(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】CD22に特異的なヒト化抗体およびそれを用いたキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20250115BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250115BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20250115BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250115BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250115BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250115BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250115BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250115BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20250115BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20250115BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/078
C12P21/08
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2023540062
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2021017693
(87)【国際公開番号】W WO2022145739
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187510
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070934
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521533463
【氏名又は名称】イノベイション バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】InnoBation Bio Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】キム、スング
(72)【発明者】
【氏名】キム、キテ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110938148(CN,A)
【文献】特表2018-518939(JP,A)
【文献】Schultz LM. et al.,Phase I Trial Using CD19/CD22 Bispecific CAR T Cells in Pediatric and Adult Acute Lymphoblastic Leukemia (ALL),Blood,2019年,Vol. 134 (Supplement_1):744
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD19結合ドメインおよびCD22結合ドメイン;
膜貫通ドメイン;
共刺激ドメイン;および
細胞内シグナル伝達ドメインを含む、二重特異性キメラ抗原受容体であって、
ここで、前記CD22結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位;及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で示されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;を含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその
抗原結合断片であることを特徴とする、
CD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記CD19結合ドメインとCD22結合ドメインが、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域-CD22に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域-CD22に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域-CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域;の順に連結されたことを特徴とする、
請求項1に記載のCD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変部位が配列番号48のアミノ酸配列で表
され、前記CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変部位が配列番号47のアミノ酸配列で表されることを特徴とする、
請求項2に記載のCD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択されるタンパク質であって、
共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40およびICOSからなる群から選択されるタンパク質であって、
細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζであることを特徴とする、
請求項1に記載のCD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間にヒンジ領域をさらに含む、
請求項1に記載のCD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド;
または
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター;
を含む
免疫エフェクター細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の免疫エフェクター細胞;を含む、
B細胞が介在する疾患を予防または治療するための医薬組成物。
【請求項10】
前記B細胞
が介在する疾患が、腫瘍、リンパ腫、非
ホジキンスリンパ腫(non-Ho
dgkins
lymphoma:NHL)、攻撃的NHL、再発性攻撃的NHL、再発性遅延性NHL、不応性NHL、不応性遅延性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小型リンパ性リンパ腫、白血病、
有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(acute
lymphocytic leukemia:ALL)、バーキットリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択されることを特徴とする、
請求項9に記載のB細胞が介在する疾患を予防または治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD22に特異的なヒト化抗体及びそれを用いたキメラ抗原受容体に関し、より具体的には、CD22に特異的に結合するヒト化抗体、前記抗体又はCD19×CD22抗体を含むキメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体を発現するCAR-T細胞、およびそれらを含むB細胞によって媒介される疾患を予防または治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CD22は、NHL、急性リンパ球性白血病(B-ALL)、慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、特に急性非リンパ性白血病(ANLL)を含むほとんどのB細胞性白血病およびリンパ腫で発現しています。
【0003】
このようなCD22発現に関連する疾患などの治療または診断のためにCD22に特異的な抗体の開発がなされている。国際公開特許WO1998-041641号は、VH44およびVL100位置にシステイン残基を有する組換え抗-CD22抗体を開示し、国際公開特許WO1998-042378号には、B細胞悪性腫瘍の治療のための抗-CD22抗体を開示している。
【0004】
上記のような治療用抗体を作製するために、通常はマウスを用いてモノクローナル抗体を作製します。しかし、マウス由来のモノクローナル抗体などの非ヒト抗体は、人体では外来抗原とみなされ、免疫応答を誘発することや半減期が短いことから治療効果が限定的であるという問題がある。
【0005】
上記の問題を解決するために、抗体の抗原に結合する領域のみを除いた残りの部分をヒト抗体に置換したヒト化抗体が開発されている。現在使用されているマウス抗体のヒト化抗体への置換方法としては、置換する抗体に対する最も類似したヒト抗体遺伝子を選定し、CDR移植と呼ばれる方法でマウス抗体のCDR部位のみをヒト抗体CDR位置に置換することである。このようなヒト化抗体は遺伝子の大部分をヒト化したため、人体内での免疫反応を減らすことができる利点がある。
【0006】
一方、B細胞の疾患や障害、自己免疫疾患、移植拒絶反応などの治療のために、上記の様々なB細胞表面マーカー(抗原)に特異的な抗体が開発されており、CD22抗原に加えて、CD19は標的として一般的に使用される抗原であり、CD19を標的とするCAR-T細胞の臨床研究も大幅に進んでいます。しかし、CD19を発現していない白血病等細胞によって標的抗原発現量に差があり、1つの抗原のみを標的とする単一CARまたは単一CAR-T細胞治療は、腫瘍細胞の免疫回避戦略により標的抗原が失われるなどの問題が発生する可能性があります。実際、B細胞ALL(急性リンパ球白血病)患者では、CD19を発現しなかったCD19陰性再発が観察され(CD19 CAR-T療法に最初に反応したB細胞ALL患者の最大25%)、この現象はCAR-T細胞治療に対する腫瘍細胞の抵抗器前に発見された(Maude、S.L.、et al.、N. Engl. J. Med.、378:439-448、2018).
【0007】
この問題を解決するために、二重または複数の抗原を標的とするCAR-T細胞が研究されており、同時に2つの抗原を標的とすることで、抗原喪失変異体の可能性を減らすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、人体内で免疫反応を減らすためにCD22に結合する抗体を選択し、これを用いてヒト化抗-CD22抗体を作製し、本発明のヒト化抗CD22抗体を用いてCD22を標的とするキメラ抗原受容体およびCAR-T細胞を調製した。
【0009】
さらに、CD22のみならずCD19を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体(Bivalent CARまたはBispecific CAR)および二重特異性CAR-T細胞を調製し、本発明で製造したCD22-CAR-T細胞および二重特異的CD19×CD22-CAR-T細胞においてキメラ抗原受容体が正常に発現することを確認し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の目的は、CD22に特異的なヒト化抗体、前記抗体をコードするポリヌクレオチド、前記抗体を発現するベクター、および前記ベクターで形質転換された組換え細胞を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、前記CD22に特異的なヒト化抗体を含むキメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および前記ポリヌクレオチドまたはベクターを含むキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、CD19およびCD22に特異的な抗体を含む二重特異性キメラ抗原受容体、前記二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および前記ポリヌクレオチドまたはベクターを含む二重特異性キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記免疫エフェクター細胞を含む、B細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的のうちの一つの目的を達成するために、
本発明は、配列番号11のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号12のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;または、配列番号15のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号16のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;を含むCD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、前記CD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0016】
または、本発明は、前記CD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記ベクターで形質転換されたCD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片を産生する組換え細胞を提供する。
【0018】
別の目的を達成するために、
本発明は、CD22結合ドメイン;膜貫通ドメイン(transmembrane domain);共刺激ドメイン(costimulatory domain);および細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signal transduction domain);を含む、キメリック抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)であって、
ここで、前記CD22結合ドメインは、配列番号11のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号12のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;または、配列番号15のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号16のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;を含む、CD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片であることを特徴とする、CD22を標的とするキメリック抗原受容体を提供する。
【0019】
本発明の好ましい例示的な実施形態では、前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択されるタンパク質であり得、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40およびICOSからなる群から選択されるタンパク質であり得、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζに由来であり得る。
【0020】
本発明の好ましい例示的な実施形態では、前記結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間にヒンジ領域をさらに含むことができ、ヒンジ部位はCD8α由来である場合もある。
【0021】
さらに、本発明は、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0022】
さらに、本発明は、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0023】
さらに、本発明は、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含み、キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を提供する。
【0024】
別の目的を達成するために、
本発明は、CD19結合ドメインおよびCD22結合ドメイン;膜貫通ドメイン;共刺激ドメイン;および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、二重特異性キメラ抗原受容体であって、
前記CD22結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位;及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で示されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片;を含むCD22に特異的に結合する抗体またはその断片であることを特徴とする、CD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体を提供する。
【0025】
本発明の好ましい例示的な実施形態において、前記CD19結合ドメインとCD22結合ドメインが、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域-CD22に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域-CD22に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域-CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変領の順に連結され得る。
【0026】
本発明の別の好ましい例示的な実施形態において、前記CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変部位は、配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含むことができ、好ましくは、配列番号48のアミノ酸配列で表すことができる。
【0027】
本発明のさらに別の好ましい例示的な実施形態では、前記CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変部位は、配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域および配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含むことができ、好ましくは配列番号47のアミノ酸配列で表すことができる。
【0028】
本発明のさらに別の好ましい例示的な実施形態では、前記膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択されるタンパク質であり得、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40、およびICOSからなるグループであり得、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζに由来に由来であり得る。
【0029】
本発明の好ましい例示的な実施形態では、前記結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間にヒンジ領域をさらに含むことができ、ヒンジ部位はCD8α由来である場合もある。
【0030】
さらに、本発明は、前記二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0031】
さらに、本発明は、前記二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0032】
さらに、本発明は、前記二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含み、二重特異性キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を提供する。
【0033】
別の目的を達成するために、
本発明は、前記CD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片;または前記免疫エフェクター細胞;を含む、B細胞が介在する疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明の好ましい例示的な実施形態では、前記B細胞によって媒介される疾患が、腫瘍、リンパ腫、非ホッキンスリンパ腫(non- Hogkins lymphoma:NHL)、攻撃的NHL、再発性攻撃的NHL、再発性遅延性NHL、不応性NHL、不応性遅延性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小型リンパ性リンパ腫、白血病、毛髪細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia:ALL)、バーキットリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明では、CD22に特異的に結合するヒト化抗体を作製し、これを用いてCD22を標的とする単一のCAR-T細胞、およびCD19およびCD22を標的とする二重特異性CAR-T細胞を作製した。
【0036】
本発明で作製したCD22-CAR-T細胞および二重特異性CD19×CD22-CAR-T細胞は、本発明において、CD22に特異的に結合するヒト化抗体に基づいて作製されたCD22-CAR-T細胞および二重特異性CD19×CD22-CAR-T細胞は、CD22抗原を効果的に認識してCAR-T細胞の活性化がなされたことを確認し、CD22を発現する細胞を効果的に死滅させることを確認した。
【0037】
さらに、本発明の二重特異性CD19×CD22-CAR-T細胞は動物モデルにおいて優れた抗腫瘍効果を示すことが確認されたので、本発明のCD22に特異的に結合するヒト化抗体ベースのCD22-CAR-T細胞および二重特異性CD19×CD22-CAR-T細胞は、CD22(または、CD19)発現に関連する疾患、またはB細胞に関連する疾患の予防または治療用組成物として有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1は、本発明で選択された2G1抗体及びヒト化2G1抗体のCD22に対する結合力をFACSにより確認したデータを示す。
図2は、CD22を標的とするキメラ抗原受容体(single CAR)を示す模式図である。
図3は、CD22-CAR発現レンチウイルスを用いたCD22-CAR発現細胞の作製方法を示す模式図である。
図4は、(A)HEK293細胞株をCD22-CAR発現レンチウイルスで形質転換する方法、および(B)形質転換したHEK293細胞のCD22ペプチドに対する結合能を確認する方法を示す模式図である。
図5は、ヒト化抗CD22抗体である2G1(V4)および2G1(V12)ベースのCD22-CARを発現するレンチウイルスで形質転換されたHEK293FT細胞におけるCD22-CARの発現レベルを確認するデータを示す。
図6は、CD22-CAR発現レンチウイルスを用いたCD22-CART細胞の作製方法を示す模式図である。
図7は、(A)末梢血単核細胞(PBMC)を用いたCD22-CART細胞の作製方法、(B)作製したCD22-CAR-T細胞のCD22ペプチドに対する結合能の確認方法を示す模式図である。
図8は、ヒト化抗CD22抗体である2G1(V4)および2G1(V12)ベースのCD22-CAR-T細胞のCD22結合能力を確認するデータを示す。
図9は、ヒト化抗CD22抗体である2G1(V4)および2G1(V12)ベースのCD22-CAR-T細胞によるU2932細胞(CD22発現細胞)およびK562細胞(CD22非発現細胞)に対するアポトーシス効果を確認するデータを示す。
図10は、ヒト化抗CD22抗体である2G1(V4)および2G1(V12)ベースのCD22-CAR-T細胞によるNALM6細胞(CD22発現細胞)およびK562細胞(CD22非発現細胞)に対するアポトーシス効果を確認するデータを示す。
図11は、CD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体(二重特異性CAR)を示す模式図である。
図12は、CD19およびCD22を標的とする二重特異性CD19×CD22-CARを発現するレンチウイルスを用いてCD19×CD22-CAR CD19発現細胞を作製する方法を示す模式図である。
図13は、抗CD19抗体FMC63およびヒト化抗CD22抗体2G1(V4)ベースのCD19×CD22-CARを発現するレンチウイルスで形質転換されたHEK293FT細胞におけるCD19×CD22(V4)-CARの発現レベルを確認するデータを示す。
図14は、抗CD19抗体およびヒト化抗CD22抗体2G1(V12)ベースのCD19×CD22-CAR(V12)を発現するレンチウイルスで形質転換されたHEK293FT細胞におけるCD19×CD22(V12)-CARの発現レベルを確認するデータを示す。
図15は、CD19×CD22-CARを発現するレンチウイルスを用いてCD19×CD22-CAR-T細胞を作製する方法を示す模式図である。
図16は、CD19×CD22-CAR-T細胞の活性化を確認するデータを示す。
CD3+CD19×CD22-CAR-T細胞(A)、CD4+CD19×CD22-CAR-T 細胞(B)、CD8+CD19×CD22-CAR-T細胞(C)では、CD19×CD22-CAR-T細胞がCD22ペプチドおよびCD19ペプチドと同時に結合することが確認された。
図17は、CD19×CD22-CAR-T細胞の活性化を確認するために、標的細胞の存在下で(A)抗CD19抗体およびマウス2G1抗体ベースのCD19×CD22(マウス)-CAR-T細胞、(B)抗CD19抗体および2G1(V4)抗体ベースのCD19×CD22(V4)-CAR-T細胞、および(C)抗CD19抗体および2G1(V12)抗体ベースのCD19×CD22(V12)-CAR-T細胞、によるIFNγの発現レベルを確認するデータを示す。
図18は、CD19×CD22-CAR-T細胞による(A)NALM6細胞(CD19とCD22発現細胞)、(B)K562細胞(CD19とCD22未発現細胞)、K562/CD19+細胞(CD19発現細胞)、K562/CD22+細胞(CD22発現細胞)、K562/CD19+/CD22+細胞(CD19とCD22発現細胞)の死滅効果を確認したデータである。
図19は、CD19×CD22(V4)-CAR-T細胞の抗腫瘍効果を確認するために、(A)マウスに注入したNALM6/Luc細胞で発現する発光をIVIS SpectrumCTで撮影し、(B)(A)での実施した実験でマウスの生存率曲線で抗腫瘍効果を示したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0040】
CD22に特異的に結合するヒト化抗体
本発明は、一態様において、配列番号11のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号12のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;または、
【0041】
配列番号15のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号16のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;を含むCD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片に関する。
【0042】
本発明において、「ヒト化抗体」という用語は、ヒトによって産生された抗体のものに対応するアミノ酸配列を所有および/または本明細書に開示されるようなヒト抗体を作製するための技術のうちの1つを使用して作製された抗体である。ヒト化抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合部分を含むヒト化抗体を特異的に排除する。
【0043】
本発明において、抗体はモノクローナル抗体であり得る。本発明において、用語「モノクローナル抗体」はシングルクローン抗体またはモノクローン抗体とも呼ばれ、単一抗体形成細胞が産生する抗体であり、一次構造(アミノ酸配列)が均一な特徴がある。ただ一つの抗原決定基のみを認識し、一般にがん細胞と抗体産生細胞を融合したハイブリドーマ細胞を培養して産生されるが、確保された抗体遺伝子配列を用いて他の組換えタンパク質発現宿主細胞を用いて生産することもできる。また、上記抗体は、必要に応じてCDR部分を除いた残りの部分をヒト化して用いることもできる。
【0044】
本明細書で使用される「CDR」、すなわち「相補性決定領域」という用語は、重鎖領域および軽鎖領域の両方の可変領域に見られる非連続の抗原結合部位を指す。
【0045】
本発明において、用語「抗体」は、2つの全長の軽鎖および2つの全長の重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の断片(断片)も使用することができる。抗体分子の断片とは、少なくともペプチドタグ(エピトープ)結合機能を保持している断片を意味し、scFv、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、単一ドメイン(single domain)などを含む。
【0046】
抗体断片のうちFaBは、軽鎖と重鎖の可変領域と、軽鎖の定常領域と重鎖の第1定常領域(CH1)を有する構造の抗原結合部位を1つ有する。FaB’は、FaB’が重鎖CH1ドメインのC末端に1つまたは複数のシステイン残基を含むヒンジ領域を有するという点でFaBとは異なる。F(F(ab’)2抗体は、FaB’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を形成する間に産生されます。Fvは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域のみを有する最小の抗体断片であり、二重鎖Fv(dsFv)はジスルフィド結合によって軽鎖可変領域と連結された重鎖可変領域を有し、単鎖Fvは(scFv)は、一般にペプチドリンカー(linker)を介して共有結合により軽鎖可変領域に連結された重鎖可変領域を有する。このような抗体断片は、タンパク質分解酵素を用いて得ることができ、または好ましくは遺伝子組換え技術によって構築することができる。
【0047】
本発明のCD22に特異的に結合するモノクローナル抗体は、CD22タンパク質の全部または一部のペプチドを免疫原(または抗原)として利用して調製することができる。より具体的には、まず免疫原としてCD22、CD22タンパク質を含む融合タンパク質、またはCD22タンパク質を含むキャリアを必要に応じて免疫増強剤であるアジュバント(例えば、Freund adjuvant)と共に、ヒト以外の哺乳動物の皮下、筋肉、静脈、イントラフットパッド、または腹腔内に1回以上の注射により免疫感作をさせる。ヒト以外の哺乳動物は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ウマまたはウシ(ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスなどの他の動物由来の抗体を産生するように操作されたトランスジェニック動物を含む)であり、より好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、鶏やウサギである。最初の免疫から約1~21日ごとに1~4回免疫を行い、最終免疫から約1~10日後に免疫感作された哺乳動物から抗体産生する細胞を得ることができる。免疫をさせる回収及び時間的間隔は、使用する免疫原の特徴等により適宜変更することができる。
【0048】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ(hybridoma)の製造は、ケイラおよびミルシュタインなどの方法(Nature、1975、Vol。256、p.495-497)およびそれに準ずる方法に従って行うことができる。上記のように免疫感作されたヒトを除く動物から採取した脾臓、リンパ節、骨髄または扁桃からなる群から選択されるいずれか、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生する細胞と自己抗体産生能力のない哺乳動物由来の骨髄腫細胞(myeloma cells)を細胞融合させることによりハイブリドーマ(hybridoma)を製造することができる。哺乳動物は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ニワトリ、ウサギまたはヒトであり得、好ましくはマウス、ラット、ニワトリまたはヒトであり得る。
【0049】
細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコールやセンダイウイルスを含む融合促進剤や電気パルスによる方法が用いられ、例えば、融合促進剤を含む融合培地に抗体産生細胞と無限増殖可能な哺乳類由来の細胞を約1:1~1:10の割合で浮遊させ、この状態で、約30~40℃で約1~5分間インキュベートする。融合培地には、例えば、MEM培地、RPMI1640培地及びイスコブ修飾ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)を含む通常の一般的なものを用いるとよく、ウシ血清などの血清流は除いておくことが好ましい。
【0050】
前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンをスクリーニングする方法は、まず、上記のように取得した融合細胞をHAT培地などの選択用培地に移し、約30~40℃で約3日~3週間培養して、ハイブリドーマ以外の細胞を死滅させる。続いて、マイクロタイタープレート(microtiter plate)等でハイブリドーマを培養した後、上述したヒトを除く動物の免疫反応に用いた免疫原と培養上清との反応性が増加した部分をRIA(radioactive substance-marked immuno antibody)またはELISA(Enzyme-LiNKed Immunosorbent Assay)などのイムノアッセイ方法を用いて見つける方法によって行うことができる。そして、上記で見つけたモノクローナル抗体を産生するクローンは、前記免疫原に対して特異的な結合力を示す。
【0051】
本発明のモノクローナル抗体は、このようなハイブリドーマを生体内外で培養することにより得ることができる。培養には、哺乳動物由来の細胞を培養するための通常の方法が用いられ、培養物などからモノクローナル抗体を採取するためには、抗体一般を精製するためのこの分野における通常の方法が用いられる。それぞれの方法としては、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、遠心分離、分別沈殿、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動等電点電気泳動などが挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて適用される。精製したモノクローナル抗体は、その後、濃縮、乾燥し、用途に応じて液相または固相とする。
【0052】
また、本発明のモノクローナル抗体は、重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNAをそれぞれ、重鎖及び軽鎖の正常領域をコードする既知のDNA(例えば、特開2007-252372号公報)号公報参照)とそれぞれ連結した遺伝子を、PCR法、または、化学合成により合成し、その遺伝子の発現を可能にする公知の発現ベクター(pCDNA 3.1(Invitrogen社販売)等に移植して形質転換体を製造し、CHO細胞や大腸菌などの宿主中で発現させることにより抗体を産生し、このような培養液から、タンパク質AまたはGカラムなどを用いて抗体を精製することにより得ることができる。
【0053】
本発明の特定の例示的な実施形態では、CD22に特異的に結合する抗体を作製するために、抗CD22抗体を産生するハイブリドーマを作製およびスクリーニングすることにより、CD22に特異的に結合する抗体(scFv)を選択し、2G1と命名した。
【0054】
2G1抗体は、配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域(GFSLTSYDI)、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域(IWTGGGT)及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域(VPHYYGYAMDYW)を含む軽鎖可変領域、および配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域(QDINKY)、配列番号5のアミノ酸および配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域(LQYDNLLT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0055】
具体的には、前記2G1抗体は、配列番号7のアミノ酸で表される重鎖可変領域および配列番号8のアミノ酸で表される軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は配列番号9の塩基配列によりコードされ、軽鎖可変領域は配列番号10の塩基配列によりコードされることが確認された。
【0056】
本発明の別の特定の実施形態では、抗CD22抗体2G1をヒトに相当する構造に改変したヒト化抗体を作製し、2G1(V4)および2G1(V12)と命名した。
【0057】
前記2G1(V4)および2G1(V12)の重鎖可変領域CDRおよび軽鎖可変領域CDRは2G1と同様であり、CDR部分を除く残りの部分はヒト化された。好ましくは、2G1(V4)は、配列番号11のアミノ酸配列で表される重鎖可変部位と配列番号12のアミノ酸配列で表される軽鎖可変部位から構成され、2G1(V12)抗体の重鎖可変部位は配列番号13の塩基配列に、軽鎖可変部位は配列番号14の塩基配列にコードされ得る。
【0058】
または、2G1(V12)は、配列番号15のアミノ酸配列で表される重鎖可変部位と配列番号16のアミノ酸配列で表される軽鎖可変部位から構成され、2G1(V12)抗体の重鎖可変部位は配列番号17の塩基配列に、軽鎖可変部位は配列番号18の塩基配列にコードされ得る。
【0059】
本発明のCD22特異的抗体は、一本鎖可変断片(scFv)であり、重鎖可変領域と軽鎖可変領域をリンカー(linker)で連結できるように遺伝子組換え技術により構築することができる。リンカーは、好ましくは、配列番号19のアミノ酸で表されるか、配列番号20、配列番号21、または配列番号22の塩基配列によってコードされ得るが、これらに限定されない。
【0060】
軽鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域として連結される場合、2G1抗体(マウス抗体)は、配列番号23のアミノ酸配列で表されてもよいし、配列番号24の塩基配列としてコードされてもよく、2G1(V4)抗体は配列番号25のアミノ酸配列で表されてもよいし、配列番号26の塩基配列としてコードされてもよく、2G1(V12)抗体は、配列番号27のアミノ酸配列で表されてもよく、または配列番号28の塩基配列でコードされてもよい。
【0061】
別の局面において、本発明は、CD22に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0062】
本発明において、「ポリヌクレオチド」という用語は、一般に、任意の長さに単離された核酸分子(nucleic acid molecule)、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体を指す。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、
(1)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などのインビトロ増幅;
(2)クローニングおよび組換え;
(3)切断およびゲル電気泳動分離などの精製;
(4)化学合成などの合成;によって製造することができ、好ましくは単離されたポリヌクレオチドは組換えDNA技術によって製造される。本発明において、抗体またはその抗原結合断片をコードするための核酸は、合成オリゴヌクレオチドの制限断片操作(restriction fragment operation)またはSOE PCRの適用を含むがこれらに限定されず、当技術分野で公知の様々な方法により、製造することができる。
【0063】
さらに別の局面において、本発明は、CD22に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、および前記ベクターで形質転換された組換え細胞に関する。
【0064】
本発明において、「ベクター(expression vector)」という用語は、適切な宿主細胞内で目的遺伝子が発現できるように、プロモーターなどの必須の調節要素を含む遺伝子調製物である。ベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターのうちの1つ以上から選択することができる。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは宿主ゲノムとは無関係に複製および機能することができ、または場合によってはゲノム自体に組み込むことができる。
【0065】
さらに、ベクターは、コード領域が適切な宿主において正確に発現されることを可能にする発現制御要素を含み得る。そのような調節要素は当業者に周知であり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写またはmRNA翻訳を調節するための他の調節要素を含み得る。発現制御配列の特定の構造は、種または細胞型の機能に応じて変わり得るが、通常、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などの転写開始および翻訳開始にそれぞれ関与する5’非-転写配列、および5’または3’非翻訳配列を含む。例えば、5’非転写発現制御配列は、機能的に連結された核酸を転写および制御するためのプロモーター配列を含み得るプロモーター領域を含み得る。
【0066】
本発明において、用語「プロモーター」は、転写を指示するのに十分な最小配列を意味する。さらに、細胞型特異的または外部のシグナルまたは制裁によって誘導される調節可能なプロモーター依存性遺伝子を発現させるのに十分なプロモーター構成を含めることができ、そのような構成は遺伝子の5’または3’部分に配置することができる。保存的プロモーターと誘導的プロモーターの両方が含まれる。プロモーター配列は、原核生物、真核生物またはウイルスに由来し得る。
【0067】
本発明において、「形質転換体」という用語は、1つ以上の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するベクターが宿主細胞に導入されて形質転換された細胞を意味し、発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を製造する方法としては文献(Sambrook、J.、et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(2版)、Cold Spring Harbor Laboratory、1.74、1989)に記載のリン酸カルシウム法または塩化カンシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法(electroporation)、電気注入法(electroinjection)、PEGなどの化学的処理方法、遺伝子銃(gene gun)などを用いる方法などがある。
【0068】
前記ベクターが発現される形質転換体を栄養培地で培養すると、抗体タンパク質を大量に製造、分離可能である。培地と培養条件は、宿主細胞によって慣用されるものを適宜選択して用いることができる。培養時の細胞の生育とタンパク質の大量生産に適するように、温度、培地のpH、培養時間などの条件を適切に調節しなければならない。
【0069】
本発明によるベクターは、抗体の産生のために宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞に形質転換することができる。完全なグリコシル化タンパク質を発現できる適切な宿主細胞株の数は当分野で開発されており、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、COS-7(例えば、ATCC CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えば、ATCC CRL-10)、CHO(例えば、ATCC CRL 1610)およびBSC-1(例えば、ATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8653、SP2/0-Agl4、293細胞、HeLa細胞などを含み、これらの細胞は、例えば、ATCC(American Type Culture Collection、米国)から容易に利用可能である。好ましい宿主細胞は、黒色腫およびリンパ腫細胞などのリンパ球起源の細胞を含む。
【0070】
CD22を標的とするキメラ抗原受容体
本発明は、他の観点から、
CD22結合ドメイン;膜貫通ドメイン;
共刺激ドメイン;および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメリック抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)で、
前記CD22結合ドメインが、配列番号11のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号12のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;または、配列番号15のアミノ酸で表される重鎖可変領域、および配列番号16のアミノ酸で表される軽鎖可変領域;を含むCD22に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片であることを特徴とする、CD22を標的とするキメラ抗原受容体に関する。
【0071】
本発明において、用語「キメリック抗原受容体(CAR)」は、一般に、抗原および1つ以上の細胞内ドメインと結合する能力を有する細胞外ドメインを含む融合タンパク質を指す。CARはキメリック抗原受容体T細胞(CAR-T)の重要な部分であり、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。CARは、抗体の抗原(例えばCD22)特異性に基づいてT細胞受容体-活性化細胞内ドメインと組み合わせることができる。遺伝子改変されたCAR発現T細胞は、標的抗原発現悪性細胞を特異的に同定し除去することができる。
【0072】
本発明において、「CD22結合ドメイン」という用語は、一般にCD22タンパク質に特異的に結合することができるドメインを指す。例えば、CD22結合ドメインは、B細胞で発現されたヒトCD22ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合することができる抗CD22抗体またはその断片を含み得る。
【0073】
本発明において、用語「結合ドメイン」は、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」および「細胞外抗原特異的結合ドメイン」は互換的に使用することができ、標的抗原(例えばCD22)に特異的に結合する能力を有するCARドメインまたは断片をという。
【0074】
本発明において、前記抗CD22抗体またはその断片は、上述の抗CD22抗体であり、モノクローナル抗体(モノクローナル抗体)、好ましくはscFv(single chain variable fragment)である。具体的には、抗CD22抗体またはその断片は、本発明のCD22に特異的なヒト化抗体である2G1(V4)または2G1(V12)抗体を用いて調製することができる。
【0075】
本発明において、キメラ抗原受容体は、CD22結合ドメインに加えてB細胞表面マーカー結合ドメインをさらに含む二重特異性キメラ抗原受容体であってもよく、B細胞表面マーカーは、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79B、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85またはCD86であり得、好ましくはCD19であり得る。
【0076】
本発明において、CD22結合ドメインのN末端にシグナルペプチドをさらに含むことができ、前記「シグナルペプチド」は一般にタンパク質送達を誘導するためのペプチド鎖を指す。
【0077】
シグナルペプチドは、5~30のアミノ酸長を有する短いペプチドであり得、本発明では、好ましくは配列番号36のアミノ酸配列を好ましく用いた。
【0078】
本発明において、CD22結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジ領域をさらに含むことができ、ヒンジ部位はCD8α由来であり、好ましくは配列番号37のアミノ酸配列で表すことができる。
【0079】
前記「ヒンジ領域」は、一般に、抗原結合領域と免疫細胞Fc受容体(FcR)結合領域との間の結合領域を指す。
【0080】
本発明において、「膜貫通ドメイン」とは、一般に細胞膜を通過し、細胞内シグナル伝達ドメインに連結されてシグナル伝達の役割を果たすCARのドメインを指す。膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152およびPD1からなる群から選択されるタンパク質に由来し得、好ましくは配列番号38のアミノ酸配列で表され得る。
【0081】
本発明において、「共刺激ドメイン」とは、一般に、リンパ球の抗原に対する効果的な反応に必要な細胞表面分子である免疫刺激分子を提供することができる細胞内ドメインを指す。上記の共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインを含み、OX40および4-1BBの共刺激ドメインなどのTNF受容体ファミリーの共刺激ドメインを含むことができ、好ましくは配列番号39のアミノ酸配列で表される4-1BBであり得る。
【0082】
本発明において、「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、一般に、細胞内に位置し、シグナルを伝達することができるドメインを指す。本発明において、細胞内シグナル伝達ドメインはキメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達ドメインである。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメイン、4-1BB細胞内ドメイン、およびOX40細胞内ドメインから選択することができ、好ましくは配列番号40のアミノ酸配列で表されるCD3ζであり得る。
【0083】
キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドおよびキメラ抗原受容体発現ベクター
本発明はさらに別の観点から、キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0084】
本発明において、キメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドは、CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;共刺激ドメインをコーティングするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み得る。
【0085】
前記CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチドは、本発明のCD22に特異的なヒト化2G1(V4)または2G1(V12)抗体をコードするポリヌクレオチドであり得、軽鎖可変部位および重鎖可変部位がリンカーで連結されたscFvの形態で、具体的な塩基配列は上述した通りである。
【0086】
好ましくは、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号26の塩基配列によって表される2G1(V4)抗体または配列番号28の塩基配列によって表される2G1(V12)抗体;
配列番号32の塩基配列で表される膜貫通ドメイン;
配列番号33の塩基配列で表される4-1BB(共刺激ドメイン);および
配列番号34の塩基配列で表されるCD3ζ(細胞内シグナル伝達ドメイン);を含み得る。
【0087】
CD22結合ドメインのN末端にシグナルペプチドが含まれる場合、配列番号30の塩基配列で表されるシグナルペプチドがさらに含まれていてもよい。または、CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチドと膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域をコードするポリヌクレオチドがさらに含まれていてもよく、好ましくは、配列番号31の塩基配列で表されるCD8ヒンジ領域であり得る。
【0088】
さらに別の局面において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0089】
本発明において、前記ベクターは組換えウイルスベクターであり、好ましくはレンチウイルスベクターであり、作動可能に連結されたEF1αプロモーター;シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド;CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み、タンパク質の発現を増加させるためにWPRE(woodchuck hepatitis virus post-transcriptional regulatory element)をさらに含み得る(
図3)。
【0090】
前記EF1αプロモーターは配列番号29の塩基配列で表され、必要に応じて前記配列番号27の塩基配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同じ配列を含み得る。
【0091】
さらに、プロモーターは、CD22結合ドメインである抗CD22抗体(scFv)の発現を誘導するように作動可能に連結されている。
【0092】
本発明の特定の例示的な実施形態では、
図3に示すように、CD22-CARをコードするポリヌクレオチドを挿入したレンチウイルスベクターを作製し、作製したベクターで293FT細胞を形質転換してCD22-CAR発現細胞を作製した。さらに、
図5に示すように、作製したCD22-CAR発現細胞において、CD22を標的とするキメラ抗原受容体が発現していることが確認された。
【0093】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスなどに由来し得る。
【0094】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段は、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースシステムを含みます。インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。核酸の最新技術の標的化送達、例えば、標的化ナノ粒子または他の適切なマイクロメータ未満の送達システムを用いたポリヌクレオチドの送達のための他の方法が利用可能である。
【0095】
非-ウイルス送達システムが使用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞への核酸の導入(インビトロまたはインビボ)のために企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合することができる。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化されるか、リポソームの脂質二重層に点在するか、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに結合するか、リポソーム内に捕捉されるか、リポソームと複合体化されるか、脂質含有溶液中に分散させるか、脂質と混合するか、脂質と組み合わせるか、脂質中に懸濁液として含有するか、ミセルと共に含有または複合体化するか、または脂質とは異なり会合することができる。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター会合組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。
【0096】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞
本発明はさらに別の観点から、CD22に特異的なヒト化抗体ベースのキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドまたはキメリック抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含み、CD22に特異的なヒト化抗体ベースのキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞に関する。
【0097】
本発明において、免疫エフェクター細胞は、哺乳動物由来の単離細胞、好ましくはT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、骨髄細胞、単核細胞またはマクロファージであり得、より好ましくはT細胞である。
【0098】
本発明において、キメリック抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞は、本発明のCARベクターを免疫エフェクター細胞、例えばT細胞またはNK細胞に導入することにより製造することができる。
【0099】
具体的には、CARベクターは、エレクトロポレーション、リポフェクタミン(lipofectamine 2000、Invitrogen)などの当技術分野で公知の方法によって細胞に導入することができる。例えば、免疫エフェクター細胞をレンチウイルスベクターでトランスフェクトして、CAR分子を運ぶウイルスゲノムを宿主ゲノムに組み込むことによって標的遺伝子の長期的かつ安定した発現を確実にすることができる。他の例では、転移因子を用いてCAR輸送プラスミドおよび転移酵素輸送プラスミドを標的細胞に導入することができる。他の例では、CAR分子を遺伝子編集方法(例えば、CRISPR/Cas9)によってゲノムに添加することができる。
【0100】
キメリック抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞を調製するための免疫エフェクター細胞は、対象から得ることができ、「対象」は免疫応答を引き出すことができる生きている生物(例えば哺乳動物)を含む。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出、脾臓組織、および腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。
【0101】
T細胞は、当業者に知られている多くの技術、例えばFicoll(商標)単離を用いて対象から収集された血液単位から得ることができる。血液からの細胞は単離輸出によって得られ、単離輸出産物は典型的にはT細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む。
【0102】
分離エクスポートによって収集された細胞は、血漿画分を除去し、細胞をその後の処理工程のために適切な緩衝液または培地に入れるために洗浄することができる。T細胞は、赤血球を溶解し、例えばパーコール(PERCOLL)TM勾配による遠心分離によってまたは逆流遠心分離によって単球を枯渇させることによって末梢血リンパ球から単離される。
【0103】
本発明のさらに別の特定の例示的な実施形態では、
図6および
図7に示すように、末梢血単核細胞(PBMC)から活性化T細胞を単離した後、CD22-CARレンチウイルスをT細胞に導入してCD22-CAR-T細胞を調製した。具体的には、ヒト化2G1(V4)および2G1(V12)を用いてCD22-CAR-T細胞をそれぞれ調製した。
【0104】
作製したCD22-CAR-T細胞の活性を確認するために、CD3、CD4またはCD8を活性化したCD22-CAR-T細胞のCD22ペプチド結合能を確認しました。
【0105】
図8に示すように、本発明で調製されたCD22-CAR-T細胞がCD22ペプチドに結合することが確認された。
【0106】
本発明のさらに別の特定の例示的実施形態では、CD22-CAR-T細胞による標的細胞に対するアポトーシス効果を確認した結果、
図9に示すように、CD22-CAR-T細胞は、U2932細胞およびCD22を発現するNALM6細胞に対して特異的にアポトーシス効果を示すことが確認された。
【0107】
すなわち、本発明のヒト化抗CD22抗体(2G1(V4)および2G1(V12))ベースのキメラ抗原受容体およびそれを用いたCAR-T細胞は、B細胞またはCD22発現に関連する疾患の予防または治療用組成物として有用に利用することができる。
【0108】
CD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)
さらに別の局面において、本発明は、
CD19結合ドメインおよびCD22結合ドメイン;
膜貫通ドメイン;
共刺激ドメイン;および
細胞内シグナル伝達ドメインを含む、二重特異性キメラ抗原受容体であって、
ここで、前記CD22結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域、及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位;及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で示されるCDR2領域、および配列番号6のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその断片であることを特徴とする、CD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体(CD19×CD22二重特異性CAR)に関する。
【0109】
本発明において、前記CD22に特異的に結合する抗体またはその断片は、配列番号7のアミノ酸配列で表される重鎖可変部位および配列番号8のアミノ酸配列で表される軽鎖可変部位からなる抗CD22抗体であるか、または、配列番号11のアミノ酸配列で表される重鎖可変部位および配列番号12のアミノ酸配列で表される軽鎖可変部位;または配列番号15のアミノ酸配列で表される重鎖可変部位および配列番号16のアミノ酸配列で表される軽鎖可変部位;からなるヒト化抗CD22抗体であり得る。
【0110】
本発明において、二重特異性(bispecific)または二価(bivalent)キメラ抗原受容体は、2つの異なる種類の抗原に同時に結合することができるCARであり、本発明において、好ましくは、CD19およびCD22の両方を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体が調製され、CD19結合ドメイン、任意の既知の抗CD19抗体配列を制限なく使用することができる。
【0111】
キメラ抗原受容体の具体的な内容は上記と同じであり、二重特異性キメラ抗原受容体のCD19結合ドメインおよびCD22結合ドメインは、
図11に示すようにループ(LoopCAR)形態で連結した。すなわち、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変部位(CD19VL)-CD22に特異的に結合する抗体の重鎖可変部位(CD22VH)-CD22に特異的に結合する抗体の軽鎖可変部位(CD22VL)-CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変部位(CD19VH)の順序で連結することができる。
【0112】
前記CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変部位は、配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含むことができ、好ましくは、配列番号48のアミノ酸配列で表すことができる。
【0113】
前記CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変部位は、配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含むことができ、好ましくは、配列番号47のアミノ酸配列で表すことができる。
【0114】
前記CD19結合ドメイン及びCD22結合ドメインは、リンカーで連結できるように遺伝子組換え技術により作製することができ、好ましくはCD19VL及びCD22VH又はCD22VL及びCD19VHは配列番号51のアミノ酸配列で表されるリンカー(
図11のリンカー)で連結することができ、CD22VH及びCD22VLは、配列番号54のアミノ酸配列で表されるリンカー(
図11のリンカー1)で連結することができるが、これに限定されず、抗体活性に影響を及ぼさない任意のアミノ酸配列からなる。ペプチドを使用することができる。
【0115】
CD19/CD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドおよびCD19/CD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体発現ベクター
さらに別の局面において、本発明は、CD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0116】
本発明において、二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、CD19結合ドメインをコードするポリヌクレオチドおよびCD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;共刺激ドメインをコードするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み得る。
【0117】
好ましくは、本発明の二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域(CD19VL;配列番号50)-CD22に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(CD22VH;配列番号9、配列番号13または配列番号17)-CD22に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域(CD22VL;配列番号10、配列番号14または配列番号18)-CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(CD19VH;配列番号49);
配列番号32の塩基配列で表される膜貫通ドメイン;
配列番号33の塩基配列で表される4-1BB(共刺激ドメイン);および
配列番号34の塩基配列で表されるCD3ζ(細胞内シグナル伝達ドメイン);を含み得る。
【0118】
前記「CD19VL及びCD22VH」又は「CD22VL及びCD19VH」が配列番号51のアミノ酸配列で表されるリンカーで連結される場合、前記リンカーのポリヌクレオチドは配列番号52又は配列番号53の塩基配列で表され得、「CD22VH及びCD22VL」が配列番号54のアミノ酸配列で表されるリンカーで連結される場合、前記リンカーに対するポリヌクレオチドは配列番号55の塩基配列で表され得るが、これに限定されず、抗体活性に影響を及ぼさない任意のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを使用することができる。
【0119】
CD19/CD22結合ドメインのN末端にシグナルペプチドが含まれる場合、配列番号30の塩基配列で表されるシグナルペプチドがさらに含まれていてもよい。また、CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチドと膜貫通ドメインとの間に、ヒンジ領域をコードするポリヌクレオチドがさらに含まれていてもよく、好ましくは、配列番号31の塩基配列で表されるCD8ヒンジ領域であり得る。
【0120】
さらに別の局面において、本発明は、二重特異性キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0121】
本発明の特定の実施形態では、ベクターは組換えウイルスベクターであり、好ましくはレンチウイルスベクターであり、作動可能に連結されたEF1αプロモーター;シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド;CD19結合ドメインおよびCD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み、タンパク質の発現を増加させるためにWPRE(woodchuck hepatitis virus post-transcriptional regulatory element)をさらに含み得る(
図12)。
【0122】
前記EF1αプロモーターは配列番号29の塩基配列で表され、必要に応じて前記配列番号27の塩基配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同じ配列を含み得る。
【0123】
さらに、プロモーターは、CD19×CD22結合ドメインである抗CD19/CD22抗体(CD19VL-CD22VH-CD22VL-CD19VH)の発現を誘導するように機能的に連結されており、ベクター上の具体的な内容は上記の通りである。
【0124】
本発明の特定の例示的な実施形態では、
図12に示すように、CD19×CD22-CARをコードするポリヌクレオチドを挿入したレンチウイルスベクターを作製し、作製したベクターで293FT細胞を形質転換してCD19×CD22-CAR発現細胞を作製した。さらに、
図13および
図14に示すように、作製したCD19×CD22-CAR発現細胞において、CD19およびCD22を標的とする二重特異性抗原受容体が発現していることが確認された。
【0125】
CD19×CD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞
さらに別の局面において、本発明は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドまたは二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含み、前記二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞に関する。
【0126】
本発明において、免疫エフェクター細胞は、哺乳動物由来の単離細胞、好ましくはT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、骨髄細胞、単核細胞またはマクロファージであり得、より好ましくはT細胞である。または、キメラ抗原受容体発現免疫エフェクター細胞に関する具体的な内容は上記の通りである。
【0127】
本発明の具体的な一実施形態では、CD22-CAR-T細胞調製と同様の方法(
図7)で末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)から活性化されたT細胞を分離した後、CD19×CD22-CARレンチウイルスをT細胞に形質導入してCD19×CD22-CAR-T細胞を作製し、具体的には2G1抗体(mouse)、ヒト化2G1(V4)および2G1(V12)を用いてCD19×CD22-CAR-T細胞をそれぞれ作製した。
【0128】
作製したCD19×CD22-CAR-T細胞の活性を確認するために、CD3、CD4またはCD8を活性化させたCD19×CD22-CAR-T細胞のCD22ペプチドとCD19ペプチドの結合能を確認しました。
【0129】
図16に示すように、本発明で作製したCD19×CD22-CAR-T細胞は、CD22ペプチドとCD19ペプチドの両方に結合することが確認された。
【0130】
本発明の別の特定の例示的な実施形態では、CD19×CD22-CAR-T細胞の活性化を確認するために、標的細胞の存在下でCD19×CD22-CAR-T細胞によるIFNγの発現レベルを確認した。その結果、
図17A~
図17Cに示すように、CD19及びCD22を発現しないK562細胞ではT細胞が活性化されないのに対し、CD19及びCD22を発現するNALM6細胞存在下ではT細胞が活性化され、IFNγの発現が上昇することが確認された。
【0131】
本発明の別の特定の例示的な実施形態では、CD19×CD22-CAR-T細胞による標的細胞に対するアポトーシス効果を確認した結果、
図18に示すように、CD19×CD22-CAR-T細胞は、CD19およびCD22を発現するNALM6細胞に対して特異的にアポトーシス効果を示すことが確認された。
【0132】
さらに、本発明のさらに別の特定の例示的な実施形態では、CD19×CD22-CAR-T細胞の抗腫瘍効果を確認するために、さらに、本発明の具体的な別の一実施形態では、CD19×CD22-CAR-T細胞の抗腫瘍効果を確認するために、腫瘍細胞を異種移植したマウスモデルにヒト化された2G1-V4抗体を用いて製造したCD19×CD22-CAR-T細胞を腫瘍内注射した後、腫瘍サイズの変化を観察した。その結果、
図19に示すように、陽性対照群として使用したSV40ウイルスと結合する抗体ベースのパリビズマブ-CAR-T細胞に比べて、本発明のCD19×CD22-CAR-T細胞の抗腫瘍効果が優れたことを確認し、CD19×CD22-CAR-T細胞を5×10
6個以上で処理した場合、腫瘍細胞がほとんど死滅して腫瘍組織が観察されなかったことを確認した。
【0133】
すなわち、本発明のCD19×CD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体およびCD19×CD22-CAR-T細胞は、B細胞またはCD19×CD22発現に関連する疾患を予防または治療するための組成物として有用に使用され得る。
【0134】
B細胞が介在する疾患またはCD19×CD22の発現が介在する疾患を予防または治療するための組成物
本発明は、別の観点から、CD22に特異的に結合するヒト化抗体、CD22を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞、あるいは、CD19×CD22に特異的に結合する二重特異性キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、B細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物に関する。
【0135】
本発明において、B細胞は、好ましくは、CD19またはCD22を発現する細胞であり得、疾患は、腫瘍/癌、リンパ腫、非ホッキンスリンパ腫(non-Hogkins lymphoma:NHL)、攻撃的NHL、再発性攻撃的NHL、再発性遅延性NHL、不応性NHL、不応性遅延性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小型リンパ性リンパ腫、白血病、毛髪細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia: ALL)、バーキットリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択することができる。
【0136】
本発明において、組成物は、B細胞が介在する疾患の治療剤を含むことができ、治療剤は、CD19またはCD22に特異的に結合する抗体と共有結合した状態で存在することができ、または本発明のCD22-CAR免疫エフェクター細胞またはCD19×CD22-CAR免疫エフェクター細胞と併用投与することができる。
【0137】
治療薬は、低分子薬物、ペプチド薬物、毒素(例えば細胞毒素)などを含む。
【0138】
前記低分子薬物は目的の薬学的活性を示し、一般に分子量が約800Da以下または2000Da以下の化合物であり得る。無機低分子は炭素原子を1つも含まない分子を指し、一方、有機低分子は少なくとも1つの炭素原子を含有する化合物を指す。
【0139】
前記ペプチド薬はポリマー化合物を含むアミノ酸を指し、これは天然および非天然ペプチド、オリゴペプチド、環状ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにペプチド模倣物を含む。ペプチド薬物は、化学合成によって得られてもよく、または遺伝的にコードされた供給源(例えば、組換え供給源)で生成されてもよい。ペプチド薬物の分子量の範囲は、200Da~10kDa以上であり得る。
【0140】
前記毒素は好ましくは細胞毒素であり、細胞毒素には非限定的に、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、シュードモナス菌体外毒素(例えば、PE35、PE37、PE38、PE40など)、サポリン、ゲルロニン、米国座空孔抗ウイルスタンパク質(PAP)、ボツリヌス毒素、ブリオジン、モモルジンおよびブガニンが含まれる。
【0141】
さらに、治療薬は抗癌剤であり得る。抗癌剤は、癌細胞の増殖を減少させ、細胞傷害性薬剤および細胞増殖抑制剤を組み合わせた非ペプチド性(すなわち、非タンパク質系)化合物を含む。抗癌剤の非限定的な例には、アルキル化剤、ニトロソ要素、抗代謝物質、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイドおよびステロイドホルモンが含まれる。ペプチド性化合物も使用することができる。
【0142】
前記医薬組成物中のCD22に特異的に結合する抗体、CD22-CAR免疫エフェクター細胞またはCD19×CD22-CAR免疫エフェクター細胞は、治療または診断用組成物内で唯一の活性成分であるか、または例えば抗T細胞、抗IFNγまたは抗LPS抗体などの他の抗体成分、またはキサンチンなどの非抗体成分を含む他の活性成分と共に使用可能である。
【0143】
医薬組成物は、治療的有効量の本発明の抗体を含むことが好ましい。本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、標的疾患または状態を治療、改善、または予防するのに必要な治療薬の量を意味し、または検出可能な程度の治療または予防効果を示すために必要な治療薬の量を指す。意味する。いくつかの抗体について、治療的有効投与量は、細胞培養アッセイまたは通常げっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、または霊長類などの動物モデルによって最初に決定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与ルートを決定するために使用することができる。そのような情報は、ヒトの投与に有用な投与量および根を決定するために使用することができる。
【0144】
ヒト患者の正確な有効量は、疾患状態の重症度、患者の一般的な健康状態、患者の年齢、体重および性別、食事、投与時間、投与頻度、薬剤組成、反応感度および治療に対する耐性/反応に依存する。できる。量は従来の実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、有効用量は0.01~50mg/kg、好ましくは0.1~20mg/kg、さらに好ましくは約15mg/kgである。
【0145】
組成物は患者に個別に投与することができ、または他の薬剤、薬剤またはホルモンと組み合わせて投与することができる。
【0146】
本発明の抗体が投与される投与量は、治療される状態の性質、悪性リンパ腫または白血病のグレード、および抗体が疾患予防レベルで使用されるか、または存在する状態を治療するために使用されるかによって異なる。
【0147】
投与頻度は、抗体分子の半減期、薬効の持続性に依存する。抗体分子が短い半減期(例えば、2~10時間)を有する場合、1日当たり1回以上の用量を提供する必要がある。あるいは、抗体分子が長い半減期(例えば、2~15日)を有する場合、1日に1回、1週間に1回、または毎月または2ヶ月あたり1回の用量を提供する必要がある。
【0148】
さらに、医薬組成物は、抗体の投与のために薬学的に許容される担体を含有してもよい。担体は、それ自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を引き起こすべきではなく、毒性がないべきである。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポオソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子などの徐々に新陳代謝される高分子であり得る。
【0149】
薬学的に許容される塩は、例えば、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩などのミネラル酸塩、または酢酸、プロピオン酸である。マロン酸および安息香酸などの有機酸の塩を使用することができる。
【0150】
治療組成物中の薬学的に許容される担体はさらに、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を含み得る。さらに、湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝物質などの補助物質がそのような組成物中に存在し得る。担体は、患者による医薬組成物の摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、および懸濁剤として製剤化することができる。
【0151】
投与のための好ましい形態は、例えば注射または注入(例えば、喪失注射または連続注入)による非経口投与に適した形態を含む。生成物が注入または注射用である場合、油または水溶性賦形剤中の懸濁剤、溶液またはエマルジョンの形態をとることができ、これは懸濁剤、保存剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。あるいは、抗体分子は無水形態であってもよく、使用前に適切な滅菌液で再構成されてもよい。
【0152】
一旦製剤化されると、本発明の組成物は患者に直接投与することができる。治療を受ける患者は動物であり得る。しかしながら、組成物はヒト患者の投与のために適合することが好ましい。
【0153】
本発明の医薬組成物は制限はないが、経口、静脈、筋肉内、動脈内、骨髄内、脊椎腔内、心室内、経皮、経皮(例えば、国際公開第98/20734号参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内または直腸経路を含む任意の経路によって投与することができる。本発明の医薬組成物を投与するためにハイポスプレーを使用することができる。典型的には、治療用組成物は液体溶液または懸濁液として注射可能な材料として調製することができる。また、注入前に液体賦形剤内容液または懸濁液に適した固体形態を製造することができる。
【0154】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射によって行うことができ、または組織の間質空間に送達することができる。さらに、組成物は創傷部位で投与することができる。用量処理は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。
【0155】
組成物中の活性成分は抗体分子であり得る。それ自体、胃腸管内で分解に敏感である。したがって、組成物が消化管を使用する経路によって投与される場合、組成物は、分解から抗体を保護するが消化管から吸収された抗体を放出する薬剤を一旦含む必要があるであろう。
【0156】
薬学的に許容される担体の完全な議論は、レミントンの薬学科学(Mack Publishing Company、NJ、1991)を利用することができる。
【0157】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、以下の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、以下の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0158】
実施例1:CD22に特異的に結合する抗体の作製と選択
CD22ペプチドに特異的な抗体を選択するために、CD22に結合する抗体を産生するハイブリドーマを作製し、抗体を選択した。
【0159】
まず、CD22タンパク質(ACRObiosystems Inc.、cat#CD2-H52H8、USA)を免疫して脾臓細胞を切り出し、マウスミエローマ細胞と細胞融合してハイブリドーマ細胞を作製した。
【0160】
細胞融合に使用されるマウスミエローマ細胞は、ヒポキサンチン グアニジン-ホスホリボシル-トランスフォラーゼ(HypoxanthineGuanidine-Phosphoribosyl-Transferase:HGPRT)遺伝子を持たないため、HAT培地で生存できませんが、ハイブリドーマは脾臓細胞との融合によりHAT培地で生存できる。HAT培地を用いてハイブリドーマのみを増殖させることができるので、一般にハイブリドーマが確立するまでHAT培地で増殖させた。
【0161】
増殖したハイブリドーマの中からCD22に結合する抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈法により選択した。まず、細胞数を96ウェル当たり1細胞以下となるようにした後、1つの細胞から増殖したクローンで得られた抗体がCD22と結合するかどうかをELISAで確認し、CD22と結合するクローンを選別した。上記のプロセスを3回繰り返し、CD22に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択した。このようにしてCD22に結合する抗体を得た。
【0162】
この抗体を2G1と命名し、これらの塩基配列とアミノ酸配列を解析した。配列解析結果による各抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列情報を下記表1に示し、表1中の下線部は相補性決定領域(CDR)を意味する。
【0163】
【0164】
実施例2:2G1抗体ベースのヒト化抗体の調製
実施例1で選択した2G1抗体をヒトに相当する構造に変更したヒト化抗体(humanized antibody)を作製した。
【0165】
具体的には、ヒト抗体の生殖系列配列(germline sequence)をフレームとして、CD22に結合するマウス抗体のCDRをヒト抗体のCDRに置き換えるCDR移植法により、マウス2G1抗体をヒト化抗体に構築した。ヒト化抗体を2G1(V4)および2G1(V12)と命名し、それらのアミノ酸配列を分析した。配列解析結果による抗体の重鎖可変領域、および軽鎖可変領域の配列情報を以下の表2および3に示し、表2および3中の下線部は相補性決定領域(CDR)を意味する。
【0166】
【0167】
【0168】
実施例3:選択した抗体のCD22に対する特異性の確認
本発明では、実施例1の2G1抗体(マウス)、ヒト化2G1(V4)抗体および2G1(V12)抗体のCD22に対する特異性を確認するためにフローサイトメトリー(flow cytometer)を行った。
【0169】
まず、CD22を発現する非細胞リンパ腫U2932(B-cell lymphoma U2932 cell)細胞1×106個を2G1抗体1μgと30分間反応させた後、二次抗体で表面を染色し、フローサイトメーターで測定した。
【0170】
陽性対照としてPE-コンジュゲーションされた抗CD22抗体(PE-conjugated anti-CD22 antibody; Biolegend Inc.、cat# 302506、米国) を陽性対照として使用し、二次抗体としてPE-コンジュゲーションされた抗マウスIgG抗体(PE-conjugated goat anti-mouse IgG; Biolegend Inc.、cat# 405307,米国)を使用した。
【0171】
その結果、
図1に示すように、2G1抗体、ヒト化2G1(V4)および2G1(V12)抗体はいずれもCD22発現細胞に特異的に結合することが確認された。
【0172】
実施例4:CD22を標的としたキメラ抗原受容体(CD22-CAR)発現ベクターの構築
本発明では、実施例2で作製したヒト化2G1(V4)および2G1(V12)抗体を用いて、CD22を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するレンチウイルスベクター(CD22-CARレンチウイルス)を構築した。
【0173】
図3の模式図に示すように、
EF1αプロモーター(配列番号29);
シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30);
CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号:26で表される2G1-V4または、配列番号:28で表される2G1-V12);
CD8ヒンジ領域をコードするポリヌクレオチド(配列番号:31);
膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号:32);
4-1BB(共刺激ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号:33);
CD3ζ(細胞内シグナル伝達ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号:34);および
WPREをコードするポリヌクレオチド(配列番号:35);からなるCAR DNAをin vitroで合成し、第3世代レンチウイルスベクターに挿入した。
【0174】
レンチウイルスベクターは、レンチウイルスベクターは、pMDLg/pRRE(Addgene、cat##12251)pMD2.G(Addgene、cat##12259)、pRSV-Rev(Addgene、cat##12253)の3つのベクターと共にHEK293FT細胞に共感染(co -トランスフェクション)した後、CD22-CARレンチウイルスを産生した。共感染のために、Lipofectamine 3000トランスフェクションキット(Invitrogen、cat#L3000-015)とOpti-MEM+GlutaMAX(gibco、cat#51985-034)培地を用いて3つのベクターとHEK293FT細胞を4時間培養した。
【0175】
レンチウイルスベクターでトランスフェクトされたHEK293FTにおいてCD22特異的なCARが発現されることを確認した結果(
図4B)、
図5に示すように、抗CD22抗体発現が正常に行われることを確認した。
【0176】
実施例5:CD22-CAR-T細胞の調製
本発明では、上記実施例4で製造したCD22-CARレンチウイルスベクターをT細胞に形質転換してヒト化抗CD22抗体(2G1(V4)及び2G1(V12))ベースのCD22-CAR-T細胞をそれぞれ作製した。
【0177】
具体的には、
図7に示す模式図のように、血液から末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)を分離した後、T細胞活性化ビーズ(T cell activation bead; Miltenyl Biotec、cat#130-091-441))を用いてT細胞を活性化した。活性化T細胞に上記実施例5で製造したCD22-CARレンチウイルスをT細胞に形質導入してCD22-CAR-T細胞を作製した。
【0178】
CD22-CAR-T細胞のCD22ペプチド結合能はフローサイトメトリー法により確認した。上記で調製したCD22-CAR-T細胞(2G1-V4および2G1-V12)を抗CD3、抗CD4、抗CD8抗体を用いてCD3、CD4またはCD8が活性化されたCD22-CAR-T細胞でそれぞれ分類した後、FITC-CD22ペプチドと反応させた後、FACS機を用いて蛍光強度を測定した。
【0179】
その結果、
図8に示すように、CD3、CD4またはCD8が活性化されたCD22-CAR-T細胞ともCD22ペプチドと結合することを確認した。
【0180】
実施例6:CD22発現細胞に対するCD22-CAR-T細胞のアポトーシス効果の確認
本発明では、ヒト化抗CD22抗体(2G1(V4)および2G1(V12))ベースのCD22-CAR-T細胞による標的細胞の死滅効果を確認した。
【0181】
標的細胞としてCD22を発現しないK562細胞(human erythroleukemic cell line)とCD22を発現するU2932細胞(B cell lymphoma)およびNALM6細胞(human B cell precursor leukemia)を用い、CD22-CAR-T細胞と1:4、1:2、1:1、1:0.5、1:0.25の比率になるようにそれぞれ混合して8時間インキュベートした後、ルミネセンス(CytoTox-Glo Cytotoxicity Assay、Promega、 cat. NO G9291)を測定した。測定した値として下記式(1)を用いてアポトーシスの程度を計算した。
【0182】
[数式1]
% 細胞毒性=[(実験的-エフェクター自発-ターゲット自発)/(ターゲットの最大-ターゲット自発)]×100
・実験的(Experimental):標的細胞およびCAR-T細胞複合培養の培地から導出された発光値
・エフェクター自発(Effector Spontaneous):CAR-T細胞のみの培地から導出された発光値
・ターゲット自発(Target Spontaneous):標的細胞のみの培地から導出された発光値
・ターゲットの最大(Target Maximum):標的細胞の100%溶解(溶解試薬(Lysis Reagent)利用)から導出された発光値
【0183】
その結果、
図9および
図10に示すように、ヒト化抗CD22抗体(2G1(V4)および2G1(V12))ベースのCD22-CAR-T細胞は、CD22を発現するU2932細胞およびNALM6細胞を特異的で死滅させることを確認した。
【0184】
本発明では、上記実験により、ヒト化抗CD22抗体(2G1(V4)及び2G1(V12))に基づくCD22-CAR-T細胞により、下垂性巨大B細胞リンパ腫(Diffuse Large B-cell Lymphoma)由来U2932細胞及び急性リンパ球性白血病(acute lymphoblastic leukemia)由来のNALM6細胞を特異的に死滅させることを確認した。
【0185】
すなわち、本発明のヒト化抗CD22抗体(2G1(V4)および2G1(V12))ベースのキメラ抗原受容体およびそれを用いたCAR-T細胞は、B細胞またはCD22発現に関連する疾患予防または治療用組成物として有用に利用することができる。
【0186】
実施例7:CD19/CD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体発現ベクターの構築
上記実施例4と同様にして、CD19およびCD22を標的とする二重特異性キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスベクター(CD19×CD22-CARレンチウイルス)を作製した。
【0187】
図11の模式図に示すように、
EF1αプロモーター(配列番号29);
シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30);
CD19/CD22結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;
CD8ヒンジ部位をコードするポリヌクレオチド(配列番号31);
膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号32);
4-1BB(共同刺激ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号33);
CD3ζ(細胞内シグナル伝達ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号34);と
WPREをコードするポリヌクレオチド(配列番号35);からなるCAR DNAをin vitroで合成し、第3世代レンチウイルスベクターに挿入した。
【0188】
本発明では、CD19結合ドメインは公知の抗CD19抗体(FMC63)を用い、CD22結合ドメインは本発明の2G1抗体、2G1(V4)抗体および2G1(V12)抗体を用いた。
【0189】
CD19×CD22結合ドメインは、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変部位(CD19VL)-CD22に特異的に結合する抗体の重鎖可変部位(CD22VH)-CD22に特異的に結合する抗体の軽鎖可変部位(CD22VL)-CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変部位(CD19VH)に順に連結し(LoopCAR)、それらをコードするポリヌクレオチドの配列情報は以下の通りである:
CD19×2G1:配列番号50の塩基配列で表されるCD19VL-配列番号52の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー1)-配列番号9の塩基配列で表されるCD22VH-配列番号55の塩基配列表示されるリンカー(
図11のリンカー6)-配列番号10の塩基配列で表されるCD22VL-配列番号53の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー1);
CD19×2G1(V4):配列番号50の塩基配列で表されるCD19VL-配列番号52の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー1)-配列番号13の塩基配列で表されるCD22VH-配列番号55の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー6)-配列番号14の塩基配列で表されるCD22VL-配列番号53の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー1)なるCD19VH;
CD19×2G1(V12):配列番号50の塩基配列で表されるCD19VL-配列番号52の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー1)-配列番号17の塩基配列で表されるCD22VH-配列番号55の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー6)-配列番号18の塩基配列で表されるCD22VL-配列番号53の塩基配列で表されるリンカー(
図11のリンカー1)なるCD19VH。
【0190】
レンチウイルスベクターは、pMDLg/pRRE(Addgene、cat##12251) pMD2.G(Addgene、cat##12259)、pRSV-Rev(Addgene、cat##12253)の3つのベクターと共にHEK293FT細胞に共感染(co-トランスフェクション)した後、CD19/CD22-CARレンチウイルスを産生した。共感染のために、Lipofectamine 3000トランスフェクションキット(Invitrogen、cat#L3000-015)とOpti-MEM + GlutaMAX(gibco、cat#51985-034)培地を用いて3つのベクターとHEK293FT細胞を4時間培養した。
【0191】
レンチウイルスベクターでトランスフェクトされたHEK293FTにおいてCD19×CD22特異的なCARが発現されることを確認したところ、
図13および
図14に示すように、抗CD19/抗CD22抗体発現が正常に行われることを確認した。
【0192】
実施例8:CD19×CD22-CAR-T細胞の調製
本発明では、上記実施例7で作製したCD19×CD22-CARレンチウイルスベクターを実施例5と同様の方法でT細胞に形質転換し、CD19×CD22-CAR-T細胞であるCD19×2G1、CD19×2G1(V4)及びCD19×2G1(V12)をそれぞれ製造した。
【0193】
CD19×CD22-CAR-T細胞がCD22ペプチドに結合する能力は、フローサイトメトリー法によって確認されました。
CD19×CD22-CAR-T細胞(CD19×2G1、CD19×2G1(V4)、CD19×2G1(V12))を、抗CD3、抗CD4、抗CD8抗体を用いてCD3、CD4またはCD8が活性化されたCD19×CD22-CAR-T細胞にそれぞれ分類した後、PE-CD19ペプチドおよびFITC-CD22ペプチドと反応させた後、フローサイトメーター機を用いて蛍光強度を測定した。
【0194】
その結果、
図16に示すように、CD3、CD4またはCD8が活性化されたCD19×CD22-CAR-T細胞はすべて、CD19ペプチドおよびCD22ペプチドに結合することが確認された。
【0195】
実施例9:CD22発現細胞におけるCD19×CD22-CAR-T細胞の活性化の確認
本発明では、上記実施例8で製造したCD19×CD22-CAR-T細胞がCD22発現細胞特異的に活性化されることを確認するために、標的細胞の存在下でCD19×CD22-CAR-T細胞によるIFNγ発現程度を確認した。
【0196】
標的細胞はCD19およびCD22を発現しないK562細胞(ATCC、cat#CCL-243)およびCD19およびCD22を発現するNALM6細胞(human B cell precursor leukemia)を利用し、CD19/CD22-CAR-T細胞と標的細胞を2:1、1:1、0.5:1、0.25:1比で一定時間反応させた後、surface&intra抗体で染色し、フローサイトメーターで測定した(INF-r、CD4、CD8染色)。
【0197】
その結果、
図17A~
図17Cに示すように、CD19及びCD22を発現しないK562細胞ではT細胞が活性化されていないのに対し、CD19及びCD22を発現するNALM6細胞の存在下でT細胞が活性化されてIFNγ発現が増加する。することを確認した。
【0198】
実施例10:CD22またはCD19発現細胞に対するCD19×CD22細胞のアポトーシス効果の確認
本発明では、ヒト化抗CD22抗体(2G1(V4)および2G1(V12)ベースのCD19×CD22-CAR-T細胞)による標的細胞の死滅効果を確認した。
【0199】
標的細胞としてCD19およびCD22を発現しないK562細胞(human erythroleukemic cell line)とCD19およびCD22を発現するNALM6細胞(human B cell precursor leukemia)を用い、CD19×CD22-CAR-T細胞と1:4、1:2、1:1、1:0.5および1:0.25の比率となるようにそれぞれ混合して8時間培養した後、ルミネセンス(CytoTOX-Glo CytotOXicity Assay、Promega、cat# G9291)を測定した。測定した値で実施例6の式1を用いて細胞死滅の程度を計算した。
【0200】
その結果、
図18Aに示すように、マウス由来の2G1ベースのCD19×2G1 CAR-T、2G1のヒト化抗体ベースのCD19×2G1(V4)CAR-T、および2G1の別のヒト化抗体ベースのCD19×2G1(V12)CAR-T細胞はCD22およびCD19を発現するNALM6細胞を特異的に死滅させることを確認した。
【0201】
本発明では、CD19とCD22を発現しないK562細胞(ATCC、cat#CCL-243)をCD19もしくはCD22もしくはCD19×CD22を発現する3つの細胞K562/CD19+、K562/CD22+、K562/CD19+/CD22+を作製し、ヒト化抗体に基づくCD19×2G1(V4)CAR-T細胞による標的細胞の死滅効果を確認した。その結果、
図18Bに示すように、CD19×2G1(V4)CAR-T細胞は、CD22もしくはCD19もしくはCD19/CD22を発現する細胞を特異的に死滅させることを確認した。
【0202】
実施例11:動物モデルにおけるCD19/CD22-CAR-T細胞の抗腫瘍効果の確認
本発明では、腫瘍細胞を異種移植したマウスモデルを用いてCD19×CD22-CAR-T細胞の抗腫瘍効果を確認した。
【0203】
9週齢のNOD/SCIDマウスに1×106個のNALM6/Luc細胞を静脈注射で注入した後、5日目に少数(Low) 0.5×106個、中数(medium) 1×106個、多数(high) 5×106個のCD19×CD22-CAR-Tをそれぞれ静脈注射で注入し、陽性対照群には1.25×107個の Palivizumab CAR-T細胞を注入した。細胞注入後、3日、8日、15日、22日および29日目にNAML6/Lucの細胞で発現するルミネセンスをIVIS SpectrumCTでin vitroで撮影し、NALM6/Luc細胞の増殖抑制で抗腫瘍効果を観察した。
【0204】
その結果、
図19Aに示すように、陽性対照群として使用したSV40ウイルスと結合する抗体パリビズマブ(Palivizumab)のscFvに由来するPalivizumab CAR-T細胞とCAR-Tを注入しなかった動物群と比較して、本発明のCD19×CD22-CAR-T細胞の抗腫瘍効果が優れていることを確認し、CD19×CD22-CAR-T細胞を5×10
6個以上で処理する場合、腫瘍細胞がほとんど死滅してCAR-Tを注入して29日まで発光(luminescence)を発現する腫瘍細胞が全く観察されなかったことを確認した。
【0205】
これらの結果を
図19Bに生存率曲線で示した結果、中間数(medium)1×10
6、多数(high)5×10
6のCD19×CD22-CAR-Tを注入したマウスは29日まで全て生存したことを確認した。
【配列表】