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特許7619570固相付着用組成物、当該組成物を利用する固相担体、並びに当該固相担体の生産方法及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】固相付着用組成物、当該組成物を利用する固相担体、並びに当該固相担体の生産方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20250115BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250115BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20250115BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20250115BHJP
   G01N 33/545 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
G01N33/53 M
G01N33/531 B
G01N33/543 525W
G01N33/543 525U
G01N33/543 525G
G01N33/545 Z
C12N15/10 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021522882
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021209
(87)【国際公開番号】W WO2020241785
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019100728
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514164993
【氏名又は名称】株式会社TBA
(74)【代理人】
【識別番号】100103160
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 光春
(72)【発明者】
【氏名】冨吉 郷
(72)【発明者】
【氏名】奥山 亮
(72)【発明者】
【氏名】宝田 裕
(72)【発明者】
【氏名】小寺 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 久美
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-185119(JP,A)
【文献】特開2015-100332(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032794(WO,A1)
【文献】特開2008-125383(JP,A)
【文献】特開2018-133998(JP,A)
【文献】特開2017-131166(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129609(WO,A1)
【文献】特開2016-010338(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076356(WO,A1)
【文献】特開2014-018127(JP,A)
【文献】特開2005-230012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6806
C12N 15/10
G01N 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(1)及び(2):
(1)コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤
(2)水性溶媒;
を含有する、検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子を固相に付着させるための組成物であって、組成物における(1)コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤の含有量は、1.5-20質量%である、組成物
【請求項2】
組成物における(1)コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤の含有量は、2-14質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(1)コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤は、CHAPS(3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate)、又は、CHAPSO(3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]-2-hydroxypropanesulfonate)である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、(3)尿素又はその塩を含有し、組成物における(1)コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤の含有量は、2-20質量%である、請求項1-3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物における(1)コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤の含有量は、4-15質量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
さらに(4)糖類及び/又は(5)アミノ酸を含有する、請求項1-のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
(4)糖類はトレハロース、D-グルコース、又は、スクロースである、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
(5)アミノ酸はL-アルギニン、L-ヒスチジン、L-アスパラギン酸、又は、グリシンである、請求項又はに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1-のいずれか1項に記載の組成物と、検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子を混合し、当該混合物を固相に付着させ、乾燥する、核酸検出用の固相の生産方法。
【請求項10】
不溶性担体粒子はラテックス粒子である、請求項に記載の生産方法。
【請求項11】
サンプル接触部と検出部を有する固相担体であって、上記サンプル接触部においては、コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤と、検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子が付着しており、上記検出部には、固相担体において移動する検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物を捕捉して捕捉シグナルを発生させる結合機能付加されている、固相担体。
【請求項12】
固相担体のサンプル接触部を、前記固相担体の端部又はその近くに有している、請求項11に記載の固相担体。
【請求項13】
サンプル接触部においては、コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤と、検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子が付着しており、検出部には、固相担体において移動する検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物を捕捉して捕捉シグナルを発生させる結合機能付加されている固相担体の使用方法であって、上記サンプル接触部に、検出対象核酸を含有する可能性があるサンプルを接触させ、上記サンプル接触部から固相担体において移動する、検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物、と上記検出部との結合により発生する捕捉シグナルを検出する、固相担体の使用方法。
【請求項14】
検出対象核酸は、不溶性担体粒子と結合するための結合機能を有している、請求項13に記載の固相担体の使用方法。
【請求項15】
検出対象核酸は、固相担体の検出部と結合するための結合機能を有している請求項13又は14に記載の固相担体の使用方法。
【請求項16】
検出対象核酸は、核酸増幅法により生成した核酸増幅産物である、請求項13-15のいずれか1項に記載の固相担体の使用方法。
【請求項17】
核酸増幅法は、PCR法又はPCR法を基礎とする方法である、請求項16に記載の固相担体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は所定の物質を検出するための固相担体に関する発明である。本発明は特に、核酸の検出を行う際に、直接サンプルを接触させて検出を行うことが可能なサンプル接触部を有する固相担体、その使用方法、生産方法、及び上記固相担体のサンプル接触部を設けるための固相付着用組成物、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の核酸を標的として検出し、その核酸の持つ属性と関連付けが、疾病の検出、動植物の品種の鑑定、食品の品質や原産地の特定、親子鑑定、犯罪の証明等、様々な用途において行われている。
【0003】
この核酸の検出技術は、PCR法等の核酸増幅法により、本来微量である核酸を容易に検出可能量まで増幅することが可能になったことにより、急速に発展しており、現在まで様々なものが提供されている。
【0004】
その中でも、核酸検出の簡便化と高精度化が両立させるために、固相上でこの核酸検出を行う技術が提供されている(特許文献1、2、3)。
【0005】
特許文献1の技術は、核酸増幅法によって得られた2本鎖DNA増幅産物を検出する核酸検出方法であり、当該増幅産物は特定物質に対する結合部位を有しており、当該特定物質に対する結合を行うことで、当該DNA増幅産物を濃縮することによって、所望の核酸検出を行う技術であり、これを展開媒体(固相)上で行う態様が主要な形態として開示されている。
【0006】
特許文献2の技術は、核酸増幅産物を生成する際に用いるプライマーの一部にポリメラーゼ反応の進行を抑制又は停止可能な部位を導入することで、生成する真正核酸増幅産物生成の歩留まりを向上させ、標的核酸の固相検出の感度向上を目的とする技術である。
【0007】
特許文献3の技術は、さらに真正核酸増幅断片生成の歩留まりを向上させるために、真正核酸増幅産物の核酸伸長領域と特異的にハイブリダイズする標識領域を有する標的核酸識別プローブを、核酸増幅反応において用いた方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2009/034842号国際公開公報
【文献】WO2013/038534号国際公開公報
【文献】WO2016/129609号国際公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1-3の技術は、順に固相における核酸検出技術の進歩を示すものであり、それぞれ標的核酸(検出対象核酸)増幅の歩留まりを向上させている。一般的に、固相における標的核酸(検出対象核酸)の検出は、特殊な設備や装置が不要であるという点で簡便性において優れているが、検出感度という点では未だに問題がある。
【0010】
この点をカバーするために、増幅反応液と、展開液と、ラテックス等の不溶性担体粒子を混合した「展開サンプル液」を一旦固相外のチューブにおいて調製し、これに固相(ストリップ)を浸漬することで、検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物を固相上の検出部まで拡散移動させて、検出シグナルを発生させている(例えば、特許文献3の実施例)。
【0011】
しかしながら、この態様は、実用上煩雑である。
そこで、増幅反応液を不溶性担体粒子が固定化された固相部分に直接接触し、これを当該固相上で展開させて検出を行う簡略化手段の確立を目指した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題の解決に向けてさらに検討を行った。その結果、ラテックス等の不溶性担体粒子を含有させて固相に付着させるための組成物の組成を所定の内容とすることにより、増幅反応液に直接固相を浸漬して上記結合物の拡散移動を行っても、検出感度の低下を抑制して、十分に所望の検出シグナルを得ることが可能であることを見出した。
【0013】
本発明は、(A)ラテックス等の不溶性担体粒子を含有させて固相に付着させるための組成物(本発明の組成物)、(B)本発明の組成物を用いた固相担体の生産方法(本発明の生産方法)、(C)水分を実質上除かれた当該固相付着用組成物を含んだサンプル接触部を有する固相担体(本発明の固相担体)、及び、(D)当該固相担体の使用方法(本発明の使用方法)、を提供する。
【0014】
(A)本発明の組成物
本発明の組成物は、下記の成分(1)及び(2)を含有する、検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子を固相に付着させるための組成物である。
(1)水溶性の両性界面活性剤、又は、水溶性の非イオン性界面活性剤、
(2)水性溶媒
【0015】
本発明の組成物においては、上記(1)の界面活性剤を、水溶性の両性界面活性剤、特にコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤とすることで、本発明の固相担体の常温における保存が可能となる。
【0016】
さらに本発明の組成物は、加えて(3)尿素又はその塩を含有させることが可能であり、当該(3)と共にあるいは別個に、(4)糖類及び/又は(5)アミノ酸を含有させることが可能である。
【0017】
本発明の組成物の適用対象となる「固相」とは、溶媒を移動相として展開してクロマトグラフィーを行うための固相担体である。本発明の組成物は、当該固相に「検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子」を付着させるための組成物である。本発明の組成物を用いることにより、溶媒展開後のクロマトグラフィーの感度の低下を抑制することができる。
【0018】
(B)本発明の生産方法
本発明の生産方法は、本発明の組成物と、検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子を混合し、当該混合物を固相に付着させ、乾燥する、核酸検出用の固相の生産方法である。
【0019】
(C)本発明の固相担体
本発明の固相担体は、サンプル接触部と検出部を有する固相担体であって、上記サンプル接触部においては、「本発明の組成物の成分(1)と検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子」が付着しており、上記検出部には、「固相担体において移動する検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物と接触してシグナルを発生させる物質」が付着している固相担体、である。
【0020】
本発明の固相担体は、溶媒を移動相として展開してクロマトグラフィーを行うための固相担体である。サンプル接触部は、サンプルの接触のための固相担体における機構である。
【0021】
(D)本発明の使用方法
本発明の使用方法は、サンプル接触部においては、「本発明の組成物の成分(1)と検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子」が付着しており、検出部には、固相担体において移動する検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物と接触してシグナルを発生させる物質が付着している固相担体の使用方法であって、上記サンプル接触部に、検出対象核酸を含有する可能性があるサンプルを接触させ、上記サンプル接触部から固相担体において移動する、検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物、と上記検出部との接触により発生する検出対象核酸のシグナルを検出する、固相担体の使用方法である。
【0022】
本発明の使用方法を行うことにより、上記サンプルの固相担体における移動による、上記シグナルにおける検出感度の、従来法との比較における低下を抑制することができる。この検出感度の低下の抑制は、上記のように固相担体のサンプル接触部の調製の際に本発明の組成物を用いたことによるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、核酸の検出を行う際に、直接サンプルを接触させて検出を行うことが可能なサンプル接触部を有する固相担体、その使用方法、生産方法、及び上記固相担体のサンプル接触部を設けるための固相付着用組成物、が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(A)本発明の組成物
上述したように、本発明の組成物は、下記成分(1)及び(2)、加えて(3)尿素又はその塩を含有させることが可能であり、当該(3)と共にあるいは別個に、(4)糖類及び/又は(5)アミノ酸を含有させることが可能な、検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子を固相に付着させるための組成物、である。
【0025】
(I) 検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子
検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子は、本発明の固相担体に接触するサンプル中の検出対象核酸が結合可能な機能を有している不溶性担体粒子である(以下、「結合用担体粒子」ともいう)。
【0026】
結合用担体粒子の基となる不溶性担体粒子は、例えば、ラテックス粒子、シリカ粒子、金属コロイド粒子等が挙げられる。金属コロイドとしては、金コロイド、銀コロイド、銅コロイド等が例示されるが、金コロイドが好適である。金属コロイドの粒子径は、特に限定されず、概ね1-50nmの範囲である。金属コロイド粒子は、本発明の固相担体の検出部において凝集することにより、その着色が集積した発色シグナルとして目視で容易に捉えることができる。
【0027】
ラテックスは、当該不溶性担体粒子の好適な態様である。ラテックスは、ポリマーエマルジョンとも呼ばれ、ポリマーが水等の水性溶媒に分散したものであり、当該水性溶媒が連続相となり、真球又は球に近い形のポリマー粒子が不連続相としてなるものである。ラテックス粒子とは、このラテックスの不連続相をなすポリマー粒子のことである。本明細書では、ラテックス粒子を含む総体的な表現として「ラテックス」を用いる。
【0028】
ラテックスは、例えば、ポリスチレンラテックス、極低カルボン酸変性ラテックス、親水基局在化ラテックス等の物理吸着用ラテックス;カルボン酸変性ラテックス、アミノ変性ラテックス、ヒドロキシ変性ラテックス、グリシジル変性ラテックス、アルデヒド変性ラテックス、アミド変性ラテックス等の化学結合用ラテックス;着色ラテックス、高比重ポリスチレンラテックス、磁性ラテックス等が挙げられる。これらのラテックスのそれぞれの特性に応じて本発明において用いることが可能である。
【0029】
本発明において好適なラテックスの一つとして、青色、赤色、緑色、オレンジ色等の着色が施されている着色ラテックスが挙げられる。着色ラテックスが、本発明の固相担体の検出部において凝集することにより、その着色が集積した発色シグナルとして目視で容易に捉えることができる。
【0030】
ラテックス粒子の粒径は、特に限定されず、概ね0.01-1μmの平均粒子径から広く選択することが可能である。
【0031】
シリカ粒子は、ラテックスと同様に着色が施されていることが好適である。着色シリカ粒子が本発明の固相担体の検出部において凝集することにより、その着色が集積した発色シグナルとして目視で容易に捉えることができる。
【0032】
シリカ粒子の粒径は、特に限定されず、概ね1nm-2μmの平均粒子径から広く選択することができる。
【0033】
上記不溶性担体粒子は、検出対象核酸が結合可能な機能を有している。当該機能は、検出対象核酸が有する結合機能との組合せにおいて特定される。すなわち、上記不溶性担体粒子が有する結合機能と後述する検出対象核酸が有する結合機能(以下、「対担体粒子結合機能」ともいう)は組として働き、上記不溶性担体粒子の結合機能は、この組の第1の部分である。
【0034】
この組として働く結合機能としては、例えば、水素結合、イオン結合、静電的結合、疎水結合、物理的相互結合等が挙げられ、具体的には、有機化合物-有機化合物相互作用、タンパク質-タンパク質相互作用、タンパク質-ヌクレオチド相互作用、ヌクレオチド-ヌクレオチド相互作用、有機化合物-タンパク質相互作用等が挙げられる。そして、さらに具体的な組要素として、アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチンシステムによる結合機能、タグ塩基配列等を用いた核酸同士による結合機能、FITCと抗FITCによる結合機能、抗ジゴキシゲニン(DIG)-ジゴキシゲニン(DIG)、タグアミノ酸配列と特異抗体等の抗原抗体反応による結合機能等が挙げられる。
【0035】
また、上記不溶性担体粒子は、上記の検出対象核酸に対する結合機能とは別個に、後述する検出部における結合機能と組になる結合機能(以下、「対検出部結合機能」ともいう)を有していてもよい。不溶性担体粒子の対検出部結合機能としては、上記の検出対象核酸に対する結合機能と同様の結合機能が挙げられる。
【0036】
結合担体粒子は、上記の結合機能のいずれか一方又は双方を、上記の第1の部分として有している。
【0037】
不溶性担体粒子における、上記の第1の部分の付加は、不溶性担体粒子の種類と当該部分に応じた常法を用いて行うことが可能であり、これにより結合用担体粒子を調製することができる。
【0038】
結合用担体粒子は、本発明の組成物と用時に混合して用いられることが好適である。本発明の組成物に対する結合用担体粒子の添加量は、担体粒子の種類、その他測定系の内容により自由に選択することが可能であり、特に限定されないが、組成物における含有量として、通常0.01-2質量%であり、好ましくは0.02-1質量%である。例えば、実施例において用いた着色ラテックス粒子の場合の当該含有量は、0.01-1質量%が好ましく、さらに好ましくは0.02-0.5質量%、特に好ましくは0.04-0.2質量%である。
【0039】
(II) 本発明の組成物の成分
(1) 水溶性の両性界面活性剤、又は、水溶性の非イオン性界面活性剤(成分(1))
上記の水溶性の両性界面活性剤は、特に限定されず、コール酸を母核とする両性界面活性剤、カルボン酸型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのうち、コール酸を母核とする水溶性の界面活性剤については後述する。
【0040】
上記の水溶性の非イオン性界面活性剤は、特に限定されず、ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。この水溶性非イオン性界面活性剤には、実施例で使用されているポリオキシエチレンソルビトールエステル(Tween20:登録商標)が含まれる。
【0041】
特に、コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤を成分(1)として用いることで、本発明の固相担体の常温管理が可能になる。常温とは、25℃程度が想定されるが、実用的には非冷蔵状態における保存である。
【0042】
コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤は、特に限定されないが、好適には、CHAPS(3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate)、CHAPSO(3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]-2-hydroxypropanesulfonate)が例示される。これらのコール酸を母核とする水溶性の界面活性剤は、単独で配合することも可能であり、組み合わせて配合することも可能である。
【0043】
コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤は、常法により製造することも可能であるが、市販品を用いることも可能である。
【0044】
本発明の組成物における上記界面活性剤の含有量(一種又は二種以上の界面活性剤としての総量)は、下記成分(3)ないし()を配合しない場合は、組成物に対して1.5-20質量%が好ましく、特に好ましくは2-14質量%であり、極めて好ましくは4-12質量%であり、最も好ましくは8-10質量%である。
【0045】
(2) 水性溶媒(成分(2))
水性溶媒は、水を主体とする溶媒であり、水、あるいは各種の緩衝液等が挙げられる。当該緩衝液としては、生化学分野で用いられるものであり、結合用担体粒子の保存に適しており、サンプルと接触した際の結合用担体粒子の結合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。具体的には、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッド緩衝液等が挙げられる。
【0046】
本発明の組成物における水性溶媒の含有量は、その他の含有成分の残部である。
【0047】
(3) 尿素又はその塩(成分(3))
尿素塩の種類は特に限定されず、塩酸塩等が例示される。
【0048】
本発明の組成物における尿素又は尿素塩の含有量は、組成物に対して5-35質量%が好ましく、特に好ましくは8-25質量%であり、極めて好ましくは12-22質量%、最も好ましくは12-21%である。そして、この成分(3)を配合する場合の、界面活性剤(成分(1))の含有量(一種又は二種以上の界面活性剤としての総量)は、2-20質量%が好ましく、特に好ましくは4-15質量%であり、極めて好ましくは9-12質量%であり、最も好ましくは10-12質量%である。尿素又は尿素塩は、特に、上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤との組合せで用いることにより、少なくとも冷蔵保存下における固相上の発色シグナルの呈色性を向上させることが可能であり、後述の成分(4)及び/又は成分(5)との組合せにより、常温保存下における固相上の発色シグナルの呈色性を向上させることができる。
【0049】
本発明の組成物における水性溶媒の含有量は、その他の含有成分の残部である。
【0050】
(4) 糖類(成分(4))
糖類は、下記のアミノ酸と共に、本発明の組成物における好適な追加含有成分の一つである。本発明の組成物に、特に上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤と糖類を組み合わせて配合することにより、少なくとも冷蔵保存下における固相上の発色シグナルの呈色性を向上させることができる。また、本発明の組成物に、上記の尿素又は尿素塩と糖類を、上記コール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤と組み合わせて配合することにより、冷蔵保存下及び常温保存下における固相上の発色シグナルの呈色性を向上させることができる。本発明の組成物に、上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤と組み合わせて糖類を配合する場合は、さらに下記のアミノ酸と組み合わせて配合することも好適である。なお、上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤以外の水溶性非イオン性界面活性剤又は水溶性両性界面活性剤を配合する場合にも、糖分を組合せ配合することは可能であるが、それによる固相上の発色シグナルの呈色性における利点は今のところ認められない。
【0051】
本発明の組成物に配合可能な糖類は特に限定されないが、二糖類又は単糖類が好適である。
【0052】
二糖類としては、マルトース、セロビオース、ラクツロース、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、トレハロース、スクロースが好適である。
【0053】
単糖類としては、D-グルコース、D-マンノース、D-ガラクトース、D-フルクトース等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でもD-グルコースが好適である。
【0054】
本発明の組成物における糖類の含有量は、組成物に対して1-15質量%が好ましく、特に好ましくは2.5-12質量%であり、極めて好ましくは5-11質量%であり、最も好ましくは5-10質量%である。
【0055】
(5) アミノ酸(成分(5))
アミノ酸は、上記の糖類と共に、本発明の組成物における好適な追加含有成分の一つである。本発明の組成物に、特に上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤とアミノ酸を組み合わせて配合することにより、少なくとも冷蔵保存下における固相上の発色シグナルの呈色性を向上させることができる。本発明の組成物に、上記の尿素又は尿素塩と共に、アミノ酸及び糖類を、上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤と組み合わせて配合することにより、冷蔵保存下及び常温保存下における固相上の発色シグナルの呈色性を向上させることができる。なお、上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤以外の水溶性非イオン性界面活性剤又は水溶性両性界面活性剤を配合する場合にも、アミノ酸を組合せ配合することは可能であるが、それによる固相上の発色シグナルの呈色性における利点は今のところ認められない。
【0056】
本発明の組成物に配合可能なアミノ酸は特に限定されず、例えば、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-メチオニン、L-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、グリシン、L-セリン、L-トレオニン、L-システイン、L-チロシン、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-リシン、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸等が挙げられる。典型例として、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-アスパラギン酸、グリシンが挙げられる。
【0057】
本発明の組成物におけるアミノ酸の含有量は、組成物に対して0.1-4質量%が好ましく、特に好ましくは0.2-2質量%であり、最も好ましくは0.4-2質量%である。
【0058】
上記糖類(成分(4))及び/又はアミノ酸(成分(5))を配合する場合の、本発明の組成物における成分(1)の界面活性剤(好適には、上記のコール酸を母核とする水溶性の両性界面活性剤)の含有量は、尿素又は尿素塩を組成物中に配合しない場合は、上記の「界面活性剤の単独配合の場合」の含有量と同様であり、尿素又は尿素塩を組合せ配合する場合は、上記の「尿素又は尿素塩を組合せ配合する場合」の含有量と同様である。成分(4)及び/又は成分(5)と、尿素又は尿素塩との組合せ配合は、本発明の固相担体の冷蔵保存及び常温保存における発色シグナルの呈色性の向上という観点から、特に好適な態様である。
【0059】
(6) その他の成分
また、BSA、カゼイン、血清、スキムミルク等のブロッキング剤、アラビアゴム等の安定化剤、アジ化ナトリウム等の防腐剤、キレート剤等の添加剤も、本発明の効果を実質的に損なわない質的、量的な限度で、本発明の組成物に配合することができる。
【0060】
(III) その他
本発明の組成物のpHは4-9程度が好ましく、特に好ましくは6-9程度である。
【0061】
(B) 本発明の固相担体と生産方法
上述のように、本発明の固相担体は、クロマトグラフィーを行うための担体であり、少なくともサンプル接触部と検出部を有している。本発明の固相担体は、それ自体をクロマトグラフィーのために用いてもよいし、他の支持体に固定された状態で用いてもよい。
【0062】
本発明の固相担体は、検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合反応を阻害せず、かつ、この結合反応により生じる検出対象核酸と不溶性担体粒子の結合物(以下、「核酸粒子結合物」ともいう)自体が拡散可能な素材を、少なくともサンプル接触部と検出部を含んで連続的に有している。これは、サンプル接触部で生じる核酸粒子結合物が、検出部まで溶媒拡散による移動が可能な形態である。当該素材としては、不織布、濾紙、グラスファイバー、ニトロセルロースフィルター、ポリエーテルスルホンフィルター、ナイロンフィルター、ポリフッ化ビニリデンフィルター、多孔質材料(シリカ等)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、単一であっても複合化されていてもよい。また、当該素材部分又は固相担体全体の形状は、通常の固相クロマトグラフィーにおいて採用されている形状、例えば、矩形のシート状(片状)、長尺状、細い棒状等が挙げられるが、好適には長尺状である。
【0063】
上述のように、サンプル接触部は、固相担体の予定箇所に、好適には上記の検出対象核酸が結合可能な不溶性担体粒子を分散させた本発明の組成物を塗布して、これを乾燥させて水分を除くことにより設けることができる。乾燥は、自然乾燥であっても、熱風乾燥であっても、ヒーター乾燥であっても、真空乾燥であってもよい。固相担体におけるサンプル接触部の位置は特に限定されない。サンプル接触部の位置の一例として、固相担体の端部又はその近くが挙げられる。この態様は、検出対象核酸を含む可能性のあるサンプルに本発明の固相担体を接触させる場合に、サンプル接触部を当該サンプルに向けて容易に両者を接触させることが可能であり、好適である。サンプル接触部は通常は1箇所であるが、2箇所以上を固相担体上に設けることも可能である。
【0064】
検出部は、サンプル接触部における核酸粒子結合物の生成後、固相担体上を拡散移動してきた当該核酸粒子結合物を捕捉して、捕捉シグナルを発生させる結合機能を付加することにより設けることができる。当該結合機能と、核酸粒子結合物の核酸又は固相担体粒子が有する結合機能が組として働き、両者が接触して結合することで所望の捕捉シグナルが発生する。
【0065】
この組として働く結合機能は、例えば、水素結合、イオン結合、静電的結合、疎水結合、物理的相互結合等が挙げられ、具体的には、有機化合物-有機化合物相互作用、タンパク質-タンパク質相互作用、タンパク質-ヌクレオチド相互作用、ヌクレオチド-ヌクレオチド相互作用、有機化合物-タンパク質相互作用等が挙げられる。そして、さらに具体的な組要素として、アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチンシステムによる結合機能、タグ塩基配列等を用いた核酸同士による結合機能、FITCと抗FITCによる結合機能、抗ジゴキシゲニン(DIG)-ジゴキシゲニン(DIG)、タグアミノ酸配列と特異抗体等の抗原抗体反応による結合機能等が挙げられる。
【0066】
上記検出部における結合機能の好適な態様の一つとして、核酸粒子結合物の「核酸」に付加されたタグ核酸とハイブリダイズ可能な核酸の使用が挙げられる。ハイブリダイズ可能とは、当該タグ核酸配列と一部又は全部が相補的で、核酸粒子結合物をタグ核酸と検出部の核酸が二本鎖を形成(ハイブリダイズ)することにより、検出部に核酸粒子結合物を捕捉することが可能であることを意味している。このハイブリダイズ可能核酸等の捕捉シグナル発生機構が付加された検出部は、1箇所であることも可能であるが、2箇所以上を設けて、1回の操作で多種の核酸検出を行う態様とすることも可能である。例えば、サンプル接触部から、移動相の下流方向に1箇所に、又は、所定の間隔で2箇所以上に検出部を設ける態様が例示される。さらに数多くの検出部が所定の間隔で設けられたアレイの形態とすることも可能である。アレイの形態を用いることにより、検出対象核酸の網羅的な検出を行うことができる。また、担体上に複数個の区画されたアレイ領域を備えていてもよい。これらの複数個の区画されたアレイは、同一の内容であってもよく、異なる内容であってもよい。
【0067】
捕捉シグナルの発生機構を検出部として付加する方法は、移動相の固相上の連続性を維持した貼付や、固相に対するシグナル発生機構の基となる物質、例えば、上記のハイブリダイズ可能核酸の、非共有結合性又は共有結合性の3'末端又は5'末端側の固相担体に対する結合等が挙げられる。この核酸結合は、既存の方法やスポッター等の器具を用いて行うことができる。
【0068】
核酸粒子結合物が検出部において捕捉されることで何らかのシグナルを発生することが可能であれば、そのシグナルの種類は限定されない。例えば、不溶性担体粒子として有色のものを用いる態様では、この有色不溶性担体粒子が検出対象核酸と結合した核酸粒子結合物が検出部に捕捉されて集積することによって、検出部が色濃くなり、目視又は比較的単純な機械分析により、サンプル中の検出対象核酸の存在を簡便に検出することができる。
【0069】
上記の他、本発明の固相担体は、他の機構を必要に応じて有することができる。例えば、検出部に捕捉されずに下流に移動する成分を吸着トラップするための吸着部が例示される。
【0070】
(C) 本発明の使用方法
(1) 核酸サンプルと検出対象核酸
本発明の使用方法は、本発明の固相担体のサンプル接触部に、検出対象核酸を含有する可能性があるサンプル(以下、「核酸サンプル」ともいう)を接触させる工程を含んでいる。
【0071】
検出対象核酸は、本発明の固相担体を用いてその存在及び/又は量を検出すべき核酸である。その分子量は特に限定されず、オリゴヌクレオチドからポリヌクレオチドまでが検出対象となる。核酸の種類も限定されず、天然核酸であっても人工核酸であってもよい。さらに、一本鎖又は二本鎖のDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、DNA/RNAキメラ等であってもよい。さらに具体的には、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hnRNA、合成RNA等の天然又は合成の核酸の他、ペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸、S-オリゴ核酸等の人工合成核酸を広く対象にすることができる。これらの検出対象核酸の中でも、DNAが好適であり、かつ、核酸増幅法により生成した核酸増幅産物が最も好適である。検出対象核酸には、必要に応じて標識物質を付加することも可能である。標識としては、蛍光物質、酵素、放射性物質、発色物質等が挙げられ、標識の付加方法は、標識の種類に応じた常法を用いることができる。
【0072】
核酸増幅産物は、通常は、本来検出対象核酸となるべき天然核酸の、所定部分に対して核酸増幅法を施して生成する人工核酸である。増幅対象となる天然核酸は特に限定されず、例えば、体質、遺伝病、癌などの特定疾患についての発症、疾患診断、治療予後、薬剤や治療の選択などのヒト、非ヒト動物などの生物における遺伝子上の指標となる塩基又は塩基配列を含み、植物由来の核酸や、病原菌やウイルス等の微生物由来の核酸も検出対象核酸に含まれる。検出対象核酸がRNAの場合は、RT-PCR法等を用いることができる。また、核酸増幅産物の所定部分をさらに増幅することも可能である(Nested PCR法等)。核酸増幅産物等の検出対象核酸において、不溶性担体粒子と結合するための結合機能(対担体粒子結合機能)を有していることは好適な態様であり、本発明の固相担体の検出部と結合するための結合機能(対検出部結合機能)を有していることも好適な態様である。検出対象核酸において、対担体粒子結合機能と対検出部結合機能のうち一種のみを有していても、二種を組み合わせて有していてもよい。これらの結合機能の具体例は、組となっている「他方の結合機能」と共に選択される。「他方」とは、対担体粒子結合機能の場合は、不溶性担体粒子が有する結合機能であり、対検出部結合機能の場合は、検出部が有している結合機能である。
【0073】
この組として働く結合機能については、(A)(I)における「不溶性担体粒子において検出対象核酸に対して働く結合機能」、及び、(B)における「検出部において組として働く結合機能」として、すでに記載した通りであり、検出対象核酸は、これらの組の第2の部分を有していてもよい。
【0074】
上記と同様に、当該結合機能は、例えば、水素結合、イオン結合、静電的結合、疎水結合、物理的相互結合等が挙げられ、具体的には、有機化合物-有機化合物相互作用、タンパク質-タンパク質相互作用、タンパク質-ヌクレオチド相互作用、ヌクレオチド-ヌクレオチド相互作用、有機化合物-タンパク質相互作用等が挙げられる。そして、さらに具体的な組要素として、アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチンシステムによる結合機能、タグ塩基配列等を用いた核酸同士による結合機能、FITCと抗FITC抗体による結合機能、抗ジゴキシゲニン(DIG)抗体-ジゴキシゲニン(DIG)、タグアミノ酸配列と特異抗体等の抗原抗体反応による結合機能等が挙げられる。
【0075】
核酸増幅法としては、PCR法又はPCR法を基礎とする方法(RT-PCR法、Nested PCR法等)、LAMP法、ICAN法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。将来において提供される核酸増幅法であってもよい。これらの核酸増幅法のうち、PCR法又はPCR法を基礎とする方法は、好適な態様の一つである。
【0076】
上記のように得られるサンプル原料を、そのまま、又は、必要な希釈や薬品の添加を経て、核酸サンプルが調製される。
【0077】
(2)核酸増幅産物を検出対象核酸とする場合の態様
上述のように、検出対象核酸として好適な態様は核酸増幅産物であり、核酸増幅産物自体が1種以上の結合機能を有していることがさらに好適である。この場合の態様は限定されるものではないが、代表的な態様について説明する。
【0078】
上述のように、核酸増幅法としてPCR法は好適な態様の一つである。PCR法の工程自体は常法に従って行うことができる。すなわち、検出対象核酸の全部又は一部を増幅することが可能な増幅用プライマーを用いて、耐熱性DNAポリメラーゼの存在下でPCRの温度サイクルを実行することにより、所望の核酸増幅産物を得ることができる。検出対象核酸がRNAの場合には、逆転写酵素を系に共存させたRT-PCRを行うことができる。
【0079】
上記の結合機能を核酸増幅産物に付与する方法としては、所望の結合機能を連結した核酸増幅用プライマーを遺伝子の増幅の際に用いることが挙げられる。リバースプライマーとフォワードプライマーの両者が結合機能を有していてもよいし、いずれか一方のみでもよいが、両者に結合機能を有し、一方が対担体粒子結合機能で、他方が対検出部結合機能であることが好適である。
【0080】
当該結合機能は、既に上述したものが例示されるが、好適な例として、アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチンシステムによる結合機能、FITCと抗FITC抗体による結合機能とタグ塩基配列等を用いた核酸同士による結合機能の組合せが挙げられる。この場合は、不溶性担体粒子として着色粒子を用いることが好適である。
【0081】
アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチンシステムによる結合機能は、対担体粒子結合機能として用いるのが好適である。すなわち、5'末端にビオチン又はアビジン(ストレプトアビジン)を付加した核酸増幅用プライマーの一方を用いて核酸増幅を行って得られたビオチン又はアビジン(ストレプトアビジン)が結合した核酸増幅産物を、対担体粒子結合機能を有する検出対象核酸として、これをアビジン(ストレプトアビジン)又はビオチンが担持された不溶性担体粒子に接触させることにより、アビジン(ストレプトアビジン)-ビオチンシステムにより結合した核酸粒子結合物を得ることができる。アビジン(ストレプトアビジン)又はビオチンが担持された不溶性担体粒子、特にラテックスは調製が比較的簡便である。これと共に、他方の核酸増幅用プライマーには、対検出部結合機能としてのタグ核酸を5'末端に付加することにより、上記のアビジン(ストレプトアビジン)-ビオチンシステムにより結合した核酸粒子結合物にさらにタグ核酸を表面に有する核酸粒子結合物を得ることができる。当該タグ核酸の一部又は全部とハイブリダイズが可能な塩基配列の核酸を有する固相担体の検出部に、上記タグ核酸を有する核酸粒子結合物が水性溶媒の拡散により接触すると、タグ核酸と検出部の核酸が二本鎖を形成し、当該核酸粒子結合物は、検出部に捕捉される。この場合に、不溶性担体粒子に着色がなされていれば、この着色が検出部において集積して目視可能な程度まで着色が顕在化し、これがサンプル中の検出対象核酸の存在のシグナルとなる。
【0082】
具体的なタグ配列とこれとハイブリダイズする核酸配列(プローブ)については、例えば、特許文献2、3の開示に従うことができる。
【0083】
また、特許文献2に示すように、核酸増幅産物を生成する際に用いる核酸増幅用プライマーのタグ配列と核酸増幅産物の本体との間にポリメラーゼ反応の進行を抑制又は停止可能な部位を導入することで、生成する真正核酸増幅産物生成の歩留まりを向上させることができる。さらに、特許文献3に示すように、上記の5'末端におけるタグ配列が付加された遺伝子増幅用プライマーを用いる代わりに、真正核酸増幅産物の核酸伸長領域と特異的にハイブリダイズする標識領域を有し、3'末端にタグ配列を有する検出対象核酸識別プローブを、上記の5'末端におけるタグ配列は付加されていない遺伝子増幅用プライマーとアビジン(ストレプトアビジン)又はビオチン標識が5'末端に付加された遺伝子増幅用プライマーを用いた核酸増幅反応において共存させて、このプローブのタグ配列を対検出部結合機能として用いることにより、生成する真正核酸増幅産物生成の歩留まりを向上させることができる。
【実施例
【0084】
以下、本発明の実施例を開示する。特に断らない限り、%は、配合対象に対する質量%である。
【0085】
以下の開示は、ポジティブコントロールと実施例(比較例を含む)で構成されている。
【0086】
[共通試薬]
下記試薬(a)、(b)は、ポジティブコントロール1と実施例のいずれにおいても使用した試薬である。
(a)ストレプトアビジンコート着色ラテックス(品名SA-Lx:藤倉化成株式会社製)の0.5%着色ラテックス液(以下、「着色ラテックス液」ともいう)
(b)下記の検出部のキャプチャーDNAプローブと相補的な塩基配列5’-AACGTCCAATAGTAACCAGAGCG(配列番号1)の、5’末端にビオチン標識されたオリゴDNA(以下、「相補鎖オリゴ」ともいう)のTE溶液(10mM Tris、1mM EDTA)(以下、「相補鎖オリゴ溶液」ともいう)
【0087】
[ポジティブコントロール1]
(1)クロマトグラフィー用ストリップ(固相担体)の作製
固相担体であるグラスウール(ミリポア社製)(8mm × 2mm)に、以下に示す塩基配列からなるキャプチャーDNAプローブのTE溶液を、特開2003-75305号公報に記載されている吐出ユニット(インクジェット法)を用いた日本ガイシ株式会社GENESHOT(登録商標)スポッターを用いて、スポットとし、これを固相担体の「検出部」とした。合成オリゴDNA配列として、5’-CGCTCTGGTTACTATTGGACGTT(配列番号2)を用いて、展開型クロマトグラフィー用のストリップを作製した。
【0088】
(2)展開液
ポジティブコントロール1の展開液は、下記の配合である。eの中にa、b、c、dを溶解してポジティブコントロール1の展開液を調製した。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 21質量%
d 20×PBS 5質量%
e 蒸留水 残量
【0089】
(3)ポジティブコントロール1の検出方法
上記のポジティブコントロール1の展開液10μl(46.5質量部)に、着色ラテックス液(a)1.5μl(7質量部)と、1×相補鎖オリゴDNA溶液(b)10μl(46.5質量部)を混合して、全量を21.5μlの検出用溶液とした。この検出用溶液は、上記(a)と(b)の接触による核酸粒子結合物(着色ラテックスにコートされたストレプトアビジンと相補鎖オリゴDNAに標識されたビオチンとの間の結合による)が形成されている。
【0090】
この検出用溶液をチューブ(2mlマイクロチューブ)に入れて、その中に上記(1)のクロマトグラフィー用ストリップの端部を浸漬して、上記の核酸粒子結合物を含有する検出用溶液を上記検出部に向けて展開して、当該溶液と検出部のキャプチャーDNAとの接触による相補鎖DNA同士の二本鎖DNA形成に伴う核酸粒子結合物の、検出部捕捉に伴う呈色の度合いをImage Lab(BIO-RAD社)で数値化して、この値をポジティブコントロール値とした。
【0091】
[実施例(比較例を含む)]
A.グループ1
(1)コンジュゲートパッド(固相担体)の作製
固相担体であるグラスウール(ミリポア社製)(8mm × 2mm)に、上記のポジティブコントロール用として作製したクロマト用ストリップの、長さ方向で見た検出部に近い側の端部から2mmまでを、下記の配合の実施例又は比較例の組成物10μlと着色ラテックス浮遊液(a)1.5μlの混合物(当該混合物中の着色ラテックス粒子の含有量は、0.065質量%)に10秒間浸漬して、さらに2時間の真空乾燥を乾燥装置(EYELA社)用いて行って、この部分を「サンプル接触部」として、それぞれの実施例又は比較例の固相担体とした。
【0092】
(2)試験方法
上記(1)で作製した実施例の固相担体を、空気中で4℃又は37℃で2週間保存したもの(以下、それぞれ「4℃品」と「37℃品」という)を試験品として、常温下、相補鎖オリゴ溶液(b)20μlを核酸サンプルとして、当該固相担体のサンプル接触部に浸漬による接触を行なった。4℃品は固相担体の冷蔵保存モデルとして、37℃品は常温保存モデル(加速試験)として位置付けた。常温下さらに20分間放置して十分に固相担体における溶媒拡散を行って、検出部における呈色の度合いを、Image Lab(BIO-RAD社)で数値化して、この値を上記のポジティブコントロール値に対する百分率として評価した。
【0093】
(実施例1)
実施例1の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 21質量%
d 20×PBS 5質量%
e 蒸留水 残量
【0094】
<製法等>
eの中にa、b、c、dを溶解して実施例1の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例1の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0095】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品は、呈色度合80-90%であった。
【0096】
(実施例2)
実施例2の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPSO 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 21質量%
d 20×PBS 5質量%
e 蒸留水 残量
【0097】
<製法等>
eの中にa、b、c、dを溶解して実施例2の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例2の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0098】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品は、呈色度合80-90%であった。
【0099】
(実施例3)
実施例3の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 12質量%
d 20×PBS 5質量%
e 蒸留水 残量
【0100】
<製法等>
eの中にa、b、c、dを溶解して実施例3の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例3の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0101】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品は、呈色度合80-90%であった。
【0102】
(実施例4)
実施例4の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPSO 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 12質量%
d 20×PBS 5質量%
e 蒸留水 残量
【0103】
<製法等>
eの中にa、b、c、dを溶解して実施例4の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例4の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0104】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品は、呈色度合80-90%であった。
【0105】
(実施例5)
実施例5の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 21質量%
d トレハロース 10質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 20×PBS 5質量%
g 蒸留水 残量
【0106】
<製法等>
gの中にa、b、c、d、e、fを溶解して実施例5の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例5の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0107】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品も、呈色度合100%であった。
【0108】
(実施例6)
実施例6の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPSO 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 21質量%
d トレハロース 10質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 20×PBS 5質量%
g 蒸留水 残量
【0109】
<製法等>
gの中にa、b、c、d、e、fを溶解して実施例6の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例6の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0110】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品も、呈色度合100%であった。
【0111】
(実施例7)
実施例7の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 12質量%
d トレハロース 10質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 20×PBS 5質量%
g 蒸留水 残量
【0112】
<製法等>
gの中にa、b、c、d、e、fを溶解して実施例7の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例7の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0113】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品も、呈色度合100%であった。
【0114】
(実施例8)
実施例8の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPSO 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 12質量%
d トレハロース 10質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 20×PBS 5質量%
g 蒸留水 残量
【0115】
<製法等>
gの中にa、b、c、d、e、fを溶解して実施例8の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例8の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0116】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品も、呈色度合100%であった。
【0117】
(実施例9)
実施例9の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 12質量%
d D(+)-グルコース 10質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 20×PBS 5質量%
g 蒸留水 残量
【0118】
<製法等>
gの中にa、b、c、d、e、fを溶解して実施例9の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例9の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0119】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品も、呈色度合100%であった。
【0120】
(実施例10)
実施例10の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 12質量%
d スクロース 10質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 20×PBS 5質量%
g 蒸留水 残量
【0121】
<製法等>
gの中にa、b、c、d、e、fを溶解して実施例10の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例10の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0122】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品も、呈色度合100%であった。
【0123】
(実施例11)
実施例11の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a Tween20 8質量%
b BSA 1質量%
c 尿素 12質量%
d 20×PBS 5質量%
e 蒸留水 残量
【0124】
<製法等>
eの中にa、b、c、dを溶解して実施例11の組成物(10μl)を調製し、これに着色ラテックス液(a)(1.5μl)を加えて攪拌して、これを固相担体のサンプル接触部に付着させ、上記の要領で実施例11の組成物を用いた固相担体を作製した。
【0125】
<試験結果>
4℃品は、呈色度合100%で、37℃品は、呈色度合0%であった。
【0126】
B.グループ2
上記グループ1の実施例の結果を受けて、さらに対象を拡大して検討を行った。本グループ2の試験品における「コンジュゲートパッド(固相担体)の作製方法」は、グループ1と同様である。また、グループ1と同様の要領で「4℃品」(冷蔵保存モデル)と「37℃品」(常温保存モデル)を試験品(実施例又は比較例)とした。各試験品の作製は、グループ1の実施例1-11に準じて行った。試験では、常温下、相補鎖オリゴ溶液(b)20μlを核酸サンプルとして、当該固相担体のサンプル接触部に浸漬による接触を行ない、常温下でさらに20分間放置して十分に固相担体における溶媒拡散を行った。そして、検出部における呈色の度合いを、目視観察に基づいて評価を行った。評価基準は下記の通りである。
【0127】
<評価基準>
上記実施例1の処方の組成物を用いた4℃品の固相上における呈色を別個に行い、これをポジティブコントロール2として、下記◎、○、△、×として記した枠組みの評価を行った。
◎:ポジティブコントロール2よりも呈色性が高い
○:ポジティブコントロール2と同等の呈色性である
△:ポジティブコントロール2よりも呈色性はやや劣るが、目視による呈色シグナルの識別に支障は無い
×:呈色性に劣り、呈色シグナルの識別に支障がある
【0128】
<実施例12-17、比較例1-2:CHAPS単独例>
実施例12の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 2質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 蒸留水 残量
【0129】
実施例13-17、及び、比較例1-2の組成物の配合は、CHAPSの配合量の他は、実施例12と同様である。これらの実施例と比較例における、CHAPSの配合量と、評価結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
<実施例18-22、比較例3-4:CHAPSO単独例>
実施例18の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPSO 2質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 蒸留水 残量
【0132】
実施例19-22、及び、比較例3-4の組成物の配合は、CHAPSOの配合量の他は、実施例18と同様である。これらの実施例と比較例における、CHAPSOの配合量と、評価結果を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
<実施例23-25、比較例5:CHAPS・CHAPSO混合例>
実施例23の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 1質量%
b CHAPSO 1質量%
c BSA 1質量%
d 20×PBS 5質量%
e 蒸留水 残量
【0135】
実施例24-25、及び、比較例5の組成物の配合は、CHAPSとCHAPSOの配合量の他は、実施例23と同様である。これらの実施例と比較例における、CHAPSとCHAPSOの配合量と、評価結果を表3に示す。
【0136】
【表3】
【0137】
上記の実施例12-25の結果により、コール酸を母核とする水溶性の両面活性剤である、CHAPSとCHAPSOを、単独又は組合せて本発明の組成物に、他の実質的な追加成分無しで配合した場合にも、冷蔵保存下又は常温において、本発明の固相担体を実用可能な状態で保存することが可能であることが明らかになった。
【0138】
<実施例26-30:CHAPS固定・尿素変動例>
実施例26の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 8質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 尿素 8質量%
e 蒸留水 残量
【0139】
実施例27-30の組成物の配合は、尿素の配合量の他は、実施例26と同様である。これらの実施例における、尿素の配合量と、評価結果を表4に示す。なお、尿素の配合量を21質量%とした例(実施例1の処方:ポジティブコントロール2)の37℃品における本試験における評価は、4℃品と同等であり「○」であった。
【0140】
【表4】
【0141】
<実施例31-34、比較例6:尿素固定、CHAPS変動例>
実施例31の組成物は、下記の配合である。
配合成分 配合量
a CHAPS 2質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 尿素 21質量%
e 蒸留水 残量
【0142】
実施例32-34、及び、比較例6の組成物の配合は、CHAPSの配合量の他は、実施例31と同様である。これらの実施例と比較例における、CHAPSの配合量と、評価結果を表5に示す。
【0143】
【表5】
【0144】
上記の実施例26-34の結果により、尿素を組み合わせて配合した場合には、冷蔵保存下における固相上の発色シグナルの呈色性をさらに向上させることが可能であることが明らかになった。
【0145】
<実施例35-45:アミノ酸・糖の配合例>
(実施例35)
実施例35の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 尿素 21質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 蒸留水 残量
【0146】
(実施例36)
実施例36の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価も「◎」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 尿素 21質量%
e トレハロース 10質量%
f 蒸留水 残量
【0147】
(実施例37)
実施例37の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価も「◎」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 尿素 21質量%
e トレハロース 10質量%
f L-アルギニン 0.4質量%
g 蒸留水 残量
【0148】
(実施例38)
実施例38の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d L-アルギニン 0.4質量%
e 蒸留水 残量
【0149】
(実施例39)
実施例39の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d トレハロース 10質量%
e 蒸留水 残量
【0150】
(実施例40)
実施例40の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d トレハロース 10質量%
e L-アルギニン 0.4質量%
f 蒸留水 残量
【0151】
(実施例41)
実施例41の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d グリシン 0.4質量%
e 蒸留水 残量
【0152】
(実施例42)
実施例42の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d L-ヒスチジン 0.4質量%
e 蒸留水 残量
【0153】
(実施例43)
実施例43の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d L-アスパラギン酸 0.4質量%
e 蒸留水 残量
【0154】
(実施例44)
実施例44の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d スクロース 10質量%
e 蒸留水 残量
【0155】
(実施例45)
実施例45の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「◎」であり、37℃品の評価は「○」であった。
配合成分 配合量
a CHAPS 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d D(+)-グルコース 10質量%
e 蒸留水 残量
【0156】
上記の実施例35-45の結果により、糖類及び/又はアミノ酸を組み合わせて配合した場合には、少なくとも冷蔵保存下における固相上の発色シグナルの呈色性をさらに向上させることが可能であることが明らかになり、常温保存下における上記発色シグナルの呈色性の向上例も、尿素配合例(実施例36、37)において認められた。
【0157】
<実施例46-47:Tween20の配合例>
(実施例46)
実施例46の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「○」であり、37℃品の評価は「×」であった。
配合成分 配合量
a Tween20 8質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 尿素 21質量%
e 蒸留水 残量
【0158】
(実施例47)
実施例47の組成物は、下記の配合であり、4℃品の評価は「○」であり、37℃品の評価は「×」であった。
配合成分 配合量
a Tween20 10質量%
b BSA 1質量%
c 20×PBS 5質量%
d 尿素 21質量%
e トレハロース 10質量%
f L-アルギニン 0.4質量%
e 蒸留水 残量
【0159】
上記の実施例46-47によって、水溶性の非イオン性界面活性剤を用いた場合にも、冷蔵保存下においては固相上で発色シグナルを十分に確認可能であることが明らかになった。しかしながら、常温保存下における発色シグナルは非常に弱く、常温保存では実用が困難であることが再確認された。
【配列表】
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