(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】巻付け部材、容器、巻付け方法、および容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65C 3/12 20060101AFI20250115BHJP
B65D 1/16 20060101ALI20250115BHJP
B65D 25/36 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B65C3/12
B65D1/16 111
B65D25/36
(21)【出願番号】P 2019202702
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】橘 毅
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3059915(JP,U)
【文献】特開2008-019006(JP,A)
【文献】特開2010-036980(JP,A)
【文献】特開2016-177158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 3/12
B65D 1/16
B65D 25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端が開口された筒状部材の全体が同一樹脂材による一体成型品であって、
前記筒状部材の外周面の表面に、軸方向の全長に亘って、バリア層を有するバリア用フィルム部材が接着され、当該筒状部材内を収容空間とする容器であり、
前記端部開口は、前記筒状部材の内径とほぼ同等の内径を有するものであって、
前記同一樹脂材による一体成型品である筒状部材は、
前記端部開口と反対側端部それぞれの外径が軸方向中央部の外径より大きく形成されており、
前記バリア用フィルム部材
は、両端部が前記筒状部材の両端部外周面の表面に対応した状態で、裏面全面が前記筒状部材の外周面全体に接着されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記同一樹脂材による一体成型品である筒状部材の軸方向両端部それぞれの外径を、前記軸方向中央部における外径よりも0.2%~3%大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記同一樹脂材による一体成型品である筒状部材の反対側端部に、当該筒状部
材の内径より小さい開口部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記端部開口の内径とほぼ同等の外径の移動体で、且つ前記同一樹脂材による一体成型品である筒状部材の端部開口と反対側端部との間を当該筒状部材内周面に沿って軸方向に摺動可能な移動体を設置可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の容器。
【請求項5】
前記バリア用フィルム部材は、少なくとも裏面全体に接着剤層を有するものであり、裏面全面が前記接着剤層を介して前記同一樹脂材による一体成型品である筒状部材の外周面全体に接着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の容器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の容器の製造方法であって、
前記同一樹脂材による一体成型品である筒状部材の外周面に前記バリア用フィルム部材を圧接させながら巻き付けて接着する巻付け工程を含み、
前記巻付け工程において、前記バリア用フィルム部材の、前記外周面の軸方向への圧接順序を、前記軸方向両端部が前記軸方向中央部よりも先としたことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の容器の製造方法であって、
前記同一樹脂材による一体成型品である筒状部材および前記バリア用フィルム部材は、互いに対向する面同士が樹脂により形成されており、
前記バリア用フィルム部材を前記外周面に巻き付けるとともに前記面同士を接着させる巻付け工程を含み、
前記巻付け工程は、前記筒状部材の外周面の軸方向への圧接順序を、前記軸方向両端部が前記軸方向中央部よりも先としたことを特徴とする巻付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻付け部材、巻付け部材を用いて形成される容器、巻付け方法、及び容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーキング材や接着剤等を収容するカートリッジとして、筒状部材の外周全面にフィルム部材を巻き付けたものが利用されている。例えば特許文献1の
図1には、プランジャー4によって収容物を押出し可能に形成されたカートリッジ1であって、ポリエチレン等の樹脂からなる円筒状本体2の外周全面にアルミラミネートフィルム7を接着したものが開示されている。
【0003】
樹脂製の本体2は、外径がほぼ同一寸法の円筒状であって、一端開口はポリエチレンで形成されるヘッド5とメンブラン片6とから成る天蓋により封止されている。即ち、円盤状のヘッド5が押出成型品である円筒状本体2の開口端内面に融着により結合されて有底筒状の容器を形成している。
【0004】
アルミラミネートフィルム7はガスバリア性を有するフィルムであり、これを円筒状本体2の外周に巻き付けて融着することにより、水蒸気等が容器を透過して内部へ入ることを抑え、収容物の品質を良好に保持することが可能となる。また、文字や図柄等を印刷したフィルム部材を円筒状本体2の外周に設けることで、当該フィルム部材はラベルとしての役割も果たす。
【0005】
即ち、前記円筒状本体2はアルミラミネートフィルム7を巻き付ける巻付け部材の役割を成しており、当該両者間の巻付け、接着状態が収容物の保持性能に影響する。なお、当該フィルム7の巻始め端部と巻終わり端部とは重なって接着されており、当該両端部間に隙間は生じない。
【0006】
前記円筒状本体2の外周全面にフィルム部材を巻き付ける工程では、例えば特許文献1に開示されている製造装置のように、フィルム部材を円筒状本体2の外周に押し付けながら巻き付ける装置が利用される。なお特許文献1に開示されている製造装置によれば、表面に弾性シートを設けたドラムがスピンドルに嵌め込まれた円筒状本体2に接触するようになっており、ドラムの回転に伴って円筒状本体2も回転する。これにより、ドラムにより回転搬送されるフィルム部材を、円筒状本体2に巻き付けることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
押出成形品である前記樹脂製の円筒状本体2は、別部品である樹脂製ヘッド5を融着して容器状としているため、融着作業工程に伴う不良率が増える傾向にある上、前記フィルム部材を巻き付けた際に開口端側に、フィルム部材の微小な皺が出来ることがあった。
【0009】
本出願人は前記融着作業工程における不良率を減らすことを主な目的として前記ヘッド5と円筒状本体2とを樹脂による一体成型品として仕上げることにより、前記溶着工程を省略することを試みた。即ち、樹脂の射出成型により容器となる有底筒状部材を一体成型することを試みた。
【0010】
しかしながら、この射出成型品である有底筒状部材は、筒状部分にアルミラミネートフィルムを巻き付け融着すると、当該アルミラミネートフィルムの両端部(筒状部分の軸方向の両端)にこれまでより大きな皺が多めに生じると言う問題が生じた。このような皺が生じてしまうと、ガスバリア性が阻害されたり、ラベルの見栄えが悪くなったりする虞があるからである。
【0011】
そこで、本出願人は、この問題点を解決すべく数々の試みと工夫を重ねた結果、射出成型品である有底筒状部材の筒状部分におけるフィルム部材が巻き付けられる領域の軸方向両端部それぞれの外径を、当該領域の軸方向中央部における外径よりも大きくすることにより、前記アルミラミネートフィルムを皺が生じることなく巻き付け融着できることを見出した。
【0012】
即ち、樹脂の成型品は、成型収縮や残留応力等の関係で、前記筒状部分の中央部と開口端部とを同一径にすることが成型精度上やや難しく、同一径を目指して成型しても、開口端と中央部とでは径が不均一と成り易く、特に開口端側の径が縮んで短く成ることがあり、その短縮程度によっては皺が生じることが解った。成型寸法の精度を高めることによって前記問題点の解消を図ることも考えられるが、実質的に精度上の問題があり、簡単には解消出来ない。
【0013】
そこで、本出願人は筒状部分の中央部も端部も径を同一寸法にすると言うこれまでの考え方に反して、開口端側を中央部より径大となるようにした処、フィルム部材を巻いた際、皺が出来ないことを見出した。これによれば、樹脂成型時に成型収縮があっても、端部の径が中央部と同一径以下にならないようにすることが成型精度上も容易である。
【0014】
このような現象が起こる原因は明確ではないが、フィルム部材を巻きつける際に、筒状部分の径大部に当該フィルム部材の端部が中央部より先に圧着固定され、その後に径の小さい中央部にフィルム部材が圧着されるので、フィルム部材が軸方向に少し延ばされ、中央部ほど周方向に縮む傾向にあるので、径の小さな中央部の周方向に皺が出来ないと考えられる。(詳しくは本発明の実施形態の説明中で述べる)
【0015】
また、このようなフィルム部材の巻き方は、筒状部材に限らず棒状部材などフィルム部材を外周面に巻き付ける巻付け部材への巻方にも適用できることは明らかであり、例えば、円柱部材に保護用のフィルムを巻付け接着する際にも有効である。
【0016】
本発明は以上の知見に基づいて成されたものであり、外周面にフィルム部材が巻き付けられる部材であって、フィルム部材の皺を生じ難くすることが可能となる巻付け部材、巻付け部材を用いた容器、巻付け方法、および容器の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る巻付け部材は、外周面にフィルム部材が巻き付けられる棒状或いは筒状である巻付け部材であって、前記フィルム部材が巻き付けられる領域の軸方向両端部それぞれの外径を、当該領域の軸方向中央部における外径よりも大きくした構成とする。
【0018】
本構成によれば、外周面に巻き付けられるフィルム部材の皺を生じ難くすることが可能となる。また上記構成としてより具体的には、前記軸方向両端部それぞれの外径を、前記軸方向中央部における外径よりも0.2%~3%だけ大きくした構成としてもよい。
【0019】
また本発明に係る容器は、ガスバリア性を有する前記フィルム部材が巻き付けられた、筒状である上記構成の巻付け部材が用いられ、当該巻付け部材の内部に収容物が収容可能に形成された構成とする。本構成によれば、上記構成の巻付け部材の利点を享受することが可能となる。また当該容器において、前記巻付け部材は有底筒状の樹脂成型品であるものとしても良い。
【0020】
また本発明に係る巻付け方法は、上記構成の巻付け部材の外周面に前記フィルム部材を巻き付ける巻付け方法であって、前記フィルム部材の、前記外周面の軸方向への圧接順序を、前記軸方向両端部が前記軸方向中央部よりも先とした巻付け方法とする。なお、当該巻付け方法において、前記巻付け部材および前記フィルム部材は、互いに対向する面同士が樹脂により形成されており、前記フィルム部材を前記外周面に巻き付けるとともに前記面同士を接着させるものとしても良い。
【0021】
また本発明に係る容器の製造方法は、上記構成の容器の製造方法であって、前記巻付け部材の外周面に前記フィルム部材を巻き付ける巻付け工程を含み、前記巻付け工程において、前記フィルム部材の、前記外周面の軸方向への圧接順序を、前記軸方向両端部が前記軸方向中央部よりも先とした製造方法とする。
【0022】
また上記製造方法において、前記巻付け部材および前記フィルム部材は、互いに対向する面同士が樹脂により形成されており、前記巻付け工程は、前記フィルム部材を前記外周面に巻き付けるとともに前記面同士を接着させる工程であるものとしても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る巻付け部材によれば、外周面にフィルム部材が巻き付けられる部材であって、フィルム部材の皺を生じ難くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係るカートリッジCTの構成図である。
【
図2】本実施形態に係る巻き付け装置の構成図である。
【
図3】本実施形態に係る筒状巻付け部材に関する説明図である。
【
図4】皺が発生し易くなる現象の主な原因に関する説明図である。
【
図5】皺の発生が解消される主な原因に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について各図面を参照しながら説明する。なお以下の説明における前後方向は、筒状である筒状巻付け部材の軸方向に一致するように便宜的に定めたものに過ぎない。
【0026】
1.カートリッジの構成
図1は、本実施形態に係るカートリッジCTの概略的な構成図である。なお
図1(後述する
図3も同様)は、筒状巻付け部材の中心軸を通る平面で切断した場合の、断面図として示されている。これらの図に示すように、カートリッジCTは、筒状巻付け部材1、メンブラン2、プランジャー3、およびフィルム部材7aを用いて形成され、コーキング材や接着剤等の流動物(以下、「収容物」と称する)を収容する容器として利用される。
【0027】
本実施形態における筒状巻付け部材1は、樹脂の射出成型により全体が一体的に形成された有底筒状の部材(樹脂成型品)として構成されており、円筒状である胴体部1aの前側に、開口部OPを有する天蓋部1bを設けられている。筒状巻付け部材1を形成する樹脂としては、例えばポリエチレン等が適用され得る。また本実施形態の例では、筒状巻付け部材1は収容物を320cc程度収容するものが採用され、全長(軸方向長さ)が220mm程度、外径(胴体部1aの外径)が50mm程度、肉厚が1mm程度に設定される。
【0028】
天蓋部1bは、前後方向を軸方向とする円板状部分の中心部前側に、前方へ突出した吐出口を設けた構成となっている。この吐出口の中心には前後方向に伸びた開口部OPが形成されており、メンブラン2が破れた状態においては筒状巻付け部材1の内部を外部へ連通させる。開口部OPの内壁の径方向寸法は、胴体部1aの内径よりも十分に小さくなっている。
【0029】
メンブラン2は、筒状部材1の内部に開口部OPを塞ぐように設けられる薄い膜状の部材であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム、ポリプロピレン(PP)のフィルム、アルミニウム箔、およびポリエチレン(PE)のフィルム等を積層して形成される。
【0030】
プランジャー3は、有底円筒形状に形成された部材であり、例えばポリエチレンの本体にアルミニウムのバリア層を設けて形成され、外径が胴体部1aの内径と同等または僅かに大きく設定されている。プランジャー3は、有底側が前方を向くように胴体部1aの後側の開口端に嵌め込まれる。プランジャー3と胴体部1aの間には、摺動抵抗を下げてプランジャー3を滑らかに移動可能とするグリースが設けられている。このグリースは、プランジャー3と胴体部1aとの隙間におけるガスや水分等の出入りを防止する役目も果たすことにより、高バリア性の潤滑剤として機能する。
【0031】
フィルム部材7aは、バリア層(例えばアルミニウム箔)を樹脂の層で挟み込んだサンドイッチ構造の積層フィルムとして形成され、筒状巻付け部材1の外周面(本実施形態の例では、胴体部1aの外周面に相当する)に巻き付けられて、当該外周面を全体的に覆うように設けられている。フィルム部材7aは、上記のように薄い膜状でありながらもアルミニウム箔を積層しており、非常に高いガスバリア性を有している。これにより、水蒸気等が筒状部材1を透過して内部に入り込むことを防ぎ、収容物の品質を保持することができる。
【0032】
本実施形態のフィルム部材7aは一例として、16μmのPET層、9μmのアルミニウム箔、20μmのポリエチレン層、および40μmの感熱接着剤の層(樹脂層の一形態)を、この順に積層した構成とされている。またフィルム部材7aは、表面に文字や図柄等を印刷しておき、カートリッジCTのラベルとして機能するようにしても良い。
【0033】
カートリッジCTは、未開封状態においては、メンブラン2によって開口部OPを密封して収容物の品質を良好に保持し得る一方、使用時にはメンブラン2を破ることにより開口部OPを開放させ、収容物を放出させることが可能となる。なお使用時には、カートリッジCTを専用の器具(例えばハンドガン)にセットしておくことにより、使用者の簡易な操作でプランジャー3を前方へ移動させ、適量の収容物を容易に押し出すことが可能である。
【0034】
2.カートリッジの製造方法
上述した構成のカートリッジCTは、筒状巻付け部材1の外周面にフィルム部材7aを巻き付ける工程、筒状巻付け部材1の内部にメンブラン2を設ける工程、筒状巻付け部材1の内部に収容物を収容する工程、および筒状巻付け部材の後側にプランジャー3を設ける工程等を経て製造される。
【0035】
上記の各工程のうち、筒状巻付け部材1の外周面にフィルム部材7aを巻き付ける工程(巻き付け工程)は、
図2に例示する巻き付け装置10を用いて実施される。以下、巻き付け装置10の構成および巻き付け工程について説明する。なお、巻き付け装置10の構成および巻き付け工程は、特許文献1(特許第4665951号公報)に開示された製造装置10および製造方法と基本的に同等であるため、ここでは概略的な説明に留める。
【0036】
巻き付け装置10は、ドラム14と、ドラム14の外周面に配置された弾性シート15と、ドラム14を駆動するモーター16と、ドラム14内のエアーを吸引する吸引ポンプ17と、センサー18と、熱風発生器19と、スピンドル20と、スピンドル20を上下させるエアーシリンダー21とを備える。
【0037】
巻き付け装置10のドラム14近傍には、切断前のフィルム部材7が予め準備される。巻き付け工程が実施される際、このフィルム部材7は所定長さ(筒状部材1の外周寸法に応じた長さ)だけドラム14側へ送り出され、弾性シート15の表面に載置されて切断される。切断後のフィルム部材7aは、ドラム14の回転により、スピンドル20に嵌め込まれた筒状巻付け部材1に向けて搬送されることになる。
【0038】
なお、ドラム14及び弾性シート15には、例えば直径1mm程度の空気抜き穴がフィルム7の固定される領域全体に渡って設けられており、ドラム14の内部には吸引ポンプ17が接続されている。吸引ポンプ17がエアーを吸引すると、ドラム14及び弾性シート15に設けられた空気抜き穴からエアーが吸い込まれる。これにより、フィルム部材7aを弾性シート15上に吸着固定することが可能である。
【0039】
フィルム部材7aの搬送が開始された後、センサー18がフィルム部材7aを感知すると、シリンダー21はスピンドル20を上昇させて筒状巻付け部材1を弾性シート15に押し付ける。スピンドル20は、筒状巻付け部材1が嵌め込まれた状態で回転自在となっているので、ドラム14の回転に連れてスピンドル20が回転し、筒状巻付け部材1がドラム14に完全に同期して回転する。フィルム部材7aを吸着固定したままドラム14が回転を続けることで、フィルム部材7aは搬送方向先端側から筒状巻付け部材1の外周面に巻き付けられる。
【0040】
より詳細に説明すると、弾性シート15上のフィルム部材7aは、まず搬送方向先端部において筒状巻付け部材1に接触した後、弾性シート15の弾性力によって筒状巻付け部材1に押し付けられる(後述する
図4および
図5を参照)。ドラム14の回転に伴い、これと同様の現象が搬送方向後端部に向けて順に生じることで、フィルム部材7aを筒状巻付け部材1に圧接させながら巻き付けることができる。
【0041】
熱風発生器19は、センサー18がフィルム部材7aを感知して所定の時間が経過するまでは、ドラム14から遠い位置にあり、所定時間が経過して熱風が当たる位置にフィルム部材7aが到達する時点で、ドラム14から近い位置に移動する。熱風発生器19の熱風により、フィルム部材7aの樹脂層(感熱接着剤の層)が溶融し、融着による接着可能な状態となる。
【0042】
このとき同時に、熱風発生器19から噴き出す熱風がドラム14とスピンドル20との近接領域で対流するため、対流する熱風により筒状巻付け部材1の表面が熱せられる。これにより、感熱接着剤の層が溶融したフィルム部材7aが表面温度の上昇した筒状巻付け部材1の表面に巻き付けられる際、フィルム部材7aと筒状巻付け部材1の樹脂同士が互いに接着されることになる。また最終的には、筒状巻付け部材1の外周面の全周にフィルム部材7aが接着することになる。
【0043】
このように本実施形態では、筒状巻付け部材1およびフィルム部材7aは互いに対向する面同士が樹脂により形成されており、巻き付け工程は、フィルム部材7aを筒状巻付け部材1の外周面に巻き付けるとともに前記面同士を接着させる工程となっている。なお当該面同士を接着させる工程の具体的形態としては、樹脂層(例えば、熱可塑性樹脂からなるシーラント層や感熱接着剤の層など)を溶かして融着させる形態、或いは、シール等の粘着剤を用いる形態などが挙げられる。このように当該面同士の「接着」は、双方の間に接着剤等が介在する形態の他、双方が融着する形態も含む概念である。
【0044】
3.筒状巻付け部材の外径について
出願人は、射出成型により形成した筒状巻付け部材1とフィルム部材7aを用いて上述した巻き付け工程を実施したところ、フィルム部材に皺が発生し易いことが判明した。更に出願人は、この原因について調査したところ、筒状巻付け部材1の外径がフィルム部材7aにおける皺の発生に影響を及ぼすことが判明した。
【0045】
より詳細に説明すると、筒状巻付け部材1を射出成型により形成したところ、外径の目標値を軸方向の位置によらず均一に設定していたが、実際に形成される筒状巻付け部材1の外径は、軸方向中央部において軸方向両端部よりも大きくなっていた。この要因としては、筒状部材1に生じる残留応力や、軸方向位置での肉厚の違いによる成形収縮率の差等が考えられる。より具体的には、筒状巻付け部材1の軸方向後端部(筒状の開口端)では内側へ窄まる残留応力が影響し、軸方向前端部では、天蓋部1bを設けた分の肉厚による成形収縮率の高さが影響したものと考えられる。
【0046】
そして、筒状巻付け部材1におけるフィルム部材7aが巻き付けられる領域(以下、「巻き付け領域」と略記することがある)の軸方向中央部における外径が、当該領域の軸方向両端部それぞれの外径よりも大きくなっていると、皺が発生し易くなることが見出された。なお本実施形態の例では、
図3に示す領域Xが巻き付け領域に該当し、
図3に示す外径D1が巻き付け領域の軸方向中央部の外径に該当し、
図3に示す外径D2が巻き付け領域の軸方向前端の外径に該当し、
図3に示す外径D3が巻き付け領域の軸方向後端の外径に該当する。
【0047】
上述した皺が発生し易くなる現象の主な原因について、
図4を参照しながら以下に説明する。
図4は、巻き付け領域の軸方向中央部における筒状巻付け部材1の外径が当該領域の軸方向両端部それぞれの外径よりも大きい場合について、弾性シート15上のフィルム部材7aが筒状巻付け部材1に押し付けられる様子を模式的に示している。なお本図では説明容易とするため、軸方向中央部と両端部の外径の差などを誇張して示している。
【0048】
図4(a)に示すように、弾性シート15上のフィルム部材7aは筒状巻付け部材1に、外径の大きい軸方向中央部で最初に接触する。これにより、軸方向中央部でフィルム部材7aと筒状巻付け部材1が融着し、筒状巻付け部材1に対するフィルム部材7aの位置が固定される。
【0049】
その後、フィルム部材7aが筒状巻付け部材1に徐々に押し付けられると、
図4(b)に示すように、双方は軸方向中央部から徐々に接触し、最終的には
図4(c)に示すように、軸方向全領域において双方が接触して融着することになる。
【0050】
ここで
図4(b)に示す段階に着目すると、軸方向両端部においてはフィルム部材7aと筒状部材1は接触しておらず、これらの位置関係は固定されていない。そのため、フィルム部材7aの軸方向両端部が中央側へ引き寄せられながら、フィルム部材7aが筒状巻付け部材1に押し付けられていき、
図4(c)に示す状態へ至る。このプロセスは、フィルム部材7aの巻き付けが進むに伴い、筒状巻付け部材1の周方向へ順に生じることになる。
【0051】
しかし、筒状巻付け部材1の周方向長さは軸方向両端部に近いほど短くなっているため、軸方向中央部では筒状部材1とフィルム部材7aの周方向長さは概ね一致するものの、軸方向両端部に近いほど筒状巻付け部材1よりもフィルム部材7aの方が周方向長さが長くなる。そのため、フィルム部材7aの巻き付けが進む際、特に軸方向両端部近傍においては、筒状巻付け部材1の外周面に対して余剰となるフィルム部材7aが発生し、フィルム部材7aに皺が発生する虞がある。
【0052】
このようにフィルム部材7aに皺が生じてしまうと、カートリッジCTのガスバリア性が阻害され、収容物の劣化等が問題となる。また、フィルム部材7aがラベルとしての役割も果たす場合、皺によってラベルの見栄えが悪くなることも問題となる。
【0053】
そこで出願人は、巻き付け領域の軸方向中央部における外径が当該領域の軸方向両端部それぞれの外径よりも小さくなるように射出成型によって筒状巻付け部材1を形成し、当該筒状巻付け部材1を採用したところ、フィルム部材7aに皺を発生させることなく巻き付け工程を実施することができた。
【0054】
ここで、皺の発生が解消される主な原因について、
図5を参照しながら以下に説明する。
図5は、巻き付け領域の軸方向中央部における筒状巻付け部材1の外径が当該領域の軸方向両端部それぞれの外径よりも小さい場合について、弾性シート15上のフィルム部材7aが筒状巻付け部材1に押し付けられる様子を模式的に示している。なお本図では説明容易とするため、軸方向中央部と両端部の外径の差などを誇張して示している。
【0055】
図5(a)に示すように、弾性シート15上のフィルム部材7aは筒状巻付け部材1に、外径の大きい軸方向両端部で最初に接触する。これにより、軸方向両端部でフィルム部材7aと筒状巻付け部材1が融着し、筒状巻付け部材1に対するフィルム部材7aの位置が固定される。
【0056】
その後、フィルム部材7aが筒状巻付け部材1に徐々に押し付けられると、
図5(b)に示すように、双方は軸方向両端部から徐々に接触し、最終的には
図5(c)に示すように、軸方向全領域において双方が接触し融着することになる。このように、フィルム部材7aの、筒状巻付け部材1の外周面の軸方向への圧接順序は、軸方向両端部が軸方向中央部よりも先となっている。ここで
図5(b)に示す段階に着目すると、軸方向中央部においてはフィルム部材7aと筒状巻付け部材1は接触しておらず、これらの位置関係は固定されていない。
【0057】
しかし、軸方向両端部同士(フィルム部材7aの位置が固定された箇所)の間においては、
図5(a)から明らかであるように、軸方向へ真直ぐ伸びるフィルム部材7aの表面よりも筒状巻付け部材1の外周面の方が長い。これにより、軸方向両端部で双方の位置関係が固定された状態で弾性シート15が筒状部材1に近づくと、フィルム部材7aはやや引き伸ばされながら筒状巻付け部材1に接触するため、フィルム部材7aに弛みは生じない。その結果、フィルム部材7aに皺を発生させることなくフィルム部材7aを筒状巻付け部材1へ巻き付けることができる。
【0058】
なお、筒状巻付け部材1において軸方向中央部と端部の外径の差を必要以上に大きくすると、フィルム部材7aと筒状巻付け部材1の適切な融着が阻害される。そのため、軸方向位置による外径の差は過不足無く設定されることが望ましい。この点も考慮して出願人は、筒状巻付け部材1における軸方向両端部それぞれの外径を、軸方向中央部における外径よりも0.2%~3%だけ大きくなるようにしたところ、皺の発生が抑えられつつフィルム部材7aと筒状部材1が適切に融着されることを確認した。そのため、筒状巻付け部材1における軸方向両端部それぞれの外径を、軸方向中央部における外径よりも0.2%~3%だけ大きくすることが好ましく、0.2%~1.5%だけ大きくすることがより好ましい。
【0059】
なお筒状巻付け部材1の巻き付け領域での外径は、軸方向中央部から両端部それぞれへ向かうに連れて徐々に大きくなるようにしても良く、軸方向中央部付近では一定として両端部それぞれの近傍のみ大きくなるようにしても良い。また、筒状巻付け部材1の肉厚については軸方向の全領域において概ね均一となるようにし、成形収縮が生じ難くなるようにするとともに、必要となる樹脂量が抑えられるよう配慮した。
【0060】
上述したとおり本実施形態に係る筒状巻付け部材1は、外周面にフィルム部材7aが巻き付けられるものであって、フィルム部材7aが巻き付けられる領域の軸方向両端部それぞれの外径を、当該領域の軸方向中央部における外径よりも大きくしている。そのため筒状巻付け部材1によれば、フィルム部材7aの皺を生じ難くすることが可能となっている。なお、本発明に係る巻付け部材は筒状に限られず、外周面にフィルム部材を巻き付けることが可能な棒状であっても良い。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えばコーキング材や接着剤を収容する容器などに利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 筒状巻付け部材
1a 胴体部
1b 天蓋部
2 メンブラン
3 プランジャー
4 フィルム部材
CT カートリッジ
10 巻き付け装置
14 ドラム
15 弾性シート
16 モーター
17 吸引ポンプ
18 センサー
19 熱風発生器
20 スピンドル
21 エアーシリンダー