(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】混合セメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 7/153 20060101AFI20250115BHJP
【FI】
C04B7/153
(21)【出願番号】P 2021050600
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020057703
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第74回セメント技術大会 講演要旨 2020、発行日:2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】平野 燿子
(72)【発明者】
【氏名】桐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】黒川 大亮
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊一郎
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064940(JP,A)
【文献】特開2019-196276(JP,A)
【文献】特開平11-209159(JP,A)
【文献】特開2012-254909(JP,A)
【文献】特開2016-183057(JP,A)
【文献】特開2016-113326(JP,A)
【文献】国際公開第2014/030610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末を含む粉状の混合セメント組成物であって、
上記セメントクリンカ粉末、上記高炉スラグ微粉末、及び上記石灰石粉末の合計量100質量%中、上記セメントクリンカ粉末の割合が47~59質量%であり、上記高炉スラグ微粉末の割合が22~43質量%であり、上記石灰石粉末の割合が、4~23質量%であり、
上記セメントクリンカ粉末
中、アルミネート相の割合が、13質量%を超え、17質量%以下であ
り、エーライトの割合が54~63質量%であり、ビーライトの割合が8~17質量%であり、フェライト相の割合が9~12質量%であり、
上記セメントクリンカ粉末100質量部に対して、SO
3
換算値で1.5~6.0質量部の石膏を含むことを特徴とする粉状の混合セメント組成物。
【請求項2】
上記石灰石粉末のブレーン比表面積が3,000~20,000cm
2/gである請求項
1に記載の混合セメント組成物。
【請求項3】
「JIS R 5201:2015 セメントの物理試験方法」に記載された方法によって測定される材齢7日の圧縮強さが、33MPa以上である請求項1
又は2に記載の混合セメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、温暖化対策によって、セメント製造業界においても、二酸化炭素の排出量の大幅な削減が求められている。セメント製造業界における二酸化炭素の排出量の多くは、セメントクリンカを製造する際に発生するものであり、二酸化炭素の排出量を削減するために、セメントクリンカの生産量を減らすことが求められている。
セメントクリンカの使用量を減らすことができるセメントとして、セメントクリンカ粉末の一部を高炉スラグ微粉末で置換してなる高炉セメントが知られている。
高炉スラグ微粉末を用いたセメント組成物として、特許文献1には、少なくとも下記(a)、(b)および(c)に示す成分を、下記の比率で含む、セメント組成物が記載されている。
(a) 水硬率(H.M.)が2.0~2.4、ケイ酸率(S.M.)が1.3~3.0、および、鉄率(I.M.)が1.5~3.0であるセメントクリンカの粉砕物と、石膏とを含むセメント類:20 ~50質量%
(b) ブレーン比表面積が5,000cm2/g以上の高炉スラグ粉末:30~70質量%
(c) 石灰石粉末:0質量%超~40質量%
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高炉スラグ微粉末は、セメントに混合される材料として優れた品質を有するが、その生産量がそれほど多くないため、将来的には不足することが予想される。そのため、セメントクリンカ粉末の一部を、高炉スラグ微粉末以外の材料でも置換することで、セメントクリンカ粉末の使用量を減らすことができるセメントが求められている。
本発明の目的は、セメントクリンカ粉末の使用量を少なくすることができ、かつ、強度発現性に優れた混合セメント組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末を含み、セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末の合計量100質量%中、セメントクリンカ粉末の割合が47~59質量%であり、高炉スラグ微粉末の割合が22~43質量%であり、石灰石粉末の割合が、4~23質量%であり、セメントクリンカ粉末中のアルミネート相の割合が、13質量%を超え、17質量%以下である粉状の混合セメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]を提供するものである。
[1] セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末を含む粉状の混合セメント組成物であって、上記セメントクリンカ粉末、上記高炉スラグ微粉末、及び上記石灰石粉末の合計量100質量%中、上記セメントクリンカ粉末の割合が47~59質量%であり、上記高炉スラグ微粉末の割合が22~43質量%であり、上記石灰石粉末の割合が、4~23質量%であり、上記セメントクリンカ粉末中のアルミネート相の割合が、13質量%を超え、17質量%以下であることを特徴とする粉状の混合セメント組成物。
[2] 上記セメントクリンカ粉末100質量部に対して、SO3換算値で1.5~6.0質量部の石膏を含む前記[1]に記載の混合セメント組成物。
[3] 上記セメントクリンカ粉末中、エーライトの割合が54~63質量%であり、ビーライトの割合が8~17質量%であり、フェライト相の割合が9~12質量%である前記[1]又は[2]に記載の混合セメント組成物。
[4] 上記石灰石粉末のブレーン比表面積が3,000~20,000cm2/gである前記[1]~[3]のいずれかに記載の混合セメント組成物。
[5] 「JIS R 5201:2015 セメントの物理試験方法」に記載された方法によって測定される材齢7日の圧縮強さが、33MPa以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載の混合セメント組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の混合セメント組成物によれば、高炉スラグ微粉末及び石灰石粉末を使用することで、セメントクリンカ粉末の使用量を相対的に少なくすることができ、かつ、強度発現性(特に、材齢3~7日程度の初期強度発現性)を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の混合セメント組成物は、セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末を含む粉状の混合セメント組成物であって、セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末の合計量100質量%中、セメントクリンカ粉末の割合が47~59質量%であり、高炉スラグ微粉末の割合が22~43質量%であり、石灰石粉末の割合が、5質量%を超え、23質量%以下であり、セメントクリンカ粉末中のアルミネート相の割合が、13質量%を超え、17質量%以下であるものである。
なお、本明細書中、「混合セメント組成物」とは、複数の種類の粉状の材料を混合してなる、セメントクリンカ粉末を含む組成物を意味する。
【0008】
セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末の合計量100質量%中、セメントクリンカ粉末の割合は、47~59質量%、好ましくは49~58質量%、より好ましくは51~57質量%、特に好ましくは53~56質量%である。上記割合が47質量%未満であると、強度発現性が低下する。上記割合が59質量%を超えると、混合セメント組成物中のセメントクリンカ粉末の量が多くなり、クリンカ製造に伴う二酸化炭素の排出量を低減させるという効果が小さくなる。
【0009】
セメントクリンカ粉末中のアルミネート相(3CaO・Al2O3)の割合は、13質量%を超え、17質量%以下である。
上記割合は、廃棄物原単位を大きくすることができ(クリンカの原料として廃棄物をより多く使用することで、セメント組成物中の廃棄物由来の原料の割合を大きくすることができる)、かつ、初期強度発現性を向上させる観点からは、好ましくは13.5質量%以上、より好ましくは14.0質量%以上、特に好ましくは14.2質量%以上である。
また、上記割合は、混合セメント組成物を含むモルタル等の流動性及び作業性をより向上させる観点からは、好ましくは16.0質量%以下、より好ましくは15.5質量%以下、特に好ましくは15.2質量%以下である。
セメントクリンカ粉末中のエーライト(3CaO・SiO2)の割合は、好ましくは54~63質量%、より好ましくは55~62.5質量%、特に好ましくは56~62質量%である。上記割合が54質量%以上であれば、初期強度発現性がより向上する。上記割合が63質量%以下であれば、混合セメント組成物を含むモルタル等の流動性及び作業性がより向上する。
【0010】
セメントクリンカ粉末中のビーライト(2CaO・SiO2)の割合は、強度発現性等の観点から、好ましくは8~17質量%、より好ましくは8.5~16質量%、特に好ましくは9~15質量%である。なお、上記割合が8質量%以上であれば、長期強度発現性がより向上する。
セメントクリンカ粉末中のフェライト相(4CaO・Al2O3・Fe2O3)の割合は、強度発現性等の観点から、好ましくは9~12質量%、より好ましくは9.5~11.5質量%、特に好ましくは10~11質量%である。
【0011】
なお、本明細書中、セメントクリンカ粉末中のアルミネート相、エーライト、ビーライト、フェライト相の各割合は、セメントクリンカ粉末の全量(100質量%)中の割合として、セメントクリンカ原料やセメントクリンカ(焼成物)の化学成分に基づき、下記のボーグの計算式(1)~(4)を用いて算出される。
(1) エーライト(質量%)=(4.07×CaO(質量%))-(7.60×SiO2(質量%))-(6.72×Al2O3(質量%))-(1.43×Fe2O3(質量%))
(2) ビーライト(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))-(0.754×C3S(質量%))
(3) アルミネート相(質量%)=(2.65×Al2O3(質量%))-(1.69×Fe2O3(質量%))
(4) フェライト相(質量%)=3.04×Fe2O3(質量%)
【0012】
セメントクリンカの原料としては、セメントクリンカの製造に用いられる一般的な原料を用いることができる。具体的には、石灰石、生石灰、消石灰等のCaO原料、珪石、粘土等の珪素含有原料、粘土等のアルミニウム含有原料、鉄滓、鉄ケーキ等の鉄含有原料を使用することができる。
さらに、前記原料に加えて、産業廃棄物、一般廃棄物、及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料の一部として使用することができる。
セメントクリンカを製造する方法としては、上述した各原料を、得られるセメントクリンカ中、アルミネート相、エーライト、ビーライト、及びフェライト相の割合が、各々、所望の数値となるように混合し、得られた混合物を、好ましくは1,200~1,600℃、より好ましくは1,350~1,500℃で焼成する方法が挙げられる。
【0013】
セメントクリンカ粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2,500~7,000cm2/g、より好ましくは3,000~6,000cm2/g、特に好ましくは3,500~5,000cm2/gである。上記ブレーン比表面積が、2,500cm2/g以上であれば、強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が、7,000cm2/g以下であれば、混合セメント組成物を含むモルタル等の流動性及び作業性がより向上する。
【0014】
セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末の合計量100質量%中、高炉スラグ微粉末の割合は、22~43質量%、好ましくは24~41質量%、より好ましくは28~39質量%、特に好ましくは32~37質量%である。上記割合が22質量%未満であると、強度発現性が低下する。上記割合が43質量%を超えると、高炉スラグ微粉末の代わりに他の成分(石灰石粉末)を使用することで、高炉スラグ微粉末の使用量を低減するという効果が小さくなる。
【0015】
高炉スラグ微粉末の例としては、高炉で銑鉄を製造する際に副生する溶融状態のスラグを、水で急冷及び破砕して得られる水砕スラグの粉砕物等が挙げられる。
また、高炉スラグ微粉末の塩基度は、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.75以上、特に好ましくは1.8以上である。上記塩基度が1.7以上であれば、強度発現性がより向上する。
なお、塩基度は下記(5)式を用いて算出する。
塩基度=〔(CaO+MgO+Al2O3)/SiO2〕 ・・・(5)
(式中の化学式は、高炉スラグ微粉末中の、該化学式が表す化合物の含有率(%)を表す。)
【0016】
高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3,000~7,000cm2/g、より好ましくは3,500~6,000cm2/g、特に好ましくは4,000~5,000cm2/gである。上記ブレーン比表面積が、2,500cm2/g以上であれば、強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が、7,000cm2/g以下であれば、混合セメント組成物を含むモルタル等の流動性及び作業性がより向上する。
【0017】
セメントクリンカ粉末、高炉スラグ微粉末、及び石灰石粉末の合計量100質量%中、石灰石粉末の割合は、4~23質量%、好ましくは6~21質量%、より好ましくは7~20質量%、さらに好ましくは8~18質量%、特に好ましくは10質量%を超え、16質量%以下である。上記割合が4質量%未満であると、高炉スラグ微粉末の代わりに他の成分(石灰石粉末)を使用することで、高炉スラグ微粉末の使用量を低減させるという効果が小さくなる。上記割合が23質量%を超えると、強度発現性が低下する。
【0018】
石灰石粉末中の炭酸カルシウムの含有率は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。該含有率が90質量%以上であれば、強度発現性がより向上する。
石灰石粉末は、石灰石を粉砕したものでもよいが、生コンスラッジやコンクリートの粉末を炭酸化したものを用いてもよい。これら粉末によれば、本来は大気中に排出される二酸化炭素ガスを上記粉末に固定することができる。
【0019】
石灰石粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3,000~20,000cm2/g、より好ましくは3,500~18,000cm2/g、さらに好ましくは4,000~15,000cm2/g、さらに好ましくは4,200~10,000cm2/g、特に好ましくは4,500~9,500cm2/gである。上記ブレーン比表面積が、3,000cm2/g以上であれば、強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が、20,000cm2/g以下であれば、混合セメント組成物を含むモルタル等の流動性及び作業性がより向上する。
【0020】
混合セメント組成物は、凝結時間を調整して、作業性を向上させる目的で、石膏を含んでいてもよい。
混合セメント組成物に含まれる石膏の量は、強度発現性や、混合セメント組成物を含むモルタル等の流動性及び作業性の観点から、セメントクリンカ粉末100質量部に対して、SO3換算値で、好ましくは1.5~6.0質量部、より好ましくは1.8~5.5質量部、特に好ましくは2.0~5.2質量部である。
また、混合セメント組成物中の石膏の割合は、強度発現性や、混合セメント組成物を含むモルタル等の流動性及び作業性の観点から、SO3換算値で、好ましくは1.5~5.0質量%、より好ましくは1.8~4.5質量%、特に好ましくは2.0~4.0質量%である。
石膏の例としては、天然二水石膏、排煙脱硫石膏、リン酸石膏、チタン石膏、フッ酸石膏、精錬石膏、半水石膏、および、無水石膏等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明の混合セメント組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、(i)クリンカと高炉スラグと石灰石と石膏を同時に粉砕しながら混合する方法、(ii)予め粉砕してなるセメント(クリンカ粉末と石膏の混合物)と、予め粉砕してなる高炉スラグ微粉末と、予め粉砕してなる石灰石粉末を混合する方法等が挙げられる。
また、(ii)の方法において、予め粉砕してなる高炉スラグ微粉末として、石膏を含むもの(予め高炉スラグと石膏を同時に粉砕しながら混合したもの)を用いてもよい。
【0022】
本発明の混合セメント組成物と、水、骨材(細骨材、粗骨材)、及び必要に応じて配合される他の材料を混合することによって、ペースト、モルタル又はコンクリートを調製することができる。
本発明の混合セメント組成物の、「JIS R 5201:2015 セメントの物理試験方法」に記載された方法によって測定される材齢7日の圧縮強さは、好ましくは33MPa以上、より好ましくは33.5MPa以上、特に好ましくは34MPa以上である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)高炉スラグ微粉末;ブレーン比表面積:4,230cm2/g、密度:2.92g/cm3、塩基度:1.80
(2)石灰石粉末A;ブレーン比表面積:5,130cm2/g、炭酸カルシウムの含有率:95質量%以上、密度:2.72g/cm3
(3)石灰石粉末B;ブレーン比表面積:8,840cm2/g、炭酸カルシウムの含有率:95質量%以上、密度:2.72g/cm3
(4)石灰石粉末C;ブレーン比表面積:9,020cm2/g、炭酸カルシウムの含有率:95質量%以上、密度:2.72g/cm3
[高炉スラグ混合物の製造]
上記高炉スラグ微粉末と二水石膏(排煙脱硫石膏)を混合して、石膏の含有率が2.0質量%(SO3換算)である高炉スラグ混合物(高炉スラグ微粉末と石膏の混合物)を製造した。
[セメントA~Fの製造]
試薬を原料として、テスト用のキルンを用いて、セメントクリンカを焼成した後、セメントクリンカと、二水石膏(排煙脱硫石膏)及び半水石膏を、ミルを用いて粉砕及び混合することで、表1に示す鉱物組成及びブレーン比表面積を有するセメントA~F(セメントクリンカ粉末と石膏の混合物)を調製した。石膏の半水化率は、セメントA~C、Eにおいては50%、セメントDにおいては76%とした。
また、セメントFの調製において、石膏としては二水石膏のみを使用した。
【0024】
【0025】
[実施例1~11、比較例1~10]
表2に示す種類のセメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末を、表2に示す量で混合して、混合セメント組成物を得た。
混合セメント組成物について、「JIS R 5201:2015 セメントの物理試験方法」に記載された方法に準拠して、材齢3日、7日、28日の圧縮強さを測定した。
また、混合セメント組成物のモルタルフロー値を、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、15回の落下運動を行って測定した。
【0026】
なお、混合セメント組成物に含まれる、セメントクリンカ粉末(表2~4中、「クリンカ」と示す。)と、高炉スラグ微粉末(表2~4中、「高炉スラグ」と示す。)と、石灰石粉末(表2~4中、「石灰石」と示す。)の合計量100質量%中の、セメントクリンカ粉末等の割合、及び、クリンカ粉末100質量部に対する、石膏の量(SO3換算値)は、表2~4に示すとおりである。
結果を表2に示す。
【0027】
【0028】
[実施例12~19、比較例11~12]
表3に示す種類のセメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末を、表3に示す量で混合して、混合セメント組成物を得た。得られた混合セメント組成物について、実施例1と同様にして、圧縮強さ等を測定した。
結果を表3に示す。
【0029】
【0030】
[実施例20]
表4に示す種類のセメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末を、表4に示す量で混合して、混合セメント組成物を得た。得られた混合セメント組成物について、実施例1と同様にして、圧縮強さ等を測定した。
[実施例21~23]
表4に示す種類のセメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末を混合して混合物を得た。セメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末の配合量は、表4に示す量に定めた。
次いで、上記混合物と二水石膏を混合して、混合セメント組成物を得た。上記混合物と混合される二水石膏(セメント及び高炉スラグ混合物に含まれる石膏とは別に混合されるもの)の量は、セメントクリンカ粉末に対する石膏量(セメント及び高炉スラグ混合物に含まれる石膏と、二水石膏の合計量)が、表4に示す量となるように定めた。得られた混合セメント組成物について、実施例1と同様にして、圧縮強さ等を測定した。
【0031】
[実施例24]
表4に示す種類のセメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末を混合して混合物を得た。セメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末の配合量は、表4に示す量に定めた。
次いで、上記混合物と、二水石膏と、無水石膏を混合して、混合セメント組成物を得た。上記混合物と混合される、二水石膏及び無水石膏(セメント及び高炉スラグ混合物に含まれる石膏とは別に混合されるもの)の量は、セメントクリンカ粉末に対する石膏量(セメント及び高炉スラグ混合物に含まれる二水石膏と、無水石膏の合計量)が、表4に示す量となり、かつ、セメント及び高炉スラグ混合物に含まれる二水石膏と、無水石膏の合計量100質量%中、二水石膏の割合が72質量%、無水石膏の割合が28質量%になる量に定めた。得られた混合セメント組成物について、実施例1と同様にして、圧縮強さ等を測定した。
【0032】
[実施例25]
表4に示す種類のセメントと、高炉スラグ混合物と、石灰石粉末を、表4に示す量で混合して、混合セメント組成物を得た。得られた混合セメント組成物について、実施例1と同様にして、圧縮強さ等を測定した。
[実施例26~28]
実施例21と同様にして、混合セメント組成物を得た。得られた混合セメント組成物について、実施例1と同様にして、圧縮強さ等を測定した。
【0033】
[実施例29]
二水石膏及び無水石膏(セメント及び高炉スラグ混合物に含まれる石膏とは別に混合されるもの)の量を、セメント及び高炉スラグ混合物に含まれる石膏と、二水石膏及び無水石膏の合計量100質量%中、二水石膏の割合が78質量%、無水石膏の割合が22質量%になる量に定めた以外は、実施例24と同様にして混合セメント組成物を得た。得られた混合セメント組成物について、実施例1と同様にして、圧縮強さ等を測定した。
【0034】
【0035】
表2~3から、実施例1~3と比較例1~2を比較すると、実施例1~3(石灰石粉末の割合:10.3~20.5質量%)の材齢3~7日のモルタル圧縮強さ(3日:21.8~21.9MPa、7日:34.1~37.0MPa)は、比較例1~2(石灰石粉末の割合:0~2.6質量%)の材齢3~7日のモルタル圧縮強さ(3日:18.5~21.3MPa、7日:28.4~32.1MPa)よりも大きく、初期強度発現性に優れていることがわかる。特に、実施例1~2(石灰石粉末の割合:10.3~15.4質量%)は、初期強度発現性に特に優れていることがわかる。
また、実施例4~7と比較例3~4を比較すると、実施例4~7(石灰石粉末の割合:5.1~20.5質量%)の材齢3~7日のモルタル圧縮強さ(3日:22.3~24.0MPa、7日:33.8~36.3MPa)は、比較例3~4(石灰石粉末の割合:0~2.6質量%)の材齢3~7日のモルタル圧縮強さ(3日:18.4~20.7MPa、7日:27.3~30.1MPa)よりも大きく、初期強度発現性に優れていることがわかる。特に、実施例5~6(石灰石粉末の割合:10.3~15.4質量%)は、初期強度発現性に特に優れていることがわかる。
同様の傾向は、実施例8~11と比較例5~6の比較、実施例12~15と比較例11~12の比較、実施例16~19と比較例13~14の比較においてもみられる。
また、アルミネート相の割合が9.1~9.3質量%であるセメントD~Eを用いた比較例7~10では、材齢3~7日のモルタル圧縮強さが小さい(3日:15.7~17.6MPa、7日:25.2~32.8MPa)ことがわかる。
【0036】
さらに、表4から、実施例20~29(セメントクリンカ粉末の割合:51.1~51.9質量%、高炉スラグ微粉末の割合:27.6~38.2質量%、石灰石粉末の割合:10.4~20.9質量%)の材齢3~28日のモルタル圧縮強さ(3日:22.0~23.0MPa、7日:34.0~38.5MPa、28日:51.1~54.6MPa)は、実施例1~19の材齢3~28日のモルタル圧縮強さと同程度であることがわかる。このことから、セメントクリンカ粉末の配合割合(51.1~51.9質量%)が少なくても、初期強度発現性(特に、材齢3~7日)に優れていることがわかる。
また、二水石膏のみを用いた実施例20~23と、二水石膏及び無水石膏を用いた実施例24を比較すると、材齢3~28日のモルタル圧縮強さは同程度であり、石膏の種類による影響はみられないことがわかる。同様の傾向は、実施例25~28と実施例29の比較でも見られた。