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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】電界センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/12 20060101AFI20250115BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20250115BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
G01R29/12 F
G01R29/12 Z
G01R29/08 F
G01R35/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018180875
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051871
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲典
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】勝山 純
(72)【発明者】
【氏名】品川 満
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】中塚 直樹
【審判官】貝沼 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-143173(JP,A)
【文献】特開平7-181211(JP,A)
【文献】特開平11-6849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被対象物が発する電界を、電気光学効果を利用して測定する電界センサであって、
光源と、
前記光源が出射した光に基づく所定の偏光状態の光が入射され、前記被対象物が発する電界を受ける電気光学結晶と、
信号レベルが既知の基準信号に基づく基準電界を前記電気光学結晶に印加する基準電界手段と、
前記電気光学結晶から出射される光を受光し、受光した光を電気信号に変換する受光手段と、
前記電気信号から前記被対象物が発する電界に基づく測定信号成分と前記基準電界に基づく基準信号成分とを分離し、分離した前記基準信号成分の信号レベルに基づいて前記測定信号成分の信号レベルを補正する分離補正手段と、
参照信号に基づいて前記被対象物が発する電界を変調する測定電界手段と、
を備え、
前記分離補正手段は、
前記電気信号から前記参照信号で変調された成分を前記測定信号成分として分離する第1分離部と、
前記電気信号から前記基準信号成分を分離する第2分離部と、
分離された前記基準信号成分の信号レベルに基づいて、前記測定信号成分の信号レベルを補正する補正部と、を備え、
前記被対象物が太陽電池であり、
前記測定電界手段は、前記参照信号に基づいて変調された光を前記太陽電池に照射するための照射用光源を備え、
前記電気光学結晶は、前記太陽電池が前記照射用光源による光の照射によって発生した電界を、前記被対象物が発する電界として受ける、
電界センサ。
【請求項2】
前記所定の偏光状態は、円偏光である、請求項1に記載の電界センサ。
【請求項3】
前記基準信号の周波数は、前記被対象物が発する電界の周波数範囲外の周波数、又は前記被対象物が発する電界の周波数とは異なる周波数である、請求項1又は請求項2に記載の電界センサ。
【請求項4】
前記基準電界手段は、前記被対象物が発する電界を、前記電気光学結晶が受けている間に、前記基準電界を前記電気光学結晶に印加する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電界センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電界を測定する電界センサとしては、センサエレメントが一般的なダイポールアンテナのような金属製のものが一般的である。
これに対して、電気光学効果を用いた電界測定は、センサエレメントが金属製ではないため測定対象の電界を乱さずに測ることができ、さらに高空間分解の測定が可能である。このため、電気光学効果を用いた電界測定は、色々な用途で使われ始めている。なお、電気光学効果とは、電気光学結晶に電界が印加されると、電界強度に比例して電気光学結晶を透過する光の屈折率が変化する効果である。また、屈折率の変化は、光学結晶を通過する光波の位相変化を与える。電気光学効果を用いた電界測定では、位相の変化を測定することで、電気光学結晶に印加されている電界を測定することができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ここで、電気光学効果を利用した従来の電界センサの構成と動作の概略を説明する。
図8は、電気光学効果を利用した従来の電界センサの構成例を示す図である。図8に示すように、電界センサ900は、光源901、偏光子902、波長板903、電気光学結晶904、偏光子905、および受光器906を有する。
【0004】
光源901は、例えば半導体レーザである。偏光子902は、光源901から入射した光線のうち直線偏光(符号911)を出射する。波長板903は、λ/4波長板であり、偏光子902から入射した光線を円偏光(符号912)に偏光して出射する。電気光学結晶904は、外部電界源によって印加される電界強度に応じた複屈折の変化により偏光状態を変化させる。電気光学結晶904は、偏光状態が変化した楕円偏光(符号913)の光線を出射する。偏光子905は、電気光学結晶904が出射した光線を直線偏光に変える。受光器906は、偏光子905が出射する光線を電気信号に変換して出力する。なお、波長板903を用いている理由は、電気光学結晶904に直線偏光を入射させた場合に光源の偏光軸と同じ複屈折成分の検出感度が低下することを防ぐためと、電界の極性を判定するに円偏光を用いる必要があるためである。図8の構成では、光強度変化を受光器電気信号に変換することで、測定する電界強度を電気強度に変換する(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
なお、図8の構成では光源の光量変化により測定値が変動することがある。変動低減のために電気光学結晶の出力の後に偏光子の代わりに偏光ビームスプリッタを配する構成例を説明する。図9は、電気光学結晶904の出力の後に検光子(偏光子905)の代わりに偏光ビームスプリッタを配する構成例を示す図である。図9に示すように、電界センサ900Aは、光源901、偏光子902、波長板903、電気光学結晶904、ビームスプリッタ907、ミラー908、第1受光器906a、第2受光器906b、および差動増幅器909を有する。
【0006】
ビームスプリッタ907は、偏光ビームスプリッタであり、入射光を水平偏光成分Pと垂直偏光成分Pに分離する。例えば、第1受光器906aは、水平偏光成分Pを電気信号に変換する。また、第2受光器906bは、ミラーによって全反射された垂直偏光成分Pを電気信号に変換する。差動増幅器909は、第1受光器906aと第2受光器906bが出力する2成分信号の差動出力を行う。この構成により、光源変動等の共通変動成分を除去している(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
次に、電気光学結晶904の屈折率の変化、光位相変化、入射される光電力、出射する光電力について説明する。
外部電界Eが電気光学結晶904に印加されると、電気光学結晶904の屈折率変化の大きさΔnは、次式(1)で表される。
【0008】
【数1】
【0009】
式(1)において、Δnは屈折率変化であり、nは非摂動屈折率であり、Eは電界強度であり、reffは一次電気光学係数である。
この時の光位相変化Δφは、次式(2)のように表される。
【0010】
【数2】
【0011】
式(2)において、Δφは位相変化であり、Lは結晶長であり、dは結晶厚であり、λは波長である。
波長板903が、偏光子902で直線偏光にされた光にπ/2の位相差を与え、円偏光に変換した場合、検光子(偏光子905)から出る光電力強度Poutは、次式(3)のように表される。
【0012】
【数3】
【0013】
式(3)において、Poutは検光子(偏光子905)から出る光電力強度であり、Pinは電気光学結晶に入る光電力である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2002-122622号公報
【文献】特開2007-101384号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】木原登喜夫、“光応用電界センサによる電圧測定法”、福井工業大学、福井工業大学研究記要 第17号、p37-p45、1987
【文献】Xiaojun Zeng,Haiqing Chen,” Electro-optical measurement of highly intense electric field with high frequency”, Optical Sensing, Imaging and Manipulation for Biological and Biomedical Applications Held in Taipei, Taiwan on 26-27 July 2000,p298-307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、光学結晶の電界に対する位相変化量の大きさ、すなわち感度に相当する一次電気光学定数reffは、光学結晶の複屈折の温度依存性により変化する。さらに、一次電気光学定数reffは、光学結晶材料の熱膨張係数により、結晶の電気光学作用長が伸縮するなど、応力により結晶内の偏波状態が変化することによる位相変化が加算され、被測定電界以外の要因でセンサ出力が変動し、その変動分が本来の測定出力に加算され、測定安定度が低下する。
【0017】
また、光学結晶の自然複屈折は温度変動により変化することが知られている。例えば、光源の波長が温度によって変化すると、λ/4波長板による位相のずれ量が変化する。また、光学結晶には、電気光学定数の面内分布があり、周囲温度変化により結晶内を通過する光ビーム位置がずれるため、電界強度に対する感度が変化することが電界強度に対する感度の変動要因ともなる。また、使用するλ/4波長板や偏波保持ファイバ等のセンサ内に光を導光する部品の温度依存性のために、電気光学結晶に入る光が円偏光から楕円偏光と変化するので検出感度が下がることが電界強度に対する感度の変動要因ともなる。さらに、偏光ビームスプリッタにも温度依存性があるため、分離されたP波成分とS波成分との比が変化する。
【0018】
これらの変動要因があるため、非特許文献2に記載の技術のように、偏光ビームスプリッタで分岐し差動光学系を構成して光源強度の時間的変動をキャンセルしても、センサ全体の温度依存要因をキャンセルし、高安定度な電界測定を行うことは困難である。
【0019】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、電気光学効果を利用した電界センサにおいて、周囲温度等の変化においても測定安定度を損なうことなく電界強度を測定できる電界センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る電界センサ(100,100A,100A’,100C,100D)は、電気光学効果を利用した被対象物が発する電界を測定する電界センサであって、光源(1)と、前記光源が出射した光に基づく所定の偏光状態の光が入射され、前記被対象物が発する電界を受ける電気光学結晶(5,5D)と、信号レベルが既知の基準信号に基づく電界を前記電気光学結晶に印加する基準電界手段(基準電源11、電界制御部15、基準電界源16)と、前記電気光学結晶から出射される光を受光し、受光した光を電気信号に変換する受光手段(1021)と、前記電気信号から前記被対象物が発する電界に基づく測定信号と前記基準信号とを分離し、分離した前記基準信号の信号レベルに基づいて前記測定信号の信号レベルを補正する分離補正手段(1022,1022A)と、を備える。
【0021】
上記の構成により、電界センサは、信号レベルが既知の基準信号に基づく電界を電気光学結晶に印加し、一次電気光学定数reffの変化を第2分離部で基準信号のみを検波することで、一次電気光学定数reffの変化分をモニタすることができる。電界センサは、このように検出した基準信号の信号レベルに基づいて測定信号の信号レベルを補正することで、電気光学効果を利用した電界センサにおいて、周囲温度等の変化においても測定安定度を損なうことなく電界強度を測定できる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る電界センサにおいて、前記分離補正手段は、前記電気信号から前記測定信号を分離する第1分離部(濾過器10)と、前記電気信号から前記基準信号を分離する第2分離部(ロックインアンプ12)と、分離された前記基準信号の信号レベルに基づいて、前記測定信号の信号レベルを補正する補正部(利得制御部13、可変利得増幅器14)と、を備えるようにしてもよい。
【0023】
上記の構成により、電界センサは、電気光学結晶に印加される電界強度に誘起される位相変化量を得ることができる。上記の構成により、その位相変化を常時監視する分離補正手段によって、位相変化を補正することにより測定安定度の高い電界センサを提供することができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る電界センサにおいて、信号レベルが既知の参照信号を前記被対象物に印加する測定電界手段(測定用電源21、測定用電界制御部22)、をさらに備え、前記分離補正手段は、前記電気信号から前記参照信号が重畳された前記測定信号を分離する第1分離部(ロックインアンプ12a)と、前記電気信号から前記基準信号を分離する第2分離部(ロックインアンプ12b)と、分離された前記基準信号の信号レベルに基づいて、前記測定信号の信号レベルを補正する補正部(利得制御部13、可変利得増幅器14)と、を備えるようにしてもよい。
【0025】
上記の構成により、電界センサは、被対象物が発する電界に参照信号に基づく電界を印加することで測定信号に参照信号を重畳し、第1分離部が電気信号から前記参照信号が重畳された前記測定信号を分離するようにした。これにより、電界センサは、周囲に測定対象の電界以外に、例えば電源からの容量結合性のノイズや電磁誘導などによるノイズがある場合、上記の構成により、これらのノイズ成分を除去することができる。この結果、電界センサは、測定する電界強度が小さくSN比が悪い場合であっても精度良く電界強度を測定できる。
【0026】
また、本発明の一態様に係る電界センサにおいて、前記被対象物が太陽電池(201)であり、前記測定電界手段は、前記太陽電池に光を照射するための光源(太陽電池照射用光源24)を備え、前記電気光学結晶は、前記太陽電池が前記光源による光の照射によって発生した電界を、前記被対象物が発する電界として受けるようにしてもよい。
【0027】
上記の構成により、電界センサは、太陽電池に光が照射されたことによって発生する電界を測定することができる。これにより、上記の構成により、基準信号を用いて、周囲温度が変化しても、電界センサの電界感度が補正できるので、安定度の高い測定が可能となる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る電界センサにおいて、前記電気光学結晶は、前記光源の光が入射される第1光導波路(3031)と、前記第1光導波路の第1出力に接続され前記被対象物が発する電界が入力される第1の電極(3033)と、前記第1の電極に接続され前記基準信号に基づく電界が印加される第2の電極(3034)と、前記光導波路の第1出力に接続され接地されている第3の電極(3032)と、第1入力に前記第2の電極が接続され第2入力に前記第3の電極が接続され出力が前記受光手段に接続される第2光導波路(3035)と、を備えるようにしてもよい。
【0029】
上記の構成により、電界センサは、光導波路型の電界センサにおいても、基準信号に基づく電界を加えることで、温度変化に対する位相変化をモニタすることができる。上記の構成により、その位相変化を常時監視する分離補正手段によって、位相変化を補正することにより測定安定度の高い電界センサを提供することができる。
【0030】
また、本発明の一態様に係る電界センサにおいて、前記電気光学結晶(5D)は、透明電極(ITO電極5D1)と、前記透明電極と対向する面にミラー(5D2)とを備え、前記光源が出射した光に基づく所定の偏光状態の光が前記透明電極から入射され、前記透明電極から入射した光を前記ミラーによって反射し、反射した光を前記透明電極から出射するようにしてもよい。
【0031】
上記の構成により、電界センサは、光線が透明電極を通してミラーに反射して戻ってくる光の位相変化を取得することで電界強度を測定する。上記の構成により、電界センサは、透明電極と結晶下面とにかかる電界に対し位相変化が発生する場合であっても、基準に基づく電界を加えることで、温度変化に対する位相変化をモニタすることができる。上記の構成により、その位相変化を常時監視する分離補正手段によって、位相変化を補正することにより測定安定度の高い電界センサを提供することができる。
【0032】
また、本発明の一態様に係る電界センサにおいて、前記所定の偏光状態は、円偏光であるようにしてもよい。
【0033】
上記の構成により、電界センサは、円偏光を用いることで、電界の極性を判定することができる。
【0034】
また、本発明の一態様に係る電界センサにおいて、前記基準信号の周波数は、測定信号に影響を及ぼさない周波数帯であるようにしてもよい。
【0035】
上記の構成により、電界センサは、基準信号強度が測定信号に影響を及ぼさないようにしたので、測定安定度の高い電界センサを提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、電気光学効果を利用した電界センサにおいて、周囲温度等の変化においても測定安定度を損なうことなく電界強度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第1実施形態に係る電界センサの構成例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る電界センサの効果を説明するための図である。
図3】第2実施形態に係る電界センサの構成例を示す図である。
図4】第2実施形態に係る電界センサの効果を説明するための図である。
図5】第2実施形態の電界センサを太陽電池の発生電界分布の測定に適用した場合の構成例を示す図である。
図6】第1実施形態の電界センサを導波路型電界センサに適用した場合の構成例を示す図である。
図7】縦型電界センサに本実施形態の電界センサを適用した構成例を示す図である。
図8】電気光学効果を利用した従来の電界センサの構成例を示す図である。
図9】電気光学結晶の出力の後に検光子(偏光子)の代わりに偏光ビームスプリッタを配する構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0039】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る電界センサ100の構成例を示す図である。
図1に示すように、電界センサ100は、光源1、レンズ2、偏光子3、λ/4波長板4、電気光学結晶5、偏光ビームスプリッタ6(受光手段)、レンズ7a(受光手段)、レンズ7b(受光手段)、受光器8a(受光手段)、受光器8b(受光手段)、差動増幅部9(受光手段)、濾過器10(第1分離部)、基準電源11(基準電界手段)、ロックインアンプ12(第2分離部)、利得制御部13、可変利得増幅器14、電界制御部15(基準電界手段)、および基準電界源16(基準電界手段)を備える。
【0040】
電気光学結晶5への入力側の構成要素101は、光源1、レンズ2、偏光子3、およびλ/4波長板4である。
電気光学結晶5の出力側の構成要素102(分離補正手段)は、偏光ビームスプリッタ6、レンズ7a、レンズ7b、受光器8a、受光器8b、差動増幅部9、濾過器10、ロックインアンプ12、利得制御部13(補正部)、および可変利得増幅器14(補正部)である。
【0041】
また、電気光学結晶5の出力側の構成要素102は、受光手段1021と分離補正手段1022を備える。
受光手段1021は、偏光ビームスプリッタ6、レンズ7a、レンズ7b、受光器8a、受光器8b、および差動増幅部9を備える。
分離補正手段1022は、濾過器10、ロックインアンプ12、利得制御部13、および可変利得増幅器14を備える。
【0042】
まず、電界センサ100の光学的な構成要素の配置を説明する。
レンズ2は、光源1と偏光子3との間に配置される。偏光子3は、レンズ2とλ/4波長板4との間に配置される。λ/4波長板4は、偏光子3と電気光学結晶5との間に配置される。電気光学結晶5は、λ/4波長板4と偏光ビームスプリッタ6との間に配置される。偏光ビームスプリッタ6は、電気光学結晶5とレンズ7aとの間、電気光学結晶5とレンズ7bとの間に配置される。レンズ7aは、偏光ビームスプリッタ6と受光器8a(受光素子)との間に配置される。レンズ7bは、偏光ビームスプリッタ6と受光器8b(受光素子)との間に配置される。受光器8aは、レンズ7aの出射側に配置される。受光器8bは、レンズ7bの出射側に配置される。
【0043】
次に、電界センサ100の電気的な構成要素の接続関係を説明する。
受光器8aの出力端は、差動増幅部9の第1入力端子に接続されている。受光器8bの出力端は、差動増幅部9の第2入力端子に接続されている。差動増幅部9の出力端は、濾過器10の入力端とロックインアンプ12の第1入力端に接続されている。濾過器10の出力端は、可変利得増幅器14の入力端に接続されている。ロックインアンプ12は、第2入力端が基準電源11の一端と電界制御部15の入力端とに接続され、出力端が利得制御部13の入力端に接続されている。基準電源11は、他端が接地されている。利得制御部13の出力端は、可変利得増幅器14の制御端に接続されている。可変利得増幅器14の出力端は、電界センサ100の出力部に接続されている。電界制御部15は、他端が基準電界源16に接続されている。電気光学結晶5は、第1の面側に基準電界源16が設けられており、第1の面と対向する第2の面側が接地されている。
【0044】
次に、電界センサ100と各構成要素の動作について説明する。
電界センサ100は、被対象物が発する電界の強度を測定する。図1においては、測定用電界源23が被測定対象である。
【0045】
光源1は、例えばLD(レーザーダイオード)である。
レンズ2は、コリメータレンズであり、光源が出射した光線を平行光に変換して出射する。
【0046】
偏光子3は、レンズ2が出射した光線を直線光に偏光する。
λ/4波長板4は、λ/4波長板であり、偏光子3が出射した光線を円偏光に偏光して出射する。なお、本実施形態では、電界の原点付近の感度を増加の目的や電界の極性を判定する目的で、電気光学結晶5の前にλ/4波長板4を入れて偏光している。ただし、感度増加や電界極性を判定する必要がない場合は、必ずしもλ/4波長板4を実装してなくてもよい。
【0047】
電気光学結晶5には、λ/4波長板4が出射した光線が入射され、基準電界源16によって基準電界E(fref)が印加さる電気光学結晶5には、基準電界E(fref)が印加さる面と同じ面で、測定用電界源23による測定用電界E(meas)を受ける。電気光学結晶5は、基準電界E(fref)と測定用電界E(meas)に応じた複屈折の変化によって偏光状態が変化した円偏光の光線P(meas+fref)を出射する。電気光学結晶5は、例えばLiNbO、LiTaO、Bi12SiO0(BSO)、Bi12GeO20(BGO)、ADP、KDP、水晶等である。
【0048】
偏光ビームスプリッタ6は、偏光ビームスプリッタであり、電気光学結晶5が出射した円偏光の光線をP偏光PH(meas+fref)とS偏光PS(meas+fref)に分離する。
【0049】
レンズ7aは、コリメータレンズであり、偏光ビームスプリッタ6が出射したP偏光の光線を受光器8aに集光する。
レンズ7bは、コリメータレンズであり、偏光ビームスプリッタ6が出射したS偏光の光線を受光器8aに集光する。
【0050】
受光器8aは、受光した光量を光電変換することにより電界強度に応じた電気信号VH(meas+fref)として差動増幅部9に出力する。
受光器8bは、受光した光量を光電変換することにより電界強度に応じた電気信号VS(meas+fref)として差動増幅部9に出力する。
【0051】
差動増幅部9は、P偏光成分とS偏波成分の電気信号の差動成分を増幅して、増幅した電気信号V(meas+fref)を濾過器10の入力端とロックインアンプ12に出力する。
濾過器10は、差動増幅部9が出力した測定信号中の基準電界信号成分を除去した電気信号V(meas)を可変利得増幅器14に出力する。
【0052】
基準電源11は、基準電界信号成分作成用の基準信号frefを発生させ、発生させた基準信号をロックインアンプ12と電界制御部15とに出力する。
ロックインアンプ12は、基準電源11が出力する基準信号を用いて、差動増幅部9が出力する電気信号の中から基準電界信号成分V(fref)を抽出する。なお、基準電界信号成分の抽出には、必ずしもロックインアンプ12ではなくても同期検波方式のアンプでもよい。
【0053】
利得制御部13は、ロックインアンプ12が出力する基準電界信号成分に応じて増幅率を制御する制御信号を生成し、生成した制御信号を可変利得増幅器14に出力する。例えば、既知の基準電界信号の大きさが下がった(感度が下がった)場合、利得制御部13は、可変利得増幅器14のゲインを上げる制御信号を可変利得増幅器14に出力する。このように、利得制御部13はAGC(Automatic Gain Control;自動利得制御)としての機能を有している。
【0054】
可変利得増幅器14は、利得制御部13が出力する制御信号に応じて、濾過器10が出力する信号の増幅率を可変して出力する。
電界制御部15は、基準電源11が出力する基準信号を電界強度に駆動するドライバであり、駆動信号を基準電界源16に出力する。
【0055】
基準電界源16は、電気光学結晶5の電気光学定数の変化をモニタするための基準電界源であり、電界制御部15が出力する駆動信号によって駆動され、電気光学結晶5に基準電界E(fref)を与える。なお、このように、電気光学結晶5に基準電界E(fref)を与えることは、基準信号frefで変調をかけていることになる。
【0056】
なお、図1に示した構成では、可変利得増幅器を用いて基準信号の変動分に合わせ、利得を調整して測定安定度の向上をハード的に行なっているが、測定信号成分と基準信号成分の出力をそれぞれA/D変換し数値にした後、ソフト的に演算を行い処理してもよい。
【0057】
次に、電界センサ100による効果を説明する。
電界センサ100は、センサ内に実装している電気光学結晶5に印加される電界強度に誘起される位相変化量を光学的手段で得ている。電気光学結晶5の電界に対する位相変化量の大きさ、すなわち感度に相当する一次電気光学定数r31は、光学結晶の複屈折の温度依存性により変化する。
更に、光学結晶材料の熱膨張係数により電気光学結晶5の光学作用長が変わる。また、応力により結晶内の偏波状態が変化することによる位相変化が加わるので、その位相変化を常時監視する機構を盛り込み、変化を補正することにより測定安定度の高い電界センサを提供する必要がある。
【0058】
このため、本実施形態では、既知の電界を発生する基準電界信号E(fref)を電気光学結晶に印加し、一次電気光学定数reffの変化を後段のロックインアンプ12で基準信号成分V(fref)のみを検波することで、一次電気光学定数reffの変化分をモニタすることができる。
ここで、V(fref)の信号は光源から差動増幅器の入力まで共通なので、変動分に応じて、演算部(濾過器10、ロックインアンプ12、利得制御部13、可変利得増幅器14)で測定信号の感度を補正すれば、周囲温度等により一次電気光学定数reffが変化しても測定安定度の高い電界測定が可能となる。
【0059】
図2に示すように、基準信号成分V(fref)の周波数と測定周波数帯は、基準信号強度が測定信号に影響を及ぼさないように分離する必要がある。このため、本実施形態では、濾過器10を用いて、基準信号強度が測定信号に影響を及ぼさないように分離している。
図2は、本実施形態に係る電界センサ100の効果を説明するための図である。図2において、横軸は周波数であり、縦軸は電界センサ100のセンサゲインである。また、符号g101は基準信号の周波数frefを示し、符号g102は電界センサ100の周波数特性を示し、符号g103は測定周波数特性を示している。周波数frefは、例えば10Hzであり、測定周波数は例えば100Hzである。なお、基準信号成分V(fref)の周波数は、測定周波数帯に影響を及ぼさない周波数であればよく、図2に示したように測定周波数帯より低い周波数であってもよく、高い周波数であってもよい。
【0060】
以上の構成により、本実施形態では、電気光学結晶5に基準電界を印加し、印加した基準電界を抽出し、測定する信号の感度を利得制御部13によってAGCを行うことで、電界センサ100の各構成要素の温度変動等を補正している。このように、本実施形態では、電界の大きさが既知の基準電界を、測定中に電気光学結晶5に印加している。従来技術では、構成要素それぞれに温度依存性があるため、真の測定値が変化していない場合であっても、温度によって測定値が変化してしまう場合があった。これに対して、本実施形態では、温度によって大きさが変化せず、既知の基準電界の大きさを基準として、この基準電界との差分をとることで、温度依存性の影響を補正する。
【0061】
これにより、本実施形態では、被測定電界信号E(fmeas)と一次電気光学定数reffの変化分を監視するための基準電界信号E(fref)が同じ電気光学結晶に印加され、かつ、電気光学結晶の位相変化をプローブする光線も同一である。そして、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ6で水平偏光成分信号と垂直偏光成分信号それぞれに被測定電界信号成分fmと基準電界信号frefが重畳する。これにより本実施形態によれば、2個の受光器(8a、8b)の感度差や偏光ビームスプリッタ6の偏光分離比の変化も、後段の差動増幅部9と演算器(濾過器10、ロックインアンプ12、利得制御部13、可変利得増幅器14)で除去することが可能である。
【0062】
さらに本実施形態では、基準信号をロックインアンプ12で抽出し利得制御部13で必要な利得に相当する信号を生成している。このように、本実施形態では、可変利得増幅器14の利得を、電気光学定数reffの変動を補正する利得に能動的に調整することで、温度等の変動に対しても高安定な電界測定を実現することができる。
【0063】
<第2実施形態>
第2実施形態では、測定用電界にも変調をかける例を説明する。
【0064】
図3は、本実施形態に係る電界センサ100Aの構成例を示す図である。
図3に示すように、電界センサ100Aは、光源1、レンズ2、偏光子3、λ/4波長板4、電気光学結晶5、偏光ビームスプリッタ6、レンズ7a、レンズ7b、受光器8a、受光器8b、差動増幅部9、基準電源11(基準電界手段)、ロックインアンプ12a(第1分離部)、ロックインアンプ12b(第2分離部)、利得制御部13、可変利得増幅器14、電界制御部15(基準電界手段)、基準電界源16(基準電界手段)、測定用電源21(測定電界手段)、および測定用電界制御部22(測定電界手段)を備える。
【0065】
電気光学結晶5への入力側の構成要素101は、光源1、レンズ2、偏光子3、およびλ/4波長板4である。
電気光学結晶5の出力側の構成要素102A(分離補正手段)は、偏光ビームスプリッタ6、レンズ7a、レンズ7b、受光器8a、受光器8b、差動増幅部9、ロックインアンプ12a、ロックインアンプ12b、利得制御部13、および可変利得増幅器14である。
【0066】
また、電気光学結晶5の出力側の構成要素102は、受光手段1021と分離補正手段1022Aを備える。
受光手段1021は、偏光ビームスプリッタ6、レンズ7a、レンズ7b、受光器8a、受光器8b、および差動増幅部9を備える。
分離補正手段1022Aは、ロックインアンプ12a、ロックインアンプ12b、利得制御部13、および可変利得増幅器14を備える。
【0067】
電界センサ100Aの光学的な構成要素の配置は、電界センサ100と同様である。
【0068】
次に、電界センサ100Aの電気的な構成要素の接続関係を説明する。
受光器8aの出力端は、差動増幅部9の第1入力端子に接続されている。受光器8bの出力端は、差動増幅部9の第2入力端子に接続されている。差動増幅部9の出力端は、ロックインアンプ12aの第1入力端とロックインアンプ12bの第1入力端に接続されている。ロックインアンプ12bは、第2入力端が基準電源11の一端と電界制御部15の入力端とに接続され、出力端が利得制御部13の入力端に接続されている。基準電源11は、他端が接地されている。利得制御部13の出力端は、可変利得増幅器14の制御端に接続されている。可変利得増幅器14の出力端は、電界センサ100Aの出力部に接続されている。電界制御部15は、他端が基準電界源16に接続されている。電気光学結晶5は、第1の面側に基準電界源16と測定用電界源23が設けられており、第1の面と対向する第2の面側が接地されている。測定用電源21は、他端が接地されている。測定用電界制御部22は、他端が測定用電界源23に接続されている。
【0069】
次に、電界センサ100と各構成要素の動作について説明する。なお、図1と同様の機能を有する構成要素には同じ符号を用いて説明を省略する。
【0070】
電界センサ100Aは、被対象物が発する電界の強度を測定する。図3においては、測定用電界源23が被測定対象である。
【0071】
測定用電源21は、測定用参照信号fmを発生させる。
測定用電界制御部22は、測定用電源21が出力する測定用参照信号を電界強度に駆動するドライバであり、駆動信号を測定用電界源23に出力する。
測定用電界源23は、測定用電界制御部22が出力する駆動信号によって駆動され、電気光学結晶5に測定用電界E(fm)を与える。なお、このように、電気光学結晶5に基準電界測定用電界E(fm)を与えることは、測定用電界に周波数fmで変調をかけていることになる。
【0072】
差動増幅部9は、P偏光成分とS偏波成分の電気信号の差動成分を増幅して、増幅した電気信号V(fm+fref)をロックインアンプ12aとロックインアンプ12bに出力する。
【0073】
ロックインアンプ12aは、測定用電源21が出力する測定信号を用いて、差動増幅部9が出力する電気信号の中から測定用電界信号成分V(fm)を抽出する。
ロックインアンプ12bは、基準電源11が出力する基準信号を用いて、差動増幅部9が出力する電気信号の中から基準電界信号成分V(fref)を抽出する。
【0074】
なお、可変利得増幅器14を用いて基準信号の変動分に合わせ、利得を調整して測定安定度の向上をハード的に行なっているが、測定信号成分と基準信号成分の出力をそれぞれA/D変換し数値にした後、ソフト的に演算を行い処理してもよい。
【0075】
周囲に測定対象の電界以外に、例えば電源からの容量結合性のノイズや電磁誘導などによるノイズがある場合、これらのノイズ成分を除去するため、本実施形態では、測定電界に参照信号E(fm)を重畳する。そして、本実施形態においても、電気光学結晶5の出力側の構成要素102Aで測定信号成分のみを検出する。また、本実施形態においても、ロックインアンプ12bが検出した基準信号の大きさに基づいて、測定信号のレベルを利得制御部13と可変利得増幅器14によって補正する。
【0076】
図4は、本実施形態に係る電界センサ100Aの効果を説明するための図である。図2において、横軸は周波数であり、縦軸は電界センサ100のセンサゲインである。また、符号g101は基準信号の周波数frefを示し、符号g102は電界センサ100の周波数特性を示し、符号g103は測定周波数特性を示している。符号g104は、測定用の参照周波数を示している。図4に示すように、基準信号の周波数frefは、測定用の参照周波数と異なっている。
【0077】
これにより、本実施形態の電界センサ100Aは、第1実施形態の電界センサ100と同様の効果を得ることができる。さらに本実施形態によれば、電源からの容量結合性のノイズや電磁誘導などによるノイズがある場合、これらのノイズ成分を除去することができる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態に対して、よりSN比(信号対雑音比)を向上させることができる。
【0078】
<第1実施例>
第2実施形態の電界センサ100Aを太陽電池の発生電界分布の測定に応用する例を説明する。
図5は、第2実施形態の電界センサ100Aを太陽電池の発生電界分布の測定に適用した場合の構成例を示す図である。
図5に示すように、電界センサ100Aは、電気光学結晶5への入力側の構成要素101(図3)、電気光学結晶5の出力側の構成要素102A(図3)、基準電源11、電界制御部15、基準電界源16、測定用電界制御部22(測定電界手段)、測定用電源21(測定電界手段)、および太陽電池照射用光源24(測定電界手段)を備える。
【0079】
太陽電池201は、被測定対象である。
電界センサ100A’は、被対象物である太陽電池201が発する電界の強度を測定する。
【0080】
電界センサ100A’の接続について、電界センサ100Aと異なる接続を説明する。
測定用電界制御部22は、他端が太陽電池照射用光源24に接続されている。
【0081】
次に、電界センサ100A’の動作について、電界センサ100Aと異なる動作を説明する。
測定用電源21は、測定用参照信号fmを発生させる。
測定用電界制御部22は、測定用電源21が出力する測定用参照信号を電界強度に駆動するドライバであり、駆動信号を太陽電池照射用光源24に出力する。
【0082】
太陽電池照射用光源24は、太陽電池201を発電させるための光源である。太陽電池照射用光源24は、測定用電界制御部22が出力する駆動信号によって駆動され、測定用参照信号fmで変調された光線P(fm)を太陽電池201に照射する。
【0083】
太陽電池201には、周波数fmの測定用参照信号によって変調された発電用の光が照射される。太陽電池201は、照射された光によって、電界E(fm)が発生する。
【0084】
電界センサ100A’は、太陽電池201によって発生した電界E(fm)を電気光学結晶5に与える。そして、電気光学結晶5には、周波数frefの基準信号によって変調された基準電界E(fref)が印加されている。
すなわち、電界センサ100A’では、図3の電界センサ100Aにおいて測定用電界源23の代わりに太陽電池201が発生する電界E(fm)が電気光学結晶5に印加されることになる。電界センサ100A’は、太陽電池201によって発生した電界E(fm)を測定する。
【0085】
本実施例でも、第2実施形態と同様に、可変利得増幅器14(図3)の利得を電気光学定数reffの変動を補正する利得に能動的に調整することで、電界センサ100A’の基準電源11によって、周囲温度が変化しても電界センサ100A’の電界感度を補正できるので、温度等の変動に対しても高安定な電界測定を実現することができる。これにより、本実施例によれば、安定度の高い測定が可能となる。
【0086】
<第2実施例>
第1実施形態の電界センサ100をベースに導波路型電界センサに応用する例を説明する。なお、導波路型電界センサの構成例と動作例については、例えば参考文献1参照。
【0087】
参考文献1;伊藤博、市川正、“Ti:LiNbO3光集積回路を用いた電界強度測定器の開発”、豊田中央研究所R&Dレビュー、R&Dレビュー編集委員会編 Vol.29 No.3、1994.09、p13~24
【0088】
図6は、第1実施形態の電界センサ100を導波路型電界センサに適用した場合の構成例を示す図である。
【0089】
図6に示すように、電界センサ100Cは、光源301、光ファイバ302、電気光学結晶303、基準電源305、光ファイバ306、受光器307、および分離補正手段308を含んで構成される。
電気光学結晶303は、第1光導波路3031、電極3032(第3の電極)、電極3033(第1の電極)、電極3034(第2の電極)、および第2光導波路3035を備える。
【0090】
光源301には、光ファイバ302に一端が接続されている。
光ファイバ302の他端は、電気光学結晶303の第1光導波路3031の入力端に接続されている。なお、光ファイバ302は、フォトカプラを介して電気光学結晶303の第1光導波路3031に接続されている。
【0091】
第1光導波路3031は、Y字型に形成されていて、1つの入力端と2つの出力端(第1の出力端と第2の出力端)を備える。第1光導波路3031は、第1の出力端が電極3032の入力端に接続され、第2の出力端が電極3033の入力端に接続されている。
【0092】
電極3032は、外部との接続部が接地され、出力端が第2光導波路3035の第1の入力端に接続されている。
電極3033は、外部との接続部が測定用電界源304と接続され、出力端が電極3034の入力端と接続されている。
【0093】
電極3034は、外部との接続部が基準電源305の一端に接続され、出力端が第2光導波路3035の第2の入力端と接続されている。
第2光導波路3035は、Y字型に形成されていて、2つの入力端(第1の出力端と第2の出力端)と1つの出力端を備える。第2光導波路3035は、出力端が光ファイバ306の入力端に接続されている。
光ファイバ306の他端は、受光器307に接続されている。なお、光ファイバ306は、電気光学結晶303の第2光導波路3035に接続されている。
【0094】
光源301から光ファイバ302に入射される光線は、直線偏光の光線である。
測定用電界源304は、測定用電界E(meas)を電極3033に印加することで、測定用電界E(meas)を電気光学結晶303に印加する。
基準電源305は、基準電界信号成分作成用の基準信号frefを発生させ、電極3034に印加することで、基準信号frefを電気光学結晶303に印加する。
【0095】
電気光学結晶303から光ファイバ306に出射される構成も直線偏光である。
受光器307は、光ファイバ306を介して電気光学結晶303から出射された光を受光し、受光した光を電気信号に変換する。
【0096】
電界センサ100Cは、被対象物が発する電界の強度を測定する。図6においては、測定用電界源304が被測定対象である。
【0097】
分離補正手段308は、受光器307が出力する電気信号から測定信号と基準信号を検出する。分離補正手段308は、検出した基準信号の信号レベルに基づいて、測定信号の信号レベルを補正する。分離補正手段308は、例えば、図1と同様に濾過器10(第1分離部)、ロックインアンプ12(第2分離部)、利得制御部13、および可変利得増幅器14に構成されていてもよい。または、分離補正手段308は、CPU(中央演算装置)であってもよく、測定信号成分と基準信号成分の出力をそれぞれA/D変換し数値にした後、ソフト的に演算を行い処理してもよい。
【0098】
図6に示すように、第2実施例では、図1のバラック型の電気光学結晶を光導波路型の電界センサにしたものである。光源301が光源1(図1)に相当し、測定用電界源304が測定用電界源23に相当し、基準電源305が基準電源11に相当する。
【0099】
図6に示した構成において、電極3032を通る信号成分は、電界の影響を受けない。一方、電極3033と電極3034を通る信号成分は、被測定電界E(meas)の変化によって位相が変化する。第2光導波路3035によって、電極3032を通る信号成分と、電極3033と電極3034を通る信号成分とが混合される。このような信号を受光器307が受光し、受光した信号から基準信号に基づいて、位相変化を求める。この構成においても、求めた位相差に基づいて、電界センサ100(図1)と同様に抽出された信号のゲインを利得制御部13(図1)によって制御することで、温度変動の影響を補正することができる。なお、電界センサ100Cは、受光器307が受光した信号を電気信号に変換し、変換された電気信号から濾過器10(図1)によって測定信号成分V(meas)を抽出する。そして、電界センサ100Cは、ロックインアンプ12(図1)によって基準信号V(fref)を検出し、検出された基準信号V(fref)によって利得制御部13(図1)によって可変利得増幅器14(図1)を制御する。
【0100】
図6のように構成した電界センサにおいても、電気光学結晶303の位相変化に対する温度依存性がある。このような温度依存性に対して、図6に示した第2実施例では、温度変化に対する位相変化をモニタするために、基準電界を印加する構成要素(基準電源305、電極3034)を設けた。そして、第2実施例においても、受光器307によって温度変化に対する位相変化をモニタして、変動分に応じて測定信号の強度を不図示の演算装置が補正することで、周囲温度等が変化しても測定安定度の高い電界測定が可能になる。
【0101】
<第3実施例>
次に、縦型電界センサに本実施形態の電界センサを適用する例を説明する。なお、縦型電界センサの構成例と動作例については、例えば参考文献2参照。
【0102】
参考文献2;久住肇、與島政幸、小西永二、“E-O効果を用いた実装ボードのテスト技術”、SMH会誌、12巻 (1996) 3号、p.28-32
【0103】
図7は、縦型電界センサに本実施形態の電界センサを適用した構成例を示す図である。なお、図7の例は、第1実施形態の電界センサを縦型電界センサに適用した例である。第2実施形態の電界センサを縦型電界センサすることももちろん可能である。
図7に示すように、電界センサ100Dは、光源1、ビームスプリッタ401、λ/4波長板402、電気光学結晶5D、偏光ビームスプリッタ6、レンズ7a、レンズ7b、受光器8a、受光器8b、差動増幅部9、濾過器10(第1分離部)、基準電源11(基準電界手段)、ロックインアンプ12(第2分離部)、利得制御部13、可変利得増幅器14、電界制御部15(基準電界手段)、および基準電界源16(基準電界手段)を備える。
【0104】
電気光学結晶5Dへの入力側の構成要素101は、光源1、ビームスプリッタ401、およびλ/4波長板402である。
電気光学結晶5Dからの出力側の構成要素102(分離補正手段)は、偏光ビームスプリッタ6、レンズ7a、レンズ7b、受光器8a、受光器8b、差動増幅部9、濾過器10、ロックインアンプ12、利得制御部13、および可変利得増幅器14である。
また、電気光学結晶5Dの出力側の構成要素102は、受光手段1021と分離補正手段1022を備える。
【0105】
また、電気光学結晶5Dは、ITO(Indium Tin Oxide)電極5D1が接地されている。ITO電極5D1は透明電極である。また、電気光学結晶5Dは、ITO電極5D1の対向する面にミラー5D2が設けられている。電気光学結晶5は、基準電界E(fref)と測定用電界E(meas)に応じた複屈折の変化によって偏光状態が変化した円偏光の光線P(meas+fref)を出射する。電気光学結晶5Dは、例えばLiNbO、LiTaO、Bi12SiO0(BSO)、Bi12GeO20(BGO)、ADP、KDP、水晶等である。
電界センサ100と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0106】
電界センサ100Dの構成要素の配置について、電界センサ100と異なる配置を説明する。
ビームスプリッタ401は、光源1とλ/4波長板402との間に配置される。λ/4波長板402は、ビームスプリッタ401と電気光学結晶5との間に配置される。
電気光学結晶5は、接地されているITO電極5D1を有する面がλ/4波長板402と対向する側に配置され、ミラー5D2を有する面が基準電界源16と測定用電界源23と対向する側に配置される。
【0107】
電界センサ100Dは、被対象物が発する電界の強度を測定する。図7においては、測定用電界源23が被測定対象である。
【0108】
ビームスプリッタ401は、光源1が出射した光線を2つに分割し、一方の光線を偏光ビームスプリッタ6の出射し、他方の光線をλ/4波長板402に出射する。また、ビームスプリッタ401には、λ/4波長板402に出射した光線が電気光学結晶5Dのミラー5D2によって反射し、λ/4波長板402を透過した光線が入射する。このため、ビームスプリッタ401が偏光ビームスプリッタ6へ出射する光線には、光源1を分割した光線に加えて、光源1の光線がλ/4波長板402を透過し電気光学結晶5Dを透過しミラー5D2によって反射し、λ/4波長板402を透過した光線も含まれている。
【0109】
λ/4波長板402は、ビームスプリッタ401から入射した光線の波長にλ/4の位相差を与え、電気光学結晶5Dを透過しミラー5D2によって反射された光線の波長にλ/4の位相差を与える。
【0110】
図7に示した構成では、ITO電極5D1と電気光学結晶5D下面とにかかる電界(基準電界、測定用電界)に対し位相変化がおきる。電界センサ100Dは、光線がITO電極5D1を通してミラー5D2に反射して戻ってくる光の位相変化を取得することで電界強度を測定する。
そして、本実施例においても、基準電界を発生する基準電界源16から基準電界を印加することで温度変化に対応できる。
【0111】
なお、図7に示した構成は、図1に示した電界センサ100の構成をベースにした例を説明したが、図3に示した電界センサ100Aの構成をベースにしてもよい。この場合は、測定用参照信号が測定用電界制御部22(図3)を介して測定用電界源23(図3)に供給されるようにしてもよい。そして、分離補正手段1022の構成は、分離補正手段1022A(図3)と同様である。
【符号の説明】
【0112】
100,100A,100A’,100C,100D…電界センサ、1…光源、2…レンズ、3…偏光子、4…λ/4波長板、5,5D…電気光学結晶、6…偏光ビームスプリッタ、7a…レンズ、7b…レンズ、8a…受光器、8b…受光器、9…差動増幅部、10…濾過器、11…基準電源、12,12a,12b…ロックインアンプ、13…利得制御部、14…可変利得増幅器、15…電界制御部、16…基準電界源、21…測定用電源、22…測定用電界制御部、23…測定用電界源、24…太陽電池照射用光源、301…光源、302…光ファイバ、303…電気光学結晶、304…測定用電界源、305…基準電源、306…光ファイバ、307…受光器、101,101D…電気光学結晶への入力側の構成要素、102,102A…電気光学結晶の出力側の構成要素、401…ビームスプリッタ、402…λ/4波長板、3031…第1光導波路、3032…電極3032、3033…電極、3034…電極、3035…第2光導波路
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9