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特許7619563廃コンクリートからのセメントペースト回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】廃コンクリートからのセメントペースト回収方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/167 20230101AFI20250115BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20250115BHJP
   B09B 3/45 20220101ALI20250115BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C04B18/167
B01D53/62
B09B3/45
C04B7/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021024222
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126254
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 建
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】本間 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知久
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】大和田 秀二
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017227(JP,A)
【文献】特開2012-121764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
B01D 53/62
B09B 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃コンクリートに二酸化炭素含有ガスを接触させる第1の工程と、
第1の工程後の廃コンクリートを摩砕する第2の工程と、
第2の工程後の廃コンクリートを選別し、粒径0.6mm未満の微粉を回収する第3の工程
を備え
第1の工程において、相対湿度が40%以上、二酸化炭素の割合が3%以上である二酸化炭素含有ガスを、廃コンクリートの質量が、第1の工程前の廃コンクリートに対して0.5質量%以上増量するまで接触させる、
廃コンクリートからのセメントペースト回収方法。
【請求項2】
第2の工程において、機械擦り揉み方式、スクリュー摩砕方式及び偏心ローター方式から選択される1以上により摩砕する、請求項1記載の回収方法。
【請求項3】
第3の工程において、篩選別及び比重選別から選択される1以上により選別する、請求項1又は2に記載の回収方法。
【請求項4】
セメントペーストは、酸化カルシウムの含有量が18質量%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の回収方法。
【請求項5】
セメントペーストがセメント原料又は混和材である、請求項1~のいずれか1項に記載の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃コンクリートからのセメントペースト回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート建築物等の解体工事に伴って発生する廃コンクリートは、鉄筋等のコンクリート以外の異物を除去した後、粒径が40mmアンダー程度となるまで破砕され、路盤材又は埋戻し材等として活用されていた。しかし、路盤材等の需要が減少傾向にあり、利用されなかった残余の廃コンクリートは廃棄処分しなければならないことから、産業廃棄物処理の観点から問題が生じており、またコンクリートに使用する河川産骨材は、枯渇の問題から採取制限等により入手が困難となり、廃コンクリートからコンクリート用骨材を再生する技術が検討されている。
【0003】
例えば、廃コンクリートを破砕して得られた最大寸法5mm以上の廃コンクリート破砕材に対して熱風を用いた加熱処理を行った後、擦り揉み媒体で擦り揉み処理してセメントペーストを取り除くことで、骨材を再生する方法(特許文献1)、40mm角以下に粗砕された廃コンクリート同士、40mm角以下に粗砕された廃コンクリートと強靭な粗面とを強圧下で擦り合わせて骨材表面に付着したモルタル分を摩擦粉砕することで、再生骨材を製造する方法(特許文献2)、偏心ローターを用いて破砕した廃コンクリートをローターの旋回により擦り揉むとともに、撹拌により骨材から含水付着物を分離した後、篩分けして骨材を回収する方法(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-26459号公報
【文献】特開平10-231153号公報
【文献】特開2002-210380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した先行技術はいずれも、廃コンクリート破砕物を擦り揉みにより骨材表面からセメントペーストを取り除くことで、高品位の再生骨材を回収することを目的とするものであり、セメントペーストの回収について一切検討していないか、検討したとしても、セメントペーストの品位向上を前提としたものではない。
本発明者らは、上記した先行技術により回収されるセメントペーストの品位について分析したところ、廃コンクリート破砕物を擦り揉むことに起因して骨材が多く含まれ、カルシウム分が低くアルカリ等量が高いため、その再利用が制限されるという課題が存在することを見出した。
したがって、本発明の課題は、廃コンクリートから高品位のセメントペーストを回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、廃コンクリートから回収されるセメントペーストの品位を向上させるべく検討した。その結果、廃コンクリートに二酸化炭素を固定することで、廃コンクリートがわずかに収縮し、セメントペーストと骨材との界面に応力が働いて両者を剥離しやすくなるとの知見を得た。そして、二酸化炭素固定後の廃コンクリートを摩砕して骨材表面からセメントペーストを選択的に剥離し、摩砕後の廃コンクリートから所定粒径の微粉を選別することで、カルシウム分に富む高品位のセメントペーストを効率よく回収できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔6〕を提供するものである。
〔1〕廃コンクリートに二酸化炭素含有ガスを接触させて二酸化炭素を固定する第1の工程と、
第1の工程後の廃コンクリートを摩砕する第2の工程と、
第2の工程後の廃コンクリートを選別し、粒径1.2mm未満の微粉を回収する第3の工程
を備える、廃コンクリートからのセメントペースト回収方法。
〔2〕第1の工程において、廃コンクリートの質量が0.5質量%以上増加するまで二酸化炭素を固定する、前記〔1〕記載の回収方法。
〔3〕第2の工程において、機械擦り揉み方式、スクリュー摩砕方式及び偏心ローター方式から選択される1以上により摩砕する、前記〔1〕又は〔2〕記載の回収方法。
〔4〕第3の工程において、篩選別及び比重選別から選択される1以上により選別する、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の回収方法。
〔5〕セメントペーストは、酸化カルシウムの含有量が18質量%以上である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の回収方法。
〔6〕セメントペーストがセメント原料又は混和材である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の回収方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃コンクリートからセメントペーストを効率よく回収することが可能であり、また回収されたセメントペーストは、カルシウム分に富み品位が高いため、特に制限なく再利用することができる。更に、本発明によれば、セメントペーストを回収した残余の廃コンクリートを再生路盤材や再生骨材として再資源化することができる。したがって、本発明方法は、廃コンクリートの再生方法としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のセメントペースト回収方法は、第1の工程と、第2の工程と、第3の工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
【0010】
(第1の工程)
本工程は、廃コンクリートに二酸化炭素含有ガスを接触させて二酸化炭素を固定する工程である。廃コンクリートに二酸化炭素含有ガスを接触させることで、廃コンクリート中のセメントペーストに含まれる、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム化合物等のカルシウム化合物を炭酸カルシウムとすることができる。そして、カルシウム化合物の炭酸化により廃コンクリートがわずかに収縮し、セメントペーストと骨材との界面に応力が働き、次工程において骨材表面からセメントペーストを剥離しやすくなる。一方、収縮は緻密化としての作用もあるため、セメントペーストの強度が向上し、必要以上に微粒化して粉塵になることを防ぐ効果もある。更に、本発明は、廃コンクリートを高温加熱処理が不要であるから、加熱時の二酸化炭素の排出が抑制されるだけでなく、二酸化炭素のリサイクル法としても有用である。
【0011】
本工程においては、先ず廃コンクリートを準備する。
廃コンクリートとしては、土木工事や構造物の解体等によって発生する解体コンクリートや、建築物等の建設時等に発生した余剰コンクリート等が挙げられる。
廃コンクリートは、鉄筋等の異物を分離する目的で小割り、磁力選別、手選別されたコンクリート塊を用いることができる。その寸法は、通常100~400mm角であり、好ましくは300mm角程度である。
【0012】
更に、本工程においては、二酸化炭素含有ガスとの接触面積を増大させ、固定化される二酸化炭素を増量するために、各種破砕機や分級機を用いて廃コンクリートの粒度を調整してもよい。
破砕機としては公知のものを使用することが可能であるが、例えば、フレームに固定された固定刃と動刃によって圧縮破砕するジョークラッシャ、高速回転させた打撃板及び装置に固定された反発板への衝撃によって衝撃破砕するインパクトクラッシャ、円錐状のコンケーブと偏心するマントルによって圧縮破砕するコーンクラッシャ、回転による遠心力によってコンクリート塊同士を衝突させて破砕する遠心式粉砕機、コンケーブとマントル間に噛み込んで圧縮破砕するジャイレトリクラッシャを用いることができる。破砕処理は、2回以上行ってもよく、2回以上行う場合には、同一又は異なる破砕機を使用することが可能であり、廃コンクリートの大きさにより適宜選択することができる。
分級機としては、例えば、リップルフロー型やローヘッド型等の振動篩、トロンメル等の回転式篩、エアセパレータやサイクロン等の乾式分級機、スパイラル分級機等の湿式分級機等の任意の分級装置を適宜選択して使用することができる。
【0013】
粒度を調整した廃コンクリートは、固定化される二酸化炭素の増量、セメントペーストの品位向上の観点から、粒径が、好ましくは40mm未満、より好ましくは30mm未満、更に好ましくは20mm未満、より更に好ましくは10mm未満である。なお、廃コンクリートの粒径の下限値は特に限定されないが、生産効率の観点から、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。ここでいう「粒径」とは、破砕物の最大寸法(例えば、断面が楕円の形状である場合、長軸の寸法)をいう。
【0014】
次に、廃コンクリートに二酸化炭素含有ガスを接触させて二酸化炭素を固定する。
二酸化炭素含有ガスとしては二酸化炭素が含まれていれば特に限定されないが、例えば、ボンベに充填された二酸化炭素、工場の排ガスを挙げることができる。
工場の排ガスとしては、例えば、セメント工場の排出ガスや、火力発電所の排出ガスが挙げられる。なお、工場の排出ガスは、分離膜や吸着剤等で処理して二酸化炭素濃度を高めてもよい。
【0015】
二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素以外の他のガスを含んでいてもよく、例えば、一酸化炭素、炭化水素類、窒素酸化物、硫黄酸化物等を挙げることができる。これらのガスは、工場の排出ガスに通常含まれているものである。
更に、二酸化炭素含有ガスに不活性ガスが含まれていてもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスを挙げることができる。
これら他のガスの総量は、体積分率の値として、二酸化炭素含有ガス中に、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、更に好ましくは97%以下である。
【0016】
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の割合は、二酸化炭素の固定化量増大の観点から、体積分率の値として、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上が更に好ましく、20%以上がより更に好ましい。なお、かかる二酸化炭素の割合の上限値は特に限定されず、100%であってもよい。
二酸化炭素含有ガスの相対湿度は、二酸化炭素の固定化促進の観点から、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。なお、水分の割合は、「JIS Z 8808:2013 排ガス中のダスト濃度の測定方法」の「7 排ガス中の水分量の測定」に記載された方法により測定することができる。
【0017】
二酸化炭素の固定方法としては、例えば、廃コンクリートを収容した装置内に二酸化炭素ガスを吹き込む方法、廃コンクリートを浸漬した水中に二酸化炭素ガスを吹き込む方法を挙げることがでるが、炭酸化を促進させることができればこれらに限定されない。なお、二酸化炭素ガスを吹き込む装置としては、例えば、温度や湿度などの雰囲気を制御した炭酸化処理養生槽、含水処理した廃コンクリートを炭酸化処理槽、水蒸気と二酸化炭素ガスを導入できる管状電気炉を使用することができる。
【0018】
二酸化炭素の固定は、セメントペーストと骨材の剥離促進の観点から、廃コンクリートの質量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上増量するまで行う。なお、かかる増加量の上限値は特に限定されないが、生産効率の観点から、廃コンクリートの質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0019】
二酸化炭素含有ガスとの接触温度及び接触時間は、二酸化炭素の固定量が上記範囲になれば適宜選択可能であるが、例えば、次のとおりである。
二酸化炭素含有ガスとの接触温度は、二酸化炭素の固定化促進の観点から、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましく、そして200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
また、二酸化炭素含有ガスとの接触時間は、二酸化炭素の固定化促進の観点から、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、3時間以上更に好ましく、また処理効率の観点から、60日以下が好ましく、40日以下がより好ましく、30日以下が更に好ましい。
【0020】
(第2の工程)
本工程は、第1の工程後の廃コンクリートを摩砕する工程である。これにより、骨材表面からセメントペーストを選択的に剥離することができる。ここで、本明細書において「摩砕」とは、摩擦により粒子表面を削り取ることを意味する。
摩砕方式としては摩擦で粒子表面を削り取ることができれば特に限定されないが、例えば、機械擦り揉み方式、スクリュー摩砕方式及び偏心ローター方式から選択される1以上を挙げることができる。
機械擦り揉み方式としては、例えば、自生粉砕ミルが挙げられる。スクリュー摩砕方式としては、回転するスクリューの摩擦によって削り取るものであれば特に限定されることなく、公知の装置を使用することができる。また、偏心ローター方式としては、ローターの旋回による摩擦で削り取るものあれば特に限定されず、公知の装置を適宜選択すればよい。
【0021】
本工程においては、第2の工程前の廃コンクリートの粒子径D50(A)と、第2の工程後の廃コンクリートの粒子径D50(B)との比[(B)/(A)](以下、「摩砕比」という)が、好ましくは1未満、より好ましくは0.9未満、更に好ましくは0.8未満となるまで行う。なお、かかる比[(B)/(A)]の下限値は、アルカリ増量抑制の観点から、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.65以上が更に好ましい。また、本明細書において「粒子径D50」とは、JIS R 1629に準拠して試料の粒度分布を体積基準で作成したときに積算分布曲線の50%に相当する粒子径(D50)を意味する。粒子径分布測定装置として、例えば、マイクロトラック(日機装株式会社製)を使用することができる。
【0022】
(第3の工程)
本工程は、第2の工程後の廃コンクリートを選別し、粒径1.2mm未満の微粉を回収する工程である。
第2の工程後の廃コンクリートを選別方法としては所望の粒径の微粉を回収できれば特に限定されないが、篩選別、比重選別を挙げることができる。なお、篩選別及び比重選別は単独で行っても、組み合わせて行ってもよい。
篩選別には公知の分級機を使用することが可能であり、例えば、乾式又は湿式の振動式篩、乾式又は湿式のサイクロン式分級機を挙げることができる。
比重選別には公知の比重選別機を使用することが可能であり、例えば、乾式又は湿式の比重選別機を挙げることができる。より具体的には、乾式比重選別機として、例えば、傾斜させたデッキを左右に往復振動させ、そのデッキの底部から送風することにより比重の異なる粒子を選別するエアテーブル選別機を挙げることができる。また、湿式比重選別機としては、例えば、水中の固定網上にある粒子層に上下に脈動する水流を与え、粒子を比重別に網上で成層させ分離するジグ式選別機、傾斜させたデッキの水平運動と水流によって、比重の異なる粒子を選別するテーブル選別機(ジェームステーブル、ウイルフレーテーブル)、粒子に遠心力を与えて比重の異なる粒子を選別する遠心力選別を挙げることができる。なお、比重選別機には、比重選別の際に発生する粉塵を集塵するためのバグフィルタを備えてもよい。
【0023】
本工程で回収される微粉の粒径は1.2mm未満であるが、カルシウム分に富むセメントペースト回収の観点から、1.0mm未満が好ましく、0.8mm未満がより好ましく、0.6mm未満が更に好ましい。
【0024】
本発明方法により回収されたセメントペーストは、カルシウム分が豊富に含まれているが、例えば、酸化カルシウムの含有量を、好ましくは18質量%以上、より好ましくは19質量%以上、更に好ましくは21質量%以上とすることができる。
【0025】
また、本発明方法により回収されたセメントペーストは、アルカリ等量が、通常3%以下であり、好ましくは2.9%以下、更に好ましくは2.8%以下である。なお、アルカリ等量の下限値は特に限定されず、0%であっても構わないが、通常0.1%以上、好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.5%以上である。ここで、本明細書において「アルカリ等量」とは、試料の化学分析の結果から、下記式(1)によって算出されるものをいう。
【0026】
アルカリ等量(Na2Oeq)=Na2O+0.658K2O (1)
【0027】
〔式中、Na2Oは試料中の酸化ナトリウムの含有率(%)であり、K2Oは試料中の酸化カリウムの含有率 (%)である。〕
【0028】
このように、本発明により回収されたセメントペーストは、カルシウム分を豊富に含むものであるから、セメント原料として再利用することができる。また、本発明により回収されたセメントペーストは、炭酸化廃コンクリートから得られたものであり、ポゾラン反応を有するから、混和材としても再利用することもできる。
更に、第3の工程の残渣は、廃コンクリートのセメントペーストが剥離されたものであるから、再生路盤材や再生骨材として再利用することができる。
【実施例
【0029】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例で使用した装置は、以下のとおりである。
1)ジョークラッシャ:BB300(レッチェ製)
2)アサヒ中性化試験装置:ACT-800N(朝日科学製)
3)摩砕機 :日陶科学製 卓上型ポットミル回転台 ANZ-51D
4)粉砕容器 :ステンレス缶(φ80×135mm、600mL かき上げアルミ板20mm×4枚を装着)
5)JIS篩 :0.3mm、0.6mm、1.18mm、4.75mm
6)蛍光X線分析装置:ZSX PrimusII(リガク社製)
【0031】
1.アルカリ等量(Na2Oeq)の分析
アルカリ等量は、試料の化学分析の結果から、下記式(1)により算出した。
【0032】
アルカリ等量(Na2Oeq)=Na2O+0.658K2O (1)
【0033】
〔式中、Na2Oは試料中の酸化ナトリウムの含有率(%)であり、K2Oは試料中の酸化カリウムの含有率 (%)である。〕
【0034】
2.粒子径D50の測定
粒子径分布測定装置としてマイクロトラック(日機装株式会社製)を用い、JIS R 1629に準拠して体積基準の粒度分布を作成し、積算分布曲線の50%に相当する粒子径D50を求めた。
【0035】
実施例1
(第1の工程)
廃コンクリートをジョークラッシャで破砕し、篩目4.75mmで篩い分けした篩下を中性化試験装置により20℃、CO2濃度5%、湿度55%で28日間炭酸化処理を施した。炭酸化処理前後の廃コンクリートの質量を表1に示す。表1から、炭酸化処理により廃コンクリートの質量が2質量%増加したことがわかる。
【0036】
【表1】
(第2の工程)
第1の工程後の廃コンクリートを、ステンレス製の粉砕容器に入れ、卓上型ポットミル回転台によりローラー回転数150rpmで24時間自生粉砕を行った。なお、第2の工程前の粒子径D50は1.29mmであり、第2の工程後の粒子径D50は0.95mmであったことから、摩砕後の廃コンクリートの粒子径D50(A)と、摩砕前の廃コンクリートの粒子径D50(B)との比[(B)/(A)]は0.74であることを確認した。
(第3の工程)
篩目1.2mm、0.6mm及び0.3mmのJIS篩により篩い分けを行い、粒度別に蛍光X線分析(XRF)により化学組成を分析した。その結果を表2に示す。なお、表1中、「-0.3mm」は、篩目0.3mmの篩下を意味し、「-0.6mm」及び「-1.2mm」においても同様に解釈するものとする。また、「1.2mm-」は、篩目1.2mmの篩上を意味する。
【0037】
比較例1
廃コンクリートをジョークラッシャで破砕し、篩目4.75mmで篩い分けした篩下を、篩目1.2mm、0.6mm及び0.3mmのJIS篩により篩い分けを行い、粒度別に蛍光X線分析(XRF)により化学組成を分析した。その結果を表2に示す。
【0038】
比較例2
第1の工程を行わずに、第2、第3の工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒度別に蛍光X線分析(XRF)により化学組成を分析した。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示されるように、実施例1は、比較例2に比べてカルシウム分が高く、アルカリ等量が低いことから、第1の工程の炭酸化処理により骨材表面からセメントペーストが選択的に剥離され、高品位のセメントペーストが回収されたことが分かる。
また、第3の工程により回収されたセメントペーストは、粒径が小さくなるにつれ、カルシウム分が高く、アルカリ等量が低くなることから、粒度が小さいほどセメントペーストの品位が高められることがわかる。