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特許7619787細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法
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  • 特許-細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法 図1A
  • 特許-細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法 図1B
  • 特許-細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法 図2A
  • 特許-細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法 図2B
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  • 特許-細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/12 20060101AFI20250115BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20250115BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A01N25/12
A61K33/24
A61K9/14
A61P31/04
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020194110
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082930
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇子
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104072(WO,A1)
【文献】特開2006-150344(JP,A)
【文献】特開2010-180192(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒である粒子と、
前記粒子の表面に設けられ、標的細胞を特異的に認識する物質と、
前記粒子の表面に設けられ、前記標的細胞に対する細胞透過性を有する修飾物質と、を有し、
前記粒子は、化合物半導体で構成され、
前記化合物半導体は、第1の半導体と第2の半導体とを含み、
前記粒子は、前記第1の半導体と前記第2の半導体のいずれか一方をコア、他方をシェルとするコアシェル構造を有し、
前記粒子のバンド構造は、タイプII型であり、
前記第1の半導体の価電子帯における最高エネルギー準位が、水の酸化電位よりも正であり、
前記第2の半導体の導電帯における最低エネルギー準位が水の還元電位よりも負である、細胞殺傷剤。
【請求項2】
前記粒子の表面において、前記シェルから前記コアの一部が露出している、請求項1に記載の細胞殺傷剤。
【請求項3】
前記化合物半導体が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭窒化物、II-VI族半導体、及びIII-V族半導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載の細胞殺傷剤。
【請求項4】
前記第1の半導体の光吸収端が700nm以上1000nm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞殺傷剤。
【請求項5】
前記粒子の平均粒子径が1nm超1000nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の細胞殺傷剤。
【請求項6】
前記粒子のコアの平均粒子径が1nm以上20nm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞殺傷剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞殺傷剤を含む、殺菌用組成物。
【請求項8】
インビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞殺傷剤と、標的細胞と、を接触させて、前記細胞殺傷剤を前記標的細胞の細胞内に取り込ませることと、
前記細胞殺傷剤が取り込まれた前記標的細胞に光を照射することと、を含む方法。
【請求項9】
前記標的細胞が病原性細菌である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞殺傷剤、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のがんの治療法は、化学療法が一般的である。化学療法では、抗がん剤を分裂し増殖しているがん細胞に作用させるため、分裂の速い正常細胞にも影響を与え、吐き気や脱毛、白血球減少等の副作用を引き起こしやすい。
【0003】
また、感染症の治療には、病原性細菌やウイルスに対する抗生剤や抗ウイルス薬が使用される。しかしながら、これら病原性細菌やウイルスでは遺伝子変異の頻度が高く、薬剤耐性を有するものが発生することで、抗生剤や抗ウイルス薬の有効性が失われる虞がある。
【0004】
上記のような薬剤を用いた治療法の代替法として、光触媒を用いた治療法が検討されている。例えば、特許文献1には、酸化チタン粒子と、該酸化チタン粒子の表面に各種官能基を介して結合されたノニオン性水溶性高分子と、を含む抗腫瘍剤が開示されている。特許文献1は、該抗腫瘍剤をがん患者に投与後、該抗腫瘍剤に超音波あるいは紫外線を照射することで、酸化チタン粒子が活性化してラジカル種を発生させ、生じたラジカル種がん細胞を殺傷する、というメカニズムを提唱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-201797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、副作用や薬剤耐性菌の出現が抑制され、且つ、より効果的且つ効率的にがん細胞や各種病原性細菌を殺傷できる細胞殺傷剤を提供する。また、前記細胞殺傷剤を用いた、医薬組成物、サプリメント組成物、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 光触媒である粒子と、
前記粒子の表面に設けられ、標的細胞を特異的に認識する物質と、
前記粒子の表面に設けられ、前記標的細胞に対する細胞透過性を有する修飾物質と、を有し、
前記粒子は、化合物半導体で構成され、
前記化合物半導体は、第1の半導体と第2の半導体とを含み、
前記粒子は、前記第1の半導体と前記第2の半導体のいずれか一方をコア、他方をシェルとするコアシェル構造を有し、
前記粒子のバンド構造は、タイプII型であり、
前記第1の半導体の価電子帯における最高エネルギー準位が、水の酸化電位よりも正であり、
前記第2の半導体の導電帯における最低エネルギー準位が水の還元電位よりも負である、細胞殺傷剤。
(2) 前記粒子の表面において前記コアの一部が露出している、(1)に記載の細胞殺傷剤。
(3) 前記化合物半導体が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭窒化物、II-VI族半導体、及びIII-V族半導体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、(1)又は(2)に記載の細胞殺傷剤。
(4) 前記第1の半導体の光吸収端が700nm以上1000nm以下である、(1)~(3)のいずれか一つに記載の細胞殺傷剤。
(5) 前記粒子の平均粒子径が1nm超1000nm以下である、(1)~(4)のいずれか一つに記載の細胞殺傷剤。
(6) 前記粒子のコアの平均粒子径が1nm以上20nm以下である、(1)~(5)のいずれか一つに記載の細胞殺傷剤。
) (1)~(6)のいずれか一つに記載の細胞殺傷剤を含む、殺菌用組成物。
) インビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法であって、
(1)~(6)のいずれか一つに記載の細胞殺傷剤と、標的細胞と、を接触させて、前記細胞殺傷剤を前記標的細胞の細胞内に取り込ませることと、
前記細胞殺傷剤が取り込まれた前記標的細胞に光を照射して、前記光のエネルギーにより前記細胞殺傷剤に含まれる光触媒が、前記標的細胞の細胞内に含まれる水を分解し、水素及び酸素を発生させた後、前記水素及び前記酸素により前記標的細胞を膨張させて、物理的に破壊することと、
を含む方法。
) 前記標的細胞が病原性細菌である、()に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
上記態様の細胞殺傷剤によれば、副作用や薬剤耐性菌の出現が抑制され、且つ、より効果的且つ効率的にがん細胞や各種病原性細菌を殺傷できる細胞殺傷剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。
図1B】本発明の第1実施形態に係る光触媒のバンド構造を示す図である。
図2A】本発明の第2実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。
図2B】本発明の第2実施形態に係る光触媒のバンド構造を示す図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と略記する)に係る細胞殺傷剤、医薬組成物、サプリメント組成物、殺菌用組成物及びインビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法について、以下に詳細を説明する。
【0011】
<細胞殺傷剤>
本実施形態の細胞殺傷剤は、光触媒である粒子を有効成分として含有する。
【0012】
本明細書において、「有効成分として含有する」とは、治療的に有効量の光触媒を含有することを意味する。ここでいう「治療的に有効な量」とは、望ましい治療措置に従って投与したときに、医師、臨床医、獣医、研究者、又は他の適切な専門家が求める生物学的、医学的効果若しくは応答を誘発する光触媒の量、又は光触媒及び1種類以上の活性剤の組み合わせの量を意味する。好ましい治療的に有効な量は対象となる疾患の症状を改善する量である。また、「治療的に有効な量」には、予防に有効な量、すなわち、疾患状態の予防に適する量が包含される。
【0013】
粒子は、化合物半導体で構成されている。ここでいう、「化合物半導体」とは、2種以上の元素が結合してなる半導体を意味する。
【0014】
粒子のバンド構造は、タイプII型である。
タイプII型のバンド構造は、光吸収により生成された電子の存在確率が高くなるような準位に位置する導電帯を有する化合物半導体である第2の半導体と、光吸収により生成された正孔の存在確率が高くなる準位に位置する価電子帯を有する化合物半導体である第1の半導体と、からなる。本実施形態において、粒子を構成する化合物半導体は、上記第1の半導体と上記第2の半導体を含む。光吸収により生成された電子と正孔とが異なる半導体間に分離されることでキャリア寿命が長くなる。すなわち、粒子のバンド構造がタイプII型であることで、光触媒の活性を高めることができる。
【0015】
粒子において、エネルギー準位(量子準位)が高い側から、第1の半導体の導電帯の最低エネルギー準位、第2の半導体の導電帯の最低エネルギー準位、第1の半導体の価電子帯の最高エネルギー準位、及び第2の半導体の価電子帯の最高エネルギー準位である。
【0016】
また、粒子は、第1の半導体と第2の半導体のいずれか一方をコア、他方をシェルとするコアシェル構造を有する。中でも、第1の半導体をコア、第2の半導体をシェルとするコアシェル構造を有することが好ましい。これにより、効率的に細胞の膨張を行うことができる。
【0017】
粒子を構成する第1の半導体としては、価電子帯における最高エネルギー準位が、水の酸化電位よりも正であるものであれば特に制限されない。また、第2の半導体としては、導電帯における最低エネルギー準位が水の還元電位よりも負であるものであれば特に制限されない。このような関係を満たす第1の半導体及び第2の半導体を用いることにより、光吸収で生成された導電帯中の電子が水の還元(詳細には水に由来する水素イオンの還元)に利用されて水素が生成され、光吸収で生成された価電子帯中の正孔が水の酸化に利用されて酸素が生成される。すなわち、水の分解に有用な光触媒を構成することができる。
このような化合物半導体として具体的には、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭窒化物、II-VI族半導体、III-V族半導体等が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、TiO、SrTiO等のチタン酸化物;Ta、KTaO等のタンタル酸化物;ZnO、ZnGaO、ZrO、Nb等が挙げられる。
金属窒化物としては、Ta、Nb等が挙げられる。
金属酸窒化物としては、例えば、NbON、TaON等が挙げられる。
金属炭窒化物としては、例えば、TaCN等が挙げられる。
II-VI族半導体としては、例えば、CdTe、CdSe、ZnSe、CdS等が挙げられる。
III-V族半導体としては、例えば、GaN、InGaN、GaP、InP、GaAs等が挙げられる。
中でも、第1の半導体に好ましい材料としては、Ta、Nb、TaON、NbON、TaCN、CdSe、CdS、InGaN等が挙げられる。
また、第2の半導体に好ましい材料としては、TiO、SrTiO、ZnO等の金属酸化物が挙げられる。
【0018】
粒子において、上記例示された化合物半導体のうち、第2の半導体は、金属酸化物から形成されていることが好ましい。金属酸化物から形成されていることで、粒子の安定性が向上し、水が存在する環境下(すなわち、標的細胞の細胞内)で用いられる際に、半導体材料の劣化を抑制することができ、光触媒の耐久性を向上させることができる。
【0019】
本実施形態の細胞殺傷剤を被験体の体内に投与する場合に、可視光は生体内の成分により吸収されやすく、また、紫外線は細胞へのダメージが大きいことから、粒子を構成する第1の半導体の光吸収端が700nm以上であることが好ましい。700nm以上の近赤外領域の光を吸収する化合物半導体で構成される光触媒を用いることで、生体内での光の利用効率が高く、また、正常な細胞へのダメージを最小限にとどめることができる。一方で、水の分解に必要なエネルギーを得られることから、第1の半導体の光吸収端は1000nm以下であることが好ましい。
光吸収端が700nm以上1000nm以下である化合物半導体としては、例えば、InGaN、NbON、TaCN等が挙げられる。
【0020】
中でも、粒子において、第1の半導体と第2の半導体の組み合わせ(第1の半導体/第2の半導体)としては、InGaN/TiO、NbON/TiO、又はTaCN/TiOが好ましい。
【0021】
粒子の平均粒子径は、標的細胞に取り込める大きさであれば特に限定されないが、1nm超1000nm以下であることが好ましく、1nm超500nm以下であることがより好ましく、1nm超300nm以下であることがさらに好ましく、1nm超100nm以下であることが特に好ましい。
粒子の平均粒子径が上記下限値以上であることで、結晶欠陥による光触媒特性の低下を抑制でき、一方で、上記上限値以下であることで、標的細胞により取り込まれやすい。
【0022】
また、粒子においてコアの平均粒子径は、粒子の平均粒子径が上記範囲内に収まる大きさであれば特に限定されないが、1nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上15nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。
コアの平均粒子径が上記下限値以上であることで、結晶欠陥による光触媒特性の低下を抑制でき、一方で、上記上限値以下であることで、標的細胞により取り込まれやすい。
【0023】
なお、粒子の平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)像から測定することができ、公知の画像解析ソフトを用いて、複数個(例えば、100個以上500個以下程度等)の粒子の粒子径の測定値の平均値を算出することで得られる。このとき、一視野に含まれる粒子は全て測定するものとし、測定数の下限値を超えるまで複数の視野を測定した後、下限値を超えたら測定を終了するように設定する。
或いは、平均粒子径は動的光散乱法で測定し、光子相関法による解析や小角散乱法で測定し、散乱曲線のNANO-Solver解析により見積もることもできる。
本明細書における粒子径は、円相当径である。
【0024】
また、コアの平均粒子径は、例えば、光触媒の製造時に中間体として生成されたコア粒子の分散液を用いて、上記粒子の平均粒子径の測定方法と同様の方法を用いて測定することができる。
或いは、粒子においてコアとシェルは異なる化合物半導体からなることから、それら化合物半導体における物質の密度が異なる場合には、電子の透過率の差によって、コアの粒子径と粒子全体の粒子径を同時に計測することもできる。
【0025】
粒子は、その表面に、細胞透過性を有する修飾物質(以下、単に「修飾物質」と称する場合がある)及び標的細胞を特異的に認識する物質(以下、単に「特異的認識物質」と称する場合がある)が設けられている。粒子の表面に、細胞透過性を有する修飾物質が設けられていることで、標的細胞の細胞膜を透過することができる。また、粒子の表面に、標的細胞を特異的に認識する物質が設けられていることで、標的細胞にのみ本実施形態の細胞殺傷剤を効率的に取り込ませることができる。なお、修飾物質及び特異的認識物質をそれぞれ1種以上用いてもよく、或いは、細胞透過性及び標的細胞を特異的に認識する性質を兼ね備える物質を1種以上用いてもよい。
【0026】
細胞透過性を有する修飾物質及び標的細胞を特異的に認識する物質は、粒子の表面に担持している状態であってもよい。なお、ここでいう「担持する」とは、粒子と細胞透過性を有する修飾物質、及び粒子と標的細胞を特異的に認識する物質とが、それぞれ直接的又は間接的に結合しており、互いに遊離しない状態を意味する。例えば、細胞透過性を有する修飾物質及び標的細胞を特異的に認識する物質はそれぞれ、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、水酸基等の官能基による化学的な結合を介して、或いは、物理的な吸着によって、粒子の表面に担持させることができる。
或いは、細胞透過性を有する修飾物質及び標的細胞を特異的に認識する物質の少なくともいずれか一方は、粒子の表面の全体を被覆している状態であってもよい。
【0027】
本実施形態の細胞殺傷剤の標的となる細胞としては、特に限定されないが、例えば、がん細胞、病原性細菌等が挙げられる。
【0028】
がん細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞であり、周囲の組織に浸潤し、又は転移を起こす悪性新生物である。がん細胞の由来となる癌としては、例えば、乳癌(例えば、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌等)、前立腺癌(例えば、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌等)、膵癌(例えば、膵管癌等)、胃癌(例えば、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌等)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫等)、結腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸癌(例えば、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍等)、小腸癌(例えば、非ホジキンリンパ腫、消化管間質腫瘍等)、食道癌、十二指腸癌、舌癌、咽頭癌(例えば、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌等)、頭頚部癌、唾液腺癌、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫等)、神経鞘腫、肝臓癌(例えば、原発性肝癌、肝外胆管癌等)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮癌等)、胆嚢癌、膵臓癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌(例、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱癌、尿道癌、皮膚癌(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌等)、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病等)、メラノーマ(悪性黒色腫)、甲状腺癌(例えば、甲状腺髄様癌等)、副甲状腺癌、鼻腔癌、副鼻腔癌、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング腫瘍、子宮肉腫、軟部組織肉腫等)、転移性髄芽腫、血管線維腫、隆起性皮膚線維肉腫、網膜肉腫、陰茎癌、精巣腫瘍、小児固形癌(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、慢性骨髄増殖性疾患、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病等)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0029】
病原性細菌とは、ヒトや、イヌ、ネコ等のペット等の動物に感染して疾患や病的症状の起源を与える細菌である。病原性細菌として具体的には、例えば、病原性大腸菌(pathogenic Escherichia coli)(腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管集合性大腸菌を含む)、サルモネラ(Salmonela)属菌、リステリア(Listeria)属菌、カンピロバクター(Campylobacter)属菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
細胞透過性を有する修飾物質として具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、膜透過性ペプチド、糖鎖、リポソーム等が挙げられる。
【0031】
標的細胞を特異的に認識する物質としては、標的細胞を特異的に認識するものであればよく、具体的には、例えば、標的細胞表面に存在する受容体に対するリガンド、抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。抗体は、例えば、マウス等の動物に、標的細胞表面に存在する抗原、受容体又はそれらの断片を抗原として免疫することによって作製することができる。或いは、例えば、ファージライブラリのスクリーニングにより作製することができる。抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。上記の抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。また、市販の抗体であってもよい。
【0032】
アプタマーとは、標的物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。標的ペプチドに特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、標的ペプチドに特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法等により選別することができる。
【0033】
本実施形態の細胞殺傷剤は、上記構成を有する光触媒を含有することで、標的細胞の細胞内に選択的に当該光触媒を取り込ませることができる。取り込まれた光触媒は、照射された光エネルギーにより細胞内の水を分解して、水素及び酸素を発生させる。発生された水素及び酸素は気泡となる。発生した水素及び酸素の体積は、分解前の水の体積の1200倍程度まで膨張する。細胞膜或いは細胞壁を維持する力よりも、この膨張する力が強いため、当該膨張する力によって物理的に標的細胞を破壊(破裂)させることができる。
【0034】
光触媒(細胞殺傷剤)により生体中で発生する水素及び酸素は極微量であることから人体への影響は少ない。また、細胞殺傷剤は、投与後一定時間血液中に滞留し、その後体外に排出される。そのため、本実施形態の細胞殺傷剤では、被験体における副作用の発生が従来の抗がん剤よりも抑制されるものと推察される。また、本実施形態の細胞殺傷剤は、薬剤と異なり、薬剤耐性菌も発生しにくい。
さらに、本実施形態の細胞殺傷剤の有効成分である光触媒は、タイプII型のバンド構造を有することにより、従来の酸化チタンからなる光触媒よりも、効率よく水の分解を行うことができる。そのため、本実施形態の細胞殺傷剤は、より効果的且つ効率的にがん細胞や各種病原性細菌を殺傷することができる。
【0035】
本実施形態の細胞殺傷剤による標的細胞に対する細胞殺傷効果は、光触媒の効率、標的細胞の細胞内に取り込まれる光触媒の数、照射する光エネルギーの強さ、及び光触媒による水の分解が行われる速さによって、制御することができる。
【0036】
光触媒の効率及び光触媒による水の分解が行われる速さについては、上述した化合物半導体を適宜選択することで制御することができる。中でも、粒子のコアとシェルとの組み合わせが、InGaN/TiOである光触媒は、効率がよく、水の分解を素早く行うことができる。
【0037】
1個の標的細胞の細胞内に取り込まれる光触媒の数は、粒子の平均粒子径によって適宜調整することができるが、例えば、粒子の平均粒子径が1nm超100nm以下程度である場合に、1個以上10万個以下とすることができ、100個以上5万個以下であることが好ましく、1000個以上3万個以下であることがより好ましい。取り込まれる光触媒の数が上記下限値以上であることで、より十分な細胞殺傷効果を発揮することができ、一方で、上記上限値以下であることで、標的細胞により容易に取り込ませることができる。
【0038】
照射する光エネルギーの強さとしては、例えば、0.01mW/cm以上とすることができ、0.1mW/cm以上であることが好ましく、1mW/cm以上であることがより好ましい。照射する光エネルギーの強さが上記下限値以上であることで、光触媒の活性をより十分に発現させることができる。一方で、光エネルギーの強さが強いほど光触媒の活性がより高くなることから、上限は特に限定されない。
【0039】
光触媒は、標識物質を更に備えていてもよい。光触媒が、標識物質を更に備えることで、励起光が意図した通りに照射されていることを確認することができる。標識物質としては、光触媒の励起光と同じ波長の励起光により蛍光を発する蛍光物質を適宜選択して用いることができる。蛍光物質として具体的には、例えば、公知の量子ドット、インドシアニングリーン(ICG)、プロトポルフィリン、ポリフィリン類縁体(フォトフリン、レザフィリン等の光増感剤)、5-アミノレブリン酸(5-ALA;代謝産物プロトポルフィリンIX(PP IX))、近赤外蛍光色素(例えば、Cy5.5、Cy7、AlexaFluoro、ローダミン等)、その他公知の蛍光色素(例えば、GFP、FITC(Fluorescein)、TAMRA等)等が挙げられる。
【0040】
[光触媒の構造]
以下に、光触媒の構造を説明する。以下の説明において、二種類の半導体の比較において、価電子帯及び導電帯のエネルギー準位が高い半導体が「第1の半導体」であり、価電子帯及び導電帯のエネルギー準位が低い半導体が「第2の半導体」である。
【0041】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。図1Aに示すように、粒子10は、コア11と、コア11を被覆するシェル12と、粒子表面、すなわち、シェル上に結合した細胞透過性を有する修飾物質(修飾物質)13及び標的細胞を特異的に認識する物質(特異的認識物質)14と、から構成される。コア11は第2の半導体から形成され、シェル12は第1の半導体から形成されている。
【0042】
図1Bは、本発明の第1実施形態に係る光触媒のバンド構造を示す図である。図1Bにおいて、「H/HO」は水の還元電位を表し、「O/HO」は水の酸化電位を表し、「Eg」はバンドギャップを表す。図1B以降の図においても、「H/HO」、「O/HO」、及び「Eg」は同様の意味である。
図1Bにおいて、粒子10は、コアに電子の存在確率が高い電荷分離状態が可能なバンド構造を有する。
【0043】
図1Bに示されるように、粒子10はタイプIIのバンド構造を有する。粒子10において、バンドギャップに対応するエネルギー以上のエネルギーを有する光が吸収されると、第1の半導体及び第2半導体の少なくともいずれか一方において価電子帯の電子(e)が導電帯に励起し、価電子帯に正孔(h)、導電帯に電子(e)がそれぞれ生成する。その後、第1の半導体の導電帯の電子は、第2の半導体の導電帯に移動し、第2の半導体の価電子帯の正孔は第1の半導体の価電子帯に移動する。これにより、正孔(h)は、第1の半導体の価電子帯内に、すなわちシェル12内に多く存在し、電子(e)は、第2の半導体の導電帯内に、すなわちコア11内に多く存在する。そして、正孔(h)は水の酸化反応に用いられて酸素(O)を発生させ、電子(e)は水の還元反応に用いられて水素(H)を発生させる。
【0044】
粒子10において、生成した正孔(h)と電子(e)とは、異なる半導体内に位置し空間的に分離されるのでキャリアの再結合が抑制される。したがって、キャリア寿命が増大し、光触媒におけるエネルギー変換効率を向上させることができる。また、粒子10内に正孔(h)と電子(e)とが生成され、生成した正孔(h)及び電子(e-)と、光触媒の活性面となる粒子10表面との距離が近いことで、正孔(h)及び電子(e)を効率よく水の酸化反応又は還元反応に利用することができる。また、これら反応により発生した酸素(O)及び水素(H)により標的細胞を効果的に殺傷することができる。
【0045】
(第2実施形態)
図2Aは、本発明の第2実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。図2Aに示すように、粒子20は、コア21と、コア21を被覆するシェル22と、粒子表面、すなわち、シェル上に結合した修飾物質23及び特異的認識物質24と、から構成される。コア21は第1の半導体で形成され、シェル22は第2の半導体から形成されている。
【0046】
図2Bは、本発明の第2実施形態に係る光触媒のバンド構造を示す図である。図2Bにおいて、粒子20は、コアに正孔の存在確率が高い電荷分離状態が可能なバンド構造を有する。
【0047】
図2Bに示されるように、粒子20はタイプIIのバンド構造を有する。粒子20において、バンドギャップに対応するエネルギー以上のエネルギーを有する光が吸収されると、第1の半導体及び第2半導体の少なくともいずれか一方において価電子帯の電子(e)が導電帯に励起し、価電子帯に正孔(h)、導電帯に電子(e)がそれぞれ生成する。その後、第1の半導体の導電帯の電子は、第2の半導体の導電帯に移動し、第2の半導体の価電子帯の正孔は第1の半導体の価電子帯に移動する。これにより、正孔(h)は、第1の半導体の価電子帯内に、すなわちシェル22内に多く存在し、電子(e)は、第2の半導体の導電帯内に、すなわちコア21内に多く存在する。そして、正孔(h)は水の酸化反応に用いられて酸素(O)を発生させ、電子(e)は水の還元反応に用いられて水素(H)を発生させる。
【0048】
粒子20において、生成した正孔(h)と電子(e)とは、異なる半導体内に位置し空間的に分離されるのでキャリアの再結合が抑制される。したがって、キャリア寿命が増大し、光触媒におけるエネルギー変換効率を向上させることができる。また、ナノ粒子20内に正孔(h)と電子(e)とが生成され、生成した正孔(h)及び電子(e)と、光触媒の活性面となるナノ粒子20表面との距離が近いことで、正孔(h)及び電子(e)を効率よく水の酸化反応または還元反応に利用することができる。また、これら反応により発生した酸素(O)及び水素(H)により標的細胞を効果的に殺傷することができる。
【0049】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。図3に示すように、粒子30は、コア31と、コア31を部分的に被覆する部分シェル32と、粒子表面、すなわち、シェル上に結合した修飾物質33及び特異的認識物質34と、から構成される。コア31は第1の半導体から形成され、部分シェル32は第2の半導体から形成されている。第2実施形態における粒子20とは、部分シェル32がコア31を部分的に被覆するように形成されており、シェル22がコア21全体を被覆するように形成されていない点のみ異なる。各半導体のバンド構造、ナノ粒子30のバンド構造の関係は、図2Bに示した第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0050】
粒子30においては、コア31の一部がナノ粒子30表面に露出していることにより、コア31に多く存在している正孔(h)と触媒活性面との距離がさらに近接し、生成された正孔(h)を水の酸化反応により効率的に利用することが可能となる。すなわち、より効率的に酸素(O)を放出することができ、より高い細胞殺傷効果を発揮することができる。
【0051】
第1実施形態における粒子10についても、本実施形態と同様に、シェルがコア全体を被覆するように構成するのではなく、シェルがコアの一部を被覆するように構成することも可能である。このような構成であることで、コアに多く存在している電子(e)と触媒活性面との距離がさらに近接し、生成された電子(e)を水の還元反応により効率的に利用することが可能となる。すなわち、より効率的に水素(H)を放出することができ、より高い細胞殺傷効果を発揮することができる。
【0052】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係る光触媒の構造を示す図である。図4に示すように、粒子40は、コア41と、コア41を部分的に被覆する部分シェル42と、粒子表面、すなわち、シェル上に結合した修飾物質43及び特異的認識物質44と、から構成される。コア41は第1の半導体から形成され、部分シェル42は第2の半導体から形成されている。第3実施形態における粒子30とは、修飾物質43がシェル全体を被覆するように形成しており、さらに、特異的認識物質44が修飾物質43上に結合している点のみ異なる。各半導体のバンド構造、ナノ粒子40のバンド構造の関係は、図2Bに示した第2実施形態と同様であるので説明を省略する。修飾物質43は、脂質二重層構造からなるリポソームである。
【0053】
粒子40においては、修飾物質43がリポソームであることにより、エンドサイトーシス又はファゴサイトーシス、或いは、リポソーム膜と細胞膜との融合により、標的細胞の細胞内に粒子40を取り込ませることができる。
【0054】
第1実施形態における粒子10及び第2実施形態における粒子20についても、本実施形態と同様に、修飾物質13又は修飾物質23がシェル全体を被覆するように形成しており、さらに、特異的認識物質44が修飾物質43上に結合するように構成することも可能である。このような構成であることで、エンドサイトーシス又はファゴサイトーシス、或いは、リポソーム膜と細胞膜との融合により、標的細胞の細胞内に粒子10又は粒子20を取り込ませることができる。
【0055】
[光触媒の製造方法]
本実施形態において、光触媒は、例えば、まずコアを形成する化合物半導体からなる中間体粒子を製造した後、シェルを形成する化合物半導体で、前記中間体粒子の表面を被覆する。次いで、修飾物質及び特異的認識物質を粒子の表面に担持させる、或いは、修飾物質でさらに粒子を被覆した後、修飾物質上に特異的認識物質を結合させることで、光触媒を製造することができる。
【0056】
反応溶媒にコアを形成する化合物半導体を投入し、混合した後、混合溶液をオートクレーブ容器等の温度調節可能な反応容器内で、200℃以上400℃以下程度の温度で、30分間以上3時間以下程度の時間保持することで、コア粒子の結晶を成長させる。なお、加熱温度及び加熱時間を変更することで、粒子の粒子径を適宜調整することができる。
反応溶媒としては、使用するコアを形成する化合物半導体の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
得られたコアをそのまま続くシェルを形成する化合物半導体との反応に用いてもよいが、純度の高い光触媒を得る観点から、コアを精製し、未反応の原料等を除去することが好ましい。コアの精製方法としては、例えば、粒子体を分散可能な溶媒と、未反応の原料等を溶解し除去するための溶媒との混合溶媒を用いて、コアを洗浄する方法等が挙げられる。
【0057】
次いで、コアの表面に、シェルを形成する化合物半導体からなる層を形成させて、被覆する。シェルを形成する化合物半導体からなる層を形成させる方法としては、例えば、金属酸化物のシェルを形成する場合にはゾルゲル法が挙げられ、コア粒子に対して金属アルコキシドを加水分解することでシェルを形成する。具体的には、金属アルコキシドと、界面活性剤、アンモニア水等の反応促進剤とをコア粒子の分散液に添加し、室温程度の温度で数時間攪拌することでコア粒子の表面に、シェルを形成する化合物半導体からなる結晶を成長させて、光触媒を得ることができる。
【0058】
また、シェル形成時の加熱温度及び加熱時間、シェル材料の添加量等を変更することで、シェルによるコアの被覆範囲を制御することができる。例えば、加熱時間を短くすることで、シェルを形成する化合物半導体が、コア粒子を完全に被覆する前に成長を中断することができ、上記第3実施形態における粒子30のように、シェル32がコア31を部分的に被覆している粒子30を得ることができる。
【0059】
修飾物質及び特異的認識物質を粒子表面に担持させる方法としては、直接的又はリンカー等を介すことで、物理的又は化学的に結合させることができる。結合様式としては、例えば、配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着等が挙げられ、公知の結合方法を採用することができる。
【0060】
<医薬組成物>
本実施形態の医薬組成物は、がんの予防又は治療に用いられる医薬組成物であって、上記細胞殺傷剤を含む。
【0061】
本実施形態の医薬組成物によれば、副作用や薬剤耐性菌の出現を抑制しながら、がんを効果的に予防又は治療することができる。
【0062】
本実施形態の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含有することができる。
【0063】
薬学的に許容される担体としては、通常医薬組成物の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤;アルギン酸等の膨化剤;水、エタノール、グリセリン等の注射剤用溶剤;ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤等が挙げられる。
【0064】
本実施形態の医薬組成物は添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤等が挙げられる。
【0065】
本実施形態の医薬組成物は、上記細胞殺傷剤と、上記薬学的に許容される担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
【0066】
本実施形態の医薬組成物が水を含む分散剤である場合には、光触媒の活性を抑制するために遮光性を有する容器等に収容して保存しておくことが好ましい。或いは、用時調製することが好ましい。
【0067】
本実施形態の医薬組成物は、経口的に使用される剤型であってもよく、非経口的に使用される剤型であってもよいが、経口的に使用される剤型が好ましい。経口的に使用される剤型としては、例えば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等が挙げられる。非経口的に使用される剤型としては例えば注射剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられる。
【0068】
本実施形態の医薬組成物は、他の疾患の治療薬と組み合せて、使用してもよい。例えば、上記細胞殺傷剤を、抗がん剤や抗生物質等と組み合わせて使用することで、対象の疾患をより効果的に予防又は治療することができる。
上記細胞殺傷剤と他の薬剤とは、同一の製剤にしてもよく、別々の製剤にしてもよい。また、各製剤は、同一の投与経路で投与してもよく、別々の投与経路で投与してもよい。更に、各製剤は、同時に投与してもよく、逐次的に投与してもよく、一定の時間乃至期間を空けて別々に投与してもよい。一実施態様において、上記細胞殺傷剤と他の薬剤とは、これらを包含するキットとしてもよい。
【0069】
本実施形態の医薬組成物は、標識物質と組み合せて、使用してもよい。例えば、上記細胞殺傷剤を、標識物質と組み合わせて使用することで、疾患の患部に光触媒が送達する様子を可視化することができる。
標識物質としては、例えば、放射性同位元素、蛍光物質等が挙げられる。
放射性同位元素としては、陽電子放出核種を利用することができ、具体的には、例えば55Co、64Cu、66Ga、68Ga、76Br、89Zr、124I等が挙げられる。これらの陽電子放出核種による光触媒の標識には、公知の方法を利用することができる。
【0070】
蛍光物質としては、上記細胞殺傷剤において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0071】
[投与方法]
投与する対象としては、限定されるものではないが、例えば、ヒト、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、及びそれらの細胞等が挙げられる。中でも、哺乳動物又は哺乳動物細胞が好ましく、ヒト又はヒト細胞が特に好ましい。
【0072】
患者又は患畜への投与は、例えば、髄腔内注射、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、局所注射、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、又は経口的に当業者に公知の方法により行うことができる。投与量は、患者の体重や年齢、患者の症状、投与方法等により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
【0073】
[光の照射方法]
本実施形態の医薬組成物を投与した後に、患者又は患畜に光を照射する光源としては、光触媒が水の分解に必要なエネルギー以上のとなる光、すなわち約1000nm(>約1.23eV)より短波長の光を照射する光源であればよく、例えば、太陽光、LED、キセノンランプ、水銀ランプ、レーザー等が挙げられる。
すなわち、本実施形態の医薬組成物の投与後に、体表面から太陽光を浴びて光触媒を活性化させることができる。或いは、積極的な治療を行うことを目的として、上述した光源(太陽光を除く)を用いて体表面から光を照射することもでき、又は、上述した光源(太陽光を除く)を取り付けたカテーテル等を用いて、疾患の患部に光を照射することもできる。レーザーを取り付けたカテーテルを用いる場合には、レーザーと光触媒とを組み合わせた光療法ということもできる。
【0074】
<予防方法及び治療方法>
一実施形態において、本発明は、上記細胞殺傷剤の有効量を、被験体に投与することを含む、がんの予防方法を提供する。
本実施形態のがんの予防方法の対象となるがんとしては、上記「細胞殺傷剤」において例示されたがん種と同様のものが挙げられる。被験体としては、健常者であってもよく、がんの患者又はがんを発症している可能性がある者であってもよい。また、被験体は、ヒトに限定されず、上記「医薬組成物」において例示された各種哺乳動物が包含される。
【0075】
また、一実施形態において、本発明は、上記細胞殺傷剤の有効量を、治療を必要とする患者又は患畜に投与することを含む、がんの治療方法を提供する。
【0076】
或いは、一実施形態において、本発明は、上記細胞殺傷剤の有効量を、治療を必要とする患者又は患畜に投与することと、
前記被験体の腫瘍部に光を照射することと、
を含む、がんの治療方法を提供する。
【0077】
上記細胞殺傷剤は、上述したように、触媒活性が高く、当該細胞殺傷剤を投与後に、太陽光を浴びるのみでも十分に細胞殺傷効果を発揮することができるが、より有効に治療を行うために、能動的に光を照射することもできる。光源及び照射方法としては、上記「医薬組成物」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
本実施形態のがんの予防方法の対象となるがんとしては、上記「細胞殺傷剤」において例示されたがん種と同様のものが挙げられる。また、患畜としては、上記「医薬組成物」において例示された、ヒトを除く各種哺乳動物が包含される。
【0078】
また、一実施形態において、本発明は、がんの予防又は治療のための、上記細胞殺傷剤の使用を提供する。
また、一実施形態において、本発明は、がんの予防又は治療に用いられる医薬組成物を製造するための、上記細胞殺傷剤の使用を提供する。
【0079】
<サプリメント組成物>
本実施形態のサプリメント組成物は、がんの予防に用いられるサプリメント組成物であって、上記細胞殺傷剤を含む。
【0080】
本実施形態のサプリメント組成物によれば、副作用や薬剤耐性菌の出現を抑制しながら、がんを効果的に予防することができる。本実施形態における光触媒は、上述したように、生体中で発生する水素及び酸素の量は極微量であることから人体への影響は少なく、また、投与後一定時間血液中に滞留し、その後体外に排出される。よって、安全性の面からも毎日摂取することに問題が少ないと考えられる。
【0081】
本実施形態のサプリメント組成物は、飲食品に通常使用される公知の添加剤を更に含有することができる。添加剤としては、例えば、砂糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤、結合剤、希釈剤、香料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0082】
本実施形態のサプリメント組成物は、粉末、ゲル状等の固形状であってもよく、ゾル錠等の半固形状であってもよく、分散液等の液体状であってもよい。
【0083】
本実施形態のサプリメント組成物が水を含む分散剤である場合には、光触媒の活性を抑制するために遮光性を有する容器等に収容して保存しておくことが好ましい。
【0084】
本実施形態のサプリメント組成物は、特別用途食品、栄養機能食品、栄養補助食品、健康食品、特定保健用食品、機能性表示食品に食品添加物として配合することができる。
【0085】
本実施形態のサプリメント組成物における光触媒の配合量は、その細胞殺傷効果が発揮できる量であればよく、上述の医薬組成物における経口投与での投与量及び対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、通常、成人1日当たりの摂取量が1日あたり約0.01μg以上1g以下、好ましくは約0.05μg以上100mg以下、より好ましくは約0.1μg以上10mg以下程度とすることができる。例えば、固形状の場合には0.5質量%以上50質量%以下とすることができ、液体状の場合には0.1w/v%以上10w/v%以下とすることができる。
【0086】
<殺菌用組成物>
本実施形態の殺菌用組成物は、上記細胞殺傷剤を含む。
【0087】
本実施形態の殺菌用組成物によれば、薬剤耐性菌の出現を抑制しながら、細菌、特に病原性細菌を効果的に殺菌することができる。
【0088】
本実施形態の殺菌用組成物は、上記細胞殺傷剤のみでも十分に殺菌効果を有するが、殺菌及び抗菌効果を有する添加物をさらに含んでいてもよい。抗菌効果を有する添加物としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ブチル、プロピオン酸、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ポリリン酸、ポリリジン、しらこたん白抽出物、エタノール、グリシン、グリセリン脂肪酸エステル、酢酸ナトリウム、チアミンラウリル硫酸塩、カンゾウ油性抽出物、キトサン、モウソウチク抽出物、リゾチーム、ローズマリー抽出物、カチオン性界面活性剤(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等)等が挙げられる。
【0089】
本実施形態の殺菌用組成物は、その効果を阻害しない範囲において、一般に殺菌用組成物に配合される他の成分、例えば、無機顔料、体質顔料等の粉末類、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高級脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールとのエステル、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、防腐剤、色素、香料等の公知の添加剤を配合することができる。
【0090】
本実施形態の殺菌用組成物は、粉末、ゲル状等の固形状であってもよく、ゾル錠等の半固形状であってもよく、水やアルコール(エタノール等)を溶媒として用いた分散液等の液体状であってもよい。
【0091】
本実施形態の殺菌用組成物が水を含む分散剤である場合には、光触媒の活性を抑制するために遮光性を有する容器等に収容して保存しておくことが好ましい。
【0092】
本実施形態の殺菌用組成物における光触媒の配合量は、その細胞殺傷効果が発揮できる量であればよく、上述の細胞殺傷剤における標的細胞の細胞内に取り込まれる光触媒の数を考慮して、適宜調製することができるが、例えば、固形状の場合には0.5質量%以上50質量%以下とすることができ、液体状の場合には0.1w/v%以上10w/v%以下とすることができる。
【0093】
[殺菌用組成物による殺菌方法]
殺菌用組成物による殺菌方法としては、本実施形態の殺菌用組成物を殺菌対象に接触させた後、光を照射することで、殺菌を行うことができる。
【0094】
殺菌対象としては、特に限定されないが、本実施形態の殺菌用組成物を用いた殺菌方法は加熱を伴わないことから、熱に弱い素材からなる対象や加熱による殺菌が困難な対象に好適に用いられる。
【0095】
対象への殺菌用組成物の接触方法としては、例えば、噴霧、霧吹き、浸漬(ディッピング、ソーキング等)等が挙げられる。或いは、液体状の殺菌用組成物を、紙、不織布、脱脂綿レーヨンステーブル綿、又はこれらにプラスティックフィルム等を複合した基布に含浸させてなるウェットワイパーの形態で、対象に接触させることもできる。
中でも、噴霧、又は霧吹きが好ましい。
【0096】
また、光源としては、上記医薬組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、照射する光の強さとしては、上記細胞殺傷剤において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0097】
<インビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法>
本実施形態の方法は、インビトロで標的細胞を物理的に破壊させる方法であって、
上記細胞殺傷剤と、標的細胞と、を接触させて、前記細胞殺傷剤を前記標的細胞の細胞内に取り込ませることと、
前記細胞殺傷剤が取り込まれた前記標的細胞に光を照射することと、
を含む。
【0098】
本実施形態の方法によれば、上記細胞殺傷剤が取り込まれた前記標的細胞に光を照射することで、前記光のエネルギーにより前記細胞殺傷剤に含まれる光触媒が、前記標的細胞の細胞内に含まれる水を分解し、水素及び酸素を発生させる。その後、前記水素及び前記酸素により前記標的細胞を膨張させて、インビトロで効果的に標的細胞を物理的に破壊させることができる。
標的細胞が細菌である場合に、本実施形態の方法は、殺菌方法ということもできる。
【0099】
標的細胞としては、上記細胞殺傷剤において例示されたものと同様のものが挙げられるが、中でも、病原性細菌であることが好ましい。
【0100】
細胞殺傷剤と標的細胞との接触方法については、上記殺菌用組成物において例示された方法と同様のものが挙げられる。
また、光源としては、上記医薬組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、照射する光の強さとしては、上記細胞殺傷剤において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【実施例
【0101】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
(がん細胞の破壊試験)
1.細胞殺傷剤の作製の形成
反応溶媒であるジフェニルエーテル、GaI、InI及びNaNHを投入後、混合し、当該混合溶液を温度300℃で1時間保持した。これにより、In60Ga40N(第1の半導体)からなる、平均粒子径5nmの光触媒結晶のコア粒子を成長させた。なお、コア粒子の平均粒子径は、TEM及び動的光散乱法により測定した。
その後、コア粒子を分散させるトルエンと、当該粒子体から不要な原料を除去するエタノールと、を交互に用いた遠心分離処理を繰り返して、コア粒子を精製し、シクロヘキサンに分散させた。
次いで、得られたコア粒子の分散液に、チタンテトライソプロポキシド、界面活性剤としてオクチルフェノールエトキシレート、及びアンモニア水を添加し、加水分解させて、In60Ga40Nからなるコア粒子の周囲に、平均粒子径0.3nmのTiO(第2の半導体)を形成させて、タイプII型であって、コアシェル型のInGaN(コア)/TiO(シェル)粒子を得た。なお、TiOの平均粒子径は、TEM及び動的光散乱法により測定した。
次いで、得られたInGaN/TiO粒子のクロロホルム分散液に、3-メルカプトプロピオン酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムのメタノール溶液を添加して70℃で反応させ、カルボキシ基を修飾した。
さらに、細胞透過性及び標的細胞を特異的に認識する性質を付与するため、膜透過性ペプチドであるアルギニンペプチド(R8)及びがん細胞に選択的な結合をするチオール末端の葉酸修飾ポリエチレングリコールを、カルボキシ基修飾した粒子と混合し、がん細胞破壊用の光触媒を得た。
【0103】
2.がん細胞破壊試験
上記「1.」で得られた光触媒の分散液(200nmol/L)をHeLa細胞に噴霧して、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込ませた。細胞1個あたりに取り込まれた光触媒の数を光吸収により測定したところ、約2万個であった。なお、光吸収による細胞1個あたりに取り込まれた光触媒の数の測定方法として具体的には、まず、HeLa細胞の培養液に濃度が既知の光触媒の分散液を噴霧して光触媒を取り込ませた後、残った光触媒の分散液を回収した。次いで、噴霧前の光触媒の分散液の濃度と回収した光触媒の分散液の濃度の差を光吸収量で比較して、光触媒の取込量を算出した。次いで、波長700nmの赤外光(エネルギー密度0.1mW/cm)を10分間照射した。これにより、細胞内の水を光触媒により分解し、水素及び酸素を発生させた。これら水素及び酸素からなる気泡によって細胞が膨張し、細胞膜が物理的に破壊されて、がん細胞が死滅した。がん細胞が死滅したことは、光学顕微鏡による目視観察で確認した。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本実施形態の細胞殺傷剤によれば、副作用や薬剤耐性菌の出現を抑制し、且つ、より効果的且つ効率的にがん細胞や各種病原性細菌を殺傷できる。
【符号の説明】
【0105】
10,20,30,40…粒子(光触媒)
11,21,31,41…コア
12,22,32,42…シェル
13,23,33,43…細胞透過性を有する修飾物質(修飾物質)
14,24,34,44…標的細胞を特異的に認識する物質(特異的認識物質)
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4