(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】HBVウイルスに対する治療におけるパロバロテンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/415 20060101AFI20250115BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20250115BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250115BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61K31/415
A61P31/20
A61K9/08
A61K9/14
(21)【出願番号】P 2022576131
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2021097626
(87)【国際公開番号】W WO2021249240
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】202010531845.9
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516118327
【氏名又は名称】養生堂有限公司
【氏名又は名称原語表記】YANG SHENG TANG COMPANY, LTD.
【住所又は居所原語表記】ROOM 205, NO. 17 LUNDU ROAD, SHUANGPU TOWN, XIHU DISTRICT, HANGZHOU, ZHEJIANG 310000, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】504458976
【氏名又は名称】厦▲門▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 天 英
(72)【発明者】
【氏名】曹 佳 莉
(72)【発明者】
【氏名】施 恬 樹
(72)【発明者】
【氏名】馬 建
(72)【発明者】
【氏名】王 邵 娟
(72)【発明者】
【氏名】袁 權
(72)【発明者】
【氏名】張 軍
(72)【発明者】
【氏名】夏 寧 邵
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0216430(US,A1)
【文献】国際公開第2019/079339(WO,A1)
【文献】特開2019-094262(JP,A)
【文献】特表2019-517557(JP,A)
【文献】Antiviral Research,2019年,Vol.169, Article No.104538,pp.1-11,DOI: 10.1016/j.antiviral.2019.104538
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗HBV治療のための、細胞におけるHBVの複製若しくは繁殖の阻害のための、HBVによって引き起こされる疾患若しくは感染症の治療及び/若しくは予防のための
、または抗HBV治療
若しくは細胞におけるHBVの排除のための組成物であって、式I
【化1】
[式中、Rは、ヒドロキシ
ルである]
によって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、
または前記薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和
物を含む、組成物。
【請求項2】
前記細胞が哺乳動物の細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が薬学的に許容される担体又は賦形剤を更に含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、
または前記薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和
物が治療有効量及び/又は予防有効量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が固体製剤、注射剤、外用製剤、噴霧剤、液体製剤又は複合製剤である、請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月11日出願された中国出願第202010531845.9号に基づき、その優先権の利益を主張する。この出願の開示は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、B型肝炎の抗ウイルス薬治療の分野に、詳細には式I
【0003】
【0004】
によって表される小分子薬(例えば、パロバロテン)の、抗HBV治療における使用に関する。
【背景技術】
【0005】
背景技術
B型肝炎と略されるウイルス性B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)による身体の感染によって引き起こされる疾患である。世界保健機関(World Health Organization)は、世界の人口の3.5%(2億5700万人)がB型肝炎ウイルスに感染しており、毎年約500万人が新たに感染すると推定している。世界では、毎年800,000人超が、慢性活動性肝炎、肝硬変及び肝細胞癌を含むHBV感染によって引き起こされる種々の肝疾患で死亡している。中国は、B型肝炎ウイルス感染の中程度の又は高い流行地である。B型肝炎ワクチンの広範な予防接種により、HBVの新たな感染数は効果的に減少しているが、中国では慢性HBV感染者は依然として7000万人を超え、慢性B型肝炎(CHB)患者は2000万~3000万人に達すると推定されており、毎年約50万人がHBV感染で死亡し、毎年約50万~100万例のB型肝炎の新たな症例が診断されている。B型肝炎ウイルス感染は、人間の健康を深刻な危険にさらし、長期的な疾病負荷をもたらし、中国では現段階で、最も顕著な公衆衛生問題の1つとなっている。
【0006】
現在、慢性B型肝炎患者のための主な治療薬には、ヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体(NA)及びインターフェロンα(IFNα)の2種類があり、そのうち、インターフェロンαはペグ化インターフェロンα(PEGIFNα)である。EUによる承認済みのHBV治療用NAとしては、アデホビル(ADV)、エンテカビル(ETV)、ラミブジン(LAM)、テルビブジン(TBV)、テノホビル(TDF)及びテノホビルアベラミド(TAF:Tenofovir averamide)が挙げられる。これらの薬物は、ウイルス複製を阻害し、疾患進行を遅延させ又は抑制し、肝硬変及び肝臓がんの発症リスクを低下させる。
【0007】
しかし、PEGIFNα/NA薬及びその最適化された組合せの現在の臨床的使用は、高い割合の「臨床的治癒」(血清B型肝炎表面抗原(HBsAg)の排除;ウイルス複製及び患者の抗ウイルス治療の予後の重要な指標であるB型肝炎e抗原(HBeAg)の排除;B型肝炎表面抗体が陽性であるかないかにかかわらず)を達成することが依然として困難である。既存の研究では、PEGIFNα/NAはウイルスの複製を防ぐことができるが、HBsAgレベルを効果的に低下させることも、肝臓中に安定的に存在する、共有結合的に閉環した環状DNA(cccDNA;HBVの転写及び複製テンプレートと考えられる)に直接影響を与えることもできず、したがって、治療によりウイルスの複製が長期間制御されている状態であっても、ほとんどの患者で退薬直後にウイルス学的なリバウンドが起こると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
慢性B型肝炎患者の血清HBsAg、HBeAg、HBV DNA及びcccDNAのレベルを効果的に低下させることができる抗ウイルス薬の開発には、慢性B型肝炎患者の抗ウイルス治療及び予後にとって緊急の実際的意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の内容
本発明者らは驚いたことに、自身の研究において、パロバロテン(構造式は
図1に示される)治療が、インビトロ研究モデル(感染モデル:HepG2-hNTCP 2B1、HepaRG M14a、PHH;複製モデル:HepAD38)における、細胞培養物上清中のHBsAg及びHBeAgのレベル、並びに細胞内HBV DNA及びcccDNAのレベルを有意に低下させることができることを見出した。上記知見に基づいて、本出願を完成させた。
【0010】
本出願は、式I
【0011】
【0012】
[式中、Rは、ヒドロキシル、アミノ、C1-6アルキル-アミノ-、ジ(C1-6アルキル)-アミノ-、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C3-6シクロアルキル、C3-6シクロアルコキシ、フェノキシ又はベンジルオキシである]
によって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体の使用に関する。
【0013】
特に、本出願は、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の、抗HBV治療用製品の製造における使用に関する。
【0014】
本出願はまた、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の、HBV阻害薬としての製品の製造における使用に関する。
【0015】
本出願はまた、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるHBVの複製又は繁殖を阻害するための製品の製造における使用に関する。
【0016】
本出願はまた、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の、HBVによって引き起こされる疾患又は感染症の治療及び/又は予防のための製品の製造における使用に関する。
【0017】
本出願はまた、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるHBVの排除のための製品の製造における使用に関する。
【0018】
本出願はまた、抗HBV治療における使用のための、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物に関する。
【0019】
本出願はまた、HBV阻害薬としての使用のための、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物に関する。
【0020】
本出願はまた、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるHBVの複製又は繁殖の阻害に使用するための、式Iよって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物に関する。
【0021】
本出願はまた、HBVによって引き起こされる疾患又は感染症の治療及び/又は予防に使用するための、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物に関する。
【0022】
本出願はまた、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるHBVの排除における使用のための、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物に関する。
【0023】
本出願は、抗HBV治療のための方法であって、それを必要とする対象に、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の治療有効量を投与する工程を含む、方法に関する。
【0024】
本出願はまた、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)においてHBVの複製又は繁殖を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の有効量を投与する工程を含む、方法に関する。
【0025】
本出願はまた、HBVによって引き起こされる疾患又は感染症を治療及び/又は予防するための方法であって、それを必要とする対象に、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の治療有効量及び/又は予防有効量を投与する工程を含む、方法に関する。
【0026】
本出願はまた、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)においてHBVを排除するための方法であって、それを必要とする対象に、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体、或いは式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む医薬組成物の有効量を投与する工程を含む、方法に関する。
【0027】
本出願はまた、抗HBV治療のための組成物であって、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む、組成物に関する。
【0028】
本出願はまた、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)においてHBVの複製又は繁殖を阻害するための組成物であって、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む、組成物に関する。
【0029】
本出願はまた、HBVによって引き起こされる疾患又は感染症の治療及び/又は予防のための組成物であって、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む、組成物に関する。
【0030】
本出願はまた、細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるHBVの排除のための組成物であって、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体を含む、組成物に関する。
【0031】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載されるHBVによって引き起こされる疾患は、ウイルス性B型肝炎である。
【0032】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載されるHBVによって引き起こされる疾患は、B型肝炎関連の肝硬変又は原発性肝臓がんである。
【0033】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載されるウイルス性B型肝炎は、慢性ウイルス性B型肝炎、急性ウイルス性B型肝炎又は慢性活動性肝炎である。
【0034】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される製品は、医薬製品である。
【0035】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される医薬組成物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を更に含む。
【0036】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される医薬組成物は、固体製剤(例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤)、注射剤、外用製剤、噴霧剤、液体製剤又は複合製剤である。
【0037】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される医薬組成物は、経口的に、注射によって、植え込みによって、外用によって、噴霧によって又は吸入によって投与することができる。
【0038】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、ヒドロキシ、アミノ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、直鎖若しくは分枝C5アルキル、直鎖若しくは分枝C6アルキル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、クロロメチル、クロロエチル、ジクロロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、モノフルオロメチル、クロロメトキシ、クロロエトキシ、ジクロロエトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ又はモノフルオロメトキシである。
【0039】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはヒドロキシルであり、この場合、化合物はパロバロテンである。
【0040】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ又はジブチルアミノである。
【0041】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはアミノである。
【0042】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、メチルアミノ又はエチルアミノである。
【0043】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、ジメチルアミノ又はジエチルアミノである。
【0044】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ又はヘキシルオキシである。
【0045】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはメトキシである。
【0046】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはエトキシである。
【0047】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはn-プロポキシである。
【0048】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはイソプロポキシである。
【0049】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはn-ブトキシである。
【0050】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはイソブトキシである。
【0051】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはtert-ブトキシである。
【0052】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはペンチルオキシである。
【0053】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはヘキシルオキシである。
【0054】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ又はシクロヘキシルオキシである。
【0055】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、シクロプロポキシ又はシクロブトキシである。
【0056】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはフェノキシ又はベンジルオキシである。
【0057】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、直鎖若しくは分枝C5アルキル又は直鎖若しくは分枝C6アルキルである。
【0058】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、メチル又はエチルである。
【0059】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはn-プロピルである。
【0060】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0061】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、クロロメチル、クロロエチル、ジクロロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル又はモノフルオロメチルである。
【0062】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはクロロメチル又はクロロエチルである。
【0063】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル又はモノフルオロメチルである。
【0064】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、クロロメトキシ、クロロエトキシ、ジクロロエトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ又はモノフルオロメトキシである。
【0065】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rは、クロロメトキシ又はクロロエトキシである。
【0066】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物において、Rはトリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ又はモノフルオロメトキシである。
【0067】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される薬学的に許容される塩は、無機又は有機酸性塩並びに無機又は有機塩基性塩を含む。例えば、薬学的に許容される塩は、これらに限定されるものではないが、以下を含む:ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩を含む、化合物のアルカリ金属塩;カルシウム塩及びマグネシウム塩を含む、化合物のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩及びコバルト塩を含む、化合物の金属塩;メグルミン塩、アンモニウム塩、tert-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、N-メチル-D-グルカミン塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ビシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-N-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩を含む、化合物のアミン塩。
【0068】
本出願の一部の実施形態によれば、本出願において記載される式Iによって表される化合物中にカルボキシル基がある場合、化合物は、アルコールと薬学的に許容されるエステルを形成でき、薬学的に許容されるエステルは、以下を含む:C1-6アルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、sec-ブチルエステル、tert-ブチルエステル、ペンチルエステル及びヘキシルエステル;C3-6シクロアルキルエステル、例えば、シクロペンチルエステル及びシクロヘキシルエステル;C6-10アリールエステル、例えば、フェニルエステル及びナフチルエステル;C6-10アリール-C1-6アルキルエステル、例えば、ベンジルエステル、フェニルエチルエステル、α-メチルベンジルエステル、3-フェニルプロピルエステル、4-フェニルブチルエステル、6-フェニルヘキシルエステル、ジフェニルメチルエステル及びトリフェニルメチルエステル;又はインビボで加水分解されることができるエステル、例えば、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチルエステル、(ピバロイルオキシ)メチルエステル、ベンゾフラノニルエステル、[(イソプロポキシカルボニル)オキシ]メチルエステル、[(シクロヘキシルオキシカルボニル)オキシ]メチルエステル及び1-[(シクロヘキシルオキシカルボニル)オキシ]エチルエステル。
【0069】
本出願において記載される担体としては、これらに限定されるものではないが、以下が挙げられる:イオン交換体、酸化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒトアルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリセロール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和(saturate)植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース材料、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ミツロウ、羊毛脂。
【0070】
本出願において使用する「賦形剤」という用語は、医薬製剤中の主有効成分以外の添加剤を指す。賦形剤は、本質的に安定であり、主有効成分との不適合がなく、副作用をもたらさず、有効性に影響を及ぼさず、室温で容易に変形したり、ひび割れたり、白カビ若しくは虫に食べられたりせず、人体に無害であり、生理作用を有さず、主有効成分との化学的又は物理的相互作用をもたらさず、主有効成分の含量決定に影響を及ぼさないなどである。例としては、錠剤における結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤;経口用液体製剤における保存剤、酸化防止剤、矯味剤、香味剤、共溶媒、乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節剤、着色剤等が挙げられ、それらの全てを賦形剤と称することができる。
【0071】
本出願において使用する「C1-6アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキル、例えば、C1-4アルキル、C1-2アルキル、C1アルキル、C2アルキル、直鎖若しくは分枝C3アルキル、直鎖若しくは分枝C4アルキル、直鎖若しくは分枝C5アルキル、又は直鎖若しくは分枝C6アルキルを指す。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本出願において使用する「C1-6アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子に結合している、上記で定義されるC1-6アルキルを指す。C1-6アルコキシの代表例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ及びヘキシルオキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本出願において使用する「C1-6ハロアルキル」という用語は、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素で一置換又は多置換されている、上記で定義されるC1-6アルキルを指す。C1-6ハロアルキルの代表例としては、クロロメチル、クロロエチル、ジクロロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル及びモノフルオロメチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本出願において使用する「C1-6アルキル-アミノ-」という用語は、上記で定義されるC1-6アルキルで一置換されているアミノ基を指す。「C1-6アルキル-アミノ」の典型例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ及びブチルアミノが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
本出願において使用する「ジ(C1-6アルキル)-アミノ-」という用語は、上記で定義されるC1-6アルキルで二置換されているアミノ基を指す。「ジ(C1-6アルキル)-アミノ-」の典型例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ及びジブチルアミノが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本出願において使用する「C3-6シクロアルキル」という用語は、3~6個の炭素原子を有し且つ単環若しくは二環構造又は複数の縮合環(縮合及び架橋環系を含む)を有する飽和環状ヒドロカルビルを指す。「C3-6シクロアルキル」の典型例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本出願において使用する「C3-6シクロアルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子に結合されている、上記で定義されるC3-6シクロアルキルを指す。「C3-6シクロアルコキシ」の典型例としては、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ及びシクロヘキシルオキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本出願において使用する「C1-6ハロアルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子に結合されている、上記で定義されるC1-6ハロアルキルを指す。C1-6ハロアルコキシの代表例としては、クロロメトキシ、クロロエトキシ、ジクロロエトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ及びモノフルオロメトキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
本出願において使用する「対象」という用語は哺乳動物を含む。
本出願において記載される哺乳動物は、ウシ、ウマ、ヤギ、イノシシ、イヌ、ネコ、齧歯類及び霊長類を含み、好ましい哺乳動物はヒトである。
【0080】
本出願において使用する「有効量」という用語は、所望の効果を達成する又は少なくとも部分的に達成するのに十分な量を指す。例えば、治療有効量は、既に疾患に罹患している患者において、疾患及びその合併症を治癒させる又は少なくとも部分的に抑制するのに十分な量を指す。予防有効量は、疾患の発生を効果的に予防する、抑制する又は遅延させることができる量を指す。このような有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、治療的使用に有効な量は、治療される疾患の重症度、患者自身の免疫系の一般的状態、患者の全身状態、例えば、年齢、体重及び性別、薬物の投与経路、並びに同時に投与される他の治療薬などによって決まる。
【0081】
対象に投与される、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体の量は、疾患の種類及び重症度並びに対象の状態及び特性、例えば、全身健康状態、年齢、性別、体重及び薬物に対する耐性によって決まり、製剤の種類、薬物の投与経路、及び投与の持続時間又は間隔等の要因によっても決まる。当業者ならば、これらの及び他の要因に基づいて、適切な投与量を決定できるであろう。一般に、式Iによって表される化合物、立体異性体、溶媒和物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物、薬学的に許容されるエステル又はそれらの種々の薬学的に許容される修飾体は、治療のための一日量が約0.0001~1000mg/kg体重/日であってよく、一日量は、適宜1つ又は複数のバッチで投与できる。
【0082】
本発明の実施形態を、図面及び実施例を参照して以下に詳述するが、当業者ならば、以下の図面及び実施例が、本出願の範囲を限定するのではなく、本出願を例示するためにのみ使用されることがわかるであろう。本出願の種々の目的及び利点は、図面及び好ましい実施形態についての以下の詳細な説明により、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図2】感染モデルHepG2-hNTCP 2B1におけるHBV感染に対するパロバロテンの阻害効果を示す図である。
【
図3】感染モデルHepRG M14aにおけるHBV感染に対するパロバロテンの阻害効果を示す図である。
【
図4】HBVに感染した感染モデルHepG2-hNTCP 2B1に対するパロバロテンの治療効果を示す図である。
【
図5】高コピー複製モデルHepAD38におけるパロバロテンの評価結果を示す図である。
【
図6】ヒト初代培養肝細胞(primary hepatocyte)におけるHBV感染に対するパロバロテンの阻害効果を示す図である。
【
図7】HBVに感染したヒト初代培養肝細胞に対するパロバロテンの治療効果を示す図である。
【
図8】インビトロ細胞モデルにおけるパロバロテンの安全性評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
発明を実施するための特定のモデル
以下の実施例において特定の技術又は条件が示されていない場合には、当技術分野における文献又は製品仕様書に記載されている技術又は条件に従うものとする。特に明記しない限り、実験方法は従来の方法であり、製造業者の指示なしで使用される材料、試薬又は装置は、商業的に入手可能な従来の製品である。全ての実験は3つのウェルで繰り返し、結果は平均値とした。
【0085】
以下の実施例において、試験薬物はパロバロテン(MCEから購入)であり、陽性対照薬物には、エンテカビル(ETV、Yuanye Bio-Technology Co.,Ltd.から購入)及びインターフェロンIFNα(Sigmaから購入、SRP4595-100UG)を含めた。実験中に、試験薬物又は陽性対照薬物を培地で所望の最終濃度に希釈し、使用する細胞に応じて培地を決定した。これについては各実施例において具体的に記載した。
【0086】
以下の実施例において、使用した10LのPBSの処方は、NaClが80g、KClが2g、Na2HPO4・12H2Oが29g、KH2PO4が2.4gであり、これを水とよく混合し、pHが7.4及び計量した容量が10Lとなるように調整した、次いで二重層0.22μm濾過膜で濾過し、サブパッケージに入れ、後で使用するために高圧蒸気で滅菌した。
【0087】
以下の実施例において、使用するDMEM培地はSIGMA-ALDRICHから購入し(Art.No.D6429);FBSはThermoFisherから購入し(Art.No.10099141);ピューロマイシンはInvivoGenから購入し(Art.No.ant-pr-1);ドキシサイクリンはSIGMA-ALDRICHから購入し(Art.No.D9891);ペニシリン及びストレプトマイシンはShandong Lukang Pharmaceutical Co.,Ltd.から購入し;4%のPEG 8000はAMRESCOから購入し(Art.No.0159);WME培地はSIGMA-ALDRICHから購入し(Art.No.W1878);グルタミンは、SIGMA-ALDRICHから購入し(Art.No.G8540);インスリンは、Jiangsu Wanbang Biopharmaceuticalsから購入し;ヒドロコルチゾンはCaymanから購入し(Art.No.18226);テトラサイクリンはUSBから購入し(Art.No.22105-25g);B-27(商標)Supplement(50×)はGIBCOから購入し(Art.No.17504044);ホルスコリンはMCEから購入し(Art.No.HY-15371);SB431542はTocrisから購入し(Art.No.1614);IWP2はMCEから購入し(Art.No.HY-13912);DAPTはMCEから購入し(Art.No.HY-13027);LDN193189は、MCEから購入した(Art.No.HY-12071A)。
【0088】
以下の実施例において、使用した培地Aは、10% FBS、1μg/mLピューロマイシン、1μg/mLドキシサイクリン、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有する、DMEM培地であった。
【0089】
以下の実施例において、使用した培地Bは、10% FBS、1μg/mLピューロマイシン、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有する、DMEM培地であった。
【0090】
以下の実施例において、使用した培地Cは、4w/v% PEG 8000、1μg/mLピューロマイシン、1μg/mLドキシサイクリン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び5% FBSを含有する、DMEM培地(使用直前に新たに調製)であった。
【0091】
以下の実施例において、使用した培地Dは、10% FBS、100mMグルタミン、5μg/mLインスリン、50μMヒドロコルチゾン、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有する、WME培地であった。
【0092】
以下の実施例において、使用した培地Eは、4w/v% PEG 8000、100mMグルタミン、5μg/mLインスリン、50μMヒドロコルチゾン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び5% FBSを含有する、WME培地(使用直前に新たに調製)であった。
【0093】
以下の実施例において、使用した培地Fは、10% FBS、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有する、DMEM培地であった。
【0094】
以下の実施例において、使用した培地Gは、10% FBS、1μg/mLテトラサイクリン、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有する、DMEM培地であった。
【0095】
以下の実施例において、使用した培地Hは、1v/v% B-27(商標)Supplement(使用時に1:100の比で希釈、すなわち、培地Hの100mL毎に、1mLのB-27(商標)Supplementを含有する)、20μmol/Lホルスコリン、10μmol/L SB431542、0.5μmol/L IWP2、5μmol/L DAPT、0.1μmol/L LDN193189、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有する、WME培地であった。
【0096】
以下の実施例において、使用した培地Iは、4w/v% PEG 8000、20μmol/Lホルスコリン、10μmol/L SB431542、0.5μmol/L IWP2、5μmol/L DAPT、0.1μmol/L LDN193189、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び0.5v/v% B-27(商標)Supplement(使用時に1:200の比で希釈、すなわち、培地Iの100mL毎に、0.5mLのB-27(商標)Supplementを含有する)を含有する、WME培地であった。
【0097】
実施例1:感染モデルHepG2-hNTCP 2B1におけるHBV感染に対する試験薬物の阻害効果の評価
テトラサイクリン誘導性プロモーターによって制御されているバイシストロニック発現カセット(bicistronic expression cassette)において、ヒトナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(hNTCP)遺伝子及び赤色蛍光タンパク質(mCherry)遺伝子を作製し、レンチウイルス系を使用することによって発現カセットをHepG2-Tet On細胞に安定的に組み込み、フローサイトメトリーソーティング技術を使用することによって、hNTCPを高発現する安定な細胞株HepG2-hNTCP 2B1を得た。この細胞モデルは、HBV感染症を裏付け、HBV関連指標を生成した。(この細胞モデルの作製方法については、以下を参照されたい:Ya-Li Zhang、Ying Gao、Jia-Li Cao、Jing-Hua Zhao、Tian-Ying Zhang、ChuanLai Yang、Hua-Long Xiong、Ying-Bin Wang、Shan-Hai Ou、Tong Cheng、Chang-Rong Chen、Quan Yuan & Ning-Shao Xia(2019年)、Robust in vitro assay for analyzing the neutralization activity of serum specimens against hepatitis B virus, Emerging Microbes & Infections、8巻:1号、724~733頁,DOI:10.1080/22221751.2019.1619485)。
【0098】
この実験は、24ウェル培養プレートにおいて実施した。実験群の各試験薬物は、1μM、5μM及び25μMの3つの最終濃度を有し、陽性対照群のエンテカビル(ETV)は、最終濃度が1μMであった。ここで、試験薬物及び陽性対照薬物は、所望の濃度まで培地Aで希釈し、ブランク群には、薬物を含まない同一容量の培地Aを添加した。
【0099】
約1.5×105個のHepG2-hNTCP 2B1細胞を各ウェルにプレーティングし、500μLの培地Bを添加した。細胞が付着した後、全実験を通じて、ドキシサイクリンによる誘導を行うために培地Aを交換のために使用した。
【0100】
72時間のドキシサイクリンによる誘導後、500μLの薬物を含有する培地Aを各ウェルに添加して、24時間にわたって薬物処理を行い、次いで細胞にHBVを感染させた。ウェル当たりのウイルス感染量は100MOIであった。感染前に、培地CでHBVを希釈することによってHBV溶液を得た。感染容量はウェル当たり250μLであった。感染中に細胞上清を最初に吸引によって除去し、HBV溶液を細胞に添加し、次いで細胞を16~20時間インキュベートし、次いで上清を0日目の試料として収集した。次いで、細胞を37℃の浴中で加温したPBSで3回洗浄し、新鮮な、薬物を含有する培地A(500μL)を交換のために使用し、次いで、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な、薬物を含有する培地Aを添加し、8日目に、上清及び細胞を全て、関連する検出のために収集した。検出項目には以下を含めた:HBsAg/HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNA。
【0101】
HBsAg/HBeAgの検出:
HBsAg(化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、製品規格番号:YZB/Guo 0346-2014)及びHBeAg(酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、製品規格番号:YZB/Guo 0216-2013)は、Beijing Wantai Companyの検出キットを使用して検出し、具体的な検出操作は、キット中の説明書に記載されている検出方法に従って実施した。
【0102】
HBV DNAの検出:
収集した細胞をPBSで洗浄後、ウイルスDNA&RNA抽出キット(Beijing GenMagBio)を使用して、核酸抽出ワークステーション(GenMagBioから購入、モデル:DOF-9696)で自動抽出を行って(抽出手順については、取扱説明書を参照されたい)、HBV DNAを得た。HBV DNAは、プローブリアルタイム蛍光定量的PCRによって定量化した。ここで、使用した試薬はPremix Ex Taq(商標)(Takara)であり、使用した機器はRocheのLightCycler(登録商標)96であった。蛍光定量化に使用したプライマー配列は表1に示し、蛍光定量的反応系は表2に示した。
【0103】
HBV cccDNAの検出:
改変Hirt法を使用して、キットを使用することによってHBV cccDNAを抽出した。使用したキットはプラスミドミニキット(TIANGEN BIOTECH(BEIJING)CO.,LTD.)であった。このキットに含まれる溶液は、緩衝液I(50mM Tris、10mM EDTA、pH7.5)、緩衝液II(1.2% SDS)、緩衝液III(3M CsCl、1M酢酸カリウム、0.67M酢酸)であった。具体的な方法については、キット説明書に記載されているプラスミド抽出方法を参照されたい。HBV cccDNAは、プローブリアルタイム蛍光定量的PCRによって定量的に検出し、ミトコンドリアDNA(mtDNA)を内部参照として同時に検出した。ここで、使用した機器は、RocheのLightCycler(登録商標)96であった。蛍光定量化に使用したプライマーは表1に示し、蛍光定量的反応系は表2に示した。
【0104】
定量的検出のための蛍光反応手順は以下の通りであった:
(1)HBV DNAの定量化:定量化プログラムは、95℃、30秒;(95℃、5秒;60℃、30秒)を45サイクル、蛍光チャンネルはHexであった。
【0105】
(2)cccDNAの定量化:定量的プログラムは、95℃、5分;(95℃、30秒;60℃、60秒)を45サイクル、蛍光チャンネルはFAMであった。
【0106】
(3)mtDNAの定量化:定量的プログラムは、95℃、5分;(95℃、30秒;55℃、40秒)を45サイクル、蛍光チャンネルはHexであった。
【0107】
cccDNA正規化の計算:具体的な式は以下の通りであった:2(mtDNA-cccDNA)[式中、括弧内の値はそれぞれ、mtDNA及びcccDNAのCt値である]。
【0108】
実験結果を
図2に示した。結果から、ブランク群と比較して、パロバロテン処理は、細胞上清中のHBsAg(p<0.05)及びHBeAg(p<0.05)のレベル、細胞内HBV DNA(p<0.001)及びHBV cccDNA(p<0.0001)のレベルを効果的に阻害することができ、阻害度はある程度、用量依存的であることが示された。
【0109】
これにより、パロバロテンがHBVのHepG2-hNTCP 2B1への感染を有意に阻害できることが示された。
【0110】
【0111】
【0112】
実施例2:感染モデルHepaRG M14AにおけるHBV感染に対する、試験薬物の阻害効果の評価
HepaRGは、女性C型肝炎患者の腫瘍組織から単離された分化能を有する肝前駆細胞株であった。細胞プレーティングの2週間後、細胞分化を2% DMSO(細胞培養培地100mL当たり2mLのDMSOを添加した)で2週間にわたって誘導した。最終的に、約50%の細胞が肝細胞様細胞に分化し、その他の50%の細胞が胆管細胞様細胞に分化した。そのうち、肝細胞様細胞は、約20%の感染効率でHBV感染を支持した。HepaRGの遺伝子改変により、HNF4A及びFoxM1遺伝子がHepaRG細胞に組み込まれ、分化を完了させ且つDMSOとは独立してHBV感染を支持することができるHepaRG M14A細胞株が、スクリーニングによって得られた。(この細胞モデルの作製方法については、Zhao Jinghua. Development, Optimization and Preliminary Application of in vitro models supporting HBV Infection [D]. Xiamen University、2016年を参照されたい)。
【0113】
この実験は、24ウェル細胞培養プレートにおいて実施した。実験群の各試験薬物は、1μM、5μM及び25μMの3つの最終濃度を有し、陽性対照群のエンテカビル(ETV)は、最終濃度が1μMであった。ここで、試験薬物及び陽性対照薬物は、所望の濃度まで培地Dで希釈し、ブランク群には、薬物を含まない同一容量の培地Dを添加した。約1.5×105個のHepaRG M14A細胞を各ウェルにプレーティングし、500μLの培地Dを各ウェルに添加した。細胞プレーティング後、培地Dを2日毎に交換した。細胞プレーティングの13日間後、薬物処理のために、培地Dを、薬物を含有する培地Dと交換した。24時間の薬物処理後、細胞にHBVを感染させた。各ウェル中の感染のためのHBVの量は1000MOIであった。感染前に、HBVを培地Eで希釈することによってHBV溶液を得た。感染容量はウェル当たり250μLであった。感染中に、細胞上清を最初に吸引によって除去し、HBV溶液を細胞に添加し、次いで細胞を24時間インキュベートし、次いで上清を0日目の試料として収集した。次いで、細胞を37℃の浴中で加温したPBSで3回洗浄し、新鮮な、薬物を含有する培地D(ウェル当たり500μL)を交換のために使用し、次いで、8日目まで、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な、薬物を含有する培地Dを交換のために使用し、上清及び細胞を全て、関連する検出のために収集した。検出項目には、HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNAを含めた。検出方法については、実施例1を参照されたい。
【0114】
実験結果を
図3に示した。結果から、HepaRG M14a感染細胞モデルにおいて、感染前のパロバロテン処理は、細胞上清中のHBsAg(p<0.05)及びHBeAg(p<0.05)のレベル並びに細胞内HBV DNA(p<0.0001)及びcccDNA(p<0.0001)のレベルを有意に低下できることが示された。
【0115】
上記結果により、パロバロテンがHBVのHepaRG M14Aへの感染を有意に阻害できることが示された。
【0116】
実施例3.HBVに感染した感染モデルHepG2-hNTCP 2B1に対する、試験薬物の治療効果の評価
この実験は、24ウェル培養プレートにおいて実施した。実験群の各試験薬物は、1μM、5μM及び25μMの3つの最終濃度を有し、陽性対照群のETVは、最終濃度が1μMであった。ここで、試験薬物及び陽性対照薬物は、所望の濃度まで培地Aで希釈し、ブランク群には、薬物を含まない同一容量の培地Aを添加した。約1.5×105個のHepG2-hNTCP 2B1細胞を各ウェルにプレーティングし、500μLの培地Bを各ウェルに添加した。細胞が付着した後、全実験を通じて、ドキシサイクリンによる誘導を行うために培地Aを交換のために使用した。
【0117】
ドキシサイクリンによる誘導の4日後に、HBV感染を行った。各ウェル中のHBVの量は、100MOIであった。感染前に、HBVを培地Cで希釈してHBV溶液を得た。感染容量はウェル当たり250μLであった。感染中に、細胞上清を最初に吸引によって除去し、HBV溶液を細胞に添加し、細胞を24時間インキュベートし、次いで上清を0日目の試料として収集した。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、新鮮な培地Cを交換のために使用した。その後、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な培地Cを交換のために使用した。6日目に、新鮮な、薬物を含有する培地Aを、交換のために使用して、薬物処理を開始し、次いで、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な、薬物を含有する培地Aを交換のために使用し、12日目まで、上清及び細胞を全て、関連する検出のために収集した。検出項目には、HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNAを含めた。検出方法については、実施例1を参照されたい。
【0118】
サザンブロット実験を、10cm2培養プレート上で実施した。約5×106個のHepG2-hNTCP 2B1細胞を各10cm2培養プレート中にプレーティングし、培地Bを添加した。細胞が付着した後、全実験を通じて、ドキシサイクリンによる誘導を行うために培地Aを交換のために使用した。ドキシサイクリンによる誘導の4日後に、HBV感染を行った。感染のためのHBVの量は、1000MOIであった。感染前に、HBVを培地Cで希釈してHBV溶液を得た。感染容量は5mLであった。感染中に、細胞上清を最初に吸引によって除去し、HBV溶液を細胞に添加し、細胞を24時間インキュベートし、次いで上清を0日目の試料として収集した。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、新鮮な培地Aを交換のために使用した。その後、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な培地Aを交換のために使用した。6日目に、新鮮な、薬物を含有する培地を、交換のために使用して、薬物処理を開始し(処理のための薬物濃度は5μMであり、対照群は処理のためにインターフェロンIFNαを500IUの濃度で使用した)、次いで、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な、薬物を含有する培地Aを交換のために使用し、12日目まで、上清及び細胞を全て、サザンブロット検出及び免疫蛍光検出のために収集した。
【0119】
サザンブロット検出
改変Hirt法を使用して、キットを使用することによってHBV cccDNAを抽出した。使用したキットは、Qiagenプラスミドミディキットであった。具体的な抽出操作については、キットのプラスミッド抽出方法を参照されたい。サザンブロットの具体的な工程は以下の通りであった:
a.抽出されたHBV cccDNA試料にローディング緩衝液(TaKaRa Companyから購入)を添加し、次いで、1×TAE緩衝液(40mmol/L Tris塩基、1mmol/L EDTA、20mmol/L酢酸ナトリウム)中で80Vにおける1.2%アガロースゲルによる2時間にわたる電気泳動によって、DNAを分離させた。次いで、ゲルを脱プリン緩衝液(0.2mol/L HCl)に入れ、室温で振盪しながら15分間浸漬し、次いで、滅菌超純水で2回、各回1分間すすいだ。次いで、ゲルを変性緩衝液(0.5mol/L NaOH、1.5mol/L NaCl)中に入れ、室温で振盪しながら30分間浸漬し、次いで滅菌超純水で2回、各回1分間すすぎ、最後に中和緩衝液(1mol/L Tris塩基、1.5mol/L NaCl)中に10分間浸漬した。
【0120】
b.ゲルから膜への転写:ゲルを10×SSC(1.5mol/L NaCl、0.15mol/Lクエン酸三ナトリウム、pH7.0)に5分間浸漬し、その間にろ紙及びナイロン膜(Rocheから購入)を最初に滅菌超純水で湿らせ、次いで10×SSCに浸漬した。真空ブロッティング装置を使用して核酸をナイロン膜に転写した(圧力は5MPaに調整し、転写時間は90分とした)。同時に、ハイブリダイゼーション溶液(DIG Easy Hyb(商標)Granules、Rocheから購入、Art.No.38716500)を42℃において予熱した。転写後、UV架橋機器SiGmA SH4 B型(Shanghai Sigma Co.,Ltdから購入)を使用して、ブロットされたナイロン膜を1.5J/cm2の照射線量下で3分間架橋させた。
【0121】
c.ハイブリダイゼーション:膜を、42℃の予め加温したハイブリダイゼーション溶液に浸漬し、ハイブリダイゼーションオーブンに入れて、42℃で2時間インキュベートした。同時に、プローブを95℃において10分間加熱し、次いで、氷水混合物中に5分間、素早く挿入し(変性を防止するため)、次いでハイブリダイゼーション溶液で希釈し(ハイブリダイゼーション溶液10mL当たり300ngのプローブを添加した)、42℃において12時間、膜とハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションが完了した後、膜を洗浄緩衝液I(2×SSC、0.1% SDS)で室温において3回、各回5分間洗浄し、次いで洗浄緩衝液II(0.5×SSC、0.1% SDS)で65℃において3回、各回15分間洗浄した。
【0122】
d.抗体のインキュベーション:最初に、膜をマレイン酸緩衝液(0.1mol/Lマレイン酸、0.15mol/L NaCl、pH7.5)中に2分間浸漬し、次いで1×遮断緩衝液(SIGMA-ALDRICHから購入、Art.No.B6429-500ML)(マレイン酸緩衝液で希釈)で室温において1時間遮断した。遮断後、抗Dig-AP抗体(SIGMA-ALDRICHから購入、Art.No.Roche-11093274910)を1×遮断緩衝液で希釈し、膜及び抗体を室温で40分間インキュベートした。インキュベーション後、膜をすすぎ溶液(0.1mol/Lマレイン酸、0.15mol/L NaCl、0.3容量% Tween 20、pH7.5)で室温において3回、各回15分間洗浄した。
【0123】
e.検出:最初に、膜を平衡溶液(0.1mol/L Tris塩基、0.1mol/L NaCl、pH9.5)中に3分間浸漬し、次いで膜を取り出し、発色基質(CDP-star、Rocheから購入)を膜に添加し、最後に生体分子撮像装置(ImageQuant LAS 4000 mini、GE)上で露光した。
【0124】
免疫蛍光検出
この実験に関係するHBcAg免疫蛍光染色は、付着細胞に対して直接行った。以下の操作を振盪機上において100rpm/分で行った。細胞培養プレート中の細胞を、PBSで1回洗浄した。固定:4%パラホルムアルデヒド(Beyotimeから購入、Art.No.P0099-100ml)を添加して、細胞を被覆し、次いで、細胞を暗所において室温で10分間インキュベートした。洗浄:細胞をPBSで3回、各回3分間洗浄した。透過処理:0.2% Triton X-100(AMRESCOから購入)を添加し、細胞を室温で10分間インキュベートした。洗浄:細胞をPBSで3回、各回3分間洗浄した。遮断:3% BSA(SIGMA-ALDRICHから購入したBSA粉末を3g秤量し、100mLのPBSに溶解させた)を添加し、細胞を、室温で60分間又は4℃で終夜インキュベートした。一次抗体:抗HBcAg(2A7、マウス抗体)を3% BSAで1:1000の比で希釈し、次いでウェルにウェル当たり200μLで添加し、次いで細胞を室温で1時間又は4℃で終夜インキュベートした。洗浄:細胞をPBSで3回、各回3分間洗浄した。二次抗体:二次抗体(Alexa Fluor(登録商標)488ロバ抗ウサギIgG(H+L)(Invitrogen))を3%BSAで1:1000の比で希釈し、次いでウェルにウェル当たり200μLで添加し、次いで細胞を室温で30分間インキュベートした。洗浄:細胞をPBSで3回、各回3分間洗浄した。核染色:DAPI(Invitrogen)を3% BSAで1:2000の比で希釈し、次いでウェルにウェル当たり200μLで添加し、次いで細胞を室温で5分間インキュベートした。洗浄:細胞をPBSで3回、各回3分間洗浄した。写真撮影:ハイコンテント共焦点顕微鏡(PerkinElmer、Operetta CLS)を用いて写真撮影を行い、緑色蛍光の平均蛍光強度を分析した。
【0125】
実験結果を
図4に示した。結果から、HBV感染の6日後に行った薬物処理後に、高濃度のパロバロテンはHBeAgに対して有意な阻害効果を有し(p<0.05)、HBV DNA(p<0.05)及びHBV cccDNA(p<0.05)のレベルを有意に低下させることができるのに対し、対照群(ETV)及びブランク群は有意差を示さないことが示された。サザンブロットの結果から、5μMの濃度での薬物処理後のHBV cccDNAのレベルは、対照群及び薬物を含まないブランク群におけるインターフェロン処理のHBV cccDNAのレベルよりも有意に低いことが示された。免疫蛍光の結果から、パロバロテンは、感染後のHepG2-hNTCP 2B1細胞中のHBcAgの陽性率を有意に低下させることができることが示された。これは、薬物処理がHBV感染を阻害することができたことを示している。
【0126】
高濃度パロバロテン処理は、感染後のHBVウイルス複製及びe抗原レベルを有意に阻害できた。
【0127】
実施例4.高レベルのHBV DNAを産生できるHepAD38に対する、試験薬物の治療効果の評価
HepAD38はHBVゲノムを安定に組み込む肝細胞癌細胞株(D遺伝子型)であり、テトラサイクリンで制御され得る条件下でHBVを発現する。テトラサイクリンの存在下では、この細胞株は、HBV pgRNA合成の抑制のため、ウイルス粒子を合成せず、テトラサイクリンの非存在下では、HepAD38細胞株はHBV pgRNAを転写し、サブウイルス粒子を合成し、細胞上清中にビリオン様粒子を分泌する。HepAD38はHepG2.2.15の約10倍のDNAレベルを有し、したがって高コピーHBVインビトロ複製細胞モデルである(この細胞モデルの作製方法については、Ladner SK、Otto MJ、Barker CSら Inducible expression of human hepatitis B virus (HBV) in stably transfected hepatoblastoma cells: a novel system for screening potential inhibitors of HBV replication.Antimicrob Agents Chemother.1997年;41巻(8号):1715~1720頁を参照されたい)。
【0128】
この実験は、24ウェル培養プレートにおいて実施した。実験群の各試験薬物は、1μM及び5μMの2つの最終濃度を有し、陽性対照群のETVは、最終濃度が1μMであった。ここで、試験薬物及び陽性対照薬物は、所望の濃度まで培地F希釈し、ブランク群には、薬物を含まない同一容量の培地Fを添加した。約4×105個のHepAD38細胞を各ウェルにプレーティングし、500μLの、テトラサイクリン塩酸塩(テトラサイクリン)を含有する培地Gを各ウェルに添加し、細胞をプレーティングしてから48時間後を0日目と設定し、テトラサイクリン塩酸塩(テトラサイクリン)を含有する培地Gを同時に除去し、新鮮な、薬物を含有する培地Fを交換のために使用し、次いで、新鮮な、薬物を含有する培地Fを8日目まで2日毎に交換のために使用し、細胞上清中のHBsAgのレベル及び細胞内HBV DNAのレベルを8日目に検出した。検出のための方法については、実施例1を参照されたい。
【0129】
サザンブロット実験を、6cm2培養プレート上で行った。約4.2×106個のHepAD38細胞を各6cm2培養プレート中にプレーティングし、テトラサイクリン塩酸塩(テトラサイクリン)を含有する培地Gを添加した。実験の間に、テトラサイクリン塩酸塩を含有する培地Gを除去し、同時に、薬物処理のために、薬物を含有する培地Fを添加した。ここで、試験薬物パロバロテンの処理濃度は5μMであり、対照群は処理のためにエンテカビル(ETV)を5μMの濃度で使用し、処理時間は8日間であった。
【0130】
具体的なサザンブロット検出方法は、実施例3を参照して実施した。
結果を
図5に示した。結果から、5μMの濃度のパロバロテンは複製モデルHepAD38の表面抗原産生(p<0.01)及びHBV DNA(p<0.05)に対して有意な阻害効果を有することが示された。サザンブロットの結果から、この薬物はHBV cccDNAのレベルを有意に阻害することができるが、阻害効果は対照群(ETV)の阻害効果より劣っていることが示された。
【0131】
パロバロテン処理は、複製モデルHepAD38においてウイルス複製レベルを有意に阻害することができた。
【0132】
実施例5:ヒト初代培養肝細胞における、試験薬物のHBV感染に対する阻害効果の評価
この実験において、実験群、陽性対照群及びブランク群を設定した。ここで、実験群の各試験薬物(パロバロテン)は、1μM、5μM及び25μMの3つの最終濃度を有し、陽性対照群のETVは、最終濃度が1μMであった。ここで、試験薬物及び陽性対照薬物は、所望の濃度まで培地Hで希釈し、ブランク群には、薬物を含まない同一容量の培地Hを添加した。
【0133】
初代ヒト培養肝細胞を移植したヒト化マウスから、灌流技術によって初代培養肝細胞を単離し(Foquet, Landerら「Successful engraftment of human hepatocytes in uPA-SCID and FRG(登録商標)KO mice」Hepatocyte Transplantation. Humana Press、New York、NY、2017年、117~130頁;Wan-Chun Liら「Isolation and Culture of Adult Mouse Hepatocytes」Mouse Cell Culture. Humana Press、2010年.185~196頁を参照のこと)、計数(ウェル当たりの約5×105個の初代培養肝細胞)後に24ウェルプレート(コラーゲンIプレコート24ウェルプレート、Thermo Scientificから購入)中で直接培養し、肝細胞形態を維持するために培地Hを添加した(Xiang,Chengangら「Long-term functional maintenance of primary human hepatocytes in vitro」Science 364.6438(2019年):399~402頁を参照のこと)。24時間培養後に、薬物を含有する培地Hを使用して薬物を含有しない培地Hを交換して、24時間にわたって薬物処理を行い、次いでHBVにより感染を実施した。各ウェル中における感染のためのHBVの量は2000MOIであった。感染前に、HBVを最初に培地Iで希釈してHBV溶液を得た。感染容量は250μL/ウェルであった。感染中に、細胞上清を最初に吸引によって除去し、HBV溶液を細胞に添加し、細胞を24時間インキュベートし、次いで上清を0日目の試料として収集した。次いで、細胞を37℃の浴中で加温したPBSで3回洗浄し、新鮮な、薬物を含有する培地H(ウェル当たり500μL)を交換のために使用し、次いで、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な、薬物を含有する培地Hを交換のために使用し、8日目まで、上清及び細胞を全て、関連する検出のために収集した。検出項目には、HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNAを含めた。検出方法については、実施例1を参照されたい。
【0134】
実験結果を
図6に示した。結果から、ヒト初代培養肝細胞において、感染前のパロバロテン処理は、細胞上清中のHBsAg(p<0.05)及びHBeAg(p<0.05)のレベル並びに細胞内HBV DNA(p<0.05)及びcccDNA(p<0.05)のレベルを有意に阻害できることが示された。
【0135】
パロバロテン処理は、HBVの初代ヒト培養肝細胞への感染を有意に阻害することができた。
【0136】
実施例6:HBVに感染したヒト初代培養肝細胞に対する、試験薬物の治療効果の評価
この実験において、実験群、陽性対照群及びブランク群を設定した。ここで、実験群の各試験薬物(パロバロテン)は、1μM、5μM及び25μMの3つの最終濃度を有し、陽性対照群のETVは、最終濃度が1μMであった。試験薬物及び陽性対照薬物は、必要濃度まで培地Hで希釈し、ブランク群には、薬物を含まない同一容量の培地Hを添加した。
【0137】
初代ヒト培養肝細胞を移植したヒト化マウスから、灌流技術によって初代培養肝細胞を単離し、計数(ウェル当たりの5×105個の初代培養肝細胞)後に24ウェルプレート中で直接培養し、肝細胞形態を維持するために培地Hを添加した。培養から24時間後に、HBVによる感染を行った。各ウェル中における感染のためのHBVの量は2000MOIであった。感染前に、HBVを最初に培地Iに溶解させてHBV溶液を得た。感染容量は250μL/ウェルであった。感染中に、細胞上清を最初に吸引によって除去し、HBV溶液を細胞に添加し、細胞を24時間インキュベートし、次いで上清を0日目の試料として収集した。次いで、検出のために上清を2日毎に収集し、新鮮な培地Hを交換のために使用した。8日目に、新鮮な、薬物を含有する培地Hを交換のために使用して、薬物処理を開始し、14日目まで、上清及び細胞を全て、関連する検出のために収集した。検出項目には、HBsAg、HBeAg、HBV DNA、HBV cccDNAを含めた。検出方法については、実施例1を参照されたい。
【0138】
実験結果を
図7に示した。結果から、感染の8日後に処理のために薬物を添加した場合、パロバロテンが細胞上清中のHBeAg(p<0.05)及びHBsAg(p<0.05)のレベルを有意に阻害すること、並びに5μM及び25μMの濃度のパロバロテンの阻害効果がより明白であることが示された。25μMの濃度では、パロバロテンはHBV cccDNA(p<0.01)及びHBV DNA(p<0.05)に対する有意な阻害効果を有していた。
【0139】
パロバロテン処理は、HBVウイルス複製並びにHBVに感染したヒト初代培養肝細胞のe抗原及び表面抗原レベルを有意に阻害することができた。
【0140】
実施例7:HBVインビトロ細胞モデルにおける試験薬物の安全性評価
この実験は、96ウェル培養プレートにおいて実施した。8×104個の対応する細胞を各ウェルにプレーティングした。対応する培地容量は100μLであった。ここで、HepG2-hNTCP 2B1、HepaRG M14A及び初代培養肝細胞実験群における各試験薬物は1μM、5μM及び25μMの3つの最終濃度を有し、HepAD38細胞実験群における各試験薬物は1μM及び5μMの2つの最終濃度を有し(薬物は、最終濃度まで対応する培地で希釈した;実施例1、実施例2、実施例4及び実施例5を参照されたい)、ブランク群には、薬物を含まない同一容量の培地を添加した。細胞が好適な密度まで増殖した後、薬物を添加して、6日間にわたって処理を行い、その間に、培地を2日毎に新鮮な、薬物を含有する培地と取り替えた。薬物処理後、110μLの、Beyotime CCK-8細胞活性検出試薬(Beyotimeから購入、Art.No.C0038)(培地対CCK-8試薬の容量比は100:10であった)を交換のために使用し、細胞を37℃において30分間インキュベートし、次いで、全ての上清を吸光度の検出のために収集した。吸光度値は、Zhengzhou Autobioから購入したPHOMOマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0141】
結果を
図8に示した。結果から、HepG2 hNTCP 2B1、HepaRG M14a、HepAD38及びヒト初代培養肝細胞を1μM、5μM及び25μMの濃度の薬物パロバロテンで処理した後、各実験群のCCK-8吸収度値は、ブランク群の吸光度値と有意差がないことが示された。これは、この薬物がこれらの濃度で細胞活性に対して有意な効果を有さないことを示唆している。
【0142】
本出願の実施例から、式Iの化合物(パロバロテンを含む)は、インビトロ研究モデルにおいて、細胞培養物上清におけるHBsAg及びHBeAgのレベル並びに細胞内HBV DNA及びcccDNA のレベルを有意に低下させることができ、5μMの薬物用量での処理は細胞の抗ウイルス療法においてより良好な効果を達成できることが示された。この薬物は、B型肝炎ウイルスに対する治療薬として開発される可能性がある。
【0143】
最後に、上記実施例は、本出願を限定するためではなく本出願の技術的解決法を例示するためにのみ使用されていることに留意すべきである。本出願を、好ましい実施例を参照して詳述したが、当業者ならば、本出願の特定の実施形態は変更し得る又は一部の技術的特徴は均等に置き換え得ることがわかるはずである。本出願の技術的解決法の趣旨から逸脱することなく、それらの全ては、本出願において特許請求の範囲に記載した技術的解決法の範囲に含まれるべきである。