(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20250115BHJP
【FI】
B66B1/14 J
(21)【出願番号】P 2024563926
(86)(22)【出願日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2023025779
【審査請求日】2024-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 寛明
(72)【発明者】
【氏名】引地 剛樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 直子
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 仁
(72)【発明者】
【氏名】伏見 渉
(72)【発明者】
【氏名】濱田 恭平
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-152995(JP,A)
【文献】特開昭62-93187(JP,A)
【文献】実開平2-80674(JP,U)
【文献】特開平11-079568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階床を移動するかごに設置され、設置された環境における環境物理量を測定する環境センサと、
前記複数の階床のうち2以上の階床の各々について、当該階床で測定された前記環境物理量と測定された時刻とが対応付けられた階床ごとの情報である複数の個別環境情報を作成する統合部と、
前記複数の個別環境情報に基づいて、前記複数の階床のうち前記環境物理量が規定の決定条件を満たす階床を前記かごが待機状態において待機する待機階床に決定する決定部と、
を備えたエレベーターシステム。
【請求項2】
前記かごが待機状態になったとき、前記複数の階床のうちの評価階床で前記かごを待機させる指令を作成する指令部、
を更に備え、
前記統合部は、前記指令部の指令によって前記かごが前記評価階床で待機しているときに前記環境センサによって測定された環境物理量に基づいて、前記評価階床についての個別環境情報を作成する請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記かごと同じ建物に設けられた別のかごに設置され、設置された環境における環境物理量を測定する第2環境センサと、
前記指令部は、前記かごと前記別のかごとが待機状態になったとき、前記評価階床として前記複数の階床のうち前記かごを第1評価階床で待機させ、前記別のかごを前記第1評価階床とは別の第2評価階床で待機させる指令を作成し、
前記統合部は、前記指令部の指令によって前記別のかごが前記第2評価階床で待機しているときに前記第2環境センサによって測定された前記環境物理量に基づいて、前記第2評価階床についての個別環境情報を作成する請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前記複数の階床のうち第1補完階床についての個別環境情報と、前記第1補完階床から2階以上離れた第2補完階床についての個別環境情報と、に基づいて、前記複数の階床のうち前記第1補完階床と前記第2補完階床との間の中間階床についての環境物理量を推定して前記中間階床についての個別環境情報を作成する第1補完部、
を更に備えた請求項
1に記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
前記かごが通常運転しているときの前記かごのドアの開閉状態に関する情報と、通常運転しているときに測定された前記環境物理量とに基づいて、前記複数の個別環境情報の少なくとも1つを作成する第2補完部、
を更に備え、
前記環境センサは、前記かごの内部の前記環境物理量を測定し、
前記第2補完部は、前記複数の階床のうち補完階床に前記かごが停車しているときの前記環境センサによる前記環境物理量の測定結果と前記かごのドアの開閉状態とに基づいて、前記補完階床についての環境物理量を推定して個別環境情報を作成する請求項
1に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記環境センサは、前記環境物理量として温度を測定する温度センサであり、
前記決定条件は、規定の温度範囲にあること、最も高い温度であること、および最も低い温度であること、のいずれか1つに設定された請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
前記かごに設置され、前記環境センサが測定する環境物理量とは別の種類の環境物理量を測定する第3環境センサ、
を更に備え、
前記環境センサは、前記環境物理量として温度を測定する温度センサであり、
前記決定条件は、規定の温度範囲にあることに設定され、
前記統合部は、前記複数の個別環境情報のそれぞれについて前記第3環境センサによって測定された前記別の種類の環境物理量を対応付け、
前記決定部は、前記複数の階床のうち測定された温度が前記温度範囲に含まれる2以上の階床が存在する場合に、当該2以上の階床のうち前記別の種類の環境物理量が前記決定条件とは別の決定条件を満たす階床を前記待機階床に決定する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項8】
前記かごの所有者が所持する端末から前記決定条件に関する指示を受け付ける受付部、
を更に備え、
前記決定部は、前記受付部が受け付けた前記決定条件に基づいて前記待機階床を決定する請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項9】
前記かごのドアの開閉状態を制御する運転制御部と、
前記かごに設定され、駆動したときに前記かごの内部の空気を外部へ排出するファンと、
を更に備え、
前記運転制御部は、前記かごが前記待機階床で待機しているときに前記かごのドアを開状態に維持し、前記ファンを駆動させる請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項10】
前記環境センサは、前記環境物理量として前記かごの内部の温度を測定する温度センサであり、
前記運転制御部は、前記かごが通常運転時に前記待機階床に停車したときに前記環境センサによって測定された温度が冷却閾値を超えている場合、前記ファンを駆動させる請求項9に記載のエレベーターシステム。
【請求項11】
複数の階床を移動するかごに設置され、設置された環境における環境物理量を測定する環境センサと、
前記複数の階床のうち2以上の階床の各々について、当該階床で測定された前記環境物理量と測定された時刻とが対応付けられた階床ごとの情報である複数の個別環境情報を作成する統合部と、
前記複数の個別環境情報に基づいて、前記かごが待機状態において待機する階床を推論して待機階床に決定する推論部と、
を更に備え、
前記推論部は、前記複数の階床のうち2以上の階床における個別環境情報を入力として前記待機階床を出力するための学習済の決定モデルを用いて、前記複数の個別環境情報から階床を推論して待機階床に決定するエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターシステムを開示する。当該エレベーターシステムは、昇降路の側壁およびかごの壁がガラス製となっているシースルーエレベーターである。かごが待機運転するとき、かごは、直射日光の影響を受けない地下階床において待機する。そのため、かご内の温度上昇が抑制され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエレベーターシステムにおいて、かごが待機する階床は地下階床に固定されている。一般的に、待機階床として好ましい階は、エレベーターシステムの設置環境によって異なる。このため、待機階床として好ましくない階床にてかごが待機する恐れがある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、設置環境に応じて適する待機階床を決定することができるエレベーターシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターシステムは、複数の階床を移動するかごに設置され、設置された環境における環境物理量を測定する環境センサと、複数の階床のうち2以上の階床の各々について、当該階床で測定された環境物理量と測定された時刻とが対応付けられた階床ごとの情報である複数の個別環境情報を作成する統合部と、複数の個別環境情報に基づいて、複数の階床のうち環境物理量が規定の決定条件を満たす階床をかごが待機状態において待機する待機階床に決定する決定部と、を備えた。
【0007】
本開示に係るエレベーターシステムは、複数の階床を移動するかごに設置され、設置された環境における環境物理量を測定する環境センサと、複数の階床のうち2以上の階床の各々について、当該階床で測定された環境物理量と測定された時刻とが対応付けられた階床ごとの情報である複数の個別環境情報を作成する統合部と、複数の個別環境情報に基づいて、かごが待機状態において待機する階床を推論して待機階床に決定する推論部と、を更に備え、推論部は、複数の階床のうち2以上の階床における個別環境情報を入力として待機階床を出力するための学習済モデルである決定モデルを用いて、複数の個別環境情報から階床を推論して待機階床に決定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の個別環境情報に基づいて、待機階床が決定される。このため、設置環境に応じて適する待機階床を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1におけるエレベーターシステムの概要を示す図である。
【
図2】実施の形態1におけるエレベーターシステムの機能ブロック図である。
【
図3】実施の形態1におけるエレベーターシステムが行う評価運転の第1例の動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1におけるエレベーターシステムが行う評価運転の第2例の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1におけるエレベーターシステムの待機階床を決定する動作の概要のフローチャートである。
【
図6】実施の形態1におけるエレベーターシステムの変形例の機能ブロック図である。
【
図7】実施の形態2におけるエレベーターシステムの機能ブロック図である。
【
図8】実施の形態1におけるエレベーターシステムの制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるエレベーターシステムの概要を示す図である。
【0012】
図1のエレベーターシステム1は、建物2に設けられる。建物2には、複数の階床3が存在する。昇降路2hは、建物2の複数の階床3を貫く。例えば、エレベーターシステム1は、シースルーエレベーターである。即ち、昇降路2hの1つの壁面2aのうち少なくとも一部がガラス等の透明な素材からなる。壁面2aの透明な素材を介して、昇降路2hの内部の少なくとも一部には、太陽光が当たる。
図1の例において、壁面2aのうち1階の高さに相当する部分2bは、透明な素材からなる。
【0013】
エレベーターシステム1は、かご4と釣合おもり5と主ロープ6と巻上機7と制御装置8とを備える。かご4および釣合おもり5は、主ロープ6によって昇降路2hの内部に吊り下げられる。かご4の側面のうち壁面2aを向く側面4aは、ガラス等の透明な素材からなる。主ロープ6は、巻上機7の綱車に巻き掛けられる。巻上機7は、制御装置8によって制御される。巻上機7の綱車が回転すると、主ロープ6の移動に従って、かご4と釣合おもり5とが互いに反対方向へ昇降する。制御装置8は、エレベーターシステム1を全体的に制御可能である。例えば、制御装置8は、巻上機7を制御することで、かご4の運転を制御する。このようにして、かご4は、複数の階床3を移動する。
【0014】
エレベーターシステム1は、更に環境センサ9を備える。環境センサ9は、かご4に設けられる。環境センサ9は、設置された周囲の環境に関する物理量である環境物理量を測定する。環境センサ9には、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、CO2センサ、空気質センサ、等の少なくとも1つが含まれる。環境センサ9に含まれるセンサの種類およびセンサの位置によって、測定される環境物理量の種類が異なる。
【0015】
例えば、温度センサは、かご4の内部の空気の温度またはかご4の上面に設けられた機器の周辺の温度を測定する。例えば、湿度センサは、かご4の内部の空気の湿度またはかご4の上面に設けられた機器の周辺の湿度を測定する。例えば、照度センサは、かご4の内部に当たる光の照度またはかご4の上面に当たる光の照度を測定する。CO2センサは、かご4の内部の空地中に存在する二酸化炭素の濃度を測定する。空気質センサは、かご4の内部における空気中に存在する塵埃の濃度等の空気質を測定する。
【0016】
以降、特別な言及がない部分では、環境センサ9が温度センサである場合について説明する。また、温度センサがかご4の内部の温度を測定する場合について説明する。
【0017】
制御装置8は、かご4を通常運転しているとき、かご4の呼びが行われない状態が規定の時間を超えた場合、待機運転に遷移し、かご4を待機状態にさせる。待機運転において、制御装置8は、待機状態にあるかご4を待機階床として設定した階床に停車させる。かご4が待機する階床によって、かご4の周囲の環境または内部の環境が変化し得る。例えば、
図1の例において、夏場に待機階床が1階または地下1階に設定されている場合、かご4の内部またはかご4の上面に設けられた機器には、部分2bを通って太陽光が当たる。そのため、かご4の内部および当該機器が高温になってしまう恐れがある。
【0018】
そこで、制御装置8は、待機運転に移行する条件が満たされたとき、評価運転に移行する。制御装置8は、評価運転において、複数の階床3のうちいずれかの階床3にかご4を待機させる。このとき、環境センサ9は、当該階床にかご4が待機しているときの環境物理量を測定する。制御装置8は、測定された複数の階床3の各々の環境物理量に基づいて、かご4を待機させるのに適した待機階床を決定する。その後に待機階床が別の階床3に更新されるまで、制御装置8は、待機状態のかご4を決定した待機階床で待機させる。
【0019】
次に、
図2を用いて、制御装置8の機能を説明する。
図2は実施の形態1におけるエレベーターシステムの機能ブロック図である。
【0020】
図2に示されるように、制御装置8は、運転制御部10と記憶部11と時刻管理部12と指令部13と統合部14と決定部15とを機能として備える。
【0021】
運転制御部10は、かご4の運転を全体的に制御する。
【0022】
記憶部11は、制御に必要な情報を記憶する。具体的には、記憶部11は、建物2の階床数を示す建物情報を記憶する。
【0023】
時刻管理部12は、時計としての機能を有する。時刻管理部12は、日付および時刻を管理する。制御装置8の各機能は、時刻管理部12が管理する日時によって動作する。
【0024】
指令部13は、評価運転として、環境物理量を測定するために、規定の評価時間の間、かご4が評価階床に停車するような運転制御部10に対する指令を作成する。例えば、指令部13は、待機階床が決定されていない場合、待機運転の条件が満たされた場合、等の任意のタイミングで、当該指令を作成する。指令部13は、当該指令を作成する際に、複数の階床3のうちから待機階床を決定する。
【0025】
統合部14は、評価運転が行われているときに環境センサ9によって測定された環境物理量の情報と、当該環境物理量が測定された時刻と、当該時刻においてかご4が停車している階床3と、を対応付けて取得する。統合部14は、取得した情報に基づいて、環境物理量が測定されたときにかご4が停車していた階床3に対応する個別環境情報を作成する。個別環境情報は、階床3と測定された環境物理量と測定された日時とが対応付けられた情報である。例えば、統合部14は、評価運転が開始され、環境センサ9が評価階床で環境物理量の測定を開始すると、対応する個別環境情報の作成を開始する。統合部14は、作成した個別環境情報を記憶部11に記憶させる。記憶部11には、複数の階床3のうち、評価階床となった階床3に対応する数の複数の個別環境情報が記憶される。
【0026】
個別環境情報には、一日分の環境物理量の時間推移が含まれていることが望ましい。ただし、4時間毎に区切った時間帯、6時間毎に区切った時間帯、または12時間毎に区切った時間帯、のように一日が任意の時間帯で分割され、個別環境情報には、各時間帯において規定の測定時間以上の環境物理量の測定結果が含まれていてもよい。個別環境情報に、規定の時間の環境物理量が含まれている場合、制御装置8において、個別環境情報の測定値が十分に揃っていると判定される。
【0027】
ある階床3の個別環境情報の測定値が十分に揃っていないと判定される場合であって、不足している時間帯において当該階床3を評価階床とする評価運転が行われた場合、統合部14は、記憶部11に記憶された当該個別環境情報に当該評価運転で取得された環境物理量の情報を追加して更新する。
【0028】
決定部15は、記憶部11に記憶された複数の個別環境情報に基づいて、環境物理量が規定の決定条件を満たす階床を待機階床に決定する。決定部15は、既に待機階床が決定されている場合であっても、任意の周期または指令によって、待機階床を新たに決定してもよい。例えば、決定部15は、毎日、毎月、12時間毎、等の任意の周期で待機階床を決定してもよい。
【0029】
なお、決定部15は、全ての階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶部11に記憶されていない場合、待機階床を決定しないという動作を行ってもよい。この場合、予め設定された階床3が待機階床となる。このように決定された待機階床は、複数の個別環境情報に基づいて決定された待機階床とは区別される。また、決定部15は、全ての階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶部11に記憶されていない場合、現在記憶されている複数の個別環境情報に基づいて待機階床を決定してもよい。即ち、決定部15は、複数の階床3のうち環境物理量が測定された2以上の階床3の中から待機階床を決定してもよい。
【0030】
決定条件は、環境物理量の種類によって、任意の条件が設けられる。環境物理量が温度である場合、測定された温度の平均値が規定の温度範囲にあるとき、決定条件が満たされてもよい。この場合、測定温度が当該温度範囲にある個別環境情報と対応する階床3が待機階床に決定されてもよい。例えば、温度範囲は、季節によって設定が変更されてもよい。具体的には、4月から10月の夏場には、温度範囲として24℃から28℃が設定される。11月から3月の冬場には、温度範囲として18℃から22℃が設定される。温度範囲は、任意の温度範囲が予め設定されてもよい。
【0031】
また、例えば、測定された温度の平均値が最も高い温度であること、または、最も低い温度であることが、決定条件として設定されてもよい。この場合、複数の個別環境情報に含まれる温度の中から、最も高い温度または最も低い温度が含まれる個別環境情報が選択され、当該個別環境情報に対応する階床3が待機階床に決定される。
【0032】
なお、環境物理量が湿度である場合、規定の湿度範囲にあること、および最も低い湿度であること、のうちいずれか一方が決定条件として設定されてもよいし、別の条件であってもよい。環境物理量が照度である場合、最も低い照度であること、が決定条件として設定されてもよいし、別の条件であってもよい。環境物理量が二酸化炭素濃度である場合、最も低い二酸化炭素濃度であること、が決定条件として設定されてもよいし、別の条件であってもよい。環境物理量が空気質である場合、最も良い空気質であること、空気中の塵埃濃度が最も低いこと、等が決定条件として設定されてもよいし、別の条件であってもよい。
【0033】
次に、
図3を用いて、評価運転が行われる第1例を説明する。
図3は実施の形態1におけるエレベーターシステムが行う評価運転の第1例の動作を示すフローチャートである。
【0034】
例えば、本フローチャートは、毎日特定の時刻に開始される。なお、本フローチャートは、かご4が待機状態になった場合に開始されてもよい。また、本フローチャートは、複数の環境物理量に基づいて決定された待機階床が設定されている場合、開始されなくてもよい。ステップS001において、指令部13は、評価運転を開始する。
【0035】
その後、ステップS002において、指令部13は、開始時刻を記録する。指令部13は、建物情報を参照して、評価階床とする階床3のカウントを当該建物2の階床数nにセットする。
【0036】
その後、ステップS003の動作が行われる。ステップS003において、指令部13は、カウントが0であるか否かを判定する。
【0037】
ステップS003で、カウントが0でない場合、ステップS004の動作が行われる。ステップS004において、カウントに相当する階床3が評価階床に設定される。指令部13は、かご4が待機状態になったら評価階床で待機する旨の指令を作成する。かご4が待機状態である場合、運転制御部10は、指令部13で作成された指令に基づいてかご4を評価階床で停止させる。環境センサ9は、評価階床において、環境物理量を測定する。統合部14は、日時と階床3と測定された環境物理量とが対応付けられた個別環境情報を作成または更新する。
【0038】
その後、ステップS005において、指令部13は、開始時刻から評価時間が経過したか否かを判定する。評価時間は、1日、12時間、1時間、等の任意の時間が設定される。
【0039】
ステップS005で、開始時刻から評価時間が経過していない場合、ステップS004以降の動作が繰り返される。即ち、評価階床における環境センサ9の測定が継続される。
【0040】
ステップS005で、開始時刻から評価時間が経過した場合、ステップS006の動作が行われる。ステップS006において、指令部13は、カウントであるnから1を減算してn-1とする。
【0041】
その後、ステップS003以降の動作が行われる。即ち、ステップS003からステップS006の動作がループする。このループによって、評価階床がカウントであるn-1に対応する別の階床3に設定された後、当該別の階床3において、環境物理量の測定が行われ、当該別の階床3に対応する環境物理量が作成または更新される。
【0042】
ステップS003で、カウントが0である場合、ステップS007の動作が行われる。この場合、全ての階床3において、環境物理量が測定されたことになる。ステップS007において、指令部13は、評価運転を終了する。その後、制御装置8は、フローチャートの動作を終了する。
【0043】
なお、指令部13は、S002において、評価階床とする階床3のカウントを、最も低層の階床3にセットしてもよい。この場合、フローチャートにおいて、指令部13は、階床3のカウントを1つずつ増加させていき、建物2の階床数を超えた場合にフローチャートの動作を終了してもよい。
【0044】
次に、
図4を用いて、評価運転が行われる第2例を説明する。
図4は実施の形態1におけるエレベーターシステムが行う評価運転の第2例の動作を示すフローチャートである。例えば、
図4のフローチャートは、決定部15によって複数の個別環境情報に基づく待機階床が決定されていない場合に開始される。なお、
図4のフローチャートは、規定の期間ごとに開始されてもよい。
【0045】
ステップS101において、指令部13は、かご4が待機状態であるか否かを判定する。ステップS101で、かご4が待機状態でない場合、ステップ101の動作が繰り返される。
【0046】
ステップ101で、かご4が待機状態である場合、ステップS102の動作が行われる。ステップS102において、指令部13は、評価運転を開始する。評価運転は、かご4が待機状態になった場合に行われる。
【0047】
その後、ステップS103において、指令部13は、記憶部11に記憶されている情報をソートし、個別環境情報が作成されていない階床3、即ちまだ環境物理量が測定されていない階床3があるか否かを判定する。
【0048】
ステップS103で、個別環境情報が作成されていない階床3がない場合、即ち記憶部11には全ての階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶されている場合、ステップS104の動作が行われる。ステップS104において、指令部13は、複数の個別環境情報をソートして、現在の時刻における環境物理量の測定値が不十分な階床3があるか否かを判定する。例えば、ある階床3に対応する個別環境情報において、1日のうち環境物理量の測定値が記録されていない時刻が存在する、または、1日のうち環境物理量の測定値が記録されていない時間帯が存在する場合であって、当該記録されていない時刻または時間帯に現在の時刻が含まれる場合、指令部13は、当該階床3を現在の時刻における環境物理量の測定値が不十分な階床3であると判定してもよい。
【0049】
ステップS104で、環境物理量の測定値が不十分な階床3が無い場合、指令部13は、評価運転を行う必要が無いと判定し、評価運転を終了する。制御装置8は、フローチャートの動作を終了する。
【0050】
ステップS104で、環境物理量の測定値が不十分な階床3がある場合、ステップS105の動作が行われる。ステップS105において、指令部13は、環境物理量の測定値が不十分な階床3を、評価階床に決定する。指令部13は、かご4を評価階床で待機させる旨の指令を作成する。
【0051】
なお、ステップS105において、環境物理量の測定値が不十分な階床3が複数ある場合、指令部13は、予め設定された選択条件に基づいて、環境物理量の測定値が不十分な階床3の1つを評価階床に設定する。選択条件は、環境物理量の測定値が不十分な時間の長さが最も長い階床3であってもよいし、環境物理量の測定値が不十分な階床3の中で最も低層の階床3であってもよい。
【0052】
ステップS105の後、ステップS106において、運転制御部10は、指令部13で作成された指令に基づいてかご4を評価階床で待機させる。環境センサ9は、評価階床における環境物理量の測定を開始する。統合部14は、当該階床3に対応する個別環境情報の更新を開始する。
【0053】
その後、ステップS107において、指令部13は、かご4の待機状態が解除されたか否かを判定する。
【0054】
ステップS107で、かご4の待機状態が解除された場合、指令部13は、評価運転を終了する。運転制御部10は、かご4の運転状態を通常運転に遷移させる。制御装置8は、フローチャートの動作を終了する。
【0055】
ステップS107で、かご4の待機状態が解除されない場合、ステップS108の動作が行われる。ステップS108において、指令部13は、現在の評価階床に対応する個別環境情報に含まれる環境物理量の測定値が十分であるか否かを判定する。例えば、評価階床に対応する個別環境情報において、1日のうち現在の時刻または現在の時間帯における環境物理量の測定値が存在する場合、指令部13は、環境物理量の測定値が十分であると判定する。
【0056】
ステップS108で、個別環境情報に含まれる環境物理量の測定値が十分でないと判定された場合、ステップS106の動作が繰り返される。即ち、評価階床における環境物理量の測定が継続される。
【0057】
ステップS108で、個別環境情報に含まれる環境物理量の測定値が十分であると判定された場合、ステップS103以降の動作が繰り返される。
【0058】
ステップS103で、個別環境情報が作成されていない階床3がある場合、ステップS109の動作が行われる。ステップS109において、指令部13は、個別環境情報が作成されていない階床3を評価階床に決定する。指令部13は、かご4を評価階床で待機させる旨の指令を作成する。
【0059】
なお、ステップS103において、個別環境情報が作成されていない階床3が複数ある場合、指令部13は、予め設定された選択条件に基づいて、個別環境情報が作成されていない階床3の1つを評価階床に設定する。選択条件は、個別環境情報が作成されていない階床3の中で最も低層の階床3であってもよい。
【0060】
ステップS103の動作が行われた後、ステップS106以降の動作が行われる。
【0061】
次に、
図5を用いて、待機階床が決定される動作を説明する。
図5は実施の形態1におけるエレベーターシステムの待機階床を決定する動作の概要のフローチャートである。
【0062】
図5に示されるフローチャートは、決定部15に設定された任意のタイミングで開始する。ステップS201において、決定部15は、待機階床を決定する動作を開始する。
【0063】
その後、ステップS202において、決定部15は、全ての階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶部11に記憶されているか否かを判定する。なお、決定部15は、全ての階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶され、かつ、全ての個別環境情報における環境物理量の測定値が十分であるか否かを判定してもよい。
【0064】
ステップS202で、全ての階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶されている場合、ステップS203の動作が行われる。ステップS203において、決定部15は、複数の個別環境情報に基づいて、複数の階床3のうち決定条件を満たす階床3を待機階床に決定する。その後、制御装置8は、フローチャートの動作を終了する。
【0065】
ステップS202で、個別環境情報が存在しない階床3がある場合、ステップS204の動作が行われる。ステップS204において、決定部15は、予め設定されている階床3を待機階床に決定する。その後、制御装置8は、フローチャートの動作を終了する。
【0066】
なお、ステップS202において、決定部15は、2以上の階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶されているか否かを判定してもよい。この場合、2以上の階床3に対応する複数の個別環境情報が記憶部11に記憶されていれば、ステップS203の動作が行われる。この場合、ステップS203において、決定部15は、2以上の階床3に対応する複数の個別環境情報に基づいて、待機階床を決定してもよい。
【0067】
以上で説明した実施の形態1によれば、エレベーターシステム1は、環境センサ9と統合部14と決定部15とを備える。決定部15は、複数の階床3のうち2以上の階床3の各々について作成された複数の個別環境情報に基づいて待機階床を決定する。このため、建物2の構造、およびエレベーターシステム1の設置環境に応じて、適する階床3を待機階床に決定することができる。その結果、エレベーターシステム1の設置環境に依らずかご4の内部の快適性を向上させることができる。
【0068】
また、エレベーターシステム1は、指令部13を更に備える。指令部13は、かご4が待機状態になったとき、評価階床でかご4を待機させる指令を作成する。統合部14は、評価階床における環境センサ9の測定値に基づいて、個別環境情報を作成する。このため、かご4が待機状態にあるときの個別環境情報を作成することができる。その結果、待機階床が適する階床3に決定される可能性を高めることができる。
【0069】
また、環境センサ9は、温度センサであって、環境物理量として温度を測定する。決定条件は、最適な温度条件が設定される。このため、かご4の温度が最適な状態になるような待機階床が決定され得る。更に、決定条件が最も低い温度であることまたは規定の温度範囲にあることに設定されているとき、待機状態においてかご4の上面に設置された機器が異常に高温になることを抑制することができる。その結果、当該機器の寿命を延ばすことができる。
【0070】
なお、指令部13は、評価運転を行う際に、かご4の内部の空調をオフにした状態で評価階床でかご4を待機させる指令を作成してもよい。環境物理量がかご4の内部の温度等のかご4の内部の気体に関する物理量である場合、指令部13がこのような指令を作成することで、よりかご4の設置条件を反映した環境物理量を測定することができる。
【0071】
実施の形態1におけるエレベーターシステム1には、更に様々な構成が少なくとも1つ付加されてもよい。次に、
図6を用いて、様々な構成が付加された変形例を説明する。
図6は実施の形態1におけるエレベーターシステムの変形例の機能ブロック図である。
【0072】
図6に示されるように、エレベーターシステム1には、かご4と同じ建物2に別のかご20が設けられてもよい。かご20は、かご4と同様に、複数の階床3を移動する。例えば、かご4とかご20とは、群管理制御される。なお、建物2には、更に別のかごが設けられてもよい。
【0073】
また、エレベーターシステム1は、第1環境センサである環境センサ9に加えて、第2環境センサ21および第3環境センサ22を備えてもよい。第2環境センサ21は、かご20に設けられる。第2環境センサ21は、環境センサ9が測定する環境物理量と同じ種類の環境物理量を測定する。第3環境センサ22は、かご4に設けられる。なお、第3環境センサ22は、環境センサ9と同じ筐体に設けられてもよい。第3環境センサ22は、環境センサ9が測定する環境物理量とは別の種類の環境物理量を測定する。
【0074】
この場合、指令部13は、評価運転を行う際に、かご4に対して環境物理量を測定するための第1評価階床を設定し、かご20に対して環境物理量を測定するための第2評価階床を設定してもよい。この場合、第2環境センサ21は、第2評価階床において、環境物理量を測定する。統合部14は、第2環境センサ21によって測定された環境物理量に基づいて、第2評価階床の個別環境情報を作成する。このように、指令部13は、複数のかごに対して、それぞれ別の評価階床を設定してもよい。
【0075】
また、統合部14は、個別環境情報に、第3環境センサ22で測定された別の環境物理量を日時と対応付けて含めてもよい。即ち、各階床3に対応する個別環境情報は、環境センサ9で測定された第1環境物理量と、第3環境センサ22で測定された別の種類の第2環境物理量との2種類の環境物理量が、日時と対応付けられた情報である。
【0076】
この場合、決定部15は、第1環境物理量に関する第1決定条件と、第2環境物理量に関する別の第2決定条件と、の2つの決定条件に基づいて待機階床を決定してもよい。例えば、第1環境物理量が温度であって第1決定条件が温度範囲である。第1決定条件を満たす階床3が複数存在する場合、決定部15は、第1決定条件を満たす2以上の階床3のうちから、第2決定条件を満たす階床3を待機階床に決定してもよい。例えば、第2環境物理量が照度であって、第2決定条件として最も照度が低い階床3を採用することが設定されている場合、決定部15は、第1決定条件である温度範囲を満足する階床3であって、第3環境センサ22で測定された照度が最も低い階床3を待機階床に決定する。
【0077】
エレベーターシステム1は、更に、サーバ装置23を備えてもよい。この場合、サーバ装置23は、建物2とは別の建物に設けられる。例えば、サーバ装置23は、エレベーターシステム1を保守管理する会社の建物に設けられる。制御装置8は、図示されない遠隔監視等によってネットワークに接続され、ネットワークを介してサーバ装置23と通信可能である。サーバ装置23は、ネットワークを介して、かご4を含むエレベーターの所有者が所持する端末Tと通信可能である。
【0078】
サーバ装置23は、受付部23aを機能として備える。受付部23aは、端末Tがアクセスして情報の閲覧および入力が可能なインターフェースを提供する。例えば、当該インターフェースは、一般的なウェブブラウザから閲覧可能なウェブサイトである。受付部23aは、端末Tから、エレベーターシステム1の設定変更に関する指示を受け付ける。制御装置8の各機能は、端末Tから受け付けた指示に基づいて動作する。
【0079】
例えば、受付部23aは、評価運転に関する指示を端末Tから受け付ける。指令部13は、端末Tから受け付けた指示を満たすように、評価運転を行う。具体的には、端末Tから評価運転の頻度、評価運転を行ってよい時間帯、等の指示に基づいたタイミングで、評価運転が行われる。例えば、受付部23aは、決定条件に関する指示を端末Tから受け付ける。決定部15は、端末Tから受け付けた決定条件を満たすような、待機階床を決定する。例えば、受付部23aは、第1環境センサではなく第3環境センサ22で測定された第2環境物理量に関する第2決定条件のみによって待機階床を決定する設定を受け付けてもよい。例えば、受付部23aは、決定条件を満たすような複数の階床3が待機階床の候補となった場合に、運転効率が最も良くなるような待機階床を選定する設定を受け付けてもよい。
【0080】
制御装置8は、第1補完部24と第2補完部25と履歴記憶部26と外部環境取得部27と推論部28とを機能として更に備えてもよい。
【0081】
第1補完部24は、ある階床3である第1補完階床での環境物理量の測定値と、第1補完階床とは2階以上離れた別の階床3である第2補完階床での環境物理量の測定値と、に基づいて、第1補完階床と第2補完階床との間の中間階床での環境物理量の測定値を推定し、当該中間階床に対応する個別環境情報を作成または更新してもよい。第1補完部24が中間階床での環境物理量を推定する手法は、任意の手法が用いられればよい。例えば、第1補完部24は、線形補完によって、中間階床での環境物理量を推定してもよい。即ち、第1補完部24は、ある時刻における第1補完階床での環境物理量と、同じ時刻における第2補完階床での環境物理量と、を両端とする階床3の高さと環境物理量との一次関数を導出し、中間階床の階床3の高さを当該一次関数に当てはめることで、当該時刻における中間階床での環境物理量を推定してもよい。なお、第1補完部24は、第1補完階床での環境物理量と第2補完階床での環境物理量とを予め設定されていた関数に当てはめることで、補完関数を生成し、当該補完関数に中間階床の条件を当てはめることで、中間階床における環境物理量を推定してもよい。第1補完部24は、作成した個別環境情報を記憶部11に記憶させる、または推定した環境物理量を用いて記憶部11に記憶された中間階床に対応する個別環境情報を更新する。
【0082】
第2補完部25は、かご4が通常運転しているときに環境センサ9が測定した環境物理量と、図示されないかご4のドアの開閉状態に関する情報とに基づいて、環境物理量の測定値を推定し、個別環境情報を作成または更新する。この際、環境センサ9は、かご4の内部の環境物理量を測定している。第2補完部25によって作成または更新される個別環境情報に対応する階床3は、補完階床と呼称されてもよい。かご4の内部の気体に関係する環境物理量は、通常運転時、かご4のドアが開くことで値が変動し得る。第2補完部25は、運転制御部10からかご4のドアが開いた回数および開いた時間の開閉状態に関する情報を取得する。第2補完部25は、かご4が通常運転しているときに環境センサ9が測定した環境物理量を日時およびかご4が停車している階床3と対応付けて取得する。第2補完部25は、通常運転時の環境センサ9が測定した環境物理量を、ドアの開閉状態に関する情報で補正することで、日時とある階床3である補完階床とに対応する環境物理量を算出し、補完階床における個別環境情報を補完する。例えば、第2補完部25は、補完階床における環境物理量から、ドアが開いた回数と規定の係数との積、ドアが開いた時間と規定の係数との積、等の値を減じることで、補完に使用する環境物理量を算出する。
【0083】
決定部15は、第1補完部24によって作成または更新された個別環境情報、並びに、第2補完部25によって作成または更新された個別環境情報、のうち少なくとも一方を待機階床を決定する際に利用してもよい。
【0084】
履歴記憶部26は、かご4を含む建物2に設けられた1以上のかごの運転履歴を記憶する。決定部15は、運転履歴に更に基づいて待機階床を決定してもよい。例えば、決定部15は、待機階床を決定する際に決定条件を満たす2以上の階床3が存在する場合、当該2以上の階床3のうち待機階床にした場合に稼働率に与える影響が最も少ない階床3を待機階床に決定してもよい。
【0085】
外部環境取得部27は、ネットワークを介して、図示されない外部の情報機器から外部環境に関する情報を日時と対応付けて取得する。例えば、外部環境に関する情報は、気象情報、外気温の情報、等である。統合部14は、個別環境情報を作成する際に、外部環境に関する情報を更に日時に対応付ける。決定部15は、待機階床を決定する際に、外部環境を考慮してもよい。例えば、決定部15は、待機階床を決定する際に現在の外部環境を参照し、複数の個別環境情報において現在の外部環境と類似する外部環境の時の環境物理量を抽出する。決定部15は、複数の階床3のうち抽出した環境物理量が決定条件を満たすような階床3を待機階床に決定してもよい。
【0086】
推論部28には、決定モデルが予め記憶される。決定モデルは、建物2とは別の建物のエレベーターシステムにおいて、建物2のエレベーターシステム1と同様の方法で作成された複数の個別環境情報と、当該別の建物で決定された待機階床と、の組を教師データとして学習が行われた学習済のモデルである。決定モデルは、2以上の階床3における個別環境情報を入力として、待機階床を出力するためのモデルである。即ち、全ての階床3の環境物理量が全ての時刻で測定されていない場合であっても、推論部28は、記憶部11に現在記憶されている2以上の個別環境情報と決定モデルとに基づいて、待機階床とする階床3を推論する。その後、推論部28が推論した階床3を待機階床として決定してもよいし、決定部15が推論部28によって推論された階床3を待機階床として決定してもよい。
【0087】
以上で説明した実施の形態1の変形例によれば、エレベーターシステム1は、かご4と別のかご20とを備える。かご20には、別の環境センサである第2環境センサ21が設けられる。第2環境センサ21は、第1環境センサである環境センサ9と同じ種類の環境物理量を測定する。評価運転において、指令部13は、かご4に評価階床で待機させ、かご20にはかご4とは別の待機階床で待機させる。統合部14は、2つの待機階床のそれぞれで測定された環境物理量に基づいて、2つの個別環境情報を作成する。このため、エレベーターシステム1は、複数の個別環境情報を効率的に作成することができる。
【0088】
また、エレベーターシステム1は、第1補完部24を更に備えてもよい。第1補完部24は、中間階床についての環境物理量を推定して個別環境情報を作成または更新する。このため、全ての階床3で十分な量の環境物理量が測定されていない場合であっても、エレベーターシステム1は、個別環境情報を補完することができる。
【0089】
また、エレベーターシステム1は、第2補完部25を更に備えてもよい。この場合、環境センサ9は、かご4の内部の環境物理量を測定する。第2補完部25は、補完階床についての個別環境情報を作成する。このため、ある階床3の環境物理量が測定されていない場合であっても、エレベーターシステム1は、通常運転時の測定値に基づいて個別環境情報を補完することができる。
【0090】
また、エレベーターシステム1は、かご4に設置された第3環境センサ22を備える。第3環境センサ22は、環境センサ9とは別の種類の環境物理量を測定する。決定部15は、第1決定条件と、第1決定条件とは別の第2決定条件と、に基づいて待機階床を決定する。このため、かご4を待機させる際に重視する条件を、より詳細に設定することができる。
【0091】
また、エレベーターシステム1は、受付部23aを更に備える。決定部15は、受け付けた決定条件に基づいて待機階床を決定する。このため、エレベーターシステム1の所有者が望む条件で、待機階床を決定することができる。
【0092】
また、エレベーターシステム1は、環境センサ9と統合部14と推論部28とを備える。推論部28は、複数の個別環境情報に基づいて待機階床を決定する。このため、建物2の構造、およびエレベーターシステム1の設置環境に応じて、適する階床3を待機階床に決定することができる。その結果、エレベーターシステム1の設置環境に依らずかご4の内部の快適性を向上させることができる。
【0093】
実施の形態2.
図7は実施の形態2におけるエレベーターシステムの機能ブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0094】
図7に示されるように、実施の形態2において、かご4には、ファン30が更に設けられる。図示されないが、かご4には、かご4の内部と外部とを繋ぐ風道が設けられる。例えば、ファン30は、風道の途中に設けられる。ファン30が駆動して回転すると、風道の内部に、かご4の内部から外部へと向かう気流を発生させる。即ち、ファン30は、駆動したときにかご4の内部の空気を外部へと排出可能である。
【0095】
実施の形態2において、指令部13は、評価運転の際に、評価階床においてかご4のドアを開状態に維持し、ファン30を駆動させる指令を作成してもよい。この場合、運転制御部10は、当該指令に基づいて、評価運転の際、かご4のドアを開状態に維持し、ファン30を駆動させたままかご4を評価階床で待機させてもよい。
【0096】
待機運転に遷移した場合、運転制御部10は、決定部15によって複数の個別環境情報に基づいて決定された待機階床でかご4を待機させるとき、かご4のドアを開状態に維持して、ファン30を駆動させる。
【0097】
また、通常運転の際、ファン30は、停止している。運転制御部10は、通常運転の際であって、決定部15によって決定された待機階床にかご4が停車したときに、ファン30を駆動させてもよい。特に、環境物理量が温度であって、待機階床にかご4が停車したときにかご4の内部の温度が冷却閾値を超えている場合、運転制御部10は、ファン30を駆動させてもよい。
【0098】
以上で説明した実施の形態2によれば、エレベーターシステム1は、更に運転制御部10とファン30とを備える。例えば、夏場において乗場が涼しい階床3が待機階床に設定される可能性が高い。特に、評価運転の際にかご4のドアが開状態に維持されてファン30が駆動されている場合、当該可能性はより高まる。待機階床でかご4のドアを開状態に維持してファン30を駆動させながらかご4を待機させることで、かご4の内部の温度をより快適な状態に保つことができる。
【0099】
また、環境センサ9は、温度センサであって、かご4の内部の温度を測定する。運転制御部10は、通常運転中にかご4が待機階床に設定された階床3に停車したときに、温度が冷却閾値を超えている場合、ファン30を駆動させる。このため、通常運転中であっても、かご4の内部を適する環境にすることができる。
【0100】
次に、
図8を用いて、制御装置8を構成するハードウェアの例を説明する。
図8は実施の形態1におけるエレベーターシステムの制御装置のハードウェア構成図である。
【0101】
制御装置8の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0102】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、制御装置8の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置8の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0103】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置8の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置8の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0104】
制御装置8の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、記憶部11の機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、記憶部11の機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0105】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置8の各機能を実現する。
【0106】
図示されないが、サーバ装置23の各機能も、制御装置8の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。
【0107】
更に、サーバ装置23は、クラウドサーバ上に実現されてもよい。この場合、処理回路は、複数の部分回路によって構成される。複数の部分処理回路は、クラウドサーバを構成する複数の装置にそれぞれ設けられる。クラウドサーバを構成する複数の装置は、それぞれが別の建物に設けられてもよい。
【0108】
また、実施の形態1および2において制御装置8が備える機能のうち、運転制御部10を除く各機能の少なくとも1つが、制御装置8の代わりにサーバ装置23によって実現されてもよい。
【0109】
なお、実施の形態1または2に開示されたエレベーターシステム1は、シースルーエレベーターに限らず、任意の場所に設置されたエレベーターシステムであってよい。特に、本開示の技術は、昇降路の環境が外気の影響を受けやすく、かごの位置によってその環境が変化するエレベーターシステムに適用され得る。具体的には、本開示の技術は、駅の改札等の乗場が屋外に存在するエレベーターシステムに適用され得る。本開示の技術は、駐車場が組み込まれた建物に設けられたような、昇降路を構成する壁の一部の薄さが他部とは異なるエレベーターシステムに適用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本開示に係るエレベーターシステムは、シースルーエレベーターに利用できる。
【符号の説明】
【0111】
1 エレベーターシステム、 2 建物、 2a 壁面、 2b 部分、 2h 昇降路、 3 階床、 4 かご、 4a 側面、 5 釣合おもり、 6 主ロープ、 7 巻上機、 8 制御装置、 9 環境センサ、 10 運転制御部、 11 記憶部、 12 時刻管理部、 13 指令部、 14 統合部、 15 決定部、 20 かご、 21 第2環境センサ、 22 第3環境センサ、 23 サーバ装置、 23a 受付部、 24 第1補完部、 25 第2補完部、 26 履歴記憶部、 27 外部環境取得部、 28 推論部、 30 ファン、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア、 T 端末
【要約】
設置環境に応じて適する待機階床を決定することができるエレベーターシステムを提供する。エレベーターシステムは、複数の階床を移動するかごに設置され、設置された環境における環境物理量を測定する環境センサと、複数の階床のうち2以上の階床の各々について、当該階床で測定された環境物理量と測定された時刻とが対応付けられた階床ごとの情報である複数の個別環境情報を作成する統合部と、複数の個別環境情報に基づいて、複数の階床のうち環境物理量が規定の決定条件を満たす階床をかごが待機状態において待機する待機階床に決定する決定部と、を備えた。