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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】リチウム2次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20250115BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20250115BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20250115BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20250115BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20250115BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20250115BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250115BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20250115BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20250115BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20250115BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20250115BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/40
H01M4/66 Z
H01M10/0565
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/058
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/46
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022522096
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2020018804
(87)【国際公開番号】W WO2021229635
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 寿一
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/145288(WO,A1)
【文献】特開平03-289065(JP,A)
【文献】特開2004-220819(JP,A)
【文献】特開2019-192607(JP,A)
【文献】特開2018-166084(JP,A)
【文献】特表2019-501478(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106711430(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
H01M 10/05 -10/0587
H01M 50/40 -50/497
H01G 11/00 -11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、セパレータと、負極活物質を有しない負極と、電解液と、を備え、
リチウム金属が前記負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウムが電解溶出することによって充放電が行われる、リチウム2次電池であって、
充電中においてリチウム金属と共析することによりリチウム金属の異方的な結晶成長を抑制する添加剤を含み、
前記添加剤は、アルミニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、マグネシウム、カリウム、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を含む化合物である(ただし、水酸基の水素がアルカリ金属で置換された芳香族化合物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び硝酸カリウムを除く。)、
リチウム2次電池。
【請求項2】
前記添加剤は、前記電解液又は前記セパレータに含まれている、請求項1記載のリチウム2次電池。
【請求項3】
前記電解液は、エーテル系溶媒を含む、請求項1又は2に記載のリチウム2次電池。
【請求項4】
前記電解液は、LiN(SO2F)2を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項5】
正極と、固体電解質と、負極活物質を有しない負極と、を備え、
リチウム金属が前記負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウムが電解溶出することによって充放電が行われる、リチウム2次電池であって、
充電中においてリチウム金属と共析することによりリチウム金属の異方的な結晶成長を抑制する添加剤を含み、
前記添加剤は、アルミニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、マグネシウム、カリウム、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を含む化合物である(ただし、水酸基の水素がアルカリ金属で置換された芳香族化合物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び硝酸カリウムを除く。)
リチウム2次電池。
【請求項6】
前記添加剤は、前記固体電解質に含まれている、請求項5記載のリチウム2次電池。
【請求項7】
充電状態において、前記負極上に析出しているリチウム金属を含む堆積層における前記添加剤に由来する元素の含有量が、前記堆積層全体に対して、0.001原子%以上10原子%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項8】
前記化合物は、塩化物、フッ化物、芳香族化合物、及び金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項9】
前記負極は、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなる電極である、請求項1~8のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項10】
初期充電の前に、前記負極の表面にリチウム箔が形成されていない、請求項1~9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項11】
前記正極は、正極活物質を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風力等の自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目されている。これに伴い、安全性が高く、かつ多くの電気エネルギーを蓄えることができる蓄電デバイスとして、様々な2次電池が開発されている。
【0003】
その中でも、正極及び負極の間を金属イオンが移動することで充放電を行う2次電池は、高電圧及び高エネルギー密度を示すことが知られており、典型的には、リチウムイオン2次電池が知られている。典型的なリチウムイオン2次電池としては、正極及び負極にリチウムを保持することのできる活物質を導入し、正極活物質及び負極活物質の間でのリチウムイオンの授受によって充放電をおこなうものが挙げられる。また、負極に活物質を用いない2次電池として、負極表面上にリチウム金属を析出させることでリチウムを保持するリチウム金属2次電池が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、室温で少なくとも1Cのレートでの放電時に、1000Wh/Lを越える体積エネルギー密度及び/又は350Wh/kgを越える質量エネルギー密度を有する、高エネルギー密度、高出力リチウム金属アノード2次電池が開示されている。特許文献1は、そのようなリチウム金属アノード2次電池を実現するため、極薄リチウム金属アノードを用いることを開示している。
【0005】
また、特許文献2には、正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム2次電池において、前記負極は、負極集電体上に金属粒子が形成され、充電によって前記正極から移動され、負極内の負極集電体上にリチウム金属を形成する、リチウム2次電池が開示されている。特許文献2は、そのようなリチウム2次電池は、リチウム金属の反応性による問題と、組み立ての過程で発生する問題点を解決し、性能及び寿命が向上されたリチウム二次電池を提供することができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-517722号公報
【文献】特表2019-537226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが、上記特許文献に記載のものを始めとする従来の電池を詳細に検討したところ、エネルギー密度及びサイクル特性の少なくともいずれかが十分でないことがわかった。
【0008】
例えば、正極活物質及び負極活物質の間での金属イオンの授受によって充放電をおこなう典型的な2次電池は、エネルギー密度が十分でない。また、上記特許文献に記載されているような、負極表面上にリチウム金属を析出させることでリチウムを保持するリチウム金属2次電池は、充放電を繰り返すことにより負極表面上にデンドライトが形成されやすく、短絡及び容量低下が生じやすい。その結果、サイクル特性が十分でない。
【0009】
また、リチウム金属2次電池において、リチウム金属析出時の離散的な成長を抑制するために、電池に大きな物理的圧力をかけて負極とセパレータとの界面を高圧に保つ方法も開発されている。しかしながら、そのような高圧の印加には大きな機械的機構が必要であるため、電池全体としては、重量及び体積が大きくなり、エネルギー密度が低下する。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるリチウム2次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、正極と、セパレータと、負極活物質を有しない負極と、電解液と、を備え、リチウム金属が上記負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウムが電解溶出することによって充放電が行われる、リチウム2次電池であって、充電中においてリチウム金属と共析することによりリチウム金属の異方的な結晶成長を抑制する添加剤を含むものである。
【0012】
そのようなリチウム2次電池は、負極活物質を有しない負極を備えることにより、リチウム金属が負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われるため、エネルギー密度が高くなる。また、そのような添加剤を含むリチウム2次電池は、充電の際にリチウムと当該添加剤とが共析し、異方的な結晶成長が抑制されたリチウム金属が負極に析出するため、リチウム2次電池のサイクル特性低下の原因となる負極表面におけるデンドライト状リチウム金属の形成が抑制される。したがって、当該リチウム2次電池はサイクル特性に優れたものとなる。
【0013】
上記添加剤は、上記電解液又は上記セパレータに含まれていてもよい。
【0014】
上記電解液は、エーテル系溶媒を含んでいてもよい。そのような態様によれば、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。
【0015】
上記電解液は、LiN(SOF)を含んでいてもよい。そのような態様によれば、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。
【0016】
本発明の一実施形態に係るリチウム2次電池は、正極と、固体電解質と、負極活物質を有しない負極と、を備え、リチウム金属が上記負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウムが電解溶出することによって充放電が行われる、リチウム2次電池であって、充電中においてリチウム金属と共析することによりリチウム金属の異方的な結晶成長を抑制する添加剤を含むものである。
【0017】
そのようなリチウム2次電池は、負極活物質を有しない負極を備えることにより、リチウム金属が負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われるため、エネルギー密度が高くなる。また、そのような添加剤を含むリチウム2次電池は、充電の際にリチウムと当該添加剤とが共析し、異方的な結晶成長が抑制されたリチウム金属が負極に析出するため、リチウム2次電池のサイクル特性低下の原因となる負極表面におけるデンドライト状リチウム金属の形成が抑制される。したがって、当該リチウム2次電池はサイクル特性に優れたものとなる。
【0018】
上記添加剤は、上記固体電解質に含まれていてもよい。
【0019】
充電状態において、上記負極上に析出しているリチウム金属を含む堆積層における上記添加剤に由来する元素の含有量は、好ましくは、上記堆積層全体に対して、0.001原子%以上10原子%以下である。そのような態様によれば、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。
【0020】
上記添加剤は、好ましくは、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素(ただし、リチウム、炭素、酸素、及び窒素を除く。)を含む化合物である。そのような態様によれば、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。
【0021】
上記化合物は、好ましくは、塩化物、フッ化物、芳香族化合物、及び金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種である。そのような態様によれば、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。
【0022】
上記負極は、好ましくは、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなる電極である。そのような態様によれば、製造の際に可燃性の高いリチウム金属を用いなくてよいため、一層安全性及び生産性に優れるものとなる。また、負極の安定性が一層向上するため、リチウム2次電池のサイクル特性が一層優れたものとなる。
【0023】
上記リチウム2次電池は、好ましくは、初期充電の前に、上記負極の表面にリチウム箔が形成されていない。そのような態様によれば、製造の際に可燃性の高いリチウム金属を用いなくてよいため、一層安全性及び生産性に優れるものとなる。
【0024】
上記正極は、正極活物質を有していてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるリチウム2次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
図2】第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の使用の概略断面図である。
図3】第2の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
[第1の本実施形態]
(リチウム2次電池)
図1は、第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。図1に示すように、第1の本実施形態のリチウム2次電池100は、正極110と、セパレータ120と、負極活物質を有しない負極130と、電解液と、を備える。
【0029】
(負極)
負極130は、負極活物質を有しないものである。負極活物質を有する負極を備えるリチウム2次電池は、その負極活物質の存在に起因して、エネルギー密度を高めることが困難である。一方、本実施形態のリチウム2次電池100は負極活物質を有しない負極130を備えるため、そのような問題が生じない。すなわち、本実施形態のリチウム2次電池100は、リチウム金属が負極130の表面に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われるため、エネルギー密度が高い。
【0030】
本明細書において、「負極活物質」とは、電池において電荷キャリアとなるリチウムイオン又はリチウム金属(以下、「キャリア金属」という。)を負極130に保持するための物質を意味し、キャリア金属のホスト物質と換言してもよい。そのような保持の機構としては、特に限定されないが、例えば、インターカレーション、合金化、及び金属クラスターの吸蔵等が挙げられる。
【0031】
そのような負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、炭素系物質、金属酸化物、及び金属又は合金等が挙げられる。上記炭素系物質としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン系化合物、酸化スズ系化合物、及び酸化コバルト系化合物等が挙げられる。上記金属又は合金としては、キャリア金属と合金化可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、ガリウム、及びこれらを含む合金が挙げられる。
【0032】
負極130としては、負極活物質を有さず、集電体として用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが挙げられる。なお、負極130にSUSを用いる場合、SUSの種類としては従来公知の種々のものを用いることができる。上記のような負極材料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。なお、本明細書中、「Liと反応しない金属」とは、2次電池100の動作条件においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属を意味する。
【0033】
負極130は、好ましくはリチウムを含有しない電極である。そのような態様によれば、製造の際に可燃性の高いリチウム金属を用いなくてよいため、リチウム2次電池100は、一層安全性及び生産性に優れるものとなる。同様の観点及び負極130の安定性向上の観点から、その中でも、負極130は、より好ましくは、Cu、Ni、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものである。同様の観点から、負極130は、更に好ましくは、Cu、Ni、又はこれらからなる合金からなるものであり、特に好ましくはCu、又はNiからなるものである。
【0034】
本明細書において、「負極が負極活物質を有しない」とは、負極における負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であることを意味する。負極における負極活物質の含有量は、負極全体に対して、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.0質量%以下である。なお、2次電池100が負極活物質を有しない負極を備えるということは、2次電池100が、一般的に用いられる意味でのアノードフリー2次電池、ゼロアノード2次電池、又はアノードレス2次電池であることを意味する。
【0035】
負極130の平均厚さは、好ましくは4μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上18μm以下であり、更に、好ましくは6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100における負極130の占める体積が減少するため、2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。
【0036】
(正極)
正極110としては、一般的にリチウム2次電池に用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム2次電池の用途及びキャリア金属の種類によって、公知の材料を適宜選択することができる。リチウム2次電池100の安定性及び出力電圧を高める観点から、正極110は、好ましくは正極活物質を有する。
【0037】
本明細書において、「正極活物質」とは、電池においてキャリア金属を正極に保持するための物質を意味し、キャリア金属のホスト物質と換言してもよい。
【0038】
そのような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物及び金属リン酸塩が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、及び酸化ニッケル系化合物等が挙げられる。上記金属リン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸鉄系化合物、及びリン酸コバルト系化合物が挙げられる。典型的な正極活物質としては、LiCoO、LiNiCoMn(x+y+z=1)、LiNiMn(x+y=1)、LiNiO、LiMn、LiFePO、LiCoPO、FeF、LiFeOF、LiNiOF、及びTiSが挙げられる。上記のような正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0039】
正極110は、上記の正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、公知の導電助剤、バインダー、固体ポリマー電解質、及び無機固体電解質が挙げられる。
【0040】
正極110における導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SW-CNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MW-CNT)、カーボンナノファイバー、及びアセチレンブラック等が挙げられる。また、バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0041】
正極110における、正極活物質の含有量は、正極110全体に対して、例えば、50質量%以上100質量%以下であってもよい。導電助剤の含有量は、正極110全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下あってもよい。バインダーの含有量は、正極110全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下であってもよい。固体ポリマー電解質、及び無機固体電解質の含有量の合計は、正極110全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下であってもよい。
【0042】
(セパレータ)
セパレータ120は、正極110と負極130とを隔離することにより電池が短絡することを防ぎつつ、正極110と負極130との間の電荷キャリアとなるリチウムイオンのイオン伝導性を確保するための部材であり、電子導電性を有さず、リチウムイオンと反応しない材料により構成される。また、セパレータ120は当該電解液を保持する役割も担う。セパレータ120は、上記役割を担う限りにおいて限定はないが、例えば、多孔質のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はこれらの積層構造により構成される。セパレータ120としては、例えば、帝人社製エリソートタイプPを用いることができる。
【0043】
セパレータ120は、セパレータ被覆層により被覆されていてもよい。セパレータ被覆層は、セパレータ120の両面を被覆していてもよく、片面のみを被覆していてもよい。セパレータ被覆層は、イオン伝導性を有し、リチウムイオンと反応しない部材であれば特に限定されないが、セパレータ120と、セパレータ120に隣接する層とを強固に接着させることができるものであると好ましい。そのようなセパレータ被覆層としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(Li-PAA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、及びアラミドのようなバインダーを含むものが挙げられる。セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸リチウム等の無機粒子を添加させてもよい。
【0044】
セパレータ120の平均厚さは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、更に好ましくは15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池100におけるセパレータ120の占める体積が減少するため、リチウム2次電池100のエネルギー密度が一層向上する。また、セパレータ120の平均厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。そのような態様によれば、正極110と負極130とを一層確実に隔離することができ、電池が短絡することを一層抑止することができる。
【0045】
(電解液)
電解液(図1には図示されていない。)は、正極110と負極130との間の電荷キャリアとなるリチウムイオンのイオン伝導性を向上させる役割を有する。電解液は、セパレータ120に浸潤させてもよく、正極110とセパレータ120と負極130との積層体と共に密閉容器に封入してもよい。電解液は、電解質及び溶媒を含有し、イオン伝導性を有する溶液である。このため、リチウム2次電池100は、内部抵抗が低く、エネルギー密度が高く、かつサイクル特性に優れたものである。
【0046】
電解液に含まれる電解質としては、塩であれば特に限定されないが、例えば、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。電解質としては、好ましくはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に限定されないが、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(O、LiB(O)F、LiB(OCOCF、LiNO、及びLiSO等が挙げられる。リチウム2次電池100のエネルギー密度、及びサイクル特性が一層優れる観点から、リチウム塩としては、LiN(SOF)が好ましい。また、リチウム塩としてLiN(SOF)が含まれる場合、後述するような負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。なお、上記のリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0047】
電解液に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、フッ素化エーテルのようなエーテル系溶媒、並びにフッ素化エステル、及びフッ素化炭酸エステルのようなエステル系溶媒等が挙げられる。より具体的には、溶媒としては、ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、フロロエチレンカーボネート、ジフロロエチレンカーボネート、トリフロロメチルプロピレンカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ノナフロロブチルメチルエーテル、ノナフロロブチルエチルーテル、テトラフロロエチルテトラフロロプロピルエーテル、1,1,2,2-terafluoroethyl-2,2,3,3-tetrafluoropropyl ether、1,1,2,2tetrafluoroethyl-2,2,2-trifluoroethyl ether、Methyl-1,1,2,2-tetrafluoroethyl ether、Ethyl-1,1,2,2-tetrafluoroethyl ether、リン酸トリメチル、及びリン酸トリエチル等が挙げられる。リチウム2次電池100のエネルギー密度、及びサイクル特性が一層優れる観点から、溶媒としては、エーテル系溶媒が好ましい。また、溶媒としてエーテル系溶媒が含まれる場合、後述するように、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。上記のような溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0048】
(添加剤(異方成長抑制剤))
図2は、第1の本実施形態に係るリチウム2次電池の1つの使用態様の概略断面図である。第1の本実施形態に係るリチウム2次電池100は、正極110に正極集電体210が接合され、正極集電体210及び負極130には外部回路に接続するための正極端子230及び負極端子240がそれぞれ接合されることにより、リチウム2次電池200を構成する。
【0049】
正極端子230及び負極端子240の間に負極端子240から外部回路を通り正極端子230へと電流が流れるような電圧を印加することで、リチウム2次電池200が充電される。リチウム2次電池200を充電することにより、負極130とセパレータ120との界面にリチウム金属を含む堆積層220が析出する。また、充電後のリチウム2次電池200について、正極端子230及び負極端子240を接続するとリチウム2次電池200が放電される。当該放電は、負極130とセパレータ120との界面において析出した堆積層220が電解溶出することにより進行する。
【0050】
ところで、従来の、リチウム金属が負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウムが電解溶出することによって充放電が行われるリチウム2次電池(以下、「リチウム金属2次電池」という。)において、多くの場合、負極表面に析出するリチウム金属は、リチウム金属単体からなるものである。本発明者らは、鋭意検討した結果、従来のリチウム金属2次電池において、負極表面におけるリチウム金属の異方的な結晶成長が抑制されていないことに起因して、そのサイクル特性が低くなると推測した。すなわち、従来のリチウム金属2次電池において、負極表面に析出するリチウム金属がリチウム金属単体からなることにより、負極表面におけるリチウム金属の異方的な結晶成長が抑制されず、負極表面に析出するリチウム金属がデンドライト状に成長すると推測した。また、そのような従来のリチウム金属2次電池において充放電を繰り返すと、デンドライト状に成長したリチウム金属の一部が電池の放電時に脱落し、負極と電気的に接触していない、電池の充放電に不活性なリチウム金属が増加するため、電池の容量が低下すると推測した。
【0051】
したがって、本発明者らは、リチウム2次電池を、充電中においてリチウム金属と共析することによりリチウム金属の異方的な結晶成長を抑制する添加剤(以下、「異方成長抑制剤」ともいう。)を含む構成とした。すなわち、図1に示す第1の本実施形態のリチウム2次電池100は、正極110と、セパレータ120と、負極活物質を有しない負極130と、電解液とに加えて、添加剤を含み、該添加剤は、電池の充電中においてリチウム金属と共析し、リチウム金属の異方的な結晶成長を抑制するものである。このように、リチウム2次電池100は、異方成長抑制剤を含むため、リチウム2次電池のサイクル特性低下の原因となる負極表面におけるデンドライト状リチウム金属の形成が抑制され、サイクル特性に優れる。
【0052】
なお、本明細書において、「異方的な結晶成長」とは、特定の方向にのみにリチウム金属が結晶成長することを意味し、その成長方向は任意である。したがって、異方的な結晶成長をしたリチウム金属は、例えば、針状、デンドライト状、及び星形のような形となる。また、「異方的な結晶成長を抑制する」とは、リチウム金属が特定の方向にのみに成長することを抑制することを意味し、換言すれば、リチウム金属の等方的な結晶成長を促進することを意味する。「等方的な結晶成長」とは、リチウム金属が全ての方向に等しく結晶成長することを意味する。したがって、負極表面において、リチウム金属が等方的な結晶成長をした場合、その形状は、プレート状となる。
【0053】
また、本明細書において、「負極の表面にデンドライトが形成されることを抑制する」とは、負極表面において、リチウム金属がデンドライト状に成長することを抑制することを意味する。換言すれば、リチウム2次電池の充放電又はその繰り返しにより負極の表面に形成されるリチウム金属が、非デンドライト状に成長することを誘導することを意味する。ここで、「非デンドライト状」とは、特に限定されないが、典型的にはプレート状、谷状、又は丘状である。
【0054】
図1に示す第1の本実施形態のリチウム2次電池100において、異方成長抑制剤は、例えば、電解液又はセパレータに含まれている。リチウム2次電池100の充電時において異方成長抑制剤がリチウム金属と一層容易に共析できる観点から、異方成長抑制剤は溶媒に溶解していることが好ましい。なお、「電解液に異方成長抑制剤が含まれる」とは、電解液の溶媒に異方成長抑制剤が溶解している場合に限られず、電解液中に固体として沈殿している場合も包含する。また、「セパレータに異方成長抑制剤が含まれる」とは、セパレータに浸潤した電解液中に異方成長抑制剤が存在する場合、セパレータ内部に固体状の異方成長抑制剤が含まれている場合、及びセパレータ表面に固体状の異方成長抑制剤が塗布されている場合を包含する。
【0055】
異方成長抑制剤としては、2次電池100の充電中においてリチウム金属と共析し、かつ、リチウム金属の異方的な結晶成長を抑制するものである限り特に限定されないが、例えば、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素(ただし、リチウム、炭素、酸素、及び窒素を除く。)を含む化合物が挙げられる。なお、第13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムを意味し;第14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、及び鉛を意味し;第15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスを意味し;第16族元素とは、酸素、硫黄、セレン、テルル、及びポロニュウムを意味し;アルカリ土類金属元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムを意味し;アルカリ金属元素とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを意味する。
【0056】
リチウム金属の異方的な結晶成長を一層抑制することができる観点から、異方成長抑制剤は、上記の化合物の中でも、好ましくは、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素(ただし、リチウムを除く、金属元素又は半導体元素に限る。)を含む化合物である。同様の観点から、異方成長抑制剤は、より好ましくは、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を含む化合物であり、更に好ましくは、アルミニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、セレン、マグネシウム、カリウム、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を含む化合物であり、特に好ましくは、アルミニウム、スズ、セレン、カリウム、及び、銅から選択される少なくとも1つの元素を含む化合物である。
【0057】
リチウム2次電池100が上記のような異方成長抑制剤を含む場合に、リチウム2次電池100を充電すると、すなわち、負極の電極電位を正極に対して正とすると、負極表面にリチウム金属が析出すると同時に上記の元素が負極表面に析出(共析)する。したがって、負極表面には、リチウム金属単体が析出するのではなく、上記の元素とリチウムの共析物が析出する。リチウム金属単体が析出する場合、リチウム金属の結晶は安定な結晶面を露出するように成長するため異方的な結晶成長が生じやすいと考えられるが、上記の元素がリチウムと共析する場合、リチウム金属としての結晶性が低下するためリチウム金属の異方的な結晶成長が抑制されると考えられる。更に、リチウム金属単体が析出している場合、その表面に、優先的にリチウム金属の析出が生じやすい局所的な活性点が存在し、該活性点において異方的な結晶成長が生じやすいと考えられるが、上記の元素がリチウム金属と共析している場合、そのような活性点における活性が低下し、リチウム金属の異方的な結晶成長が抑制されると考えられる。ただし、その要因はこれに限られない。
【0058】
異方成長抑制剤は、上記の元素を含む塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、芳香族化合物、及び金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。異方成長抑制剤が上記化合物であると、その入手が容易であり、かつ、溶媒への溶解度が一層向上する傾向にある。同様の観点から、異方成長抑制剤は、好ましくは上記の元素を含む塩化物、フッ化物、芳香族化合物、及び金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0059】
ここで、芳香族化合物としては、特に限定されないが、例えば、フェニル化合物、トリル化合物、メトキシフェニル化合物、ナフチル化合物、フラニル化合物、クマリニル化合物、ピロリル化合物、ピリジル化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、チオフェニル化合物、及びこれらの誘導体等を含む化合物が挙げられる。また、金属錯体としては、特に限定されないが、例えば、上記の元素(ただし、金属元素に限る。)と、アセチルアセトン、トリフルオロメタンスルホニルイミド、アセスルファム、トリフルオロメタンスルホン酸、アセト酢酸エチル、エチレンジアミン、ビピリジン、エデト酸、フェナントロリン、ポルフィリン、及びクラウンエーテルからなる群より選択される少なくとも1種との錯体が挙げられる。
【0060】
リチウム2次電池100が上記の異方成長抑制剤を含むため、図2に示すリチウム2次電池200の充電状態において負極上に析出しているリチウム金属を含む堆積層220は、当該異方成長抑制剤に由来する元素を含有する。堆積層220は、好ましくは、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素(ただし、リチウム、炭素、酸素、及び窒素を除く。)を含有しており、より好ましくは、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素(ただし、リチウムを除く、金属元素又は半導体元素に限る。)を含有しており、更に好ましくは、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を含有しており、更により好ましくは、アルミニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、セレン、マグネシウム、カリウム、銅、及び、亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を含有しており、特に好ましくは、アルミニウム、スズ、セレン、カリウム、及び、銅から選択される少なくとも1つの元素を含有している。堆積層220が上記のような元素を含有していると、堆積層220におけるリチウム金属が異方的な結晶成長をすることが一層抑制される。
【0061】
堆積層220において、異方成長抑制剤に由来する元素の含有量は、堆積層全体に対して、好ましくは0.001原子%以上10原子%以下であり、より好ましくは0.005原子%以上5原子%以下であり、更に好ましくは0.010原子%以上3原子%以下である。このような態様によれば、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。なお、堆積層220における異方成長抑制剤に由来する元素の含有量は、異方成長抑制剤の添加量により調製でき、また、堆積層220における異方成長抑制剤に由来する元素の含有量は、従来公知の方法、例えば誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いた方法により測定することができる。
【0062】
異方成長抑制剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、リチウム2次電池100全体に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。異方成長抑制剤の含有量は、リチウム2次電池100全体に対して、0.3質量%以上10質量%以下であってもよく、0.5質量%以上10質量%以下であってもよい。また、リチウム2次電池100において、異方成長抑制剤が電解液中に存在している場合、異方成長抑制剤の含有量は、電解液全体に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上20質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、特に好ましくは1.0質量%以上10質量%以下である。異方成長抑制剤の含有量が上記の範囲にあることにより、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。
【0063】
なお、図2において、負極130の表面には、固体電解質界面層(SEI層)が形成されていてもよい。形成されるSEI層は、特に限定されないが、例えば、リチウムを含む無機化合物、及びリチウムを含む有機化合物等を含んでいてもよい。SEI層の典型的な平均厚さとしては、1nm以上10μm以下である。リチウム2次電池100にSEI層が形成されている場合、堆積層220は負極130とSEI層との界面に析出してもよく、SEI層とセパレータ120との界面に析出してもよい。
【0064】
(2次電池の製造方法)
図1に示すようなリチウム2次電池100の製造方法としては、上述の構成を備えるリチウム2次電池を製造することができる方法であれば特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。
【0065】
正極110は例えば以下のようにして製造する。上述した正極活物質、公知の導電助剤、及び公知のバインダーを混合し、正極混合物を得る。その配合比は、例えば、上記正極混合物全体に対して、正極活物質が50質量%以上99質量%以下、導電助剤が0.5質量%30質量%以下、バインダーが0.5質量%30質量%以下であってもよい。得られる正極混合物を、例えば5μm以上1mm以下の金属箔(例えば、Al箔)の片面に塗布し、プレス成型する。得られる成型体を、打ち抜き加工により、所定のサイズに打ち抜き、正極110を得る。
【0066】
次に、上述した構成を有するセパレータ120を準備する。セパレータ120は従来公知の方法で製造してもよく、市販のものを用いてもよい。
【0067】
次に、上述した負極材料、例えば1μm以上1mm以下の金属箔(例えば、電解Cu箔)を、スルファミン酸を含む溶剤で洗浄した後に所定の大きさに打ち抜き、更に、エタノールで超音波洗浄した後、乾燥させることにより負極130を得る。
【0068】
以上のようにして得られる正極110、セパレータ120、及び負極130を、この順に積層することで積層体を得る。得られる積層体を、電解液と共に密閉容器に封入することでリチウム2次電池100を得ることができる。密閉容器としては、特に限定されないが、例えば、ラミネートフィルムが挙げられる。
【0069】
異方成長抑制剤は、上記の工程において、セパレータ120の内部に添加してもよく、セパレータ120の表面に塗布してもよく、電解液に添加してもよい。負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長を一層抑制する観点から、異方成長抑制剤は電解液に溶解することによりリチウム2次電池100に添加される。
【0070】
[第2の本実施形態]
(リチウム2次電池)
【0071】
図3は、第2の本実施形態に係るリチウム2次電池の概略断面図である。図3に示すように、第2の本実施形態のリチウム2次電池300は、正極110と、固体電解質310と、負極活物質を有しない負極130と、を備え、リチウム金属が負極の表面に析出し、及び、その析出したリチウムが電解溶出することによって充放電が行われ、充電中においてリチウム金属と共析することによりリチウム金属の異方的な結晶成長を抑制する添加剤(異方成長抑制剤)を含む。正極110、負極130、及び異方成長抑制剤の構成及びその好ましい態様は後述する点を除き第1の本実施形態のリチウム2次電池100と同様であり、リチウム2次電池300は、リチウム2次電池100と同様の効果を奏するものである。
【0072】
(固体電解質)
一般に、液体電解質を備える電池は、液体の揺らぎに起因して、電解質から負極表面に対してかかる物理的圧力が場所によって異なる傾向にある。一方、リチウム2次電池300は、固体電解質310を備えるため、固体電解質310から負極130表面にかかる圧力が一層均一なものとなり、負極130の表面に析出するキャリア金属の形状を一層均一化することができる。すなわち、このような態様によれば、負極130の表面に析出するキャリア金属が、デンドライト状に成長することが一層抑制されるため、リチウム2次電池300のサイクル特性は一層優れたものとなる。
【0073】
固体電解質310としては、一般的にリチウム固体2次電池に用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム2次電池300の用途及びキャリア金属の種類によって、公知の材料を適宜選択することができる。固体電解質310は、好ましくはイオン伝導性を有し、電子伝導性を有さないものである。固体電解質310が、イオン伝導性を有し、電子伝導性を有さないことにより、リチウム2次電池300の内部抵抗が一層低下すると共に、リチウム2次電池300の内部で短絡することを一層抑制することができる。その結果、リチウム2次電池300のエネルギー密度、容量、及びサイクル特性は一層優れたものとなる。
【0074】
固体電解質310としては、特に限定されないが、例えば、樹脂及びリチウム塩を含むものが挙げられる。そのような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、主鎖及び/又は側鎖にエチレンオキサイドユニットを有する樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリビニリデンフロライド、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリアセタール、ポリスルホン、及びポリテトラフロロエチレン等が挙げられる。上記のような樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0075】
固体電解質310に含まれるリチウム塩としては、特に限定されないが、例えば、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(O、LiB(O)F、LiB(OCOCF、LiNO、及びLiSO等が挙げられる。上記のようなリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0076】
一般に、固体電解質における樹脂とリチウム塩との含有量比は、樹脂の有する酸素原子と、リチウム塩の有するリチウム原子の比([Li]/[O])によって定められる。固体電解質310において、樹脂とリチウム塩との含有量比は、上記比([Li]/[O])が、好ましくは0.02以上0.20以下、より好ましくは0.03以上0.15以下、更に好ましくは0.04以上0.12以下になるように調整される。
【0077】
固体電解質310は、上記樹脂及びリチウム塩以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、溶媒及びリチウム塩以外の塩が挙げられる。リチウム塩以外の塩としては、特に限定されないが、例えば、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。
【0078】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、上記リチウム2次電池100が含む電解液において例示したものが挙げられる。
【0079】
固体電解質310の平均厚さは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、更に、好ましくは15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム2次電池300における固体電解質310の占める体積が減少するため、リチウム2次電池300のエネルギー密度が一層向上する。また、固体電解質310の平均厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に、好ましくは10μm以上である。そのような態様によれば、正極110と負極130とを一層確実に隔離することができ、電池が短絡することを一層抑止することができる。
【0080】
なお、本明細書において、「固体電解質」とは、ゲル電解質を含むものとする。ゲル電解質としては、特に限定されないが、例えば、高分子と、有機溶媒と、リチウム塩とを含むものが挙げられる。ゲル電解質における高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及び/又はポリエチレンオキシドの共重合体、ポリビニリデンフロライド、並びにポリビニリデンフロライド及びヘキサフロロプロピレンの共重合体等が挙げられる。
【0081】
(添加剤(異方成長抑制剤))
図3に示す第2の本実施形態のリチウム2次電池300において、異方成長抑制剤は、例えば、固体電解質に含まれている。なお、「固体電解質に異方成長抑制剤が含まれる」とは、固体電解質に浸潤した電解液中に異方成長抑制剤が存在する場合、固体電解質内部に固体状の異方成長抑制剤が含まれている場合、及び固体電解質表面に固体状の異方成長抑制剤が塗布されている場合を包含する。
【0082】
異方成長抑制剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、リチウム2次電池300全体に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。異方成長抑制剤の含有量は、リチウム2次電池300全体に対して、0.3質量%以上10質量%以下であってもよく、0.5質量%以上10質量%以下であってもよい。また、リチウム2次電池300において、異方成長抑制剤が固体電解質中に含まれている場合、異方成長抑制剤の含有量は、固体電解質全体に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上20質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、特に好ましくは1.0質量%以上10質量%以下である。異方成長抑制剤の含有量が上記の範囲にあることにより、負極表面におけるリチウム金属の異方的な成長が一層抑制される傾向にある。
【0083】
なお、図3において、負極130の表面には、固体電解質界面層(SEI層)が形成されていてもよい。形成されるSEI層は、特に限定されないが、例えば、リチウムを含む無機化合物、及びリチウムを含む有機化合物等を含んでいてもよい。SEI層の典型的な平均厚さとしては、1nm以上10μm以下である。リチウム2次電池300にSEI層が形成されている場合、堆積層は負極130とSEI層との界面に析出してもよく、SEI層と固体電解質310との界面に析出してもよい。
【0084】
(2次電池の製造方法)
リチウム2次電池300は、セパレータに代えて固体電解質を用いること以外は、上述した第1の本実施形態に係るリチウム2次電池100の製造方法と同様にして、製造することができる。
【0085】
固体電解質310の製造方法としては、上述した固体電解質310を得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、以下のようにすればよい。固体電解質に従来用いられる樹脂、及びリチウム塩(例えば、固体電解質310が含み得る樹脂として上述した樹脂及びリチウム塩。)を有機溶媒に溶解する。得られる溶液を所定の厚みになるように成形用基板にキャストすることで、固体電解質310を得る。ここで、樹脂及びリチウム塩の配合比は、上記したように、樹脂の有する酸素原子と、リチウム塩の有するリチウム原子との比([Li]/[O])によって定めてもよい。上記比([Li]/[O])は、例えば0.02以上0.20以下である。また、有機溶媒としては、特に限定されないが、例えばアセトニトリルを用いてもよい。成形用基板としては、特に限定されないが、例えばPETフィルムやガラス基板を用いてもよい。
【0086】
上記本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその本実施形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。
【0087】
例えば、本実施形態のリチウム2次電池は、リチウム固体2次電池であってもよい。そのような態様によれば、電解液を用いなくてもよいため、電解液漏洩の問題が生じず、電池の安全性が一層向上する。
【0088】
本実施形態のリチウム2次電池は、初期充電の前に、セパレータ又は固体電解質と、負極との間にリチウム箔が形成されていなくてもよい。本実施形態のリチウム2次電池は、初期充電の前に、セパレータ又は固体電解質と、負極との間にリチウム箔が形成されていない場合、製造の際に可燃性の高いリチウム金属を用いなくてよいため、一層安全性及び生産性に優れるリチウム2次電池となる。
【0089】
なお、本明細書において、「エネルギー密度が高い」又は「高エネルギー密度である」とは、電池の総体積又は総質量当たりの容量が高いことを意味するが、好ましくは900Wh/L以上又は400Wh/kg以上であり、より好ましくは1000Wh/L以上又は430Wh/kg以上である。
【0090】
また、本明細書において、「サイクル特性に優れる」とは、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクルの前後において、電池の容量の減少率が低いことを意味する。すなわち、初期容量と、通常の使用において想定され得る回数の充放電サイクル後の容量とを比較した際に、充放電サイクル後の容量が、初期容量に対してほとんど減少していないことを意味する。ここで、「通常の使用において想定され得る回数」とは、リチウム2次電池が用いられる用途にもよるが、例えば、50回、100回、500回、1000回、5000回、又は10000回である。また、「充放電サイクル後の容量が、初期容量に対してほとんど減少していない」とは、リチウム2次電池が用いられる用途にもよるが、例えば、充放電サイクル後の容量が、初期容量に対して、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上であることを意味する。
【実施例
【0091】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]
正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.05を96質量部、導電助剤としてカーボンブラックを2質量部、及びバインダーとしてポリビニリデンフロライド(PVDF)を2質量部混合したものを、12μmのAl箔の片面に塗布し、プレス成型した。得られた成型体を、打ち抜き加工により、4.0cm×4.0cmの大きさに打ち抜き、正極を得た。
【0093】
次に、8μmの電解Cu箔を、スルファミン酸を含む溶剤で洗浄した後に4.5cm×4.5cmの大きさに打ち抜き、更に、エタノールで超音波洗浄した後、乾燥させて、負極を得た。
【0094】
セパレータとして、ポリビニリデンフロライド(PVDF)及びLi(NO)の混合物で表面がコーティングされたセパレータを準備した。
【0095】
電解液として、4M LiN(SOF)(以下、「LFSI」ともいう。)のジメトキシエタン(以下、「DME」ともいう。)/1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(以下、「TTFE」ともいう。)/フロロエチレンカーボネート(以下、「FEC」ともいう。)混合溶液(DME:TTFE:FEC=8:1:1(体積比))を準備した。
【0096】
以上のようにして得られた正極、セパレータ、及び負極を、この順に積層することで積層体を得た。更に、正極及び負極に、それぞれ100μmのAl端子及び100μmのNi端子を超音波溶接で接合した後、ラミネートの外装体に挿入した。次いで、上記のようにして得られた電解液に、異方成長抑制剤としてトリフェニルアンチモンを電解液全体に対して5質量%になるように添加したものを上記の外装体に注入した。外装体を封止することにより、リチウム2次電池を得た。
【0097】
[実施例2]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、Zn(N(SOCFを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0098】
[実施例3]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、Zn(SOCFを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0099】
[実施例4]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、アセチルアセトンマグネシウム(Mg(Acac))を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0100】
[実施例5]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、Mg(SOCFを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0101】
[実施例6]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、Mg(N(SOCFを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0102】
[実施例7]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、塩化ビスマス(BiCl)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0103】
[実施例8]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、トリフェニルジフロロビスマスを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0104】
[実施例9]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスズを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0105】
[実施例10]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4(3H)-オン2,2-ジオキシドカリウム(アセスルファムカリウム)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0106】
[実施例11]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、ジメチルセレンを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0107】
[実施例12]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、トリス(アセト酢酸エチル)アルミニウム(III)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0108】
[実施例13]
異方成長抑制剤として、トリフェニルアンチモンに代えて、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)-ベンゼン錯体を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0109】
[比較例1]
異方成長抑制剤を電解液に添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0110】
[参考例1]
負極として、12μmのCu箔の片面に20μmのLi箔を圧着したものを用い、負極とセパレータとを、負極のLi箔がセパレータに対向するように積層したこと以外は、比較例1と同様にしてリチウム2次電池を得た。
【0111】
[エネルギー密度及びサイクル特性の評価]
以下のようにして、各実施例及び比較例で作製したリチウム2次電池のエネルギー密度及びサイクル特性を評価した。
【0112】
作製したリチウム2次電池を、3.5mAで、電圧が4.2Vになるまで充電した後、3.5mAで、電圧が3.0Vになるまで放電した(以下、「初期放電」という。)。次いで、7.0mAで、電圧が4.2Vになるまで充電した後、21mAで、電圧が3.0Vになるまで放電するサイクルを、温度25℃の環境で100サイクル繰り返した。各例について、初期放電から求められた容量(以下、「初期容量」という。)及び、上記100サイクル後の放電から求められた容量(以下、「容量維持率」という。)を表1に示す。なお、比較のため、実施例1の初期容量を100とした値を示す。ここで、実施例1の初期容量は、70mAhであった。
【0113】
【表1】
【0114】
表1から、異方成長抑制剤を含まない比較例1と比較して、異方成長抑制剤を含む実施例1~13は、初期容量及び容量維持率に優れ、エネルギー密度が高く及びサイクル特性に優れることがわかった。また、実施例9~13は、負極にリチウム箔を有する参考例1以上の容量維持率を示し、サイクル特性に極めて優れることがわかった。なお、参考例1は、初期充電の前に、負極表面にリチウム箔を有するため、製造の際に可燃性の高いリチウム金属を用いる必要があり、安全性及び生産性に劣り、実用上好ましくないものである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のリチウム2次電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるため、様々な用途に用いられる蓄電デバイスとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0116】
100、200、300…リチウム2次電池、110…正極、120…セパレータ、130…負極、210…正極集電体、220…堆積層、230…正極端子、240…負極端子、310…固体電解質
図1
図2
図3