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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/02 20060101AFI20250115BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
F16K31/02 Z
B81B3/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024514880
(86)(22)【出願日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2023012525
(87)【国際公開番号】W WO2023199742
(87)【国際公開日】2023-10-19
【審査請求日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2022065329
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河本 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】小原 公和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇気
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-143786(JP,A)
【文献】特表2011-530683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/02
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外層(Y11)と、
第2外層(Y13)と、
前記第1外層と前記第2外層に挟まれると共に流体が流通する流体室(Y19)を形成する中間層(Y12)と、を備え、
前記第1外層または前記第2外層には、前記流体室と連通可能な第1流路孔(Y16)が形成され、
前記第1外層または前記第2外層には、前記流体室と連通可能な第2流路孔(Y17、Y171~Y175)が形成され、
前記中間層は、通電の有無に応じて自らの温度が変化することで変位する駆動部(Y123、Y124、Y125)と、
前記駆動部が変位したときに、前記駆動部に付勢されると共に前記駆動部の変位を増幅する変位増幅部材(Y131)と、
前記変位増幅部材によって増幅された変位を力点(YV1)で受けることで、支点部(Y126)を中心に回転する可動部(Y127)と、
前記可動部が回転する際に前記可動部の作用点(YV3)から付勢されて前記流体室内で動くことで前記流体室に対する前記第2流路孔の開度を調整する弁体(Y128)と、を有する、弁装置。
【請求項2】
前記支点部は第1支点部であり、
前記力点は第1力点であり、
前記駆動部が変位したときに、前記駆動部によって前記変位増幅部材が第2力点(YV2)で付勢されて前記変位増幅部材が第2支点部(Y132)を中心に回転することで、前記変位増幅部材が前記第1力点で前記可動部を付勢し、
前記第2支点部から前記第1力点までの距離は、前記第2支点部から前記第2力点までの距離よりも長い、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記変位増幅部材は、前記可動部の長手方向に沿って伸び、
前記第2力点よりも、前記第1力点の方が、前記第1支点部に近い位置にある、請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記変位増幅部材は、前記駆動部が通電されたときに、前記駆動部に付勢されると共に通電されて自らの温度が上昇して膨張することで、前記駆動部の変位を増幅する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の弁装置。
【請求項5】
前記第2流路孔は、複数のサブ流路孔(Y171~Y175)を有し、
前記弁体は、複数のサブ弁体(81~85)と、前記複数のサブ弁体を補強するための補強部(86)とを有し、
前記複数のサブ弁体は、前記流体室内で動くことでそれぞれ前記複数のサブ流路孔の前記第1流路孔に対する開度を調整し、
前記補強部は、前記複数のサブ弁体のうち複数に繋がっている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2022年4月11日に出願された日本特許出願番号2022-065329号に基づくもので、ここにその記載内容が参照により組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、通電の有無に応じて自らの温度が変化することで変位する駆動部と、駆動部の変位を梃子の原理で増幅する可動部と、可動部によって増幅された変位が伝達されることで動いて流路孔を開閉する弁体とを有するMEMSバルブが開示されている。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略称である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許9505608号
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載のMEMSバルブにおいて、開弁時の開口面積を更に大きくすることが望ましい場合があるが、発明者の検討によれば、そのためには、可動部を長くする等によりMEMSバルブの体格が大きくなってしまう恐れがある。このことは、MEMSバルブに限らず、梃子の原理を利用して弁体を動かす弁装置全般においても言える。本開示は、通電の有無に応じた温度変化によって発生する駆動部の変位を梃子の原理で増幅して弁体に伝える弁装置において、体格の増大を抑制しつつ開弁時の開口面積を増大させること、あるいは、開弁時の開口面積の低減を抑制しつつ体格を低減することを目的とする。
【0006】
本開示の1つの観点によれば、弁装置は、
第1外層と、
第2外層と、
前記第1外層と前記第2外層に挟まれると共に流体が流通する流体室を形成する中間層と、を備え、
前記第1外層または前記第2外層には、前記流体室と連通可能な第1流路孔が形成され、
前記第1外層または前記第2外層には、前記流体室と連通可能な第2流路孔が形成され、
前記中間層は、通電の有無に応じて自らの温度が変化することで変位する駆動部と、
前記駆動部が変位したときに、前記駆動部に付勢されると共に前記駆動部の変位を増幅する変位増幅部材と、
前記変位増幅部材によって増幅された変位を力点で受けることで、支点部を中心に回転する可動部と、
前記可動部が回転する際に前記可動部の作用点から付勢されて前記流体室内で動くことで前記流体室に対する前記第2流路孔の開度を調整する弁体と、を有する。
【0007】
このように、梃子の原理を利用する可動部に加え、変位増幅部材が駆動部の変位を増幅するので、弁装置の体格の増大を抑制しつつ開弁時の開口面積を増大させること、あるいは、開弁時の開口面積の低減を抑制しつつ体格を低減することが、可能になる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】マイクロバルブの正面図である。
図2】マイクロバルブの側面図である。
図3】マイクロバルブの部品展開図である。
図4】非通電時のマイクロバルブの第1外層を省略した正面図である。
図5】電位および電流が表された中間層の正面図である。
図6】通電時の中間層の正面図である。
図7】従来と梃子2段との違いを表す概念図である。
図8】第2実施形態に係る非通電時のマイクロバルブの第1外層を省略した正面図である。
図9】電位および電流が表された中間層の正面図である。
図10】第3実施形態におけるマイクロバルブの部品展開図である。
図11】非通電時のマイクロバルブの第1外層を省略した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。図1図2図3に示すように、マイクロバルブY1は、板形状の弁部品であり、主として半導体チップによって構成されている。したがって、マイクロバルブY1を小型に構成できる。マイクロバルブY1の板厚は例えば2mmであり、厚さ方向に直交する長手方向の長さは例えば10mmであり、長手方向にも厚さ方向にも直交する短手方向の長さは例えば5mmであるが、サイズはこれに限定されない。マイクロバルブY1への供給電力が切り替わることで、マイクロバルブY1の流路構成が変化する。マイクロバルブY1は、例えば、それ自体が流体(例えば、気体、液体)の流路を開閉する弁であってもよいし、他の弁を駆動するパイロット弁であってもよい。
【0011】
マイクロバルブY1は、いずれも半導体である第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13を備えたMEMSバルブである。第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13は、それぞれが概ね同じ外形を有する長方形の板形状の部材であり、第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13の順に積層されている。すなわち、中間層Y12が、第1外層Y11と第2外層Y13に両側から挟まれている。第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13のうち、第2外層Y13が、バルブケーシングY2の底壁に最も近い側に配置される。後述する第1外層Y11、中間層Y12、第2外層Y13の構造は、化学的エッチング等の半導体製造プロセスによって形成される。
【0012】
第1外層Y11は、導電性の半導体部材の表面に非導電性の酸化膜が形成された電極ポート層である。第1外層Y11には、図3に示すように、表裏に貫通する2つの貫通孔Y14、Y15が形成されている。この貫通孔Y14、Y15に、それぞれ、電気配線のマイクロバルブY1側端が挿入される。なお、他の例として、貫通孔Y14、Y15は、両方が第2外層Y13に形成されていてもよいし、一方が第1外層Y11に形成され、他方が第2外層Y13に形成されてもよい。
【0013】
第2外層Y13は、導電性の半導体部材の表面に非導電性の酸化膜が形成された流路穴層である。第2外層Y13には、図3図4に示すように、表裏に貫通する第1流路孔Y16、第2流路孔Y17が形成されている。第1流路孔Y16、第2流路孔Y17の各々の水力直径は、例えば0.1mm以上かつ3mm以下であるが、これに限定されない。なお、他の例として、第1流路孔Y16、第2流路孔Y17は、両方が第1外層Y11に形成されていてもよいし、一方が第1外層Y11に形成され、他方が第2外層Y13に形成されてもよい。
【0014】
中間層Y12は、導電性の半導体部材であり、第1外層Y11と第2外層Y13に挟まれたアクチュエータ層である。中間層Y12は、第1外層Y11の酸化膜と第2外層Y13の酸化膜に接触するので、第1外層Y11と第2外層Y13とも電気的に非導通である。中間層Y12は、図4に示すように、第1固定部Y121、第2固定部Y122、複数本の第1リブY123、複数本の第2リブY124、脊柱Y125、第1支点部Y126、可動部Y127、弁体Y128を有している。さらに中間層Y12は、変位増幅部材Y131、第2支点部Y132、第3固定部Y133、第4固定部Y134を有している。
【0015】
第1固定部Y121、第2固定部Y122、第3固定部Y133、第4固定部Y134は、第1外層Y11、第2外層Y13に対して接着等で固定された部材である。第1固定部Y121は、第2固定部Y122、第1リブY123、第2リブY124、脊柱Y125、第1支点部Y126、可動部Y127、弁体Y128、変位増幅部材Y131、第2支点部Y132、第3固定部Y133、第4固定部Y134を同じ1つの流体室Y19内にスリットで隔てて囲むように形成されている。流体室Y19は、第1固定部Y121、第1外層Y11、第2外層Y13によって囲まれた室である。第1固定部Y121、第1外層Y11、第2外層Y13は、全体として基部に対応する。なお、電気配線は複数の第1リブY123および複数の第2リブY124の温度を変化させて変位させるための電気配線である。
【0016】
第1固定部Y121の第1外層Y11および第2外層Y13に対する固定は、流体がこの流体室Y19から第1流路孔Y16、第2流路孔Y17以外を通ってマイクロバルブY1から漏出することを抑制するような形態で、行われている。第2固定部Y122は、第1固定部Y121に取り囲まれると共に、スリットを介して第1固定部Y121と第4固定部Y134から離れて配置される。
【0017】
第3固定部Y133は、第1固定部Y121に取り囲まれると共に、第1固定部Y121、可動部Y127、第1リブY123からスリットを介して離れて配置される。また、第3固定部Y133は、第2固定部Y122からも離れている。第3固定部Y133は、複数本の第1リブY123と可動部Y127の間に配置されている。
【0018】
第4固定部Y134は、第1固定部Y121に取り囲まれると共に、第1固定部Y121、第2固定部Y122、第2リブY124、変位増幅部材Y131から、スリットを介して離れて配置される。また、第4固定部Y134は、第3固定部Y133からも離れている。第4固定部Y134は、複数本の第2リブY124と可動部Y127の間に配置されている。
【0019】
複数本の第1リブY123、複数本の第2リブY124、脊柱Y125、第1支点部Y126、可動部Y127、弁体Y128、第2支点部Y132は、第1外層Y11、第2外層Y13に対して固定されておらず、第1外層Y11、第2外層Y13に対して変位可能である。
【0020】
脊柱Y125は、中間層Y12の矩形形状の短手方向に伸びる細長い棒形状を有している。したがって、脊柱Y125は、変位増幅部材Y131の長手方向および可動部Y127の長手方向に対して交差する方向に伸びている。脊柱Y125の長手方向の一端は、変位増幅部材Y131に接続されている。
【0021】
複数本の第1リブY123は、脊柱Y125の長手方向に直交する方向における脊柱Y125の一方側に配置される。そして、複数本の第1リブY123は、脊柱Y125の長手方向に、スリットを隔てて並んでいる。各第1リブY123は、細長い棒形状を有しており、温度に応じて伸縮可能となっている。
【0022】
各第1リブY123は、その長手方向の一端で第1固定部Y121に接続され、他端で脊柱Y125に接続される。そして、各第1リブY123は、第1固定部Y121側から脊柱Y125側に近付くほど、脊柱Y125の長手方向の変位増幅部材Y131側に向けてオフセットされるよう、脊柱Y125に対して斜行している。そして、複数の第1リブY123は、互いに対して平行に伸びている。
【0023】
複数本の第2リブY124は、脊柱Y125の長手方向に直交する方向における脊柱Y125の他方側に配置される。そして、複数本の第2リブY124は、脊柱Y125の長手方向にスリットを隔てて並んでいる。各第2リブY124は、細長い棒形状を有しており、温度に応じて伸縮可能となっている。
【0024】
各第2リブY124は、その長手方向の一端で第2固定部Y122に接続され、他端で脊柱Y125に接続される。そして、各第2リブY124は、第2固定部Y122側から脊柱Y125側に近付くほど、脊柱Y125の長手方向の変位増幅部材Y131側に向けてオフセットされるよう、脊柱Y125に対して斜行している。そして、複数の第2リブY124は、互いに対して平行に伸びている。
【0025】
複数本の第1リブY123、複数本の第2リブY124、脊柱Y125は、全体として、駆動部に対応する。
【0026】
第2支点部Y132は、脊柱Y125と非直交かつ平行に伸びる棒形状を有している。第2支点部Y132の一端は変位増幅部材Y131に接続されており、他端は第3固定部Y133に接続されている。第2支点部Y132の延伸方向と変位増幅部材Y131の長手方向は、互いに交差している。第2支点部Y132の側面は、すなわち、第2支点部Y132の延伸方向に交差する方向における第2支点部Y132の端面は、スリットに面している。
【0027】
変位増幅部材Y131は、脊柱Y125および第2支点部Y132に対して約90°で交差する方向に伸びる細長い棒形状を有している。変位増幅部材Y131は、温度に応じて伸縮可能となっている。また、変位増幅部材Y131の大部分は、可動部Y127の長手方向に沿って伸びている。また、変位増幅部材Y131の第2支点部Y132とは反対側の端部は、可動部Y127側に折れ曲がり、折れ曲がった先で可動部Y127に接続されている。なお、変位増幅部材Y131のうち、可動部Y127の長手方向に沿って伸びている部分は、直線的に伸びていてもよいし、緩やかにカーブしていてもよいし、蛇行して全体として可動部Y127の長手方向に沿って伸びていてもよい。なお、変位増幅部材Y131のうち、可動部Y127の長手方向に沿って伸びている部分は、全体として、可動部Y127の長手方向に対して45°未満であればよい。
【0028】
ここで、第2支点部Y132と、第1力点YV1と、第2力点YV2との位置関係について説明する。第1力点YV1は、変位増幅部材Y131と可動部Y127の接続箇所である。第2力点YV2は、脊柱Y125と変位増幅部材Y131の接続箇所である。
【0029】
第2支点部Y132、第2力点YV2、第1力点YV1は、変位増幅部材Y131の長手方向に沿って、変位増幅部材Y131の第2支点部Y132側の端部から可動部Y127側の端部に向けて、この順に並んでいる。したがって、第2支点部Y132から第1力点YV1までの距離は、第2支点部Y132から第2力点YV2までの距離よりも長い。この関係は、ここでいう距離が直線距離であっても成立し、ここでいう距離が変位増幅部材Y131の長手方向に沿った距離であっても成立する。
【0030】
第1支点部Y126は、可動部Y127に交差して伸びる棒形状を有している。第1支点部Y126の延伸方向の一端は、可動部Y127に接続されている。第1支点部Y126の延伸方向の他端は、第4固定部Y134に接続されている。第1支点部Y126の側面は、すなわち、第1支点部Y126の延伸方向に交差する方向における第1支点部Y126の端面は、スリットに面している。
【0031】
可動部Y127は、中間層Y12の長手方向に沿って伸びる細長い棒形状を有している。可動部Y127の一方側の端部は、第1支点部Y126に接続されている。可動部Y127の第1支点部Y126側とは反対側の端部は、弁体Y128に接続されている。可動部Y127の第1支点部Y126側の端部から弁体Y128側の端部までの、中間層Y12の長手方向に沿った長さは、中間層Y12の長手方向の全長の1/2以上である。このように可動部Y127を長く形成することで、可動部Y127による梃子の作用を大きくすることができる。
【0032】
ここで、第1支点部Y126と、第1力点YV1と、作用点YV3との位置関係について説明する。作用点YV3は、可動部Y127と弁体Y128の接続箇所である。第2力点YV2は、可動部Y127にとっては力点であり、変位増幅部材Y131にとっては作用点である。
【0033】
第1支点部Y126、第1力点YV1、作用点YV3は、可動部Y127の長手方向に沿って、可動部Y127の第1支点部Y126側の端部から弁体Y128側の端部に向けて、この順に並んでいる。したがって、第1支点部Y126から作用点YV3までの距離は、第1支点部Y126から第1力点YV1までの距離よりも長い。この関係は、ここでいう距離が直線距離であっても成立し、ここでいう距離が可動部Y127の長手方向に沿った距離であっても成立する。
【0034】
弁体Y128は、その外形が、可動部Y127の長手方向に対して概ね90°の方向に伸びる、すなわち、中間層Y12の短手方向に伸びる、矩形形状を有している。この弁体Y128は、流体室Y19内において可動部Y127と一体に動くことができる。そして、弁体Y128は、中間層Y12の表裏に貫通する窓孔Y120を囲む枠形状となっている。したがって、窓孔Y120も、弁体Y128と一体的に移動する。窓孔Y120は、流体室Y19の一部である。弁体Y128は、上記のように動くことで、第2流路孔Y17の窓孔Y120に対する開度を変更する。第1流路孔Y16は、窓孔Y120に対して(すなわち、流体室Y19に対して)常に開状態で連通している。
【0035】
また、第1固定部Y121のうち、複数の第1リブY123と接続する部分の近傍の第1印加点Y129には、図3に示した第1外層Y11の貫通孔Y14を通る電気配線のマイクロバルブY1側端が接続される。また、第2固定部Y122の第2印加点Y130には、図3に示した第1外層Y11の貫通孔Y15を通る電気配線のマイクロバルブY1側端が接続される。これら電気配線によって、マイクロバルブY1への通電、非通電の切り替えが行われる。
【0036】
ここで、マイクロバルブY1の作動について説明する。マイクロバルブY1への通電が行われていない状態では、中間層Y12は図4に示した状態になっている。このとき、第1流路孔Y16は窓孔Y120に対して開口(例えば全開、半開)の状態となり、第2流路孔Y17は弁体Y128に塞がれることで窓孔Y120に対して全閉の状態となる。このときの弁体Y128の位置を、非通電時位置という。
【0037】
マイクロバルブY1への通電が開始されると、電気配線によって第1印加点Y129、第2印加点Y130の間に電圧が印加される。ここでは、一例として、第1印加点Y129が12V、第2印加点Y130が0Vとなる電圧が印可されるとするが、これに限られない。
【0038】
電圧が印可されると、図5に示すように、中間層Y12において、第2固定部Y122の電位が12Vとなり、第1固定部Y121の電位が0Vとなる。したがって、第2固定部Y122が、複数の第2リブY124、複数の第1リブY123を介して、第1固定部Y121と導通する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々において、破線矢印のように電流が流れる。この電流によって、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124が発熱する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々が、その長手方向に膨張する。
【0039】
なお、第3固定部Y133、第4固定部Y134、可動部Y127、弁体Y128の電位は、脊柱Y125と同様の電位、すなわち、12Vの半分の6V程度になる。そして、変位増幅部材Y131、可動部Y127、弁体Y128には、電流が流れない。したがって、変位増幅部材Y131では、通電に起因した発熱も、その発熱に起因した膨張もない。
【0040】
このような熱的な膨張の結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124は、脊柱Y125を第2力点YV2側に付勢する。付勢された脊柱Y125は、第2力点YV2において、変位増幅部材Y131を押す。その結果、変位増幅部材Y131は、第2支点部Y132を支点として、第2支点部Y132を中心に回転する。変位増幅部材Y131の第2支点部Y132とは反対側の端部も、第1力点YV1において、可動部Y127を押す方向に、移動する。
【0041】
このように第1力点YV1において変位増幅部材Y131から付勢された可動部Y127は、第1支点部Y126を支点として、第1支点部Y126を中心に回転する。その結果、可動部Y127の第1支点部Y126とは反対側の端部に接続された弁体Y128も、その長手方向の、変位増幅部材Y131が可動部Y127を押す側に、移動する。移動した後の弁体Y128の位置を、通電時位置という。
【0042】
図6に示すように、弁体Y128が通電時位置にあるとき、第1流路孔Y16は窓孔Y120に対して開口(例えば全開、半開)の状態であり、第2流路孔Y17も弁体Y128に第1流路孔Y16は窓孔Y120に対して開口(例えば全開、半開)した状態となる。
【0043】
したがってこの場合、マイクロバルブY1の外部から第1流路孔Y16を通って流体が窓孔Y120内に流入し、更に窓孔Y120から第2流路孔Y17を通って流体がマイクロバルブY1の外部に流出することができる。また、これとは逆の流体の流れも可能となる。すなわち、マイクロバルブY1の外部にあって第1流路孔Y16と連通する不図示の流路と、マイクロバルブY1の外部にあって第2流路孔Y17と連通する不図示の他の流路とが、窓孔Y120を介して連通する。
【0044】
このようなマイクロバルブY1への通電時、第1印加点Y129、第2印加点Y130を介してマイクロバルブY1に供給される電力が大きいほど、非通電時位置に対する弁体Y128の移動量も大きくなる。これは、マイクロバルブY1に供給される電力が高いほど、第1リブY123、第2リブY124の温度が高くなり、膨張度合いが大きいからである。例えば第1印加点Y129、第2印加点Y130へ印加される電圧がPWM制御される場合、電圧のデューティ比が大きいほど非通電時に対する弁体Y128の移動量も大きくなる。
【0045】
また、マイクロバルブY1への通電が停止されたときは、電気配線から第1印加点Y129、第2印加点Y130への電圧印加が停止される。すると、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124を電流が流れなくなり、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の温度が低下する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々が、その長手方向に収縮する。
【0046】
このような熱的な収縮の結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124は、脊柱Y125を第2力点YV2側とは反対側に付勢する。付勢された脊柱Y125は、第2力点YV2側において、変位増幅部材Y131を脊柱Y125側に引っ張る。その結果、変位増幅部材Y131は、第2支点部Y132を支点として、第2支点部Y132を中心に回転する。その結果、変位増幅部材Y131の第2支点部Y132とは反対側の端部も、第1力点YV1において、可動部Y127を引っ張る方向に、移動する。
【0047】
このように第1力点YV1において変位増幅部材Y131から付勢された可動部Y127は、第1支点部Y126を支点として、第1支点部Y126を中心に回転する。その結果、可動部Y127の第1支点部Y126とは反対側の端部に接続された弁体Y128も、その長手方向の、変位増幅部材Y131が可動部Y127を引っ張る側に、移動する。その移動の結果、弁体Y128は、非通電時位置に戻って停止する。このとき、マイクロバルブY1の外部にあって第1流路孔Y16と連通する不図示の流路と、マイクロバルブY1の外部にあって第2流路孔Y17と連通する不図示の他の流路との、窓孔Y120を介した連通が、遮断される。
【0048】
以上のように、可動部Y127は、第1支点部Y126を支点とし、第1力点YV1を力点とし、作用点YV3を作用点とする梃子として機能する。上述の通り、中間層Y12の板面に平行な面内における第1支点部Y126から第1力点YV1までの直線距離よりも、第1支点部Y126から作用点YV3までの直線距離の方が、長い。したがって、第1力点YV1の移動量よりも、作用点YV3の移動量の方が大きくなる。したがって、第1力点YV1における変位増幅部材Y131の変位量が、梃子によって増幅されて弁体Y128に伝わる。
【0049】
更に、変位増幅部材Y131は、第2支点部Y132を支点とし、第2力点YV2を力点とし、第1力点YV1を作用点とする梃子として機能する。上述の通り、中間層Y12の板面に平行な面内における第2支点部Y132から第2力点YV2までの直線距離よりも、第2支点部Y132から第1力点YV1までの直線距離の方が、長い。したがって、第2力点YV2の移動量よりも、第1力点YV1の移動量の方が大きくなる。したがって、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の熱的な膨張による脊柱Y125の変位量が、梃子によって増幅されて可動部Y127に伝わる。
【0050】
このように、変位増幅部材Y131、可動部Y127という直列に接続された2つの梃子が作用する。すなわち、脊柱Y125の変位量が、変位増幅部材Y131で増幅され、更に可動部Y127で増幅されて、弁体Y128に伝達される。
【0051】
このように構成されたマイクロバルブY1は、電磁弁およびステッピングモータと比べて容易に小型化できる。その理由の1つは、マイクロバルブY1が上述の通り半導体チップにより形成されていることである。また、上述の通り、梃子を利用して熱的な膨張による変位量が増幅されることも、そのような梃子を利用せずに電磁弁またはステッピングモータを利用する弁装置と比べた場合、小型化に寄与する。また、複数本の第1リブY123、複数本の第2リブY124の変位は熱に起因して発生するので、騒音低減効果が高い。
【0052】
また、梃子を利用しているので、熱的な膨張による変位量を弁体Y128の移動量より抑えることができるので、弁体Y128を駆動するための消費電力も低減することができる。また、電磁弁の駆動時における衝撃音を無くすことができるので、騒音を低減することができる。
【0053】
また、脊柱Y125が変位したときに、変位増幅部材Y131は、脊柱Y125に付勢されると共に脊柱Y125部の変位を増幅して可動部Y127に伝達する。このように、梃子の原理を利用する可動部Y127に加え、変位増幅部材Y131が脊柱Y125の変位を増幅する。したがって、マイクロバルブY1の体格の増大を抑制しつつ開弁時の開口面積を増大させること、あるいは、開弁時の開口面積の低減を抑制しつつ体格を低減することが、可能になる。
【0054】
例えば、図7の左側に示すように、特許文献1のMEMSバルブのように梃子が矢印で示すように1個しかない場合に比べ、図7の右側の弁装置の矢印に示すように梃子を直列に2段用いた方が、脊柱の変位量に対する弁体の移動量の増幅度は大きくなる。
【0055】
(1)また、脊柱Y125が変位したときに、脊柱Y125によって変位増幅部材Y131が第2力点YV2で付勢されて変位増幅部材Y131が第2支点部Y132を中心に回転することで、変位増幅部材Y131が第1力点YV1で可動部Y127を付勢する。そして、第2支点部Y132から第1力点YV1までの距離は、第2支点部Y132から第2力点YV2までの距離よりも長い。すなわち、変位増幅部材Y131も可動部Y127とは別に梃子として働く。これにより、梃子の原理を利用して更にマイクロバルブY1の開弁時の開口面積の増大化または体格の低減を実現することができる。
【0056】
(2)また、変位増幅部材Y131は、可動部Y127の長手方向に沿って伸びる。そして、第2力点YV2よりも、第1力点YV1の方が、第1支点部Y126に近い位置にある。これにより、変位増幅部材Y131によって増幅された変位を可動部Y127に伝達する箇所(すなわち第1力点YV1)を、より第1支点部Y126に近づけることができる。これにより、可動部Y127における梃子の作用による変位の増幅量が増大する。
【0057】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、中間層Y12の構造が異なっている。具体的には、図8に示すように、第1実施形態で第2固定部Y122と第4固定部Y134を隔てていたスリットが廃され、第2固定部Y122と第4固定部Y134が接続されている。その他の構造は、第1実施形態と同様である。
【0058】
以下、本実施形態のマイクロバルブY1の作動について説明する。マイクロバルブY1への通電が行われていない状態では、中間層Y12は図8に示した状態になっている。このとき、複数本の第1リブY123、複数本の第2リブY124、脊柱Y125、変位増幅部材Y131、可動部Y127、弁体Y128の位置は、第1実施形態において通電が行われていないときと同じである。
【0059】
マイクロバルブY1への通電が開始されると、電気配線によって第1印加点Y129、第2印加点Y130の間に電圧が印加される。ここでは、一例として、第1印加点Y129が12V、第2印加点Y130が0Vとなる電圧が印可されるとするが、これに限られない。
【0060】
電圧が印可されると、図9に示すように、中間層Y12において、第2固定部Y122の電位が12Vとなり、第1固定部Y121の電位が0Vとなる。その結果、第1実施形態と同様、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々において、破線矢印のように電流が流れる。この電流によって、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124が発熱する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々が、その長手方向に膨張する。
【0061】
また、第2固定部Y122と第4固定部Y134が接続されているので、第4固定部Y134の電位も12Vになる。したがって、第2固定部Y122が、第4固定部Y134、第1支点部Y126、可動部Y127、変位増幅部材Y131、脊柱Y125、複数の第1リブY123を介して、第1固定部Y121と導通する。したがって、変位増幅部材Y131において、破線矢印のように、第1力点YV1から脊柱Y125へ電流が流れる。この電流によって、変位増幅部材Y131が発熱し、その長手方向に膨張する。なお、第3固定部Y133の電位は、6Vよりも高く12Vよりも低い中間電位となる。
【0062】
複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の膨張により、第1実施形態と同様、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124は、脊柱Y125を第2力点YV2側に付勢する。付勢された脊柱Y125は、第2力点YV2において、変位増幅部材Y131を押す。これにより、変位増幅部材Y131は、第2支点部Y132を支点として、第2支点部Y132を中心に回転する。その結果、変位増幅部材Y131の第2支点部Y132とは反対側の端部も、第1力点YV1において、可動部Y127を押す方向に、移動する。
【0063】
それに加え、変位増幅部材Y131が通電されて温度が上昇することで、変位増幅部材Y131の長手方向の長さが増大する。したがって、その増大した分だけ、第1力点YV1における可動部Y127の変位量が増大する。すなわち変位増幅部材Y131は、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124が通電されたときに、脊柱Y125に付勢されると共に通電されて自らの温度が上昇して膨張することで、脊柱Y125の変位を更に増幅して可動部Y127に伝達する。
【0064】
このように第1力点YV1において変位増幅部材Y131から付勢された可動部Y127は、第1支点部Y126を支点として、第1支点部Y126を中心に回転する。その結果、可動部Y127の第1支点部Y126とは反対側の端部に接続された弁体Y128も、その長手方向の、変位増幅部材Y131が可動部Y127を押す側に、移動する。弁体Y128がこの通電時位置にあるときの第1流路孔Y16、第2流路孔Y17の開口の状態については、第1実施形態と同じである。
【0065】
また、マイクロバルブY1への通電が停止されたときは、電気配線から第1印加点Y129、第2印加点Y130への電圧印加が停止される。すると、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124を電流が流れなくなり、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の温度が低下する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々が、その長手方向に収縮する。それと同時に変位増幅部材Y131を電流が流れなくなり、変位増幅部材Y131の温度が低下し、その長手方向に収縮する。
【0066】
このような熱的な収縮の結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124は、脊柱Y125を第2力点YV2側とは反対側に付勢する。付勢された脊柱Y125は、第2力点YV2側において、変位増幅部材Y131を脊柱Y125側に引っ張る。その結果、変位増幅部材Y131は、第2支点部Y132を支点として、第2支点部Y132を中心に回転する。その結果、変位増幅部材Y131の第2支点部Y132とは反対側の端部も、第1力点YV1において、可動部Y127を引っ張る方向に、移動する。その際、変位増幅部材Y131の長手方向の長さが減少するので、その分、第1力点YV1において、可動部Y127の変位量が増大する。
【0067】
このように第1力点YV1において変位増幅部材Y131から付勢された可動部Y127は、第1支点部Y126を支点として、第1支点部Y126を中心に回転する。その結果、可動部Y127の第1支点部Y126とは反対側の端部に接続された弁体Y128も、その長手方向の、変位増幅部材Y131が可動部Y127を引っ張る側に、移動する。その移動の結果、弁体Y128は、所定の非通電時位置に戻って停止する。このとき、第1実施形態と同様、マイクロバルブY1の外部にあって第1流路孔Y16と連通する不図示の流路と、マイクロバルブY1の外部にあって第2流路孔Y17と連通する不図示の他の流路との、窓孔Y120を介した連通が、遮断される。
【0068】
(1)以上の通り、変位増幅部材Y131は、脊柱Y125が通電されたときに、脊柱Y125に付勢されると共に通電されて自らの温度が上昇して膨張することで、脊柱Y125の変位を増幅する。このようになっていることで、変位増幅部材Y131は、梃子として働くのみならず、通電によって伸縮することで、脊柱Y125の変位を増幅する。すなわち、より強く脊柱Y125の変位を増幅することができる。また、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成および作用からは、同様の効果が得られる。
【0069】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について、図10図11を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、中間層Y12、第2外層Y13の構造が異なっている。
【0070】
具体的には、第2外層Y13においては、第1流路孔Y16の形状が、第2外層Y13の短手方向に伸びる長方形形状となっている。また、第2外層Y13においては、第1実施形態の単一の第2流路孔Y17に代えて、複数のサブ流路孔Y171、Y172、Y173、Y174、Y175が設けられている。
【0071】
これらサブ流路孔Y171~Y175は、第1流路孔Y16に対して第2外層Y13の長手方向にずれた位置に配置されている。また、サブ流路孔Y171~Y175は、第2外層Y13の短手方向に一列に並んでいる。また、サブ流路孔Y171~Y175の各々は、長方形形状を有し、第2外層Y13の長手方向に伸びている。これらサブ流路孔Y171~Y175が、全体として、第2流路孔を構成する。
【0072】
また、中間層Y12の構造は、以下の点で第1実施形態と異なっている。まず、本実施形態の流体室Y19は、第1流路孔Y16およびサブ流路孔Y171~Y175に対して連通するように形成されている。
【0073】
また、本実施形態の弁体Y128の形状は、第1実施形態に対して異なっている。具体的には、本実施形態の弁体Y128は、ベース部80と、複数のサブ弁体81、82、83、84、85と、これら複数のサブ弁体81~85を補強する8個の補強部86とを有している。ベース部80と、サブ弁体81~85と、複数の補強部86は、全体として一体に形成されているが、他の例として、別体に形成された後に接合されてもよい。
【0074】
なお、図10図11では、サブ弁体81~85の数が5個であるが、他の例として、2個以上4個以下でもよいし、6個以上でもよい。また、図10図11の例では、補強部86の数は8個であるが、他の例として7個以下(例えば1個、2個)であってもよいし、9個以上であってもよい。また、サブ弁体81~85のうちどの隣り合うサブ弁体間にも、それらに接続される2個の補強部86が設けられているが、隣り合うサブ弁体間に設けられる補強部86の数は2個に限られない。また、サブ弁体81~85のうち一部の隣り合うサブ弁体間にのみ、補強部86が設けられていてもよい。
【0075】
ベース部80は、作用点YV3において可動部Y127と接続すると共に、中間層Y12の短手方向に伸びる部材である。サブ弁体81~85は、中間層Y12の短手方向に一列に離間して並んでいる。また、サブ弁体81~85の各々の長手方向は、中間層Y12の長手方向に伸びている。また、サブ弁体81~85の各々の長手方向の可動部Y127側の端部は、ベース部80に接続されている。
【0076】
また、サブ弁体81~85の各々には、中間層Y12の厚さ方向における一方側端から他方側端まで貫通すると共に中間層Y12の長手方向に伸びる貫通孔81a、82a、83a、84a、85aが形成されている。したがって、サブ弁体81~85は、それぞれ、貫通孔81a~85aを環状に囲む枠体である。
【0077】
図11に示すように、サブ弁体81~85の内周縁は、それぞれ、サブ流路孔Y171~Y175の外周縁を外側から全周に亘って囲むことができるよう、サブ流路孔Y171~Y175の外周縁よりも広く形成されている。
【0078】
また、サブ弁体81~85の各々は、中間層Y12の厚さ方向の一端において第1外層Y11に接触し他端において第2外層Y13に接触する。これによりサブ弁体81~85は、流体室Y19においてそれぞれ貫通孔81a~85aとそれ以外の部分との間をシールする。
【0079】
補強部86の各々は、サブ弁体81~85のうち隣り合ういずれか2つのサブ弁体の間で、それら2つのサブ弁体に両端で繋がるよう、中間層Y12の短手方向に伸びている。なお、他の例として、1つの補強部86が三又以上に分かれてサブ弁体81~85のうち3つ以上に繋がっていてもよい。これら補強部86により、弁体Y128全体の強度が向上している。各補強部86は、第1外層Y11と第2外層Y13のうち一方または両方と離間している。すなわち、各補強部86は流体室Y19内で流体のシールとしては機能しない。
【0080】
以下、本実施形態のマイクロバルブY1の作動について説明する。マイクロバルブY1への通電が行われていない状態では、中間層Y12は図11に示した状態になっている。このとき、第1流路孔Y16は流体室Y19に対して連通しているが、サブ流路孔Y171~Y175は、それぞれ、サブ弁体81~85に囲まれている。したがって、流体室Y19において、第1流路孔Y16に対してサブ流路孔Y171~Y175がサブ弁体81~85によって遮断されている。このときの弁体Y128の位置を、非通電時位置という。この場合、マイクロバルブY1は閉弁状態となっている。
【0081】
マイクロバルブY1への通電が開始されると、電気配線によって第1印加点Y129、第2印加点Y130の間に電圧が印加される。電圧が印可されると、中間層Y12において、第1実施形態と同様に、第1リブY123、第2リブY124の各々において電流が流れる。この電流によって、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124が発熱する。その結果、第1リブY123、第2リブY124の各々が、その長手方向に膨張する。
【0082】
複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の膨張により、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124は、脊柱Y125を第2力点YV2側に付勢する。付勢された脊柱Y125は、第2力点YV2において、変位増幅部材Y131を押す。これにより、変位増幅部材Y131は、第2支点部Y132を支点として、第2支点部Y132を中心に回転する。その結果、変位増幅部材Y131の第2支点部Y132とは反対側の端部も、第1力点YV1において、可動部Y127を押す方向に、移動する。
【0083】
これにより可動部Y127は、第1支点部Y126を支点として、第1支点部Y126を中心に回転する。その結果、弁体Y128の全体が、その長手方向の、変位増幅部材Y131が可動部Y127を押す向きに、第1支点部Y126を中心に、回転する。
【0084】
これにより、サブ弁体81~85も同様に第1支点部Y126を中心に回転する。その回転の結果、貫通孔81a~85aの位置が変化し、貫通孔81a~85aとサブ流路孔Y171~Y175の相対位置関係が変化する。具体的には、サブ流路孔Y171~Y175の一部または全部が、それぞれ、貫通孔81a~85aからはみ出す。その結果、流体室Y19において、第1流路孔Y16がサブ流路孔Y171~Y175と連通する。
【0085】
このときの弁体Y128の位置を、通電時位置という。この場合、マイクロバルブY1は開弁状態となっている。このとき、マイクロバルブY1の外部、第1流路孔Y16、流体室Y19、サブ流路孔Y171~Y175、マイクロバルブY1の外部を、この順に、あるいはこの逆順に、流体が流通する。
【0086】
なお、通電量が変化すると、サブ流路孔Y171~Y175のうちそれぞれ貫通孔81a~85aからはみ出す部分のサイズが変化する。したがって、通電量を変化させることで、マイクロバルブY1内の流体の流量を調整することができる。
【0087】
また、マイクロバルブY1への通電が停止されたときは、電気配線から第1印加点Y129、第2印加点Y130への電圧印加が停止される。すると、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124を電流が流れなくなり、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の温度が低下する。その結果、複数の第1リブY123、複数の第2リブY124の各々が、その長手方向に収縮する。このような熱的な収縮の結果、第1実施形態と同様の機序で、弁体Y128は、所定の非通電時位置に戻って停止する。このような作動により、サブ弁体81~85は、流体室Y19内で動くことでそれぞれサブ流路孔Y171~Y175の第1流路孔Y16に対する開度を調整する。
【0088】
(1)以上説明した通り、サブ弁体81~85を補強するための補強部86は、複数のサブ弁体81~85のうち複数に繋がっている。このようになっていることで、補強部86により、流体室Y19内に流入する流体の圧力に対する弁体Y128の強度が増す。
【0089】
なお、第1実施形態に対する本実施形態のような変更は、第2実施形態にも適用可能である。また、本実施形態において、第1、第2実施形態と同様の構成および作用(例えば変位増幅部材Y131による梃子作用)からは、同様の効果が得られる。
【0090】
(他の実施形態)
本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本開示は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0091】
(変形例1)
上記各実施形態では、複数本の第1リブY123、複数本の第2リブY124、変位増幅部材Y131は、通電されることで発熱し、その発熱によって自らの温度が上昇することで膨張する。しかし、これら部材は、温度が変化すると長さが変化する形状記憶材料から構成されていてもよい。
【0092】
(変形例2)
上記各実施形態では、弁体Y128が移動することで、窓孔Y120に対する第2流路孔Y17の開度が変化して、窓孔Y120に対する第1流路孔Y16の開度が前回に維持されるようになっている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。
【0093】
例えば、弁体Y128が移動することで、窓孔Y120に対する第2流路孔Y17の開度および窓孔Y120に対する第1流路孔Y16の開度の両方が連動して調整されてもよい。
【0094】
(変形例3)
上記各実施形態では、マイクロバルブY1の外部から窓孔Y120に連通可能な孔は第1流路孔Y16、第2流路孔Y17の2つであった。しかし、マイクロバルブY1の外部から窓孔Y120に連通す3番目以降の流路孔があってもよい。3番目以降の流路孔も、弁体Y128の動きによって開度が調整されてもよいし、調整されなくてもよい。
【0095】
(変形例4)
マイクロバルブY1の形状やサイズは、上記実施形態で示したものに限られない。マイクロバルブY1は、極微小流量制御可能で、かつ、流路内に存在する微小ゴミを詰まらせないような水力直径の第1流路孔Y16、第2流路孔Y17を有していればよい。
【0096】
(変形例5)
上記実施形態では、変位増幅部材Y131は、1個の梃子から構成されている。しかし、変位増幅部材Y131は、直列に連接された複数の梃子から構成されていてもよい。
【0097】
(変形例6)
上記実施形態では、通電の有無に応じた温度変化によって発生する駆動部の変位を梃子の原理で増幅して弁体に伝える弁装置の一例としてMEMSバルブが例示されている。しかし、このような弁装置は、MEMSバルブ以外のものであってもよい。
【0098】
(変形例7)
上記第2実施形態では、変位増幅部材Y131は、梃子として作用することで脊柱Y125の変位量を増幅して可動部Y127に伝達すると同時に、通電されて長手方向に膨張、収縮することで脊柱Y125の変位量を増幅して可動部Y127に伝達する。しかし、変位増幅部材Y131は、作用せず、通電されて長手方向に膨張、収縮することのみによって脊柱Y125の変位量を増幅して可動部Y127に伝達してもよい。
【0099】
(変形例8)
上記実施形態では、第2力点YV2よりも、第1力点YV1の方が、第1支点部Y126に近い位置にある。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。すなわち、第2力点YV2の方が、第1力点YV1よりも、第1支点部Y126に近い位置にあってもよい。
【0100】
そのような例としては、図4において、変位増幅部材Y131を脊柱Y125、第2力点YV2の部分を中心として紙面上下反転させたものがある。この例では、変位増幅部材Y131の回転の中心となる第2支点部Y132が脊柱Y125よりも第2固定部Y122側に配置され、変位増幅部材Y131と可動部Y127の接続点である第1力点YV1が脊柱Y125よりも弁体Y128側に配置される。
【0101】
このような例では、第2固定部Y122から弁体Y128に向けて第1支点部Y126、第2支点部Y132、第2力点YV2、第1力点YV1の順に並ぶが、これであっても、変位増幅部材Y131が梃子として機能する。なお、上記第1、第2実施形態では、第2固定部Y122から弁体Y128に向けて第1支点部Y126、第1力点YV1、第2力点YV2、第2支点部Y132、の順に並んでいる。
【0102】
(変形例9)
また、上記変形例8に対して、第2固定部Y122から弁体Y128に向けて第2支点部Y132、第2力点YV2、第1支点部Y126、第1力点YV1の順に並ぶよう変更してもよい。すなわち、変形例8に対して第1支点部Y126の位置を第1力点YV1に近づくようずらしてもよい。この例では、変形例8とは異なり、第2力点YV2よりも、第1力点YV1の方が、第1支点部Y126に近い位置にあるように、第1支点部Y126の位置を設定することもできる。
【0103】
(本開示の特徴)
[開示1]
第1外層(Y11)と、
第2外層(Y13)と、
前記第1外層と前記第2外層に挟まれると共に流体が流通する流体室(Y19)を形成する中間層(Y12)と、を備え、
前記第1外層または前記第2外層には、前記流体室と連通可能な第1流路孔(Y16)が形成され、
前記第1外層または前記第2外層には、前記流体室と連通可能な第2流路孔(Y17、Y171~Y175)が形成され、
前記中間層は、通電の有無に応じて自らの温度が変化することで変位する駆動部(Y123、Y124、Y125)と、
前記駆動部が変位したときに、前記駆動部に付勢されると共に前記駆動部の変位を増幅する変位増幅部材(Y131)と、
前記変位増幅部材によって増幅された変位を力点(YV1)で受けることで、支点部(Y126)を中心に回転する可動部(Y127)と、
前記可動部が回転する際に前記可動部の作用点(YV3)から付勢されて前記流体室内で動くことで前記流体室に対する前記第2流路孔の開度を調整する弁体(Y128)と、を有する、弁装置。
[開示2]
前記支点部は第1支点部であり、
前記力点は第1力点であり、
前記駆動部が変位したときに、前記駆動部によって前記変位増幅部材が第2力点(YV2)で付勢されて前記変位増幅部材が第2支点部(Y132)を中心に回転することで、前記変位増幅部材が前記第1力点で前記可動部を付勢し、
前記第2支点部から前記第1力点までの距離は、前記第2支点部から前記第2力点までの距離よりも長い、開示1に記載の弁装置。
[開示3]
前記変位増幅部材は、前記可動部の長手方向に沿って伸び、
前記第2力点よりも、前記第1力点の方が、前記第1支点部に近い位置にある、開示2に記載の弁装置。
[開示4]
前記変位増幅部材は、前記駆動部が通電されたときに、前記駆動部に付勢されると共に通電されて自らの温度が上昇して膨張することで、前記駆動部の変位を増幅する、開示1ないし3のいずれか1つに記載の弁装置。
[開示5]
前記第2流路孔は、複数のサブ流路孔(Y171~Y175)を有し、
前記弁体は、複数のサブ弁体(81~85)と、前記複数のサブ弁体を補強するための補強部(86)とを有し、
前記複数のサブ弁体は、前記流体室内で動くことでそれぞれ前記複数のサブ流路孔の前記第1流路孔に対する開度を調整し、
前記補強部は、前記複数のサブ弁体のうち複数に繋がっている、開示1ないし4のいずれか1つに記載の弁装置。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11