される通り、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合、係数設定部521は、概略的には、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)に設定する。関数値Fa(ΔT)は、偏差ΔT[m]に応じた可変値である。偏差ΔT[m]が大きいほど関数値Fa(ΔT)は小さい数値に設定される。
【0181】
係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y1を下回る数値から閾値Y1を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)から最小値0(第1値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔT[m]が大きい蓄電ユニットU[m]の充電が優先的に回避されるように、各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y2を上回る数値から数値Y2を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)に設定する。
【0182】
また、係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y3を上回る数値から閾値Y3を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)から最大値1(第2値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔT[m]が小さい蓄電ユニットU[m]が優先的に充電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、係数設定部521は、偏差ΔT[m]が閾値Y4を下回る数値から数値Y4を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔT)に設定する。
【0183】
以上の通り、態様5Aにおいては、偏差ΔT[m]と加重値α[m]との関係がヒステリシス特性を示す。したがって、偏差ΔT[m]が各閾値(Y1,Y2,Y3,Y4)の近傍で変動した場合でも、加重値α[m]について過度に頻繁な変動を抑制できる。なお、偏差ΔT[m]に関する各閾値(Y1,Y2,Y3,Y4)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0184】
[態様5B]
図33および図34は、第5実施形態の態様5Bにおいて係数設定部521が加重値α[m]を算定する処理の説明図である。具体的には、温度T[m]の偏差ΔT[m]と加重値α[m]との関係Fb(ΔT)が図33および図34には図示されている。
【0185】
図33は、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)における加重値α[m]の説明図である。図33に例示される通り、関係Fb(ΔT)は、偏差ΔT[m]の所定の正数s1と加重値α[m]の最大値1とに対応する地点を通過する直線で表現される。係数設定部521は、偏差ΔT[m]に対して関係Fb(ΔT)にある数値を加重値α[m]として設定する。
【0186】
また、係数設定部521は、合計直流電力指令値Cpに応じて関係Fb(ΔT)を決定する。具体的には、係数設定部521は、絶対値|Cp|が大きいほど関係Fb(ΔT)の勾配を減少させる。具体的には、関係Fb(ΔT)は、関係F1と関係F2との間で絶対値|Cp|に応じて変化する。
【0187】
関係Fb(ΔT)が関係F1に設定された状態では、偏差ΔT[m]が負数s2から正数s1までの広い範囲内にある蓄電ユニットU[m]について、加重値α[m]が正数に設定される。したがって、多数の蓄電ユニットU[m]が放電を実行するように各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、関係Fb(ΔT)が関係F2に設定された状態では、正数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が正数に設定される一方、偏差ΔT[m]が負数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が0に設定される。したがって、偏差ΔT[m]が正数の範囲内にある一部の蓄電ユニットU[m]が優先的に放電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。
【0188】
図34は、合計直流電力指令値Cpが充電を示す場合(Cp<0)における加重値α[m]の説明図である。図34に例示される通り、関係Fb(ΔT)は、偏差ΔT[m]の負数s2と加重値α[m]の最大値1とに対応する地点を通過する直線で表現される。係数設定部521は、偏差ΔT[m]に対して関係Fb(ΔT)にある数値を加重値α[m]として設定する。
【0189】
また、係数設定部521は、合計直流電力指令値Cpに応じて関係Fb(ΔT)を決定する。具体的には、係数設定部521は、絶対値|Cp|が大きいほど関係Fb(ΔT)の勾配を減少させる。具体的には、関係Fb(ΔT)は、関係F1と関係F2との間で絶対値|Cp|に応じて変化する。
【0190】
関係Fb(ΔT)が関係F1に設定された状態では、偏差ΔT[m]が負数s2から正数s1までの広い範囲内にある蓄電ユニットU[m]について、加重値α[m]が正数に設定される。したがって、多数の蓄電ユニットU[m]が充電を実行するように各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、関係Fb(ΔT)が関係F2に設定された状態では、偏差ΔT[m]が負数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が正数に設定される一方、偏差ΔT[m]が正数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が0に設定される。したがって、偏差ΔT[m]が負数の範囲内にある一部の蓄電ユニットU[m]が優先的に充電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。
【0191】
以上の説明の通り、態様5Bによれば、偏差ΔT[m]と加重値α[m]との関係Fb(ΔT)が合計直流電力指令値Cpに応じて決定される。したがって、偏差ΔT[m]と加重値α[m]との関係が固定である形態と比較して、合計直流電力指令値Cpを複数の蓄電ユニットU[m]に対して適切に配分できる。なお、関係Fb(ΔT)を合計直流電力指令値Cpに応じて変化させる構成は省略されてもよい。すなわち、関係Fb(ΔT)は、例えば関係F1と関係F2との間の固定的な関係でもよい。
【0192】
なお、以上の説明においては、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31が放電により吸熱し、充電により放熱する場合を想定したが、蓄電装置31の種類によっては、蓄電装置31が放電により放熱し、充電により吸熱する場合も想定される。放電により放熱し、充電により吸熱する特性の蓄電装置31が各蓄電ユニットU[m]に設置された形態においては、前述の態様5Aおよび態様5Bにおける偏差ΔT[m]と加重値α[m]との関係が、縦軸を中心として反転された関係になる。また、放電および充電の双方により放熱する特性の蓄電装置31が各蓄電ユニットU[m]に設置された形態においては、態様5Aにおいては合計直流電力指令値Cpの極性によらず図32の特性が適用され、態様5Bにおいては合計直流電力指令値Cpの極性によらず図34の特性が適用される。
【0193】
6.第6実施形態
第3実施形態においては、各加重値α[m]が共通の正数に設定された場合を便宜的に例示した。第6実施形態は、第4実施形態と同様に、第3実施形態において係数設定部521が加重値α[m]を設定する第1処理Sb1の具体例である。
【0194】
図35は、第6実施形態における第1処理Sb1の説明図である。図35に例示される通り、第6実施形態の第1処理Sb1は、第4実施形態と同様に、正規化処理Sb11と偏差算定処理Sb12と加重値設定処理Sb13とを含む。
【0195】
第6実施形態においては、各蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の充放電回数N[m]に着目する。充放電回数N[m]は、充電および放電の組が反復された回数(サイクル数)である。具体的には、充放電回数N[m]は、充電率S[m]の最小値Smin[m]から最大値Smax[m]までの充電と最大値Smax[m]から最小値Smin[m]までの放電を組とした反復の回数である。充放電回数N[m]は、各蓄電ユニットU[m]から制御システム40に送信される状態データD[m]に含まれる。
【0196】
なお、充放電回数N[m]は、制御システム40により計測されてもよい。また、蓄電装置31と電力調整装置32との間の充電方向の直流電力を積算した積算電力量と、放電方向の直流電力を積算した積算電力量との合計値(充放電積算電力量)が、充放電回数N[m]として適用されてもよい。
【0197】
図35の最大回数Nmax[m]は、蓄電ユニットU[m]の運用上における充放電回数N[m]の最大値(すなわち蓄電装置31の寿命)である。なお、前述の充放電積算電力量が充放電回数N[m]として適用される形態において、最大回数Nmax[m]は、蓄電ユニットU[m]の運用上における充放電積算電力量の最大値である。正規化処理Sb11は、各蓄電ユニットU[m]の蓄電装置31の充放電回数N[m]を、所定の数値範囲(以下「標準範囲Rn_n」という)内の充放電回数Nn[m]に正規化する処理である。
【0198】
標準範囲Rn_nは、第4実施形態の標準範囲Rs_nと同様に、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通する数値範囲である。正規化処理Sb11において、係数設定部521は、以下の数式(7)の演算により正規化後の充放電回数Nn[m]を算定する。
【数7】
【0199】
偏差算定処理Sb12は、正規化処理Sb11による正規化後の充放電回数Nn[m]と基準値Nrefとの偏差ΔN[m]を算定する処理である(ΔN[m]=Nn[m]-Nref)。基準値Nrefは、例えば複数の蓄電ユニットU[m]にわたる充放電回数Nn[m]の代表値(例えば平均値)である。なお、偏差ΔN[m]は「第3偏差」の一例である。
【0200】
加重値設定処理Sb13は、偏差算定処理Sb12により算定した偏差ΔN[m]に応じて加重値α[m]を設定する処理である。偏差ΔN[m]が大きい蓄電ユニットU[m]ほど、他の蓄電ユニットU[m]と比較して充放電回数Nn[m]が相対的に高い。したがって、係数設定部521は、偏差ΔN[m]が小さい蓄電ユニットU[m]ほど、優先的に放電または充電に割当てるべきである。以上の事情を考慮して、第6実施形態の係数設定部521は、偏差ΔN[m]が小さいほど、加重値α[m]を大きい数値に設定する。
【0201】
以上の説明の通り、第6実施形態においては、各蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の充放電回数N[m]に応じて加重値α[m](ひいては配分係数K[m])が設定されるから、各蓄電装置31の充放電回数N[m]が相互に近付くように各配分係数K[m]を設定できる。したがって、各蓄電ユニットU[m]の出力が蓄電装置31の充放電回数N[m]のばらつきに起因して制限される可能性を低減できる。すなわち、蓄電システム30全体の蓄電容量を有効に利用できる。
【0202】
係数設定部521が偏差ΔN[m]に応じて加重値α[m]を算定する方法として、第6実施形態においては、以下に例示する態様6Aおよび態様6Bが採用され得る。
【0203】
[態様6A]
図36は、第6実施形態の態様6Aにおいて係数設定部521が加重値α[m]を算定する処理の説明図である。具体的には、充放電回数N[m]の偏差ΔN[m]と加重値α[m]との関係が図36には図示されている。合計直流電力指令値Cpが放電および充電の何れを示す場合も、偏差ΔN[m]と加重値α[m]との関係は同様である。
【0204】
図36に例示される通り、係数設定部521は、概略的には、加重値α[m]を関数値Fa(ΔN)に設定する。関数値Fa(ΔN)は、偏差ΔN[m]に応じた可変値である。偏差ΔN[m]が大きいほど関数値Fa(ΔN)は小さい数値に設定される。なお、関数値Fa(ΔN)は、「第2値」の一例である。
【0205】
係数設定部521は、偏差ΔN[m]が閾値Y1を下回る数値から閾値Y1を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔN)から最小値0(第1値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔN[m]が大きい蓄電ユニットU[m]の放電および充電が優先的に回避されるように、各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、係数設定部521は、偏差ΔN[m]が閾値Y2を上回る数値から数値Y2を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔN)に設定する。
【0206】
また、係数設定部521は、偏差ΔN[m]が閾値Y3を上回る数値から閾値Y3を下回る数値に減少した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔN)から最大値1(第2値)に設定する。以上の構成により、複数の蓄電ユニットU[m]のうち偏差ΔN[m]が小さい蓄電ユニットU[m]が優先的に放電および充電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、係数設定部521は、偏差ΔN[m]が閾値Y4を下回る数値から数値Y4を上回る数値に増加した場合に、加重値α[m]を関数値Fa(ΔN)に設定する。
【0207】
以上の通り、態様6Aにおいては、偏差ΔN[m]と加重値α[m]との関係がヒステリシス特性を示す。したがって、偏差ΔN[m]が各閾値(Y1,Y2,Y3,Y4)の近傍で変動した場合でも、加重値α[m]について過度に頻繁な変動を抑制できる。なお、偏差ΔN[m]に関する各閾値(Y1,Y2,Y3,Y4)は、蓄電ユニットU[m]毎に個別に設定されてもよいし、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり共通の数値に設定されてもよい。
【0208】
[態様6B]
図37は、第6実施形態の態様6Bにおいて係数設定部521が加重値α[m]を算定する処理の説明図である。具体的には、充放電回数N[m]の偏差ΔN[m]と加重値α[m]との関係Fb(ΔN)が図37には図示されている。
【0209】
図37に例示される通り、関係Fb(ΔN)は、偏差ΔN[m]の所定の負数s2と加重値α[m]の最大値1とに対応する地点を通過する直線で表現される。係数設定部521は、偏差ΔN[m]に対して関係Fb(ΔN)にある数値を加重値α[m]として設定する。
【0210】
また、係数設定部521は、合計直流電力指令値Cpに応じて関係Fb(ΔN)を決定する。具体的には、係数設定部521は、絶対値|Cp|が大きいほど関係Fb(ΔN)の勾配を減少させる。具体的には、関係Fb(ΔN)は、関係F1と関係F2との間で絶対値|Cp|に応じて変化する。
【0211】
関係Fb(ΔN)が関係F1に設定された状態では、偏差ΔN[m]が負数s2から正数s1までの広い範囲内にある蓄電ユニットU[m]について、加重値α[m]が正数に設定される。したがって、多数の蓄電ユニットU[m]が放電または充電を実行するように各有効電力配分値P[m]が設定される。他方、関係Fb(ΔN)が関係F2に設定された状態では、偏差ΔN[m]が負数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が正数に設定される一方、偏差ΔN[m]が正数の範囲内にある蓄電ユニットU[m]については加重値α[m]が0に設定される。したがって、偏差ΔN[m]が正数の範囲内にある一部の蓄電ユニットU[m]が優先的に放電または充電を実行するように、各有効電力配分値P[m]が設定される。
【0212】
以上の説明の通り、態様6Bによれば、偏差ΔN[m]と加重値α[m]との関係Fb(ΔN)が合計直流電力指令値Cpに応じて決定される。したがって、偏差ΔN[m]と加重値α[m]との関係が固定である形態と比較して、合計直流電力指令値Cpを複数の蓄電ユニットU[m]に対して適切に配分できる。なお、関係Fb(ΔN)を合計直流電力指令値Cpに応じて変化させる構成は省略されてもよい。すなわち、関係Fb(ΔN)は、例えば関係F1と関係F2との間の固定的な関係でもよい。
【0213】
7.第7実施形態
図38は、第7実施形態における第1処理Sb1の説明図である。図38に例示される通り、第7実施形態の第1処理Sb1は、設定処理Sc11と設定処理Sc12と設定処理Sc13と調整処理Sc21と調整処理Sc22と調整処理Sc23と加算処理Sc3とを含む。
【0214】
設定処理Sc11は、各蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の充電率S[m]に応じた加重値α1[m]を設定する処理である。加重値α1[m]は、第4実施形態における加重値α[m]に相当する。すなわち、設定処理Sc11は、例えば、第4実施形態における正規化処理Sb11と偏差算定処理Sb12と加重値設定処理Sb13とを含む。調整処理Sc21は、加重値α1[m]に対する調整値γ1[m]の乗算により加重値α1[m]を調整する処理である。調整値γ1[m]は、所定値に設定される。なお、加重値α1[m]は「第1加重値」の一例である。
【0215】
設定処理Sc12は、各蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の温度T[m]に応じた加重値α2[m]を設定する処理である。加重値α2[m]は、第5実施形態における加重値α[m]に相当する。すなわち、設定処理Sc12は、例えば、第5実施形態における正規化処理Sb11と偏差算定処理Sb12と加重値設定処理Sb13とを含む。調整処理Sc22は、加重値α2[m]に対する調整値γ2[m]の乗算により加重値α2[m]を調整する処理である。調整値γ2[m]は、所定値に設定される。なお、加重値α2[m]は「第2加重値」の一例である。
【0216】
設定処理Sc13は、各蓄電ユニットU[m]における蓄電装置31の充放電回数N[m]に応じた加重値α3[m]を設定する処理である。加重値α3[m]は、第6実施形態における加重値α[m]に相当する。すなわち、設定処理Sc13は、例えば、第6実施形態における正規化処理Sb11と偏差算定処理Sb12と加重値設定処理Sb13とを含む。調整処理Sc23は、加重値α3[m]に対する調整値γ3[m]の乗算により加重値α3[m]を調整する処理である。調整値γ3[m]は、所定値に設定される。なお、加重値α3[m]は「第3加重値」の一例である。
【0217】
加算処理Sc3は、調整処理Sc21による調整後の数値γ1[m]・α1[m]と、調整処理Sc22による調整後の数値γ2[m]・α2[m]と、調整処理Sc23による調整後の数値γ3[m]・α3[m]とを加算することで、最終的な加重値α[m]を算定する。すなわち、第7実施形態の係数設定部521は、充電率S[m]に応じた加重値α1[m]と温度T[m]に応じた加重値α2[m]と充放電回数N[m]に応じた加重値α3[m]との加重和により加重値α[m]を設定する。調整値γ1[m]と調整値γ2[m]と調整値γ3[m]とは、相異なる数値に設定されてもよいし、共通の数値に設定されてもよい。
【0218】
なお、調整処理Sc21と調整処理Sc22と調整処理Sc23との一部または全部は省略されてよい。例えば、係数設定部521は、加重値α1[m]と加重値α2[m]と加重値α3[m]との加算により加重値α[m]を設定してもよい。以上の例示から理解される通り、第7実施形態の係数設定部521は、加重値α1[m]と加重値α2[m]と加重値α3[m]とに応じて加重値α[m]を設定する。なお、以上に説明した加重値α[m]と運転ワットアワー容量B[m]に応じた補正値β[m]とに応じて配分係数K[m]を算定する第3処理Sb3は、第3実施形態(図22)と同様である。
【0219】
第7実施形態においては、各蓄電ユニットU[m]の充電率S[m]、温度T[m]および充放電回数N[m]に応じて加重値α[m]が設定される。したがって、蓄電ユニットU[m]の特定の状態のみに応じて加重値α[m]が設定される形態と比較して、蓄電装置31の状態に関する多様な観点(S[m],T[m],N[m])から適切な加重値α[m](ひいては配分係数K[m])を設定できる。
【0220】
8.第8実施形態
図39は、第8実施形態における係数設定部521の動作の説明図である。第8実施形態の係数設定部521は、第3実施形態と同様の処理(Sb1,Sb2,Sb3)に加えて平滑処理Sdを含む。平滑処理Sdは、第3処理Sb3により算定された配分係数K[m]の時間的な変動の速度を低減する処理である。
【0221】
図40は、平滑処理Sdの説明図である。図40に例示される通り、第3処理Sb3の直後の配分係数K[m]は、時間軸上で不連続に変動する場合がある。他方、平滑処理Sdの実行後の配分係数K[m]においては時間軸上で連続に変動する。以上の説明の通り、平滑処理Sdは、配分係数K[m]の時系列における高周波成分を抑制する低域通過フィルタ処理である。
【0222】
例えば蓄電ユニットU[1]の配分係数K[1]が急峻に変動した場合、蓄電ユニットU[1]の有効電力配分値P[1]が連動するほか、他の蓄電ユニットU[2]~U[5]の有効電力配分値P[m]も連動して急峻に変動する。しかし、各蓄電ユニットU[m]が有効電力配分値P[m]を受信する時間にはばらつきがある場合があるため、配分係数K[1]が変動した時点から、当該配分係数K[1]の変動が全部の蓄電ユニットU[m]の有効電力に反映されるまでの期間において、合成点電力に変動が発生する可能性がある。第8実施形態によれば、配分係数K[m]の時間的な変動の速度が低減されるから、各蓄電ユニットU[m]における配分電力の急峻な変動に起因して合成点電力が突発的に変動する可能性を低減できる。
【0223】
図41は、平滑処理Sdを実現する具体的な構成の説明図である。図41に例示される通り、係数設定部521には、配分対象フラグf[m]が蓄電ユニットU[m]毎に供給される。配分対象フラグf[m]は、合計直流電力指令値Cpの配分の対象/対象外を指示するフラグである。具体的には、配分対象の蓄電ユニットU[m]の配分対象フラグf[m]は有効値(例えば1)に設定され、配分対象ではない蓄電ユニットU[m]の配分対象フラグf[m]は無効値(例えば0)に設定される。例えば、通常の運転状態にある各蓄電ユニットU[m]については配分対象フラグf[m]が有効値に設定される。他方、例えば、制御システム40からの指示に応答できない状態(例えば停止状態)の蓄電ユニットU[m]、または、修理・点検等の保守作業が実施されている各蓄電ユニットU[m]については、配分対象フラグf[m]が無効値に設定される。
【0224】
図41に例示される通り、係数設定部521は、切替部5212と平滑部5213とを含む。配分対象フラグf[m]は切替部5212に供給される。
【0225】
平滑部5213は、配分係数K[m]の時間的な変動を平滑化する。例えば3段の1次遅れフィルタを直列に接続した低域通過フィルタが平滑部5213として例示される。切替部5212は、第3処理Sb3により算定された配分係数K[m]を平滑部5213に供給するか否かを、配分対象フラグf[m]に応じて切替えるスイッチである。
【0226】
以上の構成において、例えば保守作業の終了により運転を開始する蓄電ユニットU[m]については配分対象フラグf[m]が無効値から有効値に変更される。配分対象フラグf[m]が有効値に変更されることで、平滑部5213に対する配分係数K[m]の供給が開始される。したがって、運転を開始する蓄電ユニットU[m]について配分係数K[m]の設定および変動を安定的に開始(ソフトスタート)することが可能である。
【0227】
他方、例えば保守作業の開始のために運転を停止する蓄電ユニットU[m]については、配分対象フラグf[m]が有効値から無効値に変更されることで、平滑部5213に対する配分係数K[m]の供給が停止される。したがって、運転を停止する蓄電ユニットU[m]について、配分係数K[m]の設定および変動を安定的に停止(ソフトストップ)することが可能である。
【0228】
9.第9実施形態
第9実施形態は、蓄電システム30の運転の過程において1個以上の蓄電ユニットU[m]を追加的に起動するための形態である。
【0229】
図42は、蓄電システム30の4個の蓄電ユニットU[2]~U[5]による放電の実行中に1個の蓄電ユニットU[1]が追加的に起動される場合の動作に関する説明図である。蓄電ユニットU[1]の起動前における変換損失X3は、放電中の4個の蓄電ユニットU[2]~U[5]について変換損失x[m]を合計した数値(例えば4)である。蓄電ユニットU[1]が起動される結果、変換損失X3は、5個の蓄電ユニットU[1]~U[5]について変換損失x[m]を合計した数値(例えば5)に変更される。したがって、図42に例示される通り、指令算定部51が算定する合計直流電力指令値Cpは、蓄電ユニットU[1]の起動により変更される。
【0230】
図42に例示される通り、蓄電ユニットU[1]が起動される場合、係数設定部521は、配分係数K[1]を最小値0から目標値まで増加させ、制限値設定部522は、制限値L[1]_dを基準値0から目標値まで増加させる。配分係数K[1]の目標値は、例えば第3実施形態から第8実施形態により算定される数値であり、制限値L[1]_dの目標値は、例えば第2実施形態により算定される数値である。
【0231】
前述の通り、各電力配分値Pa[m]は、配分係数K[m]の合計値ΣK[m]に対する各配分係数K[m]の比率を合計直流電力指令値Cpに乗算することで算定される。したがって、配分係数K[1]が増加した場合、図42に例示される通り、追加対象の蓄電ユニットU[1]の電力配分値Pa[m]が増加する一方、既存の蓄電ユニットU[2]~U[5]の電力配分値Pa[m]は減少する。
【0232】
図43は、配分係数K[1]および電力配分値Pa[1]の時間的な変化に関する説明図である。図43に例示される通り、係数設定部521は、期間Taの始点から終点にかけて配分係数K[1]を最小値0から目標値5まで経時的に増加させる。したがって、電力配分値Pa[1]は、期間Taの始点から終点にかけて最小値0から目標値40まで経時的に増加する。なお、期間Taの始点は、例えば管理システム100の管理者から蓄電ユニットU[1]の起動が指示され、かつ、蓄電ユニットU[1]が制御システム40からの指示に応答できる状態になった時点である。
【0233】
図43には、制限値L[1]_dにより制限された有効電力配分値P[1]の時間的な変化が併記されている。制限値設定部522は、期間Tbの始点から終点にかけて制限値L[1]_dを基準値0から目標値40まで経時的に増加させることで、有効電力配分値P[1]を基準値0から目標値39まで経時的に増加させる。なお、期間Tbの始点は、期間Taの始点と同様の時点である。
【0234】
以上の通り、配分係数K[1]および制限値L[1]_dが経時的に変化する結果、蓄電ユニットU[1]の有効電力配分値P[1]は、期間Tbの始点から終点にかけて初期値0から目標値39まで経時的に増加する。なお、以上の説明においては、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を上回る場合を例示したが、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を下回る場合もある。
【0235】
図44は、蓄電システム30の4個の蓄電ユニットU[1]~U[4]による充電の実行中に1個の蓄電ユニットU[5]が追加的に起動される場合の動作に関する説明図である。図42の場合と同様に、蓄電ユニットU[5]の追加により変換損失X3が変化する結果、指令算定部51が算定する合計直流電力指令値Cpも変更される。
【0236】
図44に例示される通り、蓄電ユニットU[5]が起動される場合、係数設定部521は、配分係数K[5]を最小値0から目標値まで増加させ、制限値設定部522は、制限値L[5]_cを基準値0から目標値まで減少させる。配分係数K[5]および制限値L[5]_cの変化の結果、追加対象の蓄電ユニットU[5]の電力配分値Pa[5]は負数の範囲内で減少する一方、既存の蓄電ユニットU[1]~U[4]の電力配分値Pa[m]は増加する。
【0237】
図45は、配分係数K[5]および電力配分値Pa[5]の時間的な変化に関する説明図である。図45に例示される通り、係数設定部521は、期間Taの始点から終点にかけて配分係数K[5]を最小値0から目標値5まで経時的に増加させる。したがって、電力配分値Pa[5]は、期間Taの始点から終点にかけて初期値0から目標値-40まで経時的に減少する。なお、期間Taの始点は、例えば管理システム100の管理者から蓄電ユニットU[5]の起動が指示された時点である。
【0238】
図45には、制限値L[5]_cにより制限された有効電力配分値P[5]の時間的な変化が併記されている。制限値設定部522は、期間Tbの始点から終点にかけて制限値L[5]_cを基準値0から目標値-40まで経時的に減少させることで、有効電力配分値P[5]を基準値0から目標値-41まで経時的に減少させる。なお、期間Tbの始点は、期間Taの始点と同様の時点である。
【0239】
以上の通り、配分係数K[5]および制限値L[5]_cが経時的に変化する結果、蓄電ユニットU[5]の有効電力配分値P[5]は、期間Tbの始点から終点にかけて初期値0から目標値-41まで経時的に減少する。なお、以上の説明においては、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を上回る場合を例示したが、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を下回る場合もある。
【0240】
以上に説明した通り、第9実施形態においては、蓄電ユニットU[m]の起動時に配分係数K[m]および制限値L[m]が期間Taをかけて連続的に変化する。すなわち、蓄電ユニットU[m]の起動に起因した配分係数K[m]および制限値L[m]の不連続な変動が抑制される。したがって、各蓄電ユニットU[m]における配分係数K[m]または制限値L[m]の急峻な変動に起因して合成点電力が突発的に変動する可能性を低減できる。
【0241】
10.第10実施形態
第9実施形態においては、蓄電ユニットU[m]の追加的な起動に着目した。第10実施形態は、蓄電システム30の運転の過程において1個以上の蓄電ユニットU[m]を停止するための形態である。
【0242】
図46においては、蓄電システム30の5個の蓄電ユニットU[1]~U[5]による放電の実行中に1個の蓄電ユニットU[1]が停止される場合の動作に関する説明図である。図46に例示される通り、蓄電ユニットU[1]が停止される場合、係数設定部521は、配分係数K[1]を最小値0まで減少させ、制限値設定部522は、制限値L[1]_dを最小値1まで減少させる。配分係数K[1]および制限値L[1]_dの変化の結果、停止対象の蓄電ユニットU[1]の電力配分値Pa[m]は減少する一方、運転を継続する蓄電ユニットU[2]~U[5]の電力配分値Pa[m]は増加する。
【0243】
図47は、配分係数K[1]および電力配分値Pa[1]の時間的な変化に関する説明図である。図47に例示される通り、係数設定部521は、期間Taの始点から終点にかけて配分係数K[1]を現在値5から最小値0まで経時的に減少させる。したがって、電力配分値Pa[1]は、期間Taの始点から終点にかけて現在値40から最小値1まで経時的に減少する。なお、期間Taの始点は、例えば管理システム100の管理者から蓄電ユニットU[1]の停止が指示された時点である。
【0244】
図47には、制限値L[1]_dにより制限された有効電力配分値P[1]の時間的な変化が併記されている。制限値設定部522は、期間Tbの始点から終点にかけて制限値L[1]_dを現在値40から最小値1まで経時的に減少させることで、有効電力配分値P[1]を現在値39から基準値0まで経時的に減少させる。なお、期間Tbの始点は、期間Taの始点と同様の時点である。
【0245】
以上の通り、配分係数K[1]および制限値L[1]_dが経時的に変化する結果、蓄電ユニットU[1]の有効電力配分値P[1]は、期間Tbの始点から終点にかけて現在値39から最小値0まで経時的に減少する。なお、以上の説明においては、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を上回る場合を例示したが、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を下回る場合もある。
【0246】
図48においては、蓄電システム30の5個の蓄電ユニットU[1]~U[5]による充電の実行中に1個の蓄電ユニットU[5]が停止される場合が想定されている。図48に例示される通り、蓄電ユニットU[5]が停止される場合、係数設定部521は、配分係数K[5]を現在値5から最小値0まで減少させ、制限値設定部522は、制限値L[5]_cを現在値-40から基準値0まで増加させる。配分係数K[5]および制限値L[5]_cの変化の結果、追加対象の蓄電ユニットU[5]の電力配分値Pa[5]は増加する一方、蓄電ユニットU[1]~U[4]の電力配分値Pa[m]は減少する。
【0247】
図49は、配分係数K[5]および電力配分値Pa[5]の時間的な変化に関する説明図である。図49に例示される通り、係数設定部521は、期間Taの始点から終点にかけて配分係数K[5]を現在値5から最小値0まで経時的に増加させる。したがって、電力配分値Pa[5]は、期間Taの始点から終点にかけて現在値-40から基準値0まで経時的に増加する。
【0248】
図49には、制限値L[5]_cにより制限された有効電力配分値P[5]の時間的な変化が併記されている。制限値設定部522は、期間Tbの始点から終点にかけて制限値L[5]_cを現在値-40から基準値0まで経時的に増加させることで、有効電力配分値P[5]を現在値-41から基準値0まで経時的に増加させる。なお、期間Tbの始点は、期間Taの始点と同様の時点である。
【0249】
以上の通り、配分係数K[5]および制限値L[5]_cが経時的に変化する結果、蓄電ユニットU[5]の有効電力配分値P[5]は、期間Tbの始点から終点にかけて現在値-41から基準値0まで経時的に増加する。なお、以上の説明においては、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を上回る場合を例示したが、期間Tbの時間長が期間Taの時間長を下回る場合もある。
【0250】
第10実施形態においては、第9実施形態と同様に、蓄電ユニットU[m]の停止時に配分係数K[m]および制限値L[m]が期間Taをかけて連続的に変化する。すなわち、蓄電ユニットU[m]の停止に起因した配分係数K[m]および制限値L[m]の不連続な変動が抑制される。したがって、第9実施形態と同様に、各蓄電ユニットU[m]における配分係数K[m]または制限値L[m]の急峻な変動に起因して合成点電力が突発的に変動する可能性を低減できる。
【0251】
11.第11実施形態
第11実施形態においては、蓄電システム30の複数の蓄電ユニットU[m]のうち一部の蓄電ユニットU[m](以下「保守対象ユニットU[m]」という)が、例えば修理または点検等の保守状態にある場合を想定する。保守対象ユニットU[m]は、合計直流電力指令値Cpの配分の対象から除外される。すなわち、保守対象ユニットU[m]について有効電力配分値P[m]は算定されない。
【0252】
図50は、第11実施形態における指令算定部51の動作の説明図である。図50に例示される保守電力Gaは、保守対象ユニットU[m]において保守作業のために使用される有効電力(すなわち保守用の電力)である。保守電力Gaは、例えば、保守作業の内容に応じて所定値に設定される。なお、保守電力Gaは、保守対象ユニットU[m]の有効電力の計測値でもよい。なお、保守電力Gaが正数である場合、保守対象ユニットU[m]において充電が実行され、保守電力Gaが負数である場合、保守対象ユニットU[m]において放電が実行されることを意味する。
【0253】
第11実施形態の指令算定部51は、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とに加えて保守電力Gaを基礎指令値C0に付加することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。具体的には、合計直流電力指令値Cpは、以下の数式(8)の通り、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3と保守電力Gaとを基礎指令値C0に加算することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【数8】
【0254】
数式(8)により算定された合計直流電力指令値Cpは、蓄電システム30の複数の蓄電ユニットU[m]のうち、保守対象ユニットU[m]以外の各蓄電ユニットU[m]に配分される。以上の説明から理解される通り、第11実施形態においては、保守対象ユニットU[m]以外の各蓄電ユニットU[m]が余分に稼動することで、保守対象ユニットU[m]における保守用の保守電力Gaを確保する。すなわち、保守対象ユニットU[m]以外の各蓄電ユニットU[m]が放電する電力が、保守対象ユニットU[m]の保守作業のために融通される。
【0255】
図51は、第11実施形態における管理システム100の動作の説明図である。図51においては、複数の蓄電ユニットU[m]のうち蓄電ユニットU[4]が保守対象ユニットU[4]である場合が想定されている。合計直流電力指令値Cpは放電を示す数値(Cp>0)である。
【0256】
図51に例示される通り、保守対象ユニットU[4]以外の4個の蓄電ユニットU[m](U[1],U[2],U[3],U[5])を対象として有効電力配分値P[m]が算定される。すなわち、保守対象ユニットU[4]については、配分係数K[m]および制限値L[m]の設定、電力配分値Pa[m]の算定(Sa1)、電力配分値Pb[m]の算定(Sa2~Sa5)、および有効電力配分値P[m]の算定は実行されない。
【0257】
保守対象ユニットU[4]以外の各蓄電ユニットU[m]が生成した有効電力配分値P[m]の電力のうちの一部(保守電力Ga)は、保守対象ユニットU[4]に供給されて保守作業に利用される。以上の説明の通り、第11実施形態によれば、合成点電力を基礎指令値C0に維持しながら、保守対象ユニットU[m]の保守に必要な電力を稼働中の他の蓄電ユニットU[m]により融通できる。
【0258】
12.第12実施形態
蓄電システム30の複数の蓄電ユニットU[m]のうち特定の蓄電ユニットU[m]について、優先的に放電または充電を実行させる必要がある場合がある。例えば、保守対象の蓄電ユニットU[m]が充分に充電されている状態では、優先的な放電により充電率S[m]を充分に低下させてから保守作業を開始する必要がある場合がある。保守対象の蓄電ユニットU[m]が充分に充電されていない状態では、優先的な充電により当該蓄電ユニットU[m]の充電率S[m]を充分に上昇させてから保守作業を開始する必要がある場合がある。
【0259】
また、蓄電システム30に新規に追加された蓄電ユニットU[m]または保守作業から復帰した蓄電ユニットU[m]において充電率S[m]が他の蓄電ユニットU[m]よりも大幅に低い状態では、優先的な充電により充電率S[m]を上昇させる必要がある場合がある。他方、蓄電システム30に新規に追加された蓄電ユニットU[m]または保守作業から復帰した蓄電ユニットU[m]において充電率S[m]が他の蓄電ユニットU[m]よりも大幅に高い状態では、優先的な放電により充電率S[m]を低下させる必要がある場合がある。
【0260】
以上の事情を考慮して、第12実施形態は、蓄電システム30の複数の蓄電ユニットU[m]のうち特定の蓄電ユニットU[m](以下「優先ユニットU[m]」という)について、優先的に放電または充電を実行させる形態である。
【0261】
以下の説明においては、優先ユニットU[m]が放電または充電する電力を「補正電力Gb」と表記する。補正電力Gbは、優先ユニットU[m]の放電/充電を符号により指示する。具体的には、正数の補正電力Gbは、優先ユニットU[m]が放電すべき電力値を意味する。他方、負数の補正電力Gbは、優先ユニットU[m]が充電すべき電力値を意味する。
【0262】
具体的には、第12実施形態の指令算定部51は、前述の各形態と同様に電力損失(X1,X2,X3)を基礎指令値C0に付加するほか、基礎指令値C0から補正電力Gbを減算することで合計直流電力指令値Cpを算定する。すなわち、指令算定部51は、以下の数式(9)の演算により合計直流電力指令値Cpを算定する。
【数9】
【0263】
また、第12実施形態の配分処理部523は、蓄電システム30の複数の蓄電ユニットU[m]のうち優先ユニットU[m]以外の各蓄電ユニット(以下「通常ユニット」という)U[m]について、合計直流電力指令値Cpから有効電力配分値P[m]を算定し、優先ユニットU[m]については、補正電力Gbを有効電力配分値P[m]として設定する。
【0264】
第12実施形態の動作を以下に詳述する。以下の説明においては、合計直流電力指令値Cpが放電を示す場合(Cp>0)および充電を示す場合(Cp<0)の各々について、優先ユニットU[m]を放電する場合と受電する場合とを説明する。
【0265】
[動作ケース1]
図52および図53は、動作ケース1における管理システム100の動作の説明図である。動作ケース1は、合計直流電力指令値Cpが放電を示し(Cp>0)、かつ、優先ユニットU[m]を放電する場合(Gb>0)である。以下の説明においては、蓄電ユニットU[1]が優先ユニットU[1]であり、蓄電ユニットU[2]~U[5]が通常ユニットU[m]である場合を想定する。
【0266】
図52に例示される通り、指令算定部51は、基礎指令値C0に対する電力損失(X1,X2,X3)の加算と補正電力Gbの減算とにより、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【0267】
図53に例示される通り、配分処理部523は、優先ユニットU[1]の制限値L[1]_dを0に設定することで、合計直流電力指令値Cpの配分対象から優先ユニットU[1]を除外する。配分処理部523は、各通常ユニットU[m]について、電力配分値Pa[m]の算定(Sa1)と電力配分値Pb[m]の算定(Sa2~Sa5)と有効電力配分値P[m]の算定(Sa6)とを実行する。すなわち、前述の各形態と同様の処理(Sa1~Sa6)により各通常ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]を算定する。また、配分処理部523は、優先ユニットU[1]の有効電力配分値P[m]を、補正電力Gbに応じた数値に設定する。具体的には、優先ユニットU[1]の電力配分値Pb[1]が補正電力Gb(=60)に設定され、有効電力配分値P[1]は、当該電力配分値Pb[1]から変換損失x[1]を減算した数値(=59)に設定される。
【0268】
以上の手順で算定された有効電力配分値P[m]が各蓄電ユニットU[m]に送信される。したがって、各通常ユニットU[m](U[2]~U[5])は、合計直流電力指令値Cpを配分した有効電力配分値P[m]の電力を放電し、優先ユニットU[1]は補正電力Gbを放電する。以上の動作の結果、合成点電力を基礎指令値C0に維持しながら、優先ユニットU[1]を優先的に放電させることが可能である。
【0269】
[動作ケース2]
図54および図55は、動作ケース2における管理システム100の動作の説明図である。動作ケース2は、合計直流電力指令値Cpが放電を示し(Cp>0)、かつ、優先ユニットU[m]を充電する場合(Gb<0)である。以下の説明においては、蓄電ユニットU[5]が優先ユニットU[5]であり、蓄電ユニットU[1]~U[4]が通常ユニットU[m]である場合を想定する。
【0270】
図54に例示される通り、指令算定部51は、基礎指令値C0に対する電力損失(X1,X2,X3)の加算と補正電力Gbの減算とにより、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【0271】
図55に例示される通り、配分処理部523は、優先ユニットU[5]の制限値L[1]_dを0に設定することで、合計直流電力指令値Cpの配分対象から優先ユニットU[5]を除外する。配分処理部523は、各通常ユニットU[m]について、第1実施形態と同様の処理(Sa1~Sa6)により有効電力配分値P[m]を算定する。また、配分処理部523は、優先ユニットU[5]の有効電力配分値P[5]を補正電力Gbに応じた数値に設定する。具体的には、優先ユニットU[5]の電力配分値Pb[5]が補正電力Gb(-60)に設定され、有効電力配分値P[5]は、当該電力配分値Pb[5]から変換損失x[5]を減算した数値(-61)に設定される。
【0272】
以上の手順で算定された有効電力配分値P[m]が各蓄電ユニットU[m]に送信される。したがって、各通常ユニットU[m](U[1]~U[4])は、合計直流電力指令値Cpを配分した有効電力配分値P[m]の電力を放電し、優先ユニットU[5]は補正電力Gbを充電する。以上の動作の結果、合成点電力を基礎指令値C0に維持しながら、優先ユニットU[5]を優先的に充電させることが可能である。
【0273】
[動作ケース3]
図56および図57は、動作ケース3における管理システム100の動作の説明図である。動作ケース3は、合計直流電力指令値Cpが充電を示し(Cp<0)、かつ、優先ユニットU[m]を放電する場合(Gb>0)である。以下の説明においては、蓄電ユニットU[1]が優先ユニットU[1]であり、蓄電ユニットU[2]~U[5]が通常ユニットU[m]である場合を想定する。
【0274】
図56に例示される通り、指令算定部51は、基礎指令値C0に対する電力損失(X1,X2,X3)の加算と補正電力Gbの減算とにより、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【0275】
図57に例示される通り、配分処理部523は、優先ユニットU[1]の制限値L[1]_cを0に設定することで、合計直流電力指令値Cpの配分対象から優先ユニットU[1]を除外する。配分処理部523は、各通常ユニットU[m]について、前述の各形態と同様の処理(Sa1~Sa6)により有効電力配分値P[m]を算定する。また、配分処理部523は、優先ユニットU[1]の有効電力配分値P[m]を、補正電力Gbに応じた数値に設定する。具体的には、優先ユニットU[1]の電力配分値Pb[1]が補正電力Gb(=60)に設定され、有効電力配分値P[1]は、当該電力配分値Pb[1]から変換損失x[1]を減算した数値(=59)に設定される。
【0276】
以上の手順で算定された有効電力配分値P[m]が各蓄電ユニットU[m]に送信される。したがって、各通常ユニットU[m](U[2]~U[5])は、合計直流電力指令値Cpを配分した有効電力配分値P[m]の電力を充電し、優先ユニットU[1]は補正電力Gbを放電する。以上の動作の結果、合成点電力を基礎指令値C0に維持しながら、優先ユニットU[1]を優先的に放電させることが可能である。
【0277】
[動作ケース4]
図58および図59は、動作ケース4における管理システム100の動作の説明図である。動作ケース4は、合計直流電力指令値Cpが充電を示し(Cp<0)、かつ、優先ユニットU[m]を充電する場合(Gb<0)である。以下の説明においては、蓄電ユニットU[5]が優先ユニットU[5]であり、蓄電ユニットU[1]~U[4]が通常ユニットU[m]である場合を想定する。
【0278】
図58に例示される通り、指令算定部51は、基礎指令値C0に対する電力損失(X1,X2,X3)の加算と補正電力Gbの減算とにより、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【0279】
図59に例示される通り、配分処理部523は、優先ユニットU[5]の制限値L[1]_cを0に設定することで、合計直流電力指令値Cpの配分対象から優先ユニットU[5]を除外する。配分処理部523は、各通常ユニットU[m]について、前述の各形態と同様の処理(Sa1~Sa6)により有効電力配分値P[m]を算定する。また、配分処理部523は、優先ユニットU[5]の有効電力配分値P[5]を補正電力Gbに設定する。具体的には、優先ユニットU[5]の電力配分値Pb[5]が補正電力Gb(=-60)に設定され、有効電力配分値P[5]は、当該電力配分値Pb[5]から変換損失x[5]を減算した数値(=-61)に設定される。
【0280】
以上の手順で算定された有効電力配分値P[m]が各蓄電ユニットU[m]に送信される。したがって、各通常ユニットU[m](U[1]~U[4])は、合計直流電力指令値Cpを配分した有効電力配分値P[m]の電力を充電し、優先ユニットU[5]は補正電力Gbを充電する。以上の動作の結果、合成点電力を基礎指令値C0に維持しながら、優先ユニットU[5]を優先的に充電させることが可能である。
【0281】
13.第13実施形態
以上の各形態においては、電力系統10と管理システム100との間で授受される有効電力に着目した。第13実施形態は、電力系統10と管理システム100との間で授受される無効電力に着目した形態である。なお、第13実施形態において、基礎指令値C0から各蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]を算定する構成および方法は、前述の各形態と同様である。
【0282】
図60は、第13実施形態における制御システム40の機能的な構成を例示するブロック図である。第13実施形態の制御装置41は、第1実施形態と同様の要素(指令算定部51,指令配分部52,動作指示部53)として機能する。
【0283】
第13実施形態の指令算定部51は、前述の各形態と同様に合計直流電力指令値Cpを算定するほか、合計無効電力指令値Cqを算定する。合計無効電力指令値Cqは、複数の蓄電ユニットU[m]が生成すべき無効電力の合計値である。なお、無効電力については、電力系統10に遅相無効電力を発生する方向(すなわち蓄電ユニットU[m]が容量性となる方向)を正数で表現し、電力系統10からの進相無効電力を吸収する方向(すなわち蓄電ユニットU[m]が誘導性となる方向)を負数で表現する。
【0284】
なお、一般に、電力系統10に有効電力を供給する場合には電力系統10の電圧が上昇するため、電力系統10から進相無効電力を吸収する方向の動作により電圧の上昇が抑制される。他方、電力系統10から有効電力を消費する場合には電力系統10の電圧が低下するため、電力系統10に遅相無効電力を発生する方向の動作により電圧の低下を抑制する。
【0285】
図61は、第13実施形態における指令算定部51の動作の説明図である。図61に例示される通り、指令算定部51は、基礎指令値C0に応じて無効電力指令値Cq0を算定する。例えば、指令算定部51は、基礎指令値C0に所定の力率を乗算することで無効電力指令値Cq0を算定する。
【0286】
指令算定部51は、無効電力指令値Cq0を補正値Xqにより補正することで合計無効電力指令値Cqを算定する。補正値Xqは、各蓄電ユニットU[m]の通常運転以外の要因により管理システム100内で発生する無効電力の合計値である。具体的には、補正値Xqは、複数の蓄電ユニットU[m]のうち例えば保守作業のために有効電力の配分対象から除外された蓄電ユニットU[m]が発生する遅相無効電力(正数)から、負荷設備22が消費する遅れ無効電力(負荷設備22が誘導性となる方向であり、正数で表現される)、または進み無効電力(負荷設備22が容量性となる方向であり、負数で表現される)を減算することで算定される。図61に例示される通り、指令算定部51は、例えば、無効電力指令値Cq0から補正値Xqを減算することで、合計無効電力指令値Cqを算定する(Cq=Cq0-Xq)。
【0287】
図60の指令配分部52は、前述の各形態と同様に合計直流電力指令値Cpから各蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]を算定するほか、合計無効電力指令値Cqのうち複数の蓄電ユニットU[m]の各々に配分されるべき無効電力の指令値(以下「無効電力配分値Q[m]」という)を算定する。無効電力配分値Q[m]は、各蓄電ユニットU[m]が生成すべき無効電力の指令値である。すなわち、指令配分部52は、合計無効電力指令値Cqを複数の蓄電ユニットU[m]に配分する。
【0288】
動作指示部53は、有効電力配分値P[m]と無効電力配分値Q[m]とを各蓄電ユニットU[m]に指示する。具体的には、動作指示部53は、指令配分部52が算定した有効電力配分値P[m]および無効電力配分値Q[m]を、送受信装置43により蓄電ユニットU[m]に送信する。各蓄電ユニットU[m](電力調整装置32)は、有効電力配分値P[m]に相当する直流電力の放電または充電を蓄電装置31に実行させるほか、無効電力配分値Q[m]に相当する無効電力を生成する。
【0289】
図62は、指令配分部52が各蓄電ユニットU[m]の無効電力配分値Q[m]を算定する動作の説明図である。図62には、前述の各形態に例示した構成および動作により蓄電ユニットU[m]毎に算定された有効電力配分値P[m]が図示されている。
【0290】
ステップSe1において、指令配分部52は、複数の蓄電ユニットU[m]の各々について容量特性A[m]を取得する。容量特性A[m]は、蓄電ユニットU[m]が処理可能な有効電力と無効電力との関係(例えば皮相電力の条件)である。容量特性A[m]は、蓄電ユニットU[m]毎に相違し得る。容量特性A[m]は、例えば、蓄電ユニットU[m]毎の仕様に応じて事前に決定される。なお、例えば、送受信装置43が各蓄電ユニットU[m]から受信する状態データD[m]に容量特性A[m]が含まれてもよい。
【0291】
ステップSe2において、指令配分部52は、有効電力配分値P[m]と容量特性A[m]とに応じて各蓄電ユニットU[m]の空き無効電力q[m]を算定する。空き無効電力q[m]は、蓄電ユニットU[m]が生成可能な無効電力の最大値である。具体的には、指令配分部52は、容量特性A[m]のもとで有効電力配分値P[m]に対応する無効電力を、空き無効電力q[m]として算定する。
【0292】
例えば、基礎指令値C0が放電を示す場合(C0>0)、各蓄電ユニットU[m]による放電は、合成点11の電圧を上昇させる方向に作用する。合成点11の電圧の上昇が抑制されるように、指令配分部52は、進相無効電力を空き無効電力q[m]として算定する。他方、基礎指令値C0が充電を示す場合(C0<0)、各蓄電ユニットU[m]による充電は、合成点11の電圧を低下させる方向に作用する。合成点11の電圧の低下が抑制されるように、指令配分部52は、遅相無効電力を空き無効電力q[m]として算定する。
【0293】
ステップSe3において、指令配分部52は、合計無効電力指令値Cqと各空き無効電力q[m]とに応じて各蓄電ユニットU[m]の無効電力配分値Q[m]を算定する。具体的には、指令配分部52は、以下の数式(10)の演算により各無効電力配分値Q[m]を算定する。
【数10】
【0294】
数式(10)から理解される通り、指令配分部52は、複数の空き無効電力q[m]の合計値Σq[m]に対する各空き無効電力q[m]の比率を合計無効電力指令値Cqに乗算することで、各蓄電ユニットU[m]の無効電力配分値Q[m]を算定する。すなわち、合計無効電力指令値Cqは、各空き無効電力q[m]の比率で各蓄電ユニットU[m]に配分される。
【0295】
以上に説明した通り、第13実施形態においては、各蓄電ユニットU[m]による有効電力の生成に加えて無効電力の生成も制御できる。したがって、例えば各蓄電ユニットU[m]の無効電力の制御に専用される無効電力補償装置(SVC(Static Var Compensator),SVG(Static Var Generator),STATCOM(STATic synchronous COMpensator))を原理的には不要化できる。ただし、第13実施形態において無効電力補償装置が併用されてもよい。
【0296】
14.第14実施形態
図63は、第14実施形態に係る管理システム100の構成を例示するブロック図である。図63に例示される通り、第14実施形態の管理システム100は、第1実施形態(図1)と同様の要素(変電設備21,負荷設備22,蓄電システム30,制御システム40)に加えて発電設備23を具備する。
【0297】
発電設備23は、例えば再生可能エネルギーを利用して発電する分散型電源である。例えば、太陽光エネルギーを電力に変換する太陽光発電システム、風力エネルギーを電力に変換する風力発電システム、地熱エネルギーを電力に変換する地熱発電システム、水力エネルギーを電力に変換する水力発電システム、または、バイオマスエネルギーを電力に変換するバイオマス発電システム等、再生可能エネルギーを利用する任意の方式の発電システムが、発電設備23として利用される。発電方式が相違する複数の発電システムにより、発電設備23が構成されてもよい。
【0298】
前述の各形態における指令算定部51は、前述の数式(1)の通り、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とを含む電力損失(X1+X2+X3)を基礎指令値C0に付加することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。第14実施形態の指令算定部51は、発電設備23により発電される有効電力(以下「発電有効電力値Gc」という)を、電力損失(X1+X2+X3)に加えて基礎指令値C0に付加することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。具体的には、指令算定部51は、以下の数式(11)の通り、基礎指令値C0に対する電力損失(X1+X2+X3)の加算と発電有効電力値Gcの減算とを含む演算により、合計直流電力指令値Cpを算定する。
【数11】
【0299】
合計直流電力指令値Cpから各蓄電ユニットU[m]の有効電力配分値P[m]を算定するための構成および動作は、前述の各形態と同様である。第14実施形態によれば、複数の蓄電ユニットU[m]に発電設備23が並設された環境においても、合成点電力を基礎指令値C0に高精度に維持できる。
【0300】
15.第15実施形態
図64は、第15実施形態に係る管理システム100の構成を例示するブロック図である。図64に例示される通り、第15実施形態の各蓄電ユニットU[m]における電力調整装置32は、直流電力を別の電圧値の直流電力に変換するDC/DCコンバータである。すなわち、第15実施形態の各蓄電ユニットU[m]は、直流電力を給電または受電する。第15実施形態において合計直流電力指令値Cpの算定に適用される変換損失X3には、電力調整装置32による電力変換に起因した電力損失を、複数の蓄電ユニットU[m]にわたり合計した数値が含まれる。
【0301】
図64に例示される通り、変電設備21と蓄電システム30との間には交直変換装置24が設置される。交直変換装置24は、直流電力と交流電力とを相互に変換するAC/DCコンバータである。交直変換装置24と変電設備21との間では交流電力が授受され、交直変換装置24と各蓄電ユニットU[m]との間では直流電力が授受される。以上の構成において、変電損失X1は、変電設備21による変電に起因した電力損失であり、変換損失x[m]は、交直変換装置24の損失と各蓄電ユニットU[m]の電力調整装置32(DC/DCコンバータ)の損失の合計である。
【0302】
第15実施形態の管理システム100は、負荷設備22aと負荷設備22bとを含む。負荷設備22aは、第1実施形態の負荷設備22と同様に、複数の蓄電ユニットU[m]に対して並列に設置される。負荷設備22bは、交直変換装置24と変電設備21との間に接続される。第15実施形態の負荷損失X2は、負荷設備22aにおける電力損失と負荷設備22bにおける電力損失との合計値である。
【0303】
第15実施形態においても第1実施形態と同様に、指令算定部51は、変電損失X1と負荷損失X2と変換損失X3とを含む電力損失(X1+X2+X3)を基礎指令値C0に付加することで、合計直流電力指令値Cpを算定する。なお、第14実施形態の発電設備23が第15実施形態に追加されてもよい。
【0304】
16.第16実施形態
図65は、第16実施形態における各蓄電ユニットU[m]の構成を例示するブロック図である。図65に例示される通り、第16実施形態の蓄電ユニットU[m]は、前述の各形態と同様の要素(蓄電装置31,電力調整装置32)に加えて負荷設備33を具備する。負荷設備33は、電力調整装置32から供給される電力の消費により動作する各種の負荷である。例えば、負荷設備33は、蓄電ユニットU[m]内で使用される補機動力または制御電源を生成する電源装置である。
【0305】
第16実施形態における各蓄電ユニットU[m]の変換損失x[m]には、変圧器321および交直変換器322の損失(さらには線路損失)に加えて、当該蓄電ユニットU[m]における負荷設備33の有効電力X31が加算される。すなわち、第16実施形態における変換損失X3は、複数の蓄電ユニットU[m]における負荷設備33の有効電力X31の合計を含む。負荷設備33の有効電力X31は、例えば各蓄電ユニットU[m]に設置された計測器(図示略)により計測される。
【0306】
以上に説明した第16実施形態において、第10実施形態のように蓄電システム30の運転の過程において1個以上の蓄電ユニットU[m]が停止される場合を想定する。前掲の図47の例示と同様に、制限値設定部522は、期間Tbの始点から終点にかけて制限値L[1]_dを現在値40から数値-X31まで経時的に減少させる。したがって、有効電力配分値P[1]は、期間Tbの始点から終点にかけて現在値39から数値-X31まで経時的に減少する。
【0307】
17.変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0308】
(1)以上に例示した複数の実施形態から選択された2以上の実施形態は任意に併合されてよい。前述の各実施形態に例示した構成は、他の実施形態の構成を前提とせずに実施されてよい。
【0309】
(2)前述の形態に係る制御システム40の機能は、前述の通り、制御装置41を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置42に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0310】
(3)本願における「第n」(nは自然数)という記載は、各要素を表記上において区別するための形式的かつ便宜的な標識(ラベル)としてのみ使用され、如何なる実質的な意味も持たない。したがって、「第n」という表記を根拠として、各要素の位置または順番等が限定的に解釈される余地はない。
【0311】
18.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0312】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る制御システムは、直流電力を放電および充電する蓄電装置を含む複数の蓄電ユニットにより電力系統との合成点における有効電力を調整する蓄電システムを制御する制御システムであって、前記直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、前記蓄電システムおよび前記合成点の間の変電設備と前記蓄電システムとの間の相互間の変圧による変電損失とを含む電力損失を、前記有効電力の基礎指令値に付加することで、前記複数の蓄電ユニットにおける前記蓄電装置が放電または充電すべき電力の合計値である合計直流電力指令値を算定する指令算定部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき有効電力配分値を前記合計直流電力指令値から算定する指令配分部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの有効電力配分値を指示する動作指示部とを具備する。
【0313】
以上の態様においては、蓄電装置が放電または充電する直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、変電設備と蓄電システムとの間の相互間の変圧による変電損失(すなわち、蓄電システムと変電設備との間の交流電圧と合成点における合成点電圧との相互間の変圧により発生する損失)とを含む電力損失が基礎指令値に付加されることで合計直流電力指令値が算定され、合計直流電力指令値が各蓄電ユニットに配分される。したがって、直流電力と交流電力との間の変換損失、および蓄電システムと変電設備との間の変電損失とを考慮せずに基礎指令値を各蓄電ユニットに配分する形態と比較して、各蓄電ユニットに指示される有効電力配分値を適正に算定できる。基礎指令値が微小な場合には、当該基礎指令値に対する変換損失および変電損失の影響が相対的に増大するから、変換損失および変電損失が基礎指令値に加味される本開示の構成は特に有効である。
【0314】
態様1の具体例(態様2)において、前記指令配分部は、前記複数の蓄電ユニットの各々について配分係数を設定する係数設定部と、前記合計直流電力指令値のうち前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき第1電力配分値を、前記各蓄電ユニットの配分係数に応じて算定する配分処理部とを含む。以上の態様によれば、各蓄電ユニットの配分係数に応じて合計直流電力指令値を複数の蓄電ユニットの各々に配分できる。
【0315】
態様2の具体例(態様3)において、前記指令配分部は、前記複数の蓄電ユニットの各々について制限値を設定する制限値設定部をさらに含み、前記配分処理部は、前記複数の蓄電ユニットのうち前記第1電力配分値が前記制限値を超過する1以上の蓄電ユニットについて当該超過値を合計した合計超過値を、前記複数の蓄電ユニットのうち前記第1電力配分値が前記制限値を超過しない1以上の蓄電ユニットの各々に配分する。以上の態様においては、合成点の有効電力を基礎指令値に維持しながら、各蓄電ユニットに配分される電力を制限値の範囲内に抑制できる。
【0316】
態様3の具体例(態様4)において、前記制限値設定部は、前記複数の蓄電ユニットの各々について、当該蓄電ユニットの相異なる状態に関する複数の候補値から前記制限値を選択する。以上の態様においては、蓄電ユニットの相異なる状態に関する複数の候補値から制限値が選択される。したがって、蓄電ユニットの状態に関する複数の観点から制限値を適切に設定できる。
【0317】
態様4の具体例(態様5)において、前記複数の候補値は、前記蓄電装置の電圧に応じた第1候補値を含み、前記第1候補値は、前記電圧が第1範囲内の数値である場合には第1値に設定され、前記電圧が前記第1範囲とは相違する第2範囲内の数値である場合には前記第1値とは相違する第2値に設定され、前記電圧が前記第1範囲と前記第2範囲との間の第3範囲内の数値である場合には、前記電圧に応じて前記第1値と前記第2値との間で変化する数値に設定される。以上の態様においては、蓄電装置の電圧に応じて第1候補値が設定される。したがって、蓄電装置の電圧の観点から制限値を適切に設定できる。また、電圧が第3範囲内の数値である場合、第1候補値は第1値と第2値との間で電圧に応じて変化する。したがって、第1候補値が第1値および第2値の何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置の電圧に応じた制限値の急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。
【0318】
態様4の具体例(態様6)において、前記複数の候補値は、前記蓄電装置の充電率に応じた第2候補値を含み、前記第2候補値は、前記充電率が第1範囲内の数値である場合には第1値に設定され、前記充電率が前記第1範囲とは相違する第2範囲内の数値である場合には前記第1値とは相違する第2値に設定され、前記充電率が前記第1範囲と前記第2範囲との間の第3範囲内の数値である場合には、前記充電率に応じて前記第1値と前記第2値との間で変化する数値に設定される。以上の態様においては、蓄電装置の充電率に応じて第2候補値が設定される。したがって、蓄電装置の充電率の観点から制限値を適切に設定できる。また、充電率が第3範囲内の数値である場合、第2候補値は第1値と第2値との間で充電率に応じて変化する。したがって、第2候補値が第1値および第2値の何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置の充電率に応じた制限値の急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。
【0319】
態様4の具体例(態様7)において、前記複数の候補値は、前記蓄電装置の温度に応じた第3候補値を含み、前記第3候補値は、前記温度が第1範囲内の数値である場合には第1値に設定され、前記温度が前記第1範囲とは相違する第2範囲内の数値である場合には前記第1値とは相違する第2値に設定され、前記温度が前記第1範囲と前記第2範囲との間の第3範囲内の数値である場合には、前記温度に応じて前記第1値と前記第2値との間で変化する数値に設定される。以上の態様においては、蓄電装置の温度に応じて第3候補値が設定される。したがって、蓄電装置の温度の観点から制限値を適切に設定できる。また、温度が第3範囲内の数値である場合、第3候補値は第1値と第2値との間で温度に応じて変化する。したがって、第3候補値が第1値および第2値の何れかに択一的に設定される形態と比較して、蓄電装置の温度に応じた制限値の急峻かつ頻繁な変動を抑制できる。
【0320】
態様2から態様7の何れかの具体例(態様8)において、態様前記係数設定部は、前記複数の蓄電ユニットの各々について加重値を設定する第1処理と、前記複数の蓄電ユニットの各々について、当該蓄電ユニットの運転ワットアワー容量に応じた補正値を設定する第2処理と、前記複数の蓄電ユニットの各々について、前記加重値と前記補正値とに応じて前記配分係数を算定する第3処理とを実行する。以上の態様においては、蓄電ユニットの運転ワットアワー(Wh)容量に応じて配分係数が設定される。例えば、運転ワットアワー容量が大きいほど配分係数が大きい数値に設定される。したがって、各蓄電ユニットの間における充放電の時間または充電率のばらつきを抑制できる。
【0321】
態様8の具体例(態様9)において、前記第1処理は、前記蓄電ユニットにおける前記蓄電装置の充電率を所定の標準範囲内の数値に正規化する正規化処理と、前記正規化後の充電率と基準値との第1偏差を算定する偏差算定処理と、前記第1偏差に応じて前記加重値を設定する加重値設定処理とを含む。以上の態様においては、各蓄電ユニットにおける蓄電装置の充電率に応じて加重値が設定される。したがって、各蓄電ユニットの出力が蓄電装置の充電率に起因して制限される可能性を低減できる。すなわち、蓄電システム全体の蓄電容量を有効に利用できる。
【0322】
態様9の具体例(態様10)において、前記加重値設定処理においては、前記第1偏差が第1閾値を下回る数値から当該第1閾値を上回る数値に変化した場合に、前記加重値を所定の第1値に設定し、前記第1偏差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を上回る数値から当該第2閾値を下回る数値に変化した場合に、前記加重値を、前記第1偏差に応じた第2値に設定する。以上の態様においては、第1偏差と加重値との関係がヒステリシス特性を示す。したがって、第1偏差が第1閾値または第2閾値の近傍で変動した場合でも、加重値について過度に頻繁な変動を抑制できる。
【0323】
態様9の具体例(態様11)において、前記加重値設定処理においては、第1偏差と加重値との関係を前記合計直流電力指令値に応じて決定し、前記偏差算定処理により算定された第1偏差に対して前記関係にある数値を前記加重値として設定する。以上の態様においては、第1偏差と加重値との関係が合計直流電力指令値に応じて決定される。したがって、第1偏差と加重値との関係が固定である形態と比較して、合計直流電力指令値を複数の蓄電ユニットに対して適切に配分できる。
【0324】
態様8から態様11の何れかの具体例(態様12)において、前記第1処理は、当該蓄電ユニットにおける前記蓄電装置の温度を所定の標準範囲内の数値に正規化する正規化処理と、前記正規化後の温度と基準値との第2偏差を算定する偏差算定処理と、前記第2偏差に応じて前記加重値を設定する加重値設定処理とを含む。以上の態様においては、各蓄電ユニットにおける蓄電装置の温度に応じて加重値が設定される。したがって、各蓄電ユニットの出力が蓄電装置の温度に起因して制限される可能性を低減できる。すなわち、蓄電システム全体の蓄電容量を有効に利用できる。
【0325】
態様12の具体例(態様13)において、前記加重値設定処理においては、前記第2偏差が第1閾値を下回る数値から当該第1閾値を上回る数値に変化した場合に、前記加重値を所定の第1値に設定し、前記第2偏差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を上回る数値から当該第2閾値を下回る数値に変化した場合に、前記加重値を、前記温度偏差に応じた第2値に設定する。以上の態様においては、第2偏差と加重値との関係がヒステリシス特性を示す。したがって、第2偏差が第1閾値または第2閾値の近傍で変動した場合でも、加重値について過度に頻繁な変動を抑制できる。
【0326】
態様12の具体例(態様14)において、前記加重値設定処理においては、第2偏差と加重値との関係を前記合計直流電力指令値に応じて決定し、前記偏差算定処理により算定された第2偏差に対して前記関係にある数値を前記加重値として設定する。以上の態様においては、第2偏差と加重値との関係が合計直流電力指令値に応じて決定される。したがって、第2偏差と加重値との関係が固定である形態と比較して、合計直流電力指令値を複数の蓄電ユニットに対して適切に配分できる。
【0327】
態様8から態様14の何れかの具体例(態様15)において、前記第1処理は、当該蓄電ユニットにおける前記蓄電装置の充放電回数を所定の標準範囲内の数値に正規化する正規化処理と、前記正規化後の充放電回数と基準値との第3偏差を算定する偏差算定処理と、前記第3偏差に応じて前記加重値を設定する加重値設定処理とを含む。以上の態様においては、各蓄電ユニットにおける蓄電装置の充放電回数に応じて加重値が設定される。したがって、各蓄電ユニットの出力が蓄電装置の充放電回数に起因して制限される可能性を低減できる。すなわち、蓄電システム全体の蓄電容量を有効に利用できる。
【0328】
態様15の具体例(態様16)において、前記加重値設定処理においては、前記第3偏差が第1閾値を下回る数値から当該第1閾値を上回る数値に変化した場合に、前記加重値を所定の第1値に設定し、前記第3偏差が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を上回る数値から当該第2閾値を下回る数値に変化した場合に、前記加重値を、前記第3偏差に応じた第2値に設定する。以上の態様においては、第3偏差と加重値との関係がヒステリシス特性を示す。したがって、第3偏差が第1閾値または第2閾値の近傍で変動した場合でも、加重値について過度に頻繁な変動を抑制できる。
【0329】
態様15の具体例(態様17)において、前記加重値設定処理においては、第3偏差と加重値との関係を前記合計直流電力指令値に応じて決定し、前記偏差算定処理により算定された第3偏差に対して前記関係にある数値を前記加重値として設定する。以上の態様においては、第3偏差と加重値との関係が合計直流電力指令値に応じて決定される。したがって、第3偏差と加重値との関係が固定である形態と比較して、合計直流電力指令値を複数の蓄電ユニットに対して適切に配分できる。
【0330】
態様8から態様17の何れかの具体例(態様18)において、前記第1処理においては、当該蓄電ユニットにおける蓄電装置の充電率に応じた第1加重値と、前記蓄電装置の温度に応じた第2加重値と、前記蓄電装置の充放電回数に応じた第3加重値とに応じて前記加重値を設定する。以上の態様においては、蓄電ユニットの充電率、温度および充放電回数に応じて加重値が設定される。したがって、蓄電ユニットの特定の状態のみに応じて加重値が設定される形態と比較して、蓄電装置の状態に関する多様な観点から適切な加重値(ひいては配分係数)を設定できる。加重値は、例えば第1加重値と第2加重値と第3加重値との加重和により算定される。
【0331】
態様8から態様18の何れかの具体例(態様19)において、前記第1処理は、前記配分係数の時間的な変動の速度を低減する処理を含む。以上の態様においては、配分係数の時間的な変動の速度が低減されるから、各蓄電ユニットに対する配分値の急峻な変動が抑制される。したがって、各蓄電ユニットにおける配分係数の急峻な変動に起因して合成点の有効電力が突発的に変動する可能性を低減できる。
【0332】
態様3から態様19の何れかの具体例(態様20)において、前記複数の蓄電ユニットのうち一の蓄電ユニットを起動または停止する場合に、前記係数設定部は、所定の時間をかけて前記配分係数を経時的に変化させ、前記制限値設定部は、所定の時間をかけて前記制限値を経時的に変化させる。以上の態様においては、蓄電ユニットの起動または停止に起因した配分係数および制限値の不連続な変動が抑制される。したがって、各蓄電ユニットにおける配分係数の急峻な変動に起因して合成点の有効電力が突発的に変動する可能性を低減できる。
【0333】
態様1から態様20の何れかの具体例(態様21)において、前記蓄電システムは、保守状態にある蓄電ユニットを含み、前記指令算定部は、前記保守状態にある蓄電ユニットに関する保守用の電力を前記基礎指令値に付加する。以上の態様によれば、合成点の有効電力を基礎指令値に維持しながら、蓄電ユニットの保守に必要な電力を稼働中の他の蓄電ユニットにより融通できる。
【0334】
態様1から態様21の何れかの具体例(態様22)において、前記指令算定部は、前記基礎指令値から補正電力を減算することで前記合計直流電力指令値を算定し、前記配分処理部は、前記複数の蓄電ユニットのうち優先ユニット以外の各通常ユニットについて、前記合計直流電力指令値から前記有効電力配分値を算定し、前記優先ユニットについて、前記補正電力を前記有効電力配分値として設定する。以上の態様においては、基礎電力から減算された補正電力が、優先ユニットの有効電力配分値として設定される。したがって、補正電力の放電または充電を優先ユニットに優先的(または強制的)に実行させることが可能である。
【0335】
態様1から態様22の何れかの具体例(態様23)において、前記指令算定部は、前記複数の蓄電ユニットが生成すべき無効電力の合計値である合計無効電力指令値を算定し、前記指令配分部は、前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき無効電力配分値を前記合計無効電力指令値から算定し、前記動作指示部は、前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの無効電力配分値を指示する。以上の態様によれば、各蓄電ユニットにおける有効電力の生成だけでなく無効電力の生成も制御できる。
【0336】
態様1から態様23の何れかの具体例(態様24)において、前記指令算定部は、発電システムが生成する有効電力を前記基礎指令値から減算する。以上の態様によれば、複数の蓄電システムに発電設備が並設された環境においても、合成点の有効電力を基礎指令値に高精度に維持できる。
【0337】
態様1から態様24の何れかの具体例(態様25)において、前記指令算定部は、負荷設備が消費する有効電力を前記基礎指令値に付加する。以上の態様によれば、蓄電システムが生成した電力を負荷設備が消費する環境においても、合成点の有効電力を基礎指令値に高精度に維持できる。
【0338】
本開示のひとつの態様(態様26)に係る管理システムは、直流電力を放電および充電する蓄電装置を含む複数の蓄電ユニットにより電力系統との合成点における有効電力を調整する蓄電システムと、前記蓄電システムを制御する制御システムとを具備し、前記制御システムは、前記直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、前記蓄電システムおよび前記合成点の間の変電設備と前記蓄電システムとの間の相互間の変圧による変電損失とを含む電力損失を、前記有効電力の基礎指令値に付加することで、前記複数の蓄電ユニットにおける前記蓄電装置が放電または充電すべき電力の合計値である合計直流電力指令値を算定する指令算定部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき有効電力配分値を前記合計直流電力指令値から算定する指令配分部と、前記複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの有効電力配分値を指示する動作指示部とを具備する。
【符号の説明】
【0339】
100…管理システム、10、10a,10b…電力系統、11,11a,11b…合成点、21、21a,21b…変電設備、22,22a,22b…負荷設備、23…発電設備、24…交直変換装置、30…蓄電システム、31…蓄電装置、32…制御装置、321…変圧器、322…交直変換器、33…負荷設備、40…制御システム、41…制御装置、42…記憶装置、43…送受信装置、51…指令算定部、52…指令配分部、521…係数設定部、522…制限値設定部、523…配分処理部、53…動作指示部、61…第1設定部、611…候補値設定部、612…候補値設定部、613…候補値設定部、614…候補値選択部、62…第2設定部、621…候補値設定部、622…候補値設定部、623…候補値設定部、614…候補値選択部、5212…切替部、5213…平滑部。
【要約】
【課題】複数の蓄電装置に指示される有効電力の配分を適正に算定する。
【解決手段】制御システム40は、直流電力を放電および充電する蓄電装置を含む複数の蓄電ユニットにより電力系統との合成点における有効電力を調整する蓄電システムを制御する制御システムであって、直流電力と交流電力との間の変換による変換損失と、交流電力と合成点における有効電力との間の変換による変換損失とを含む電力損失を、有効電力の基礎指令値C0に付加することで、複数の蓄電ユニットにおける蓄電装置が放電または充電すべき電力の合計値である合計直流電力指令値Cpを算定する指令算定部51と、合計直流電力指令値Cpのうち複数の蓄電ユニットの各々に配分されるべき有効電力配分値P[m]を算定する指令配分部52と、複数の蓄電ユニットの各々に対して当該蓄電ユニットの有効電力配分値P[m]を指示する動作指示部53とを具備する。
【選択図】図3
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