(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250115BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20250115BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250115BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20250115BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
G09F9/00 313
H10K50/86
(21)【出願番号】P 2021037679
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】出▲崎▼ 光
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-259694(JP,A)
【文献】特開2021-009360(JP,A)
【文献】特開2021-002026(JP,A)
【文献】特開2010-102288(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137464(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 59/10
H05B 33/02
H10K 50/10
B32B 7/023
G09F 9/00
H10K 50/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性画像表示層と、
前記光反射性画像表示層の画像表示面上に積層された楕円偏光板と、
を備え、
前記楕円偏光板は、偏光子、λ/2部およびλ/4部を有し、
前記偏光子、前記λ/2部および前記λ/4部は、前記光反射性画像表示層側から前記λ/4部、前記λ/2部および前記偏光子の順に配置されており、
前記λ/2部は、第1遅相子要素、第2遅相子要素、第2遅相子要素および第1遅相子要素が、前記第1遅相子要素、前記第2遅相子要素、前記第2遅相子要素および前記第1遅相子要素の順に積層された積層体であり、
前記第1遅相子要素は逆波長分散性を有しており略λ/4の大きさの面内位相差を与える要素であり、
前記第2遅相子要素は、厚み方向位相差を与える要素であり、
前記λ/4部は、前記光反射性画像表示層側から第3遅相子要素および第1遅相子要素が、前記第3遅相子要素および前記第1遅相子要素の順に積層された積層体であり、
前記λ/4部が有する前記第1遅相子要素は、逆波長分散性を有しており略λ/4の大きさの面内位相差を与える要素であり、
前記第3遅相子要素は、厚み方向位相差を与える要素であり、
前記光反射性画像表示層の厚み方向に対する傾斜角45°の投影面での波長550nmにおける前記光反射性画像表示層の面内リタデーションをReM45とし、前記λ/4部
が有する前記第1遅相子要素の波長550nmにおける面内リタデーションをReoQとし、前記光反射性画像表示層のρ係数を式(A)で表した場合、前記λ/4部のNz係数と、前記ρ係数とは式(B)に示した関係を満た
し、
前記Nz係数は、前記λ/4部が有する前記第1遅相子要素の波長550nmにおける厚み方向リタデーションをRethQとし、前記第3遅相子要素の波長550nmにおける厚み方向リタデーションをRethZBとし、前記第3遅相子要素の波長550nmにおける面内リタデーションをReoZBとしたとき、式(C)で表される、
表示装置。
ρ=ReM45/ReoQ ・・・(A)
4.5ρ-0.160<Nz<4.5ρ+0.955 ・・・(B)
Nz={(RethQ+RethZB)/(ReoQ+ReoZB)}+0.5・・・(C)
【請求項2】
前記λ/2部が有する前記第1遅相子要素は、波長550nmの面内位相差として略λ/4を与えるポジティブAプレートである、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2遅相子要素は、厚み方向位相差を与えるポジティブCプレートである、
請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記λ/4部が有する前記第1遅相子要素は、略λ/4の大きさの位相差を波長550nmの面内位相差として与えるポジティブAプレートであり、
前記第3遅相子要素は、厚み方向位相差を与えるポジティブCプレートまたはネガティブCプレートである、
請求項
1~3の何れか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の従来技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、λ/2部とλ/4部とが積層されたが開示されている。特許文献1に記載の光学積層体は、可視光全域でλ/4に近い位相差を持つため、直線偏光子と組み合わせると可視光全域で97%以上の楕円率を持つ楕円偏光板として機能する。これをOLED表示装置等の光反射層上に配置すれば、可視光領域の広い範囲で外光反射を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の上記光学積層体は視野角補償が不十分である。そのため、特許文献1に記載の光学積層体の性能は表示装置を略正面から視認した場合に限られ、傾斜して視認した際には外光反射率が増加し、表示性能が低下するという課題があった。
【0005】
本発明は、傾斜させて画像を視認する場合も表示性能の維持が可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る表示装置は、 光反射性画像表示層と、上記光反射性画像表示層の画像表示面上に積層された楕円偏光板と、を備え、上記楕円偏光板は、偏光子、λ/2部およびλ/4部を有し、上記偏光子、上記λ/2部および上記λ/4部は、上記光反射性画像表示層側から上記λ/4部、上記λ/2部および上記偏光子の順に配置されており、 上記λ/2部は、第1遅相子要素、第2遅相子要素、第2遅相子要素および第1遅相子要素が、上記第1遅相子要素、上記第2遅相子要素、上記第2遅相子要素および上記第1遅相子要素の順に積層された積層体であり、上記第1遅相子要素は逆波長分散性を有しており略λ/4の大きさの面内位相差を与える要素であり、上記第2遅相子要素は、厚み方向位相差を与える要素であり、上記光反射性画像表示層の厚み方向に対する傾斜角45°の投影面での波長550nmにおける上記光反射性画像表示層の面内リタデーションをReM45とし、上記λ/4部の波長550nmにおける面内リタデーションをReoQとし、上記光反射性画像表示層のρ係数を式(A)で表した場合、上記λ/4部のNz係数と、上記ρ係数とは式(B)に示した関係を満たす。
表示装置。
ρ=ReM45/ReoQ ・・・(A)
4.5ρ-0.160<Nz<4.5ρ+0.955 ・・・(B)
【0007】
上記表示装置では、上記λ/4部のNz係数と、上記ρ係数とは式(B)に示した関係を満たすことから、傾斜させて画像を視認する場合も表示性能を維持可能である。
【0008】
上記第1遅相子要素は、波長550nmの面内位相差として略λ/4を与えるポジティブAプレートでもよい。
【0009】
上記第2遅相子要素は、厚み方向位相差を与えるポジティブCプレートでもよい。
【0010】
上記λ/4部は、上記光反射性画像表示層側から第3遅相子要素および第1遅相子要素が、上記第3遅相子要素および上記第1遅相子要素の順に積層された積層体であり、上記λ/4部が有する上記第1遅相子要素は、逆波長分散性を有しており略λ/4の大きさの面内位相差を与える要素であり、上記第3遅相子要素は、厚み方向位相差を与えるポジティブCプレートであってもよい。
【0011】
上記λ/4部が有する上記第1遅相子要素は、略λ/4の大きさの位相差を波長550nmの面内位相差として与えるポジティブAプレートであり、上記第3遅相子要素は、厚み方向位相差を与えるポジティブCプレートまたはネガティブCプレートであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、傾斜させて画像を視認する場合も表示性能の維持が可能な表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光学積層体を備えた表示装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、λ/2部の遅相軸と、λ/4部の遅相軸と、偏光子の透過軸との配置関係を示す模式図である。
【
図3】
図3は、画像表示層のρ係数を説明するための図面である。
【
図4】
図4は、実施例1~9および比較例1~6の結果を示す図表である。
【
図5】
図5は、
図4におけるρ係数に対してNz係数をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。まず、本開示で使用する用語について説明する。
【0015】
[遅相子]
本開示における遅相子は、複屈折性を有する光学的媒質を意味する。複屈折性とは、直交する3方向のうち、少なくとも2方向の屈折率の差が0.02を超えて異なる光学的性質を指す。
【0016】
[遅相子の屈折率]
遅相子における上記直交する3方向の屈折率を、nx、nyおよびnzと称す。nxは、遅相子が形成する屈折率楕円体において、遅相子平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、遅相子が形成する屈折率楕円体において、遅相子平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、遅相子が形成する屈折率楕円体において、遅相子平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。
【0017】
[遅相子の面内リタデーションと厚み方向リタデーション]
リタデーションReは遅相子の異方性を表す物理量である。リタデーションReには、面内リタデーションReoと厚み方向リタデーションRethがある。
波長λ(nm)における面内リタデーションReo(λ)は式(1)で表される。式(1)中のdは遅相子の厚さ(nm)を表す。
Reo(λ)=(nx―ny)×d ・・・(1)
波長λ(nm)における厚み方向リタデーションReth(λ)は式(2)で表される。式(2)中のdは、式(1)中のdと同様に遅相子の厚み(nm)である。
Reth(λ)= ―{nz―(nx+ny)/2}×d ・・・(2)
面内リタデーションReoと厚み方向リタデーションRethは遅相子の厚みdを変更することで、調整することができる。
【0018】
[ポジティブAプレート]
ポジティブAプレートは各方向の屈折率が式(3)の関係を満たす遅相子である。断らない場合、ポジティブAプレートの遅相軸はnxに平行であり、ny≒nzとは、nyとnzの差が0.02未満の状態を表す。
nx>ny≒nz ・・・・(3)
【0019】
ポジティブAプレートはλ/4板として作用することができる。λ/4板は波長550nmの面内位相差が略λ/4であることができる。面内位相差が略λ/4であるλ/4板の波長550nmにおける面内リタデーションReo(550)は、式(4)の範囲であることができる。
92nm≦Reo(550)≦183nm ・・・(4)
【0020】
λ/4板のReo(550)の好適な値の範囲は、好ましくは100nm以上160nm以下、さらに好ましくは110nm以上150nm以下である。波長λ(nm)におけるポジティブAプレートの面内リタデーションReo(λ)と厚み方向リタデーションReth(λ)には式(1)、式(2)、式(3)から導かれる式(5)の関係がある。
Reth(λ)=0.5×Reo(λ) ・・・(5)
【0021】
λ/4板の波長550nmにおける厚み方向リタデーションReth(550)は式(6)の範囲であることができる。
46nm≦Reth(550)≦92nm ・・・(6)
【0022】
Reth(550)の好適な値の範囲は、好ましくは50nm以上80nm以下、さらに好ましくは55nm以上75nm以下である。
【0023】
[ポジティブCプレート]
ポジティブCプレートは、各方向の屈折率が式(7)の関係を満たす遅相子である。断らない場合、遅相軸はnzに平行であり、nx≒nyとは、nxとnyの差が0.02未満の状態を表す。
nx≒ny<nz ・・・ (7)
【0024】
[ネガティブCプレート]
ネガティブCプレートは、各方向の屈折率が式(8)の関係を満たす遅相子である。断らない場合、遅相軸はnx軸とny軸が張る平面内にあり、進層軸はnz軸に平行である。nx≒nyとは、nxとnyの差が0.02未満の状態を表す。
nx≒ny>nz ・・・ (8)
【0025】
[波長分散性]
波長とリタデーションの分散関係を単に波長分散性とも称す。式(9)および式(10)を満たす遅相子を逆波長分散性であるといい、単に逆分散性とも称す。
Re(450)/Re(550)≦1.00 ・・・ (9)
1.00≦Re(650)/Re(550) ・・・ (10)
【0026】
本開示における遅相子のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.90以下であり、更に好ましくは0.85以下であり、通常は0.60以上、好ましくは0.70以上である。本開示における遅相子のRe(650)/Re(550)は、好ましくは1.02以上であり、さらに好ましくは1.10以上であり、通常は1.30以下であり、好ましくは1.20以下である。
【0027】
式(11)、式(12)を満たす遅相子を正波長分散性であるといい、単に正分散性であるともいう。
Re(450)/Re(550)>1.00 ・・・ (11)
1.00>Re(650)/Re(550) ・・・ (12)
【0028】
[遅相子積層体]
複数の遅相子が積層された光学積層体を遅相子積層体と称す場合もある。
【0029】
[Nz係数]
遅相子のNz係数を式(13)であらわすことができる。なお、波長λ(nm)(たとえば波長550nm)における、遅相子積層体全体の面内リタデーションをReoG、遅相子積層体全体の厚み方向リタデーションをRethGとする。
Nz係数 ≡(RethG/ReoG)+0.5 ・・・ (13)
【0030】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0031】
図1は、一実施形態に係る表示装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示した表示装置100は、光反射性画像表示層10(以下、単に「画像表示層10」と称す)と、楕円偏光板20とを有する。本開示において、楕円偏光板は、円偏光板の概念も含む。
【0032】
[画像表示層]
画像表示層10は、内部で画像を形成し、画像表示面10aに画像を表示する。画像表示層10は、画像を形成するための素子構造などを含む。そのため、上記素子構造に含まれる配線部用の金属電極、サブ画素の共振器構造用高屈折率層、ブラックマトリクスなどは、光を反射する反射部として機能する。よって、画像表示層10は、楕円偏光板20側から表示装置100に入射した光を反射する光反射性を有し、表示装置100において光反射層として機能する。このような光反射層としての画像表示層10に含まれる上記配線部用の金属電極、サブ画素の共振器構造用高屈折率層、ブラックマトリクスなどよって反射された光が一体となった反射光を、本実施形態では、「外光反射光」と称す場合もある。画像表示層10は、撓むことができる可撓性を有するものでもよいし、撓むことができない剛直性を有するものであってもよい。
【0033】
画像表示層10は、画像表示面10aに画像を形成するように構成されていれば、層構成及び材料などは限定されない。画像表示層10は、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、チタン、アルミニウム等の金属、それらの合金等を用いた電極及び配線から形成される部分(又は層)、樹脂フィルム、バンク材、発光素子などの誘電体部分、及びその他の層などの多重積層体であり得る。
【0034】
画像表示層10として、例えば、フラットパネル表示装置である。フラットパネル表示装置の例は、薄型(又はパネル状)の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、「OLED表示装置」ともいう)である。画像表示層10として例示する表示装置は、画像表示面上に、光学補償するための部材を含まない状態の装置である。
【0035】
画像表示層10がOLED表示装置である場合、典型的には、OLED表示装置が備える電極(たとえば金属製電極)が上記反射部である。OLED表示装置は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された薄膜構造体を有する。この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに、他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して自己発光を行う。有機発光材料層を挟む2つの電極のうち画像表示面10a側の電極は有機発光材料層からの光を透過する機能を有する一方、他方の電極は有機発光材料層からの光を画像表示面10aに向けて反射する機能を有する。したがって、上記他方の電極が、典型的には、OLED表示装置における反射部として機能する。
【0036】
OLED表示装置は、バックライトを必要とする液晶表示装置等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有する。
【0037】
楕円偏光板20は、画像表示層10上に積層されている。表示装置100において、楕円偏光板20側から画像が視認される。よって、楕円偏光板20を基準にして画像表示層10と反対側を「視認側」とも称す。楕円偏光板20は、偏光子31と光学積層体40とを有する。
図1に示したように、楕円偏光板20では、視認側から偏光子31および光学積層体40がこの順に配置されている。
【0038】
偏光子31は、光学積層体40上に積層されている。偏光子31は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型のフィルムであることができる。偏光子31としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたフィルムを好適に用いることができる。偏光子31は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液等の架橋液で処理する工程;及び、架橋液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
【0039】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を含む。
【0040】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等においても同様である。
【0041】
偏光子31の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは13μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは8μm以下である。偏光子31の厚みは、通常2μm以上であり、3μm以上であることが好ましい。
【0042】
偏光子31としては、例えば特開2016-170368号公報に記載されるように、液晶化合物が重合した硬化膜中に、二色性色素が配向したものを使用してもよい。二色性色素としては、波長380~800nmの範囲内に吸収を有するものを用いることができ、有機染料を用いることが好ましい。二色性色素として、例えば、アゾ化合物が挙げられる。液晶化合物は、配向したまま重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有することができる。また、WO2011/024891に記載されるように、液晶性を有する二色性色素から偏光フィルムを形成してもよい。
【0043】
偏光子31の視感度補正偏光度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。上限値は、特に限定されないが、99.9999%以下である。また、偏光フィルムの視感度補正単体透過率は、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。上限値は、特に限定されないが、49.9%以下である。積層体が、このような性能の偏光子31を備えることで、反射光が漏れにくくなり、色付きを目立たなくすることができる。
【0044】
図1に示したように、偏光子31の片面または両面には、保護フィルム32が設けられていてもよい。偏光子31に保護フィルム32が積層された積層体を直線偏光板30と称す場合もある。
【0045】
保護フィルム32は、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂であることができる。保護フィルム32は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等からなるフィルムであることができる。
【0046】
保護フィルム32の位相差値を、適宜に好適な値に制御してもよい。使用者が偏光サングラス等を着用した場合の画面の視認性を向上させるために、波長550nmにおける面内位相差値を70~140nmとしてもよい。
【0047】
保護フィルム32の厚みは通常1~100μmであるが、強度や取扱性等の観点から5~60μmであることが好ましく、10~55μmであることがより好ましく、15~40μmであることがさらに好ましい。
【0048】
偏光子31の両面に保護フィルム32が貼合される場合、2つの保護フィルム32は、同種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよいし、異種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。また、2つの保護フィルム32は、厚みが同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、2つの保護フィルム32は、同じ位相差特性を有していてもよいし、異なる位相差特性を有していてもよい。
【0049】
上述のように、保護フィルム32の少なくともいずれか一方は、その外面(偏光子31とは反対側の面)に、ハードコート層、防眩層、光拡散層、反射防止層、低屈折率層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を備えるものであってもよい。なお、保護フィルム32の厚みは、表面処理層の厚みを含んだものである。
【0050】
保護フィルム32は、例えば接着剤層または粘着剤層を介して偏光子31に貼合することができる。接着剤層を形成する接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。粘着剤層としては後述のものが使用できる。
【0051】
水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等が挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる水系接着剤が好適に用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体、又はそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体等を用いることができる。水系接着剤は、アルデヒド化合物(グリオキザール等)、エポキシ化合物、メラミン系化合物、メチロール化合物、イソシアネート化合物、アミン化合物、多価金属塩等の架橋剤を含むことができる。
【0052】
水系接着剤を使用する場合は、偏光子31と保護フィルム32とを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するための乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥工程後、例えば20~45℃の温度で養生する養生工程を設けてもよい。
【0053】
上記活性エネルギー線硬化性接着剤とは、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含有する接着剤であり、好ましくは紫外線硬化性接着剤である。
【0054】
上記硬化性化合物は、カチオン重合性の硬化性化合物やラジカル重合性の硬化性化合物であることができる。カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物(分子内に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物)や、オキセタン系化合物(分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有する化合物)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)や、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。カチオン重合性の硬化性化合物とラジカル重合性の硬化性化合物とを併用してもよい。活性エネルギー線硬化性接着剤は通常、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤及び/又はラジカル重合開始剤をさらに含む。
【0055】
偏光子31と保護フィルム32とを貼合するにあたっては、接着性を高めるために、これらの少なくともいずれか一方の貼合面に表面活性化処理を施してもよい。表面活性化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、放電処理(グロー放電処理等)、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、電離活性線処理(紫外線処理、電子線処理等)のような乾式処理;水やアセトン等の溶媒を用いた超音波処理、ケン化処理、アンカーコート処理のような湿式処理を挙げることができる。これらの表面活性化処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。
【0056】
偏光子31の両面に保護フィルム32が貼合される場合においてこれらの保護フィルム32を貼合するための接着剤は、同種の接着剤であってもよいし異種の接着剤であってもよい。
【0057】
光学積層体40は、表示装置100において、偏光子31(
図1に示した形態では、直線偏光板30)と画像表示層10との間に配置されている。光学積層体40は、λ/2部41と、λ/4部42とを有する。λ/2部41およびλ/4部42は、視認側からλ/2部41およびλ/4部42の順に配置されている。本実施形態において、断らない限り、λ/2部41およびλ/4部の遅相軸は、nxに平行である。
【0058】
図2は、λ/2部41の遅相軸41aと、λ/4部42の遅相軸42aと、偏光子31の透過軸31aとの配置関係を示す模式図である。λ/2部41およびλ/4部42は、
図2に示したように、λ/2部41の遅相軸41aとλ/4部42の遅相軸42aとの間の角度θ1が略60°であるように配置されている。略60°は、60°±5°の範囲を意味する。λ/2部41は、偏光子31に対して、λ/2部41の遅相軸41aと偏光子31の透過軸31aとのなす角度が略15°であるように配置されていることが好ましい。略15°とは、15°±5°の範囲を意味する。この場合、λ/4部42は、偏光子31に対して、λ/4部42の遅相軸42aと偏光子31の透過軸31aとのなす角度θ3が略75°であるように配置されていることが好ましい。略75°とは、75°±5°の範囲を意味する。
【0059】
λ/2部41は、入射する波長λの光に対してλ/2の位相差を与える機能を有する。λ/2部41のNz係数の値は略0.5であることが望ましい。Nz係数の値が略0.5であるとは、Nz係数が0.5±0.1の範囲である。λ/2部41のNz係数の好適な範囲は0.45以上0.55以下である。断らない限り、λ/2部41の遅相軸は、nxに平行である。
【0060】
λ/2部41は、2つの遅相子要素(第1遅相子要素)Qと、2つの遅相子要素(第2遅相子要素)ZAを有する。λ/2部41は、2つの遅相子要素Qと、2つの遅相子要素ZAが、
図1に示したように、遅相子要素Q、遅相子要素ZA、遅相子要素ZAおよび遅相子要素Qの順に積層された積層体である。
【0061】
[遅相子要素Q]
遅相子要素Qは、逆分散性を有し、入射する波長λの光に対して略λ/4の大きさの面内位相差を付与する位相差フィルムである。略λ/4とは、波長λの6分の1から3分の1の範囲を意味する。遅相子要素Qは、λ/4板であり得る。遅相子要素Qは、波長550nmの面内位相差が略λ/4であるポジティブAプレートでもよい。遅相子要素Qは、重合性液晶化合物を硬化して得られてもよく、溶融樹脂を成形またはさらに延伸して得られてもよい。
【0062】
[遅相子要素ZA]
遅相子要素ZAは、入射光に対して厚み方向位相差を付与する位相差フィルムである。遅相子要素ZAは、ポジティブCプレートであることができる。上記ポジティブCプレートとは、厚み方向リタデーションReth(550)が式(14)を満たすポジティブCプレートを指す。
-30nm≧Reth(550)≧-120nm ・・・ (14)
【0063】
遅相子要素ZAのReth(550)の好適な値の範囲は、好ましくは-100nm以上-40nm以下、さらに好ましくは-90nm以上-50nm以下である。遅相子要素ZAは、重合性液晶化合物を硬化して得られてもよく、溶融樹脂を成形またはさらに延伸して得られてもよい。遅相子要素ZAの面内リタデーションReoZA(550)は実質的に0であることが望ましい。実質的に0であるとは0nm±5の範囲を示す。
【0064】
遅相子要素Qおよび遅相子要素ZAが、重合性液晶を硬化して得られる層である場合、遅相子要素Qおよび遅相子要素ZAは、基材に設けられた配向膜上に形成される。上記基材は、配向膜を支持する機能を有し、長尺に形成されている基材であってもよい。この基材は、離型性支持体として機能し、転写用の位相差フィルムを支持することができる。さらに、その表面が剥離可能な程度の接着力を有するものが好ましい。基材としては、上記保護フィルム32の材料として例示をした樹脂フィルムが挙げられる。
【0065】
基材の厚みとしては、特に限定されないが、例えば20μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましい。基材の厚みが20μm以上であると、強度が付与される。一方で、厚みが200μm以下であると、基材を裁断加工して枚葉の基材とするにあたり、加工屑の増加、裁断刃の磨耗を抑制できる。
【0066】
基材は、種々のブロッキング防止処理が施されていてもよい。ブロッキング防止処理としては、例えば、易接着処理、フィラー等を練り込ませる処理、エンボス加工(ナーリング処理)等が挙げられる。このようなブロッキング防止処理を基材に対して施すことによって、基材を巻き取る際の基材同士の張り付き、いわゆるブロッキングを効果的に防止することができ、生産性高く光学フィルムを製造することが可能となる。
【0067】
重合性液晶化合物が硬化した層は、配向膜を介して基材上に形成される。すなわち、基材、配向膜の順で積層され、重合性液晶化合物が硬化した層は前記配向膜上に積層される。
【0068】
配向膜は、垂直配向膜に限らず、重合性液晶化合物の分子軸を水平配向させる配向膜であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を傾斜配向させる配向膜であってもよい。遅相子要素Qを作製する場合には、水平配向膜を使用することができ、遅相子要素ZAを作製する場合には、垂直配向膜を使用することができる。
【0069】
配向膜としては、後述する重合性液晶化合物を含む組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜及び表面に凹凸パターンや複数の溝を形成し配向させるグルブ配向膜が挙げられる。配向膜の厚みは、通常10nm~10000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10nm~200nmの範囲である。
【0070】
配向膜に用いる樹脂としては、公知の配向膜の材料として用いられる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来公知の単官能又は多官能の(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤下で硬化させた硬化物等を用いることができる。具体的に、(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、ウレタンアクリレート等を例示することができる。なお、樹脂としては、これらの1種類であってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0071】
本実施形態で使用される重合性液晶化合物の種類については、特に限定されないものの、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらに、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。なお、高分子とは、一般に重合度が100以上のものを言う(高分子物理・相転移ダイナミクス、土井正男著、2頁、岩波書店、1992)。
【0072】
本実施形態では、何れの重合性液晶化合物を用いることもできる。さらに、2種以上の棒状液晶化合物や、2種以上の円盤状液晶化合物、又は棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0073】
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、又は、特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好適に用いることができる。円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]、又は、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好適に用いることができる。
【0074】
重合性液晶化合物は、2種類以上を併用してもよい。その場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有している。すなわち、上記重合性液晶化合物が硬化した層は、重合性基を有する液晶化合物が重合によって固定されて形成された層であることが好ましい。この場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
【0075】
重合性液晶化合物は、重合反応をし得る重合性基を有する。重合性基としては、例えば、重合性エチレン性不飽和基や環重合性基などの付加重合反応が可能な官能基が好ましい。より具体的には、重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などを挙げることができる。その中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基及びアクリロイル基の両者を包含する概念である。
【0076】
重合性液晶化合物が硬化した層は、重合性液晶化合物を含む組成物を、例えば配向膜上に塗工することによって形成することができる。上記組成物には、上述した重合性液晶化合物以外の成分が含まれていてもよい。例えば、上記組成物には、重合開始剤が含まれていることが好ましい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が選択される。例えば、光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせなどが挙げられる。重合開始剤の使用量は、前記塗工液中の全固形分に対して、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0077】
上記組成物には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、重合性モノマーが含まれていてもよい。重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられる。その中でも、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。
【0078】
重合性モノマーとしては、上述した重合性液晶化合物と共重合することができるものが好ましい。具体的な重合性モノマーとしては、例えば、特開2002-296423号公報中の段落[0018]~[0020]に記載のものが挙げられる。重合性モノマーの使用量は、重合性液晶化合物の全質量に対して、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましい。
【0079】
上記組成物には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられる。その中でも特に、フッ素系化合物が好ましい。具体的な界面活性剤としては、例えば、特開2001-330725号公報中の段落[0028]~[0056]に記載の化合物、特願2003-295212号明細書中の段落[0069]~[0126]に記載の化合物が挙げられる。
【0080】
上記組成物には、溶媒が含まれていてもよく、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、アミド(例、N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が挙げられる。その中でも、アルキルハライド、ケトンが好ましい。また、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0081】
上記組成物には、偏光フィルム界面側垂直配向剤、空気界面側垂直配向剤などの垂直配向促進剤、並びに、偏光フィルム界面側水平配向剤、空気界面側水平配向剤などの水平配向促進剤といった各種配向剤が含まれていてもよい。さらに、前記組成物には、上記成分以外にも、密着改良剤、可塑剤、ポリマーなどが含まれていてもよい。
【0082】
λ/2部41の遅相子要素Qの遅相軸の方向は、λ/2部41の遅相軸41aの方向と略一致していてもよい。略一致とは、2つの遅相軸の方向が±5°程度ズレていてもよいことを意味する(以下、同様)。
【0083】
λ/2部41が有する遅相子要素Qは、全体として遅相子要素Qとして機能する複数の位相差フィルムの積層体でもよい。遅相子要素Qを構成する複数の位相差フィルムの遅相軸の方向は、遅相軸41aの方向に略一致している。同様に、λ/2部41が有する遅相子要素Zは、全体として遅相子要素Zとして機能する複数の位相差フィルムの積層体でもよい。
【0084】
λ/4部42は、遅相子要素Qを有する。λ/4部42が有する遅相子要素Qは、λ/2部41が有する遅相子要素Qと同じ特性を有する要素であるため、説明を省略する。λ/4部42は、遅相子要素(第3遅相子要素)ZBを有してもよい。この場合、λ/4部42は、遅相子要素Qおよび遅相子要素ZBが、λ/2部41側から遅相子要素Qおよび遅相子要素ZBの順に積層された積層体である。断らない限り、λ/4部42が遅相子要素ZBを有する形態を説明する。λ/4部42が有する遅相子要素Qの遅相軸が、λ/4部42の遅相軸に相当する。よって、λ/4部42が有する遅相子要素Qは、その遅相軸とλ/2部41の遅相軸41aとの間の角度が略60°となるように、λ/2部41に対して配置されている。
【0085】
[遅相子要素ZB]
遅相子要素ZBは、入射する波長λの光に対して厚み方向位相差を付与する位相差フィルムである。遅相子要素ZBは、ポジティブCプレートまたはネガティブCプレートである。波長550nmの厚み方向リタデーションRethZB(550)の値の範囲は通常-190nm以上0未満、及び、0を超えて+40nm以下であり、好ましくは-170nm以上、0nm未満である。面内リタデーションReoZB(550)は実質的に0であることが望ましい。実質的に0であるとは0nm±5の範囲を示す。遅相子要素ZAの場合と同様に、遅相子要素ZBは、重合性液晶を硬化して得られてもよく、溶融樹脂を成形またはさらに延伸して得られてもよい。遅相子要素ZBが、重合性液晶を硬化して得られる層である場合、遅相子要素ZBは、遅相子要素Zの場合と同様に基材に設けられた配向膜上に形成され得る。
【0086】
λ/4部42が有する遅相子要素Qは、全体として遅相子要素Qとして機能する複数の位相差フィルムの積層体でもよい。遅相子要素Qを構成する複数の位相差フィルムの遅相軸の方向は、遅相軸42aの方向に略一致している。同様に、λ/4部42が有する遅相子要素ZBは、全体として遅相子要素ZBとして機能する複数の位相差フィルムの積層体でもよい。
【0087】
上記表示装置100が満たすべき条件を更に説明する。
【0088】
[ρ係数]
図3に示したように、画像表示層10の厚み方向D1に対して傾斜角αの方向D2に直交する面を投影面VPと称す。傾斜角αが45°である場合の投影面VPでの波長550nmにおける画像表示層10の面内リタデーションをReM45とする。λ/4部42の面内リタデーションをReoQとする。本実施形態において、ReoQは、遅相子要素Qの面内リタデーションに相当する。この場合、ρ係数を式(A)で定義する。
ρ=ReM45/ReoQ ・・・(A)
【0089】
式(A)によってρ係数を定義した場合、上記表示装置100では、式λ/4部42のNz係数と、ρ係数とが式(B)に示した関係を満たす。換言すれば、λ/4部42は、Nz係数が式(B)を満たすように設計される。
4.5ρ-0.160<Nz<4.5ρ+0.955 ・・・(B)
【0090】
式(B)におけるλ/4部42のNz係数は次式(C)で定義される。
Nz={(RethQ+RethZB)/(ReoQ+ReoZB)}+0.5・・・(C)
式(C)において、ReoQは、前述したように、λ/4部42の遅相子要素Qの面内リタデーションであり、ReoZBは、λ/4部42の遅相子要素ZBの面内リタデーションである。
式(C)において、RethQは、λ/4部42の遅相子要素Qの厚み方向リタデーションであり、RethZBは、λ/4部42の遅相子要素ZBの厚み方向リタデーションである。
【0091】
・式(B)において、ρ係数の値の範囲が-0.06以上-0.02以内であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は-0.43を超えて0.87未満である。
・式(B)において、ρ係数の値の範囲が-0.02以上0未満であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は-0.25を超えて0.96未満である。
・式(B)において、ρ係数の値の範囲が0を超えて0.04以内であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は-0.16を超えて1.14未満である。
・式(B)において、ρ係数の値の範囲が0.04を超えて0.08未満であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は0.02を超えて1.32未満である。
【0092】
λ/4部42のNz係数とρ係数の値の関係は、式(D)で示される関係を有することがより好ましい。
4.5ρ-0.035≦Nz≦4.5ρ+0.690 ・・・(D)
【0093】
・式(D)において、ρ係数の値の範囲が-0.06以上-0.02以内であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は-0.31以上0.60以内である。
・式(D)において、ρ係数の値の範囲が-0.02以上0未満であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は-0.13以上0.69未満である。
・式(D)において、ρ係数の値の範囲が0を超えて0.04以内であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は-0.04を超えて0.87以内である。
・式(D)において、ρ係数の値の範囲が0.04以上0.08以内であるとき、λ/4部42のNz係数の値の範囲は0.15以上1.05以内である。
【0094】
積層体である、直線偏光板30、光学積層体40および表示装置100を構成する各部材(遅相子要素Q、遅相子要素ZAおよび遅相子要素ZBも含む)は、たとえば粘着剤層(不図示)を用いて積層することができる。画像表示層10が有機EL表示素子の備える電極を含む場合、粘着剤層を介して有機EL表示素子と光学積層体40とは積層されてもよい。
【0095】
粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。粘着剤層の厚みは、通常3μm~30μmであり、好ましくは3μm~25μmである。
【0096】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0097】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0098】
[楕円偏光板および表示装置の製造方法]
楕円偏光板20は、λ/2部41とλ/4部42とを含む光学積層体40と、偏光子31とを粘着剤層を介して積層することで製造される。例えば、
図1に示したように、偏光子31の両面に保護フィルム32が積層されている直線偏光板30を用いる場合、偏光子31を製造し且つ偏光子31の両面に保護フィルム32を積層することによって直線偏光板30を得る。その後、光学積層体40と対向する保護フィルム32上に、剥離フィルム上に形成された粘着剤層を積層させる。粘着剤層上の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層を介して、偏光子31と、別途製造されているλ/2部41およびλ/4部42を貼り合わせることで、楕円偏光板20が得られる。この楕円偏光板20をたとえば粘着剤層を介して画像表示層10に積層することによって、表示装置100が得られる。
【0099】
表示装置100は、式(A)および式(B)を満たす。この場合、楕円偏光板20のλ/4部42は、画像表示層10の傾斜角45°方向への光反射性を考慮して設計させている。そのため、表示装置100を傾斜させた場合でも、外光反射光が防止され、良好な表示性能を実現可能である。表示装置100の構成では、可視域全域において上記良好な表示性能を実現可能である。
【0100】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれること、および、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0101】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。以下の説明における「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部を意味する。本発明は、以下の実施例に限定されない。以下の説明では、遅相子要素ZAおよび遅相子要素ZBの両方に使用可能なポジティプCプレートを遅相子要素Zと称す場合もある。
【0102】
[測定方法]
・フィルムの厚みの測定方法
フィルムの厚みは接触式膜厚計(「MH-15M」、「カウンタTC101」、「MS-5C」、株式会社ニコン製)を用いて測定した。
【0103】
・リタデーションの測定方法
λ/2部およびλ/4部の厚み方向のリタデーションと、λ/2部、λ/4部および楕円偏光板の面内リタデーションは、リタデーション測定装置(「KOBRA-WPR」、王子計測機器株式会社製)を使用して測定した。
【0104】
・屈折率の測定方法
フィルム、層等の屈折率を、分光エリプソメーター(「M-2000」、J.A.Woollam社製)を使用して測定した。
【0105】
・視感度補正および色相の算出法
後述の視感度補正単体透過率Ty、単体透過色相a、単体透過色相b、及び視感度補正偏光度Pyと、視感度補正反射率Ry10、視感度補正反射率Ry45は、各々に対応する分光スペクトル、すなわち単体分光透過率T、分光偏光度P、分光反射率R及び等色関数、標準イルミナントを用いて算出した。
【0106】
視感度補正値は対応する分光スペクトルの三刺激値Yを標準イルミナントの三刺激値Yoで除して得られる。色相a,bは対応する分光スペクトルのLab表色系における色相である(「色彩工学入門、篠田博之・藤枝一郎 共著、森北出版、106頁~107頁、2007年」参照)。等色関数は国際照明委員会(CIE)勧告(1931年)を用いた。標準イルミナントはD65(ISO10526:1999/CIES005/E-1998)を使用した。
【0107】
・偏光子の分光偏光度P、単体分光透過率Tおよび単体透過色相a,bの測定方法
紫外可視分光光度計(「V7100」、日本分光株式会社製)で偏光子の透過軸方向分光透過率と吸収軸方向分光透過率を測定し、分光偏光度P、単体分光透過率T、単体透過色相a、単体透過色相bを算出した。
【0108】
単体分光透過率Tは透過軸方向分光透過率と吸収軸方向分光透過率の平均値である。
分光偏光度Pは透過軸方向分光透過率と吸収軸方向分光透過率の差を、透過軸方向分光透過率と吸収軸方向分光透過率の和で除して得られる。
透過軸方向分光透過率は各波長における偏光子透過軸に平行に振動する直線偏光に対する透過率である。
吸収軸方向分光透過率は各波長における偏光子吸収軸に平行に振動する直線偏光に対する透過率である。
【0109】
偏光子の吸収軸はポリビニルアルコールの延伸方向と一致していた。
【0110】
・反射率および反射色相の測定
ディスプレイ計測システム(「DMS803」、Instrument Systems社製)のSCIモードを用いて楕円偏光板を光反射層上に配置したときの分光反射率Rを測定し、視感度補正反射率Ryを算出した。
【0111】
傾斜角θ=10°、θ=45°(傾斜角については後述)それぞれの分光反射率Rは楕円偏光板が配置されていない、光反射層のみの反射強度を100%として測定した。測定波長は1nmごとに380nmから780nmの範囲であった。
【0112】
屈折率nxに平行な軸と屈折率nyに平行な軸で張られる平面(以下、説明の便宜のため、「平面p」と称す)に垂直な方向(
図3に示した方向D1に相当)を傾斜角θ=0°とする。平面p内における面内角度φを傾斜中心軸をとして、式(15)の範囲を5°ステップで、傾斜角θが10°および45°の場合それぞれの分光反射率Rを測定した。平面pは、遅相子要素Q,ZA,ZBの表面、楕円偏光板の表面などに相当し、画像表示面10aに平行な面でもある。
0°≦φ<360°・・・ (15)
【0113】
傾斜角θ=10°における視感度補正反射率の面内角度領域(式(15)で示される角度範囲、以下同様)の平均値をRy10とした。傾斜角θ=45°における視感度補正反射率の面内角度領域の平均値をRy45とした。
【0114】
〔水平配向膜形成用組成物の調製〕
下記構造の光配向性材料5部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶媒)95部を混合した。得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【化1】
【0115】
〔垂直配向膜形成用組成物の調製〕
日産化学工業株式会社製、サンエバーSE610を使用した。
【0116】
〔遅相子要素Q形成用組成物の調製〕
遅相子要素Q(逆分散性ポジティブAプレート)を形成するために、下記の重合性液晶化合物Aと重合性液晶化合物Bを用いた。重合性液晶化合物Aは、特開2010-31223号公報に記載された方法で製造した。また、重合性液晶化合物Bは、特開2009-173893号公報に記載された方法に準じて製造した。以下にそれぞれの分子構造を示す。
【0117】
【0118】
【0119】
重合性液晶化合物A、及び重合性液晶化合物Bを90:10の質量比で混合した。得られた混合物100部に対して、レベリング剤(「メガファックF-556」、DIC株式会社製)を1.0部、重合開始剤である2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(「Omnirad369」、IGM Resins B.V.社製)を6部添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間攪拌することにより、遅相子要素Q形成用組成物を得た。
【0120】
〔遅相子要素Z形成用組成物の調整〕
遅相子要素Z(ポジティブCプレート)を形成するために、以下の手順で組成物を調製した。重合性液晶化合物である(「Paliocolor LC242」、BASF社製)100部に対して、レベリング剤としてF-556を0.1部、及び重合開始剤としてOmnirad369を3部添加した。固形分濃度が13%となるようにシクロペンタノンを添加して、遅相子要素Z形成用組成物を得た。
【0121】
〔偏光子の作製〕
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上、厚み75μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを準備した。PVAフィルムを30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(ヨウ素染色工程)。ヨウ素染色工程を経たPVAフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が12/5/100の水溶液に、56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(ホウ酸処理工程)。ホウ酸処理工程を経たPVAフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムを得た。PVAフィルムの延伸は、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において行った。PVAフィルムの総延伸倍率は5.3倍であった。得られた偏光フィルムの厚みは10μmであった。
【0122】
偏光フィルムと、ケン化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ株式会社製 KC4UYTAC 厚み40μm)とを水系接着剤を介してニップロールで貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に保護フィルムとしてTACフィルムを有する偏光子を得た。なお、水系接着剤は水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、「クラレポバール KL318」)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業株式会社製、「スミレーズレジン650」、固形分濃度30%の水溶液〕1.5部とを添加して調製した。
【0123】
得られた偏光子について光学特性の測定を行った。得られた偏光子の視感度補正単体透過率Tyは41.9%、視感度補正偏光度Pyは99.962%、単体透過色相aは-1.5、単体透過色相bは3.6であった。
【0124】
〔遅相子要素Q(逆分散性ポジティブAプレート)の作製〕
日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム(ZF-14-50)上にコロナ処理を実施した。コロナ処理は、ウシオ電機株式会社製のTEC-4AXを使用して行った。コロナ処理は、出力0.78kW、処理速度10m/分の条件で1回行った。COPフィルムに水平配向膜形成用組成物をバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥した。塗布膜に対して、偏光UV照射装置(「SPOT CURE SP-9」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量が100mJ/cm2となるように、軸角度45°にて偏光UV露光を実施した。得られた水平配向膜の膜厚は100nmであった。
【0125】
続いて、水平配向膜に、遅相子要素Q(逆分散性ポジティブAプレート)形成用組成物を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した。塗布膜に対して、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、遅相子要素Qを形成した。遅相子要素Qの膜厚は2.3μmであった。
【0126】
遅相子要素Q上に、粘着剤層を介して、COPフィルム、配向膜および水平配向液晶硬化膜によって形成されたフィルムをガラスに貼合した。COPフィルムを剥離して、リタデーションを測定するためのサンプルを得た。各波長における遅相子要素Qの面内リタデーションReoQ(λ)を測定した結果、
ReoQ(450)=121nm、
ReoQ(550)=142nm、
ReoQ(650)=146nm、
ReoQ(450)/ReoQ(550)=0.85、
ReoQ(650)/ReoQ(550)=1.03、
であり、遅相子要素Qは、逆波長分散性を示した。
【0127】
遅相子要素Qは、nx>ny≒nzの関係を満たす、ポジティブAプレートであった。なお、各波長における厚み方向リタデーションRethQ(λ)を測定した結果、
RethQ(450)=61nm、
RethQ(550)=72nm、
RethQ(650)=73nm、
であった。
【0128】
〔遅相子要素Z(ポジティブCプレート)の作製〕
COPフィルムに対して、コロナ処理を実施した。コロナ処理の条件は上記と同じとした。COPフィルム上に、垂直配向膜形成用組成物をバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、垂直配向膜を得た。得られた垂直配向膜の膜厚は50nmであった。
【0129】
垂直配向膜に、バーコーターを用いて遅相子要素Z形成用組成物を塗布し、90℃で120秒間乾燥した。塗布膜に対して、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、遅相子要素Zを形成した。このようにしてCOPフィルム、垂直配向膜および遅相子要素Zによって形成されたフィルムを得た。遅相子要素Zの膜厚は、0.6μmであった。
【0130】
遅相子要素Zに粘着剤層を積層した。当該粘着剤層を介して、COPフィルム、配向膜および遅相子要素Zによって形成されたフィルムをガラスに貼合した。COPフィルムを剥離して、リタデーションを測定するためのサンプルを得た。遅相子要素Zの波長550nmにおける厚み方向リタデーションRethZ(550)を測定した結果、
RethZ(550)=-70nm、
であった。
遅相子要素Zの波長550nmにおける面内リタデーションReoZ(550)を測定した結果、
ReoZ(550)=0.1nm、
であり、遅相子要素Zの面内リタデーションは実質的に0であった。
遅相子要素Zは、nx≒ny<nzの関係を満たすポジティブCプレートであった。
【0131】
<ネガティブCプレートの作製>
厚み60μmのTACフィルム(「フジタックTG60UL」、フジフイルム製)二枚を、粘着剤層を介して接着し、TACフィルム、粘着剤およびTACフィルムによって形成されたTACフィルム積層体を得た。次に、TACフィルム積層体に粘着剤層を介してTACフィルム積層体をガラスに貼合して、リタデーションを測定するためのサンプルを得た。波長550nmにおける厚み方向リタデーションReth(550)を測定した結果、
Reth(550)=+40nm、
であった。
TACフィルム積層体は、nx≒ny>nzの関係を満たすネガティブCプレートであった。そのため、TACフィルム積層体の面内リタデーションは実質的に0とした。
【0132】
[遅相子積層体1]
COPフィルム上に形成された垂直配向膜及び遅相子要素Zにおける遅相子要素Zと、COPフィルム上に形成された水平配向膜及び遅相子要素Qにおける遅相子要素Qとを、粘着剤を介して接着し、その後、遅相子要素Z側のCOPフィルムを剥離して、COPフィルムおよび遅相子積層体1がこの順に積層されたフィルムを得た。遅相子積層体1における遅相子要素Qおよび遅相子要素Zの配置関係は以下のとおりであった。遅相子積層体1の遅相子要素Zは、ポジティプCプレートであった。COPフィルムに対する遅相子要素Qおよび遅相子要素Zの配置を示すために、以下の配置関係ではCOPフィルムを括弧書きで示している。したがって、以下の表記は、遅相子要素Zおよび遅相子要素QがCOPフィルム側から遅相子要素Qおよび遅相子要素Zの順に配置されていることを示している。要素間(または層間)の配置関係については、同様の表記を採用することもある。
(COPフィルム)/Q/Z
【0133】
[遅相子積層体2]
COPフィルム上に形成された垂直配向膜及び遅相子要素Zにおける遅相子要素Zと、COPフィルム上に形成された水平配向膜及び遅相子要素Qにおける遅相子要素Qとを、粘着剤を介して接着し、その後、遅相子要素Q側のCOPフィルムを剥離して、COPフィルム、遅相子積層体2がこの順に積層されたフィルムを得た。遅相子積層体2における遅相子要素Qおよび遅相子要素Zの配置関係は以下のとおりであった。遅相子積層体2の遅相子要素Zは、ポジティプCプレートであった。
(COPフィルム)/Z/Q
【0134】
[遅相子積層体3]
上記TACフィルム積層体と、COPフィルム上に形成された水平配向膜及び遅相子要素Qにおける遅相子要素Qとを、粘着剤を介して接着し、その後、遅相子要素Q側のCOPフィルムを剥離して、遅相子積層体3を得た。TACフィルム積層体はネガティブCプレートである。したがって、遅相子積層体3は、ネガティブCプレートである遅相子要素ZBと、遅相子要素Qの積層体であった。
【0135】
<楕円偏光板EP1>
・λ/2部
遅相子要素Z側同士が密着した場合に二層の遅相子要素Qの遅相軸が同じ方向となるように裁断された、COPフィルムと遅相子積層体1とで形成された二つのフィルムを用意し、互いの遅相子要素Z側を、粘着剤を介して接着し、その後、一方の遅相子要素Q側のCOPフィルムを剥離して、COPフィルム、λ/2部(遅相子要素Q、粘着剤層、遅相子要素Z、粘着剤層、遅相子要素Z、粘着剤層、遅相子要素Q)がこの順に積層されたフィルムを得た。なお、λ/2部(遅相子要素Q、粘着剤層、遅相子要素Z、粘着剤層、遅相子要素Z、粘着剤層、遅相子要素Q)は、λ/2部において、遅相子要素Q、粘着剤層、遅相子要素Z、粘着剤層、遅相子要素Z、粘着剤層、遅相子要素Qがこの順に配置されていることを意味する。他の部材(たとえばλ/4部)についても同様の表記を採用する場合がある。λ/2部が有する遅相子要素Zは、遅相子積層体1が有する遅相子要素ZであることからポジティブCプレートである。したがって、λ/2部内の遅相子要素Zは、遅相子要素ZAであるため、以下、楕円偏光板EP1の遅相子要素Zを遅相子要素ZAと称す。
【0136】
・λ/4部
厚み方向リタデーションがRethZ(550)=-70nmとなるように調整して製造された遅相子要素Zを有する遅相子積層体2をλ/4部とした。以下では、遅相子積層体2をλ/4部に使用した場合に、遅相子積層体2が有する遅相子要素Zを遅相子要素ZBと称するとともに、波長550nmの厚み方向リタデーションをRethZB(550)と称す。
【0137】
・楕円偏光板EP1
TACフィルムが積層された偏光子においてTACフィルムと反対側の面と、COPフィルムとλ/2部とで形成されたフィルムの遅相子要素Q側とを、粘着剤層を介して接着し、COPフィルムを剥離して積層体を得た。このとき、偏光子の透過軸とλ/2部の遅相軸とのなす角度は15°であった。次に、上記積層体の遅相子要素Q側と、COPフィルムとλ/4部とで形成されたフィルムの遅相子要素Q側とを粘着剤層を介して接着し、COPフィルムを剥離して楕円偏光板EP1を得た。このとき、偏光子の透過軸とλ/4部の遅相軸とのなす角度は75°であった。λ/2部のNz係数は0.51であり、λ/4部のNz係数は0.51であった。
【0138】
楕円偏光板EP1は、TACフィルム、偏光子、粘着剤層、λ/2部(遅相子要素Q、粘着剤層、遅相子要素ZA、粘着剤層、遅相子要素ZA、粘着剤層、遅相子要素Q)、粘着剤層、λ/4部(遅相子要素Q、粘着剤層、遅相子要素ZB)の層構成を有していた。
【0139】
<楕円偏光板EP2>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-30nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP2を得た。λ/4部のNZ係数は0.79であった。
【0140】
<楕円偏光板EP3>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-100nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP3を得た。λ/4部のNz係数は0.30であった。
【0141】
<楕円偏光板EP4>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-170nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP4を得た。λ/4部のNz係数は-0.20であった。
【0142】
<楕円偏光板EP5>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-190nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP5を得た。λ/4部のNz係数は-0.34であった。
【0143】
<楕円偏光板EP6>
遅相子要素ZBを含まないことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP6を得た。λ/4部のNz係数は1.00であった。
【0144】
<楕円偏光板EP7>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-40nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP7を得た。λ/4部のNz係数は0.72であった。
【0145】
<楕円偏光板EP8>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-140nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP8を得た。λ/4部のNz係数は0.01であった。
【0146】
<楕円偏光板EP9>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-160nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP9を得た。λ/4部のNz係数は-0.13であった。
【0147】
<楕円偏光板EP10>
TACフィルムが積層された偏光子においてTACフィルムと反対側の面と、COPフィルムとλ/2部とで形成されたフィルムの遅相子要素Q側とを、粘着剤層を介して接着し、COPフィルムを剥離して積層体を得た。このとき、偏光子の透過軸とλ/2部の遅相軸とのなす角度は15°であった。次に、上記積層体の遅相子要素Q側と、遅相子積層体3の遅相子要素Q側とを粘着剤層を介して接着し、楕円偏光板EP10を得た。このとき、偏光子の透過軸とλ/4部の遅相軸とのなす角度は75°であった。このとき、λ/2部のNz係数は0.51であり、λ/4部のNz係数は1.28であった。
【0148】
<楕円偏光板EP11>
厚み方向リタデーションがRethZB(550)=-120nmとなるように調整して得られた遅相子要素ZB(遅相子要素Z)を有する遅相子積層体2をλ/4部としたことを除いては、楕円偏光板EP1と同様にして、楕円偏光板EP11を得た。λ/4部のNz係数は0.15であった。
【0149】
[光反射層の準備]
以下の3種類の光反射層を用いた。
・光反射層A:市販のサムスン電子製OLED表示装置搭載スマートホンGALAXY Tab S 8.4 SC-03Gを分解し、カバーガラスと楕円偏光板を取り除いて使用した。
・光反射層B:市販のファーウェイ・テクノロジーズ製OLED表示装置搭載スマートホンMate 30 Proを分解し、カバーガラスと楕円偏光板を取り除いて使用した。
・光反射層C:市販のApple Inc.製OLED表示装置搭載スマートホンiPhone(登録商標)Xを分解し、カバーガラスと楕円偏光板を取り除いて使用した。
【0150】
各光反射層の傾斜角45°の投影面(
図3を用いて説明した投影面VP)での波長550nmにおける各反射層の面内リタデーションReM45は、表1に示すとおりであった。
【表1】
【0151】
<楕円偏光板EP1~EP5,EP7~EP11のリタデーション>
楕円偏光板EP1~EP5,EP7~EP11それぞれの遅相子要素ZB上に、粘着剤層を積層した。当該粘着剤層を介して、楕円偏光板EP1~EP5,EP7~EP11をガラスに貼合し、リタデーションを測定するためのサンプルを得た。楕円偏光板EP1~EP5,EP7~EP11の各波長における面内リタデーションReo(λ)を測定した結果、いずれも、
Reo(450)=112nm、
Reo(550)=138nm、
Reo(650)=162nm、
Reo(450)/Reo(550)=0.81、
Reo(650)/Reo(550)=1.17、
であった。
【0152】
<楕円偏光板EP6のリタデーション>
楕円偏光板EP6の遅相子要素Q上に、粘着剤層を積層し、当該粘着剤層を介して、楕円偏光板EP6をガラスに貼合し、リタデーションを測定するためのサンプルを得た。各波長における面内リタデーションReo(λ)を測定した結果、
Reo(450)=112nm、
Reo(550)=138nm、
Reo(650)=162nm、
Reo(450)/Reo(550)=0.81、
Reo(650)/Reo(550)=1.17、
であった。
【0153】
<表示性能の目視確認>
準備した楕円偏光板EP1~EP11と、光反射層A,B,Cを組み合わせた場合に対して、楕円偏光板EP1~EP11の表示性能の目視確認を次のようにして行った。
(目視確認方法)
5人の観察者によって晴天の日中に野外で実施した。傾斜角10°の場合及び傾斜角45°の場合それぞれにおいて式(15)で示される面内角度範囲の全範囲にて観察した。5人中4人以上が光反射層からの虹色の反射光を感じなかった場合は、反射光がよく防止された良好な表示性能であると評価した。それ以外の場合は、表示性能を損ねていると評価した。
【0154】
<光反射層Aを使用した場合の傾斜角10°の反射率>
楕円偏光板EP1~EP5それぞれを、粘着剤を介して光反射層A上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=10°における視感度補正反射率を測定及び算出した結果、いずれもRy10=4.7%であった。さらに、傾斜角θ=10°での反射外光を観察したところ、いずれの場合においても反射光がよく防止された良好な表示性能であることを確認できた。
【0155】
<光反射層Bを使用した場合の傾斜角10°の反射率>
楕円偏光板EP1,EP6~EP9それぞれを、粘着剤を介して光反射層B上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=10°における視感度補正反射率を測定及び算出した結果、いずれもRy10=4.6%であった。さらに、傾斜角θ=10°での反射外光を目視観察したところ、いずれの場合においても反射光がよく防止された良好な表示性能であることを確認できた。
【0156】
<光反射層Cを使用した場合の傾斜角10°の反射率>
楕円偏光板EP2,EP3,EP6,EP10,EP11それぞれを、粘着剤を介して光反射層C上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=10°における視感度補正反射率を測定及び算出した結果、いずれもRy10=4.5%であった。さらに、傾斜角θ=10°での反射外光を目視観察したところ、いずれの場合においても反射光がよく防止された良好な表示性能であることを確認できた。
【0157】
(1)実施例1~3
楕円偏光板EP1,EP3,EP4それぞれを、粘着剤を介して光反射層A上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=45°における視感度補正反射率Ry45を測定及び算出した。算出結果は、
図4に示す通りであった。さらに、太陽光下で傾斜角θ=45°における光反射層の外光反射を観察したところ、いずれの場合においても反射光がよく防止された良好な表示性能であることを確認できた。
【0158】
(2)実施例4~6
楕円偏光板EP7,EP1,EP8それぞれを、粘着剤を介して光反射層B上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=45°における視感度補正反射率Ry45を測定及び算出した。算出結果は、
図4に示す通りであった。さらに、太陽光下で傾斜角θ=45°における光反射層の外光反射を観察したところ、いずれの場合においても反射光がよく防止された良好な表示性能であることを確認できた。
【0159】
(3)実施例7~9
楕円偏光板EP6,EP2,EP3それぞれを、粘着剤を介して光反射層C上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=45°における視感度補正反射率Ry45を測定及び算出した。算出結果は、
図4に示す通りであった。さらに、太陽光下で傾斜角θ=45°における光反射層の外光反射を観察したところ、いずれの場合においても反射光がよく防止された良好な表示性能であることを確認できた。
【0160】
(4)比較例1,2
楕円偏光板EP2,EP5それぞれを、粘着剤を介して光反射層A上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=45°における視感度補正反射率Ry45を測定及び算出した。算出結果は、
図4に示す通りであった。さらに、太陽光下で傾斜角θ=45°における光反射層の外光反射を観察したところ、いずれの場合においても強い虹色の反射光が視認され表示性能を損なうことが確認された。
【0161】
(5)比較例3,4
楕円偏光板EP6,EP9それぞれを、粘着剤を介して光反射層B上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=45°における視感度補正反射率Ry45を測定及び算出した。算出結果は、
図4に示す通りであった。さらに、太陽光下で傾斜角θ=45°における光反射層の外光反射を観察したところ、いずれの場合においても強い虹色の反射光が視認され表示性能を損なうことが確認された。
【0162】
(6)比較例5,6
楕円偏光板EP10、EP11それぞれを、粘着剤を介して光反射層C上に接着して得られたサンプルを、傾斜角θ=45°における視感度補正反射率Ry45を測定及び算出した。算出結果は、
図4に示す通りであった。さらに、太陽光下で傾斜角θ=45°における光反射層の外光反射を観察したところ、いずれの場合においても強い虹色の反射光が視認され表示性能を損なうことが確認された。
【0163】
図4は、実施例1~9および比較例1~6の結果を示した図表である。
図4の図表において、「光反射層」の列における「種類」欄のA,B,Cは、光反射層A、光反射層Bおよび光反射層Cに対応する。
「光反射層」の列におけるρ係数は、表1に示した光反射層A,B,CのReM45と、光反射層A,B,Cと組み合わされた楕円偏光板EP1~EP11が有するλ/4部の遅相子要素Qの面内リタデーションReoQを式(A)に代入して算出された値である。
「Nz係数」は、λ/4部が有する遅相子要素Qおよび遅相子要素ZBの面内リタデーションおよび厚み方向リタデーションを、式(C)に代入して算出された値である。
「傾斜角45°目視」の欄の「〇」は、「反射光がよく防止された良好な表示性能である」ことを示す、「×」は後述するように「虹色の反射光が視認され表示性能を損なっている」ことを示す。
【0164】
図4に示した結果より、実施例1~9では、「傾斜角45°目視」の評価は「〇」であった。すなわち、実施例1~9では、光反射層に楕円偏光板を積層して得られた表示装置を、太陽光下で傾けた状態で光反射層の外光反射を観察した場合でも、反射光がよく防止された良好な表示性能であった。一方、比較例1~6では、「傾斜角45°目視」の評価は「×」であった。すなわち、比較例1~6では、光反射層に楕円偏光板を積層して得られた表示装置を、太陽光下で傾けた状態で光反射層の外光反射を観察した場合、虹色の反射光が視認され表示性能が損なわれていた。なお、太陽光は、可視域全域を含むため、上記表示性能の評価は、可視域全域の評価に相当する。
図4では、傾斜角45°の結果を示しているが、前述したように傾斜角10°の場合も傾斜角45°の場合と同様の結果であった。
【0165】
図5は、
図4におけるρ係数に対してNz係数をプロットしたグラフである。
図5中の横軸はρ係数を示し、縦軸は、Nz係数を示している。
図5中のラインL1,L2,L3,L4,L5は、次の式で表されるラインである。
L1:Nz=4.5ρ+0.955
L2:Nz=4.5ρ-0.160
L3:Nz=4.5ρ+0.690
L4:Nz=4.5ρ-0.035
L5:Nz=4.5ρ+0.5
【0166】
図5に示したラインL1~L4と実施例のプロット点および比較例のプロット点との関係から、実施例1~9では、λ/4部のNz係数とρ係数との関係が、式(B)を満たしており、比較例1~6では、λ/4部のNz係数とρ係数との関係が、式(B)を満たしていない。したがって、λ/4部のNz係数とρ係数との関係が、式(B)を満たすことによって、表示装置を傾けた状態で光反射層の外光反射を観察した場合でも、可視域全域において反射光がよく防止された良好な表示性能を得られることが理解され得る。更に、
図5に示したラインL1~L4と実施例のプロット点および比較例のプロット点との関係から、λ/4部のNz係数とρ係数との関係が、式(D)を満たすことが好ましいことら理解され得る。
【0167】
図4に示したRy45の結果より、Ryは、8.1%以下であることが好ましいことが理解され得る。
【符号の説明】
【0168】
20…楕円偏光板、31…偏光子、41…λ/2部、42…λ/4部、100…表示装置、Q…遅相子要素(第1遅相子要素)、ZA…(第2遅相子要素)、ZB…遅相子要素(第3遅相子要素)。