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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/74 20060101AFI20250115BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20250115BHJP
   B03C 3/47 20060101ALI20250115BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20250115BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20250115BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20250115BHJP
   F24F 8/10 20210101ALI20250115BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20250115BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B03C3/74 Z
B03C3/40 A
B03C3/47
A61L9/20
A61L9/16 Z
F24F8/22
F24F8/10
F24F8/80 140
F24F13/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021056710
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022153929
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年8月24日付にて株式会社イプロスがウェブサイトで公開 令和2年9月29日付にて株式会社日本経済新聞社がウェブサイトで公開 令和2年9月30日付にて株式会社日本経済新聞社が新聞で公開 令和2年9月30日付にてアマノ株式会社の自社ウェブサイトで公開 令和2年10月14日から令和2年10月16日開催の第3回介護&看護EXPOで公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 優治
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳浩
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0134069(KR,A)
【文献】特開2006-175377(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0786710(KR,B1)
【文献】特開平07-213943(JP,A)
【文献】中国実用新案第212227150(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
B03C 3/00 - 11/00
F24F 8/00 - 8/99
F24F 13/08 - 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の粒子を帯電させて捕集した後、殺菌及び又は不活化させる空気清浄装置であって、
高電圧を印加して粒子を帯電させる荷電部と、
前記荷電部で帯電された粒子を集塵する集塵部と、
紫外線を照射して粒子を殺菌及び又は不活化させる殺菌部と、
を備え、
前記殺菌部は、前記荷電部と前記集塵部をそれぞれ挟む位置に対向して配置され
前記殺菌部には、照射される紫外線を前記荷電部側と前記集塵部側に反射させる反射板を備え、
前記反射板は、汚染空気領域と清浄空気領域との間を連通可能且つ開閉可能な連通部を備え、前記殺菌部に電源を供給する紫外線電源部は清浄空気領域に設けられ
ていることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記殺菌部は、前記荷電部と前記集塵部に近接した位置で空気の流通路から離間した位置に配置されている請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記荷電部には、高電圧が印加される放電極を支持する複数の支持基板が空気の流通方向に沿って平行に設けられ、
前記集塵部には、高電圧が印加される高電圧電極板と、該高電圧電極板に印加された高電圧に反発した粒子を捕集する集塵電極板と、が空気の流通方向に沿って平行に設けられ、
前記殺菌部は、紫外線ランプを備えており、該紫外線ランプは、前記支持基板と前記高電圧電極板と前記集塵電極板のそれぞれに対して交差する方向に配置されている請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記支持基板と、前記高電圧電極板及び前記集塵電極板はアルミニウム製である請求項3に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記荷電部と前記集塵部は、前記殺菌部に対向する箇所に紫外線照射用の開口部を備えている請求項1~4のいずれかの請求項に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
記反射板はアルミニウム製で前記紫外線照射用の開口部に対向して配置されている請求項5に記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記反射板は、汚染空気領域と清浄空気領域との間に配置され、前記殺菌部に設けられる紫外線ランプに電源を供給する紫外線電源部は清浄空気領域に設けられている請求項6に記載の空気清浄装置。
【請求項8】
前記殺菌部は、装置の運転停止後に紫外線を照射する請求項1~7のいずれかの請求項に記載の空気清浄装置。
【請求項9】
前記殺菌部から照射される紫外線の線量は、照射される面の中央部において、25mJ/cm2以上に設定されている請求項1~8のいずれかの請求項に記載の空気清浄装置。
【請求項10】
前記荷電部と前記集塵部に設けられる絶縁碍子は、前記殺菌部からの紫外線が照射されない箇所に設けられている請求項1~9いずれかの請求項に記載の空気清浄装置。
【請求項11】
前記集塵部には、4~8kVの高電圧が印加される高電圧電極板と該高電圧電極板に印加された高電圧に反発した粒子を捕集する集塵電極板とが5~10mmの間隔を空けて平行に配置され、
前記殺菌部は、紫外線ランプを備えており、該紫外線ランプは、前記高電圧電極板と前記集塵電極板のそれぞれに対して直交する方向において該高電圧電極板及び該集塵電極板から20~50mm離間して配置され、
前記紫外線ランプから照射される紫外線の波長は、240~260nmであり、
前記紫外線ランプの出力は、4~10Wである請求項1~10のいずれかの請求項に記載の空気清浄装置。
【請求項12】
吸込口と、前記荷電部と、前記集塵部と、前記殺菌部と、排気口と、吸引ファンと、を備え、
前記吸引ファンによって前記吸込口から吸い込まれた空気中に含まれる塵埃・微粒子・ウィルスを前記荷電部が荷電した後に前記集塵部が集塵し、前記排気口から清浄空気が排出される請求項1~11のいずれかの請求項に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中のウィルス・菌を含む粒子を帯電させて捕集し、殺菌及び又は不活化させる空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧の印加によって発生するコロナ放電により空気中のウィルス・菌を含む粒子を帯電させて捕集する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、荷電部(特許文献1の「イオン化電極」)と集塵部(特許文献1の「高電圧集塵ユニット」)を別々に備える所謂2段式の電気集塵装置が開示されている。この電気集塵装置には、集塵部に対応するように紫外線ランプが設けられており、この紫外線ランプから紫外線が照射されることで、集塵部により集塵されたウィルス・菌を含む粒子が不活化(殺菌)されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-175377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の電気集塵装置では、荷電部にも少なからずウィルス・菌を含む粒子が付着するが、荷電部に対応する殺菌灯(紫外線ランプ)は設けられていない。そのため、点検・清掃等のメンテナンス作業時に、作業員が荷電部や集塵部を装置から取り出す際に、不活化されていないウィルス・菌を含む粒子を吸引する虞が生じる。また、集塵部以外の箇所(例えば、荷電部や流通路の壁面)にもウィルス・菌が付着している虞があるので、仮にウィルスや菌が集塵部に捕集されなかった場合、外部に排出される虞がある。さらに、装置の外部周辺にウィルスや菌が飛散拡散することで、不活化されていないウィルス・菌が人体に侵入し、病気等の健康被害が生じる虞があるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の電気集塵装置では、紫外線ランプによって集塵部の一方側からのみ紫外線が照射される。そのため、集塵部の他方側に紫外線が届かない可能性があり、集塵部で集塵されたウィルス・菌を確実に不活化させることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、荷電部及び集塵部においてウィルス・菌を含む粒子を確実に殺菌及び又は不活化させることのできる空気清浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、本発明の第1の空気清浄装置は、空気中の粒子を帯電させて捕集した後、殺菌及び又は不活化させる空気清浄装置であって、高電圧を印加して粒子を帯電させる荷電部と、前記荷電部で帯電された粒子を集塵する集塵部と、紫外線を照射して粒子を殺菌及び又は不活化させる殺菌部と、を備え、前記殺菌部は、前記荷電部と前記集塵部をそれぞれ挟む位置に対向して配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の空気清浄装置によれば、荷電部と集塵部に付着・集塵された粒子を確実に不活化(殺菌)させることができる。また、メンテナンス等により装置内から荷電部や集塵部を取り出す際においても、安全に荷電部や集塵部を装置外に取り出すことができると共に、装置外に不活化されていないウィルス・菌が流出するのを防止することができる。
【0010】
本発明の第2の空気清浄装置は、前記殺菌部が、前記荷電部と前記集塵部に近接した位置で空気の流通路から離間した位置に配置されている。
【0011】
本発明の第2の空気清浄装置によれば、空気が流通しない位置に殺菌部が配置されているので、流通する空気内の粒子が殺菌部に付着するのを防止することができ、殺菌部の殺菌性能を維持することができる。
【0012】
本発明の第3の空気清浄装置は、前記荷電部には、高電圧が印加される放電極を支持する複数の支持基板が空気の流通方向に沿って平行に設けられ、前記集塵部には、高電圧が印加される高電圧電極板と、該高電圧電極板に印加された高電圧に反発した粒子を捕集する集塵電極板と、が空気の流通方向に沿って平行に設けられ、前記殺菌部は、紫外線ランプを備えており、該紫外線ランプは、前記支持基板と前記高電圧電極板と前記集塵電極板のそれぞれに対して交差する方向に配置されている。
【0013】
本発明の第3の空気清浄装置によれば、紫外線ランプから照射された紫外線が各電極板の表面間で反射して屈折することにより、該電極板の奥の方まで紫外線を到達させることができる。
【0014】
本発明の第4の空気清浄装置は、前記支持基板と、前記高電圧電極板及び前記集塵電極板はアルミニウム製である。
【0015】
本発明の第4の空気清浄装置によれば、紫外線の反射効率に優れ、紫外線をより遠くまで到達させることができる。
【0016】
本発明の第5の空気清浄装置は、前記荷電部と前記集塵部が、前記殺菌部に対向する箇所に紫外線照射用の開口部を備えている。
【0017】
本発明の第5の空気清浄装置によれば、開口部を介して紫外線を効率よく荷電部や及び集塵部の内部に照射することができる。
【0018】
本発明の第6の空気清浄装置は、前記殺菌部には、照射される紫外線を前記荷電部側と前記集塵部側に反射させる反射板を備え、該反射板はアルミニウム製で前記紫外線照射用の開口部に対向して配置されている。
【0019】
本発明の第6の空気清浄装置によれば、荷電部側と集塵部側の両方に反射させる反射板を備えているので、経済性に優れる。また、紫外線が通過する荷電部と集塵部の開口部に対向するように反射板を設けているので、より多くの紫外線を荷電部側及び集塵部側に照射することができる。さらに、アルミニウム製により紫外線の反射効率を高めることができる。
【0020】
本発明の第7の空気清浄装置は、前記反射板が、汚染空気領域と清浄空気領域との間に配置され、汚染空気領域と清浄空気領域との間を連通可能且つ開閉可能な連通部を備え、前記殺菌部に設けられる紫外線ランプに電源を供給する紫外線電源部は清浄空気領域に設けられている。
【0021】
本発明の第7の空気清浄装置によれば、紫外線電源部における、例えばグローランプ(点灯管)の交換や周波数(50Hz、60Hz)の切替作業等についても、殺菌部を覆う装置のカバーを取り外すことなく、連通部を通じて汚染空気領域側から行うことができる。
【0022】
本発明の第8の空気清浄装置は、前記殺菌部が、装置の運転停止後に紫外線を照射する。
【0023】
本発明の第8の空気清浄装置によれば、装置の運転停止後に必ず荷電部及び集塵部に紫外線が照射され、ウィルス・菌が殺菌及び又は不活化されるため、装置の運転停止後、点検扉を開けて荷電部や集塵部を装置から取り出したとしても、装置外に殺菌及び又は不活化されていないウィルス・菌が飛散する虞はない。
【0024】
本発明の第9の空気清浄装置は、前記殺菌部から照射される紫外線の線量が、照射される面の中央部において、25mJ/cm以上に設定されている。
【0025】
本発明の第9の空気清浄装置によれば、コロナウィルスやインフルエンザウィルスを含む主要なウィルス・菌を殺菌及び又は不活化させることができる。
【0026】
本発明の第10の空気清浄装置は、前記荷電部と前記集塵部に設けられる絶縁碍子が、前記殺菌部からの紫外線が照射されない箇所に設けられている。
【0027】
本発明の第10の空気清浄装置によれば、絶縁碍子の紫外線による劣化を防止することができる。
【0028】
本発明の第11の空気清浄装置は、前記集塵部には、4~8kVの高電圧が印加される高電圧電極板と該高電圧電極板に印加された高電圧に反発した粒子を捕集する集塵電極板とが5~10mmの間隔を空けて平行に配置され、前記殺菌部は、紫外線ランプを備えており、該紫外線ランプは、前記高電圧電極板と前記集塵電極板のそれぞれに対して直交する方向において該高電圧電極板及び該集塵電極板から20~50mm離間して配置され、 前記紫外線ランプから照射される紫外線の波長は、240~260nmであり、前記紫外線ランプの出力は、4~10Wである。
【0029】
本発明の第11の空気清浄装置によれば、最も好適にウィルス・菌を不活化及び又は殺菌させることができる。
【0030】
本発明の第12の空気清浄装置は、吸込口と、前記荷電部と、前記集塵部と、前記殺菌部と、排気口と、吸引ファンと、を備え、前記吸引ファンによって前記吸込口から吸い込まれた空気中に含まれる塵埃・微粒子・ウィルスを前記荷電部が荷電した後に前記集塵部が集塵し、前記排気口から清浄空気が排出される。
【0031】
本発明の第12の空気清浄装置によれば、空気中のウィルス・菌を含む粒子を確実に帯電させて捕集することができ、集塵効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、荷電部や集塵部に付着・集塵されたウィルス・菌は、確実に不活化(殺菌)されるので、荷電部や集塵部を安全に装置外に取り出すことができると共に、不活化されていないウィルス・菌を装置の外部周辺に流出・飛散・拡散させる虞が生じない等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係る空気清浄装置を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の要部を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の荷電部と集塵部を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の上方の殺菌部を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の下方の殺菌部を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る空気清浄装置を示す側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る空気清浄装置を示す平面図である。
図8】本発明の実施形態に係る空気清浄装置においてウィルス・菌と殺菌線量の関係を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る空気清浄装置を示すブロック図である。
図10】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の全体の動作を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の紫外線殺菌モードの動作を示すフローチャートである。
図12】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のオゾン殺菌モードの動作を示すフローチャートである。
図13】本発明の実施形態に係る空気清浄装置のオゾン・紫外線殺菌モードの動作を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の排出モードの動作を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0035】
図1に示されているように、本実施形態に係る空気清浄装置30には、空気の流通方向(図1中の矢印方向)に沿って順に、吸気室1、本体2、及び排気室3が配置されている。吸気室1は、扁平な箱状に形成され、その外面に吸込口4が開口されている。また、排気室3は、下方が面取りされた傾斜面を有する箱状に形成され、その上面に排気口5が開口されている。
【0036】
本体2の吸気室1に近接した位置及び排気室3の排気口5に近接した位置には、それぞれ、密閉手段6としてシャッター73が設けられている。この密閉手段6(シャッター73)により、吸込口4及び排気口5を閉鎖して本体2の内部を密閉状態とすることができる。なお、本実施形態では、密閉手段6として、シャッター73が設けられているが、バタフライ弁等の開閉弁やダンパーを使用しても構わない。
【0037】
本体2の内部には、プレフィルタ7と、荷電部8と、集塵部9と、オゾン分解部10と、吸引ファン11と、が空気の流通方向(図1中の矢印方向)に沿って順に直列に配置されており、荷電部8と集塵部9とにより電気集塵部19が構成されている。また、本体2の内部には、電気集塵部19の荷電部8と集塵部9の上方及び下方であって空気の流通路から離間した位置に、それぞれ、紫外線を照射する殺菌部12が配置されている。上下の殺菌部12の外側には、それぞれ殺菌部12を覆うようにカバー49が取り付けられている。なお、本実施形態における電気集塵部19は、荷電部8と集塵部9とが別々に配置された2段式となっているが、電気集塵部19は2段式に限定されるものではなく、荷電部8と集塵部9が一体となった1段式でも良い。
【0038】
プレフィルタ7は、略四角形状の粗取りフィルタ(図示省略)であり、オゾン分解部10は、オゾンを吸着する活性炭やゼオライト等の多孔質物質がユニット内に収納されて形成されている。なお、本実施形態では、オゾン分解部10として活性炭ユニットが設けられているが、例えば、光触媒のようなオゾンを分解する触媒を使用しても良い。
【0039】
図2及び図3等に示されているように、荷電部8は、空気の流通方向の上流側に配置される上流側接地電極板14と、上流側接地電極板14より空気の流通方向の下流側で上流側接地電極板14に平行に配置される下流側接地電極板15と、上流側接地電極板14と下流側接地電極板15との間に配置される放電極部材16と、を備えている。上流側接地電極板14及び下流側接地電極板15はアース接続されている。放電極部材16は、支持基板17と、支持基板17に保持される放電極18と、を備えて構成されている。荷電部8の上下部分には、殺菌部12に対向する箇所にそれぞれ紫外線照射用の開口部13が形成されている。
【0040】
荷電部8の外周部分には、矩形状の枠体20が形成されている。枠体20は互いに対向するように立設される左右の支柱21,22と、各支柱21,22の上端部間に渡設される上連結部材23と、各支柱21,22の下端部間に渡設される下連結部材24と、を備えて構成されている。左右の支柱21,22の各上端部には、上連結部材23の下方に上取付部材25が絶縁碍子26(樹脂製)を介して横架され、左右の支柱21,22の各下端部には、下取付部材27が絶縁碍子28(樹脂製)を介して横架されている。これにより、上取付部材25及び下取付部材27は枠体20に絶縁された状態で支持される。
【0041】
下取付部材27には、所定間隔で複数の切欠部(図示省略)が上下スリット状に形成されている。また、上取付部材25の右端部には給電部材29(図1参照)が取り付けられており、給電部材29に高電圧電源部72(図9参照)が接続される。
【0042】
上流側接地電極板14は、丸孔形状の上流側開口部31が多数形成された1枚の四角形状の導電性を有する金属(本実施形態では、ステンレス)により平板状に形成されており、空気の流通を遮る向き(空気の流通方向に対して直交する向き)で枠体20に取付けられている。上流側開口部31は、上下に複数個連設されると共に複数列に亘って(本実施形態では、14個×14列=196個)形成されており、左右に隣接する列間で上流側開口部31の半個分上下に互い違いにずれるように千鳥状に一定間隔で配列されている。
【0043】
下流側接地電極板15は、丸孔形状の下流側開口部32が多数形成された1枚の四角形状の導電性を有する金属(本実施形態では、ステンレス)により平板状に形成されており、空気の流通を遮る向き(空気の流通方向に対して直交する向き)で枠体20に取付けられている。下流側接地電極板15の下流側開口部32は、上下に複数個連設されると共に複数列に亘って(本実施形態では、7個×7列=49個)形成され、一定間隔で整列配置されている。下流側接地電極板15の下流側開口部32の単体面積及び合計面積は、いずれも、上流側接地電極板14の上流側開口部31より大きくなっている。
【0044】
図3及び図6に良く示されているように、支持基板17は、アルミニウム製で長尺板状に形成されている。支持基板17は、上流側接地電極板14の左右に隣接する上流側開口部31の列間において1つ置きに設けられ、下流側接地電極板15の下流側開口部32の中心に合致するように配置されており、本実施形態では、7個設けられている。これにより、支持基板17は、空気の流通方向から見て、上流側接地電極板14の上流側開口部31に干渉しないように配置されると共に、支持基板17同士の間隔は、異常放電が発生しない程度に維持される。なお、本実施形態において、支持基板17は、空気の流通方向と平行で、且つ上流側接地電極板14及び下流側接地電極板15に対して直交する向きで配置されている。
【0045】
支持基板17の上端部は、該上端部に形成されたフック穴(図示省略)と上取付部材25との間に介装されたスプリング(図示省略)によって上取付部材25に支持される。また、支持基板17の下端部は、フック状に形成され、前記切欠部に掛止されることにより下取付部材27に支持される。
【0046】
支持基板17には、カシメ部33が一体に形成されており、カシメ部33は、上流側開口部31側に延出する上流側カシメ部33aと下流側開口部32側に延出する下流側カシメ部33bとを備えて構成されている。上流側カシメ部33aは、隣接する2列分の上流側開口部31の数(本実施形態では、14個×2列=28個)に対応する数分形成されており、下流側カシメ部33bは、1列分の下流側開口部32の数(本実施形態では、10個)に対応する数分形成されている。なお、支持基板17は、導電性を有する材料であれば良いが、伸展性が必要なカシメ加工の作業性を鑑みて、銅板又はアルミ板で形成されるのが良い。
【0047】
放電極18は、多数の線材を束ねた放電ブラシ34であり、支持基板17から上流側接地電極板14側に延出するように上流側カシメ部33aに保持されて各上流側開口部31に対応して配置される上流側放電極18aと、支持基板17から下流側接地電極板15側に延出するように下流側カシメ部33bに保持されて各下流側開口部32に対応して配置される下流側放電極18bと、を備えて構成されている。なお、本実施形態における放電極18はブラシ状に形成されているが、針状、ワイヤー状、突起状でも良い。
【0048】
上流側放電極18aは、各段の上流側カシメ部33aから上流側接地電極板14の方向(すなわち、支持基板17より空気の流通方向上流側)にそれぞれ延出して互い違いに屈曲形成されている。上流側放電極18aの放電ブラシ34の束の中心の先端部は、支持基板17の左右両側に隣接する上流側開口部31の中心線上において、該上流側開口部31を貫通することなく該開口部31から離間して配置されている。これにより、図3に示すように、上流側放電極18aの放電ブラシ34の先端部と上流側接地電極板14の上流側開口部31の周縁部とがほぼ一定の放電ギャップを維持し、上流側放電極18aと上流側開口部31との間にコロナ放電により形成される帯電エリアEA1が略円錐形状を成すため、均一で安定的な放電状態を形成することができる。
【0049】
下流側放電極18bは、各段の下流側カシメ部33bから下流側接地電極板15の方向(すなわち、支持基板17より空気の流通方向下流側)に水平直線状に延出し、下流側放電極18bの放電ブラシ34の先端部は下流側開口部32の中心線上において、該下流側開口部32を貫通することなく該開口部32から離間して配置されている。これにより、図3に示すように、下流側放電極18bの放電ブラシ34の先端部と下流側開口部32の周縁部とが一定の放電ギャップを維持し、下流側放電極18bと下流側開口部32との間にコロナ放電により形成される帯電エリアEA2が上流側とは逆向きの略円錐状を成すため、均一で安定的な放電状態を形成することができる。
【0050】
放電極18の放電ブラシ34は、繊維状の線材を多数束ねてブラシ状に形成された束状部を有している。線材は、直径12μmの非磁性のステンレス繊維で形成されており、ステンレスは、流通性と経済性と耐食性に優れた、18%のCrと8%のNiを含むSUS304を使用している。なお、線材は、非磁性のステンレスであれば、例えば、18%のCrと12%のNiにモリブデン(Mo)を添加したSUS316等、他の材質を使用しても良い。
【0051】
1つの放電極18は、例えば、約100本の線材が束ねられることで形成されている。なお、放電極18は、直径5~25μmの線材を10~200本束ねて形成されていても良い。複数の放電極18は、支持基板17から流通方向の上流側と下流側に向かって延びた状態で設けられており、放電極18に高電圧が印加されると、線材同士の反発に加えて、流通する空気が線材の先端に直接的に当たるので、線材が束状部から離間する作用が高まり、強電界にコロナ放電を発生させることができる。線材のカシメ部からの突出長は、前述の束線数や線径では、5mm程度が好適である。なお、図3では、放電極18の線材の先端側が開いた状態で示されているが、これは高電圧が印加された使用状態を示している。高電圧が印加されることで、各線材にはそれぞれ高電圧の極性に応じた電荷が蓄積されて各線材同士が反発し合うためである。
【0052】
また、実際にコロナ放電が発生するのは、多数の線材のうちの一部であり、それが刻々と他の線材に交代しながらコロナ放電するため、帯電エリアEA1およびEA2の略円錐形状は、若干であるが刻々と変化する。
【0053】
上述したように、上流側放電極18a、下流側放電極18bの放電ブラシ34は、高電圧が印加されない状態では、ほぼ直線状の束となっていて、放電ブラシ34の中心はブラシの束の中心である。厳密に言うと、高電圧を印加した状態では、放電ブラシ34の束の中心は刻々と変化するが、ここでは、簡略化のため、その点については考慮していない。
【0054】
図2及び図3に示されているように、集塵部9は、アース接続されるアルミニウム製の集塵電極板35と高電圧電源部72(図9参照)が接続されるアルミニウム製の高電圧電極板36とが等間隔で交互に複数配置されて形成されている。集塵電極板35は、下流側接地電極板15より空気の流通方向の下流側において下流側接地電極板15に直交する向きに鉛直姿勢で並設され、高電圧電極板36は、集塵電極板35に対向するように鉛直姿勢で配置されている。集塵部9の上下部分には、殺菌部12に対向する箇所にそれぞれ紫外線照射用の開口部39が形成されている。集塵部9に印加される高電圧が4~8kVの場合、高電圧電極板36と集塵電極板35との間隔S(図7参照)は、好ましくは5~10mmであり、最も好ましくは6.8mmである。高電圧電極板36と集塵電極板35との間隔Sを狭め過ぎると、絶縁破壊(スパーク)が発生しやすくなり、該間隔Sを遠ざけ過ぎると、集塵能力が低下する虞があるからである。
【0055】
図1図2図6、及び図7に示されているように、集塵部9の外周部分には、矩形状の枠体37が形成され、枠体37には、互いに対向するように立設される左右の側板38が取り付けられている。左右の側板38間には、水平姿勢で4本の連結シャフト40が貫設され、これらの連結シャフト40は、集塵電極板35と高電圧電極板36を貫通している。
【0056】
左右の側板38の外面には、上下にそれぞれ、第1給電部材41と第2給電部材42及び上取付部材43と下取付部材44が取り付けられている。第1給電部材41と上取付部材43との間には第1絶縁碍子45(樹脂製)が介装され、第2給電部材42と下取付部材44との間には第2絶縁碍子46(樹脂製)が介装されており、各絶縁碍子45,46は、殺菌部12からの紫外線が照射されない箇所に配置されている。このように第1給電部材41及び第2給電部材42は、左右の側板38に絶縁された状態で支持され、第1給電部材41及び第2給電部材42には高電圧電源部72(図9参照)が接続される。
【0057】
図4図6に良く示されているように、上下の殺菌部12は、それぞれ、荷電部8と集塵部9の両方を上方及び下方から覆うように形成される1枚の反射板47と、反射板47の荷電部8に対応する位置において空気の流通方向に直交する方向に設けられる荷電部用の紫外線ユニット48aと、反射板47の集塵部9に対応する位置において空気の流通方向に直交する方向に設けられる集塵部9用の紫外線ユニット48bと、を備えて構成されている。
【0058】
反射板47は、アルミニウム製(ステンレス製でも良いし、表面を鏡面状態にしても良い。)で平板状に形成され、荷電部8と集塵部9の紫外線照射用の各開口部13,39に対向して配置されている。反射板47は、汚染空気領域と清浄空気領域との間に配置され、汚染空気領域と清浄空気領域との間を連通可能な連通部50を備えている。連通部50は、アルミニウム製(ステンレス製でも良いし、表面を鏡面状態にしても良いが、反射板47と同じ材質とする。)の板状部材により形成され、反射板47に形成されたメンテナンス用開口(図示省略)を開閉可能なように反射板47に対してネジ51等を介して着脱可能に設けられている。
【0059】
各紫外線ユニット48a,48bは、反射板47の内面側に設けられて紫外線を照射する紫外線ランプ52a,52bと、反射板47の外面側に設けられて紫外線ランプ52a,52bに電源を供給する紫外線電源部53a,53bと、により構成されている。本実施形態の紫外線ユニット48a,48bは、グローランプ(点灯管)を用いて点灯させる方式を採用しており、この方式は、簡素で価格が安いので一般的に広く普及している。
【0060】
なお、紫外線ランプ52a,52bは、LED方式でも良いが、ランプ(灯)方式の方が、出力を大きく設定することができるので好適である。LED方式の場合、ランプ(灯)方式よりも照射量は少ないが、寿命が長い利点があるため、照射量を補うために、荷電部8及び集塵部9に対して紫外線LEDを複数本、対向配置させても良い。特に、集塵部9については、上下にそれぞれ2列以上の紫外線LEDを対向して配置させても良い。紫外線LEDの場合、レンズ形状等により、紫外線の直進性を高めることも可能である。また、紫外線ランプ52a,52bの照射時には、本体2の前扉(図示省略)が開かないように電磁式のロック機能(図示省略)を設置して安全性を高めても良い。
【0061】
紫外線ランプ52a,52bは、紫外線ユニット48a,48bの配置に従って、支持基板17及び電極板(集塵電極板35、高電圧電極板36)に対向するように上下に配置され、支持基板17及び電極板35,36の配置と直交する方向に配置されている。仮に、紫外線ランプ52a,52bを支持基板17及び電極板35,36の配置に対して沿う方向、具体的には支持基板17及び電極板35,36に対して平行に配置した場合、隣接する支持基板17や電極板35,36の陰にならないように支持基板17及び電極板35,36から離間させて配置する必要がある。しかし、紫外線ランプには空間減衰があるため、支持基板17及び電極板35,36とから離間させて配置すると、例え、紫外線ランプを上下に配置したとしても必要な線量が得られない虞がある。これに対して、本実施形態のように紫外線ランプ52a,52bを支持基板17及び電極板35,36の配置と直交する方向に上下に配置した場合、支持基板17及び電極板35,36の近傍に紫外線ランプを配置したとしても上下の紫外線ランプ52a,52bから照射される紫外線が、それぞれ、支持基板17及び電極板35,36間で反射して屈折することにより、支持基板17及び電極板35,36の奥の方まで到達するため、図6に示すように支持基板17及び電極板35,36の縦方向の長さYの半分の長さ(1/2Y)の範囲に紫外線を確実に照射させることができる。加えて、支持基板17及び電極板35,36はアルミニウム製であり、光の反射効率に優れているので、支持基板17及び電極板35,36の隅々まで紫外線を到達させることができ、集塵されたウィルスや菌を不活化させることができる。また、紫外線ランプ52a,52bは、空気が流通する領域の外側に配置されており、紫外線ランプ52a,52bに汚れが付き難いので、安定して紫外線を照射することができる。
【0062】
また、電極板35,36に対向する集塵部9用の紫外線ランプ52a,52bは、図6に示されているように、電極板35,36の横方向(空気の流通方向)の長さXの中間位置(1/2X)に配置されるのが好ましい。これにより、電極板35,36全体に紫外線を確実に照射させることができる。
【0063】
さらに、紫外線ランプ52a,52bは、高電圧電極板36及び集塵電極板35から上下方向に20~50mm離間して配置されるのが好ましい。離間距離を20mmより近づけると、高電圧電極板36と集塵電極板35の全体に紫外線を照射することができない虞があり、離間距離を50mmより遠ざけると、紫外線の照射量が低下する虞があるからである。また、紫外線ランプ52a,52bの出力は、一般に市販されている紫外線ランプの長さを考慮して、好ましくは4~10Wであり、最も好ましくは8Wである。
【0064】
紫外線ランプ52a,52bから照射(放射)される紫外線は、ウィルスや菌の抑制効果の高い波長(200~280nm)のUV-C紫外線を使用するのが良い。UV-C紫外線は、ウィルスや菌の細胞内のDNAや RNAに作用して増殖機能を抑制する効果が高いからである。また、紫外線ランプ52a,52bから照射(放射)される紫外線の波長は、より好適には240~260nmであり、最も好適には、253.7nm付近である。波長が240~260nmの範囲の紫外線は、他の波長の紫外線と比べて、ウィルスや菌の細胞内のDNAやRNAに作用して増殖機能を抑制する効果が高く、さらに、波長が253.7nm
付近の紫外線は、最も殺菌効果が高いからである。
【0065】
なお、一般に、ウィルスや菌を殺菌するための必要とする殺菌線量は以下の式で算出される。
殺菌線量(mJ/cm)=殺菌線照度(mW/cm2)×照射時間(sec)
【0066】
図8に示すように、不活化に必要な殺菌線量は、ロタウィルス(コロナウィルスも含む)が高いことを示している。
【0067】
殺菌線照度は、測定器(UV強度計)により測定された電極板の表面における紫外線の照度であり、照射時間はその照度の測定結果に基づき設定される。また、予め照射時間を設定して、必要な殺菌線照度を確保することのできる紫外線照射手段を選定しても良い。
例えば、特定のウィルス・菌の殺菌線量は、24(mJ/cm)とし、照射時間を10分(600sec)とすると、上記式により、必要な殺菌線照度は、
殺菌線照度(mW/cm)=24/600=0.04(mW/cm
と算出される。
【0068】
紫外線ランプ52a,52bの出力は、数W程度に固定されているが、不活化させたいウィルスや菌に応じて、出力を変化させても良い。具体的には、図8に示すように、ロタウィルスとその他のウィルスや菌の不活化に必要な殺菌線量を比較すると、その他のウィルスや菌の場合には、ロタウィルスの半分以下の線量で良いので、殺菌対象となるウィルスや菌の種類に応じて、紫外線ランプ52a,52bの出力を2段階に可変に線量を設定できるようにしたり、或いは、ロタウィルスの発生期間となる冬場(2~3月頃)のみ高線量に設定し、その他の期間は低線量に設定する等、殺菌する期間に応じて、紫外線ランプ52a,52bの出力を2段階に可変に線量を設定できるようにしたりしても良い。
【0069】
紫外線電源部53a,53bは、清浄空気領域に設けられており、グローランプ交換口55や周波数切替スイッチ54を備えている。紫外線ランプ52a,52bは、紫外線電源部53a,53bの装着部に着脱可能に取り付けられる。グローランプの交換や、周波数切替スイッチ54による周波数(50Hz、60Hz)の切り替え作業は、連通部50を介して汚染空気領域側から設定を変更することができる。例えばグローランプの交換作業は、本体2から荷電部8及び集塵部9を取り外した後、連通部50を取り外して反射板47の前記メンテナンス用開口を介して行われる。すなわち、殺菌部12を覆うカバー49を取り外すことなく、グローランプの交換作業や周波数の切り替え作業を行うことができるため、カバー49を取り外した時にグローランプの交換作業や周波数の切り替え作業に不必要な部品に作業員が接触したりする虞がない。したがって、上記作業中の不用意な故障等を未然に防止することができる。
【0070】
なお、上記した実施形態において説明したように、殺菌部12の紫外線ランプ52a,52bは、支持基板17及び電極板35,36のそれぞれに対して直交する方向に配置されているのが好ましいが、必ずしも直交する方向ではなく、交差する方向に配置されていても良い。
【0071】
また、反射板47は、紫外線ランプ52a,52bの背後に平板状に形成されているが、この反射板47の代わりに、図6に破線で示すように、紫外線ランプ52a,52bから荷電部8や集塵部9の紫外線照射用の開口部13,39に向かって次第に広がるように拡径状(ホーン状)に形成された反射部56を、各開口部13,39の大きさに対応させて設けても良い。
【0072】
図9に示されているように、本実施形態の空気清浄装置30は、メモリ61とCPU62を有する制御部60にインターフェイス63を介して、表示部64、操作部65、UV照射部66、ファン回転検知部67、オゾン濃度検知部68、前扉開閉検知部69、ソレノイド駆動部70、モータ駆動部71、高電圧電源部72などが接続される。表示部64は空気清浄装置30の操作状態を表示し、操作部65は入力キー等を有し、UV照射部66は紫外線ランプ52a,52bを照射する。また、ファン回転検知部67は、例えばエンコーダであり、吸引ファン11が回転しているか、停止しているかを検知する。前扉開閉検知部69は、例えばリミットスイッチであり、前扉の開閉状態を検知し、前扉が開放されている場合に高電圧やファンモータ74の動作を切るための安全装置等として機能する。ソレノイド駆動部70は非稼働時に吸気及び排気経路を遮蔽するシャッター73を駆動する。モータ駆動部71はファンモータ74を制御する。高電圧電源部72は、高電圧生成部75、極性切替部76、電流検知部77を備えており、交流の元電源を高圧トランスで昇圧した後、倍圧部で交流電流を直流に変換すると共にさらに昇圧して数kVの高電圧を生成できるように構成されている。また、高電圧電源部72は、荷電部8及び集塵部9に印加する高電圧の出力を制御するための出力制御部としても機能する。
【0073】
図1図3図6、及び図7に示すように、上記した構成を備えた本発明の実施形態に係る空気清浄装置30において、吸引ファン11の駆動により吸込口4から本体2内に流入した空気は、プレフィルタ7で濾過された後、荷電部8に流入する。
【0074】
荷電部8に流入した空気は、上流側接地電極板14の上流側開口部31を通過した後、下流側接地電極板15の下流側開口部32を通過する。この時、定電圧制御されて高電圧電源部72より供給される高電圧(例えば-6kV)は、給電部材29を介して支持基板17及び放電極18に印加され、図3に示すように、放電極18の先端部(ブラシ先端部)と開口部31,32との間にコロナ放電により略円錐形状の帯電エリアEA1,EA2を形成する。
【0075】
このように荷電部8に流入した空気が上流側接地電極板14の上流側開口部31及び下流側接地電極板15の下流側開口部32を通過する際、空気中の微粉塵又はミスト等の粒子や微細なウィルス等は、帯電され、集塵部9において捕集された後、オゾン分解部10を通過する。これにより、空気は濾過されて清浄空気となり、排気口5から空気清浄装置30の外へ排出される。
【0076】
次に、図10図15を参照しつつ、本発明の実施形態に係る空気清浄装置30が上記したように空気中の粒子を捕集した後、該粒子を殺菌及び又は不活化させる時に、制御部60の指令により行われる動作について説明する。ここで、図10は空気清浄装置30の全体の動作を示すフローチャート、図11は空気清浄装置30の紫外線殺菌モードの動作を示すフローチャート、図12は空気清浄装置30のオゾン殺菌モードの動作を示すフローチャート、図13は空気清浄装置30のオゾン・紫外線殺菌モードの動作を示すフローチャート、図14は空気清浄装置30の排出モードの動作を示すフローチャート、図15は空気清浄装置30の動作を示すタイムチャートである。
【0077】
空気清浄装置30の内部の菌・ウィルスは、汚染度が高くなるに応じて多くなると想定されるため、空気清浄装置30の内部の汚染度に応じて、予め設定された殺菌モードが選択される。本実施形態では、汚染度が低い(汚れが少ない)場合に選択される「紫外線殺菌モード」と、汚染度が中程度の場合に選択される「オゾン殺菌モード」と、汚染度が高い(汚れが多い)場合に選択される「オゾン・紫外線殺菌モード」の3種類のモードが予め設定されている。
【0078】
本実施形態において、空気清浄装置30の内部の汚染度は、通常運転終了後の殺菌動作開始前における荷電部8(放電部)の汚染度によって判定される。なお、通常運転(集塵運転)とは、吸引ファンにより本体の内部に吸引された空気中の粒子を、電気集塵部により帯電させて捕集している状態の運転を示す。荷電部8が汚れると、荷電部8に電流が流れ難くなり、結果的に放電電流が減少するため、荷電部8に流れる電流値を検知し、予め設定された第1閾値と第2閾値の2つの閾値によって上記した3種類のモードに振り分けられる。具体的には、検知された荷電部8の電流値が、第1閾値(例えば数mA)を超えている場合に「紫外線殺菌モード」が選択され、第1閾値以下で第2閾値(例えば数百μA)を超えている場合に「オゾン殺菌モード」が選択され、第2閾値以下の場合に「オゾン・紫外線殺菌モード」が選択される。
【0079】
まず、図10を参照しながら、全体の動作フローについて説明する。
【0080】
ステップ1(S1)において、空気清浄装置30の前扉が閉鎖状態にあることを前扉開閉検知部69が検知したかどうかが判定される。その結果、前扉が閉鎖されていると判定された場合には、その後のステップ2~4(S2~S4)に進み、前扉が閉鎖されていると判定されなかった場合には、ステップ1の動作が繰り返される。
【0081】
そして、各ステップ2~4(S2~S4)では、吸引ファン11の回転が停止され(S2参照)、電気集塵部19に対する高電圧の印加が停止され(S3参照)、吸込口4及び排気口5のシャッター73が閉鎖される(S4参照)。
【0082】
次のステップ5(S5)では、検知された荷電部8の電流値が、前記第1閾値以下か否かが判定される。その結果、検知された荷電部8の電流値が、前記第1閾値以下であると判定された場合には、次のステップ6(S6)に進み、前記第1閾値以下ではない(すなわち、前記第1閾値を超えている)と判定された場合には、「紫外線殺菌モード」が選択され、図11に示されているように、後述する紫外線殺菌モードにおける動作が行われる。
【0083】
さらに次のステップ6(S6)では、検知された荷電部8の電流値が、前記第2閾値以下か否かが判定される。その結果、検知された荷電部8の電流値が、前記第2閾値以下ではない(すなわち、前記第2閾値を超えている)と判定された場合には、「オゾン殺菌モード」が選択され、図12に示されているように、後述するオゾン殺菌モードにおける動作が行われる。一方、前記ステップ6(S6)において、検知された荷電部8の電流値が、前記第2閾値以下であると判定された場合には、「オゾン・紫外線殺菌モード」が選択され、図13に示されているように、後述するオゾン・紫外線殺菌モードにおける動作が行われる。
【0084】
なお、上記した実施形態では、空気清浄装置30の内部の汚染度を判定するために、電気集塵部19の荷電部8の汚染度を用いたが、これに限定されるものではない。本実施形態では、定電圧制御を採用しているため、汚染度によって電流が変動するが、汚染度に応じて電圧が変動する場合(定電流制御)には電圧の変動を用いても良い。
【0085】
また、空気清浄装置30の内部に、汚染度に応じて出力が変化する(例えば、汚染度が大きい場合に出力が低下する)センサを設置し、殺菌処理前の直近の通常運転時における該センサの出力結果に基づいて、空気清浄装置30の内部の汚染度を判定しても良い。具体的には、ダストセンサにより測定された空気中の粒子の数を閾値と比べたり、或いは紫外線の照射位置に設置された紫外線センサにより測定された紫外線の線量を閾値と比べたりして、空気清浄装置30の内部の汚染度を判定しても良い。
【0086】
次に、図11及び図15を参照しながら、紫外線殺菌モード時の動作フローについて説明する。
【0087】
図11のステップ11(S11)に示されているように、紫外線ランプ52a,52bから荷電部8及び集塵部9に対する紫外線の照射が開始されると、ステップ12(S12)において、紫外線の照射開始から予め設定された時間が経過したか否かが判定される。そして、設定時間が経過するまで、紫外線ランプ52a,52bから荷電部8及び集塵部9に対して紫外線の照射が行われた後、設定時間が経過したと判定されると、次のステップ13及び14(S13及びS14)に進む。
【0088】
次のステップ13及び14(S13及びS14)では、荷電部8及び集塵部9に対する紫外線の照射が停止され(S13参照)、吸込口4及び排気口5のシャッター73が閉鎖され(S14参照)、紫外線殺菌モードは終了する。
【0089】
次に、図12及び図15を参照しながら、オゾン殺菌モード時の動作フローについて説明する。
【0090】
図12のステップ21(S21)に示されているように、電気集塵部19に印加される高電圧の極性がマイナス(-)からプラス(+)に切り替えられ、ステップ22(S22)に示されているように、電気集塵部19に対して高電圧(例えば、+10kV)が印加されてストリーマ放電が生成される。
【0091】
その後、ステップ23(S23)において、高電圧の印加開始から予め設定された時間が経過したか否かが判定される。そして、設定時間が経過するまで、電気集塵部19に対する高電圧の印加が行われ、設定時間が経過したと判定されると、次のステップ24(S24)において、電気集塵部19に対する高電圧の印加が停止され、オゾン殺菌モードの動作は終了する。
【0092】
次に、図13及び図15を参照しながら、オゾン・紫外線殺菌モード時の動作フローについて説明する。
【0093】
図13のステップ31(S31)に示されているように、電気集塵部19に印加される高電圧の極性がマイナス(-)からプラス(+)に切り替えられ、ステップ32(S32)に示されているように、電気集塵部19に対して高電圧(例えば、+10kV)が印加されてストリーマ放電が生成される。また、ステップ33(S33)に示されているように、紫外線ランプ52a,52bから荷電部8及び集塵部9に対する紫外線の照射が開始される。
【0094】
その後、ステップ34(S34)において、高電圧の印加開始及び紫外線の照射開始から予め設定された時間が経過したか否かが判定される。そして、設定時間が経過するまで、電気集塵部19に対する高電圧の印加が行われると共に、紫外線ランプ52a,52bから荷電部8及び集塵部9に対して紫外線の照射が行われ、設定時間が経過したと判定されると、次のステップ35及び36(S35及びS36)に進む。
【0095】
ステップ35及び36(S35及びS36)では、電気集塵部19に対する高電圧の印加が停止される(S35参照)と共に、荷電部8及び集塵部9に対する紫外線の照射が停止され(S36参照)、オゾン・紫外線殺菌モードは終了する。
【0096】
なお、図15に示すように、オゾン・紫外線殺菌モードの場合には、他のモードの場合と比べて、紫外線を照射する設定時間を延長すると共に、紫外線の照射量が多くなるように設定されても良い。
【0097】
上記したようにオゾン殺菌モードが終了した場合或いはオゾン・紫外線殺菌モードが終了した場合には、その後に、排出モードが行われる。
【0098】
図14に示されているように、この排出モードでは、ステップ41(S41)において、吸込口4及び排気口5のシャッター73が開放された後、ステップ42(S42)に示されているように、吸引ファン11の運転が通常運転時の回転数より少ない低速回転で開始される。
【0099】
その後、ステップ43(S43)において、吸引ファン11の運転開始から予め設定された時間が経過したか否かが判定され、設定時間が経過するまで、吸引ファン11が低速回転で運転される。そして、設定時間が経過したと判定されると、ステップ44(S44)に示されているように、吸引ファン11の運転が停止され、排出モードは終了する。排出モード時には、オゾンを装置外に少量ずつ排出させるので、オゾン分解部10のオゾン除去効果を向上させ、装置外のオゾン濃度の急激な上昇を抑制することができる。
【0100】
なお、上記した排出モードでは、殺菌動作終了時の吸引ファン11の回転数が通常運転時(集塵運転時)の吸引ファン11の回転数よりも少ない低速回転で運転されるように制御されているが、空気清浄装置30の内部にオゾン濃度を検出するオゾン濃度検知部68(図9参照)を設け、オゾン濃度検知部68により検出されたオゾン濃度に応じて吸引ファン11の回転数が制御されるように構成し、例えば、オゾン濃度が高い場合には、吸引ファン11がより低速回転で運転され、オゾン濃度の低下に応じて吸引ファン11の回転数が上昇されるように制御されても良い。また、オゾン濃度が0或いはほとんど0になるまで、吸引ファン11の低速回転での運転を継続させても良い。さらに、吸引ファン11の回転数と密閉手段6(シャッター73)の開放動作とが連動するようにしても良い。
【0101】
このように上記した本発明の実施形態に係る空気清浄装置30によれば、電気集塵部19からのオゾンと殺菌部12からの紫外線の殺菌力を併用することによって、オゾンと紫外線の殺菌作用を補完し合うことができる。すなわち、万が一紫外線の到達できない範囲が存在したとしても、オゾンを広範囲に充満させて殺菌することができると共に、紫外線を狭範囲に集中的に照射させることで照射されたエリアを確実に殺菌することができるため、空気中のウィルス・菌や塵埃を相乗的に確実に不活化させることができる。
【0102】
また、上記したように、空気中の粒子を帯電させて捕集する通常の運転時には定電圧制御して電気集塵部19に高電圧(例えば-6kV)を印加しているが、オゾン殺菌モード時やオゾン・紫外線殺菌モード時には極性を変えてストリーマ放電を行う場合に電圧を上昇させている(例えば、+10kV)ため、より多くのオゾンが生成され、殺菌効果を高めることができる。
【0103】
なお、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る空気清浄装置における好適な実施形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の技術は、好適には家庭用や業務用の空気清浄装置において利用されることが見込まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
4 吸込口
5 排気口
6 密閉手段
8 荷電部
9 集塵部
10 オゾン分解部
11 吸引ファン
12 殺菌部
17 支持基板
18 放電極
19 電気集塵部
13 紫外線照射用の開口部(荷電部)
26 絶縁碍子(荷電部)
28 絶縁碍子(荷電部)
30 電気集塵装置
35 集塵電極板
36 高電圧電極板
39 紫外線照射用の開口部(集塵部)
45 第1絶縁碍子(集塵部)
46 第2絶縁碍子(集塵部)
47 反射板
50 連通部
52a 紫外線ランプ(荷電部)
52b 紫外線ランプ(集塵部)
53a 紫外線電源部(荷電部)
53b 紫外線電源部(集塵部)
60 制御部
68 オゾン濃度検知部
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