(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ガスタービンプラント、及びその燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
F23R 3/30 20060101AFI20250115BHJP
F02C 3/24 20060101ALI20250115BHJP
F02C 7/224 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
F23R3/30
F02C3/24
F02C7/224
(21)【出願番号】P 2021021755
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮
(72)【発明者】
【氏名】石井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】服部 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 道男
(72)【発明者】
【氏名】菅原 隆広
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特許第6245404(JP,B1)
【文献】特開2001-179053(JP,A)
【文献】特開2020-148357(JP,A)
【文献】特開2018-076794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/30
F02C 3/24
F02C 7/224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させ、前記燃料の燃焼で生成された燃焼ガスで駆動可能なガスタービンと、
前記ガスタービンからの排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラと、
前記燃料としてのアンモニアを前記ガスタービンに供給可能な燃料供給設備と、
を備え、
前記燃料供給設備は、
液体アンモニアを貯留可能なアンモニアタンクに接続されている液体アンモニアラインと、
温水を流すことができる温水ラインと、
前記液体アンモニアラインの端に接続され、前記温水ラインからの前記温水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させることができる気化器と、
前記温水ライン中の温水と媒体とを熱交換させることができる熱交換器と、
前記温水と前記媒体との間での熱交換量を調節して、前記気化器に流入する温水の温度を調整できる熱交換量調節器と、
前記気化器で気化したアンモニアである気体アンモニアを前記ガスタービンに導くことができる気体アンモニアラインと、
を有し、
前記気化器は、アンモニア入口と、アンモニア出口と、温水入口と、温水出口とを有し、
前記液体アンモニアラインは、前記気化器のアンモニア入口に接続され、
前記気体アンモニアラインは、前記気化器の前記アンモニア出口に接続され、
前記温水ラインは、前記排熱回収ボイラ内に配置され、温水と前記排気ガスとを熱交換させて、温水を加熱する温水加熱器と、前記温水加熱器と前記気化器の前記温水入口とを接続する高温水ラインと、を有し、
前記熱交換器は、前記高温水ラインに設けられている、
ガスタービンプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記高温水ラインは、前記気化器の前記温水入口と前記温水加熱器とを接続する主高温水ラインと、前記主高温水ラインから分岐した後に前記主高温水ラインに接続されている分岐高温水ラインと、を有し、
前記熱交換器は、前記分岐高温水ラインに設けられ、
前記熱交換量調節器は、前記主高温水ライン中で、前記分岐高温水ラインの分岐位置と前記分岐高温水ラインの接続位置との間を流れる温水の流量と、前記分岐高温水ラインを流れる温水の流量との比を調節する流量比調節器を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記熱交換量調節器は、前記熱交換器に流入する前記媒体の流量を調節する媒体流量調節器を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記気化器は、前記温水入口と前記温水出口とを有し、温水が流れることが可能なる伝熱管と、前記伝熱管を覆うと共に前記液体アンモニアを一時的に貯留することが可能な気化器ケーシングと、を有し、
前記気化器ケーシングは、前記アンモニア入口と、前記アンモニア出口と、を有し、
前記気化器ケーシングの前記アンモニア入口には、前記液体アンモニアラインが接続され、前記気化器ケーシングの前記アンモニア出口には、前記気体アンモニアラインが接続されている、
ガスタービンプラント。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記排熱回収ボイラは、ガスタービンからの排気ガスが流れるボイラケーシングと、ボイラケーシング内に配置され、内部を水又は蒸気が流れる複数の伝熱管と、を有し、
前記複数の伝熱管は、前記ボイラケーシング内で前記排気ガスの流れ方向に並んでおり、
前記温水加熱器は、前記ボイラケーシング内で、前記複数の伝熱管のうちで、前記排気ガスの流れ方向で最も下流側の伝熱管に対して、前記排気ガスの流れ方向で重なる位置、又は、さらに前記下流側の位置に、配置されている、
ガスタービンプラント。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンプラントにおいて、
さらに、前記熱交換量調節器の動作を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、外部からの前記ガスタービンに対する要求出力に応じて前記熱交換量調節器の動作量を定め、前記動作量を前記熱交換量調節器に指示する温度制御系を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項7】
請求項6に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記制御装置は、前記ガスタービンに流入する前記気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるよう、前記熱交換量調節器の動作量を定め、前記動作量を前記熱交換量調節器に指示する圧力制御系をさらに有する、
ガスタービンプラント。
【請求項8】
燃料を燃焼させ、前記燃料の燃焼で生成された燃焼ガスで駆動可能なガスタービンと、前記ガスタービンからの排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントの燃料供給方法において、
前記排熱回収ボイラ内に配置されている温水加熱器内の温水と前記排熱回収ボイラ内であって前記温水加熱器外の前記排気ガスとを熱交換させて、前記温水を加熱する温水加熱工程と、
前記温水加熱工程で加熱された前記温水と媒体とを熱交換させる熱交換工程と、
前記温水加熱工程で加熱された前記温水と前記媒体との熱交換量を調節する熱交換量調節工程と、
気化器内で、前記熱交換量調節工程により前記媒体との熱交換量が調節された後の前記温水と液体アンモニアを貯留しているアンモニアタンクからの前記液体アンモニアとを熱交換させて、前記液体アンモニアを気化させる気化工程と、
前記気化工程で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料として前記ガスタービンに供給する燃料供給工程と、
を実行し、
前記熱交換量調節工程では、前記熱交換工程での、前記温水と前記媒体との熱交換量を調節することで、前記気化器に流入する前記温水の温度を調節する、
ガスタービンプラントの燃料供給方法。
【請求項9】
請求項8に記載のガスタービンプラントの燃料供給方法において、
前記熱交換量調節工程は、前記温水加熱工程で加熱された前記温水を主高温水と分岐高温水に分流する分流工程と、流量比調節工程と、を含み、
前記熱交換工程では、前記分岐高温水と前記媒体とを熱交換させ、
前記流量比調節工程では、前記主高温水の流量と、前記熱交換工程での熱交換後の前記分岐高温水との流量比を調節して、前記主高温水と、前記熱交換工程での熱交換後の前記分岐高温水とを合流させる、
ガスタービンプラントの燃料供給方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のガスタービンプラントの燃料供給方法において、
前記熱交換量調節工程は、前記熱交換工程で、前記温水と熱交換する前記媒体の流量を調節する媒体流量調節工程を含む、
ガスタービンプラントの燃料供給方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載のガスタービンプラントの燃料供給方法において、
さらに、外部からの前記ガスタービンに対する要求出力に応じて、前記熱交換量調節工程での熱交換量の調節を制御する温度制御工程を実行する、
ガスタービンプラントの燃料供給方法。
【請求項12】
請求項11に記載のガスタービンプラントの燃料供給方法において、
さらに、前記ガスタービンに流入する前記気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるよう、前記熱交換量調節工程での熱交換量を制御する圧力制御工程を実行する、
ガスタービンプラントの燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンプラント、及びその燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンプラントは、ガスタービンと、このガスタービンに燃料を供給する燃料供給設備と、を有する。
【0003】
以下の特許文献1に記載のガスタービンプラントでは、アンモニアを燃料として、ガスタービンに供給する。このガスタービンプラントは、アンモニアを燃料としてガスタービンに供給する燃料供給設備の他、ガスタービンからの排気ガスの熱を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラを備えている。
【0004】
燃料供給設備は、液体アンモニアを貯留するアンモニアタンクと、このアンモニアタンクに接続されている液体アンモニアラインと、温水を流すことができる温水ラインと、気化器と、気化器に流入する温水の流量を調節する流量調節弁と、気体アンモニアをガスタービンに導く気体アンモニアラインと、を備える。気化器は、液体アンモニアラインの端に接続されている。この気化器は、温水ラインからの温水と液体アンモニアラインから液体アンモニアとを熱交換させて液体アンモニアを加熱して気化させる。
【0005】
気化器は、アンモニアが流れる伝熱管と、この伝熱管を覆うと共に温水が一時的に貯留される気化器ケーシングと、を有する。温水ラインは、排熱回収ボイラ内に配置され、温水と排気ガスとを熱交換させて、温水を加熱する温水加熱器と、温水加熱器で加熱された高温水を気化器ケーシング内に導く高温水ラインと、気化器ケーシングと温水加熱器とを接続する低温水ラインと、有する。流量調節弁は、高温水ラインに設けられている。
【0006】
この燃料供給設備では、気化器ケーシング内に流入する温水の流量を流量調節弁で調節することで、気化器ケーシング内の温水の温度を目標の温度範囲内に維持する。そして、気化器ケーシング内の温水と伝熱管内を流れる液体アンモニアとを熱交換させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
排熱回収ボイラ内を流れる排気ガスの温度は、ガスタービンの運転状況の変化により変化する。このため、特許文献1に記載の技術では、排気ガスの温度が変化する環境下で、気化器ケーシング内に流入する温水の流量を変更しても、液体アンモニアと温水との熱交換量が温水の流量に比例せず、この熱交換量の制御が難しい。よって、特許文献1に記載の技術では、必要とする気体アンモニアの生成量を確保できないことがある、と考えられる。
【0009】
そこで、本開示は、ガスタービンが必要とする気体アンモニアの生成量を容易に得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンプラントは、
燃料を燃焼させ、前記燃料の燃焼で生成された燃焼ガスで駆動可能なガスタービンと、前記ガスタービンからの排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラと、前記燃料としてのアンモニアを前記ガスタービンに供給可能な燃料供給設備と、を備える。前記燃料供給設備は、液体アンモニアを貯留可能なアンモニアタンクに接続されている液体アンモニアラインと、温水を流すことができる温水ラインと、前記液体アンモニアラインの端に接続され、前記温水ラインからの前記温水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させることができる気化器と、前記温水ライン中の温水と媒体とを熱交換させることができる熱交換器と、前記温水と前記媒体との間での熱交換量を調節して、前記気化器に流入する温水の温度を調整できる熱交換量調節器と、前記気化器で気化したアンモニアである気体アンモニアを前記ガスタービンに導くことができる気体アンモニアラインと、を有する。前記気化器は、アンモニア入口と、アンモニア出口と、温水入口と、温水出口とを有する。前記液体アンモニアラインは、前記気化器のアンモニア入口に接続されている。前記気体アンモニアラインは、前記気化器の前記アンモニア出口に接続されている。前記温水ラインは、前記排熱回収ボイラ内に配置され、温水と前記排気ガスとを熱交換させて、温水を加熱する温水加熱器と、前記温水加熱器と前記気化器の前記温水入口とを接続する高温水ラインと、を有する。前記熱交換器は、前記高温水ラインに設けられている。
【0011】
本態様では、温水加熱器で温水と排気ガスとの熱交換で加熱された温水が、温度調節された後に、気化器に流入する。この気化器では、温度調節された温水と液体アンモニアとが熱交換されて、アンモニアが気化する。ところで、ガスタービンの運転状況の変化によりガスタービン出口の排気ガス温度が変化することから、ガスタービンの運転状況しだいで排熱回収ボイラ内の温水加熱器入口の温度が変化する。このため、排気ガスの温度が変化すると、温水加熱器で加熱された温水の温度も変化する。しかしながら、本態様では、前述したように、温水加熱器で加熱された温水は、温度調節された後に、気化器に流入する。よって、本態様では、排気ガスの温度が変化しても、容易に、気化器に流入した液体アンモニアの全てを気体アンモニアにすることができる。
【0012】
また、ガスタービンが必要とする気体アンモニアの量も、ガスタービンの運転状況の変化により変化する。本態様では、ガスタービンが必要とする気体アンモニアの量が変化しても、気化器に流入する温水の温度を変化させることで、容易に、気化器に流入した液体アンモニアの全てを気体アンモニアにすることができる。
【0013】
従って、本態様では、ガスタービンの運転状況が変化しても、容易に、ガスタービンが必要とする気体アンモニアの生成量を得ることができる。また、本態様では、ガスタービンの運転状況の変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0014】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンプラントの燃料供給方法は、
燃料を燃焼させ、前記燃料の燃焼で生成された燃焼ガスで駆動可能なガスタービンと、前記ガスタービンからの排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラと、を備えるガスタービンプラントの燃料供給方法において、前記排熱回収ボイラ内に配置されている温水加熱器内の温水と前記排熱回収ボイラ内であって前記温水加熱器外の前記排気ガスとを熱交換させて、前記温水を加熱する温水加熱工程と、前記温水加熱工程で加熱された前記温水と媒体とを熱交換させる熱交換工程と、前記温水加熱工程で加熱された前記温水と前記媒体との熱交換量を調節する熱交換量調節工程と、気化器内で、前記熱交換量調節工程により前記媒体との熱交換量が調節された後の前記温水と液体アンモニアを貯留しているアンモニアタンクからの前記液体アンモニアとを熱交換させて、前記液体アンモニアを気化させる気化工程と、前記気化工程で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料として前記ガスタービンに供給する燃料供給工程と、を実行する。前記熱交換量調節工程では、前記熱交換工程での、前記温水と前記媒体との熱交換量を調節することで、前記気化器に流入する前記温水の温度を調節する。
【0015】
本態様においても、前記ガスタービンプランの一態様と同様に、ガスタービンの運転状況が変化しても、容易に、ガスタービンが必要とする気体アンモニアの生成量を得ることができる。また、本態様でも、ガスタービンの運転状況が変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様では、ガスタービンが必要とする気体アンモニアの生成量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示に係る第一実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
【
図2】本開示に係る第一実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】本開示に係る第一実施形態における燃料流量と目標温度との関係を示すグラフである。
【
図4】本開示に係る第一実施形態における燃料供給方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本開示に係る第二実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
【
図6】本開示に係る第二実施形態における燃料供給方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本開示に係る一変形例における制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る各種実施形態及び各種変形例について、図面を用いて説明する。
【0019】
「第一実施形態」
以下、本開示に係るガスタービンプラントの第一実施形態について、
図1~
図4を用いて説明する。
【0020】
本実施形態のガスタービンプラントは、
図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOx分を分解する脱硝装置20と、脱硝装置20から流出した排気ガスの熱を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラ21と、排熱回収ボイラ21からの排気ガスを外部に排気する煙突22と、排熱回収ボイラ21からの蒸気で駆動する蒸気タービン23と、蒸気タービン23からの蒸気を水に戻す復水器24と、復水器24内の水を排熱回収ボイラ21に送るポンプ25と、ガスタービン10に燃料を供給する燃料供給設備40と、制御装置60と、を備える。よって、本実施形態のガスタービンプラントは、コンバインドサイクルプラントである。
【0021】
ガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機14と、圧縮機14で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器15と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン16と、を備える。
【0022】
圧縮機14は、ロータ軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ14rと、この圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、この圧縮機ケーシング14cの吸込み口に設けられている吸気量調節機(以下、IGV(inlet guide vane)とする)14iと、を有する。IGV14iは、制御装置60からの指示に従い圧縮機ケーシング14c内に吸い込まれる空気の流量を調節する。タービン16は、燃焼器15からの燃焼ガスにより、ロータ軸線Arを中心として回転するタービンロータ16rと、このタービンロータ16rを覆うタービンケーシング16cと、を有する。タービンロータ16rと圧縮機ロータ14rとは、同一のロータ軸線Arを中心として回転可能に相互に連結されて、ガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機のロータが接続されている。
【0023】
ガスタービン10は、さらに、中間ケーシング12を備える。中間ケーシング12は、ロータ軸線Arが延びている方向で、圧縮機ケーシング14cとタービンケーシング16cとの間に配置され、圧縮機ケーシング14cとタービンケーシング16cとを連結する。この中間ケーシング12内には、圧縮機14から吐出された圧縮空気が流入する。また、この中間ケーシング12には、燃焼器15が固定されている。
【0024】
脱硝装置20には、アンモニアが供給される。この脱硝装置20は、このアンモニアを用いて、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOxを窒素と水蒸気とに分解する。
【0025】
排熱回収ボイラ21は、脱硝装置20からの排気ガスが流れるボイラケーシング21cと、節炭器21ecoと、蒸発器21evaと、過熱器21sと、を有する。節炭器21eco、蒸発器21eva及び過熱器21sは、ボイラケーシング21c内を流れる排気ガスの流れにおける下流側から上流側に向かって、節炭器21eco、蒸発器21eva、過熱器21sの順序で配置されている。節炭器21eco、蒸発器21eva及び過熱器21sは、ボイラケーシング21c内を流れる排気ガスと水又は蒸気と熱交換させる伝熱管を有する。節炭器21ecoは、ボイラケーシング21c内を流れる排気ガスと水とを熱交換させて、水を加熱し、温水を生成する。蒸発器21evaは、ボイラケーシング21c内を流れる排気ガスと節炭器21ecoからの温水とを熱交換させて、温水を加熱し、蒸気を生成する。過熱器21sは、ボイラケーシング21c内を流れる排気ガスと蒸発器21evaからの蒸気とを熱交換させて、蒸気を加熱し、過熱蒸気を生成する。
【0026】
排熱回収ボイラ21の節炭器21ecoと復水器24とは、給水ライン26で接続されている。この給水ライン26には、復水器24内の水を排熱回収ボイラ21に送るポンプ25が設けられている。排熱回収ボイラ21の過熱器21sと蒸気タービン23とは、主蒸気ライン27で接続されている。排熱回収ボイラ21からの過熱蒸気は、主蒸気ライン27を介して、蒸気タービン23に送られる。蒸気タービン23のロータには、例えば、発電機のロータが接続されている。蒸気タービン23から排気された蒸気は、復水器24で水に戻される。
【0027】
脱硝装置20は、例えば、ボイラケーシング21c内で、蒸発器21eva周辺の位置に配置されている。この脱硝装置20には、アンモニアが供給される。この脱硝装置20は、このアンモニアを用いて、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOxを窒素と水蒸気とに分解する。
【0028】
燃料供給設備40は、アンモニアタンク41と、液体アンモニアライン42と、液体アンモニア調節弁43aと、燃料調節弁43bと、アンモニアポンプ44と、気化器45と、気体アンモニアライン46と、温水ライン50と、温水ポンプ54と、熱交換器55と、熱交換量調節器56と、媒体ライン58iと、媒体回収ライン58oと、媒体流量調節器59と、を有する。
【0029】
アンモニアタンク41には、液体アンモニアが貯留される。液体アンモニアライン42の一端は、このアンモニアタンク41に接続されている。この液体アンモニアライン42には、アンモニアタンク41からの液体アンモニアを昇圧するアンモニアポンプ44と、液体アンモニアライン42を流れる液体アンモニアの流量を調節する液体アンモニア調節弁43aと、が設けられている。
【0030】
気化器45は、温水と液体アンモニアとを熱交換させて、液体アンモニアを加熱し気化させる熱交換器である。この気化器45は、温水が流れる伝熱管45pと、伝熱管45pを覆うと共に液体アンモニアを一時的に貯留する気化器ケーシング45cと、を有する。伝熱管45pの一端は、温水入口45piを成し、伝熱管45pの他端は、温水出口45poを成す。気化器ケーシング45cは、アンモニア入口45ciと、アンモニア出口45coと、を有する。前述の液体アンモニアライン42の他端は、気化器45のアンモニア入口45ciに接続されている。気化器45のアンモニア出口45coには、気体アンモニアライン46の一端が接続されている。この気体アンモニアライン46の他端は、燃焼器15に接続されている。この気体アンモニアライン46には、燃焼器15に流入する燃料としての気体アンモニアの流量を調節する燃料調節弁43bが設けられている。
【0031】
温水ライン50は、低温水ライン51と、温水加熱器52と、高温水ライン53と、を有する。温水加熱器52は、ボイラケーシング21c内で、節炭器21ecoよりも排気ガス流れの下流側の位置に配置されている。低温水ライン51は、気化器45の温水出口45poと温水加熱器52と、を接続する。この低温水ライン51には、温水ポンプ54が設けられている。高温水ライン53は、温水加熱器52と気化器45の温水入口45piとを接続する主高温水ライン53xと、主高温水ライン53xから分岐した後に主高温水ライン53xに接続されている分岐高温水ライン53yと、を有する。
【0032】
温水ライン50及び気化器45の伝熱管45pは、温水が循環する温水循環ラインを形成する。この温水循環ライン内を循環する温水の流量は、温水ポンプ54により管理され、ほぼ一定である。
【0033】
熱交換器55は、冷却水等の媒体と温水とを熱交換させる。この熱交換器55は、媒体が流れる伝熱管55pと、伝熱管55pを覆うと共に温水を一時的に貯留する熱交換器ケーシング55cと、を有する。伝熱管55pの一端は、媒体入口55piを成し、伝熱管55pの他端は、媒体出口55poを成す。媒体入口55piには、媒体ライン58iが接続されている。この媒体ライン58iには、ここを流れる媒体の流量を調節する媒体流量調節器59が設けられている。媒体出口55poには、媒体回収ライン58oが接続されている。熱交換器ケーシング55cは、分岐高温水ライン53yに設けられている。よって、熱交換器ケーシング55c内には、分岐高温水ライン53yからの高温水が流入する。なお、熱交換器55に流入する媒体としては、河川水や海水や工業用水等の液体や、空気等の気体であってもよい。
【0034】
熱交換量調節器56は、主高温水ライン53x中で、分岐高温水ライン53yの分岐位置と分岐高温水ライン53yの接続位置の間を流れる温水の流量と、分岐高温水ライン53yを流れる温水の流量との比を調節する流量比調節器としての三方弁57を有する。この三方弁57は、主高温水ライン53xと分岐高温水ライン53yとの接続位置に設けられている。なお、流量比調節器は、三方弁57ではなく、主高温水ライン53x中で、分岐高温水ライン53yの分岐位置と分岐高温水ライン53yの接続位置の間に設けられている主高温水調節弁と、分岐高温水ライン53y中に設けられている分岐高温水調節弁とで、構成してもよい。
【0035】
主高温水ライン53x中で三方弁57と気化器45との間には、この間を流れる高温水の温度を検知する温度計48が設けられている。気体アンモニアライン46には、このライン中を流れる気体アンモニアの圧力を検知する圧力計49が設けられている。
【0036】
制御装置60は、
図2に示すように、燃料流量演算部61と、燃料弁制御部62と、IGV制御部63と、温度制御系65と、圧力制御系70と、を有する。
【0037】
燃料流量演算部61は、外部からのガスタービン10に対する要求出力PWrを受け付ける。燃料流量演算部61は、この要求出力PWrに応じた燃料流量を求めて、この燃料流量を示す燃料流量指令Froを出力する。この燃料流量演算部61が求める燃料流量は、要求出力PWrに対して正の相関性を有する。すなわち、要求出力PWrが大きくなれば、この燃料流量演算部61が求める燃料流量も多くなる。
【0038】
燃料弁制御部62は、燃料流量指令Froに応じて燃料調節弁43bの開度制御を行う。IGV制御部63は、燃料流量指令Froに応じてIGV14iの開度制御を行う。具体的に、IGV制御部63は、燃料流量指令Froが示す燃料流量に対してIGV開度が正の相関性を有するように、IGV開度を制御する。なお、液体アンモニア調節弁43aは、気化器ケーシング45c内における液体アンモニアの量に応じて、弁開度が変化する。具体的に、気化器ケーシング45c内における液体アンモニアの量が減ると、この液体アンモニアを補充するように、液体アンモニア調節弁43aが開く。
【0039】
温度制御系65は、目標温度演算器66と、温度偏差演算器67と、PI制御器68と、を有する。
【0040】
目標温度演算器66は、
図3に示すように、燃料流量指令Froが示す燃料流量と温水の目標温度との関係を示す関数F1を持っている。この関数F1は、燃料流量が多くなると目標温度が高くなる関係を示す。目標温度演算器66は、この関数F1を用いて、燃料流量指令Froが示す燃料流量に対する温水の目標温度を求める。
【0041】
温度偏差演算器67は、目標温度と温度計48で検知された温度との偏差ΔTを求める。具体的に、温度偏差演算器67は、目標温度から温度計48で検知された温度を減算し、この値を温度偏差ΔTとして出力する。PI制御器68は、温度偏差ΔTに応じた比例・積分動作分の開度補正量を求め、この開度補正量に応じた弁指令を三方弁57に出力する。
【0042】
圧力制御系70は、圧力補正モードボタン71、下限値記憶器72aと、上限値記憶器72bと、下限偏差演算器73a、上限偏差演算器73b、下限偏差判断器74a、上限偏差判断器74b、下限補正指示器75a、上限補正指示器75b、下限補正値演算器77a、上限補正値演算器77b、第一切替器78a、第二切替器78b、第一加算器79a、第二加算器79b、PI制御器68と、とを有する。圧力制御系70と温度制御系65とは、このPI制御器68を共有する。なお、圧力制御系70が有する以上の各要素の機能等については、この圧力制御系70の動作を説明する過程で説明する。
【0043】
以上で説明した制御装置60は、コンピュータである。この制御装置60は、ハードウェア的には、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUのワークエリアになるメモリ等の主記憶装置と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置と、キーボードやマウス等の入力装置と、表示装置と、を有する。燃料流量演算部61、燃料弁制御部62、IGV制御部63、温度制御系65と、圧力制御系70等の制御装置60における各機能部は、例えば、補助記憶装置に記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、機能する。
【0044】
次に、
図4に示すフローチャートに従って、以上で説明したガスタービンプラントの燃料供給方法について説明する。
【0045】
本実施形態の燃料供給方法では、温水加熱工程S1、熱交換量調節工程S2、熱交換工程S3、温度制御工程S4、気化工程S6、低温水回収工程S7、燃料供給工程S8を実行する。また、この燃料供給方法では、オペレータからの要求に応じて、圧力制御工程S5も実行する。
【0046】
温水加熱工程S1では、ボイラケーシング21c内に配置されている温水加熱器52内の温水とボイラケーシング21c内であって温水加熱器52外の排気ガスとを熱交換させて、温水を加熱する。この温水加熱工程S1では、例えば、約60℃の温水(低温水)を約90℃の温水(高温水)にする。この高温水は、温水加熱器52から主高温水ライン53xに流入する。
【0047】
熱交換量調節工程S2では、温水加熱器52からの高温水と熱交換器55に流入する媒体との熱交換量を調節して、気化器45に流入する高温水の温度を調節する。この熱交換量調節工程S2は、分流工程S2aと、流量比調節工程S2bと、を含む。熱交換量調節工程S2の分流工程S2aでは、主高温水ライン53xを流れてきた高温水の一部を分岐高温水ライン53yに流す一方で、残りの高温水を主高温水ライン53x中で分岐高温水ライン53yとの分岐位置より下流側に流す。すなわち、この分流工程S2aでは、主高温水ライン53xを流れてきた高温水を、分岐高温水ライン53yを流れる分岐高温水と、主高温水ライン53xを流れる主高温水とに分流する。なお、熱交換量調節工程S2の流量比調節工程S2bについては、後述する。
【0048】
熱交換工程S3では、分岐高温水ライン53y中に設けられている熱交換器55で、分岐高温水と熱交換器55に流入する媒体とを熱交換させる。ここで、熱交換器55に流入する媒体が、前述したように、冷却水である場合、分岐高温水の温度は低下する。
【0049】
温度制御工程S4では、ガスタービン10の要求出力PWrを受け付け、要求出力PWrに応じて、熱交換量調節工程S2での熱交換量を制御する。制御装置60の温度制御系65は、この温度制御工程S4を実行する。
【0050】
ここで、制御装置60の動作について、
図2を参照して、説明する。
【0051】
制御装置60の燃料流量演算部61は、前述したように、外部からのガスタービン10に対する要求出力PWrを受け付ける。燃料流量演算部61は、この要求出力PWrに応じた燃料流量を求めて、この燃料流量を示す燃料流量指令Froを出力する。なお、ここでの流量は、質量流量である。
【0052】
燃料弁制御部62は、燃料調節弁43bを通過する燃料の質量流量が、燃料流量指令Froが示す燃料流量になるよう、燃料調節弁43bの開度を制御する。この結果、気体アンモニアライン46から燃焼器15に流入する燃料としてのアンモニアの質量流量は、燃料流量指令Froが示す燃料流量になる。IGV制御部63は、圧縮機ケーシング14c内に流入する空気の流量が、燃料流量指令Froが示す燃料流量に対応した流量になるよう、IGV開度を制御する。
【0053】
温度制御系65の目標温度演算器66は、前述したように、関数F1を用いて、燃料流量指令Froが示す燃料流量に対する温水の目標温度を求める。温度制御系65の温度偏差演算器67は、目標温度から温度計48で検知された温度を減算し、この値を温度偏差ΔTとして出力する。
【0054】
温度制御系65のPI制御器68は、温度偏差ΔTに応じた比例・積分動作分の開度補正量を求め、この開度補正量に応じた動作量を弁指令として三方弁57に出力する。
【0055】
以上で説明した温度制御系65の動作で、三方弁57の動作が制御されることで、熱交換量調節工程S2での熱交換量が調節される。
【0056】
圧力制御工程S5は、前述したように、オペレータ等が圧力補正を希望する場合に実行される。制御装置60の圧力制御系70は、この圧力制御工程S5を実行する。
【0057】
圧力制御系70の圧力補正モードボタン71は、オペレータ等が圧力補正を希望するか否かを受け付ける。オペレータ等が圧力補正を希望して、圧力補正モードボタン71を押すと、この圧力補正モードボタン71がON信号を出力し、制御装置60が圧力補正モードになる。
【0058】
下限値記憶器72aには、燃焼器15に流入する燃料(気体アンモニア)の圧力下限値Paが記憶されている。上限値記憶器72bには、燃焼器15に流入する燃料(気体アンモニア)の圧力上限値Pbが記憶されている。
【0059】
圧力制御系70の下限偏差演算器73aは、圧力下限値Paと圧力計49で検知された圧力との偏差ΔPatを求める。具体的に、下限値偏差演算器73aは、圧力下限値Paから圧力計49で検知された圧力を減算し、この値を下限偏差ΔPatとして出力する。圧力制御系70の上限偏差演算器73bは、圧力上限値Pbと圧力計49で検知された圧力との偏差ΔPbtを求める。具体的に、上限偏差演算器73bは、圧力上限値Pbから圧力計49で検知された圧力を減算し、この値を上限偏差ΔPbtとして出力する。
【0060】
圧力制御系70の下限偏差判断器74aは、下限偏差ΔPatが正の値であるか否か、言い換えると、圧力計49で検知された圧力が圧力下限値Paより小さいか否かを判断し、その旨を出力する。圧力制御系70の上限偏差判断器74bは、上限偏差ΔPbtが負の値であるか否か、言い換えると、圧力計49で検知された圧力が圧力上限値Pbより大きいか否かを判断し、その旨を出力する。
【0061】
圧力制御系70の下限補正指示器75aは、下限偏差ΔPatが正の値であり且つ圧力補正モードボタン71からのON信号を受信すると、圧力下限値Paに基づく温度補正を実行する旨を示すONa信号を出力する。一方、下限補正指示器75aは、下限偏差ΔPatが正の値でない又は圧力補正モードボタン71からのON信号を受信していない場合、圧力下限値Paに基づく温度補正を実行しない旨を示すOFFa信号を出力する。圧力制御系70の上限補正指示器75bは、上限偏差ΔPbtが負の値であり且つ圧力補正モードボタン71からのON信号を受信すると、圧力上限値Pbに基づく温度補正を実行する旨を示すONb信号を出力する。一方、上限補正指示器75bは、上限偏差ΔPbtが負の値でない又は圧力補正モードボタン71からのON信号を受信していない場合、圧力上限値Pbに基づく温度補正を実行しない旨を示すOFFb信号を出力する。
【0062】
圧力制御系70の下限補正値演算器77aには、燃料流量指令Froと下限偏差ΔPatとが入力する。下限補正値演算器77aは、以下に示す関数Faを用いて、燃料流量指令Froが示す燃料流量Frと下限偏差ΔPat(>0)とに応じた下限補正値Caを求める。この下限補正値Caは、圧力下限値Paに基づく温度の補正値である。また、この下限補正値Caは、正の値である。
Fa:Ca=k×ΔPat/Fr
なお、上記式において、kは、補正係数である。
【0063】
圧力制御系70の上限補正値演算器77bには、燃料流量指令Froと上限偏差ΔPbtとが入力する。上限補正値演算器77bは、以下に示す関数Fbを用いて、燃料流量指令Froが示す燃料流量Frと上限偏差ΔPbt(<0)とに応じた上限補正値Cbを求める。この上限補正値Cbは、圧力上限値Pbに基づく温度の補正値である。また、この上限補正値Cbは、負の値である。
Fb:Cb=k×ΔPbt/Fr
なお、上記式において、kは、補正係数である。
【0064】
圧力制御系70の第一切替器78aは、下限補正指示器75aからONa信号を受信すると、下限補正値演算器77aが求めた下限補正値Caを出力する。一方、第一切替器78aは、下限補正指示器75aからONa信号を受信しない場合、下限補正値として0を出力する。圧力制御系70の第二切替器78bは、上限補正指示器75bからONb信号を受信すると、上限補正値演算器77bが求めた上限補正値Cbを出力する。一方、第二切替器78bは、上限補正指示器75bからONb信号を受信しない場合、上限補正値として0を出力する。
【0065】
圧力制御系70の第一加算器79aは、温度偏差演算器67が求めた温度偏差ΔTに下限補正値Caを加える。圧力制御系70の第二加算器79bは、温度偏差演算器67が求めた温度偏差ΔTに上限補正値Cbを加える。
【0066】
圧力制御系70のPI制御器68は、(温度偏差ΔT+下限補正値Ca)又は(温度偏差ΔT+上限補正値Cb)に応じた比例・積分動作分の開度補正量を求め、この開度補正量に応じた弁指令を三方弁57に出力する。
【0067】
以上で説明した温度制御系65の動作で、三方弁57の動作が制御されることで、ガスタービン10に流入する気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるよう、熱交換量調節工程S2での熱交換量が制御される。
【0068】
熱交換量調節工程S2の流量比調節工程S2bは、熱交換量調節器56である三方弁57が実行する。三方弁57は、温度制御系65からの指示に応じて、主高温水の流量と、熱交換工程S3での熱交換後の分岐高温水との流量比を調節して、主高温水と、熱交換工程S3での熱交換後の分岐高温水とを合流させる。この結果、合流後の高温水は、気化器45で液体アンモニアを気化されるために十分な温度に調節される。本実施形態において、アンモニアポンプ44により昇圧された液体アンモニアの沸点は、60℃未満である。このため、本実施形態において、気化器45に流入する温水の温度は、90℃~60℃程度に調節される。
【0069】
また、三方弁57は、圧力制御系70からの指示を受けた場合も、この指示に応じて、主高温水の流量と、熱交換工程S3での熱交換後の分岐高温水との流量比を調節して、主高温水と、熱交換工程S3での熱交換後の分岐高温水とを合流させる。この結果、合流後の高温水は、気化器45で液体アンモニアを気化されるために十分な温度で、且つ、ガスタービン10に流入する気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるように調節される。
【0070】
気化工程S6では、気化器45内で、熱交換量調節工程S2により媒体との熱交換量が調節された後の温水と液体アンモニアとを熱交換させて、液体アンモニアを気化させる。
【0071】
低温水回収工程S7では、気化器45で、液体アンモニアとの熱交換で冷却された温水を、低温水ライン51を介して、温水加熱器52内に戻す。温水加熱器52内に戻った温水は、ここで排気ガスにより加熱される。すなわち、この温水加熱器52で、前述の温水加熱工程S1が実行される。
【0072】
燃料供給工程S8では、気化器45で気化したアンモニアである気体アンモニアを、気体アンモニアライン46を介して、ガスタービン10の燃焼器15に供給する。
【0073】
以上のように、本実施形態では、温水加熱器52で温水と排気ガスとの熱交換で加熱された温水が、温度調節された後に、気化器45に流入する。この気化器45では、温度調節された温水と液体アンモニアとが熱交換されて、アンモニアが気化する。ところで、排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスの温度は、ガスタービン10の運転状況の変化により変化する。このため、排気ガスの温度が変化すると、温水加熱器52で加熱された温水の温度も変化する。しかしながら、本実施形態では、前述したように、温水加熱器52で加熱された温水は、温度調節された後に、気化器45に流入する。よって、本実施形態では、排気ガスの温度が変化しても、容易且つ確実に、気化器45に流入した液体アンモニアの全てを気体アンモニアにすることができる。
【0074】
また、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの量も、ガスタービン10の運転状況の変化により変化する。本実施形態では、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの量が変化しても、気化器45に流入する温水の温度を変化させることで、容易且つ確実に、気化器45に流入した液体アンモニアの全てを気体アンモニアにすることができる。
【0075】
従って、本実施形態では、ガスタービン10の運転状況が変化しても、容易且つ確実に、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの生成量を得ることができる。また、本実施形態では、ガスタービン10の運転状況が変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0076】
前述したように、ガスタービン10の要求出力PWrの変化に応じて、ガスタービン10に供給する燃料の流量が変化する。この場合、燃料流量の変化に伴い、気化器45における燃料と温水との熱交換量が変化する。仮に、この熱交換量の変化結果に応じて、温水の温度を調節すると、要求出力PWrが変化してから、気体アンモニアの生成量を確保するまでの時間がかかる。本実施形態では、要求出力PWrに応じて熱交換量調節器56の動作量を定めるので、要求出力PWrが変化してから、気体アンモニアの生成量を確保するまでの時間を短くすることができる。よって、本実施形態では、以上の観点からも、要求出力PWrの変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0077】
ガスタービン10に流入する気体アンモニアの圧力は、予め定められた圧力範囲内でなければ、ガスタービン10内で気体アンモニアを安定燃焼させることができない。本実施形態では、圧力制御系70により、ガスタービン10に流入する気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるように制御される。よって、本実施形態では、ガスタービン10内で気体アンモニアを安定燃焼させることができる。
【0078】
ここで、気化器45の伝熱管45p内に液体アンモニアが流入し、伝熱管45pを覆う気化器ケーシング45c内に温水が流入する場合について考察する。この場合、伝熱管45p内で液体アンモニアが気体アンモニアになり、伝熱管45p内の一部に気体アンモニアが滞留することになる。このため、伝熱管45pの総伝熱面積に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積が小さくなる。しかも、この場合、気体アンモニアの生成量の変化に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積も変化する。よって、この場合では、液体アンモニアと温水との熱交換量の制御が難しく、必要とする気体アンモニアの生成量を確保できないことがある。
【0079】
一方、本実施形態では、気化器45の伝熱管45p内に温水が流入し、伝熱管45pを覆う気化器ケーシング45c内に液体アンモニアが流入する。このため、本実施形態では、伝熱管45pの外面に接触した液体アンモニアは、気化すると、伝熱管45pの外面から離れることができる。このため、本実施形態では、伝熱管45pの総伝熱面積に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積を先の場合より大きくすることができる。しかも、本実施形態では、気体アンモニアの生成量の変化に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積は実質的に変化しない。よって、本実施形態では、この観点化からも、液体アンモニアと温水との熱交換量の制御が容易で、必要とする気体アンモニアの生成量を容易且つ確実に得ることができる。
【0080】
ボイラケーシング21c内では、排気ガスの流れの下流側に向かうに連れて、排気ガスの温度が低くなる。本実施形態では、温水加熱器52が、ボイラケーシング21c内で、複数の伝熱管のうちで、最も下流側の伝熱管である節炭器21ecoよりも、下流側に配置されている。よって、本実施形態では、温度が低くなった排気ガスの熱を温水加熱器52で有効利用することができる。
【0081】
「第二実施形態」
次に、本開示に係るガスタービンプラントの第二実施形態について、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0082】
本実施形態のガスタービンプラントも、第一実施形態のガスタービンプラントと同様、
図5に示すように、ガスタービン10と、脱硝装置20と、排熱回収ボイラ21と、煙突22と、蒸気タービン23と、復水器24と、ポンプ25と、制御装置60と、を備える。さらに、本実施形態のガスタービンプラントは、第一実施形態の燃料供給設備40と異なる燃料供給設備40aを備える。
【0083】
本実施形態の燃料供給設備40aは、第一実施形態の燃料供給設備40と同様、アンモニアタンク41と、液体アンモニアライン42と、液体アンモニア調節弁43aと、燃料調節弁43bと、アンモニアポンプ44と、気化器45と、気体アンモニアライン46と、温水ポンプ54と、熱交換器55と、媒体ライン58iと、媒体回収ライン58oと、媒体流量調節器59と、を有する。さらに、本実施形態の燃料供給設備40aは、第一実施形態の温水ライン50と異なる温水ライン50aと、第一実施形態の熱交換量調節器56と異なる熱交換量調節器56aと、を有する。
【0084】
本実施形態の温水ライン50aは、第一実施形態の温水ライン50と同様、低温水ライン51と、温水加熱器52と、を有する。さらに、本実施形態の温水ライン50aは、第一実施形態の高温水ライン53と異なる高温水ライン53aを有する。第一実施形態の高温水ライン53は、分岐高温水ライン53yを有するが、本実施形態の高温水ライン53aは、この分岐高温水ライン53yを有していない。
【0085】
本実施形態の熱交換器55は、この高温水ライン53aに設けられている。このため、温水加熱器52からの高温水の全ては、高温水ライン53aを介して、熱交換器55に流入する。この熱交換器55に接続されている媒体ライン58iには、第一実施形態と同様、媒体流量調節器59が設けられている。本実施形態の熱交換量調節器56aは、この媒体流量調節器59を有する。
【0086】
本実施形態の制御装置60は、温水の温度を調節するにあたり、この媒体流量調節器59の動作を制御する。
【0087】
次に、
図6に示すフローチャートに従って、本実施形態におけるガスタービンプラントの燃料供給方法について説明する。
【0088】
本実施形態の燃料供給方法では、第一実施形態の燃料供給方法と同様、温水加熱工程S1、熱交換工程S3、圧力制御工程S5、温度制御工程S4、気化工程S6、低温水回収工程S7、燃料供給工程S8を実行する。また、本実施形態の燃料供給方法でも、第一実施形態の燃料供給方法と同様、オペレータからの要求に応じて、圧力制御工程S5も実行する。さらに、本実施形態の燃料供給方法では、第一実施形態の熱交換量調節工程S2と異なる熱交換量調節工程S2Xを実行する。
【0089】
本実施形態の熱交換量調節工程S2Xでも、第一実施形態の熱交換量調節工程S2と同様、温水加熱器52からの高温水と熱交換器55に流入する媒体との熱交換量を調節して、気化器45に流入する高温水の温度を調節する。但し、本実施形態の熱交換量調節工程S2Xにおける熱交換量の調節方法が、第一実施形態における熱交換量調節工程S2における熱交換量の調節方法と異なる。本実施形態の熱交換量調節工程S2Xは、媒体流量調節工程S2cを含む。
【0090】
媒体流量調節工程S2cでは、制御装置60の温度制御系65又は圧力制御系70からの指示に基づき、熱交換量調節器56aとしての媒体流量調節器59が動作する。この結果、熱交換器55に流入する媒体の流量が調節される。この結果、熱交換器55における媒体と高温水との熱交換量が調節されて、気化器45に流入する高温水の温度が調節される。
【0091】
なお、本実施形態における温度制御系65のPI制御器68は、温度偏差ΔTに応じた比例・積分動作分の開度補正量を求め、この開度補正量に応じた動作量を媒体流量調節器59に出力する。また、本実施形態における圧力制御系70のPI制御器68は、(温度偏差ΔT+下限補正値Ca)又は(温度偏差ΔT+上限補正値Cb)に応じた比例・積分動作分の開度補正量を求め、この開度補正量に応じた動作量を媒体流量調節器59に出力する。
【0092】
このように、温度制御系65又は圧力制御系70の動作で、媒体流量調節器59の動作が制御されることで、熱交換量調節工程S2Xでの熱交換量が制御される。
【0093】
以上のように、本実施形態でも、温水加熱器52で加熱された温水は、温度調節された後に、気化器45に流入するので、ガスタービン10の運転状況が変化しても、容易に、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの生成量を得ることができる。また、本実施形態では、ガスタービン10の運転状況の変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0094】
また、本実施形態の高温水ライン53aは、分岐高温水ライン53yを有していないので、第一実施形態のガスタービンプラントよりも、ライン構成が簡略化し、設備コストを抑えることができる。
【0095】
なお、第一実施形態の熱交換量調節器56は、三方弁57の他に、本実施形態と同様、媒体流量調節器59を有してもよい。
【0096】
「制御装置の変形例」
次に、以上で説明した制御装置の変形例について、
図7を用いて説明する。以上の各実施形態の制御装置60では、圧力補正モードに設定することができる。本変形例の制御装置60aでは、この圧力補正モードの他に、圧力下限値制御モード及び圧力上限値制御モードにも設定することができる。
【0097】
本変形例の制御装置60aは、以上の各実施形態の制御装置60と同様、燃料流量演算部61と、燃料弁制御部62と、IGV制御部63と、有する。さらに、本変形例の制御装置60aは、以上の各実施形態の温度制御系65と異なる温度制御系65aと、以上の各実施形態の圧力制御系70と異なる圧力制御系70aと、を有する。
【0098】
本変形例の温度制御系65aは、以上の各実施形態の温度制御系65と同様、目標温度演算器66と、温度偏差演算器67とを有する。さらに、本変形例の温度制御系65aは、以上の各実施形態のPI制御器68と同様の機能を有するPI制御/切替器68aを有する。
【0099】
本変形例の温度制御系65aは、以上の各実施形態の温度制御系65と同様、目標温度と温度計48で検知された温度との偏差温度ΔTに応じた比例・積分動作分の開度補正量を求め、この開度補正量に応じた熱交換量調節器56,56aとしての三方弁57又は媒体流量調節器59に出力する。
【0100】
本変形例の圧力制御系70aは、以上の各実施形態の圧力制御系70と同様、圧力補正モードボタン71、下限値記憶器72aと、上限値記憶器72bと、下限偏差演算器73a、上限偏差演算器73b、下限偏差判断器74a、上限偏差判断器74b、下限補正指示器75a、上限補正指示器75b、下限補正値演算器77a、上限補正値演算器77b、第一切替器78a、第二切替器78b、第一加算器79a、第二加算器79b、とを有する。本変形例の圧力制御系70aは、さらに、PI制御/切替器68aを有する。圧力制御系70aと温度制御系65aとは、このPI制御/切替器68aを共有する。
【0101】
本変形例の圧力制御系70aは、さらに、下限制御モードボタン71aと、上限制御モードボタン71bと、下限制御指示器76aと、上限制御指示器76bと、を有する。
【0102】
下限制御モードボタン71aは、オペレータ等が圧力下限値制御を希望するか否かを受け付ける。オペレータ等が圧力下限値制御を希望して、下限制御モードボタン71aを押すと、この下限制御モードボタン71aがON信号を出力し、制御装置60aが圧力下限値制御モードなる。上限制御モードボタン71bは、オペレータ等が圧力上限値制御を希望するか否かを受け付ける。オペレータ等が圧力上限値制御を希望して、上限制御モードボタン71bを押すと、この上限制御モードボタン71bがON信号を出力し、制御装置60aが圧力上限値制御モードなる。
【0103】
下限制御指示器76aは、下限偏差演算器73aが求めた下限偏差ΔPatが正の値であり且つ下限制御モードボタン71aからのON信号を受信すると、圧力下限値Paに基づく温度制御を実行する旨を示すONac信号を出力する。一方、下限制御指示器76aは、下限偏差ΔPatが正の値でない又は下限制御モードボタン71aからのON信号を受信していない場合、圧力下限値Paに基づく温度制御を実行しない旨を示すOFFac信号を出力する。上限制御指示器76bは、上限偏差演算器73bが求めた上限偏差ΔPbtが負の値であり且つ上限制御モードボタン71bからのON信号を受信すると、圧力上限値Pbに基づく温度制御を実行する旨を示すONbc信号を出力する。一方、上限制御指示器76bは、上限偏差ΔPbtが負の値でない又は上限制御モードボタン71bからのON信号を受信していない場合、圧力上限値Pbに基づく温度制御を実行しない旨を示すOFFbc号を出力する。
【0104】
PI制御/切替器68aは、下限制御指示器76aからONac信号を受信すると、下限偏差演算器73aが求めた下限偏差ΔPatに基づく動作量を求め、この動作量を熱交換量調節器56,56aとしての三方弁57又は媒体流量調節器59に出力する。このときの三方弁57又は媒体流量調節器59の動作量は、圧力補正モード時に、圧力下限値Paに基づく温度補正が行われた場合の動作量とは異なるようになっている。よって、オペレータ等により、圧力補正モードが選択されるか、圧力下限値制御モードが選択されるかに応じて、三方弁57又は媒体流量調節器59の動作量が変化する。
【0105】
また、PI制御/切替器68aは、上限制御指示器76bからONbc信号を受信すると、上限偏差演算器73bが求めた上限偏差ΔPbtに基づく動作量を求め、この動作量を熱交換量調節器56,56aとしての三方弁57又は媒体流量調節器59に出力する。このときの三方弁57又は媒体流量調節器59の動作量は、圧力補正モード時に、圧力上限値Pbに基づく温度補正が行われた場合の動作量とは異なるようになっている。よって、オペレータ等により、圧力補正モードが選択されるか、圧力条件値制御モードが選択されるかに応じて、三方弁57又は媒体流量調節器59の動作量が変化する。
【0106】
なお、以上の各実施形態における制御装置60及び本変形例の制御装置60aのボタンは、物理的に存在するボタンでもよいが、ディスプレイ等に仮想的に存在するボタンでもよい。
【0107】
「その他の変形例」
以上では、温水との熱交換対象である媒体として、冷却水を例示している。しかしながら、温水の温度と間で一定以上の温度差があれば、冷却水以外を媒体にしてもよい。
【0108】
以上の各実施形態及び変形例では、温水加熱器52で、温水を約90℃にまで加熱した後、この温水と冷却水等の媒体と熱交換させることで、温水を冷却して、温水の温度を90℃~60℃にする。しかしながら、温水加熱器52で、加熱された温水をさらに加熱して、この温水の温度を調節してもよい。この場合、温水加熱器52では、温水を、例えば約50℃にまで加熱する。そして、この加熱した温水を、例えば、100℃~70℃程度の媒体と熱交換させることで、温水をさらに加熱して、温水の温度を90℃~60℃にする。
【0109】
以上の各実施形態及び変形例では、温水加熱器52が、ボイラケーシング21c内で、複数の伝熱管のうちで、最も下流側の伝熱管である節炭器21ecoよりも、下流側に配置されている。しかしながら、温水加熱器52は、ボイラケーシング21c内で、排気ガスの流れ方向で、最も下流側の伝熱管と重なる位置に配置されてもよい。
【0110】
以上の各実施形態及び変形例のガスタービン10は、いずれも、いわゆる一軸ガスタービンである。しかしながら、ガスタービンは、二軸ガスタービンであってもよい。すなわち、ガスタービンは、圧縮機と、燃焼器と、高圧タービンと、低圧タービンとを有してもよい。この場合、圧縮機ロータと高圧タービンロータとは、互に連結されて第一ガスタービンロータを成す。また、低圧タービンロータは、第二ガスタービンロータを成し、第一ガスタービンロータと機械的に連結されていない。
【0111】
以上の各実施形態及び変形例のガスタービンプラントは、ガスタービン10と、排熱回収ボイラ20と、蒸気タービン23と、を備えるコンバインドサイクルプラントである。しかしながら、ガスタービンプラントは、ガスタービン10と、排熱回収ボイラ20と、を備え、蒸気タービンを備えていないコジェネレーションプラントであってもよい。この場合、排熱回収ボイラ20で発生した蒸気は、例えば、工場内で利用される。
【0112】
以上の各実施形態及び変形例のガスタービンプラントは、脱硝装置20を備える。しかしながら、ガスタービン10から排気された排気ガス中のNOx濃度が環境基準を満たす場合には、ガスタービンプラントは、脱硝装置を備えていないプラントであってもよい。
【0113】
「付記」
以上の実施形態におけるガスタービンプラントは、例えば、以下のように把握される。
【0114】
(1)第一態様におけるガスタービンプラントは、
燃料を燃焼させ、前記燃料の燃焼で生成された燃焼ガスで駆動可能なガスタービン10と、前記ガスタービン10からの排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラ21と、前記燃料としてのアンモニアを前記ガスタービン10に供給可能な燃料供給設備40,40aと、を備える。前記燃料供給設備40,40aは、液体アンモニアを貯留可能なアンモニアタンク41に接続されている液体アンモニアライン42と、温水を流すことができる温水ライン50,50aと、前記液体アンモニアライン42の端に接続され、前記温水ライン50,50aからの前記温水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記液体アンモニアを加熱して気化させることができる気化器45と、前記温水ライン50,50a中の温水と媒体とを熱交換させることができる熱交換器55と、前記温水と前記媒体との間での熱交換量を調節して、前記気化器45に流入する温水の温度を調整できる熱交換量調節器56,56aと、前記気化器45で気化したアンモニアである気体アンモニアを前記ガスタービン10に導くことができる気体アンモニアライン46と、を有する。前記気化器45は、アンモニア入口45ciと、アンモニア出口45coと、温水入口45piと、温水出口45poとを有する。前記液体アンモニアライン42は、前記気化器45のアンモニア入口45ciに接続されている。前記気体アンモニアライン46は、前記気化器45の前記アンモニア出口45coに接続されている。前記温水ライン50,50aは、前記排熱回収ボイラ21内に配置され、温水と前記排気ガスとを熱交換させて、温水を加熱する温水加熱器52と、前記温水加熱器52と前記気化器45の前記温水入口45piとを接続する高温水ライン53,53aと、を有する。前記熱交換器55は、前記高温水ライン53,53aに設けられている。
【0115】
本態様では、温水加熱器52で温水と排気ガスとの熱交換で加熱された温水が、温度調節された後に、気化器45に流入する。この気化器45では、温度調節された温水と液体アンモニアとが熱交換されて、アンモニアが気化する。ところで、排熱回収ボイラ21内を流れる排気ガスの温度は、ガスタービン10の運転状況の変化により変化する。このため、排気ガスの温度が変化すると、温水加熱器52で加熱された温水の温度も変化する。しかしながら、本態様では、前述したように、温水加熱器52で加熱された温水は、温度調節された後に、気化器45に流入する。よって、本態様では、排気ガスの温度が変化しても、容易に、気化器45に流入した液体アンモニアの全てを気体アンモニアにすることができる。
【0116】
また、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの量も、ガスタービン10の運転状況の変化により変化する。本態様では、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの量が変化しても、気化器45に流入する温水の温度を変化させることで、容易に、気化器45に流入した液体アンモニアの全てを気体アンモニアにすることができる。
【0117】
従って、本態様では、ガスタービン10の運転状況が変化しても、容易に、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの生成量を得ることができる。また、本態様では、ガスタービン10の運転状況が変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0118】
(2)第二態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記高温水ライン53は、前記気化器45の前記温水入口45piと前記温水加熱器52とを接続する主高温水ライン53xと、前記主高温水ライン53xから分岐した後に前記主高温水ライン53xに接続されている分岐高温水ライン53yと、を有する。前記熱交換器55は、前記分岐高温水ライン53yに設けられている。前記熱交換量調節器56は、前記主高温水ライン53x中で、前記分岐高温水ライン53yの分岐位置と前記分岐高温水ライン53yの接続位置との間を流れる温水の流量と、前記分岐高温水ライン53yを流れる温水の流量との比を調節する流量比調節器を有する。
【0119】
本態様では、主高温水ライン53x中で、分岐高温水ライン53yの分岐位置と分岐高温水ライン53yの接続位置との間を流れる温水の流量と、分岐高温水ライン53yを流れる温水の流量との比を調節することで、温水と媒体との間での熱交換量を調節することできる。
【0120】
(3)第三態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様又は前記第二態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記熱交換量調節器56aは、前記熱交換器55に流入する前記媒体の流量を調節する媒体流量調節器59を有する。
【0121】
本態様では、熱交換器55に流入する媒体の流量を調節することで、温水と媒体との間での熱交換量を調節することができる。
【0122】
(4)第四態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記気化器45は、前記温水入口45piと前記温水出口45poとを有し、温水が流れることが可能なる伝熱管45pと、前記伝熱管45pを覆うと共に前記液体アンモニアを一時的に貯留することが可能な気化器ケーシング45cと、を有する。前記気化器ケーシング45cは、前記アンモニア入口45ciと、前記アンモニア出口45coと、を有する。前記気化器ケーシング45cの前記アンモニア入口45ciには、前記液体アンモニアライン42が接続され、前記気化器ケーシング45cの前記アンモニア出口45coには、前記気体アンモニアライン46が接続されている。
【0123】
伝熱管45p内に液体アンモニアが流入し、伝熱管45pを覆う気化器ケーシング45c内に温水が流入する場合、伝熱管45p内で液体アンモニアが気体アンモニアになり、伝熱管45p内の一部に気体アンモニアが滞留することになる。このため、伝熱管45pの総伝熱面積に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積が小さくなる。しかも、この場合、気体アンモニアの生成量の変化に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積も変化する。よって、この場合では、液体アンモニアと温水との熱交換量の制御が難しく、必要とする気体アンモニアの生成量を確保できないことがある。
【0124】
一方、本態様では、伝熱管45p内に温水が流入し、伝熱管45pを覆う気化器ケーシング45c内に液体アンモニアが流入する。このため、本態様では、伝熱管45pの外面に接触した液体アンモニアは、気化すると、伝熱管45pの外面から離れることができる。このため、本態様では、伝熱管45pの総伝熱面積に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積を先の場合より大きくすることができる。しかも、本態様では、気体アンモニアの生成量の変化に対して、液体アンモニアと温水との熱交換に有効な伝熱面積は実質的に変化しない。よって、本態様では、液体アンモニアと温水との熱交換量の制御が容易で、必要とする気体アンモニアの生成量を容易に得ることができる。
【0125】
(5)第五態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記排熱回収ボイラ21は、ガスタービン10からの排気ガスが流れるボイラケーシング21cと、ボイラケーシング21c内に配置され、内部を水又は蒸気が流れる複数の伝熱管と、を有する。前記複数の伝熱管は、前記ボイラケーシング21c内で前記排気ガスの流れ方向に並んでいる。前記温水加熱器52は、前記ボイラケーシング21c内で、前記複数の伝熱管のうちで、前記排気ガスの流れ方向で最も下流側の伝熱管に対して、前記排気ガスの流れ方向で重なる位置、又は、さらに前記下流側の位置に、配置されている。
【0126】
ボイラケーシング21c内では、排気ガスの流れの下流側に向かうに連れて、排気ガスの温度が低くなる。本態様では、温度が低くなった排気ガスの熱を温水加熱器52で有効利用することができる。
【0127】
(6)第六態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第五態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、さらに、前記熱交換量調節器56,56aの動作を制御する制御装置60,60aを備える。前記制御装置60,60aは、外部からの前記ガスタービン10に対する要求出力PWrに応じて前記熱交換量調節器56,56aの動作量を定め、前記動作量を前記熱交換量調節器56,56aに指示する温度制御系65,65aを有する。
【0128】
ガスタービン10の要求出力PWrの変化に応じて、ガスタービン10に供給する燃料の流量が変化する。この場合、燃料流量の変化に伴い、気化器45における燃料と温水との熱交換量が変化する。仮に、この熱交換量の変化結果に応じて、温水の温度を調節すると、要求出力PWrが変化してから、気体アンモニアの生成量を確保するまでの時間がかかる。本態様では、要求出力PWrに応じて熱交換量調節器56,56aの動作量を定めるので、要求出力PWrが変化してから、気体アンモニアの生成量を確保するまでの時間を短くすることができる。言い換えると、本態様では、要求出力PWrの変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0129】
(7)第七態様におけるガスタービンプラントは、
前記第六態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記制御装置60,60aは、前記ガスタービン10に流入する前記気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるよう、前記熱交換量調節器56,56aの動作量を定め、前記動作量を前記熱交換量調節器56,56aに指示する圧力制御系70,70aをさらに有する。
【0130】
ガスタービン10に流入する気体アンモニアの圧力は、予め定められた圧力範囲内でなければ、ガスタービン10内で気体アンモニアを安定燃焼させることができない。本態様では、圧力制御系70,70aにより、ガスタービン10に流入する気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるように制御される。よって、本態様では、ガスタービン10内で気体アンモニアを安定燃焼させることができる。
【0131】
以上の各実施形態及び各変形例におけるガスタービンプラントの燃料供給方法は、例えば、以下のように把握される。
(8)第八態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法は、
燃料を燃焼させ、前記燃料の燃焼で生成された燃焼ガスで駆動可能なガスタービン10と、前記ガスタービン10からの排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラ21と、を備えるガスタービンプラントの燃料供給方法において、前記排熱回収ボイラ21内に配置されている温水加熱器52内の温水と前記排熱回収ボイラ21内であって前記温水加熱器52外の前記排気ガスとを熱交換させて、前記温水を加熱する温水加熱工程S1と、前記温水加熱工程S1で加熱された前記温水と媒体とを熱交換させる熱交換工程S3と、前記温水加熱工程S1で加熱された前記温水と前記媒体との熱交換量を調節する熱交換量調節工程S2,S2Xと、気化器45内で、前記熱交換量調節工程S2,S2Xにより前記媒体との熱交換量が調節された後の前記温水と液体アンモニアを貯留しているアンモニアタンク41からの前記液体アンモニアとを熱交換させて、前記液体アンモニアを気化させる気化工程S6と、前記気化工程S6で気化したアンモニアである気体アンモニアを燃料として前記ガスタービン10に供給する燃料供給工程S8と、を実行する。前記熱交換量調節工程S2,S2Xでは、前記熱交換工程S3での、前記温水と前記媒体との熱交換量を調節することで、前記気化器45に流入する前記温水の温度を調節する。
【0132】
本態様では、第一態様としてのガスタービンプラントと同様、ガスタービン10の運転状況が変化しても、容易に、ガスタービン10が必要とする気体アンモニアの生成量を得ることができる。さらに、本態様でも、ガスタービン10の運転状況が変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0133】
(9)第九態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法は、
前記第八態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法において、前記熱交換量調節工程S2は、前記温水加熱工程S1で加熱された前記温水を主高温水と分岐高温水に分流する分流工程S2aと、流量比調節工程S2bと、を含む。前記熱交換工程S3では、前記分岐高温水と前記媒体とを熱交換させる。前記流量比調節工程S2bでは、前記主高温水の流量と、前記熱交換工程S3での熱交換後の前記分岐高温水との流量比を調節して、前記主高温水と、前記熱交換工程S3での熱交換後の前記分岐高温水とを合流させる。
【0134】
本態様では、第二態様としてのガスタービンプラントと同様、温水と媒体との間での熱交換量を調節することできる。
【0135】
(10)第十態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法は、
前記第八態様又は前記第九態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法において、前記熱交換量調節工程S2Xは、前記熱交換工程S3で、前記温水と熱交換する前記媒体の流量を調節する媒体流量調節工程S2cを含む。
【0136】
本態様では、第三態様としてのガスタービンプラントと同様、温水と媒体との間での熱交換量を調節することできる。
【0137】
(11)第十一態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法は、
前記第八態様から前記第十態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法において、さらに、外部からの前記ガスタービン10に対する要求出力PWrに応じて、前記熱交換量調節工程S2,S2Xでの熱交換量の調節を制御する温度制御工程S4を実行する。
【0138】
本態様では、第六態様としてのガスタービンプラントと同様、要求出力PWrの変化に対する気体アンモニアの生成量の応答性を高めることができる。
【0139】
(12)第十二態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法は、
前記第十一態様におけるガスタービンプラントの燃料供給方法において、さらに、前記ガスタービン10に流入する前記気体アンモニアの圧力が予め定められた圧力範囲内に収まるよう、前記熱交換量調節工程S2,S2Xでの熱交換量の調節を制御する圧力制御工程S5を実行する。
【0140】
本態様では、第七態様としてのガスタービンプラントと同様、ガスタービン10内で気体アンモニアを安定燃焼させることができる。
【符号の説明】
【0141】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
12:中間ケーシング
14:圧縮機
14r:圧縮機ロータ
14c:圧縮機ケーシング
14i:吸気量調節機(又はIGV)
15:燃焼器
16:タービン
16r:タービンロータ
16c:タービンケーシング
20:脱硝装置
21:排熱回収ボイラ
21c:ボイラケーシング
21eco:節炭器
21eva:蒸発器
21s:過熱器
22:煙突
23:蒸気タービン
24:復水器
25:ポンプ
26:給水ライン
27:主蒸気ライン
40,40a:燃料供給設備
41:アンモニアタンク
42:液体アンモニアライン
43a:液体アンモニア調節弁
43b:燃料調節弁
44:アンモニアポンプ
45:気化器
45c:気化器ケーシング
45ci:アンモニア入口
45co:アンモニア出口
45p:伝熱管
45pi:温水入口
45po:温水出口
46:気体アンモニアライン
48:温度計
49:圧力計
50,50a:温水ライン
51:低温水ライン
52:温水加熱器
53,53a:高温水ライン
53x:主高温水ライン
53y:分岐高温水ライン
54:温水ポンプ
55:熱交換器
55c:熱交換器ケーシング
55p:伝熱管
55pi:媒体入口
55po:媒体出口
56,56a:熱交換量調節器
57:三方弁(又は流量比調節器)
58i:媒体ライン
58o:媒体回収ライン
59:媒体流量調節器
60,60a:制御装置
61:燃料流量演算部
62:燃料弁制御部
63:IGV制御部
65,65a:温度制御系
66:目標温度演算器
67:温度偏差演算器
68:PI制御器
68a:PI制御/切替器
70,70a:圧力制御系
71:圧力補正モードボタン
71a:下限制御モードボタン
71b:上限制御モードボタン
72a:下限値記憶器
72b:上限値記憶器
73a:下限偏差演算器
73b:上限偏差演算器
74a:下限偏差判断器
74b:上限偏差判断器
75a:下限補正指示器
75b:上限補正指示器
76a:下限制御指示器
76b:上限制御指示器
77a:下限補正値演算器
77b:上限補正値演算器
78a:第一切替器
78b:第二切替器
79a:第一加算器
79b:第二加算器