(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】電子機器、情報処理装置、集中度算出プログラム、及び集中度算出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20250115BHJP
G06T 7/11 20170101ALI20250115BHJP
G08G 1/16 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
G06T7/00 650Z
G06T7/11
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2020201114
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 教志
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130959(JP,A)
【文献】特開2010-142410(JP,A)
【文献】特開2017-204177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00- 7/90
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記信頼度が信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止し、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほど前記信頼度閾値を低下させる
電子機器。
【請求項2】
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する
電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記制御部は、前記画像に含まれる要素の種類、数、及び位置の少なくとも1つに基づいて前記信頼度を算出することにより、決定する
電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記要素は、車両、歩行者、道路の形状、標識、信号、及びオプティカルフローの少なくとも1つを含む
電子機器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記制御部は、学習用画像と信頼度に関する情報との関係が機械学習された学習データにより構築され、前記画像に基づいて前記信頼度を推定することにより、決定する
電子機器。
【請求項6】
光景に対応する画像、及び前記光景に対する対象者の視線を取得する取得部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、
前記集中度を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、前記信頼度が信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止し、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほど前記信頼度閾値を低下させる
情報処理装置。
【請求項7】
光景に対応する画像、及び前記光景に対する対象者の視線を取得する取得部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、
前記集中度を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する
情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、して機能させ、
前記制御部は、前記信頼度が信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止し、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほど前記信頼度閾値を低下させる
集中度算出プログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、して機能させ、
前記制御部は、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する
集中度算出プログラム。
【請求項10】
撮像部が、撮像により光景に対応する画像を生成する撮像工程と、
視線検知部が、前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知工程と、
制御部が、前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定する決定工程と、
制御部が、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する推定工程
と、
前記制御部が、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほ
ど信頼度閾値を低下させる工程と、
前記制御部が、前記信頼度が
前記信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止する停止工程と、を備える
集中度算出方法。
【請求項11】
撮像部が、撮像により光景に対応する画像を生成する撮像工程と、
視線検知部が、前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知工程と、
制御部が、前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定する決定工程と、
制御部が、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する推定工程と、を備え、
前記制御部は、前記推定工程において、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する
集中度算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、情報処理装置、集中度算出プログラム、及び集中度算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体の安全な運転には、運転者の注意力が求められる。それゆえ、運転者の注意力を観察して、注意力が低下する場合、運転者への警告を発したり、運転の支援を行うことが検討されている。注意力の観察として、自車の周辺の対向車などの対象物に対する視線の重なり度合いの累積値である累積視認度を算出し、基準値と比較することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、累積視認度を算出するために、毎時における視認度を、テーブルを用いて算出している。しかし、実環境の多様な運転状況に対して適切なテーブルは異なっており、多様な運転状況において、運転者の注意力を正確に観察することは難しかった。
【0005】
従って、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、多様な状況に対して対象者の注意力を正確に推定する電子機器、情報処理装置、集中度算出プログラム、集中度算出方法、コンピュータの学習方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による電子機器は、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記信頼度が信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止し、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほど前記信頼度閾値を低下させる。
又は、電子機器は、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する。
【0007】
第2の観点による情報処理装置は、
光景に対応する画像、及び前記光景に対する対象者の視線を取得する取得部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、
前記集中度を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、前記信頼度が信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止し、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほど前記信頼度閾値を低下させる。
又は、情報処理装置は、
光景に対応する画像、及び前記光景に対する対象者の視線を取得する取得部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、
前記集中度を出力する出力部と、を備ええ、
前記制御部は、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する。
【0008】
第3の観点による集中度算出プログラムは、
コンピュータを、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、して機能させ、
前記制御部は、前記信頼度が信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止し、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほど前記信頼度閾値を低下させる。
又は、集中度算出プログラムは、
コンピュータを、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定し、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する制御部と、して機能させ、
前記制御部は、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する。
【0009】
第4の観点による集中度算出方法は、
撮像部が、撮像により光景に対応する画像を生成する撮像工程と、
視線検知部が、前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知工程と、
制御部が、前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定する決定工程と、
制御部が、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する推定工程と、
前記制御部が、前記集中度の推定を停止する時間が長くなるほど信頼度閾値を低下させる工程と、
前記制御部が、前記信頼度が前記信頼度閾値以下である場合前記集中度の推定を停止する停止工程と、を備える。
又は、集中度算出方法は、
撮像部が、撮像により光景に対応する画像を生成する撮像工程と、
視線検知部が、前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知工程と、
制御部が、前記対象者の集中度の推定源としての前記画像の信頼度を該画像に基づいて決定する決定工程と、
制御部が、該信頼度、前記画像、及び前記視線に基づいて前記対象者の集中度を推定する推定工程と、を備え、
前記制御部は、前記推定工程において、前記信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される前記画像に基づいて前記対象者の集中度を推定する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成された本開示に係る電子機器、情報処理装置、集中度算出プログラム、及び集中度算出方法によれば、多様な状況に対して対象者の注意力の推定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る電子機器の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】視線検知部が検知する視線と画像との関係を説明するための図である。
【
図3】画像に対して推定される視線予測マップの具体例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態において
図1の制御部が実行する推定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態において
図1の制御部が実行する推定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例である情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を適用した電子機器の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明は、本開示を適用した情報処理装置、集中度算出プログラム、及び集中度算出方法の説明を兼ねる。
【0013】
本開示の第1の実施形態に係る電子機器は、例えば、移動体に設けられる。移動体は、例えば車両、船舶、及び航空機等を含んでよい。車両は、例えば自動車、産業車両、鉄道車両、生活車両、及び滑走路を走行する固定翼機等を含んでよい。自動車は、例えば乗用車、トラック、バス、二輪車、及びトロリーバス等を含んでよい。産業車両は、例えば農業及び建設向けの産業車両等を含んでよい。産業車両は、例えばフォークリフト及びゴルフカート等を含んでよい。農業向けの産業車両は、例えばトラクター、耕耘機、移植機、バインダー、コンバイン、及び芝刈り機等を含んでよい。建設向けの産業車両は、例えばブルドーザー、スクレーバー、ショベルカー、クレーン車、ダンプカー、及びロードローラ等を含んでよい。車両は、人力で走行するものを含んでよい。車両の分類は、上述した例に限られない。例えば、自動車は、道路を走行可能な産業車両を含んでよい。複数の分類に同じ車両が含まれてよい。船舶は、例えばマリンジェット、ボート、及びタンカー等を含んでよい。航空機は、例えば固定翼機及び回転翼機等を含んでよい。
【0014】
図1に示すように、本開示の第1の実施形態に係る電子機器10は、撮像部11、視線検知部12、メモリ13、及び制御部14を含んで構成される。
【0015】
撮像部11は、例えば、移動体の前進方向の光景を撮像可能に、移動体に設けられている。撮像部11は、例えば、30fpsの速度で撮像可能なカメラである。撮像部11は、撮像により光景に対応する画像を生成する。
【0016】
視線検知部12は、例えば、移動体の運転席に着座する対象者の視線を検知可能に、移動体に設けられている。視線検知部12は、例えば、接触型のアイトラッカー及び非接触型のアイトラッカーのいずれかであり、光景に対する対象者の視線を検知する。
図2に示すように、視線LSは、例えば、撮像部11が撮像により生成する画像IMと同じ座標系における位置PEに相当する視線LSの方向として示される。
【0017】
視線検知部12は、視線データとして時系列の視線LSの視線データを検知してもよい。さらに具体的には、視線検知部12は、時間ごとに視線LSの位置PEを画像IM上に検知して、その一連の時系列の視線LSの位置PEを視線データとして出力してもよい。視線検知部12は、撮像部11より高速、言換えると高頻度で視線LSを検知してよく検知したその一連の時系列の視線LSの位置PEを1つの画像IMの視線LSの経路として積算して出力してもよい。
【0018】
メモリ13は、例えば、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)など、任意の記憶デバイスを含む。メモリ13は、制御部14を機能させる多様なプログラム、及び制御部14が用いる多様な情報を記憶する。
【0019】
制御部14は、1以上のプロセッサ及びメモリを含む。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、及び特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。制御部14は、1つまたは複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、及びSiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。制御部14は、電子機器10の各構成要素の動作を制御する。
【0020】
制御部14は、通常時に、例えば、30fpsなどの速度で連続的な撮像を撮像部11に実行させ、連続的に画像IMを情報として取得する。制御部14は、撮像部11における撮像の実行時の対象者の視線LSを視線検知部12に検知させ、画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期における視線LSを情報として取得する。画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期とは、単一の検出時点を含んでよく、画像IMの直近の撮像のひとつ前の撮像時点から直近の撮像時点までの間の複数の検出時点を含んでよい。画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期は、視線LSの単一の検出時点を含む場合、厳密な同時点ではなく、画像撮像と同じ周期の視線検知において、撮像時に最も近い時点における検知時点を含んでよい。制御部14は、画像IMと、当該画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期に検知される視線LSとを関連付けてメモリ13に格納する。
【0021】
制御部14は、取得する画像IMに画像処理を施してよい。後述する、推定部の学習を所定の画像処理を施した画像IMで行う構成において、制御部14は取得する画像IMに当該所定の画像処理を施して、視線LSと関連付けてメモリ13に格納する。所定の画像処理は、例えば、取得する画像IMに基づく、セマンティックセグメンテーション画像の生成処理であってよい。セマンティックセグメンテーション画像は、画像IM内の全画素に、ラベルまたはカテゴリを関連付けた画像である。
【0022】
制御部14は、画像IMの信頼度を当該画像IMに基づいて決定する。後述するように、本実施形態では、任意の画像IMに対する視線LSに基づく集中度の推定が行われる。集中度の推定精度は、画像に含まれる要素等によって左右され得る。画像IMの信頼度は、集中度の推定源としての画像IMの適格性を示す指標である。
【0023】
制御部14は、画像認識により検出される画像IMに含まれる要素の種類、数、及び画像IM内の位置の少なくとも1つに基づいて、信頼度を算出することにより決定してよい。要素は、例えば、車両、歩行者、道路の形状、標識、及び信号の少なくとも1つを含む。要素は、複数の画像IMに基づいて信頼度を算出する構成においては、車両、歩行者、道路の形状、標識、及び信号のオプティカルフロー、言換えると動きの少なくとも1つを含んでよい。信頼度は、例えば、検出される要素の数が増えるほど高くなるように、算出されてよい。信頼度は、検出される要素の種類が車両、歩行者等のように挙動に運転者の注意が必要な対象である場合高くなるように、算出されてよい。信頼度は、例えば、検出される要素の種類が標識、信号等のように、地表に対して固定されるため挙動の注意は不要な対象である場合車両等に比べて低くなるように、算出されてよい。信頼度は、検出される要素の位置が、移動体の移動経路及び移動体に近くなるほど高くなるように、算出されてよい。信頼度は、検出される道路の形状が複雑になるほど高くなるように、算出されてよい。
【0024】
又は、制御部14は、画像IMに基づいて信頼度を算出する信頼度推定部として機能することにより、信頼度を決定してよい。信頼度推定部は、学習用画像と、信頼度に関する情報との関係が機械学習された学習データによって構築されてよい。信頼度に関する情報は、学習用画像に含まれる要素に基づいて上述の法則により算出した集中度であってよい。
【0025】
制御部14は、決定した信頼度、撮像部11が生成した画像IM、及び視線検知部12に基づいて、対象者の集中度を推定する。第1の実施形態において、制御部14は、信頼度に基づいて、集中度の推定の可否を判別する。
【0026】
制御部14は、信頼度が信頼度閾値以下である場合、集中度の推定を停止する。制御部14は、集中度の推定を停止する時間が長くなるほど、信頼度閾値を低下させてよい。制御部14は、集中度の推定を実行後に、低下させた信頼度閾値を初期値に戻してよい。
【0027】
制御部14は、信頼度が信頼度閾値を超える場合、集中度の推定を行う。制御部14は、撮像時点と検知時期とが実質的に同じである画像IM及び視線LSに基づいて、対象者の集中度を推定する。制御部14は、機械学習された学習データにより構築される推定部として機能することにより、集中度を推定してよい。推定部は、多層構造のニューラルネットワークにより構築されてよい。
【0028】
推定部は、例えば、画像IM及び対象者の視線LSに基づいて、直接、集中度を推定してよい。推定部は、学習用画像、学習用画像に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線、及び当該学習用対象者の集中度の複数の組を用いて、学習用画像、実際の視線、及び集中度に関する生体情報の関係を機械学習させた学習データにより構築されてよい。
【0029】
または、推定部は、例えば、画像IMに基づいて視線予測マップを推定し、当該視線予測マップ及び対象者の視線LSに基づいて集中度を推定してよい。
図3に示すように、視線予測マップMPとは、一般的な対象者が特定の光景に対してそれぞれの位置を注視する、すなわち視線LSと重なる確率を、当該光景に対応する画像IMを構成する各位置において示す二次元マップである。推定部は、画像IMに基づいて視線予測マップMPを推定する第1の推定部、並びに当該視線予測マップMP及び対象者の視線LSに基づいて集中度を推定する第2の推定部を含んでよい。第1の推定部は、及び学習用画像に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線の複数の組を用いて、学習用画像及び実際の視線の関係を機械学習させた学習データにより構築されてよい。第2の推定部は、第1の推定部に学習用画像に基づいて推定させた学習用視線予測マップ、当該学習用画像に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線、及び当該学習用対象者の集中度の複数の組を用いて、学習用視線予測マップ、実際の視線、及び集中度の関係を機械学習させた学習データにより構築されてよい。
【0030】
または、推定部は、例えば、画像IMに基づいて所定の範囲内の集中度の対象者の視線予測マップを推定してよい。制御部14は、推定した視線予測マップおよび対象者の視線LSに基づいて、対象者の集中度を算出してよい。制御部14は、例えば、対象者の視線LSに対応する視線予測マップの位置、または当該位置を含む領域を特定してよい。制御部14は、さらに、視線予測マップの位置における確率、または領域における確率の平均値もしくは重付け平均値などに応じた集中度を算出してよい。制御部14は、例えば、関数またはテーブルにより、確率が大きくなるほど、低くなるように集中度を算出してよい。制御部14は、例えば、確率が大きくなるほど、対象者の集中度が所定の範囲内の平均値、最大値、最小値などの特定の値に近づくように集中度を算出してもよい。推定部は、学習用画像と当該学習用画像に対する学習用対象者の集中度が当該所定の範囲内である場合の当該学習用対象者の実際の視線との関係を機械学習させた学習データにより構築されてよい。
【0031】
または、推定部は、例えば、画像IMに基づいて、特定の負荷要因の負荷がかかる場合の低集中ヒートマップを複数の負荷要因別に推定してよい。低集中ヒートマップとは、一般的な対象者に特定の負荷要因の負荷をかけた場合に特定の光景に対してそれぞれの位置を注視する、すなわち視線と重なる確率を、当該光景に対応する画像IMを構成する各位置において示す二次元マップである。負荷要因は、一般的な対象者の運転などの行動に対する集中に負荷をかける多様な要因であって、例えば、同乗者との会話、ハンズフリー会話、ラジオ音声の傾聴、熟考、眠気、疲労等である。更に、推定部は、例えば、画像IMに基づいて、対象者への特定の負荷要因すべてを外した場合若しくは負荷を軽減した場合の高集中ヒートマップを推定してよい。高集中ヒートマップは、一般的な対象者に上記の特定の負荷要因すべての負荷を外した場合若しくは負荷を軽減した場合に特定の光景に対してそれぞれの位置を注視する、すなわち視線と重なる確率を、当該光景に対応する画像IMを構成する各位置において示す二次元マップである。制御部14は、すべての低集中ヒートマップ及び高集中ヒートマップにおける対象者の視線LSに対応する位置PEの確率を読出してよい。制御部14は、読出した確率が最大であるヒートマップを、低集中ヒートマップ群及び高集中ヒートマップの中から選択してよい。制御部14は、選択されたヒートマップに対して定められた基準値に基づいて、集中度を算出してよい。例えば、すべての低集中ヒートマップに対して、0%以上50%未満の集中度の範囲内で基準値が定められてよい。例えば、高集中ヒートマップに対して、50%以上100%以下の集中度の範囲内で基準値が定められてよい。制御部14は、視線LSに対応する位置PEの確率が最大であるヒートマップがいずれかの低集中ヒートマップである場合、低集中ヒートマップに対して定められた基準値を、対象者の集中度として算出してよい。制御部14は、視線LSに対応する位置PEの確率が最大であるヒートマップが高集中ヒートマップである場合、高集中ヒートマップに対して定められた基準値を、対象者の集中度として算出してよい。制御部14は、選択されたヒートマップの種類だけでなく、当該ヒートマップにおける視線LSに対応する位置PEの確率にも基づいて、集中度を算出してよい。例えば、低集中ヒートマップに対しては確率が大きくなるほど、集中度が小さな値に算出されるように、関数又はテーブルが定められてよい。また、例えば、高集中ヒートマップに対しては確率が大きくなるほど、集中度が大きな値に算出されるように、関数又はテーブルが定められてよい。制御部14は、視線LSに対応する位置PEの確率に基づいて、選択されたヒートマップに対して定められた関数又はテーブルを用いて、集中度を算出してよい。推定部は、低集中ヒートマップを複数の負荷要因別に推定する第4の推定部、及び高集中ヒートマップを推定する第5の推定部を含んでよい。第4の推定部は、学習用画像と、集中力を低下させる負荷を学習用対象者にかけた場合の当該学習用画像に対する視線との関係を負荷要因別に機械学習させた学習データにより構築されてよい。第5の推定部は、学習用画像と、学習用対象者への負荷を外した場合の当該学習用画像に対する視線との関係を機械学習させた学習データにより構築されてよい。
【0032】
制御部14は、連続的に撮像される複数の画像IM及び各画像IMに対応する視線LSに基づいて、集中度を推定してよい。制御部14は、例えば、最新の画像IMから所定の時間間隔で遡った範囲内のフレームの画像IMに基づいて、集中度を推定してよい。制御部14は、連続的に撮像される複数の画像IMの中で、視線LSの移動速度が速度閾値以上である画像IMを除外して、集中度を推定してよい。より具体的には、制御部14は、任意の検知時における視線LSの、直前の検知時における視線LSからの移動量が移動量閾値を超える場合、当該任意の検知時における視線LSの検知時に関連付けられている画像IMを、除外してよい。言換えると、制御部14は、サッカード中の情報を除外してもよい。除外する理由は、サッカードは次の注視点に移っている途中の動作であって、サッカード中の視線LSの位置PEは注視点としての意味を持たないためである。制御部14は、サッカード中か否かを視線LSの位置PEの移動速度などで判定してもよい。
【0033】
制御部14は、算出した集中度を外部機器15に出力してよい。外部機器15は、集中度に基づいて所定の動作を行う装置である。外部機器15は、例えば、集中度が警告閾値以下である場合に対象者に警告を発する警告装置、集中度に基づいて移動体の運転補助を行う運転補助装置、及び集中度に基づいて移動体の運転を行う運転装置などである。
【0034】
次に、第1の実施形態において制御部14が実行する、推定処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。推定処理は、1フレームの画像IM及び視線LSを制御部14が取得するたびに開始する。
【0035】
ステップS100において、制御部14は、取得した視線LSの移動速度を、直前に取得した視線LSの位置PEとの比較により算出する。算出後、プロセスはステップS101に進む。
【0036】
ステップS101では、制御部14は、ステップS101において算出した移動速度が速度閾値以上であるか否かを判別する。速度閾値以上である場合、推定処理は終了する。速度閾値以上でない場合、プロセスはステップS102に進む。
【0037】
ステップS102では、制御部14は、集中度の推定を停止している時間に基づいて信頼度閾値を決定する。決定後、プロセスはステップS103に進む。
【0038】
ステップS103では、制御部14は、推定処理の開始時に取得した画像IMに基づいて信頼度を決定する。決定後、プロセスはステップS104に進む。
【0039】
ステップS104では、制御部14は、ステップS103において決定した信頼度がステップS102において決定した信頼度閾値以下であるか否かを判別する。信頼度閾値以下である場合、推定処理は終了する。信頼度閾値以下でない場合、プロセスはステップS105に進む。
【0040】
ステップS105では、制御部14は、推定処理の開始時に取得した画像IMと視線LSとに基づいて、集中度を推定する。推定後、プロセスはステップS106に進む。
【0041】
ステップS106では、制御部14は、ステップS105において算出した集中度を外部機器15に出力する。出力後、推定処理は終了する。
【0042】
以上のような構成の第1の実施形態の電子機器10は、画像IMの信頼度を当該画像IMに基づいて決定し、当該信頼度、画像IM、及び視線LSに基づいて対象者の集中度を推定する。例えば、高速道路、市街地、郊外、住宅地等の多様な光景に対して、注視する対象及び方向などは変わることが一般的である。ただし、それゆえ、単に視線LSの動きのみの検知では、集中度の推定精度を向上させることが難しい。また、多様な光景においても、車両及び歩行者の少なく状況、交差点及びカーブ等が無い直線状の道路等では、対象者の集中度に関わらず視線の動きが単調になるため、集中度の推定精度を向上させることが難しい。一方で、前述のような構成により、電子機器10は、多様な光景の画像IMに対する信頼度に基づいて集中度を推定するので、精度の高い集中度を推定し得る。人間の注意力は集中度に影響を受けるので、電子機器10は、多様な状況における対象者の注意力の推定精度を向上させ得る。
【0043】
また、第1の実施形態の電子機器10は、信頼度が信頼度閾値以下である場合、集中度の推定を停止する、このような構成により、電子機器10は、信頼できる推定精度である集中度のみを推定し得る。
【0044】
また、第1の実施形態の電子機器10は、集中度の推定を停止する時間が長くなるほど信頼度閾値を低下させる。このような構成により、電子機器10は、集中度が推定されない期間の長期化を防ぎ得る。
【0045】
次に、本開示の第2の実施形態に係る電子機器10について説明する。第2の実施形態では、集中度の算出方法が第1の実施形態と異なっている。以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0046】
図1に示すように、第2の実施形態に係る電子機器10は、撮像部11、視線検知部12、メモリ13、及び制御部14を含んで構成される。第2の実施形態における撮像部11、視線検知部12、及びメモリ13の構成及び機能は、第1の実施形態と同じである。第2の実施形態における制御部14の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0047】
第2の実施形態において、制御部14は、第1の実施形態と同じく、画像IMの信頼度を当該画像IMに基づいて決定する。第2の実施形態において、制御部14は、第1の実施形態と異なり、信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される画像IMに基づいて対象者の集中度を推定する。制御部14は、例えば、最新の画像IMから、信頼度が低くなるほど長い時間間隔で遡った範囲のフレームの画像IM、又は信頼度が低くなるほど多くのフレーム数の画像IMを用いて集中度を推定してよい。
【0048】
第2の実施形態において、制御部14は、第1の実施形態に類似して、連続的に撮像される複数の画像IMの中で、視線LSの移動速度が閾値以上である画像IMを除外して、集中度を推定してよい。
【0049】
第2の実施形態において、制御部14は、第1の実施形態と同じく、算出した集中度を外部機器15に出力してよい。
【0050】
次に、第2の実施形態において制御部14が実行する、推定処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。推定処理は、1フレームの画像IM及び視線LSを制御部14が取得するたびに開始する。
【0051】
ステップS200において、制御部14は、取得した視線LSの移動速度を、直前に取得した視線LSの位置PEとの比較により算出する。算出後、プロセスはステップS201に進む。
【0052】
ステップS201では、制御部14は、ステップS200において算出した移動速度が速度閾値以上であるか否かを判別する。速度閾値以上でない場合、プロセスはステップS202に進む。速度閾値以上である場合、プロセスはステップS203に進む。
【0053】
ステップS202では、制御部14は、推定処理の開始時に取得した画像IM及び視線LSをメモリ13に格納する。格納後、プロセスはステップS203に進む。
【0054】
ステップS203では、制御部14は、推定処理の開始時に取得した画像IMに基づいて、信頼度を決定する。決定後、プロセスはステップS204に進む。
【0055】
ステップS204では、制御部14は、ステップS203において決定した信頼度に基づいて、集中度の推定に用いる画像IMのフレーム数を決定する。決定後、プロセスはステップS205に進む。例えば、制御部14は、ステップS203において決定した信頼度が少ないほど、集中度の推定に用いる画像IMのフレーム数を増やしてもよい。例えば、制御部14は、ステップS203において決定した信頼度が第1の閾値以下の場合、集中度の推定に用いる画像IMのフレーム数をN1としてよい。制御部14は、ステップS203において決定した信頼度が第1の閾値より大きい場合、集中度の推定に用いる画像IMのフレーム数をN2(N2<N1)としてもよい。また、上記第1の閾値とだけではなく、複数の閾値と信頼度を比較して、集中度の推定に用いる画像IMのフレーム数を段階的に定めてもよい。
【0056】
ステップS205では、制御部14は、ステップS204において決定したフレーム数から1フレーム減じたフレーム数分の、過去に遡った画像IMを対応する視線LSとともにメモリ13から読出す。読出し後、プロセスはステップS206に進む。
【0057】
ステップS206では、推定処理の開始時に取得した画像IM及び視線LS、並びにステップS205において読出した画像IM及び視線LSに基づいて、集中度を推定する。推定後、プロセスはステップS207に進む。
【0058】
ステップS206では、制御部14は、ステップS206において算出した集中度を外部機器15に出力する。出力後、推定処理は終了する。
【0059】
以上のような構成の第2の実施形態の電子機器10は、信頼度が低くなるほど、多くのフレームの、連続的に撮像される画像IMに基づいて対象者の集中度を推定する。このような構成により、電子機器10は、信頼度が低い場合に、集中度の推定に用いる画像IM及び視線LSの組合せを増やすので、信頼度の違いに関わらず、推定精度を高く維持した集中度を推定し得る。また、電子機器10は、信頼度が高い場合に、集中度の推定に用いる画像IM及び視線LSの組合せを減少させてもよいので、制御部の計算処理負荷を減少させ得る。
【0060】
本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことができる。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0061】
例えば、第1実施形態及び第2の実施形態において、電子機器10が撮像部11及び視線検知部12を備え、集中度の推定に用いる画像IM及び視線LSを制御部14が取得する構成であるが、このような構成に限定されない。
図6に示すように、例えば、クラウドサーバなどの情報処理装置16が、電子機器10と類似して、画像IM及び視線LSに基づいて、集中度を推定しよい。このような構成においては、情報処理装置16は、撮像部11及び視線検知部12を搭載する移動体17から、取得部18を介して画像IM及び視線LSを情報として取得してよい。情報処理装置16は、出力部19を介して推定した集中度を、当該移動体17における外部機器15に出力してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 電子機器
11 撮像部
12 視線検知部
13 メモリ
14 制御部
15 外部機器
16 情報処理装置
17 移動体
18 取得部
19 出力部
IM 画像
LS 視線
MP 視線予測マップ
PE 視線の方向に相当する位置