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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】組換えアデノ随伴ウイルス及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/015 20060101AFI20250115BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250115BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250115BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C07K14/015 ZNA
C07K19/00
C07K14/47
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N7/01
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61K35/76
A61P25/00
A61P19/08
A61P13/12
A61P21/00
A61P9/00
A61P43/00 105
A61P27/02
A61K48/00
C12N15/35
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021559079
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 US2020026485
(87)【国際公開番号】W WO2020206189
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】62/963,512
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/924,107
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/829,608
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/833,516
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/839,368
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520135611
【氏名又は名称】リジェネックスバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ダノス,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イェ
(72)【発明者】
【氏名】マーサー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト,サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】カルムチル メレチル,サブハ
(72)【発明者】
【氏名】フィルンバーグ,エラド
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518614(JP,A)
【文献】国際公開第2006/119150(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/038958(WO,A1)
【文献】特表2019-521696(JP,A)
【文献】国際公開第2019/195449(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/195423(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/006182(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/046069(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/145400(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/109570(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/145401(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/212019(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/170078(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/144229(WO,A1)
【文献】Molecular Therapy: Methods & Clinical Development,2019年03月01日,Vol.12,p.248-265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-14/825
C07K 19/00
C12N 7/01
C12N 5/10
A61K 35/76
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.配列番号117を含むrAAV血清型(AAV8)カプシドタンパク質、または
b.配列番号118を含むrAAV血清型(AAV9)カプシドタンパク質、または
c.配列番号117または配列番号118と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むrAAVカプシドタンパク質であって、前記AAVカプシドタンパク質は、AAVタンパク質ではない異種タンパク質からの少なくとも個かつ最大で10個の連続アミノ酸のペプチド挿入物を含み、前記ペプチド挿入物は、配列番号118のAAV9カプシドタンパク質のアミノ酸451~461のうちの1つに対応するアミノ酸残基の直後にあり、前記カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合、前記ペプチド挿入物は表面露出される、前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質。
【請求項2】
前記ペプチド挿入物は、前記AAV9カプシドのアミノ酸S454に対応するアミノ酸残基の直後に存在する、請求項1に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項3】
前記異種タンパク質は、ホーミングドメインである、請求項1または2に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項4】
前記ホーミングドメインは、
(i)神経組織ホーミングドメイン;
(ii)軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメイン;
(iii)骨ホーミングドメイン;
(iv)腎臓ホーミングドメイン;
(v)筋肉ホーミングドメイン;
(vi)内皮細胞ホーミングドメイン;
(vii)インテグリン受容体結合ドメイン;
(viii)トランスフェリン受容体結合ドメイン;
(ix)腫瘍細胞標的化ドメイン;または
(x)網膜細胞ホーミングドメイン
である、請求項3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項5】
前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列SITLVKSTQTV(配列番号21)、TILSRSTQTG(配列番号22)、VVMVGEKPITITQHSVETEG(配列番号25)、RSSEEDKSTQTT(配列番号26)、KMQVPFQ(配列番号1)、LKLPPIV(配列番号5)、PFIKPFE(配列番号6)、TLSLPWK(配列番号7)、QQAAPSF(配列番号3)、RYNAPFK(配列番号4)、TLAVPFK(配列番号27)、またはTLAAPFK(配列番号2)のダイニンペプチドの少なくとも個の連続アミノ酸を含み、もしくはそれからなり、またはその7個の連続アミノ酸である、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項6】
前記トランスフェリン受容体結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列HAIYPRH(配列番号17)、THRPPMWSPVWP(配列番号18)、RTIGPSV(配列番号19)またはCRTIGPSVC(配列番号20)の少なくとも個の連続アミノ酸であり、またはその7個のアミノ酸である、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項7】
前記網膜細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)、LGETTRP(配列番号15)またはLALGETTRP(配列番号16)の少なくとも個の連続アミノ酸であり、またはその7個のアミノ酸である、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項8】
前記ペプチド挿入物は
(a)(DYH1_HUMAN UniProtKB-Q9P2D7のaa1~1542)(配列番号97);
(b)(DYH2_HUMAN UniProtKB-Q9P225のaa1~1764)(配列番号98);
(c)(DYH3_HUMAN UniProtKB-Q8TD57のaa1~1390)(配列番号99);
(d)(DYH5_HUMAN UniProtKB-Q8TE73のaa1~1941)(配列番号100);
(e)(DYH6_HUMAN UniProtKB-Q9C0G6のaa1~1433)(配列番号101);
(f)(DYH7_HUMAN UniProtKB-Q8WXX0のaa1~1289)(配列番号102);
(g)(DYH8_HUMAN UniProtKB-Q96JB1のaa1~1807)(配列番号103);
(h)(DYH9_HUMAN UniProtKB-Q9NYC9のaa1~1831)(配列番号104);
(i)(DYH10_HUMAN UniProtKB-Q8IVF4のaa1~1793)(配列番号105);
(j)(DYH11_HUMAN UniProtKB-Q96DT5のaa1~1854)(配列番号106);
(k)(DYH12_HUMAN UniProtKB-Q6ZR08のaa1~1214)(配列番号107);
(l)(DYH14_HUMAN UniProtKB-Q0VDD8のaa1~200)(配列番号108);または
(m)(DYH17_HUMAN UniProtKB-Q9UFH2のaa1~1794)(配列番号109)
からなる群からの少なくとも個かつ最大で10個の連続アミノ酸を含む、請求項1~7のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項9】
前記ペプチド挿入物は、(a)~(m)前記ダイニン重鎖配列のいずれか1つの残基1~200からの少なくとも個かつ最大で10個の連続アミノ酸を含む、請求項に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項10】
前記ペプチド挿入物は、(a)~(m)前記ダイニン重鎖配列のいずれか1つの残基1~200からの7個の連続アミノ酸を含む、請求項に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項11】
前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)である、請求項7に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項12】
前記神経組織ホーミングドメインは、自然修復受容体に結合し、かつ赤血球生成性ではないエリスロポエチン(EPO)ドメイン、または前記ドメインのコンフォメーションアナログである、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項13】
前記ペプチド挿入物は、QEQLERALNSS(配列番号8)からの少なくとも個かつ最大で10個の連続アミノ酸である、請求項12に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項14】
前記神経組織ホーミングタンパク質は、SRL(セリン-アルギニン-リジン)モチーフを有する脳ホーミングドメインである、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項15】
前記脳ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LSSRLDA(配列番号10)またはCLSSRLDAC(配列番号11)の少なくとも個の連続アミノ酸を有し、またはアミノ酸配列LSSRLDA(配列番号10)またはCLSSRLDAC(配列番号11)である、請求項14に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項16】
前記骨ホーミングタンパク質は、ヒドロキシアパタイト(HA)結合ドメインである、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項17】
前記ヒドロキシアパタイト(HA)結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、配列DDDDDDDD(配列番号9)の少なくとも6個のアミノ酸残基である、請求項16に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項18】
前記腎臓ホーミングドメインは、アミノ酸配列CLPVASC(配列番号12)を含む、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項19】
前記腎臓ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LPVAS(配列番号13)またはCLPVASC(配列番号12)である、請求項18に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項20】
前記筋肉ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列ASSLNIA(配列番号14)を含み、またはそれからなる、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項21】
前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列QAVRTSL(配列番号23)またはQAVRTSH(配列番号24)を含み、またはそれからなる、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項22】
前記内皮細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列SIGYPLP(配列番号28)を含み、またはそれからなる、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項23】
前記インテグリン結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列CDCRGDCFC(配列番号29)を有する、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項24】
前記腫瘍細胞標的化ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列NGRAHA(配列番号30)を含み、またはそれからなる、請求項4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項25】
前記ペプチド挿入物は、前記AAV8カプシドタンパク質のアミノ酸残基453及び454のうちの1つの直後にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)を含む、請求項に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項26】
前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)を含む、請求項25に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項27】
請求項1~26のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項28】
前記ヌクレオチド配列によってコードされる前記カプシドタンパク質を含むAAVベクターを生成するために請求項27に記載の核酸を発現することが可能なパッケージング細胞。
【請求項29】
請求項1~26のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVベクター。
【請求項30】
導入遺伝子をさらに含む、請求項29に記載のrAAVベクター。
【請求項31】
請求項29または30に記載のrAAVベクター及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項32】
導入遺伝子を細胞に送達する際に使用するための請求項29または30に記載のrAAVベクターであって、前記細胞は、前記ベクターと接触される、前記rAAVベクター。
【請求項33】
導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する際に使用するための請求項29または30に記載のrAAVベクターを含む医薬組成物であって、前記ベクターは、前記対象に投与される、前記医薬組成物。
【請求項34】
前記rAAVベクターは、全身的に、静脈内に、髄腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、硝子体内に、腰椎穿刺を介してまたは大槽を介して投与される、請求項33に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
0.配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年3月29日に作成された前記ASCIIは、38013_0002P1_SL.txtという名前であり、サイズが637,866バイトである。
【0002】
本発明は、所望の特性を付与及び/または向上させるアミノ酸配列を含むように修飾されたカプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)に関する。特に、本発明は、挿入物がAAV粒子上に表面露出されるように、ウイルスカプシドの可変領域IV(VR-IV)の中または近くにまたは、代替的に、可変領域VIII(VR-VIII)の中または近くに挿入された異種タンパク質からのペプチド挿入物を含む修飾されたカプシドタンパク質を提供する。本発明はまた、rAAVを標的組織に誘導するカプシドタンパク質、特に、rAAVを網膜及び中枢神経系を含む神経組織に標的化し、及び/またはその形質導入を改善するために表面露出可変領域に挿入された、例えば、エリスロポエチンまたはダイニンに由来するペプチドを含むカプシドタンパク質、及び神経障害を処置するための送達治療剤を提供する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子送達ベクターとしてのアデノ随伴ウイルス(AAV)の使用は、満たされていない多くの患者ニーズの処置のための有望な手段である。数十種の天然に存在するAAVカプシドが報告されており、霊長類の組織におけるAAV配列の天然多様性の調査は、複数の分岐群に分布した100種を超えるバリアントを特定した。AAVは、パルボウイルス科に属し、比較的小さなゲノム及び単純な遺伝子成分を有する一本鎖DNAウイルスである。AAVは、ヘルパーウイルスを伴わずに、潜伏感染を確立する。AAVゲノムは、通常、ベクター生成のための複製及びパッケージングシグナルとして機能する、末端逆位反復(ITR)に挟まれたRep遺伝子及びCap遺伝子を有する。カプシドタンパク質は、ゲノムDNAを保有し、かつDNAを標的細胞に送達するための組織指向性を決定し得るカプシドを形成する。
【0004】
低い病原性及び長期の標的化遺伝子発現の有望性のため、組換えAAV(rAAV)は、治療配列が様々なカプシドにパッケージングされた遺伝子移行ベクターとして使用されてきた。そのようなベクターは、前臨床遺伝子療法研究において使用されており、20種を超える遺伝子療法生成物が現在、臨床開発下にある。組換えAAV、例えば、AAV9は、所望の神経向性特性を実証し、CNS疾患の処置のための組換えAAV9を使用した臨床試験が進行中である。しかしながら、ヒト対象におけるrAAVの神経向性特性を向上させる試みは、成功が限られている。
【0005】
例えば、中枢神経系及び眼、特に網膜に関連する障害の治療において治療剤を送達するために血液脳関門の通過において使用するための神経向性特性が向上したrAAVベクターが依然として必要とされている。治療剤を送達するために組織特異的標的化が向上した及び/または組織特異的形質導入が向上したrAAVベクターも必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
所望の特性、例えば、rAAVゲノムの組織標的化、形質導入及び/または組み込みを付与及び/または向上させるアミノ酸配列を含むように修飾されたカプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。特に、本発明は、挿入物がAAV粒子上に表面露出されるように、ウイルスカプシドの可変領域IV(VR-IV)の中または近くにまたは可変領域VIII(VR-VIII)の中または近くに挿入された異種タンパク質からの1つ以上のペプチド挿入物を含む修飾されたカプシドタンパク質を提供する。特定の実施形態では、挿入物は、AAV9カプシドタンパク質(配列番号118、図8で付番されている)のアミノ酸451~461のうちの1つに対応するアミノ酸残基の直後にあり、これには、AVV9カプシドのアミノ酸454の後(すなわち、アミノ酸454及び455の間)、または異なるAAV型のカプシドタンパク質では、AAV9のアミノ酸454に対応する残基の後が含まれ(例えば、配列番号110~117または119~121)、「対応する」は、図8における配列アライメント、または図8に含まれないAAV型の場合は、AAV9カプシドタンパク質の配列(配列番号118)及び当該技術分野でよく知られているであろうAAVカプシドタンパク質の同様のアミノ酸配列アライメントでアライメントされていることを意味する。よって、本発明は、図8で付番されるように、AAV9の位置454におけるアミノ酸残基に対応するアミノ酸の直後または近くに挿入された異種タンパク質からのペプチド挿入物を含む修飾されたカプシドタンパク質を提供する。追加の特定の実施形態では、挿入物は、AAV9カプシドタンパク質(配列番号118、図8で付番されている)のアミノ酸588に対応するアミノ酸残基の直後に(すなわち、アミノ酸588及び589の間に)、または異なるAAV型のカプシドタンパク質においてAAV9のアミノ酸588に対応する残基の後にある(例えば、配列番号110~117または119~121)。カプシドタンパク質は、AAV9カプシドタンパク質であり得るが、任意のAAVカプシドタンパク質、例えば、AAV血清型1(配列番号110);AAV血清型2(配列番号111);AAV血清型3(配列番号112);AAV血清型4(配列番号113);AAV血清型5(配列番号114);AAV血清型6(配列番号115);AAV7カプシド(配列番号116)の451~461;AAV8カプシド(配列番号117)の451~461;AAV血清型9(配列番号118);AAV血清型9e(配列番号119);AAV血清型rh10(配列番号120);AAV血清型rh20(配列番号121);及びAAV血清型hu.37(配列番号122)、AAV血清型rh39(配列番号124)、及びAAV血清型rh74(配列番号123または配列番号154)(図8参照)でもあり得る。
【0007】
rAAVを標的組織に誘導するカプシドタンパク質、特に、エリスロポエチンまたはダイニン(軸糸または細胞質ダイニンを含む)に由来するペプチドまたはrAAVゲノムの組織標的化及び/または細胞取り込み及び/または組み込みを促進するペプチドを含むカプシドタンパク質も提供され、そのペプチドは、表面露出可変領域に挿入され、rAAVを、中枢神経系を含む神経組織、及び網膜組織に標的化し、神経障害及び眼障害を処置するための治療剤を送達する。これらのペプチドは、有利には、カプシドタンパク質がAAV粒子に組み込まれた場合に、挿入されたペプチドが表面露出されるように、カプシドタンパク質のアミノ酸配列に挿入される。これらのペプチドは、AAV9カプシド(配列番号118、アライメントについては図8参照)のアミノ酸262~273;451~461;または585~593のアミノ酸のうちの1つの直後、またはそのアミノ酸に対応するアミノ酸のうちの1つの後、またはVP2をコードする最初のコドンに対応するアミノ酸残基、すなわち、AAV9カプシドのアミノ酸138及びAAV9カプシドの位置138に対応するアミノ酸(配列番号118、アライメントについては図8参照)の直後に挿入される。所定の実施形態では、挿入されるペプチドは、軸糸ダイニン重鎖のペプチドKMQVPFQ(配列番号1);TLAAPFK(配列番号2);QQAAPSF(配列番号3);RYNAPFK(配列番号4);LKLPPIV(配列番号5);PFIKPFE(配列番号6);またはTLSLPWK(配列番号7)のうちの1つの少なくとも4個の連続アミノ酸であり、もしくはその5、6、7個の連続アミノ酸であり、または、代替的に、ARA290と称されるエリスロポエチンの非線状エピトープであるQEQLERALNSS(配列番号8)の5、6、7、8、9、10または11個の連続アミノ酸である。
【0008】
rAAVゲノムの細胞取り込み及び/または組み込みを促進または増加させることを含む、特定の組織を標的とするペプチドを含む修飾されたカプシドタンパク質であって、ペプチドが、カプシドタンパク質の表面露出可変領域に挿入されたものが提供される。所定の実施形態では、ペプチドは、骨(例えば、DDDDDDDD(配列番号9)の少なくとも4個の連続アミノ酸または少なくとも7または8個の連続アミノ酸)、脳(LSSRLDA(配列番号10)の少なくとも4個のアミノ酸もしくは少なくとも7個の連続アミノ酸または7個の連続アミノ酸またはCLSSRLDAC(配列番号11)の7、8または9個の連続アミノ酸)、腎臓(ペプチドCLPVASC(配列番号12)またはLPVAS(配列番号13)の少なくとも4または5個の連続アミノ酸またはペプチドCLPVASC(配列番号12)またはLPVAS(配列番号13))、筋肉(ASSLNIA(配列番号14)の少なくとも4、5、6、または7個の連続アミノ酸またはASSLNIA(配列番号14)のペプチド)、網膜細胞(LGETTRP(配列番号15)またはLALGETTRP(配列番号16)の少なくとも4個の連続アミノ酸または5、6、または7個の連続アミノ酸)の細胞における形質導入またはゲノム組み込みを標的とし、及び/または促進し、またはトランスフェリン受容体(HAIYPRH(配列番号17)、THRPPMWSPVWP(配列番号18)、RTIGPSV(配列番号19)、またはCRTIGPSVC(配列番号20)の少なくとも4個の連続アミノ酸または少なくとも7個の連続アミノ酸または7個の連続アミノ酸)に由来する。所定の実施形態では、ペプチドは、CLPVASC(配列番号12)であり、またはASSLNIA(配列番号14)であり、例えば、カプシドAAV9の位置454の後に挿入されたこのペプチドを含有するカプシドは、カプシドを有するrAAVを、肝臓と比較して優先的に腎臓を標的とする。他の実施形態では、挿入されるペプチドは、少なくとも4個の連続アミノ酸または少なくとも7もしくは8個の連続アミノ酸であり、またはペプチドSITLVKSTQTV(配列番号21)またはTILSRSTQTG(配列番号22)またはQAVRTSL(配列番号23)またはQAVRTSH(配列番号24)である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、12個以下の連続アミノ酸である。他の実施形態では、指向性、形質導入を改善し得るまたは免疫中和活性を低下させ得る1つ以上のアミノ酸置換を有する修飾されたカプシドが提供される。そのようなアミノ酸改変には、AAV8のA269S、及び他のAAV型カプシドにおける対応する置換、AAV9のS263F/S269T/A273T、及び他のAAV型カプシドにおける対応する置換、AAV9のW530RまたはQ474A、及び他のAAV型カプシドにおける対応する置換が含まれる。これらのアミノ酸置換を有するカプシドは、AAV8カプシドの498~500におけるNNN(アスパラギン)のAAA(アラニン)での置換、またはAAV9カプシドの496~498におけるNNN(アスパラギン)のAAA(アラニン)での置換、または他のAAV型カプシドにおける対応する置換をさらに有し得る。
【0009】
全身性、静脈内、髄腔内、鼻腔内、腹腔内、または硝子体内投与時に、1つ以上の細胞タイプを含む1つ以上の組織においてrAAVの形質導入を促進する修飾されたカプシドタンパク質であって、カプシドタンパク質は、カプシドの表面露出可変領域(VR)、例えば、VR-I、VR-IVもしくはVR-VIIIに、またはVP2の最初のアミノ酸の後、例えば、AAV9カプシド(配列番号118のアミノ酸配列)の残基138の直後または別のAAVカプシドの対応する残基の直後に挿入され、または代替的には、本明細書に記載のアミノ酸置換のうちの1つ以上で修飾されたペプチドを含み、少なくとも1つの組織における修飾されたカプシドを有するAAVの形質導入は、対応する非修飾カプシドを有するAAVの形質導入と比較して、前記投与時に増加する、カプシドタンパク質も提供される。所定の実施形態では、形質導入は、GFP蛍光などの導入遺伝子の検出によって測定される。
【0010】
所定の実施形態では、治療対象となる導入遺伝子を含むゲノムを有するrAAVを含む、本明細書に記載の修飾されたカプシドを組み込んだrAAVが提供される。本明細書に記載のrAAVを生成するためのパッケージング細胞が提供される。本明細書に記載の修飾されたrAAVの送達による処置方法、及び本明細書に記載の修飾されたrAAVを含む薬学的組成物も提供される。本明細書に記載の修飾されたカプシドを有するrAAVを製造する方法も提供される。
【0011】
本発明は、ヒト軸糸ダイニン重鎖尾部、ARA290、及び他の組織標的化またはホーミングペプチドに基づいて設計されたペプチド挿入物で修飾されたrAAV9カプシド及びアミノ酸置換で修飾されたカプシドの構築を以下に記載する例によって説明される。
【0012】
3.1.実施形態
1.カプシドタンパク質ではない異種タンパク質からの少なくとも4個かつ最大で20個の連続アミノ酸のペプチド挿入物を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質であって、前記ペプチド挿入物は、図8のAAV9カプシドタンパク質(配列番号118)のアミノ酸451~461のうちの1つに対応するアミノ酸残基の直後にあり、前記カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合、前記ペプチド挿入物は表面露出される、前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質。
【0013】
2.前記カプシドタンパク質は、AAV血清型1(AAV1)、血清型2(AAV2)、血清型3(AAV3)、血清型4(AAV4)、血清型5(AAV5)、血清型6(AAV6)、血清型7(AAV7)、血清型8(AAV8)、血清型rh8(AAVrh8)、血清型9(AAV9)、血清型9e(AAV9e)、血清型rh10(AAVrh10)、血清型rh20(AAVrh20)、血清型rh39(AAVrh39)、血清型hu.37(AAVhu.37)または血清型rh74(AAVrh74)のうちの少なくとも1つのAAV血清型からのものである、実施形態1に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0014】
3.前記ペプチド挿入物は、図8に示される配列における
AAV1カプシドアミノ酸配列(配列番号110)の450~459;
AAV2カプシドアミノ酸配列(配列番号111)の449~458;
AAV3カプシドアミノ酸配列(配列番号112)の449~459;
AAV4カプシドアミノ酸配列(配列番号113)の443~453;
AAV5カプシドアミノ酸配列(配列番号114)の442~445;
AAV6カプシドアミノ酸配列(配列番号115)の450~459;
AAV7カプシドアミノ酸配列(配列番号116)の451~461;
AAV8カプシドアミノ酸配列(配列番号117)の451~461;
AAV9カプシドアミノ酸配列(配列番号118)の451~461;
AAV9eカプシドアミノ酸配列(配列番号119)の452~461;
AAVrh10カプシドアミノ酸配列(配列番号120)の452~461;
AAVrh20カプシドアミノ酸配列(配列番号121)の452~461;
AAVhu.37カプシドアミノ酸配列(配列番号122)の452~461;
AAVrh74カプシドアミノ酸配列(配列番号123または配列番号154)の452~461;または
AAVrh39カプシドアミノ酸配列(配列番号124)の452~461
の中のアミノ酸残基のうちの1つの直後に存在する、実施形態2に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0015】
4.前記ペプチド挿入物は、図8においてアライメントされ、そのアミノ酸付番に従って、AAV9カプシドのアミノ酸残基I451、N452、G453、S454、G455、Q456、N457、Q458、Q459、T460、またはL461のうちの1つの直後、またはAAV9カプシド(配列番号118)のアミノ酸I451、N452、G453、S454、G455、Q456、N457、Q458、Q459、T460、またはL461に対応するAAVカプシドにおけるアミノ酸残基の直後に存在する、実施形態3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0016】
5.前記異種タンパク質は、ホーミングドメイン、中和抗体エピトープ、または精製タグである、任意の先行する実施形態のrAAVカプシドタンパク質。
【0017】
6.前記ホーミングドメインは、
神経組織ホーミングドメイン;
軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメイン;
骨ホーミングドメイン;
腎臓ホーミングドメイン;
筋肉ホーミングドメイン;
内皮細胞ホーミングドメイン;
インテグリン受容体結合ドメイン;
トランスフェリン受容体結合ドメイン;
腫瘍細胞標的化ドメイン;または
網膜細胞ホーミングドメイン
である、実施形態5に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0018】
7.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列SITLVKSTQTV(配列番号21)、TILSRSTQTG(配列番号22)、VVMVGEKPITITQHSVETEG(配列番号25)、RSSEEDKSTQTT(配列番号26)、KMQVPFQ(配列番号1)、LKLPPIV(配列番号5)、PFIKPFE(配列番号6)、TLSLPWK(配列番号7)、QQAAPSF(配列番号3)、RYNAPFK(配列番号4)、TLAVPFK(配列番号27)、TLAAPFK(配列番号2)、LGETTRP(配列番号15)、またはLALGETTRP(配列番号16)の少なくとも4個または少なくとも7個の連続アミノ酸のダイニンペプチドまたはダイニンホーミングペプチドを含み、またはそれからなる、実施形態6に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0019】
8.前記トランスフェリン受容体結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列RTIGPSV(配列番号19)またはCRTIGPSVC(配列番号20)の少なくとも4個または少なくとも7個の連続アミノ酸を含む、実施形態6に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0020】
9.前記網膜細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)またはLALGETTRP(配列番号16)を含む、実施形態6に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0021】
10.前記LGETTRP(配列番号15)またはLALGETTRP(配列番号16)ペプチド挿入物は、前記AAV8カプシドタンパク質または前記AAV9カプシドタンパク質に存在する、実施形態9に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0022】
11.前記ペプチド挿入物は、図8においてアライメントされ、アミノ酸付番に従って、AAV9カプシドタンパク質において前記AAV9カプシドタンパク質(配列番号118)のアミノ酸S454の後にまたはAAVカプシドタンパク質において前記AAV9カプシドタンパク質のS454に対応する残基の後に存在する、先行実施形態のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0023】
12.前記カプシドタンパク質は、前記AAV2カプシドタンパク質ではない、上記の実施形態のいずれかのrAAVカプシドタンパク質。
【0024】
13.上記の実施形態のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質をコードする、またはそれと少なくとも80%の同一性を共有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0025】
14.前記ヌクレオチド配列によってコードされる前記カプシドタンパク質を含むAAVベクターを生成するために実施形態13に記載の核酸を発現することが可能なパッケージング細胞。
【0026】
15.実施形態1~12のいずれかに記載のカプシドタンパク質を含むrAAVベクター。
【0027】
16.導入遺伝子をさらに含む、実施形態15に記載のrAAVベクター。
【0028】
17.実施形態15または16に記載のrAAVベクター及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【0029】
18.導入遺伝子を細胞に送達する方法であって、前記方法は、前記細胞を実施形態16に記載のrAAVベクターと接触させることを含み、前記導入遺伝子は、前記細胞に送達される、前記方法。
【0030】
19.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織、または標的細胞もしくはその細胞マトリックスに送達する方法であって、前記方法は、前記対象に実施形態16に記載のrAAVベクターを投与することを含み、前記導入遺伝子は、前記対象の前記標的組織に送達される、前記方法。
【0031】
20.導入遺伝子を細胞に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記組成物は、実施形態16に記載のrAAVベクターを含み、前記細胞は、前記ベクターと接触される、前記薬学的組成物。
【0032】
21.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、実施形態16に記載のrAAVベクターを含み、前記ペプチド挿入物は、ホーミングペプチドであり、前記ベクターは、前記対象に投与される、前記薬学的組成物。
【0033】
22.前記rAAVベクターは、全身的に、静脈内に、髄腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、または硝子体内に投与される、実施形態18~21に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0034】
23.前記標的組織、または標的細胞もしくはその細胞マトリックスは、
神経組織であり、前記ベクターは、前記神経組織ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
骨であり、前記ベクターは、前記骨ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
腎臓であり、前記ベクターは、前記腎臓ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
筋肉であり、前記ベクターは、前記筋肉ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
内皮細胞であり、前記ベクターは、前記内皮細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
インテグリン受容体を発現する細胞であり、前記ベクターは、前記インテグリン受容体結合ドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
トランスフェリン受容体を発現する腫瘍細胞であり、前記ベクターは、前記トランスフェリン受容体結合ドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
腫瘍細胞であり、前記ベクターは、前記腫瘍細胞標的化ドメインからのペプチド挿入物を含み、または
網膜細胞であり、前記ベクターは、前記網膜細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物
を含む、実施形態18~21に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0035】
24.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質であって、前記カプシドタンパク質は、
神経組織ホーミングタンパク質またはドメイン(但し、ペプチド挿入物は、配列TLAVPFK(配列番号27)を含まない);
軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメイン;
骨ホーミングドメイン;
腎臓ホーミングドメイン;
筋肉ホーミングドメイン;
内皮細胞ホーミングドメイン;
インテグリン受容体結合ドメイン;
トランスフェリン受容体結合ドメイン(但し、ペプチド挿入物は、配列RTIGPSV(配列番号19)もCRTIGPSVC(配列番号20)も含まない);
腫瘍細胞標的化ドメイン;及び
網膜細胞ホーミングドメイン(但し、ペプチド挿入物は、配列LGETTRP(配列番号15)もLALGETTRP(配列番号16)も含まない)
からなる群から選択される異種タンパク質またはドメインからの少なくとも4個かつ最大で20個の連続アミノ酸のペプチド挿入物を含み、
前記カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合、前記ペプチド挿入物は表面露出される、前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質。
【0036】
25.前記神経組織ホーミングタンパク質または網膜細胞ホーミングドメインは、ヒト軸糸ダイニン(HAD)重鎖尾部である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0037】
26.前記ペプチド挿入物は、前記HAD重鎖尾部の二量化ドメインからの少なくとも4個かつ最大で12個の連続アミノ酸を含む、実施形態25に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0038】
27.前記ペプチド挿入物は、(図7A~7Mに示される):
(DYH1_HUMAN UniProtKB-Q9P2D7のaa1~1542)(配列番号97);
(DYH2_HUMAN UniProtKB-Q9P225のaa1~1764)(配列番号98);
(DYH3_HUMAN UniProtKB-Q8TD57のaa1~1390)(配列番号99);
(DYH5_HUMAN UniProtKB-Q8TE73のaa1~1941)(配列番号100);
(DYH6_HUMAN UniProtKB-Q9C0G6のaa1~1433)(配列番号101);
(DYH7_HUMAN UniProtKB-Q8WXX0のaa1~1289)(配列番号102);
(DYH8_HUMAN UniProtKB-Q96JB1のaa1~1807)(配列番号103);
(DYH9_HUMAN UniProtKB-Q9NYC9のaa1~1831)(配列番号104);
(DYH10_HUMAN UniProtKB-Q8IVF4のaa1~1793)(配列番号105);
(DYH11_HUMAN UniProtKB-Q96DT5のaa1~1854)(配列番号106);
(DYH12_HUMAN UniProtKB-Q6ZR08のaa1~1214)(配列番号107);
(DYH14_HUMAN UniProtKB-Q0VDD8のaa1~200)(配列番号108);または
(DYH17_HUMAN UniProtKB-Q9UFH2のaa1~1794)(配列番号109)
からなる群からの少なくとも4個かつ最大で12個の連続アミノ酸を含む、実施形態26に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0039】
28.前記ペプチド挿入物は、軸糸ダイニン重鎖配列(図7A~7M)のいずれか1つの残基1~200からの少なくとも4個かつ最大で12個の連続アミノ酸を含む、実施形態27に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0040】
29.前記ペプチド挿入物は、図7A~7Mの前記軸糸ダイニン重鎖配列のいずれか1つからの7個の連続アミノ酸を含む、実施形態27に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0041】
30.前記ペプチド挿入物は、前記ダイニン重鎖配列(図7A~7M)のいずれか1つの残基1~200からの7個の連続アミノ酸を含む、実施形態28に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0042】
31.前記ペプチド挿入物は、
KMQVPFQ(配列番号1);
TLAAPFK(配列番号2);
QQAAPSF(配列番号3);
RYNAPFK(配列番号4);
LKLPPIV(配列番号5);
PFIKPFE(配列番号6);または
TLSLPWK(配列番号7)
のうちの1つの少なくとも4個の連続アミノ酸を含む、実施形態25に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0043】
32.前記ペプチド挿入物は、
KMQVPFQ(配列番号1);
TLAAPFK(配列番号2);
QQAAPSF(配列番号3);
RYNAPFK(配列番号4);
LKLPPIV(配列番号5);
PFIKPFE(配列番号6);または
TLSLPWK(配列番号7)
のうちの1つからのペプチドからなる、実施形態25に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0044】
33.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)を含む、実施形態32に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0045】
34.前記神経組織ホーミングタンパク質は、マウス軸糸ダイニン(MAD)重鎖尾部である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0046】
35.前記神経組織ホーミングドメインは、自然修復受容体に結合し、かつ赤血球生成性ではないEPO(エリスロポエチン)ドメイン、または前記ドメインのコンフォメーションアナログである、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0047】
36.前記ペプチド挿入物は、QEQLERALNSS(配列番号8)からの少なくとも4個かつ最大で11個の連続アミノ酸を含む、実施形態35に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0048】
37.前記ペプチド挿入物は、ARA290配列QEQLERALNSS(配列番号8)である、実施形態36に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0049】
38.前記神経組織ホーミングタンパク質は、SRL(セリン-アルギニン-リジン)モチーフを有する脳ホーミングドメインである、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0050】
39.前記脳ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LSSRLDA(配列番号10)またはCLSSRLDAC(配列番号11)の少なくとも7個の連続アミノ酸を含む、実施形態38に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0051】
40.前記軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメインは、ダイニン軽鎖ホーミングドメインである、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0052】
41.前記ダイニン軽鎖ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、SITLVKSTQTV(配列番号21)、TILSRSTQTG(配列番号22)、VVMVGEKPITITQHSVETEG(配列番号25)、またはRSSEEDKSTQTT(配列番号26)のうちの1つである、実施形態40に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0053】
42.前記骨ホーミングタンパク質は、ヒドロキシアパタイト(HA)結合ドメインである、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0054】
43.前記ヒドロキシアパタイト(HA)結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、配列DDDDDDDD(配列番号9)の少なくとも6個のアミノ酸残基である、実施形態42に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0055】
44.前記腎臓ホーミングドメインは、アミノ酸配列CLPVASC(配列番号12)である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0056】
45.前記腎臓ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LPVAS(配列番号13)またはCLPVASC(配列番号12)である、実施形態44に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0057】
46.前記筋肉ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列ASSLNIA(配列番号14)である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0058】
47.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列QAVRTSL(配列番号23)またはQAVRTSH(配列番号24)である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0059】
48.前記内皮細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列SIGYPLP(配列番号28)である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0060】
49.前記インテグリン結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列CDCRGDCFC(配列番号29)を有する、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0061】
50.前記トランスフェリン受容体結合ドメインは、トランスフェリンドメイン、もしくはそのコンフォメーションアナログ、または鉄模倣体である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0062】
51.前記トランスフェリンドメインからの前記ペプチド挿入物は、配列HAIYPRH(配列番号17)またはTHRPPMWSPVWP(配列番号18)からの少なくとも4個の連続アミノ酸かつ最大で12個の連続アミノ酸を含む、実施形態50に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0063】
52.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列HAIYPRH(配列番号17)またはTHRPPMWSPVWP(配列番号18)である、実施形態51に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0064】
53.前記腫瘍細胞標的化ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列NGRAHA(配列番号30)である、実施形態24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0065】
54.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸残基(図8に示される):
AAV1カプシドアミノ酸配列(配列番号110)の138;262~272;450~459;または585~593;
AAV2カプシドアミノ酸配列(配列番号111)の138;262~272;449~458;または584~592;
AAV3カプシドアミノ酸配列(配列番号112)の138;262~272;449~459;または585~593;
AAV4カプシドアミノ酸配列(配列番号113)の137;256~262;443~453;または583~591;
AAV5カプシドアミノ酸配列(配列番号114)の137;252~262;442~445;または574~582;
AAV6カプシドアミノ酸配列(配列番号115)の138;262~272;450~459;585~593;
AAV7カプシドアミノ酸配列(配列番号116)の138;263~273;451~461;586~594;
AAV8カプシドアミノ酸配列(配列番号117)の138;263~274;452~461;587~595;
AAV9カプシドアミノ酸配列(配列番号118)の138;262~273;452~461;585~593;
AAV9eカプシドアミノ酸配列(配列番号119)の138;262~273;452~461;585~593;
AAVrh10カプシドアミノ酸配列(配列番号120)の138;263~274;452~461;587~595;
AAVrh20カプシドアミノ酸配列(配列番号121)の138;263~274;452~461;587~595;
AAVhu37カプシドアミノ酸配列(配列番号122)の138;263~274;452~461;587~595;
AAVrh74カプシドアミノ酸配列(配列番号123または配列番号154)の138;263~274;452~461;587~595;または
AAVrh39カプシドアミノ酸配列(配列番号124)の138;263~274;452~461;587~595
のうちの1つの直後に存在する、実施形態24~53のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0066】
55.前記AAV9カプシド(配列番号118)のアミノ酸残基588~589の間にまたは図8においてアライメントされているように前記AAV9カプシドのアミノ酸残基588~589の間に対応して挿入されたアミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)を含む組換えAAVカプシドタンパク質。
【0067】
56.前記AAV9カプシド(配列番号118)のアミノ酸I451~L461またはS268のうちの1つの直後にまたは図8においてアライメントされているように前記AAV9カプシドのアミノ酸I451~L461またはS268のうちの1つに対応して挿入されたアミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)を含む組換えAAVカプシドタンパク質。
【0068】
57.前記AAV9カプシド(配列番号118)のアミノ酸残基588~589の間にまたは図8においてアライメントされているように前記AAV9カプシドのアミノ酸残基588~589の間に対応して挿入されたアミノ酸配列QEQLERALNSS(配列番号8)を含む組換えAAVカプシドタンパク質。
【0069】
58.前記AAV9カプシド(配列番号118)のアミノ酸I451~L461またはS268のうちの1つの直後にまたは図8においてアライメントされているように前記AAV9カプシドのアミノ酸I451~L461またはS268のうちの1つに対応して挿入されたアミノ酸配列QEQLERALNSS(配列番号8)を含む組換えAAVカプシドタンパク質。
【0070】
59.前記ペプチド挿入物は、図8においてアライメントされているように、AAV9カプシドタンパク質(配列番号118)のアミノ酸451~461、S268またはQ588のうちの1つに対応するアミノ酸残基の直後に存在する、実施形態24~54のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0071】
60.前記ペプチド挿入物は、前記AAV9カプシドタンパク質(配列番号118)のアミノ酸451~461のうちの1つの直後に存在する、実施形態59に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0072】
61.前記ペプチド挿入物は、第8可変領域(VR-VIII)において存在する、実施形態24~53のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0073】
62.前記カプシドタンパク質は、前記AAV2カプシドタンパク質ではない、実施形態24~61のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0074】
63.実施形態24~62のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質をコードする、またはそれと少なくとも80%の同一性を共有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0075】
64.前記ヌクレオチド配列によってコードされる前記カプシドタンパク質を含むAAVベクターを生成するために実施形態63に記載の核酸を発現することが可能なパッケージング細胞。
【0076】
65.実施形態24~62のいずれかに記載のカプシドタンパク質を含むrAAVベクター。
【0077】
66.導入遺伝子をさらに含む、実施形態65に記載のrAAVベクター。
【0078】
67.実施形態65または66に記載のrAAVベクター及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【0079】
68.導入遺伝子を細胞に送達する方法であって、前記方法は、前記細胞を実施形態66に記載のrAAVベクターと接触させることを含み、前記導入遺伝子は、前記細胞に送達される、前記方法。
【0080】
69.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する方法であって、前記方法は、実施形態66に記載のrAAVベクターを前記対象に投与することを含み、前記導入遺伝子は、前記対象に送達される、前記方法。
【0081】
70.導入遺伝子に細胞に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、実施形態66に記載のrAAVベクターを含み、前記導入遺伝子は、前記細胞に送達される、前記薬学的組成物。
【0082】
71.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、実施形態66に記載のrAAVベクターを含み、導入遺伝子は、前記標的組織に送達される、前記薬学的組成物。
【0083】
72.前記rAAVベクターは、全身的に、静脈内に、髄腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、または硝子体内に投与される、実施形態68~71に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0084】
73.前記ベクターは、腰椎穿刺を介してまたは大槽を介して投与される、実施形態68~71に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0085】
74.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質であって、前記カプシドタンパク質は、TLAVPFK(配列番号27)、RTIGPSV(配列番号19)、CRTIGPSVC(配列番号20)、LGETTRP(配列番号15)、またはLALGETTRP(配列番号16)のうちの1つからの少なくとも4個の連続アミノ酸のペプチド挿入物を含み、
【0086】
前記ペプチド挿入物は、図8においてアライメントされているように、AAV9カプシドタンパク質のアミノ酸268、454または588に対応するアミノ酸残基の直後に存在する、前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質。
【0087】
75.前記カプシドタンパク質は、前記AAV2カプシドタンパク質ではない、実施形態74に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0088】
76.前記ペプチド挿入物は、前記AAV9カプシドタンパク質(配列番号118)のアミノ酸残基454及び455の間にアミノ酸配列TLAVPFK(配列番号27)を含む、実施形態74に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0089】
77.前記ペプチド挿入物は、前記AAV9カプシドタンパク質(配列番号118)のアミノ酸残基262~273のうちの1つの直後にアミノ酸配列TLAVPFK(配列番号27)を含む、実施形態74に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0090】
78.前記ペプチド挿入物は、AAV8カプシドタンパク質(配列番号117)のアミノ酸残基454~455の間にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)を含む、実施形態74に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0091】
79.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)を含む、実施形態78に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0092】
80.前記ペプチド挿入物は、前記AAV8カプシドタンパク質(配列番号117)のアミノ酸残基590~591の間に挿入されたアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)を含む、実施形態74に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0093】
81.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)を含む、実施形態80に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0094】
82.前記ペプチド挿入物は、前記AAV8カプシドタンパク質(配列番号117)のアミノ酸残基263~274の直後にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)を含む、実施形態74に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0095】
83.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)を含む、実施形態82に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【0096】
84.実施形態74~83のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質をコードする、またはそれと少なくとも80%の同一性を共有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0097】
85.前記ヌクレオチド配列によってコードされる前記カプシドタンパク質を含むAAVベクターを生成するために実施形態84に記載の核酸を発現することが可能なパッケージング細胞。
【0098】
86.実施形態74~83のいずれかに記載のカプシドタンパク質を含むrAAVベクター。
【0099】
87.導入遺伝子をさらに含む、実施形態86に記載のrAAVベクター。
【0100】
88.実施形態86または87に記載のrAAVベクター及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【0101】
89.導入遺伝子を細胞に送達する方法であって、前記方法は、前記細胞を実施形態86または87に記載のrAAVベクターと接触させることを含み、前記導入遺伝子は、前記細胞に送達される、前記方法。
【0102】
90.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する方法であって、前記方法は、実施形態86または87に記載のrAAVベクターを前記対象に投与することを含み、前記導入遺伝子は、前記標的組織に送達される、前記方法。
【0103】
91.導入遺伝子に細胞に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、実施形態86または87に記載のrAAVベクターを含み、前記導入遺伝子は、前記細胞に送達される、前記薬学的組成物。
【0104】
92.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、実施形態86または87に記載のrAAVベクターを含み、前記導入遺伝子は、前記標的組織に送達される、前記薬学的組成物。
【0105】
93.前記標的組織は、網膜細胞であり、前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)またはLALGETTRP(配列番号16)を含む、実施形態89~92に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0106】
94.前記rAAVベクターは、全身的に、静脈内に、髄腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、または硝子体内に投与される、実施形態89~93に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0107】
95.前記ベクターは、腰椎穿刺を介してまたは大槽を介して投与される、実施形態89~93に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0108】
96.組換えAAVカプシドタンパク質であって、野生型または非修飾カプシドタンパク質に対する1つ以上のアミノ酸置換であって、前記rAAVカプシドタンパク質は、A269Sアミノ酸置換を有するAAV8カプシドタンパク質(配列番号117)であり、またはS263G/S269R/A273T置換、またはW503RもしくはQ474A置換を有するAAV9カプシドタンパク質(配列番号118)である、前記1つ以上のアミノ酸置換、または別のAAV型カプシドのカプシドタンパク質における対応する置換を含む、前記組換えAAVカプシドタンパク質。
【0109】
97.AAV8カプシドタンパク質についての498-NNN/AAA-500もしくはAAV9カプシドタンパク質(配列番号118)についての496-NNN/AAA-498、または別のAAV型カプシドのカプシドタンパク質における対応する置換をさらに含む、実施形態96に記載の組換えAAVカプシドタンパク質。
【0110】
98.実施形態96または97に記載のrAAVカプシドタンパク質をコードする、またはそれと少なくとも80%の同一性を共有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0111】
99.前記ヌクレオチド配列によってコードされる前記カプシドタンパク質を含むAAVベクターを生成するために実施形態98に記載の核酸を発現することが可能なパッケージング細胞。
【0112】
100.実施形態96または97に記載のいずれかのカプシドタンパク質を含むrAAVベクター。
【0113】
101.導入遺伝子をさらに含む、実施形態100に記載のrAAVベクター。
【0114】
102.実施形態100または101に記載のrAAVベクター及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【0115】
103.導入遺伝子を細胞に送達する方法であって、前記方法は、前記細胞を実施形態101に記載のrAAVベクターと接触させることを含み、前記導入遺伝子は、前記細胞に送達される、前記方法。
【0116】
104.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する方法であって、前記方法は、実施形態101に記載のrAAVベクターを前記対象に投与することを含み、前記導入遺伝子は、前記標的組織に送達される、前記方法。
【0117】
105.導入遺伝子を細胞に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、実施形態101に記載のrAAVベクターを含み、前記導入遺伝子は、前記細胞に送達される、前記薬学的組成物。
【0118】
106.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する際に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、実施形態101に記載のrAAVベクターを含み、前記導入遺伝子は、前記標的組織に送達される、前記薬学的組成物。
【0119】
107.前記rAAVベクターは、全身的に、静脈内に、髄腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、または硝子体内に投与される、実施形態102~106に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【0120】
108.前記ベクターは、腰椎穿刺を介してまたは大槽を介して投与される、実施形態102~106に記載の方法、または使用のための薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】他のAAVの領域に対応する残基L447~R476(残基451~459は括弧で示されている)からのアデノ随伴ウイルス9型のVR-IVループ(AAV9 VR-IV)を含むカプシドアミノ酸配列の配列比較を示している。図は、配列番号87~92、88、及び93~96を、それぞれ、出現の順で開示している。
図2】カプシド可変領域VR-IV、VR-V及びVR-VIIIを示す、AAVカプシド構造のタンパク質モデルを示している。ボックスは、モデルにおいて表されるように、表面露出アミノ酸を提供するVR-IVのループ領域を強調している。
図3】野生型AAV9及び8種の候補改変rAAV9ベクター(1090、1091、1092、1093、1094、1095、1096、及び1097)のmL当たりのゲノムコピー(GC/mL)の観点からの高パッケージング効率(力価)を示しており、候補ベクターは、それぞれ、残基I451~Q458からのAAV9 VR-IVの中の異なる部位の直後にFLAG挿入物を各々含有する。すべてのベクターを、10mLの培養物中でルシフェラーゼ導入遺伝子と共にパッケージングした;エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
図4】抗FLAG樹脂への結合によるパッケージングされたベクターの免疫沈降によって確認された、8種の候補改変rAAV9ベクター(1090、1091、1092、1093、1094、1095、1096、及び1097)の各々におけるl VR-IVループFLAG挿入物の表面露出を実証している。
図5】野生型AAV9(9-luc)、または8種の候補改変(FLAGペプチドが挿入されている)rAAV9ベクター(1090、1091、1092、1093、1094、1095、1096、及び1097)の各々のいずれかにパッケージングされた、(導入遺伝子として)ルシフェラーゼ遺伝子を保有するカプシドベクターで形質導入されたLec2細胞における形質導入効率を示しており;形質導入活性は、9-lucの活性を100%として採用してルシフェラーゼ活性パーセントとして(A)、またはタンパク質のマイクログラム当たりの相対光単位(RLU)として(B)表されている。
図6A】様々なペプチドの長さ及び組成のAAV9のS454の直後の挿入物が、パッケージング細胞におけるAAV粒子の生成効率に影響を及ぼし得ることを図示している棒グラフを示している。様々な組成及び長さの10種のペプチドを、AAV9 VR-IVの中のS454の後に挿入した。トランスフェクションから5日後にトランスフェクションされた浮遊HEK293細胞の収穫された上清についてqPCRを実施した。棒グラフにおいて示された結果は、全体収率(力価)によって示されているように、挿入物の特質が、HEK293細胞によってAAV粒子が生成され、分泌される能力に影響を及ぼすことを実証している。(エラーバーは、Y軸に括弧で記されているペプチドの平均長さの標準誤差を表す)。
図6B】以下の細胞株の形質導入された細胞培養物の蛍光画像を示している:(6B)Lec2細胞株、(6C)HT-22細胞株、(6D)hCMEC/D3細胞株、及び(6E)C2C12細胞株。GFP導入遺伝子を含有するAAV9野生型及びS454挿入ホーミングペプチドカプシドを使用して前述の細胞株を形質導入した。P1ベクターは、極端に低い形質導入効率のため画像に含まれず、P8ベクターは、低い力価のため含まれなかった。AAV9.S454.FLAGは、試験されたすべての細胞タイプにおいて低い形質導入レベルを示した。
図6C】以下の細胞株の形質導入された細胞培養物の蛍光画像を示している:(6B)Lec2細胞株、(6C)HT-22細胞株、(6D)hCMEC/D3細胞株、及び(6E)C2C12細胞株。GFP導入遺伝子を含有するAAV9野生型及びS454挿入ホーミングペプチドカプシドを使用して前述の細胞株を形質導入した。P1ベクターは、極端に低い形質導入効率のため画像に含まれず、P8ベクターは、低い力価のため含まれなかった。AAV9.S454.FLAGは、試験されたすべての細胞タイプにおいて低い形質導入レベルを示した。
図6D】以下の細胞株の形質導入された細胞培養物の蛍光画像を示している:(6B)Lec2細胞株、(6C)HT-22細胞株、(6D)hCMEC/D3細胞株、及び(6E)C2C12細胞株。GFP導入遺伝子を含有するAAV9野生型及びS454挿入ホーミングペプチドカプシドを使用して前述の細胞株を形質導入した。P1ベクターは、極端に低い形質導入効率のため画像に含まれず、P8ベクターは、低い力価のため含まれなかった。AAV9.S454.FLAGは、試験されたすべての細胞タイプにおいて低い形質導入レベルを示した。
図6E】以下の細胞株の形質導入された細胞培養物の蛍光画像を示している:(6B)Lec2細胞株、(6C)HT-22細胞株、(6D)hCMEC/D3細胞株、及び(6E)C2C12細胞株。GFP導入遺伝子を含有するAAV9野生型及びS454挿入ホーミングペプチドカプシドを使用して前述の細胞株を形質導入した。P1ベクターは、極端に低い形質導入効率のため画像に含まれず、P8ベクターは、低い力価のため含まれなかった。AAV9.S454.FLAGは、試験されたすべての細胞タイプにおいて低い形質導入レベルを示した。
図7A】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7B】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7C】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7D】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7E】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7F】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7G】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7H】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7I】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7J】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7K】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7L】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図7M】ヒト軸糸ダイニン1~12、14、及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列を示している。
図8-1】VP2の開始コドンの後、及び可変領域1(VR-I)、可変領域4(VR-IV)、及び可変領域8(VR-VIII)の中または近く(すべて灰色で強調されている)に異種ペプチドのための挿入部位を有するAAV1~9e、rh10、rh20、rh39、ならびにrh74バージョン1及びバージョン2のアライメントを示しており、各カプシドタンパク質の可変領域8(VR-VIII)の中の特定の挿入部位は、記号「#」によって示されている(AAV9のアミノ酸付番に従ってアミノ酸残基588の後)。
図8-2】図8-1の続きである。
図8-3】図8-1の続きである。
図8-4】図8-1の続きである。
図8-5】図8-1の続きである。
図9】Q588及びA589の間にARA290のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており(配列番号153);ARA290挿入物は太字で示されている。
図10】AAVベクター:AAV9;本明細書でAAV9eとも称されるAAV.PHP.eB(位置588及び589の間に挿入されたペプチドTLAVPFK(配列番号27)及び改変A587D/A588Gを有するAAV9);AAV.hDyn(588及び589の間にTLAAPFK(配列番号2)を有するAAV9);AAV.PHP.S(位置588及び589の間にペプチドQAVRTSL(配列番号23)を有するAAV9);及びAAV.PHP.SH(位置588及び589の間に挿入されたペプチドQAVRTSH(配列番号24)を有するAAV9)の投与後のマウス脳細胞におけるGFP(緑色蛍光タンパク質)導入遺伝子のコピーを示している。
図11】Q588及びA589の間(A)、VR-IIIのS268及びS269の間(B)、ならびにVR-IVのS454及びG455の間(C)にTLAAPFK(配列番号2)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、TLAAPFK(配列番号2)挿入物は太字で示されている。
図12】Q588及びA589の間(A)、VR-IIIのS268及びS269の間(B)、ならびにVR-IVのS454及びG455の間(C)にKMQVPFQ(配列番号1)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、KMQVPFQ(配列番号1)挿入物は太字で示されている。
図13】Q588及びA589の間(A)、VR-IIIのS268及びS269の間(B)、ならびにVR-IVのS454及びG455の間(C)にQQAAPSF(配列番号3)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、QQAAPSF(配列番号3)挿入物は太字で示されている。
図14】Q588及びA589の間(A)、VR-IIIのS268及びS269の間(B)、ならびにVR-IVのS454及びG455の間(C)にRYNAPFK(配列番号4)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、RYNAPFK(配列番号4)挿入物は太字で示されている。
図15】Q588及びA589の間(A)、VR-IIIのS268及びS269の間(B)、ならびにVR-IVのS454及びG455の間(C)にLKLPPIV(配列番号5)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、LKLPPIV(配列番号5)挿入物は太字で示されている。
図16】Q588及びA589の間(A)、VR-IIIのS268及びS269の間(B)、ならびにVR-IVのS454及びG455の間(C)にPFIKPFE(配列番号6)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、PFIKPFE(配列番号6)挿入物は太字で示されている。
図17】Q588及びA589の間(A)、VR-IIIのS268及びS269の間(B)、ならびにVR-IVのS454及びG455の間(C)にTLSLPWK(配列番号7)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、TLSLPWK(配列番号7)挿入物は太字で示されている。
図18】N590及びT591の間(A)、VR-IIIのA269及びT270の間(B)、ならびにVR-IVのT453及びT454の間(C)にLGETTRP(配列番号15)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、LGETTRP(配列番号15)挿入物は太字で示されている。
図19】N590及びT591の間(A)、VR-IIIのA269及びT270の間(B)、ならびにVR-IVのT453及びT454の間(C)にLALGETTRP(配列番号16)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、それぞれ、LALGETTRP(配列番号16)挿入物は太字で示されている。
図20】血液脳関門(BBB)細胞層を通過するAAVベクターについてのin vitroトランズウェルアッセイ(A)、及びAAV.hDyn(反転三角によって示されている)が、AAV9(四角)よりも早く、また、AAV2(丸)よりも早く、かつ高い程度までアッセイのBBB細胞層を通過することを示す結果(B)を示している。
図21】修飾されたカプシド及びネイティブカプシドのプールが静脈内に投与されたマウスからの脳gDNAの次世代シーケンシング(NGS)分析の結果を示しており、プールにおける異なるカプシドのマウスの組織における相対的存在量を明らかにしている。3つの異なるプールをマウスに注射した。点線は、どのベクターが一緒にプールされていたかを示している。親AAV9は、対照として各プールに含まれていた(プール1:BC01、プール2:BC31、プール3:BC01)。プールの各カプシドについてのバーコードが表8a~8cに列挙されている。
図22】雌のC57Bl/6マウスにおけるAAV.hDynのin vivo形質導入プロファイルを示しており、脳(A)、肝臓(B)、心臓(C)、肺(D)、腎臓(E)、骨格筋(F)、座骨神経(G)、及び卵巣(H)における、ナイーブマウス、またはAAV9もしくはAAV.hDynのいずれかが注射されたマウスにおけるコピー数/マイクログラムgDNAを示しており、AAV.hDynは、AAV9と比較して増加した脳生体内分布を示している。
図23】脳全体にわたるAAV.hDynからのGFPの分布を示しており、線条体(A)、海馬(B)、及び皮質(C)からの脳切片の免疫組織化学染色の画像は、改変ベクターによる脳の包括的形質導入を明らかにした。
図24】アミノ酸454の直後にホーミングペプチドの挿入物を含有する遺伝子修飾されたAAV9ベクターのin vivoでの腎臓対肝臓の形質導入効率比を示している。この研究において使用されたホーミングペプチドの詳細は、表8に概説されている。
図25】VR-IVのS454及びG455の間にTLAVPFK(配列番号27)ペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターについてのアミノ酸配列を示しており、TLAVPFK(配列番号27)挿入物は太字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0122】
所望の特性、例えば、rAAVゲノムの組織標的化、形質導入及び組み込みを付与及び/または向上させるアミノ酸配列を含むように修飾されたカプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。特に、カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合にペプチド挿入物が表面露出されるように、ウイルスカプシドの可変領域IV(VR-IV)の中またはその近くに、異種タンパク質からの4~20個、または7個の連続アミノ酸、及び実施形態では、12個以下の連続アミノ酸のペプチド挿入物を含む修飾されたカプシドタンパク質が提供される。例えば、ヒト軸糸ダイニンの重鎖尾部領域の二量化ドメイン及び本明細書に記載される他のもの(表1A及び1B参照)からの、特定の組織を標的とし、及び/またはrAAV細胞取り込み、形質導入及び/またはゲノム組み込みを促進するペプチドが挿入された組換えカプシドタンパク質、及びそれらを含むrAAVも提供される。
【0123】
本明細書に記載の形質導入及び/または組織指向性を促進する1つ以上のアミノ酸置換を有する修飾されたカプシドも提供される。カプシドタンパク質を含む組換えベクターもまた、その薬学的組成物、カプシドタンパク質をコードする核酸、ならびに標的化送達、改善された形質導入及び/または標的組織に関連する障害の処置のための修飾されたカプシドを有するカプシドタンパク質及びrAAVベクターを作製する方法及び使用する方法と一緒に提供される。特に、rAAVを含む組成物ならびにエリスロポエチンもしくはダイニンに由来するペプチドまたはダイニンに関連するものを含むカプシドタンパク質を、rAAVを網膜及び/または中枢神経系を含む神経組織に標的化するために及び神経障害及び/または眼、特に、網膜の障害を処置するための治療剤の送達を容易化するために使用する方法が提供される。標的組織、例えば、骨、腎臓、筋肉、肺、網膜、及び心臓を標的とし、またはそれにホーミングするペプチド挿入物を含むrAAVを含む組成物、及びそれを使用する方法も提供される。
【0124】
5.1.定義
用語「AAV」または「アデノ随伴ウイルス」は、Parvoviridae属のウイルス内のディペンドパルボウイルスを指す。AAVは、天然に存在する「野生型」ウイルスに由来するAAV、天然に存在するcap遺伝子によってコードされるカプシドタンパク質を含むカプシドにパッケージングされたrAAVゲノム及び/または天然に存在しないカプシドcap遺伝子によってコードされるカプシドタンパク質を含むカプシドにパッケージングされたrAAVゲノムに由来するAAVであり得る。後者の例には、天然に存在するカプシドのアミノ酸配列内にペプチド挿入物を含むカプシドタンパク質を有するrAAVが含まれる。
【0125】
用語「rAAV」は、「組換えAAV」を指す。いくつかの実施形態では、組換えAAVは、rep遺伝子及びcap遺伝子の一部またはすべてが異種配列で置き換えられたAAVゲノムを有する。
【0126】
用語「rep-capヘルパープラスミド」は、ウイルスのrep及びcap遺伝子機能を提供し、かつ機能的rep遺伝子及び/またはcap遺伝子配列を欠くrAAVゲノムからのAAVの生成を補助するプラスミドを指す。
【0127】
用語「cap遺伝子」は、ウイルスのカプシド被覆を形成するまたは形成するのを補助するカプシドタンパク質をコードする核酸配列を指す。AAVの場合、カプシドタンパク質は、VP1、VP2、またはVP3であり得る。
【0128】
用語「rep遺伝子」は、ウイルスの複製及び生成に必要な非構造タンパク質をコードする核酸配列を指す。
【0129】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」及び「ヌクレオチド配列」には、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、DNA及びRNA分子の組み合わせまたはハイブリッドDNA/RNA分子、ならびにDNAまたはRNA分子のアナログが含まれる。そのようなアナログは、イノシンまたはトリチル化塩基を含むがこれらに限定されないヌクレオチドアナログを使用して生成され得る。そのようなアナログはまた、例えば、ヌクレアーゼ耐性または細胞膜を通過する増加した能力などの分子に有益な属性を与える改変された骨格を含むDNAまたはRNA分子を含み得る。核酸またはヌクレオチド配列は、一本鎖、二本鎖であり得、一本鎖部分及び二本鎖部分の両方を含有し得、三本鎖部分を含有し得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「対象」、「宿主」、及び「患者」は、互換的に使用される。本明細書で使用される場合、対象は、哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類(例えば、サル及びヒト)、または、所定の実施形態では、ヒトである。
【0131】
本明細書で使用される場合、用語「治療剤」は、疾患または障害に関連する症状を処置、管理、または改善する際に使用され得る任意の薬剤であって、疾患または障害が、導入遺伝子によって提供される機能に関連するものを指す。本明細書で使用される場合、「治療的有効量」は、標的疾患または障害の処置または管理において、それを罹患している対象に投与された場合に少なくとも1つの治療的利益を提供する薬剤の量(例えば、導入遺伝子によって発現される生成物の量)を指す。さらに、本発明の薬剤に関する治療的有効量は、単独での、または他の療法と組み合わせた場合の薬剤の量が、疾患または障害の処置または管理において少なくとも1つの治療的利益を提供することを意味する。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「予防剤」は、疾患または障害の進行の予防、遅延、または減速において使用され得る任意の薬剤であって、疾患または障害が、導入遺伝子によって提供される機能に関連するものを指す。本明細書で使用される場合、「予防的有効量」は、標的疾患または障害の予防または遅延において、その素因がある対象に投与された場合に少なくとも1つの予防的利益を提供する予防剤の量(例えば、導入遺伝子によって発現される生成物の量)を指す。予防的有効量はまた、標的疾患または障害の発生を予防または遅延させる;または標的疾患または障害の進行を減速させるのに十分な薬剤の量;標的疾患または障害の開始を遅延または最小化するのに十分な量;または再発またはその広がりを予防または遅延させるのに十分な量を指し得る。予防的有効量はまた、標的疾患または障害の症状の増悪を予防または遅延させるのに十分な薬剤の量を指し得る。さらに、本発明の予防剤に関する予防的有効量は、単独での、または他の薬剤と組み合わせた場合の予防剤の量が、疾患または障害の予防または遅延において少なくとも1つの予防的利益を提供することを意味する。
【0133】
本発明の予防剤は、標的疾患または障害の「素因がある」対象に投与され得る。疾患または障害の「素因がある」対象は、疾患または障害の発症に関連する症状を示すもの、またはそのような疾患もしくは障害についての遺伝子構造、環境曝露、もしくは他のリスク要因を有するが、症状はまだ疾患または障害として診断されるレベルではないものである。例えば、(導入遺伝子によって提供される)欠落遺伝子に関連する疾患の家族歴を有する患者は、その素因があるものとして適する場合がある。さらに、原発性腫瘍の除去後に持続する潜伏腫瘍を有する患者は、腫瘍の再発の素因があるものとして適する場合がある。
【0134】
「中枢神経系」(「CNS」)は、本明細書で使用される場合、循環薬剤が血液脳関門を通過した後に到達する神経組織を指し、例えば、脳、視神経、脳神経、及び脊髄を含む。CNSにはまた、脊髄中心管及び脳室を満たす脳脊髄液が含まれる。
【0135】
5.2.組換えAAVカプシド及びベクター
1つの態様は、AAVタンパク質ではない異種タンパク質からのペプチド挿入物を含むように修飾されたカプシドタンパク質である組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)のカプシドタンパク質であって、AAV粒子としてパッケージングされた場合にペプチド挿入物が表面露出されるものに関する。いくつかの実施形態では、ペプチド挿入物は、AAV9カプシドの可変領域IV(VR-IV)、または別の型のAAVカプシドについての対応する領域の中に(すなわち、いかなるカプシドアミノ酸も欠失させることなく2つのアミノ酸の間に)存在する(図8におけるアライメント参照)。いくつかの実施形態では、ペプチド挿入物は、AAV9カプシドの可変領域VIII(VR-VIII)、または別のAAV型についてのカプシドの対応する領域の中に(すなわち、いかなるカプシドアミノ酸も欠失させることなく2つのアミノ酸の間に)存在する(図8におけるアライメント参照)。いくつかの実施形態では、ペプチド挿入物は、rAAV粒子を標的組織に誘導し、及び/またはrAAV取り込み、形質導入及び/またはゲノム組み込みを促進する異種タンパク質またはドメイン(AAVカプシドタンパク質またはドメインではない)からのものである。修飾されたカプシドタンパク質及びそのバリアントをコードする核酸、rAAVベクターを生成するための核酸を発現するためのパッケージング細胞、導入遺伝子をさらに含むrAAVベクター、及びrAAVベクターの薬学的組成物、ならびに導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的細胞タイプまたは標的組織に送達するためにrAAVベクターを使用する方法も提供される。
【0136】
様々な実施形態では、標的組織は、神経組織、骨、腎臓、筋肉、眼/網膜、もしくは内皮組織、または特定の受容体もしくは腫瘍であり得、ペプチド挿入物は、組織、または例えば、1つ以上の特定の細胞タイプ、例えば、標的組織内のもの、またはその細胞マトリックスを特異的に認識し、及び/または結合する異種タンパク質またはドメインに由来する。特に、エリスロポエチンまたはダイニンに由来するペプチド、特に軸糸ダイニンまたは細胞質ダイニンの重鎖二量化ドメイン、または任意の表面露出可変領域に挿入された細胞質ダイニンに結合し、または関連するものは、rAAVを神経組織に標的化し得、これには、血液脳関門を通過してCNSに至ること及び神経障害を処置するための治療剤を送達することが含まれる。
【0137】
5.2.1 ペプチド挿入物を有するrAAVベクター
本発明者は、驚くべきことに、AAV9カプシドVR-IVループ(図2参照)の中及び近くならびに他のAAV型のカプシドのVR-IVループ上の対応する領域にペプチド挿入物に適した位置を発見した。先行研究は、様々なAAVにおける潜在的位置を研究したが、いずれもこの目的に適するものとしてAAV9 VR-IVを特定しなかった(例えば、Wu et al,2000,“Mutational Analysis of the Adeno-Associated Virus Type 2(AAV2)Capsid Gene and Construction of AAV2 Vectors with Altered Tropism,” J of Virology 74(18):8635-8647 ;Lochrie et al,2006,“Adeno-associated virus(AAV)capsid genes isolated from rat and mouse liver genomic DNA define two new AAV species distantly related to AAV-5,” Virology 353:68-82;Shi and Bartlett,2003,“RGD Inclusion in VP3 Provides Adeno-Associated Virus Type 2(AAV2)-Based Vectors with a Heparan Sulfate-Independent Cell Entry Mechanism,” Molecular Therapy 7(4):515525-;Nicklin et al.,2001,“Efficient and Selective AAV2-Mediated Gene Transfer Directed to Human Vascular Endothelial Cells” Molecular Therapy 4(2):174-181;Grifman et al.,2001,“Incorporation of Tumor-Targeting Peptides into Recombinant Adeno-associated Virus Capsids,” Molecular Therapy 3(6):964-975;Girod et al.1999,“Genetic capsid modifications allow efficient re-targeting of adeno-associated virus type 2,” Nature Medicine 3(9):1052-1056;Douar et al.,2003,“Deleterious effect of peptide insertions in a permissive site of the AAV2 capsid,“Virology 309:203-208;及びPonnazhagan,et al.2001,J.of Virology 75(19):9493-9501を考察されたい)。
【0138】
したがって、新規挿入点で、特に、カプシド被覆における表面露出可変領域の中に、特にカプシドタンパク質の可変領域IVの中または近くにペプチド挿入物を保有するrAAVベクターが提供される。いくつかの実施形態では、rAAVカプシドタンパク質は、AAV9カプシドタンパク質(アミノ酸配列の配列番号118、AAV9カプシドのアミノ酸配列を有する他のAAV血清型のカプシドタンパク質アミノ酸配列のアライメントについては図8参照)のアミノ酸451~461のうちの1つに対応するアミノ酸残基の直後に(すなわち、C末端へのペプチド結合によって接続される)ペプチド挿入物を含み、カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合、前記ペプチド挿入物は表面露出される。ペプチド挿入物は、AAVカプシドタンパク質のいずれの残基も欠失させるべきではない。通常、ペプチド挿入物は、他の血清型と比較して、そのカプシドタンパク質の可変(保存性が低い)領域において、及び表面露出ループにおいて存在する。
【0139】
所与の部位「で」挿入されるものとして記載されるペプチド挿入物は、野生型ウイルスにおいてその部位で通常見られる残基の直後の(すなわち、そのカルボキシ基に対するペプチド結合を有する)挿入を指す。例えば、AAV9におけるQ588での挿入は、ペプチド挿入物が、AAV9野生型カプシドタンパク質配列(配列番号118)におけるQ588及び連続アミノ酸(A589)の間に現れることを意味する。実施形態では、挿入点においてまたはその近くに(5、10、15残基内または挿入の部位である構造ループ内で)アミノ酸残基の欠失は存在しない。
【0140】
特定の実施形態では、カプシドタンパク質は、AAV9カプシドタンパク質であり、挿入物は、アミノ酸残基451~461のうちの少なくとも1つの直後に存在する。特定の実施形態では、ペプチド挿入物は、AAV9カプシド(アミノ酸配列配列番号118)のアミノ酸I451、N452、G453、S454、G455、Q456、N457、Q458、Q459、T460、またはL461の直後に存在する。所定の実施形態では、ペプチドは、AAV9カプシドタンパク質の残基S454及びG455の間またはAAV9カプシドタンパク質(アミノ酸配列配列番号118)以外のAAVカプシドタンパク質のS454及びG455に対応する残基の間に挿入される。
【0141】
他の実施形態では、異種ペプチドがAAVベクターに組み込まれた場合に表面露出されるように、AAVカプシドタンパク質に挿入されたカプシドタンパク質に対して異種の標的化ペプチドを含む修飾されたカプシドタンパク質が提供される。そのようなペプチドは、好ましくはヒト軸糸ダイニン(HAD)重鎖尾部からのものであり、または以下の表1A及び1Bに列挙されるものもしくは特定の組織タイプのための他の標的化ペプチドである。
【0142】
他の実施形態では、カプシドタンパク質は、AAV血清型1(AAV1)、血清型2(AAV2)、血清型3(AAV3)、血清型4(AAV4)、血清型5(AAV5)、血清型6(AAV6)、血清型7(AAV7)、血清型8(AAV8)、血清型rh8(AAVrh8)、血清型9e(AAV9e)、血清型rh10(AAVrh10)、血清型rh20(AAVrh20)、血清型rh39(AAVrh39)、血清型hu.37(AAVhu.37)、及び血清型rh74(AAVrh74、バージョン1及び2)(図8参照)から選択される少なくとも1つのAAV型からのものであり、挿入物は、アミノ酸残基451~461のうちの少なくとも1つに対応するアミノ酸残基の直後に存在する。これらの異なるAAV血清型のアライメントは、図8に示されているように、「対応する」アミノ酸残基が、参照配列における残基としてアライメントにおいて同じ位置で並べられるように、異なるカプシドアミノ酸配列における「対応する」アミノ酸残基を示す。いくつかの特定の実施形態では、ペプチド挿入物は、図8に示される配列におけるAAV1カプシド(配列番号110)の450~459;AAV2カプシド(配列番号111)の449~458;AAV3カプシド(配列番号112)の449~459;AAV4カプシド(配列番号113)の443~453;AAV5カプシド(配列番号114)の442~445;AAV6カプシド(配列番号115)の450~459;AAV7カプシド(配列番号116)の451~461;AAV8カプシド(配列番号117)の451~461;AAV9カプシド(配列番号118)の451~461;AAV9eカプシド(配列番号119)の452~461;AAVrh10カプシド(配列番号120)の452~461;AAVrh20カプシド(配列番号121)の452~461;AAVhu.37(配列番号122)の452~461;AAVrh74(配列番号123または配列番号154)の452~461;またはAAVrh39(配列番号124)の452~461の中のアミノ酸残基のうちの1つの直後に存在する。所定の実施形態では、rAAVカプシドタンパク質は、AAV9カプシドタンパク質(配列番号118のアミノ酸配列を有する、図8参照)のアミノ酸588の直後に(すなわち、そのC末端に)ペプチド挿入物を含み、カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合、前記ペプチド挿入物は表面露出される。他の実施形態では、rAAVカプシドタンパク質は、AAV9のアミノ酸588またはAAV9のアミノ酸588に対応するものの直後にはないペプチド挿入物を有する。
【0143】
他の実施形態では、ペプチドが、表1A及び1Bの少なくとも4個の連続アミノ酸、もしくは少なくとも7個の連続アミノ酸、または正確に7個の連続アミノ酸であるが、実施形態では、12個以下の連続アミノ酸、またはその機能的断片を含む標的化ペプチドである場合、カプシドタンパク質は、AAV血清型1(AAV1)、血清型2(AAV2)、血清型3(AAV3)、血清型4(AAV4)、血清型5(AAV5)、血清型6(AAV6)、血清型7(AAV7)、血清型8(AAV8)、血清型rh8(AAVrh8)、血清型9e(AAV9e)、血清型rh10(AAVrh10)、血清型rh20(AAVrh20)、血清型rh39(AAVrh39)、血清型hu.37(AAVhu.37)、及び血清型rh74(AAVrh74、バージョン1及び2)(図8参照)から選択される少なくとも1つのAAV型からのものであり、ペプチドがAAVベクターに組み込まれた場合に表面露出されるように、ペプチドは、任意の点でカプシドタンパク質に挿入される。特定の実施形態では、ペプチドは、AAV1カプシド(配列番号110)の138;262~272;450~459;もしくは585~593;AAV2カプシド(配列番号111)の138;262~272;449~458;もしくは584~592;AAV3カプシド(配列番号112)の138;262~272;449~459;もしくは585~593;AAV4カプシド(配列番号113)の137;256~262;443~453;もしくは583~591;AAV5カプシド(配列番号114)の137;252~262;442~445;もしくは574~582;AAV6カプシド(配列番号115)の138;262~272;450~459;585~593;AAV7カプシド(配列番号116)の138;263~273;451~461;586~594;AAV8カプシド(配列番号117)の138;263~274;452~461;587~595;AAV9カプシド(配列番号118)の138;262~273;452~461;585~593;AAV9eカプシド(配列番号119)の138;262~273;452~461;585~593;AAVrh10カプシド(配列番号120)の138;263~274;452~461;587~595;AAVrh20カプシド(配列番号121)の138;263~274;452~461;587~595;AAVrh74カプシド(配列番号123または配列番号154)の138;263~274;452~461;587~595、AAVhu37カプシド(配列番号122)の138;263~274;452~461;587~595;またはAAVrh39カプシド(配列番号124)の138;263~274;452~461;587~595(図8で付番されている)の後に挿入される。
【0144】
いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は、血清型AAV2以外のAAVからのものである。いくつかの実施形態では、ペプチド挿入物は、AAV2カプシドタンパク質のアミノ酸570または611に対応するアミノ酸残基の直後に存在しない。いくつかの実施形態では、ペプチド挿入物は、AAV2カプシドタンパク質のアミノ酸587~588に対応するアミノ酸残基の間に存在しない(SchafferらのUS2014/0294771参照)。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列DDDDDDDD(配列番号9)を有する骨1ペプチドの挿入物は、AAV2カプシドタンパク質のアミノ酸138の直後に存在しない(Almeciga-Diaz et al.,2018,Pediatr Res.84:545参照)。
【0145】
修飾されたカプシドを含むAAVベクターも提供される。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、非複製性であり、repまたはcapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含まない(これらは、rAAVベクターの製造においてパッケージング細胞によって供給される)。いくつかの実施形態では、AAVベースのベクターは、AAVの1つ以上の血清型からの成分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるAAVベースのベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、もしくはAAV.HSC16もしくは他のrAAV粒子、またはそれらの2つ以上の組み合わせのうちの1つ以上からのカプシド成分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるAAVベースのベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、もしくはAAV.HSC16もしくは他のrAAV粒子、またはそれらの2つ以上の組み合わせのうちの1つ以上からの成分を含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、rAAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、もしくはAAV.HSC16、またはそれらの誘導体、改変、もしくはシュードタイプから選択されるAAVカプシド血清型のVP1配列、VP2配列及び/またはVP3配列と少なくとも80%またはより同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%など、すなわち、最大で100%同一のカプシドタンパク質を含む。これらの修飾されたAAVベクターは、治療タンパク質をコードする導入遺伝子を含むゲノムを含み得る。
【0146】
特定の実施形態では、本明細書における組成物及び方法において使用するための組換えAAVは、Anc80またはAnc80L65である(例えば、Zinn et al.,2015,Cell Rep.12(6):1056-1068(その全体が参照により組み込まれる)参照)。特定の実施形態では、本明細書における組成物及び方法において使用するための組換えAAVは、AAV.7m8である(そのバリアントを含む)(例えば、US9,193,956;US9,458,517;US9,587,282;US2016/0376323、及びWO2018/075798(その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)参照)。特定の実施形態では、本明細書における組成物及び方法において使用するためのAAVは、US9,585,971で開示されている任意のAAV、例えば、AAV-PHP.Bである。特定の実施形態では、本明細書における組成物及び方法において使用するためのAAVは、AAV8及び血清型cy5、rh20またはrh39に由来するハイブリッドカプシド配列を有するAAV2/Rec2ベクターまたはAAV2/Rec3ベクターである(例えば、Issa et al.,2013,PLoS One 8(4):e60361(これらのベクターについて参照により本明細書に組み込まれる)参照)。特定の実施形態では、本明細書における組成物及び方法において使用するためのAAVは、以下のいずれか(その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されているAAVである:US,282,199;US7,906,111;US8,524,446;US8,999,678;US8,628,966;US8,927,514;US8,734,809;US9,284,357;US9,409,953;US9,169,299;US9,193,956;US9,458,517;US9,587,282;US2015/0374803;US2015/0126588;US2017/0067908;US2013/0224836;US2016/0215024;US2017/0051257;PCT/US2015/034799;及びPCT/EP2015/053335。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、以下の特許及び特許出願(その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる):米国特許番号7,282,199;7,906,111;8,524,446;8,999,678;8,628,966;8,927,514;8,734,809;US9,284,357;9,409,953;9,169,299;9,193,956;9,458,517;及び9,587,282;米国特許出願公開番号2015/0374803;2015/0126588;2017/0067908;2013/0224836;2016/0215024;2017/0051257;及び国際特許出願番号PCT/US2015/034799;PCT/EP2015/053335のいずれかに開示されているAAVカプシドのVP1、VP2及び/またはVP3配列と少なくとも80%またはより同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%など、すなわち、最大で100%同一のカプシドタンパク質を有する。
【0147】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、米国特許番号9,840,719及びWO2015/013313に開示されている任意のAAVカプシド、例えば、AAV.Rh74及びRHM4-1を含む(その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV rh.74などのWO2014/172669に開示されている任意のAAVカプシドを含む(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、Georgiadis et al.,2016,Gene Therapy 23:857-862及びGeorgiadis et al.,2018,Gene Therapy 25:450(その各々は、その全体が参照により組み込まれる)に記載されているように、AAV2/5のカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV2tYFなどのWO2017/070491に開示されている任意のAAVカプシドを含む(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、Puzzo et al.,2017,Sci.Transl.Med.29(9):418(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているように、AAVLK03またはAAV3Bのカプシドである。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、米国特許番号8,628,966;US8,927,514;US9,923,120及びWO2016/049230に開示されている任意のAAVカプシド、例えば、HSC1、HSC2、HSC3、HSC4、HSC5、HSC6、HSC7、HSC8、HSC9、HSC10、HSC11、HSC12、HSC13、HSC14、HSC15、またはHSC16(その各々は、その全体が参照により組み込まれる)を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、国際出願公開番号WO2003/052051(例えば、´051公開の配列番号2参照)、WO2005/033321(例えば、´321公開の配列番号123及び88参照)、WO03/042397(例えば、´397公開の配列番号2、81、85、及び97参照)、WO2006/068888(例えば、´888公開の配列番号1及び3~6参照)、WO2006/110689(例えば、´689公開の配列番号5~38参照)、WO2009/104964(例えば、´964公開の配列番号1~5、7、9、20、22、24及び31参照)、WO2010/127097(例えば、´097公開の配列番号5~38参照)、及びWO2015/191508(例えば、´508公開の配列番号80~294参照)、及び米国出願公開番号20150023924(例えば、´924公開の配列番号1、5~10参照)(その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているカプシドタンパク質を有する。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、国際出願公開番号WO2003/052051(例えば、´051公開の配列番号2参照)、WO2005/033321(例えば、´321公開の配列番号123及び88参照)、WO03/042397(例えば、´397公開の配列番号2、81、85、及び97参照)、WO2006/068888(例えば、´888公開の配列番号1及び3~6参照)、WO2006/110689(例えば、´689公開の配列番号5~38参照)、WO2009/104964(例えば、964公開の配列番号1~5、7、9、20、22、24及び31参照)、W02010/127097(例えば、´097公開の配列番号5~38参照)、及びWO2015/191508(例えば、´508公開の配列番号80~294参照)、及び米国出願公開番号20150023924(例えば、´924公開の配列番号1、5~10参照)に開示されているAAVカプシドのVP1、VP2及び/またはVP3配列と少なくとも80%またはより高い同一性、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%など、すなわち、最大で100%同一のカプシドタンパク質を有する。
【0149】
追加の実施形態では、rAAV粒子は、シュードタイプ化AAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、シュードタイプ化AAVカプシドは、rAAV2/8またはrAAV2/9シュードタイプ化AAVカプシドである。シュードタイプ化rAAV粒子を生成及び使用するための方法は、当該技術分野で知られている(例えば、Duan et al.,J.Virol.,75:7662-7671(2001);Halbert et al.,J.Virol.,74:1524-1532(2000);Zolotukhin et al.,Methods 28:158-167(2002);及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,(2001)参照)。
【0150】
所定の実施形態では、一本鎖AAV(ssAAV)が使用され得る。所定の実施形態では、自己相補性ベクター、例えば、scAAVが使用され得る(例えば、Wu,2007,Human Gene Therapy,18(2):171-82;McCarty et al,2001,Gene Therapy,8(16):1248-1254;US6,596,535;US7,125,717;及びUS7,456,683(その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)参照)。
【0151】
通常、ペプチド挿入物は、異種タンパク質またはそのドメインからの連続アミノ酸の配列である。挿入されるペプチドは、典型的には、それが由来するタンパク質またはドメインの特定の生物学的サンプル機能、特性、または特徴を保持するのに十分に長い。挿入されるペプチドは、典型的には、挿入物を有さないネイティブカプシドタンパク質と類似してまたは実質的に類似して、カプシドタンパク質が被覆を形成することが可能となるように十分に短い。好ましい実施形態では、ペプチド挿入物は、長さが約4~約30アミノ酸残基、長さが約4~約20、約4~約15、約5~約10、または約7アミノ酸である。挿入のためのペプチド配列は、長さが少なくとも4アミノ酸であり、長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチド配列は、長さが16、17、18、19、または20アミノ酸である。実施形態では、ペプチドは、長さが7アミノ酸、10アミノ酸または12アミノ酸以下である。
【0152】
AAVカプシドタンパク質における「異種タンパク質からのペプチド挿入物」は、カプシドタンパク質に導入されており、かつ任意のAAV血清型カプシドに対してネイティブではないアミノ酸配列を指す。非限定的な例には、AAVカプシドタンパク質におけるヒトタンパク質のペプチドが含まれる。
【0153】
いくつかの実施形態では、ペプチド挿入物は、ホーミングタンパク質もしくはそのホーミングドメインまたは標的化タンパク質またはその標的化ドメインからのものである。「ホーミングドメイン」または「ホーミングタンパク質」は、特定の細胞タイプの細胞マトリックスを含む特定の細胞タイプ、組織タイプ、器官、腫瘍タイプなどを他の細胞、組織、器官、または腫瘍と比較して優先的にまたは選択的に標的とするドメインまたはタンパク質である。本発明の文脈では、ホーミングタンパク質またはドメインからのペプチドは、カプシドタンパク質に挿入するためのペプチドを提供して、カプシド被覆、またはAAVベクターの一部を形成し、次いで、カプシド、被覆、またはベクターを誘導して特定の細胞タイプ、組織タイプ、器官、腫瘍タイプなどを標的とし、またはAAVゲノムの取り込み及び/または組み込みを促進し得る。ホーミングタンパク質またはドメインの非限定的な例には、神経組織ホーミングドメイン、軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメイン、骨ホーミングドメイン、腎臓ホーミングドメイン、筋肉ホーミングドメイン、内皮細胞ホーミングドメイン、網膜細胞ホーミングドメイン、特定の細胞受容体を標的とするドメイン、例えば、インテグリン受容体結合ドメイン及びトランスフェリン受容体結合ドメイン、腫瘍細胞標的化ドメイン、他のウイルスからの標的化ペプチドなどが含まれる。本明細書で使用される場合、用語「ホーミング」及び「標的化」は、互換的に使用される。これらのペプチドはまた、または代替的に、標的組織の細胞におけるrAAVの細胞取り込み、形質導入及び/またはゲノム組み込みを促進し得る。
【0154】
本明細書に記載のAAVカプシド部位のいずれかとしてペプチド挿入物として使用するためのペプチドの例は、以下の表1A~1Bに提供されており、これには、ペプチドの機能性属性を有するその少なくとも4個のアミノ酸連続部分、またはその7個のアミノ酸連続部分、いくつかの実施形態では、12個以下の連続アミノ酸が含まれる。例えば、Laakkonen and Vuorinen,2010,“Homing peptides as targeted delivery vehicles,” Integrative Biology,2:326-337(review article)も参照されたい。所定の実施形態では、組換えAAVカプシド及びAAVベクターは、ペプチド挿入物が提示されるような方法でAAVカプシド配列に挿入された、以下の表1A及び1Bのいずれかからのペプチド、またはその少なくとも4、5、6、または7個のアミノ酸連続部分を含むように修飾されている。他の実施形態では、ペプチドは、AAV9カプシドのアミノ酸配列(配列番号118)の位置138、262~273、451~461、または585~593におけるアミノ酸残基または任意の他のAAV血清型におけるそれに対応する位置の後に挿入される(カプシド配列アライメントについては図8参照)。
【表1A】

【表1B】
【表2】

【表3A】
【表3B】

【0155】
例えば、グリア由来成長因子(GDGF)をコードする導入遺伝子を含むrAAVベクターは、パーキンソン病を処置/予防/管理するのに利用される。通常、rAAVベクターは、全身的に投与される。例えば、rAAVベクターは、静脈内、髄腔内、鼻腔内、及び/または腹腔内投与によって提供され得る。
【0156】
特定の態様では、本発明のrAAVは、標的組織、または、標的細胞タイプに関連する細胞マトリックスを含む標的細胞タイプ(処置/予防される障害または疾患に関連する)への送達に利用される。特定の組織または細胞タイプに関連する疾患または障害は、身体の細胞タイプの他の組織と比較して、特定の組織または細胞タイプに大きな影響を及ぼすもの、または障害の作用または症状が特定の組織または細胞タイプで現れるものである。導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する方法は、ペプチド挿入物がホーミングペプチドであるrAAVを対象に投与することを含む。パーキンソン病の場合、例えば、rAAVを神経組織に誘導するペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得、特に、ペプチド挿入物は、rAAVが血液脳関門を通過してCNSに至ることを容易化する。そのようなペプチド挿入物には、神経組織ホーミングドメイン、例えば、本明細書に記載の「EPOペプチド」または「HADペプチド」に由来するものが含まれる。
【0157】
例えば、EPOペプチドを含むカプシドタンパク質は、AAVをCNSに再標的化し、血液脳関門を通過するのに利用され得る。EPOペプチドを含むカプシドタンパク質は、CNS組織に対して保護的効果をさらに有し得、例えば、EPO挿入物は、自然修復受容体に結合し、IRR生物学的スイッチを活性化し、炎症を抑制し、及び/またはCNS修復を開始させる。いくつかの実施形態では、本発明のEPOペプチドを含むrAAVは、以下の障害のうちの1つ以上に利用される:器官虚血性傷害、脳卒中、心筋梗塞、腎臓傷害、腎臓疾患、脳傷害、腎臓虚血、四肢虚血、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性神経炎、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経障害性疼痛、糖尿病合併症、例えば、糖尿病性網膜症及び糖尿病性自律性ニューロパシー、ならびにサルコイドーシス。
【0158】
神経組織に関連する疾患または障害のため、本明細書に記載されているものなどの、神経組織ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。神経組織に関連する疾患/障害には、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、バッテン病、バッテン若年性NCL型、カナバン病、慢性疼痛、フリードライヒ運動失調症、多形性膠芽腫、ハンチントン病、後期幼児期ニューロンセロイドリポフスチン症(LINCL)、リソソーム蓄積障害、レーバー先天性黒内障、多発性硬化症、パーキンソン病、ポンぺ病、レット症候群、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脳卒中、及び外傷性脳損傷が含まれる。ベクターは、疾患または障害に罹患している、または発症するリスクがある対象への治療/予防利益のための導入遺伝子をさらに含有し得る(表3A~3B参照)。
【0159】
骨に関連する疾患または障害のため、本明細書に記載されているものなどの、骨ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。
【0160】
腎臓に関連する疾患または障害のため、本明細書に記載されているものなどの、腎臓ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。
【0161】
筋肉に関連する疾患または障害のため、本明細書に記載されているものなどの、筋肉ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。
【0162】
内皮細胞に関連する疾患または障害のため、本明細書に記載されているものなどの、内皮細胞ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。
【0163】
インテグリン受容体または特定のインテグリン受容体を発現する細胞に関連する疾患または障害のため、本明細書に記載されているものなどの、インテグリン受容体結合ドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。
【0164】
トランスフェリン受容体またはトランスフェリン受容体を発現する細胞に関連する疾患または障害のため、本明細書に記載されているものなどの、トランスフェリン受容体結合ドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。
【0165】
腫瘍に関連する疾患または障害のため、前記腫瘍細胞標的化ドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。
【0166】
網膜または眼に関連する疾患または障害のため、HADペプチドを含む、前記網膜細胞ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含むrAAVベクターが使用され得る。ペプチド挿入物は、網膜指向性を向上させ、rAAVを対象の眼または網膜を標的とするように誘導し、血液眼関門を通過する。用語「網膜細胞」は、アマクリン細胞、双極細胞、水平細胞、ミュラーグリア細胞、光受容細胞(例えば、桿体及び錐体)、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二重層別化(bistratified)細胞、巨大網膜神経節細胞、及び感光性神経節細胞)、網膜色素上皮、内境界膜の内皮細胞などを含む網膜の中または近くに見られる細胞タイプの1つ以上指す。
【0167】
通常、rAAVベクターが網膜細胞ホーミングのためのペプチド挿入物を含む場合、ベクターは、in vivo注射、例えば、眼への直接的注射によって投与される。例えば、網膜指向性を向上させるためのペプチド挿入物を含むrAAVは、硝子体内に投与され得る。いくつかの実施形態では、網膜指向性を向上させるためのrAAVは、眼内注射によって、例えば、眼の硝子体または房水に扁平部を介して投与される。いくつかの実施形態では、網膜指向性を向上させるためのrAAVは、眼球周囲注射または結膜下注射で投与される。網膜細胞ホーミングのためのペプチド挿入物を有するrAAVベクターの1つの利点は、対象が手術を回避し得ること、例えば、注射によって代わりに送達される治療剤を埋め込むための手術を回避することである。所定の実施形態では、治療剤は、硝子体内注射によって本明細書に記載のrAAVベクターによって送達されて、眼に関連する疾患または障害、特に、対象の網膜に関連する疾患または障害を処置するための治療的有効量を提供する。より多くの実施形態では、処置は、単回硝子体内注射、2回以下の硝子体内注射、3回以下の硝子体内注射、4回以下の硝子体内注射、5回以下の硝子体内注射、または6回以下の硝子体内注射の後に達成される。
【0168】
眼または網膜に関連する疾患/障害は、「眼疾患」と称される。眼疾患の非限定的な例には、前部虚血性視神経症;急性黄斑視神経網膜症;バルデー・ビードル症候群;ベーチェット病;網膜静脈分枝閉塞症;網膜中心静脈閉塞症;先天性脈絡膜欠如;脈絡膜血管新生;脈絡網膜変性;錐体杆体ジストロフィー;色覚障害(例えば、色覚異常、第一色覚異常、第二色覚異常、及び第三色覚異常);先天性停止性夜盲;糖尿病性ブドウ膜炎;網膜上膜障害;遺伝性黄斑変性症;ヒストプラスマ症;黄斑変性症(例えば、急性黄斑変性症、非滲出性加齢黄斑変性症、滲出性加齢黄斑変性症);糖尿病性網膜症;浮腫(例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫);緑内障;レーバー先天性黒内障;レーバー遺伝性視神経症;黄斑部毛細血管拡張症;多巣性脈絡膜炎;非網膜症糖尿病性網膜機能不全;眼外傷;眼腫瘍;増殖性硝子体網膜症(PVR);未熟児網膜症;網膜分離症;網膜色素変性症;網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、スターガルト病(黄色斑眼底);交感性眼炎;ブドウ膜拡散;ブドウ膜炎網膜疾患;アッシャー症候群;フォークト・小柳・原田(VKH)症候群;または眼レーザーもしくは光力学療法に関連する後部眼状態が含まれる。
【0169】
本発明のrAAVベクターはまた、特に、オリゴヌクレオチド、薬物、造影剤、無機ナノ粒子、リポソーム、抗体の標的細胞または組織への送達、特に標的化送達を容易化し得る。rAAVベクターはまた、特に、ノンコーディングDNA、RNA、またはオリゴヌクレオチドの標的組織への送達、特に標的化送達を容易化し得る。
【0170】
薬剤は、当該技術分野で知られている及び/または本明細書に記載されている薬学的に許容可能な組成物として提供され得る。また、本発明のrAAV分子は、単独でまたは他の予防及び/または治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0171】
本明細書で提供される投与の投薬量及び頻度は、治療的に有効及び予防的に有効という用語に包含される。投薬量及び頻度は、典型的には、投与される特定の治療または予防剤、疾患の重症度及びタイプ、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、反応、及び既往歴に応じて各患者について特定の要素に従って変わり、実施者の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。好適なレジメンは、そのような要因を考慮することによって及び例えば、文献で報告され、Physician ’s Desk Reference(56th ed.,2002)で推奨されている投薬量に従って当業者によって選択され得る。予防及び/または治療剤は、繰り返し投与され得る。予防または治療剤を投与する時間的レジメン、及びそのような薬剤が別々にまたは混合物として投与されるかなどの手順のいくつかの態様が変わり得る。
【0172】
有効となる本発明の薬剤の量は、標準的な臨床的技術によって決定され得る。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系に由来する用量-反応曲線から外挿され得る。本発明の方法において使用される任意の薬剤のため、治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。用量は、細胞培養において決定されるIC50(すなわち、症状の最大半数阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルにおいて設計され得る。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0173】
予防及び/または治療剤、ならびにそれらの組み合わせは、ヒトにおける使用の前に好適な動物モデル系において試験され得る。そのような動物モデル系には、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが含まれるがこれらに限定されない。当該技術分野でよく知られている任意の動物系が使用され得る。そのようなモデル系は、広く使用されており、当業者によく知られている。いくつかの実施形態では、ラット、マウス、または霊長類以外の他の小哺乳動物に基づくCNS病態のための動物モデル系が使用される。
【0174】
本発明の予防及び/または治療剤が動物モデルにおいて試験されると、それらは、それらの有効性を確立するために臨床試験において試験され得る。臨床試験の確立は、当業者に知られている一般的な方法論に従って行われ、本発明の薬剤の最適な投薬量及び投与経路ならびに毒性プロファイルが確立され得る。例えば、臨床試験は、ヒト患者における有効性及び毒性について本発明のrAAV分子を試験するように設計され得る。
【0175】
本発明の予防及び/または治療剤の毒性及び有効性は、例えば、LD50(集団の50%の致死用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、それは比LD50/ED50として表され得る。高い治療指数を示す予防及び/または治療剤が好ましい。毒性副作用を示す予防及び/または治療剤が使用され得るが、非感染細胞への潜在的な損傷を最小化し、それにより、副作用を減少させるために、そのような薬剤を罹患組織の部位に標的化する送達システムを設計するように注意が払われるべきである。
【0176】
本発明のrAAV分子は、通常、所望の治療的及び/または予防的利益を得るために有効な時間及び量で投与される。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトにおいて使用するための予防及び/または治療剤の投薬量のための範囲及び/またはスケジュールを設計する際に使用され得る。そのような薬剤の投薬量は、毒性がほとんどないか全くないED50を含む循環濃度の範囲内に入る。投薬量は、用いられる投薬形態及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。
【0177】
患者のためのrAAVベクターの治療的有効投薬量は、通常、約1×10~約1×1016ゲノムrAAVベクター、または約1×1010~約1×1015、約1×1012~約1×1016、または約1×1014~約1×1016AAVゲノムの濃度を含有する約0.1ml~約100mlの溶液である。導入遺伝子の発現のレベルは、投薬量、頻度、スケジューリングなどを決定/調整するためにモニターされ得る。
【0178】
本発明の薬剤の治療的にまたは予防的に有効な量での対象の処置は、単回処置を含み得、または一連の処置を含み得る。例えば、本発明の薬剤を含む薬学的組成物は、1日1回、1日2回、または1日3回投与され得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、1日1回、1日おき、週1回、週2回、2週毎に1回、月1回、6週毎に1回、2ヶ月毎に1回、年2回、または年1回投与され得る。所定の薬剤の有効な投薬量、例えば、本発明の二重抗原結合分子を含む薬剤の有効な投薬量は、治療の過程で増加または減少し得ることも理解される。
【0179】
いくつかの実施形態では、進行中の処置は、慢性疾患または障害の進行中の処置及び/または管理におけるもののように、例えば、長期ベースで指示される。例えば、特定の実施形態では、本発明の薬剤は、所定の期間、例えば、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、またはそれを必要とする対象の人生の残りの間にわたって投与される。
【0180】
本発明のrAAV分子は、単独でまたは他の予防及び/または治療剤と組み合わせて投与され得る。各予防または治療剤は、同じ時間または異なる時点で任意の順序で順次に投与され得る;しかしながら、同じ時間に投与されない場合、それらは、所望の治療的または予防的効果を提供するように、十分に近い時間で投与されるべきである。各治療剤は、任意の適切な形態で及び任意の好適な経路によって別々に投与され得る。
【0181】
様々な実施形態では、異なる予防及び/または治療剤は、1時間未満の間隔で、約1時間の間隔で、約1時間~約2時間の間隔で、約2時間~約3時間の間隔で、約3時間~約4時間の間隔で、約4時間~約5時間の間隔で、約5時間~約6時間の間隔で、約6時間~約7時間の間隔で、約7時間~約8時間の間隔で、約8時間~約9時間の間隔で、約9時間~約10時間の間隔で、約10時間~約11時間の間隔で、約11時間~約12時間の間隔で、24時間以内の間隔で、または48時間以内の間隔で投与される。所定の実施形態では、2つ以上の薬剤は、同一の患者来訪において投与される。
【0182】
本発明の薬剤を投与する方法には、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下(注入またはボーラス注射を含む))、硬膜外、及び上皮または皮膚粘膜または粘膜内層(例えば、鼻腔内、経口粘膜、直腸、及び腸粘膜など)を介する吸収によるものが含まれるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、導入遺伝子がCNSにおいて発現することが意図されている場合などは、ベクターは、腰椎穿刺を介してまたは大槽を介して投与される。
【0183】
所定の実施形態では、本発明の薬剤は、静脈内に投与され、他の生物学的活性剤と一緒に投与され得る。
【0184】
別の特定の実施形態では、本発明の薬剤は、持続放出製剤で送達され得、例えば、その場合、製剤は、延長放出及びそれによる投与される薬剤の延長した半減期を提供する。使用に好適な制御放出システムには、限定されないが、拡散制御、溶媒制御、及び化学的制御システムが含まれる。拡散制御システムには、例えば、分子の放出が拡散障壁を介する透過によって制御されるように、本発明の分子がデバイス内に封入されたリザーバデバイスが含まれる。一般的なリザーバデバイスには、例えば、膜、カプセル、マイクロカプセル、リポソーム、及び中空ファイバーが含まれる。モノリス性(マトリックス)デバイスは、拡散制御システムのもう一つのタイプであり、二重抗原結合分子は、速度制御マトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)に分散または溶解される。本発明の薬剤は、速度制御マトリックス全体を通して均質的に分散され得、放出の速度は、マトリックスを通して拡散によって制御される。モノリス性マトリックスデバイスにおいて使用するのに好適なポリマーには、天然に存在するポリマー、合成ポリマー及び合成的に改変された天然ポリマー、ならびにポリマー誘導体が含まれる。
【0185】
当業者に知られている任意の技術は、本明細書に記載の1つ以上の薬剤を含む持続放出製剤を生成するために使用され得る。例えば、米国特許番号4,526,938;PCT公開WO91/05548;PCT公開WO96/20698;Ning et al.,“Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel,” Radiotherapy & Oncology,39:179 189,1996;Song et al.,“Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions,” PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology,50:372 397,1995;Cleek et al.,“Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application,” Pro.Intl.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.,24:853 854,1997;及びLam et al.,“Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery,” Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.,24:759 760,1997(その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。一実施形態では、ポンプが、制御放出システムにおいて使用され得る(Langer,supra;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.,14:20,1987;Buchwald et al.,Surgery,88:507,1980;及びSaudek et al.,N.Engl.J.Med.,321:574,1989参照)。別の実施形態では、ポリマー物質は、二重抗原結合分子、またはその抗原結合断片を含む薬剤の制御放出を達成するために使用され得る(例えば、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,N.Y.(1984);Ranger and Peppas,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.,23:61,1983参照;また、Levy et al.,Science,228:190,1985;During et al.,Ann.Neurol.,25:351,1989;Howard et al.,J.Neurosurg.,7 1:105,1989);米国特許番号5,679,377;米国特許番号5,916,597;米国特許番号5,912,015;米国特許番号5,989,463;米国特許番号5,128,326;PCT公開番号WO99/15154;及びPCT公開番号WO99/20253参照)。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的の近傍(例えば、罹患関節)に配置され、よって、全身用量の一部のみを必要とし得る(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115 138(1984)参照)。他の制御放出システムは、Langer,Science,249:1527 1533,1990によるレビューにおいて論述されている。
【0186】
また、rAAVは、科学的研究、例えば、光遺伝学のためのin vivo送達導入遺伝子、miRNAでの遺伝子ノックダウン、条件的遺伝子欠損のためのリコンビナーゼ送達、CRISPRでの遺伝子編集などのために使用され得る。
【0187】
5.5.薬学的組成物及びキット
本発明は、薬学的に許容可能な担体及び本発明の薬剤を含む薬学的組成物をさらに提供し、前記薬剤は、本発明のrAAV分子を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、対象への投与のための薬学的に許容可能な担体と組み合わされたrAAVを含む。一実施形態では、用語「薬学的に許容可能な」は、連邦もしくは州政府の規制当局によって承認されているまたは米国薬局方もしくは動物、より具体的にはヒトにおいて使用するための他の一般的に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。用語「担体」は、薬剤と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイント完全及び不完全アジュバント)、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、滅菌液体、例えば、水及び、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む油であり得る。水は、薬学的組成物が静脈内に投与される場合に一般的な担体である。生理食塩溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、液体担体、特に注射用溶液として用いられ得る。好適な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。薬学的に許容可能な担体、賦形剤、及び安定化剤のさらなる例には、緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン及びゼラチン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、当該技術分野で知られているように、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)が含まれるがこれらに限定されない。本発明の薬学的組成物にはまた、上記の成分に加えて、滑沢剤、湿潤剤、甘味料、香味剤、乳化剤、懸濁剤、及び防腐剤が含まれ得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態をとり得る。
【0188】
本発明の所定の実施形態では、薬学的組成物は、本発明の方法に従って使用するために提供され、前記薬学的組成物は、治療的及び/または予防的有効量の本発明の薬剤を薬学的に許容可能な担体と一緒に含む。
【0189】
所定の実施形態では、本発明の薬剤は、実質的に純粋である(すなわち、その効果を制限するまたは望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に含まない)。特定の実施形態では、宿主または対象は、動物、例えば、哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)及び霊長類(例えば、サル、例えば、カニクイザル及びヒト)である。所定の実施形態では、宿主は、ヒトである。
【0190】
本発明は、上記の方法において使用され得るキットをさらに提供する。一実施形態では、キットは、例えば、1つ以上の容器内に、本発明の1つ以上の薬剤を含む。別の実施形態では、キットは、1つ以上の容器内に、病態の処置に有用な1つ以上の他の予防または治療剤をさらに含む。
【0191】
本発明はまた、薬剤または活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封された容器に包装された本発明の薬剤を提供する。一実施形態では、薬剤は、密封容器において乾燥した滅菌凍結乾燥粉末または水非含有濃縮物として供給され、例えば、水または生理食塩水で、対象への投与のための適切な濃度に再構成され得る。典型的には、薬剤は、少なくとも5mg、より多くの場合、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、または少なくとも75mgの単位投薬量で密封容器において乾燥した滅菌凍結乾燥粉末として供給される。凍結乾燥薬剤は、その元の容器において2~8℃の間で保存されるべきであり、薬剤は、再構成された後12時間以内、通常は6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与されるべきである。代替的な実施形態では、本発明の薬剤は、薬剤または活性剤の量及び濃度を示す密封容器において液体形態で供給される。典型的には、薬剤の液体形態は、密封容器において少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/kg、または少なくとも25mg/mlで供給される。
【0192】
本発明の組成物には、薬学的組成物の製造において有用なバルク薬物組成物(例えば、非純粋または非滅菌組成物)及び薬学的組成物(すなわち、対象または患者への投与に好適な組成物)が含まれる。バルク薬物組成物は、例えば、予防的または治療的有効量の本明細書に開示される薬剤またはそれらの薬剤及び薬学的に許容可能な担体の組み合わせを含む単位投薬形態の調製において使用され得る。
【0193】
本発明は、本発明の薬剤のうちの1つ以上で満たされた1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットをさらに提供する。また、標的疾患または障害の処置に有用な1つ以上の他の予防または治療剤もまた、薬学的パックまたはキットに含まれ得る。本発明はまた、本発明の薬学的組成物の成分のうちの1つ以上で満たされた1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。そのような容器(複数可)に任意に関連するものは、薬品または生物学的生成物の製造、使用または販売を規制する政府当局によって規定された形式の通知であり得、この通知は、ヒト投与についての製造、使用または販売の当局による承認を反映する。
【0194】
通常、本発明の組成物の成分は、例えば、薬剤または活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封された容器における乾燥した凍結乾燥粉末または水非含有濃縮物として、別々にまたは単位投薬形態で一緒に混合して供給される。組成物が注入によって投与される場合、それは、滅菌薬学的グレード水または生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて分注され得る。組成物が注射によって投与される場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが、成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【実施例
【0195】
以下の実施例は、挿入変異誘発を介するカプシド修飾のための候補を特定するためのAAV9カプシド上の表面露出ループの分析を報告する。本発明は、例として、ヒト軸糸ダイニン重鎖尾部に基づいて設計された7-merペプチドを含有するように修飾されたrAAV9カプシドの構築を記載している。簡潔には、短いペプチド挿入物に適している可能性がある表面ループを選択するために3つの基準を使用した:1)隣接ループとの最小の側鎖相互作用;2)血清型間の可変配列及び構造(保存配列の欠如);及び3)一般的に標的とされる中和抗体エピトープを妨害する潜在性。ペプチド挿入物変異体のパネルを構築し、個々の変異体を、実行可能なカプシド組み立て、ペプチド表面露出、及び効力についてスクリーニングした。次いで上位の候補をホーミングペプチドの挿入のためのテンプレートとして使用して、これらのペプチド挿入点が、rAAVベクターを対象となる組織に再標的化するために使用できるかどうかを試験した。さらなる例は、本明細書に記載の改変AAVカプシドの一部について向上した形質導入及び組織指向性を実証する。
【0196】
6.1.実施例1-AAV9カプシドの分析
図1及び2は、他のAAVのVR-IV(図1)に対するアミノ酸配列比較によるアデノ随伴ウイルス9型の可変領域4(AAV9 VR-IV)の分析及びタンパク質モデル(図2)を示している。見られるように、AAV9 VR-IVは、3フォールドスパイクの先端または外側表面で表面上に露出している。さらなる分析は、VR-IVとVR-Vとの間のいくつかの側鎖相互作用が存在すること及びVR-IVの配列及び構造が、AAV血清型間で可変であること、及びさらに、一般的に標的とされる中和抗体エピトープを妨害し、それにより、改変カプシドの免疫原性を減少させる潜在性が存在することを示していた。
【0197】
6.2.実施例2-AAV9変異体の構築
8種のAAV9変異体を、各々がVR-IVループにおける異なる挿入点で異種ペプチドを含むように構築した。異種ペプチドは、表4に示されているように、pRGNX1090~1097として特定されるベクターにおける以下の残基の直後に挿入されたFLAGタグであった。
【表4】
【0198】
6.3.実施例3-パッケージング効率の分析
図3は、野生型AAV9及び8種の候補rAAV9ベクター(1090、1091、1092、1093、1094、1095、1096、及び1097)のmL当たりのゲノムコピー(GC/mL)の観点からの高いパッケージング効率を示しており、候補ベクターは、それぞれ、AAV9のVR-IVの中の異なる部位でFLAG挿入物を含有する。すべてのベクターを10mLの培養物中でルシフェラーゼ導入遺伝子と共にパッケージングして、どの挿入点がカプシドパッケージングを妨害したかの決定を容易化した;エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【0199】
見られるように、すべての候補が高効率でパッケージングする。
【0200】
6.4.実施例4-表面FLAG露出の分析
図4は、抗FLAG樹脂への結合による形質導入ベクターの免疫沈降によって確認された、8種の候補rAAV9ベクター(1090、1091、1092、1093、1094、1095、1096、及び1097)の各々におけるFLAG挿入物の表面露出を示している。抗FLAGへの結合は、表面上にペプチド挿入物を提示するカプシドの形成を可能にする挿入点を示している。
【0201】
形質導入された細胞を溶解し、遠心分離した。500μLの細胞培養上清を20μLのアガロース-FLAGビーズにロードし、ゲルにも直接的にロードされるSDS-PAGEロードバッファーで溶出させた。陰性対照のため、FLAG挿入物を含有しない293-ssc上清を使用した。
【0202】
見られるように、1090は、候補ベクターのうち最も低い力価を有し、最も少ないタンパク質プルダウンを示していた。陽性対照でも極めて低い力価が確認された。SDS-PAGEでの可視化のために十分ではない量の陽性対照がロードされたようである。
【0203】
6.5.実施例5-形質導入効率の分析
図5A~5Bは、野生型AAV9(9-luc)、または8種の候補rAAV9ベクター(1090、1091、1092、1093、1094、1095、1096、及び1097)の各々のいずれかにパッケージングされた、導入遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を保有するカプシドベクターで形質導入されたLec2細胞における形質導入効率を示しており;活性は、9-lucの活性を100%として採用してルシフェラーゼ活性パーセントとして(図5A)、またはタンパク質のマイクログラム当たりの相対光単位(RLU)として(図5B)表されている。
【0204】
CHO由来Lec2細胞をαMEM及び10%FBS中で成長させた。Lec2細胞を約2×10GCベクターのMOI(約10,000のMOI)で形質導入し、ViraDuctin試薬で処置した(Lec2細胞を約10,000GC/細胞のMOIで形質導入したが40μg/mLの塩化亜鉛(ZnCl)で処置したものについて同様の結果が観察された;結果は示されていない)。Lec2細胞は、CHOからのプロリン栄養要求株である。
【0205】
見られるように、in vitroでの形質導入効率は、野生型AAV9(9-luc)を使用して得られたものよりも低い。それにもかかわらず、先行研究は、ホーミングペプチドの導入が、非標的細胞(293、Lec2、またはHeLaなど)においてin vitro遺伝子移行を減少させ得るのに対し、標的細胞におけるin vitro遺伝子移行を有意に増加させることを示している(例えば、Nicklin et al.2001;及びGrifman et al.2001参照)。
【0206】
6.6.実施例6-挿入ペプチドの組成及び長さの要因としてのパッケージング効率の分析
図6Aは、様々なペプチドの長さ及び組成のAAV9カプシド(配列番号118)のS454の直後の挿入物が、パッケージング細胞株におけるAAV粒子の生成効率に影響を及ぼし得ることを図示している棒グラフを示している。様々な組成及び長さの10種のペプチドを、AAV9 VR-IVの中のS454の後(残基454及び455の間)に挿入した。トランスフェクションから5日後にトランスフェクションされた浮遊HEK293細胞の収穫された上清についてqPCRを実施した。棒グラフに示された結果は、挿入物の特質及び長さが、293細胞においてAAV粒子が高力価で生成され、パッケージングされる能力に影響を及ぼし得ることを実証している。(エラーバーは、Y軸において括弧で記されているペプチドの平均長さの標準誤差を表す)。
【0207】
S454挿入部位で以下のペプチド配列(表5)のホーミングペプチドを含有するカプシドタンパク質を有するAAV9ベクターを研究した。浮遊適合HEK293細胞を、10mLの培地中で形質導入の1日前に1×10細胞/mLで播種した。三重プラスミドDNAトランスフェクションをPEIpro(登録商標)(Polypus transfection)を用いて1:1.75のDNA:PEI比で行った。トランスフェクションの5日後に細胞を遠沈し、上清を収穫し、-80℃で保存した。
【表5】
【0208】
トランスフェクションから5日後に収穫されたトランスフェクションされた浮遊HEK293細胞の上清についてqPCRを実施した。サンプルをDNase I処置に供して残留プラスミドまたは細胞性DNAを除去し、次いで熱処理してDNase Iを不活性化し、カプシドを変性させた。サンプルをTaqMan Universal PCR Master Mix、No AmpEraseUNG(ThermoFisherScientific)及び導入遺伝子コンストラクトにパッケージングされたPolyA配列に対するプライマー/プローブを使用してqPCRを介して力価測定した。標準曲線を、RGX-501ベクターBDSを使用して確立した。
【0209】
長さが5~10アミノ酸の範囲のS454の直後のペプチド挿入物は、適正な力価を有するAAV粒子を生成した一方で、12アミノ酸の長さを有するペプチド挿入物については有意なパッケージング欠損が観察されたことに伴い、サイズ上限がある可能性がある。
【0210】
6.7.実施例7-ホーミングペプチドは、S454の後に挿入された場合、in vitroでAAV9の形質導入特性を変化させる。
図6B~Eは、(図6B)Lec2細胞株(シアル酸欠損上皮細胞株)(図6C)HT-22細胞株(ニューロン細胞株)、(図6D)hCMEC/D3細胞株(脳内皮細胞株)、及び(図6E)C2C12細胞株(筋肉細胞株)の細胞培養物の蛍光画像を示している。GFP導入遺伝子を含有する表5のAAV9野生型及びS454挿入ホーミングペプチドカプシドを使用して前述の細胞株を形質導入した。
【0211】
細胞株を形質導入の24時間前に5~20×10細胞/ウェル(細胞株による)で96ウェルに播種した。細胞をAAV9-GFPベクター(挿入物を有するまたは有さない)で1×1010粒子/ウェルで形質導入し、各細胞株において発現速度の相違に応じて、形質導入から48~96時間後にCytation5(BioTek)を介して分析した。Lec2細胞を実施例5のように培養し、血液脳関門hCMEC/D3(EMD Millipore)細胞を製造業者のプロトコルに従って培養し、HT-22及びHUH7細胞をDMEM及び10%FBS中で培養し、C2C12筋芽細胞をDMEM及び10%FBSに播種し、2%ウマ血清及び0.1%インスリンが補充されたDMEM中でトランスフェクション前の3日間分化させた。AAV9.S454.FLAGは、試験されたすべての細胞タイプにおいて低い形質導入レベルを示した。
【0212】
画像は、未改変AAV9カプシドと比較して、AAV9カプシドタンパク質においてS454の後に挿入された場合、in vitroでAAV9の形質導入特性を変化させ得ることを示している。すべての細胞株についてP7(TfR1ペプチド、HAIYPRH(配列番号17))は、最も高い形質導入率を示し、これにP9(TfR3ペプチド、RTIGPSV(配列番号19))が続いた。P4(腎臓1ペプチド、LPVAS(配列番号13))は、すべての細胞タイプについてAAV9野生型のものよりもわずかに高い形質導入率を示した。Lec2及びHT-22細胞株培養物と比較して、脳内皮hCMEC/D3細胞株及びC2C12筋肉細胞株培養物では、P6(筋肉1ペプチド、ASSLNIA(配列番号14))についてより高い形質導入率が観察された。P1ベクターは、極端に低い形質導入効率のため画像に含まれず、P8ベクターは、低い力価のため含まれなかった。
【0213】
6.8.実施例8-ヒト軸糸ダイニン(HAD)の分析
図7A~7Mは、ヒト軸糸ダイニン1~12、14及び17の重鎖尾部ドメインについてのアミノ酸配列をそれぞれ示している。
【0214】
6.9.実施例9-ペプチド挿入点のためのAAVカプシドの分析
図8は、灰色で強調されたVP2の開始コドン、可変領域1(VR-I)、可変領域4(VR-IV)、及び可変領域8(VR-VIII)の中または近くのヒト軸糸ダイニンペプチドのための挿入部位内のAAV1~9e、rh10、rh20、rh39、rh74及びhu.37カプシド配列のアライメントを示しており、各カプシドタンパク質の可変領域8(VR-VIII)の中の特定の挿入部位は、記号「#」によって示されている(AAV9のアミノ酸付番に従ってアミノ酸残基588の後)。
【0215】
6.10.実施例10-ARA290を含有するrAAVカプシドの構築
図9は、AAV9カプシドアミノ酸配列のQ588及びA589の間にARA290のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドについてのアミノ酸配列を示している(配列番号153)。
【0216】
6.11.実施例11-様々なベクターのAAVゲノムコピー/μgゲノムDNAの比較
図10は、AAVベクター:AAV9;AAV.PHP.eB;AAV.hDyn(カプシド配列に対して他のアミノ酸改変を有さない588~589の間にTLAAPFK(配列番号2)を有するAAV9));AAV.PHP.S;及びAAV.PHP.SH(表10参照)の投与後の、マウス脳細胞において発現したGFP(緑色蛍光タンパク質)導入遺伝子のコピーを示している。
【0217】
AAV.PHP.Bは、カプシド配列に対して他のアミノ酸改変を有さない、AAV9カプシドにおけるTLAVPFK(配列番号27)挿入物を有するカプシドである。AAV.PHP.eBは、PHP.B挿入物のカプシド配列上流の2つのアミノ酸改変を有する、AAV9カプシドにおけるTLAVPFK(配列番号27)挿入物を有するカプシドである(表10も参照)。表6Aは、研究において利用されたカプシドをまとめている。
【表6A】
【0218】
物質及び方法
GFP導入遺伝子をコードするAAV9、AAV.PHPeB、AAV.hDyn、AAV.PHP.S及びAAV.PHP.SH のコンストラクトを調製し、1×PBS+0.001%Pluronic中で製剤化した。雌のC57BL/6マウスを、1日目の体重に基づいて処置群に無作為化した。雌のC57BL/6マウスの5つの群に、以下の表6Bに従って、AAV9.GFP、AAV.PHPeB.GFP、AAV.hDyn.GFP、AAV.PHP.S.GFPまたはAAV.PHP.SH.GFPをそれぞれ静脈内投与した。投薬体積は、10mL/kg(0.200mL/20gマウス)であった。マウスは、開始日に8~12週齢であった。投与後15日目に、動物を安楽死させ、脳組織、肝臓、前肢二頭筋、心臓、腎臓、肺、卵巣、及び座骨神経を含む末梢組織を収集した。
【表6B】
【0219】
定量PCR(qPCR)を使用して脳ゲノムDNAのμg当たりのベクターゲノムの数を決定した。注射されたマウスからの脳サンプルを処理し、Qiagen製のBlood and Tissue Genomic DNAキットを使用してゲノムDNAを単離した。標準曲線法に従ってeGFPに特異的なプライマー-プローブの組み合わせを使用してQuantStudio5装置(Life Technologies Inc)でqPCRアッセイを実行した。
【0220】
脳ゲノムDNAのμg当たりのAAVベクターゲノムコピーは、AAV.hDynが投与されたマウスでは、すべての他のAAV血清型:AAV9、AAV.PHPeB、PHP.S、及びPHP.SHと比較して、少なくとも1log高かった(図10参照)。この研究で見られるように、GC/μgゲノムDNAは、AAV.hDynで最も高く、これは、AAV9カプシドの残基588~589の間に「TLAAPFK」(配列番号2)ペプチド挿入物(ヒト軸糸ダイニンからのペプチド)を含有するAAV9カプシドである。研究は、eGFPを保有するAAV.hDynが全身的に投与された5匹のマウスにおいて、平均で1E04GC/μg導入遺伝子を超えてマウス脳における形質導入を実証した。しかしながら、「TLAVPFK」(配列番号27)配列(マウスダイニンからのペプチド)を含有するベクターAAV.PHPeBを含む他の改変されたAAV9カプシドは、全身的処置をすると1E03GC/μg導入遺伝子を下回ってマウス脳における形質導入を実証した。
【0221】
6.12.実施例12-処置の方法における組織ホーミングrAAVベクターの使用
核酸(導入遺伝子)を提供することによって処置/予防され得る障害を特定する(表3A~3B参照)。標的組織に関連する障害を有する対象を特定する。対象に、第1の量の本発明のrAAVベクターを投与し、そのベクターは、標的組織にホーミングし、送達される導入遺伝子を保有するペプチド挿入物を有するカプシドタンパク質を含む。必要な場合、治療的有効量の導入遺伝子が標的組織に送達されて治療的または予防的利益が対象に提供されるまで第2または第3の用量のベクターを対象に投与する。
【0222】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子を網膜に投与するための方法が提供され、これにより、導入遺伝子をカプシドで内包したAAV.hDynカプシドが静脈内に、全身的にまたは硝子体内に投与される。
【0223】
6.13.実施例13-TLAAPFK(配列番号2)を含有するrAAVカプシドの構築
図11Aは、VR-IIIVのQ588及びA589の間にアミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0224】
図11Bは、VR-IIIのS268及びS269の間にアミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0225】
図11Cは、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0226】
6.14.実施例14-KMQVPFQ(配列番号1)を含有するrAAVカプシドの構築
図12Aは、VR-VIIIのQ588及びA589の間にアミノ酸配列KMQVPFQ(配列番号1)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0227】
図12Bは、VR-IIIのS268及びS269の間にアミノ酸配列KMQVPFQ(配列番号1)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0228】
図12Cは、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列KMQVPFQ(配列番号1)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0229】
6.15.実施例15-QQAAPSF(配列番号3)を含有するrAAVカプシドの構築
図13Aは、VR-VIIIのQ588及びA589の間にアミノ酸配列QQAAPSF(配列番号3)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0230】
図13Bは、VR-IIIのS268及びS269の間にアミノ酸配列QQAAPSF(配列番号3)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0231】
図13Cは、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列QQAAPSF(配列番号3)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0232】
6.16.実施例16-RYNAPFK(配列番号4)を含有するrAAVカプシドの構築
図14Aは、VR-VIIIのQ588及びA589の間にアミノ酸配列RYNAPFK(配列番号4)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0233】
図14Bは、VR-IIIのS268及びS269の間にアミノ酸配列RYNAPFK(配列番号4)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0234】
図14Cは、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列RYNAPFK(配列番号4)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0235】
6.17.実施例17-LKLPPIV(配列番号5)を含有するrAAVカプシドの構築
図15Aは、VR-VIIIのQ588及びA589の間にアミノ酸配列LKLPPIV(配列番号5)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0236】
図15Bは、VR-IIIのS268及びS269の間にアミノ酸配列LKLPPIV(配列番号5)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0237】
図15Cは、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列LKLPPIV(配列番号5)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0238】
6.18.実施例18-PFIKPFE(配列番号6)を含有するrAAVカプシドの構築
図16Aは、VR-VIIIのQ588及びA589の間にアミノ酸配列PFIKPFE(配列番号6)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0239】
図16Bは、VR-IIIのS268及びS269の間にアミノ酸配列PFIKPFE(配列番号6)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0240】
図16Cは、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列PFIKPFE(配列番号6)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0241】
6.19.実施例19-TLSLPWK(配列番号7)を含有するrAAVカプシドの構築
図17Aは、VR-VIIIのQ588及びA589の間にアミノ酸配列TLSLPWK(配列番号7)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0242】
図17Bは、VR-IIIのS268及びS269の間にアミノ酸配列TLSLPWK(配列番号7)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0243】
図17Cは、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列TLSLPWK(配列番号7)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0244】
6.20.実施例20-LGETTRP(配列番号15)を含有するrAAVカプシドの構築
図18Aは、VR-VIIIのN590及びT591の間にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0245】
図18Bは、VR-IIIのA269及びT270の間にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0246】
図18Cは、VR-IVのT453及びT454の間にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0247】
6.21.実施例21-LALGETTRP(配列番号16)を含有するrAAVカプシドの構築
図19Aは、VR-VIIIのN590及びT591の間にアミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0248】
図19Bは、VR-IIIのA269及びT270の間にアミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0249】
図19Cは、VR-IVのT453及びT454の間にアミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)のペプチド挿入物を含む組換えAAV8ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。挿入されたペプチドは太字。
【0250】
6.22.実施例22:in vitro及びin vivoでの改変カプシドの評価
AAVカプシド配列をペプチド挿入物または誘導変異誘発のいずれかによって改変し、プールして、GFP発現カセットと共にパッケージングされたバーコード化ライブラリを得た。次いで次世代シーケンシング(NGS)及び定量PCRを使用して、in vitroアッセイにおいて、及びマウスにおけるin vivo生体内分布について改変ベクターを評価した。AAV.hDynをこのプールからの高い脳形質導入ベクターとして特定し、さらにマウスにおける個々の送達研究において評価して、その形質導入プロファイルを特性化した。また、このベクターの細胞指向性を理解するために脳切片の免疫組織化学分析を実施した。
【0251】
6.22.1 実施例22A-血液脳関門を通過する形質導入のin vitro試験
改変カプシドが血液脳関門を通過する能力を、hCMEC/D3 BBB細胞(SCC066、Millipore-Sigma)を使用してin vitroトランズウェルアッセイにおいて試験した(図20A~20B参照)。より具体的には、Sade,H.et al.(2014 PLoS ONE 9(4):e96340)A human Blood-Brain Barrier transcytosis assay reveals Antibody Transcytosis influenced by pH-dependent Receptor Binding,April 2014,Vol.9,Issue 4;及びZhang,X.,Blood-brain barrier shuttle peptides enhance AAV transduction in the brain after systemic administration,2018 Biomaterials 176:71-83からアッセイを本質的に適合させた。簡潔には、5×10個のhCMEC/D3細胞/cmを12ウェルプレートにおいてコラーゲン被覆トランズウェルインサートに播種した。各インサートは、500μLの培地を含有し、下部チャンバーは、1mLの培地を含有していた。培地を1日おきに交換した。播種後10日の時点で上清を除去した(ゼロ(0)時点)。この0時点で、1×10GCのベクターを上側インサートチャンバーの培地に加えることによって細胞を形質導入した。10μLの下側チャンバーの上清サンプルを形質導入から0.5、3、6、及び23時間後に間隔を空けて試験のために取り除いた。各条件(ベクター)を二重に試験し、力価についてPolyAに対するqPCRを介して三重に測定した。
【0252】
図20A~20Bは、血液脳関門(BBB)細胞層を通過するAAV.hDyn(アミノ酸残基588~589の間にTLAAPFK(配列番号2)を有するAAV9)についてのin vitroトランズウェルアッセイ(20A)、及びAAV.hDyn(図において反転三角によって示されている)が、AAV9(四角)よりも早く、また、AAV2(丸)よりも早く、かつ高い程度までアッセイのBBB細胞層を通過することを示す結果(図20B)を示している。開発されたin vitroアッセイは、向上したBBB通過トラフィッキングを予測し、同様のアッセイは、他の器官への標的化を予測するためにも使用され得る。
【0253】
6.22.2 実施例22B-改変カプシドの形質導入及び生体内分布
6.22.2.1 物質及び方法
VR-IVの位置S454の後に(表7)またはAAVカプシドのVR-VIII表面露出ループの位置Q588の後に様々なペプチド配列を挿入することによって、ならびにアミノ酸137(AAV4、AAV4-4、及びAAV5)でまたはアミノ酸138(AAV1、AAV2、AAV3、AAV3-3、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9e、rh.10、rh.20、rh.39、rh.74、及びhu.37)(図8)で開始するVP2の開始コドンの後に挿入物を挿入することによって、広く使用されているAAVカプシド(AAV8、AAV9、及びAAVrh.10を含む)に対してカプシド改変を実施した(所定のカプシド配列については表10も参照)。選択された単数~複数のアミノ酸変異もまた、カプシドを改変するために使用した。Yost et al.,Structure-guided engineering of surface exposed loops on AAV Capsids.2019.ASGCT Annual Meeting;及びWu et al.,2000 J.Virology(supra)も参照されたい。パッケージング効率は、小規模ではこれらのカプシド改変のいずれかの後に悪影響を受けないことが確認された。
【0254】
所定の改変カプシドを有するrAAVを、実施例5において上述したように、Lec2細胞においてin vitroで形質導入について試験した。Lec2細胞における形質導入について試験された改変AAVは以下の通りである:AAV9と比較して、eB 588 Ad、eB 588 Hep、eB 588 p79、eB 588 Rab、AAV9 588 Ad、AAV9 588 Hep、AAV9 588 p79、AAV9 588 Rab、eB VP2 Ad、eB VP2 Hep、eB VP2 p79、eB VP2 Rab、AAV9 VP2 Ad、AAV9 VP2 Hep、AAV9 VP2 p79、AAV9 VP2Rab。AAVカプシドの同一性については以下の表7Bを参照されたい。
【0255】
生体内分布を試験するために、改変AAVを、各々の個々のカプシドに対応する特定のバーコードを含有するeGFP導入遺伝子カセットと共にパッケージングした。スクリーニングの効率を向上させるために新規バーコード化ベクターをプールし、マウスに注射した。
【0256】
遺伝子変化したAAVベクターの生体内分布を分析するために、GFPをコードする様々なベクターを調製し、1×PBS+0.0001%プルロニック酸中で製剤化した。すべてのベクターは、次世代シーケンシング(NGS)ライブラリ(プール)調製を可能にするために10bpのバーコードを含有するシスプラスミドを用いて作製した。3つのベクタープール(研究1、研究2及び研究3ベクター)を表7A~Cに従って5匹の雌のC57Bl/6マウスのコホートに静脈内注射した。投薬体積はそれぞれ10mL/kg(0.2mL/20gマウス)であった。
【0257】
マウスを1日目の体重に基づいて処置群に無作為化し、開始日でのそれらの年齢は8~12週であった。投与後15日目に、動物を安楽死させ、脳、腎臓、肝臓、座骨神経、肺、心臓、及び筋肉組織を含む末梢組織を収集した。プールからの選択されたカプシドを個々に注射した研究において、同じプロトコルに従った。
【0258】
Qiagen製のDNeasy Blood and Tissue kit(69506)を使用してゲノムDNA(gDNA)を組織サンプルから単離した。各ベクターのバーコード領域を、製造業者(Illumina)によって推奨されているように、NGS及びユニークデュアルインデックス(UDI)及びマルチプレックスシーケンシングストラテジーのためのオーバーラップを含有するプライマーで増幅させた。試薬ナノ及びマイクロキットv2(MS-103-1001/1002)を使用するIllumina MiSeqを使用して、マウスから収集されたサンプルにつき各々のバーコード化AAVベクターの相対的存在量を決定した。したがって、以下の表7A~Cにおける各ベクターサンプルを上記のようにバーコード化して、各リードの特定を可能にし、選別してから最終データ分析をした。当初注射されたプールにおけるAAVの組成に基づいてデータを正規化し、バーコード化サンプルに特異的なプライマー-プローブの組み合わせを用いたqPCR分析から得られた総ゲノムコピー数を使用して定量した。
【表7A】

【表7B】
【表7C】
【0259】
プールからの選択されたカプシドを個々に注射した研究において、qPCRを使用して、組織ゲノムDNAのμg当たりのベクターゲノムの数を決定した。標準曲線法に従ってeGFPに特異的なプライマー-プローブの組み合わせを使用してQuantStudio 5(Life Technologies,Inc)でqPCRを行った(図22)。
【0260】
個々のベクターを特性化のためにマウスに注射した研究から、ホルマリン固定したマウス脳を振動ブレードミクロトーム(VT1000S,Leica)で40μmの厚さで切片化し、浮遊切片をGFPに対する抗体で探索し、送達されたベクターの細胞分布を調べた。
【0261】
より具体的には、AAV.hDynが注射されたマウスからの固定した脳をVibratome(Leica,VT-1000)を使用して切片化し、抗GFP抗体(AB3080,Millipore Sigma)、Vectastain ABC kit(PK-6100,Vector Labs)及びDAB Peroxidase kit(SK-4100,Vector Labs)を使用してGFP発現を評価した。AAV.hDynが注射されたマウスにおける脳全体を通してGFPを発現する細胞の広い分布が存在し、これには、脳の皮質、線条体、及び海馬における分布が含まれていた。図23A~23Cは、これらの領域からの画像を示しており、スケールバーは400umである(以下に論述される)。
【0262】
6.22.2.2 結果
結果は、図21図22A~22H、及び図23A~23Cに示されている。
【0263】
Lec2細胞形質導入アッセイのデータは示されていない。AAV9 588 Hep(位置588の後に挿入されたペプチドTILSRSTQTG(配列番号22)(表1bにおけるDLC-AS2)を有するAAV9)は、野生型AAV9よりも有意に高い形質導入(4倍)を示し、AAV9 VP2 Ad(位置138の後に挿入されたペプチドSITLVKSTQTV(配列番号21)(表1bにおけるDLC-AS1)を有するAAV9)、AAV9 VP2 Hep(位置138の後に挿入されたペプチドTILSRSTQTG(配列番号22)(表1bにおけるDLC-AS2)を有するAAV9)、及びAAV9 VP2 Rab(位置138の後に挿入されたペプチドRSSEEDKSTQTT(配列番号26)(表1bにおけるDLC-AS4)を有するAAV9)は、AAV9と比べてわずかに高いLec2細胞の形質導入を示した。アッセイされた他のAAVは、AAV9よりも低いレベルの形質導入を示した。
【0264】
図21は、脳gDNAの次世代シーケンシング(NGS)分析の結果を示しており、静脈内注射の後にマウス脳に送達されたカプシドプールの相対的存在量(組成割合)を明らかにしている。当初注射されたプールにおけるAAVの組成に基づいてデータを正規化し、eGFP配列に特異的なプライマー-プローブの組み合わせを用いたqPCR分析から得られた総ゲノムコピー数を使用して定量した。示されているデータは、3つの異なる実験からのものである。点線は、どのベクターが一緒にプールされていたかを示している。親AAV9を標準として使用し、各プールに含めた。「BC」識別子は、上記の表7A、7B及び7Cにおいて示されているとおりである。
【0265】
図22A~22Hは、雌のC57Bl/6マウスにおけるAAV.hDynのin vivo形質導入プロファイルを示しており、ナイーブマウス、またはAAV9もしくはAAV.hDynのいずれかが注射されたマウスにおいて脳(図22A)、肝臓(図22B)、心臓(図22C)、肺(図22D)、腎臓(図22E)、骨格筋(図22F)、座骨神経(図22G)、及び卵巣(図22H)におけるコピー数/マイクログラムgDNAを示しており、AAV.hDynは、AAV9と比較して増加した脳生体内分布を示している。脳ゲノムDNAのμg当たりのAAVベクターゲノムコピーは、親AAV9ベクターと比較して、AAV.hDynが投与されたマウスでは少なくとも1log高かった。
【0266】
図23A~23Cは、上述した免疫組織化学分析において分析された領域からの画像を示しており;スケールバーは400μmである。図23A~23Cは、脳全体にわたるAAV.hDynからのGFPの分布を示しており、線条体(図23A)、海馬(図23B)、及び皮質(図23C)からの脳切片の免疫組織化学染色の画像は、改変ベクターによる脳の全体的な形質導入を明らかにした。
【0267】
6.22.2.3 結論
VR-IV及びVR-VIIIの表面露出ループにおける挿入によってまたは特定のアミノ酸変異によってのいずれかで実施されたAAVカプシド改変は、それらのパッケージング効率に影響を及ぼさず、本明細書に記載の生成システムにおいて同様の力価をもたらすことができた。
【0268】
AAV.hDynのマウスへの静脈内投与は、試験された他の改変AAVベクター及びAAV9より高いウイルスゲノムの相対的存在量及びより多い脳細胞形質導入をもたらした。
【0269】
6.23.実施例23-ホーミングペプチド腎臓1Cは、全身送達の後に向上した形質導入を示す。
AAVカプシド配列をペプチド挿入物のいずれかによって改変し、プールして、GFP発現カセットと共にパッケージングされたバーコード化ライブラリを得た。次いで改変AAV9ベクターの生体内分布プロファイルを、次世代シーケンシング(NGS)及び定量PCRを使用してマウスにおいてin vivoで評価した。VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列CLPVASC(配列番号12)(腎臓1C)またはASSLNIA(配列番号14)(筋肉1)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターは、肝臓と比較して腎臓の増加した形質導入効率を示した(図24)。
【0270】
6.23.1 物質及び方法
AAVカプシドのVR-IV表面露出ループの位置S454の後に様々なホーミングペプチド配列を挿入することによってAAV9に対するカプシド改変を実施した。パッケージング効率は、小規模ではこれらのカプシド改変のいずれかの後に悪影響を受けないことが確認された。ペプチド配列が以下の表8に示されている。すべての改変AAVは、各々の個々のカプシドに対応する特定のバーコードを含有するeGFP導入遺伝子カセットと共にパッケージングした。スクリーニングの効率を向上させるためにこれらの新規のバーコード化ベクターをプールした(実施例22Bにおいて上記で説明されているように;研究3、表7C参照)。
【0271】
遺伝子変化したAAVベクターを、研究3の変化ベクターに関して実施例22Bにおいて上記で説明したようにマウスに静脈内注射した。当初注射されたプールにおけるAAVの組成に基づいてデータを正規化し、eGFP配列に特異的なプライマー-プローブの組み合わせを用いたqPCR分析から得られた総ゲノムコピー数を使用して定量し、腎臓対肝臓組織標的化をより綿密に試験した。
【0272】
6.23.2 結果及び結論
図24は、雌のC57Bl/6マウスにおいて異なるホーミングペプチド挿入物(表8)を有するAAV9 S454ベクターのin vivo形質導入の腎臓対肝臓の比を示している。改変カプシドのためのプールの総腎臓形質導入に対する腎臓対肝臓の形質導入を計算のために使用した。AAV9 S454腎臓1及びAAV9 S454腎臓2(腎臓1C)は、親AAV9と比較して増加した腎臓生体内分布を示す。親AAV9ベクターは、約0.25の比で腎臓と比較して増加した肝臓の形質導入を示すのに対し、腎臓ホーミングペプチド1C(及びさらに筋肉1)の挿入は、この比の約1.0への増加をもたらす。腎臓gDNAのμg当たりのAAVベクターゲノムコピーは、AAV9 S454腎臓1またはAAV9 S454筋肉1が投与されたマウスでは、すべての他のAAV9 S454ベクターと比較して少なくとも5倍高かった(図24参照)。
【表8】
【0273】
表面露出ループVR-IVにおける異なるホーミングペプチドの挿入によって実施されたAAVカプシド改変は、それらのパッケージング効率に影響を及ぼさず、本明細書に記載の生成システムにおいて同様の力価をもたらすことができた。
【0274】
AAV9 S454腎臓1及びAAV9 S454腎臓1Cのマウスへの静脈内投与は、試験された他の改変AAV9ベクター及び親AAV9ベクターより高いウイルスゲノムの相対的存在量及びより多い腎臓細胞形質導入をもたらした。AAV9 S454腎臓1またはAAV9 S454筋肉1ベクターのマウスへの静脈内投与はまた、より低い肝臓細胞形質導入をもたらした。
【0275】
6.24.実施例24-TLAVPFK(配列番号27)を含有するrAAVカプシドの構築
図25は、VR-IVのS454及びG455の間にアミノ酸配列TLAVPFK(配列番号27)のペプチド挿入物を含む組換えAAV9ベクターカプシドのためのアミノ酸配列を示している。
【0276】
6.25.実施例25-カニクイザルにおけるrAAVベクタープールの生体内分布
修飾されたカプシド及びGFP導入遺伝子を有する組換えAAVのプールの投与、in vivo及び死後観察、及び生体内分布を、カニクイザルにおける単回静脈内、脳室内または硝子体内注射の後に評価する(表9)。プールは複数のカプシドを含有し、これらはそれぞれ、カニクイザルへの投与の後に次世代シーケンシング(NGS)分析を使用した特定を可能にする独自のバーコード識別を含有する。カニクイザルは、大きな動物種におけるAAV生体内分布研究のための及びヒトへのさらなる変換のためのモデルとしてのその確立された有用性及び許容性のため試験系として選択される。この研究におけるすべての動物は、先行処置に関してナイーブである。プールは、少なくとも表9に列挙された修飾されたカプシドを有する以下の組換えAAVを含み得る。
【表9】
【0277】
6.25.1.研究設計
9匹の雌のカニクイザル動物を使用する。臨床的兆候データ及びプレスクリーニング抗体力価に基づいて実験に好適と判断された動物を、コンピュータで生成された乱数を使用して体重別に研究群に分ける。3つの異なる投与経路を使用し、関連する組織を収集して、異なる経路に関連した生体内分布を評価する(NGS及びPCRによって測定される)。3匹の動物に脳室内(ICV)用量投与のために左側脳室にカテーテルを埋め込み(群1)、3匹の動物に単回静脈内注入を受けさせ(群2)、3匹の動物に単回硝子体内注射を受けさせる(群3)。2匹の動物は交換動物としての役割を果たし、必要に応じて埋め込みをする。群1の動物にMRIスキャンを受けさせて、適切なICVカテーテル配置のための座標を決定する。
【0278】
IV注入を3mL/分の速度で投与し、続いて0.2mLのビヒクルを投与してIVカテーテルから用量をフラッシュする。3匹の静脈内動物に単回用量のプールされた組換えAAVを4mL/kgの体積で摂取させる。総用量(vg)及び用量体積(mL/kg)を生データで記録する。非ヒト霊長類における文献レビュー及び先行研究に基づいて、1×1013GC/kg体重のIV用量が、全身送達からのCNS及び骨格筋を含む末梢組織における所望の分布を有するのに必要となることが決定された。
【0279】
ICV埋込動物に、1mLの体積のAAV-NAV-GFPbcで単回ボーラス用量を摂取させ(ゆっくりとした注入、およそ0.1mL/分で)、続いて0.1mLのビヒクルを摂取させてカテーテルシステムから用量をフラッシュする。ICV用量は、現行の臨床プログラムをサポートするために先行の非ヒト霊長類研究からの分布データに基づいている。
【0280】
硝子体内(IVT)注射を、50μLの用量体積でボーラス注射として両側に投与する。
【0281】
6.25.2.観察及び試験
臨床的兆候を少なくとも1日1回記録し、これは投薬の開始のおよそ2週間前から開始して研究期間全体にわたって継続する。動物を臨床的効果、疾病、及び/または死亡の兆候について観察する。研究指示者及び/または技術者の裁量で、動物の状態に基づいてさらなる観察を記録し得る。
【0282】
用量投与の前、ならびに2日目、8日目、15日目及び22日目に群3の動物について眼科的試験を実施する。すべての動物を1日目の後に実施される眼科的試験のために塩酸ケタミンIMで鎮静化する。1日目で検査のため、動物を注射麻酔で鎮静化する(セクション15.3.3参照)。試験の前に1%トロピカミドで眼を拡げる。試験には、細隙灯生体顕微鏡検査法及び間接検眼法が含まれる。また、圧平眼圧測定を、投薬前、用量投与の直後(約10~15分)ならびに2日目及び22日目に群3の動物について実施する。
【0283】
用量投与のおよそ2~3週前に中和抗体分析のために末梢静脈から血液サンプル(約3mL)を収集する。
【0284】
6.25.3.生物学的分析サンプル収集
群2(IV)のみの動物から、用量投与前、用量投与から3時間(±10分)、6時間(±10分)及び24時間(±0.5時間)後に、生物学的分析(AAVカプシドクリアランス)のために末梢静脈から全血サンプル(約0.5mL)を収集する。シリンジ及び針を使用してサンプルを収集し、2つのK EDTAチューブに移し、時間を記録する。
【0285】
用量投与前(1日目)、8日目及び15日目ならびに剖検前(22日目)にPBMC分析のために絶食動物から末梢静脈から血液サンプル(約5mL)を収集する。リチウムヘパリンチューブを使用してサンプルを得、時間を記録する。
【0286】
用量投与前(1日目、2mL)及び剖検(22日目、5mL)時に生物学的分析のために末梢静脈から血液サンプルを収集する。凝固チューブにサンプルを収集し、時間を記録する。チューブを十分に凝固するまで室温で維持し、次いでおよそ2400rpmで、室温で15分間遠心分離する。血清を収穫し、ラベル付きバイアル(剖検サンプルを1mLのアリコートに分割する)に入れ、液体窒素中で凍結させ、-60℃以下で保存する。
【0287】
用量投与前に群1のみの動物から大槽脊椎穿刺からCSF(約1.5mL)を収集する。剖検直前にすべての動物(群1~3)から大槽脊椎穿刺からCSF(約2mL)を収集する。CSFを収集する試みがなされるが、脊椎穿刺の不成功のため、サンプルは、動物(複数可)からすべての間隔で収集されない場合がある。収集すると、サンプルを処理まで氷上で保存する。
【0288】
6.25.4.剖検
処置の少なくとも21日後(22日目)に、死亡が発見されたまたは切迫屠殺した動物について、及び計画されていた剖検時に肉眼的剖検を実施する。死亡が発見されたものを除くすべての動物を8mg/kgのケタミンHCl IMで鎮静化し、イソフルラン/酸素混合物で維持し、ヘパリンナトリウムの静脈内ボーラス(200IU/kg)を提供する。動物に、生理食塩水中0.001%の亜硝酸ナトリウムを、左心室を介して灌流する。死亡が発見された動物を剖検するが、灌流はしない。
【0289】
以下の組織をすべての動物(死亡が発見されたものを含む)から確保する:骨髄、脳、盲腸、結腸、神経後根及び神経節、十二指腸、食道、視神経を含む眼、肉眼的病変、心臓、回腸、空腸、腎臓、膝関節、肝臓、気管支を含む肺、リンパ節、卵巣、膵臓、座骨神経、骨格筋、脊髄、脾臓、甲状腺、気管、及び迷走神経。
【0290】
6.25.5.生物学的分析
群2(IV)の動物から収集された全血をqPCR及び次世代シーケンシング(NGS)によって評価する。
【0291】
すべての動物から収集されたPBMCサンプルを、必要に応じて、フローサイトメトリー及び酵素結合免疫吸着スポット(ELISpot)によって評価する。
【0292】
血清及び/またはCSFにおける循環中和抗体及び遊離ベクターの存在を、必要により、ELISA及び細胞ベースアッセイによって評価する。
【0293】
組織におけるベクターコピー数及び転写産物の数を定量PCR及びNGS法によって試験する。
【0294】
6.26.カプシドアミノ酸配列
表10は、本明細書に記載の研究において記載及び/または使用された所定の修飾されたカプシドタンパク質のアミノ酸配列を提供する。異種ペプチド及びアミノ酸置換は、灰色の陰で示されている。
【表10】
【0295】
7.均等物
本発明は、その具体的な実施形態を参照して詳細に説明されているが、機能的に均等である類型が本発明の範囲内であることが理解される。実際、本明細書に示され、記載されているものに加えて本発明の様々な改変が、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかになる。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図されている。当業者は、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または慣用的な実験を超えるものを使用せずに確認することができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0296】
本明細書で言及されたすべての刊行物、特許及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許または特許出願がそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0297】
本明細書の論述は、当該技術分野が直面している問題の本質のより良好な理解を提供し、どのようにも先行技術として認めるものとして解釈されるべきではなく、また、本明細書におけるいかなる参考文献も、そのような参考文献が本出願に対する「先行技術」を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0298】
本明細書で引用される特許出願及び刊行物を含むすべての参考文献は、各々の個々の刊行物または特許または特許出願が、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度まで、それらの全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。本発明の多くの改変及び類型は、当業者に明らかになるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書に記載の特定の実施形態は、例として提供されているにすぎず、本発明は、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.AAVタンパク質ではない異種タンパク質からの少なくとも4個かつ最大で12個の連続アミノ酸のペプチド挿入物を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質であって、前記ペプチド挿入物は、図8のAAV9カプシドタンパク質のアミノ酸138;またはアミノ酸451~461のうちの1つに対応するアミノ酸残基の直後にあり、前記カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合、前記ペプチド挿入物は表面露出される、前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質。
2.組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質であって、前記カプシドタンパク質は、
(i)神経組織ホーミングタンパク質またはドメイン(但し、ペプチド挿入物は、配列TLAVPFK(配列番号27)を含まない);
(ii)軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメイン;
(iii)骨ホーミングドメイン;
(iv)腎臓ホーミングドメイン;
(v)筋肉ホーミングドメイン;
(vi)内皮細胞ホーミングドメイン;
(vii)インテグリン受容体結合ドメイン;
(viii)トランスフェリン受容体結合ドメイン(但し、ペプチド挿入物は、配列RTIGPSV(配列番号19)もCRTIGPSVC(配列番号20)も含まない);
(ix)腫瘍細胞標的化ドメイン;または
(x)網膜細胞ホーミングタンパク質またはドメイン(但し、ペプチド挿入物は、配列LGETTRP(配列番号15)もLALGETTRP(配列番号16)も含まない)
からなる群から選択される異種タンパク質またはドメインからの少なくとも4個かつ最大で12個の連続アミノ酸のペプチド挿入物を含み、
前記カプシドタンパク質がAAV粒子としてパッケージングされた場合、前記ペプチド挿入物は表面露出される、前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質。
3.前記カプシドタンパク質は、AAV1型(AAV1)、血清型2(AAV2)、血清型3(AAV3)、血清型4(AAV4)、血清型5(AAV5)、血清型6(AAV6)、血清型7(AAV7)、血清型8(AAV8)、血清型rh8(AAVrh8)、血清型9(AAV9)、血清型9e(AAV9e)、血清型rh10(AAVrh10)、血清型rh20(AAVrh20)、血清型hu.37(AVVhu.37)、血清型rh39(AAVrh39)、及び血清型rh74(AAVrh74)から選択される少なくとも1つのAAV型からのものである、上記1または2に記載のrAAVカプシドタンパク質。
4.前記ペプチド挿入物は、図8に示される配列における
(a)AAV1カプシドアミノ酸配列(配列番号110)の450~459;
(b)AAV2カプシドアミノ酸配列(配列番号111)の449~458;
(c)AAV3カプシドアミノ酸配列(配列番号112)の449~459;
(d)AAV4カプシドアミノ酸配列(配列番号113)の443~453;
(e)AAV5カプシドアミノ酸配列(配列番号114)の442~445;
(f)AAV6カプシドアミノ酸配列(配列番号115)の450~459;
(g)AAV7カプシドアミノ酸配列(配列番号116)の451~461;
(h)AAV8カプシドアミノ酸配列(配列番号117)の451~461;
(i)AAV9カプシドアミノ酸配列(配列番号118)の451~461;
(j)AAV9eカプシドアミノ酸配列(配列番号119)の452~461;
(k)AAVrh10カプシドアミノ酸配列(配列番号120)の452~461;
(l)AAVrh20カプシドアミノ酸配列(配列番号121)の452~461;
(m)AAVhu.37カプシドアミノ酸配列(配列番号122)の452~461;
(n)AAVrh74カプシドアミノ酸配列(配列番号123または配列番号154)の452~461;または
(o)AAVrh39カプシドアミノ酸配列(配列番号124)の452~461
の中のアミノ酸残基のうちの1つの直後に存在する、上記1~3のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
5.前記ペプチド挿入物は、前記AAV9カプシドのアミノ酸I451、N452、G453、S454、G455、Q456、N457、Q458、Q459、T460、またはL461のうちの1つに対応するアミノ酸残基の後に存在する、上記4に記載のrAAVカプシドタンパク質。
6.前記異種タンパク質は、ホーミングドメイン、中和抗体エピトープ、または精製タグである、上記1、3~5のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
7.前記ホーミングドメインは、
(i)神経組織ホーミングドメイン;
(ii)軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメイン;
(iii)骨ホーミングドメイン;
(iv)腎臓ホーミングドメイン;
(v)筋肉ホーミングドメイン;
(vi)内皮細胞ホーミングドメイン;
(vii)インテグリン受容体結合ドメイン;
(viii)トランスフェリン受容体結合ドメイン;
(ix)腫瘍細胞標的化ドメイン;または
(x)網膜細胞ホーミングドメイン
である、上記6に記載のrAAVカプシドタンパク質。
8.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列SITLVKSTQTV(配列番号21)、TILSRSTQTG(配列番号22)、VVMVGEKPITITQHSVETEG(配列番号25)、RSSEEDKSTQTT(配列番号26)、KMQVPFQ(配列番号1)、LKLPPIV(配列番号5)、PFIKPFE(配列番号6)、TLSLPWK(配列番号7)、QQAAPSF(配列番号3)、RYNAPFK(配列番号4)、TLAVPFK(配列番号27)、またはTLAAPFK(配列番号2)のダイニンペプチドの少なくとも4個の連続アミノ酸を含み、もしくはそれからなり、またはその7個の連続アミノ酸である、上記7に記載のrAAVカプシドタンパク質。
9.前記トランスフェリン受容体結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列RTIGPSV(配列番号19)またはCRTIGPSVC(配列番号20)の少なくとも4個の連続アミノ酸であり、またはその7個のアミノ酸である、上記7に記載のrAAVカプシドタンパク質。
10.前記網膜細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)、LGETTRP(配列番号15)またはLALGETTRP(配列番号16)の少なくとも4個の連続アミノ酸であり、またはその7個のアミノ酸である、上記7に記載のrAAVカプシドタンパク質。
11.前記AAVカプシドタンパク質は、AAV8カプシドタンパク質またはAAV9カプシドタンパク質である、上記10に記載のrAAVカプシドタンパク質。
12.前記精製タグからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列YPYDVPDYA(配列番号86)の血球凝集素(HA)エピトープまたはアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号52)のFLAGタグの少なくとも4個の連続アミノ酸であり、またはその7個の連続アミノ酸である、上記7に記載のrAAVカプシドタンパク質。
13.前記神経組織ホーミングタンパク質または前記網膜細胞ホーミングタンパク質は、ヒト軸糸ダイニン(HAD)重鎖尾部である、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
14.前記ペプチド挿入物は、前記HAD重鎖尾部の二量化ドメインからの少なくとも4個かつ最大で15個の連続アミノ酸を含む、上記13に記載のrAAVカプシドタンパク質。
15.前記ペプチド挿入物は、(図7に示される):
(a)(DYH1_HUMAN UniProtKB-Q9P2D7のaa1~1542)(配列番号97);
(b)(DYH2_HUMAN UniProtKB-Q9P225のaa1~1764)(配列番号98);
(c)(DYH3_HUMAN UniProtKB-Q8TD57のaa1~1390)(配列番号99);
(d)(DYH5_HUMAN UniProtKB-Q8TE73のaa1~1941)(配列番号100);
(e)(DYH6_HUMAN UniProtKB-Q9C0G6のaa1~1433)(配列番号101);
(f)(DYH7_HUMAN UniProtKB-Q8WXX0のaa1~1289)(配列番号102);
(g)(DYH8_HUMAN UniProtKB-Q96JB1のaa1~1807)(配列番号103);
(h)(DYH9_HUMAN UniProtKB-Q9NYC9のaa1~1831)(配列番号104);
(i)(DYH10_HUMAN UniProtKB-Q8IVF4のaa1~1793)(配列番号105);
(j)(DYH11_HUMAN UniProtKB-Q96DT5のaa1~1854)(配列番号106);
(k)(DYH12_HUMAN UniProtKB-Q6ZR08のaa1~1214)(配列番号107);
(l)(DYH14_HUMAN UniProtKB-Q0VDD8のaa1~200)(配列番号108);または
(m)(DYH17_HUMAN UniProtKB-Q9UFH2のaa1~1794)(配列番号109)
からなる群からの少なくとも4個かつ最大で15個の連続アミノ酸を含む、上記14に記載のrAAVカプシドタンパク質。
16.前記ペプチド挿入物は、ダイニン重鎖配列(図7)のいずれか1つの残基1~200からの少なくとも4個かつ最大で15個の連続アミノ酸を含む、上記15に記載のrAAVカプシドタンパク質。
17.前記ペプチド挿入物は、図7の前記ダイニン重鎖配列のいずれか1つからの7個の連続アミノ酸を含む、上記15に記載のrAAVカプシドタンパク質。
18.前記ペプチド挿入物は、ダイニン重鎖配列(図7)のいずれか1つの残基1~200からの7個の連続アミノ酸を含む、上記16に記載のrAAVカプシドタンパク質。
19.前記ペプチド挿入物は、ペプチド:
(a)KMQVPFQ(配列番号1);
(b)TLAAPFK(配列番号2);
(c)QQAAPSF(配列番号3);
(d)RYNAPFK(配列番号4);
(e)LKLPPIV(配列番号5);
(f)PFIKPFE(配列番号6);または
(g)TLSLPWK(配列番号7)
のうちの1つの少なくとも4個の連続アミノ酸を含む、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
20.前記ペプチド挿入物は、ペプチド:
(a)KMQVPFQ(配列番号1);
(b)TLAAPFK(配列番号2);
(c)QQAAPSF(配列番号3);
(d)RYNAPFK(配列番号4);
(e)LKLPPIV(配列番号5);
(f)PFIKPFE(配列番号6);または
(g)TLSLPWK(配列番号7)
のうちの1つからなる、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
21.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)である、上記20に記載のrAAVカプシドタンパク質。
22.前記神経組織ホーミングタンパク質は、マウス軸糸ダイニン(MAD)重鎖尾部である、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
23.前記神経組織ホーミングドメインは、自然修復受容体に結合し、かつ赤血球生成性ではないEPO(エリスロポエチン)ドメイン、または前記ドメインのコンフォメーションアナログである、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
24.前記ペプチド挿入物は、QEQLERALNSS(配列番号8)からの少なくとも4個かつ最大で11個の連続アミノ酸である、上記23に記載のrAAVカプシドタンパク質。
25.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列QEQLERALNSS(配列番号8)を有する、上記24に記載のrAAVカプシドタンパク質。
26.前記神経組織ホーミングタンパク質は、SRL(セリン-アルギニン-リジン)モチーフを有する脳ホーミングドメインである、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
27.前記脳ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LSSRLDA(配列番号10)またはCLSSRLDAC(配列番号11)の少なくとも4個の連続アミノ酸を有し、またはアミノ酸配列LSSRLDA(配列番号10)またはCLSSRLDAC(配列番号11)である、上記26に記載のrAAVカプシドタンパク質。
28.前記軸糸または細胞質ダイニンホーミングドメインは、ダイニン軽鎖ホーミングドメインである、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
29.前記ダイニン軽鎖ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、SITLVKSTQTV(配列番号21)、TILSRSTQTG(配列番号22)、VVMVGEKPITITQHSVETEG(配列番号25)、またはRSSEEDKSTQTT(配列番号26)のうちの1つの少なくとも4個かつ最大で12個の連続アミノ酸である、上記28に記載のrAAVカプシドタンパク質。
30.前記骨ホーミングタンパク質は、ヒドロキシアパタイト(HA)結合ドメインである、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
31.前記ヒドロキシアパタイト(HA)結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、配列DDDDDDDD(配列番号9)の少なくとも6個のアミノ酸残基である、上記30に記載のrAAVカプシドタンパク質。
32.前記腎臓ホーミングドメインは、アミノ酸配列CLPVASC(配列番号12)を含む、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
33.前記腎臓ホーミングドメインペプチドからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LPVAS(配列番号13)またはCLPVASC(配列番号12)である、上記32に記載のrAAVカプシドタンパク質。
34.前記筋肉ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列ASSLNIA(配列番号14)を含み、またはそれからなる、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
35.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列QAVRTSL(配列番号23)またはQAVRTSH(配列番号24)を含み、またはそれからなる、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
36.前記内皮細胞ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列SIGYPLP(配列番号28)を含み、またはそれからなる、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
37.前記インテグリン結合ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列CDCRGDCFC(配列番号29)を有する、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
38.前記トランスフェリン受容体結合ドメインは、トランスフェリンドメイン、もしくはそのコンフォメーションアナログ、または鉄模倣体である、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
39.前記トランスフェリンドメインからの前記ペプチド挿入物は、配列HAIYPRH(配列番号17)またはTHRPPMWSPVWP(配列番号18)からの少なくとも4個の連続アミノ酸であり、またはその7個の連続アミノ酸である、上記38に記載のrAAVカプシドタンパク質。
40.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列HAIYPRH(配列番号17)またはTHRPPMWSPVWP(配列番号18)を含み、またはそれからなる、上記39に記載のrAAVカプシドタンパク質。
41.前記腫瘍細胞標的化ドメインからの前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列NGRAHA(配列番号30)を含み、またはそれからなる、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
42.前記ペプチド挿入物は、TLAAPFK(配列番号2)、TLAVPFK(配列番号27)、RTIGPSV(配列番号19)、CRTIGPSVC(配列番号20)、LGETTRP(配列番号15)、及びLALGETTRP(配列番号16)のうちの1つからの少なくとも4個の連続アミノ酸であり、またはその7個の連続アミノ酸である、上記2または3に記載のrAAVカプシドタンパク質。
43.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸残基(図8に示される):
(a)AAV1カプシドアミノ酸配列(配列番号110)の138;262~272;450~459;または585~593;
(b)AAV2カプシドアミノ酸配列(配列番号111)の138;262~272;449~458;または584~592;
(c)AAV3カプシドアミノ酸配列(配列番号112)の138;262~272;449~459;または585~593;
(d)AAV4カプシドアミノ酸配列(配列番号113)の137;256~262;443~453;または583~591;
(e)AAV5カプシドアミノ酸配列(配列番号114)の137;252~262;442~445;または574~582;
(f)AAV6カプシドアミノ酸配列(配列番号115)の138;262~272;450~459;585~593;
(g)AAV7カプシドアミノ酸配列(配列番号116)の138;263~273;451~461;586~594;
(h)AAV8カプシドアミノ酸配列(配列番号117)の138;263~274;452~461;587~595;
(i)AAV9カプシドアミノ酸配列(配列番号118)の138;262~273;452~461;585~593;
(j)AAV9eカプシドアミノ酸配列(配列番号119)の138;262~273;452~461;585~593;
(k)AAVrh10カプシドアミノ酸配列(配列番号120)の138;263~274;452~461;587~595;
(l)AAVrh20カプシドアミノ酸配列(配列番号121)の138;263~274;452~461;587~595;
(m)AAVhu37カプシドアミノ酸配列(配列番号122)の138;263~274;452~461;587~595;
(n)AAVrh74カプシドアミノ酸配列(配列番号123または配列番号154)の138;263~274;452~461;587~595;または
(o)AAVrh39カプシドアミノ酸配列(配列番号124)の138;263~274;452~461;587~595
のうちの1つの直後に存在する、上記2または13~42のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
44.前記AAV9カプシドのアミノ酸残基588~589の間またはAAV9カプシドのアミノ酸138に対応するアミノ酸残基の直後(図8参照)に挿入されたアミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
45.前記AAV9カプシドのI451~L461、S268またはQ588のうちの1つの後(図8)に挿入されたアミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
46.前記AAV9カプシドのアミノ酸残基588~589(図8参照)の間にアミノ酸配列QEQLERALNSS(配列番号8)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
47.前記AAV9カプシドのI451~L461、またはS268から選択される1つ以上の位置(図8)で挿入されたアミノ酸配列QEQLERALNSS(配列番号8)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
48.前記ペプチド挿入物は、前記AAV9カプシドタンパク質のアミノ酸残基262~273のうちの1つの直後にアミノ酸配列TLAVPFK(配列番号27)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
49.前記ペプチド挿入物は、前記AAV8カプシドタンパク質のアミノ酸残基269及び270の間にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
50.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)を有する、上記49に記載のrAAVカプシドタンパク質。
51.前記ペプチド挿入物は、前記AAV8カプシドタンパク質のアミノ酸残基590及び591の間にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
52.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)を有する、上記51に記載のrAAVカプシドタンパク質。
53.前記ペプチド挿入物は、前記AAV8カプシドタンパク質のアミノ酸残基453及び454のうちの1つの直後にアミノ酸配列LGETTRP(配列番号15)を含む、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
54.前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列LALGETTRP(配列番号16)を含む、上記53に記載のrAAVカプシドタンパク質。
55.前記カプシドは、AAV9であり、前記ペプチド挿入物は、AAV9のアミノ酸残基454~455の間(図8)に存在する、上記2または13~43のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
56.前記ペプチド挿入物は、前記AAV9カプシドのI451~L461、S268またはQ588のうちの1つに対応する酸残基の直後(図8)に存在する、上記2または13~43のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
57.前記ペプチド挿入物は、AAV9カプシドタンパク質のアミノ酸451~461のうちの1つの直後に存在する、上記43に記載のrAAVカプシドタンパク質。
58.前記ペプチド挿入物は、AAVカプシド第8可変領域(VR-VIII)において存在する、上記2または13~43のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
59.前記カプシドタンパク質は、前記AAV2カプシドタンパク質ではない、先行上記のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質。
60.組換えAAVカプシドタンパク質であって、野生型または非修飾カプシドタンパク質に対する1つ以上のアミノ酸置換であって、前記rAAVカプシドタンパク質は、A269Sアミノ酸置換を有するAAV8カプシドタンパク質であり、またはS263G/S269R/A273T置換、またはW503RもしくはQ474A置換を有するAAV9カプシドタンパク質である、前記1つ以上のアミノ酸置換、または別のAAV型カプシドのカプシドタンパク質における対応する置換を含む、前記組換えAAVカプシドタンパク質。
61.AAV8カプシドタンパク質についての498-NNN/AAA-500もしくはAAV9カプシドタンパク質についての496-NNN/AAA-498、または別のAAV型カプシドのカプシドタンパク質における対応する置換をさらに含む、実施形態60に記載のrAAVカプシドタンパク質。
62.先行上記のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質をコードする、またはそれと少なくとも80%の同一性を共有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
63.先行上記のいずれかに記載のrAAVカプシドタンパク質をコードする、上記62に記載の核酸。
64.前記ヌクレオチド配列によってコードされる前記カプシドタンパク質を含むAAVベクターを生成するために上記62または63に記載の核酸を発現することが可能なパッケージング細胞。
65.上記1~61のいずれかに記載のカプシドタンパク質を含むrAAVベクター。
66.導入遺伝子をさらに含む、上記65に記載のrAAVベクター。
67.上記65または66に記載のrAAVベクター及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
68.導入遺伝子を細胞に送達する方法であって、前記方法は、前記細胞を上記65または66に記載のrAAVベクターと接触させることを含む、前記方法;または導入遺伝子を細胞に送達する際に使用するための上記65または66に記載のrAAVベクターであって、前記細胞は、前記ベクターと接触される、前記rAAVベクター。
69.導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する方法であって、前記方法は、上記65または66に記載のrAAVベクターを前記対象に投与することを含み、前記ペプチド挿入物は、ホーミングペプチドである、前記方法;または導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する際に使用するための上記65または66に記載のrAAVベクターであって、前記ベクターは、前記対象に投与される、前記rAAVベクター。
70.前記rAAVベクターは、全身的に、静脈内に、髄腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、硝子体内に、腰椎穿刺を介してまたは大槽を介して投与される、上記69に記載の方法、または使用のためのrAAVベクター。
71.前記標的組織は、
(i)神経組織であり、前記ベクターは、前記神経組織ホーミングドメインからの前記ペプチド挿入物を含み、
(ii)骨であり、前記ベクターは、前記骨ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含み、
(iii)腎臓であり、前記ベクターは、前記腎臓ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含み、
(iv)筋肉であり、前記ベクターは、前記筋肉ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含み、
(v)内皮細胞であり、前記ベクターは、前記内皮細胞ホーミングドメインからのペプチド挿入物を含み、
(vi)インテグリン受容体であり、前記ベクターは、前記インテグリン受容体結合ドメインからのペプチド挿入物を含み、
(vii)腫瘍細胞上のトランスフェリン受容体であり、前記ベクターは、前記トランスフェリン受容体結合ドメインからのペプチド挿入物を含み、
(viii)腫瘍細胞であり、前記ベクターは、前記腫瘍細胞標的化ドメインからのペプチド挿入物を含み、または
(ix)網膜細胞であり、前記ベクターは、前記網膜細胞ホーミングドメインからのペプチド挿入物
を含む、上記70に記載の方法、または使用のためのrAAVベクター。
72.前記標的組織は、網膜細胞であり、前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)、LGETTRP(配列番号15)またはLALGETTRP(配列番号16)を含む、上記71に記載の方法、または使用のためのrAAVベクター。
73.前記標的組織は、網膜細胞であり、前記ペプチド挿入物は、アミノ酸配列TLAAPFK(配列番号2)を含む、上記72に記載の方法、または使用のためのrAAVベクター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
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図7B
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図7J
図7K
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図7M
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
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【配列表】
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