(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ウイルス捕集装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/41 20060101AFI20250115BHJP
B03C 3/12 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B03C3/41 J
B03C3/12
(21)【出願番号】P 2024175039
(22)【出願日】2024-10-04
【審査請求日】2024-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521380340
【氏名又は名称】株式会社雷神の風
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100215267
【氏名又は名称】古屋 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100215555
【氏名又は名称】今井 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100135530
【氏名又は名称】河野 智代
(72)【発明者】
【氏名】細田 悟
(72)【発明者】
【氏名】瑞慶覧 章朝
(72)【発明者】
【氏名】沖野 晃俊
(72)【発明者】
【氏名】神田 一弘
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-198650(JP,A)
【文献】特開2008-295937(JP,A)
【文献】特開2021-171698(JP,A)
【文献】特開2022-052560(JP,A)
【文献】特開2024-157249(JP,A)
【文献】国際公開第2014/204310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00 - 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管部と、
前記管部の一端に設けられたフランジ部と、
前記管部に設けられ、放電される第1電極と、
前記第1電極に対向して配置されるウイルス捕集部と、を備え
、
前記フランジ部の外径は、前記ウイルス捕集部の開口部の外径よりも小さく、前記フランジ部および前記ウイルス捕集部の間に隙間が形成され、前記隙間から排風する、
ウイルス捕集装置。
【請求項2】
前記フランジ部に配置され
、放電しないことにより静電界を形成する電極である第2電極を更に備える、
請求項1に記載のウイルス捕集装置。
【請求項3】
前記第1電極は針状またはブラシ状であり、前記管部の長手軸方向と平行方向に配置される、
請求項1または2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項4】
前記第1電極は、前記管部の中心軸に重複し、または前記中心軸の近傍に配置される、
請求項1または2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項5】
前記第2電極は、前記フランジ部の一面に設けられる、
請求項2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項6】
前記第2電極は、前記ウイルス捕集部に対向する前記フランジ部の対向面に設けられる、
請求項5に記載のウイルス捕集装置。
【請求項7】
前記第2電極は、板状からなる形態である、
請求項2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項8】
前記管部の他端に接続し、前記管部の他端から前記管部の内部に送風するファン部を更に備える、
請求項1または2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項9】
前記第1電極にコロナ放電を発生させる、
請求項1または2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項10】
前記ウイルス捕集部には水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物が収容される、
請求項1または2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項11】
静置状態において、前記第1電極の下端から、前記ウイルス捕集部に収容されている前記収容物の液面または固体の表面までの距離は、直線距離で5mm以上50mm以下の範囲であり、
放電しないことにより静電界を形成する電極である第2電極から、前記ウイルス捕集部に収容されている前記収容物の液面または固体の表面までの距離は、直線距離で3mm以上20mm以下の範囲である、
請求項
10に記載のウイルス捕集装置。
【請求項12】
前記管部の内径は、前記第1電極の下端から前記ウイルス捕集部に収容されている前記収容物の液面または固体の表面までの距離の5倍以下である、
請求項
10に記載のウイルス捕集装置。
【請求項13】
前記第1電極および
放電しないことにより静電界を形成する電極である第2電極が互いに導通していない、
請求項1または2に記載のウイルス捕集装置。
【請求項14】
管部と、
前記管部の一端に設けられたフランジ部と、
前記フランジ部に設けられ
、放電しないことにより静電界を形成する電極である第2電極と、
前記第2電極に対向して配置されるウイルス捕集部と、を備え、
前記フランジ部の外径は、前記ウイルス捕集部の開口部の外径よりも小さく、前記フランジ部および前記ウイルス捕集部の間に隙間が形成され、前記隙間から排風し、
放電される第1電極を前記フランジ部の内周縁部に沿って配置する、
ウイルス捕集装置。
【請求項15】
管部と、
前記管部の一端に設けられたフランジ部と、
前記フランジ部に設けられ
、放電しないことにより静電界を形成する電極である第2電極と、
前記第2電極に対向して配置されるウイルス捕集部と、を備え、
前記フランジ部の外径は、前記ウイルス捕集部の開口部の外径よりも小さく、前記フランジ部および前記ウイルス捕集部の間に隙間が形成され、前記隙間から外気を吸い込み、
放電される第1電極を前記フランジ部の外周縁部に沿って配置する、
ウイルス捕集装置。
【請求項16】
前記第1電極はブラシ状である、
請求項
14または
15に記載のウイルス捕集装置。
【請求項17】
前記第1電極と前記第2電極とが電気的に接続されている、
請求項
14または
15に記載のウイルス捕集装置。
【請求項18】
前記管部の他端に接続し、前記管部の他端から前記管部の外部に送風するファン部を更に備える、
請求項
15に記載のウイルス捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウイルス捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中の浮遊ウイルスやエアロゾルを除去する装置として様々なものが知られている。例えば、特許文献1には、棘無し第1板状電極と棘付き第2板状電極とを絶縁部材を介して接地極の軸方向に積層する構造を有する荷電極を備える電気集塵機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、棘無し第1板状電極および棘付き第2板状電極、並びに筒状の接地極との間において印加し、2か所において空気に含まれるウイルスを不活化または細菌の死滅を実現させることを意図している。しかしながら、棘無し第1板状電極および棘付き第2板状電極が接地極の内径の面方向に延在していることから、このような接地極の軸方向に積層する構造が軸方向におけるウイルスの捕集の妨げになり、効率的なウイルスの捕集が困難になり得る。
【0005】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、効率的なウイルスの捕集を行うことができるウイルス捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のウイルス捕集装置は、
管部と、
前記管部の一端に設けられたフランジ部と、
前記管部に設けられ、放電される第1電極と、
前記第1電極に対向して配置されるウイルス捕集部と、を備える。
【0007】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記フランジ部に配置される第2電極を更に備えていてもよい。
【0008】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第1電極は針状またはブラシ状であり、前記管部の長手軸方向と平行方向に配置されてもよい。
【0009】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第1電極は、前記管部の中心軸に重複し、または前記中心軸の近傍に配置されてもよい。
【0010】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第2電極は、前記フランジ部の一面に設けられていてもよい。
【0011】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第2電極は、前記ウイルス捕集部に対向する前記フランジ部の対向面に設けられていてもよい。
【0012】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第2電極は、板状からなる形態であってもよい。
【0013】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記管部の他端に接続し、前記管部の他端から前記管部の内部に送風するファン部を更に備えていてもよい。
【0014】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記フランジ部の外径は、前記ウイルス捕集部の開口部の外径よりも小さくてもよい。
【0015】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第1電極にコロナ放電を発生させるようになっていてもよい。
【0016】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記ウイルス捕集部には水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物が収容されるようになっていてもよい。
【0017】
本開示のウイルス捕集装置においては、
静置状態において、前記第1電極の下端から、前記ウイルス捕集部に収容されている前記収容物の液面または固体の表面までの距離は、直線距離で5mm以上50mm以下の範囲であり、前記第2電極から、前記ウイルス捕集部に収容されている前記収容物の液面または固体の表面までの距離は、直線距離で3mm以上20mm以下の範囲であってもよい。
【0018】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記管部の内径は、前記第1電極の下端から前記ウイルス捕集部に収容されている前記収容物の液面または固体の表面までの距離の5倍以下であっていてもよい。
【0019】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第1電極および前記第2電極が互いに導通していなくてもよい。
【0020】
本開示のウイルス捕集装置は、
管部と、
前記管部の一端に設けられたフランジ部と、
前記フランジ部に設けられた第2電極と、
前記第2電極に対向して配置されるウイルス捕集部と、を備え、
第1電極を前記フランジ部の内周縁部に沿って配置する。
【0021】
本開示のウイルス捕集装置は、
管部と、
前記管部の一端に設けられたフランジ部と、
前記フランジ部に設けられた第2電極と、
前記第2電極に対向して配置されるウイルス捕集部と、を備え、
第1電極を前記フランジ部の外周縁部に沿って配置する。
【0022】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第1電極はブラシ状であってもよい。
【0023】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記第1電極と前記第2電極とが電気的に接続されていてもよい。
【0024】
本開示のウイルス捕集装置においては、
前記管部の他端に接続し、前記管部の他端から前記管部の外部に送風するファン部を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本開示のウイルス捕集装置によれば、効率的なウイルスの捕集を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の概略斜視図である。
【
図2】本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の内部構造を概略的に示す図であって、
図1のA-A断面図である。
【
図3】本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
【
図4】本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第2電極を更に備える形態を示すウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
【
図5】本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第1電極がフランジ部の内周縁部に沿って配置された形態を示すウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
【
図6】本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第1電極がフランジ部の外周縁部に沿って配置された形態を示すウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
【
図7】本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第1電極および第2電極がブラシ状の電極である形態を示すウイルス捕集装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
図1乃至
図7は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置を示す図である。このうち、
図1は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の概略斜視図である。
図2は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の内部構造を概略的に示す図であって、
図1のA-A断面図である。
図3は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
図4は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第2電極を更に備える形態を示すウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
図5は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第1電極がフランジ部の内周縁部に沿って配置された形態を示すウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
図6は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第1電極がフランジ部の外周縁部に沿って配置された形態を示すウイルス捕集装置の内部構造の一部を概略的に示す図である。
図7は、本開示の実施の形態によるウイルス捕集装置の変形例において、第1電極および第2電極がブラシ状の電極である形態を示すウイルス捕集装置の概略斜視図である。
【0028】
<ウイルス捕集装置1の説明>
図1に示すように、ウイルス捕集装置1は、病原微生物を捕集する装置であり、細菌、真菌等の生物に感染症を引き起こす病原微生物を空気とともに吸引し、病原微生物を捕集することができる機器である。また、本明細書において、「病原微生物」には各種ウイルスが含まれる。
【0029】
本実施の形態によるウイルス捕集装置1は、管部10と、管部10の一端に設けられたフランジ部20と、管部10の内部に配置される第1電極30と、第1電極30に対向して配置されるウイルス捕集部40と、を備える。なお、図面中の黒丸はウイルス等の病原微生物を表す。
【0030】
管部10は、両端が開口する筒状の部材であり、ウイルス捕集装置1を静置した状態において、中心軸が接地面に対する垂直方向と平行方向に配置される。
【0031】
フランジ部20は管部10の一端に設けられた環状の部分であり、ウイルス捕集装置1を静置した状態において、ウイルス捕集部40に対向して配置されている管部10の一端側に形成された開口の縁部に設けられた部材である。フランジ部20は管部10の中心軸に対して垂直方向に拡径して設けられる。
【0032】
第1電極30は、管部10の内部空間に配置される電極である。第1電極30には電源が接続しており、電源から電流が供給される。また、第1電極30は針状、ブラシ状、刷毛状の長手軸を有する電極であり、第1電極30の長手軸方向は、管部10の中心軸と同一の方向(管部10の長手軸方向または平行方向)に配置される。このとき、ウイルス捕集装置1を静置した状態において、第1電極30の下端および下端の先端方向に、病原微生物を帯電させるためのコロナ放電を発生させる。コロナ放電により、第1電極30の周辺に存在する空気が電気的に分解され、イオン性物質が発生する。そして、コロナ放電を発生しているエリアに病原微生物が進入すると、病原微生物の粒子にはプラスのイオンが付与され、プラスに帯電する。また、第1電極30の突起の先端は、ウイルス捕集部40に対向して配置されるフランジ部20の対向面を越えないように配置される。また、第1電極30は、管部10の中心軸に重複して、または管部10の中心軸の近傍に配置される。なお、本明細書においてブラシ状の第1電極30は、直径6μm程度のカーボンナノファイバーが6000本程度束ねられたものを含む。
【0033】
また、第1電極30は係止部材に取り付けられることにより、ウイルス捕集装置1に配置可能になっている。係止部材は複数の孔が形成された平板状の部材であり、係止部材の中央部には第1電極30の一部を係止可能な係止箇所を有する。
【0034】
ウイルス捕集部40は、第1電極30により帯電した病原微生物を捕集する容器部材である。ウイルス捕集部40には水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物として板、シート、不織布、ゲル状の物質といった媒体が収容されており、第1電極30により帯電し、クーロン力の作用により落下している病原微生物が捕集され、病原微生物の周囲への拡散も防止される。ウイルス捕集装置1を静置した状態において、フランジ部20に対向して配置されるウイルス捕集部40の対向部分には開口が形成されている。また、ウイルス捕集部40に収容される媒体は、ウイルス捕集部40の開口を越えない程度の量が収容されている。また、フランジ部20の外径は、ウイルス捕集部40の開口(開口部)の外径よりも小さい。そのため、ウイルス捕集装置1において、フランジ部20とウイルス捕集部40との間に隙間が形成される。
【0035】
ウイルス捕集装置1の静置状態において、第1電極30の下端から、ウイルス捕集部40に収容されている水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物としての板、シート、不織布、ゲル状の物質の液面または固体の表面までの距離は、直線距離で5mm以上50mm以下の範囲を取り得る。第1電極30の下端から、ウイルス捕集部40に収容されている水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物としての板、シート、不織布、ゲル状の物質の液面または固体の表面までの距離が直線距離で5mm未満の場合には、液面または固体の表面と第1電極30との間の空間を維持することが困難になり、揺れ等に伴うウイルス捕集装置1の対処やメンテナンスの観点から不都合が生じる可能性が高くなる。また、第1電極30の下端から、ウイルス捕集部40に収容されている水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物としての板、シート、不織布、ゲル状の物質の液面または固体の表面までの距離が直線距離で50mmを超える場合には、病原微生物に対する捕集効果を奏するために必要な電圧が高くなりすぎることになってしまう。本実施の形態では、10mm前後の長さを想定して例示し説明する。
【0036】
ここで、管部10の内径(L1)は、第1電極30の下端から、ウイルス捕集部40に収容されている水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物としての板、シート、不織布、ゲル状の物質の液面または固体の表面までの直線距離(L2)の5倍以下となり得、3.5倍以下かつ2.5倍以上であることが好ましく、3.5倍以下かつ2.8倍以上であることがより好ましく、3.2倍以下かつ2.8倍以上であることが更に好ましい。L1>L2×5の場合には、病原微生物が第1電極30における放電エリアを経由する可能性が低下し、放電エリアを通過することなく気流にのって搬送され得る。
【0037】
ウイルス捕集装置1は、更にファン部50を備える。ファン部50は、管部10の他端に接続し、管部10の他端から管部10の内部に送風するための送風機である。ファン部50には駆動のための動力源が接続しており、動力源からの動力により、管部10の他端から管部10の内部に送風する。ファン部50の送風機能により、ウイルス捕集装置1の機外から、ウイルス捕集装置1の機内に空気を取り込み、同時に、空気に含まれる病原微生物も機内に取り込むことができる。
【0038】
<ウイルス捕集装置1の動作説明>
次に、ウイルス捕集装置1の動作について、図面を用いて説明する。
【0039】
図3に示すように、ウイルス捕集装置1が駆動されると、ファン部50の作用によりウイルス捕集装置1の内部に空気等の気体が取り込まれる。その際、空気中の病原微生物もウイルス捕集装置1の内部に取り込まれる。
【0040】
次に、ウイルス捕集装置1の内部に取り込まれた病原微生物は気流にのり、管部10を通過する。管部10を通過した病原微生物は、第1電極30においてコロナ放電を発生しているエリアに向けて搬送される。
【0041】
第1電極30においてコロナ放電を発生しているエリアに到達した病原微生物は、コロナ放電により電荷を与えられて帯電されることにより荷電する。荷電された病原微生物はクーロン力によりウイルス捕集部40に捕捉される。そして、ファン部50の作用により、病原微生物が捕捉された空気がコロナ放電を発生しているエリアを越えて気流にのって移動する。
【0042】
病原微生物が捕捉された空気は、フランジ部20とウイルス捕集部40との間に形成された隙間からウイルス捕集装置1の機外に搬送される。
【0043】
病原微生物が捕捉された空気がウイルス捕集装置1の機外に搬送された後も所望の空気がウイルス捕集装置1の内部に取り込まれ、所望の量の病原微生物が捕捉されるまで、上記の工程を繰り返す。
【0044】
こうして、ウイルス捕集部40に捕集された病原微生物は、各種の検査機関に送られ、また、適宜研究機関に送られることが可能になる。
【0045】
以上のような構成からなる本実施の形態のウイルス捕集装置1によれば、ウイルス捕集装置1は、管部10と、管部10の一端に設けられたフランジ部20と、管部10に設けられ、放電される第1電極30と、第1電極30に対向して配置されるウイルス捕集部40と、を備える。より詳細に説明すると、従来技術では、空気中の浮遊ウイルスやエアロゾルを除去する装置として様々なものが知られており、例えば、棘無し第1板状電極と棘付き第2板状電極とを絶縁部材を介して接地極の軸方向に積層する構造を有する荷電極を備える技術が知られていた。しかし、棘無し第1板状電極および棘付き第2板状電極が接地極の内径の面方向に延在していることから、このような接地極の軸方向に積層する構造が軸方向におけるウイルスの捕集の妨げになり、効率的なウイルスの捕集が困難になり得た。これに対し、本実施の形態のウイルス捕集装置1では、接地極の軸方向に積層する構造を有することなくウイルス等の病原微生物を回収することができるため、ウイルス等の病原微生物の捕集を効率的に行うことができる。
【0046】
また、本実施の形態のウイルス捕集装置1においては、上述したように、第1電極30は針状またはブラシ状であり、管部10の長手軸方向と平行方向に配置されてもよい。この場合は、第1電極30において効果的に放電させることができる。
【0047】
また、本実施の形態のウイルス捕集装置1においては、上述したように、第1電極30は、管部10の中心軸に重複し、または中心軸の近傍に配置されてもよい。この場合は、第1電極30の配置箇所を、中心軸を基点として特定することにより、効率的に病原微生物を捕集することができる。
【0048】
また、本実施の形態のウイルス捕集装置1においては、上述したように、管部10の他端に接続し、管部10の他端から管部10の内部に送風するファン部50を更に備えていてもよい。この場合は、管部10の他端からウイルス捕集装置1の内部に効率的に病原微生物を取り込むことができる。
【0049】
また、本実施の形態のウイルス捕集装置1においては、上述したように、フランジ部20の外径は、ウイルス捕集部40の開口部の外径よりも小さくてもよい。この場合は、フランジ部20とウイルス捕集部40との間に隙間が形成され、ウイルス捕集装置1で病原微生物が捕集された後の空気を隙間から排風することができる。
【0050】
また、本実施の形態のウイルス捕集装置1においては、上述したように、第1電極30にコロナ放電を発生させるようになっていてもよい。この場合は、病原微生物を効率よく捕集することができる。
【0051】
また、本実施の形態のウイルス捕集装置1においては、上述したように、ウイルス捕集部40には水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物としての板、シート、不織布、ゲル状の物質が収容されるようになっていてもよい。この場合は、第1電極30により帯電した病原微生物をウイルス捕集部40において捕集し続けることができる。
【0052】
なお、本実施の形態によるウイルス捕集装置1は上述した態様のものに限定されない。
【0053】
本実施の形態によるウイルス捕集装置1は、
図4に示すように、フランジ部20に配置される第2電極60を更に備えていてもよい。第2電極60は放電しない環状かつ板状の電極であり、フランジ部20の一面と同一または略同一のサイズを有する。第2電極60には電源が接続しており、電源から電流が供給される。また、第2電極60はフランジ部20の一面と同一または略同一の形状である。また、第2電極60はフランジ部20の一面に設けられ、ウイルス捕集部40に対向して配置されているフランジ部20の一面(対向面)に設けられる。
【0054】
このとき、第2電極60の下面からウイルス捕集部40に収容されている水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物としての板、シート、不織布、ゲル状の物質の液面または固体の表面までの距離は、直線距離で3mm以上20mm以下の範囲を取り得る。第2電極60の下面からウイルス捕集部40に収容されている水、コロイド、水溶性のゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも1つにより形成された収容物としての板、シート、不織布、ゲル状の物質の液面または固体の表面までの距離が直線距離で3mm未満の場合には、製造公差を抑えることが困難になる。また、この距離が20mmを超えるとウイルス捕集装置1の病原微生物の捕集性能が低下することになる。本実施の形態では、製造公差の抑制および病原微生物の捕集性能の両立の観点から、10mm前後の長さを想定して例示し説明する。
【0055】
第2電極60はプラスの電圧が加えられ、放電しないことにより静電界が形成される。そして、形成された静電界に伴い、クーロン力の作用により第1電極30によりプラスに帯電された病原微生物がウイルス捕集部40に捕集される。このように、第1電極30および第2電極60は互いに導通していない。
【0056】
また、本実施の形態によるウイルス捕集装置1においては、第1電極30を管部10の内部空間に配置される形態を例示して説明したが、これに限定されない。
図5に示すように、例えば、ウイルス捕集装置1は、管部10と、管部10の一端に設けられたフランジ部20と、フランジ部20に設けられた第2電極60と、第2電極60に対向して配置されるウイルス捕集部40と、を備え、第1電極30をフランジ部20の内周縁部に沿って配置してもよい。このとき、第1電極30はフランジ部20の内周縁部に沿って第1電極30同士を隣接させて配列させる。または、ウイルス捕集装置1の効果を奏するのであれば、第1電極30同士を所定の配列間隔を設けて配列させてもよい。また、第1電極30および第2電極60は接続しておらず、互いに導通していない。このような形態のウイルス捕集装置1では、フランジ部20の内周縁部に沿って形成されたコロナ放電を発生しているエリアにおいて病原微生物を帯電させることができるため、より確実に病原微生物を捕集することが可能になる。また、第1電極30をフランジ部20の外周縁部に沿って配置してもよい。
【0057】
また、本実施の形態によるウイルス捕集装置1においては、ファン部50は管部10の他端に接続し、管部10の他端から管部10の内部に送風する形態を例示して説明したがこれに限定されない。
図6に示すように、例えば、ウイルス捕集装置1は、管部10と、管部10の一端に設けられたフランジ部20と、フランジ部20に設けられた第2電極60と、第2電極60に対向して配置されるウイルス捕集部40と、を備え、第1電極30をフランジ部20の外周縁部に沿って配置してもよい。このとき、第1電極30はフランジ部20の外周縁部に沿って第1電極30同士を隣接させて配列させる。または、ウイルス捕集装置1の効果を奏するのであれば、第1電極30同士を所定の配列間隔を設けて配列させてもよい。また、第1電極30および第2電極60は接続しておらず、互いに導通していない。このとき、ファン部50は管部10の他端に接続し、管部10の他端から管部10の外部に送風する。このような形態のウイルス捕集装置1では、フランジ部20とウイルス捕集部40との間に形成された隙間からウイルス捕集装置1の内部に病原微生物を吸い込み、フランジ部20の外周縁部に沿って形成されたコロナ放電を発生しているエリアにおいて病原微生物を帯電させることができる。そして、フランジ部20の内周縁部よりも外周縁部の周縁の方が長いため、内周縁部よりも外周縁部の周縁の近傍における流体の流速を低下させ易くなり、コロナ放電を発生しているエリアに流体の滞在時間を長くすることができる。こうして、より効率的に病原微生物を捕集することが可能になる。また、病原微生物が捕捉された空気は、ファン部50を介して管部10からウイルス捕集装置1の機外に搬送される。
【0058】
また、このとき第1電極30はブラシ状であることが好ましい。これにより、より効率的にコロナ放電を発生させることができる。
【0059】
また、本実施の形態によるウイルス捕集装置1においては、第1電極30および第2電極60は接続しておらず、互いに導通していない形態を例示して説明したが、本実施の形態に係るウイルス捕集装置1による病原微生物の捕集効果を奏するのであればこれに限定されない。例えば、第1電極30および第2電極60が電気的に接続されていてもよい。第1電極30および第2電極60が同じ電源から電力を供給されることにより、第1電極30および第2電極60に対して同じ電圧を加える。これにより、省力化を図ることができる。
【0060】
本実施の形態では、ウイルス捕集装置1を静置した状態において、第1電極30の突起の先端は、ウイルス捕集部40に対向して配置されるフランジ部20の対向面を越えないように配置される形態を例示して説明したがこれに限定されない。例えば、本実施の形態に係る効果を奏するのであれば、第1電極30の突起の先端は、ウイルス捕集部40に対向して配置されるフランジ部20の対向面を越えていてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、フランジ部20の外径がウイルス捕集部40の開口(開口部)の外径よりも小さく、ウイルス捕集装置1において、フランジ部20とウイルス捕集部40との間に隙間が形成される形態を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、本実施の形態に係る効果を奏するのであれば、フランジ部20の外径およびウイルス捕集部40の開口部の外径が同一または略同一であることにより、フランジ部20とウイルス捕集部40との間に隙間が形成されていない場合において、フランジ部20に孔が形成されることにより、隙間と同様の機能を奏するようになっていてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、第1電極30は針状、ブラシ状、刷毛状の電極であり、第2電極60は環状かつ板状の電極である形態を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、第1電極30および第2電極60はブラシ状の電極であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 :ウイルス捕集装置
10 :管部
20 :フランジ部
30 :第1電極
40 :ウイルス捕集部
50 :ファン部
60 :第2電極
【要約】
【課題】効率的なウイルスの捕集を行うことができるウイルス捕集装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ウイルス捕集装置1は、管部10と、管部10の一端に設けられたフランジ部20と、管部10に設けられ、放電される第1電極30と、第1電極30に対向して配置されるウイルス捕集部40と、を備える。
【選択図】
図1