(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】航空機器の異常予測及び異常検知
(51)【国際特許分類】
B64D 45/00 20060101AFI20250115BHJP
B64F 5/60 20170101ALI20250115BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20250115BHJP
【FI】
B64D45/00 Z
B64F5/60
G01M99/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020219080
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-12-18
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー・コルチェフ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・イー・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ-チン・ル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ・シー・スローター
(72)【発明者】
【氏名】アリス・エー・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】デレク・サミュエル・フォック
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09418493(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0055145(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110412966(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 45/00
B64F 5/60
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーアップイベント中に、コンピューター機器(104又は610)で、航空機(102)のセンサー(108)によって捕捉されたセンサーデータ(114)を取得するステップ(402)であって、前記センサーデータは、複数のパラメータ値(118、120、122)を含み、前記各パラメータ値は、前記パワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する、ステップと、
前記コンピューター機器によって、一組のデルタ値(160)を決定するステップ(404)であって、前記デルタ値の組からの各デルタ値は、前記センサーデータの連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値の、第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す、ステップと、
前記コンピューター機器によって、前記デルタ値の大きさに基づいて、前記一組のデルタ値からのデルタ値を量子化ビン(254)に割り当てることによって、一組の量子化デルタ値(162)を決定するステップ(406)と、
前記コンピューター機器によって、前記量子化ビンのそれぞれに対して、デルタ値の正規化計数(166)を決定するステップ(408)と、
前記コンピューター機器によって、特定の量子化ビンに対する前記デルタ値の正規化計数と、前記特定の量子化ビンの異常検知閾値(156)との比較を実行するステップ(410)と、
前記コンピューター機器によって、且つ前記比較に基づいて、前記センサーに関連付けられた航空機器(106)の動作異常を前記センサーデータが示しているかどうかを示す出力(168)を生成するステップ(412)と、
を含
み、
前記パワーアップイベントとは、前記航空機(102)のエンジン又は補助動力ユニットが動作して、前記航空機器(106)に動力を供給している事例を指す、方法(400)。
【請求項2】
前記コンピューター機器によって、各デルタ値を差分閾値と比較するステップであって、前記差分閾値を満たすデルタ値のみが量子化ビンに割り当てられる、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサーデータによって示された前記パワーアップイベントのパワーアップ持続時間(158)を決定するステップと、
前記パワーアップイベントの前記パワーアップ持続時間に基づいて、且つ正規化基準(152)に基づいて、正規化因子(210)を決定するステップと、
前記各量子化ビンに割り当てられるデルタ値の計数(164)を決定するステップと、
前記デルタ値の正規化計数を決定するために、前記正規化因子に基づいて、前記各量子化ビンに割り当てられた前記デルタ値の計数を調節するステップとをさらに含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パワーアップイベントに関連付けられた動作条件に基づいて、前記各量子化ビンに対する前記異常検知閾値を選択するステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記航空機器が環境システム(814)の構成要素に対応し、且つ前記動作条件が周囲環境条件に関連付けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記各量子化ビンに対する前記異常検知閾値が第1の閾値及び第2の閾値を含み、前記出力が、前記特定の量子化ビンに関連付けられたデルタ値の正規化計数が、前記特定の量子化ビンに関連付けられた前記第1の閾値以上であり、且つ前記特定の量子化ビンに関連付けられた前記第2の閾値未満であることを示す前記比較に応答した第1の表示を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記出力が、前記特定の量子化ビンに関連付けられた前記デルタ値の正規化計数が、前記特定の量子化ビンに関連付けられた前記第2の閾値以上であることを示す、前記比較に応答した第2の表示を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
命令(134)を記憶する非一時的なコンピューター読み取り可能な記憶媒体(130)であって、1つ以上のプロセッサ(128)によって実行されると、前記1つ以上のプロセッサが、
パワーアップイベント中に、航空機(102)のセンサー(108)によって捕捉されたセンサーデータ(114)を取得するステップ(402)であって、前記センサーデータは、複数のパラメータ値(118、120、122)を含み、前記各パラメータ値は、前記パワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する、ステップと、
一組のデルタ値(160)を決定するステップ(404)であって、前記デルタ値の組からの各デルタ値は、前記センサーデータの連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値の、第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す、ステップと、
前記デルタ値の大きさに基づいて、前記デルタ値の組からのデルタ値を量子化ビン(254)に割り当てることによって、一組の量子化デルタ値(162)を決定するステップ(406)と、
前記量子化ビンのそれぞれに対して、デルタ値の正規化計数(166)を決定するステップ(408)と、
特定の量子化ビンに対する前記デルタ値の正規化計数と、前記特定の量子化ビンの異常検知閾値(156)との比較を実行するステップ(410)と、
前記比較に基づいて、前記センサーに関連付けられた航空機器(106)の動作異常を前記センサーデータが示しているかどうかを示す出力(168)を生成するステップ(412)と、
を含む動作を実行し、
前記パワーアップイベントとは、前記航空機(102)のエンジン又は補助動力ユニットが動作して、前記航空機器(106)に動力を供給している事例を指す、非一時的なコンピューター読み取り可能な記憶媒体(130)。
【請求項9】
前記動作が、各デルタ値を差分閾値と比較するステップをさらに含み、前記差分閾値を満たすデルタ値のみが量子化ビンに割り当てられる、請求項8に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
前記動作が、
前記センサーデータによって示されたパワーアップイベントのパワーアップ持続時間(158)を決定するステップと、
前記パワーアップイベントの前記パワーアップ持続時間に基づいて、且つ正規化基準(152)に基づいて、正規化因子(210)を決定するステップと、
前記各量子化ビンに割り当てられるデルタ値の計数(164)を決定するステップと、
前記デルタ値の正規化計数を決定するために、前記正規化因子に基づいて、前記各量子化ビンに割り当てられた前記デルタ値の計数を調節するステップとをさらに含む、
請求項8又は9に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な記憶媒体。
【請求項11】
前記動作が、前記パワーアップイベントに関連付けられた動作条件に基づいて、前記各量子化ビンに対する前記異常検知閾値を選択するステップをさらに含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な記憶媒体。
【請求項12】
前記比較を実行するステップが、
前記デルタ値の正規化計数を、前記特定の量子化ビンに関連付けられた第1の閾値と比較し、且つ前記特定の量子化ビンに関連付けられた第2の閾値と比較するステップであって、前記出力が、前記特定の量子化ビンに関連付けられた前記デルタ値の正規化計数が、前記第1の閾値以上であり、且つ前記第2の閾値未満であることを示す、前記比較に応答した第1の表示を含む、ステップを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な記憶媒体。
【請求項13】
前記出力が、前記デルタ値の正規化計数が前記第2の閾値以上であることを示す前記比較に応答した第2の表示をさらに含む、請求項12に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な記憶媒体。
【請求項14】
航空機(102)であって、
パワーアップイベント中にセンサーデータ(114)を捕捉するセンサー(108)であって、前記センサーデータは、複数のパラメータ値(118、120、122)を含み、前記各パラメータ値は、前記パワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する、センサー(108)と、
1つ以上のプロセッサ(128)と、
前記センサーに関連付けられた航空機器(106)の動作異常を検知するために、前記センサーデータ、及び前記1つ以上のプロセッサによって実行可能な命令(134)を記憶するメモリ装置(130)であって、前記命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記1つ以上のプロセッサが、
一組のデルタ値(160)を決定するステップ(404)であって、前記デルタ値の組からの各デルタ値は、前記センサーデータの連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値の、第1のパラメータ値(118)と第2のパラメータ値(120)との差を示す、ステップと、
前記デルタ値の大きさに基づいて、前記デルタ値の組からのデルタ値を量子化ビン(254)に割り当てることによって、一組の量子化デルタ値(162)を決定するステップ(406)と、
前記量子化ビンのそれぞれに対して、デルタ値の正規化計数(166)を決定するステップ(408)と、
特定の量子化ビンに対する前記デルタ値の正規化計数と、前記特定の量子化ビンの異常検知閾値(156)との比較を実行するステップ(410)と、
前記比較に基づいて、前記センサーデータが、前記航空機器の動作異常を示しているかどうかを示す出力(168)を生成するステップ(412)と、
を含む動作を実行する、メモリ装置(130)と、
を備え、
前記パワーアップイベントとは、前記航空機(102)のエンジン又は補助動力ユニットが動作して、前記航空機器(106)に動力を供給している事例を指す、航空機(102)。
【請求項15】
機上表示器(112)であって、前記動作が、前記出力を前記機上表示器に送信するステップをさらに含む、機上表示器をさらに備える、請求項14に記載の航空機。
【請求項16】
前記動作が、前記出力を地上装置(126)に送信するステップをさらに含む、請求項14又は15に記載の航空機。
【請求項17】
異常検知システム(104)をトレーニングする方法(500)であって、前記方法は、
コンピューター機器(610)で、複数のパワーアップイベント中に、1つ以上の航空機(102)の機上センサー(108)によって捕捉された複数組のセンサーデータ(314)を取得するステップ(502)であって、センサーデータの各組は、それぞれの航空機のそれぞれのパワーアップイベントに対応し、且つ複数のパラメータ値(118、120、122)を含み、各パラメータ値は、前記それぞれのパワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する、ステップと、
前記コンピューター機器によって、センサーデータの各組から一組のデルタ値(360)を決定するステップ(504)であって、前記デルタ値の組の各デルタ値は、前記センサーデータの組の連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値の、第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す、ステップと、
前記コンピューター機器によって、前記デルタ値の大きさに基づいて、前記デルタ値の組のデルタ値を量子化ビン(254)に割り当てることによって、一組の量子化デルタ値(362)を決定するステップと(506)、
前記コンピューター機器によって、前記量子化ビンのそれぞれに対するデルタ値の正規化計数(366)を決定するステップ(508)と、
前記デルタ値の正規化計数、及び前記1つ以上の航空機に関連付けられた故障表示データ(308)に基づいて、各量子化ビンに対して異常検知閾値(156)を設定するステップ(510)と、
を含み、
前記パワーアップイベントとは、前記航空機(102)のエンジン又は補助動力ユニットが動作して、航空機器(106)に動力を供給している事例を指す、方法。
【請求項18】
前記複数組のセンサーデータが、故障状態に関連付けられた第1の組のセンサーデータを含み、且つ特定の量子化ビンに関連付けられた前記異常検知閾値が、さらに前記第1の組のセンサーデータに関連付けられた第1のデルタ値の正規化計数に基づいて設定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コンピューター機器によって、各デルタ値を差分閾値と比較するステップであって、前記差分閾値を満たすデルタ値のみが量子化ビンに割り当てられる、ステップをさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
サンプルデータのそれぞれの組に対して、前記センサーデータのそれぞれの組によって示されるパワーアップ持続時間を決定するステップと、
前記センサーデータのそれぞれの組によって示され、且つ正規化基準(152)に基づく前記パワーアップ持続時間(158)に基づいて、前記サンプルデータのそれぞれの組に対して、正規化因子(210又は310)を決定するステップと、
前記サンプルデータのそれぞれの組の各量子化ビンに割り当てられた、デルタ値(360)の計数を決定するステップと、
前記サンプルデータのそれぞれの組に対する各量子化ビンの前記デルタ値の正規化計数を決定するために、前記正規化因子に基づいて、前記サンプルデータのそれぞれの組の各量子化ビンに割り当てられた前記デルタ値の計数を調節するステップと、
を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、航空機器の異常予測及び異常検知に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の航空機は、効率向上、安全性の向上、及び性能の向上などの特徴を与えるために相互作用する多くの統合システムを有し、非常に複雑である。このようなシステムのいずれかが故障すると、故障を修復し今後の運用のために航空機の準備を整えるのに、時間とリソースが著しく費やされる可能性がある。また、故障状態を修復するために予定外の整備を実施することで、航空機の稼働率が下がる可能性がある。例えば、故障状態が生じたときの航空機の所在によっては、予定外の整備を実施するのに必要な部品、機器、又は技術者を用意できない場合がある。いずれの場合も、部品、機器、又は技術者を航空機に輸送しなければならない場合があり、大幅な遅延につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
航空機の運用者は、この状況を回避しようとして多くの整備活動を計画する。計画的な整備は、少なくとも部分的に、故障の発生を回避するという目的を持った計画に従って行われる。計画的な整備によって多くの故障状態を回避し得る一方で、正常に動作すると思われる(例えば、故障したことがない)部品が交換されるため非効率である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
特定の実施形態において、航空機は、パワーアップイベント中にセンサーデータを捕捉するセンサーを備える。センサーデータは複数のパラメータ値を含み、各パラメータ値は、パワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する。航空機は、1つ以上のプロセッサと、センサーに関連付けられた航空機器の動作異常を検知するために、センサーデータ及び1つ以上のプロセッサによって実行可能な命令を記憶する、メモリ装置とをさらに備える。命令が1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサが、一組のデルタ値を決定するステップを含む動作を実行する。デルタ値の組の各デルタ値は、センサーデータの連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値からの第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す。動作は、デルタ値の大きさに基づいて、一組のデルタ値からのデルタ値を量子化ビンに割り当てることによって、一組の量子化デルタ値を決定するステップをさらに含む。動作は、各量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数を決定するステップをさらに含む。動作は、特定の量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数と、特定の量子化ビンの異常検知閾値との比較を実行するステップをさらに含む。動作は、比較に基づいて、センサーデータが、航空機器の動作異常を示しているかどうかを示す出力を生成するステップをさらに含む。
【0005】
別の特定の実施形態において、方法は、パワーアップイベント中に航空機のセンサーによって捕捉されたセンサーデータをコンピューター機器で取得するステップを含む。センサーデータは複数のパラメータ値を含み、各パラメータ値は、パワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する。本方法は、コンピューター機器によって一組のデルタ値を決定するステップをさらに含む。デルタ値の組の各デルタ値は、センサーデータの連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値からの第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す。本方法は、デルタ値の大きさに基づいて、一組のデルタ値からのデルタ値を量子化ビンに割り当てることによって、コンピューター機器で一組の量子化デルタ値を決定するステップをさらに含む。本方法は、コンピューター機器によって、各量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数を決定するステップをさらに含む。本方法は、コンピューター機器によって、特定の量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数と、特定の量子化ビンの異常検知閾値との比較を実行するステップをさらに含む。本方法は、コンピューター機器によって、且つ比較に基づいて、センサーに関連付けられた航空機器の動作異常をセンサーデータが示しているかどうかを示す出力を生成するステップをさらに含む。
【0006】
別の特定の実施形態において、非一時的な、コンピューター読み取り可能な媒体は、プロセッサによって実行されると、プロセッサが動作を開始、実行、又は制御する命令を記憶する。動作は、パワーアップイベント中に航空機のセンサーによって捕捉されたセンサーデータを取得するステップを含む。センサーデータは複数のパラメータ値を含み、各パラメータ値は、パワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する。動作は、一組のデルタ値を決定するステップをさらに含む。デルタ値の組の各デルタ値は、センサーデータの連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値からの第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す。動作は、デルタ値の大きさに基づいて、一組のデルタ値からのデルタ値を量子化ビンに割り当てることによって、一組の量子化デルタ値を決定するステップをさらに含む。動作は、各量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数を決定するステップをさらに含む。動作は、特定の量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数と、特定の量子化ビンの異常検知閾値との比較を実行するステップをさらに含む。動作は、比較に基づいて、センサーに関連付けられた航空機器の動作異常をセンサーデータが示しているかどうかを示す出力を生成するステップをさらに含む。
【0007】
別の特定の実施形態において、異常検知システムをトレーニングする方法は、複数のパワーアップイベント中に1つ以上の航空機の機上センサーによって捕捉された、複数組のセンサーデータをコンピューター機器で取得するステップを含む。センサーデータの各組は、それぞれの航空機のそれぞれのパワーアップイベントに対応し、且つ複数のパラメータ値を含む。各パラメータ値は、それぞれのパワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する。本方法は、コンピューター機器によって、センサーデータの各組に対する一組のデルタ値を決定するステップをさらに含む。デルタ値の組からの各デルタ値は、センサーデータの組からの連続するサンプル期間に対応する、一対のパラメータ値からの第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す。本方法は、デルタ値の大きさに基づいて、デルタ値の組のデルタ値を量子化ビンに割り当てることによって、コンピューター機器で一組の量子化デルタ値を決定するステップをさらに含む。本方法は、コンピューター機器によって、各量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数を決定するステップをさらに含む。本方法は、デルタ値の正規化計数、及び1つ以上の航空機に関する故障表示データに基づいて、各量子化ビンの異常検知閾値を設定するステップをさらに含む。
【0008】
本明細書に記述する特徴、機能、及び利点は、種々の実施形態において別個独立に達成でき、あるいはさらに別の実施形態で組み合わせてもよく、そのさらなる詳細は、以下の説明及び図面を参照して見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】1つ以上の航空機、及び異常検知システムを含むシステムの例を示す図である。
【
図2】センサーデータに基づいて異常を検知するために、
図1の異常検知システムによって実行される動作の詳細を示す図である。
【
図3】
図1の異常検知システムをトレーニングするために実行される動作の詳細を示す図である。
【
図4】
図1の異常検知システムを使用して異常を検知する方法の例のフローチャートである。
【
図5】
図1の異常検知システムの異常検知閾値を決定する方法の例のフローチャートである。
【
図6】本開示によるコンピューター実施方法及びコンピューター実行可能プログラム命令(又はコード)の態様を支援するように構成されるコンピューター機器を含む、コンピューター環境のブロック図である。
【
図7】
図1の異常検知システムを備える航空機の、ライフサイクルの例のフローチャートである。
【
図8】
図1の異常検知システムを備える航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示されるシステム及び方法は、航空機器の異常動作の検知を可能にし、これは実際に故障状態になる前に行うことができる。故障状態が生じる前に異常を検知することにより、航空機の運用者は、より効果的且つより効率的に整備の計画を立てることができる。例えば、飛行時間に基づいて部品を交換する(実際にはその部品を交換する必要がない場合は浪費となる可能性がある)のではなく、異常検知システムがまもなく部品の交換が必要になることを示しているときに、部品が故障する前に部品を交換することができる。その結果、交換の必要がない部品を交換することによる非効率性、及び航空機が故障状態になっていることから生じる非効率性が、両方とも回避又は低減される。
【0011】
図面及び以下の説明は、特定の例示的な実施形態を示す。本明細書で明示的に説明又は図示されていなくとも、当業者であれば、本明細書で説明する原理を具体化し且つこの説明の後に続く請求項の範囲内に含まれる、様々な構成を考案できることは理解されよう。さらに、本明細書で説明する例はいずれも、本開示の原理を理解するのに役立てることが意図され、限定するものではないと解釈されるべきである。結果として、本開示は以下で説明する特定の実施形態又は例に限定されるのではなく、特許請求の範囲及びその等価物によって限定される。
【0012】
本明細書では、図面を参照して特定の実施形態が説明される。説明においては、図面全体を通じて、共通する形態は共通する参照符号によって示される。一部の図面では、特定の種類の形態の、複数の事例が使用されている。これらの形態は物理的及び/又は論理的に異なっているが、それぞれに同じ参照符号が使用され、異なる事例は、参照符号に文字を加えることによって区別される。本明細書において、グループ又は種類としての形態が参照されるとき(例えば、形態のうちの特定の1つが参照されることがないとき)は、区別する文字のない参照符号が使用される。しかしながら、本明細書において、同じ種類の複数の形態のうち、1つの特定の形態が参照されるときは、区別する文字を伴った参照符号が使用される。例えば、
図3を参照すると、複数の航空機の例が示されており、参照符号102A及び102Kに関連付けられている。これらの航空機の特定の1つを参照するときは、区別する文字が使用される。例示すると、第1の航空機102Aを参照するときは、区別する文字「A」が使用される。しかしながら、任意の恣意的な航空機を参照するとき、あるいはグループとしての航空機を参照するときは、区別する文字のない参照符号102が使用される。
【0013】
本明細書で使用されているように、様々な用語は特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することは意図されていない。例えば、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上そうでないことが明確に示されていない限り、複数形も含むことが意図されている。さらに、「comprise(備える)」、「comprises(備える)」、及び「comprising(備えている)」という用語は、「include(含む)」、「includes(含む)」、又は「including(含んでいる)」と交換可能に使用される。また、「wherein」という用語は、「where」という用語と交換可能に使用される。本明細書で使用されるように、「例示的に(exemplary)」は例、実施形態、及び/又は態様を示し、限定したり、優先度又は好ましい実施形態を示したりするものと考えられるべきではない。本明細書で使用されるように、構造、部品、動作などの要素を変更するために使用される順序を示す用語(「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第Kの」、「第Nの」、「第Pの」など)は、要素それ自体が別の要素に対する優先順位又は順序を示すことはなく、単に要素を、同じ名前を持つ(ただし、順序を示す用語を使用する)別の要素と区別する。本明細書で使用されるように、「組(set)」という用語は1つ以上の要素のグループを指し、「複数の(plurality)」という用語は複数の要素を指す。
【0014】
本明細書で使用されるように、「生成する(generating)」、「計算する(calculating)」、「使用する(using)」、「選択する(selecting)」、「アクセスする(accessing)」、及び「決定する(determining)」は、文脈上そうでないことが示されていない限り交換可能である。例えば、パラメータ(又は信号)を「生成する(generating)」、「計算する(calculating)」、又は「決定する(determining)」とは、パラメータ(又は信号)を能動的に生成、計算、又は決定することを指すことができ、あるいは別の部品又は装置などによって既に生成されたパラメータ(又は信号)を使用、選択、又はこれにアクセスすることを指すことができる。
【0015】
本明細書で使用されるように、「結合された(coupled)」は、「通信可能に結合された(communicatively coupled)」、「電気的に結合された(electrically coupled)」、又は「物理的に結合された(physically coupled)」を含むことができ、さらに(あるいは代替的に)これらの任意の組み合わせを含むことができる。2つの装置(又は部品)は、1つ以上の他の装置、部品、配線、バス、ネットワーク(有線ネットワーク、無線ネットワーク、又はこれらの組み合わせ)などを介して直接的又は間接的に結合する(例えば、通信可能に結合する、電気的に結合する、又は物理的に結合する)ことができる。電気的に結合された2つの装置(又は部品)は、同じ装置内に、あるいは異なる装置内に含まれ、例示的な、限定的でない例の通りに、電子機器、1つ以上のコネクタ、又は誘導結合によって接続することができる。いくつかの実施形態において、電気通信などで通信可能に結合された2つの装置(又は部品)は、1つ以上の配線、バス、ネットワークなどを介して、直接的又は間接的に電気信号(デジタル信号又はアナログ信号)を送受信することができる。本明細書で使用される「直接的に結合される」とは、介在する部品なく結合された(通信可能に結合された、電気的に結合された、又は物理的に結合された)2つの装置の説明に使用される。
【0016】
図1は、1つ以上の航空機102、及び異常検知システム104を含むシステム100の例を示す図である。航空機102は、回転翼航空機102A、固定翼航空機102B、又は他の航空機であってもよい。航空機102は、推進システムの1つ以上の構成要素、油圧システムの1つ以上の構成要素、電気システムの1つ以上の構成要素、環境システムの1つ以上の構成要素などの、航空機器106を備える。
【0017】
航空機102は、航空機器106に関連付けられた1つ以上のセンサー108をさらに備える。センサー108は、センサーデータ114を生成するように構成される。センサーデータ114は、時系列116の複数のデータサンプルを含む。各データサンプルは、時系列116の対応するパラメータ値を示す。例えば、
図1では、データサンプルの時系列116は、第1のパラメータ値118(「PV
1」と表示されている)、第2のパラメータ値120(「PV
2」と表示されている)、及び第Pのパラメータ値122(「PV
p」と表示されている)を含む。第1のパラメータ値118は、センサー108の特定の1つによって第1のサンプル期間中に検知された値に相当し、第2のパラメータ値120は、センサー108の特定の1つによって第2のサンプル期間中に検知された値に相当し、第Pのパラメータ値122は、センサー108の特定の1つによって第Pのサンプル期間中に検知された値に相当する(Pは3以上の整数である)。サンプル期間は順次的である。例えば、第Pのサンプル期間は第2のサンプル期間の後に続き、第2のサンプル期間は第1のサンプル期間の後に続く。データサンプルの時系列116は、(例えば、第2のパラメータ値120と第Pのパラメータ値122との間に)1つ以上の追加のパラメータ値をさらに含むことができ、これらは図の便宜上図示されていない。パラメータ値118~122のそれぞれによって示される特定の測定値又は情報は、センサーデータ114を生成したセンサー108の種類に依存する。例えば、パラメータ値118~122は、温度、圧力、回転率、速度、位置、湿度、振動率、その他航空機器106の動作又は状態に関する任意の情報を示すことができる。
【0018】
時系列116のサンプル期間は、均等に離間される(例えば、周期的に)、あるいは不規則に離間される(例えば、非周期的に)。例えば、センサー108の1つは、均等に離間されたデータサンプルを生成するために、10ミリ秒毎に1つ、又は他のサンプリング率でデータサンプルを収集してもよい。別の例として、センサー108の1つは、時系列116の不規則に離間されたデータサンプルを生成するために、航空機器106の状態が変化する(あるいは特定の量だけ変化する)度毎に1つのデータサンプルを収集してもよい。さらに別の例として、センサー108の1つは、異なる時間に異なるサンプリング率で、例えば、飛行中は第1のサンプリング率で、且つ地上でのパワーアップ時には第2のサンプリング率でデータサンプルを収集してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、センサーデータ114は、2つ以上のセンサー108からのデータサンプルを含む。このような実施形態では、センサーデータ114は、2つ以上の時系列116(例えば、センサー毎に1つ)を含むことができ、2つ以上の時系列116のそれぞれは、均等に離間される、又は不規則に離間され得る。2つ以上の時系列116が両方とも均一に離間される場合、2つ以上の時系列116に関連付けられたサンプリング率を互いに等しくすることができ(例えば、両方のセンサーのサンプリング率を15Hzにすることができる)、あるいは2つ以上の時系列116に関連付けられたサンプリング率を不規則にすることができる(例えば、1つのセンサーのサンプリング率を15Hzにし、他のセンサーのサンプリング率を20KHzにすることができる)。
【0020】
いくつかの実施形態において、パラメータ値118~122を示すデータサンプルの時系列116に加えて、センサーデータ114はメタデータをさらに含む。例えば、センサーデータ114は、時系列116に関連付けられた時間指標情報(例えば、タイムスタンプ又は連続番号)、複数のセンサー108のうちのどれがセンサーデータ114を生成するかを示すセンサー識別子、センサー108、センサーデータ114、航空機102、航空機器、若しくは時系列116に関するその他の情報を含むことができる。センサーデータ114は、デジタル信号又はアナログ信号で示すことができる。例えば、センサーデータ114は、デジタル通信プロトコルを介して送信された、1つ以上のデジタル符号化されたパケットとして送信することができる。別の例として、センサーデータ114は、アナログ電気信号の信号特性(例えば、大きさ、周波数、又は位相)がパラメータ値を示す、1つ以上のアナログ電気信号で符号化することができる。
【0021】
センサーデータ114は異常検知システム104に提供され、異常検知システム104は、航空機器106に関する動作異常を予測又は検知するために、センサーデータ114を分析するように構成される。
図1において、異常検知システム104は、航空機102から分離したものとして示されている。例えば、
図1において、異常検知システム104と航空機102とはネットワーク124を介して通信する。しかしながら、いくつかの実施形態において、異常検知システム104は航空機102と一体化される。例えば、異常検知システム104は、航空機102の(
図8に示す健全性監視システム816などの)健全性監視システムに含めることができる。
【0022】
図1に示す例において、異常検知システム104は、コンピューター機器を含む、コンピューター機器内に含まれる、又はコンピューター機器に対応する。例えば、異常検知システム104は、1つ以上のプロセッサ128と、1つ以上のメモリ装置130と、(データポート、無線通信システム、その他の通信インターフェース又は入力/出力インターフェースなどの)インターフェース132とを備える。インターフェース132は、センサーデータ114を受信するように、且つ異常検知システム104によって生成された出力168を、航空機102の機上装置110に、地上装置126(例えば、整備コンピューターシステム)に、又はその両方に送信するように構成される。他の実施形態において、異常検知システム104は、特定用途向け回路(例えば、特定用途向け集積回路)、プログラムされたフィールドプログラマブルゲートアレイ、又は上記の組み合わせを使用して実施される。
【0023】
図1に示す例において、メモリ装置130は、センサーデータ114を分析して出力168を生成するために、プロセッサ128によって実行可能な命令134を記憶する。
図1に示す例において、命令134は様々な機能モジュールを含み、これにはデルタ値計算機138、デルタ値量子化器140、デルタ値計数器142、正規化因子計算機144、計数正規化器146、異常検知器148、及び出力生成器150が含まれる。以下の記述において、異常検知システム104の1つの特定の実施形態を例示するために、命令134の機能モジュールが説明される。他の実施形態では、命令134は、より多くの機能モジュール、より少ない機能モジュール、又は別の機能モジュールを含む。例えば、いくつかの実施形態において、機能モジュールの2つ以上が単一のモジュール内で組み合わされる。例示すると、デルタ値量子化器140とデルタ値計数器142とをヒストグラム生成器(図示せず)内で組み合わせることができる。別の例では、機能モジュールの1つ以上を2つ以上の別のモジュールに分割することができる。例示すると、異常検知器148は、地上装置126に送信される警告(例えば、整備の警告)を生成するための第1の検知閾値、及び機上装置110に送信する警告(例えば、搭乗員への警告)を生成するための第2の検知閾値などの、異なる検知閾値を使用する2つの別の異常検知器に分割することができる。さらに別の例では、いくつかの実施形態において、以下で説明する1つ以上の機能が、ソフトウェア命令ではなく専用のハードウェアを使用して実行することができる。例示すると、サンプルを遅延させることによって、且つ後続のサンプルからサンプルを減算することによってデルタ値計算機138の動作を実行するために、専用の回路を使用することができる。
【0024】
図1に示す例において、デルタ値計算機138は、センサーデータ114に基づいてデルタ値160を決定するために、プロセッサ128によって実行可能である。各デルタ値160は、時系列116における2つの連続するデータサンプルの、パラメータ値同士の差に相当する。例示すると、第1のデルタ値(「DV
1」)は、式DV
1=PV
2-PV
1を使用して計算でき、第P-1のデルタ値(「DV
P-1」)は、DV
P-1=PV
P-PV
P-1として計算することができる。いくつかの実施形態において、デルタ値計算機138は、各デルタ値160の符号を無視、省略、あるいは排除する。例えば、第1のデルタ値(DV
1)は、式DV
1=|PV
2-PV
1|を使用して計算することができる。この例では、各デルタ値160は、時系列116の隣接するパラメータ値同士の差の大きさを示す。
【0025】
デルタ値量子化器140は、量子化デルタ値162を生成するように、デルタ値160を量子化ビン(本明細書では単に「ビン」とも呼ばれる)に割り当てるために、プロセッサ128によって実行可能である。各ビンはデルタ値の範囲を表し、各センサー108からのセンサーデータ114に使用される各ビン及びビンの数で示される特定の範囲のデルタ値は、メモリ装置130に記憶された構成データ136内のビンデータ154で示される。ビンデータ154は、
図3及び
図5を参照して説明するトレーニングプロセスによって決定される。デルタ値160をビンに割り当てる例において、ビンデータ154は、各ビンが5ユニットのデルタ値範囲に相当する、均等に離間されたビンを指定することができる。この例において、特定のデルタ値(例えば、上記の例の第1のデルタ値DV
1)の値が4.5の場合、特定のデルタ値は(0~5ユニットの範囲に相当する)第1のビンに割り当てられ、特定のデルタ値の値が32.1の場合、特定のデルタ値は(30~35ユニットの範囲に相当する)第7のビンに割り当てられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、ビンデータ154は差分閾値を暗黙的又は明示的に指定し、差分閾値を満たすデルタ値のみが量子化ビンに割り当てられる。例示すると、ビンデータ154は、第1のビンの範囲が0.5~6であることを示すことができる。この例示的な例では、0.5未満のデルタ値160はビンに割り当てられず、したがって差分閾値は0.5になる。あるいは、デルタ値計算機138は、差分閾値を満たさないデルタ値160を省略する、又はゼロにすることができる。
【0027】
デルタ値計数器142は、量子化デルタ値の計数164を生成するために各ビンに割り当てられたいくつかのデルタ値160の計数を決定するように、プロセッサ128によって実行可能である。各ビンに対する量子化デルタ値の計数164は、特定のパワーアップイベント中に、センサーデータ114が、2つの連続するサンプル間で特定の大きさだけ変化した回数を示す。
【0028】
特定の大きさのデルタ値の数は、持続時間の長いパワーアップイベントの場合は大きくなることが予想される。この文脈において、「パワーアップイベント」とは、航空機102のエンジン又は補助動力ユニットが動作して、航空機器106に動力を供給している事例を指す。パワーアップイベントは、航空機102のエンジン又は補助動力ユニットが動作を停止する、あるいは航空機器106に動力を供給するのを停止すると終了する。航空機102のパワーアップイベントの持続時間は、例えば、短時間検証中の数分から、長距離飛行中の数時間まで大幅に変化し得る。通常、持続時間の長いパワーアップイベントは、持続時間の短いパワーアップイベントよりも、任意の特定のビンに対する量子化デルタ値の計数164が大きくなることが予想される。異常検知システム104は、異常検知閾値156との比較が確実に意味を持つように、量子化デルタ値の計数164を基準(例えば、正規化基準152)まで正規化する。正規化によって、構成データ136の正規化基準152で示される、標準的なパワーアップ持続時間に対応する推定値(例えば、デルタ値の正規化計数166)まで、各ビンに対する量子化デルタ値の計数164を調節する。
【0029】
正規化基準152は、標準的なパワーアップイベントのベンチマーク持続時間、又は標準的なパワーアップイベント中にそれぞれのセンサー108が送信するデータサンプルの数(例えば、パラメータ値の計数)を示す。例えば、特定のセンサー108のサンプリング率が1Hzであり、標準的なパワーアップイベントの持続時間が90分の場合、特定のセンサー108の正規化基準152は、標準的なパワーアップイベントの持続時間は90分であることを示すことができ、あるいは標準的なパワーアップイベントの持続時間は、特定のセンサー108からの5,400サンプル(即ち1サンプル/秒*60秒/分*90分)に相当することを示すことができる。均等に離間されたデータサンプルを生成するセンサー108の場合、パワーアップイベント持続時間は、センサー108のサンプリング率で割った正規化基準152と等しく、したがって均等に離間されたデータサンプルを生成するセンサー108の場合、正規化基準152はいずれかの値を示すことができる。不規則に離間されたデータサンプルを生成する特定のセンサー108の場合は、標準的なパワーアップイベントの持続時間が正規化基準152として使用される。別のセンサー108は、別のサンプリング率、又は別のサンプリングパターン(例えば、周期的又は非周期的な)を有することができる。したがって、異常検知に使用される各センサー108は、それぞれの正規化基準152に関連付けることができる。
【0030】
標準的なパワーアップイベントの持続時間は、恣意的な指定された値であり、例えば、異常検知器148のトレーニング中に、又はその前に、異常検知システム104に関連付けられたユーザーによって選択された値である。例として、標準的なパワーアップイベントの持続時間は、一組の航空機102に関するパワーアップイベントの平均持続時間に基づいて設定することができる。
【0031】
正規化因子計算機144は、正規化基準152、及びセンサーデータ114に関連付けられたパワーアップイベント(パワーアップ持続時間158など)を記述する情報に基づいて正規化因子を決定するために、プロセッサ128によって実行可能である。例えば、正規化因子は、時系列116に関連付けられたパワーアップ持続時間158(又はパワーアップイベント中のサンプル期間の計数)を、正規化基準152によって示される、標準的なパワーアップイベント(又は標準的なパワーアップイベント中のサンプル期間の計数)の持続時間で割ることによって決定することができる。
【0032】
計数正規化器146は、量子化デルタ値の正規化計数166(本明細書ではデルタ値の正規化計数、又は正規化計数とも呼ばれる)を生成するために、正規化因子に基づいて量子化デルタ値の計数164を正規化するように、プロセッサ128によって実行可能である。特定のパワーアップイベントに対する量子化デルタ値の正規化計数166は、異常検知システム104にセンサーデータ114を提供する各センサー108の各ビンに対して、1つの正規化計数を含む。特定のビンに対する正規化計数は、特定のパワーアップイベントの持続時間が標準的なパワーアップイベントの持続時間と等しかった場合は、特定のビンにデルタ値がいくつ関連付けられるかの推定(例えば、外挿)を示す。
【0033】
異常検知器148は、デルタ値の正規化計数166のそれぞれを異常検知閾値156のそれぞれと比較するために、プロセッサ128によって実行可能である。デルタ値の正規化計数166が、それぞれの異常検知閾値156を満たす(例えば、異常検知閾値156よりも大きいかそれ以上の)場合、異常検知器148は、異常が検知されたことを示す出力168を出力生成器150に生成させる。異常検知閾値156は、
図3及び
図5を参照して説明するトレーニングプロセスなどの、トレーニングプロセス中に確立される。
【0034】
異常検知閾値156は、異常検知システム104にセンサーデータ114を提供する各センサー108のビン毎に1つ以上の閾値を含む。例えば、1つのセンサー108のみが異常検知システム104にセンサーデータ114を提供する特定の実施形態では、異常検知閾値156は、ビン毎に1つの閾値を含み、異常検知システム104は、任意のビンに対するデルタ値の正規化計数166が、対応する異常検知閾値156を満たす場合は異常を検知する。別の例として、1つのセンサー108のみが異常検知システム104にセンサーデータ114を提供する特定の実施形態では、異常検知閾値156は、ビン毎に2つの閾値(例えば、第1の閾値及び第2の閾値)を含む。この例では、異常検知システム104は、任意のビンに対するデルタ値の正規化計数166が対応する第1の閾値を満たす場合は第1の種類の異常を検知し、任意のビンに対するデルタ値の正規化計数166が対応する第2の閾値を満たす場合は第2の種類の異常を検知する。例示すると、第1の閾値は地上装置126への通知をトリガーするのに使用でき、第2の閾値は機上装置110への通知をトリガーするのに使用することができる。
【0035】
さらに別の例として、特定の実施形態では、複数のセンサー108が異常検知システム104にそれぞれのセンサーデータ114を提供し、各センサー108からのセンサーデータ114は、それぞれのデルタ値の正規化計数166の生成に使用される。この例では、異常検知閾値156は、各センサー108のデルタ値の正規化計数166の各ビンに対し、1つ以上の異常検知閾値156を含む。したがって、12個のセンサー108が異常検知システム104にそれぞれのセンサーデータ114を提供する場合、それぞれが10ビンを有する12個のデルタ値の正規化計数166が生じ、異常検知閾値156は、(12個のセンサー×センサー毎に10個のビンに相当する)少なくとも120の異常検知閾値156を指定する。デルタ値の量子化に使用されるビンの数は、センサー108毎に異なっていてもよい。例えば、第1のセンサーからのセンサーデータ114に関連付けられたデルタ値160の量子化に10個のビンを使用でき、第2のセンサーからのセンサーデータ114に関連付けられたデルタ値160の量子化に7個のビン(あるいは10よりも大きい、若しくは10未満の別の数)を使用することができる。また、一部のセンサー108はビン毎に1つの異常検知閾値に関連付けられ、他のセンサー108はビン毎に2つ以上の異常検知閾値に関連付けることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、異常検知閾値156は、各センサーのビン毎にさらに2つの別の閾値を含み、パワーアップイベント中に存在する条件によって特定の閾値が使用される。例えば、異常検知システム104は、センサー108の1つ以上から、(例えば、機上装置110を介して)ユーザーから、又は別の装置(例えば、地上装置126)から、パワーアップイベント中に存在する条件を識別するデータを受信することができる。この例では、異常検知システム104は、パワーアップイベント中に存在する条件を識別するデータに基づいて、各ビン及び各センサー108に対する特定の異常検知閾値156を選択することができる。例示すると、航空機102の環境制御システムは、周囲温度、周囲湿度、周囲圧力などの周囲環境条件に応じて、多様に動作することができる。この例示的な例において、異常検知閾値156は、例えば、比較的暖かい気候条件が存在するときに使用される第1の組の閾値、及び比較的寒い気候条件が存在するときに使用される第2の組の閾値を含むことができる。この例示的な例において、異常検知システム104は、(例えば、機上装置110を介した)ユーザー入力に基づいて、(例えば、地上装置126からの)気候データに基づいて、あるいはセンサー108のうちの1つ(例えば、周囲温度センサー)からのセンサーデータ114に基づいて、第1の組の閾値を使用するか、若しくは第2の組の閾値を使用するかを選択することができる。
【0037】
特定の実施形態において、一部のセンサー108は、通常の動作条件の間に(例えば、緊急の故障がないときに)比較的小さい偏差が多く出る。このような実施形態では、デルタ値の正規化計数166のいくつかのビンは、異常検知閾値156に関連付けられなくてもよい。例えば、特定のセンサー108によって監視されている航空機器106の通常動作が、最大5~10ユニット(例えば、5~10ユニットのデルタ値)のサンプル間偏差に関連付けられる場合、0~10ユニットのデルタ値に関連付けられた1つ以上のビンは、対応する異常検知閾値156に関連付けられない。
【0038】
異常検知器148によって動作異常が検知されると、出力生成器150は出力168を生成する。出力168は、異常通知メッセージ、機上表示器112に提供された信号(例えば、電圧又は電流)などを含むことができる。いくつかの実施形態において、出力168は、異常に関連付けられた航空機器106の識別、センサーデータ114を生成したセンサー108の識別、センサーデータ114のサンプル、センサーデータ114の概要、満たされた異常検知閾値156に関連付けられたタグその他の識別子などの、検知された異常の詳細を含むことができる。
【0039】
出力168は機上装置110に、地上装置126に、又はその両方に送信される。例えば、機上表示器112が乗務員(例えば、搭乗員又は地上勤務員)に動作異常を通知するように、出力168を機上装置110に送信することができる。別の例として、地上装置126は、整備用コンピューター機器又は地上業務用コンピューター機器を備える、又はこれに対応することができる。この例では、出力168によって地上装置126が、地上勤務員又は整備員に動作異常を通知するように、あるいは動作異常に基づいて、1つ以上の整備活動を自動的に計画するようにすることができる。
【0040】
故障状態が発生する前に動作異常を検知することで、異常検知システム104によって航空機102の運用者は、より効果的且つより効率的に航空機102の整備の計画を立てることができる。また、異常を検知するために、異常検知システム104は、ヒストグラムの生成に類似した、計算効率のよいプロセスを使用する。多くのセンサーデータ列にとって、短時間で偏差が大きくなることは異常であり、緊急の故障状態を示している可能性がある。例示すると、環境制御システムでは、圧縮機出口圧力でいくつかの比較的小さい偏差が時々生じるのは通常のことであり且つ予想されることである。しかしながら、同じ期間にわたって、圧縮機出口圧力に大きい偏差が同様の回数生じるのは、圧縮機(又は圧力センサー)が、一般に故障につながる条件下に置かれ始めたことを示している可能性がある。例示すると、このような幅広い偏差は、圧縮機が、インペラの回転を開始するのが困難になっていることを示している可能性があり、このことは軸受故障の初期段階を示している可能性がある。上述した計算効率のよい計算及び計数動作を用いて、異常検知システム104はヒストグラム様のデータ(例えば、デルタ値の正規化計数166)を生成し、センサーデータ114が、(例えば、特定のビンにおいて)特定の大きさの(例えば、少なくとも閾値数の)変化が多すぎるなどの、懸念すべき偏差を含んでいるかどうかを決定するのに、ヒストグラム様のデータを使用することができる。ヒストグラム様のデータを使用することにより、異常検知システム104が、センサーデータ114及び対応する閾値において様々な偏差の範囲を考慮することも可能になる。例えば、少数の「大きい」デルタ値160が異常を示す場合がある一方で、いくつかの事例では、異常は、さらに(あるいは代替的に)、より多い数の「中位の」大きさのデルタ値160によって示され得る。例示すると、いくつかの実施形態では、20~30ポンド/平方インチ(psi)の範囲内にある25個の圧縮機出口圧力のデルタ値は、同じ期間内にわたって40~50psiの範囲内にある4個の圧縮機出口圧力のデルタ値と全く同様に懸念すべき場合がある。上述したヒストグラム様のデータを使用することにより、異常検知システム104が、他の条件と同様に、いずれかの条件も効率的に検知することが可能になる。
【0041】
図2は、センサーデータ114に基づいて異常を検知するために、
図1の異常検知システム104によって実行される動作200の詳細を示す図である。特定の実施形態において、
図2を参照して説明される動作200は、構成データ136に従って命令134の機能モジュールを実行する、
図1の1つ以上のプロセッサ128によって実行される。動作200は、航空機102のパワーアップイベント中に、又はその後に実行される。
【0042】
図2において、デルタ値計算動作238は、センサーデータ114に基づいて一組のデルタ値160を生成する。例えば、デルタ値計算動作238は、センサーデータ114の連続するデータサンプルの各ペアによって示されたパラメータ値の差、又は差の絶対値を計算することによって、デルタ値160を決定する。したがって、各デルタ値160は、測定されたパラメータが、センサーデータ114の1つのサンプル期間から次のサンプル期間までにどのくらい変化するかを示す。
【0043】
図2において、デルタ値の量子化動作240は、それぞれのデルタ値160の大きさに基づいて、各デルタ値160を量子化ビン254に割り当てる。例えば、
図2において、第1の組のデルタ値160は、第1のビン254Aに関連付けられた範囲内の大きさを有し、第1の組の量子化デルタ値162Aとして第1のビン254Aに割り当てられる。同様に、第Nの組のデルタ値160は、第Nのビン254Nに関連付けられた範囲内の大きさを有し、第Nの組の量子化デルタ値162Nとして第Nのビン254Nに割り当てられる(Nは2以上の整数である)。ビンデータ154には、使用されたビン254の数、各ビン254に関連付けられた範囲、又はビン254を記述するその他の情報が示されている。例えば、第1のビンデータ154Aは、第1のビン254Aに関連付けられた大きさの範囲を示し、第Nのビンデータ154Nは、第Nのビン254Nに関連付けられた大きさの範囲を示す。
【0044】
図2において、デルタ値の計数動作242は、各ビン254に割り当てられたデルタ値160の数を数える。例えば、デルタ値の計数動作242は、第1の計数164Aを決定するために、第1の組の量子化デルタ値162Aのデルタ値160の数を数える。同様に、デルタ値の計数動作242は、第Nの計数164Nを決定するために、第Nの組の量子化デルタ値162Nのデルタ値160の数を数える。
【0045】
図2において、計数正規化動作246は、正規化因子210を使用して、量子化デルタ値の正規化計数164を決定する。例えば、第1のビン254Aに関連付けられた第1の計数164Aは、第1のビン254Aに関連付けられた第1の正規化計数166Aを決定するために、正規化因子210で乗算される。同様に、第Nのビン254Nに関連付けられた第Nの計数164Nは、第Nのビン254Nに関連付けられた第Nの正規化計数166Nを決定するために、正規化因子210で乗算される。正規化因子210は、パワーアップ持続時間158、及び正規化基準152に基づいて、正規化因子演算244によって決定される。例えば、
図2に示す実施形態において、正規化因子210は、パワーアップ持続時間158を正規化基準152で割ったものと等しい。
【0046】
図2において、異常検知動作248は、異常状態が示されているかどうかを決定するために、デルタ値の正規化計数166の1つ以上を、1つ以上の対応する閾値156と比較する。例えば、第1の正規化計数166Aは、第1のビン254Aに関連付けられた第1の閾値156Aと比較される。同様に、第Nの正規化計数166Nは、第Nのビン254Nに関連付けられた第Nの閾値156Nと比較される。
図1を参照して説明されているように、いくつかの実施形態では、ビン254の1つ以上が、閾値156に関連付けられない。例えば、特定のビンに関連付けられたデルタ値の範囲内にある、任意の数のデルタ値160が許容可能な(例えば、緊急の故障状態を示していない)場合、特定のビンは閾値156には関連付けられない。さらに、
図1を参照して説明されているように、いくつかの実施形態では、ビン254の1つ以上が、2つ以上の閾値156に関連付けられる。例えば、特定のビン254を第1の閾値(例えば、低いほうの閾値)と第2の閾値(例えば、高いほうの閾値)とに関連付けることができ、生成される出力168は、満たされた特定の閾値に依存し得る。別の例として、特定のビン254を複数の閾値に関連付けることができ、異常検知動作248によって使用される特定の閾値156は、パワーアップイベント中に航空機が飛行しているかどうか、パワーアップイベントに関連付けられた周囲環境条件、あるいはパワーアップイベント中に動作する特定の機能又は機器などの、航空機102のパワーアップイベントに関連付けられた条件に依存する。
【0047】
図2において、出力生成動作250は、異常検知動作248によって実行された比較に基づいて、出力168を生成する。例えば、1つ以上の閾値156のうちのどれが満たされたかに応じて、出力168の特定の内容、出力168が送信される場所、又はその両方を出力生成動作250によって選択することができる。いくつかの実施形態において、出力168は、閾値156が1つも満たされていないことに応答して、異常が検知されていないことを示す。
【0048】
図3は、
図1の異常検知システム104をトレーニングするために実行される動作の詳細を示す図である。特定の実施形態において、
図3を参照して説明される動作300は、構成データ136の少なくとも一部を生成するために、異常検知システム104のトレーニング中に
図1の1つ以上のプロセッサ128によって実行される。他の実施形態において、
図3を参照して説明される動作300は、別のコンピューター機器など、異常検知システム104とは異なる別の装置によって実行される。このような実施形態では、他の装置が構成データ136の少なくとも一部を異常検知システム104に送信する、あるいは異常検知システム104が他の装置から構成データ136の少なくとも一部を取り込む。
【0049】
異常検知システム104は、1つ以上の航空機102の複数のパワーアップイベントからのセンサーデータ314に基づいてトレーニングされる。特定の航空機102の単一のパワーアップイベントを示す
図1及び
図2のセンサーデータ114とは対照的に、センサーデータ314は、複数のパワーアップイベントの履歴を表す。例えば、
図3では、第1の航空機102Aのパワーアップイベント中に第1の組のセンサーデータ314Aが生成され、第Kの航空機102Kのパワーアップイベント中に第Kの組のセンサーデータ314Kが生成され、Kは2以上の整数である。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の航空機102のパワーアップイベント中に、1つ以上の追加の組のセンサーデータ314が生成される。いくつかの実施形態では、単一の航空機102によって、複数のパワーアップイベントにわたる複数組のセンサーデータ314が生成される。
【0050】
図3において、デルタ値計算動作338は、センサーデータ314の各組に対して、一組のデルタ値360を生成する。例えば、デルタ値計算動作338は、第1の組のセンサーデータ314Aの連続するデータサンプルの各ペアによって示されたパラメータ値の差、又は差の絶対値を計算することによって、第1の組のデルタ値360Aを決定する。同様に、デルタ値計算動作338は、第Kの組のセンサーデータ314Kの連続するデータサンプルの各ペアによって示されたパラメータ値の差、又は差の絶対値を計算することによって、第Kの組のデルタ値360Kを決定する。
【0051】
図3において、デルタ値の量子化動作340は、それぞれのデルタ値の大きさに基づいて、デルタ値360の各組のデルタ値を量子化ビン254に割り当てる。例えば、
図3において、第1の組の量子化デルタ値362Aを生成するために、第1の組のデルタ値360Aがビン254に割り当てられる。同様に、第Kの組の量子化デルタ値362Kを生成するために、第Kの組のデルタ値360Kがビン254に割り当てられる(Kは2以上の整数である)。
【0052】
使用されるビン254の数、各ビン254に関連付けられる範囲、ビン254を記述するその他の情報は、デルタ値360の組に関連付けられた値の範囲に基づいて、あるいはセンサーデータ314のそれぞれの組によって示された、又はセンサーデータ314のそれぞれの組を生成したセンサーの種類に関連付けられた、パラメータ値の範囲に基づいて決定される。例えば、特定の組のセンサーデータ314に使用されるビン254の数は、異常検知システム104に指定の検知特性を与えるために、ユーザーが指定でき、デフォルト値にすることができ、発見的手法に基づいて選択でき、あるいはトレーニングプロセスに基づいて最適化又は決定することができる。通常、ビン254は、等しい大きさにされた範囲を表す。例えば、第1のビン254が5ユニットの範囲を示す場合、他のビン254もそれぞれ5ユニットの範囲を示す。
【0053】
使用されるビン254の数がわかっているとき、各ビン254の範囲は、デルタ値360の組の最大デルタ値の大きさをビン254の数で割ることで決定することができる。いくつかの実施形態において、ビン254の集合範囲が、可能性のあるデルタ値を確実に全て含むように、最大デルタ値の大きさに安全マージンを追加することができる。あるいは、特定の大きさのデルタ値が検知されたときにセンサーデータ314が故障状態を示す場合は、ビン254を分割するために、特定の大きさに満たない大きさを最大デルタ値として使用することができる。
【0054】
使用されるビン254の数がわからない、又は事前に指定されていない場合は、第1のトレーニング反復中にビン254の数が恣意的に又はランダムに選択されてもよく、異常検知システム104の精度を向上させるために引き続きトレーニングを反復している間に(必要であれば)更新することができる。例示すると、異常検知システム104は、一組のトレーニングデータ(例えば、センサーデータ314の組、及びセンサーデータ314を生成した、航空機102に関連付けられた故障表示データ308)を使用して、且つ第1の数のビン254を用いてトレーニングすることができる。この例示的な例では、故障表示データ308は、それぞれの特定の航空機102が、センサーデータ314に関連付けられたパワーアップイベント後に(例えば、後続のパワーアップイベントの特定の回数以内に)故障状態になったかどうかを示す。したがって、故障表示データ308は、各組のセンサーデータ314が、将来の故障状態に関連付けられるかどうかを示す(教師ありトレーニング用の)標識として作用する。例示的な例を続けると、異常検知システム104が第1の組のトレーニングデータ及び第1の数のビン254を使用してトレーニングされた後に、テストデータの組のうち、どのセンサーデータが将来の故障状態を示しているかを異常検知システム104が正確に予測できるかどうか判定するために、一組のテストデータを使用して異常検知システム104をテストすることができる。異常検知システム104が、指定された合格基準を満たしている(例えば、精度が十分である、誤検知の発生が容認できる低率である、検知漏れの発生が容認できる低率である)ことをテストが示している場合は、第1の数のビン254で使用するように異常検知システム104をリリースすることができる。しかしながら、異常検知システム104が、指定された合格基準を満たしていないことをテストが示している場合は、第2の数のビン254を使用して、異常検知システム104を再トレーニング及び再テストすることができる。
【0055】
図3において、デルタ値の計数動作342は、各ビン254に割り当てられたデルタ値の数を数える。例えば、デルタ値の計数動作342は、第1のビン計数364Aを決定するために、ビン254のそれぞれに割り当てられた第1の組の量子化デルタ値362Aのデルタ値の数を数え、第Kのビン計数364Kを決定するために、ビン254のそれぞれに割り当てられた第Kの組の量子化デルタ値362Kのデルタ値の数を数える。
【0056】
図3において、計数正規化動作346は、ビン計数364及び正規化因子310に基づいて、正規化計数366を決定する。正規化因子310は、センサーデータ314の各組に対して1つの正規化因子を含む。言い換えれば、K個の正規化因子310があり、K組のセンサーデータ314に対応する。各正規化因子310は、センサーデータ314の組に関連付けられたパワーアップ持続時間を正規化基準で割ったものと等しい。正規化基準は、恣意的に標準化されたパワーアップ持続時間、又は代表的なパワーアップ持続時間であり、例えば、センサーデータ314の組が生成されたパワーアップイベントの全てに関連する、平均パワーアップ持続時間である。
【0057】
図3において、閾値設定動作312は、各ビン254に対して、正規化計数366に基づいて1つ以上の代表的な計数を生成する。
図3で図示されている例において、閾値設定動作312は、ビン254及び故障表示データ308に関連付けられた集合ビン計数(又は平均集合ビン計数)に基づき、各ビン254に対して、代表的な故障計数326を識別する。例えば、閾値設定動作312は、第1のビン254Aのための第1の代表的な故障計数326Aを識別する。第1の代表的な故障計数326Aは、緊急の故障状態を示す可能性がある、第1のビン254Aの正規化計数366の値を示す。この例では、代表的な故障計数326Aは、サポートベクトルマシンなどの機械学習プロセスによって決定することができ、これは、各ビン254に対して、緊急の故障を示さない正規化計数366と、緊急の故障を示す正規化計数366との間の境界を識別するために、正規化計数366の組と故障表示データ308とをトレーニングデータとして使用する。他の例では、各ビンに対して、緊急の故障を示さない正規化計数366と、緊急の故障を示す正規化計数366との間の境界を識別するために、統計的又は発見的なプロセスを使用することができる。いくつかの実施形態において、閾値設定動作312は、各ビン254に対して、同様のプロセスを使用して代表的な非故障計数324をさらに識別する。代表的な非故障計数324は、緊急の故障状態を示していない可能性がある、それぞれのビン254の正規化計数366の値を示す。
【0058】
いくつかの実施形態において、各ビン254に関連付けられた代表的な故障計数326は、それぞれのビン254に対する異常検知閾値156として設定される。例えば、第1のビン254Aに関連付けられた代表的な故障計数326Aは、第1のビンデータ154Aに関連付けられた第1の異常検知閾値156Aとして構成データ136に記憶され、第Nのビン254Nに関連付けられた代表的な故障計数326Nは、第Nのビンデータ154Nに関連付けられた第Nの異常検知閾値156Nとして構成データ136に記憶される。
【0059】
上述したように、異常検知システム104は、各ビン254に対して2つ以上の異常検知閾値を使用することができる。特定の実施形態において、閾値設定動作312は、それぞれのビン254の異常検知閾値156をより高く設定するために、各ビン254に関連付けられた代表的な故障計数326を使用し、ビン254の異常検知閾値156をより低く設定するために、ビン254に関連付けられた代表的な非故障計数324を使用する。あるいは、各ビン254のより低い異常検知閾値は、代表的な故障計数326からのオフセットに基づいて設定することができる(例えば、代表的な故障計数326から特定の値を減算し、この値は恣意的であってもよく、あるいはセンサーデータ314の組に関連付けられた統計に基づいてもよい)。別の代替において、代表的な故障計数326は、故障状態に関連付けられていた最低正規化計数366の平均であってもよく、異常検知閾値の高低は、正規化計数366の信頼区間又は統計的分散に基づいて設定することができる。
【0060】
異常検知閾値156が確立されたら、航空機102のパワーアップイベントに関する異常状態を検知するために、
図1の異常検知システム104で構成データ136を使用することができる。
【0061】
図4は、
図1の異常検知システム104を使用して異常を検知する方法400の例のフローチャートである。特定の実施形態において、方法400は、
図1のプロセッサ128によって開始、制御、又は実行される。
【0062】
方法400は、ステップ402において、パワーアップイベント中に航空機のセンサーによって捕捉されたセンサーデータをコンピューター機器で取得する。特定の例として、
図1の異常検知システム104は、センサーデータ114を受信し、これは航空機102の1つ以上のセンサー108によって生成される。センサーデータ114は、複数のパラメータ値(例えば、PV
1 118、PV
2 120、及びPV
P 122)を含み、各パラメータ値は、パワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する。
【0063】
方法400は、ステップ404において、コンピューター機器によって一組のデルタ値を決定するステップをさらに含む。特定の例として、
図1のデルタ値計算機138は、デルタ値160を計算する。デルタ値の組からの各デルタ値は、センサーデータの連続するサンプル期間に対応する一対のパラメータ値からの第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す。
【0064】
方法400は、ステップ406において、デルタ値の大きさに基づいて、デルタ値の組のデルタ値を量子化ビンに割り当てることによって、コンピューター機器で一組の量子化デルタ値を決定するステップをさらに含む。特定の例として、
図1のデルタ値量子化器140は、量子化デルタ値の計数164を生成するために、デルタ値160の大きさに基づいて、各デルタ値160を量子化ビン254に割り当てる。
【0065】
方法400は、ステップ408において、コンピューター機器によって、各量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数を決定するステップをさらに含む。特定の例として、
図1の計数正規化器146は、量子化ビン254のそれぞれに対するデルタ値の正規化計数を決定する。例示すると、計数正規化器146は、各量子化ビン254の各量子化デルタ値の計数164に、正規化因子210を乗算する。
【0066】
方法400は、ステップ410において、コンピューター機器によって、特定の量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数と、特定の量子化ビンの異常検知閾値との比較を実行するステップをさらに含む。特定の例として、
図1の異常検知器148は、特定の量子化ビン254に対するデルタ値の正規化計数166と、特定の量子化ビン254の異常検知閾値156とを比較する。いくつかの実施形態において、複数の異常検知閾値156が、いくつかの量子化ビン254に関連付けられる。このような実施形態では、デルタ値の正規化計数166が、異常検知閾値156のそれぞれと比較される。あるいは、このような実施形態では、(例えば、パワーアップイベントに関する条件に基づいて)特定の量子化ビン254に対する異常検知閾値156の1つが選択され、特定の量子化ビン254に対するデルタ値の正規化計数166が、選択した異常検知閾値156と比較される。
【0067】
方法400は、ステップ412において、コンピューター機器によって、且つ比較に基づき、センサーに関連付けられた航空機器の動作異常をセンサーデータが示しているかどうかを示す出力を生成するステップをさらに含む。特定の例として、
図1の出力生成器150は、出力168を生成し、これはセンサーデータ114で動作異常が検知されたかどうかを示す。
【0068】
方法400は、故障状態が発生する前に動作異常を検知するための計算効率のよいプロセスである。したがって方法400により、航空機の運用者及び整備者は、より効果的且つより効率的に整備の計画を立てることができる。
【0069】
図5は、
図1の異常検知システム104の異常検知閾値を決定する方法500の例のフローチャートである。特定の実施形態において、方法500は、
図1のプロセッサ128によって開始、制御、又は実行される。他の実施形態において、方法500は、異常検知システム104とは別の(地上装置126などの)コンピューター機器によって実行され、異常検知システム104に異常検知閾値(及びおそらくは他の構成データ)が引き続き提供される。
【0070】
方法500は、ステップ502において、複数のパワーアップイベント中に1つ以上の航空機の機上センサーによって捕捉された、複数組のセンサーデータをコンピューター機器で取得するステップを含む。センサーデータの各組は、それぞれの航空機のそれぞれのパワーアップイベントに対応し、且つ複数のパラメータ値を含む。各パラメータ値は、それぞれのパワーアップイベント中のそれぞれのサンプル期間に対応する。
【0071】
方法500は、ステップ504において、コンピューター機器によって、センサーデータの各組に対する一組のデルタ値を決定するステップをさらに含む。デルタ値の組からの各デルタ値は、センサーデータの組からの連続するサンプル期間に対応する、一対のパラメータ値からの第1のパラメータ値と第2のパラメータ値との差を示す。例えば、コンピューター機器は、
図3を参照して説明したような、1つ以上のデルタ値計算動作338を実行することができる。
【0072】
方法500は、ステップ506において、デルタ値の大きさに基づいて、デルタ値の組のデルタ値を量子化ビンに割り当てることによって、コンピューター機器で一組の量子化デルタ値を決定するステップをさらに含む。例えば、コンピューター機器は、
図3を参照して説明したような、1つ以上のデルタ値の量子化動作340を実行することができる。
【0073】
方法500は、ステップ508において、コンピューター機器によって、各量子化ビンに対するデルタ値の正規化計数を決定するステップをさらに含む。例えば、コンピューター機器は、
図3を参照して説明したような、1つ以上のデルタ値の計数動作342、及び計数正規化動作346を実行することができる。
【0074】
方法500は、ステップ510において、デルタ値の正規化計数、及び1つ以上の航空機に関する故障表示データに基づいて、各量子化ビンに対する異常検知閾値を設定するステップをさらに含む。例えば、コンピューター機器は、
図3を参照して説明したような、1つ以上の閾値設定動作312を実行することができる。
【0075】
図6は、本開示によるコンピューター実施方法及びコンピューター実行可能プログラム命令(又はコード)の態様を支援するように構成されるコンピューター機器610を含む、コンピューター環境600のブロック図である。特定の例として、コンピューター機器610は、
図1の異常検知システム104を含む、異常検知システム104内に含まれる、あるいは異常検知システム104に対応する。別の特定の例として、コンピューター機器610は、
図1の地上装置126又は機上装置110を含む、地上装置126又は機上装置110内に含まれる、あるいは地上装置126又は機上装置110に対応する。コンピューター機器610、又はその部分は、
図1~
図5を参照して説明した1つ以上の動作を開始、実行、又は制御するために、命令を実行するように構成される。例えば、いくつかの実施形態において、コンピューター機器610は、
図4の方法400、
図5の方法500、又はその両方の動作を実行するように構成される構成要素を含む。例示すると、
図6において、コンピューター機器610は、
図1の命令134を含み、これはセンサーデータに基づいて異常検知を行うように実行することができる。別の例示的な例では、
図6において、コンピューター機器610は異常検知トレーナー636を備え、これは、動作300、方法500、又はその両方を行うように実行可能な命令に対応する。
【0076】
コンピューター機器610は、1つ以上のプロセッサ620を備える。プロセッサ620は、システムメモリ630、1つ以上の記憶装置640、1つ以上の入力/出力インターフェース650、1つ以上の通信インターフェース660、又は任意のこれらの組み合わせと通信するように構成される。システムメモリ630は、揮発性メモリ装置(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)装置)、不揮発性メモリ装置(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)装置、プログラム可能な読み取り専用メモリ、及びフラッシュメモリ)、又はその両方を含む。システムメモリ630はオペレーティングシステム632を含み、これは、コンピューター機器610をパワーアップするための基本入出力システム、並びにコンピューター機器610がユーザー、他のプログラム、及び他の装置と対話できるようにする完全なオペレーティングシステムを含み得る。システムメモリ630は、例えば、命令134、異常検知トレーナー636、又はその両方のアプリケーションをさらに記憶する。
【0077】
1つ以上の記憶装置640は、磁気ディスク、光学ディスク、又はフラッシュメモリ装置などの不揮発性記憶装置を含む。特定の例において、記憶装置640は、取り外し可能なメモリ装置、及び取り外しできないメモリ装置の両方を含む。記憶装置640は、オペレーティングシステム、オペレーティングシステムの画像、アプリケーション(例えば、アプリケーション634の1つ以上)、及びプログラムデータ(例えば、
図1~
図3の構成データ136)を記憶するように構成される。特定の態様において、システムメモリ630、記憶装置640、又はその両方は、有形のコンピューター読み取り可能な媒体を含む。特定の態様において、記憶装置640の1つ以上が、コンピューター機器610の外部にあってもよい。
【0078】
1つ以上の入力/出力インターフェース650は、ユーザーとの相互作用を容易にするために、コンピューター機器610が1つ以上の入力/出力装置670と通信できるようにする。例えば、1つ以上の入力/出力インターフェース650は、表示インターフェース、入力インターフェース、又はその両方を含むことができる。プロセッサ620は、1つ以上の通信インターフェース660を介して、装置又はコントローラー680と通信するように構成される。例えば、1つ以上の通信インターフェース660は、ネットワークインターフェースを含むことができる。装置又はコントローラー680は、例えば、航空機102、ネットワーク124の装置、センサー108、機上装置110、地上装置126、又は任意のこれらの組み合わせを含むことができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、非一時的な、コンピューター読み取り可能な媒体は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、上述した機能の一部又は全部を実行するための動作を1つ以上のプロセッサに開始、実行、又は制御させる命令を記憶する。例えば、命令は、
図1~
図5の動作又は方法の1つ以上を実施するように実行可能であってもよい。例示すると、アプリケーション634の命令は、プロセッサ620によって実行されると、異常検知システム104をトレーニングするため、又はセンサーデータ114に基づいて異常を検知するため、あるいはその両方のために、プロセッサ620に動作を開始、実行、又は制御させることができる。いくつかの実施形態において、
図1~
図5の1つ以上の動作又は方法の一部又は全部が、命令を実行する1つ以上のプロセッサ(例えば、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、1つ以上のグラフィックス処理ユニット(GPU)、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP))によって、あるいは専用のハードウェア回路又はこれらの任意の組み合わせによって実施される。
【0080】
図7は、
図1の異常検知システムを備える航空機の、ライフサイクル700の例のフローチャートである。製造準備中に、例示的なライフサイクル700は、ステップ702において、航空機102などの航空機の仕様及び設計を含む。航空機の仕様及び設計の際に、ライフサイクル700は、異常検知システム104の仕様及び設計を含んでもよい。ステップ704において、ライフサイクル700は、材料調達をさらに含み、これは、異常検知システム104用の材料を調達するステップを含んでもよい。
【0081】
製造中に、ライフサイクル700は、ステップ706における構成要素及び部分組立品の製造、並びにステップ708における航空機のシステム統合を含む。例えば、ライフサイクル700は、異常検知システム104の構成要素及び部分組立品の製造、並びに異常検知システム104のシステム統合を含んでもよい。ライフサイクル700は、ステップ710において航空機の認証及び搬送を、並びにステップ712において航空機を就航中にすることを含む。認証及び搬送は、異常検知システム104を稼働状態にするために、異常検知システム104の認証を含んでもよい。取引先による就航中に、航空機は、定期的な整備及び保守点検(改装、再構成、改修などを含んでもよい)の予定が組まれる場合がある。ステップ714において、ライフサイクル700は、航空機で整備及び保守点検を実行するステップを含み、これは、異常検知システム104で整備及び保守点検を実行するステップを含んでもよい。あるいは、整備及び保守点検は、異常検知システム104によって検知された動作異常に基づいて航空機で実行することができる。
【0082】
ライフサイクル700のプロセスのそれぞれは、システム統合者、第三者、及び/又は、オペレータ(例えば、取引先)によって実行されあるいは行われてもよい。この説明の目的のため、システム統合者は、制限なく、任意の数の航空機製造業者及び主要システム下請業者を含んでもよく、第三者は、制限なく、任意の数のベンダー、下請業者、及び、サプライヤーを含んでもよく、また、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事企業、保守点検機関などであってもよい。
【0083】
図8は、航空機102のブロック図である。
図8に示す例において、
図1の異常検知システムは、航空機102の構成要素である。
図8において、航空機102は、航空機器106及び内部804などの複数のシステムを有する機体802を備える。航空機器106の例は、推進システム808、電気システム812、環境システム814、油圧システム810、及び健全性監視システム816のうちの1つ以上の構成要素を含む。
図8に示す例において、センサー108、異常検知システム104、又はその両方は、健全性監視システム816の一部である。任意の数の他のシステムやその他の機器が含まれてもよい。
【0084】
本明細書で説明した例の図は、様々な実施形態の構造を一般的に理解してもらうことを意図している。図は、本明細書で述べる構造又は方法を使用する装置及びシステムの、全ての部品及び形態の完全な説明となることは意図していない。本開示を検討すれば、他の多くの実施形態が当業者には明らかになるであろう。本開示から他の実施形態が利用され且つ得られてもよく、その結果、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的且つ論理的な代替及び変更がなされてもよい。例えば、方法の動作は、図に示されているものとは異なる順序で実行されてもよく、あるいは1つ以上の方法の動作が省略されてもよい。したがって、本開示及び図面は、制限的なものではなく、例示的なものとみなされるべきである。
【0085】
さらに、本明細書では具体的な例が図示され説明されているが、同一又は同様の結果を達成するために設計される任意の後発の構成が、示されている特定の実施形態に替えられてもよいことを理解されたい。本開示は、様々な実施形態の、任意且つ全ての後発の適応又は変形を包含することが意図される。上述の実施形態の組み合わせ、及び本明細書で具体的に説明されていないその他の実施形態については、この説明を読めば当業者には明らかであろう。
【0086】
本開示の要約は、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないという理解のもと添付される。また、前述の発明の詳細な説明において、本開示を合理化する目的で、様々な形態が一緒にまとめられたり、単一の実施形態で説明されたりしてもよい。前述した例は例示であって、本開示を限定するものではない。本開示の原理に従って、多くの修正及び変更が可能なことも理解されたい。後述の特許請求の範囲に反映されているように、特許請求される主題は、任意の開示されている例の、全てに満たない形態に関していてもよい。したがって、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によって定義される。
【符号の説明】
【0087】
100 システム
102 航空機
104 異常検知システム
106 航空機器
108 センサー
110 機上装置
112 機上表示器
114 センサーデータ
116 時系列
118 第1のパラメータ値
120 第2のパラメータ値
122 第Pのパラメータ値
124 ネットワーク
126 地上装置
128 プロセッサ
130 メモリ装置
132 インターフェース
134 命令
136 構成データ
138 デルタ値計算機
140 デルタ値量子化器
142 デルタ値計数器
144 正規化因子計算機
146 計数正規化器
148 異常検知器
150 出力生成器
152 正規化基準
154 ビンデータ
156 異常検知閾値
158 パワーアップ持続時間
160 デルタ値
162 量子化デルタ値
164 量子化デルタ値の計数、正規化計数
166 デルタ値の正規化計数