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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】基板カセット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20250115BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20250115BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H01L21/68 V
H01L21/306 K
H01L21/304 648D
H01L21/304 642
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021029464
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130831
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真悟
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-522047(JP,A)
【文献】特開平09-115868(JP,A)
【文献】特開平04-317330(JP,A)
【文献】特開2010-098017(JP,A)
【文献】特開平10-070178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を主面が対向するように配置し、前記複数の基板を同時に液体に浸漬処理するための基板カセットであって、
前記複数の基板の配列方向に延び、前記複数の基板の各々の側端部を支持する複数の側方支柱と、
前記側方支柱の側部において前記配列方向に配置され、前記側方支柱の側部から突起し、前記複数の基板が離間した状態となるように前記複数の基板の各々を支持するための複数の爪部と、
前記側方支柱の下部に配置され、前記配列方向に延在し、前記配列方向と交差する断面形状が下向きに突起する逆三角形状である水切り用突起と、
を備え、
前記水切り用突起の表面は、疎水性を有し、
前記側方支柱の前記側部および上部は、親水性を有し、
前記水切り用突起の表面は、凹凸構造を有する、
基板カセット。
【請求項2】
前記複数の爪部は、親水性を有する、請求項1に記載の基板カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽電池セルの製造プロセスにおいて、ウェットプロセスが用いられる。このようなウェットプロセスとしては、半導体基板(wafer:薄板)上に製膜された半導体層または電極層等の薄膜のパターニング、このようなパターニングで用いられるレジストまたはリフトオフ層(犠牲層)の剥離、および半導体基板の表面のクリーニング、等が挙げられる。
【0003】
このようなウェットプロセスにおいて、複数の半導体基板を同時に、薬液(例えば、エッチング溶液)または水(例えば、リンス溶液)等の液体に浸漬処理するために、基板カセットが用いられる。特許文献1および2には、このような基板カセットとして基板処理装置が記載されている。
【0004】
このような基板カセットは、複数の半導体基板を、主面が対向するように配置して収容する。そして、ウェットプロセスでは、複数の半導体基板が液体の液面に対して垂直となるように、基板カセットを液体に浸漬し、基板カセットを液体から取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-90943号公報
【文献】特許第4974996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウェットプロセスにおいて、例えば基板カセットを純水(リンス溶液)から取り出した後(リンス工程後)、基板カセットに収容された状態で、複数の半導体基板の乾燥を行う。例えば、基板カセットの側面側から複数の半導体基板に乾燥風を当てることによって、複数の半導体基板の表面の水滴を除去する。
【0007】
このとき、基板カセットの側方支柱に水滴が付着していると、この水滴が、乾燥風によって飛散し、半導体基板の表面に付着して残ってしまう。この乾燥時の水滴残りに起因して、半導体基板の表面にいわゆるウオーターマーク(乾燥シミ)が形成される乾燥不良が生じる。例えば、ウオーターマーク(乾燥シミ)は、太陽電池セルの暗点となるため、太陽電池セルの性能低下および歩留まり低下の要因となる。
【0008】
この点に関し、特許文献1に記載の基板処理装置(基板カセット)は、複数の半導体基板を一定間隔で整列して保持する保持機構(本出願の側方支柱に相当)と、保持機構に垂下状態にて設けられて下方に向って先鋭に形成され、保持機構に付着した処理液の滴下を促す液切部材(本出願の水切り用突起に相当)とを備える。
【0009】
また、特許文献2に記載の基板処理装置(基板カセット)は、被処理基板の下端部を支持する下側保持体(本出願の下方支柱に相当)と、被処理基板の下部側端部を保持する上側保持体(本出願の側方支柱に相当)とを備え、下側保持体は、親水性を有する部材で形成されており、上側保持体は、疎水性を有する部材で形成されている。
【0010】
しかし、特許文献1に記載の基板処理装置(基板カセット)では、保持機構(本出願の側方支柱に相当)の下部に、処理液の滴下を促す液切部材(本出願の水切り用突起に相当)が形成されているが、保持機構の上部および側部に付着する水滴については考慮されていない。
【0011】
また、特許文献2に記載の基板処理装置(基板カセット)では、上側保持体(本出願の側方支柱に相当)が疎水性を有する部材で形成されているが、上側保持体の上部および側部に付着する水滴については考慮されていない。疎水性を有する部材では、水をはじくため、その上部および側部に水滴が形成されてしまう。
【0012】
このように、特許文献1および2に記載の技術でも、基板カセットの側方支柱に付着する水滴の低減が十分でなく、そのため、この側方支柱に付着する水滴に起因する乾燥時の基板の水滴残りであって、この乾燥時の基板の水滴残りに起因する基板の表面のウオーターマーク(乾燥シミ)、すなわち基板の乾燥不良の低減が十分でない。
【0013】
本発明は、ウェットプロセスにおいて、基板の乾燥不良を低減する基板カセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る基板カセットは、複数の基板を主面が対向するように配置し、前記複数の基板を同時に液体に浸漬処理するための基板カセットであって、前記複数の基板の配列方向に延び、前記複数の基板の各々の側端部を支持する複数の側方支柱と、前記側方支柱の側部において前記配列方向に配置され、前記側方支柱の側部から突起し、前記複数の基板が離間した状態となるように前記複数の基板の各々を支持するための複数の爪部と、前記側方支柱の下部に配置され、前記配列方向に延在し、前記配列方向と交差する断面形状が下向きに突起する逆三角形状である水切り用突起と、を備える。前記水切り用突起の表面は、疎水性を有し、前記側方支柱の前記側部および上部は、親水性を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板カセットを用いたウェットプロセスにおいて、基板の乾燥不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る基板カセットを示す斜視図である。
図2図1に示す基板カセットの側面図である。
図3図2に示す基板カセットのIII-III線断面図である。
図4図2に示す基板カセットにおけるフィン部(水切り用突起)の拡大図である。
図5図4に示すフィン部(水切り用突起)近傍における乾燥風および処理液の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0018】
図1は、本実施形態に係る基板カセットを示す斜視図である。図2は、図1に示す基板カセットの側面図であり、図3は、図2に示す基板カセットのIII-III線断面図である。
【0019】
図1図3に示す基板カセット1は、例えば太陽電池セルの製造プロセスにおけるウェットプロセスにおいて用いられる。このようなウェットプロセスとしては、半導体基板(wafer:薄板)(例えば、結晶質シリコン系基板)W上に製膜された半導体層(例えば、非晶質シリコン系薄膜)または電極層等の薄膜のパターニング、このようなパターニングで用いられるレジストまたはリフトオフ層(犠牲層)の剥離、および半導体基板Wの表面のクリーニング、等が挙げられる。
【0020】
基板カセット1は、ウェットプロセスにおいて、複数の半導体基板Wを同時に、薬液(例えば、エッチング溶液)または水(例えば、リンス溶液)等の液体に浸漬処理する。基板カセット1は、複数の半導体基板Wを、主面が対向するように配置して収容する。そして、ウェットプロセスでは、複数の半導体基板Wが液体の液面に対して垂直となるように、基板カセット1が液体に浸漬され、基板カセット1が液体から取り出される。そして、例えばリンス工程後、基板カセット1に収容された状態で、複数の半導体基板Wの乾燥を行う。例えば、基板カセット1の側面側から複数の半導体基板Wに乾燥風を当てることによって、複数の半導体基板Wの表面の水滴を除去する。
【0021】
基板カセット1は、正面板11と、背面板12と、下方支柱21と、上方支柱(図示省略)と、側方支柱30と、爪部32と、フィン部(水切り用突起)34とを備える。
【0022】
基板カセット1の各構成要素の材料としては、液体に対して耐性を有する種々の材料が用いられる。例えば、液体が酸性溶液である場合、基板カセット1の各構成要素の材料としては、PTFE(Poly Tetra Fluoro Etylene)、PVDF(PolyVinylidene DiFluoride)またはPP(polypropylene)等の樹脂材料が挙げられる。基板に対する機械的ダメージを抑えるため、心棒としてSUS(Steel Use Stainless)またはチタン合金などの金属材料を用いて、外周部を樹脂材料で覆ってもよい。液体がアルカリ溶液である場合、基板カセット1の各構成要素の材料としては、SUSまたはチタン合金等の金属材料、PTFE、PVDFまたはPP等の樹脂材料が挙げられる。上述同様に、機械的強度を上げるため、心棒としてSUSまたはチタン合金などの金属材料を用いて、外周部を樹脂材料で覆ってもよい。
【0023】
正面板11は、基板カセット1の正面側に配置されており、背面板12は、基板カセット1の背面側に配置されている。正面板11と背面板12とは、複数の半導体基板Wを挟み込むように、対向している。
【0024】
下方支柱21は、基板カセット1の下部に配置されており、複数の半導体基板Wの下端部を支持する。下方支柱21としては、特に限定されず、例えば、液体の対流を妨げないこと、および液体はけ等を考慮して、正面板11から背面板12へ向けて、すなわち半導体基板Wの配列方向に、延びる柱状部材が挙げられる。
【0025】
上方支柱(図示省略)は、基板カセット1の上部に配置されており、例えば基板カセット1を液体に浸漬する際に、複数の半導体基板Wの上端部を支持する。上方支柱としては、特に限定されず、例えば、液体の対流を妨げないこと等を考慮して、正面板11から背面板12へ向けて、すなわち半導体基板Wの配列方向に、延びる柱状部材が挙げられる。また、上方支柱は、基板カセット1に複数の半導体基板Wをセットおよびリセットするために、着脱可能または開閉可能であってもよい。
【0026】
側方支柱30は、基板カセット1の側部に配置されており、複数の半導体基板Wの側端部を支持する。側方支柱30としては、特に限定されず、例えば、液体の対流を妨げないこと、液体はけ、および乾燥風を妨げないこと等を考慮して、正面板11から背面板12へ向けて、すなわち半導体基板Wの配列方向に、延びる柱状部材が挙げられる。側方支柱30の数は特に限定されないが、例えば、2対の側方各々において、上下に離間して2つの側方支柱30が配置されていてもよい。側方支柱30は、複数の爪部32と、フィン部(水切り用突起)34とを備える。
【0027】
複数の爪部32は、側方支柱30の内側部において側方支柱30の延在方向(半導体基板Wの配列方向)に、等間隔に離間して配置されている。これにより、複数の爪部32は、複数の半導体基板Wが離間した状態となるように、複数の半導体基板Wの各々を支持する。爪部32としては、特に限定されず、例えば、側方支柱30の内側部から突起し、半導体基板Wに対する接触面積が小さい形状であると好ましい。
【0028】
フィン部(水切り用突起)34は、側方支柱30の下部に配置されており、側方支柱30の延在方向(半導体基板Wの配列方向)に延在している。フィン部34では、側方支柱30の延在方向と交差する断面形状が下向きに突起する鋭角な逆三角形状である。
【0029】
これにより、フィン部(水切り用突起)34は、基板カセット1が液体から取り出されるときに、より具体的にはフィン部(水切り用突起)34が液体の表面から取り出されるときに、面接触から点接触となり、表面張力による水滴の付着を低減することができる。
【0030】
また、フィン部(水切り用突起)34の表面は、疎水性を有する。例えば、フィン部34の材料として、疎水性を有する材料が用いられてもよいし、フィン部34の表面に、疎水性を有するフィルムを貼付する等の加工が施されてもよい。
【0031】
これにより、フィン部(水切り用突起)34の表面において、液体をはじき、形成された水滴が滑り落ちやすくなる。そのため、フィン部(水切り用突起)34の表面に付着する水滴を低減することができる。
【0032】
なお、側方支柱30の下部の表面も、疎水性を有していてもよい。例えば、側方支柱30の下部の表面まで、疎水性を有するフィルムを貼付する等の加工が施されていてもよい。これにより、側方支柱30の下部の表面において、液体をはじき、形成された水滴が滑り落ちやすくなる。そのため、側方支柱30の下部の表面に付着する水滴を低減することができる。
【0033】
更に、側方支柱30の側部および上部は、親水性を有する。更に、爪部32は、親水性を有する。例えば、側方支柱30および爪部32の材料として、親水性を有する材料が用いられてもよいし、側方支柱30の側部および上部の表面、および、爪部32の表面に、親水性を有するフィルムを貼付する等の加工が施されてもよい。
【0034】
これにより、側方支柱30の側部および上部の表面、および、爪部32の表面に液体が馴染み、水滴が形成され難くなる。そのため、側方支柱30の側部および上部の表面、および、爪部32の表面に付着する水滴を低減することができる。
【0035】
すなわち、1つの側方支柱30の上下で、疎水性と親水性とが異なる。
【0036】
図4は、図2に示す基板カセットにおけるフィン部(水切り用突起)の拡大図であり、図5は、図4に示すフィン部(水切り用突起)近傍における乾燥風および処理液の流れを示す図である。
【0037】
図4に示すように、フィン部(水切り用突起)34の表面は、凹凸構造を有する。例えば、フィン部34の表面に凹凸加工が施されていてもよいし、フィン部34の表面に、凹凸構造を有するフィルムを貼付する等の加工が施されてもよい。
【0038】
これにより、図5に示すように、フィン部(水切り用突起)34の後方へ、乾燥時の乾燥風の回り込み、および、ウェットプロセス時の処理液の回り込みが生じる。例えば、ゴルフボールにおけるディンプルにより、ゴルフボール後方への空気の回り込みが増加し、空気の流れが整えられることが知られている。
【0039】
ここで、ウェットプロセスにおいて、基板カセット1を純水(リンス溶液)から取り出した後、基板カセット1に収容された状態で、半導体基板Wの乾燥を行う。例えば、基板カセット1の側面側から複数の半導体基板Wに乾燥風を当てることによって、複数の半導体基板Wの表面の水滴を除去する。
【0040】
このとき、側方支柱30に水滴が付着していると、この水滴が、乾燥風によって飛散し、半導体基板Wの表面に付着して残ってしまう。この乾燥時の水滴残りに起因して、半導体基板Wの表面にいわゆるウオーターマーク(乾燥シミ)が形成される乾燥不良が生じる。ウオーターマーク(乾燥シミ)としては、例えば、粒状のシリコン酸化膜(シリコン基板と水と酸素が反応してできたケイ酸塩Si(OH))である。ウオーターマーク(乾燥シミ)は、太陽電池セルの暗点となるため、太陽電池セルの性能低下および歩留まり低下の要因となる。
【0041】
この点に関し、本実施形態の基板カセット1によれば、側方支柱30の下部に、逆三角形状のフィン部(水切り用突起)34が配置されている。これにより、基板カセット1が純水(リンス溶液)から取り出されるときに、側方支柱30の下部に付着する水滴を低減することができる。そのため、側方支柱30に付着する水滴に起因する乾燥時の半導体基板Wの水滴残りであって、この乾燥時の半導体基板Wの水滴残りに起因する半導体基板Wの表面のウオーターマーク(乾燥シミ)、すなわち半導体基板Wの乾燥不良を低減することができる。その結果、太陽電池セルの性能低下および歩留まり低下を抑制することができる。
【0042】
更に、本実施形態の基板カセット1によれば、フィン部(水切り用突起)34の表面は、疎水性を有する。これにより、フィン部(水切り用突起)34に付着する水滴をより低減することができる。そのため、フィン部(水切り用突起)34に付着する水滴に起因する乾燥時の半導体基板Wの水滴残りであって、この乾燥時の半導体基板Wの水滴残りに起因する半導体基板Wの表面のウオーターマーク(乾燥シミ)、すなわち半導体基板Wの乾燥不良を低減することができる。その結果、太陽電池セルの性能低下および歩留まり低下を抑制することができる。
【0043】
更に、本実施形態の基板カセット1によれば、側方支柱30の側部および上部、および爪部32は、親水性を有する。これにより、側方支柱30の側部および上部、および、爪部32に付着する水滴を低減することができる。そのため、側方支柱30の側部および上部、および、爪部32に付着する水滴に起因する乾燥時の半導体基板Wの水滴残りであって、この乾燥時の半導体基板Wの水滴残りに起因する半導体基板Wの表面のウオーターマーク(乾燥シミ)、すなわち半導体基板Wの乾燥不良を低減することができる。その結果、太陽電池セルの性能低下および歩留まり低下を抑制することができる。
【0044】
ここで、フィン部(水切り用突起)34は、乾燥時の乾燥風を妨げる可能性があり、これにより、基板の表面に水滴が残ることが予想される。また、フィン部(水切り用突起)34は、ウェットプロセス時の処理液の循環を妨げる可能性があり、これにより、ウェットプロセスの処理ムラが生じることが予想される。
【0045】
この点に関し、本実施形態の基板カセット1によれば、フィン部(水切り用突起)34の表面は、凹凸構造を有する。これにより、上述したように、図5に示すように、フィン部(水切り用突起)34の後方へ、乾燥時の乾燥風の回り込み、および、ウェットプロセス時の処理液の回り込みが生じる。
【0046】
そのため、フィン部(水切り用突起)34により、乾燥時に乾燥風が妨げられることに起因する乾燥時の半導体基板Wの水滴残りであって、この乾燥時の半導体基板Wの水滴残りに起因する半導体基板Wの表面のウオーターマーク(乾燥シミ)、すなわち半導体基板Wの乾燥不良を低減することができる。また、フィン部(水切り用突起)34により、ウェットプロセス時に処理液の循環が妨げられることに起因するウェットプロセスの処理ムラを低減することができる。その結果、太陽電池セルの性能低下および歩留まり低下を抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、基板カセットの側方支柱の特徴について説明が、本発明の側方支柱の特徴は下方支柱にも適用可能である。すなわち、
・下方支柱の上部には、基板の配列方向に配置され、下方支柱の上部から突起し、複数の基板が離間した状態となるように複数の基板の各々を支持するための複数の爪部が形成されており、
・下方支柱の下部には、基板の配列方向に延在し、基板の配列方向と交差する断面形状が下向きに突起する逆三角形状であるフィン部(水切り用突起)が形成されており、
・フィン部(水切り用突起)の表面は、疎水性を有し、
・下方支柱の側部および上部は、親水性を有し、
・複数の爪部は、親水性を有し、
・フィン部(水切り用突起)の表面は、凹凸構造を有していてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、複数の半導体基板(wafer:薄板)を同時に液体に浸漬処理するための基板カセットを例示した。しかし、本発明の基板カセットはこれに限定されず、種々の薄い基板(wafer:薄板)を同時に液体に浸漬処理する用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 基板カセット
11 正面板
12 背面板
21 下方支柱
30 側方支柱
32 爪部
34 フィン部(水切り用突起)
W 半導体基板(基板)
図1
図2
図3
図4
図5