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特許7619608解除阻止手段を備えるロック機構とこれを内蔵するロックプレート、及び、このロックプレートを使用するロック機能付き薄型ケース
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】解除阻止手段を備えるロック機構とこれを内蔵するロックプレート、及び、このロックプレートを使用するロック機能付き薄型ケース
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/57 20060101AFI20250115BHJP
   G11B 23/03 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B65D85/57 C
G11B23/03 601C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020219948
(22)【出願日】2020-12-30
(65)【公開番号】P2022104849
(43)【公開日】2022-07-12
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】595049622
【氏名又は名称】株式会社ジャストコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100124718
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 建
(74)【代理人】
【識別番号】100136216
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】滝波 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 博志
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-118789(JP,A)
【文献】特開2007-284102(JP,A)
【文献】特開2006-051954(JP,A)
【文献】特開2009-029505(JP,A)
【文献】特開2004-250075(JP,A)
【文献】特開2012-206756(JP,A)
【文献】特開2002-150444(JP,A)
【文献】特開2001-072171(JP,A)
【文献】特開2005-186950(JP,A)
【文献】登録実用新案第3231151(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0000797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/57
G11B 23/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの辺部を備える矩形のベース面と、該4つの辺部に該ベース面から立設された4つの側壁とを夫々有する本体及び蓋体が、相互に隣り合う側壁に設けた連結部で開閉可能に連結され、
本体及び蓋体の夫々のベース面には、ロック爪を備えるロック機構を内蔵したロックプレートが貫通し得る中空嵌合部を有するロックプレート収容領域LRとディスク状記憶媒体(以下、「記憶媒体」ともいう。)を収容可能なディスク状記憶媒体収容領域DR(以下、「記憶媒体収容領域DR」ともいう。)とが、隣接して形成されており、該連結部を軸にして蓋体を本体に閉じた状態(以下、「閉状態」ともいう。)で、
蓋体と本体のロックプレート収容領域LRが、前記ロック爪を係止する複数の爪係止部を有するロックプレート収容空間LS(以下、「収容空間LS」ともいう。)を形成し、
収容空間LSに、前記ロックプレートを、収容空間LSに通じる開口部からスライドさせて嵌入することで、蓋体及び本体の前記中空嵌合部を該ロックプレートが貫通して蓋体と本体とをロックすると共に、前記複数の爪係止部に該ロック爪が係止されて、該ロックプレートを収容空間LSにロックすることができる、厚さ5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケースにおいて、
前記ロック機構は、
厚さ3mm~5mmのロックプレートを構成する挿入プレートを構成するロック面とこれと対向する基底面、及びこの両面を接続する側面(長手側面、短手側面)で囲まれるロック機構内蔵空間LMS内部に内蔵され、
ロック機構内蔵空間LMS内部に片持ち梁式に弾性支持され、先端に前記爪係止部に係止可能なロック爪を有し、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体から成る複数のアームを備え、
閉状態の前記開口部から収容空間LSに該ロックプレートを嵌入したロック状態で、該複数のアームの夫々のロック爪が該ロック面から突出して、収容空間LSに形成された複数の爪係止部に夫々係止され、
前記連結部と対向する側壁に解除用マグネットを当接させると、該解除用マグネットが含む磁石の磁気力を該複数のアームに作用させることで、該複数のアームの先端を弾性力に抗して磁石に引き寄せて、本体ベース面の記憶媒体収容領域DRとの間に立設されてロックプレート収容領域LRを構成するロック壁に設けた爪係止部から夫々のロック爪を解除可能であるとともに、
前記複数のアーム中の少なくとも1つの特定のアームに近接して設けられ、該特定のアームのロック解除を阻止可能なロック解除阻止手段を備え、
前記側壁に不正解除用マグネットを当接させると、該特定のアームのロック解除を阻止し得る、解除阻止手段を有するロック機構であって、
前記ロック解除阻止手段は、
厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成された短腕と長腕とが前記ロック機構内蔵空間LMS内部に軸支された磁気レバーであり、
該短腕の先端が前記特定のアームの先端より基底面側に位置するように配置され、
前記側壁に当てた不正解除用マグネットの磁力により、該長腕がマグネットに引き寄せられると、該短腕が該特定のアームの移動を阻害して、該特定のアームのロック解除を阻止するとともに、
解除用マグネットを側壁に適切に当接させた際、磁気レバーの長腕が解除用マグネットに引き寄せられない程度に、長腕側に配置された特定のアームとは異なるアームから離間した位置に配置する
ことを特徴とする、解除阻止手段を備えるロック機構。
【請求項2】
前記アーム及び前記磁気レバーは、共に厚さ0.5mm~2.5mmの磁化し得る薄板状磁性体により形成された、請求項1に記載の解除阻止手段を備えるロック機構。
【請求項3】
前記アーム及び前記磁気レバーは、ステンレス鋼により形成された、請求項1に記載の解除阻止手段を備えるロック機構。
【請求項4】
前記アーム及び前記磁気レバーを、薄板状磁性体により厚さ0.5mm~2.5mmに形成し、該アーム及び該磁気レバーを備えるロック機構を内蔵したロックプレートの厚さを3mm~5mmに構成することにより、厚さ5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケースに該ロックプレートを嵌入可能な、請求項1に記載の解除阻止手段を備えるロック機構。
【請求項5】
表面にタグシールを貼付可能な基部プレートと、該基部プレートの端から直角に伸長する前記挿入プレートとから構成される略L字型であり、
該挿入プレートは、前記ロック爪が突出し得るロック面、これと対向する基底面、及びこの両面を接続する側面(長手側面、短手側面)で囲まれるロック機構内蔵空間LMSをその内部に有し、このロック機構内蔵空間LMS内部に、請求項1乃至4に記載の解除阻止手段を備えるロック機構を内蔵するロックプレートであって、
前記ロック機構を構成する前記アーム及び前記磁気レバーを、厚さ0.5mm~1.5mmの薄板状磁性体により形成することにより、厚さ3mm~4mmとしたことを特徴とするロックプレート。
【請求項6】
4つの辺部を備える矩形のベース面と、該4つの辺部に該ベース面から立設された4つの側壁とを夫々有する本体及び蓋体が、相互に隣り合う側壁に設けた連結部で開閉可能に連結され、
本体及び蓋体の夫々のベース面には、ロック爪を備えるロック機構を内蔵したロックプレートが貫通し得る中空嵌合部を有するロックプレート収容領域LRと記憶媒体収容領域DRとが重なり合わないように隣接して形成されており、
本体のロックプレート収容領域LRは、前記連結部と対向する辺部側に設けられたガイド溝及びこれに隣接するコーナーを削切した切欠き部から成り、該ガイド溝は、ベース面から立設された前記側壁と、これと平行に該ベース面から立設されて、複数の爪係止部がその側壁側に設けられたロック壁とから構成され、
蓋体のロックプレート収容領域LRは、閉状態で夫々本体のガイド溝及び切欠き部に対向する位置に設けられたガイド蓋及び前記連結部と対向する辺部に隣接する辺部の側壁に前記開口部を有する基部プレート収容部から成り、
閉状態で本体及び蓋体のロックプレート収容領域LRにより形成されるロックプレート収容空間LSに、請求項5に記載の厚さ3mm~4mmのロックプレートを嵌入可能な薄型ケースであって、
前記挿入プレートを、閉状態で、前記切欠き部に嵌合した前記基部プレート収容部の開口部から、そのロック面を前記ロック壁に、その基底面を前記側壁に当接させながら該ガイド溝に沿ってスライドさせてロックプレート収容空間LSに挿入させ、該基部プレートを該切欠き部に嵌合させてロック状態を形成し、
蓋体及び本体の中空嵌合部を貫通して蓋体と本体とをロックすると共に、前記複数の爪係止部に前記ロック爪が係止されて、該ロックプレートを収容空間LSにロックすることができる、厚さ5mm~6.5mmのロック機能付き薄型ケース。
【請求項7】
蓋体側表面と本体側表面とを有し、
前記ロック爪が突出し得るロック面、これと対向する基底面、及びこの両面を接続する側面(長手側面、短手側面)で囲まれるロック機構内蔵空間LMSを内蔵し、基端と先端を有する前記挿入プレートと、
該挿入プレートの基端から該挿入プレートと直角に伸長する把持プレートと、
蓋体側から平面視で、該挿入プレートの蓋体側表面からこれと略面一に、ロック面からロック爪が突出し得るようにロック機構内蔵空間LMSを覆って該挿入プレートと直角方向に延伸し、この両プレート間に張られる平面を形成する、蓋体側表面にタグシールを貼付可能な厚さ0.5mm~1mmの薄板状プレートと、から構成され、
ロック機構内蔵空間LMS内部に、請求項1乃至4に記載の解除阻止手段を備えるロック機構を内蔵したロック機構を内蔵するロックプレートであって、
前記ロック機構を構成する前記アーム及び前記磁気レバーを、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成することにより、厚さ3.5mm~5mmとしたことを特徴とするロックプレート。
【請求項8】
前記薄板状プレートは、
前記挿入プレートが内蔵するロック機構内蔵空間LMSを囲む先端側の短手側面付近から、該挿入プレートの蓋体側表面と略面一に、該挿入プレートと直角方向に延伸しており、該薄板状プレートの先端側の縁から該挿入プレートと平行に突出した嵌合棒を備える、
請求項7に記載のロックプレート。
【請求項9】
4つの辺部を備える矩形のベース面と、該4つの辺部に該ベース面から立設された4つの側壁とを夫々有する本体及び蓋体が、相互に隣り合う側壁に設けた連結部で開閉可能に連結され、
本体及び蓋体の夫々のベース面には、ロック爪を備えるロック機構を内蔵したロックプレートが貫通し得る中空嵌合部を有するロックプレート収容領域LRと記憶媒体収容領域DRとが一部重なり合って隣接して形成されており、
本体のロックプレート収容領域LRは、前記連結部と対向する辺部側に設けられたガイド溝を有し、該ガイド溝は、ベース面から立設された前記側壁と、これと平行に該ベース面から立設されて、複数の爪係止部が該側壁側に設けられたロック壁とから構成され、
蓋体のロックプレート収容領域LRは、閉状態で本体のガイド溝、及び、前記ロックプレートの厚さ0.5mm~1mmの薄板状プレートと対向するように、記憶媒体収容領域DRの一部を侵食して形成され、該ロックプレートの把持プレートが嵌合する開口部を有し、
閉状態で本体及び蓋体のロックプレート収容領域LRにより形成されるロックプレート収容空間LSに、請求項7に記載の厚さ3.5mm~5mmのロックプレートを嵌入可能な薄型ケースであって、
前記挿入プレートを、閉状態で、前記開口部から、そのロック面を前記ロック壁に、その基底面を前記側壁に当接させながらスライドさせて前記ガイド溝に挿入させ、前記把持プレートを前記開口部に嵌合させてロック状態を形成し、
該挿入プレート又は該薄板状プレートの先端側の縁から該挿入プレートと平行に突出した嵌合棒が、蓋体及び本体の中空嵌合部を貫通して蓋体と本体とをロックすると共に、前記複数の爪係止部に前記ロック爪が係止されて、該ロックプレートを収容空間LSにロックすることができる、厚さ5.5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケース。
【請求項10】
ディスク状記憶媒体を収容する請求項9に記載のロック機能付き薄型ケースにおいて、
本体のベース面中央部にはディスク状記憶媒体の中央部が載る載置面を有する受け台座を設け、
同じく蓋体のベース面中央部には別のディスク状記憶媒体の中央部が載る載置面を有する受け台座を設けると共に、
両受け台座の向きは互いに垂直方向を成し、
該両受け台座の載置面中央には2本のスリット溝が所定の間隔をおいて形成され、両スリット溝にて挟まれて形成された両弾性アーム状台座先端には係合凸部を対にして突出させ、更に前記両弾性アーム状台座とは独立して撓む係合ツメを係合凸部と対を成して設けたロック機能付き薄型ケースであって、
前記係合ツメの先端を係合凸部の上面より突出させ、蓋体を閉じた場合に係合ツメ先端が対向側の係合凸部側面に係止するようにした、ロック機能付き薄型ケース。
【請求項11】
前記解除用マグネットを前記側壁に適切に当接させると、前記アームが該解除用マグネットの磁力により引き寄せられ、前記複数の爪係止部に係止されていた前記ロック爪の係止が解除され、
前記不正解除用マグネットを前記側壁に当接させると、前記ロック解除阻止手段が前記特定のアームのロック解除を阻止し得る、請求項6,請求項9,請求項10に記載のロック機能付き薄型ケース。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶媒体を収容する解除阻止手段を備えるロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図13はビデオ等のレンタルショップにおいて、陳列棚に陳列されるレンタル用ケース(イ)の形態を示している。レンタル用ケース(イ)は一回り大きな陳列用カバーケース(ロ)に収容されると共に、上部開口から上端部が突出した状態で入れられ、多数の陳列用カバーケース(ロ)、(ロ)・・・が陳列棚に整然と陳列される。以下、簡単のため、「レンタル用ケース」(イ)及び「陳列用カバーケース」(ロ)を、夫々、「内ケース」(イ)及び「外ケース」(ロ)とも呼ぶこともある。
【0003】
レンタルショップに訪れる客は外ケース(ロ)に収容されている内ケース(イ)を抜き取って借りることが出来る。内ケース(イ)の内部にはCDやDVD等のディスク状記憶媒体(以下、単に「記憶媒体」ともいう。)1000が収容されているが、所定の手続を経ないでレンタルショップから持ち出すことが出来ないように、すなわち盗難を防止する為に、開かないようにロックされていると共に、タグシールが貼着されていて警報装置が作動する(図14参照)。
【0004】
特許文献1に係る「盗難防止機能を備えたDVD等の貸出しケース」は、レンタルショップの棚に陳列したDVD等が盗難に遭わないように盗難防止機能を備えた貸出しケースであって、顧客がカウンターに持ち運んだ貸出しケースのロックを素早く解錠出来ると共に、複数枚のケースを重ねて同時に解錠可能なDVD等の貸出しケースである。そこで、このケースは本体ケースと蓋から成り、ケースの側面開口からロック板をロック板嵌入空間にスライドして嵌入することで蓋が開かない構造とし、その為にロック板の両挟持片を蓋と本体ケースに形成したガイド溝に嵌め、又ロック機構を内蔵するロック板の側縁にはケースから突出するツメを設けている(図11参照)。このロック機構は、図11のように、ロック板7内部において、基部を中心として撓み変形する板バネ801に、本体ケースの爪係止部に係止するロック爪801Lを設けた構造である。
【0005】
このため、特許文献1に係る貸出しケース(内ケース(イ))は、板バネ801を含むロック機構を内蔵するのでロック板(ロックプレート7)は厚くなり、これを嵌入する貸出しケース(内ケース(イ))の厚さも厚くなる。そのため、外ケース(ロ)も必然的に幅厚となる。
【0006】
従来、この外ケース(ロ)の厚さは15~15.5mmであり、この厚さは、販売用に使用されている厚さ14~15mmのDVDカバーケース(通称トールケース又はアマレーケース)の厚さを踏襲したものである。当初はDVDカバーケースの大きさが既成概念化していたため、外ケース(ロ)も販売用DVDカバーケースと同じ大きさ(厚さ)が採用されていた。すなわち、従来、ビデオレンタル店舗では、DVDケースの展示数も既製化された展示什器、誘導路確保(消防法等)のための展示方式も規定されており、外ケース(ロ)の厚さは上記のように15mm前後と、既成概念のみで構成されていた。そして、陳列数を増やすのであれば、店舗の大型化やレンタルDVD以外の物販品を減らさないと対応が不可能であった。
【0007】
しかし、その後、ビデオレンタル店舗の普及にしたがいDVDメディアも多様化され、顧客要求も多い状況となり、(1)DVDディスクを収納する、(2)盗難防止機構を設ける、(3)内ケース(イ)を外ケース(ロ)に挿入する、(4)外ケース(ロ)の表面にタイトル紙表示を行う、(5)展示什器の棚板陳列奥行を超えないよう既存の外ケース(ロ)の横幅程度に抑える、(6)展示什器の耐荷重を超えない、などの基本仕様が打ち出された。そして、この基本仕様を守り最適化すれば、厚さ15mmに拘らなくとも新しい外ケース(ロ)及び内ケース(イ)が開発可能となった。
【0008】
そこで、外ケース(ロ)の薄型化を試行錯誤した結果、外ケース(ロ)の厚さは最薄11mmになるが、その厚さが12mm未満ではタイトル紙が入らないうえ、入ったとしても厚み部が狭いためタイトル紙の背表紙が見えにくい。これに加えて、11mm厚では展示什器の棚板に載せる展示数が多くなりすぎて展示什器の耐荷重を超えてしまう。更に、特許文献2に係る収納ケースのように(図8(a)、(b)参照)、本体と蓋とに夫々記録媒体を収容可能な構成とするためにも、外ケース(ロ)の厚さは12mm以上が必要だが、この場合、内ケース(イ)の厚さは8mm未満とすることが必要となる。
【0009】
ところが、従来の板バネを用いたロックプレートでは厚さが7mmあるため、厚さ8mm未満の内ケース(イ)には使用できず、ロックプレートの構成、構造の設計を変更する必要が生じた。そして、厚さ8mm未満の内ケース(イ)に適用可能なロックプレートの厚さは5mm以下であることが要求される。
【0010】
一方で、盗難のため用意される長磁石(以下、「不正解除用マグネット」ともいう。)によりロックが解除されて、収容した記憶媒体1000を盗難されることを防ぐため、特許文献3に係る発明は、「金属片を備えたシーソー部材を備えたことにより、アームの動きを制限するし、よって不正解除用マグネット(長磁石)ではロックが解除を抑制し、また、振り子部材を備えることにより、衝撃を加えた場合にもロックが解除されにくいロック機能付き円盤状記録媒体の収納ケース」を開示している(図12参照)。この特許文献3に係る発明は、内ケース(イ)の薄型化を目的としたものではなかったため、金属片をインサートしたシーソー部材の厚さは約4.7mmとなり、このロック機構を内蔵させたロックプレートの厚さは7.7mmであった。そのため、特許文献3に係るロック機構を内蔵させたロックプレートは、厚さ8mm未満の内ケース(イ)に使用し得る構成ではなかった。なお、以下、図12のようにシーソー部材90がその両端の2つのアーム80に作用する構造を「シーソー構造」とよび、例えば特許文献3に係るロック機構の構成を、「シーソー構造のロック機構」などというものとする。
【0011】
特許文献4に係る発明も、不正解除用マグネット(長磁石)によりロックが解除されて、収容した記憶媒体1000を盗難されることを防ぐためのロック機構を提供しており、特許文献3に係るロック機構とほぼ同一のシーソー構造のロック機構を採用している(図12参照)。
【0012】
上記図12は、これらの特許文献3又は特許文献4に係るシーソー構造のロック機構を模式的に示すものである。図12(a)は、シーソー構造のロック機構のロック状態を示す。正当に作製された解除用の一定間隔に隔てられた2つの磁石(以下、「解除用磁石」ともいう。)をロックプレートに当接させると、図12(b)のように、ロック機構は解除される。しかし、盗難用に用いる長磁石(不正解除用マグネット)をロックプレートに当接させると、図12(c)のように、シーソー部材が磁石に引き付けられてシーソー構造のロック機構は解除されない。
【0013】
そして、特許文献3の請求項5、6には、シーソー部材90及びアーム80は金属でもよいと記載されているように、図12のシーソー部材90及びアーム80を、内ケース(イ)の薄型化に有利な形成された金属により構成すれば、ロックプレートの厚さを5mm以下とすることが可能となった。
【0014】
ところが、シーソー部材及びアームを金属として、特許文献4に係るシーソー構造のロック機構を作製したところ、正当な解除用磁石をロックプレートに当接させても、図12(d)のように、シーソー部材が磁石に引き付けられてロック機構が解除されないというエラーが起こり得ることが分かった。
【0015】
【文献】2002-150444号公報
【文献】2004-250075号公報
【文献】2006-51954号公報
【文献】2007-284102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のような経緯により、陳列本数を多くするため、発明者はロック機能付き内ケースの薄型化に取り組み、厚さが5mm以下のロックプレートを備える厚さ8mm未満のロック機能付き内ケースを実現した。しかし、上述のようなロック機構の脆弱性が露見し、シーソー構造のロック機構を改良する必要が生じた。
【0017】
そこで、本発明は、正当な解除用磁石をロックプレートに当接させれば正常にロック解除を行うと共に、不正解除用マグネット(長磁石)ではロックが解除されない解除阻止手段を備え、厚さが3mm~5mmのロックプレートに内蔵できるロック機構を提供する。そして、このロックプレートを用いることにより厚さが8mm未満のロック機能付き内ケースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構は、4つの辺部を備える矩形のベース面と、該4つの辺部に該ベース面から立設された4つの側壁とを夫々有する本体及び蓋体が、相互に隣り合う側壁に設けた連結部で開閉可能に連結され、本体及び蓋体の夫々のベース面には、ロック爪を備えるロック機構を内蔵したロックプレートが貫通し得る中空嵌合部を有するロックプレート収容領域LRとディスク状記憶媒体(以下、「記憶媒体」ともいう。)を収容可能なディスク状記憶媒体収容領域DR(以下、「記憶媒体収容領域DR」ともいう。)とが隣接して形成されており、該連結部を軸にして蓋体を本体に閉じた状態(以下、「閉状態」ともいう。)で、蓋体と本体のロックプレート収容領域LRが、前記ロック爪を係止する複数の爪係止部を有するロックプレート収容空間LS(以下、「収容空間LS」ともいう。)を形成し、収容空間LSに、前記ロックプレートを、収容空間LSに通じる開口部からスライドさせて嵌入することで、蓋体及び本体の前記中空嵌合部を該ロックプレートが貫通して蓋体と本体とをロックすると共に、前記複数の爪係止部に該ロック爪が係止されて、該ロックプレートを収容空間LSにロックすることができる、厚さ5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケースにおいて、
前記ロック機構は、厚さ3mm~5mmのロックプレートを構成する挿入プレート内に内蔵され、前記挿入プレート内部に片持ち梁式に弾性支持され、先端に前記爪係止部に係止可能なロック爪を有し、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体から成る1又は複数のアームと、前記1又は複数のアーム中の少なくとも1つの特定のアームに近接して設けられ、該特定のアームのロック解除を阻止可能なロック解除阻止手段と、を備え、解除用マグネットを前記連結部と対向する側壁に適切に当接させると、前記アームが該解除用マグネットの磁力により引き寄せられ、前記複数の爪係止部に係止されていた前記ロック爪の係止が解除され、解除用マグネットと異なる不正解除用マグネットを該側壁に当接させると、前記ロック解除阻止手段が前記特定のアームのロック解除を阻止し得る。
【0019】
本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構において、前記ロック機構は、厚さ3mm~5mmのロックプレートを構成する挿入プレートを構成するロック面とこれと対向する基底面、及びこの両面を接続する側面(長手側面、短手側面)で囲まれるロック機構内蔵空間LMS内部に内蔵され、ロック機構内蔵空間LMS内部に片持ち梁式に弾性支持され、先端に前記爪係止部に係止可能なロック爪を有し、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体から成る1又は複数のアームを備え、閉状態の前記開口部から収容空間LSに該ロックプレートを嵌入したロック状態で、該1又は複数のアームの夫々のロック爪が該ロック面から突出して、収容空間LSに形成された複数の爪係止部に夫々係止され、前記連結部と対向する側壁に解除用マグネットを当接させると、該解除用マグネットが含む磁石の磁気力を該1又は複数のアームに作用させることで、該1又は複数のアームの先端を弾性力に抗して磁石に引き寄せて、本体ベース面の記憶媒体収容領域DRとの間に立設されてロックプレート収容領域LRを構成するロック壁に設けた爪係止部から夫々のロック爪を解除可能なロック機構であって、
前記1又は複数のアーム中の少なくとも1つの特定のアームに近接して設けられ、該特定のアームのロック解除を阻止可能なロック解除阻止手段を備え、前記側壁に不正解除用マグネットを当接させると、該特定のアームのロック解除を阻止し得る。
【0020】
本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構において、前記ロック解除阻止手段は、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成された短腕と長腕とが前記ロック機構内蔵空間LMS内部に軸支された磁気レバーであり、該短腕の先端が前記特定のアームの先端より基底面側に位置するように配置され、前記側壁に当てた不正解除用マグネットの磁力により、該長腕がマグネットに引き寄せられると、該短腕が該特定のアームの移動を阻害して、該特定のアームのロック解除を阻止するとともに、
解除用マグネットを側壁に適切に当接させた際、磁気レバーの長腕が解除用マグネットに引き寄せられない程度に、長腕側に配置された特定のアームとは異なるアームから離間した位置に配置することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構において、前記アーム及び前記磁気レバーは、共に厚さ0.5mm~2.5mmの磁化し得る薄板状磁性体により形成される。
【0022】
本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構において、前記アーム及び前記磁気レバーは、ステンレス鋼により形成されてもよい。
【0023】
本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構は、前記アーム及び前記磁気レバーを、薄板状磁性体により厚さ0.5mm~2.5mmに形成し、該アーム及び該磁気レバーを備えるロック機構を内蔵したロックプレートの厚さを3mm~5mmに構成することにより、厚さ5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケースに該ロックプレートを嵌入可能である。
【0024】
本発明に係るロックプレートは、表面にタグシールを貼付可能な基部プレートと、該基部プレートの端から直角に伸長する前記挿入プレートとから構成される略L字型であり、
該挿入プレートは、前記ロック爪が突出し得るロック面、これと対向する基底面、及びこの両面を接続する側面(長手側面、短手側面)で囲まれるロック機構内蔵空間LMSをその内部に有し、このロック機構内蔵空間LMS内部に、上述の解除阻止手段を備えるロック機構を内蔵するロックプレートであって、
前記ロック機構を構成する前記アーム及び前記磁気レバーを、厚さ0.5mm~1.5mmの薄板状磁性体により形成することにより、厚さ3mm~4mmとしたことを特徴とする。
【0025】
本発明に係るロック機能付き薄型ケースは、4つの辺部を備える矩形のベース面と、該4つの辺部に該ベース面から立設された4つの側壁とを夫々有する本体及び蓋体が、相互に隣り合う側壁に設けた連結部で開閉可能に連結され、本体及び蓋体の夫々のベース面には、ロック爪を備えるロック機構を内蔵したロックプレートが貫通し得る中空嵌合部を有するロックプレート収容領域LRと記憶媒体収容領域DRとが重なり合わないように隣接して形成されており、本体のロックプレート収容領域LRは、前記連結部と対向する辺部側に設けられたガイド溝及びこれに隣接するコーナーを削切した切欠き部から成り、該ガイド溝は、ベース面から立設された前記側壁と、これと平行に該ベース面から立設されて、複数の爪係止部がその側壁側に設けられたロック壁とから構成され、蓋体のロックプレート収容領域LRは、閉状態で夫々本体のガイド溝及び切欠き部に対向する位置に設けられたガイド蓋及び前記連結部と対向する辺部に隣接する辺部の側壁に前記開口部を有する基部プレート収容部から成り、閉状態で本体及び蓋体のロックプレート収容領域LRにより形成されるロックプレート収容空間LSに、上述の厚さ3mm~4mmのロックプレートを嵌入可能な薄型ケースであって、
前記挿入プレートを、閉状態で、前記切欠き部に嵌合した前記基部プレート収容部の開口部から、そのロック面を前記ロック壁に、その基底面を前記側壁に当接させながら該ガイド溝に沿ってスライドさせてロックプレート収容空間LSに挿入させ、該基部プレートを該切欠き部に嵌合させてロック状態を形成し、蓋体及び本体の中空嵌合部を貫通して蓋体と本体とをロックすると共に、前記複数の爪係止部に前記ロック爪が係止されて、該ロックプレートを収容空間LSにロックすることができる、厚さ5mm~6.5mmのロック機能付き薄型ケースである。
【0026】
本発明に係るロックプレートは、蓋体側表面と本体側表面とを有し、前記ロック爪が突出し得るロック面、これと対向する基底面、及びこの両面を接続する側面(長手側面、短手側面)で囲まれるロック機構内蔵空間LMSを内蔵し、基端と先端を有する前記挿入プレートと、該挿入プレートの基端から該挿入プレートと直角に伸長する把持プレートと、蓋体側から平面視で、該挿入プレートの蓋体側表面からこれと略面一に、ロック面からロック爪が突出し得るようにロック機構内蔵空間LMSを覆って該挿入プレートと直角方向に延伸し、この両プレート間に張られる平面を形成する、蓋体側表面にタグシールを貼付可能な厚さ0.5mm~1mmの薄板状プレートと、から構成され、ロック機構内蔵空間LMS内部に、上記解除阻止手段を備えるロック機構を内蔵したロック機構を内蔵するロックプレートであって、
前記ロック機構を構成する前記アーム及び前記磁気レバーを、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成することにより、厚さ3.5mm~5mmとしたことを特徴とする。
【0027】
本発明に係るロックプレートは、前記挿入プレートが内蔵するロック機構内蔵空間LMSを囲む先端側の短手側面付近から、該挿入プレートの蓋体側表面と略面一に、該挿入プレートと直角方向に延伸しており、該薄板状プレートの先端側の縁から該挿入プレートと平行に突出した嵌合棒を備えてもよい。
【0028】
本発明に係るロック機能付き薄型ケースは、4つの辺部を備える矩形のベース面と、該4つの辺部に該ベース面から立設された4つの側壁とを夫々有する本体及び蓋体が、相互に隣り合う側壁に設けた連結部で開閉可能に連結され、本体及び蓋体の夫々のベース面には、ロック爪を備えるロック機構を内蔵したロックプレートが貫通し得る中空嵌合部を有するロックプレート収容領域LRと記憶媒体収容領域DRとが一部重なり合って隣接して形成されており、本体のロックプレート収容領域LRは、前記連結部と対向する辺部側に設けられたガイド溝を有し、該ガイド溝は、ベース面から立設された前記側壁と、これと平行に該ベース面から立設されて、複数の爪係止部が該側壁側に設けられたロック壁とから構成され、蓋体のロックプレート収容領域LRは、閉状態で本体のガイド溝、及び、前記ロックプレートの厚さ0.5mm~1mmの薄板状プレートと対向するように、記憶媒体収容領域DRの一部を侵食して形成され、該ロックプレートの把持プレートが嵌合する開口部を有し、閉状態で本体及び蓋体のロックプレート収容領域LRにより形成されるロックプレート収容空間LSに、上記厚さ3.5mm~5mmのロックプレートを嵌入可能な薄型ケースであって、
前記挿入プレートを、閉状態で、前記開口部から、そのロック面を前記ロック壁に、その基底面を前記側壁に当接させながらスライドさせて前記ガイド溝に挿入させ、前記把持プレートを前記開口部に嵌合させてロック状態を形成し、該挿入プレート又は該薄板状プレートの先端側の縁から該挿入プレートと平行に突出した嵌合棒が、蓋体及び本体の中空嵌合部を貫通して蓋体と本体とをロックすると共に、前記複数の爪係止部に前記ロック爪が係止されて、該ロックプレートを収容空間LSにロックすることができる、厚さ5.5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケースであり得る。
【0029】
本発明に係るロック機能付き薄型ケースは、ディスク状記憶媒体を収容する上記ロック機能付き薄型ケースにおいて、本体のベース面中央部にはディスク状記憶媒体の中央部が載る載置面を有する受け台座を設け、同じく蓋体のベース面中央部には別のディスク状記憶媒体の中央部が載る載置面を有する受け台座を設けると共に、両受け台座の向きは互いに垂直方向を成し、該両受け台座の載置面中央には2本のスリット溝が所定の間隔をおいて形成され、両スリット溝にて挟まれて形成された両弾性アーム状台座先端には係合凸部を対にして突出させ、更に前記両弾性アーム状台座とは独立して撓む係合ツメを係合凸部と対を成して設けたロック機能付き薄型ケースであって、
前記係合ツメの先端を係合凸部の上面より突出させ、蓋体を閉じた場合に係合ツメ先端が対向側の係合凸部側面に係止するようにした。
【0030】
本発明に係るロック機能付き薄型ケースは、前記解除用マグネットを前記側壁に適切に当接させると、前記アームが該解除用マグネットの磁力により引き寄せられ、前記複数の爪係止部に係止されていた前記ロック爪の係止が解除され、前記不正解除用マグネットを前記側壁に当接させると、前記ロック解除阻止手段が前記特定のアームのロック解除を阻止し得る。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るロック機構は、本発明に係る厚さ5mm以上8mm未満の薄型ケースに嵌入するロックプレートのロック機構内蔵空間LMS内に内蔵され、先端にロック爪を有して片持ち梁式に弾性支持された1又は複数のアームとロック解除阻止手段(磁気レバー)とを有し、以下のような効果を奏する。
【0032】
すなわち、本発明に係るロック機構は、
(1)薄型ケースの閉状態の開口部からその収容空間LSにロックプレートを嵌入すると、1又は複数のアームの夫々のロック爪がロック面から突出して、収容空間LSに形成された複数の爪係止部に夫々係止されたロック状態を得る。
(2)薄型ケースの側壁(ロック機構内蔵空間LMSの基底面側)に解除用マグネットを当接させると、解除用マグネットが含む磁石の磁気力を1又は複数のアームに作用させることで、1又は複数のアームの先端を弾性力に抗して磁石に引き寄せて、ロック壁に設けた爪係止部から夫々のロック爪を解除することができる。
(3)1又は複数のアーム中の少なくとも1つの特定のアームに近接して設けられ、特定のアームのロック解除を阻止可能なロック解除阻止手段(磁気レバー)を備え、薄型ケースの側壁(ロック機構内蔵空間LMSの基底面側)に不正解除用マグネット(長磁石)を当接させると、特定のアームのロック解除を阻止することができる。
【0033】
このような本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構において、アーム及び/又はロック解除阻止手段(磁気レバー)を、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成することにより、ロック機構を内蔵したロックプレートの厚さを3mm~5mmに構成することができるため、ロック機能付き薄型ケースの側壁方向の厚さを5mm以上8mm未満とすることができる。
【0034】
本発明に係るロックプレートは、上記本発明のロック機構を内蔵したので、その厚さを3mm~5mmに構成することができる。このロックプレートにはタグシールが貼付されており、ロックプレートを抜き取らないで店から薄型ケースごと持ち出せば、該ロックプレートに貼着しているタグシールが警報装置に反応する。
【0035】
本発明に係るロック機能付き薄型ケースは、挿入されるロックプレートはDVDなどディスク状記憶媒体を収容するディスク状記憶媒体収容領域DRと、ロックプレートを嵌入するロックプレート収容領域LRとを重なり合わないようにすることで、その厚さを5mm~6.5mmと薄くすることができ、厚さ3mm~4mmの本発明に係るロックプレートにより盗難を防止することができる。さらに、この厚さを変えることなく、本体及び蓋体のベース面にディスク状記憶媒体を収容する受け台座を設け、2枚のディスク状記憶媒体を収容することができる。
【0036】
また、低価格のサイズの大きいタグシールを貼付したロックプレートを使用する場合には、ディスク状記憶媒体収容領域DRとロックプレート収容領域LRの一部が重なり合うように構成することができるが、この場合でも、厚さ3.5mm~5mmの本発明に係るロックプレートを嵌入可能な、厚さ6.5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケースを提供することができる。
【0037】
以上のように、本発明に係るロック機能付き薄型ケースは、側壁方向の厚さを8mm未満を実現したので、厚さ12mm~12.5mmの陳列用カバーケースに収容可能となり、より多くの陳列用カバーケースを陳列棚に収容することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係るロックプレートの正面図。
図2】本発明に係る解除阻止手段を備えるロック機構において、アームが1つの場合の、(a)ロック状態の正面模式図、(b)ロック解除状態の正面模式図、(c)長磁石によるロック解除阻止状態の正面模式図。
図3】本発明に係る解除阻止手段を備えるロック機構を備える薄型ケースの、開状態における正面図。
図4】本発明に係る解除阻止手段を備えるロック機構を備える薄型ケース(閉状態)の、ロック状態を示す正面図。
図5】実施例に係る解除阻止手段を備えるロック機構において、アームが2つの場合の、(a)ロック状態の正面模式図、(b)ロック解除状態の正面模式図、(c)長磁石によるロック解除阻止状態の正面模式図。
図6】実施例に係る解除阻止手段を備えるロック機構を備える薄型ケースの、開状態における正面図。
図7】実施例に係る解除阻止手段を備えるロック機構を備える薄型ケース(閉状態)の、ロック状態を示す正面図。
図8(a)】実施例に係る解除阻止手段を備えるロック機構を具備する薄型ケースの、本体と蓋体の双方に受け台座を設けた場合の、開状態における正面図。
図8(b)】実施例に係る解除阻止手段を備えるロック機構を具備する薄型ケースの、本体と蓋体の双方に受け台座を設けた場合の、本体の受け台座と蓋体に設けた受け台座の位置関係を表す正面模式図。
図9】(a)実施例に係るロックプレートの正面図、(b)他の実施例に係るロックプレートの正面図。
図10(a)】実施例に係る解除阻止手段を備えるロック機構を備える薄型ケースの、開状態における正面図。
図10(b)】実施例に係る解除阻止手段を備えるロック機構を備える薄型ケースの、記憶媒体を本体と蓋体に収容した(a)の薄型ケースの、開状態における正面図。
図11】従来のロック機構において板バネで構成される金属製アームが1つの場合の、(a)ロック状態の正面模式図、(b)ロック解除状態の正面模式図、(c)長磁石によるロック解除状態の正面模式図。
図12】従来のシーソー構造を備えるロック機構において、(a)ロック状態の正面模式図、(b)ロック解除状態の正面模式図、(c)長磁石によるロック解除阻止状態の正面模式図、(d)ロック解除エラー状態の正面模式図。
図13】DVD、CD等のディスク状記憶媒体を入れたディスクケースが上端を突出して収納されている陳列ケースの外表面斜視図。
図14】本発明に係るロックプレートと半開状態のロック機能付き薄型ケースの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(1)解除阻止手段を備えるロック機構
以下、図面を参照しながら本発明に係る解除阻止手段を備えるロック機構の実施形態、実施例について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。
【0040】
(ロック機能付き薄型ケース)
本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構8は、図1に示すように、厚さ3mm~5mmのロックプレート7の挿入プレート73に内蔵される。そして、図3に示すように、4つの辺部を備える矩形のベース面(2B、3B)と、この4つの辺部にベース面(2B、3B)から立設された4つの側壁((2a、2b、2c、2d)、(3a、3b、3c、3d))とを夫々有する本体2及び蓋体3が、相互に隣り合う側壁(2d、3d)に設けた連結部1Rで開閉可能に連結された厚さ5mm以上8mm未満のロック機能付き薄型ケース1に使用することができる。
【0041】
ロック機能付き薄型ケース1の本体2及び蓋体3の夫々のベース面(2B、3B)には、ロックプレート収容領域LRとディスク状記憶媒体収容領域DR(以下、「記憶媒体収容領域DR」ともいう。)とが隣接して形成されている。そして、夫々のベース面(2B、3B)のロックプレート収容領域(2LR、3LR)は、中空嵌合部(205、305)を有しており、ロック爪80Lを備えるロック機構8を内蔵したロックプレート7を貫通させることができる(図4参照)。また、記憶媒体収容領域DRは、ディスク状記憶媒体(以下、「記憶媒体」ともいう。)1000を収容することができる。
【0042】
このロック機能付き薄型ケース1は、図4のように、連結部1Rを軸にして蓋体3を本体2に閉じた状態(以下、「閉状態」ともいう。)で、蓋体3と本体2のロックプレート収容領域(2LR、3LR)が、ロック爪80Lを係止する複数の爪係止部201を有するロックプレート収容空間LS(以下、「収容空間LS」ともいう。)を形成する。そして、収容空間LSに、ロック機構8を内蔵したロックプレート7を(図1参照)、収容空間LSに通じる開口部1Hからスライドさせて嵌入することで、蓋体3及び本体2の中空嵌合部(205、305)をロックプレート7が貫通して蓋体3と本体2とをロックすることができる。また、同時に、複数の爪係止部201にロック爪80Lが係止されて、ロックプレート7を収容空間LSにロックすることができる(図4参照)。
【0043】
(ロック機構)
ロック機構8は、例えば図1に示すように、厚さ3mm~5mmのロックプレート7を構成する挿入プレート73内に内蔵される。挿入プレート73は、ロック爪80Lが突出し得るロック面73Lとこれと対向する基底面73B、及びこの両面を接続する側面73(長手側面73Sl、短手側面73St)で囲まれるロック機構内蔵空間LMSをその内部に有しており、ロック機構8はロック機構内蔵空間LMSの内部に内蔵される。図1において、ロックプレート7は、挿入プレート73と、その基部に挟持片として設けられた基部プレート71とから構成されており、基部プレート71を把持して挿入プレート73を開口部1Hから挿入し、収容空間LSへ嵌入させることができる。また、基部プレート71に取り付けられたストッパ片72は、後述する解除用マグネット100を係止するために取り付けられる(図2(b)参照)。
【0044】
このような挿入プレート73内に内蔵されるロック機構8は、図1図2(a)又は図5(a)のように、挿入プレート73内部に片持ち梁式に弾性支持され、先端に複数の爪係止部201に係止可能なロック爪80Lを有し、薄板状磁性体から成る1又は複数のアーム80を有する。図1又は図2(a)~(c)はアーム80が1つの場合のロック機構8を、図5(a)~(c)はアーム80が2つの場合ロック機構8を、夫々図示している。
【0045】
以下、説明の便宜のため、アーム80が1つの場合の本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構8について、図1又は図2(a)~(c)を用いて説明する。
【0046】
(アーム)
アーム80は、磁化可能な磁性体により形成され、磁石を近接させることにより磁化されて、当該磁石に引き寄せられる必要がある。本発明に係るロック機構8を構成するアーム80は、例えば厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体をくり抜いて形成するため、厚さ3mm~5mmの挿入プレート73内に内蔵することができる。
【0047】
このような磁化可能な磁性体から形成されるアーム80の材料として、例えばステンレス鋼が好適である。本発明に係るロック機構8において、アーム80は厚さ0.5mm~2.5mmに形成されるため、磁化されても磁力は弱いが、磁束密度が1T近い磁石を用意すれば十分に当該磁石に引き寄せることができる。
【0048】
したがって、図2(b)のように、十分な磁束密度を持つ磁石101が適所に配置された解除用マグネット100を、側壁2a、3aに適切に当接させると(図4参照)、アーム80が磁石101の磁力により引き付けられ、爪係止部201に係止されていたロック爪80Lの係止が解除される。そのため、ロックプレート7を収容空間LSから引き抜くことができ、閉状態のロック機能付き薄型ケース1を開いて内容物の記憶媒体1000を取り出すことができる。
【0049】
(マグネット)
ここで、上記解除用マグネット100とは、ロック機構8ないしロック機能付き薄型ケース1の制作者側が、上述のロック機構8によるロックを解除するために作製したマグネットである。解除用マグネット100は、側壁2a、3aに適切に当接させた際に、アーム80がその磁力により引き付けられる適切な位置に磁石101が配置されており、図2(b)のように、ロック機構8によるロックを解除することができる。これに対して、不正解除用マグネット110は、例えば図2(c)のような長磁石から成り、不正にロック機能付き薄型ケース1のロックを解除しようとする者が準備するマグネットである。
【0050】
(ロック解除阻止手段)
次に、本発明に係るロック機構8のロック解除阻止機能について説明する。本発明に係るロック機構8は、図1又は図2(a)のように、1又は複数のアーム80中の少なくとも1つの特定のアーム80に近接して設けられ、特定のアーム80のロック解除を阻止可能なロック解除阻止手段85を備える。図1又は図2(a)においてアーム80は1つであるので、図示される1つのアーム80が特定のアーム80である。
【0051】
(磁気レバー)
このようなロック解除阻止手段85は、例えば図1に示す磁気レバー86であり、磁気レバー86は、薄板状磁性体により形成された短腕86bと長腕86aとがロック機構内蔵空間LMS内部に軸支される。磁気レバー86は、アーム80と同様に、厚さ0.5mm~2.5mmの磁化可能な薄板状磁性体で形成されるのが望ましい。そして、短腕86bの先端が特定のアーム80の先端より基底面73B側に位置するように配置され(図1参照)、側壁2a、3a(基底面73B側)に当てた不正解除用マグネット110の磁力により、長腕86aがマグネット100に引き寄せられると、短腕86bが特定のアーム80の移動を阻害して、特定のアーム80のロック解除を阻止することができる(図2(c)参照)。
【0052】
(ロック機構の動作)
すなわち、磁気レバー86(ロック解除阻止手段85)は、側壁2a、3a(基底面73B側)に不正解除用マグネット(長磁石)110を当てた際に、図2(c)のように長腕86aが長磁石110に引き付けられるため、短腕86bが特定のアーム80の先端(ロック爪80L)の移動を阻害して、特定のアーム80のロックが解除されるのを阻止することができる。
【0053】
以上のように、本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構8において、アーム80及び/又はロック解除阻止手段85(磁気レバー86)は、ステンレス鋼などの磁化し得る磁性体により形成される。アーム80及び/又はロック解除阻止手段85(磁気レバー86)を、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成すれば、アーム80及び/又は磁気レバー86を備えるロック機構8を内蔵したロックプレート7の厚さを3mm~5mmに構成することができるため、ロック機能付き薄型ケース1の側壁方向の厚さを5mm以上8mm未満とすることができる。
【0054】
以上に説明したロック機構8の機能は、以下のようにまとめることができる。すなわち、本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構8は、
(1)閉状態の開口部1Hから収容空間LSにロックプレート7を嵌入すると、1又は複数のアーム80の夫々のロック爪80Lがロック面73Lから突出して、収容空間LSに形成された複数の爪係止部に夫々係止されたロック状態を得る。
(2)側壁2a、3a(ロック機構内蔵空間LMSの基底面73B側)に解除用マグネット100を当接させると、解除用マグネット100が含む磁石101の磁気力を1又は複数のアーム80に作用させることで、1又は複数のアーム80の先端を弾性力に抗して磁石101に引き寄せて、ロック壁2Lに設けた爪係止部201から夫々のロック爪80Lを解除することができる。
(3)1又は複数のアーム80中の少なくとも1つの特定のアーム80に近接して設けられ、特定のアームのロック解除を阻止可能なロック解除阻止手段85(磁気レバー86)を備え、側壁2a、3aに不正解除用マグネット(長磁石)110を当接させると、特定のアーム80のロック解除を阻止することができる。

(2)実施例
【0055】
さらに、本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構8について、これを内蔵するロックプレート7、及び、このロックプレート7を用いるロック機能付き薄型ケース1と共に、実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0056】
実施例1において、ロックプレート7は、図5(a)~(c)に示すように、表面にタグシールを貼付可能な基部プレート71と、基部プレート71の端から直角に伸長する挿入プレート73とから構成される、厚さ3mm~5mmの略L字型である。そして、挿入プレート73は、ロック爪80Lが突出し得るロック面73Lとこれと対向する基底面73B、及びこの両面を接続する側面73(長手側面73Sl、短手側面73St)で囲まれるロック機構内蔵空間LMSをその内部に有している。
【0057】
実施例1に係る解除阻止手段を有するロック機構8は、このロック機構内蔵空間LMS内部に内蔵され、2つのアーム80と磁気レバー86(ロック解除阻止手段85)から構成される。2つのアーム80と磁気レバー86とは、上記のように、ステンレス鋼などの厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成される。
【0058】
(ロック解除及びロック解除阻止の機構)
実施例1に係る解除阻止手段を有するロック機構8は、上述のように2つのアーム80を有するが、図5(a)~(c)において右側のアーム80が特定のアーム80であり、これに近接して、そのロック解除を阻止可能な磁気レバー86(ロック解除阻止手段85)が配置されている。すなわち、薄板状磁性体により形成された短腕86bと長腕86aとから成る磁気レバー86が、ロック機構内蔵空間LMS内部に軸支され、短腕86bの先端が特定のアーム80の先端より基底面73B側に位置するように配置されている。この実施例1のロック機構8におけるロック解除及びロック解除阻止の機構は、上述のとおりであるが、その詳細については再度後述する。
【0059】
(ロック機能付き薄型ケース)
実施例1に係るロック機構8を嵌入するロック機能付き薄型ケース1について説明する。図6に示す実施例1の薄型ケース1おいて、ロックプレート収容領域LR(2LR、3LR)と記憶媒体収容領域DR(2DR、3DR)とは、上記図3に示すロック機能付き薄型ケース1と同様に、本体2及び蓋体3の矩形のベース面2B、3Bに、互いに重なり合わないように隣接して形成されている。ロックプレート収容領域LRと記憶媒体収容領域DRとが、ロック機能付き薄型ケース1の厚さ方向に重ならずに分離するため、これらの薄型ケース1は厚さ5mmから6.5mm程度にまで薄型化することができる。ただし、このような超薄型ケース1を得るには、アーム80と磁気レバー86を、厚さ0.5mmから1.5mm程度の薄板状磁性体により形成して、ロックプレート7の厚さも最薄の厚さ3mmから4mm程度に形成し、薄型ケース1を形成するプラスチック材料も強度を確保しながら極力薄くする必要がある。
【0060】
本体2のロックプレート収容領域2LRは、図6のように、連結部1Rと対向する辺部(2a)側に設けられたガイド溝2G及びこれに隣接するコーナーを削切した切欠き部22から成る。そして、このガイド溝2Gは、ベース面2Bから立設された側壁2aと、これと平行にベース面2Bから立設されて、複数の爪係止部201がその側壁2a側に設けられたロック壁2Lとから構成される。
【0061】
また、蓋体3のロックプレート収容領域3LRは、閉状態で、本体2のガイド溝2G及び切欠き部22に対向する位置に夫々設けられたガイド蓋3G及び連結部1Rと対向する辺部(2a)に隣接する辺部の側壁3bに開口部1Hを有する基部プレート収容部32から成る。そして、本体2及び蓋体3の夫々ガイド溝2G及びガイド蓋3Gには、ロック機構8を内蔵した挿入プレート73が貫通し得る中空嵌合部(205、305)が、夫々1以上立設されている(205a、205b、305a、305b)。
【0062】
(ロック状態)
連結部1Rを軸にして蓋体3を本体2に閉じた閉状態において、図7のようにロック機能付き薄型ケース1をロック状態とするために、ロックプレート7を開口部1Hから嵌入する。すなわち、閉状態で本体2及び蓋体3のロックプレート収容領域LR(2LR、3LR)により形成されるロックプレート収容空間LSに、切欠き部22に嵌合した基部プレート収容部32の開口部1Hから、ロックプレート7の挿入プレート73を、そのロック面73Lをロック壁2Lに、その基底面73Bを側壁2aに当接させながらガイド溝2Gに沿ってスライドして挿入させる(図6参照)。
【0063】
そして、挿入プレート73をガイド溝2Gにスライド挿入して、ロックプレート7の基部プレート71を切欠き部22に嵌合させて、蓋体3と本体2のロック状態を得る。このロック状態で、ガイド溝2G及びガイド蓋3Gにそれぞれ設けた中空嵌合部(205、305)に挿入プレート73が貫通することで、蓋体3が開かないように本体2と噛み合ってロックすることが出来る。
【0064】
すなわち、閉状態の開口部1Hからロックプレート7を嵌入したロック状態においては、先ず、中空嵌合部(205、305)に挿入プレート73が貫通することで、蓋体3と本体2とが開かないようにロックされる。また、ロック機構内蔵空間LMS内部に片持ち梁式に弾性支持された2つのアーム80の夫々のロック爪80Lが、ロック面73Lから突出して、ベース面2Bに立設されたロック壁2Lの爪係止部201に夫々係止されることで、ロックプレート7がロックプレート収容空間LSから抜けないようにロックされる(図5(a)参照)。
【0065】
(ロック解除)
そして、このようなロック状態のロック機構8は、側壁2a、3aに解除用マグネット100を当てて、解除用マグネット100が含む磁石101の磁気力を1又は複数のアーム80に作用させることで、1又は複数のアーム80の先端を弾性力に抗して磁石101に引き寄せて、ロック壁2Lに設けた爪係止部201から夫々のロック爪80Lを解除可能である(図5(b)参照)。
【0066】
(ロック解除阻止)
ところが、2つのアーム80中の右側の特定のアーム80には、これに近接して磁気レバー86(ロック解除阻止手段85)が設けられており、側壁2a、3aに解除用マグネット100と異なる不正解除用マグネット(長磁石)110を当てた際に、特定のアーム80のロック解除を阻止することができる(図5(c)参照)。
【0067】
以上のように、実施例1に係る解除阻止手段を有するロック機構8は、上述のように2つのアーム80と磁気レバー86(ロック解除阻止手段85)を有するため、図5(b)に示すような、2つの磁石101が適切に間隔を置いて埋め込まれた解除用マグネット100を用いなければロック解除できず、磁石101が1つの解除用マグネット100を用いる場合(図2(b)参照)より安全である。
【0068】
また、実施例1に係る薄型ケース1は、ロックプレート収容領域LR(2LR、3LR)と記憶媒体収容領域DR(2DR、3DR)とを、本体2及び蓋体3の矩形のベース面2B、3Bに、互いに重なり合わないように隣接して形成したので、これらの領域を厚さ方向に重ならずに分離させることができる。そして、アーム80と磁気レバー86を厚さ0.5mmから1.5mm程度の薄板状磁性体により形成し、ロックプレート7の厚さを厚さ3mmから4mm程度に形成することにより、実施例1の薄型ケース1は厚さ5mmから6.5mm程度にまで薄型化することができる。
【実施例2】
【0069】
実施例2に係るロック機能付き薄型ケース1を、図8(a)、(b)に示す。実施例2に係る薄型ケース1は、本体2と蓋体3の双方に受け台座(4、5)を設け、その夫々に記憶媒体1000を収容することができるが、他の構造は、実施例1、下記する実施例3を含め、本発明に係るロック機能付き薄型ケース1と同様に構成することができる。すなわち、本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構8を備えた厚さ3mm~5mmのロックプレート7を嵌入可能で、厚さ5mm以上8mm未満を実現することができる。
【0070】
図8(a)に示すように、実施例2に係るロック機能付き薄型ケース1は、本体2のベース面2B中央部と蓋体3のベース面3B中央部に、夫々記憶媒体1000の中央部が載る載置面を有する受け台座4、5が設けられている。両受け台座4、5の向きは互いに垂直方向を成し、本体2と蓋体3の閉状態で、図8(b)のように夫々の受け台座4、5に別々の記憶媒体1000を重ねて収容することができる。したがって、この閉状態で両受け台座4、5が重なるため、実施例2のロック機能付き薄型ケース1は、厚さ5.5mm以上8mm未満とするのがより好適である。
【0071】
このような受け台座4、5の載置面44中央には2本のスリット溝46が所定の間隔をおいて形成されている。両スリット溝46に挟まれて形成された両弾性アーム状台座(45a、45b)の先端には係合凸部(47a、47b)を対にして突出させ、更に弾性アーム状台座(45a、45b)とは独立して撓む係合ツメ(48a、48b)を係合凸部(47a、47b)と対を成して設けている。両受け台座4、5は、係合ツメ(48a、48b)の先端を係合凸部(47a、47b)の上面より突出させ、蓋体3を閉じた場合に係合ツメ(48a、48b)の先端が対向側の係合凸部(47a、47b)の側面に係止するよう構成されている。
【0072】
以上のように、実施例2に係るロック機能付き薄型ケース1は、本体2と蓋体3の双方に別々の記憶媒体1000を収容でき、本発明に係るロック機構を損なうことなく、厚さ5mm以上8mm未満を実現することができる。すなわち、実施例2の薄型ケース1は、本発明に係る解除阻止手段を有するロック機構8を内蔵するロックプレート8を嵌入して、本体2と蓋体3とをロックできると共に、不正解除用マグネット(長磁石)110を当てた際に、特定のアーム80のロック解除を阻止することができる。
【実施例3】
【0073】
実施例3に係るロックプレート7は、図9(a)、(b)に示すように、蓋体側表面と本体側表面とを有し、基端731と先端732を有する挿入プレート73と、基端731から挿入プレート73と直角に伸長する把持プレート77と、挿入プレート73と把持プレート77を接続し、蓋体側表面にタグシール1010を貼付可能な厚さ0.5mm~1mmの薄板状プレート75とから構成され、厚さ3.5mm~5mmとしたことを特徴とするロックプレートである。
【0074】
実施例1と同様に、挿入プレート73は、ロック爪80Lが突出し得るロック面73Lとこれと対向する基底面73B、及びこの両面を接続する側面73(長手側面73Sl、短手側面73St)で囲まれるロック機構内蔵空間LMSをその内部に有しており、このロック機構内蔵空間LMS内部に、実施例1と同一のロック機構8を内蔵している。また、薄板状プレート75は、蓋体3側から平面視で、挿入プレート73の蓋体側表面からこれと略面一に、ロック面73Lからロック爪80Lが突出し得るようにロック機構内蔵空間LMSを覆って挿入プレート73と直角方向に延伸し、挿入プレート73と把持プレート77間に張られる平面である。
【0075】
すなわち、薄板状プレート75は、図9(a)、(b)のように、挿入プレート73が内蔵するロック機構内蔵空間LMSを囲む先端731側の短手側面73St付近から、挿入プレート73の蓋体側表面と略面一に、基部プレート71方向に延伸しており、薄板状プレート75の先端側(挿入プレート73の先端732側)の縁から挿入プレート73と平行に突出した嵌合棒76を備えている。後述するように、嵌合棒76は、実施例3に係る薄型ケース1の本体2及び蓋体3に設けた中空嵌合部(205、305)に貫通させて、本体2と蓋体3をロックさせることができる。
【0076】
実施例3に係る解除阻止手段を有するロック機構8は、上記のように実施例1と同一で、ロック機構内蔵空間LMS内部に内蔵され、2つのアーム80と磁気レバー86(ロック解除阻止手段85)から構成される。2つのアーム80と磁気レバー86とは、上記のように、ステンレス鋼などの厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成される。
【0077】
このような実施例3に係るロックプレート7は、実施例1のロックプレート7に比べて、ほぼ薄板状プレート75の分だけ、すなわち0.5mm~1mmほど厚みが増すことになる。したがって、実施例3に係るロックプレート7は、ロック機構8を構成するアーム80及び磁気レバー86を、厚さ0.5mm~2.5mmの薄板状磁性体により形成することにより、厚さ3.5mm~5mmに形成することができる。
【0078】
(ロック機能付き薄型ケース)
次に、実施例3に係るロック機構8を嵌入するロック機能付き薄型ケース1について説明する。図10(a)に示す実施例3の薄型ケース1は、上述の薄型ケース1と同様、4つの辺部を備える矩形のベース面(2B、3B)と、ベース面(2B、3B)から立設された4つの側壁((2a、2b、2c、2d)、(3a、3b、3c、3d))とを夫々有する本体2及び蓋体3が、相互に隣り合う側壁(2d、3d)に設けた連結部1Rで開閉可能に連結される。
【0079】
しかし、本体及び蓋体の夫々のベース面(2B、3B)に形成されたロックプレート収容領域LRと記憶媒体収容領域DRとは一部重なり合って隣接して配置されている。従って、ロックプレート収容領域LRに収容されたロックプレート7と、記憶媒体収容領域DRに収容された記憶媒体1000とは、例えば蓋体3側正面から見て相互に干渉することになる。ただし、ロックプレート収容領域LRを、薄板状プレート75の形状に応じて、記憶媒体収容領域DRより僅かに窪ませて(約0.1mm~0.3mm)、ロックプレート7を収容しても記憶媒体1000と干渉しないように設計することもできる。
【0080】
本体2のロックプレート収容領域2LRは、実施例1と同様、辺部(2a)側に設けられたガイド溝2Gを有する。ガイド溝2Gは、側壁2aと、これと平行にベース面2Bから立設されて、複数の爪係止部201がその側壁2a側に設けられたロック壁2Lとから構成される。
【0081】
一方、蓋体3のロックプレート収容領域3LRは、閉状態で本体2のガイド溝2G、及び、ロックプレート7の厚さ0.5mm~1mmの平板部(薄板状プレート75)と対向するように、ガイド蓋3G、及び、薄板状プレート収容部34が形成され、ロックプレートの把持プレート77が嵌合する開口部1Hを側壁3bに有する。薄板状プレート収容部34は記憶媒体収容領域3DRの一部を侵食しているが、上記のように記憶媒体収容領域3DRより約0.1mm~0.3mmほど窪ませて、薄板状プレート75を嵌合させることもできる。
【0082】
そして、本体2及び蓋体3のロックプレート収容領域(2LR、3LR)には、ロック機構8を内蔵したロックプレート7の貫通し得る中空嵌合部(205、305)が、夫々1以上立設されている。中空嵌合部(205、305)は、上記のように、挿入プレート73が貫通するように夫々ガイド溝2G及びガイド蓋3Gに設けられてもよいが(図3図6図7参照)、図10(a)、(b)のように、嵌合棒76が貫通するように設けられてもよい。ロックプレート7の挿入プレート73又は嵌合棒76がロックプレート収容領域(2LR、3LR)に設けられた中空嵌合部(205、305)を夫々貫通することにより、本体2と蓋体3とをロックすることができる。
【0083】
このような本体2及び蓋体3のロックプレート収容領域(2LR、3LR)は、閉状態で、中空嵌合部(205、305)を有するロックプレート収容空間LSを形成する。そして、このロックプレート収容空間LSにロックプレート7を嵌入し、その挿入プレート73又は嵌合棒76を中空嵌合部(205、305)に貫通させて、実施例3に係る厚さ3.5mm~5mmのロックプレート7を収容することができる。
【0084】
(ロック状態)
すなわち、挿入プレート73を、閉状態で、開口部1Hから、そのロック面73Lをロック壁2Lに、その基底面73Bを側壁2aに当接させながらガイド溝2Gに沿ってスライドさせてガイド溝2Gに挿入させ、把持プレート77を開口部1Hに嵌合させてロック状態を形成することができる。このロック状態で、挿入プレート73又は嵌合棒76が、蓋体3及び本体2の中空嵌合部(205、305)を貫通して蓋体3と本体2とをロックすると共に、複数の爪係止部201にロック爪80Lが係止されて、ロックプレート7をロックプレート収容空間LSにロックすることができる。
【0085】
このようにロックプレート7を嵌入してロックされた閉状態のロック機能付き薄型ケース1は、ロックプレート7が薄板状プレート75の分だけ厚みが増して、すなわち0.5mm~1mmほど厚くなって厚さ3.5mm~5mmとなるため、厚さ5.5mm以上8mm未満に形成することができる。
【0086】
以上、本発明に係るロック機能付き薄型ケースについて説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【0087】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る本発明に係るロック機能付き薄型ケースは、レンタルショップの棚に陳列されているDVD 、CD 、ゲームソフト等のディスク状記憶媒体を盗難から守ることが出来る、防犯性の向上した貸出し用の薄型ケースとして用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1:ロック機能付き薄型ケース
LR:ロックプレート収容領域LR
DR:ディスク状記憶媒体収容領域DR(記憶媒体収容領域DR)
LS:ロックプレート収容空間
LMS:ロック機構内蔵空間
1R:連結部
1H:開口部
2:本体
2a、2b、2c、2d:側壁(辺部)
2B:(本体)ベース面
2G:ガイド溝
2L:ロック壁
22:切欠き部
201:爪係止部
204ta、204tb:補助係合片
205:中空嵌合部
206:中空嵌合片嵌合部
207a、207b:係合部
208ta、208tb:係合片
209ma、209mb:係合溝
22:切欠き部
3:蓋体
3a、3b、3c、3d:側壁(辺部)
3B:(蓋体)ベース面
3G:ガイド蓋
304ta、304tb:補助係合片
305:中空嵌合部
307a、307b:係合部
308ma、308mb:係合溝
309ta、309tb:係合片
32:基部プレート収容部
34:薄板状プレート収容部
4:受け台座(本体)
44:載置面
45a、45b:弾性アーム状台座
46:スリット溝
47a、47b:係合凸部
48a、48b:係合ツメ
49:繋ぎ部
5:受け台座(蓋体)
7:ロックプレート
71:基部プレート
72:ストッパ片
73:挿入プレート
731:(基部プレート)基端
732:(基部プレート)先端
73L:ロック面
73B:基底面
73S:側面(長手側面73Sl、短手側面73St)
74:嵌合片
75:薄板状プレート
76:嵌合棒
77:把持プレート
8:ロック機構
80:アーム
80L、801L:ロック爪
801:板ばね
83:弾性体
85:ロック解除阻止手段
86:磁気レバー
86a:長腕
86b:短腕
90:シーソー部材
100:解除用マグネット
101:磁石
110:不正解除用マグネット
1000:ディスク状記憶媒体(DVD、CDなど)
(イ):レンタル用ケース
(ロ):陳列用カバーケース
1010:タグシール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11
図12
図13
図14