(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】機能性物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/62 20220101AFI20250115BHJP
C12P 7/22 20060101ALI20250115BHJP
C12P 7/26 20060101ALI20250115BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
C12P7/62
C12P7/22
C12P7/26
C12N1/20 A
(21)【出願番号】P 2021050832
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 彬
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩明
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-115858(JP,A)
【文献】特開2003-261559(JP,A)
【文献】特表2010-539079(JP,A)
【文献】特表2008-532558(JP,A)
【文献】PARAISO, Ines L. et al.,Reductive Metabolism of Xanthohumol and 8-Prenylnaringenin by the Intestinal Bacterium Eubacterium r,Mol. Nutr. Food Res.,2019年,Vol. 63, 1800923,p. 1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12N 1/00-7/08
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDremIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スコパロンを含有する溶液において、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する
ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株に、スコパロンか
らエスクレチンを産生させる工程を含む、エスクレチンの製造方法。
【請求項2】
ヘスペレチンを含有する溶液において、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する
ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株に、ヘ
スペレチンからエリオジクチオールを産生させる工程を含む、エリオジクチオールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能性物質の製造方法に関する。詳細には、エスクレチン、4-アセチルレソルシノール、又はエリオジクチオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノールには、化粧品や医薬品、健康食品の有効成分として用いられているものがある。例えば、エスクレチン、4-アセチルレソルシノール、エリオジクチオールなどがある。
【0003】
エスクレチンは、化粧料や抗炎症用皮膚外用剤、抗肥満剤などに配合されている(特許文献1~3)。エスクレチンは、セイヨウトチノキからエタノール抽出や熱水抽出により得られること(特許文献3)、6-ヒドロキシ-7-メトキシクマリンと1,2-ジクロロエタンとを含む溶液と、塩化アルミニウムとを反応させて得られることが報告されている(特許文献4)。
【0004】
4-アセチルレソルシノールは、アレルギー性疾患治療薬の原料である2,4-ジヒドロキシ-3-プロピルアセトフェノンの合成中間体として、また、感光材料や日焼け止め化粧品の原料として有用な化合物である。4-アセチルレソルシノールは、レゾルシノールと酢酸とをプロトン酸触媒の存在下、水を除去しながら反応させて得られることが報告されている(特許文献5)。
【0005】
エリオジクチオールは、67LR依存的な細胞致死誘導経路を担うAktの活性化を促進する
ことでEGCGの抗がん作用を増強すること、緑茶の体脂肪蓄積抑制作用や脂質代謝異常予防作用において相乗的な効果を示すことが報告されている(非特許文献1)。エリオジクチオールは、ヘスペレチンを原料としてブラウティア・エスピー(Blautia sp.)MRG-PMF1
株により産生されることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-161727号公報
【文献】特開2006-28094号公報
【文献】特開2009-292811号公報
【文献】特開2003-261559号公報
【文献】特開平08-225484号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】日本栄養・食糧学会誌 第72巻 第5号 205-210 (2019)
【文献】J. Agric. Food Chem., 62, 12377-12383 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の課題は、少なくとも、側鎖にメトキシ基を有する所定のポリフェノールから、該メトキシ基のメチル基が脱離した所定の脱メチル化ポリフェノールを製造する技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>スコパロンを含有する溶液において、スコパロンからエスクレチンを産生する能力
を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物及び/又はユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物に、スコパロンからエスクレチンを産生させる工程を含む、エスクレチンの製造方法。
<2>パエオノールを含有する溶液において、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物に、パエオノー
ルから4-アセチルレソルシノールを産生させる工程を含む、4-アセチルレソルシノールの製造方法。
<3>ヘスペレチンを含有する溶液において、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有するユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物に、ヘスペレチ
ンからエリオジクチオールを産生させる工程を含む、エリオジクチオールの製造方法。
<4>前記ブラウティア(Blautia)属に属する微生物がブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652 (NITE BP-02924)株である、<1>に記載の製造方法。
<5>前記ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物がユーバクテリウム・リ
モスム(Eubacterium limosum)に属する微生物である、<1>又は<4>に記載の製造
方法。
<6>前記ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)に属する微生物がユー
バクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株である、<5>に記載の製
造方法。
<7>前記ブラウティア(Blautia)属に属する微生物がブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652 (NITE BP-02924)株である、<2>に記載の製造方法。
<8>前記ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物がユーバクテリウム・リ
モスム(Eubacterium limosum)に属する微生物である、<3>に記載の製造方法。
<9>前記ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)に属する微生物がユー
バクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株である、<8>に記載の製
造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、少なくとも、側鎖にメトキシ基を有する所定のポリフェノールから、該メトキシ基のメチル基が脱離した所定の脱メチル化ポリフェノールを製造する技術の提供という効果を奏し得、そのための有用な微生物を提供するという効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0012】
エスクレチンは、6,7-ジヒドロキシクマリンなどと称されることがある。
4-アセチルレソルシノールは、2,4-ジヒドロキシアセトフェノン、2’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン、レスアセトフェノン、2,4-DHAPなどと称されることがある。
エリオジクチオールは、(S)-3’,4’,5,7-テトラヒドロキシフラバノンなどと称されることがある。
【0013】
本開示において、JCM番号が付与された微生物は、Japan Collection of Microorganisms(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室、郵便番号
:305-0074、住所:茨城県つくば市高野台3-1-1)から入手することができる。
【0014】
<エスクレチンの製造方法>
本開示の一態様は、スコパロンを含有する溶液において、スコパロンからエスクレチン
を産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物及び/又はユーバ
クテリウム(Eubacterium)属に属する微生物に、スコパロンからエスクレチンを産生さ
せる工程を含む、エスクレチンの製造方法である。
尚、スコパロンは側鎖に2個のメトキシ基を有する。そのうち1個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したものはスコポレチン又はイソスコポレチンであり、2個のメトキシ基のメチル基が脱離して生成したものはエスクレチンであるが、本態様においては、エスクレチンが産生されれば、スコポレチンが産生されてもよいし、イソスコポレチンが産生されてもよいし、両者が産生されてもよい。
【0015】
(スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物)
本態様で用いられる、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物は、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属
する微生物及び/又はユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物である。
尚、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物は、ブラウティア(Blautia)属に属する細菌と読み替えることができ、ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物は
、ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する細菌と読み替えることができる。
【0016】
ブラウティア(Blautia)属に属する微生物としては、スコパロンからエスクレチンを
産生する能力を有する限り特に限定されないが、例えば、ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)に属する微生物(例えば、JCM 1471株等)、ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)に属する微生物(例えば、JCM 1395株等)、ブラウティア・シ
ンキ(Blautia schinki)に属する微生物(例えば、JCM 14657株等)、ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物(例えば、JCM 32276株等)等が挙げられる。
上記のほかにも、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)
株、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3653(NITE BP-02629)株、ブラウティ
ア・エスピー(Blautia sp.)DC 3654(NITE BP-02925)株等が挙げられる。好ましくは
、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株である。
【0017】
ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株は、ブダペスト
条約に基づいて、2019年3月20日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄
託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に国際寄託され、NITE BP-02924の受託番号が付与されたものである。
ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3653(NITE BP-02629)株は、2018年2月7
日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に国内寄託され、NITE P-02629の受託番号が付与
され、2018年12月27日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管請求され、NITE BP-02629の受託番号が付与されたものである。
ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3654(NITE BP-02925)株は、ブダペスト
条約に基づいて、2019年3月20日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄
託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に国際寄託され、NITE BP-02925の受託番号が付与されたものである。
【0018】
ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)JCM 1471株を例にして説明すると、本態様では、ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)JCM 1471株は、同寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、同寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、前記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.5%以上、好ましくは98.7%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を有する菌株である。さらに、前記寄託菌株は、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有す
る限り、前記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する、既出の他の寄託菌株についても同様である。
【0019】
ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物としては、スコパロンからエスク
レチンを産生する能力を有する限り特に限定されないが、例えば、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)に属する微生物(例えば、JCM 6421株、JCM 6501株、JCM
9978株等)等が挙げられる。好ましくは、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株である。
【0020】
ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を例にして説明する
と、本態様では、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株は、
同寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、同寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、前記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.5%以上、好ましくは98.7%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を有する菌株である。さらに、前記寄託菌株は、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する限り、前記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有するユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する、既出の他の寄託菌株についても同様である。
【0021】
本態様では、前記微生物は一種でも二種以上を用いてもよく、一株でも二株以上を用いてもよい。
【0022】
(スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物の静止体)
本態様における、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物及び/又はユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物は、その静止体を含む。
静止体とは、培養した微生物から遠心分離等の操作により培地成分を取り除き、塩溶液や緩衝液で洗浄し、該洗浄液と同一の液に懸濁した微生物体であって、増殖しない状態の微生物体を指し、本態様においては、少なくとも、スコパロンからエスクレチンを生成できる代謝系を有している微生物体をいう。尚、該微生物は、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する細菌及び/又はユーバク
テリウム(Eubacterium)属に属する細菌であるから、前記静止体は静止菌体である。
塩溶液の例としては、生理食塩水等が挙げられる。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、トリス-塩酸緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MOPS緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液等が挙げられる。いずれも、pHや濃度は、常法に従い適宜調製できる。
【0023】
(スコパロンを含有する溶液)
本態様における、スコパロンを含有する溶液とは、該溶液において、前記微生物に、スコパロンからエスクレチンを生成させることができるものであれば特に制限されない。好ましくは培地であり、より好ましくは後述する「培地、及び培養によるエスクレチンの生成」欄に記載した培地である。また、前記微生物が静止体である場合には、前述した塩溶液や緩衝液が好ましい。
尚、本明細書に記載されている「培地」とは、いずれも、最少培地を含む、微生物が増殖できる溶液をいい、微生物が増殖できない溶液、例えば、前述した塩溶液や緩衝液など
を含まないものとする。
【0024】
前記スコパロンを該溶液へ添加する場合には、エスクレチンの生成前に添加しても、その途中で添加してもよく、また、一括添加、逐次添加、連続添加でもよい。
前記スコパロンの溶液中の含有量は、通常0.001g/L以上、好ましくは0.01g/L以上、より好ましくは0.05g/L以上である。一方、通常100g/L以下、好ましくは20g/L以下、より好ましくは10g/L以下である。
【0025】
(培地、及び培養によるエスクレチンの生成)
前記スコパロンからエスクレチンを産生させる工程では、前記溶液が培地であることが好ましい。該培地は特に限定されないが、例えば、Oxoid社製のANAEROBE BASAL BROTH (ABB培地)、Oxoid社製のWilkins-Chalgren Anaerobe Broth (CM0643)、日水製薬株式会社製のGAM培地、変法GAM培地、ブレインハートインヒュージョン培地等を使用することができる。
【0026】
また、培地に水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、以下の化合物を挙げることができる。すなわち、グルコース、アラビノース、ソルビトール、フラクトース、マンノース、スクロース、トレハロース、キシロースなどの糖類;グリセロールなどのアルコール類;吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸、フマル酸などの有機酸類などを挙げることが出来る。
【0027】
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に発育させるために適宜調節することができる。一般的には、0.1~10wt/vol%の範囲から添加量を選択することができる。
【0028】
前記の炭素源に加えて、培地に窒素源を加えることができる。窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。
好ましい無機窒素源として、アンモニウム塩、硝酸塩などを、より好ましくは、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダなどを挙げることが出来る。
また、有機窒素源としては、アミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンN、大豆ペプトンなど)、肉エキス(例えばエールリッヒカツオエキス、ラブ-レムコ末、ブイヨンなど)、魚介類エキス、肝臓エキス、消化血清末、魚油などを挙げることが出来る。
【0029】
さらに、炭素源や窒素源に加えて、例えば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類、脂肪酸など、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
【0030】
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム ビタミンK
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
酢酸ナトリウム三水和物
硫酸マグネシウム七水和物
硫酸マンガン四水和物
【0031】
また、培地中に、システイン、シスチン、硫化ナトリウム、亜硫酸塩、アスコルビン酸、グルタチオン、チオグリコール酸、ルチンなどの還元剤や、カタラーゼ、スーパーオキシドムターゼなどの活性酸素種を分解する酵素を添加することは、前記微生物の生育が良好になることがあるため、その場合には好ましい。
【0032】
培養中の気相、水相としては、空気及び/又は酸素を含まないことが好ましく、例えば、窒素及び/又は水素を任意の比率で含むことや、窒素及び/又は二酸化炭素を任意の比率で含むことが挙げられ、水素を含む気相や水相であることが好ましい。気相における水素の割合は、エスクレチンの生成が促進されることから、通常0.5 vol%以上、好ましく
は1.0 vol%以上、より好ましくは2.0 vol%以上であり、一方、通常100 vol%以下、好
ましくは20 vol%以下、より好ましくは10 vol%以下である。
【0033】
培養中の気相や水相をこのような環境にする方法は特に制限されないが、例えば、培養前に前記ガスで気相を置換する方法、これに加えて、培養中も培養器の底部から供給する及び/又は培養器の気相部に供給する方法、培養前に前記ガスで水相をバブリングするなどの方法をとることが出来る。前記水素は、水素ガスをそのまま用いてもよい。また、培地にギ酸及び/又はその塩などの水素の原料を添加し、微生物の作用により培養中に水素を生成してもよい。
【0034】
通気量としては、好ましくは0.005~2vvmであり、0.05~0.5vvmがより好ましい。また、混合ガスはナノバブルとして供給することもできる。
培養温度は、好ましくは20℃~45℃、より好ましくは25℃~40℃、さらに好ましくは30℃~37℃である。
培養器の加圧条件は、生育できる条件であれば特に限定されるものではないが、好ましくは0.001~1MPaの範囲、より好ましくは0.01~0.5MPaである。
培養時間としては、好ましくは8~340時間、より好ましくは12~170時間、さらに好ましくは16~120時間である。
【0035】
また、培養液に界面活性剤、吸着剤、包摂化合物などを添加することにより、エスクレチンの生成を促進できることがあるため、その場合には好ましい。
界面活性剤としては、例えば、Tween 80等が挙げられ、0.001g/L以上10g/L以下程度添加することが出来る。
吸着剤としては、例えば、セルロース及びその誘導体;デキストリン;三菱化学株式会社製の疎水吸着剤であるダイアイオンHPシリーズやセパビーズシリーズ;オルガノ株式会社製のアンバーライトXADシリーズなどを挙げることができる。
【0036】
包摂化合物としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、クラスターデキストリン(高度分岐環状デキストリン)のほか、これらの類縁体でもよく、例えば、メチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-
シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどを挙げることができる。この中で、γ-シクロデキストリンは最も効果的であることがあるため、その場合には好ましい。また、2種以上の包摂化合物を共存させることにより、エスクレチンの生成を更に促進できることがあるため、その場合には好ましい。
添加量としては、スコパロンを1としたときのモル比の総量で、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上であり、一方、通常5.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。
【0037】
(スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物の静止体によるエスクレチンの生成)
前記微生物が静止体である場合の溶液は、前記培地の代わりに、前記「スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物の静止体」欄に記載した塩溶液や緩衝液が好ましい。
その他の条件については、前記「培地、及び培養によるエスクレチンの生成」欄の記載を援用する。
【0038】
(その他の工程)
本態様は、例えば、得られたエスクレチンを定量する工程を含んでもよい。その方法は常法に従うことができる。たとえば、培養液の一部を採取して適宜希釈し、よく撹拌した後、ポリテロラフルオロエチレン(PTFE)膜などの膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィーで定量することなどが挙げられる。
【0039】
また、本態様は、得られたエスクレチンを回収する工程を含んでもよい。当該回収工程は、精製工程や濃縮工程等を含む。精製工程における精製処理としては、熱などによる微生物の殺菌;精密濾過(MF)、限外濾過(UF)などによる除菌;固形物、高分子物質の除去;有機溶媒やイオン性液体などによる抽出;疎水性吸着剤、イオン交換樹脂、活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮工程における濃縮処理としては、エバポレーター、逆浸透膜等による濃縮が挙げられる。
さらに、得られたエスクレチンを含む溶液は、凍結乾燥、噴霧乾燥などにより粉末化することができる。粉末化において、ラクトース、デキストリン、コーンスターチ等の賦形剤を添加することもできる。
【0040】
<4-アセチルレソルシノールの製造方法>
本開示の一態様は、パエオノールを含有する溶液において、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する微生物
に、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生させる工程を含む、4-アセチルレソルシノールの製造方法である。
【0041】
(パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する微生物)
本態様で用いられる、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する微生物は、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物である。
尚、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物は、ブラウティア(Blautia)属に属する細菌と読み替えることができる。
【0042】
ブラウティア(Blautia)属に属する微生物としては、パエオノールから4-アセチル
レソルシノールを産生する能力を有する限り特に限定されないが、例えば、ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)に属する微生物(例えば、JCM 1471株等)、ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)に属する微生物(例えば、JCM 1395株等)、
ブラウティア・シンキ(Blautia schinki)に属する微生物(例えば、JCM 14657株等)、
ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物(例えば、JCM 32276株等)等が挙げられる。
上記のほかにも、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)
株、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3653(NITE BP-02629)株、ブラウティ
ア・エスピー(Blautia sp.)DC 3654(NITE BP-02925)株等が挙げられる。好ましくは
、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株である。
【0043】
ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株、ブラウティア
・エスピー(Blautia sp.)DC 3653(NITE BP-02629)株、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3654(NITE BP-02925)株の寄託情報については既出のとおりである。
【0044】
ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)JCM 1471株を例にして説明すると、本態様では、ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)JCM 1471株は、同寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、同寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、前記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.5%以上、好ましくは98.7%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を有する菌株である。さらに、前記寄託菌株は、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する限り、前記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する、既出の他の寄託菌株についても同様である。
【0045】
本態様では、前記微生物は一種でも二種以上を用いてもよく、一株でも二株以上を用いてもよい。
【0046】
(パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する微生物の静止体)
本態様における、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物は、その静止体を含む。
該静止体の詳細については、前記「スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物の静止体」欄の記載を、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する微生物の静止体の場合として援用する。
【0047】
(パエオノールを含有する溶液)
本態様における、パエオノールを含有する溶液の詳細については、前記「スコパロンを含有する溶液」欄の記載を、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生させる場合として援用する。
【0048】
(培地、及び培養による4-アセチルレソルシノールの生成)
前記パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生させる工程の詳細については、前記「培地、及び培養によるエスクレチンの生成」欄の記載を、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生させる場合として援用する。
【0049】
(パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する微生物の静止体による4-アセチルレソルシノールの生成)
前記微生物が、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する微生物の静止体である場合の溶液は、前記「スコパロンからエスクレチンを産生する能力
を有する微生物の静止体」欄に記載した塩溶液や緩衝液が好ましい。
その他の条件については、前記「培地、及び培養によるエスクレチンの生成」欄の記載を、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生させる場合として援用する。
【0050】
(その他の工程)
本態様は、例えば、得られた4-アセチルレソルシノールを定量する工程を含んでもよい。得られた4-アセチルレソルシノールを定量する工程の詳細については、前記態様に係る「エスクレチンの製造方法」における前記「その他の工程」欄の記載を、得られた4-アセチルレソルシノールを定量する工程として援用する。
【0051】
また、本態様は、得られた4-アセチルレソルシノールを回収する工程を含んでもよい。得られた4-アセチルレソルシノールを回収する工程の詳細については、前記態様に係る「エスクレチンの製造方法」における前記「その他の工程」欄の記載を、得られた4-アセチルレソルシノールを回収する工程として援用する。
【0052】
<エリオジクチオールの製造方法>
本開示の一態様は、ヘスペレチンを含有する溶液において、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有するユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物
に、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生させる工程を含む、エリオジクチオールの製造方法である。
【0053】
また、ヘスペレチンを含有する溶液において、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する微生物は、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物及び/又はユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物であってもよい。
尚、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物は、ブラウティア(Blautia)属に属する細菌と読み替えることができ、ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物は
、ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する細菌と読み替えることができる。
【0054】
ブラウティア(Blautia)属に属する微生物としては、ヘスペレチンからエリオジクチ
オールを産生する能力を有する限り特に限定されないが、例えば、ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)に属する微生物(例えば、JCM 1471株等)、ブラウティア・コッコイデス(Blautia coccoides)に属する微生物(例えば、JCM 1395株等)、ブラウテ
ィア・シンキ(Blautia schinki)に属する微生物(例えば、JCM 14657株等)、ブラウティア・ホミニス(Blautia hominis)に属する微生物(例えば、JCM 32276株等)等が挙げられる。
上記のほかにも、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)
株、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3653(NITE BP-02629)株、ブラウティ
ア・エスピー(Blautia sp.)DC 3654(NITE BP-02925)株等が挙げられる。好ましくは
、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株である。
【0055】
ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株、ブラウティア
・エスピー(Blautia sp.)DC 3653(NITE BP-02629)株、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3654(NITE BP-02925)株の寄託情報については既出のとおりである。
【0056】
ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)JCM 1471株を例にして説明すると、本態様では、ブラウティア・プロダクタ(Blautia prodacta)JCM 1471株は、同寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、同寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺
伝子の塩基配列が、前記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.5%以上、好ましくは98.7%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を有する菌株である。さらに、前記寄託菌株は、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する限り、前記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有するブラウティア(Blautia)属に属する、既出の他の寄託菌株についても同様である。
【0057】
ユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物としては、ヘスペレチンからエリ
オジクチオールを産生する能力を有する限り特に限定されないが、例えば、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)に属する微生物(例えば、JCM 6421株、JCM 6501株、JCM 9978株等)等が挙げられる。好ましくは、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株である。
【0058】
ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を例にして説明する
と、本態様では、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株は、
同寄託菌株に制限されず、同寄託菌株と実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、同寄託菌株と同属又は同種に属する菌株であって、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する菌株をいう。また、実質的に同等の菌株とは、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、前記寄託菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.5%以上、好ましくは98.7%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%の相同性を有する菌株である。さらに、前記寄託菌株は、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する限り、前記寄託菌株又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このことは、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有するユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する、既出の他の寄託菌株についても同様である。
【0059】
本態様では、前記微生物は一種でも二種以上を用いてもよく、一株でも二株以上を用いてもよい。
【0060】
(ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する微生物の静止体)
本態様における、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する、ブラウティア(Blautia)属に属する微生物及び/又はユーバクテリウム(Eubacterium)属に属する微生物は、その静止体を含む。
該静止体の詳細については、前記「スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物の静止体」欄の記載を、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する微生物の静止体の場合として援用する。
【0061】
(ヘスペレチンを含有する溶液)
本態様における、ヘスペレチンを含有する溶液の詳細については、前記「スコパロンを含有する溶液」欄の記載を、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生させる場合として援用する。
【0062】
(培地、及び培養によるエリオジクチオールの生成)
前記ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生させる工程の詳細については、前記「培地、及び培養によるエスクレチンの生成」欄の記載を、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生させる場合として援用する。
【0063】
(ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する微生物の静止体によるエ
リオジクチオールの生成)
前記微生物が、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する微生物の静止体である場合の溶液は、前記「スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物の静止体」欄に記載した塩溶液や緩衝液が好ましい。
その他の条件については、前記「培地、及び培養によるエスクレチンの生成」欄の記載を、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生させる場合として援用する。
【0064】
(その他の工程)
本態様は、例えば、得られたエリオジクチオールを定量する工程を含んでもよい。得られたエリオジクチオールを定量する工程の詳細については、前記態様に係る「エスクレチンの製造方法」における前記「その他の工程」欄の記載を、得られたエリオジクチオールを定量する工程として援用する。
【0065】
また、本態様は、得られたエリオジクチオールを回収する工程を含んでもよい。得られたエリオジクチオールを回収する工程の詳細については、前記態様に係る「エスクレチンの製造方法」における前記「その他の工程」欄の記載を、得られたエリオジクチオールを回収する工程として援用する。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を記載するが、いずれの実施例も、限定的な意味として解釈される実施例ではない。
【0067】
<実施例1>
Wilkins-Chalgren Anaerobe broth(Thermo Fisher Scientific製)にスコパロン(後
述するように、微生物としてブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株を用いた場合には終濃度50 mg/L、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を用いた場合には終濃度100 mg/L)を添加した後、加熱滅菌し、気
相をN2:CO2:H2(80%:10%:10%)ガスで置換したものを発酵培地として用いた。当該発酵培地に、スコパロンからエスクレチンを産生する能力を有する微生物としてブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株、又はユー
バクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を植菌し、37℃で72時間、
嫌気培養した。培養後、培養液5 mLに対して3倍量のエタノールで希釈し、0.45 μmのフ
ィルターでろ過した後、ろ液を用いて下記条件のHPLCによりエスクレチンの定量分析を行った。
【0068】
(HPLC条件)
カラム: Inertsil ODS-3 (4.6 mm x 25 cm, 5 μm)
溶離液A: H2O/Formic acid (99/1)
溶離液B: Acetonitrile/Formic acid (99/1)
勾配条件: B液 0-5 min (20%) →10 min (70%) → 30 min (70%)
カラム温度: 40℃
流速: 1.0 mL/min
検出: UV at 340 nm
【0069】
培養の結果、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株を
用いた場合には、スコパロンの6.1%がエスクレチンに変換された。ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を用いた場合には、スコパロンの14.4%がエスクレチンに変換された。
【0070】
<実施例2>
変法GAM培地(日水製薬製)にパエオノール(終濃度50 mg/L)を添加した後、加熱滅菌し、気相をN2:CO2:H2(80%:10%:10%)ガスで置換したものを発酵培地として用いた。当該発酵培地に、パエオノールから4-アセチルレソルシノールを産生する能力を有する微生物としてブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株を植菌し、37℃で72時間、嫌気培養した。培養後、培養液5 mLに対して3倍量のエタノールで希釈し、0.45 μmのフィルターでろ過した後、ろ液を用いて下記条件のHPLCにより4-アセチルレソルシノールの定量分析を行った。
【0071】
(HPLC条件)
カラム: Inertsil ODS-3 (4.6 mm x 25 cm, 5 μm)
溶離液A: H2O/Formic acid (99/1)
溶離液B: Acetonitrile/Formic acid (99/1)
勾配条件: B液 0-5 min (20%) →10 min (70%) → 30 min (70%)
カラム温度: 40℃
流速: 1.0 mL/min
検出: UV at 280 nm
【0072】
培養の結果、パエオノールの2.2%が4-アセチルレソルシノールに変換された。
【0073】
<実施例3>
Wilkins-Chalgren Anaerobe broth(Thermo Fisher Scientific製)にヘスペレチン(
後述するように、微生物としてブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株を用いた場合には終濃度250 mg/L、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を用いた場合には終濃度100 mg/L)を添加した後、加熱滅菌し、気相をN2:CO2:H2(80%:10%:10%)ガスで置換したものを発酵培地として用いた。当該発酵培地に、ヘスペレチンからエリオジクチオールを産生する能力を有する微生物としてブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株
、又はユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を植菌し、37℃
で72時間、嫌気培養した。培養後、培養液5 mLに対して3倍量のエタノールで希釈し、0.45 μmのフィルターでろ過した後、ろ液を用いて下記条件のHPLCによりエリオジクチオー
ルの定量分析を行った。
【0074】
(HPLC条件)
カラム: Inertsil ODS-3 (4.6 mm x 25 cm, 5 μm)
溶離液A: H2O/Formic acid (99/1)
溶離液B: Acetonitrile/Formic acid (99/1)
勾配条件: B液 0-5 min (20%) →10 min (50%) → 30 min (50%)
カラム温度: 40℃
流速: 1.0 mL/min
検出: UV at 280 nm
【0075】
培養の結果、ブラウティア・エスピー(Blautia sp.)DC 3652(NITE BP-02924)株を
用いた場合には、ヘスペレチンの39.9%がエリオジクチオールに変換された。ユーバクテ
リウム・リモスム(Eubacterium limosum)JCM 6421株を用いた場合には、ヘスペレチン
の10.1%がエリオジクチオールに変換された。