(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】塗布用ブラシ
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20250115BHJP
A46B 9/04 20060101ALI20250115BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
A46B9/04
A61C19/06 A
(21)【出願番号】P 2020219349
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 一輝
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-075125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0213018(US,A1)
【文献】国際公開第2016/035678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A46B 9/04
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内組織に薬剤を塗布するための塗布用ブラシであって、
塗布突起を有するヘッド部と、塗布操作のためのハンドル部と、前記ヘッド部と前記ハンドル部とを繋ぎ且つ弾性変形可能な首部と、を備え、
前記首部は、
当該塗布用ブラシの軸線方向に延びる軸部材と、前記軸部材を構成する材料よりも軟質の材料で構成され且つ前記軸部材の少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、
前記軸部材は、
前記軸線方向に直交する断面が円形の形状を有する軸部と、前記軸線方向における前記軸部の中央箇所よりも前記ハンドル部に近い箇所にて前記軸部から前記軸線方向に交差する向きに突出する突起部と、前記突起部から前記軸部に沿って前記ヘッド部側に向けて延び出し且つ前記突起部から離れるにつれて前記軸線方向に直交する断面の面積が小さくなる形状を有するテーパ部と、を有する、
塗布用ブラシ。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布用ブラシにおいて、
前記軸部材は、
前記首部から前記ハンドル部に向けて連続して延び、前記軸部の前記軸線方向に直交する断面の面積が前記ハンドル部における当該軸部材の前記軸線方向に直交する断面の面積よりも小さい、ように構成される、
塗布用ブラシ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の塗布用ブラシにおいて、
前記軸部材の前記軸部は、
前記ヘッド部から前記塗布突起が突出する突出方向における当該軸部の幅が、前記突出方向及び前記軸線方向に直交する方向における当該軸部の幅よりも小さい、楕円形の形状を前記軸線方向に直交する断面において有する、
塗布用ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内組織に薬剤を塗布するための塗布用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯の表面に付着した歯垢等を除去するための毛束がヘッド部に植え付けられた歯ブラシが提案されている。歯ブラシは、一般に、歯の表面に毛束の先端部を押し付けて摺動させることで、歯垢等を歯の表面等から掻き取るように用いられる(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-180973号公報
【文献】特開2010-253107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような歯垢等の除去とは異なり、口腔内組織(例えば、歯、歯肉、口腔内壁、及び、舌等)に薬剤を塗布する目的で、塗布用ブラシが用いられる。具体的には、この種の塗布用ブラシは、例えば、乳幼児や児童の歯にフッ化物を含有した薬剤を塗布する場合や、高齢者の口腔内壁等に保湿成分を含有した薬剤を塗布する場合等に用いられる。この種の塗布用ブラシは、主な使用者が乳幼児、児童、乳幼児や児童の保護者、高齢者、及び、高齢者の介護者(以下「乳幼児等」と総称する。)であることから、口腔内での塗布用ブラシの操作性や、過大な外力が塗布用ブラシに及んだ際に口腔内組織を塗布用ブラシが傷つけることの抑制等の安全性の点で、上述した歯ブラシとは異なる性能を求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的の一つは、口腔内組織に薬剤を塗布する際の操作性や安全性に優れた塗布用ブラシの提供である。
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る塗布用ブラシは、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
口腔内組織に薬剤を塗布するための塗布用ブラシであって、
塗布突起を有するヘッド部と、塗布操作のためのハンドル部と、前記ヘッド部と前記ハンドル部とを繋ぎ且つ弾性変形可能な首部と、を備え、
前記首部は、
当該塗布用ブラシの軸線方向に延びる軸部材と、前記軸部材を構成する材料よりも軟質の材料で構成され且つ前記軸部材の少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、
前記軸部材は、
前記軸線方向に直交する断面が円形の形状を有する軸部と、前記軸線方向における前記軸部の中央箇所よりも前記ハンドル部に近い箇所にて前記軸部から前記軸線方向に交差する向きに突出する突起部と、前記突起部から前記軸部に沿って前記ヘッド部側に向けて延び出し且つ前記突起部から離れるにつれて前記軸線方向に直交する断面の面積が小さくなる形状を有するテーパ部と、を有する、
塗布用ブラシであること。
[2]
上記[1]に記載の塗布用ブラシにおいて、
前記軸部材は、
前記首部から前記ハンドル部に向けて連続して延び、前記軸部の前記軸線方向に直交する断面の面積が前記ハンドル部における当該軸部材の前記軸線方向に直交する断面の面積よりも小さい、ように構成される、
塗布用ブラシであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の塗布用ブラシにおいて、
前記軸部材の前記軸部は、
前記ヘッド部から前記塗布突起が突出する突出方向における当該軸部の幅が、前記突出方向及び前記軸線方向に直交する方向における当該軸部の幅よりも小さい、楕円形の形状を前記軸線方向に直交する断面において有する、
塗布用ブラシであること。
【0007】
上記[1]の構成の塗布用ブラシによれば、ヘッド部とハンドル部とを繋ぐ首部が、断面が円形の形状を有する軸部を有する軸部材と、軸部材の少なくとも一部を覆う軟質の被覆部材と、を有する。これにより、使用時に口唇等に接触し得る首部の外表面に軟質の被覆部材が位置することによる柔らかな肌触りと、相対的に硬質な軸部材に起因する曲げ硬さや弾性を首部が有することによる適度な使用感(いわゆるコシ)と、を両立できる。更に、軸部の断面が円形の形状であることで、その断面が四角形状の形状等を有する場合に比べ、塗布用ブラシの軸線方向に交差する何れの向きへもほぼ同等の曲がり易さで首部が湾曲可能である。これにより、塗布対象の口腔内組織(例えば、歯、歯肉、口腔内壁、及び、舌等)の配置に合わせてハンドル部を持ち替える等の作業を要することなく、何れの口腔内組織に対しても、ほぼ同程度の押圧力で薬剤を塗布でき、それによって口腔内組織に均一に薬剤を塗布できる。加えて、塗布用ブラシが口腔内の何れの位置にあっても、過大な外力が塗布用ブラシに及ぼされた際、その外力を逃がす向きに首部が湾曲することで、ヘッド部で口腔内組織を傷つけること等を抑制できる。
【0008】
更に、首部は、軸線方向における軸部の中央箇所よりもハンドル部に近い位置に、軸部から突出する突起部を有する。加えて、突起部のヘッド部側に、突起部から軸部に沿って延び出し且つ突起部から離れるにつれて断面積が小さくなる(即ち、先すぼまりとなる)形状のテーパ部が設けられる。これにより、軸部の中央箇所における軸部の剛性よりも、突起部が設けられている箇所の周辺における軸部の剛性が大きくなる。換言すると、首部の中央箇所が、首部のハンドル部側の基端側箇所よりも曲がり易くなる。よって、前歯等の口腔手前側の組織に薬剤を塗布する際、操作に応じて首部の中央箇所が優先的に湾曲することから、組織に及ぶ負荷が低減される。一方、奥歯等の口腔奥側の組織に薬剤を塗布する際、歯列に沿って口腔内壁と歯との間にヘッド部を挿入する場合等において、首部の中央箇所が口腔内壁と歯とに挟まれて湾曲が自然に抑制されるとともに、首部の基端側箇所が適度な剛性を有することで意図しない湾曲が抑制されることから、口腔奥側への塗布用ブラシの挿入操作が容易になる。
【0009】
このように、本構成の塗布用ブラシは、一般の歯ブラシとは異なり、乳幼児等であっても容易かつ適正に使用できる構造を備えている。即ち、本構成の塗布用ブラシは、口腔内組織に薬剤を塗布する際の操作性や安全性に優れている。
【0010】
更に、他の効果として、射出成形によって軸部材の少なくとも一部を覆うように被覆部材を成形する場合、突起部に隣接するようにテーパ部が設けられることで、突起部の周辺での溶融樹脂の流動を促し、突起部の周辺に気泡(ボイド)が発生することを抑制できる。このような気泡の発生を抑制することで、首部の強度や耐久性を向上できる。更に、突起部よりも先端側(即ち、溶融樹脂流の下流側)にある成形対象物(例えば、ヘッド部や塗布突起)の末端箇所にまで溶融樹脂が到達することを促し、その末端箇所に欠け(ショートショット)が発生することを抑制できる。このような欠けを抑制することで、塗布用ブラシの本来の塗布機能が適正に発揮されるとともに、塗布用ブラシの美観や生産性を向上できる。
【0011】
なお、上記「円形の形状」は、正円、楕円形、及び、長円形等を含む、まるい形を表す。更に、上記「軸部材を構成する材料よりも軟質の材料」は、例えば、JIS K 6253(2012)に準じた試験(タイプAデュロメータ)で測定される硬度において、軸部材を構成する材料よりも小さい硬度を有する材料を表す。上記「硬質」についても同様である。
【0012】
上記[2]の構成の塗布用ブラシによれば、首部に位置する軸部の断面積が、ハンドル部に位置する軸部材の断面積よりも、小さい。これにより、ハンドル部よりも首部が湾曲し易くなる。よって、ハンドル部が湾曲する場合に比べて湾曲時にヘッド部が変位する範囲(換言すると、ヘッド部の振れ幅)が小さくなるため、乳幼児や児童のように口腔自体の大きさが小さい使用者に対しても、上述した優れた操作性や安全性を適正に発揮できる。
【0013】
上記[3]の構成の塗布用ブラシによれば、ヘッド部から塗布突起が突出する突出方向(即ち、ヘッド部を正面から見た場合の奥行き方向)よりも、突出方向及び軸線方向に直交する方向(即ち、ヘッド部を正面から見た場合の横方向)において、首部が若干曲がり難くなる。これにより、薬剤の塗布にあたり、歯や歯肉等にヘッド部の塗布突起を接触させた状態でヘッド部を軸線方向に沿って往復移動させる操作を行う際、横方向へのヘッド部の位置ズレが適度に抑制される。よって、塗布作業の精度を向上できる。更に、突出方向において首部が曲がり易くなることで、塗布時に口腔内組織に及ぼす負荷を更に低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、口腔内組織に薬剤を塗布する際の操作性や安全性に優れた塗布用ブラシを提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明による塗布用ブラシを示し、
図1(a)は、その左側面図であり、
図1(b)は、その正面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1(b)のA-A断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のB部の拡大図であり、
図2(c)は、
図2(a)のB部に相当する部分の正面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2(a)のC-C断面図であり、
図3(b)は、
図2(a)のD-D断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明による塗布用ブラシの首部が前後方向に撓む様子を示す図であり、
図4(b)は、本発明による塗布用ブラシの首部が左右方向に撓む様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る塗布用ブラシ1について説明する。塗布用ブラシ1は、
図1に示すように全体として棒状の形状を有し、例えば、乳幼児や児童の歯にフッ化物を含有した薬剤(ジェル状の薬剤等)を塗布する場合や、高齢者の口腔内壁等に保湿成分を含有した薬剤を塗布する場合等に用いられる。
【0018】
以下、説明の便宜上、特に指定のない限り、「左」、「右」、「前」及び「後」を以下のように定義する。「左右方向」又は「左右」等と表現する際の「左」とは、塗布用ブラシ1を正面視した場合の「左」を表す。同様に、「左右方向」又は「左右」等と表現する際の「右」とは、塗布用ブラシ1を正面視した場合の「右」を表す。なお、「正面視」とは
図1(b)のように塗布用ブラシ1を見る場合をいう。更に、「前後方向」とは、塗布用ブラシ1を正面視した場合の「手前」及び「奥」に向かう方向を表し、「前」とは、塗布用ブラシを正面視した場合の「手前側」を表し、「後」とは、塗布用ブラシを正面視した場合の「奥側」を表す。
【0019】
塗布用ブラシ1は、
図1に示すように、複数の塗布突起10を有するヘッド部20と、弾性変形可能な首部30と、ハンドル部50とを備える。ヘッド部20、首部30、及び、ハンドル部50の各々は、
図2(a)に示すように、軸部材60と、軸部材60を構成する材料よりも軟質の材料で構成され且つ軸部材60が有する軸部62やテーパ部66a(詳細は後述される。)を覆う被覆部材80と、から構成されている。軸部材60及び被覆部材80は、ヘッド部20からハンドル部50までの塗布用ブラシ1の軸線方向の全域に亘って連続して延びている。
【0020】
首部30の軸部62等が軟質の被覆部材82で覆われることにより、使用時に口唇等に接触し得る首部30の外表面に軟質の被覆部材82が位置することによる柔らかな肌触りと、相対的に硬質な軸部材60を内部に有することによる適度な使用感(いわゆるコシ)と、を使用者に与えることができる。
【0021】
ヘッド部20は、おもて面21と裏面22を有する板状部材20aを有し、おもて面21と裏面22の双方に複数の塗布突起10を有している。薬剤の塗布の際にはヘッド部20の塗布突起10に薬剤(例えば、ジェル状の薬剤や液状の薬剤)を付け、歯や歯肉等に薬剤を塗布する。薬剤を塗布する口腔内組織の位置に応じて、ヘッド部20のおもて面21の塗布突起11に薬剤を塗布するか、ヘッド部20の裏面22の塗布突起12に薬剤を塗布するかを、選択することも可能である。
【0022】
首部30は、ヘッド部20とハンドル部50との間に設けられる。首部30は、前後方向(
図4(a)参照)、左右方向(
図4(b)参照)、及び、前後方向と左右方向との間の任意の斜め方向(図示省略)の何れにおいても、弾性変形可能となっている。これにより、乳幼児等が塗布用ブラシ1を使用する際、転倒や衝突等により塗布用ブラシ1のハンドル部50に意図しない外力が及んだ場合であっても、その外力を逃がす向きに首部30が弾性的に湾曲することで、ヘッド部20の先端が口腔内組織を傷つけることを抑制できる。
【0023】
ハンドル部50は、首部30とハンドル部50との接続部分に設けられた第1の凸部41と、ヘッド部20と反対側のハンドル部50の端部51に設けられた第2の凸部42と、第1の凸部41と第2の凸部42の間に設けられた第3の凸部43と、を有する。ハンドル部50に第1~第3の凸部41,42,43を設けることにより、使用者がハンドル部50を把持しやすくなり、使用時の手の滑り等を抑制できる。具体的には、第1の凸部41を首部30とハンドル部50との接続部分に設け、第2の凸部42をヘッド部20と反対側のハンドル部50の端部51に設け、第3の凸部43を第1の凸部41と第2の凸部42の間に設けることにより、ハンドル部50の握り方や使用者の手の大きさによらず、第1~第3の凸部41~43の少なくとも1つに使用者の手指が掛かることになる。そのため、乳幼児、児童及び高齢者が自ら塗布用ブラシ1を使用する場合であっても、乳幼児や児童の保護者及び高齢者の介護者等が塗布用ブラシ1を用いる場合であっても、容易かつ適正に塗布用ブラシ1を使用できる。
【0024】
ヘッド部20のおもて面21に設けられた複数の塗布突起11は、各々異なる長手方向の長さ(即ち、ヘッド部20のおもて面21又は裏面22からの先端高さ)を有している。これにより、ヘッド部20のおもて面21を、歯間、歯頚部、及び、奥歯等の狭い部分に薬剤を塗布することに適した面として用い得る。一方、ヘッド部20の裏面22に設けられた複数の塗布突起12は、ほぼ同一の長手方向の長さを有している。これにより、ヘッド部20の裏面22を、歯の表面や歯肉の表面、舌表面、及び、口腔粘膜等の広い部分に薬剤を塗布することに適した面として用い得る。
【0025】
より具体的には、おもて面21の首部30と反対側の端部及びおもて面21の首部30側の端部に設けられた塗布突起11の長さは、おもて面21の中央部に設けられた塗布突起11の長さよりも長い。これに対し、おもて面21の首部30と反対側の端部に近づくほど塗布突起11が長くなるように塗布突起11の長さを定めてもよいし、おもて面21の首部30側の端部に近づくほど塗布突起11が長くなるように塗布突起11の長さを定めてもよい。更に、複数の塗布突起11の先端が並ぶことで形成される塗布面が、おもて面21から離れる向きに突出する山部とおもて面21に近づく向きに窪む谷部を有する形状(いわゆる山切り形状)を有するように、各々の塗布突起11の長さを定めてもよい。
【0026】
更に、塗布突起11の突出方向に直交する断面は、直径が0.5~1.5mmの正円の形状を有することが好ましく、直径が0.8~1.0mmの正円の形状を有することが更に好ましい。加えて、塗布突起11の本数は、50~120本であることが好ましく、70~100本であることが更に好ましい。
【0027】
ヘッド部20のおもて面21に設けられた複数の塗布突起11は、おもて面21に対して垂直な方向に突出している。これに対し、これら複数の塗布突起11は、ヘッド部20のおもて面21に対して垂直な方向から任意の角度だけ傾いた方向に突出してもよい。同様に、ヘッド部20の裏面22に設けられた複数の塗布突起12は、ヘッド部20の裏面22に対して垂直な方向に突出している。これに対し、これら複数の塗布突起12は、ヘッド部20の裏面22に対して垂直な方向から任意の角度だけ傾いた方向に突出してもよい。
【0028】
ヘッド部20のおもて面21に設けられた複数の塗布突起11同士は、
図2(a)に示すように所定の間隔をあけて規則的に設けられている。これに対し、これら複数の塗布突起11を、おもて面21の任意の位置に不規則に配置してもよい。同様に、ヘッド部20の裏面22に設けられた複数の塗布突起12は、所定の間隔をあけて規則的に設けられている。これに対し、これら複数の塗布突起12を、おもて面21の任意の位置に不規則に配置してもよい。
【0029】
図1及び
図2(a)に示すように、ヘッド部20のおもて面21のほぼ全面に、複数の塗布突起11が設けられている。これに対し、ヘッド部20のおもて面21の一部のみに塗布突起11を設けてもよい。例えば、ヘッド部20のおもて面21の外周部分にのみ複数の塗布突起11を設け、おもて面21の中心部分には塗布突起11を設けなくてもよい。更に、おもて面21の外周部分の全周に亘って塗布突起11を設けてもよいし、おもて面21の外周部分の一部のみに塗布突起11を設けてもよい。
【0030】
同様に、
図1及び
図2(a)に示すように、ヘッド部20の裏面22のほぼ全面に、複数の塗布突起12が設けられている。これに対し、ヘッド部20の裏面22の一部のみに塗布突起12を設けてもよい。例えば、ヘッド部20の裏面22の外周部分にのみ複数の塗布突起12を設け、裏面22の中心部分には塗布突起12を設けなくてもよい。更に、裏面22の外周部分の全周に亘って塗布突起12を設けてもよいし、裏面22の外周部分の一部のみに塗布突起12を設けてもよい。更に、ヘッド部20のおもて面21と裏面22の間の板状部材20aの側面や板状部材20aの先端部を含むヘッド部20のほぼ全面に塗布突起12を設けてもよい。
【0031】
更に、板状部材20aに占める塗布突起11の割合(即ち、塗布突起11の断面積の合計/板状部材20aのおもて面21又は裏面22の面積)は、15~40%であることが好ましく、25~35%であることが更に好ましい。なお、板状部材20aのおもて面21及び裏面22の面積には、各々の中央の突起部68の露出箇所の面積も含まれる。
【0032】
ヘッド部20のおもて面21に設けられた塗布突起11及びヘッド部20の裏面22に設けられた塗布突起12は、弾性材料から構成されている。塗布突起11,12は、低反発の弾性材料から構成されることが好ましく、軟質の弾性材料又は軟質の低反発弾性材料から構成されることが更に好ましい。具体的には、ゴム硬度が30度以上60度以下の弾性材料で塗布突起11,12を構成することが好ましい。ヘッド部20のおもて面21に設けられた複数の塗布突起11の集合体としてのブラシ硬度は、30N/cm2以下であることが好ましく、約10~15N/cm2程度であることが更に好ましい。ヘッド部20の裏面22に設けられた複数の塗布突起12の集合体としてのブラシ硬度も、30N/cm2以下であることが好ましく、約10~15N/cm2程度であることが更に好ましい。なお、上述したブラシ硬度の値は、JIS S 3016(1995)に準じた圧縮試験機を用いる測定方法によって測定した値である。
【0033】
塗布用ブラシ1のヘッド部20、首部30及びハンドル部50は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、硬質樹脂で形成された軸部材60を内部に有する。軸部材60は、ヘッド部20の軸部材61(突起部68を含む。)と、首部30の軸部材(即ち、軸部62、突起部66,67及びテーパ部66a)と、ハンドル部50の軸部材63と、から構成されている。ヘッド部20の軸部材61と、首部30の軸部材(即ち、軸部62、突起部66,67及びテーパ部66a)と、ハンドル部50の軸部材63とは、硬質樹脂を用いて一体的に形成されている。即ち、軸部材60は、塗布用ブラシ1の先端から後端までに亘って設けられている。別の言い方をすると、軸部材60は、ヘッド部20の先端からヘッド部20の先端とは反対側のハンドル部50の後端までに亘って配置されている。
【0034】
軸部材60を構成する硬質樹脂として、ポリプロピレンが用いられることが好ましい。軸部材60を構成する硬質樹脂として、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、又は、ポリアセタール等を用いてもよい。
【0035】
軸部材60を構成する硬質樹脂は、曲げ弾性率が1000Mpa以上2500Mpa以下であることが好ましい。例えば、硬質樹脂として、曲げ弾性率が1000Mpa以上2500Mpa以下のポリプロピレンを用い得る。硬質樹脂として、曲げ弾性率が1050Mpa以上2050Mpa以下のポリプロピレンを用いることが好ましく、曲げ弾性率が1200Mpa以上1700Mpa以下のポリプロピレンを用いることが更に好ましい。
【0036】
ヘッド部20の塗布突起11,12の硬さをA(N/cm2)とし、硬質樹脂の曲げ弾性率をB(MPa)としたとき、A/Bの値が0.0003以上0.03以下であることが好ましい。A/Bの値は、0.007以上0.025以下であることがより好ましく、0.01以上0.02以下であることが更に好ましい。
【0037】
図1及び
図2(a)に示すように、ヘッド部20の軸部材61は、板状部材20aに対応して、前後方向からみて略長方形又は略楕円形の平板状の形状を有する。これに対し、ヘッド部20の軸部材61は、任意の多角形又は円形の板状であってもよい。更に、ヘッド部20の軸部材61の形状は、板状に限られず、少なくとも一部に平面が含まれる形状であればよい。
【0038】
図2(a)及び
図3(a)に示すように、首部30に位置する軸部62は、塗布用ブラシ1の軸線方向に延びる略円柱状の形状を有する。より具体的には、軸部62の断面(塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する断面)は、
図3(a)に示すように、前後方向(ヘッド部20から塗布突起10が突出する突出方向)における幅H1が、左右方向の幅H2より若干小さい楕円形の形状を有している。首部30及び軸部62は、湾曲した形状を有してもよいし、一直線状の形状を有してもよい。
【0039】
軸部62が円形(楕円形)の形状を有することで、その断面が四角形状である場合に比べ、塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する何れの向きへもほぼ同等の曲がり易さで首部30を湾曲させることができる。更に、首部30の捻じれも生じ難い。これにより、塗布対象の口腔内組織の配置に合わせてハンドル部50を持ち替える等の作業を要することなく、何れの口腔内組織に対しても、ほぼ同程度の押圧力で薬剤を塗布でき、それによって口腔内組織に均一に薬剤を塗布できる。更に、塗布用ブラシ1が口腔内の何れの位置にあっても、過大な外力が塗布用ブラシ1に及ぼされた場合、その外力を逃がす向きに首部30が湾曲できる。よって、乳幼児等であっても、塗布用ブラシ1を容易かつ適正に使用できる。
【0040】
更に、軸部62の断面が
図3(a)に示す楕円状の形状を有することで、前後方向(ヘッド部20から塗布突起10が突出する突出方向)よりも、左右方向の方が、首部30が若干曲がり難くなる。これにより、薬剤の塗布にあたり、歯や歯肉等にヘッド部20の塗布突起10を接触させた状態でヘッド部20を軸線方向に沿うように往復移動させる操作を行う際、左右方向へのヘッド部20の位置ズレが生じ難くなり、塗布作業の精度が向上する。更に、突出方向において首部30が曲がり易くなることで、塗布時に口腔内組織に及ぼす負荷を更に低減できる。
【0041】
図1及び
図2(a)に示すように、ハンドル部50の軸部材63は、ハンドル部50の外形と同様、首部30の軸部材(特に、軸部62及び突起部66)とハンドル部50の軸部材63との接続部分に設けられた第1の軸体凸部71と、ヘッド部20の軸部材61と反対側のハンドル部50の軸部材63の端部64に設けられた第2の軸体凸部72と、第1の軸体凸部71と第2の軸体凸部72の間に設けられた第3の軸体凸部73と、を有する。
【0042】
図3(b)に示すように、ハンドル部50の軸部材63の断面(塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する断面)は、首部30の近傍において正円の形状を有している。首部30から離れた第2の軸体凸部72や第3の軸体凸部73におけるハンドル部50の断面は、正円の形状に限られず、楕円の形状、多角形の形状、及び、角が丸められた多角形の形状等を有してもよい。
図3(a)及び
図3(b)の比較から理解できるように、軸部62の断面の面積は、ハンドル部50の軸部材63の断面の面積よりも小さい。これにより、ハンドル部50よりも首部30が湾曲し易くなる。よって、ハンドル部50が湾曲する場合に比べて湾曲時にヘッド部20が変位する範囲(換言すると、ヘッド部20の振れ幅)が小さくなるため、乳幼児や児童のように口腔自体の大きさが小さい使用者に対しても、上述した優れた操作性や安全性を適正に発揮できる。更に、首部30の軸部材(特に、軸部62及び突起部66)とハンドル部50の軸部材63との接続部分の断面積は、ハンドル部50側に向かうにつれて徐々に大きくなっている(即ち、拡径している)。
【0043】
ハンドル部50の軸部材63の第1の軸体凸部71及び第3の軸体凸部73は、略楕円体形状を有している。具体的には、首部30の軸部材(特に、軸部62及び突起部66)とハンドル部50の軸部材63との接続部分に設けられた第1の軸体凸部71は、塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する何れの向きから見た場合においても、ハンドル部50の軸部材63の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有している。同様に、第1の軸体凸部71と第2の軸体凸部72の間に設けられた第3の軸体凸部73も、塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する何れの向きから見た場合においても、ハンドル部50の軸部材63の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有している。
【0044】
一方、ハンドル部50の軸部材63の端部64に設けられた第2の軸体凸部72は、左右方向から見た場合、ハンドル部50の軸部材63の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有しておらず、且つ、前後方向から見た場合、ハンドル部50の軸部材63の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有している。
【0045】
ハンドル部50の軸部材63の第1の軸体凸部71及び第3の軸体凸部73が略楕円体形状を有することに対応して、
図1及び
図2(a)に示すように、ハンドル部50の第1の凸部41及び第3の凸部43も、略楕円体形状を有している。
【0046】
即ち、首部30とハンドル部50との接続部分に設けられた第1の凸部41は、塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する何れの向きから見た場合においても、ハンドル部50の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有している。同様に、第1の凸部41と第2の凸部42の間に設けられた第3の凸部43も、塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する何れの向きから見た場合においても、ハンドル部50の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有している。
【0047】
一方、ハンドル部50の端部51に設けられた第2の凸部42は、左右方向から見た場合、ハンドル部50の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有しておらず、且つ、前後方向から見た場合、ハンドル部50の長手方向に略垂直な方向に向かって突出する凸形状を有している。
【0048】
図1に示すように、ハンドル部50の軸部材63の端部64に設けられた第2の軸体凸部72は、挿通孔65を有している。ハンドル部50の端部51に設けられた第2の凸部42は、挿通孔52を有している。第2の凸部42の挿通孔52は、第2の軸体凸部72の挿通孔65に対応しており、これら挿通孔52,65には、塗布用ブラシ1の保管等のためのフックや紐等を通すことができる。
【0049】
図2(a)に示すように、軸部62には、軸部62の軸線方向における中央箇所Pよりハンドル部50に近い箇所にて前後両方向に突出する突起部66が設けられ、軸部62の軸線方向における中央箇所Pよりヘッド部20に近い箇所にて前後両方向に突出する突起部67が設けられている。ヘッド部20の軸部材61には、軸部材61の軸線方向における略中央箇所にて前後両方向に突出する突起部68が設けられている。
【0050】
特に、突起部66のヘッド部20側には、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、突起部66から軸部62の軸線方向に沿ってヘッド部20側に延び出してヘッド部20に向かうにつれて先すぼまりとなる(断面の面積が小さくなる)形状を有するテーパ部66aが設けられている。テーパ部66aは、突起部66のヘッド部20側に隣接する箇所にて、軸部62(円柱状の部分)に連続している。テーパ部66aの先端側端部66bは、突起部66と中央箇所Pとの間に位置している。なお、突起部67の基端側(ハンドル部50に近い側)には、同様のテーパ部は設けられていない。
【0051】
このようにテーパ部66aが設けられることで、軸部62の中央箇所Pにおける軸部62の剛性よりも、突起部66が設けられている箇所の周辺における軸部62の剛性が大きくなる。換言すると、首部30の中央箇所Pが中央箇所Pよりハンドル部50に近い箇所よりも曲がり易くなる。このため、ヘッド部20が前後方向へ撓む際(
図4(a)参照)、並びに、ヘッド部20が左右方向へ撓む際(
図4(b)参照)の何れにおいても、首部30は、中央箇所Pを中心に優先的に曲がることになる。更に、突起部67の基端側に同様のテーパ部が設けられていないことで、突起部67が設けられている箇所の剛性は、テーパ部66aを有する突起部66が設けられている箇所の剛性ほどは大きくならない。そのため、突起部67の存在が首部30の曲がり易さに及ぼす影響を低減できる。
【0052】
よって、前歯等の口腔手前側の組織に薬剤を塗布する際、首部30の中央箇所Pが適度に曲がって組織に及ぶ負荷が低減される。首部30の中央箇所Pが曲がることで、首部30の基端側箇所が曲がる場合に比べ、ヘッド部20の変位する範囲(換言すると、振れ幅)を小さくすることができる。ヘッド部20の変位する範囲が小さいことで、口の小さい乳幼児や児童に塗布用ブラシ1を好適に使用できる。一方、奥歯等の口腔奥側の組織に薬剤を塗布する際、歯列に沿って口腔内壁と歯との間にヘッド部20を挿入する場合等において、首部30の中央箇所Pが口腔内壁と歯とに挟まれて湾曲が自然に抑制されるとともに、首部30の基端側箇所が適度な剛性を有することで意図しない湾曲が抑制されることから、口腔奥側への塗布用ブラシ1の挿入操作が容易になる。更に、射出成形によって軸部材60を覆うように被覆部材80を成形する場合、突起部66に隣接してテーパ部66aが設けられることで、突起部66の周辺での溶融樹脂の流動を促し、突起部66の周辺に気泡(ボイド)が発生することを抑制できる。このような気泡の発生を抑制することで、首部30の強度や耐久性を向上できる。加えて、突起部66よりも先端側(即ち、溶融樹脂流の下流側)にあるヘッド部20や塗布突起11,12の末端箇所にまで溶融樹脂が到達することを促し、その末端箇所に欠け(ショートショット)が発生することを抑制できる。このような欠けを抑制することで、塗布用ブラシ1の本来の塗布機能が適正に発揮されるとともに、塗布用ブラシ1の美観や生産性を向上できる。
【0053】
なお、突起部66,67,68は、軸部材60を覆うように被覆部材80を成形する際、被覆部材80を成形するための金型内で軸部材60の姿勢を維持する機能も有している。
【0054】
図2(a)等に示すように、被覆部材80は、ヘッド部20の被覆部材81と、首部30の被覆部材82と、ハンドル部50の被覆部材83と、から構成されている。但し、首部30に位置する軸部62に設けられた突起部66,67の頂面、及び、ヘッド部20の軸部材61に設けられた突起部68の頂面は、被覆部材80に覆われずに露出している。
【0055】
被覆部材80は、軸部材60を構成する材料よりも軟質の材料で構成され且つ軸部材60の外周を一部の露出箇所(即ち、突起部66,67,68の頂面や挿通孔52の孔内面)を除いて覆っている。ここで、「軸部材60を構成する材料よりも軟質の材料」とは、例えば、JIS K 6253(2012)に準じた試験(タイプAデュロメータ)で測定される硬度において、軸部材60を構成する材料よりも小さい硬度を有する材料を表す。
【0056】
被覆部材80を構成する材料として、低反発の弾性材料が用いられることが好ましい。具体的には、被覆部材80を構成する弾性材料として、シリコーンゴム又は熱可塑性エラストマーが用いられることが好ましい。熱可塑性エラストマーとして、例えば、ポリオレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、又はポリウレタン系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0057】
ヘッド部20の複数の塗布突起10と、ヘッド部20の被覆部材81とは、同一の弾性材料で一体的に形成されている。即ち、ヘッド部20のおもて面21の塗布突起11、ヘッド部20の裏面22の塗布突起12、及びヘッド部20の被覆部材81は、同一の弾性材料で一体的に形成されている。
【0058】
このように、一般の歯ブラシ等とは異なり、ヘッド部20のおもて面21の塗布突起11は、おもて面21に植え付けられたものではない。同様に、ヘッド部20の裏面22の塗布突起12は、裏面22に植え付けられたものではない。塗布突起11,12は、ヘッド部20のおもて面21又は裏面22から突出しており、ヘッド部20のおもて面21又は裏面22と一体となっている。そのため、一般の歯ブラシ等の毛束とは異なり、毛束を構成する細い毛同士の間や毛束の植え込み部分に薬剤が染み込むことがないため、塗布突起11,12は、薬剤を塗布突起11,12の先端部分を中心に保持することができ、薬剤を無駄なく塗布できる。更に、塗布突起11,12の洗浄も容易であり、衛生面においても優れている。加えて、一般の歯ブラシ等のように毛束が広がるような劣化が生じ難いため、塗布突起11,12は、耐久性においても優れている。
【0059】
<作用・効果>
上述した塗布用ブラシ1による主要な作用・効果を、以下に改めて纏めて記載する。
塗布用ブラシ1によれば、ヘッド部20とハンドル部50とを繋ぐ首部30が、断面が円形の形状を有する軸部62を有する軸部材60と、軸部62等を覆う軟質の被覆部材82と、を有する。これにより、使用時に口唇等に接触し得る首部30の外表面に軟質の被覆部材82が位置することによる柔らかな肌触りと、相対的に硬質な軸部材60に起因する曲げ硬さや弾性を有することによる適度なコシ等の使用感と、を両立できる。更に、軸部62の断面が円形の形状であることで、その断面が四角形状の形状等を有する場合に比べ、塗布用ブラシ1の軸線方向に直交する何れの向きへもほぼ同等の曲がり易さで首部30が湾曲可能である。これにより、塗布対象の口腔内組織の配置に合わせてハンドル部50を持ち替える等の作業を要することなく、何れの口腔内組織に対しても、ほぼ同程度の押圧力で薬剤を塗布でき、それによって口腔内組織に均一に薬剤を塗布できる。加えて、塗布用ブラシ1が口腔内の何れの位置にあっても、過大な外力が塗布用ブラシ1に及ぼされた場合、その外力を逃がす向きに首部30が湾曲することで、ヘッド部20で口腔内組織を傷つけること等を抑制できる。
【0060】
更に、首部30は、軸線方向における軸部62の中央箇所Pよりもハンドル部50に近い位置に、軸部62から突出する突起部66を有する。加えて、突起部66のヘッド部20側に、突起部66から軸部62に沿って延び出し且つヘッド部20に向かうにつれて先すぼまりとなる形状のテーパ部66aが設けられる。これにより、中央箇所Pにおける軸部62の剛性よりも、突起部66が設けられている箇所の周辺における軸部62の剛性が大きくなる。換言すると、首部30の中央箇所Pが、首部30のハンドル部50側の基端側箇所よりも曲がり易くなる。よって、前歯等の口腔手前側の組織に薬剤を塗布する際、操作に応じて首部30の中央箇所Pが優先的に湾曲することから、組織に及ぶ負荷が低減される。一方、奥歯等の口腔奥側の組織に薬剤を塗布する際、歯列に沿って口腔内壁と歯との間にヘッド部20を挿入する場合等において、首部30の中央箇所Pが口腔内壁と歯とに挟まれて湾曲が自然に抑制されるとともに、首部30の基端側箇所が適度な強度を有することで意図しない湾曲が抑制されることから、口腔奥側への塗布用ブラシ1の挿入操作が容易になる。
【0061】
このように、塗布用ブラシ1は、一般の歯ブラシとは異なり、乳幼児等であっても容易かつ適正に使用できる構造を備えている。即ち、塗布用ブラシ1は、口腔内組織に薬剤を塗布する際の操作性や安全性に優れている。
【0062】
更に、塗布用ブラシ1によれば、首部30に位置する軸部62の断面積が、ハンドル部50の内部の軸部材63の断面積よりも、小さい。これにより、ハンドル部50よりも首部30が湾曲し易くなる。よって、ハンドル部50が湾曲する場合に比べて湾曲時にヘッド部20が変位する範囲(換言すると、ヘッド部20の振れ幅)が小さくなるため、乳幼児や児童のように口腔自体の大きさが小さい使用者に対しても、上述した優れた操作性や安全性を適正に発揮できる。
【0063】
更に、塗布用ブラシ1によれば、前後方向(即ち、ヘッド部20を正面から見た場合の奥行き方向)よりも、左右方向(即ち、ヘッド部20を正面から見た場合の横方向)において、首部30が若干曲がり難くなる。これにより、薬剤の塗布にあたり、歯や歯肉等にヘッド部20の塗布突起10を接触させた状態でヘッド部20を軸線方向に沿って往復移動させる操作を行う際、左右方向へのヘッド部20の位置ズレが適度に抑制される。よって、塗布作業の精度を向上できる。更に、突出方向において首部30が曲がり易くなることで、塗布時に口腔内組織に及ぼす負荷を更に低減できる。
【0064】
加えて、塗布用ブラシ1によれば、ヘッド部20の板状部材20aから、厚さ方向の一方側及び他方側に向けて塗布突起11及び塗布突起12がそれぞれ突出する。これにより、塗布対象の口腔内組織の配置に合わせてハンドル部50を持ち替える等の作業を要することなく、何れの口腔内組織に対しても、容易に薬剤を塗布できる。
【0065】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0066】
例えば、上記実施形態では、塗布用ブラシ1を構成するヘッド部20、首部30、及びハンドル部50の各々が、軸部材60と、軸部材60の外周を覆う被覆部材80とから構成されている。これに対し、首部30のみが、軸部材60と、軸部材60の外周を覆う被覆部材80とから構成されている限りにおいて、ヘッド部20及びハンドル部50の少なくとも一つは、軸部材60のみで構成されていてもよい。
【0067】
更に、上記実施形態では、首部30に位置する軸部62が、横方向に長い楕円状の断面形状を有している。これに対し、軸部62は、正円状の断面形状を有してもよい。
【0068】
加えて、上記実施形態では、ヘッド部20が、板状部材20aの厚さ方向の一方側及び他方側の双方に向けて突出する塗布突起10を有する。これに対し、ヘッド部20は、板状部材20aの厚さ方向の一方側及び他方側の何れか一方に向けてのみ突出する塗布突起10を有してもよい。
【0069】
加えて、上記実施形態では、ヘッド部20の複数の塗布突起10と、ヘッド部20の被覆部材81とは、同一の弾性材料で一体的に形成されている。これに対し、塗布突起10と被覆部材81とは、異なる種類の弾性材料で形成されてもよいし、各々を別体として準備した上でそれらを互いに組み付けることで形成されてもよい。
【0070】
ここで、上述した本発明に係る塗布用ブラシ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
口腔内組織に薬剤を塗布するための塗布用ブラシ(1)であって、
塗布突起(10)を有するヘッド部(20)と、塗布操作のためのハンドル部(50)と、前記ヘッド部(20)と前記ハンドル部(50)とを繋ぎ且つ弾性変形可能な首部(30)と、を備え、
前記首部(30)は、
当該塗布用ブラシの軸線方向に延びる軸部材(60)と、前記軸部材(60)を構成する材料よりも軟質の材料で構成され且つ前記軸部材(60)の少なくとも一部を覆う被覆部材(80)と、を有し、
前記軸部材(60)は、
前記軸線方向に直交する断面が円形の形状を有する軸部(62)と、前記軸線方向における前記軸部(62)の中央箇所(P)よりも前記ハンドル部(50)に近い箇所にて前記軸部(62)から前記軸線方向に交差する向きに突出する突起部(66)と、前記突起部(66)から前記軸部(62)に沿って前記ヘッド部(20)側に向けて延び出し且つ前記突起部(66)から離れるにつれて前記軸線方向に直交する断面の面積が小さくなる形状を有するテーパ部(66a)と、を有する、
塗布用ブラシ(1)。
[2]
上記[1]に記載の塗布用ブラシ(1)において、
前記軸部材(60)は、
前記首部(30)から前記ハンドル部(50)に向けて連続して延び、前記軸部(62)の前記軸線方向に直交する断面の面積が前記ハンドル部(50)における当該軸部材(60)の前記軸線方向に直交する断面の面積よりも小さい、ように構成される、
塗布用ブラシ(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の塗布用ブラシ(1)において、
前記軸部材(60)の前記軸部(62)は、
前記ヘッド部(20)から前記塗布突起(10)が突出する突出方向における当該軸部(62)の幅(H1)が、前記突出方向及び前記軸線方向に直交する方向における当該軸部(62)の幅(H2)よりも小さい、楕円形の形状を前記軸線方向に直交する断面において有する、
塗布用ブラシ(1)。
【符号の説明】
【0071】
1 塗布用ブラシ
10 塗布突起
11 塗布突起
12 塗布突起
20 ヘッド部
20a 板状部材
30 首部
50 ハンドル部
60 軸部材
62 軸部
66 突起部
66a テーパ部
80 被覆部材
P 中央箇所