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特許7619847ボイラーシステム及びボイラーの稼働方法
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  • 特許-ボイラーシステム及びボイラーの稼働方法 図1
  • 特許-ボイラーシステム及びボイラーの稼働方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ボイラーシステム及びボイラーの稼働方法
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/20 20060101AFI20250115BHJP
   F23K 5/02 20060101ALI20250115BHJP
   F22D 1/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
F23K5/20
F23K5/02 B
F22D1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021041878
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141525
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】517230644
【氏名又は名称】猪野 貴行
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】猪野 忠行
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228142(JP,A)
【文献】特開平07-208727(JP,A)
【文献】特開平01-210718(JP,A)
【文献】特開2002-147746(JP,A)
【文献】米国特許第05263850(US,A)
【文献】特開平11-013482(JP,A)
【文献】特開2019-065743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/20
F23K 5/02
F22D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切替バルブを介して燃料を供給することで稼働し蒸気を発生するボイラーと、
前記燃料として常温で固化する溶液燃料を貯蔵する溶液燃料タンクと、
前記燃料として液体燃料を貯蔵する起動停止用燃料タンクと、
輸送配管を介し供給される燃料を前記ボイラーの蒸気で加温する第1加温装置と、
前記燃料を第1加温装置へ輸送する燃料送油ポンプと、
前記ボイラーに前記燃料を流入させる流入配管と、前記ボイラーから前記燃料を流出させる流出配管と、前記流入配管及び前記流出配管の各端部が接続されるとともに、前記第1加温装置から前記燃料が供給される環状の配管部を備え、前記配管部において前記燃料が循環ポンプの設置により循環可能となる循環配管と、
前記輸送配管から前記循環配管を介して前記ボイラーに供給される前記燃料を前記ボイラーの蒸気で加温する第2加温装置と、
前記燃料を第2加温装置へ輸送する送油ポンプと、
前記輸送配管及び前記循環配管を前記ボイラーの蒸気により加温する加温手段と、
を備え、
前記切替バルブの操作により、前記輸送配管及び前記循環配管内の燃料を前記溶液燃料と前記液体燃料との間で置換可能に構成するボイラーシステム。
【請求項2】
前記環状の配管部に、電熱線を備えたラインヒーターを設置する請求項1に記載のボイラーシステム。
【請求項3】
前記ボイラー内で燃焼する排気ガスを利用し水を加温する廃熱回収装置を備え、前記廃熱回収装置への給水の前段部分に給水ポンプを接続した請求項1又は請求項2に記載のボイラーシステム。
【請求項4】
前記第1加温装置に対して、それぞれ送油ポンプ、第2加温装置及び循環配管を介して複数のボイラーを接続する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のボイラーシステム。
【請求項5】
前記第1加温装置に対して複数のボイラーが接続するに際し、前記第1加温装置と、前記各ボイラーに接続される前記第2加温装置とは、別系統のラインで蒸気が供給される請求項4に記載のボイラーシステム。
【請求項6】
燃料が供給されて蒸気を発生するボイラーの稼働方法であって、
前記燃料として、常温で固化する溶液燃料と液体燃料とを切り替える切替バブルを備えるとともに、前記ボイラーに供給する燃料を加温する燃料加温装置を備え、
ボイラーの稼働立ち上げ時に、前記切替バルブにより液体燃料を供給して稼働させる手順と、
前記ボイラーの稼働により前記燃料加温装置が動作し始めて十分に加温された後に前記切替バルブを切り替えて前記溶液燃料を供給し、環状の配管部において加温循環させて稼働させる手順と、
ボイラーの停止前に、前記切替バルブを切り替えることで配管内の溶液燃料を液体燃料に置換する手順と、
前記置換が完了したらボイラーの稼働停止を行う手順と、
を含むことを特徴とするボイラーの稼働方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消費蒸気を発生させるボイラーシステム及びボイラーの稼働方法に関し、ボイラーの燃料に潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油等の常温で固化する溶液燃料を使用する場合に、ボイラーを安定的かつ効率よく稼働させるための構成を備えたボイラーシステムに関し、更に詳しくは、燃料をボイラーに供給する配管内で溶液燃料を固化させないためのボイラーシステム構成及びボイラー稼働方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー資源に恵まれないわが国において、従来から燃料として溶液燃料(副生油)を使用することが研究され実用化されてきた。近年、CO2排出量削減の要求や輸入燃料単価の上昇により、資源の有効利用の見地から燃料として溶液燃料(副生油)を使用することが期待されている。燃料として使用可能な溶液燃料は、潤滑廃油、食用廃油、化学廃油等各種存在し、常温(40度以下)程度で固化するものが存在した。
消費蒸気を発生させための燃焼ガスとして廃油を使用可能とするボイラー(多管式貫流ボイラー)としては、例えば本発明者が提案した特許文献1に記載のものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-190781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
常温で固化もしくは粘度の高い種類の溶液燃料をボイラーの燃料として使用する場合、ボイラーの稼働立上時に燃料を確実に流体化させるための加温作業や、停止時に燃料を配管内で固化させないように燃料を抜き取る作業が必要となり、取扱作業が煩雑であるという課題があった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、稼働ボイラーからの熱を使用して廃油等の溶液燃料を配管内で固化させないための構造を備えたボイラーシステムとすることで、溶液燃料を燃料として使用するに際し特別な取扱作業を不要としたボイラーシステム及びボイラーの稼働方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本願発明の請求項1に係るボイラーシステムは、
切替バルブ(19)を介して燃料を供給することで稼働し蒸気を発生するボイラー(11)と、
前記燃料として常温で固化する溶液燃料を貯蔵する溶液燃料タンク(1)と、
前記燃料として液体燃料を貯蔵する起動停止用燃料タンク(2)と、
輸送配管(31)を介し供給される燃料を前記ボイラー(11)の蒸気で加温する第1加温装置(3)と、
前記燃料を第1加温装置(3)へ輸送する燃料送油ポンプ(6)と、
前記ボイラー(11)に前記燃料を流入させる流入配管と、前記ボイラー(11)から前記燃料を流出させる流出配管と、前記流入配管及び前記流出配管の各端部が接続されるとともに、前記第1加温装置(3)から前記燃料が供給される環状の配管部(30a)を備え、前記配管部(30a)において前記燃料が循環ポンプ(9)の設置により循環可能となる循環配管(30)と、
前記輸送配管(31)から前記循環配管(30)を介して前記ボイラー(11)に供給される前記燃料を前記ボイラー(11)の蒸気で加温する第2加温装置(5)と、
前記燃料を第2加温装置(5)へ輸送する送油ポンプ(8)と、
前記輸送配管(31)及び前記循環配管(30)を前記ボイラー(11)の蒸気により加温する加温手段と、を備え、
前記切替バルブ(19)の操作により、前記輸送配管(31)及び前記循環配管(30)内の燃料を前記溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)と前記液体燃料(A重油、B重油、再生油)との間で置換可能に構成する、
ことを特徴としている。
【0007】
請求項2は、請求項1のボイラーシステムにおいて、
前記環状の配管部(30a)に、電熱線を備えたラインヒーター(17)を設置することを特徴としている。
【0008】
請求項3は、請求項1又は請求項2のボイラーシステムにおいて、
前記ボイラー(11)内で燃焼する排気ガスを利用し水を加温する廃熱回収装置(12)を備え、前記廃熱回収装置(12)への給水の前段部分に給水ポンプ(10)を接続することを特徴としている。
【0009】
請求項4は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のボイラーシステムにおいて、
前記第1加温装置(3)に対して、それぞれ送油ポンプ(8)、第2加温装置(5)及び循環配管(30)を介して複数のボイラー(11)を接続することを特徴としている。
【0010】
請求項5は、請求項4のボイラーシステムにおいて、
前記第1加温装置(3)に対して複数のボイラー(11)が接続するに際し、前記第1加温装置(3)と、前記各ボイラー(11)にそれぞれ接続される前記第2加温装置(5)とは、別系統のラインで蒸気が供給されることを特徴としている。
【0011】
請求項6のボイラーの稼働方法は、燃料が供給されて蒸気を発生するボイラーの稼働方法であって、
前記燃料として、常温で固化する溶液燃料と液体燃料とを切り替える切替バブル(19)を備えるとともに、前記ボイラー(11)に供給する燃料を加温する燃料加温装置(第1加温装置3及び第2加温装置5)を備え、次の各手順を含むことを特徴としている。
ボイラー(11)の稼働立ち上げ時に、前記切替バルブ(19)により液体燃料(A重油、B重油、再生油)を供給して稼働させる手順。
前記ボイラー(11)の稼働により前記燃料加温装置が動作し始めて十分に加温された後に前記切替バルブ(19)を切り替えて前記溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を供給し、環状の配管部(30a)において加温循環させて稼働させる手順。
ボイラー(11)の停止前に、前記切替バルブ(19)を切り替えることで配管(循環配管30及び輸送配管31)内の溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を液体燃料(A重油、B重油、再生油)に置換する手順。
前記置換が完了したらボイラー(11)の稼働停止を行う手順。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、常温で固化もしくは粘度の高い溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)をボイラー(11)の燃料として使用する場合に、ボイラー(11)の蒸気を利用した燃料加温装置(第1加温装置3及び第2加温装置5)を備えることで、安定的かつ効率よく加温することができる。
また、ボイラー停止前に配管(循環配管30及び輸送配管31)内の溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を液体燃料(A重油、B重油、再生油)に置換する機構を備えることで、溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)をそのまま配管内に残して固化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るボイラーシステムの全体を示すライン説明図である。
図2】本発明に係るボイラーシステムの構成を示す側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るボイラーシステムの実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1及び図2はボイラーシステム全体を示すもので、ボイラー燃料を貯蔵する溶液燃料タンク1及び起動停止用燃料タンク2と、ボイラー燃料を加温する燃料加温装置としての第1加温装置3及び第2加温装置5と、バーナー11aを備え供給される水から消費蒸気を発生させるボイラー11と、ボイラー廃熱を利用して水を温めてボイラー11へ供給する廃熱回収装置(エコノマイザー)12を備えて構成されている。
本発明に係るボイラーシステムは、常温で固化もしくは粘度の高い溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)をボイラー燃料として安定的かつ効率よく使用できる構成に特徴を有している。
廃油を燃料として使用可能とするボイラーとしては、上述した特許文献1(特開2019-190781号)に記載の構造を用いることができる。
【0015】
ボイラー11には、ボイラー11にボイラー燃料を供給する循環配管30と、ボイラー11に水を供給する給水ポンプ10が接続されている。循環配管30へは、送油ポンプ8によりボイラー燃料を加温して貯蔵する第2加温装置5からボイラー燃料が送油される。
これらの装置はボイラー室に配置され、一つ以上設置されたボイラー室はそれぞれボイラー室外の施設(工場内施設)に接続されている。したがって、第2加温装置5は1つのボイラー11に対する専属のタンクとなる。
ボイラー11へは、給水ポンプ10に接続された薬注装置20からの液体を合流した水が供給され、ボイラー燃料をバーナー11aで燃焼することで蒸気を発生し、主蒸気管40(図2)から送出される。
バーナー11aには、バーナー燃料供給元となる点火用のガスボンベ21(図1)が接続されている。ボイラー用バーナーは通常、「ダイレクト着火」という電極棒でスパークを発生させ、そこに燃料を噴霧することで着火する方式となっている。上述のボイラーシステムでは、常温で固化する燃料を使用するので、引火点(火が付き出す温度)が普通の燃料より高く、スパークでは着火できない可能性が生じる。そこで、点火の確実性を高めるために「ガスパイロット着火」という電極棒でスパークを発生させ、パイロットバーナー(ガス使用)を着火し、そこに燃料を噴霧することで着火する方式を採用している。
【0016】
工場内施設には、溶液燃料タンク1及び起動停止用燃料タンク2からのボイラー燃料となる溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を貯蔵する常用燃料タンクを有する第1加温装置3と、ボイラー燃料となる液体燃料(A重油、B重油、再生油)を貯蔵するサービスタンク4と、軟水器13からの水を貯蔵し給水ポンプ10への供給を行う給水タンク14と、がそれぞれ設置されている。
第1加温装置3は、溶液燃料タンク1に対して、輸送配管31に設置された切替バルブ19、燃料送油ポンプ6及びオートフィルター15を介して接続され、ボイラー11で使用のための溶液燃料を貯蔵して加温する。
サービスタンク4は、起動停止用燃料タンク2に起動停止用燃料送油ポンプ7を介して接続され、ボイラー11で使用のための液体燃料(A重油、B重油、再生油)を貯蔵する。サービスタンク4からの液体燃料は切替バルブ19の切り替え操作により第1加温装置3へ供給されるようになっている。
第1加温装置3及びサービスタンク4はボイラー室外に設置され、他のボイラーや他の装置等への供給用のタンクとなる。
【0017】
循環配管30は、ボイラー11に燃料を流入させる流入配管とボイラー11から燃料を流出させる流出配管とを有し循環ポンプを介在させた金属管から成る配管部30aと、屈曲可能に配置するためのフレキシブル部30bと、を備えている。配管部30aには、溶液燃料から固体を取り除くためのストレーナーが並列で配置された複式ストレーナー16が設置されている。複式ストレーナー16は、通常は片方のみ使用し、メンテナンスの時や目詰まりした場合にもう片方へ切り替えることにより、溶液燃料を止めることなくメンテナンスを行うことができる。溶液燃料の特性上、目詰まりしやすいために複式のストレーナーを使用することが好ましい。
【0018】
溶液燃料タンク1、第1加温装置3及び第2加温装置5は、図2に示すように、ボイラー11から排出される供給用蒸気の主蒸気管40から加温用蒸気管41を分岐し、加温用蒸気管41aから第2加温装置5の加温タンクに、加温用蒸気管41bから第1加温装置3の常用燃料タンクに、加温用蒸気管41cから溶液燃料タンク1に、それぞれ設置された加温コイル内に導かれることで、溶液燃料タンク1、第1加温装置3及び第2加温装置5に貯蔵されたボイラー燃料を加温するように構成されている。
【0019】
また、循環配管30及び輸送配管31に対してもボイラー11からの蒸気により加温される加温手段が設けられている。すなわち、加温手段は、スチームヘッダー18を介して循環配管(配管部30a)及び輸送配管31の外面周囲にコイル状に設置された加温コイルに蒸気を導くことで、各配管表面を加温するように構成されている(図1の実線斜線網掛け部分)。
スチームヘッダー18は、ボイラーから出た蒸気を一旦この装置に集め、水と蒸気とに分けて蒸気の乾き度の低下を防止するとともに、バルブの先にある各配管に分配する役割を有する。
【0020】
第1加温装置3及び輸送配管31、第2加温装置5及び循環配管30へは、それぞれスチームヘッダー18を介して蒸気が供給されるので、第1加温装置3の常用燃料タンクと第2加温装置5の加温タンクへは、別系統のラインで蒸気を供給することが可能となる(図1)。
【0021】
また、循環配管(配管部30a)にはラインヒーター17が設置され、配管内に電熱線を配置させ温度センサーにより設定温度まで加温するようになっている。
また、循環配管のフレキシブル部30bには、ヒーターバンド(電気利用)が装着されて加温が行われる(図1の点線斜線網掛け部分)。
【0022】
上述したボイラーシステムでは、第1加温装置3に対して送油ポンプ8、第2加温装置5及び循環配管30を介して1つのボイラー11が接続される例を説明したが、第1加温装置3に対して、それぞれ送油ポンプ、第2加温装置及び循環配管を介して複数のボイラーが接続されるようにしても良い。
スチームヘッダー18は、第1加温装置3に対して複数のボイラーが設置されている場合に、複数のボイラーから出た蒸気を一旦この装置に集め、バルブの先にある各配管に分配する。
この場合、第1加温装置と第2加温装置へは別系統のラインで蒸気が供給されるので、複数のボイラーが設置される場合に、停止しているボイラー用の配管内はA重油等の液体燃料で満たされているため加温する必要がなく、ボイラー毎の起動に合わせて加温できるようにすることで熱エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0023】
ボイラー11の排気側には廃熱回収装置(エコノマイザー)12が接続されている。廃熱回収装置12は、ボイラー11内で燃焼する排気ガスを利用し水を加温し、ボイラー11へ給水する装置であり、廃熱回収装置12への給水の前段部分にボイラー11への給水を行う給水ポンプ10を接続するように構成している。廃熱回収装置12の前段部分に給水ポンプ10を設置したのは以下の理由による。
【0024】
給水ポンプ10は、ポンプ入口では吸込もうとする力が働いているため、90℃後半で一部の水が気体になりキャビテーションが発生し、ポンプの破損もしくは空回りが発生し水が送出できなくなる現象が生じる。そのため、従来のポンプは高温仕様であっても給水の最大温度は95℃が限界であった。また、管内の水の温度が100℃以上になると管内の水が一部気体になり、この気体がポンプ内に入るとポンプは気体を送り出せないため、給水できなくなる現象が生じる。
【0025】
上述したボイラーシステムにおいて、給水ポンプ10は通常使用される構造のポンプが使用されるが、廃熱回収装置12の入口側に設置することで、この部分での水温が90~95℃程度であっても廃熱回収装置12に水を供給することができる。
本実施例では、給水ポンプ10を介して供給される水の温度を常温~90℃程度とし、廃熱回収装置12から送出される水温は150℃を超える値にすることができる。
【0026】
また、ボイラーの燃料となる溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)は、灰分が多い場合があるので、廃熱回収装置12の排気側に集じん機50を設置し、廃熱回収装置12からの排気ガスが集じん機50によりダストを回収して放出されるようにしている。
【0027】
続いて、上述したボイラーシステムの稼働方法について説明する。
本発明のボイラーシステムの燃料としては、起動停止時に使用する常温で液体の燃料(A重油、B重油、再生油)と、廃油である溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)の2種類を使用する。
【0028】
稼働立上時には、サービスタンク4から切替バルブ19を介して液体燃料(A重油、B重油、再生油)がボイラー11に供給されて燃焼し、溶液燃料タンク1、第1加温装置3の常用燃料タンク、第2加温装置5の加温タンクがそれぞれ加温される。
稼働立上時においては、溶液燃料タンク1から切替バルブ19までが常温で固化する溶液燃料で満たされ、その先のタンクや配管は液体燃料(A重油など)で満たされているが、溶液燃料タンク1に固化された燃料が残存した場合であっても加温により溶融される。また、液体燃料(A重油、B重油、再生油)で満たされた循環配管30及び輸送配管31も加温される。
燃料加温装置(第1加温装置3及び第2加温装置5)の加温により、溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)が溶融(液体になって流せるようになる状態)する温度に達した後に、切替バルブ19により燃料を溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)に切り替える。循環配管30及び輸送配管31は加温されているので、切替時に配管内で溶液燃料が冷やされて固化することはない。
【0029】
停止時には、循環配管30及び輸送配管31の管内やタンク内の溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を液体燃料(A重油、B重油、再生油)に置換し、置換が完了したらボイラーの稼働を停止する。
循環配管30及び輸送配管31の管内は溶液燃料から液体燃料に置換されているので、停止後に管内において常温で燃料が固化されることがない。
【0030】
すなわち、ボイラーシステムの稼働立上時は、切替バルブ19でサービスタンク4に貯蔵された液体燃料(A重油、B重油、再生油)をボイラー燃料として第1加温装置3及び第2加温装置5へ送出し、ボイラー11にて蒸気を発生させ、その蒸気が加温コイル内に導かれ溶液燃料タンク1、第1加温装置3の常用タンク、第2加温装置5の加温燃料タンク、循環配管30及び輸送配管31を加温する。
液体燃料(A重油、B重油、再生油)が十分加温されたら切替バルブ19を切り替え、溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を使用してボイラー11を稼働させる。
【0031】
ボイラーシステムの稼働停止時は、切替バルブ19で起動停止用の液体燃料(A重油、B重油、再生油)に切り替え、第1加温装置3及び第2加温装置5、循環配管30及び輸送配管31内の溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を起動停止用の液体燃料(A重油、B重油、再生油)に置換してから停止させる。
【0032】
第1加温装置3に対してボイラーが複数基ある場合も、各ボイラーに対して上記と同様の手順をとる。
また、複数基存在する他のボイラーが既に稼働している場合、追加でボイラーを立ち上げる時に、そのボイラー用の循環配管30や第2加温装置5が十分加温される前に溶液燃料が供給され固化する可能性があるので、予め加温ラインのバルブを開けて循環配管30や第2加温装置5を加温することが可能となる。
【0033】
上述したボイラーシステムによれば、ボイラー11の稼働立上時において、ボイラーの蒸気を利用した加温装置(第1加温装置3及び第2加温装置5)により、常温で固化もしくは粘度の高い溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を安定的かつ効率よく加温することができる。
ボイラー11の稼働立上時においては液体燃料(A重油、B重油、再生油)を使用して稼働し、また、ボイラー11の停止時においては、配管(循環配管30及び輸送配管31)内の溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を液体燃料(A重油、B重油、再生油)に置換することにより、溶液燃料をそのまま配管内に残して固化するのを防止することができる。
【0034】
その結果、人手による加温作業や燃料置換作業が不要となるので、溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)をボイラーの燃料として使用する上での煩雑な作業の軽減を図ることができる。
また、溶液燃料(潤滑廃油、食用廃油、化学廃油、副生油)を使用することで、計算上の資源エネルギーに関してCO2ゼロを達成可能とし、CO2排出削減や燃料コスト削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…溶液燃料タンク
2…起動停止用燃料タンク
3…第1加温装置
4…サービスタンク
5…第2加温装置
6…燃料送油ポンプ
7…起動停止用燃料送油ポンプ
8…送油ポンプ
9…循環ポンプ
10…給水ポンプ
11…ボイラー
11a…バーナー
12…廃熱回収装置
13…軟水器
14…給水タンク
15…オートフィルター
16…複式ストレーナー
17…ラインヒーター
18…スチームヘッダー
19…切替バルブ
20…薬注装置
21…ガスボンベ
30…循環配管
31…輸送配管
40…主蒸気管
50…集じん機
図1
図2